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転生者はめぐりあう - タテ書き小説ネット

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転生者はめぐりあう - タテ書き小説ネット
転生者はめぐりあう
タカ
タテ書き小説ネット Byヒナプロジェクト
http://pdfnovels.net/
注意事項
このPDFファイルは﹁小説家になろう﹂で掲載中の小説を﹁タ
テ書き小説ネット﹂のシステムが自動的にPDF化させたものです。
この小説の著作権は小説の作者にあります。そのため、作者また
は﹁小説家になろう﹂および﹁タテ書き小説ネット﹂を運営するヒ
ナプロジェクトに無断でこのPDFファイル及び小説を、引用の範
囲を超える形で転載、改変、再配布、販売することを一切禁止致し
ます。小説の紹介や個人用途での印刷および保存はご自由にどうぞ。
︻小説タイトル︼
転生者はめぐりあう
︻Nコード︼
N1916DO
︻作者名︼
タカ
︻あらすじ︼
大学の講師として熱弁をふるう毎日を過ごしていた。本日は遅
くまで学生の論文をチェックしていた帰り。偶然大学で教えたこと
のある女性徒に会い、そのまま暗い夜道をつきそうことになった。
その時車が突然女生徒に向かってきた。ぶつかる寸前に女生徒を突
き飛ばし難を逃れたはずだが、車はしつこく私の上を往復する。
そして私は死んだ。
死んだと思ったが、運が良いのか異世界に転生した。異世界の女神
1
メリーナから、加護として神の力を一つもらった。
生まれ変わったが、父はいないし生んでくれた母親が、なぜか自
分の姉になった。私はどうやらいろいろな事情のありそうな家に転
生したらしい。しかも赤ちゃんだからか、貰った力は封印される。
どうなってるの?
そして大きくなって解る300年前との繋がり。
全てが運命の女神ラキシスの思い通りに進むのか?
女神は何のために生まれ変わらせたのだろうか?
300年の時を超え、ようやく時が動き出した。
これから何が起こるのだろうか?
1/2
1
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−−−−−−−−−
最高順位
書き直します。
ファンタジー14位
日間ランキング2位
hot2位
小説家になろう 異世界転移
アルファポリス
2/30
現在執筆停止
2
今日も大学で学生の論文をチェックしていた。最終電車ギリギ
プロローグ
リまで勤務し、ギリギリで最終電車に乗り込む。電車は遅れること
なく順調に駅に到着。先ほど駅を出て徒歩で自宅へ帰宅中に、ちょ
今日はなぜか前方に女性が1人。私の方が歩き方が早いのだろ
うど人通りが少なくなるところに差し掛かった時に気が付いた。
ういつの間にか距離が縮まった。明るい色の服、若い子が着る服だ。
もうしばらく行くと道が暗くなる。この時間このあたりの暗い道を
女性が歩くことはない。そこの手前の家なのだろうか。それなら良
ふと、私に気がついたのか女性が突然少し早歩きになった。少
暫く歩く、女性が街頭がまばらなところにさしかかる。
いのだが。
し距離が離れた。近づこうとするが更に女性の足が速くなる。スト
ーカーと思われたかも知れない。だがこの辺は危ない地域だ。こん
ちょうどまばらな街灯のあるところ。私は思い切って声をかけ
な時間に若い女性を一人にするとまずい。
た。
﹁お嬢さん、この辺は危ないから私からあまり離れないほうが良い﹂
女性はこちらを振り返って私を見た。私はそのまま続けて声をかけ
る。﹁私は横浜○○大学の教員です。安心してください﹂
そのまま近ずくと、あちらから声がかかった。
﹁先生!﹂
3
顔が見えた。すごい美少女だ。
ふと思い出した。確かに去年教室で見た。その時はもう少しおと
なしめの顔だった。大学では化粧をしていないのだろうな。
﹁えっと生徒かな?﹂
﹁はい、昨年数学を1年間﹂と少女は静かにうなずく。
﹁そうか、と言うことは現在2年生か。と、それはおいておいて、
どういう事情かは知らないが、この通りはこんな遅い時間に一人で
歩いて良い場所ではないよ。つい少し前に事件が起きたばかりの場
所なのだから。この辺に住んでいるなら知っているよね?﹂
﹁はい。今日に限って駅前にタクシーがいなくて。暫く待ったので
すが、週末はタクシー待ちがすごくて。でも先生で良かった。さっ
きから嫌な予感がして怖かったんです﹂
嫌な予感って解ってるなら気をつけるだろ。ほんとに。
﹁まあとにかく君の家はこの先なのかね?﹂
﹁はいこの道を後500mほど進んで左に曲がるとすぐの家です﹂
﹁解った。私の帰宅途中にある家のようだからこのまま送ろう﹂
﹁ああ良かった。正直怖かったから助かります。先生なら大丈夫で
すね。よろしくお願いします﹂
丁寧にお辞儀をされる。
暗いとはいえ、車が全く通らないわけでもない。一緒にいる姿を
ちらりと見られただけで噂になるのも厄介だ。多少の自衛もしなけ
ればと気が付く。
﹁私だから大丈夫って信用されるの嬉しいけれど。....まあ良
いか。
それでも他人が見ると変な誤解をする人もいるから、少し前を歩き
なさい。私はすぐ後ろを歩くことにするから﹂
4
少女はうなずき歩き出した。
10mほど歩くと後ろを振り返り私がいることを確認し、安心し
たのかそのままのペースで歩き出した。それから近くの交差点を過
ぎ200mも歩いた頃、後方から車の爆音が。それはものすごい勢
いで車が走ってきた。
嫌な予感って言ってたけどもしかして! 私は少女に向かって走
り出す。少女も車の爆音に気がつきこちらを振り返る。そしてびっ
くりしたのか立ち止まってしまった。車は一直線に彼女に向かって
いる。
車がぶつかる直前に彼女を押して車との接触を避ける。私はその
まま車に弾き飛ばされる。
わき腹が痛いがまだ生きている。
道路に横たわったまま首を持ち上げ車を確認した。
車は少し進んだ所で急停止したと思ったが、信じられないことに
そのまま躊躇なくバックしてきて再び私をひきにきた。体が動かな
い。その後、何度も体の上を行ったり来たり。
何回目か解らないがそのまま意識がなくなる。
5
転生します
気が付くと周りが白い空間にいた。死んだ自覚はある。ここは何
処だろう。
あの後、あの少女はどうなったのだろうか?
特にする事もないので人生を思い返す。
私の人生は恵まれていた。親切には親切がきちんと帰ってきた。
学生時代は、友達のために困りごとがあれば手助けしようと奔走し
ていたが、結局は自分が助けられていた。大学に入ってからは良い
師に出会い、博士を習得後もすぐに講師にひっぱり上げてもらえ、
給料を貰いながら研究に専念できた。
そして去年研究費用が増えもう少しで結果が出そうだった。
道半ばではあったが、毎日を全力で生きた私の人生は幸せだったと
言えるだろう。
しかし最後のあれは失敗だったな。やっぱり死んだんだよな。結
局、あの子があの後助かったのかも全くわからない。ところで、こ
こはどこだろう?いつまでここにいるんだ?
そんなことを思っていたら、目の前に綺麗な女性が現れた。女子
高生ぐらいの年齢に見える。さっき助けた少女かと思ったが、どう
も違うようだ。同じ黒髪だが雰囲気が違う。こちらの女性の方が完
璧な美少女かな?
﹁私はこの世界の神の一人、メリーナです﹂
突然現れた女性は、静かにそして丁寧な口調で話しはじめた。
6
﹁あなたは先ほど死んだのですが、ご自覚されていますか?﹂
﹁はい。確かに死んだと記憶しています。が、ここは何処ですが? 天国とか地獄ではなさそうですね。審判の部屋とか?﹂
﹁いえ、ここは私の管理する別世界に転移させるための準備部屋で
す﹂
﹁別世界? 転移?﹂
頭が混乱する。何を言っているか解らない。
そもそも死んだと自覚しているか確認してくるが、現在は五体満
足のような。
だが手を動かそうとしても動かない。どうもしゃべっていたと思
ったのも念話のような感じもする。そうかやはり死んでいるな。再
び死を認識する。
﹁それでは説明をしますね﹂綺麗な女性は、そんな私を無視して説
明を始めた。
要約すると前の人生を過ごした世界から、女神の管理する世界に
魂を引っ張り込み転生をさせているらしい。それは今から行く世界
へのてこ入れで、この転生者を送り込む作業を異世界の時間で10
00年続けているとのこと。異世界時間で、平均年1人を送り込ん
できたのだそうだ。
そして、私は記念すべき1000人目だと言った。
いままで沢山の転移者や転生者を送り込んできたが、70歳以上
まで生きた人がいない。力の譲渡の種類や量、記憶の継承など様々
なパターンをテストしてきたが、誰も寿命まで生き続けた人がいな
い。必ず、魔物に殺されるあるいは、毒殺、暗殺、事故などで死ん
7
でいるそうです。
いかに危ない世界でも、神の手がついていない自然発生の人間に
は老衰で死ぬ人間もいる。しかし、神が手をかけた人は天寿を全う
しない。その不思議を解析しているのだと言っていた。
なるほど、この女神、ようは暇をもてあまし自分の管理する世界
を使って実験をやっているわけだ。神が関与すると寿命が減る。生
命としては生きる力が強いはずにも関わらず成功例がない。
神の言い分は理解しがたいものがあるが、神なのだから人の想像
を超える何かがあるのだろう。恐らくは真の理由を隠し、伝えたく
ないことがあるのかも知れない。
とにかく、私は異世界に転生するらしい。
転移は今の体に加護を与え、記憶もそのまま、もちろん容姿のそ
のままで移動する。しかしこれから行く世界は、身分が重要視され
る世界。転移者は最初に身分を持たないので平民となり、かなり不
利になるらしく、この200年くらいは転移者を送ったりはしてい
ないそうだ。したがって今回の私も転生となるらしい。そしてより
長い生を歩めるケースにそって、死ぬ直前の記憶と前世の知識を持
っていける。
ただし前世の生活、親兄弟、自分の名前などは忘れてしまうらしい。
いわゆる記憶喪失ってパターンだ。
これは元の世界に戻りたい気持ちをなくすため。ただ死ぬ直前の
記憶を消さないらしい。
なぜかというと、その記憶を基に、次の人生で同じ過ちを犯さない
よう前向きに人生を楽しむ傾向があるからだそうだ。さすがに10
00人分のサンプルから得られた結論だ。一般に考えても妥当なと
8
ころだろう。
これから行く世界は、今の世界に対して科学力は数百年遅れた社
会とのこと。しかし、魔法があるらしいただ、魔法の解析はあまり
進んでおらず、現在の科学の置き換えにもならない程度にしか進ん
でいないそうだ。
﹁おー、魔法!﹂と生粋の理系人間である私には、ものすごく興味
のわく話だ。転生したら魔術学者を目指したいなあと、人生設計を
思い描いた。
﹁興味を持てそうですか。それは良かった﹂と言い、その後で女神
は一通り説明を終えると加護を与えますと言って暫く瞑想し始めた。
その間、私は何が起きるのかを楽しみにわくわくしながら待った。
が特に体に変化は無い。
というかそういえば今本当に体があるのか? と自分の姿をきょろ
きょろと見回していた。今のところ、生前のままのような気がした。
ただ手も足も動かない。そういえば首はどうして動いたのだ? 女神は目をあけ、話を続けた。
﹁あなたは記念すべき1000人目です。先ほど説明したとおり、
あなたへの加護は特別にすごいスキルをプレゼントしました。なん
と私達が使っている神の力です。それを一つだけですが与えました﹂
神の力。
それはチートだ。普通の人間から見て一つだけとはいえ神の力な
んて無敵じゃないのか。
﹁与えた力についてですが、自分の特性はステータスと念じると見
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えるようにしてあります。
これは転生者や転移者だけの特典です。だからあちらの世界の普通
の住人はステータスを自分で見ることができません。不用意にステ
ータスウィンドウのことをしゃべっでは駄目ですよ﹂と注意された。
私はステータスを確認してみた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
身体特性 測定できず。
特技
魔法 神の術補正により威力2倍
火魔法 レベル1
水魔法 レベル1
土魔法 レベル1
風魔法 レベル1
光魔法 レベル1 雷魔法 レベル1
回復魔法レベル1 結界魔法レベル1 空間魔法レベル1
浮遊魔法レベル1
特殊
特殊召還魔法レベル1
上位鑑定魔法レベル1
魔力の可視化レベル1
索敵 レベル1
祈祷 レベル1
固有スキル
神の目 無詠唱での魔法発動上位鑑定魔法魔力の可視化索敵
10
神の術 神属性を含む全属性魔法使用可能。 魔法効果2倍
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
固有スキルの所に︻神の目、神の術︼と書かれていた。あれ神の
スキルって1個じゃないのか?と疑問に思ったら、女神から、これ
はセットだと説明があった。神の術を使うには神の目が必要らしい。
また神の目も神の術がないと多少魔法が使える程度になるとの事。
なるほど、納得した。
そして最後の女神から話が。
﹁私があなたの庇護者だから、私を信仰する教会で祈ればたまにお
話ができるかも。あと神の力を持っていると言っては駄目よ。何か
の時に言って良いのは、全属性の魔法の才能だけよ。それでも驚か
れると思うけど、その程度の才能ならばたまにいるから問題ないで
しょう。あとは、記憶を取り戻した時にまた説明するから。それじ
ゃ行ってらっしゃい。新しい人生を楽しんでね。って暫くは記憶も
ないか。バイバイ﹂
笑顔で見送られあっというまに暗転。
苦しい 。 息できない。 叫ぶ ﹁オギャー﹂ あー 赤ん坊か?
意識がはっきりしない。
意識がはっきりしてきて見えた状況は、若い綺麗な女性に抱かれ、
おっぱいを飲んでいる自分。周りに少し年配の女性が一人。こちら
も綺麗な少し年配の女性だ。
おばあさま
いった気品のある女性。この3人に囲まれて
そしてかつて綺麗であったろう女性。老婆というには綺麗過ぎる人。
まさに
11
いた。
あれさっき暫く記憶がなくなるって言ってなかったか? 暫くっ
て産まれた直後にもう記憶がある気がする? なんで?
12
そんなこんなで1歳です
私の転生後の名前は、ジルベール・クロスロード。なんと前世の
名前は思い出せない。ほんとに記憶喪失状態だ。メリーナ様は暫く
前世の事を思い出さないって言ってたけど、前世があるって既に思
い出してます。でも言語が日本語ではないらしく、最初は言ってる
ことがわからなかった。
1歳ごろ、ようやく言葉が理解できるようになってきた。
最近意識がはっきり時間が徐々に増え、なんとなく周りの状態が
解ってきた。現在お乳はとっくに卒業し離乳食である。おっぱいを
飲んでるころの記憶は曖昧です。ほとんど覚えてません。
で、この綺麗な若い女性はアメリ。意識のある時にお乳をくれたの
はこの女性。他にはいません。
普段は、このアメリが私の面倒を見てくれている。金髪で緑色の
目とても綺麗な人だ。
年は18歳。なので17歳で産んだのか、できた時は16?若い。
巨乳でやさしさ満点の笑顔でいつもにこにこ。私が大好きな人です。
次に、よく見るのはあばあさまと呼ばれている茶髪で黒い色の目
をしている女性。
そして、朝と夜だけしか会わないがリリアーナと呼ばれる女性。
この人が母親らしい。金髪で緑色の目。アメリに良く似ている。見
た目は30歳ぐらいにしか見えながどうやら38歳らしい。先日、
リリアーナの誕生会があり年が解った。
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さてさて、1歳になる前のイベントです。最初に私が誰の名前を
呼ぶか、3人の楽しみであると夕食時に話していた。
期待されるととてもつらい。
この頃の話で解ったのが、生んでくれたのはアメリだがアメリは
現実と世間的ではどうも違
立場上は姉であった。アメリの母親がリリアーナで、アメリが私の
母親と思っていた。しかし、登録上?
うらしい。
詳しく事は話してくれないので解らないが、どうも内緒らしく本人
達も絶対に話をしない。たまたま侍女と思われる人たちの立ち話が
聞こえ、アメリが姉だと聞こえただけでそれ以上の事は解らない。
どうも父親も死んでいるみたいだし、なにやら色々な事情がある家
庭だと思われる。
リリアーナと朝と夜しか合わない理由は、彼女は父親の代わりに
ずっと領地の管理を行っているからだ。父親が亡くなる前からずっ
とこの領地の管理はリリアーナが行っている。昼間は役所に行き、
領主代理として仕事をしている。
私の育児にあまり手がかからなくなってきたので、そろそろアメリ
も午後から手伝いをする話もしている。
その2人はとても仲が良い親子だ。夜は、アメリと母は良く手を
つないで一緒のベッドで寝ている。私は、隣の小さなベッドで寝て
いるがたまにアメリと母の間でも寝てる。
が、朝になるといつのまにか小さなベットで1人で寝ている。いつ
移動したのか、全く記憶にない。
どうもたまに夜泣きをするようだが、その時は私の意識が無く覚
えてもいない。意識の無い時は、寝ている時かと思ったが普通に赤
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ちゃんとしての欲求時に大人の意識が薄れるようだ。
大きくなるに従って、徐々に意識のある時間が増えて行くような気
がする。
1歳前ではいはいが出来る。そして先日立てるようになった。し
かし、ヨチヨチと、移動ならはいはいのほうが早い。きっと全国赤
ちゃんはいはい大会があれば、私が1位だった自信がある。一度、
部屋からはいはいで抜け出し遊んでいるのを侍女に見つかり、侍女
よりもすばやく部屋に戻ってベットに入り込んだ。侍女から、ジル
ベール様、あんよが速いですね。と誉められた。
しかし、それ以後はしっかりと安全対策が行われ脱走はできなかっ
た。
そして1歳の私は気がついた。起きている時、気分が常に楽しい。
侍女の人があやしてくれると、前の大人の私なら笑わないだろとい
う何気ない笑顔が楽しくて、笑う。すると、侍女の人は、笑ってく
れたわ、と大喜び。すると、私がそれがまた楽しくて、また笑う。
それをみて、アメリとおばあさまが喜んでくれる。すると、私は
それが嬉しくと、立ち上がって二カーと笑ってみせる。キャッキャ
ト声を出して手を叩く。
そんな感じで、1歳児を楽しんでいた。
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名前を呼ばねば
1歳児の生活を楽しむだけではダメなのだ。それはさておき名前
を呼ばねばならぬ。赤ちゃんとして育ててもらっているのだ、儀式
をしっかりとこなさし、赤ちゃんの義務を果たさねばならぬ。転生
者だからほいほいと何でもやってしまっては、せっかく生んだ楽し
みが無くなり、兄弟ができないではないか。って父親いないから兄
弟は無理か。
さてこの数日悩んでいるのは、名を呼ぶ順番だ。やはり、いつも
一緒にいてくれるアメリを1番に呼ぶのが筋であろう。ここは簡単
だ。そしてこれはさっさと済ませよう。うん。今日やるのだ。
まずはアメリだけがいる時に﹁アー アーメ﹂と呼んだ。
すると、アメリがこちらを向いて、﹁ジルちゃん、今私の事を呼
んだ?﹂と聞いてくる。
うんとうなずく。
﹁もう一度、呼んでくれる。ねえ、お願い﹂そこまでお願いされて
は、もう一度やりましょう。
﹁アーメ、大好き﹂と声を出すと。
﹁ジルちゃん、私も大好きよ。ジルちゃん、ジルちゃん、愛してる
わ。﹂とチュウをされた。
初キッス。奪われましたが、小さい時はノーカウントですよね。
さて、最大のイベントはクリアして。次だ。しかし、おばあさま
とおかあさまの順番も難しい。
悩んだ末に、﹁おー おー﹂と、おばあさま、おかあさまの両方が
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同じ場所に固まってこちらを向いている時に呼んだ。自分のことを
呼んだーと二人ともいたく喜んでくれた。もう一度、もう一度と言
うので、﹁おー、大好き、おー大好き﹂と2人を見て2回言いまし
た。2人とも喜んでくれたので、なんとかクリアでしょう。
その後は、﹁アメー﹂﹁おばちゃ﹂﹁おかちゃ﹂で暫くは通した。
その後は都度適当に、そして1歳半ぐらいからは、きちんと呼んで
いる。普通の赤ちゃんの真似は完璧だ。
最近の毎日は侍女抱かれ外に出た後、おばあさまの手にひかれお
庭の散歩からはじめる。広い場所に来ると適当に走り回っている。
まだ、よちよち感もあり上手く体が動かない。たまに転ぶと待機し
ていた侍女がすぐに抱き上げてくれる。
おばあさまは、花の手入れをすることもあるが優雅にお茶を飲み
ながら私を見ている。そしてたまに昔の話をしてくれる。それで、
おじいさまが勇敢な戦士だったことがわかった。恋愛結婚で、若き
頃とてもかっこよかったらしい。
私は、おじいさまに良く似ていると何度もお話された。私は、両
目が金色だが、おじいさまは右目が金色で左目は青だったそうだ。
父親は、髪が茶、両目が黒でおばあさまの血が色濃くでていたそう
だ。
この話をする時はなぜか悲しそうな顔で説明をする。
日本人的には、自分に似てるのが嬉しいはずだが、やはりこの世
界では男性優位。きっと男性側に似るのが良いのだろうと思慮する
も良くは解らない。適当に聞き流して、適当に返事をしている。
そもそも1歳児が解る話ではない。
17
ちなみに、どうやらおじいさまも父親も両方とも亡くなっている
らしい。
さて、お散歩が終わるとアメリが面倒を見てくれる。絵本を読ん
でくれた後はお昼。そして起きたら一緒に遊んでくれる。ときどき
絵本を読みながら字も教えてくれる。どうやら私が既に文字を幾つ
か理解していることを知り、少しずつ教えてくれているようだ。
隠していてもばれるのだな。
幼児なりに毎日忙しく過ごしていたので忘れていたが、夜にふと
思い出しステータスを確認してみた。
身体能力のステータスは測定不能。そしてなんと特技を見たら能
力が封印されていた。
1歳児が魔法を使うのもおかしい気もする。きっと大きくなるま
では封印なのかなと、納得しつつも、本当に封印が解かれるのか心
配になった。
特技
魔法 神の術補正により威力2倍
火魔法 レベル1 封印
水魔法 レベル1 封印
土魔法 レベル1 封印
風魔法 レベル1 封印
光魔法 レベル1 封印
雷魔法 レベル1 封印
回復魔法レベル1 封印 結界魔法レベル1 封印 18
空間魔法レベル1 封印
浮遊魔法レベル1 封印
特殊魔法
特殊召還魔法レベル1 封印
上位鑑定魔法レベル1 封印
魔力の可視化レベル1 封印
索敵 レベル1 封印
祈祷 レベル1 封印
19
そんなこんなで、2歳になりました。
2歳の私は、絵本を読んでもらう日々を過ごしています。
魔法はぜんぜん使えません。なーんにもできません。
封印が解ける気配も全くありません。ファンタジーの世界にあこが
れていましたが、魔法を使うのはまだまだ先になりそうです。
最近お気に入りのお話は、メリーナ様を含めたこの地方の神々の
お話です。最初に星を作ったぽい所からはじまり人々を助ける話な
ど。創始の話では神様は全部で5人いたみたい。
国が違うとあがめる神様が変わるみたいで、この近隣国では5神
のうち3神があがめられている。
残りの2神は、良くない神様なので崇めている国はないそうだ。も
ちろんこの国は、3女神教を国教とし主にメリーナ様を崇めている。
なぜメリーナ様なのかは、この国の建国の王が崇めていたかららし
い。
3神はメリーナ様のほかアロノニア様、ラキシス様。
残りの2神は、邪神、冥界神といって名前が書いてない。
精霊や魔法といった独自の文化と神の存在は元の世界とかなり違
う感じがする。そして神なのに妙に人間臭い設定だった。
そして、この国の建国の話は興味そそる内容だ。
建国の王は黒髪、両眼が金色で、眼が私と一緒なのだとアメリが教
えてくれた。この国は、300年前に新しく建国された。建国の王
は、この国を3人の仲間と共に切り開き国の礎を作った後に暗殺に
より死亡している。うち2人は女性で建国王の王妃になった人。も
20
う1人は男性で隣の国の王になった。
おそらくこの始祖は、転移者だと思った。メリーナ様のお話どお
り、なかなか長生きできる転生者・転移者がいないのだろう。
建国王の話は突然大人から始っている。身分も元は貴族ではなか
ったようだ。歴史に名を残すほどの強い戦士が突然3人も成人して
から急に現れるのは少しおかしい。幼少期の話が一切ないというの
も怪しさ満天である。
もしかしたら4名全ての転移者かもしれない。
こんな感じで、アメリのお話を聞きながら色々と考える日々を過
ごしていた。
21
そんなこんなで、3歳になりました
相変わらず、能力が封印されています。
今日は3歳の誕生日まずは教会に行くそうです。日本の7・5・
3と一緒なのか、7,5,3歳で教会に行きお祈りをするそうです。
教会の祈りの場に行くと唖然としました。メリーナ様の像があり
ました。白い部屋で見た神様。よく似てます。若干像の方が胸が大
きい気がします。
さて、早速お祈りです。その為に来ましたから。一番左に神官様、
次におばあさま、私、おかあさま、最後にアメリが一列に並び事前
にならったお祈りのポーズをします。
私は、3歳まで大きくなれたことを感謝しメリーナ様にありがと
うございますと感謝を述べた。
その時目の前に暖かさを感じ頭に手が載っている感じがしました。
﹁こんなに早く会うことになるとは思ってませんでした。3歳なの
に、もう覚醒しているのですか?
普通は早くても5歳、遅くて10歳で覚醒するのですが﹂と驚きの
声が頭に響く。
目をつぶっているはずなのに目の前にメリーナ様が見えました。
﹃生まれてすぐに覚醒したけど。﹄と頭で考えたら通じたようだ。
﹁え、そんなに早いの。﹂
﹃あ、そういえば、考るだけでメリーナ様解るんでしたね。メリー
22
ナ様、お久しぶりです。あのときの説明では覚醒は後と言われてま
したが、生まれてすぐに覚醒してました。﹄
﹁それは、初めての事例ですね。どうしてでしょう。ふむふむ。
まあそれは良く解らないし、問題ないから放置。じゃあせっかく来
たし、用事を済ませましょう。時間の流れを変えているとは言え、
この世界に降臨した姿は見せるのは100年ぶりだから、あまり長
い時間は見せたくないのよね。手短に伝えますね。﹂
﹃いよいよ魔法ですね。この3年我慢してましたから。﹄
﹁魔法ね。うーん、ホントは魔法は解放しないのよ。でも3年も待
たせたならしょうがいないわね。でも魔法は小さい体には結構危な
い側面もあるのよ。だから、あなたの能力の封印は段階的に開放し
ます。
小さな体に危ない術は危険だから、段階的よ。命に危険が及ばない
能力から開放します。
本当は、7歳で開放が普通なのよ。でも、 3,5,7歳で徐々に
解放するわ。これは特別ですよ。﹂
﹃ありがとうございます。さすが絶世の美少女メリーナ様。感謝し
ます﹄
﹁誉めても、これ以上のプレゼントは無いわよ。ああでも一つ教え
てあげるわ。あなたが助けた子の事です。残念ですがあなたが死ん
だ後すぐに死んでしまいました。
﹃え、そうなんですか。
やっぱり、先に死んだからあの後に守ることができなかったせいだ
ろうか。
あんなに離れて歩かなければもっと上手く助けれたはず。
そしたら、その後もちゃんと助けることができたかも知れないのに﹄
﹁うーん、それはどうでしょうね。可能性はあったかも知れません
が。
23
殺意がすごかったから難しいとは思いますよ。
それと、彼女は彼女が希望する転生条件に合う先が見つかったので、
少し前に無事に転生させましたよ。
彼女とはあなたが大きくなればかならず会うことになるから、この
人生ではちゃんと守ってね。
それまで、自分を大切にするんですよ﹂
﹃わかりました。2度と同じ失敗はしません。
自分の馬鹿な行動で死なない、死なせないようにします﹄
﹁そうそう、まず第一に自分を守るのよ。それができるわよね。
それでは、封印の一部解除と加護を与えますので楽しい人生をすご
してね。
次に会うのは5歳よ。楽しみにしてますからね。ふふふ....﹂
ふっと気配が消え、私は祈りのポーズをやめて立ち上がった。
周りを見ると、なぜか神官様含め4人が口をポカンと開けてこちら
を見つめていた。
お母様は、すぐに正気に戻り神官様を連れて奥に行って話を始めま
した。
私は、ステータスを開いて確認。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
3500
−−−−−−−−−−−−−−−−
特技
身体特徴
総魔力量
その他ステータス 成長中で測定できず。
24
補正により威力2倍
レベル1 封印
魔法 神の術
火魔法
水魔法レベル1
土魔法レベル1
風魔法レベル1 封印
光魔法レベル1 封印
結界魔法レベル1 封印
特殊
回復魔法レベル1 封印
祈祷レベル1 封印
索敵レベル1 封印
空間魔法レベル1
上位鑑定魔法レベル1 封印
魔力の可視化レベル1
特殊召還魔法レベル1
加護
メリーナの加護 大 固有スキル 半封印
神の目 無詠唱での魔法発動、上位鑑定魔法、魔力の可視化、索敵
神の術 神属性を含む全属性魔法使用可能。 魔法効果2倍
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−−−−−−−−−−
水、土、空間魔法が開放。特殊召還と、魔力の可視化が使える。
状態異常の大軽減
と記載があった。さらに全体を
メリーナの加護について、疑問に思うと、説明が出てきました。そ
れによると、
確認しようとしたところで、アメリが声をかけてきました。
25
﹁ジルちゃん、何とも無い? 大丈夫に決まってるけど、大丈夫?﹂
と心配そうに。
メリーナ様は、降臨が100年ぶりと言っていたけどどうやら周り
のみんなも見えてたみたいだな。
﹁えっと、アメリも神さま見えたの?﹂
﹁私の勘違いじゃなければ、ジルちゃんの目の前にメリーナ様が降
臨されて、頭をなでなでしてた気がするの﹂うーん、どう答えるべ
きかわからん。
﹁うん、メリーナ様が、がんばれって言ってくれた﹂とかわいく答
えた。よし完璧?
﹁そう、良かったね﹂
そして、アメリは、かがみ込み
﹁あなたが、女神様から祝福されているすごい運命を持った子って
わかったけど﹂
一息置き
﹁私を置いて勝手に遠くに行かないでね﹂と、やさしく抱きしめら
れた。
今の言葉で、自分はもしかして普通ではない能力持ちと言うのが
すでに認識されているのか?
おかしいな。極力普通の子どもだったはず、魔法も使えないし絵本
を読むのが少し早かったぐらいで普通にしてたつもりだ。もしかし
て転生者とばれているのだろうか。私はどきどきしながら、抱きし
められたまま何もできなかった。
アメリから開放された頃、母が帰ってきて皆で家に戻った。帰り
26
の馬車で母が言ったことは
﹁神官様も口止めしてきたから、今日のことは口外してはいけませ
ん。ジルちゃんも良いわね﹂と。
その後、家に着くまで馬車の中は無言だった。
3歳の誕生日の夜、ご飯は豪華だった。おばあさま、母はいつに
なくワインを多めに飲み終始ご機嫌であった。アメリは、楽しそう
にそれを眺め私をひざの上に抱きしめたまま過ごした。
私はそのまま眠くなり気が付いたら朝。1人部屋でベッドの中だ
った。
本日から、一人部屋で1人で寝ると聞いていた。アメリは女の子
だから母と寝るけど、男の子は1人で寝なさいと。ちょっと寂しい
ので駄々をこねて困らせるつもりだった。
しかし最初の記念すべき夜は全く意識のないまま駄々をこねるこ
となく、一人で寝てしまったようだ。
しまった、意図せずまたまた良い子をやってしまった。
今日の夜駄々をこねても良いのかな?1人で寝れたのに、わがまま
言えないなー。
まあ、ちょっと早い気もするけど1人部屋を堪能することにしま
すか。
27
美少女アイドル
私は大学2年生。
田舎から東京に来た。
一人暮らしを始めたのは大学1年からだ。
田舎にいる時は黒縁メガネをかけた勉強ばかりやるダサい子だっ
た。だが、そのおかげで東京の国公立の総合大学に受かった。
私は、親元を離れ一人暮らしになると最初にコンタクトレンズを
作った。次に美容院にいってストレートパーマをかけた。
鏡を見ると、あのダサい少女はどこに行ったのか、これが自分か
と信じられない綺麗な女の子がそこにいた。さすが東京の美容師、
ここまで変身できるとは魔術師か?
そして最新の化粧品はすごい。
次に、この姿に合いそうな服が必要だった。高校までは制服とジ
ャージですごしていた。
高い服は買えないので安めの服を着こなさねば。
とにかく服が全く無かったので、ユニ⃝⃝に言ってそろえたがお
金が無くなった。
食材も高い。
東京暮らしはとにかくお金がかかる。
私の家は、貧乏と言うほどではないがそれほど余裕がある訳でも
無い。
28
お年玉で貯めた一人暮らし用の軍資金はあっと言う間に枯渇した。
アルバイトでもしないと仕送りだけでは足りなかった。
早速アルバイトを探しに土曜日に町を歩いていたら、こんな私に
アイドルのスカウトが声をかけてきた。
もちろん詐欺だと思い、無視していたが流行のグループアイドル
の誘いで、普段スカウトをする変な人では無く、たまたま可愛い子
を見かけたから声をかけたと言って名刺をくれた。
大手のプロダクションの偉い人だった。
まだ騙されているようで不安だったので、後日会社の受付に電話
するとちゃんと本人に繋がった。
結構時給が良かったし、一度だけと大手の事務所に足を運んでみ
た。偉い人が沢山来て、すごく褒めてくれるので嬉しかった。そし
て、プロダクション契約をすればレッスン代も無料だと、まず練習
に参加してみた。
これが意外に楽しい。バイト代も必要だったので、契約した。
すぐに私のファンができてしまい、あれよあれよと最前列に。偉
い人に言われた通り、すごく早く人気が出た。時給もどんどん上昇。
それでも学業はおろそかにせず二足のわらじで頑張る。
そして、大学2年の春。本当にそこそこ人気が出てきた。この頃に
は、ソロデビューの話も出だした。
うーん、学業も大事だしどうしようと悩む。
プロダクション側から、ストーカー被害にあった子がいるから、
来月から自宅までの送迎をしてくれることになった。ほんとはすぐ
29
に送迎を始めたいけど契約が来月からしかできないと残念がってい
た。
それまでは気をつけて、なるべくタクシーを使ってと。領収書を
だせば処理するから、ほんとに気をつけてと念をおされた。
それから数日後のことだ。今日は、プロダクションとの打ち合わ
せがあり、少し遅くなったので終電になってしまった。
駅に着き、タクシーを拾って帰ろうと思ったが、タクシー乗り場
には長大な列が。まっていたら1時間以上はかかりそうなぐらい並
んでいる。駅から家まで歩けば30分ほど。
タクシーを待っている間に家に着きそうだったので、歩いて帰る
ことにした。
そして、先日 事件があった通りに来た。周りに気を配ると、後
ろからつけてくる人の気配を感じて少し早歩きで抜けようとしたら
声をかけられた。聞き覚えのある声だったので、振り向いて見たら
去年大学の数学講座を担当していた先生だった。
私の大学はご老人ばかりだったので、若い独身のこの先生は女子
の中では人気の高い人だった。教え方がすごく上手だったので、苦
手の数学も急に点数があがったお気に入りの先生だ。
2年になると、文系の私が取れる教科には先生の名前が無く残念
に思っていた。3年の選択科目で選ぶチャンスまで我慢と思ってい
た。
久しぶりに少しだけど先生と会話が出来て嬉しかった。でも、長
々とは立ち話もできず私が前を歩いて帰ることになった。
少し進み、気になり後ろを確認するとちゃんと付いてきてくれて
いた。
自宅前に着いた時に、お礼と言って先生を部屋に誘ったらどう答
30
えるだろうか考えてた。しかし、そんな事を考えたことが恥ずかし
くなった。
その時、突然に爆音が聞こえた。
後ろを振り返ると、車が爆走してきた。何も考えられず体が膠着
する。身動きが取れない。
走って近づいてくる先生。
ぶつかる寸前に、先生に押されて事なきを得るが、車は往復し先生
を完全にひき殺した。
目の前で、起きた悲惨な現場が理解できずそのまま立ち上がるこ
ともできず、動けなかった。
車のドアがあき、人が出てきた。
同じアイドルグループ、立ち位置が私の真逆の子を好きなはずの
人だ。昨日もその子と裏で話しているのを見かけた。間違いない。
なぜ、ここにいるのか解らなかった。
男は、私に向かってしゃべり始めた。
﹁リリーにふられた。リリーはもう手に入らない。でも、リリーの
ことが好きだ。あきらめきれない。
死のうと思ったけど、せめてリリーの為になることをして記憶に残
りたくてね。リリーの邪魔になるあんたを殺しに来た﹂
﹁私を殺すようにリリーが頼んだってこと?﹂ と 恐る恐るたず
ねる。
31
﹁リリーは天使だ、そんなことを言うわけがないだろ。これは僕が
決めたことさ。
リリーがあんたのことを恨んだりするわけないだろ。
でも解るんだ。あんたがいるとリリーは有名になれない。
だから僕はリリーのために君を殺してから、僕も死ぬことにしたん
だ﹂
﹁そんな、いやよ。死にたくない。 それに先生は、関係ないでし
ょ。どうして殺したの﹂
﹁君を殺すのに邪魔だったからだよ。さあ、死んでくれ﹂
そういって、私の胸に包丁を刺した。何度も何度も刺した。痛す
ぎて痛さが解らない。苦しんだ時間は数秒だったのかかもしれない
が無限に感じた。
そして、気が付くと、白い空間にいた。
目の前に綺麗な女性が現れた。
突然に現れた女性が静かに、そして丁寧な口調で話しはじ
﹁私は、この世界の神の一人、メリーナです﹂
めた。
﹁あなたは、先ほど死んだのですが、ご自覚されていますか?﹂
﹃ここがどこかわかりませんが、そうですよね。死んでますよねや
っぱり。
で、ここはどこですが?﹄
そして、メリーナ様の説明を聞いた。先に死んだ先生も転生した
らしい。いつか必ず会えると教えてくれた。
死んだけど、また先生に会える。ちょっと嬉しい。必ずまた会う。
生きる希望だ。
32
どんな能力が欲しいか聞かれたので、先生を生き返らせるような
魔法が使いたいと言ったら、死んだ人を生き返らせる魔法は無いけ
れど、大きな怪我も治せる力をもらえるらしい。
先生と生まれた時から少しずれるが5年以内で高い能力が持てる子
供に転生させると約束してくれた。
こうして、私は別の世界に転生した。
33
リリアーナ・アインスロット
リリアーナ・アインスロットは、子爵家の末子だった。リリアー
ナは幼い頃から聡明で、家族からは男性でなかったことを残念がれ
ていたが、本人は全く気にしていなかった。
貧乏ではあったが、長兄をはじめ、多くの兄弟の支えもあり、1
6歳で貴族が標準で卒業する高校をトップの成績で卒業。その後、
学長の推薦で王宮の文官に採用された。
さらに文官の中で、成績の良い人が官僚候補として、政治・経済大
学へ進学する。ここでも2年間勉強に励み、大学をトップの成績で
卒業。
この国は、女性でも王宮の文官は仕事をすることができた。リリ
アーナは男に混じり、遺憾なくその才能を発揮した。そして、数々
の伝説的な偉業を成し遂げ、同期の男子を抜き去り、あっと言う間
に昇進した。
また、その美貌から多くの男性からの求婚を受けるも、彼女はそ
れらを無視し仕事に打ち込んでいた。
美人で頭脳明晰さらに巨乳と、彼女の周りには沢山の男が押しかけ
てくる。しかし、リリアーナは、都合の良いように情報だけをかき
集め、仕事をこなす。まさに鉄壁の女であった。
しかし、いつまでも結婚から遠ざかっているわけにもいかず、リ
リアーナが25歳の時に、リリアーナを見かけて気にいったという
伯爵家の長男と見合いをすることになった。
34
相手は年下の20歳。容姿は長身でかっこよいらしい。軍隊に所
属する小隊長だ。
20歳で小隊長は早いほうらしい。周りの子達からはうらやましい
と言われたが、リリアーナは年下に興味が無かったので乗り気では
なかった。
ところが、お見合いの当日、一目ぼれで恋に落ちた。
残念ながら見合いの相手アナベル・クロスロード︵20︶ではない。
その父親のカイン・クロスロード。右眼が金の優種な血筋の人だ。
カインは、30歳までは軍隊に所属していた。隊長として参加した
魔物の討伐中にS級指定の魔物が2体襲ってきて、隊のメンバーで
倒したものの、重傷者多数。カインもその時に左足の先と左手のひ
じから先を失い、除隊した。ミルワルド侯爵家の次男であったカイ
ンは、S級2体を討伐した功績を評価されクロスロード伯爵家を受
け継ぎ領主となった。
この世代は、たまたま金眼を持つ者が多く金眼であっても侯爵家
以上になれる訳では無かった。
そのときに同じ隊で怪我で除隊したメンバーを引き連れ、現在の
クロスロード領土の発展に貢献した。
話を戻すと、リリアーナは、アナベルでは無く残念ながら父親に
一目ぼれしてしまった。
もちろんこの縁談は実らないだろうと思ったが、母親つまりカイン
の妻と話をするうちに可能性が見えてきた。
実は、母親は、アナベルが髪も目の色も自分に似たことを恥じて
いるようだった。
母親のレイルーラは、元はハブスブロン侯爵家の娘で父親は左目が
金眼であった。なので二人の子どもには、100年ぶりとなる両眼
35
が金。悪くても片眼のどちらかが金であることが期待されていた。
ところが息子のアナベルは金眼どころか、父親から目も髪も受け
つがなった。アナベルが子供の頃は、親戚中から不貞でもしたので
はないかとひどくいじめられたようだ。
さすがにアナベルが大きくなると、長身に、剣の才能など、父親
の血を受け継いでいることが解ってきているが、昔のしこりはなか
なか解消されないようだ。
この話を聞いて、私は母親に交渉を持ちかけた。いわく、息子で
あるアナベルとは結婚するが、最初の3年はアナベルとはこっそり
避妊をし父親であるカインと結ばれたいと。
うまくいって、私から金眼の子が生まれれば世間は、アナベルに
父親の血が流れていたことの証明となり、昔、不貞とののしった人
たちを見返せるのではないかと。
この世界では、血の濃いほうの子を生むのは良くあること。なの
で、父親と行為を持つことは特別なことではない。こういう父親が
金眼で子がノーマルなケースでは、相手側から交渉があってもおか
しくない状況であった。
母親は、裏に父を呼び出し今の話をしている。不機嫌そうな顔を
したものの、私がにっこりと微笑むと、照れた顔をしたあと難しい
顔で息子を見ていた。
結局、この交渉は息子には内緒で合意された。
息子のアナベルが、私を気に入っており、交渉が成立しなければ
息子の望みも叶わない。
断る選択肢は無かった。
36
それから、計画通りに実行されたが、残念ながら私には子どもで
きなかった。
ただ、私の文官としての能力は遺憾なく発揮でき、クロスロード
家の財務状態は一気に改善された。
私の領地での活躍を聞き、王都では私を慕う女性文官の希望者が
増えたらしい。王都では、女性の地位向上への貢献度が高いと、当
時の王妃から表彰を受けたぐらいだ。
子はなかなか生まれぬが、充実した日々を過ごしていた。
補足追加 2017/01/03
領主経営は、役場に行って仕事をします。
領主館ではあまり仕事をしません。
クロスロード家の管理する役場も50名以上の文官が働いています。
文官とは別に警護部隊も30名ほど勤めています。
領主は、イメージ的に伯爵が市長、侯爵が県長、複数の県をとその
中央の県をまとめるが公爵と思ってください。
王都の東側がハイルデン公爵領
王都の西側がアレクサンドロ公爵領 メルミーナ公爵は全体を見ているので自分の直轄地だけです。
メルミーナは宰相です。
その下に財務省、建築省などの省長は、領地無しの侯爵、伯爵が行
います。
彼らと、領主が貴族院の構成メンバーになり、大きな物事を決める
37
ときに貴族院で判断します。
ただし遠方の領主は王都での貴族院の会議に参加できないので、変
わりに代理を送り込んでいます。
代理は、誰でも良いわけではなく、国の文官試験に受かった人でな
ければなれません。
子爵で領地を持つ人は少なく、子爵、男爵は基本的に文官や騎士、
魔道士です。
長男以外の貴族、主に男性は文官や、騎士、魔道士になり、政府、
軍に入ります。
役職、功績によって、子爵、男爵をもらえます。
リリアーナの話に戻ると
リリアーナは、結婚してすぐに領主代理として役所で働いてます。
父親のカインが亡くなる前に、領地管理権限をリリアーナに引継ぐ
証明書を記載し、彼女だけで領地の管理が出来るようにしていまし
た。
それは、カインが亡くなった後も有効で、引き続き役所に通い勤務
を継続しています。
領地の剥奪がない限り、前伯爵の決めたことは有効です。
彼女が領地管理を行いようになってから、領地の経営状態はさらに
良くなり、領民の生活も向上しています。
リリアーナが結婚して国の文官を辞めた後、彼女をしたって数名の
文官、男女含むが移動してきています。
領地の経営状況が良くなると人口が増え、それにあわせて文官が不
足してきます。
結局、リリアーナは不足している文官をメルミーナに頼み管理能力
の高い文官を数名貸して貰っていました。
このように、メルミーナは、ほぼ全ての領地に自分の配下を置き、
38
領地が正しく運営されているか確認していました。
39
アメリ・アインスロット
結婚して2年。気晴らしに一度実家に帰った時、長兄が侍女に手
を出して生んだ子が、長兄にいじめられているのを発見した。
長兄は、不貞を責められ、妻に対して立場がなくなり、結局、子
にあたっていたのだ。貴族の妻であれば、子を作った侍女を褒めこ
そすれ、責めるなどありえない。
兄の妻は、商人の娘。
平民だ。
貴族教育を受けずに、顔だけで選ぶからこういう事になるのだ。
平民出身の妻は、このイジメを止めず、煽っていた。
子供の体に無数のアザがあり、怖がって震えていた。抱きしめて
あげると声にださず、すすり泣きしていた。
あまりの扱いに怒りがこみ上げ長兄に文句を言って、引き取った。
それがアメリ・アインスロットだ。
アメリを引き取った時子供のいなかった旦那はすごく喜んだ。
しかし、旦那が近づくと震えて動けなくなるのを見て驚いていた。
事情を聞いた後も、すぐに引き取りに賛成してくれた。
父も母も、反対は無く、特に母はアメリを可愛がってくれた。
アメリの教育は私が直接教えた。貴族としてのマナーや、姿勢、
心構えなどは母が指導してくれた。
アメリは、父のカインとも仲が良かった。カインが得意な算術は、
彼が教えてくれたので、その時は、よく3人で話をした。
旦那とアメリとゆっくりと友好関係を築き上げ、アメリが10歳
の頃には親子のように触れ合えるようになっていた。
40
私とお父様との関係は3年たっても子どもができずその後アナベ
ルとの行為の時も避妊はやめた。
しばらくは、父、息子の両方から寵愛を受けるも、残念ながらであ
った。
5年たって父様からの進言で、その関係をやめることになった。
父カインはリリアーナが37歳の時に、はやり病で突然亡くなっ
た。
アナベルは、喪の服した1年後に伯爵家を継ぐことになっていた。
悲しみの中ではあるがアナベルが伯爵家を継ぐならば、いよいよア
ナベルの子供が必要である。
リリアーナは自分は子供ができないから、アナベルに妾を取って、
子をなすように進言する。
アナベルは、初め抵抗していた。
しかしリリアーナがしつこく言うので、アメリならば抱けると言っ
てきた。
アメリは、男性恐怖症の認定を受け、学院に通うことは無く、試
験だけで卒業できた。
もちろん主席の成績であったが、学院の授業を受けていた訳ではな
いので公にはなっていない。
そしてこの時、アメリはこの時成人の16歳になったばかり。子を
産める年にはなっていた。
リリアーナは驚いた。
41
我が子同然に育ててきたアメリを、妾にするなど到底許容できる
話ではなかった。
しかし、アナベルは、リリアーナ以外は愛せないが、アメリはリ
リアーナに似ているから愛せるかも知れないと。
悩んだが、アメリの気持ちが一番大切だ。
アメリは小さい頃のいじめのせいで、そもそも男性恐怖症だ。
この10年の生活でアナベルとの中は良いが、親子のような関係。
果たして子作りができるとは思えなかった。ところがアメリと話を
したら、リリアーナが望むなら、アナベルなら大丈夫だと。
でも、二人きりにはなりたくないから、必ず隣にいて欲しいと。
なんて母思いの子でしょう。私はそのいじらしさに感動しました。
子が出来たら、正式に子供として養子に迎える。そう約束しアメリ
に頑張ってまらいました。
結果、僅か、3ヵ月後には妊娠が発覚。
あらためて、自分が子をなせなかった体であった事を認識し女性
としての自信を失うも、よくよく考えると自分は生粋の文官。そん
なことよりも自分のやれることをやらなければと、自分を奮い立た
せ準備に奔走した。
子どもが8ヶ月に育った頃、大規模な魔物の群れが発生し、アナ
ベルは討伐隊を率いて討伐に向かった。
この頃アナベルは、中隊長であった。伯爵の地位と共に、大隊長
が目の前だった。
42
しかし、アナベルは帰ってこなかった。
今回は2中隊で向かった討伐隊だったが、2割が死亡。3割が重軽
傷と、半数近くの損害が出た。
複数個所に同時に魔物が出没したせいで、戦力を分散せざるを得
なかったために、一番運の悪い隊となった。
それから2ヵ月後、ついに待望の赤ちゃんが生まれた。
それも両眼が金色と言う、皆の希望に答えた子供が。
43
金眼の子
生まれた子は金眼だった。それも両目。
私と母レイルーラは狂喜した。しかし、喜ばしい反面、とても危険
な状況であるといわざるを得ない。
王宮で働いていた時に見た資料で、過去生まれた両目が金眼の子
は幼少期にことごとく殺されている。そして記録上は、この300
年で7歳まで育った両目が金眼の子はいない。そしてこの100年
は、生まれてすらいない。
この子の目が金眼であることは伝えなければならないが、両目が
金眼は伝えるべきではない。
そこで、おじい様の実家には右目が金眼と。おばあさまの実家に
は、左目が金眼であった事を伝える手紙を書いた。反対の目も金と
書く必要は無いのだ。
手紙が届いた後で、両侯爵家の派閥元になる公爵家から膨大なお
祝い品が届いた。この近隣の領地の代表管理の侯爵家、おばあさま
の実家である侯爵家を飛ばし、その上の公爵家から祝いが届いた。
