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ルーバーの構成からみた立面と外部環境 - 東京工業大学 建築学科・建築

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ルーバーの構成からみた立面と外部環境 - 東京工業大学 建築学科・建築
ルーバーの構成からみた立面と外部環境
金属やガラスのルーバーでは大小様々に分布している。これら
配置と詳細の組み合わせから得られた立面におけるルーバー
の構成パタンを表 4 に示す。素材の傾向は、金属のみ (67 面 )
安田研究室 05_00702 東 克彦 (AZUMA,Katsuhiko)
と自然素材 (47 面 ) が特に多い。また配置について、立面
全体に設置されているものの割合をみると、自然素材
ており(74%)
、
ルーバーが建物の顔を担う要素として扱われ
(20/47面)では半数近くを占めるのに対し、
金属
(11/67面)
視線や騒音の調整などの機能をもつと同時に 、外観の意
ていると考えられる。各周辺パタンについて、立面にルーバー
ではその割合が低い。
匠上重要な要素となっている。隣接する建物や緑地、方
が設置される割合をみると、人の視線や騒音が少ない大
4. ルーバーの構成と外部環境 前章までに得られた周辺パタン
位等の要因により特徴付けられる外部環境に対し、
ルーバーが
きなオープンスペースに隣接する C3(22%)
、建物が隣接する A
と構成パタンの組み合わせから、
ルーバーの構成と外部環境の対
設置された立面はこの外部環境を強く意識して設計され
(27%)ではルーバーが設置されることが少ない傾向にある。
応関係として、
8つの類型が得られた。類型ア、
イ、
ウ、
エは、
ていると考える。本研究では、立面にルーバーが設置されて
また、公園に隣接する C2 ではルーバーが設置される割合
道路を介して建物が立地するパタンB1に対応するもので、
いる建物 を対象とし、
ルーバーの構成からみた立面と外部環
(82%)と共に、主立面となる割合が最も高い。方位との
上部のみがルーバーで覆われており、主立面となって道路に
境の関係を分析することで、環境と応答した建物の設計
関係をみると、南面においてルーバーが設置される割合が最
面した下層部をエントランスとしているものが多い。アはスケールの
手法の一端を明らかにすることを目的とする。
も高く(67%)
、東西面ではほぼ同等の割合(54%、51%)
、
大きな金属ルーバーが間隔をあけて設置されることで、建物
2. 建物立面と外部環境 対象建物の全立面(268 面)から、
少数であるが北面にも設置される傾向がみられた(33%)
。
上部において光や熱を遮りながら隣接する道路上空への
開口部に付加されたルーバーを有する立面として 137 面が抽
3. ルーバーの構成 ルーバーの構成を、立面における配置、詳細
眺望を確保するものである。イはスケールの小さなルーバーが密
出された。各立面に対する外部環境として周辺要素と方
から検討する。
ルーバーの配置は
(表 3)
、
立面全体を覆う
[全部]
に設置されることで、外部環境に対して細やかに遮蔽す
位を検討し(表 1)
、周辺要素の配列から 6 つの周辺パタン
(36/137)下部を覆う[下部]
(4/137)
、
上部を覆う[上部]
るものである。ウは可動ルーバーによって眺望と遮蔽の両方
が得られた(表 2)
。
パタンA は建物が隣接し、立面全体ある
(97/137)に分類された。
ルーバーの詳細を、見付け、見込み、
の性質が備わるものである。エは自然のルーバーが設置され、
いは一部が隠れるものである。
パタンB1、B2 は道路や公園
間隔、素材(金属・自然・ガラス)
、方向(水平・垂直)で
道路向かい側の建物と対比的な外観を得るものである。
を介し、周辺の建物が離れて立地するものである。
パタン
とらえると、間隔≧見込みのもの、特に間隔と見込みの
これらからパタンB1はその読み取り方により、
ルーバーによる
C1、C2、C3 は周辺に建物が見られず、公園や空き地に
寸法が近似するものが多くみられた(図2)
。また、
スケールの
多様な応答が見られる環境であるといえる。オはパタンB2
隣接するものである。またメインエントランスを有する立面 ( 以下主
大小と粗密によってルーバーを分類すると(図3)
、自然素材
において、建物間の公園や広場に対し間隔の空いた金属
立面 ) に着目すると、大半はルーバーが設置された立面となっ
のルーバーではスケールの小さいものが多くみられるのに対し、
のルーバーによって眺望を確保するものである。カはパタンC1
註 1)
@
上部
図1 分析例
表1 周辺要素と方位
外部環境
図
建物 b
交通インフラi
道路
周辺要素
駐車場 c 公園•広場 p
ルーバーの
配置
道路 建物
r + b →B1
全部
N
S
建物なし
C2
p
36 面
C3
v
3(0)/ 15(0) 13(3)/ 18(4) 4(0)/11(1) 10(3)/ 13(4)
6(4)/ 6(4)
9(4)/ 11(5)
5(0)/ 1O(0) 15(8)/ 21(8) 4(1)/ 5(2)
8(6)/ 9(6)
5(4)/ 8(4)
2(0)/ 13(0) 14(6)/ 21(6) 3(0)/ 4(0)
8(4)/ 12(6)
2(0)/ 8(2)
3(0)/ 10(0) 10(4)/ 20(7) 0(0)/ 8(2)
6(3)/ 10(6)
13(0)/ 48(0) 51(21)/75(25) 11(2)/28(5) 26(11)/40(15) 28(18)/39(23)
82%
63%
43%
27%
62%
0(0)/ 4(0)
2(0)/ 9(0)
3(0)/ 9(0)
2(0)/ 10(0)
7(0)/ 32(0)
22%
10
上部
(㎜)
1000
4面
97 面
単位:面
100
36(10)/ 67(13)
43(19)/ 67(21)
35(13)/ 67(16)
23(7)/ 67(17)
137(49)/ 268(67)
51%
間隔@
1000
10000
(㎜)
スケ-ル大
密
構成
パタン
A
②-ⅰ
対応するものもみられた。これらは複数の立面がルーバーに
②-ⅱ
ルーバーの構成からみた立面と外部環境の関係
5. 結 以上、
スケ-ル小
10
100
間隔@
図 3 ルーバーの間隔と見付け
図 2、3)凡例
:金属
素材 :自然(木、テラコッタ、石)
:ガラス
{
1000
粗
10000
(㎜)
線有り:可動
白塗り:水平
方向
黒塗り:垂直
{
表2註)表中の数字は「ルーバーを有する立面数 / 対象建物の
立面数」であり、カッコ内の数字はエントランスの数である。
を、周辺パタンと構成パタンによる対応関係としてとらえ、そ
の構成的特徴を導くことで、環境と応答した建物の設計
手法の一端が明らかになった。
1)「新建築」誌 1998 年 9 月号から 2008 年 10 月号に掲載された、立面にルーバーが
設置された作品のうち、十分な情報が得られた 67 作品を対象とした。
表5註)表5のうち□で囲んだものが同一構成のルーバーで異なる周辺環境パタンに対する
ものである。
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属
金属・ガラス
金属・ガラス
ガラス
ガラス
ガラス
ガラス
ガラス
ガラス
ガラス
ガラス
ガラス
ガラス
自然
自然
自然
自然
自然
自然
自然
自然
自然
自然
自然
自然
自然
自然
自然
自然
自然
自然
自然
自然
自然
自然
自然
自然
自然
16-W ○
6-E
31-S ○
8-WSN
24-S
55-S
7-EW
17-N
46-S ○
18-EN ○
37-E
11-EW ○
23-N ○
39-S
38-S ○
59-W ○
6-W ○
14-E
25-E
51-S
粗
垂直
粗
垂直
粗
水平
粗
水平
密
垂直
密
垂直
密
水平
密⇄密
水平
粗
垂直
粗
垂直
粗
垂直
粗
垂直
粗
水平
粗
水平
粗 水平・垂直
密
垂直
密
垂直
密
水平
密
水平
密
水平
粗 水平・垂直
粗