さすが金眼。雲の上の存在だった公爵家にまで届くとは。
金眼を祝し、暫く必要になるであろう子育てグッズがすべて揃っ
た。それも一級品ばかりだ。とても伯爵家が使う物では無い。
両金眼のジルベール出生届けと同時に、アメリも自分の子どもと
して養子に入れた。
44
頑張ってくれたアメリに報いるためだ。子どもを生んだときもそ
うであったが、アメリはこれで戸籍上も家族になれたことをとても
喜んでいた。
家族になった事をつげると、おかあさまと呼んで良いのか、小さ
な声で尋ねてきたので、そうよ、呼んで頂戴と告げると、喜んで﹁
おかあさまと﹂と呼んで抱きついてきた。
しかし、わが子を見つめ、母ではなくこの子の姉になることは、
複雑な思いであったようだ。
1ヶ月ほどたった頃、金眼の確認におじい様の系統であるハイル
デン公爵本人と部下がやってきた。近くの教会に設置せれている古
の転移門を使い、そこから急ぎ馬車でやってきたのだ。
ハイルデン公爵がやってきた時、ちょうどジルベールが寝ていた。
それでも、お構いなしに﹁では赤子を見せてくれ﹂とずけずけと
家に入り込み、寝ているジルベールの右目を強制的に開いて目を確
認し、にっこりと微笑み。
﹁あなたは、確か元文官でメルミーナ公爵の系統だったかな?﹂
﹁はい﹂と返事をすると。
﹁そうか、普通は領主が亡くなり、その後継となる子が成人してい
ない場合、生存側の系統で後見になるのが習わしだが、この子は右
目が金眼。我が一族の系統になる。そしてこの領地も私の管理領域
だ。後継には私が立つと申請しよう。なに、心配することはない、
悪いようにはしない。成人するまでもこの領地が取り上げられるこ
とがないように手配しよう。
ジルベールが成人後も、伯爵ではなく、侯爵の身分をあたえらるよ
うに準備もするから、安心して任せてくれたまえ。では丈夫に育て
てくれ﹂
45
と一方的に告げ、あっというまに去っていった。リリアーナは領
地のこともあり、ハイルデン公爵家に後見人を頼むつもりだったの
で予定通りにことが進み安心した。
46
想定外
リリアーナは計画通りハイルデン家の庇護を得たので、安心しき
っていた。
ところが予定外の事が起きた。数日後おばあさまの系統である、ア
レクサンドロ公爵も、同じく訪問してきた。
領地的に、ここに直接乗り込んでくるとは予想もしていなった。
そして、ハイルデン公爵と全く同じ行動をとる。
そう、今度は左目だけをあけて確認したのだ。
急なことでアレクサンドロ公爵家の事を調べていなかったために
気づいていなかった。
アレクサンドロ公爵家の系統では、直系男児に金眼持ちがいるが、
最近、系統の侯爵家に金眼の子が生まれていなかった。
﹁ハイルデンの系統は、先日侯爵家にも金眼の子が生まれた。
この子は、左目が金眼なのだから正当なアレクサンドロ家の侯爵領
に行ってもらうのが良いはずだ。
私が後見人に代われるように進言する事にする。
だが今は子が生まれたばかり、急に環境が変わるのは良くない。
大きくなるまではこの領地で過ごせるようにしよう。
あと、良い医者をこちらに派遣しよう﹂と、言って帰っていった。
リリアーナは、この予想外の対応に、思った。 やばいかも。
47
この時、メルミーナの性格を知るリリアーナは、もう少し彼の対
応を予想すべきだったが、この頃仕事が忙しく余計なことを考える
余裕が無かった。せめてあと1人文官がいてくれればだいぶ楽にな
れたのだが。
48
戸籍管理
文官をまとめるのは宰相を勤めるメルミーナ公爵家を中心とした
人々だ。全ての貴族が文官の試験を受けることが出来る。平民でも
頭の良い子は受けれるのだ。
ハイルデン公爵家の派閥は武官。
アレクサンドロ公爵家の派閥は魔道士。
そしてメルミーナ公爵家の派閥が文官。
これが一般的なコースだ。ただ、最近は血の混じりも多く、割と自
由に職業を決めている。
さて、ここは、王宮内の戸籍管理部署。貴族は、全て戸籍の登録
をしている。戸籍には、個人を識別するために、最低限の情報とし
て髪の色と目の色を登録している。
そして、先日提出された戸籍を見て、担当のライラは困惑していた。
なにに困ったかといえば、ジルベール・クロスロードの戸籍登録
だ。ハイルデン公爵家から提出されたのは、金髪。右が金、左が青。
アレクサンドロ公爵からは、金髪。右が青、左が金。これが、別人
ならば良かったが、どう見ても登録上は同一人物。しかもこれが、
普通の貴族からではなく、最高位の公爵家から出されている。それ
が意味するところは、両家が後見人として立候補していると言うこ
と。
通常、後見人は、1人だ。承認と共に、後見人としての登録もす
るのだ。
こまったライラは、宰相であるメルミーナ公爵に相談した。
戸籍登録の責任者は、侯爵の爵位持ちの男性だったが、ちょうど
49
1ヶ月前に引退していた。暫定で中間管理職の伯爵がいるが案件に
公爵家が関わっているので中間を飛ばし最高責任者のメルミーナ公
金眼が関わる案
爵に相談に行ったのだ。メルミーナ公爵は、宰相なので大変忙しい。
今回の案件も15分の相談が1ヶ月待ちだった。
件として重要度大で申請してようやく相談が出来た。
最近の世代は急激に継承可能な男児の金眼が減っている。現在の
王の子では、ルカ王子、マクシミリアン王子にと立て続けに2人。
更に生まれたばかりの王子と王家だけは安泰であるが。
ハイルデン公爵家も、アレクサンドロ公爵家も直系に金眼の子が
いるが、親戚の金眼はかなり減った。最近では、数年ぶりにハイル
デン公爵家の親戚にオズワルト侯爵家に男子が生まれたばかりだ。
王家と、公爵家を残し男女共に金眼の子供が急速に減っている。
貴族全体で10歳までの金眼は数名しかいない。
先ほどの2公爵家の系統は、公爵家の領主は全て金眼が主となっ
ている。国を支える2家にとっては、建国より続く金眼が主となる
必須用件なのだ。今までも養子を取り続け、2公爵と16侯爵家が
金眼を持つ者を優先的に継承させていた。それだけ、金眼の持ち主
は希少で重要案件であった。なぜなら今まで金眼持ちは漏れなく武
もしくは魔術のどちらかに秀でた才能を持っていたからだ。
唯一メルミーナ公爵系だけが文官としての才能が優先されていた。
というわけで、ライラは自分の権限を越えたこの面倒くさい案件を
メルミーナ公爵に放り投げた。
まさか、この後すぐに転勤になるとも知らずに。ライラの平凡な
日常がもうすぐ終わりを告げようとしていた。時が動き出したその
50
瞬間だったが、ライラは単に面倒くさくて何も気がついていなかっ
た。
この案件をメルミーナ公爵に見せると、すぐさま、自分以外が見
ていないか聞かれた。もちろん見せてはいない。仕事ができないラ
イラと同僚からは言われているが仕事が丁寧なだけだ。メルミーナ
は、少し考えたのち幾つかの手紙を書き、部下への資料集めの指示
を出した。そして資料が揃う時期を考慮しメルミーナ様自身が確認
に行く予定を立てられた。
辺境の地への現地確認には転移門が使われる。転移門の利用は高
位の貴族の申請が必要だ。申請さえあればライラ単独でも使えるが
今回はメルミーナ自ら確認に行く。もちろん担当者であるライラも
行く。現地での移動に関して、馬車の手配や事前に面会する文官へ
の連絡もライラが準備をした。ただ、今回やたらに丁寧な検査にな
っている理由までは知らない。
現地に行き、目を確認すれば終わりなだけではないか。どちらか
が間違っているのだろう。ライラの頭の中には両方が金眼であると
言う前提は想定出来なかった。疑問には思いつつも言われた仕事は
キチンとこなした。
そしてようやく準備が完了し、移動日となった。前日までクロス
ロード家には連絡を入れていない。メルミーナの配下から、前日に
急に調査に向かうと書かれた手紙を届けさせる。それにはリリアー
ナに朝から家で待つように書いてあった。
そして移動日。ライラも一緒について行く。そして領地に到着。
メルミーナはまず配下に会いに役所へ向かう。情報を集め口止めを
徹底する。中には文官全体への指示が可能な役職の人もいた。
宰相とはいえ、普通は地方の領地にいる文官への口出しは本来ご
法度。というか普通は出来ない。しかし、このクロスロード家はや
51
たらにメルミーナの配下が多い。しかも重要職に何人も。それだけ
メルミーナが目をかけていた領地である証拠。
メルミーナは、一通りの必要な情報を入手し終え、ようやくジル
ベールのいる領主館へ移動を開始した。
この時点でも勘の鈍いライラは、ノンビリとしていた。メルミー
ナについてジルベールの元に行き、両目が金眼のその少年の存在を
知るまで彼の生活は平和に満ちていた。根はまじめで、仕事の重要
度のつけ方仕事を進める速度もライラは特に問題は無い。だがこの
感の鈍さ。一度考慮から漏れてしまうと、後で想定するケースを増
やそうともしない。これがライラの欠点。
だが、ライラはリリアーナの下につき、リリアーナの仕事を直接
見ることによって、変わる。
彼は、10年後に立派な文官に生まれ代わり、メルミーナの元へと
戻るのだ。
52
メルミーナ公爵の訪問
本来登録申請の不備は手紙で済ませる案件だ。しかし今回は公爵
家が関わる案件。
そのままミスで済ませることはできない。したがってライラが直接
確認に行く必要がある。
が、なにせ場所が遠い。馬車で急いで片道1週間。道も悪い中1日
10時間も馬車に乗れるわけも無くおそらくは2週間はかかる工程。
転移門がなければ、ほかの仕事がとまってしまう。ライラなどの下
級文官には、おいそれと転移門の申請は使えない。
そういう経緯もあり、ジルベールの金眼の件はメルミーナ公爵に
伝わった。
そして、メルミーナと部下のライラが確認に行くことになった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−−−−−−−−
2人の公爵が来たが、その後トラブルもなく3ヶ月が過ぎた。リ
リアーナはもう大丈夫だろうと安心しきっていた。まさかそこにメ
ルミーナ公爵自らが乗り込んでくるとは思っても見なかった。
昨日、役所に勤めているメルミーナ様から借りている部下が明日
メルミーナ様が来訪されると連絡が来た。明日は1日家で待つよう
にと。
リリアーナは、突然の来訪に驚いた。
そして、当日。午前の終りぐらいにメルミーナ公爵が訪問してき
た。家の者総出で出迎え、中へ入ってもらう。
メルミーナからの挨拶があった。
﹁久しぶりですねリリアーナ。文官を辞めて、10年ちょっとかな﹂
53
﹁はい、もう13年ほどになります﹂
﹁このたびは、子どもが生まれたそうでおめでとう﹂
﹁ありがとうございます﹂
﹁解っていると思うけど子どもを見に来たんだ。戸籍の申請があっ
たんだよ2枚も。
それが内容が一致しなくてね。確認に来たんだ﹂
やはりか。2枚の申請が来ても、なんとなく領地の兼ね合いから
ハイルデン公爵家側になるだろうと予測していたので、メルミーナ
が直接確認しに来たのは予想外だった。部屋に案内しないのは不自
然なので、ジルベールの元へ連れて行く。
ジルベールは、いつもどおり、寝ていた。しかし、なんとメルミ
ーナ公爵は両目を強引に開けて確認した。そして、﹁両目か﹂とつ
ぶやく。
毎度毎度ですがこの頃のジルベールは良く寝る子です。
近くにいた文官のライラに向けて左右金眼に修正するが、しばらく
話があるから外で待つように指示。
そして、リリアーナのほうを見て
﹁貴方の意図は解っています。王宮で働いていた時から見ています
かね。ところで、この子の本当の母親も会わせてもらえないかな﹂
文官をまとめるメルミーナ家は、ほぼ全ての領地に自分の配下の
役人を送り込んでいる。管理能力の高い文官のニーズは高くメルミ
ーナに情報が筒抜けになっても欲する領主が多い。悪いことをして
いなければ、メリットが多く。メルミーナへの文官の手配の依頼は
よく来る。
54
もちろんこの領地にも以前からメルミーナの配下の部下は勤めて
いる。それもリリアーナを慕ってもともとリリアーナの部下だった
文官も含め数名の人が勤めていた。
メルミーナは、リリアーナが文官をやめて結婚後も領地経営でそ
の能力を発揮していることを知っていた。
女性が頑張る領地として、王妃も注目していた地であり、メルミ
ーナは沢山の文官を送り、リリアーナを手助けしていた。そして、
ここに来る前に妊娠していたと思われる期間も変わらず領地経営が
できていたことも把握していた。さらに彼は、自分の配下からリリ
アーナが妊娠してない事を上手に聞きだしてからここにきている。
もちろん、それが回りに広がらないよう手も打って上でだ。
彼は、両公爵からの報告を見て、リリアーナの性格を把握した上で
最初から両金眼の子と想定し行動している。
リリアーナが驚いた顔をしたが、メルミーナは平然と言い放った。
﹁この子の母親があなたでないことは解っています。ここに来る前
に役場の部下から話を聞いてきています。そして口止めもしてきま
した。安心しなさい。さて、とても優秀だったあなたがおばかな他
人の子を我が子とするとは思えない。この子の母親もあなたに近い
才能があるのでしょう。
この子の案件は、非常に難しい。このままでは、この子は幼いうち
に殺される可能性もある。それは解っているね。
そこでだ。
両金眼と知っている私がこの子の後見人となろう。そして、将来は
公爵を継がせようと思っている。
それを決めるためにも、母親に会わせてくれないか?﹂
リリアーナは、︻公爵︼の言葉に、驚きを隠せなかった。
55
﹁︻公爵︼ですか⋮⋮それは⋮⋮⋮⋮⋮⋮﹂
﹁私の子供には、男子がいない。直系の親戚含め、良いと思える後
継者はまだ見つけられていない。
知っている通り、我が公爵家の跡継ぎは実力主義だ。建国から30
0年、国の土台を支えてこれたのは、単なる世襲ではないからだ、
国の中でもっとも優秀なものが後を継ぐ。実際、私の父は養子だ。
ただし、後見人の候補は他に2人いる。あと3人たてて、5人の中
から選ぶつもりだ。
今回、後見人になる事がすなわち公爵ではないが、解ってくれるか
ね?﹂
リリアーナにその覚悟も伝わったので、アメリを呼んだ。アメリ
は、リリアーナが直接教育を施した弟子でもある。同じ血筋だから
なのか、非常に賢かった。知識をどんどん吸収し、リリアーナ以上
に賢いのではないかと思ったぐらいだ。実際、彼女は、アナベルが
亡き後、現在は領地経営を手伝ってくれ、その実力も発揮していた。
非常に優秀な彼女ならば、メルミーナの審査を簡単にパスするだ
ろう。特に心配することなく、リリアーナは侍女にお茶の用意を頼
んだ。
そして、結果を待つ。
56
戸籍の登録
メルミーナは、アメリを見て、驚いていた。
﹁いやはや、リリアーナ、あなたが私の元に入ってきた時を思い出
すよ。なぜここまで似ているのかね? あなたの養子にすると書い
てあったが、そのままあなたの子供と言われて違和感がない﹂
﹁アメリは、私の長兄の子です。侍女との間にできたのですが、母
親はアメリを生んで2年後には亡くなったようです。家の中で彼女
を守ってくれる人がおらず、虐待を受けていたので、5歳の時に強
引に引き取り、以来我が家で育ててきた秘蔵っ子です。もちろん私
が直接勉学を教えました﹂
話を聞いて納得したのか、その後アメリと別室に行き、少しやり
取りをした。
そして、部屋から戻ってきて、メルミーナは満足げに答えた。
﹁アメリは賢い。ジルベールも将来が期待できる。安心しなさい、
両目が金眼であることは、私が上手く隠します。任せなさい。
そしてこれからは私が後見人となる。教育についても、私が用意し
よう。
あと、子育てもあるだろう、領地経営は人手が足りないのではない
かね?﹂とたずねてきた。
私がうなずくと。
﹁解った。まずはすぐに1人送ろう。給金は心配しなくても良い。
10年たったら返して戻してもらうので、それまでの実践教育費と
して私が出すことにする﹂言った。
57
リリアーナは、﹁この子が大きくなるまで、よろしくお願いしま
す﹂と礼を言った。
メルミーナは帰ってから、提出された順に用紙を並べ、一番下に
両目が金と記載した正しい届けを挟んだ。そして、ライラに、両目
金眼を秘密にする事と、さらに夫婦で10年間の移動を命じた。
ライラは、厄介な事件に巻き込まれたことを面倒には思ったが、
10年後の昇進と、移動中の給金アップに気を良くし、喜んで自宅
に帰った。
そして家に帰ると、妻に、田舎に転勤になった事を伝える。
妻のウルラーレから
﹁あなたの性格だといつかは失敗してそうなるだろうと予想してい
ましたが、思ったよりも早い降格でしたね。でも、私は覚悟はでき
ていましたが、何処までもお付き合いしますよ。
ちょうど子供も田舎でのびのびと育てられますし、すぐに出立です
か?﹂
﹁いや、失敗してないし、降格じゃないから、給金もアップ、10
年後は昇進だぞ﹂
﹁うそ。ほんとに?﹂
﹁いや、厄介ごとに巻き込まれたとは思ったけど、運が向いてきた
ぞ﹂
﹁給料アップ。あなた、なんの不正をしたんですか!
昇進しなくても良いから、悪い事だけはやめてください。私は、あ
なたが昇進しなくても、万年平役人と馬鹿にされても、生きていけ
ますから﹂
58
﹁いや、悪いことしてないし、おまえ、このあたりでそんな事を言
われていたのか?﹂
﹁あなたの同期の奥様会では、いつも。でも私は大丈夫ですよ。
あなたの馬鹿正直で融通の利かないところは、大好きですから﹂
﹁まあ、それは、いままですまなかった。とりあえず転勤はちょう
ど良かったかもな。
私は、明日から休みになるので、すぐに準備をして出立しよう。
ずっと馬車移動だから大変だが、移動費用は、メルミーナ様が支払
っていただけるので、少し贅沢な旅館にも泊まれるし、2週間の移
動だが、楽しんで行こう﹂
そして、ライラは、新たな地へと旅立った。
59
後見人決まる
その年の年末に、王の前に3公爵全員が揃う場でメルミーナはジ
ルベールの件を話した。なんと言っても100年ぶりの両金眼。上
手く育てば建国以来の両金眼の成人だ。
今、ジルベールが両金眼とはっきりと知られると王位継承権が1
位にまで上がる可能性がある。ジルベールを王家の継承者の中に組
み込まれては困るのだ。両金眼の男児は過去の歴史どおりきっと成
人するまでに毒殺されるだろう。少なくとも7歳までは隠す。でき
れば10歳。望みは薄いが成人まで隠せば生存率はかなり高い。
だからと、嘘をつけば、将来ばれた時に王に対する不敬罪となっ
てしまう。それはまずい。
嘘はつかないが、余計なことを話してはいけない。
メルミーナは慎重に話を進めなければならなかった。
上手く真実を隠し、その上で自分に反逆の意図が無いことを示し
ておく必要がある。そして両公爵に余計な事をしゃべらせてはいけ
ない。なんといっても片方づつ金眼を確認しているのだから。
メルミーナは、王にゆっくりと説明を始めた。生まれた子の父が
死亡し、生きている母親が自分の元部下で、家系的にもメルミーナ
の系統であることから、自分を後見人としたい名乗り出た。
そして、続けて、現在探している自分の後継者候補の筆頭とする。
つまり成人したら公爵を継がせる意思があると宣言した。
対して、他の2家は、侯爵として迎える予定だった。そこに、公
60
爵を継がせると宣言されては、いかに自分の系統の金眼といえど、
口を挟む余地は無い。
王は、それを聞き、そこまでほれ込む才能があるのかとたずねれ
ば、15年ほど前に女性でありながらあっという間に役職を上げて
伝説となった文官リリアーナの子です。
前王妃から女性文官で初の表彰された経験があります。私も注目し
ていた子です。
必ず宰相の器があると確信している。
そう自信を持って答えられると、皆は黙るしかなかった。どのみ
ち成人するまでは解らないのだし。それまでの後見人である。特に
目くじらをたててまで主張することではない。
文官の才能があればメルミーナ、そうでなければ自分が取れる。
2家は黙ってメルミーナに後見人を譲ることにした。
とはいえ、現在の領地的はハイルデン領である。ちょうど隣の領
地が王家直轄であるので、ハイルデン公の協力分を隣の直轄地から
支援をする事で合意した。
アレクサンドロ公爵が派遣した医者は、そのまま残ってもらい給
金はメルミーナが支払うことで合意。
その他のことも、あっというまに提案を行い無事全員が合意してこ
の問題は終わった。
メルミーナの思惑通りことは進んだ。
その日、ルカ王子が5歳となり、婚約者候補や将来の部下を選定
するための王子の友の会を作る事になり、総勢30名ほどのルカ王
子のお友達会のメンバー人選でもめた。
61
実は、既に21名の募集で第1回の会議を行ったがとてもまとめる
気配が無かった。そして今回人数を増やしての第2回人選会だ。今
日決めなければならなかったので、皆も必死だった。この話し合い
が始まるや、ジルベールことはすぐに頭から抜けていた。
メンバー表は、各公爵家の妻が作ったものだ。ルカ王子を将来支
えるであろう自分の人選でもある。自分の系統のメンバーが減れば
そのまま将来の関係を示す可能性がある。
この国では、王都に住む下位貴族、平民でも商人の子供は、5歳
から6歳になると国立の小学校に通う。これは、人口の密集してい
る王都と、その近隣の3都市でしか行われていない。
高位の貴族は、これとは別に家庭教師を雇い、自宅にて教育を行
う。王家でも、一般教育は全て家庭教師が行うが、これと別に週3
日で高位の貴族の子供を集めて、国のエリートを育てるための教育
を実施する事になった。
集められるのは、ルカ王子の前後2歳まで。それ以下になると、
第2王子、第1王女の世代になるので、その時にまた集めることに
なった。
3公爵による会議は、夜までつづき、案の定ジルベールの話を思
い出すことは無かった。
メンバーの割合は、各公爵10名だが、きっちり10人にならな
いから、どうしても揉める。最後は、結局メンバーが36人に増え
て話し合いが終わった。
62
魔法
3歳の誕生日後に、偉そうなおじさんが家にやってきた。メルミ
ーナ様と言う人だ。私の後見人となっている人らしい。誕生日プレ
ゼントだと帽子をくれた。
この帽子は魔道具になっていて、かぶると目の色が変わる特別製
の帽子。屋敷から外に出るとき、他の人と会うときにかぶるように
言われた。
魔石がついていて、魔石が白くなると効果が切れた事になるそう
です。切れたら交換しないといけないので、注意して使うように言
われた。
ライラと言う文官のおじさんも良く家に来る。メルミーナ様の部
下で、私が生まれた時に王都からここに来た人です。
現在は、近くの役場で奥様のウルラーレさんと共に働いています。
ライラには、ジャックと言う名の子供がいます。
ジャックは9歳で、元気な男の子です。今まで家の人以外に会っ
てはいけないと、言われていたが、帽子をかぶればジャックと一緒
に庭で遊んでも良いとメルミーナ様の許可が出ました。許可が出た
後に、たまにライラおじさんが、ジャックを連れてきてくれる。
少し年上ではあるが、唯一の同じ年頃の男子で一緒に遊ぶのが楽
しかった。前世の記憶があるとは言え、年相応の遊びは好んでやり
ます。前世と言っても、知識だけなので、既に大人と言うわけでは
無いようです。
63
少し大人びた子供。そんな感じです。
さて、最近は、午前中は、アメリが教科書を使って色々な教科を
教えてくれる。
3歳にして、本格的に勉強が始まりました。1歳から絵本の字を教
えてくれていましたが、ここからは本格的に前世の小学生並の教育
が始まりました。
貴族ってすごいですね。
でも、昼からは、アメリもお母様の手伝いで役場に行ってしまう。
私はたまにジャックと遊んだりしますが、普段はおばあさまと一緒
に過ごします。
たまに一緒にバラの世話をしたりなど植物の面倒を見る。飽きる
と、本を読む生活です。私は、絵本は既に何回も読み直しまでした
ので、図鑑が欲しいとお願いしたら、暫く後に大量に送られてきた。
この世界の動物、魔物、植物など、様々なものを勉強した。私が
転生したこの頭脳は非常に優秀で、ぱらぱらと一度見ると殆ど完璧
に記憶します。なので、送られてきた図鑑はどんどん読み終わる。
図鑑の他にも、初級魔法書も含まれていた。魔法の本も読んで、
勉強を始めた。
だ。
本に書かれていることを検証したかった。そこで、特殊能力の
魔力の可視化
これは本には書いてない。自分のスキルを確認しじっと見つめる
は、世界に存在する魔力を見ることができる能力。
と説明が出てくる。
魔力の可視化
発動を意識すると、目に魔力が集まる感覚。あらためて自分を見
64
てみると、うっすらと魔力が体を包んでいるのが見える。
これが魔力。そして魔力を体から放したり、いろいろしてみた。
魔法の本に書いてあるとおり、魔力は物体に触っても流せるし、
空気中に放出もできた。
そして、魔法の本に、総魔力量を増やすには、魔力を使うことが
一番良いと書かれていた。
だが、魔力を使うと言ってもどうすれば使えるのかが解らない。
呪文も知らないし。
封印時代は、魔力の事はさっぱり解らなかったが、今は解る。
何と言っても見えるのだから。
魔力を可視化しながら、魔力を体の中をぐるぐると回すようにイメ
ージすると、魔力が動き出す。
これは、非常に疲れる。
とりあえず、魔法の基本はこの魔力が制御できてから、つかうの
だろうと勝手に解釈し、とりあえず魔力操作の練習を始める。日々、
ステータスを確認すると、このぐるぐると魔力を回すだけでも総魔
力が上がっていくのが確認できた。毎日特訓すれば、総魔力量が上
がりそうだ。
なんだか解らないが、良い調子だ。
そこそこ魔力が思い通りに動かせるようになったら、次に、水、土、
空間魔法を確認した。
家においてあった、初級魔法書を読むと、水魔法は、少量の水が
65
出せる魔法。魔力の流れを見ながら水を出すイメージを持ち、呪文
を詠唱すると、ジョーロからちょろちょろと水が出るよな感じで、
水が出た。なんとなく気温が下がったような気がするが、気のせい
程度?感覚がつかめたら、魔力の可視化で流れを確認し、その通り
に動かし、魔力を変化させていくと同じように水がでた。
呪文は唱えなくても、同じように魔力を操作すれば同じ事が出来
る。もしかしては、魔法の本に書いてないが、これって新たな発見
なのだろうか?
土魔法を本で調べると、穴を空けたり、少し土を盛り上げたり、
栄養度を少し良くしたりなど。どちらも植物を育てるのに使える魔
法だ。これも呪文を使って魔力の流れ方を調べ、覚え、そして魔力
操作だけで実施してみる。
出来る。
現状は呪文を唱えたほうが楽だが、魔力操作だけで実現すると細
かい作業はやりやすい。しかも無詠唱なので、なんとなく格好いい
気がする。
よし、明日から園芸にいそしまねば。
最後に、空間魔法。非常にレアで初級魔法には存在と簡単な説明
しか無かった。
自分で試行錯誤しながら能力を確認した。
あまりうまく行かなかった。そこで、別の文献を調べると、時間が
止まる空間と、時間が流れる空間の2種類があり、転移もできるよ
うになるらしいということが解った。
現在のレベルでは特殊な空間に物をしまえる能力が使える。
自分の現在のレベルでの魔法発動は、最初おおよそみかんを入れる
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ダンボール2箱程度の荷物を特殊な空間に収納できた。
暫くしたら、レベル1の間は、10m×10m×10mの空間ぐら
いに広がり安定した。
時間も停止しているほうの空間だ。これで、内緒の物をしまってお
ける。
これは、便宜上マイボックスと呼ぼう。
特殊召還、これは大期待のスキル。これも魔法書には書かれてい
ない。
スキル欄を良く見ると説明があった。なんと、元の世界から生き
ている動物や、魂以外をこちらに召還できる。と言っても、最初は
紙一枚程度。しかも、大量の魔力が必要。
魔力操作を続け、暫くは総魔力量をあげなければ使えない。
と言うことで、半年ほどは、土、水魔法をたまに使う程度で、日
4000に。
々魔力操作の訓練を繰り返した結果、
かなりのステータスが向上した。
そして、ようやく総魔力量
特殊召還が使えるようになると、召還魔法を起動。すると、魔法
陣が浮き上がる。まずは、土に自分の血や髪の毛を少し混ぜてこね
る。それを土魔法で作った板にする。説明にある、魔法陣を書く。
召還するアイテム名書いた板をさらに魔法陣の中央に配置。魔法陣
に日々魔力を魔法陣にこめつづける。
普段は、マイボックスに魔法陣を隠す。完成には数日かかる。
取り寄せ可能な物品の一覧は、意識すると見ることができる。コ
ーン、枝豆、ジャガイモ、サツマイモ、唐辛子など、何種類かの種
子が選択できるようだ。最初はそれらの育成方法や、管理方法が書
かれた紙を1枚づつ取り寄せた。
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このように、ジルベールは3歳から、少しづつ魔法を使い、魔力
操作を繰り返し、召還魔法で対象の魔力を消費する事を繰り返して
いた。
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そんなこんなで4歳です
4歳の頃になると、10日に1回ほどのペースで種を召還すること
ができた。
紙から種になるとこめる魔力は桁違いに多くなってきた。
私は、おかあさまから、小さい畑を貰い受けたので、庭師のジジに
協力してもらい、種子を植えてもらった。
数ヵ月後に収穫できることを期待して、毎日水魔法と、土魔法を使
って、水をまき、雑草を抜いて世話をした。
水魔法、土魔法、空間魔法は、使えばどんどんレベルが上がるよう
だ。
この頃は本当におばあさまとすごす時間が長かった。
おばあさまが育てるバラを一緒に手入れしたり、庭でお茶をのんび
りと飲んでいる周りで駆け回っていた。
大人の自分の意識はあるが子供として自分もいるようで、子供っぽ
い何気ない遊びを楽しんだ。
領主館の近くに領地を治めるための役場があり、そこで働くライラ
と言う貴族の長男ジャックが良く遊びに来てくれる。
ジャックは10歳。
親公認の友達だ。
私の金眼は他人に見せてはいけないらしく、魔道具で防御している
69
ものの、あまり他の人との交流をしないようにしている。
私は、あまり領主館から出てはいけないといわれていたので、近所
の子供と遊ぶことも無く、
ジャックが来てくれるのを楽しみにしていた。
ジャックは父親の事を尊敬している。
自分の父親はエリートなのだと教えてくれた。
王宮で働いていた偉い人で、ここには修行に来ているだけで、もう
すぐ王都に戻ると出世するんだと教えてくれた。
ジャックは13歳になると王都の学校に行くようになる。
準備もあるので12歳ぐらいで父親と別れ王都に戻る。
それまであと1年ちょっとはこちらにいる。
とりあえずジャックと遊ぶのは面白かった。
年の差はあるがそれが良かったのかちょうど運動能力もほぼ一緒だ
ったので、特に不満なくジャックと遊べた。
ジャックもジルベールは4歳とは思えないなと言いながら、別に問
題なく遊べるので、一緒にかけっこをしたり石投げ競争をしたり、
この辺の子供達がやる遊びをやっていた。
3歳、4歳の頃はこうしてのんびりと、おばあ様との時を大事に過
ごしそしてたまにジャックと遊んでいた。
異世界豆情報
5、6、7、8、9が小学校
5歳は任意。
10、11、12歳が中学
13、14、15歳が高校で貴族は全員王都に集合する。
70
そのあと16、17、18で騎士戦術大学。
または魔法大学に行く人もいる。
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執事登場
4歳後ごろに使用人が1人増えました。
我が家には侍女は数名いましたが執事がいなかった。
おじいさまが亡くなったときに執事長が引退し、そのまま空席だっ
たそうです。
男児の面倒を見るのにそろそろ男手が必要だとアメリの男性不信の
問題もありましたが、ついに執事を雇うことになったそうです。
年は、30歳ぐらい。
お母様から執事の紹介があった。
執事は﹁トシアキ・レオナルドと言います。
子爵家の次男です。
これからはトシアキと気楽に及びください。
お坊ちゃまと﹂と丁寧にあいさつをされた。
名前がトシアキって日本語名じゃん、転移者か?でも
転移者は平民だと言っていたか違うか。
どうしよう。
質問するまずいよな。
聞くのは危険な気がして元の世界の事は黙っていることにした。
そして一言﹁トシアキさん、よろしくお願いします﹂
﹁いえ、私は、お坊ちゃまの部下。トシアキと呼び捨てにして下さ
72
い﹂
﹁えっとじゃあトシアキ、お坊ちゃまは嫌いだから、ジルベールの
名前を呼んで﹂と頼むと、
﹁わかりました。ジルベール様﹂と。
ずいぶんと年上から様づけで呼ばれ、こっちが呼び捨ては違和感が
あったが
何度かのやり取りをしたが結果、私はトシアキあちらはジルベール
様と呼び合うことが決まってしまった。
やはり、アメリはトシアキの事が苦手なような。
てきるかぎり、近づかないように注意するようだ。
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そんなこんなで5歳です︵前書き︶
エレノア、ニーナとの暮らし始めについて、当初は7歳からで書い
ていましたが、
5歳に変更しています。
途中で変更したので話が合わないところがあるかも知れません。
74
そんなこんなで5歳です
さていよいよ5歳になる。
メルミーナ様から新しい先生を紹介して貰った。これから魔法の
先生となるクインという緑髪黒眼の30歳ぐらいの中年女性。学者
だという青髪赤眼のヘイゼルという中年男性。2人は夫婦だそうで
す。
明日からこの2人に勉強と魔法を教わることになるそうです。
2人の子供エレノア、ニーナも含めて客人扱いで同じ領主館で暮
らします。エレノアは一つ下、ニーナは3つ下です。クインさんが
担当する魔法の教育については、ニーナはまだよちよちの小さな子
なので子育ても大変です。当面は魔法の基礎を少し教えてくれるぐ
らいです。
ヘイゼルさん、元は大学に所属していた植物学者でした。新種の
植物の発見をしたので教授に相当する役職となり、子爵を貰ってま
す。ヘイゼルさんは現場主義の人です。普通はやらない農民への直
接指導などまじめな働きはあったそうですが、その分その後の新し
い発見や功績が少なく大学としての成績はイマイチで給料も安くな
っていったそうです。
仲間内からはクインのひもと呼ばれていたようで。クインさんは、
宮廷魔導士を目指していただけど魔力が足りず落ちたそうです。で
すが、その後メルミーナ家の護衛魔道士として採用されずっと家の
守りを担当してそうです。ヘイゼルさんが、そろそろ稼がないと駄
目だと一念発起したときに、メルミーナ様がジルベールの家庭教師
を紹介してくれたそうです。
75
﹁ヘイゼル・サイレーン子爵です。植物学者で若き時の偶然の功績
で爵位を頂きました。このたびは私どもを家庭教師として雇ってい
ただく事、感謝しております。今後もよろしくお願いします。﹂
﹁クインです。ヘイゼルの妻です。魔法を得意として、メルミーナ
様の護衛魔道士を勤めていました。
見て解る通り、エレノア、ニーナも小さく、教えるよりも育児の方
に時間を取られると状態ですが、メルミーナ様からそれで良いから、
早めに魔法を教えろと伺っております。ですが、ジルベール様はま
だ5歳だとか。一般的には魔法は7歳以降にならなければ教えない
方が良いと言われておりますが、魔法学の基礎なら教えてもかまわ
ないと思いますので、そちらを指導させて頂きたいと思います。夫
婦ともどもよろしくお願いします。﹂
リリアナかあさまからは、受け入れのお話があり。私にも挨拶をし
ろと言われました。
そして、帽子を外しなさいと。
つまり、眼を見せても良いと言うこと。
﹁解りました。﹂と答えて帽子を外す。
﹁ジルベール・クロスロードです。見ての通り両金眼です。皆様と
は一緒に住むと言う子とですので、この眼の事は秘密にしてくださ
い。ヘイゼル様、この領地にも珍しい植物がありますから、私の教
育だけでなく空いた時間はぜひ植物の研究を行ってください。そし
てクイン様、私は少しですが既に水と土の魔法が使えます。ですが、
魔法の使い方は良く解らず自己流で適当に使っているので、ぜひ基
礎学を教えてください。よろしくお願いします。﹂
と丁寧にお辞儀をしました。
2人があっけに取られ、口が半開きのままぼーとしていたので、
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私はエレノアと赤ちゃんカゴに入ったニーナのところへ。エレノア
に、﹁エレノアちゃんだよね。私はジルベールです。これからよろ
しくね。一緒に暮らすから、お兄ちゃんと思ってくれて良いからね。
﹂と言うと、4歳のエレノアは、﹁ヘイゼル・サイレーン子爵の子、
エレノアです。この子はニーナと言います。ジルベール様。これか
らよろしくお願いします。﹂と丁寧に挨拶をされた。
4歳って、しっかりしてるんだな。
﹁よろしくね。僕の事はジルって呼んで良いよ。君の事はエレって
呼んでも良いかな。﹂
﹁はい。私はエレで良いです。えっとジルさま。﹂
﹁ジルさまはやだな。なんかえらそうで。﹂
﹁じるにいさま﹂
﹁うーん、エレがかわいいから良いか。﹂
と頭をなでなで。
1歳違いですが、私の方が少し大きい。そして、そのまま午前中
は、エレとお絵かきをして遊んでいた。
さて、そろそろ3歳に引き続き5歳の誕生日になったので教会へ
のお祈りに行きましょう。
私達は家族で教会へ移動する。お祈りを始めると、メリーナ様がご
登場。
﹁あなた、何をすればそんなに魔力値が増えるの?﹂
久しぶりのメリーナ様からの第一声が驚きの声でした。
﹁魔力値が8000もある。あげた魔力は3500だったはずだけ
ど。体も全身に魔力がめぐってるしほんとに5歳? 少し自重しな
いと、悪目立しますよ﹂
﹃これでも、特殊召還を使うとすぐに魔法力が無くなんるんですよ﹄
と答えると
﹁特殊召還って何の事?﹂
しばし見つめて、
77
﹁なんで私と同じスキルがあるの? しかもなにこれ異世界から物
を取り寄せるって。
私のスキルから派生したのかしら、効果が少し違うものになってる。
前に神の眼のスキルと上げた時にはこんなことは無かったのに。ど
うしてかしら。﹂
﹃へー、メリーナ様のスキルですか。
今は種とか取り寄せてますが魔力消費が激しくて、高価な物や重
い物は取り寄せできないですよ﹄
﹁そうねレベルが最大になっても、転移者を呼び出したりはできな
いようね。それは安心したけど。まあ、気をつけて使ってね﹂
﹃はい。 あー、ところで私の家に執事が来たのですが、そのトシ
アキって転移者ですか?﹄
﹁え、あー後ろに立ってる彼ね。彼は関係ないわ。彼の母親が転生
者よ。
もう亡くなっているわ。子供を生んで亡くなっているから、長生き
した方よ﹂
﹃そうですか。良かった、変な話しなくて﹄
﹁そうね。前世の話とか、しないほうが良いわ。それと、今からま
た魔法を幾つか開放するわ。
その中の鑑定のスキルを使えば、転生者は私が加護中以上を与え
ているからそれを見れば解りますよ。
じゃあ、そろそろいきますね﹂
と言って消えた。
光魔法と上位鑑定魔法が解放されたようだ。光魔法ってなんだろ
8000
う。クインさんに聞いてみよう。
総魔力量
78
魔法 神の術補正により威力2倍
火魔法 レベル1 封印
水魔法 レベル2
土魔法 レベル3
風魔法 レベル1 封印
光魔法 レベル1 雷魔法 レベル1 封印
回復魔法レベル1 封印
結界魔法レベル2 空間魔法レベル3
浮遊魔法レベル1 封印
特殊
特殊召還魔法レベル2
上位鑑定魔法レベル1
魔力の可視化レベル3
索敵 レベル1
祈祷 レベル1 封印
加護
メリーナの加護 大 固有スキル 半封印
神の目 無詠唱での魔法発動
神の術 神属性を含む全属性魔法使用可能。 魔法効果2倍
79
ブックマーク30
神官視点︵前書き︶
祝
80
神官視点
本日は、領主の息子が5歳を迎えるので、訪問があります。
事前に連絡あったので間違いありません。
領主の子は、3歳の祈りに教会に来たときに、両目が金眼だったの
でびっくりしました。
その後、お祈りを始めたらメリーナ様が降臨なさるという、
大事件が起きて、またまたびっくり。
もうどうすれば良いのかものすごくあわててしまいました。
奥様から、秘密にするように、厳重に警告され、
そのかわりに、教会の経営する孤児院への寄付を増額してくれると
約束してくれました。
おかげで、この孤児院は、子供達におなか一杯ご飯を食べされるこ
とができました。
そして、その子が今日、5歳なのです。
私は、奥様との約束があるので、上には直接は言えません。
神に仕えるもの、約束を破ることはできません。
しかし、組織に属する身。
全てを隠蔽する事はできません。
事前に、私の先輩神官に、偶然を装って、視察に来るように連絡を
入れておきました。
81
これでこなければ、私のせいではありません。
心配するまでもなく、先輩神官は、昨日到着しました。
そして、領主の方々が到着する前に、隠れてもらいました。
先ほど、領主の坊ちゃんが来ました。
前回と同じように、お祈りを開始すると、やはり。
またまたメリーナ様が現れました。
人生で2度も見れるとは。
私は幸運な神官です。
2度あることは3度目もあると期待できそうです。
お祈りが終わり、メリーナ様が消えた後、
隠れているように言っておいた先輩神官が、
あまりのことにびっくりしすぎて、出てきてしまいました。
奥様が、気がつき、秘密と言いましたよね。
とすごんで来ました。
執事の人が出てきて、ナイフをちらつかせてます?よね?
え、ちょっと、やばくない。
これ、死ぬ?
そう半ば覚悟を決めた時に、先輩神官が、かばってくれました。
自分がたまたま視察に来ただけで、領主が来たときも下がるように
言われていたが、
それではやはり失礼だろうと、勝手に挨拶に来てしまって遭遇した
だけだと、
82
説明してくれ、なんとか事なきを得ました。
刃
勿
︶
奥様の疑いは、はれたわけではありませんが、しぶしぶ了承してい
ただき、
ω
*•
今回も含めて秘密にするよう約束させられました。
はー、危なかった。
危うく死ぬかと思いました。
刃
あの執事の人、ほんとやばいですよ。
•
縠
83
ジルベール5歳の生活
5歳になってから、アメリが勉強を教える時間を決められました。
朝ごはんを食べた後と、夕方はお勉強の時間です。
勉強は、アメリとヘイゼルさんが分担して教えてくれます。
後は、わりと何をしても怒られないので、畑を見たり、屋敷の庭で
駆け回り、
こっそり魔法の練習をしてます。
魔法は、クインさんが教えてくれることになっていますが、
ニーナがまだ小さいので、週2ぐらいで基礎を教えてくれているだ
けです。
なので、自主学習が中心です。
いよいよ特殊召還で召還したトウモロコシが収穫の時を迎えました。
収穫後に、1本だけすぐに食べて、残りを次の種に残しました。
家族全員が、甘いと、驚いてました。
サツマイモ、ジャガイモも、おいしいと。
でも大半が種芋として残したので、食べたのはほんの僅かです。
おかあさまと相談して、来年はもう少し広い畑をもらうことにしま
した。
ヘイゼルさんが、この新しい植物の育て方を研究し始めるそうです。
5歳ではあまり家から離れる事もできないので、周辺をうろうろす
るぐらい。
魔法も、急にびっくりするような事ができるわけではないので、こ
っそり練習しています。
84
トシアキが、護衛としても優秀なことが解り、最近ジャックを連れ
て近くの森に連れていってくれます。
馬車で移動し、近くの湖に行きます。
ジャックと湖にボートで出かけたり、周りの林を探索したりしまし
た。
こちらの世界の植物が珍しく、図鑑と照らし合わせて確認します。
いろいろな種類のスライム?がいます。
イメージ粘着質のドロドロ系がスライムだと思ってましたが、どう
見てもスライムには思えない物も掲載されてます。
フワフワ系、ゴツゴツ系などもスライムと分類。
共通項を探すと分裂増殖すればスライムですか?
この世界の学者っていいかげんな気がする。
散策してるとたまに、動物とも会います。
そして、小型の魔物が出ることがありますが、これはトシアキがサ
クッと退治してくれます。
で、解体するときに気がつきました。
なんか、少し違うんです。
動物からは魔石はでませんが、魔物は倒すと魔石が取れます。
大体胃袋の下の辺りです。
お願いして、殺さずに捕まえてもらい、腹を開けてと頼むと、それ
はどうしてもですかと訊ねてくるから、どうしてもやって欲しいと
頼みました。
魔物と言えど、生き物を生かしたままいたぶるのは良くないことで
すよと言われましたが、必要な事だと。
85
そして目的は生きているときの魔石の状態を見たいと。
トシアキが、がんばってくれ、大小数対の魔物のお腹を開いてくれ
ました。
この時、ジャックに見られると領主の息子は、生き物をいたぶる悪
人といわれる可能性があると、私を1人だけ連れて、こっそりと見
せてくれました。
結果は、トシアキも驚いていましたが、生きている時は石ではない。
少しだけやわらかい、少し固めの肉玉です。
それが、死ぬと数秒後に石の様に硬くなり、色も変わります。
死ぬ前は、大抵が赤黒色です。
死ぬと、魔法の種類毎に色が違うといいますが、そういった色に変
わります。
どうも、人間も長生きした大魔法使いなどは、魔石が出ることがあ
るそうです。
人間から出る魔石は、大抵虹色で、大きさも2,3cmと小ぶり。
あまり大きさは変わらないそうです。
とれた魔石は墓に入れるのが通常で、2,30年で消えてなくなる
そうです。
魔物から取った魔石も、長く持っても50年ぐらいらしいです。
夜になると、もちろん家の中なので、エレノア、ニーナの面倒を見
ます。
アメリとクインさんは結構仲良しになったので、2人で話し込むこ
とが多く、
夜は3人で遊んでいることがよくあります。
86
2人は、人形遊びが好きなので、人形に魔力を流して操作して見せ
ると喜びます。
そのうち、自分でも人形を操作したいと言ってきたので、
魔力操作を教え、練習を繰り返すと、なんとなく動かせる様になっ
てきました。
エレノアは、半年から1年かかりましたが、人形を操作出来るよう
になりました。
ニーナも少し遅れて動かせるようになり、2人の将来が楽しみです。
この魔力操作は、クインさんは知りません。
クインさんがいない時の暇つぶしなので、そこまで訓練も熱心にや
っていたわけではありませんでしたから。
これらの話は、エレノアとニーナがもっと大きくなってから、詳細
がわかります。
食事のときも、クインさん、ヘイゼルさんにエレノアもニーナも一
緒に食事をします。
おばあさまは、とても礼儀作法に厳しい方なので、我々は全員とて
も綺麗に食事を食べます。
礼儀作法は、常に鍛えられます。
ですが、それ以外の時、あばあさまはとてもやさしくて、エレノア
とニーナのことも可愛がってくれます。
私もあわせて、よくバラ園で一緒に手入れをしたり、お茶を飲んで
昔話を聞かせてくれました。
87
小旅行
おかあさまが、おばあさまを旅行に連れて行きたいと言うので、
家族で近くの都市まで行くことになりました。目的地には馬車で数
日で着きました。
ここは、おばあさまが育った土地です。おばあさまの思い出の場
所をめぐり観光をしました。ここには1週間ほど滞在しました。
私は田舎育ち。そもそも沢山の人に会うのが珍しくすれ違う人す
れ違う人全て鑑定眼でチェック。いろいろなスキルを確認しました。
たまに、メリーナ様の加護を貰っている人を見かけます。
中を持つ人は沢山の人ごみの中で1人だけでした。貴族の格好を
していますので簡単に声をかけることはできません。
小は、幾つか回った教会の神父様をはじめ、信徒の中でも信仰心
の高い人が持っているみたいです。観光周りで、おばあさまが行き
たいと言う植物園を幾つか回りバラやハーブを購入。
お茶屋にも幾つか行きましたが、砂糖があまり無いのかケーキや
クッキーなどあまり甘くありませんでした。ミツバチもいるのだか
ら蜂蜜はあるようですが高価な物のようです。今後の食生活向上の
ためには領地内で育てれる砂糖の元となる植物を召喚が必要だなと
感じました。
さて、お昼を食べた時にぶつくさと文句を言う20歳前後の若い
貴族か商人の身なりの男性を見た。彼が、メリーナ様の加護、中を
88
持っている事を発見した。しかし、少し不思議。唯一持っているス
キルが、料理︵日本食︶だ。
でもまあ、間違い無く転生者。
しかし転生者の割に攻撃系のスキルは無い。魔法力もほとんど無
かった。
トシアキに身分を確認させると、男爵位持ちのゴルゴ。王城のコ
ックを目指している男で、現在国内の珍しい料理を求めて食べ歩き
している途中ということが解った。
早速、おかあさまにコックとして雇う交渉をしたいとお願いしこ
の青年に自分の領地の来ないか誘った。
最近召還した小豆があるのでそれを一粒見せ、日本語で
﹁私は、日本食用の食材集めることができます。我が家の領地に来
日本食を作って欲しい﹂
と頼みました。
驚いた顔をして﹁同じ転生者か?﹂と質問されたので
﹁そうです、私は元の世界から種を召還できる。ぜひ一緒に食を再
現しましょう﹂とお願いした。
﹁王城で働くコックを目指していたが、日本食が作れるならそちら
の方が良い。ぜひ雇って欲しい﹂
と言ってくれたので、トシアキに頼んで住所等の連絡先を渡して
もらった。
89
領地に戻った後は、この人を料理長候補として雇ってもらい収穫
した食材の調理方法を検討してもらった。
あとは、浮浪者の中に鍛冶職を持っているが怪我をしてふらつい
ている男性。裁縫の高位のスキルがあるが、栄養失調でうずくまっ
ている女性を発見しこちらも連れて帰るように交渉した。
2人は、領地に着いてから回復薬を購入して治療を行った。鍛冶
職の人はギャンブルで失敗して借金が払えずに殴られ、戻るところ
も無かった状態。裁縫が得意な女性は、旦那が借金をしたまま死ん
で家も取られ、どこへ行くともなくふらふらとしていた。
我が家の領地のは賭け事をする店はないが、この地は賭け事をす
る店がたくさんある。ギャンブル依存症は我が家の領地ではやろう
にもできません。本人も止めると言っているので大丈夫でしょう。
女性の方もギャンブルの店を見たくないと言っていたので領地への
移動を快く許諾してくれました。
おばあさまとの旅行は、こうしておばあさまの行きたいところを
巡り、
途中で街をぶらぶらし、
最後に何箇所かお墓に行った後領地へと帰宅した。
最後まで、おばあさまの実家によることは無かった。良かったの
だろうか?
90
裁縫が得意な女性が元気になるとかわいいぬいぐるみの顔や全体
像を描いて渡し、型を起こしてもらった。そして領地内の未亡人主
婦グループに作り方を指導してもらい徐々に生産を開始。
すぐに売れるわけではないが将来を見越した投資である。教会が運
営する孤児院でも作れないか検討もお願いした。
鍛冶職の人には、実際に何個かお皿や板ガラスを作ってもらった。
するとやはり、そこそこうまい。
さすがに鍛冶職スキルレベル6。板ガラスは簡単な設備で量産がで
きるます。
強度を増すためにガラスの間に網を挟む方法で板ガラスを作る提
案をし試作したら出来た。この世界のガラスは高価なのだ。
寮内の多くの家が全ての窓がガラスではない。場所によっては木
の板だ。冬が暖かいとはいえ、ガラス張りの温室は非常に高価で日
本食の食材を育てるには必須だった。
この領地には材料はたくさんあるので職人がいれば作れるのだ。
そこで工場の様に沢山の人が働ける職場を用意してもらうように
お願いしました。
しかしガラスを作る職場は多くても5人程度しか見たことがない
らしい。また人数が多いと育てられないから数名規模からやらせて
欲しいといわれました。
できる方法でよいので作ってもらうことにしました。
91
寮内でいろいろな工房を立ち上げ、家を建てようとしているので、
職人による手作りではあるけれど購入するより確実の安い。
連れてきた鍛冶職の人をベースに人を増やしながらたんなる板ガ
ラスの生産をお願いし引き続きガラス工房で働く人を探してもらっ
た。
92
領地の様子
さて、この近くの説明を。
ここは、少し高地です。
標高600mほどです。
領主館が私の住む家でそこを中心に半径2kmが平坦に近い人が住
める土地です。
領主館から西に数百メートル離れたところに役場があり50名ほど
が働いています。
領主館を中心に役場の反対側に護衛隊館があります。
ここに20名ほどの兵士がいます。
近くに川がながれ、山側に林があり少し行くと湖があります。
そこから川が流れ領主館の近くを通り流れにそって畑が広がります。
領主館の周りで1000人ほどが住んでいます。
そこから緩やかに下り、馬車で1時間ほど行くと、川の周りに再び
畑が広がります。
ここは標高200mほど。
少し低い。
この平地で、およそ3000名が暮らしています。
教会も、このあたりに立っています。
こちらは、魔物も出ず、安全な地帯です。
ただし、奥に行くと林になっており、隣の領地に行く道以外は整備
されておらず、道の回りも木で囲まれており、10kmほどは誰も
93
住んでいない地域になります。
まだ開墾中の土地です。
領地全体になると、5000人ぐらいです。
王都に行くには、この道を右か左に進み、他の領地を経由して行き
ます。
およそ200から300kmの道のりがあります。
途中整備されていない道もあり、休憩等も入れると、2週間ぐらい
かかります。
領主館の近くからさらに少し登ると湖があり、そこを越えると本格
的な森になります。
兵達はここを視まわり、魔物の進入を防いでいます。
さらに奥に行くと高い山があり山を越えると別の国です。
険しい山なので、ここから攻められることはありません。
そもそも魔物が多く不用意に進入すれば戦争どころが魔物にやられ
て敗退する事になるでしょう。
ですので、領地の兵は対人ではなく対魔物の兵となります。
もちろん、警察ような盗賊退治空き巣の対応なども兵の仕事です。
すべて領地の経営費用でまかなわれています。
現在、領主館を中心とした半径2kmの土地を繁栄させる事と、川
下地域の新たな開墾が中心事業です。
川と山だけ。
海がありません。
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気候は下の平地は日本と同じような気候です。
領主館付近は少し涼しい。
湖の周りは、さらに少し高地に移動するので夏もそれほど暑くはあ
りません。
夏の避暑地として湖の周りに宿泊施設を作っています。
王都は、ここからもっと南にあり、ここよりは全体的に熱くなって
ます。
王都は海から近く安定した風があり熱くなりすぎることもありませ
ん。
比較的過ごしやすい土地なのです。
私たちが住むところは、水に恵まれた綺麗な空気の土地です。
95
そんなこんなで6歳になりました
ジャックは、少し前に王都に移動しました。
さびしいです。
6歳になると、王都周辺の貴族は小学校に行くそうです。
私はアメリとヘイゼルさんから教えてもらっているので、小学校に
は行きません。
領地に近い学校は、馬車で1日ですから、もともと行くのは無理で
す。
6歳で入学、10歳で小学校終り。
10歳から中学。13歳で卒業。
13歳で、高校に入学。
これは、貴族必須。
貴族全員が王都の高校に通うことになっている。
16歳で卒業し、
男性は、その後、騎士大学か、魔法大学へ進むのが貴族の一般コー
ス。
女性も、稀に魔法大学へ行く。
大学は、2年間です。
勉強するための本は、どんどん送られてきます。
大半の本が1週間以内に読み終わります。
まあ、前世の記憶もあるので、数学など勉強するまでもなく、最初
からアメリを追い越してました。
騎士学や、男性用の貴族マナーは執事のトシアキが教えてくれます。
こちらは覚えが悪く、劣等生です。
96
姿勢については、幼い頃からおばあさまの教育が良く、貴族らしい
姿勢を維持できています。
そして、体育系の指導は執事のトシアキが担当してます。
トシアキは剣術も多少できるらしく、6歳からは、剣の素振りを始
めました。
1日100回やればよいだけです。
小さいうちは、あまり多くの型をおぼえる必要は無い。
一つの型だけをひたすらやれば良いといってました。
小さい時に大事なのは、やわらかい筋力をつける事だと言ってまし
た。
しかし、数日でトシアキよりも素振りが早くなってきました。
すぐにあわてて第2と第3の型を教えてきて、3つを連続で繰り返
すように変わりました。
さすがにそれ以上の型は増えず、繰り返し、繰り返し、体に刻み込
みます。
そして、1日おきに、2kmほど走って体力をつけます。
雨の日は、ダンスの基礎として、ステップの勉強。
特殊召還は、チョコチョコと実施。
日本人の転生者だった料理担当のゴルゴさん。
彼と相談して、優先順位の高い食物を召還して育てている。
なかなか育たない種類もあり、苦戦している。
しかし、ゴルゴは、日本食をかなり再現できるようになってきた。
ゴルゴは、未知の食材を使った料理も上手だったので、皆に認めら
れ、
先日、我が家の料理長に昇格した。
97
昇格祝いで作ってきた料理は、日本風の羽付き餃子だった。
久しぶりの餃子はおいしかった。
98
そんなこんなで7歳です
特にびっくりする事件も無く7歳の誕生日を迎えようとしています。
アメリにヘイゼルさんも教えるところが無くなったから他の科目を
教える先生を探しています。
魔法はそろそろクインさんが本格的に教えてくれるそうです。
そして、7歳の朝、今日は朝からメルミーナ様がいらっしゃいまし
た。
久しぶりに会ったので、
﹁クランスロード伯爵の子、ジルベールです﹂
と、習いたての挨拶をしました。
メルミーナ様は、きちんとした挨拶ができますねーと笑ってくれま
した。
完全に子供扱いです。
私の子供演技も板についてきました。
そして、家族と執事にメルミーナ様で教会へ行くことになりました。
おかあさまは、メルミーナ様に行く必要はないと言ってましたが、
なぜかどうしてもひかず、おかあさまはあきらめた顔をして教会に
行くことになりました。
そして、到着して唖然。
そこには、ものすごく偉そうな神官が。
メルミーナ様が﹁大司教様、なんでこちらに﹂と言ってました。
少し話をした後で、今日は、私とおかあさまだけが祈りの場へ。
99
そして他の人は全員後ろに下がることになりました。
偉そうな神官は大司教様、この国のトップの方ですね。
これはメリーナ様の降臨がばれてますね。
どうなるのかわかりませんが、とりあえず祈りを開始。
前はお祈りを始めてすぐに来てくれましたが、今日は少し遅めです。
30秒ほどたつと前が暖かくなる感じがして頭の中に声が聞こえて
きました。
﹁おめでとう、ようやく7歳ね。
無事に幼少期の危ない時期を過ぎましたね。
私は大きな加護を与えた相手以外の前には出ないので、現世に降臨
するおよそ100年ぶりなのよ。それもジルベールだけで3回も出
たから、人が集まってますね。
まあ、加護も無い人間が私をきちんと認識はできないので、それは
ほっときましょうか。
では、さっそく本題から伝えましょう。
今日で魔法の封印を全部解除しますね。
それと、魔法を使うためのプレゼントも渡します﹂
﹃ここまで順調に大きくなれたのはメリーナ様のおかげです。
2度目の人生、これから先が楽しみです。感謝しています﹄と伝え
ると。
﹁かたっくるしいあいさつは必要ないですよ。
ここからが人生の本番スタートですから、がんばってちゃんと生き
てね﹂
﹃はい﹄
100
﹁じゃあ、プレゼントを贈るから両手を前に出して手を開いて、あ、
目を開けてね﹂
私は、目を開けて両手を前に出し手のひらを開いた。
すると目の前に石がぼとっと現れた。
ちょっと重かったのでびっくりした。
とても綺麗な石。
何色といいがたい。
あえて言うなら虹色。
﹃すごく綺麗です﹄
﹁神石といわれる石よ。
魔法の発動効果を高め、低い魔力で魔法を放てます。
と言っても、あなたは神の目と術のおかげで魔法効果2倍だから、
これで4倍ぐらいになっちゃうかな?
とても高価なものだけど、この石はあなた専用の識別が入ってるか
ら、盗まれても戻ってきますからね。安心して!﹂
﹃ありがとうございます。大切に使わせてももらいます﹄
﹁これで暫くはあなたの前に出てくることは無いけど、何かあった
ら教会に来て祈ってね。じゃあ、帰ります。またね﹂
﹃ありがとうございます!﹄
伝わりきったか、途中で消えてしまった。
隣にいたおかあさまが
﹁こんなに大きな神石、見たこと無いわ﹂
101
後ろの人たちも近づいて来て神石を見ています。
大司教様がやってきて、石を見せて欲しいと言うので、渡した。
大司教様は鑑定が使えるそうです。
私の鑑定スキルで見たら、確かに鑑定スキルを持っていることが確
認できた。
さすが大司教様ハイスペックだ。
石を見た後、大司教様がお話しを始めた。
﹁この石は、あなたが所有者とし刻まれてますね。
無くしても、祈れば手元に戻ってくると思います。
しかし、本当にメリーナ様が降臨されて直接祝福を授けるとは。
あなたは、神の使徒なのでしょうか。
メリーナ様は、なぜあなたにこの神石をお渡しになったか理由をお
っしゃってましたか?﹂
神の使徒とか、なにやばそうなことを言ってるんでしょ。
マジやばい。
﹁えっと、神の使徒などとは一言も言われていません。
なぜ私に良くしてくださったのかは解りません。
ですが先ほど、全属性の魔法が使える様にしたと言ってました。
それと、この石があれば楽に魔法が使えるからって。
他には、大きくなったからもう会えないって﹂
﹁そうですか、もう降りてこられることは無いと。そういったので
すね﹂
うーんと悩むそぶりを見せる。
そして、メルミーナ様が他の人を集めて相談を始めました。
とりあえず神石は今必要なさそうなので空間魔法を使ってマイボッ
クスに石を収納しました。
102
暫くするとみんなが戻ってきました。
これから全員で家に向い誕生日を祝ってくれることになりました。
おかあさまが、先ほどの神石がないことに気がつきアメリに預かっ
たのか?と訊ねていました。
アメリは、持ってないと説明していたので私が﹁石は、自分の意思
で消えたり出したりできると﹂説明しました。
めずらしい石だからかそういうものなのかと思ってもらえたみたい
です。
12100
名前:ジルベール・クロスロード
総魔力量
特技
剣術 レベル3
魔法 神の術補正により威力2倍
火魔法 レベル1
水魔法 レベル4
土魔法 レベル5
風魔法 レベル1
光魔法 レベル2 雷魔法 レベル1
回復魔法レベル1 結界魔法レベル3 空間魔法レベル5
浮遊魔法レベル1
特殊
特殊召還魔法レベル3
上位鑑定魔法レベル2
103
魔力の可視化レベル4
索敵 レベル2
祈祷 レベル1
加護
メリーナの加護 大 固有スキル 神の目 無詠唱での魔法発動
神の術 神属性を含む全属性魔法使用可能。 魔法効果2倍
104
そんなこんなで7歳です︵後書き︶
クイン達と一緒に過ごすようになるのを7歳から、5歳に移動しま
す。
105
パーティ前
家に着くとパーティまでには時間がまだあるので、メルミーナ様が
どのくらい学力があるのか尋ねてきました。
私の部屋に移動し、勉強している本を見せました。
アメリが、メルミーナ様が送っていただいた本は制覇したと説明し
ました。
それを聞いて、この世界では本は貴重なものなのに沢山あった理由
が分かりました。
私は、これらの本をメルミーナ様が送ってくれたのだとはじめて知
り、メルミーナ様にお礼を言いました。
それからメルミーナ様がいくつか質問をしてきたのできちんと受け
答えをすると、
ヘイゼルさんが教える事はが無くなったので、
これからは領地の農業研究に集中したいとメルミーナ様に伝えてま
した。
税収に付いて
この国では、領地ごとに変わった税制を取れます。
ただ、基本は人頭税、土地、建物に対する税金です。
大半の領地で商人に対しては、馬や牛、荷車などの数で税金を変え
たりしているそうですが、
儲けがわからないので所得税のようなきちんとした税金制度が無く、
税金が取れていないそうです。
実態活動が大きくなると警察などの組織も必要となり、経済活動の
106
大きさに合わせた組織が必要ですが
承認から税金が取れないと組織と実態に差ができてしまい治安が悪
化するのだとか。
そして、メルミーナ様から﹁商人から取れる税金が思いつくか﹂と
問われたので、
私は、商会ギルドの考え方を説明しました。
公営の商会ギルドに1次納入2次納入業者は、業者にしか販売せず
販売業者だけが販売を行う。
商会ギルドを通して注文すれば、税金もそこで払われるし商売人は
売る商品を自分で探す必要が無い。
売るほうに集中できるので、都合が良いはずだ。
中間時点の税金がきちんと取られるので後で小売りが税金を計算し
たり払ったりしなくても良い。
全ての商売がそれでカバーできる訳では無いので、直接個人で全て
を行う業者も特別なルールが必要だ。
実際に作るには、もっと細かい決め事が必要だが、税を取るにも御
互いにメリットがある仕組みが良いと思いますと答えておいた。
メルミーナ様から、商人ギルドのような制度をとっている領地が既
にあるらしく、
なりゆきを注目していたそうです。
まだ文献に載せていないのですがその領地の運営がうまく行ってい
るので
文献にのせて他の領地の参考に出来るようにしようとしているそう
です。
ただ、私の今話したことはその領地が実践している内容と少し違う
らしく
細かく検証してメルミーナ様の領地でも試すつもりのようです。
107
あとで資料を下さることになりました。
ちなみに、我が家の領地で始めた私の工房は全て領主直轄事業なの
で、
税金の取りこぼしはありません。
他に、金貸しから税金を取る方法を説明しました。
メルミーナ様から借りた本の中には世俗の事を話題にした話があっ
た。
その話の中に、借りてもいない借金のせいで没落し、子供が売春宿
に売られた話があった。
これを読んだときに、なぜ第3者の証文で証明できないのか、シス
テムの不備に怒れてしまったからだ。
国として、金額が一定以上の金貸しは、金貸しと、借り手だけで契
約せずに、
金貸しと、金を借りる借り手以外に、中立の貴族の印と、それを国
に登録しなければ
証文として有効にならない法律を作ったらどうかと。
そうすれば、返還終了も申告に来るので、利益に対して一律の税金
をかけることができる。
国への登録義務で証人として専任者がいれば、税金も入る。
ただ、証明する貴族と、商人Bが結託して悪いことをすれば嘘がつ
けるので嘘をつけない仕組みや、金額や内容によって承認を2人つ
けるなどが必要になると説明した。
メルミーナ様は、実現は難しいが良い考えだと誉めてくれました。
そして、満足した顔をされました。
108
それから、珍しい植物を植えて育てている話をし畑を見に行くこと
にしました。
ジャガイモ、サツマイモ、枝豆、スイカ、メロン、いろんな種類の
野菜やフルーツを見せました。
メルミーナ様は、始めて見たものが多く驚いていました。
どれもおいしいから、沢山増やしたいけどなかなか増やせないと私
が言ったら、
ヘイゼルさんが﹁ここは、研究の宝庫でしょ。私は、これを研究し
たいのです﹂
とメルミーナ様に説明してました。
メルミーナ様は、ジルベールの助けになるならやってみろとおしゃ
ってました。
これで給金はそのままメルミーナ様が払ってヘイゼルさんは研究に
没頭できる。
家に戻るまえにメルミーナ様が突然
﹁思い出した﹂と叫んでポケットからイヤリングを出しました。
小さなブラックオパールのイヤリングです。
女性用かと思いましたが、この世界では貴族は魔道具をつけるのは
特別なことではないようです。
男女問わず、指輪、腕輪、ネックレスにイヤリングなどのいずれか
をつけるのだそうです。
これを耳につければ、目の色が茶色に見えるそうで、左右両方につ
けるように言われました。
目の色を変える場合の魔道具は、目に近いところにつけるのが良い
そうで、
109
髪飾りか、イヤリングが一般的なんだそうです。
さっそくイヤリングをつけました。
別に自分では色が変わったか分かりません。
メルミーナ様は効果を確認し人前に出る時は必ずつけるように言い
ました。
前の帽子よりは取り扱いが簡単だし便利そうです。
私はお礼を言ってみんなで家に向かいました。
110
パーティ本番
家に入るとさらに3人お客様が来ていました。
一人はよく会うお医者様です。
別に病気をする事もなくすごしてきましたが半年に1回ほど診察を
してもらってました。
残りの2人は領主館で働いているメルミーナ様の部下の方です。
男性はライラ、女性はウルラーレ。
私が小さい頃からいるので、家によく来てくれた人です。
子供のジャックは王都で寄宿ぐらしです。
そして夕食です。
アメリは男性恐怖症です。
特に青年から40前後ぐらいまでの男性が怖いようです。
メルミーナ様や大司教様は範囲外なので、多少アメリの近くに居て
も大丈夫ですが他の男性は駄目です。
最近、よくやくトシアキが半径5m以内に近づけるようになり挨拶
だけなら話ができます。
くらい
今日の席は、トシアキは給仕を含め料理を持ってくるタイミングを
指示したりするので食卓にはつきません。
メルミーナ様と大司教様にアメリの状況を説明し、席の位置は位の
順にはできないと伝えたところ、若い女性のためならそんなこと気
にしなくても良いですよと了承していただけた。
我が家の最大の長テーブルは、片側に10名。
短い部分に2人。合計24名が座れます。
いつも家族で食事しているテーブルは10人様でもっと食堂に近い
別の部屋です。
この家は、割と結構大きい。
111
一応、伯爵家ですから。
さて、席順はテーブル端に左側にアメリ、右側に私です。
私の隣が、おかあさま、メルミーナ様、ウルラーレさん、アメリの
隣は、おばあさま、大司教様、クインさんです。
そして、残りの男性2人が間をあけて反対側に2席です。
事情は説明しましたが、あまりに離れていたのでちょっとびっくり
してました。
主食はこの地方で取れる山菜を入れた料理ですが、サツマイモ、ト
ウモロコシ、ジャガイモ、唐辛子や胡椒で味付けした肉料理を出す
と皆が驚いていました。
そして、サツマイモを使った芋焼酎を出しました。
水魔法で氷を作り、ロックで飲ませたところ男性4名は﹁うまい﹂
を連発。
特に一緒に出した枝豆と、ジャガイモを揚げたフレンチフライを食
べ非常にご機嫌。
メルミーナ様が、どうしても持ち帰りたいとおっしゃるので芋焼酎
は最後の1本があるからそれを渡すことに。
そしてジャガイモと枝豆は明日の朝一番に収穫して持って帰ること
になりました。
収穫を自分でしますか と尋ねたら。
是非にと喜んでいました。
そして、男性方は、芋焼酎が無くなった後おかあさまが秘蔵のワイ
112
ンを提供。
おつまみに私がマヨネーズと唐辛子をまぜた辛目のソースと乾燥イ
カをあえた食べ物を出したら興奮してました。
そして夜が明け、男性4人は二日酔い。
大神官様が、清めの魔法をかけてちょっと良くなったみたいです。
私は、朝ごはんに胃腸に優しい薬草を使った青汁とバナナをまぜた
ジュースを提供しました。
飲みやすいと好評です。
ここは国は南側にあるとはいえさすがにバナナは気温が合わないの
か夏は育ちましたが、外になると枯れました。
これは、温室で育てたバナナです。
まだ木が小さく数本しかならないので、ほんとに時期が合わないと
食べれません。
今回は惜しげもなく、2本ジュースに入れました。
まあ、正直バナナってそんなに好きだったわけじゃないんですよ。
昨日、1本食べたら満足しちゃった。
温室は、もともと花を作るためにあった設備です。
それほど大きな温室ではないので、バナナの木は1本で限界です。
本格的に作るには大規模な設備が必要ですが、移送中に腐るのでフ
ルーツ系は輸出の中心にできそうも無いです。
転移魔法がバンバン使えると良いのですが、この世界フルーツごと
きで転移魔法を使うほど使いやすい環境ではないようです。
輸送方法はもう少し研究が必要そうです。
朝食が終わり、メルミーナ様と、大司教様が揃ってジャガイモと枝
豆を収穫して持って借りました。
113
お酒はメルミーナ様だけです。
聖職者である大司教様がお酒を持ってけるなどありえないことなの
で、残り1本だけでしたがちょうど良かったです。
114
お米
魔法の訓練については開始していますが、
イメージすればその通りの魔法が使えるので特に一生懸命訓練はし
ていません。
クインさんの魔法を使う様子を魔力の可視化で見て徐々に魔素と言
うもの魔法と言うものが解ってきた気がしました。
しかし、まだ確証が取れるほどサンプルがあるわけでもなく徐々に
解明していくことにしています。
目の色を変える魔道具をもらったので、それをつけているなら領地
内を出あるても良いと言われ
執事のトシアキ、ヘイゼルさん、クインさんの4人で昼間は領地を
回ることになりました。
2日に1回程度ですが、いろいろと回っています。
今まであまり外と言ってもそれほど出回ったことも無かった。
領内を馬車で回ったことが何度かあった程度。
いままで領内の人たちとは会話をしたことはなく
また危ないからと魔物が出そうな山には行ったことがありませんで
した。
今は、戦力になる大人3人がいるので馬車が入れる道沿いならば、
領内で日帰りできるところはほぼ制限なく回ることができることに
115
なりました。
たまに馬車を降りて山歩きをします。
山は大変楽しくていろいろな山菜や木の実を見つけました。
きのこが生えてました。
しいたけやまいたけもありました。
これを育てられないのか聞いたところ、
ヘイゼルさんがきのこは種で増やすことができない。
きのこは育てるものでは無いと説明された。
きのこは、精霊の座った後に自然に生えるものだから人が増やすこ
となどできないと言われているそうです。
あれ、急に精霊のせい?
きのこは菌がついた木を日当たりの悪いところに置けばよいだけな
ので、
わりと簡単に育てられるはずだと説明し、
きのこが付いた木を切って収納魔法に収納し持ち帰ることにしまし
た。
木陰に木を置ききのこは10度から20度ぐらいの中で木を常に少
ししめら育てる。
実験開始。
で、きのこを育てらる事が証明され領地の特産物が一つ増えました。
ヘイゼルさんは最初は子供のたわごとと思っていたそうですが、結
果が物語っています。
どうして知っていたのかしつこく聞いてきたので、育っている環境
116
を再現しただけですよ。
と答えたけど納得してくれませんでした。
まあ、そりゃそうですよね。
また、ある時は、沼地に出ました。
その沼には、大量の米が自生していました。
これは、食べられるからもって帰ろうと言ったら、
こういう沼にはスライムが多く住んでいて、気をつけないといけな
いと教えてもらいました。
たしかに、よく見ると沼の奥は大量のスライムが。
さすがにあれだけの大量のスライムがいると、体の無事を補償はで
きません。
しかし、米が欲しかったのでマイボックスへの入り口を可能なかが
り延ばし、
米とスライムもセットでマイボックスに入るのではないかと思い試
してみました。
すると、マイボックスには生きている生物は入らなかったので結果
的には米だけが収穫できました。
スライムも研究に欲しいと言ったら、特別な袋につめて持って帰る
ことができるそうなので、
次回袋を持ってくることにしました。
家に帰り、米の殻を剥き、ゴルゴさんに渡すと喜んで鍋を使って1
合分程度蒸してくれました。
みんなで少しずつ食べました。
久しぶりのお米はおいしかった。
ゴルゴさんも、久しぶりの米だと喜んでいました。
117
ゴルゴさん、ヘイゼルさんと、沼に生息する米をどうやって集めて
安全に育てるか議論しました。
私とゴルゴさんは前世の知識があるので、即座に正解をだすと疑わ
れる気がします。
なにより異世界の米が、日本の米と全く一緒なのか解らなかったの
で明言を裂けた会話をしていました。
しかしさすが植物学者、ヘイゼルさんは上手く答えにたどり着きま
した。
沼にいた、スライムは、適度に放てば虫を食べる害虫駆除の効果が
あるそうです。
数が増えすぎないに注意すれば結構楽に米を育てられそうです。
来年米を育てるようにするために、今年中に田んぼを作り込むこと
を決めました。
さて、来年が楽しみです。
118
温泉
1日おきに領内の探索しているのであいた時間は魔法の訓練をして
います。
クインさんは魔力操作がへたでした。
私と一緒に訓練をしたら1ヵ月後にクインさんの総魔法力は倍程度に
威力もずいぶん増え、魔力操作の重要性がわかってきたようです。
私も順調に魔法のスキルが上達して来ました。
そして索敵のスキルレベルが上がってきたころ山の探索中に硫黄の
においがするところに案内してもらいました。
もしかして温泉が出るのかと、大地に手をあて、探索、水、土魔法
をフル活用してみる。
どうも250mほど下に温泉と思われる気配を察知、掘り進むと見
事温泉を引き当てました。
浅めのところに温泉があってよかった。
これで温泉を見つけられる事がわかった。
土魔法で簡単なお風呂を作ってきました。
これに、気を良くした私は人里で井戸を数箇所ほりました。
そして我が家の近くで500mほど掘り進めば温泉が出る場所を特
定し温泉を出しました。
数日間、絶対にあると信じてひたすら掘る。
最後の500mが現在の魔力到達限界ギリギリでしたので丁度足り
て良かった。
索敵ギリギリが魔力到達ギリギリなのだから当然ですが、遠いほど
119
土魔法の効果を発揮するが大変。
最後の1mを掘るのがきつかった。
その後、土魔法を駆使して自宅まで温泉をひきこみます。
空中だと冷えるので、魔力を使って土中1mに穴の周りを高熱で溶
かし
ガラス状固めたパイプを通して自宅まで温泉を繋ぐ。
温泉の量が多かったので、宿屋をやってはどうかということになり
温泉宿の建設と働く人の募集が始まりました。
完成には1年ほどかかるそうです。
こちらの建築技術は、ある大きさ以上の建物になると急に工期が長
くなります。
一般の家は土魔法で土台を組み合わせ、そこに時間をかける。
土台完成後は、平屋の一軒屋は、ポンポンと木とレンガを魔法で組
み合わせで簡単に建てる。
大きな宿屋は、魔法でポンと作ったりはしません。
宿屋の大きさになると3階建になるのでちゃんと柱を立て、木を組
み合わせきちんと作るようです。
もちろん、要所要所で魔法で構造物を強化する。
魔法を上手に使って建物を建てる工夫がされています。
山歩きは、いろいろな特産品を見つけるのに役に立ちました。
焼き物を焼く粘土の発見。
上薬になる石や、草。
そして、火魔法の訓練でわかった硝子の元を多く含んだ土など。
120
クインさんに焼き物を作るためのろくろの構想を説明。
さらに温度を一定に保つ小さめの炉の事を説明した。
当初、ろくろは魔力を使う必要は無く足回しで良いと構想を説明し
ましたが、クインさんが魔石を使えば簡単にまわせる装置ができる
と説明してくれた。
そこで試作してみるが、簡単には作れましたが動力に魔石を使うと
コストが高くなりすぎることが分かりました。
作っている製品の単価に対して燃費が悪い。
結局、足で動かすほうが速度も調整もしやすく、職人が作りやすい
ということがわかりました。
試作品ができる頃に、王都から、皿を作る陶磁器職人が一人来まし
た。
皿の職人も最初から増やすことはできない。
育成期間を考慮し、徐々に人を雇い育てていく事にしました。
近所の長男以外の子供たちを集め、農業以外にも職につけるように
この工場で試しに使ってもらうことにしました。
結果、幾人か使えそうなセンスを持つ子が居たようなです。
どちらかと言うと小さい子の方が感性が良く、学ぶことも真剣なの
で上達が早かったようです。
炉の方は、薪だけを燃やさずに火の魔石を上手く使えば、温度の制
御が楽に出来るとアイデアを足してくれました。
そしてその装置に詳しい人を王都から呼んでくれました。
121
結局こちらは魔石を上手に制御する魔法陣と組み合わせる事で温度
を均一に出来る事が解りました。
魔法、特に魔法陣は制約をつけると限定された使い方の能力が向上
します。
今回の温度制御の魔法陣は攻撃に使えない、温度調整機能を決まっ
た一つだけにするなどの手法を使うことで魔石の消費量を減らしま
した。
この地の産業が徐々に増えて行きます。
122
エレノアとニーナ
クインさんには子供が2人います。
ジルベール5歳の時に暮らし始めました。
ジルベール7歳の現在、エレノア6歳とニーナ4歳と共に女の子で
す。
クインさんは、私に魔法を教えてくれる家庭教師なので領主館に住
んでいます。
エレノアとニーナも一緒の家にいますので、お互いに兄妹の様に付
き合っています。
私は、いつも一緒に遊んでもらったジャックがいなくなり少しさび
しかったのですが
女の子とはいえ、この2人が一緒に住んでくれていたので助かりま
した。
エレノアは、ジル兄さんと呼んでくれます。
ニーナは、単にお兄ちゃんと呼んでくれます。
私は、エレとニナと呼んでます。
以前は、夜の人形遊びのついでてやっていた魔力操作の練習ですが、
今は、クインさんの担当時間に堂々と一緒に魔力操作の訓練をして
います。
ただ、彼女達にとっては、今でも遊びの一環のようです。
ニーナは、魔力操作中はいつも膝の上に乗ってきて甘え時間も兼ね
てます。
エレノアは、最初だけ手を握って操作の補助をしてあげますが後は
自分で綺麗に操作ができます。
123
私は魔力が見えるので、操作に対しての状況を教えているのでかな
りスムーズに上達してきました。
エレノアも、ニーナも最近はなんとなく魔力の流れが解るようにな
ってきたようで、
自分の意思で自由に魔力が操作できるようになって来ました。
もちろんまだ攻撃魔法は使えませんが、魔力を感じて無詠唱での魔
力操作は完璧です。
なぜなら、彼女達には遊びの中で見せていた土魔法を使ったお人形
遊びを徐々に教えていました。
これは、お人形に魔力を流して動かす方法です。
魔法は必ずしも詠唱が必要なわけではありません。
呪文が無くても高度な魔力操作ができれば簡単に人形を動かすこと
ができます。
最初から無詠唱で魔力の操作だけで教えていますが、
繰り返すうちに、無詠唱にも全く疑問を持たず、
本人達も魔法と意識しないまま普通に無詠唱で土魔法を使う方法を
習得していました。
彼女達は、お人形が動くのが嬉しいらしく思っていた以上にハマッ
テしまっていた。
さすが女の子。
そして、その姿を最近見かけたクインさんは、エレノアとニーナが
中級の土魔法を使ってるとびっくりしていました。
それも無詠唱。
魔力を流して物体を動かしたり、加工したりが土魔法に分類されま
124
す。
それを使ってぬいぐるみを動かすのは、非常に大変らしい。
魔法ってやっぱり呪文じゃなくてイメージ思い込みが作用するのか
と納得した事件でした。
2人ともジルベールが10歳の時に、クインさんをしのぐ魔法が使
えるようになっていますが、
それはまた今度。
125
魔法の話
私は、クインさんが来て以来2人で魔法の訓練を続けています。
そして基礎の一環で初級魔法を習い練習をしています。
本の通りに全属性を1種類づつ作動させ練習を続けます。
しかし、お手本で見せてくれる詠唱を使ったクインさんの魔法を魔
力の可視化でよく見ると
彼女の魔力の流れと、私の魔力の流れが少し違っていて違和感があ
りました。
魔法書によれば、水魔法は、少量の水が出せる魔法。
慣れると、氷が作れたり沢山の水が出せるようになる。
火魔法は、熱い火が出せる魔法。
温度を上げると持続力が減る。
慣れると爆発を伴う攻撃魔法が使える。
それらを分析すると、実は水魔法は水を出すのではなく空気の温度
を下げて結露した水を集めているのではないか?
という疑問をました。
説明のために、体の中にある魔力について、中にある時は魔力、外
に出すと魔素と呼ぶことにする。
火魔法は、魔力を体から集め手のひらの上に集中させる。
そして、体から取り出した魔素を加温させて温度を上げる。
126
逆に水魔法は魔素を減温させているのではないか。
ためしに、手の周りに魔素を纏い減温と意識すれば手の周りの空気
の温度が下がり水が出た。
これは温度を下げたことによる結露だ。
水を沢山出そうとすれば、風魔法で広範囲の大気に魔素を広め、周
り中の気温を下げ結露させれば沢山の水が出る。
これは、2系統の魔法が必要で頑張ってもコップ一杯からせいぜい
バケツ一杯程度。
だが、本にも書いてあるが、水はもっと簡単に大量に作れるらしい。
そこで、クインさんに水を集める詠唱魔法をなるべく多くの呪文で
試してもらった。
それで魔力の流れを追いかけると答えは、土魔法にあった。
結局、大量の水は足を通して土の中に魔力を流し土の中の水を集め
ているようだった。
大量に水が集められる人は土魔法を使っていた。
水を出すだけなら氷系と土系の両方で水を集めることができる。
畑に水をまく場合地中奥深くから集めるなら有効だろうが、単純に
土の表面の水を集めると水は増えないわけです。
それは無駄な行為。
なので植物への水まきは大気中から集めるか、地中奥深くから集め
る必要がある。
127
用途に応じて、魔法を使い分けないとダメだということだ。
そしてどうやら土魔法としてひとくくりに、いろいろな魔法が入っ
ていることがわかった。
魔法書では土魔法は、個人の特性によって大きく変わると書いてあ
った。
もちろん個人の特性も影響するがそもそも使っている魔力の流し方
や魔素の操作方法が大きく異なる。
土魔法といわれる系統は、基本的に物体と体が直接触れある程度の
塊で繋がっている。
魔力は大気に漏れ出さなければ体から出ても魔力といえる。
体から外に出して、大気に分散させると魔素になる。
物体を通して魔力を流す場合、どうやら金属に電気を流すのと同じ
ように操作しやすい物質と
操作しにくい物質がある。
鉄や銅は同じように乾いた土よりは操作しやすい。
複数の物質が混在すると操作しにくくなる。
なので、土を操作する時は水が合った方がやりやすい。
土魔法は物体が繋がっている時の操作方法で、
風魔法は大気中に放出し体から離れた魔素を操作するところに違い
がある。
物体に流れた魔力操作が全くできない人はほぼいない。
しかし大気中の魔素を操作できる人は全員ではない。
ジルベールは全属性の適合能力値があるので、魔力も魔素も同じよ
うに操作できる。
128
ただ、どちらも体の内部にある魔力操作能力に依存して得意分野の
操作能力が決まる。
そして土魔法とは、物体に魔力を流したことに加えて、
特定の物質を集めたり形を変えたりする。
物体を通した魔力操作は、体の内部で操作する魔力操作の延長なので
物体に魔力を流すまではできる人が多い。
その先の流した魔力で物体を変形させたり分離したり熱したりは個
人の資質に影響される。
その先の操作について、全ての種類がまったくできない人も少ない。
なので、多くの魔法使いが土魔法と別の系統を取得する事が多い。
単純に物体を魔力を流せた何でも操作ができるとは言えず、得意と
する分野があることが解った。
これは、クインとエレノア、私での検証結果なので、今後サンプル
を増やす必要がありそうだ。
もともと土魔法が錬成、ゴーレム操作、物体創造・造形など様々に
分岐していくとあるので、
あながち間違いでは無いだろう。
しかし、得意な形状を系統別で分けていくと、より早く得意な魔法
が分かり練習効果も高いと予想する。
これらはクインさんとの訓練の中で少しずつ理を発見し、改めて初
級魔法書の書き直しをしている。
その後、単属性魔法よりも、複合魔法、複属性魔法といろいろと応
129
用幅がある事もわかり、
本への記載内容は日々増えていった。
そして、訓練と研究を行う中で一つ違和感も出てきた。
なぜか私は、訓練しなくてもイメージさえできればいきなり高スキ
ルの魔法が使える。
全部の魔法では無い。
回復魔法や空間魔法、索敵に鑑定は除く。
まるで昔使えて記憶喪失になったけど使えち
これについては全く不明。
クインさんいわく、
ゃった。
と、いう感じだと。
それは、ドキッとするが、私の前世は魔法使いではない。
それには該当しないはず。
不思議です。
2017/01/01
辻褄あわせでだいぶ追記しました。
130
ジルベール家族紹介︵前書き︶
2章までの登場人物です。
多分。
131
ジルベール家族紹介
ジルベール・クロスロード 8月10日生まれ
神のスキルを一つ持って転生した
金髪、金眼
●ジルベールの家族
婚姻前リリアーナ・アインスロット↓婚姻後リリアーナ・クロスロ
ード︵47︶
163cm,90E,62,92
ジルベールの母親︵登録上︶
ジルベールが生まれた年が37歳。
金髪、緑眼
リリアーナの扱いは、常にアメリが我が子で1番。
登録上はジルベールが子供になっているが、扱いは雑。
︵27︶
ジルベールは本当の母親がアメリと知っているので全く気にしてい
ない。
アメリ・アインスロット↓養子後アメリ・クロスロード
165cm,88F,58,88
ジルベールの生みの母 17歳で生んでいる。
リリアーナの長兄が侍女に産ませた子。
5歳の時に実家に戻ったリリアーナが発見しあまりの不遇さに腹を
立て
そのまま引き取りわが子として育てた。
リリアーナ結婚から2年後に引き取られている。
ジルベール誕生後リリアーナの子供として正式に養子に入る。
132
金髪、緑眼
アナベル・クロスロード
ジルベールの父親
身長185cm
身長188cm
リリアーナ25歳で20のアナベルと結婚する。
茶髪、黒眼
カイン・クロスロード
ジルベールのおじいさん。
160cm
金髪 右目が金眼、左目は青眼
レイルーラ・クロスロード
ジルベールのおばあさん。
ハブスブロン侯爵家の娘
レイルーラの父親は、左目が金眼、右が黒
髪茶、両目黒
133
3.1 そんなこんなで、8歳に
メルミーナ様から8歳の誕生日の少し前に、ジャガイモや枝豆そし
て豆腐のリクエストがありました。
なんでも孫が5歳の誕生日で、食べることが好きなので驚かせたい
との事でした。
転移門で取りに来るとの事でしたが、料理ができる人も必要なよう
です。
こちらから転移門を使って配達、料理することになりました。
頑張れゴルゴさん。
クインさんと魔道具を作っていたときに、私が異世界からの召還魔
法で使う魔法陣を説明すると古代語で表現された魔法陣と解りまし
た。
クインさんが古代語専用の本を持ってきてくれました。
古代語を勉強し、この魔法陣を少し変えて使うと、魔法の効果を残
せる魔道具にできる事が解ってきました。
今回の食品を納品する時に荷物を小さくして運べると便利そうだっ
たので、みかん箱ぐらいの木箱に魔法陣をセットし空間魔法を閉じ
込めました。
すると、時間停止効果を持ち、空間が10倍に広がるアイテムボッ
クスが完成です。
魔石を消費し続けるので魔石から魔法力を供給する仕組みを追加し、
さらに時間停止ありとなしの2種類を完成させました。
小さい魔石をセットし空間魔法を維持します。
時間停止ありは、1個で1日。
時間停止なしは、1個で10日使えます。
両方とも魔石は10個セットできるように魔法陣に命令式を組み込
134
んであります。
荷物を入れたまま魔石の効果が切れると、再起動に魔石が3個消費
されます。
非常に優れものの移動道具ができたので、領内の色々な物の移動に
使ってます。
量産したのは時間停止無しです。
時間停止の方が作るのに魔力の消費が多いのも原因です。
時間停止ありは、今回1個料理長のゴルゴさんに渡しておきました。
今回の料理は、ヘイゼルさんが色々と作っている食品をゴルゴさん
と私で考えたメニュー。
いろいろと試行錯誤を行い、どの食品を持っていくか決めアイテム
ボックス一杯に詰め込み︵ホントは容量の半分も使ってないけど気
分的にね︶指定の日に出発しました。
転送門が使える旅なので次の日には帰ってこれるはずですが、料理
長が帰ってきたのは3日後です。
予定通りですけど。
折角なので、アイテムボックス一杯に︵こんどは満タン︶王都でし
か手に入らない品々を買ってきてもらいました。
みんながいろいろ頼むのでなれない買い物に店を探し回ったそうで
す。
何に時間がかかるって、それはもちろん女性用の香水や化粧品です
よ。
ゴルゴさんが言うには、料理を振舞った相手が王様の一族だったそ
うです。
到着後メルミーナ様の家から王城に連れられていかれ、めちゃくち
ゃ緊張したそうです。
メルミーナ様の娘が王妃の一人なんだから孫といえば当たり前だろ。
135
との一言だったそうです。
さすが王城で働くだけあり、そこの料理長は人望もありすごく親切
な人だったそうです。
緊張のあまり包丁を握ったらぶるぶる震えていた自分を支え、一緒
に野菜を切ってくれたことで、緊張が和らぎ料理ができるようにな
ったそうです。
そして、料理も手伝ってくれなんとか予定通りの物が作れたんだと
か。
王城の料理長から、残るかと聞かれたそうですが、とんでないと急
いで退出したそうです。
王様に出す料理を作るなんて恐れ多くて、もう行きたくないって言
ってました。
あれ、あなた、最初王城での料理人目指すと言ってたような。
﹁ゴルゴさん、王城で料理人になりたいんじゃなかったんですか?﹂
﹁王様の料理を作りたかったわけじゃなくて、王城で働く文官や騎
士向けの料理人を目指していただけです。
王城で働く料理人は料理人の中のエリート、さらに王様の家族向け
の料理人は頂点ですよ。
私にはおそれおおいです。緊張で死んじゃいます。まだ若いのに﹂
﹁まだ、若いのに死なれるのは困りますね。それだとメリーナ様に
怒られそうだし、
まあ、暫くはこの家に残ってください。もっとおいしい日本料理に
挑戦しましょう﹂と言うと、
﹁了解です﹂と元気に答えて、調理場に戻っていった。
136
137
3.2 レイルーラ・クロスロード
私ことジルベールの総魔力量がついに7万を超えた。
最近、急に増えていく。
少し前まで1000増えるとすごいと思っていたのに、
一月1万増える時もある。
魔力操作の訓練と、たまに大きく魔力を消費する訓練を組み合わせ
ると効果的に総魔力量なようだ。
魔力操作を繰り返し、入れ物を伸ばして、膨らます準備、そして魔
力消費が風船を膨らませる。
そんな感じ。
最近は、普通の魔法だけだと魔力が切れることも無く、余裕ですが、
キラキラモードの発動や、
特殊召還魔法を使うと、あっというまに魔力が底を尽きつきます。
キラキラモードは、総魔力量が5万を超えた頃から出来るようにな
った技で、発動すると体全体がキラキラ光って魔法の効果が劇的に
上がります。
しかし、すごく燃費の悪いです。
最近で、ようやく10分ぐらい変身していられます。
おそらく、こういった大消費魔法を持ってないとここまで総魔力量
は増えなかったかも。
最近の気になることで、おばあさまの具合が悪い。
おばあさまは、レイルーラ・クロスロード。
ハブスブロン侯爵家の娘で、厳しく躾けられた侯爵令嬢だったそう
で、
それはきっちりと私に継承されました。
138
と言っても、姿勢や、食事のマナーぐらいですけど。
調子が悪い時に回復魔法を使っていましたが、それが効かなくなっ
てきました。
寿命が近いようです。
この冬にインフルエンザのような熱がでて、なかなか治りません。
異世界から抗生物質を取り寄せ、飲ませると効いたので良かったで
す。
ここで問題が、こんな特別な薬を、どうやって入手したのか、おば
あさまが怪しんできました。
おばあさまには嘘がつけず、他の人に内緒にしてもらう約束で、前
世の知識があり、前世の世界から特殊召還能力を使って取り寄せた
と、正直に話しました。
おばあさまは、びっくりしようではありましたが、﹁ありがとう﹂
とお礼を言ってくれました。
ところが、治ったのもつかの間。
それから、すぐに具合が悪くなってきました。
高価な薬を使えば多少の効果はあるようですが、どんどん効きが悪
くなります。
もう、いよいよ最後が近づいているのが解りました。
おばあさまは、もう薬は良いと断ってきました。
私は薬の召還を止めました。
痛み止めはこの世界にもあり、効かない薬を飲むのを止め、痛み止
めだけを飲んでいます。
私は、薬の代わりにおばあさまを喜ばせるために異世界の高級化粧
139
品を召還しました。
数日間使って魔力を溜め込みようやく召還できました。
女性は幾つになっても女性です。
おばあさまは大変喜び、化粧をした姿を、何度も鏡で確認していま
した。
そして、その日の夜です。
化粧をした綺麗なまま椅子に座ったまま目を閉じた後、目を覚ます
ことはありませんでした。
亡くなった夜、おかあさまは達がいない時を狙って、
おばあさまの体に強引に魔力を直接流し込み、魔力の可視化、索敵、
鑑定魔法を総動員したら、
なんとなく、体を透かして中を見ることができました。
体のあちこちに黒く感じる異常な何かを見つけました。
そして病の原因がガンだと解りました。
悪い物質を土魔法の応用で分離し、体から取り出すと、大きなガン
の塊が取れました。
単純な回復魔法では、ガンを成長させてしまうので、治らなかった
なのではないか。
現状は、体のあらゆるところに転移していたので、少し前に気がつ
いたずら
いても、完治は難しく、
悪戯に痛みの発生を伸ばしただけになったでしょう。
術のやり方は解りましたが、同じような症状で初期ならば、がん治
療ができそうです。
回復魔法が効かなくなった時に、症状から発見した段階が、ガンの
どのステージなのか?