垂直
粗
水平
粗
水平
粗
水平
粗
水平
密
垂直
密
垂直
密
水平
密
水平
密
水平
密
水平
密
水平
密
水平
密⇄粗
水平
密⇄粗
垂直
密⇄粗
垂直
密⇄密
垂直
密⇄密
水平
粗
水平
密・粗
垂直
粗
水平
密⇄粗
水平
密
水平
密
水平
密⇄密
水平
密⇄密
水平
密⇄密
水平
密⇄粗
垂直
密⇄粗
垂直
密
垂直
粗
水平
密
垂直
密
水平
密
垂直
密
垂直
密
水平
密・粗
垂直
密⇄粗
水平
粗
垂直
粗
垂直
密
垂直
密
水平
粗
水平
密
水平
密
水平
密
垂直
密
水平
密
水平
密
水平
粗
水平
粗
水平
密⇄密
水平
密⇄粗
垂直
密⇄粗
水平
密
水平
C1
オ
42-ESN
30-S
1WN
29-EN
52-S
カ
36-E ○
21-S ○
62-N
66-EW ○
65-E ○
16-E 24-EW
8-E ○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
②-ⅱ部分+金属
+小・密
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
○
部分+金属
+可動
②-ⅲ
③
部分+ガラス
④
全体+自然
⑤
部分+自然
○
○
○
○
○
○
○
C3
C2
6-N
45-S
14-S ○
7-S
17-W 19-W
63-W
26-E ○
63-S ○ 26-S
50-EWN
64-N
9-ES ○
60-S
1-ES ○
13-S
58-E
○
○
51-E
67-W ○
54-S ○
35-S ○
52-W
20-EW
5-W
12-EWN ○
②-ⅰ部分+金属
+大・粗
建物なし
54-EW
44-S ○
34-S ○
エ
全体+金属
2-N
62-S ○
45-E
37-W
63-E
53-S
3-EWSN ○
28-WN ○
③
○
○
○
○
○
構成パタン
①
14-W
12-S
イ
○
○
○
14-N
61-E ○
50-S
22-EWN ○ 22-S
⑤
小
小
小
小
大
大
小
大⇄大
大
大
大
大
大
大
大
大
大
大
大
大
大・小
小
小
小
小
小
小
小
小
小
小
小
小
小
小⇄小
大⇄小
大⇄大
大⇄大
大⇄大
小
大
小
小⇄小
大
小
大⇄大
大⇄大
大⇄大
大⇄小
大⇄小
小
大
大
大
小
小
小
小
小⇄小
大
大
大
大
大
小
小
小
小
小
小
小
小
小⇄小
大⇄小
大⇄小
小
ウ
②-ⅲ
④
ルーバーの詳細
主立面
スケール 密度 方向
周辺パタン
36-W 21-W
2-S ○
ア
19-E
素材
B2
B1
6-S
25-W
より意匠的に統合されていると考える。
1
建物が離れる
建物が隣接
①
われ、建物のヴォリューム感を弱めることで周囲との調和がみ
られるものである。また、これらの類型以外に、建物の
全部
全部
全部
全部
全部
全部
全部
全部
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
全部
全部
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
下部
全部
全部
全部
全部
全部
全部
全部
全部
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
部分
表 5 ルーバーの構成と周辺パタン
つくられている。クは上部のみがスケールの小さいルーバーで覆
各立面が異なる周辺パタンをもちながら、同一の構成パタンで
100
10
ルーバー
方位 の配置
作品名
2
森のとなり
N
36
梅窓院
EW
2
森のとなり
S
21
ナチュラルストリップスⅡ
WS
62
君津市保健福祉センターふれあい館
N
66
YKK黒部寮
EW
62
君津市保健福祉センターふれあい館
S
65
Office A
E
16
秋葉原UDX
EW
6
サントリー研修センター「夢たまご」
EWSN
14
東京大学柏キャンパス環境棟
EW
25
トヨタ自動車本館
EW
31
日本橋一丁目ビルディング
S