難しそうだな。
140
こういった病気については鑑定では解らないようだ。
医療系の診断と言うスキルが必要なのだろう。
そして、回復魔法も万能では無い。
回復魔法は、所詮自己治癒力の向上。
欠損部位の再生も、再生能力を極限まで上げたもの。
ただ、正常細胞にしか回復魔法は効果が出ないようなので、
癌の再生能力を上げ、進行させることは無いようだ。
命を短くする方向には働かない。
そう考えると他の魔法も含め、魔法の法則は、
かなり高度な医学知識や科学知識を駆使して適切に効果が分かれる
ので、
星の作りや、生物の起源など神の作りし物理式に並ぶ神の魔法法則
の存在に驚く。
伯爵夫人だった方の葬儀ですが、おばあさまのご友人もみな年寄り
ばかりで、
辺境の地までやってくる人は少なく、この地での簡単な葬式となり
ました。
この地域では、貴族といえど、一般的には葬儀は小規模で行われる
そうです。
あっさりと身内だけの葬儀が行われ、おじいさまと同じ墓︵区画が
一緒で隣です︶に入りました。
この世界では仏壇と言うものがありません。
教会の墓地に墓があり、家には特に何も置かないようです。
もちろん、お経もありません。
141
神父様が、お別れの言葉を言って終わりです。
こちらのお葬式は、あっさりしてるなー、と感じました。
あとは、亡くなってから30日,100日、その後は毎年お祈りに
行きます。
家では、おばあさまが大切にしたバラ園が残っただけで、
そのほかの引き継ぐ高価なもの以外は処分されます。
私は、首飾りなど数点を貰いました。
エレノアと、ニーナに一つづつ宝石のついた首飾り渡しました。
私にとっては、エレノアとニーナは兄妹のように感じていたし、最
近は一緒におばあさまの面倒を見ていたので、おばあさまからのプ
レゼントだよと、別けたら後でクインにすごく怒られました。
おかあさまが、慌てて仲裁に入ってくれましたが、あまり高価な物
を、結婚前の女性に送ってはいけないと、それは自分のためでもあ
るし、相手の女性のためでもあると。
これで婚約したと世間から言われると、どうするのだと。
怒る理由もわかり、配慮無く大変失礼なことをしたなーと反省しま
した。
2人が、小さくて良かった。
意図せず婚約になってたら、パワハラになるところでした。
これからエレノアとニーナは恋をしていくのに、いきなり小さい時
に領主様に召し上げられたと言われては、災難だっただろう。
結局、その首飾りは、お母様がおばあさまからの遺品として別けた
ことになり、ちゃんと渡せました。
142
残りの遺品は、無事おばあさまの遺言どおり、リリアーナお母様と、
アメリで分けています。
アメリは、最近、おばあさまが持っていたブラックオパールのイヤ
リングをつけています。
私がつけている目の色を変えるイヤリングと材料は一緒です。
﹁おそろいになったねー﹂とアメリが喜んでいるので、﹁私も嬉し
い﹂と返事をしました。
143
3.3 温泉宿オープン
もうすぐ、温泉宿もオープンです。
宿屋で働く人の面接をするらしいので、こっそり覗いて見ました。
幾人かは、下位貴族家の息子、娘から選ぶそうです。
特に宿長となる女将について、品位を下げないよう、下位貴族の夫
人を選ぶらしい。
給金も大目で募集したのが良かったのか、とても綺麗な人たちが沢
山集まりました。
女将は、30前後の落ち着いた雰囲気の女性を採用。
会計兼任の執事は、女将の旦那。
それともう1人、コックも男性2人が雇えました。
仲居は、集まった綺麗何処の若い女性から10人ほど雇っていまし
た。
仲居は、そのうち貴族子女が2人ほど。
8名は平民から選んでました。
最初から、そんなに沢山雇って大丈夫なのだろうかと不安になりま
したが、
領地の珍しい食事に、温泉なら口コミですぐに客が集まるので、
かなり強気の商売で行っても大丈夫らしいです。
おかあさまの見立てで間違いはないのでしょうから、お任せするし
かありません。
そんなこんなでオープンしてから暫く、本当に非常に順調にお客が
増えました。
目論見どおり。
珍しいご飯、それらがとてもおいしいと評判になり、宿はいつも満
144
員御礼。
半年先まで予約でいっぱい。
最近、領地に人が沢山訪れるようになりました。
そのまま領地に移住して来る人も出てきました。
人が増えて店もできる、工房もできる。
良いサイクルです。
母は忙しいと言っていますが、
人が増える事で開墾も行われ、場所に応じた様々な種類の食物が植
えられ食料の増産も順調、
思っているよりも順調に人口が増えていきます。
我が家にも温泉を引いていたので、お風呂を改造し、温泉を楽しん
でいます。
これに気をよくした私は、出かけるたびに井戸や温泉を探します。
近くの湖の少し上にあるひらけた平地の近くでも温泉が出ました。
そこは、冬は寒くて住めないのですが、夏の避暑地として大きな温
泉ホテルと
貴族向けの別荘を建てる計画が始まりました。
ホテルは2棟立て、1棟は少し高級。
3階建ての最上階はロイヤルスイート4部屋、2階、8部屋、1階
が10部屋。
もう1棟は3階が8部屋、残りの1、2階が10部屋。合計50部
屋。
ここは、夏しか工事ができず、周りに魔物よけの結界も張り巡らせ
る必要があり、
完成まで2年ほどかかります。
出来上がりをのんびりと待つ必要があります。
145
貴族向けの別荘は、貴族向けとしては小型ですが4LDK一軒家を
少しづつ建てて、
販売を開始する予定です。
数年かけて少しづつ拡張する予定ですが、職人の集まりも良く、
想定よりは早く大きくなっています。
146
3.4 レイブリングとエイミー登場
人気絶頂の宿屋に、特別なお客様が来ると連絡がありました。
将軍と呼ばれていた男性です。
彼は、父アナベルの元上司です。
それも、父が亡くなった時の直接の上司です。
彼は、去年発生した大規模な魔物の討伐で右足を失い、失意の元、
将軍を引退したそうです。
彼は、ここの温泉は療養のために、1週間ほど滞在するそうです。
帰る前に、家に訪れたいと連絡がありました。
せっかくなのでゆっくりと休んで欲しいと、帰る前日に来てもらう
ように伝えてあります。
そして、予定通り、帰宅前日の昼間に、我が家に来てくれました。
今日は、夜ご飯を一緒に食べることになっているそうです。
父が亡くなった状況を説明してくれましたが、正直顔も見たことも
ない父のことは、あまり興味ありませんでした。
それよりも、将軍と呼ばれたこの人の闘いの話しに興味がありまし
た。
彼は、魔法剣士。
魔法も一流。剣も一流。
そして魔物に対する知識も幅広く、彼の話はどれもこれも面白かっ
た。
次の日、帰宅する前に手合わせをお願いしました。
子供相手ということと、やはり足が無くなってから動けないので、
元将軍様の片腕と呼ばれる女性の元仕官、エイミーが相手をしてく
れる事になりました。
147
エイミーも、同じく怪我をしてしまい、今は全力が出せなくなって
しまったので将軍と一緒に退役。
今回の療養に旅について来たそうです。
女性と侮ってはいけない、剣の腕だけなら自分よりも強いから、エ
イミーと剣を交えるのが良い経験になるだろうと説明してくれまし
た。
けして自分がやりたくないからでは無いよと、いうことらしい。
そして手合わせをすると事に。
彼女は、非常にすばやく、変幻自在の剣裁き、ともて面白い剣筋で
した。
これで、怪我をして全力で無いとは。
数手の手合わせで、その強さは並ではないことがすぐに分かります。
私は、魔力を全身にめぐらせ、身体能力をアップさせ、エイミーの
剣を受けます。
確かに強いのですが、最大まで魔力をめぐらせると、余裕で裁けま
す。
彼女の剣は、私に合わせているようで、速度を上げるとあちらも上
がる。
子供相手に手加減をしているのは良くわかりましたが、
私がほぼ全力まで力を上昇させさたら、余裕が無くなってきました。
そして彼女の特徴的な剣技を真似して返すと、あっさりと剣をはじ
きとばしました。
勝ったかなと少し気を抜きそうになったその時、
驚きました。
148
剣が飛び去るやいなや、急に彼女のこぶしが私の顔面に飛んできま
した。
剣がなければ拳がある。
それがエイミーの流派のようです。
つまり、剣がはじかれるチョイ前に、はじかせて隙を作る作戦に変
わっていたわけです。
私は、作戦に引っかかり一瞬隙ができてしまいました。
しかし、エイミーのこぶしがあたる瞬間、私は可能な限り全力で風
魔法をくみ上げバックステップで下がる。
それを感じたのか、無拍子で蹴り技が飛んでくる。
僅かに横にずれ、直撃をさける。
私が彼女の、足をつかもうと、すると反対側の足でケリが来る。
そして私の体を挟み込むように両足が迫ってくる。
逃げ場を求め、とっさに上に飛びぬけ、直撃を避ける。
当然、上に飛ぶのはわかっていたとばかりに上にパンチ。
私は、上空に逃れた状態で、次の気配を感じ、悪いとは思いつつ、
相手の気配の反対側に瞬間転移。
私は、魔法訓練の結果、空間魔法を使って目で見える範囲内の近距
離について、好きな場所に瞬間移動ができるんです。
そして、彼女の背後から蹴りを撃つ。
エイミーは、突然の移動に驚くも、体が反射的に反応するのか、流
れるように下に逃れ、さらにエイミーが蹴り上げてくる。
私は、蹴りを利用し、そのまま足の上に軽く触れながら勢いを利用
して飛ぶ。
149
チャンスとばかりに、着地点に向けてスライディングタックルをす
るエイミー。
難なく、浮遊術で上に止まったままタイミングをずらし、スライデ
ィングしてきた体の上に着地。
そして、目の前に剣を突きつけエイミーが負けを認める。
﹁まさか子供に負けるとは。消えるわ、浮くわ。あれは無理無理﹂
と。
﹁全力が出せていないからですよ。足の怪我が治ってないんですよ
ね﹂と。
体の横に移動して、右足に向けて、回復魔法をかける。
右足が若干光る。
光が収まった後、びっくりした顔し、将軍の顔を見てから、全力で
ジャンプ。
ちょっと、すごいジャンプ力。
私の身長飛び越えてないか?
﹁ヤッホー。すごいすごい。
全盛期と一緒だ。
やーたー。すごすごい﹂
とすごいすごいを連発し、大声で叫んでました。
将軍が﹁エイミー。ほんとに治ったか?﹂と。
﹁治った治った。どういう仕掛けかわからないけど、治ってる﹂と。
私が、将軍に近づき、
﹁将軍の足を直したら、この領地にとどまり、私に戦いの術を教え
150
てくれますか?﹂とたずねたら、
﹁聖女が治す回復魔法でも、失った足をもう一度取り戻すなど聞い
たこともない。
伝説のエリクサーと呼ばれる薬があるならまだしも、
仮にエイミーの怪我を君が回復魔法で治したとしても、エイミーの
足を治すのと、私の足を元に戻すのはレベルが違うだろう﹂と。
私が﹁治れば、ずっと居てくれるかと質問したのですが、答えてく
ださい﹂と言うと。
﹁無理に決まっているが、本当に治るなら、いくらでも戦いの術を
教える。
全く、馬鹿にするにもほどがある。
いくら子供でも、言って良いことと悪いことの区別ぐらい.....
﹂
その時、無くなって部分の付け根が光りだしだまりこむ。
私が文句を言う将軍をほっとき、しゃべっている途中にも関わらず、
最大級の回復の使う準備を開始。
私の魔法は、特殊です。
スキルレベルが低くても、イメージさえできれば、スキルレベルを
無視して魔法が使えます。
まるで以前レベルマックスまで習得していて、単に使い方を忘れて
いたかのような状況です。
しかし、空間魔法や、回復魔法は、これに値せず、訓練しなければ
スキルレベルが増えず、
大きな魔法が使えません。
しかし、キラキラモードを発動すれば現在のスキルレベルに関係な
く、最大級の回復魔法を使える。
151
キラキラモードの発動は大量の魔力を消費する。
現状の8万程度の総魔力量だと、10分チョイで魔力が枯渇します。
全力で戦うともう少し短くなるかも。
しかし、この状態での魔法は、めちゃくちゃ強力。
私は、キラキラモードを発動し、最大級の回復魔法を使いました。
元将軍が﹁両金眼に変わった﹂とボソッとしゃべる。
そして、元将軍の足が輝くと、あっという間に元に戻りました。
唖然とする元将軍。
エイミーが近づいてきて足を突っつく。
﹁レイさん、ほんとに足があるよ﹂と。
﹁そのようだな。動かして見るから離れてくれ﹂というと、足を動
かします。
右足だけが靴を履いて、左足は今生えてきたので裸足。
バランスが悪かったのか、両足ともに裸足になり、歩く。
そして走る。
その間に、私は、自分のステータスを確認したら、全ての魔法が7
2時間封印となっていた。
年齢に合わない危険な魔法を使ったため、生命保護の為に魔法を封
印しますと説明書きがある。
え、危険だったの、危なかった。
152
先に教えて欲しかったよ。
このステータス確認便利だなと思いながら、異世界転移組みって有
利だよな。
他の人は、自分のステータスが確認できないんようだし。
鑑定で他の人の力やすばやさなどを確認できるが、自分のステータ
ス確認は、魔法では無いらしい。
そして、相変わらず、いまだに自分のステータスは総魔力量以外は
成長中となるだけで見れない。
不思議だ。
153
3.5 仲間に
ひととおり動いた後で、私の前に、そして土下座。
﹁失礼した。子供と思い、馬鹿にしてしまった。申し訳ない。
もうすでに死んだも同然と思っていたこの身。
わが身で役に立てるならば、約束どおり、貴方様のためにお使えか
えせてください﹂と、
そしてエイミーもそれを見て、
﹁私も、よろしくねー﹂と気楽な声ではあるが、
同じく見事な土下座をしてきた。
態度と、話しかたが一致しないのが受けて笑いながら、
﹁頼んでいるのは私のほうですよ。土下座なんてやめてください。
そして、最初に言ったとおり、戦いの術を教えてくださいね﹂と
﹁もちろんでございます。我が主。これより私の持てる全ての術。
魔物に対する戦い方や、戦術など全てを貴方に伝えます。是非に、
是非に。貴方様のために尽くさせてください﹂
﹁えっと、まず、これからも、普通にしゃべってください。
私に敬語とか使わないで、下さい。
年も違いすぎますし、先生をお願いしてるのはこちらですから。
では、改めてジルベールです。
こちらこそ、おねがいします﹂と言うと
﹁わかりました。
154
いや、解った。
あらためて、私は、レイブリングです。これからは、レイとでも呼
んでください﹂
﹁私は、エイミーだよ。
私に対しても敬語は必要いらないよ。
あ、私は、敬語つかえないから、良いかな?
ダメなら黙ってるけど。
昔から黙ってればご令嬢って言われてたんだけど、
やっぱり、しおらしくしてた方が良いかな?
あ、私の事は、エイミーって呼び捨てで良いから﹂と。
1人でどんどん話すエイミー。
またまた受ける。
﹁あははは。
エイミーさん、別にそのままで良いですよ。
楽しそうな人ですね。
これからいろいろと教えてもらいので、よろしくお願いします。
私の事は、ジルとでも好きに呼んでください。
それと私にとって、お2人は師匠になっていただく訳ですし、年上
で、さらに身分も上ですよね。
特にレイブリグ様を呼び捨てはかなり無理があるんですが、頑張っ
てレイさん、エイミーさんでも良いですか﹂と言うと、
﹁私は、それで良いです﹂
﹁うーん、ジルちゃん、私はエイミーで呼び捨てで良いよ。あ、ジ
ルちゃんはまずい?﹂
﹁良いですよ。よろしくエイミー﹂と答えると、エイミーは満足そ
うにうなずいた。
155
レイさんが最後に﹁まあエイミーはエイミーだから、しょうがない
か。
これでも国内唯一の剣王の称号持ちです。
ジル様のお役に立つでしょう。
剣はエイミーが教えた方が良いでしょう。
私は、魔物との戦い方など、広範囲の基礎を教えます。
では、ジル様のおかあさまにあらためて挨拶に行きます﹂と、2人
で歩いていった。
なんか変な関係になってしまいましたが、
とりあえず、おかあさまに頼んで住む所を用意してもらおう。
空き部屋があるから、この家に居てもらえると良いなと。
その夜、おかあさまから、二部屋を貸すと話がありました。
レイさんとエイミーさんは結婚していないので、別々の部屋です。
2人の関係は詳しく聞いていないので、良くわかりません。おいお
い解るでしょう。
とりあえず今日は、我が家で夕食を食べ、宿泊している宿に戻りま
した。
明日には荷物を持って家にやってきます。
次の日から、レイさんの剣術。
こちらは正統派の剣術。わが国の騎士の剣です。
エイミーは我流というわけではなく、とある一族に伝わる独自の流
156
派だそうです。
偉い人を守るための護衛の剣だそうです。
なので、剣をはじかれたらすぐに拳に切り替えるんだとか。
自分が抜かれると、後ろにいる守るべき人の命が危ない。
敵にくらいつき、負けるにしても時間を稼げば主が逃げることがで
きるからと、剣だけでなく、格闘術も含めた流派だということです。
レイさんは、剣術の基礎的な事と、いろいろな魔物の特徴、倒し方、
そして戦の戦術などいろいろな事を教えてくれることになりました。
レイさんエイミーは、私に教えてくれるだけでなく領地内の自警団
にも出向き、稽古をつけてくれることになり、我が領土内の防衛力
がぐんと引きあがりました。
157
3.6 日々の成長
レイさんは、光魔法の使い手で剣もかなりの腕前だ。
光魔法は、魔素を、聖属性光り粒子に変化させ、好きに操作できる。
光は、聖魔法の効果を持つ。
実は、聖魔法と、光魔法は似ている。
どちらも聖属性に分類される。
聖魔法は、守り側の要素が強い。
光魔法は、攻撃の要素が強い。
光魔法は、邪を滅する光を放ち、それを剣の形や盾として具現化し、
戦うことが出来る。
聖魔法は、回復系の癒しと、邪を滅したり、防御したりする魔法が
使える。
聖属性魔法を使えるとは、光魔法の一部と、回復系の魔法が使える
人の総称だ。
回復系が使えると、光魔法もセットで使えるが、具現化まではでき
ない。
光魔法の攻防は、
基本は、魔素を聖属性の光り粒子に変換し、明るくする。
聖属性の光粒子の応用として
聖属性の光り粒子に硬度を持たせ、攻撃や防御に使う。
聖属性の光り粒子に魔法耐性を持たせ、魔法防御、魔法無効化とし
て使う。
聖属性の光り粒子を光学迷彩として使い透明化する。
158
闇属性の暗黒粒子を操作する逆側の魔法があるが、人で使える者は
いない。
光魔法の一番初歩は、ライティング。
明るくするだけの魔法。
それを発展させると、剣を作れる。盾を作れる。
そして広範囲の魔法・物理両方に有効な結界。
レイさんは、結構大きめの剣と盾をだして魔物と戦える。
魔物は、通常の剣よりも光魔法の剣に弱い。
光魔法の剣の切れ味もすばらしく、一般的な剣と打ち合うと、相手
の剣は間違いなく折れる。
そのくらいの威力があるので、普通の魔物は、あたれば殺せる必殺
の剣になる。
普段は、消耗が大きいので、魔力伝導率の高い剣を使い、表面に光
魔法を纏わせて戦う。
エイミーは、剣王。
女性では珍しいが、小さい時から剣が好きだった。
16歳で貴族の高校を卒業後、騎士学校にはいかず、国を出て、剣
の修行に向かった。
隣国エルラドに、剣の有名なメッカがあり、そこに向かった。
その地でひたすらに剣を磨き、剣王となってから、国に戻ってきた。
︵普通の努力程度では剣王にはなれません。才能と血のにじむ思い
の努力です。︶
159
この国には剣王の称号を持つ剣士がいなかったので、騎士団には簡
単に入れた。
ちょうどレイブリグが将軍になった時だった。
鳴り物入りで入団したエイミーがレイブリングの側近として配属さ
れ、
それ以後ずっと一緒に行動していた。
この旅行前の事だ。
15m級と言うかつて無い最大級の竜が現れ、緊急で集められた精
鋭の近衛を含む1個連隊約100名超で討伐に向かった。
レイブリングを含め多数の重傷者を出した。
最終的には、片足を犠牲に、レイブリングが光の大剣で出し首を落
としたわけだが。
参考:この国の魔物討伐時の隊の名称
小隊5名︵兵4名に小隊長1名︶
中隊 10から20名
大隊 25∼50名
連隊 75∼150名
旅団 200名前後
師団 500名前後
※戦争時の対人では、もっと兵力数が変わる。
魔物討伐で師団以上はほぼ無い。
将軍は、師団以下を率いることの出来る称号。
そもそも、竜の退治に100名は少ない。
あくまでも緊急で、本隊は別の召集をかけていた。
第一部隊の役割は足止めだった。
足止め戦力なので、討伐は困難を極めた。
160
そして、なかなか来ない本隊。
ここを突破されると、村が全滅するところまで来た。
レイブリングさんは、撤退に待ったをかけ、最善を尽くすことにし
た。
最後の案は、一般兵が掘った落とし穴に落とし、
一瞬、足を止めたところに、魔法使い10名の部隊が最大攻撃を放
ち、
その隙をついて、エイミーとレイブリングで倒すという、めちゃく
ちゃな作戦だった。
ここで無茶をするのは、自分とエイミーに限定した。
それで、トライし、なんとしてもここを抜けて、国内に入れること
が無いよう考える。
結局は、ほぼ予定通りに物事が進み、隙ができたところをエイミー
が攻め、首に傷を入れた。
竜は最後の力でエイミーに攻撃、エイミーは多大なダメージを追い
ながら、
さらに強引に首を切の傷を大きく削り取った。
最後にレイブリングが突っ込み光の大剣で首を落とす。
しかし、振り下ろしていた竜の腕は止まらず、カギヅメで左足のひ
ざから下が削り取られた。
最終戦までに、死者10名。重量者50名がでた。
レイさんは、そういった魔物との戦いのプロフェッショナル。
国内国外の大きな討伐を何度も経験している。
161
魔物退治だけなら、16歳からずっとすでに30年の経験がある。
レイさんは、その経験から、魔物の特徴、倒し方などを教えてくれ
る。
竜戦のような大規模討伐については、戦略的なメンバーの使い方も
教えてくれた。
エイミーは、剣。
変幻自在、そして最後まで倒れない不屈の精神と、応用力のある剣
技。
完全復活したエイミーの本気の撃ち込みは、単なる身体強化だけで
は全く歯が立たない。
魔力の可視化で、流れをつかみ、何とか防御は出来るものの、攻撃
には転じれない。
隙をついて攻撃すると、それは誘われていただけで、まんまと撃ち
込まれる。
そして、徐々に気がついてきた。
エイミーは、魔力の方向と関係ない方向に動くことがある。
それを指摘すると、﹁やっぱり流れで先が読めているのか。おかし
いと思った﹂と言われた。
剣王のその上のクラスで使える技で、エイミーもまだ習得中で、た
まにしかできないそうだ。
達人クラスになると、魔力の気配を読んで攻撃するのが当たり前だ
そうだ。
それが通用するのは剣王まで。
称号について少し説明しよう。
4流派の頂点が剣帝。それを束ねるのが剣神。検帝の下に、4名の
162
剣王。
<1剣神。4剣帝。16剣王。>
これが、剣の頂点を極める人々の頂点の称号。
魔力の流れが読めることでつかめる剣王。
そしてそれをごまかせる剣帝。
さらに、無敵の剣神。
剣王クラスになれば、一般の魔法使いとは戦いにならない。
中規模の魔法までは魔力を纏った剣で魔法をはじくこともできる。
そして、そもそも、魔法を放つ前に、剣が届く。
剣王1人で、100人の騎士を相手に出来るといわれている。
実際にどうなのとエイミーに聞くと、
﹁素人なら100人と戦えるけど、騎士だと10人が良いところだ
よ﹂と。
そりゃそうだよね。
どんだけ買いかぶっているんだか。
そんな感じで、色々な討伐の話を聞いたりしながら日々訓練を繰り
返し毎日が過ぎていきます。
そして、すこしづつ大きくなります。
163
3.7 竜が出た。︵前書き︶
唐突ですが、竜退治です。
竜を倒した後、竜が再登場するのはかなり後です。
ここで登場する黒狼は、キーとなるキャラです。
では、お話をお楽しみ下さい。
164
3.7 竜が出た。
レイさん達が来てから、半年ほどたった。
今は冬。
冬と言ってもこの領地では雪は降りません。
日本の南側に近い気候なので、冬でもそれほど寒くはありません。
その日、レイさん、エイミーさんは自警団と共に山が騒がしいと。
どうやら大型の狼型の魔物が出たとの事で、全員で討伐に行きまし
た。
それから少ししてから、山の方に、急に大きな魔力を感じます。
とても不穏な気配。
私の索敵スキルが警告を出します。
いやな予感がした。
私は覚えたばかりの転移術で、エイミー達の元に向かいます。
現状の転移術は、見えているところへの移動しかできません。
見える範囲の移動は、瞬転と呼んでいます。
この瞬転を使って、可能な限り遠くの空中に転移し、浮遊術で着地。
その後は小距離の瞬転を数回繰り返すと、
そこにいたのは、1体のとても美しい8m級の小型のホワイトドラ
ゴン。
私が到着した時に、エイミーに向けてホワイトドラゴンが火のブレ
スを撃ち込むところでした。
165
危機一髪、結界魔法を前面に出し、エイミーを守る事ができました。
レイさん、エイミーを含め、自警団のみんなは誰一人死んではいま
せんでしたが、重症者が数名います。
周りを見渡すと、大きな黒狼が1体横たわり、その横に小さな黒狼
の赤ちゃんが傷つき倒れていました。
片膝をツキ、満身創痍のレイさんに
﹁レイさん、逃げれますか?﹂と訊ねると、首を横に振って、残っ
た魔力で光の盾を作り出すが、剣は光を纏えていない。
その状態でよろよろと立ち上がります。
﹁なんで、竜なんかと戦ってるんですか、すぐに逃げるべきでしょ
う﹂と言うと、
レイさんが﹁すまん、前回よりもかなり小型だったし、エイミーも
私もあの時よりも強い。
良い武器もあり、メンバーも強い。
このクラスならば経験上30名で討伐できた経験があった。
ここで逃げれば領地も危険だし、いけると判断して立ち向かってし
まった。
しかし予想とは全く違う。小型ではありえん強さだ。
すまんが、エイミーを連れて逃げてくれ、なんとか時間を稼ぐ﹂
と言っても、よろよろな状態で、とても時間など稼げるとも思えな
い。
覚悟を決めるしかなさそうだ。
倒さねば。
私は意を決し、マイボックスから神石をつけた杖を出した。
166
そして迷うことなく、水の最大魔法を撃ち込む。
私の最大魔法、<水龍>を撃ちはなつと、ホワイトドラゴンに直接
当たるも魔法障壁に阻まれたのか効果が薄い。
ホワイトドラゴンは、攻撃など効くものかと言った表情で、いかに
も馬鹿にした様子。
しかし、全く効かない訳では無い。
数発、ほぼ同時に放つと、すこし効いているようだ。
魔法の効果が薄いなら撃ち続けるのみ。
キラキラモードを使えば、威力は更に増す。
一発が10倍ちかい威力になるはずだ。
意を決して、キラキラモードを発動。
現在総魔力量9万あるので、15分ぐらいが勝負。
私はキラキラモード発動と共に、次々に水龍魔法を撃ち続けた。
およそ、100発以上を撃ち込む。
攻撃を止めて、相手を見る。
周りは原型を留めないほどめちゃくちゃになっているが、ホワイト
ドラゴンも当然、結構ぼろぼろになってはいる。
良し、あと1撃、大きいのを撃てば勝てそうな感触。
私は、大きな魔法を使うために少し攻撃の手を緩めて魔法に集中し
た。
が、
竜は、怪訝な表情でこちらを見、そして意を決したのか、大きく息
167
を吸い込んだ。
しまったブレスが来る。
攻撃の魔法はまだ間に合わない。
私は全力で結界魔法を前面に作り出す。
そして最大ブレスの攻撃が。
私は耐えた。
耐え切った。
が、私はこの攻撃で切れた。
大きな声で﹁危ないだろ馬鹿﹂と、叫びと同時に瞬転で移動。
ホワイトドラゴンの目の前に移動。
そして﹁死ぬかと思っただろが!﹂と叫びながら、ブレスを吐きき
ったまま口を開けっぱなしにしていたホワイトドラゴンの頭を杖で
思いっきり殴った。
そのまま地に伏すホワイトドラゴン。
つづいて、最大力で雷の魔法を叩き込むと、やはり、予想通りホワ
イトドラゴンは撃沈。
同時にキラキラモード終了。
ふー、ぎりぎりだった。
倒れたホワイトドラゴンは、明るい光を放ち、人間に変わった。
それも女性に。
あれ?どうして?。
様子を見ていたエイミーが、女性に近づき触って見ると、普通に気
絶しているようだと。
回復魔法を使おうにも、魔法力は使いきっていたので、私は何もで
きない。
168
自警団の動けるメンバー数人とレイさん、エイミーで倒れた女性と、
怪我をした自警団メンバーを連れて帰ることに。
私は、先ほど怪我をして倒れていた黒狼を助けたいとレイさんに頼
むと、
﹁黒狼は魔物ですよ。
けして人に懐くことはない﹂と説明されましたが
﹁怪我が治れば森に戻せばよいから﹂と、つれて帰ってもらいまし
た。
帰りに、エイミーさんから、お話が。
﹁2つ言いたい事があるんだよね﹂といつもの気楽な調子で話し始
めた。
私は、無言のまま、エイミーさんの顔を見つめます。
﹁まず1つ目。ジルちゃんは、大切な領主じゃん。
皆が守るべき立場の人だよね。
私もジルちゃんを守るって誓ったんだよね。その守る対象が、わざ
わざ危険に飛び込み、部下のために命を投げ出すようなことをする
って、領主のやることじゃないから。
自重してね。良いね﹂
﹁はい﹂私は素直に返事をする。
﹁そして2つ目。助けに来てくれてありがと﹂と言って、ほっぺに
チュウをされた。
私はちょっと照れた。
そして、みんなが助かって良かったと心から喜んだ。
私は、家につくと、おかあさまからの文句を聞くよりも先に、倒れ
るように眠ってしまいました。
169
3.8 竜撃退後
次の朝になっても倒れた女性は起きていないそうです。
おかあさまから、無茶をした行動をひととおり叱られた後、
とりあえず昨日の黒狼のところに行き、復活した魔力を使って傷を
回復させ、食べ物を与えました。
食べ終わると、お礼を言いたいのか、すりよってきたので、なでて
おきました。
もう一眠りするようだったので、その場を離れます。
再び女性の下へ、レイさん、エイミーさん、クインさんが見守る中、
女性へ回復魔法を使います。
すると、ゆっくりと目を覚ます女性。
起き上がったので、水を渡すと飲み干します。
銀髪に、両目が銀眼。
この人、透き通る様な綺麗な目をしためちゃくちゃ美人です。
そしてベッドから起き上がろうとするが、クインさんがそれを押し
とどめた。
ベッドに入った状態で、少し起こし、そのまま女性がしゃべった。
﹁あのような状態の後にも関わらず、助けていただきありがとうご
ざいます。
私は竜王バハムートの娘、ティアムトです﹂
170
と綺麗な礼をした。
お、やはりちゃんと人の言葉をしゃべれると安心。
﹁私を倒した貴方様のお名前を教えていただけないでしょうか?﹂
と私を見つめるティアムト。
ちょっと緊張。
﹁私はジルベール・クロスロードです﹂
と、頭を下げて挨拶をする。
﹁すいませんが、状況を教えていただけないでしょうか?
一つは、なぜホワイトドラゴンがあそこにいたのか、
そして、なぜ倒したホワイトドラゴンがあなた、つまり人間の女性
になったのか?﹂
その他にも訊きたいことは沢山ありますが、まずはこの二つでしょ
う。
﹁はい、私たちの竜族は、100歳になると、成人の儀として10
年間、
世界を回る旅をする事になっています。旅の途中で強き魔物を倒し、
さらなる強さを身につけるためです。
私が、この地にいたのは、単に旅の途中の道中であっただけです。
たまたま強き黒狼の生体を見つけたので、戦っていたところ、あな
た方と遭遇し、そのまま戦いになりました。普段は人間と争うこと
はありません﹂
﹁そう、それでなんで貴方は人間の女性に?﹂
一つ目の質問に答えただけだったので、もう一度質問をしなおす。
﹁我が種族は、皆、人間に変身できます。
私の母は、人間であったようです。
なので、私だけは、平常が人間で、戦う時だけホワイトドラゴンに
なると言ったほうが良いかも知れません﹂
話を続ける。
171
﹁私は、始祖バハムートの娘。私は、少し小型ではありますが、
他の竜達より、はるかに強いのです。
我が一族で私に勝てるのは、父バハムート様ぐらいです。
まさか人間のしかも子供に負けるとは思ってもいませんでした。
しかし、戦いの最中、貴方の目は金色でした。
今はなぜ色が茶色になっているのですか?﹂
﹁あー、普段は魔度具で色を変えてます。見たのならもう良いか﹂
とイヤリングをはずしました。
すると﹁貴方様も、父と同じですね﹂
﹁竜王バハムート様と一緒とは?﹂
﹁父も、両金眼です﹂ しばし沈黙。
両目が金眼が、他にいた。しかも 人間ではなく、竜王。
もしかして竜王バハムートも転生者なのか? 疑問はあるが、ティ
アムトに訊ねても解らないだろう。
機会があれば、会ってみたい。
が、会いに行けば死にそうで怖い。
止めたほうが良いだろな。と勝手に納得。
﹁ところで貴方の旅は後何年残っているのですか?﹂
﹁はい、あと5年残っています﹂
﹁そうですか、では体調が戻るまでは、ゆっくりと休憩し、回復し
てから移動してください。
それと、貴方が倒した黒狼の子供もここにいます。
あなたを見かけて、敵と判断するかもしれないので、気をつけてく
ださい﹂
172
﹁解りました。子供については、申し訳ないことをしましたと思っ
ています。
そもそも戦いになってしまった理由が、子供を守る黒狼の領域に入
り込んでしまったためだったのですが、最初はそれに気が付かず、
気が付いた時には混戦になってしまい。
こちらも退けば一瞬のミスで致命傷を負いかねない状況でした﹂
﹁そういことですか。
まあ、黒狼はまだ小さいですから、どう行動するか解りません。
あなたに戦いを挑むとは思えませんが、襲っても手助けはしません。
それについては、ご自分で対処下さい﹂
そして、侍女が、おかゆやスープ、果物などの軽食を持ってきまし
た。
﹁まずは、おなかに優しいものを胃に入れてください。
後でもう少し力の付くものを持ってきます﹂
ティアムトが食事をを始めたので、侍女を残し、我々は席をはずし
ました。
173
3.9 太郎︵前書き︶
2016/10/24
ブックマーク50になりました。
減らないことを期待します。
174
3.9 太郎
ティアムトが完全に回復した後、黒狼の子供が対面した。
黒狼はうなるが、自分から攻めることは無かった。
﹁ごめんなさい﹂といながら抱きしめると、抵抗するでもなく受け
入れていた。
魔物の世界は、強さが何よりも重要。
情などよりも、強さ。
それゆえか、特別に何かおきることも無かった。
数日すると、黒狼は、普通にティアムトに接するようになった。
私は、滞在する間、何度かティアムトと話をした。
ティアムトは、色々な国の事、魔物の事を知っていた。
魔法の事も詳しく、話をするのが楽しかった。
1週間ほどで出て行こうとしていたが、まだ聞きたい話があったの
で、
あと1週間伸ばしてもらった。
ティアムトは、人間の形態では剣も上手だった。
エイミーと打ち合うと、結構互角の良い勝負。
もちろん、ティアムトが、魔法を組み合わせればエイミーよりも強
い。
ティアムトは、竜形態になっても、邪魔にならないような、バッグ
を持っていた。
それに、本の僅かに、着替えの服や、道具が入っていた。
私が、それを空間魔法で拡張しました。
本来は維持に魔石が必要になるが、ティアムトの膨大な魔力があれ
ば、難なく魔法を維持できました。
175
そして、ティアムトは、旅の続きをするために、出て行った。
残り5年。この世界を回るらしい。
途中、通りかがる時には、寄るように言って、お別れをしました。
黒狼の子は、あいかわらず家にいます。
私になついてしまい。
離しても、家から出て行きません。
これだけおとなしいならと、飼えるだろうし、人に慣れてしまった
ために、
そもそも自然界で自分で獲物を取って暮らせるか不明だと。
太郎
となずけました。
結局、家で飼う事になり、名前をつける事になりまし。
私に命名しろと皆が言うので、
みんなからいっせいに、なんだそれと突込みがありましたが、
トシアキが、母が飼った犬と同じ名前だと。
母と同じセンスに感動してました。
トシアキいわく、全部で3匹の犬を飼って太郎、次郎に最後が花子
でした。
うーん。テンプレ。
太郎と名づけしてから、少し異変が。
太郎が急激に成長し始めました。
レイさんが、魔物は名前を付けると覚醒する事があるそうで、覚醒
したのかもしれないとのことでした。そういえば名づけしたときに、
魔力が結構減ったと伝えたら、やはりか。と。
主人の力をもらいながら成長するそうなので、ここ暫く日々魔法力
が勝手に減るのは、太郎に流れているから見たいです。
176
さて、その後も、私にべったりかと言うと、そうではありません。
ある程度大きくなった後、私にではなく、実はエイミーにも懐いて
います。
エイミーは大の犬好きで、ご飯を自分が上げると率先してご飯係を
やっていたからか、
あっというまにエイミーに懐いた。
いや、最近の様子を見ると、エイミーの配下に下った気がします。
そして、太郎はすぐに大きくなり、エイミーが背中に乗れるように
なりました。
エイミーは、日々乗馬ならぬ乗狼を楽しんでます。
専用の馬具? 狼具でしょうか? を作り、結構早い速度で領内を
駆け回っています。
楽しそう。
私も乗ろうとしたのですが、エイミーと一緒なら載せてくれますが、
単独乗車嫌がられました。
太郎、私が主人だよね?
最近、疑問に思い始めましたが、まあ、オスだから、女性の方が好
きだよね。
やっぱり。
性格は主人に似るって事? と思えば、太郎の主人が私と言うこと
で、まあ良いか。
177
3.10 そんなこんなで9歳です。
9歳になり日々総魔法力が増えてます。
他のステータスは見れませんが力もついてきました。
剣も上手くなりましたが、剣の練習時間は減りました。
それよりも魔法の研究時間が延びてきています。
さてさて、今回は別のお話を。
以前作ったアイテムボックスが人気です。
領内で使うために1日2個作ってましたが、それを見かけた商人が
欲しいとうるさい。
盗まれると面倒なので、売ることになりました。
ただし、時間停止機能つきは出しません。
まあそっちは知られてないし。
時間停止機能なし、10倍容量で、1個200万円です。
大きさは、1辺が1mの大きさです。
︵こちらの価値と日本の価値が一緒にしてあります。ですので金額
は円で記載します。︶
ちなみにこの辺りで日常的につかわれる箱はが1辺が90cmです。
アイテムボックスに従来の箱を詰めるため通常の箱よりも少し大き
くしました。
アイテムボックスに通常の箱が最大13個入ります。
高い気がしますが、この辺りで使われる荷馬車はアイテムボックス
相当の箱が25個程度運べる物が規格です。
178
馬一頭では、それ以上は重さもあり難しい。
これをアイテムボックスを使って運べば、1回でいきなり10倍以
上の輸送が可能なわけです。
馬車1台が500万円します。これを一杯にすると考えると、アイ
テムボックスが25個
合計で、5500万円。
従来の箱が325個を運んでいます。それは馬車13台に相当する。
つまり、6500万円
と言うことで、1000万円のお得です。
人も輸送の人数を減らすことができます。
維持費で言うと、馬の手入れと魔石の補充の違い。
魔石がそこそこ高いので、もしかしたら微妙かも。
と思ってたんですよ。
しかし、売り始めたら、大量の注文が入り、やっぱり値段が安かっ
たみたいです。
なぜでしょう?
答えは、幾つかの要因がありました。
新規の配達業者が増えました。
彼らは、馬車使ってません。
アイテムボックスを背負って歩く。
一番投資が少ないですからね。なるほど。
179
都市内部の個人宅配家ですね。
他に馬と人が2∼3個を背負って2個乗せて走る。急ぎ便ですね。
それが一番安いし、新たな事業で既存の業者と棲み分け!良い考え
です。
みなさん、商売上手です。
今は、毎日10個も作らされてます。
1日で2000万円の収入なり。
その他の事業もあり、領地内の子供の教育や孤児院に寄付しても、
まだ、我が家の資金力にかなりの余裕が出てきました。
ただ、需要に供給が追いつかないので、徐々に値段を上げています。
アイテムボックスの作成ですが、作製の重要部分は魔法陣の作成で
す。
最初は、ここも私が作っていました。
しかし数が増えたので最近は雇った魔法使い2名で1日10枚作っ
てます。
そこに最後に私が空間魔法だけを仕込みます。
利益率は非常に高い。
領地内の雇用増はこの2名だけ。
この2名も、魔力の可視化を使って魔力操作の無駄を減らし繰り返
し正しく操作することで、あっという間に総魔法力が増えて行く。
あまり人がいなくても仕事が進むのは良いことだ。
今後この2人が休めるようにあと数名採用しようと思っているが、
なかなか応募に食いつかない。
残念。
180
利益はでるけど、雇用効果は少ない。
ですので今のうちに、この資金を元手にさらなる雇用の拡大を行い
たいと考えました。
他の投資も説明しよう。
開発していた板ガラスを作る溶鉱炉と、皿を焼くための釜ができて
きました。
せんべい
領内で豊富な粘土を使った皿などの陶磁器と、ガラス板の工場を作
る事にしました。
そして、さらにぬいぐるみ工房と、新触感クッキーとして煎餅工場
を作る事にしました。
ぬぐるみはの作成は、たんなる空き家に人が集まって作ってます。
裁縫をやる場所に、寝所もつけています。
子供のいる未亡人を中心に雇っています。
ぬいぐるみは、布にかわいい絵柄を描いて、その通りに切って縫う
だけです。
中に入れる綿は、領地内のスライムの一種を乾燥させると海綿の様
な柔らかい素材が集まります。
それを詰めてます。
無毒無臭で、万一お子様が食べても安全です。
このようにスライムは、便利ですごいです。
汚水の処理に、米の害虫退治など種類によって使い分ければものす
ごく便利。
さすがにゴムや、プラスチックのかわりにはなりませんが、
大抵の柔らか素材が乾燥スライムでできている。
スライムの養殖も検討すべきかもしれない。
さてさて、話を続けよう。
181
ぬいぐるみは、いろいろな種類を少しずつ作る必要があります。
わざとばらつきを持たせるために、顔のパーツはのりで貼るだけな
ので子供に貼らせています。
1個1個違う顔になり、それが良いみたいです。
そして、子供には、絵を描かせ練習をつませています。
そのうちにコツを覚えた子が書いた動物チックなぬいぐるみが非常
にかわいかった。
旦那が死んだ子供を抱えた未亡人に、孤児院など社会環境の改善が
少しできて来ました。
そして主食、米は、いろいろな種類の育成を試しました。
最初に領地に自生していた米が一番良く育ちますが、特殊召喚した
コシヒカリがやはり味が良い。
もち米も育てられ、かなり食が改善されました。
サトウキビや砂糖大根を特殊召還で召還しました。
領地で上手く育てるのに苦労しましたが砂糖が入手可能になりまし
た。
ぽ○○たやき
が作れるよ
植物学者のヘイゼルさんに転生者のゴルゴさんがいるので、日本の
植物の育成や料理の質がかなり向上。
せんべい
米から煎餅もできたので、私の好きな
うになりました。
こうして、輸出品目も増えて行きます。
小豆もできたので、次は水羊羹や羊羹に挑戦したい。
そして元々、領地は南にあるので夏は花が咲き誇っています。
ミツバチによる蜂蜜の収穫も簡単にでき、甘いものを作りやすい環
182
境でした。
ハチの巣箱を使った蜜の作り方を真似し、最近蜜が取れる量は数倍
になっています。
砂糖とハチミツ両方でお菓子の質が向上してきています。
異世界に生まれ9年で、主食とおやつといった食べ物事情はかなり
改善して来ました。
183
3.11 転移魔法
10歳を目前に、総魔法力が10万を超え同時に転移魔法もレベル
アップ。
少し前から、見える範囲は移動できていました。
その魔法は、転移では無く瞬歩と呼んでいます。
発動も早く戦闘には便利です。
しかし、遠くに行って買い物をする事はできません。
試行錯誤の上、ようやくできるようになった転移魔法は粘土に自分
の血を混ぜ練り上げ、
魔法陣を仕込むと、そこに移動できるという制限付でした。
しかも自分でその場に行って埋め込まないとその場所への移動はで
きません。
この魔法も虚無空間を使って移動するのでアイテムボックス系の魔
法と同系です。
もっとレベルがあがり上位の時空間魔法にレベルアップすればを魔
法陣なしで好きな場所に転移できるかも知れません。
もしかしたら時さえも超えらるのか知れません。
魔法は無限の可能性を持っています。
とはいえ、現状は制約付でも非常に便利。
これで活動範囲が大幅に広げられそうです。
この魔法の応用で、アイテムボックスも進化しました。
184
そして、2つのアイテムボックスをセットで一つの虚無空間を共有
すれば、
物体を移動させることができることが分かりました。
生きた動物を運ぶことはできませんが、
特定のAからA'、A'からAへの送付なら簡単にできるようにな
りました。
ただし、B、B'の新しいアイテムボックスができてももちろんセ
ットで無いAからBには送れません。
あくまでも対で作った組み合わせしか送れません。
別のアイテムボックスの虚無空間が繋がっていないためです。
しかし、これで輸送が画期的に楽になりました。
空間魔法は、2種類の空間を使った魔法です。
一つは拡張空間と言う種類。
これは、現実世界を広くしたので、時間も気温も回りと一緒。
魔法は、拡張率で決まります。
もう一つが、現実世界と異なる、異次元を使っているのか詳細は不
明ですが、私は虚無空間と呼んでいます。
虚無空間を使えば、今の現実世界と異なった時間で止まっていると
感じるぐらいに極端に遅く時間が流れます。
虚無空間をアイテムボックスに使用する場合、拡張率ではなく最初
にどれだけの空間を与えるかによって決まります。
極端なことを言えば、虚無空間でアイテムボックスを作るなら、風
呂敷の薄い布でも大量のものを入れることができます。
最初に空間の大きさを作ることが難しいだけです。
ある程度、空間の大きさがあったほうが作りやすいのですが、大き
さは使った魔力量で決まります。
185
さらに、この虚無空間を共有化することで、物を移動できる効果を
持たせられます。
新しく作ったボックスは、今までのみかん箱サイズが中に入れれる
ように少し大きくしました。
少し大きくした理由は、アイテムボックスにアイテムボックスをし
まう場合、
外見が1m^3のアイテムボックスでも、内部が10m^3の空間
を持つアイテムボックスをしまう場合、
受け側は、11m^3以上の内部空間を持っていなければしまう事
が出来ない。
そして、セキュリティ系の魔法陣を組込み、Aの扉を開けると、A
'の扉が開かない。
A'の扉を開けると、Aの扉が開かなくなります。
そして物を入れると、AとA'の扉が赤く光るようにしました。
このように、複数の魔法陣ん組み合わせることで、複雑な条件を持
つ魔道具が作れます。
ただし、この魔道具は、中に物を入れた時と扉を開けたときに大き
な魔力が消費されます。
また、何も入っていなければ、魔力消費量が減りますがそれでも魔
石の消費が多い。
物品移動のコストはそれなりにかかります。
今後の商売を上手く行うためにも、関係者以外に解らないように使
うとしました。
あまり多くのところに置くとバレる危険性があるので、王都の倉庫
と領土内の組み合わせだけに限定する事にしました。
186
せんべい
そこで、米などの1次製品、煎餅などの2次製品、
そして、ぬいぐるみや陶磁器を王都で売ることにしました。
王都での出展に備えて、店の場所を探し、建物を借りて、人も募集。
万 いろいろと準備が忙しいです。
総魔力量 10∼15
250 200
250
200
その他身体能力 一般成人平均が100
体力 力
すばやさ
器用さ
︵魔法の効果の倍率です。100が1倍︶
︵IQとほぼ一緒です︶
300
︵精神攻撃の耐性値です。︶
200
魔法力
200
知力
精神力 特技
剣術 レベル8
現状整理
総魔法力 10万以上
特技
剣術 レベル8
魔法 神の術補正により威力2倍
認識の変化によって、魔法スキルが一部統合・変化
基本魔法 最大
魔力操作 魔素の高温化︵加熱︶ 魔素を物質あるいは魔素その物を高
応用スキル 最大︵攻撃・防御系︶
温化 187
魔素の低温化︵吸熱︶ 魔素を物質あるいは魔素その物を低
温化
レベルの低い魔法は、魔素だけを高温化 レベルの高い魔法は魔素
で物質を作り出し高温化させる
魔素の高温化、低温化両方の特性を持つ人は少ない。
両方の特性を持つと、レベルが低い状態から上がらないことが多い。
物質集積 足元や大気中に魔素を流し、物質を集める。
流体操作 水など流体系の変形、操作、分離
個体操作 金属などの固形物質の変形、操作、分離
気体操作 風を使った攻撃など 空気の流れを操作する
音波操作 防音、音の増幅 気体操作に近いが、音の波に特化 光子操作 魔素を聖属性光り粒子への変換 ︵剣、防具、盾、結
界構築︶ 電気操作 魔素に電位差を作り電気を流す、最大で雷を落とすこ
とができる。
魔力操作応用
索敵 周りの魔力を感知し、危険を察知する。
隠密 自分の魔力や、気配を完全消去し、見つからないように
する。
隠蔽 自分の痕跡を消し去る。
スキルレベル上昇中
特殊魔法
魔素を代償にある決められた効果を得る。
さらに魔素の操作も必要となる。
188
上位鑑定魔法レベル3
空間操作 レベル7 虚無空間付与、通常空間拡張、瞬転・転移
︵魔法陣が必要︶
時間操作 レベル2︵レベル秒間 実際の100倍の速度で動け
る︶
回復魔法 レベル6
祈祷 レベル4︵解呪、死霊の解放など︶
特殊召還魔法レベル4
魔力の可視化レベル7
加護
メリーナの加護 大 固有スキル 神の目 無詠唱での魔法発動
神の術 神属性を含む全属性魔法使用可能。 魔法効果2倍
189
3.11 転移魔法︵後書き︶
スキル表示は、魔法研究の結果、ジルベールの認識に合わせて変化
しました。
統合後の表示については、変更がある可能性があります。
ご了承を。
190
3.12 王都へ
折角転移が使えるようになったが、一度行かないと使えない。
王都への転移是非とも欲しい場所です。
何時行くか計画しているところに、ちょうどメルミーナ様からの依
頼で王都に行けるチャンスがめぐってきました。
今回は、転移で2名まで移動できるようなので、料理長と私が行く
ことになりました。
用事が終了したら王都に不動産物件を買い込み、そこに転移装置を
セットする予定です。
初めての王都。楽しみです。
2名が先に王都でやる予定の内容が多く、人出が足りません。
王都での出店については、従業員が必要なので、馬車にて移動して
もらい、王都で集合することにしていました。
予定日
王都に移動してきました。
初めての転移魔法は感動でした。
家から馬車で1時間ほど離れた教会に設置された転移ゲートを使っ
ての移動です。
指定時間になると、ゲートがひかり、
扉が開いたら中をくぐると一瞬にして王都側の教会のゲートに到着
191
しました。
到着したところには、5名の魔術師がいました。
魔術師5人が数時間魔力を投げ込むと転移できるそうです。
移動の感じは、自分の転移魔法での移動と一緒でした。
王都に着いたのは、王城での食事を用意する前日です。
まずは、料理長と他メンバーとの合流も必要なので、宿泊場所に向
かいます。
宿泊の手配をしたら、料理長はメルミーナ様や、王城の関係者に挨
拶に行きました。
私は、勝手に動き回られると危ないから、おとなしくしておいて欲
しいと、
宿泊施設に閉じ込められました。
おとなしくしてるわけないんですけどね。
料理長が出かけた後に大手を振って町を回るのは気が引けたので、
とりあえず浮遊魔法を使って空へ。
空から王都を観察しました。
そらから、繁華街の場所や王城の確認しました。
王城は白色を基本としてとても綺麗な建物です。
高い塀の中に、城、教会、訓練場に幾つかの塔が建ってます。
観光地図によると、兵舎、魔導師本部、政治塔、図書館などがあり
ます。
他にも役割不明の建物が幾つか。
ひととおり町を確認し、部屋でおとなしく待っていました。
192
程なく料理長が帰ってきたので、さきほど確認した繁華街へ出かけ
ました。
そして大量のお土産を購入。
マイボックスにしまっておきました。
昼には、王都で人気の食事も食べましたが、領地で食べるいつもの
ご飯の方がおいしく、
夜は、結局宿泊所の調理場を借りてで料理長が作ってくれました。
あまったご飯を宿泊所の人に譲ったら、料理方法を教えて欲しいと
料理長が捕まってました。
私は、明日に備えて、早めに就寝。
初めての王都は、何事もなく静かな夜をすごしました。
次の日、料理長と一緒に王城の調理場へ。
ジャガイモの皮むきなどちゃんと手伝います。
ちなみに、服もそれなりではありますが、貴族向けの服では無く、
仕事着の様な格好にしてます。
料理長がハーブが足りないと、お城の人に相談したら、庭にあるそ
うで、
私が取ってくることにしました。
場所を聞いて、散歩ついでに出かけました。
偉い人が庭に出ていることがあるから、綺麗な服を来た人には近づ
かないように注意されました。
目的の場所はすぐに分かり、必要な分のハーブを摘み取り、調理場
へ戻ろうとしましたが、
少し離れたところで、綺麗な服を着た女の子が、木の上に向かって
何事が叫んでいました。
少し気になり、近づいてみると、どうやら子猫が木に上り降りられ
なくなったようだ。
193
女の子は困った顔をしていたので、本当はダメなんでしょうが、近
づいて声をかける。
﹁お困りですか?﹂と。
少女はおどいた表情を見せるも、
﹁はい。私の子猫があそこに。侍女が人を呼びに行ったのですが、
なかなか帰ってこなくて。
私はもう教会に祈りに行く準備を始めなければならないのですが、
あの子を置いて、ここを離れる事もできなくて﹂と。
少女は、金髪で、茶色の目のかわいい美少女。
とてもあいらしく、可憐な少女でした。
﹁時間が無いなら、私が降ろしますよ。
すいませんが、このハーブを持って、もう少し後ろに下がってくだ
さい﹂とハーブを渡して持ってもらう。
そして後ろに下がってもらったのを確認後、魔法で浮遊魔法を使お
うとしたら、魔力が散らされました。
全く使えないわけではないけど、飛び上がる程にはならないようで
す。
さすが王城。魔法禁止の防御陣が組まれているようです。
しょうがないので、第2案。全身に魔力をまとい、身体強化を行い、
ジャンプ。
見事4m上の子猫をキャッチ。着地寸前に浮遊魔法を全力で放ち、
多少ショックを吸収し、無事着地。
少女に﹁怪我はしてないと思いますよ。
どうぞ﹂と子猫を渡し、代わりに先ほどのハーブを受け取りました。
少女は、とてもかわいい微笑で、﹁ありがとう﹂と言ってくれまし
た。
﹁どういたしまして。
194
では、ほんとは近づくなと言われているので、さっさと退散します
ね。
できれば内緒でお願いします﹂と伝え、さっさと調理場に向かって
走り去りました。
調理場に戻ると、何事も無かったか聞かれ、大丈夫と答えておきま
した。
下ごしらえが開始されたので、お手伝い開始です。
ここで、私の索敵に、近くにとても大きな魔力を感知。
知っている魔力。いや種類が違う気がする。
これは神力。解った、メリーナ様だ。
それに無意識に反応してしまい、思わずキラキラモードを発動、そ
して﹁メリーナ様﹂と声を出してしまった。
﹁まあ、びっくり、降臨中に他から繋がると思わなかったわ﹂
﹁なんですか?今のは?﹂
﹁あー、大丈夫ですよ。
あなたとは別の転生者です。
ちょっと加護が強すぎたのか、神との会話に割り込めるほど成長し
ているとは思っても見ませんでしたが、そちらは後で確認するとし
て、
まずはマリア、あなたのことを進めましょう。
それでは、約束どおり封印を解除して、聖属性の力を解放します。
それに伴って、両目の色が紫になりますが、
世界を見る色が変わったりすることはありませんから大丈夫ですよ。
では行きます﹂
195
私とも会話が繋がったまま、メリーナ様は気にする事なく作業を続
けます。
会話している相手は、マリアと言う名前で、聖属性魔法が使えるよ
うになる事が解る。
数十秒後、会話が再び始った。
﹁はい、これで転生前に希望していた聖属性魔法が使えます。
でも気をつけてください。
結界などの魔法はまだしも、あまり大きな回復魔法は使ってはいけ
ません。
回復魔法は体への負担が大きいので、体が成熟していないうちは注
意してください。
ここに気にせずに大きな回復魔法を使って、無くなった足を元に戻
した馬鹿がいますから、
彼は、その時は数日魔法が使えない程度でなんとか済みましたが、
あなたは魔力も未発達ですからほんとに気をつけてくださいね﹂
﹁はい、解りました﹂
﹁馬鹿って、ひどいな。気をつけろってはじめて聞きました。
そういうのは、私にも最初に言っておいて欲しかったです﹂
﹁普通、無茶しても使えませんよ。
なんで習ってないのにあんな回復魔法が使えるんですかね。
信じられないほんとに﹂
﹁そういわれても、なんだかんだ、魔法は習わなくても使えるんで
すから。才能かな?﹂
﹁はいはい、もう少ししたらお説教に行きますから黙ってて﹂
196
﹁はい﹂
﹁さあ、これであなたは聖女です。
これから、少し大変になるかも知れませんが、無理せず、ゆっくり
と成長してくださいね﹂
﹁ありがとう、ございます。メリーナ様。ここまで大きくなれたこ
とを感謝します﹂
﹁では、また機会があれば、お話しましょうね。ばいばい﹂
と言った直後。メリーナ様は私の前にいた。
!!!
197
3.13 メリーナ様のお説教
突然、メリーナ様は私の前にいた。
﹁あのね。あまりにもいろいろ型破りで、
めちゃくちゃな状態なので、
どこから突っ込んで良いかわからないけど、
まず一番大切なことを聞くわ。
あなたなんで神格化した状態になれてるの?﹂
﹁え。神格化ってなんですか?﹂
﹁今の、その状態よ!﹂
﹁ああ、キラキラモードの事ですか﹂
﹁キラキラって、まあ確かにそうかも知れないけど、それは神格化。
神の力を奮える特別な状態よ。
今の世界では竜王バハムート以外にその状態になれる存在はいなか
ったわ﹂
﹁へー。
そういえば竜王バハムートの娘と名乗る竜と戦いました。
普通だと勝てそうもなかったので、キラキラモードでぎりぎりで勝
てた相手ですね。
そうですか、娘のティアムトが言っていた通り、やっぱり竜王バハ
ムートも両金眼で、キラキラモードになれるんですね。キラキラ無
しの娘であれなのだから、竜王ハバムートには絶対に勝てないです
ね﹂
198
﹁だから、キラキラじゃなくて、神格化。
まあそれは良いとして、竜王の娘って、あの子も相当強かったはず。
あなた、良く生きてるわね。
ってなんで戦うことになったのやら。
あなたには、長生きしてねって言ったのに、
わざわざ自ら死ぬような目になることをしてないわよね﹂
ギク。
﹁も、もちろん、全力なら勝てる勝率が見えたから戦ってますよ﹂
﹁びびりすぎね。
思い当たるところがあるわけね。
まあ良いわ。
とりあえず無事だし、予想以上の成長ね。
これからもちゃんと長生きに向けて励んでね。
沢山加護をあたえたんだから、死んじゃ駄目よ。
ほんとに。
ああ、あとこれ、やっぱりここに来たの失敗か。
あなたの周り、やばくなってるわね。
みんなひれ伏してるし。
完全に神力に当てられてやばいわね。
今回は私が来てしまったから起きたことなので、忘却の魔法を使っ
てこの数分の記憶を消しておきます。
ついでにこの忘却の魔法スキルを渡しておきますから。
ですが神格化とか周りへの影響が大きいから気をつけてね。
もらった
と言う事
もしもの時はこの魔法で記憶を消すのよ。ではまたね﹂と言って、
ぱっと消えた。
︵この後、ジルベールは、この忘却の魔法を
をしばらく忘れている。︶
199
周りを見ると、確かに料理人全員がひれ伏していたが、徐々に立ち
上がり、何があったのか不思議に思っているようだが、特に何を言
うでもなく作業に戻った。
さて、それから暫くは皆作業を継続。
料理長が、アイスクリームを準備していたら、どうも上手くできな
いとぼやく。
冷やす魔道具が上手く発動しないようです。
魔石を新品にしても駄目なようです。
料理長が私の魔法でできるか聞いてきましたが、私の魔法は料理を
するほど繊細な調整はできず、使うとドライアイスができるぐらい
冷えてしまうので、アイス作りは無理と答えました。
どうしようと言うことで、悩んだ結果、
転移魔法装置を設置して、一旦家に戻ることに。
アイスを作る魔道具の予備と、念のために作りおきしてあるアイス
をマイボックスに入れて持ってくることになりました。
先ほどの庭は魔法が使えませんが、教会が魔法の使用が許可されて
いるらしい。
教会からはすでに人が全員出た後だった誰もいなかった。
床に土魔法で魔法陣をこっそり埋め込み、家に転移。
家のものに状況を伝え、予備のアイス作り魔道具と、念のために家
でアイスを完成させ、マイボックスにしまいこみ、転移で戻る。
予備の魔道具側でアイスを作ったら完成した。
200
なぜか前の魔道具が正しく動作しなかったようだ。
魔法禁止でも、魔道具は使えるはずなのですが、結局理由は解らな
い。
とりあえず、故障だったみたいで、そういうこともあるのか。
これからは、不良率とか考えないといけないなーとあらためて考え
させられました。
もしかしたら神格化の影響?
いや神様が来たせいか?
故障については今後の検証が必要だ。
ちなみに、夜の食事会はスムーズに終わり、
無事終了です。
201
3.14 マリア・ラルクバッハ5歳
今日は、私、マリア・ラルクバッハの5歳の誕生日。
ラルクバッハ王国の第2王女です。
お父様つまり国王が私の誕生日1ヶ月前に、今まで食べたことが無
い料理を出してくれるとおっしゃり、誕生日を心待ちにしていまし
た。
誕生日のイベントはお昼に王宮内にあるメリーナ様を祭ってある教
会でお祈りを済ませ、大神官様からありがたいお言葉を頂き本日の
対外的なイベントが終了しました。
そしてお楽しみの夕食。いつもより早めにスタート。
今日の夕食は結局メルミーナ宰相が手配してくださったそうです。
お父様が大見得きって言った割に、実は部下丸投げだったとは。
まあ、国王ってこんなもんですよね。
でも部下と言ってもメルミーナ様は3妃の父上。
3妃は、私のお母様。
と言うことでメルミーナ様は私のおじいさま。
王城にお勤めなので良く会いに来てくれる優しいおじいさま。
今回も私の為に色々と用意してくださったのでしょう。
それはおいておいて家族全員が席に座り、いよいよ料理が出てきま
した。
202
あら、確かにめずらしい食べ物。
最初にサラダ。
これは普通といえば普通ですが野菜にはマヨネーズというドレッシ
ングで仕上げてありました。
そして野菜の隣に茶色の物体。
ジャガイモを油で揚げた食べ物でフライドポテトという名前。
そして次にコロッケ。
先ほどのジャガイモにお肉を入れて揚げた食べ物。
少量ですが次々に初めて食べる品次から次に出てきます。
本当に、どれも食べたことが無い物ばかり。
ご飯とステーキ。
お肉はとても柔らかくて、おいしいソースがかかってました。
ご飯は、食感がよく、もぐもぐとおいしい。気が休まる味です。
最後に、デザート。
プリンと言う食べ物でおしまい。
おいしかった。もう一つ食べたい。
お父様達も、おいしいおいしいとパクパク食べてました。
私だけでなく、お父様もお母様方も始めての品と言っていたので本
当に珍しい物だったようです。
そして私たちには関係ありませんが、珍しいお酒が何種類も。
お母様も普段はあまり飲まれないのに、あまりのおいしさに食べす
ぎ、飲みすぎと言ってました。
私はどれもこれも、おいしかったのですが、妙な違和感が。
あれ、これなんだか食べたことがある気がする。
何処だろ、何時だろ。
203
そう思いながら、部屋に戻り、ベッドで寝入る。
zzzzzz。
と、思い出しました。
あ! 私、前世が日本人だ。
今日の料理は、前世で食べてた料理だ。
そして目が覚めると、少し記憶が混乱。
侍女が起こしに来ましたが食べ過ぎて少しだけ調子悪いのもう少し
だけ寝かせてと頼み、ベッドに。
そのままベットの中で、今のマリアの記憶と前世の記憶を整理しま
す。
前世は死んだ直前を思い出せるものの、名前や親のことなどは思い
出せない。
マリアの記憶からも、今が急に人格が急に変わったわけないようで、
混乱はすぐに収まりました。
再び侍女が起こしに来たときには、ちゃんと起きれました。
メルミーナ宰相に昨日の食事がおいしかったことを手紙にしたいと
侍女に伝え、手紙を書く準備をしてもらいました。
本当は昨日の料理を考えた人も、前世が日本人ではないかと考え、
何処に行けばまた食べれるのか聞きたかったけど、相手に会って何
をしたいというわけでもなかったので、問い詰めことは止めにしま
した。
204
その代わりにまた食べたいですと、伝えることにしました。
手紙が書き終わると、侍女が持っていってくれました。
そして、昨日行った王宮内にある神殿に行きました。
昨日は大神官様が来ていましたが、特にイベントの無い日は誰もい
ない神殿です。
侍女には神殿の入り口で待ってもらい、一人中に入り昨日と同じよ
うに再び祈りました。
メリーナ様と呼びかけると目の前が暖かくなるのを感じそして頭に
声が響きました。
﹁あら、昨日お祈りした時には覚醒していなかったのに、今日覚醒
したのね﹂と
私は突然のことに大混乱。
頭の中がパニックです。
メリーナ様は、
﹁大丈夫よ。覚醒したなら分かりますね。私はメリーナ。貴方をこ
の世界に転生させた女神です﹂
それから、そのまま引き続きメリーナ様が話しをしてくれました。
﹁貴方には、転生の時に回復魔法の才を与えていますが、回復魔法
は小さな体には負担があります。
しっかり成長するまでは封印してありますが、7歳になったら、開
放します。
だからそれまでは待ってくださいね。
それと、昨日は、覚醒していなかったから渡しませんでしたが、覚
醒したようなので、加護を渡しますね。
205
貴方は王族なので、この加護はちょうど良いでしょう。
これは、毒などへの耐性を引き上げる効果があります。
ながながとしゃべりましたが、これで帰りますね。じゃあ、次は7
歳の時に﹂
そういって、メルミーナ様は帰られたみたい。
先ほどまで暖かいと感じた目の前も、今は普通。
私は祈りをやめて神殿を出ました。
侍女は特に中を見ていなかったようで、対応も今までのまま。
特に変わった様子もないので、大丈夫だった見たい。
さて7歳までは魔法が使えないとわかり、とりあえず急に何かやり
始めても変な目で見られそうだから、暫くはおとなしくする予定で
す。
206
3.15 マリア・ラルクバッハ7歳
今日は私の7歳の誕生日。
先週父からプレンゼントにと、前から飼いたいと言っていた猫を頂
いた。
生き物なので誕生日まで待つより譲渡されたらなるべく早く慣れた
方が良いだろうと、誕生日の前に先渡ししてもらった。
実は私は前世の記憶がある。
自分の名前や両親の事は覚えていないが、家で猫を飼っていたこと
を覚えている。
今世の初猫は白の長毛種。
近隣国のアルフォンス生まれの優秀な血筋の猫様らしい。
でも猫の名前は<たま>です。
何でも良いと言われたので前世の王道名をつけました。
さて本日は7歳の誕生日まで生きられた感謝を神様に報告すため、
教会でお祈りをします。
しかし朝食後に少し時間があったので、たまを連れて庭を散歩して
いました。
そこでちょっと油断。
たまを庭で遊ばせようと庭に降ろして様子を見ていました。
最初は私の近くで遊んでいたのですが王宮のどこかで大きな音がし、
それにたまが驚いき木に登ってしまいました。
207
すぐに降りてくるかと思ったらやはり子猫。
登った先で怖くて動けなくなってしまった。
どうしよう。
侍女が近くの騎士に頼みに行ってきますと離れたが暫くしても戻っ
てこない。
そうこうしているうちに、そろそろ教会にいかなければならない時
間に。
私はたまを一生懸命呼びますが相変わらずたまは動けず、私は困っ
ていました。
そこに突然後ろから少年の声がしました。﹁お困りですか?﹂と。
そちらを見ると金髪で茶色の目をした10歳前後の少年が立ってい
ました。
とても利口そうなしっかりした顔立ち。
服は貴族向けの服では無く仕事着?。
こんな少年が王城で仕事をしているのか?疑問ですが、とりあえず
状況を説明すると自分が助けると言ってくれた。
とは言うものの猫がいる位置は大人の身長よりも遥に高い、4mは
あると思われる高さ。
どうするのだろう思っていると少年が手に持っていたハーブを持っ
ていて欲しいと渡して来た。
そして危ないから後ろに下がってと。
まさか飛んで助けようと言うのか。
やはり子供。
208
無謀にも飛べると勘違いしているのか、確かにこちらの世界は前世
の人々よりも身体能力の高い人がいる。
騎士の試合も何度か見たことがあるがさずがに4mの高さに手が届
くほどの身体能力は見たことが無い。
何をするだろうと離れたところから見ていたらほんとに飛んだ。
ありえない。
たまに手が届きそれも一瞬空中で止まっているかのようにゆっくり
抱き上げる。
まるで時間の流れが遅くなっているかのように。
なぜか落ちる時もゆっくりと降りた。
羽が生えているような、そんな感覚。
気のせいだろうが一瞬笑った笑顔の男の子が天使に見えた。
私はびっくりし茫然と立っていたら少年が近づいて来て、ハーブと
猫を交換した。
私はとても嬉しかったので﹁ありがとう﹂
と言うと少年は﹁どういたしまして。では、ほんとは近づくなと言
われているので、さっさと退散しますね。できれば内緒でお願いし
ます﹂と。
あっさりと調理場に向かって走り去っていきました。
調理場にいる誰かの子供だろうか?。
しかしこの普通にはありえないこの出会い。
もしかして運命の出会いかな?。
と思ったが、とりあえずこれで教会へ移動できるとほっとした。
209
ちょうど入れ替わりで、侍女が第1王子のルカお兄様を連れて戻っ
てきた。
侍女が近くの頼りになりそうな男性を探したが、皆教会の準備でい
なかったので、ちょうど通りかかったお兄様を連れてきてくれたそ
うだ。
侍女は、ルカ王子を見てボーとしている。
頼りになりそうな男性を探していたのではなくて、お兄様を探して
いたのではと疑ってしまうが、まあ良いでしょう。
お兄様が﹁猫が自分で降りてきたのか、良かったね﹂と頭をなでな
で。
今の少年の話を上手くごまかせる話も思い浮かばなかったのでお兄
様の言われたとおり、勝手に降りてきたことにした。
そして私は準備のために急いで部屋に戻り、お兄様は教会に向かっ
た。
準備と言っても髪形の最後の調整と飾りつけ程度。
すぐに支度が完成し、急いで教会へと向かった。
210
3.16 教会でのお祈り
王宮内の教会はこの庭の端に作ってある。
普段は誰もいない教会だが、ベントがある時に近くの聖堂から大司
教様がやってくる。
時間になると私はお父様とお母様方と一緒に中に入った。
今日は1妃さまと私のお母様の3妃様が一緒。
他の兄妹たちは後ろに並んでます。
このところ2妃様、体調が悪く、こういう行事は出れない日が続い
ています。
私の家族は前世で読んだ小説などにある王位の敬称争いや王妃同士
のいがみ合いなど全く無く、3人の王妃全員仲が良い。
子供たち同士もいつも一緒に遊んでいる。
とても仲良し家族。
平和で良い家族です。
私はお祈りの前に、後ろにいる家族と国の偉い方々にお辞儀をした
後お祈りをはじめました。
この国は政教分離していない。
国教としてメリーナ様を中心とする3神を崇める宗教です。
この国では3神の中でメリーナ様を崇拝しています。
そして、3,5,7歳の時にメリーナ様に成長を報告し、メリーナ
様の加護に感謝するお祈りをします。
お祈りを開始すると、以前のメリーナ様が出てきた時と同じ感覚が
211
ありました。
そして頭の中に声がしてきました。
﹃7歳の誕生日おめでとう!!﹄
2年ぶりのメリーナ様の声?が頭の中に響いてきました。
﹃おひさしぶりです。メリーナ様、おかげさまで7歳まで無事に成
長できました。
ありがとうございます﹄
﹃うん、とても上手に挨拶もできるようになったし、体も順調に成
長したみたいですね﹄と、そこに突然。
﹃メリーナ様?﹄と別の少年と思われる声が頭に響いてきました。
メリーナ様も驚いていたみたいです。
しかし、メリーナ様は何事も無かったかのように淡々と話を進めま
す。
私の聖魔法の封印を解除してもらい目の色が変わりました。
強い聖魔法が使える人は総じて目の色が紫なんだそうです。
あと、大きくなるまでは回復魔法をあまり使わないように注意点を
説明してもらい。
メリーナ様はお戻りになられました。
私は祈りを終えて立ち上がり後ろを向いたら、皆がこちらを見て呆
然と立っています。
横に立っていたお母様の手を握るとお母様が気がつきました。
そして私に﹁メリーナ様、なにかおっしゃていた?﹂と聞いてきま
212
した。
今のメリーナ様の姿は自分だけでは無くて、みんな見えていたこと
を知った。
どうしよう少し悩んだが正直に答えたほうが良いと思い、答えた。
﹁聖魔法が使える様にしたって言ってた﹂と伝える。
皆が﹁聖女様だ﹂と。
後ろにいたのは家族だけでなく高位の貴族達も数名をいました。
彼らのところで少し整然とし始めた。
お父様が
﹁静粛に。ここで見たことは公言禁止である﹂
と宣言され、一斉に解散となりました。
その後王室に戻りお父様、1妃様、お母様と少し話をして部屋に戻
りました。
今日の夕食会は、おじいさまであるメルミーナ様も一緒でした。
今日の夕食会もメルミーナ様が企画してくれました。
夕食会は以前から聞いていたとおり日本食が出されました。
毎年誕生日に日本食が出ます。
今年は。さらにに種類も増え料理もグレードアップしたそうです。
最後にフルーツを混ぜたアイスクリームが出てきたのがすごく嬉し
くて、ちょっと多めに入れてもらい久しぶりのアイスクリームを堪
能しました。
213
さすがにおかわりは無理でした。
夕食会が終わった時に、王様とメルミーナ様が
婚約者がどうのこのと話始めたところで、私たち子供は部屋に戻さ
れました。
第1王子は、すでに婚約者が決まっています。
その下は、13歳双子で、お兄様とお姉さま。
第2王子のお兄様も先日婚約者が決まりましたが、お姉さまの婚約
者はまだです。
そろそろだなとの話があったのでその事でしょう。
まさかそれが自分の事とは思わず気楽に考え、先ほどの話を記憶か
ら消し去りベッドに入る。
今日であった男の子、そしてメリーナ様との会話の途中で入ってき
た男の子。
おそらく同一人物じゃないかな。と勝手に想像。
カッコよかった。
また会えないかなと。
運命の日と思う、今日1日でした。
そして彼のことを思いながら眠った。
214
3.17 メルミーナの急な来訪
﹁ジル、ジルベールはいるか﹂
ジルたちが王都に出かけた3日目の朝に、ジルベールの家の玄関で
響く声。
リリアーナ様があわてて駆けつけ訪問者であるメルミーナ様と話を
始める。
ジルベールが王都に行っていることを知り
﹁すれ違いか﹂
とすぐに戻ろうとするが転移魔法は魔力充電中で後4時間はつかえ
ない。
家に居たクインさんが手紙で状況を伝えることができると説明する。
メルミーナ様がとても驚いて手紙を書きながら、装置の詳しい説明
を受けた。
転送装置に手紙を入れ、蓋をすると黄色に変わる。
暫くすると青になったので、王都側で手紙を受け取ったと説明する。
すると少ししたらこちらの家に設置してあるジルベール専用の転移
版が光だし、ジルベールが転移で戻ってきた。
単独で転移魔法が使える事に驚くメルミーナ様。
そして物を簡単に転送できる魔道具に革命的だとジルベールを誉め
る。
215
続いて、リリアーナを含め来た理由を説明してくれた。
まず第2王女の誕生日でジルベール同様メリーナ様が降臨され、第
2王女が聖女になられた事を説明してくれた。
そして、このことが国外に流れると、必ず婚姻関係を迫る国が出て
くる。
聖魔法を使える能力者は、各国に数名いるかいないか。
さらに聖女と呼ばれる聖魔法能力の高い能力者は近年現れていない。
とても、貴重な人材らしい。
それも王女となれば、国をあげた争奪戦がはじめる。
そうなる前に国内で婚約者を決めてしまい、国外からの干渉を避け
る必要があると。
そこで2週間後に、第1王女スザンヌ第2王女マリアの2人に対し
て、王家国内の有力な候補者を集め、お見合い大会をする事になっ
たと。
マリアは、メルミーナ様の孫にあたるそうです。
メルミーナ様の後継に選ぶにあたって元々3歳違いのマリアと私を
結婚させるつもりだったそうです。
とにかく、そのお見合い大会に出ろと。
すぐに王都に行くぞと。
まずすぐさま王様に挨拶に行き候補に入れてもらわなければならな
いらしく、4時間後に転移装置が使えるから出かける準備をしろと。
216
私が3人で良いなら、一緒に王都まで転移できると伝えると、驚い
ていた。
着替えが必要か訊ねるとメルミーナ様の家で用意するから必要ない
のと。
早速リリアーナ、メルミーナの手の握り3人は揃って王都に向けて
転移した。
そして、あっと言う間に王都についた。
メルミーナ様が﹁ここは何処?﹂と聞いてきた。、
﹁王都の、転移装置のある教会から少し離れた、我が家が買い取っ
た建物です﹂と説明しました。
私が転移ができ、転移ボックスもあるので、商業の物流拠点とする
にしても教会の転移装置の近くの方がごまかしやすいと、売りに出
ている中で、教会にもっと近い場所を購入したとメルミーナ様に伝
えました。
教会前にメルミーナ様の馬車が止めているから、それを使って家に
メルミーナ家に移動する。
元々一緒に来ていた料理長のゴルゴさんがこの場にいたので、残り
の残務をやってもらい、終わったらメルミーナ公爵家に行くように
伝え3人で移動を開始しました。
メルミーナ様が、夕方の転移装置の稼動を頼んでいたのでキャンセ
ルを伝えると、どうしてこっちにすでに居るのか疑問に思っている
ようでした。
217
急いでいたから、別の場所を経由して移動してきたと言い訳をして
いました。
納得した感はありませんでしたが、料金だけは支払ってさっさとメ
ルミーナ様の家に移動を開始しました。
メルミーナ公爵家に着くと、その屋敷を含め全てのスケールにびっ
くりしていました。
いやでかい。
これ城じゃね? ぐらいの大きさです。
100部屋ぐらいあるんじゃないだろうか?
家の中に入るとメルミーナ様は、専属の業者を呼び出した。
リリアーナお母様用のドレスや、私の服を合わせ始めました。
専属の針子がその場で修正し、明日の朝までに仕上げるそうです。
いや、すごい。
次の日の朝すぐに王城へ移動。
メルミーナ様が、リリアーナお母様と私を連れて、謁見の間へ。
しかし、正式な謁見ではないのでその裏の部屋で王様と会いました。
王様からは普段どんなことをしているか、と質問してきたので
﹁午前中は、魔法や剣の訓練を行い、午後は領地を回って道路を作
ったり、工房で魔道具を作ってますと﹂
と答えると、10歳でそんな事をとつぶやき
﹁剣はだれに習っている﹂
と質問されたので
﹁基礎はレイブリングさんに、実践はエイミーさんに習っています﹂
と伝えると、
218
﹁元将軍のレイブリングに、剣王の称号を持つエイミーか。
それはすごいな。
レイブリングが田舎にこもっているとは聞いていたが、お主のとこ
ろに居たのか﹂
うんうんと、満足したのか1週間後の10時に王城に来るように言
われて、下がってよいと言われました。
メルミーナ様はそのまま公務があるそうなので、その場で別れ、私
たちは1週間後に向けて必要な服を数枚作るために馬車で店に連れ
て行かれました。
服のセンスは解らないので、お店の人にお任せです。
お見合いが1日で終わらないそうで、実際には予備も含め5着ほど
作るそうです。
完成したらメルミーナ公爵家に届けてくれるそうです。
前日に訪問時間を連絡するので、そこで最後の調整をするそうです。
この世界の貴族向けの商売の仕組みが分かり、参考になりました。
私たちは家に着くと、リリアーナお母様は折角なので王都の友人に
連絡をし、私は合流したゴルゴさんと商売の為に活動を再開。
夜には戻ると伝え、王都の市を探索に出かけました。
それから1週間は、王都で過ごす。
午前中はいつもどおり魔力の訓練に剣の訓練。
魔法の訓練は訓練場を壊しそうだったので、魔力操作をしたり、光
の剣を出すだけなど、シャドー魔法で済ませる。
219
剣は、メルミーナ様の家の護衛兵士に相手をしてもらいましたが、
1対1だとレベルが合わず結局1人でやることに。
護衛兵士は、申し訳ないと平謝りしてました。
よく考えたら、朝か夜のうちに転移で領地に戻り、訓練をしてから
昼に帰ってくれば良かったのに。
転移魔法が使えるようになったばかりなので機転が利かなかった。
午後は、王都内の探索もチョコチョコと。
王都は広いので、数日では回りきれなかった。
それとメルミーナ様の家の巨大な図書館も使わせてもらった。
ここは、知識の宝庫ですね。すごかった。
興味深い本が沢山あり、読みきれないので後で読む本のめぼしをつ
けるぐらいしかできませんでした。
料理長ゴルゴさんはメルミーナ様の家の料理長に日本食を教え、夕
食も日本食を出してくれました。
リリアーナお母様は、2回ほど友人宅に出かけていました。
お出かけが無い日はメルミーナ家の侍女に案内され、護衛付きで貴
族ご用達のお店に買い物に行ってました。
化粧品や下着が中心だそうで、私たちは遠慮させてもらいました。
220
人物紹介︵前書き︶
4章は、登場人物が激増します。
ネタばれ多数なので、先が気になる人は読まないように。
5章の登場人物も記載されています。
221
人物紹介
●ジルベール周辺の人
ヘイゼル、クイン、エレノア、ニーナ
ジル5歳の時に家に来た家庭教師とその家族。
当初7歳で家に来たことになっていたが、後で変更したため一部文
書がまだ7歳になっている。
ヘイゼル・サイレーン
青髪、赤眼のヘイゼルという中年男性。
学者、クインの旦那。
大学に所属していた植物学者。給料が安く、クインのひもと呼ばれ
ていた。
そろそろ稼がないと駄目だと一念発起。
メルミーナ様に相談したところ、ちょうどジルの家庭教師を紹介さ
れ、了承した。
ジルの家で、様々な植物の育て方、増やし方、保存方法などを研究
している。
交配もして、新しい植物を生み出そうとしている。
クイン・サイレーン
緑髪、黒眼の30歳ぐらいの中年女性。
クインは、総魔法力が宮廷魔道士に到達せず、宮廷魔道士をあきら
めメルミーナ様の家で警備を勤めていた。ヘイゼルと一緒にジルの
家庭教師になるために一緒に移動。
ジルが魔法は何でも使えたが、魔法陣に興味をもったので、魔法を
教えるよりは、一緒に研究をしている。
222
幼いジルと一緒に魔力操作の訓練を続けるうちに、宮廷魔道士を遥
にしのぐ総魔法力を習得。
クインが2500ほどで限界に。
エレノア・サイレーン︵9︶、緑髪、赤眼 ニーナ・サイレーン︵7︶、青髪、赤眼
クインの子供。
幼少期に同じ家で育ったので、魔力操作を小さい時からやり始めた。
2人で、人形遊びと称して、ぬいぐるみを魔力で動かして遊んでい
たので、
ジルベールが10歳の時に、エレノア、ニーナは共に4,000ほ
どまで成長。
母親は、火、風、結界が得意
身長190
大柄
︵45︶
エレノアは、水、土、結界、ゴーレムなどの操作系。 攻撃より防
御系
ニーナの使える魔法はまだ不明。
トシアキ・レオナルド
執事です。母親が転生者。
剣がそこそこ使える
子爵家の次男
ジル5歳の時に31歳だった。
レイブリング・クリュシュナーダ
元アレクサンドロ公爵の末弟。
金眼ではなかったので、騎士団に入った。
223
魔法剣士の才によって、将軍まで上りつめ、実力でクリュシュナー
ダ伯爵家を貰った。
エイミー 170cm,85E,55,80
銀髪: 両黒眼
30歳ぐらい? 年齢不詳です。 体を鍛えているのでかなり若く見えます。
髪が短く、令嬢には見えないが、剣王の称号を持っている国内最強
剣士でした。
アレクサンドロ系の侯爵家の子
軽い口調で、身分が低いと言っていたが、実は、お嬢様。
若き時に、国を出て、エルラドにて剣の修行を行い、剣王となって
から、レイブリグと一緒に行動していた。
ナンシー:エレノアの、最初のピアノの先生
20代、男爵家の長女で緑髪、両目茶
アース:50代の女性。
白髪:両黄眼
ナンシーがすぐにピアノの先生を辞めたので、後を引継いだ。
2代目のピアノの先生。
153cm,88F,56,84
庭師 ジジ あまり登場しない。
エリン︵18︶:
髪 薄い青、両緑眼
シドニアの王城で働いていた侍女
224
ジルベールの専属侍女となる。
●ラルクバッハ王家
レオン:王様40歳 金髪 左目が金眼 右目 青
王妃に序列はありません。みな同列です。単に結婚した順番で呼ば
れます。
・エミリア:第1王妃 シドニア国の元王女 37歳 青髪、両緑
11月20日生
170cm、105J、65、90
・・ルカ:第1王子14歳
まれ
青髪、左目が金眼 右が緑
魔法戦士の能力がある。
頭が良く、温和。王の器としては十分。
・・フィリップ:第3王子 10歳 10月15日生
まれ
青髪、左目が金眼 右が青
誕生日12月10日
現ハイルデン公爵家の妹 37歳
魔法力が高い。剣は途中であきらめた。
・レオニー:第2王妃
165cm、95H、58、85
銀髪 右目が金 左が黒
・・スザンヌ:第1王女13歳︵双子︶
155cm、上から85E、55、80
ジルベールの婚約者
未来視の力を持つ
225
銀髪 右目が金 左目が青
2月10日生まれ
・・マクシミリアン第2王子13歳︵双子︶
銀髪 右目が金 左目が青
索敵能力に秀でている。
・・マイアー:第3王女5歳
銀髪 右目が金 左目が黒
称号 音楽に愛されし物
後に、ジルベールからミュージカルと、ダンススタジオを引き継ぐ。
・アナ:第3王妃メルミーナ公爵の娘 25歳
158cm、100I、62、90
金髪 茶色の目
3月3日生まれ
・・マリア:第2王女︵転生者︶7歳 6月9日生まれ
金髪 茶色の目から紫に 聖女
ジルベールの婚約者
・・シュミット:第4王女3歳
金髪 左が金、右が茶 転生者の可能盛大
所有する特殊スキルが多い
鑑定 ステータスの確認能力 物品の状態を見極める
索敵 魔力を察知する
隠密 魔力を隠し、存在を消せる
思考分析 相手の考えを少し読み取れる︵YES,NO程度︶
精霊召還 契約した精霊を召還できる
公爵家とその系統
226
︻メルミーナ公爵家︼
文官の系統。
国を支える文官の多くがこの公爵家の関係者です。
緑、赤眼、 金、茶、青の髪など、種類が多い。
ファール・メルミーナ:50歳
︵公爵位を持つ人は、普段、家名で呼びます。ファールは、引退後
に使います︶
カトレア:ファールの妻 48歳 妻は1人だけ。
直接の子は、娘ばかりです。
アナは、ファール・メルミーナの4女です。
マリアは、孫になります。
ライラ:メルミーナの部下
奥様ウルラーレ
ジャック ライラの子供。ジルベール3歳の時に、9歳
ジルベールが10歳で王女と婚姻した時に、ちょうど16歳で高校
を卒業。
︻ハイルデン公爵家︼
右目が金の一族 武系が多い
左目は青眼が多い。
髪は、金髪、赤髪が多い
青髪 右目が金、左が黒 妻1:レッシィ ︵40歳ぐらい、160cm,87,60,90︶
長男 身長180cm
ダリウスの母
ダリウス
20歳 レッシィの子。 成績優秀です。
妻2:セルニア様︵37歳ぐらい、168cm,88,60,87︶
クリシュナとオレリアンの母
227
8歳 オレリアン 右目が金です。ルカ王子の同級生 14
クリシュナ
オズワルト侯爵家グレイ10歳
︻アレクサンドロ公爵家︼
左目が金の一族 魔術師が多い
魔力の高い中に、両黒目があり系統的に黒目もあり。
アレクサンドロ公爵 金髪 左目が金眼 右目 赤 46歳 レ
オン王に似てます。
子沢山、ちょっと怒りやすい
妻1:ダイアナ:ラスク王国の公爵家から嫁いできた。 42歳
黒髪 両目 黒
︵アレクサンドロ公爵がラスク王国に留学中に婚約して連れ帰って
きた。︶
ブルータス:長男 黒髪、左金、右黒 24歳 魔力値が高い。
既に結婚。子供が2人。金眼なし 現段階では妻1人。
マルクス: 次男 金髪、両黒 22歳 実は金眼でないが、
兄よりも魔力値が高い。
既にシドニアの公爵家の娘と結婚、婿入り。
現ハイルデン公爵家の妹
レオニーの妹でもある
ルシアナ: 長女 金髪、両黒 16歳 ラスク王国の王子と
婚約。
妻2:ルーナ:
35歳
165cm、95H、58、85︵姉とほぼ同じ体系︶ ピンクの
髪 両目 青
オニール :16歳 金髪 左金、右青 サフィーナ :14歳 ルカ王子の婚約者。︵登場時点の12月に
は15歳になってます︶
228
ルーナの子。
ピンクの髪、右が赤、左が金。 秘宝の宝と呼ばれるほどの美人・才女。
グレゴール侯爵家 ロベール6歳︵最年少︶
●転生者枠
・ゴルゴ︵35︶:男爵位を持つ転生者
スキルも料理、農業。
攻撃力が無く、異世界人の割りにスペックが低い。
ジルベールの家の料理長です。
・ロジクール︵30︶:宮廷魔道士、魔道具の専門家
・ミシュル:︵12︶歳 転生者 黒髪、両目黒
剣の才能を持つ。
魔力は低め。
空間魔法の使い手
・オメガ・パテックス︵28︶男 アルフォンス王国出身
・ロレックス・ロドリゲス︵32︶男 ラルクバッハ王国出身
・カルチェ・シファーナ︵22︶女 ラスク王国出身
特別
リリア サフィーナの同級生
特殊スキル 魅了 特別枠
・ゴンザレス
229
本名 カルロス・ザハス
ジルベールに、 カルロス・ゴンザレス・ザハスに改名させられる
ジルベールの護衛になる。
230
設定紹介︵前書き︶
この設定は、全てが4章で使われるわけではありません。
ネタばれ多数。
231
設定紹介
︻設定︼
魔石
色と大きさで、それぞれに特性がある。
ノーマル
黒:魔力を取り出すことができる。つかい終わると白。
レア
色つき:それぞれの魔道具に組み込むと長持ちしたり、効果が上が
る。
赤:火などの加熱。
青:氷などの減熱。
大きさについて
D:3cm程度 EからDランクから取れる。 C:4cm程度 Cランクから取れる。Dランクの2倍の魔力容量
B:5cm程度 Dランクの1.5倍の容量。魔力の再補充が出
来る
A:5cm程度 色つき 基本Bと同一
S:5cm∼10cm 虹色 神石といわれる。魔力増幅効果あり
限られた幻獣、S級の魔物から稀に取れる
232
ステータス の説明
総魔力量 魔法を使う魔力容量 一般人が100、魔法が得意な貴
族で200前後
特に優秀な間宮廷魔道士が300∼400
その他身体能力 一般成人平均が100
その名の通り
体力 その名の通り
力
その名の通り
その名の通り
器用さ
IQとほぼ一緒です
すばやさ
知力
魔法の効果の倍率です。100が1倍
精神攻撃の耐性値
魔法力
精神力 特技
剣術、槍術、体術などの武術スキルが該当。
魔法 認識の変化によって、魔法スキルが一部統合・変化します。
従来の世界における魔法は、
基本魔法 水、火、土、光、それに特殊魔法、回復、鑑定 など
で別けている。
こちらは、ジルベールが研究して作った魔法体系。
ですが、魔法スキルはまだ確定していません。
現在進行形で考察中です。小説部分には反映していません。
前提:体内にあるときを魔力、空気に散らばったものを魔素と呼ぶ。
233
魔力を物体に流している時は魔力。
物体によって、流れやすい物体とそうでない物体がある。
複数の材料が割合が均一なほど魔力が流しにくい。
鉄50:銅50よりも、鉄80:銅20の方が魔力が流しやすい。
鉄鉄25:銅25:銀:25:鉛:25よりも、鉄50:銅50の
方が魔力が流しやすい。
基本魔法 魔力操作 体内の魔力を動かす、集める 応用スキル 魔素の高温化︵加熱︶ 魔素を物質あるいは魔素その物を高
人によって得意不得意がある。全員が使えるわけでは無い。
温化 魔素の低温化︵吸熱︶ 魔素を物質あるいは魔素その物を低
温化
レベルの低い魔法は、魔素だけを高温化 レベルの高い魔法は魔素
で物質を作り出し高温化させる
魔素の高温化、低温化両方の特性を持つ人は少ない。
両方の特性を持つと、レベルが低い状態から上がらないことが多い。
物質集積 足元や大気中に魔素を流し、物質を集める。
流体操作 水など流体系の変形、操作、分離
個体操作 金属などの固形物質の変形、操作、分離
気体操作 風を使った攻撃など 空気の流れを操作する
音波操作 防音、音の増幅 気体操作に近いが、音の波に特化 234
魔素の薄い膜によって空気の振動を止める。
空気を振動させ音を出す
特定箇所の音を近くで増幅させる
光子操作 魔素を聖属性光り粒子への変換 ︵剣、防具、盾、結
界構築︶ 魔力操作と魔力変換が必要
聖魔法、回復魔法の特性を持つ人が使える。
電気操作 魔素に電位差を作り電気を流す、最大で雷を落とすこ
とができる。
魔法なのに物理攻撃に分類され、防御しにくい魔法
使える特性を持つ人が少ない。
魔力操作応用
索敵 周りの魔力を感知し、危険を察知する。
隠密 自分の魔力や、気配を完全消去し、見つからないように
する。
索敵とはレベル差で見えたり見えなかったり。
隠蔽 自分の痕跡を消し去る。
動物や魔物は匂いで反応するので、隠蔽で匂いを消さ
ないと見つかる。
特殊魔法
魔素を代償にある決められた効果を得る。
さらに魔素の操作も必要となる。
精神系魔法
忘却、魅了、精神支配、思考分析 など。 魔素を直接相手に流し込み、意思を読み解いたり、記憶を改
235
ざんしたり、思ったように行動を操作する。
鑑定魔法 神の知識にアクセスし、世界の情報を引き出す。
上位鑑定は、鑑定よりも情報アクセス可能な領域
が広い。
診断 魔素を使って相手の健康状態を性格に把握する。鑑定に良
く似ている。
ステータス隠蔽鑑定による能力知をごまかす
重力魔法 重力軽減効果を得る。レベルの低いうちは浮遊術と言
って単独での使用
レベルが上がると、複数人への発動。最後は攻撃
として重さを重く出来る。
空間魔法 虚無空間付与、通常空間拡張、瞬転・転移︵魔法
陣が必要︶
時間魔法 ︵レベル秒間×2 実際の100倍の速度で動ける
レベル上昇で条件変更︶
回復魔法 使える人がまれ、生物のあらゆる異常を修復でき
る。死んだ生物を生き返らせることはできない
祈祷 解呪、死霊の解放など
精霊召還 精霊を召還する。
特殊召還魔法 ジルベールだけの現世から、物や知識を召還す
る魔法
魔力の可視化 魔力を可視化し流れを見る
学校について
236
小学校:5歳または6歳で入学、10歳で卒業
5歳は任意。
中学校:10歳入学13歳卒業
高校:13歳入学、16歳で卒業。
高校は、全ての貴族の子が王都に集合して通う。
大学
騎士戦術大学
魔法大学
文官採用後に、選ばれたエリートだけの 政治・経済大学がある。
魔法大学、騎士戦術大学卒業後に、文官になり、政治・経済大学
に行く人もいる。
1年は、前の世界と一緒で365日
通常30日で、1月、2月、3月が31日。
あいて、11月、12月が31日。
冬の方が1日長くなってます。
うるう年は10月も31日です。
近隣国
ラルクバッハ王国の真北は山脈があって、超えられません。
シドニアよりも西は人型の魔物が駆逐され、存在しません。
・アルフォンス王国:
ラルクバッハ王国の西
スザンヌの婚約相手No1候補のいる国。マリアの猫ちゃんも子の
国から来た。
アルフォンス国の王子はペルージャ様15歳スザンヌの二つ上。
・ラスク王国:レオニー:第2王妃が留学していた国。
呪いの鏡台を送ってきた。
237
ラルクバッハ王国の北西にある
・マルリア公国:ラスク王国の東側にある小さな国
ラスク王国から独立自治権を持った領地。
最後の呪いの鏡台があったところ。
大きな湖があり、山の奥は、宝石の出る鉱山がある。
・エルドラ王国
剣の聖地。アルフォンス王国の更にほぼ北。
・シドニア王国:エミリア王妃が住んでいた国。
ラルクバッハ王国の東側にある。
シドニア王は、青髪、右が金眼、左が緑
2妃の子 リアン13歳、 黒髪、茶目
1妃の子 クラリス12歳、コラン8歳 金髪 緑目
3妃の子 イリアーナ10歳 銀髪、青目
エミリアは、現シドニア王の兄妹だが、母親が異なる。
現シドニア王の兄妹でエミリアと同母の妹は、シドニアの公爵家に
嫁いでいる。
・グランスラム帝国
シドニア王国の南東です。
竜を使えまた、悪いやつがいます。
人型の魔物も多く存在し、東に行くと土竜、火竜などが存在する。
治安も悪く、武力に比重を強く置いた国家
グランスラム帝国の北に、竜王バハムートから別れた一族が住んで
います。
238
・イントラ帝国
ラスク王国の北側
邪神教の人が住んでいる国
北のほうは、厳格な唯一絶対神が好まれ、もちろん、その地では邪
神とは呼ばれていない。
この北の地が、竜王バハムートの一族の本拠地。
竜王 バハムート:両金眼の竜の王。転移者、転生者ではないが神
の力を持つ。
冥界神がまともな頃に生み出した竜族の始祖。
ティアムト ジル8歳の時に105歳
竜王バハムートの一人娘。母親は人間で転生者。
母親とっくに死んでます。
3神:アロノニア、ラキシス、メリーナ、
アロノニア︵長女︶:精霊界の神。全ての精霊をすべている。
アロノニアは、自らの命を分け与え、新たな生命を作り出す。
4聖獣もアロノニアが生み出した。
ラキシス︵侍女︶:この世界の人を転生させている。未来視が可能。
唯一人類全体の事を考えて行動する神。
メリーナ︵末っ子︶:異世界人を転生、転移させている。
異世界と、この世界の繋ぐ力を持つ。その他神具を作ったりする事
ができる。
239
転移、転生は暇だから、遊びでやっている。
3女神中最大の力を持つ
神としての攻撃力は、アロノニア>ラキシス>メリーナ
4聖獣
朱雀王 ガルダ フェニックスです。
ジルのお気に入りの火魔法。
召還前もフェニックスの形を真似して撃っていた。
フェニックス同様、前世で契約し
ジルのお気に入りの水魔法。
前世で契約していた聖獣
水龍王 イシス 水の竜です。
ていた聖獣。
白虎王 コテツ
500年ほど前に、邪神を崇拝するやつらの罠にかかり封
印された。
名前を忘れたというので、ジルに名前をつけてもらう。
銀狐のコハクも一緒に救出。
玄武王 ナパトム 人間型の綺麗な女性 結界術が得意。
人間に惚れて、人間界に移り住む。
その人が死んだ後も、その立場となった人に使えている。
守護精霊
タマ:長毛種白猫 マリアの守護精霊
リーシャ:長毛種 黒 シュミットの守護精霊
パトリッシュ:セントバーナード アメリの子供の守護精霊
リリエンタール:ゴールデンリトリバー マイアーの守護精霊
マロエ:チンチラゴールデン兄 エレノアの守護精霊
240
ごとうまき
かみさきまこと
スーレリア
マキと呼ばれる。 転生者
シンと呼ばれる。 転生者
ミュウ:チンチラゴールデン妹 ニーナの守護精霊
建国の王
神崎真
聖女
後藤真希
未来視の巫女
ヨハン
シンとマキが転生者だと知っている。
スーレリア兄
シンの良き友。 シンが王になった後、隣の国の王となり独立。
シンが死んだ後も、その国を裏から支えた。
241
4.1 お見合い初日︵前書き︶
もう婚約の話です。
当初の予定では、13歳まで婚約しないはずだったのに。
なぜこうなったのだろうか。
242
4.1 お見合い初日
あっという間に1週間がたち、お見合い大会の日がやってきました。
メルミーナ様は、朝は一緒に行くけど、すぐにお勤めに戻るそうで
す。
とりあえず最初の挨拶までは居るそうなので、3人で向かいました。
晴れた良い日だったので、庭園に案内されると、20名ほどの子供
たちと、その両親が揃っていました。
両親同士が挨拶をし始めています。
メルミーナ様に連れられて、リリアーナかあさまが挨拶をしていま
す。
なぜか何人かの母親が、リリアーナかあさまの名前を聞いて、握手
を求め、
ハンカチに、サインを書いてもらっている人もいます。
いったいなんでしょう?
そんな有名人だったのでしょうか?
子供達は、10歳前後から、15歳ぐらいの子供が中心です。
侯爵家以上の人で、伯爵家の出身は私だけなのです。
全員が揃うとようやく、王様と、3人の王妃様が登場です。
お見合いには、関係ないのですが、2妃様が、5歳の第3王女マイ
アー様を、3妃様が、3歳の第4王女シュミット様を連れてました。
王様と、王妃様方の挨拶があり、横にあるベールがどかされると、
第1王女スザンヌ、第2王女マリアの2人が手を繋いで登場です。
小さいほうが第2王女は、やっぱり先日庭で遭遇したかわいい美少
女です。
243
すぐに目が合い、一瞬驚いた顔をしましたが、すぐに微笑みかけて
くれました。
覚えていたのかな?