8
新丸の内ビルディング
EWSN
24
戸田市立芦原小学校
ESW
N
17 東京消防庁日本堤消防署二天門出張舍
7
Villa Rondo
EW
51
ソフトピア・ジャパン・ドリーム・コア
E
55
4in1
S
12
味の素グループ高輪研修センター
S
14
東京大学柏キャンパス環境棟
N
37
テレビ朝日
EW
14
東京大学柏キャンパス環境棟
S
18
シルエット2
EN
46
テクニカハウス
S
45
横浜市 市沢地区センター
ES
7
Villa Rondo
S
17 東京消防庁日本堤消防署二天門出張舍
W
11
キヤノン矢向事業所
EW
23
quaranta1966
N
59
ヒルサイドウェスト
W
38
A-bands/Ci4
S
19
政策研究大学院大学
EW
39
大正製薬本社2号館
S
28
浄土宗長谷院
WN
53
CESS
S
26
NTT東日本さいたま新都心ビル
ES
3
福生市庁舎
EWSN
63
大阪市水上消防署
ESW
61
A.P.C.ビル
E
50
高崎駐車場
EWSN
10
国立新美術館
S
22
スペースブロック・ノザワ
ESWN
54
広島市西消防署
EWS
S
44
リネア
56
ビッグハート出雲
W
67
ひたち野リフレ
W
4
GLASHAUS/靭公園
N
34
SILHOUETTE
S
53
CESS
N
42
PLASTIC・HOUSE
EWS
27
中部大学留学生会館
ES
30
東京農業大学「食と農」の博物館
ES
15
東京工業大学
S
60
森/スラット
ES
13
鎌倉の納骨堂
SWN
1
WoodEgg お好み焼き館
ESWN
64
港区立大平台みなと荘
EWSN
9
ののやま矯正歯科医院
ES
43
砥用町文化交流センター ひびき
S
35
ONE表参道
S
12
味の素グループ高輪研修センター
EWN
5
ライトオンつくばビル
ESWN
20
赤坂インターシティ・ホーマットバイカウント
EW
29
八女市立福島中学校屋内運動場
ESN
52
再生木ルーバーハウス
S
W
40
地球環境戦略研究機関
32
ケアハウス栗の実
W
57
名取デザインスタジオ
S
41
道の駅「香南楽湯」
W
49
明治学院大学パレットゾーン
WS
48
江東メモリアル
S
52
再生木ルーバーハウス
W
33
愛媛県武道館
W
47
くろしおアリーナ
SN
58
中目黒のオフィス
E
られる。キでは全面が覆われ、周辺と調和する主立面が
図2 ルーバーの間隔と見込み
部分
合計
図
東
南
方位
西
北
合計
割合
下部
る周辺パタンである C2に対応し、自然素材のルーバーが用い
1
No.
る立面をつくるものである。キ、クは自然の多くみられ
100
10
E
W
C1
c
粗密:粗
スケ-ル:大
方向:垂直
空き地
v → C3 素材:自然 ( 木 )
ルーバーの構成
周辺パタン
表3 ルーバーの配置
方位
空き地 v
線路
表 2 外部環境とルーバーの設置面
建物が離れる
建物が隣接
周辺パタン
B1
B2
A
周辺要素
b
i+b/c+b
p+b/v+b
ルーバー
北側
見込みD
配置図
建物
b →A
見付けW
南側
南側
=1
0
東側
メインエントランス
音の発生する外部環境を遮断すると同時に、統一感のあ
間隔 = 見込み
W
道路
空き地 建物
v + b → B2
において、立面全体を覆う金属のルーバーによって視線や騒
(㎜)
1000
0
=1
=8
北側
西側
西側
東側
D
No.35 ONE 表参道
設計:隈研吾建築都市設計事務所
08
1. 序 建物立面に設置されるルーバーは、光や熱環境の制御、
表 4 ルーバーの構成
27-S
43-S ○
5-S
10-S
56-W ○
4-N ○
53-N
30-E
27-E
64-E
60-E
ク
キ
13-W
15-S
49-WS 29-S
32-W ○ 48-S
33-W ○ 40-W
47-N ○ 41-W
57-S ○ 5-EN
64-WS
13-N
47-S
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