最初に隣の背の高い少女から自己紹介が始まりました。
第1王女のスザンヌ様。
私よりも少し背が高い13歳の美少女。
銀髪に右目が金眼、左目が青。
めちゃくちゃ綺麗な王道的美少女。
前世含め始めて見るレベルの子。
第2王女がマリア様がかわいい系のトップなら、
スザンヌ様は美人系のトップでしょう。
ドレスは濃い目のピンクで綺麗さを際立てています。
目が合い、じっと見られた気がしますが、気のせいでしょうか。
女性に抵抗力が無いので、美人に見つめられると緊張します。
つづいて第2王女のマリア様が紹介。
以前は茶色の目だったはずが、事前のメリーナ様情報の通り、紫の
目になっていました。
その雰囲気と合わせ、聖女にふさわしい可憐な美しさが余計に増し
た感じです。
着ている水色のドレスも非常に良く似合っていました。
つづいて、参加する少年が順番に自己紹介を始めました。
金眼の持ち主からスタート、
右目が金眼
ハイルデン公爵家オレリアン14歳。
オズワルト侯爵家グレイ10歳。
244
左目が金眼
アレクサンドロ公爵の子はいないのでその系統の
グレゴール侯爵家 ロベール6歳︵最年少︶
と紹介が。
私も、金眼となっていますが、今日も魔道具で隠してます。
自分の身分は本来伯爵家なんで、紹介は最後なのですが、メルミー
ナ公爵家の推薦なので、オレリアン様から始まり金眼の方の紹介が
終り、次に私の順番が回ってきました。
練習したとおり、
﹁ジルベール・クロスロード、金眼ですが、目が弱いので、魔道具
で保護させてもらっています。
本日は、明るすぎるために、このままで、魔道具で目を保護してお
りますので、ご了承下さい﹂
普通は、このような場では、他の貴族の前では、
と自己紹介をします。
アナベル・クロスロード伯爵家の長子、ジルベール・クロスロー
ド
が、今回は、金眼だけを説明し、それを隠している理由を説明して
自己紹介としました。
全てメルミーナ様から指示通りです。
そして、そのまま、自分の領地で作り始めたぬいぐるみを4つ、マ
イボックスから取り出し全員にプレゼント。
猫のぬいぐるみと、各王女の目の色の石のネックレスをつけたティ
ディベア、
そしてウサギに似せた動物タイプのスリッパを渡した。
予定では2個でしたが、王女が4人いたので、アドリブです。
多めに用意しておいて良かった。
245
王から﹁空間魔法が使えるのか﹂と
﹁ここは魔法禁止ですが、武器でなければ、
空間魔法の取り出しができますね。
空間に入れることは出来ないみたいですけど﹂と説明した。
もちろん、先週ここに来た時に、マイボックスから物が取り出せる
ことは確認済みです。
3,4王女もプレゼントをもらえると思っていなかったようで、と
ても喜んでいました。
第3王女がスリッパが﹁かわいい﹂と今履こうとしたので、スリッ
パは、寝室で使う部屋履きと説明しました。
それでも今、履きたいと言うので、汚れるとすぐに駄目になってし
まって、ウサギさんがかわいそうですよ。
大切に使ってもらえますかと説明すると、納得してくれたようです。
素直な子で良かった良かった。
王妃様方が、これらは売り出すのか聞いてきたので、
今、王都に領地の特産品を売り出す店を作る予定で準備していると
伝えました。
日本食用の食材も、手に入るようになると説明すると喜んでいまし
たしました。
マリア様は、﹁アイスクリームが食べれますか﹂と聞いてきたので、
﹁前回は、領地で作ったものを持って行きましたが、今はまだでき
ないのですよ。
アイスクリームを作る、魔道具が故障してしまうので、原因を探し
てます。
一定の温度で冷やし続けるのは難しくて﹂と説明すると、
246
1妃様が﹁魔度具の専門家を領地へ派遣しましょうか?﹂と。
﹁それはありがたいです。
アイテムボックより複雑な魔道具を幾つか作りたいと思っているの
ですが、
魔道具に使う魔法陣を独学で作っているので、
特に魔法陣の専門化が来てくれると助かります﹂
﹁もしかして、噂のアイテムボックスはそなたの開発したものなの
か?
領地にいる魔道士ではなく?﹂
と王様が。
﹁アイテムボックスは、1台目は私が作りました。
量産できるようにしたのは、領地の魔導師クインさんです﹂
王妃様がたを含め、付き添いの大人が全員驚いています。
﹁王の前でいい加減な事を言ってはいけない。部下の功績は、正し
く伝えるのが領主の務めだ﹂
と、ハイルデン公爵が言っってきた。
﹁そうは言っても、うちの領地で空間魔法が使えるのは私だけです。
国内の空間魔法が使える大人は、そちらが全て把握されているので
は?
おそらく我が家の領地には1人もいないと思いますけど﹂
と続けてとどめに、
﹁領地に見学にこられれば、直接アイテムボックスを作るところを
お見せしても良いですよ。
それで嘘でないことは証明できますよね﹂
247
王様から、
﹁そこまで言って嘘は無いだろう。
そもそも私は疑ってはいない。
そなたが嘘をつけばそれはメルミーナの責任だ。
そのようなことがあると思えぬ。
この場で、言いがかりつける発言となってしまい、すまぬな。
さあ、もう話はもう終わりだ。
興味があるのはしょうがないが、あまりジルベールの独壇場なって
もでも良くない。
さあ次の子に移るぞ﹂と、
その言葉で話題は終了。
私は、後ろに下がり、別の方と交代した。
全員の自己紹介が終わったら、メルミーナ様は、
もうトラブルは無いだろうと判断したのか、退出された。
それを皮切りに、他の2公爵様から、話題が次々に提供され、その
方面の方々のアピールが続いた。
私は、本来ハイルデン公爵系で、今も領地はそこなのですが、
メルミーナ様からの事前情報どおり、最初に目をかけたが、手に入
らなかった逃がした魚は必要なく、
現在進行形で敵らしい。
逆にとても厳しい対応をされてしまいました。
さすがに、子供の私としては、しばらく、ハイルデン公爵の視線が
怖くて、話に入れませんでした。
248
おかあさまも、無理に話をしないようにしているし、黙ってよう。
3妃様が私の隣の席にマリア様を移動させてくれたので、他の方の
話もあわせて、少し会話ができました。
その間も、話もしていない、第1王女の視線をちょこちょこと感じ
ました。
好感度あげのイベントは最初だけだったし、なぜでしょうか?
249
4.2 お見合い初日からやっちまった
そんなこんなで、会はどんどん進んで行きます。
天気が良かったので、途中の昼食は中庭でした。
普段中庭での食事は立食が多いそうですが、今回は、子供達ばかり
ですし、マナーチェックがあるので、ちゃんとテーブルが用意され
ていました。
一つのテーブルが8人で食べるテーブルです。
私は、マリアと、3妃様、お母様に、グレゴール侯爵家のロベール
様︵6歳︶と、オレリアン様単独の8人です。
これで、良かった、ハイルデン公爵まで一緒だったら、私はご飯も
食べられなかったかも知れない。
とはいえ、その方は隣のテーブルにいます。
王様は、ハイルデン公爵、アレクサンドロ公爵、それにメルミーナ
公爵もこの時は戻ってきて、
1妃様が、マイアー第3王女とシュミット第4王女の面倒を見なが
ら、同じテーブルで食事をしていました。
なにやら、私の話が話題に出いるような気がします。
たまにジルベールと名前が聞こえるんです。
それも、ハイルデン公爵から。
そのたびに、ビクッとするんですけど。
王妃様方は、3名で子育てをしているので、こういう時には、直接
の親と関係なく面倒を見ているそうです。
特に、2妃様はこのところ体調の悪いことが多いので、1妃様と3
妃様が協力しているそうです。
250
1妃様は、子供が2人とも王子なので、特に王女達を可愛がるらし
く、子供達も1妃様と良く遊ぶそうです。
と、食事の時に教えてもらった。
マリア︵7︶と、オレリアン様︵14︶、ロベール様︵6︶、私︵
10︶と、
年齢もばらばらで共通の話題も無い。
オレリアン様は、ルカ王子と学校ではクラスも一緒。
マリアは、オレリアン様︵14︶、ロベール様︵6︶とは王城で良
く会っていたらしい。
ルカ王子の時から始っていた、王家の方々の特別な教室はマリアが
6歳の時から始っており、
マリアとロベール様は、そこで週2回はあっていたそうです。
私とは、先日初めてあったばかりで、この中では一番の新参者。
3人の会話を聞きながら、会話を模索します。
途中、食べ物の話になると、誕生日に食べた料理の話になり、
私との共通話題になります。
途中の話の節々で、マリア様が転生者としての記憶で話をする部分
があり、博識ですね、異国の料理も含めて、良くお勉強されている
のですね。
と、オレリアン様、ロベール様が解らない領域の話を、異国として
扱うことで、疑問を払拭しておいた。
マリアもその言葉で、しゃべってはいけない領域があることに気が
つき、少し自重していた。
そして、恐らく私が転生者と言うのは確実に伝わっているぽい。
食事会が終り、暫くすると、第2王妃様が、体調がよくないらしく、
そろそろ退出される。
251
その時に、気になったので、鑑定で調べて見ると、状態のところに
<呪>となっていました。
魔法が禁止された区域ですが、鑑定は使えるみたいです。
外部への発動がダメなのでしょうか?
ただ、魔法禁止に阻害され、正確では無いかもしれない。
結果にも不安があり、
他の王族も鑑定でチェック。
呪いはありませんでした。
そして、マリア様のスキルに鑑定もしくは診断があるか調べた。
マリアには鑑定ではなく、病気を調べる聖魔法系の診断のスキルが
あった。
そこで、マリア様の会話に割り込みました。
﹁マリア様、2王妃様に診断のスキルを使ってみましたか?﹂
と聞くと、
﹁この庭や、王城の中は、魔法が使えないので、見ていません﹂と
の事。
どうやら、私の上位鑑定とは違って、同じようなスキルなのに、診
断は使えないようだ。
どこか魔法が使えるところがあるか質問すると、王城内の教会が魔
法が使えると、マリア様が教えてくれた。
やっぱりそこなんですね。
前回もそこから転移したので、その場所は解っていましたが、やは
り魔法が使えるのは教会だけのようです。
すると、参加者から、
﹁メリーナ様が降臨されたという噂のところですよね。ぜひ見たい
です﹂という声が。
252
王様が、なんで知ってるんだ?と言う顔で、その子の親を見てまし
たが、会に参加している人は、全員知ってますよと1妃様が突っ込
んでくれたので、
何も無かったのですが、一瞬、みんなビクッとしてましたよ。
さてさて、その話が出たので、ちょうど良いことに、みんなで教会
の見学に行くことになりました。
2王妃様は帰るつもりだったようですが、私が、聖女の診察だけで
も受けてみたらどうでしょうかと提案すると、もう少しだけならが
んばりますと、全員で移動を開始しました。
到着後、第1王妃様が、メリーナ様の降臨の様子を説明する中、
私は、2妃様の近くに移動。
マリア様が、2妃様に診察のスキルを発動、様子を聞くと、体力が、
全快に対して7割程度、治癒力の低下、体調が悪いになっている。
しかし、臓器など含め、特に悪い箇所が無い。
それを聞いて状態異常に関しては何か出ないかと聞く。
スキルのレベルが足りないのか、その辺は解らないとマリアが説明
してくれました。
呪強
とでました。
わたしも同時に鑑定能力で見てみました。
先ほどとの異なり、
先ほどよりも正確にはなりました。やはり多少の阻害はあったよう
だ。
だが、状況がかなり悪いことがわかりました。
<説明では、魔力回復が極端に遅く、常に魔力も漏れるため、自然
253
回復力が極端に減り、魔力欠乏状態の長期化による体調の悪化。>
とわかった。
残念ですね。
では部屋に帰りましょうという話をし始めたので、しょうがない。
このまま放置は出来ない。
とりあえず、2妃様の周辺に防音障壁を作り出し、私から現状の説
明をしました。
﹁今、2妃様の周りに防音障壁を作り出しています。
私の声は、2妃様とマリア様にしか聞こえていません。
私は、相手の状態異常を知ることが出来ます。
そのスキルを使って見たところ、2妃様の体調が悪いのは、呪われ
ているからです。
それもかなり強い呪いがかかっています。
内容を見ると、呪いの効果によって、魔力欠乏が常時続きます。
自然治癒力も下がっています。
回復魔法など外部からの魔法も呪によって効果が出ないようになっ
ています。
それによって体調不良になっています。
単刀直入にお聞きしますが、誰かから恨みをかうようなことがあり
ますか?
それが解れば、解決は簡単ですけど﹂
と告げると、2妃様は、驚き、
恨みを買う相手など特定できないと。
まず、王様に相談するために今の話をしても良いか聞かれたので、
どうぞと答える。
2妃様は、急いで王様に相談に行った。
254
4.3 解呪
私は、王様・王妃様に近づき、周りに防音の障壁を張ってから、
﹁呪いの解除は、聖魔法に含まれますが、
マリア様は、まだ聖女になったばかりで使えません。
大神官様を呼び出すにも、時間がかかりますよね。
しかし、私も呪いの解除が出来ます。
よければ今から私が解呪を試しましょうか?﹂と伝えると、
﹁そんなことができるのか。
まさか、呪いの解除は、大神官様でも難しいはずだ。
解呪には一般的に数日がかかるのではないのか?﹂
﹁もちろん、確実の解呪できるとはお約束できません。
でも大神官様を待ち、解呪の準備をしても、神殿側の対応には数日
はかかるのなら、私が試すだけならすぐにできます。
大神官様が数日かかる理由は、総魔力量が少ないからですよね。
私は、大神官様よりは、はるかに総魔力量が多いので、たぶん即座
に試せます。
ダメなら大神官様にお願いしてください。
ただし、解呪は、皆に見せるものではありません。
出来れば2王妃様だけを残して後の方を外に出してもらえないでし
ょうか。
おひとりだけ残すのが、不安なら、私の母や他の王妃さまを残して
ください﹂と提案しました。
﹁大神官よりも総魔力量が多い? それはまた。信じられない。大
神官は総魔力が3000はある。
255
聖女クラスで多くても4000と言われる。お主、それよりも多
いのか?﹂
﹁軽く10倍超えてます。鑑定の能力がある方がいれば、見てみれ
ば解りますよね?﹂
﹁お主は、空間魔法も使えて、鑑定のスキルも持っている。
そして解呪も出来る。総魔力量は大神官の10倍以上。
にわかに信じられんが、メルミーナが推薦するほどのじゃ。
嘘はつけぬのだから信じるしかあるまいな。
そうであれば、お主に解呪を頼むのは、道理。よろしく頼む﹂
﹁はい、解りました。できれば、他の方を外に出してもらえません
か?﹂
﹁解った、だが、マリアも将来のために、見せて欲しい、それとマ
リアの母も一緒に﹂
﹁では、それで行きましょう。皆様を上手く外に出してください。
今の会話は防音障壁の魔法で誰も聞いてません。誘導をお願いし
ます﹂
﹁音魔法まで使えるのか。なんとまあ﹂
とつぶやきながら、王様が、皆を上手く外に出してくれました。
2、3妃様とマリア、母のリリアーナは残っています。
お母様と、3妃様、マリアに状況を説明し、解呪を始めることに。
﹁では、今から解呪の魔法を使いますが、マリア様、これは私の独
自のやり方なので参考にはならない可能性が高いです。
基本、私は無詠唱で魔法を使うので、そこは注意してください。で
は始めます﹂と言って、
まずは普通に﹁解呪﹂と一言唱え、解呪を発動するも、やっぱり失
256
敗。
現状では、解呪のレベルが高くなく、このレベルで強呪の解呪はや
はり無理か。
神格化を使って、強制的に魔法の効果のアップと高スキル化で試す
しかない。
﹁強い呪いですね。普通に魔法を発動するとレジストされました。
もう一段階強い魔法を使います。
すいませんが2妃様、目をつぶってメリーナ様にお祈りをしていて
下さい﹂
2妃様が目を瞑ったのを確認して、目の前で神格化を発動。
﹁我が名において命ず、呪よ去れ﹂と言語による命令とあわせて魔
法を発動する。
結果を見ると、成功!。
続いて、弱った体を回復魔法を発動しようとしたら、無理だった。
あれ、魔法が封印されてる。
前の回復魔法を無理やり使ったときと一緒か。
回復魔法じゃないから大丈夫だと思ったのに。
マリア様に、診断をお願いする。
状態が良好になっているそうだ。
2妃様は3妃様さまと手を繋いで喜んだ。
2妃様が泣いて喜んでいるので、3妃様が対応している。
マリア様が、2人が騒いでいる隙に隣に来て、
257
﹁ジルベール様は、メリーナ様との会話に割り込んできた方ですよ
ね﹂
﹁はい﹂
﹁転生者ですよね?﹂と
﹁そうですよ﹂
﹁日本人ですか?﹂
﹁そうです﹂
﹁転生前は、どんなお仕事を?﹂
﹁講師です。あなたを助けようとして車にひかれた﹂
﹁やっぱり、そうですか﹂
と、簡単なやり取りがありました。
その話が終わる時に、全員で外に出ますよと伝えられ、会話は終り。
そして、みんなで外に出ました。
すると、1妃様が2妃様の顔色を見て、
私に向かって、﹁成功なのね﹂と訊ねてきたので、
﹁はい﹂と答えました。
そして気がついたのですが、どうも、体が重い。
ものすごく眠くなってきた。
思考能力も落ちてきた気がする。
﹁予想以上に消耗してしまったみたいです。
申し訳ありませんが、ここで退出させてもらえませんか﹂
と申し出ると、
﹁まあ、大変。確かに、貴方、顔色が悪くなっていってるわね。
すぐに休める様に王城に部屋を用意します﹂
と侍女に指示を出すと、さっと動き出す侍女達。
とりあえず、すぐに椅子が用意され、座らせられた。
258
すると、第1王女が、私の前に立ち、ひざをついて高さを合わせる、
﹁母を助けてくれてありがとうございます﹂と手を握ってきた。
私は疲れた状態で思考能力が低下しているにも関わらず、たぶん顔
が真っ赤になっている。
第1王女に見つめられてドキドキ。
あれ、私の運命の人ってマリアじゃ無いのか?
ちょっとヤバい。
同時に2人も好きになっちゃたかも。
いや、運命なんかじゃなくて、単に綺麗な子を好きになっていって
るのか?
やべー、思考がまとまらない。
そこへ侍女がやってきて、部屋に案内してくれると言う。
私は、侍女と共に王城に移動し、部屋に入るとすぐに眠くなり、ベ
ッドに倒れこんだ。
そして意識を失う寸前に、無茶な回復魔法を使った時と同じか、
いや、これだけ眠くなるようだと、体への負担はもっと多かったの
か?
と少し反省しつつ、そのまま意識を失ってしまった。
zzzzzzzzzzzZ!!
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4.4 お見合い二日目
目が覚めると、朝でした。
そして、昨日、寝た時と服が変わっていました。
誰かが服を着替えさせてくれたみたいです。
体を起こして、周りを見回す。
まだ少しボーとする。
そこへ、起きた音を感じたのか、侍女が3名ほど部屋に入ってきて、
挨拶をしてきた。
ひとりは侍女長だろうか、指示をして、急いで出ていきました。
まずは湯浴みをすると言われ、自分で出来ますと返事するも、
抵抗むなしく2名の侍女に服を脱がされ、お風呂に入れられ、体や
髪を洗われてしまいました。
10歳の体ではあるけど、美女ばかりの若い侍女2人に裸を見られ
るだけでなく、
体まで洗われたのは恥ずかしすぎました。
貴族の家ですが、我が家ではそこまで甘やかした教育ではありませ
ん。
いや、3歳ぐらいまでは、アメリと一緒にお風呂に入っていたので、
侍女やアメリに体を洗われていましたが、
最近は1人でのんびりお風呂に入るので、侍女にそこまでされるこ
とは無かった。
たまに、髪の毛の汚れを綺麗にしましょうねと、きちんと洗いなお
260
される事があったぐらいで、全身洗われたのは久しぶりです。
王城だと、こんな感じなのかな。
大人になっても洗われると、やばいんじゃないかな。
王子たちは、幾つまで洗われるんだろ、機会があれば、聞いてみた
いな。
風呂から出ると、用意された服に着替え、髪をセットされ、朝食を
食べに連れて行ってくれました。
いたれりつくせり、すごいです王城!。
部屋に入ると、王族の方々はすでに揃っており、朝食を食べている
ところでした。
みんなって、王族の方々だったのですね。
びっくりしました。
そこに座りなさいと、マリア様の隣を示されたので、挨拶をし、指
定された席に座る。
つづいて、母が部屋に案内されて入ってきました。
そして私を見て、﹁目﹂と一言。
つづいて王から、最悪の一言が
﹁侍女から報告があった通り、ほんとに両眼が金色だな。
それであのような高度な魔法が使えたのか、納得がいった﹂
一息いれて、話を続ける。
﹁いろいろ聞こうと思っていたが、メルミーナを問い出さなければ
ならないようだな。
母は、リリアーナだったか、もちろんお主も知っておろうが、
261
目の色を変える魔道具がそう簡単に手に入ると思えん。
全てはメルミーナに確認した方が良いのであろう﹂
そう言われ、手を耳にあてたら、イヤリングをしていなかったこと
に気がついた。
侍女に寝ている間だにはずされていたらしい。
﹁まあ、良い、
ところで、ジルベール、体調はどうだ?﹂
﹁はい、楽になりました。魔力も戻ってきたみたいですので、大丈
夫です﹂
﹁そうか、それは良かった。
昨日は、2妃の件、本当に助かった。
礼を言うぞ。
まあ、食べ物を前にこれ以上時間を取るのは良くないな。
ジルベールは、昨夜の夕食も食べておらぬのだろう。さあ食べよ﹂
王様に即され、朝食を食べ始めると、隣のマリア様から
﹁昨日かなり無理されたようですが、
メリーナ様との話にあった例の症状とかは大丈夫ですか?﹂と小声
で話しかけられた。
あらためてステータスを確認したら、後半日ほど魔法が封印されて
いた。
﹁ああ、今回も魔法が使えなくなったようです。
まだ、残り半日ほどは、禁止されてますね﹂と答えた。
食べ終わると、第4王女のシュミット様が、隣にやってきた。
昨日、プレゼントしたぬいぐるみを両手で抱えスリッパを履いた状
態でした。
262
﹁これ、ありがとう。すごく気に入ったの﹂と、
ニコニコの笑顔で挨拶をされた。
マリア様をちょっと小さくした感じの可愛い子。
見た目、妖精みたいだな。
癒されるー。
﹁気に入って頂けて良かったです。
作ってくれた人には、王女様に気に入ってもらえたと伝えておきま
す。
あ、そういえば、スリッパを履いているときは走らないように気を
つけてください。
そのウサギさんは、走るのが苦手なので。
それと、約束をちゃんと守ってくれていれば、新作ができたら送り
ますね﹂と。
ニコニコ笑顔のまま、
﹁うん、走ったりしない。約束する﹂
と元気に返事をして、侍女と一緒に部屋に戻った。
そのあと、1妃様から、予定通り、
3日間お見合い大会は続くと伝えられ、
昨日のお礼に、今夜、皆でお食事会をするが、明日もお見合いはあ
るので。
私はそのまま同じ部屋に泊まるように言われました。
お見合いは、あと2日。
今日の午前中に剣、明日に魔法の能力を見せてもらうそうです。
午後は昨日と同じように子供同士で遊ぶ予定。
263
ああ、そういえば、昨日の午後って、途中から私参加してませんね。
食事が終わった後に、王様から、昨日のその後について説明があっ
た。
とりあえず夜に大慌てで、大神官様が王城に来て、
王家全員の状態を確認したが、他に呪にかかっている人はおらず、
2妃様の周辺も確認したけど、はっきりとした怪しい魔道具は見つ
からなかった。
しかし、呪の気配を感じられる物品が幾つかあったので、
それを、調べるからとそれを半分ほど持ち帰ったそうです。
私の魔法は、夜には復活するので、夕食後に2妃様の部屋を見せて
欲しいとお願いしておきました。
夜に、一旦王妃様方の部屋の魔法禁止を解く準備をしておいてくれ
るそうです。
剣のテストまで時間があるそうなので、庭を借りて訓練をしたいと
申し出ると、
フィリップ第3王子が一緒にやりたい言うので、そのまま2人で庭
に向かいました。
フィリップ第3王子は、同じ10歳。
ルカ王子、マクシミリアン王子は学校に行くそうです。
ほんとはスザンヌ第1王女も学校ですが、この3日間はお休みして
いるそうです。
庭に出るまでに、フィリップ王子と少し会話を交わします。
庭に出ると、フィリップ王子の侍女が私の分の木刀を持ってきてく
264
れたので、
それを受け取り、素振りから開始。
フィリップ王子の素振りは10歳にしては鋭く、結構良い剣筋をし
ていました。
私が、剣を振ると、フィリップ王子が、
﹁へー、すごいな。大人と変わらないな、結構出来るのか?﹂と。
﹁まあ、剣王のエイミーが教えてくれてますから、普通の兵士より
は強いですよ﹂
と言うと、びっくりした顔で見て、私の真似をしだした。
私は、暫く型をやった後に、エイミー直伝の超スローで型をなぞる
訓練を開始しました。
フィリップ王子が、なんだそれ、変わった訓練方法だな?
と言いながら真似をしてきましたが、
しかし、10分でギブアップ。﹁これ、きつすぎるだろ﹂と。
私は、訓練を続けながら、
﹁早く動かす訓練とゆっくりと動かす訓練を適度に混ぜ、
型を体に覚えさせることで高速剣の撃ち込みができるようになる、
と師匠のエイミーが言ってました﹂と伝えると、
﹁剣王が言うのだから、そうなんだろうな、
どれぐらいできる様になればよいのだ?﹂
﹁速いの10分。ゆっくりが30分できる様になれば、
かなり剣速が早くなります﹂と説明すると、
﹁当座の目標だな﹂と、私が30分やり続ける間に、
途中何回かトライするも、最後までは無理でした。
そして、王子の剣も同じ年頃の子に比べる頑張れるほうですよと、
265
誉めて訓練を終わりました。
振り返ると、いつの間にか来ていた第1王女が近づいてきて、
フィリップ王子と私にタオルと水を渡して来ました。
軽く挨拶をすると、第1王女は一足先に、このまま侍女たちで会場
に行くそうです。
私は一旦部屋に戻り、着替えてからリリアーナお母様と皆が待つ剣
のテスト場所に向かいます。
もちろん、忘れずに、イヤリングを付けましたよ。
266
4.5 お見合い二日目スタート
私が到着すると、私以外はスタンバイ済み。
王女達は2人は、他の候補者の方々とお話をしていました。
近い距離ほど、学校に遅刻するって原理ですね。
言われた時間に間に合うように移動しましたが、皆様は遅刻しない
ように早めに来ていたそうです。
最後が私でした。
余裕で行動しすぎ。
王城の中、遠いし、侍女の足が遅い。
良く考えればよかった。
反省!。
でも、侍女さんも、あわてさせなかったし、もしかしたら、他の公
爵からの指示か?
なきにしもあらず。
まあ、間に合ったから良いか。
さて、ここは、王城の騎士の方々が訓練をする訓練場だそうです。
今日は、騎士団副師団長のアシュリーさんが相手をしてくれるそう
です。
王宮の騎士団は、男性だけの騎士団と、
女性だけで、主に後宮や、王城内を守る聖騎士団があります。
それとは別に正規軍もあり、レイブリングさんやエイミーさんは正
規軍に所属していた人たちです。
267
騎士団は、王都の守護を行い、正規軍は、魔物の討伐や、対外的な
活動を行います。
国と国の戦いの時は、正規軍が中心となり、場合によっては騎士団
も応援に行きます。
ちなみに剣のテストには先ほどのフィリップ王子も見に来ています。
参加する気満々な感じです。
まずは、全員に型を見せて欲しいと言われ、配られた木刀を持って
型を見せましたが、
グレゴール侯爵家のロベール君は僅か6歳なので、剣はできません。
他にも数名剣を習っていない子はいます。
当然でしょう。
折角の機会なので、剣ができない子は、聖騎士のジュセリさんが、
型を教える事になりました。
想定済みですよね。
剣ができるのは、半数の15名ほどで、
そちらで集まり、順番にアシュリーさんと模擬戦をする事になりま
した。
当然ですが、ハイルデン公爵家のオレリアンは、最年長14歳だし、
金眼でもあるので、アシュリーさんと同等とまでは行かないものの、
かなり肉薄した戦いを見せてくれました。
続くグレイ様は、同じ金眼といえどまだ10歳。
それなりの剣筋で終りです。
ここで、フィリップ王子が参加しました。
268
グレイ様よりは良い剣筋ですが、ほぼ同等ですね。
フィリップ王子に﹁お強いですね﹂と言うと、
﹁フン、心に無いことを﹂
﹁いやいや、グレイ様と比べても、十分強かったですよ。
魔力で、身体強化すれば、もっと剣速が上がりますよ﹂と
フィリップ王子の魔力を外から動かし、強制的に身体強化を発動さ
せた。
それに、私の魔力操作を加えて、自分で身体強化を発動させた感じ
にします。
﹁魔力の流し方を覚えてくださいね﹂
体を少し動かして﹁確かに、力も速さも変わったが、難しいな。
というか、お前、すごいな。他人の魔力をいじれるのか﹂
﹁まあ、多少は﹂
﹁ふーん、また後で教えてくれ﹂
﹁良いですよ。今日は泊まりですし﹂
と気楽に答える。
そして、魔法は禁止されていたが、魔力操作は問題なくできた。
自分の身体強化も問題ないようだ。
そして、私の順番になりました。
残念ながら、アシュリーさんの剣はエイミーと比べると遅すぎて話
しになりません。
そんなこちらの気もしらず、
﹁かかって来なさい﹂と言うので、どうするか迷いましたが、とり
あえずスタート。
とりあえず、第3王子の剣速で撃ち込み様子を見る。
何度か撃ち込むも、この剣速ではやはり完璧に防御される。
﹁もう少し早くしても良いですか?﹂と質問すると、
269
﹁子供が遠慮する必要は無い。思いっきり来なさい﹂と言われまし
たが、
思いっきり行くと、死んじゃうでしょ確実に。
先ほどよりも剣速をあげて撃ち込むと、まだ余裕なのか、更に攻撃
もされ始めました。
相手の剣速に合わせてスピードを調整。
もう少しだけ早めにすると、アシュリーさんが防御で手一杯になっ
てきた様子。
少し離れて、スピードを上げるべきか悩んでいると、
アシュリーさんが
﹁なかなか出来るな。私も本気で相手をしようかな﹂
などと、まだ余裕があるような言い方をしてきました。
うーん、あともう少しだけスピードを上げて撃ち込んでも良いのか
な?
余裕があるって言ってるし。
﹁では、私ももう少し速くしますね﹂
﹁まだ速く出来るのか?﹂
﹁ぜんぜん余裕ですよ。じゃあ行きますね﹂
﹁え、ちょっと........﹂
結局、、アシュリーさんは、完全に防御が間に合わず、私に剣を弾
き飛ばされ、終了。
アシュリーさんは、はじき飛んだ剣を見て、体が止まったままでし
た。
﹁スピード上がらなかったですね。残念。これで終わっても良いで
すか?﹂と声をかけると、
270
﹁1人すごい子が居るとは聞いていましたが、これほどとは。...
誰に習っているのですか?﹂と。
﹁エイミーに習っています。今は、魔法無しだと2回に1回ぐらい
しか勝てませんけど﹂
﹁剣王エイミーに勝てるって、彼女は、国内最強ですよ。団長でも
勝てないのに。
私では相手にならないのも納得ですね﹂
﹁ふーん、そんなものですか?﹂
﹁お手合わせ、ありがとうございました﹂とあちらから丁寧に挨拶
をされ、
アシュリーさんと握手をしに来たので、手を取り、礼をし、後ろに
下がりました。
私の順番は終り、王女の後ろの席に移動しようとする。
途中、第1王女から、
﹁すごいね。最後は、剣が見えなかった﹂
と声をかけられ、
﹁お褒め頂き、ありがとうございます﹂と答えて、
彼女の横を通り過ぎて、後ろの空いている席に座りました。
他の子供達の親も、驚きの表情で見ていましたが、無視。
少し目立ちすぎたかなとちょっと反省。
もう少し自重した方が良いのかな?
でも、これでも手を抜いてるんだけどな。
これ以上あまり目立つとここにいるメンバーから反感を買うかなと、
王女から、わざと離れた席に座った。
すると、第1王女のスザンヌ様が自ら移動してきて﹁ここ、よろし
いかしら?﹂。
と聞いてきた。
271
いや、そちらから来ちゃったんですね。
もちろん、断ることができるはずがありません。
ハンカチで椅子の上をさっと拭いて、どうぞとエスコート。
隣に座ると、スザンヌ様から話を始めてきた。
何が好きかとか、普段は何をするかなど、ごくありふれた話。
王女は、最近劇にはまっているそうです。
今世で劇を見たことが無いので、色々と話を聞き込みました。
王女は、今度劇を見に行きましょうと誘ってくれましたが、
婚約しなかったらどうするの?と返事に困ってしまいましたが、
まあ、私が年下だし子供っぽくありがたく回答しておけば良いかと。
とりあえず行きたいと言っておいた。
正解はわからないが、王女の機嫌が良かったので、良しとしよう。
さて、お話をしながらも、チョコチョコと他の候補者も見ていたら、
スザンヌ様と同じ年のミシュルという青年がなかなか強かった。
スザンヌ様に﹁今戦っているミシュル様、剣筋も良く、かなり頑張
ってますよ﹂と伝える。
﹁あら、ほんと、オレリアン様より強いかも﹂
﹁戻ってこられたら、声をおかけになったほうが良いのではないで
すか、
私もそろそろ周りの視線が痛くて。
折角の楽しいひと時でしたが、頑張っている彼に譲ります﹂
﹁まあ、良いようにあしらうわね。
272
でもあなたの言うことも一理ね。
そろそろ他の方のところに行けと、お母様の目も語っているみたい
だし、
名残惜しいけどミシュル様のところに行きますわ﹂と言って席を立
ち、
何を考えているのか
﹁マリア、交代しましょう。私が戻るまで席を確保しておいてね﹂
と言って入れ替わった。
そして、隣がスザンヌ様からマリア様に入れ代わった。
マリア様は﹁スザンヌ姉さま、今日はすごく積極的ですね。
でも良かった、少し話をしたかったのだけど、お姉さまと話が盛り
上がってましたから。
で、何のお話をされていたのかしら﹂と、7歳の女の子らしからぬ、
大人の女性の言葉が返ってきた。
﹁話していたのは、先日見たと言う劇の事です﹂
魔法が使えないので、防音の魔法障壁が張れないので、日本語に代
える。
﹁マリア様、私と話をすると年齢が前世年齢に戻ってませんか。
7歳の話し方じゃないですね。
他の人と話す時は、もう少し子供っぽく話してますよね﹂
﹁そうかしら、気にしてなかったわ。
前世持ち同士だと、油断しがちになるのかしら。
あまり気にしないで話してくれば良いわ﹂
﹁了解。じゃあ、元に戻します﹂
273
元の言葉に戻して、王女から
﹁劇の話ね。あなたも劇が好きなのですか?﹂
﹁いえ、見たことが無かったので、興味が出たのは、光がすごいと
か、
音楽が鳴り響きとかの部分で、どんな魔法や魔道具が使われている
か気になっって聞いてたんです。
けど、まあ聞いてるうちに見に行きたくなりましね﹂
﹁で、もしかしたら一緒に行きましょう。
なんて話しになったんでしょう。
たぶん﹂
﹁良くお判りで。
婚約したら堂々といけるんでしょうけど、別の方と婚約した後に行
けると思えないのですが、
とりあえず約束しましょうといわれたので、はいと返事して話が終
わりました﹂
﹁へー、きっと2妃様の調子もよくなったので、
近いうちに皆で見に行くと思います。
おそらく、2妃様から、誘いの文がでるでしょう。
2妃様からの誘いに付いていくなら、婚約に関係なく行けそうな気
がします﹂
﹁なるほど。まったく思い至らなかった﹂
﹁こういった駆け引きは苦手みたいですね﹂
笑。
﹁数学みたいに答えが決まっているのは得意ですが、
274
答えが一つではない問題は苦手ですね。
特に男女関係は﹂
ちょっとだけ日本語で、
﹁前世35歳、35年間独身彼女なし。今も目下継続中。
これで45年継続記録です﹂
﹁まあ、それは近日中に終わりますね。
きっと私かお姉さまが彼女どころか、婚約者ですよ﹂
ふふふと。にっこり笑う。
言葉を元に戻して、
﹁そうなえると良いですね﹂
﹁きっと、そうなりますよ﹂
マリア様から日本語で聞いてきた。
﹁ところで、領地に沢山、日本食の食材がありますけど、どうやっ
て集めたのですか?﹂
私も、日本語で、
﹁私が、魔法で、あちらの世界から取り寄せできるんです。
何でも持ってこれるわけではありません。持ち込めるのは種ぐらい
です﹂
﹁すごい能力ですね﹂
﹁内緒にしてくださいね。
何か取り寄せて欲しいのがあれば、リストを送ってくれれば、チャ
レンジして見ます。
でも期待しないでくださいね。
大物はまず取り寄せできませんから﹂
﹁わかりました。なにか希望があれば書き出しておきます﹂
275
それから、こちらの言語で、飼い猫の話をしていたら、
マリア様が3妃様に呼ばれ、私も解放。
トイレに行って、戻ってきたら、ランチタイムになったので、皆で、
移動する事になりました。
276
4.6 お見合い二日目お昼
今日の昼の食事は、立食でした。
昨日、マナーチェックをしたので、今日は話を楽しみながらと言う
ことです。
適当に食べて、私は、王女ではなく、フィリップ王子とおしゃべり
してた。
王女との会話より、王子との会話の方が楽。
しかも相手が、候補者でもないから、めっちゃ気楽です。
途中で同じ10歳のグレイ様もやって来て、同期の会話を楽しみま
した。
体って、侍女に洗われるのか聞いたら、当たり前だろって言われた。
え、自分で洗えるように、自分でやらないのって聞いたら、
我が侭を聞いてくれるやさしい母親だなって。
えーーーー。
自立できる教育として、自分で洗うんじゃなくて、我が侭だったの。
洗ってもらうの、恥ずかしいじゃん。
だからって、自分で洗う我が侭を聞いてくれるなんて、すごいね。
って。
文化が、文化が違う。
貴族生活の常識が違いすぎる。
軽く、カルチャーショックに打ちのめされた。
ふと周りを見回すと、さすがに立食、第1王女も第2王女もみんな
からすごい人気。
食事中は全く会話できませんでした。
277
そうやって昼を過ごしたら、また庭に移動し、みんなでゲームを始
めることに。
立派な大人のやるダンスではなく、音楽に合わせてお遊戯ですね。
この年代の子たちが必ずやるようです。
オクラハマミキサーみたいな男女がペアで少し踊るやつです。
圧倒的に女性が少ないので、侍女の方々も入り、運動会的な流れで
親睦を深めるようです。
王女とは2回ほど一緒になりました。
侍女の方々も、皆さん若くて綺麗な人が多かった。
ちょっと良い匂いもして、大人の女性を堪能させてもらいました。
こんなに沢山のメイドさんを見たのは初めて。
眼福です。
夕方には、解散となり、みんな王都の家に戻りました。
私たちは、本来はメルミーナ様の家に帰る予定でしたが、
このまま王城に泊まるので、昨日の部屋に戻ります。
すると、侍女を連れて、早速マリア様が来ました。
私とバルコニーのテーブルセットに移り、侍女が見守る中で、話を
始めました。
侍女さんが、お茶を入れてくれました。
﹁えっと、昨日から言いたかったのですが、その、私のために死ん
でしまって、申し訳ありません﹂
278
いきなり謝ってきましたが、そんな過去の事は気にしていない。
それをきちんと伝えるべきだと思い。
﹁いえ、前世の事を謝る必要はありません。
私も、きちんと対応して、無様に死ななければ貴方を救えたかも知
れないのですから。
前世は前世です。
今世に持ち越すのはお互い止めましょう。 できれば、私が死んでから先、なぜ貴方まで死んだのか、もし解る
ようでしたら教えていただけると﹂
そして、結局、他のアイドルの追っかけが、逆恨みで殺しに来てい
たのが真実だったと説明があり、
お互いに不幸だっただと、それよりも今世を頑張っていきましょう。
ということで落ち着きました。
そして、お互いにメリーナ様から貰った力について情報を交換した。
私は、全属性の魔法。
聖女ではないが、回復魔法も使えることを説明しました。
マリア様は、回復魔法を中心に、結界も含めた聖魔法が使えるらし
い。
ステータスについて情報を交換した時に、私の総魔力量が桁違いに
多いので、
どうやって訓練をしているのか聞いてきました。
魔力の可視化のスキルを使って、魔力をしっかりと認識した上で、
魔力操作の繰り返し、数日に1回は、魔力をきちんと使いきり、
空っぽに近い状態まですると魔力が増えることを説明しました。
領地に居る、魔法の先生は、魔力操作の練習だけで一桁変わった話
をしたら、
279
自分にも教えて欲しいと言うので、マリアの手をとり、
魔力をゆっくりと移動させ、魔力操作の間隔を学んでもらいました。
手を握ったことで、侍女が近づいてきたが、マリア様が、
魔力上昇の訓練だから、手を出さないように指示し、侍女はまた定
位置まで下がりました。
1時間ほどたつと、魔力操作にも疲れてしまい、夕食まで休憩する
事にしました。
マリア様は、この後、︵数週間後のことです︶
診断のスキルを使っていくうちに、同系統の魔力感知スキルが覚え
ます。
結果、体に流れる魔力の流れを意識できるようになる。
そもそもは、他人の魔力の流れを把握し、診察できるわけです。
そして、王宮で、聖魔法の結界魔法を使うと、どんどん魔力が四散
するので、
魔力を空に出来る事が解り、数日に1回魔力を空に出来るので、急
速に総魔力量が増え始める。
280
4.7 お見合い二日目ようやく夕食
そして、夕食。
母と一緒に会場に行くとすでにメルミーナ様がいらっしゃり、王様
とお話をしていました。
私と目が会うと失敗したなお前!
という目線を送ってくる。
朝の金眼事件だろか。ちょっとびびった。
でも、不可抗力です。という真面目な顔で返す。
念話でもないけど、これ、通じてるんだろうか?
とりあえず、案内された席に移動。
左にメルミーナ様、その隣にお母様と並び私の右にマリアが座る。
そして正面に2妃様が来るように配置されてました。
冒頭、王様から挨拶があり、次に2妃様から感謝の言葉を述べられ、
恐縮しつつ朝食がスタート。
国内の伝統的な料理を食べ、全体的に楽しい感じで会食が終了。
終わると、念のためとお母様と一緒に2妃様
の部屋に連れて行ってもらいました。
そして、いろいろと鑑定眼で見回りましたが、特に異常を見つけら
281
れない。
神官様はどうだったか聞いたら、このあたりに物に異常を感じるが、
特に呪としての性質は弱いとおっしゃてたそうです。
その周辺を見回り、鏡台の前で違和感を。
索敵が何か反応している。
しかし、鑑定で見ても何も表示されない。
そこで鏡台の鏡を開けてもらう。
これだ。
妙な違和感を感じる。
鏡台を開け鏡に鑑定眼を使ったところ異常を検知、いきなり割れた。
鏡を使って呪を送り込んだと推察。
鏡が割れたので、相手側が気がついて割ったか、気づかれると自動
的に割れるようにしていたかは不明。
一瞬の繋がりしかなかったので、犯人を特定できなかった。
とりあえず、同じような異物は近くには無い。
鏡台は、外国製で、非常に高価なアンティークな物を再生させた物
らしい。
2妃様の隣国にいるご学友からのプレゼント。
一応、そのご学友に状況を伝えることになりました。
その後、王城中の鏡が集められた。
1妃様の外国製の古い手鏡にも同じ呪の系統の魔法痕跡があった。
王妃宛のプレゼントだったらしいが、侍女に与えていたものだ。
282
その侍女を鑑定で調べたらやはり呪にかかっていた。
幸い、状態はあまり酷くなく、体調面の被害も殆ど無かったようだ。
神格化する必要もなく、解呪1回で呪が消えた。
もちろん、魔法禁止にはならなかった。
フィリップ王子と約束したので、1時間ほど魔力操作を行い、身体
強化の練習をした。
そして、部屋に戻る。
今日の解呪は軽かったので特に負荷も無かったが、別の意味ですっ
きり眠れる感じがなく、侍女に伝えて、気晴らしに庭の散歩に出か
けた。
庭で、第1王女と侍女数名のグループに会った。
すれ違おうと思ったら、第1王女から話しかけて来た。
﹁メルミーナ様はあなたがマリアの婚約者で決まりみたい言ってる
けど、私にも権利があるのよね。
見ていると、あたなが特別マリアを気に入っているとは思えないけ
ど、どうなの?﹂
今回は、第1王女、第2王女のお見合い。
第1王女スザンヌ様も金眼。
お母様は、現ハイルデン公爵の妹。
ハイルデン公爵家のオレリアン様のお父様と、スザンヌ様のお母様
が兄妹なので、血が近すぎる。
ただ過去、金眼同士の兄妹で結婚したこともあるそうなので完全に
0ではない。
だがグレイ様なら血縁関係は少し離れ問題ない。
283
ただし、年下になる。
それは私と同じ年なので問題ないだろうが。
政治的な意図が無く良い年の組み合わせで考えると、私とスザンヌ
様、
マリア様と、グレイ様かアレクサンドロ家のロベール様どちらかが
良いのだろう。
さて、私の気持ちはどうなのだろう?
メルミーナ様に言われるまま従っているが、そもそもマリアは、元
日本人。
もしも、一緒に生活する様になるなら、同郷は楽だ。
そういった観点からも、マリアが一歩リード。
マリアは見ているだけで癒される感じがある。
しかし、スザンヌ様もめちゃくちゃ美少女。
今も、少し見つめられるだけで、ドキドキする。
2妃様、3妃様を見た感じで考えると。
スザンヌ様は美人系で少し長身のすらっとしていながら、スタイル
は抜群になるはず。
そしてマリアは可愛い系で身長は少し低め。もちろんスタイルも良
い。
童顔に反して、バストも大きく母性愛あふれるイメージ。
うーん。解らん。
しかし、これはどちらも外見に関する印象だけ。
284
﹁とても悩む問題ですね。どちらかを選べと言われても、
はっきりと選べるほどお二人を知っている訳ではありません。
その中であえて選べと言われれば、マリア様かな﹂
﹁どうして?。メルミーナ様に言われたからなの?、それとも聖女
が欲しいの?﹂
﹁いえ、メルミーナ様は関係ないし、私は自分で回復魔法も使えま
すから。
しいて言うなら会った順番でしょうか。
実は、私は、マリア様の誕生日に王城に来ていたのです。
会食の準備要員として、我が家の料理長と一緒に来ていました。
その日の朝です。
この庭で猫が木に登って困っているマリア様にお会いしています。
ちょうど、あの木のところですね。
その時に、猫を助けた時に、妖精の様なマリア様に会ったのが印象
的だったと言うのが理由です。
ただ、明確に選べるほどではありません。
そもそも、今回は、私に選ぶ権利はありませんよ。
貴方様方が選ぶのですよね?﹂
﹁選ぶのは私達なのかしら、でも決めるのは私ではないのよ。
でも、私と最初にあっていれば、私を選んだかも知れないと思っ
ても良い?﹂
﹁えっと、おそらく。少なくとも両方ともに嫌いではなく、
どちらかと言うと、好きです。スザンヌ様を前にすると、今もドキ
ドキして緊張しています﹂
285
﹁嫌われているなら、諦めようと思ったけど、そうではないのね。
解ったわ。チャンスはありそうって事ね。
私の希望は貴方が1番でお父様に話すわ。心にとどめておいてね﹂
﹁はい。選んでいただけたことは光栄です。では、おやすみなさい﹂
﹁明日、1日があなたの隣に入れる最後かもしれないから、明日は
遠慮しないわ。
ではまた明日﹂と侍女を連れ部屋に戻って行った。
ちょっと衝撃。
あれで13歳なのか。
すごく強い意志を持っている。
大人と変わらない。
まるで、私たち転生者と同じぐらい低年齢での自我の強さ。
メリーナ様の加護が無いから転生者では無いと思うけど。
しかしこれは個人別で競争してたらマリア不利だな。
まあ本人と大人たちで決めることだし。
なにより選ぶ権利は向こうだし私が悩んでも無駄だな。
考えるのを止めてとりあえず、部屋に戻り眠った。
286
4.8 お見合い三日目
朝、侍女に起こされ起床する。
昨日と一緒で、朝風呂に入れられ侍女に洗われる。
しかも、昨日の侍女ではない。
洗い終わると裸のまま台の上に乗せられて腕や、足を揉まれマッサ
ージを受ける。
おー王様みたいだ。と感動。
侍女から子供とは思えないすごく良い体ですねと言われた。
今日は、昨日よりも更に恥ずかしかった。
今日も朝食後に鍛錬をするか聞かれ、そうすると答えるとそれっぽ
い服を着せてくれた。
そして、リリアーナお母様と一緒に朝ごはんを食べに移動。
王家の方々が揃ってからタイミングを合わせて部屋の中に入り、案
内された椅子に座る。
夕べの予告どおりスザンヌ様の隣でした。
挨拶をすると、スザンヌ様が﹁今日はよろしくね﹂と、ウインクさ
れ照れる。
朝から心臓の鼓動が早い。
287
無事に朝食が終了すると、昨日と同じくフィリップ様に剣の稽古に
庭に誘われる。
当然の様にスザンヌ様は、私の手を握って一緒に付いてくる。
フィリプ王子が、怪訝そうな顔をするも周りの侍女も何も言わない
ので放置するようだ。
庭に出てから、稽古を始める。
最後に撃ち合いをしたいというので、フィリップ王子の剣速より少
し早めで撃ち合いに付き合う。
良い汗をかいたところで終る。
引き上げようとすると昨日と一緒でスザンヌ様がタオルと水を差し
出す。
今日は、フィリップ王子には渡さない。
フィリップ王子には、王子の侍女が持ってきていた。
照れはするものの、スザンヌ様からの好意は受け取り部屋に移動す
る。
フィリップ王子は、姉を応援する事に決めたのか
﹁姉上、頑張ってください。私も応援します。ジルベール、また会
おうな﹂
と声をかけていた。
最後に、見合い用の衣装に着替えてリリアーナおかあさまと昨日の
訓練場に向かう。
288
おかあさまにスザンヌ様のことを伝え、どうすべきか相談すると
﹁困ったわね。メルミーナ様からの情報によると、マリア様とあな
たが婚約で確定しているのに。
他の公爵方がスザンヌ様狙いで合意してたはずだけど。
スザンヌ様は、グレイ様で妥協しなければ、他国の王妃が最有力と
なっているはずよ。
グレイ様は、貴方と同い年ですから、今後、学園でも会うことにな
ります。
今日は、グレイ様に近づき、スザンヌ様が来てもグレイ様と話がで
きるようにしなさい﹂
﹁グレイ様ですね﹂
﹁でも、マリア様と離れても駄目よ。
適度に近づいて。
マリア様は昨日の早い時間に王様に返事をしたと聞いてますから、
今日からはスザンヌ様に絞ったお見合いになるそうよ。
マリア様の相手が決まったので昨日剣を触れなかった子達はもう参
加しないと連絡が出たみたいですし、今日の人数は少し少なくなっ
ているわ。
でも、確定しているからと油断しては駄目よ﹂
と話し合っているうちに集合場所に着いてしまった。
先ほど言われたとおり、今日は候補者は15人になっていました。
つまりマリアの候補として呼ばれていたロベール様を帰したと言う
事は、確かにマリアの候補がほぼ確定したということのようだ。
289
あるいはかなり絞り込んだと誰が見ても解る。
朝の話どおり今日はスザンヌ様の相手探しが中心なのだろう。
ところが中に入ると、スザンヌ様が宣言どおり私の横にぴったりと
くっついてきた。
2妃様が、近すぎますと離すぐらいだった。
周りは少しどよめく。
程なくして登場した王宮魔道士副長ジェローム様が今日は担当して
くれるらしい。
まずは、魔法を見せて欲しいと、土壁を作った。
順番に見せる必要はないから、みんな一斉に魔法を撃ってといわれ
た。
私は火の魔法は危ないので得意技の水龍を撃つ事にした。
無詠唱だと驚かれるかなと、少しだけ詠唱をでも適当。
﹁地に眠る水よ、大気に留まる水たちよ、我が命ず、塊となりて、
障害を消し去れ、出でよ水龍﹂と、嘘っぱちの呪文をつぶやく。
今回は小さ目。
1m前後、直系も10cm程度の小さいミニ水龍を撃ちだした。
かなり自重した。
つもり。
思いっきり小さく絞った。
290
つもり。
それでも、用意された土壁を突き抜け、後ろの壁に張られた魔力障
壁にぶつかり、ようやく水龍が消滅した。
だれも何も言わないまま時間が過ぎる。
・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・・
副長のジェローム様が、魔法について質問してきた。
﹁今のは、水と土魔法の合成ですか?それとも精霊魔法?﹂
﹁土と水を混ぜて外観をつくり、特に頭の部分に氷を土を集中させ
強度を強化しています。
体の部分が水の流体に見えますが、中は泥と硬質の石を混ぜ外側に
電気を纏わせて完成です。
今回は電気は使ってません。
水系も氷の温度は殆ど下げてません。かなり威力を下げたのですが﹂
スザンヌ様が近づいて来て、かなり興奮している。
﹁すっごいです。すごい、ジルベール様かっこいいです。
複合魔法なんですね。他にもできますか?﹂
﹁そうですね。とりあえず、炎、風、土の複合魔法、鳥の形の火魔
法も得意ですよ﹂と説明する。
どうぜ、自重しても無駄だったから自分で土魔法を使って先ほどの
291
数倍の障壁を立てる。
そしてフェニックスを撃ち放つ。
衝撃と共に土壁の障壁が消えうせる。
こちら側に熱風が来るが、風魔法のガードと結界を使って人がいる
ほうを防御する。
ジェローム様が、口をパクパクさせているがまあ良いか。
魔法を見せるのはこんなものかな。
そして、とりあえず微妙にマリア様の方へ近づく。
マリア様も、2妃様︵3妃様じゃない︶から言われ、私に近づいて
きた。
結局、両手に花状態で、他の人たちの魔法の状況を見守る事に。
ひととおりの人の魔法を見た。
気になったところで言うと、グレイ様は、そこそこの火魔法が撃て
たこと。
オレリアン様は、魔法が苦手のようだ。どちらかと言うと身体強化
が得意と言っていた。
ちょろちょろと水がだせただけであるが、戦場では無いよりもまし
だ。
292
だが、私が鑑定で確認したら、オレリアン様は、光魔法と結界魔法
がスキルとして表示されていた。
そこで、光と結界は使わないのか聞くと、光魔法など使い手はあま
りいないので教えてくれる人もいないから使ったことなどもちろん
無いと。
私が、王宮魔道士に光魔法と結界魔法の使い手がいないか質問した
ら、連れてくると言ってくれた。
なぜか連れて来てくれる事になった。
自分でやらなくて良いなら、その方が良いか。
任せよう。
暫くすると、白いローブを来た人が来た。
光と結界魔法が使えるブノワと言う人だ。
子供達が集まっているので、珍しい魔法を見せてくれると光り魔法
を実践してくれた。
そして私は、オレリアン様に少し指導をして欲しいと頼むと、話し
始めたので説明をしてるようだ。
説明を聞いた後にオレリアン様は、光魔法を試した。
光魔法を放つと結構な光量のライティングの魔法が使え、結界もき
ちんと張れる事が分かりました。
今日は、ハイルデン公爵は来ていませんでしたが執事と思われる人
293
が、ブノワさんに交渉しどうやら家庭教師として来てくれる事にな
ったようだ。
後で、執事の人から私へものすごく感謝を述べられた。
294
4.9 お見合い三日目終了です︵前書き︶
ブックマーク100です。
さて、ようやくお見合い終了。
さて、結果はどうなるのでしょうか。
295
4.9 お見合い三日目終了です
そんなこんなで、3人一緒で候補者達の勇士を見ていた。
マリア様は、まじめにみんなの様子を見ている。
しかし、第1王女のスザンヌ様は、もうそちらの方は見てない。
ずっと、私を見つめている と思う。
スザンヌ様の方を見ると、必ず目が合う。
もう、絶対に目が合う。
向いている間中目が合っている。
他所は見てない。
間違いない。
ちょっと怖い。
そして昨日剣が強かったミシュル様は魔法もそこそこ強かった。
気になって鑑定で見て見ると転生者。
なぜ解るかって?
状態のところに、メリーナの加護中とあったからだ。
296
現在までに出会った人で、メリーナ様の加護を得ている人で加護小
までしか見たことが無く、加護小の人は、転生者ではなかった。
加護中や大は、転生者だと思う。
ミシュル様が、スザンヌ様目当てに近づいてきた。
席を譲って欲しいと言ってきたので、どうぞと席を譲り移動する。
先ほどとは逆側に移動し、マリア様の横へ。
そして小声で、ミシュル様が転生者かも知れないと話す。
すると手でOKのマーク。
ミシュル様とスザンヌ様は少し話をした後、また私の隣に移動して
きた。
これはやばい。
せめてグレイ様も混ぜないとやばいでしょ。
話題を振るも
﹁グレイは、幼馴染でいつも会っているからいまさらよ。
それよりも、貴方と堂々とお話を出来るのが今日が最後かも知れな
いのよ。
私は貴方に一目ぼれしたの。もう他の人は無理よ﹂
マリアは、それを聞いて﹁お姉さま﹂とつぶやく。
297
﹁あ、ごめんねマリア。
あなたが気にする必要はないのよ。あなたもジルベールが好きなん
でしょ。
もう解っているの、あなたとジルベールが婚約するのは。
だから私がジルベール様の近くにいれるのは今日だけなのよ。
今日だけだから、今日は譲って。お願い。
あなたから奪おうとは思っていないわ。
姉妹ですもの。これが終わっても、仲良くしましょうね﹂
﹁お姉さま﹂と繰り返すだけのマリア。
﹁あなたは、私以外の誰かを選ばなければ、他国に嫁ぐことも知っ
ているのでしょう。
私ばかりに構うのは得策ではありませんよ﹂
﹁ありがとう、良いの。覚悟を決めてるから。
あなたを選べないから、逆にこの国にいるとつらいのよ。
外に嫁ぐならそれで良いの﹂
﹁そんな、お姉さまが他国なんて、さびしいですわ﹂
﹁マリアが気にする事ではないわ。
もともと王家に生まれた女の大半は他国に行くのよ。
他国と言っても、隣国アルフォンスの王子と昔から交流があるから、
たぶんそこよ。
まあ、大丈夫よ。
まだ、グレイ様との婚約もありえるのだし。
どうせ、私たちの意見など、あまり関係ないわ。大人が勝手に決め
るのよ﹂
298
﹁解りました。とりあえず今日はスザンヌ様となるべく一緒に行動
します。
でも、その場にはなるべくグレイ様も入れてください。
グレイ様は私と同い年、今後も仲良くしたいと思っていますから、
私としても一緒にいることにメリットがあります。
ですので、4人で行動しましょう﹂
スザンヌ様は今の話を1妃様にしに行った。
なぜ、2妃様じゃないのと聞くと、お母様は兄のハイルデン公爵達
の意見を重視するのよ。
この中で私の味方は、1妃様なのよ。
どんな時も、わがままでも話を聞いてくださるのは1妃様だわ。私
の理想の母親像よ﹂
と言うことでした。
で、結局、他の候補の方も午後には帰ってもらう事になりました。
お昼の昼食会後、計画通り4人だけになった。
午後からは4人でいろいろな話をしました。
王妃様方は心配で後ろで待機していましたが、その後スザンヌ様も
朝のような暴走はなく4人で仲良くすごく事ができました。
そして、夕方になり解散となりました。
299
私と母は馬車でメルミーナ様の家に向かいます。
馬車に乗り込む時に、少し油断していました。
スザンヌ様に不意にキスをされ、さようならと言われました。
母以外は見ていなかったと思いますが、私は驚きで声も出せず、ボ
ーゼンとしたまま馬車が出発しました。
母から﹁あなたでも驚くことがあるのね﹂と言われ
﹁魔物退治なら大丈夫ですが、それ以外では人並みに驚きますよ﹂
と
ごまかすも、心臓がどきどきして、尋常じゃない心理状況に我なが
ら驚いています。
メルミーナ様の家の着いた後、メルミーナ様に状況を伝える。
そして、帰る旨を伝える。
﹁もう遅い、転移門の使用は終わっておる、明日の移動を申請する
か?﹂
と聞かれた。
﹁いえ、今から自分で帰れます。﹂と答えた。
﹁ああ、そうだったな。忘れていた。そんなやついないからな。癖
だ。 しかし便利だな。﹂と
そしてそのままお別れの挨拶をし、久しぶりの我が家へ到着。
300
我が家に戻ると皆が歓迎してくれ、お姫様を迎えるのか、すごいな
ー。
家を綺麗にしないといけないかななど、お祝いムードだった。
まだ決まってないからと厳重に他言無用で注意をして、途中となっ
ていた数々の作業状況、進捗の報告を聞いた。
我が家の領地経営そのものは、代理でアメリが大半を片付けていた。
リリアーナお母様は、大変喜んでいました。
﹁できる子ね。母は嬉しいわ。あとはあなたの結婚ね﹂と不穏な言
葉を発し、執事のトシアキが過剰に反応したのが面白かった。
やっぱりこの2人できてるのかな?
アメリの、男性恐怖症はかなり抑えられてきて、トシアキと良く話
をしている。
きっと、もうすぐ良い関係になりそうだ。
−−−−−−−その日の夜 王城で−−−−−−
スザンヌは、部屋に戻ると泣いていた。
2妃様と、1妃様が2人で慰めていた。
1妃様が、王様を呼び、2人で話した。
お父様を呼んでくれ、私の心をきいてくれた。
301
﹁スザンヌは、ジルベールを好きになったのかい?﹂
﹁はい、お父様、初めて好きな人ができたのに。
私たちは、結ばれないのですよね。
それに、結ばれたとしても、妹のマリアを悲しませるなんてもっと
いや﹂
﹁うむ。スザンヌはやさしいな。ジルベール以外で良い人は居ない
のかい?﹂
﹁他など、考えられません。彼が好きなの﹂
﹁そうか、解った。娘を泣かせるわけにはいかない。任せなさい﹂
とおおみえ切って自分の部屋に戻られた。
1妃様と2妃様はまた安請け合いして、娘の事となると王様は、私
情が強くなり親ばかになり過ぎる。
特に王は長女のスザンヌを目に入れても痛くないほどに愛している。
そもそも、スザンヌがこれまで婚約を結ばなかった理由が、これま
で王が甘やかし他国に出すなど絶対に嫌だと、
王が我がままを通したからだ。
事実、スザンヌにも、マリアにも、5歳の頃から婚約を結ぶ打診は
来ている。
フィリップ王子にいたっては、他国の王女に婚約の打診をしている。
まあ、その愛情ゆえに、この王家の皆が仲が良いのだが。
302
だが、今回の婚約は、3公爵の意図が大きく関わっている。
王1人のわがままが通ると思えないが、王妃として暖かく見守ろう。
そして、2人の王妃は、まだ泣くスザンヌに、
﹁王が、任せなさいと言った以上、なんとかするでしょう。
スザンヌも、泣いてばかりいてはダメよ。元気を出して﹂
そして、泣きつかれたスザンヌはそのまま眠った。
303
4.10 お見合いの結果
あれから、1週間後。
明日、婚約の発表をするから、王都に来るよう
った手紙が来た。
と、転移箱を使
私は、手紙の到着と共に、王都に転移し、メルミーナ様の家に向か
った。
夜に戻ってきたメルミーナ様は、特に話も無く、明日の予定だけを
教えてくれた。
あと、王様の前で、こうしろ、こう答えろと。
そして、朝、メルミーナ様の家で用意されたとても高そうな服を着
て、王城へ向かった。
今回は、謁見の間に通された。
謁見の間では、王、3王妃、3公爵、大司教、
聖騎士団団長、王宮魔道士長、それに文官が数名。
王家の回りにずらりと並び、
さらに、護衛の騎士が20名ほどという、かなり本格的な態勢だっ
た。
王から、イヤリングをはずすように言われ、
メルミーナ様を確認すると、うんとうなずいていたので、イヤリン
グをはずす。
ハイルデン公爵とアレクサンドロ公爵は、事前に聞いてはいたらし
いが、実際に見るのは初めてです。
そして、他にも多数、初めて両金眼を見る人が多く、一瞬ざわざわ
304
としたが、
王様の一声で、静まった。
﹁では、はじめるぞ﹂
そして、第1王女と第2王女も登場。
3人で王の前に並んだ。
そしてここで違和感。
あれ、男1人だよ?
結局、スザンヌ様は他国を選択されたのかと、思いながら王の話に
集中した。
王から言われた婚約について
﹁ジルベール・クランスロードは、
16歳の成人にてファール・メルミーナの養子となり公爵の身分を
継承する。
レオンの名において、これを承認する﹂
あれ、婚約の話無かったぞと思いつつも、話が続くようなので、聴
きましょう。
﹁そして、ジルベール・クロスロードと、第1王女スザンヌとの婚
約を認める﹂
え。
マリアじゃなくてと、王の顔を見る。
うんうんと。
スザンヌの顔見ると、嬉しそうにこちらを見る。
マリアを見ると、マリアも嬉しそうにこっちを見ている。
あれ?
と、王が、まだ言葉を発し続ける。
305
﹁ジルベール・クロスロードと、第2王女マリアとの婚約も認める﹂
はー。なんじゃそりゃ。
王を真顔で見つめる。
なんで2人?
﹁不思議かジルベール?﹂
﹁もちろん﹂
﹁ふふぁふぁふぁ。おそらくジルベールを驚かすことが出来るのは、
これが最後かも知れん。
驚いたか? どうじゃ?﹂
﹁驚いてますよ。どういうことですか?﹂
﹁説明しよう、王は、3人の妻を認められておる。知っておるな?﹂
得意げに語る王様。
﹁はい。王には、3人の妻がいます﹂
﹁うむ、それは国によって違うのだが、この国では、他に公爵は、
2人の妻を取ることを認めている﹂
﹁そうなんですか﹂
﹁うむ、実際に2人娶っているのは、ハイルデンと、アレクサンド
ロじゃ。
メルミーナは、1人しか娶らなかった。
それゆえに、男子が生まれておらんとも言える。
まあ、それは良い。
つまり、ジルベールは公爵の爵位を前提として、スザンヌとマリア
両方との婚姻が可能だ。
スザンヌが金眼。
306
マリアが聖女。
そしてジルベールは王国発足以来の両金眼。
国に将来を考えると、これがベストだと判断した。
両姫共にジルベールの事を好いているようだし、色々と考えた落と
しどころかここであった。
うん、我ながら良き采配だろう﹂
﹁そうですね。王、お見事です﹂ と1妃様が嬉しそうに答える。
周りがいっせいに拍手。
﹁ありがとうございます。お父様。大好き﹂とスザンヌが王様に抱
きつく。
﹁スザンヌ、ここは謁見の間。家族としてでは無く、王族として振
舞いなさい﹂
と2妃様から注意され、スザンヌが後ろに下がり、
﹁王の御心のままに、婚約を受け入れます﹂と返事を。
続いて、マリアも同じく返事をした。
私の返事待ち?
﹁あの、まだ状況が理解できていないのですけど﹂
メルミーナ様から﹁喜んでお受けしますと言えば良い﹂と、
状況が理解できているが、納得はできていない。
がしかし言うしかない。
﹁喜んでお受けします﹂
と言い、深くお礼をする。
王から、
﹁ジルベールの成人後の名についてだが、メルミーナの名を残すか、
クロスロードの名を取るかは、
307
公爵位の継承時点で再考する。
過去の判例に従えば、成人と共に爵位を得る場合は、元の公爵家を
継ぐが、名が広まった後に継承する場合は、名を変えない場合があ
る。
おぬしが16歳になるまでに名が広がっておれば名を変えぬ。良い
か?﹂
﹁はい、解りました﹂
王から﹁ではこれにて、儀礼を終了する﹂
周りから、レオン王万歳。
スザンヌ様、マリア様、おめでとうございます。
と、周りから声があがり、他の人達が退席していった。
その後、王はにっこりと笑い、
﹁はー 疲れた。ではこれ以降は普段どおりで行くぞ。
でジルベールよ、これからの事だが、
本来は、王女の婚約者は王都に住まねばならんが、お主は転移魔法
が使えるのであろう。
メルミーナよりそう聞いておる。
王都に住む必要はないが、毎月1回は、王女に会いに来るように。
できる限り週1で来なさい。
領主館より通うのであろうから、王城に泊まることも許可しよう。
それと、結婚は、まずはおぬしが16になったら、スザンヌと、
その後に、マリアが16歳になったら、マリアとも結婚式をする。
スザンヌと結婚しても、マリアに、会いに来るようにな﹂
そして、スザンヌとマリアの方を向いて
﹁どうじゃ、パパの采配、良かったじゃろ﹂
308
とスザンヌとマリアに声をかける。
﹁はい、お父様﹂とスザンヌはかなり喜んでいる。
1妃様から
﹁メルミーナ様がアイデアを出してくれたのですが、
これも、王がずっとこだわってくれたからですよ。
王の頑張りに感謝する様にね﹂
と、スザンヌの頭をなでなでしていた。
マリアが﹁ジルベール様、ふつつかものですがよろしくお願いしま
す﹂と言ってきた。
そして﹁こちらに来る時は、日本食を持ってきてくださいね﹂と、
ついでのお願いもあった。
﹁はは﹂と答えるしかない。
10歳にして両手に花を強制された。
どうしたらよいのだろう。
すると、それを察したのか、王様から
﹁2人ぐらい楽勝じゃよ。ワシは3人だからな。
大きくなったらアドバイスしてやるから、不安になる必要はないぞ。
ワシが唯一教えられそうなところじゃからな。 がははは!!﹂
と嬉しそうに笑ってる。
﹁お父様、かっこいいです﹂とスザンヌに抱きつかれたのが嬉しそ
うだ。
それから、2王女と、母親を含め少し話をして、王家皆で夕食を食
べてから、別れることになりました。
309
帰り際に、メルミーナ様から今回の婚約発表に際して、一連の発表
内容を教えてもらった。
・2妃の病気全快
・第2王女の聖女認定
・第1王女の婚約決定
・第2王女の婚約決定
それとは別に、私の今の領地が広がるらしい。
両隣の領地を統合する事になったそうです。
近隣の住民移動が止まらず、隣の領地管理者が悲鳴を上げているそ
うで、
もっと条件の良いところに移動させて、変わりに、今の領地を広げ
ることになりました。
領地の面積、住民共に一気に2倍です。
学院に入る13歳までに、基盤を作り上げろ。国作りの練習だと言
われました。
そうか、学校での勉強の必要性は全く感じないが、
高校に行くのは、貴族として必須らしく、
その時は王都に住むしかないそうで、領地にいるのはあと少し。
今日は、いろいろ衝撃だった。
家に戻って、結果を伝えると、賛否両論。
いろいろ。
レイブンリグさんは、公爵になる話に大喜び。
そして、領地が広がるので、警備体制を考え直さなければと。
310
そして、エイミーは、
﹁2人もなんて、ジルちゃん不潔よー﹂
いや、だから私が決めたんじゃないって。
他の男性陣は、王女2人、すごい。
男のロマンだーと、阿鼻叫喚。
なんで叫ぶ。
お母様は、領地が広がるので、領主館の人も増やさないといけない
し、
いろいろと建物の拡張が必要だと、手配をどうしましょう。
と悩み始めた。
まあ、これから、いろいろと大変だ。
311
4.10 お見合いの結果︵後書き︶
念のために説明すると、
6歳で入学、10歳で小学校終り。
10歳から中学。13歳で卒業。
13歳で、高校に入学。
16歳で卒業し、
男性は、その後、騎士大学か、魔法大学へ進むのが貴族の一般コー
ス。
女性も、稀に魔法大学へ行く。
大学は、2年間︵コースによって3年行く人もいる︶です。
312
4.11 閑話 王都出店
王都に、店を出す準備をしている。
2系統の店を出す予定です。
一つは雑貨。
食器、ガラス工芸、ぬいぐるみやスリッパなどの雑貨。
もう一つは料理屋。
最初は、食料品としてジャガイモなどの食材を売る事も考えたが、
なるべく種を出したくなかった。
なので、ハンバーガー、焼きトウモロコシを中心としたファースト
フードにしました。
それに、そもそも料理法が広まっていないので、加工食品が良いと
いうことになった。
日本食を出す高級店を計画していましたが、貴族は外に食べに行く
風習が無い。
なので、そちらはとりあえずアイデアだけ、パーティなどに呼ばれて
現地で料理を作るという、材料と料理人を合わせて派遣するほうを
考えています。
現在、王都でお店にできる建物を確保し、人を沢山雇った。
もちろん、領内の人も王都で働いてもらう。
人員の割合は、半々を目指しています。
領地の人を馬車で移動させると1ヶ月近くかかる上に、旅費も馬鹿
にならない。
それでも転移装置を使うよりははるかに安い。
313
結局、スタート組みは、それっぽい装置に見える扉を作り、
目を閉じている間に私が転移魔法で送り届けるのが一番となり、
現在領地内で人を教育中である。
100人ほどの人員を育成し、教育が終わった人から順に送り届け
ている。
なので、2日に1回は王都に移動してます。
タクシーです。
王女達からはよく手紙が届くので、返事も大変。
アメリが手紙の指導をしてくれるので助かっている。
こういうことに対して、エイミーは全く役に立たない。
貴族令嬢のはずなんだけどな。
完全に脳筋人間でした。
そのエイミーは、最近太郎に乗って領内を駆け回っている。
太郎は体高2m、体長4∼5m近い大型獣になった。
エイミー1人を乗せるなどお手のもの。
先日、広がった領地を太郎にエイミーと二人乗りで回ってきた。
旧領地は、この数年で食糧事情が改善し、だいぶ豊かになってきた
が、
新領地は畑はあるが、植物の実りがあまり良くない。
領内から種芋を配布し、改善を図るが、2年でどこまで伸ばせるか。
とりあえず、温泉や井戸が出そうな場所を探す。
残念ながら、温泉は、そうそう出ない。
1箇所は見つけたが、残念ながら温度が低かった。
井戸は、割と簡単に見つけられ、集落に設置して回った。
井戸を中心に都市計画を立てる。
314
この世界には、転生者が沢山居たせいか、下水の技術がきちんと伝
承されている。
下水処理も、この世界特有の技術も加わっている。
何かと言うと、スライムと使った、下水処理システムだ。
集めた下水を綺麗にする前に、スライムの沼を作ると、ここでかな
り綺麗になる。
その後で、更にゴミをよけて、ろ過して川に戻す。
スライムは、何種類か混ぜて、定期的にスライムの量を間引く。
これで十分。
すごい技術だ。
間引いたスライムも色々な材料に使えるので便利です。
しかし、とにかく人材が足りない。
お店で働く人の募集とは別に、
王都から植物の育成を指導できる指導者、魔法使い、教師など、1
00人を超す人の募集をする。
しかし、田舎への移動は、お給料の割りに人が集まらない。
なかなか難しい問題だ。
働き手はそこそこいるのだが、指導者をもっと増やす算段を考えな
ければ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
まずは、雑貨店のオープン。
これは、成功でした。
お店があっても、貴族たちは、わざわざ買いに来ません。
王都の店は、庶民が買いに来るだけなので、それほど大きな店にす
る必要がありません。
貴族の家は、馬車で売りに行ってます。
315
なので、店よりも大きな倉庫が必要です。
我々には、転移箱とアイテムボックスがある訳で、
貴族の家には、アイテムボックス持って、馬で回ります。
ぐるぐると回り、御用聞きをして、必要なものを売って回ってます。
そして、料理店は、まずはハンバーガーと、フライドポテト。
焼きトウモロコシ。
それに、お茶をセットで。
ジュースを造ろうと思いましたが、砂糖が不足しています。
領地で砂糖が生成出来るようになりましたが、まだまだ生産量が少
なく、砂糖は高価です。
コーヒーや、お茶に入れてもらってます。
最近、生姜を入れたジンジャーティーが好きです。
ハチミツが欲しかったところですが、ハチミツは砂糖よりも更に高
級です。
領地でも作り始めましたが、夏しか取れず、結局高く買ってくれる
ところに出して、
家で飲むほどの量はありません。
さて、ハンバーガーショップはまずは庶民向けに1店舗だけオープ
ン。
しかし、結構ちゃんと売れ始めました。
フライドポテトは、どうなるかと思ってましたが、大丈夫でした。
今後、ジャガイモを薄くスライスしたチップスなど、商品を拡充す
るつもりです。
やはり、見目の良い子のスマイル0円が効いているようです。
316
売り手は、男女両方いますよ。
街中は、割と女性も多く、平民の店は女性店員も多く、働く女性は
沢山います。
フライドポテトなどは、領地で加工し、王都の店で揚げています。
種芋を、出さないようにするためにやってましたが、領地の職を増
やすにも、
このスタイルは結構良いです。
転移箱、大活躍です。
ジャガイモを王都まで運ぶと、コストがかかります。
転移箱で移動させても魔石が消費しますが、現状、どう考えても魔
石の消費の方が得です。
フライドポテトの料金は、通常移動でコスト計算し、料金を決めて
いるので、
現状は、儲ける一方。
そのお金で、領地の整備、人の教育と、次の投資にどんどんまわす。
人の教育が終わると、ハンバーガーショップの2軒目とオープンす
る予定です。
日本料理の材料と料理人セットの派遣については、
それほど大規模にやっている訳ではありません。
なので、普段は暇。
と言うことで、日中は、料理教室を開き、その教室代の方が儲けて
います。
当初の予定とは異なる形で、ひそかに進行していってます。
まあ、現地現物。
317
状況に合わせて柔軟に対応ですね。
いろいろと、やってますよ。
318
4.12 閑話 劇鑑賞
お約束の第2妃様から劇の観賞のお誘いがあった。
もちろん王女2人と第1王妃がこられる。
マリアの母は小さい子の面倒を見ているので来ない。
王家は、子供の育児をちゃんと王妃が見ている。
侍女任せではない。
3人いるから誰かがちゃんと見れると、王妃方で育児をしているそ
うだ。
私ともう1人のお誘いだったので、おかあさまに相談したら、
アメリが劇を見に行ったことが無いどころか、王都に連れていた事
がないので、
連れて行って欲しいと言われた。
ちょうど参加者が王妃様なら、お付の騎士も女性だから、アメリも
大丈夫だろう。
アメリが喜んでいたので、返事を出すついでにアメリも一緒に王都
へ移動し、
着ていくドレスを作った。
劇は、一週間後だったので、既製品を加工してサイズを整えてもら
った。
夜会に行くわけではないので、そこまで凝ったドレスにする必要も
ないので、
ちょうど良かった。
ついでにお茶会や、夜会に着れる良いドレスも買った。
319
本人は夜会は、男性が参加するから行かないと言っていたが、お茶
会なら女性限定もあるそうなので、
今後のためには持っていたほうが良いだろう。
劇の当日、指定された時間にアメリと王城に到着。
王妃様に挨拶し、アメリを姉と紹介した。
アメリが独身と知って、良い男性を紹介しようかと言ってくれたが、
アメリが、男性恐怖症なのだと説明し、
今日は参加者が全て女性だから連れてきたと説明した。
納得してくれた後、お茶を飲んでから、馬車で劇場へ移動。
王様もいないし、お忍びでの鑑賞だから、
わりと普通の貴族が乗る馬車が用意されていた。
しかし、もちろん、中は違う。とても豪華だ。
偉い人専用の入り口を使って、高貴族専用の部屋へ。
途中で、王妃を見かけた高貴族が近づいて来て挨拶をしてきた。
もちろん若い男性だ。
連れはきれいな女性なので、デートだと思われる。
そのデートだと思う相手がいるにも関わらず、アメリに無造作に近
づき、
お綺麗な女性ですね、ぜひ紹介をとアメリの手をとってしまった。
一連の流れがとてもスムーズで、さすがの私も対応できなかった。
そもそも、私は両手で2王女をエスコートしていたので、
320
アメリの手を引いていなかった。
一瞬の油断が失敗だった。
当然の様に、アメリが硬直し、一気に青ざめる。
相手の男性もアメリの顔色が急に悪くなったのに気がついて、すぐ
さま下がった。
私が、2王女に失礼とことわり、アメリの手を取って、安心させる。
1妃様が連れが男性恐怖症で今日は駄目だから、
また後日と説明してくれ、男性を急いで放してくれた。
なんとか、元に戻ったので、専用の部屋に移動した。
1妃様が、大人は大人で集まってみましょうねと、1妃様、アメリ、
2妃様で座り、
その前の3席に、マリア様、私、スザンヌ様の並びで座った。
劇の演目は、メリーナ様を含む3人の女神が主人公側で、
邪神から人間を守る話だ。
小さい頃にアメリから何度も読んでもらった皆が知る神話。
劇の注目ポイントをスザンヌ様から解説してもらうと、ちょうど劇
が始った。
正直、すごかった。
生前の劇を超える演出効果。
魔法とはすばらしい。
321
あらためて感動です。
途中の休憩で、食事タイムがあり、我々子供は、
マイボックスから用意していたハンバーガとフライドポテトを取り
出し食べました。
大人の3人には日本食の会席弁当をだしました。
本来は、毒見が必要なのですが、女性騎士の方が来て、
少しづつつまんで、毒見をします。
お弁当は、後ろの3人の騎士にも渡してあります。
交代で休憩しながら食べるそうです。
﹁おいしいし、それに、面白い料理を考えますね﹂と王妃様から
お褒めの言葉を頂きました。
マリア様はこっそり﹁異世界文化の自重しないねー﹂と呆れ顔。
それでもハンバーガーが久しぶりと、ナイフとフォークを使って上
手にハンバーガーを食べてました。
スザンヌ様は、初めの食べ物にびっくりしながらも、おいしいと喜
んでくれました。
劇が終わると、主役の3神役全員が挨拶に来てくれました。
アメリが喜んで、アメリの為にサインをしてくれてました。
私は、この人、近くで見るとメリーナ様には似てないなーと。
残念ながら本物はもっと綺麗なので、比較にはならないですね。
322
頭の中に、﹃当たり前でしょ!﹄と声が響いた気がしましたが気の
せいでしょ。
私は、劇の途中で飛んでいた仕掛けが気になって質問したら、丁寧
に教えてくれました。
前世のようなワイヤーでは無い。
閉鎖された空間で大きな風魔法を使うと危ないので、浮遊魔法を使
うそうです。
演技をする人が浮遊魔法が使えるわけではないので、
浮遊魔法をかけた板状の魔道具作り、使っているそうです。
それらは、滞空時間が短く、1分程度なので、
場面によっては、数枚の板を駆使して切り替えながら飛んでいたと
の事。
訓練を続けることで違和感無く乗り継げるそうです。
とてもすばらしい。
いろいろと感動はしました。
王妃、王女と共にお城に送り、帰ろうとしたら、
3妃アナ様が、第3王女マイアー様、第4王女のシュミット様を連
れて待っていました。
王女が私と少し遊びたいと、待っていたらしいです。
何をして遊びたいのですかと質問をすると、
シュミット様は、マイアー様の後ろに隠れてちょっと泣きそうな顔
をしていました。
323
どうかしたのですか?と訊ねても、シュミット様は黙って泣きそう
なままです。
マリアが、話をすると、その後にシュミット様が話を始めました。
どうやら、ウサギのスリッパが壊れたそうです。
壊れたスリッパ、踏み潰されて、耳が落ちて、汚れてました。
どうされたのですか?訊ねると、
走ったわけじゃないけど、転んだ時にスリッパが脱げて、
たまたま通りかかった騎士様が踏んで靴で踏んでしまったのだと。
踏んだ騎士は謝ったそうです。
王女は怒らずに我慢したから良い子だったのですと、マイアー様が
伝えてくれた。
私は、
﹁シュミット様は、とてもお優しいですね。
大丈夫。これはきちんと直してお返しします。
それと、とても良い子でしたから、新作のプレゼントです﹂
と狐のスリッパに、猫パジャマをプレゼントした。
もちろん第3王女にも。
今日は、これを着て寝るーと言って2人とも喜んでいました。
マリア様がちょっと欲しいそうな顔をしていましたが、残念。
マリア様のサイズの服がありません。
そんなやり取りの後、スザンヌ様とマリア様にお別れを言い、
アメリと2人で帰宅しました。
324
帰宅後、アメリはサインを自慢して、部屋に飾るからとトシアキに
頼んでました。
ほんと、彼は大丈夫になったんだなーと。
あらためて劇場での対応の違いにびっくり。
アメリも、問題を克服しつつある。
みんな成長してるな。
325
4.13 夏の避暑休み?
婚約が決まってから後。
私は、できる限り毎週日曜日の午後に王城を訪れています。
用事がなければ、土曜日の夜から。
転移があって良かった。
実際、王城内の教会に直接飛べますが、
普段は、王都に作った拠点へ移動後、そこから馬車で王城に行って
ます。
なるべく普通にしてます。
私が到着した後の馬車は、必要ないので速攻で戻ってもらいますけ
ど。
こちらの世界も1週は7日。
スザンヌ様が通う王立高校を含め、学校や役所は週休1日です。
さて、今日は、前から計画していた避暑地のホテルが完成しました。
周りの施設ができあがっていないので、今年は、自分達で使って、
お試しの予定でした。
念のために、施設は足りないけど、部屋があるので、夏の避暑とし
て遊びに来ますかと
スザンヌ、マリアに聞いたら、8月の夏休みに、遊びに来ることに
なりました。
ホテルは、全部で50部屋ある。
自分達で10部屋、兵士が30部屋の予定で、高級な方の10部屋
が空きです。
326
一部屋2名なので、侍女なども含めて人選して欲しいと伝えました。
王様も、それだけの兵士が守るならと、許可を出してくれました。
スザンヌ様と一緒に夏の課題があるので、双子のマクシミリアン王
子、
そして私と同い年のフィリップ王子も絶対に行きたいと。
さらに、マクシミリアン王子には、すでに婚約者がいて、
アナスタシア侯爵家令嬢も行くだろうと。
どんどん行く人数が増えますが、10部屋ですよ?
王家側で人選をお任せ、王女2人と、アナスタシア令嬢。
それぞれ侍女兼家庭教師で6名に抑えてくれた。
ロイヤルスイート3部屋に、侍女がノーマルルーム3部屋。
男性陣は、5名で4部屋を使ってもらう。
参加男子の情報
ルカ王子 14歳 青髪右目緑左目金
マクシミリアン王子 13歳 銀髪 右目金 左目青
フィリップ王子 10歳 青髪、右目青左目金
グレイ様 10歳 赤髪右目金左目茶
ミシュル様 12歳 転生者 黒髪、両目黒
フィリップ王子とグレイ様は仲が良いので、一部屋で良いとの事。
ルカ王子は、最初の1週間だけ。
残りの方々は3週間います。
327
そして、王家からの希望で、
男性陣は、レイブリング元将軍や剣王エイミーから指導をして欲し
いと。
女性含め全員に、私が魔法を教えるようにとの事でした。
それとは別に、女性方3名は、日課となっているピアノの練習が必
要との事。
もちろん今回もピアノの用意が必要です。
子供だからと、遊びが中心ではなく、お勉強と修行です。
そして指定のピアノですが、家に無いので、王都の有名店に注文し
ました。
ちゃんと、最高級のピアノを頼みましたよ。
近隣都市含め探してくれ、1週間で集めてくれるそうです。
せっかくなので、家のエレノア、ニーナに習わせようと、
住み込みのピアノの先生を探して貰った。
紹介されたのは、ナンシー。
男爵家の長女で緑髪、両目茶。
ピアノの専門家を目指して修行中。
住み込み、3食付、安いながらも給料も出て、
空いた時間でピアノが弾けると破格の条件とのことで、すぐに見つ
かった。
お店から連絡があり、面談をしたが、いたってまともな綺麗な令嬢。
︵この時はそう見えた。あとで違うことが解るが。︶
328
ピアノも届いていてたので、マイボックスに3台を収納し、王都の
家に移動。
その後、ナンシーと一緒に転送魔法で一気に領地に飛んだ。
ピアノは領主館と避暑地のホテル、そして役場に設置。
ナンシーにはとりあえず、役場の寮に入ってもらった。
エレノア、ニーナは、領主館か、役場で習う。
しかし、夏の間は避暑地に移動となります。
クインさんがエレノア、ニーナのレッスン代を払うと言っていたが、
同じように、役場で働く人達の希望者、女子10名にも週2回習わ
せる事にしたので、
料金は必要ないと伝えた。
これは、働いてくれている人たちの福利厚生の一環です。
準備期間が少なかったが、何とか受け入れ態勢が整いました。
ちなみに、マリアの誕生日が6月初め。
この話は、6月末に誘って
7月が準備期間。
8月に避暑地移動です。
329
遊んでる人がいない。
4.14 夏は避暑地でバカンスだ。あれ全然遊んで無いぞ
︵前書き︶
結局、夏休み
ブートキャンプになったよ。
330
4.14 夏は避暑地でバカンスだ。あれ全然遊んで無いぞ
8月。
今日から、我が家の領地の新しいホテルで夏休みを過ごします。
移動者は全部で、12名。
と、その両親が王城の教会に集まっていた。
王家以外は、アナスタシア様、グレイ様、ミシュル様の3名の親で
す。
領地まで直線なら200km。
普通に進めば、片道およそ300km、馬車での移動なら2週間は
かかる。
この国の馬車は、およそ時速10kmで走ります。
300kmなら、30時間、二日で着くじゃないか。とは言わない
ように。
当然ですが、馬も休憩が必要です。
24時間走れるわけが無い。
普通の旅では、馬車は、1日におよそ4時間から8時間移動します。
道として順調なのは、王都近くだけ。
そして旅慣れない者は、毎日移動し続けられない。
そして領地までの道は、領地に近づくほどひどくなる。
までは、だいたい2週間が妥当な時間です。
最後は、1日20kmぐらいしか進まない。
結果、領地
馬車の移動では、夏休みが終わってしまう。
そこで、転移装置を使う移動となるが、転移装置は、1日に最大6
331
名∼8名が限界。
と、言うのがこの世界での常識的な考えでの移動となる。
当然であるが、親からは、このような質問が来る。
﹁10名以上もどうやって移動するか﹂と質問された。
﹁移動には、転送魔法を使います﹂と言ってある。
転移移動の前提で荷物を準備をしてもらっていた。
当然、全員にアイテムボックスを貸し出し、荷物を詰めてもらって
いる。
まずは、全員のアイテムボックスをマイボックスに収納する。
挨拶をしてもらっている間に、侍女6名に私に直接触れてもらう。
﹁30分後に迎えに来ます﹂と言って、転送魔法でホテルに移動。
あっという間に着いてしまったので、驚く侍女達。
到着後アイテムボックスを取り出し、領地で待機していた自警団の
人に、荷物を部屋に運んでもらう。
侍女にも、先に荷物整理を頼む。
彼女達は我に返り、部屋へと移動し始めた。
ほんとは、連続で転移してもどうも無いが、
あちらの方々にそこまで便利に使える事を見せないよう、念のため、
30分休憩後に、王城の教会に飛ぶ。
移動直前に、みんな手を振って挨拶。
王女や王子達全員から直接触れてもらい、再び転移魔法で飛ぶ。
まずは、王子達にも部屋の整理に移動して貰い、後で集まってもら
った。
332
その後、王子達には、レイブリングさんから3週間の予定を発表し
てもらう。
基本は、午前中が基礎トレーニング、午後が実践練習を中心。
後半は実際に魔物退治に行く予定。
ルカ王子が1週間で帰るので、最終日に1回魔物退治に行く。
女子3名は、魔法中心の訓練を予定。
私とクインさんが面倒を見る。
そして、我が家の料理長ゴルゴから、夕飯作り、お菓子作りを教え
る事になっている。
のが得意程度では、レイブリ
すると、スザンヌが、魔法はあまり得意ではないから、王子達と一
緒の訓練に参加すると言い出した。
ちょっと体を動かす
体を動かすほうが好きらしい。
可憐な王女の
ングさんの作ったメニューはこなせないだろう。
エイミーが女性用のコースを作ると言う事で納得して貰った。
そして夕食後の、私が指導する魔法の基礎訓練は全員参加だ。
アナスタシア様と、マリア様はクインが魔法の実力把握に連れて行
き、
スザンヌ様は、私とエイミーが、
他はレイブリングさんが連れて行った。
スザンヌ様と、エイミーで軽く打ち合ってもらったが、
13歳の平均よりは遥かに動きが良かった。
しかし、身体強化の魔法が使えず、
右目の金眼の能力も全く使っていないようだった。
333
鑑定で、ステータスを確認すると、スザンヌは、
魔力の可視化のスキルを持っていた。
微小
封印
それに、不思議なスキルもある。
未来予知
なぜに封印?
詳しく見ると、総魔力量不足のためにガードがかかっているようだ。
さらに、魔力の可視化に必要な魔力操作が十分に出来ない。
総魔力量が低すぎ、身体強化も能力としては持っているが、使い物
にならない。
魔力操作、総魔力量、それと、体力が不足。
﹁魔力操作の習得、基礎体力と総魔力量を増やせば、強くなれます
よ﹂と励ますと、
﹁あなたの隣に立てるぐらい強くなれる?﹂と聞いてきた。
そんしょく
つづけて﹁マリアは、聖女としてあなたと並んでも遜色ないけれど、
私はただ金眼をもつだけ。それでは駄目だと思っているの﹂
﹁そんな事を気にしていたのですか﹂
世の中の全ての女性がうらやむような美貌を持ち合わせているのに、
そんな悩みを持つのか。
マリアと比べるとなると容姿の利点はほぼ一緒になるから、プレッ
シャーなんだな。
﹁ただ好きなだけであなたの婚約者になったけど、あなたはいろん
なことができる。
きっと世界を変えるすごい人になるはず。
334
そんなあなたの隣にいれることは嬉しいけど、見合うだけの人であ
りたいの。
単に元王女と言うだけで隣にいるのは駄目なのよ﹂
﹁私が、すごいと思ってもらうのは嬉しいけど、あまり気負いしな
いでくださいね。
まだ出会ったばかりですが、あなたは私にとっても大切な人です。
運命を感じるとても大切な。
⋮⋮⋮⋮⋮⋮
そして、鑑定でスキルを確認していますから、間違いなく素性はす
ばらしいです。
とりあえず、ゆっくりと足りない分を成長させましょ。
それでも、この夏だけであなたが思っている以上に強くなりますよ。
それは、絶対に補償します﹂
﹁ほんとに﹂
﹁大丈夫です。間違いありません。そしてエイミーも見てくれます
から。
王子達とは違うメニューになりますけど、3週間後、彼らには申し
訳ないけどあなたの方が強くなりますよ﹂
﹁あはは、それが本当なら、ちょっとずるいね。
でもジルベール様が言ってくれた言葉は、信じる。
解った。よろしくね﹂
﹁エイミー、体力向上と、型を中心に。
最後の週で一気に力を引き出すから3週目に撃ち合いになるから﹂
﹁了解っす。
では、スザンヌ様、無理させない範囲で効果的に体力と筋力を増や
335
しましょう﹂
それから、エイミーがストレッチを中心に筋力アップのメニューを
教えていた。
初日の夕食。
全員が一同に集まるも、すでに全員死にそうな顔。
食欲が無いと言いながら、すき焼きを出すとみんながっついて食べ
る。
夕食後に全員で魔力操作の訓練を行う。
私が皆の魔力の流れを確認し、状態を教えて、感覚と一致させる。
マリア様とスザンヌ様は、終わった後で私と個別にさらに訓練。
マリアは基礎ができているので総量を増やす訓練。
スザンヌ様は、基礎からじっくりと。
これを毎日繰り返し、魔力の操作力を上げつつ、
総魔力量を増やしていく。
3週間あれば、皆、だいぶ向上しそうです。
336
4.14 夏は避暑地でバカンスだ。あれ全然遊んで無いぞ
︵後書き︶
スザンヌの王女としてジルベールに話す時と
婚約者としてしゃべる言葉使いが安定しない。
337
4.15 転生者ミシュル
次の日から、午前の早い時間は、マリア様、アナスタシア様だけで
なく、
スザンヌ様と魔法が得意と言うルカ王子が入って魔法の基礎訓練を
行う。
途中からスザンヌ様とルカ王子は抜けて体力向上に行ってもらう。
マリア様、アナスタシア様は、基本となる土魔法を中心に魔力操作
の訓練。
午後になると、日課の勉強や習い事を。
ご令嬢は、遊ぶ時間はあまりありません。
大変です。
魔力が回復してきたら、途中で魔法の訓練をはさみ、終わると夕食
の準備を手伝う。
スザンヌも、この時は入ってますよ。
王子達は、ひたすら走り、飛び、剣を振る。
体が動かないほど動いたら、夜は、魔力操作の訓練。
とにかく1日中体を鍛え必ず魔力操作を練習する。
私も、午後は王子達と一緒に行動している。
スザンヌ様は、エイミーが面倒を見ている。
エイミーが太郎と一緒に領内の見回りに行く時、一緒について行っ
たりもしてる。
338
時が少し前後、初日の事。
ミシュル様から質問があった。
﹁今回、声がかかったことが嬉しくて、深く考えず、とりえず参加
してしまいましたが、
私以外は、皆様王族の関係者。
グレン様もジルベール様やフィリップ王子と同い年。
私は、なぜこのメンバーに選ばれたのでしょうか?﹂
﹁先日のお見合いの時に、剣の才能がありそうでしので、枠が一つ
空いていたそうなので私から推薦させてもらいました﹂と、私が答
えると、
﹁ジルベール様の推薦でしたか、お見合いの時にそれほど話もして
いなかったですし、
てっきりスザンヌ様からかと思ってました。
今回のお声かけ、ありがとうございます。折角の機会ですので、十
分に活用させていただきます。
それと、遅くなりましたが、ご婚約おめでとうございます﹂と、
でも、まだ納得してない顔をしてました。
﹁今回は、王子が3名いますから、存分にアピールしてください。
それとは別に、マリアを含めて3人で少し話したいことがあるので
すが、週末に話しましょう。
そこで、あなたが参加になった理由と、あなたが知りたがっている
情報が得られるでしょう﹂と言うと、
怪訝そうな顔で、
﹁マリア様と? 解りました。
マリア様が関係するなら、魔法関係でしょうか?
私も、少し使えますが、では週末ですね﹂と、
疑問は晴れてはいないようですが。
339
そして週末、明日、ルカ王子が帰る前日の夜。
3人以外は別の部屋でルカ王子を取り囲み談話室で話をしてもらっ
ている。
我々は、3人だけで別の部屋に入り、少し離れて侍女が監視。
3人でソファーに座り、話を始めます。
まず、マリアから、
﹁ミシュル様、では、まず確認ですが、転生者ですよね﹂と日本語
で、
私は、英語で﹁私たち2人は転生者です。日本語と英語、どちらが
良いですか?﹂
﹁びっくりした、ジャパニーズ、日本語、日本語で﹂
日本語でもう一度言い直す、
﹁私たち2人は転生者です。
少し転生の情報について、話をさせてください﹂
﹁転生者が何人かいるとは聞いていましたが、
お二人が転生者。それでマリア様は聖女。だから私が呼ばれたので
すね。納得しました﹂
私は、
﹁納得されましたか。実は、私は、メリーナ様から全ての魔法が使
えるスキルを受け取りました﹂
﹁え、魔法使い。
でも剣も私よりも強い。
魔法剣士にしては、両方強すぎですよ﹂
340
﹁剣は、もちろん身体強化の魔法を使ってます。
あと、小さい頃からレイブリングさんや、エイミーと打ち合ってま
すから、普通に鍛えた自力ですよ﹂
﹁ああ、そうですね。強さの秘密は解ります。
あれをもっと前からやってるなら、強くなるのは道理ですね﹂
﹁ミシュル様、あなたのスキルは何ですか? よろしければ教えてもらえますか?
それに前世の事も少し﹂
﹁前世は、25歳で交通事故で亡くなったことは覚えていますが、
それ以外はあまり覚えていません。
多少の知識が残っているだけです。
今日の日本食は、記憶にある食事と一緒で、懐かしかった。
よくこれほど再現できてますね。感心しました。
あー、私のスキルか、そういえば。
メリーナ様から頂いたスキルは、剣の才能です。
それと土、火、風の3属性魔法のスキルです﹂
﹁やっぱり、私たちも、死んだ状況と、知識は残っていますが、自
分の名前や、家族の事は覚えていません。
メリーナ様がその方が次の人生での生きる力になるからとおっしゃ
っていました。
一貫しているみたいですね。
それと、料理を作る料理長のゴルゴさんも転生者です。
だからこれほどのクオリティーで再現が出来るんですよ﹂
マリア様から﹁私も、同じです。私は、アイドルをやっていて、帰
341
宅中に刺されたんです。
ジル様が助けようとして、私の為に先に死んでしまって。
私は、助けてもらった時にすぐに逃げれば良かったのに、怖くて逃
げられなくて、結局私も刺されて﹂
﹁そうですか、アイドルって、もしかしてA○Bとか?﹂
﹁いえ、そんな大きなのではなく、横浜を中心に立ち上げようとし
ていたアイドルグループです。
A○Kをご存知なら、年代は近いのですね。
私達が死んだのは、2015年5月20日です﹂
﹁私が死んだのは、2015年4月です。
日にちは覚えていません。近いですね﹂
﹁そうか、マリアと私は、本来は数分の差で3年も生まれが変わっ
たけど、ミシュル様とは1ヶ月差で3年の差になってるんですね﹂
﹁私は、ちょうど良い器が見つからないから、少し順番がずれると
言われました﹂
﹁じゃあ、わざわざ王家に生まれる様に調整してあったのか。
メリーナ様が私の3歳の時に、将来必ず会うからって言われたけど、
普通に暮らしてたら、王女って必ず会うものかな﹂
﹁3歳の時には前世持ちだったのですね。凄く早い。
やはりそれは、ジルベール様の能力を見越してでじゃないですか﹂
とミシュル様が。
と言われたけど、それにメリーナ様がな
﹁3歳の時にメリーナ様から
何でもう記憶があるの
にか計算しているようには思えなかったけどな﹂
﹃まあ、なんてことを。
342
ちゃんと、私の計画通りですよ。
少し規格外の計算違いがあっただけよ。
おかげで、ちゃんと婚約したでしょ﹄
突然、頭の中にメリーナ様の声が。
驚く私。
そして、
﹁えっと、今メリーナ様の声が聞こえた気がしたけど、みんな聞こ
えたの?﹂
﹁いえ、まさか、私には何も﹂とマリアが。
﹃みんなに声を聞かせるのは、大変なのよ。
神の力を持っているあなたには、まだ声を届けられるけど、他の人
はかなり難しいのよ。
まあ良いわ。
近くに不穏な気配がするから、今夜は気をつけて。
それと、私を疑っちゃ駄目よ。
もちろん全部計画通りよ。
当たり前じゃない。
私は、神よ神。
こんなにあなたの幸せに協力しているのだから、感謝してね。
でも、ちょとあなたが規格外に成長しすぎて、シナリオ以上に上手
くいきすぎてるのよね。
ちなみに、私の予定では、婚約者はマリア1人よ。
スザンヌって子は知らないわ。
予定外だけど、あなたの婚約者になたから、明日加護を与えるから、
あの子を教会に連れてらっしゃい。
じゃあね﹄
343
私がしばらく黙って目を閉じていたので
﹁メリーナ様だったんですか?﹂マリアが聞いてきた。
私は、目を開けてから、
﹁ええ、いろいろ暴露されましたが、問題ないです。
明日スザンヌ様に加護を与えるから教会に行くように言われました﹂
﹁メリーナ様がお姉さまに。良かった﹂
﹁そうですね。では、情報交換はまたの機会として、そろそろみん
なのところに戻りましょう﹂
皆のところに戻った後、急いでエイミーとレイブリングさんを呼び
出し、変な気配が近づいていると伝え、見回りの強化をお願いした。
そして今夜は、太郎を檻から出して、
家の門の前に軽く繋いでもらった。
344
4.16 侵入者
メリーナ様からの警告があったその日の夜中。
私の索敵にも怪しい気配が反応した。
5人の気配を探知した。
エイミーを起こし、屋根の上に移動した。
太郎には念話で南側2名を頼み、
東にレイブリングさん、西がエイミー、私は北へ。
なんとまあ、あっと言う間に5名が確保された。
プロフェッショナルな人ではなかったようだ。
めんどくさかったから、
﹃殺しちゃ駄目だけど朝まで遊んでて良いよ﹄と太郎に念話で説明
して、
檻の中に放り込み、後を太郎に任せる。
それ以降は、兵士の見回りを倍に増やして、私は就寝。
レイブリングさんは現場指揮で暫くしてから寝ると言っていた。
太郎は、特殊な能力があり、まず私とは主従の関係によって念話で
少し会話ができるようになった。
そして解ったのが、太郎はどうやら善人を見極めることができる。
これは、黒狼の特徴ではなく、太郎の固有スキル?
345
単に、趣向だけのことかも知れない。ここは詳しくは不明だ。
これまでも、数名盗賊を使えまえた中に、巻き込まれ、使われてい
ただけの善人を何人か見つけて、
その人たちは、被害者の一部として、領内で働いてもらっています
が、非常にまじめな人ばかりでした。
なので、本日もそれに期待して、全員を放り込み、おやすみなさい
です。
朝、王子たちを引き連れ、太郎の檻に行った。
﹁太郎、誰か気にいるのがいたか﹂と質問すると、
今、現在右足でおさえ、下に敷いている人を、指して、これこれと
言うしぐさをした。
その人には、私が回復魔法をかけ、念の為に、依頼人について質問
したが、下っ端の為に知らないと。
今後、私の部下として働くなら、命を助けるが、そうでなければ殺
すと脅す。
了承してくれたので、太郎の世話人として雇うことにした。
残りは、回復もさせず、命が助かりたければ、依頼人についてしゃ
べるよう質問したが、答えなかった。
その人たちは、レイブリングさんに任せた。
その後の尋問で、少しだけ情報を吐いた。
リーダーは、今回の王子・王女達の出発後に、雇われ、馬で王都か
らここまで飛ばしてきたらしい。
残りの4名は途中で雇ったり、近くで捕まえた人だった。
346
もちろん太郎が選んだ人は、途中で何をするか知らずに雇われた被
害者だ。
他の3人は、もとから盗賊だった。
そして、黒幕はもちろん、それ以上の事は解らなかった。
今回の為に集められた集団だったようなので、単なる脅しなのだろ
う。
しかし、誰に対して、何を脅そうとしていたすら解らない。
領内の進入経路から、警備の弱点がわかったので、もう一度見直し
をする必要がありそうだ。
またまた、時を前後。
私は、皆が来て、修行に明け暮れる中、ずっとそれに付き合ってい
るわけではない。
私には、色々とお仕事がある。
アイテムボックスに魔法を込めたり、ハンバーガー店、雑貨屋の品
物作りとする工房を巡るなど日々忙しい。
来ているみんなも、常にではないが、1日1箇所、どこかを見学に
連れて行っている。
女子3名は、領内のぬいぐるみやスリッパ、パジャマ作りに興味を
持った。
そして、製品を作っているのが、孤児院で育てている子供達と解り、
びっくりしていた。
原案だけは、私が書いたが、今はそれをベースに物語を作っている
年長の子がいる。
絵をかける子が二人ほど、その絵をベースに大人のスタッフが製品
の型をつくり、
型どおりに子供達が上手に製品を作り上げていた。
347
才能のある子は、将来的に、自活してもらうつもりだと、説明し、
現在でも利益で、十分施設が運営できている事を説明した。
実は、売れる量に対して人員が不足しているので、近所の平民の子
供達も集まって、
午前中に半分が仕事半分は、文字や算数を教えて、昼食を出し、ま
た仕事、途中で勉強をする。
晩御飯を食べる子は、その後また仕事をして、晩御飯を食べてから
家に帰る。
まあ、晩御飯を食べる子が殆どだ。
帰る子は、家にもっと小さい子がいるので、面倒を見るために帰る。
ただ、晩御飯が少ない家の子は、一度帰ってから、小さい子をおん
ぶして連れてくれば、
小さい子も一緒に晩御飯を出すようにしている。
小さい子の面倒を見るのも、お仕事という扱い。
別の日には、お皿の工房や、ガラスの工房も見て回った。
皆、ろくろを使った皿作りに挑戦し、逸品物の自分のスープ皿を作
っていた。
上薬の塗り方と、焼く温度で色が変わると説明し、
自分で作品を作ってもらった。
思い思いの色をただつけるだけの人、綺麗な絵を描く人まで、いろ
いろでした。
ガラス工房では、みな、板ガラスは興味なし。
ガラスで作った動物の置物の方に興味を持ったようだ。
土魔法で、不純物を取り除き、水魔法を上手に使って磨き上げる。
348
専用の魔法を魔法陣を詰め込んだ、魔道具があれば磨きはできる。
道具さえあれば、魔法使いである必要はない。
だが、根本的に、芸術的な感性が必要。
従来は、これを作り上げるには、そもそも最初の段階で魔法使いで
ある必要があったが、
専用の用途を絞った魔法陣を組み込んだ魔道具の作成によって、か
なり敷居が下がった。
それでも、この作業ができる人は少なく、今のところ、1人が日に
1個しか作れないので、量産は無理だ。
動物の置物以外に、ワイングラスを初め、様々なグラスも作ってい
る。
これも、自分で作るか聞くと、とりあえずチャレンジと言うので、
みんなに試してもらった。
意外に、マクシミリアン王子が上手にワイングラスを作っていた。
頑張って王様と1,2,3妃様の分を作ってもらった。
そして、スザンヌも器用だった。
なんと完璧な犬と猫の像を作り上げ、第3、第4王女へのお土産に
すると言っていた。
恐るべし双子。
妙なところで才能が共通していた。
349
4.17 1回目の魔物狩
さて、ルカ王子は今日が最終日です。
今日は、予定通り1回目の魔物狩実践教育。
レイブリングさんを先頭に、王子達は兵の間に混じって隊列を組み、
山に入る。
小型の魔物を狩ながら、少しづつ奥地へ。
この地方には、ゴブリンや、オークはあまりいない。
魔物の種類は国によって多少変わる。
この国では、人型では無いウサギ、狐、狸、牛、ヤギなどが魔物化
した動物をベースとした魔物が多い。
動物がどうやって魔物化するかは色々な説があるがはっきりとは解
っていない。
森の入り口付近での戦闘は、戦略も必要なく、力でねじ伏せればよ
いので、討伐は楽である。
お昼ごはんを過ぎた頃に、
今回のメインとなる大物が登場。
鹿に似た魔物が出た。
体長3m、体高1.8ぐらいの大型魔獣3体。
相手が、魔法を使わないので、剣をベースに王子達が戦う。
途中危なげなところはあったが、支援魔法もあり、順調に討伐。
魔物化しても肉は食べれるので、今回討伐した魔物は全て、アイテ
ムボックスにしまい、移動している。
350
箱タイプのアイテムボックスは山の移動にはむいていないので、新
開発のリュックタイプである。
マジックリュックと呼んでいる。
当日限りで有効な、時間固定機能つき。
1日で魔石1個消費。
容量は10倍ではなく、アイテムボックス相当の虚無空間の付与だ。
通常のアイテムボックス並で、リュックと言えど、口が大きく開く
ようになっているので、大型の鹿も入った。
ちなみに血抜きはしていない。
時間停止するので、必要ない。
血抜きしていると、魔物がどんどん集まってくるからだ、特に今日
は、現地での血抜きを絶対にしないようにしている。
現地で血抜きなどすれば訓練どころの騒ぎではなくなる。
安全第一です。
全員がリュックを背負っているので、倒した魔物を全て持ち帰って
も、容量的には特に問題もない。
家に帰ってから、みんなで肉を解体し、その日食べるもの以外は、
熟成室に突っ込み、更に残りは市場に回す。
解体まで含めて訓練です。
皆、討伐よりも解体が大変と言ってます。
解体は、普通に解体するのではなく、解剖として体の仕組みを教え
る事もしました。
魔石の取り出しも含めて、体の構造を知ることが重要です。
マリアも、可能な限り勉強として見てもらいました。
もちろん、血抜き後に、必要な箇所だけですけど。
動物や魔物は、人間とは違いますが、回復魔法を使うためには、現
物の臓器を見ておいたほうが良いからです。
351
アナスタシア様は、パスでした。
そりゃそうですよね。
夜は、反省会をしてもらった。
私とマリアとミシュル様の3人は、その夜に少し別の話をしていた。
反省会では、実践不足だとみんな認識してくれました。
訓練どおりには行かないものです。
人と魔物の動きの違いで、とっさに動けなかった事を痛感していた。
結局、日々繰り返す型が、自然に動きをよくしてくれるということ
で、基礎の大切さを痛感してくれたようで、良かった。
そして、ルカ王子は王都に帰りましたが、公務が空いた週末だけけ
でも合流したいと、予定日を連絡してくることになりました。
もちろん、私が送迎です。
もう、王子の立派なアッシーですね。
ちなみに、王様から後で使った費用の10倍のお金が送られてきま
した。
教育費だそうです。
大盤振る舞いで、使った経費以外を隊に寄付したら、
半分は装備の一新に使われましたが、残りは、彼らが頑張ってくれ
たとは言え、隊員の方々の飲み会代として消えてしまいました。
どんだけ飲むんだ彼らは。
厳重注意です。
隊の経費は、隊の維持のために使う物で、飲み代に使ってはいけま
せん。
それは、年に2回、別で提供するから隊の費用は命を守ることに使
ってくださいね。
死んじゃダメですよとお願いしたら、みんな神妙に聞いてました。
352
353
4.18 スザンヌとメリーナ様
さて、ルカ王子が帰り、男子4名、女子3名となった。
私は、午後からスザンヌ様を連れて教会へ行った。
2人でお祈りをすると、約束どおりメリーナ様が降臨。
スザンヌ様は、マリアの7歳の誕生日に降臨される姿を見ていたの
で、
そこまで驚いた表情ではなかったが自分の為に降臨された事をもの
すごく感謝してた。
メリーナ様から
﹁スザンヌ、気がついていると思いますがマリアとこのジルベール
は私の秘蔵っ子。
普通ではありえないほどの、大きな加護を与えてあります。
あなたは、頑張る気があるようですしあなたが死んでは、
ジルベールが悲しみますからあなたにも加護を与えます。
これで多少の毒に対しては問題がなくなるでしょう。
でも、油断してはいけませんよ。
では手を前に出しなさい﹂
スザンヌが、どきどきしながら、手を前に出す。
﹁マリアやジルベールに与えたようなスキルをあなたにも与えたい
のですが、制約があってあなたにスキルを与えられないようです。
それに、あなたはもともと優秀なスキルを持っているようですので、
スキルではなく、魔道具、今回は聖剣を与えます﹂と言って、
でてきたのは大きな宝石のついた、首飾り。
354
﹁この聖剣の首飾りは、神具と呼ばれる魔道具です。
つけているだけで、普段は、毒の無効化など状態異常の変化に効果
があります。
そして、願えば剣が出てきます。
剣は、光り魔法の効果を持ち魔物を簡単に切ることができます。
そして、剣を握った状態では、魔法防御の効果があります。
意識せずとも攻撃があると自動認識で展開されます。
功・防共に優秀な魔道具です。
もちろん防御発動も聖剣の取り出しにも本人の魔法力が必要なので、
ジルベールと一緒に魔法力を鍛えないと使えませんよ﹂
ためしに聖剣を出してもらう。
見た目ですごさが解る。
攻撃時に聖属性の光の効果が付加さている。
魔力さえあれば無敵。
その魔力が少ないのが痛い。
﹁あなたは、残念ながら総魔力量が低い、どれだけ鍛えてもマリア
を超えることは無いでしょう。
貴方には、二人と同様に神石を与えます。
これは魔法力を溜め込む特性を持っていますのでジルベールに魔力
を込めてもらっておきなさい。
いざと言うときに使えば、かなりの時間無敵になりますから自分の
命ぐらいは守れるでしょう﹂
﹁ありがとうございます。メリーナ様。
私、頑張ります。
ジルベール様の横に立てる様にもっともっと頑張ります﹂
355
﹁そうですか、今のあなたはジルベールに対して愛があるので、聖
剣もそれに答えてくれます。
しかし、あなたのジルベールに対する愛が偽りであれば全ての加護
がなくなります。
もちろんマリアに対しても敵対は許しません。
マリアと共にジルベールを支えなさい。
あなたがジルベールとともに生きる限り、私はあなたと共にいます
ので、自分を信じて頑張りなさい。
あ、最後に頑張りすぎて倒れちゃ駄目よ﹂
﹁はい。マリアと共に、ジルベールを支えられるように精進します﹂
﹁では、スザンヌ、ジルベール、いつも見守っていますので、楽し
く暮らしなさい﹂
メリーナ様は、こっそりと、私だけに、一言告げてきた。
﹃スザンヌは、私とは違う別の女神の加護があるわ。
それに、自分で理解している秘密を持っているけど、私から伝えら
ないわ。
でも、悪い秘密では無いわ。
ラキシスお姉さまだと思うけど、そのうち時が来ればあの子が話し
てくれるはずよ﹄
そういわれて、メリーナ様は戻られた。
感謝の礼をして、教会を出る。
スザンヌの顔が少し晴れやかになった気がする。
戻ると、相変わらず基礎訓練が続く。
しかし、先週に比べるとかなり基礎力が向上してきた。
356
みな少しずつ次のステップへ進みだした。
男子達は、2週目には、型をゆっくりとした速度に落とし、
型を繰り返す訓練時間を増やし、ストレッチのメニューも時間も増
やした。
ジルベールの魔法教室による魔法の理解を再認識してもらい、魔力
操作による、身体強化を学ぶ。
2週間が過ぎると、先週と比べると圧倒的な向上。
︵ルカ王子は戻っても自分で自主的に訓練はやってもらってる。
週末だけ戻るから迎えに来て欲しいと頼まれた。︶
3週目になると、レイブリングさん率いる兵と、男子全員が山に入
る。
同時期、スザンヌの総魔力量がある程度増えた。
ようやく魔力の可視化が使えそうだったので、私の直接指導を開始。
最初に、右目に魔力を集めてもらう。
私が、外部から強制的に魔力を操作し、魔力可視化を発動させる。
﹁え、なにこれ、すごい。これが魔力﹂
﹁エイミー、普通モードで動いてみて﹂
エイミーに適当に剣を振ってもらう。
﹁どう、魔力の流れを良く見ると、剣が次にどう動くか見えるでし
ょ﹂
357
﹁動きは見えるけど、どう動くかまでは解らないわ﹂
﹁まあ、それは訓練しだい。まだ魔力が持つはずだから、撃ち込み
の訓練を始めて﹂
エイミーとの撃ち込みを続けるが、スザンヌだけの魔力では数分で
切れ、魔力可視化が解除される。
神石に、私が魔力を充填し、それを使ってまた可視化を発動。
1回で、魔力の可視化だけなら、1時間以上持つらしい。
全力の1∼2分の撃ち込みを行い、休憩。
この繰り返し。
これを数日つづける。
最終日に、エイミーがかなり本気モードでもついてこれるようにな
った。
もちろんスザンヌは防御のみだ。
これにはエイミーも驚いていた。
﹁たった3週間でここまで伸びるのはすごい。今までの中で最速の
優秀な生徒だよー。感激!﹂
スザンヌがそれに答えた言葉は、
﹁魔力の可視化って、卑怯な技ね。すごすぎる。
こんな私でもエイミー様についていけるなんて、
もちろん攻撃に転じるにはもっと鍛えないといけないけど、
それも身体強化の能力が少しずつ上がっているから、
このペースなら半年後にはかなりになるわ。
ジル様は、いつもこんな感じで戦っているですか﹂
358
﹁うーん、卑怯といえば、そうかも知れないけど、そういい切れな
いかな。
論より証拠だね。
今からエイミーと私が本気で打ち合うから、その様子を見てて﹂
私とエイミーが最大速度で撃ちあう。
もちろん私は魔法なし。
今回は、ぎりぎりで私が勝った。
﹁どう?﹂
﹁エイミー様もジル様もたまに、魔力の流れと違うほうに動いてい
た。
そして、ジル様は、後半、魔力が消えて見えなかった﹂
﹁エイミーは、魔力の可視化はできないけど、魔力感知能力が高く
て、
可視化に近いことができている。
上位者のレベルになると、これに近い能力を持ってると思います。
その上で達人はそれをごまかす方法をさらに身につける。
エイミーは完全に消せないから、フェイクを使える様になった。
フェイクは最近かな。
最初に使われた時は、びっくりしたね。
私は、あまりフェイクが上手くないから、消す方向にしてる﹂
﹁へー、上には上があるのね﹂
﹁そういこと。
魔力の可視化と身体強化の魔法で普通のレベルは簡単に突破できる
けど、その先は長いよ﹂
359
﹁ところで、剣王のエイミー様に勝てるジル様も少なくとも剣王っ
てことなの?﹂
とエイミーに尋ねる。
﹁うーん、私も剣王になった頃に比べると、ジルちゃんとの訓練で
もっと強くなってるよ。
フェイクができるようになったのは、ジルちゃんと訓練して魔力の
流し方をいろいろ指摘されてからだから。
魔力操作が上手くなると、身体強化もさらに強くなったし、総魔力
量も増えた。
今の私は確実に剣王以上だから、ジルちゃんも間違いなく剣王以上
だよ。
本人の希望がないから、称号の申請はしてないけど。受ければ剣王
は間違いない﹂
﹁それじゃ、回復魔法使うから、ちょっと右腕見せて﹂
﹁え、右?﹂
﹁気がついてないの?右腕、はれてきたよ﹂
﹁ほんとだ。あ、ジル様痛い﹂とスザンヌが甘えてくる。
﹁魔力を体に流してると、痛みに関して鈍感になるからね。
集中力が切れて、魔力をまわせなくなったから痛みが出たんだよ。
気をつけないと、痛めたまま動かし続けると体が元に戻らなくなる
からね。
魔力の流れの異常で体の異常を見極めないと﹂と回復させる。
360
﹁治ってきた。ありがとうジル様﹂
﹁さて、そろそろ休憩しよう。この訓練はちゃんと休まないと﹂
そして、3人で戻り、侍女にお茶を入れてもらい休憩する。
361
4.19 閑話 ナンシーは転生者? 疑惑
スザンヌと一緒に家に戻ると、ピアノの音が、マリアのピアノの時
間だろうか、ナンシー、エレノア、ニーナとは違う。
かなり上手いけど、ナンシーほどではない。
エレノア、ニーナは、まだ習い始め、簡単な曲を練習中。
家に入ると、やっぱりマリアだった。
ちょうど終わったところだったので、拍手する。
﹁あ、ジル様、聞いてたんですか、はずかしい﹂
﹁さすが上手ですね﹂
﹁スザンヌ様も、そろそろ練習をしてくださいね﹂とナンシーから。
﹁ジル様、ピアノはされないの?﹂
﹁私は、ピアノは弾けませんよ。
でも風魔法の応用は音は出せますけどね。
ちょっとやって見ましょうか?﹂
と、なんとなく聞き覚えのあった、現代風の曲の音をエアーピアノ
で数曲弾いてみる。
﹁すごい、なんですかこれ。聞いたことが無い楽曲﹂ナンシーが興
味を持ったみたい。
﹁それなら、私も幾つか弾けそうです﹂とマリアが。
﹁マリア様は知ってるんですか﹂
﹁はい。きっちりは弾けませんけど、そういう曲なら途中だけです
が、幾つか弾けます﹂
と言って、アイドル系の曲を披露してくれた。
﹁曲風が、すごく新鮮だわ。あーイメージ来た﹂と言って
弾き終わったマリアをどかして、必死に弾き始める。
362
もうすでに現代風の曲を作り出している。
﹁あれ、ナンシーさんは転生者?﹂
と小声でマリアが話す、
﹁違うと思うけど、すごい才能だな。
こんなちょとで新曲作れるなんて﹂
あまりにすごい集中力なので、みんなそっとその場から離れた。
顔つきが、ちょっと怖かった。
スザンヌが、今日の練習が無くなって良かった。
とこっそり言ってた。
それを聞いた侍女が﹁もう一台ピアノを持ってこれませんか?﹂
と聞いてきたので﹁領主館から持ってきましょうか?﹂と答えると
﹁是非。1日休むと感が鈍りますから、持ってきてください﹂との
こと。
スザンヌが﹁えー、せっかくの休憩が﹂
というので、
﹁私もスザンヌのピアノ聴きたいなー﹂と言うと
﹁そう言うなら頑張っちゃおうかな﹂
と言うことで、とりあえず転移でピアノを持ってくる。
スザンヌは、運動神経が良いし、器用なので、ピアノも非常に美味
い。
プロ級の曲をガンガン弾けるので、弾き始めると演奏会並。
心が洗われる。
今日も練習曲数曲を披露し最後はマリアの指導をしていた。
姉妹仲良く、とても平和な光景でした。
夜になっても、ナンシーがまだ弾いてた。
363
マリア達がいる時は自重しろと怒ったら、
とりあえず、その期間はおとなしくピアノの指導をきちんとやり、
空いてる時間で作曲。
きちんと夜は休んでいたが、夏が終わると大変なことになってしま
った。
その話は、また後で。
364
4.20 閑話 マリアとエレノア、ニーナ
話が前後してます。
マリアは、転生前の記憶があるとはいえ、まだ7歳。
私もそうでしたが、完全に前の意識だけで行動するわけではないの
で、
年相応の子供らしい遊びもします。
なので同じ年頃の子がいれば、同じように遊びます。
マリアは聖女のスキル持ちなので、魔法の才能はすごい。
そしてエレノア、ニーナは私との遊びを通した常識を逸した
遊びと言う名の訓練によって稀にみる魔法の才能を持っている。
その3人が集まった時の遊びは、エレノア、ニーナの得意な人形遊
びになる。
彼女たちが操作するヌイグルミは、まるで生きているかのように動
く。
エレノアとニーナが動かしているのをマリアが見て、
疑問にも思わず、同じように動かす。
3人ともに動かせるので、この3人は更に何の疑問も感じていない。
常識あるアナスタシア様は、遊びに入れず、見ている方に回ってい
た。
一番上手いのはエレノア。
さすがだ。
365
ぬいぐるみを数体同時に動かせるし、それだけ動かしても総魔力量
が多いので、なんとも無い。
ニーナは1体だけ動かしている。
マリアはさすがに転生者だけあり、訓練をしていたニーナとほぼ同
等の総魔力量があった。
魔力操作も上手く、最初は1体だけだったが、途中から2体までな
らきちんと動かせるようだ。
ままごととして、お茶にすると言うと、
魔法で作ったお茶お菓子が用意される。
寝るとぬいぐるみ専用のベッドが飛び出す。
汚れないように表面が汚れないように綺麗なベッド。
いや、すごい。
これだけできると、相当の魔法の技術が必要だ。
とても遊びの域ではない。
アナスタシア様は、本物のお茶を飲みながらくつろぎ、あきれてい
た。
王城から来た、侍女の方々もこれを目撃し、びっくりしていた。
本人達は、気に入って遊んでいるようなので、まあ良しとしよう。
マリアは、エレノアにジルベールの事を好きなのか確認していたが、
エレノアは、兄として慕っているけど、それ以上ではないよ、
とあっけらかんに答え、マリアがほっとしていた。
エレノア、ニーナは、子爵家の子で、一応は貴族ではあるが、ここ
366
で暮らしている限り王都のような貴族の生活とは無縁。
9歳の子は、結婚など考えないのが普通だ。
マリアも、王家とはいえ、他の例からも12歳以降にならなければ
本来は婚約は結ばない。
王家以外の貴族も、14歳で社交デビューし、
それから婚約が一般的。
今回のマリアが特別なのだ。
マリアはエレノア、ニーナと同世代の友達ができて、喜んでいた。
一度は、お泊りと称して、同じベッドで3人で寝ていた。
連続で泊まるのは侍女からの反対もあり、お泊り回は、週1の2回
だけになり、
マリアが残念がっていた。
良いお友達になれそうだ。
良かった、良かった。
この時に、王城から来た侍女の口止めを忘れていたので、エレノア
とニーナの事は
侍女仲間で噂になり、時間をかけて、徐々に広まってしまった。
367
4.21 ルカ・ラルクバッハ1
︵王家の人は、苗字はありません。対外的に国名を苗字として使い
ます︶
ルカ・ラルクバッハは、ラルクバッハ国の第1王子。
現王に、兄弟がなく、現在、王位継承権1位になっている。
ラルクバッハ国の王は、厳密には、王位継承権は王家だけではなく、
金眼持ちの中から、実力主義で選ばれる事になっている。
5代前の王は、公爵家から移動してきた。
王の子よりも、王家から降嫁した公爵家の子の方が全ての能力が高
く、人望もあった。
結局、貴族院の投票にて、王に選ばれたのは公爵家の子。
ただし、その王の子は、王弟と言う役職につき、王を裏から支えた。
今期も、確実に自分が王に選ばれるわけではない。
それは子供の時から教えられ、自分でも理解していた。
回りからの期待もあり、日々王に向けて様々な勉強にいそしみ、剣
も学んでいた。
ただ、周りと付き合うと明らかに自分よりも劣るものばかりだった
のも事実だ。
同じ年の公爵家にも金眼の持ち主がいるが、自分の方が優れている
と思えた。
ただ、ルカ王子がそれを表に出したことは無い。
相手も、自分をサポートする立場として教育されており、それを当
たり前と思っている。
368
そんな日々をすごし、14歳まで成長した。
そして、隣国のシドニアの最後の王子が昨年なくなり、ルカ王子の
母親が、シドニアの王女であったことから、
自分に王位継承権が来てしまった。
それについては、王から、現状の継承権から、断りの連絡を入れて
あるので、
今年度中に、正式に断りに行く必要がある。
その後、シドニアは、母の妹が嫁いだ公爵家、またはフィリップに
継承権があることになる。
そんな中で、第2王女の7歳の誕生日を気に、少し情勢が変化して
きた。
母の違う、長女スザンヌは少しきつめの性格に見える。
だが、見た目だけだ。実際は温和だ。
対して、第3王女は、見た目もとても愛らしく、やさしさあふれる
笑顔がとてもかわいい。
お兄様と慕ってくる良い妹だ。
今代では珍しく、兄弟の中で唯一金眼を持たずに生まれた。
周りからは何か言う声もあったが、父や母は特にマリアをかわいが
っていた。
本人も気にする事なく、すくすくと育ってきた。
現在、7歳の誕生日の少し前に、欲しがっていた猫を飼ってもらい、
育てている。
誕生日の朝、7歳の祝いとして教会への祈りが始るので、
そろそろ移動しようとしていたら、妹の侍女が1人でうろうろとし
ていた。
369
気になり声をかけると、猫が木に登って降りれなくなり、手伝って
くれる騎士を探していたが、
皆教会に手伝いに行ったのか、誰もいなくて困っていると。
私は、侍女とそちらに行くことにした。
ついてみると、すでに、猫を抱いた妹がいた。
おそらく猫が自分で降りたか、落ちたかなのだろう。
それよりも祈りの時間が近い、急いで支度をさせるべきなので、
侍女と部屋に戻らせ、自分も教会に移動した。
教会に着くと、大司教様が少し遅れるとの事でちょうど良かった。
暫くすると、妹が教会に到着、大司教様も到着された。
祈りが始ると、妹の前に神々しい何者かが現れた。
正確な姿は認識できないが、メリーナ様の像に似ている美女。
恐らくは女神メリーナ様本人。
皆が驚くが、祈りの最中に声は出せない。
僅か10秒ほどのことだったが、メリーナ様が現れ、そして消えた。
妹が立ちあがりこちらを振り向いた。
なんと、両目が紫に変わっていた。
聖女の証だ。
紫の目は、回復魔法などの聖魔法の上位の使い手の証だ。
この国には、回復魔法が使える人は数名だけ。
両目が紫は、聖女と呼ばれ、総魔法力の高く、高度な回復魔法が使
370
用できる。
おそらくこの近隣国では、唯一だ。
まわりがどよめく。
その場は、王からの命令で起きた事を漏らすことないよう注意が下
り、すぐに解散となった。
今日、教会にいた人は、神官と王の一族、一部の高官のみ。
とりあえず公表するまでは秘密にすると伝令がでた。
そして、その日の夜に、3公爵、3王妃に私も呼ばれ、話し合いが
行われた。
私も、もうすぐ成人する。
今回の話し合いは、意見を言うことはできないが、参加だけは認め
られた。
元々、第1王女か、第2王女のどちらかが、他国の王妃候補と言わ
れていた。
王は、長女の第1王女スザンヌの事を眼に入れても痛くないほど愛
しており、
絶対に国外に出したくないと我がままを言っていた。
第1王女は金眼持ちでもあったので、その我侭は聞き入れられてい
た。
そこで、第2王女は金眼持ちではなかったので、他国の王妃の可能
性が高かった。
予定では、来年の外遊に連れて行き王子たちとの顔合わせをするは
ずであった。
王は、しぶしぶ顔合わせについては了承していたが、
メルミーナ様からマリアを自分の後継者と結婚させたいと言う話を
聞いていたので、その提案にのりのりだった。
371
ここで、マリアが聖女となったので、国の重鎮達も予定を変えなけ
ればならないことを認識した。
なぜなら、国唯一である、聖女を外に出すわけには行かない。
そこで、聖女になったことが外に漏れる前に国内で婚約者をつのり、
婚約とともに聖女になった事を公表する事となった。
マリアの婚約者は、もちろん、メルミーナ様の後継者が筆頭ではあ
る。
王家でも普段は、12歳以降になってからしか婚約を決めない。
現在、私と第2王子の婚約は決まっているが第2王子の双子の片割
れ第1王女スザンヌはまだ婚約者がいなかった。
それは、王が、他国に出すのをぎりぎりまで決めたくないと、他国
の王子の婚約の申し込みを断っていたからだ。
しかし、その王の思いを知ってか知らぬか解らないが、第1王女ス
ザンヌが気に入る男子は今まで皆無だった。
結局、第1王女と第2王女いっぺんに婚約者を決めるためのお見合
いをする事になった。
第1王女は現実的にはラストチャンスだ。
1週間後の開催にむけ、急遽候補者のリストアップされた。
第1王女の相手となりそうな男子で、金眼もちは、もともと良い年
齢の金眼持ちが
アレクサンドロ公爵家14歳オレリアンとオズワルト侯爵家グレイ
10歳しかいない。
オレリアンの父と、第1王女のスザンヌの母レオニー様は、兄妹。
血が近すぎる。
372
そうなると自然とグレイになるが、いままでもグレイとスザンヌは
良く会っていたが、
グレイは、同年代の金眼として、よく遊んでいた仲ではあるが、
婚約を結ぶような仲にはなっていなかった。
そこで、今回の第1王女のためのメンバーは、金眼に限らず、いま
まで会ったことの無く、
学校でも会っていない男子をなるべく選び出し、リストにした。
そして、見合いの日。
私は、学校があるため、妹2人に、良い人が見つかると良いねと、
声をかけてから、学校へ向かった。
しかし、その日、学校にいる時に王城から急な呼び出しがあった。
お見合いの日に呼び出しなど、何がおきたのか、非常にあせった。
王城に着くと、理由がはっきりした、2妃のレオニー様の体調が悪
かった理由が呪であり、それが解呪されたこと。
全員に今から呪があるかどうか神官が調べると言われた。
実際、2妃のレオニー様に会うと、最近の顔色の悪さは全く無く、
昔の綺麗なお顔に。
久しぶりに見るそれは、とてもすばらしい笑顔に見えた。
そして、言っていることの正しさが解った。
その後の調査で、家族全員、他に呪われている人がいなかった事が
解った。
しかし、2妃様の呪いを解いたのが、見合いに来ていた10歳の少
年だったと聞き、その事実に驚愕した。
373
その10歳の少年こそが、メルミーナ様が後継にと押していた人物
だった。
呪いの解除は神官でもかなりレベルが高くなければできない。
現在は、国内では大神官様ぐらいだ。
ただ、呪いを解除したのち、倒れてしまい今は王城の部屋で寝てい
るらしい。
まあ、2妃が元気になったそうで、良かったが、
本日の見合いは途中で終了したようだ、スザンヌの経過が気になっ
た。
夕食は、久しぶりに家族全員が揃った。
第1王女のスザンヌは、自分の母親の命を救ったこの少年について、
出会いの様子から事細かに語っていた。
1妃様が、その少年が、メルミーナ公爵が言っていた、マリアの婚
約者に押している少年だと説明し、
スザンヌが驚いて、その後静かになってしまった。
どうやらマリアもこの少年が気に入っているらしい。
こうなると、メルミーナ公爵の描いたとおりに進むのではないかと
危惧。
スザンヌが折角、気にいったこの少年とは結ばれないのかと、残念
に思った。
私は、他の人も全員良く見て決めるようにとしか言えなかった。
374
4.22 ルカ・ラルクバッハ2
そして、次の日の朝、朝食に集まると、少年を見ていた侍女長が慌
てて王に報告に来た。
王は報告を聞き、信じられないという顔してから、
﹁昨日の少年が目を覚ましたので、朝食に来る﹂といわれて、少し
待つことに。
5分ほど待つと、少年が現れた。
そしてその姿に私は驚いた。
両目が金眼だった。
王が﹁両目が金眼か﹂とつぶやき、
メルミーナ公爵に問い合わせると言っていたが、私はそれどころで
はなかった。
両目が金眼
しかも、呪いの解除ができるほどの能力があり、聞いた感じでは、
そのほかの魔法能力も非常に高い。
これは、どう考えても私を飛ばして王の後継者候補1位ではないか?
見合いの話どころではない。
暫くは、動向の調査が必要だ。
その後の報告を聞くと、王宮騎士よりも剣が優れ、そのレベルは剣
王を超える。
魔法に至っては、王宮魔道士が足元にも及ばぬほどの実力の差があ
ると解った。
375
まだ10歳なのに、規格外も規格外。
ちょっと頑張れば手が届くというものではない。
建国の王がそうであったように、両金眼とは、これほどなのか、
これで10歳とはどういうことなのか、その才能に嫉妬した。
見合いが終わった後に、私は、妹2人からの意見を聞いた。
当然のように2人ともジルベール選んだ。
他は眼中に無い。
まあ、そうだろ。
顔も良いし、強くて頭が良い。
選ばぬ道理が無い。
私でもそう思う。
その日に結論は出なかった。
次の日、学校に行くと、久しぶりに出てきたアレクサンドロ公爵家
の次男オレリアンが話しかけてきた。
これは、珍しい現象だ。
オレリアンは、金眼であるにも関わらず、兄と比較して自分が優れ
ていないと、何をやる時でも退いてしまいがちな性格。
私の従者として付き従いはするが、あちらから必要以上の事を話し
かけてくることは稀だった。
オレリアンは﹁王女との見合いに出ていた、ジルベールと言う少年
を知っているか?﹂と。
彼が、他人に興味を持つのも珍しい。
376
やはり、彼にとってもジルベールはそれほど衝撃的だったのだろう。
﹁2妃の呪いの解除については知っている、剣も、魔法もすごいの
だろ﹂
﹁ああ、すごい、それよりも聞いてくれ。
彼が、私に光魔法が使えると教えてくれたんだ。
宮廷魔道士の中にいた光魔法を使える人に教わったら、本当に使え
るんだ。
すごいぞ、光魔法だぞ!﹂
と、興奮気味に。
そういえばそんな報告もあったような気がする。
あまりにこの数日におきたことが多すぎて、忘れていた。
そうか、光魔法の使い手は、この国では数名しかいない希少な存在。
希少すぎて学校での魔法訓練に組み込まれていないから、余計使え
る人がいない悪循環だったのか知れない。
オレリアンが続けて、
﹁宮廷魔道士に見てもらったら、火や風よりも光に対する特性が上
らしくて、
これから頑張ればかなりの光魔法が使えて、
剣とあわせれば魔物も簡単に切れるんじゃないかって、言われたん
だ。
お父様も、お兄様もすごく喜んでくれて、俺、頑張るわ﹂と息巻い
ている。
377
ふーん、あのあと、宮廷魔道士数名が、ショックで倒れたとも聞い
たが、
良い方向にジルベールの効果が出た人もいるようだ。
まったく、この数日、悩ませてくれる。
﹁良かったな﹂と一言言うと、
﹁いままで何をやってもどうせ兄さまに勝てず、
このまま爵位すらも無くなるのだとやる気が出なかったが、おれは
やるぞ。
伝説のレイブリング将軍を目指す﹂
と言って、訓練場に行ってしまった。
大丈夫かあれ?
頑張りすぎて、倒れるなよ。
それにしても、目下の悩みは第1王女の相手だ。
かぶってるのに、どうするんだ。
そして、私の事も。
シドニアに行くしかないのか?
378
4.23 ルカ・ラルクバッハ3
その日の夜、決めやすいほうから議論が行われた。
当然のようにマリアの婚約者はジルベールで決定した。
そして問題の第1王女。
スザンヌも、この少年を選んでいる。
通常、婚約者を複数持つなどありえない。
しかも相手は伯爵家の長子。
王は、どうしてもスザンヌを他国に出したくないし、スザンヌの要
望をかなえたいとごねた。
それはものすごいごね方だった。
王妃に、政務でもこういうことがあるのか聞いたら、ここまでごね
るのは初めてだと。
ものすごい親ばかだ。
それならマリアではなく、スザンヌとジルベールを婚約させマリア
の婚約者を変えればよいと言ったがそれではマリアが泣くじゃろ
と。
なんとかジルベールに2人ともくっつけれられないかと。
その場にいた、2公爵から、たかが﹁右目﹂﹁左目﹂が金眼で、ど
379
うしてそんなに。
と言った直後に、お互いが異なる目の色が金と言った事に、何を言
っていると突っ込む両公爵。
結局、王からあれは両目が金だと伝えられ、ハイルデン公爵とアレ
クサンドロ公爵は驚くも王やスザンヌ王女の拘りに納得した。
会議は長引いたが、遅れて来たメルミーナ様があっさりとそれを解
決した。
本来は、自分の後継者5名の候補者を競わせ公爵を決めるつもりだ
ったが、比べるまでも無い。
すでに解っている能力値から、現段階でジルベールを後継に指名す
ると決定した。
そうすれば、公爵位を持つ者は、妻を2人とれる。
めったにあることではないが、最初から婚約者を2名立れば良い。
王は3人の妻を娶れるが、王ですら同時の2人の婚約者を立てるこ
とは無い。
あまりに強引。
しかし、そんな前例の無さなどもう知らず。
決まったと話は次へ。
なぜか、そのまま話は未来へと。
3公爵が、生まれる子供の取り合いを始めた。
話が発散したから、これで中断。
380
次の日に、再度確認の場が設けられたので、意を決して聞いて見た。
﹁それほど優秀なら、公爵位ではなく、王位継承権を1位にしない
のか?﹂と。
するとメルミーナ様が
﹁そもそも、あれを王にすると他国の動向が不安じゃ。
他国側が、危険を感じて攻めてくる恐れもある。
じゃから王への推薦はしない。
あれには、そのような教育もしておらんし、心構えも持っておらん。
意思や思考は、年齢どおりではなく、すでに大人と同じだ。
将来に対しても、かなり考えておる。
しかし、王を支える教育をしてきたせいか、王なぞ興味も持ってお
らんぞ。
そもそも、あれの性格は、王には向いていない。
あれは、誰もかれもを全てを救いたがる。
その辺は子供じゃが、恐らくは変わるまい。
まああえて言うなら宰相もむいてないがな。
確かに、才能はすごい。
空間魔法も使いこなし、領地では新たな産業を起こし、
民の生活を向上させているが、どちらかと言うと研究者じゃな。
文官の中の研究所にいる連中と全く一緒だ。
本来は、あやつは研究所にこもるタイプじゃ。
だが、多方面の能力を発揮させるには宰相の地位がよいじゃろう。
本来の宰相としての仕事は、副宰相がやれば良い。
まあ、あれが宰相であれば、国民は幸せになれそうじゃ。
気をつけんと、国と国の駆け引きなんぞ、まったく興味を持ってお
らん。
やらせると大胆に攻めるかもしれんが、周りが、そしておぬしが王
として情勢を見極めんと行かんぞ。
381
宰相に据える時は、周りの体制を少しかえる必要がある。
副宰相にマクシミリアン王子を置けば、丁度良いのではないかと考
えておる。
あと、王弟と言う役職を与える方法もある。
まあ、いろいろ手はあるが、王の後継は殿下以外にはおらぬよ﹂
ながい説明がありましたが、解ったような解らないような。
メルミーナ様からは、ジルベールが宰相、あるは王弟となった時の
私の役割も説明してくれた。
しかし、かなり難しい。
要するに、国内に古竜に匹敵する魔法兵器を抱えているわけだ。
意思の疎通が取れる分、古竜よりはマシ。
他国と上手く交渉して、ジルベールがもたらす益を国民に配分する
のが役割。
そして、ジルベールがいなくなっても機能するように仕組みを作る
ことも必要。
マックと一緒になって、国を作れ、一人で何から何までやるもので
はない。
成人するまでの準備期間はあるから心配するな、と言われはしたが
いろんな意味で不安でしょうが無い。
結局は、自分で確認するしか無いようだ。
ジルベールは婚約者に会いにちょこちょこ王城に来るらしい。
機会があるたびに私も声をかけて、会うようにしよう。
私の専属侍女の妹が第2王女の侍女の中にいる。
382
なのでジルベールからの情報を流してもらうようにして貰った。
ジルベールは毎週、週末に王城に来るようだ。
昼か、夜の食事は、王城で一緒になる。
2妃様が客間を変更して、ジルベール専用の部屋にしていた。
これは、非常に特別なことだ。
公爵家となる教育を、ここでもするだと言っていた。
なので、これからは良く泊まりに来ることになるらしい。
しかし、ジルベールが来るたびに、私も話をしようとするが、予想
外に第4王女がジルベールと遊んで欲しいと駄々をこねる。
お兄ちゃんと遊ぶと言って聞かない。
同じ年なら、フィリップもいるのに。
フィリップとは、そんなに遊んでいない。
なぜか、第4王女は、ジルベールが非常にお気に入りのようだ。
そのせいで、私はあまりジルベールと話ができない。
女とは、その年でも敏感に優秀な遺伝子をかぎ別けるものなのか。
そしてそれを見て、王が3人も娘はやらんぞと警戒している。
毎週の様に、スザンヌ、マリア、シュミットがジルベールにべった
りで、ジルベールと王の攻防が繰り広げられる。
まあ、見ている分にはなかなか面白い。
最近、母の1妃は、ジルベールが泊まるたびに配属する侍女の選別
を楽しんでいる。
383
可愛い系が終わったから、次は、巨乳系ねとか、言ってるのが聞こ
えた。
フィリップと同い年なので、やることが一緒なのだろう。
私も、10歳の頃にやられたあれかと、思い当たる節がある。
ジルベールは、年に似合わず大人と同じような事を考え、しゃべる
が女性の扱いは年相応。
どちらかといえば苦手なようだ。
なので、この王妃のお遊びは、将来役に立つだろう。
これも王家に連なる公爵家なら、超えねばならぬ道だ。
がんばれジルベール。
384
4.24 ルカ・ラルクバッハ4
そして、夏休みの前に、侍女経由で情報が来た。
王女2人が夏休み中の3週間、クロスロード家の領土に遊びに行く
らしい。
そして、双子の片割れ、第2王子マックとその婚約者アナスタシア
も一緒に行くらしい。
領地に、夏の避暑地として使えるホテルを建てたが、
今年は練習と称して、一般客を泊めないので、空いているらしい。
王族が泊まれるほどでは無いが、夏の避暑地にもなっているので、
どうですかとのお誘いだ。
王が、どうやら領地にレイブリング元将軍がいるので、折角だから
鍛えてもらおうと言い出した。
フィリップは、公務の予定も無かったので、行くことになった。
なんと羨ましい。
私は、すでに公務が入っており、3週間全部はいけない。
いろいろ調整して、なんとか最初の1週間だけ、メンバーに入れて
もらえた。
そして当日の移動をどうするのかと思ったら、2回の転移で全員が
移動できた。
とんでもない魔法だ。
私は、1週間のうちにいろいろと吸収したかった。
385
剣の技術や、魔物との対戦方法はレイブリング元将軍が教えてくれ
た。
これは大変有益だった。
王城の先生や、学校で教えてもらってはいたが、レイブリング元将
軍の生きた知識は大変すばらしかった。
弱点についても、どの様に攻撃すれば良いか、剣での切り方なども
含め、丁寧に経験がなせる業を幾つも教えてもらった。
しかし何よりも驚いたのは、ジルベールからの魔法の説明や、魔力
操作の訓練だった。
内容も非常に画期的だった。
それは、今の学校で教えている方法と全く異なる理論だった。
そこで解ったのは、ジルベールは、全属性の魔法が使えること。
魔力を可視化でき、魔力と言う普通は見えない物を見ていることが
解った。
そして、その魔力が見える力を使って、魔法学を根本から変える新
しい考え方を説明してくれた。
どれもはじめて聞く話ではあるが、実際に幾つか系統別に試してく
れると
ジルベールの理論が正しいとしか思えない。
結果、それを理解すると、自分の魔法の結果も格段に威力が上がっ
た。
そして魔力操作の訓練で総魔力量が格段に上昇する。
ジルベールが幼い時から一緒に訓練をしているエレノア、ニーナの
総魔力量もすごかった。
すでに、宮廷魔道士とは一桁異なる総魔力量があった。
すでにマリアもそのレベルに達している。
386
同じように、その親のクインと言う魔法使いは、その昔宮廷魔道士
を落ちたにも関わらず、
現状、エレノアと同じく、宮廷魔道士の10倍はある総魔力量に、
魔法力もかなり強かった。
おそらくジルベールの訓練方法を試せば、現在の魔道士は皆10倍
近くまで強く慣れるのではないだろうか。
ただし、訓練の初期に、ジルベールから魔力の可視化によって、自
分の魔力操作をきちんと指摘してもらい、思いと、実際の違いを修
正してもらわなければ難しい。
元々、大魔道士と呼ばれた過去の偉人達は、偶然、この方法にたど
り着いたのではないだろうか。
見えないものを他人に説明したり、指導ができず、
この方法がきちんと書籍に残されることが無かったのだろうと推察
される。
まあ、結局は、ジルベールに気に入られ、
最初に能力を伸ばしてもらうことをしてくれれば、あとは伸びるの
だ。
全員は無理だが、徐々に増やしていくことは可能かも知れない。
これは、戻ったら王に言うべきなのだろうか。
しかし、新しい魔道学説を変更するのは難しい。
理論の証明に老人達がうなずくと思えない。
しかし、いずれこの新しい理論は世に広まる。
まずは、国内で広める必要がある。
しかし、これらはゆっくりと、そして絶対に成功させなければなら
387
ない。
戻ってからの私の仕事も多そうだ。
そして、約束の1週間が過ぎ、予定していた公務をこなさなければ
ならない。
当初は、これで終りの予定だったが、1人で訓練を続けるよりも、
1日でもレイブリング元将軍の指導、ジルベールとの訓練に参加し
た方が良いと感じた。
次に何時教えてくれるか解らないのだから。
チャンスは逃すべきではない。
結局週末だけ、参加させてもらるように手紙を書くと、指定した時
間にジルベールが王城内の教会に迎えに来てくれた。
ジルベールと話をすると、ルカ王子と言ってくるが、妹二人の婚約
者だし、
と呼ばせるには、相手が規格外すぎて恐縮する。
フィリップと同じように自分の事を兄として呼んでもらいたいもの
だが、
ルカにい
まあ、もう暫く親交を深めてから呼び名を考えるか。
しかしそれにしても、この距離を簡単に移動できる空間魔法の使い
手はすごく便利。
現在の、王宮魔道士の中で空間魔法が使えるのは3名。
そのうち若手は1名だけ。
彼の移動距離は、見える範囲の移動や、長くても王都内と聞いてい
る。
それでも魔法の天才と言われて、もてはやされていた。
388
まあ、この転移魔法を聞けば、そのプライドはずたずただろう。
しかし、この1名でも鍛えてもらえれば、
彼を使って移動できるようになるのだろうかと期待する。
今度、ジルベールに教育を頼んでみよう。
389
4.25 襲撃
夏休みの3週間は、あっと言う間に過ぎていく。
最終日前日にルカ王子が戻ってきた。
そして全員で魔物狩の実体験に行ってきた。
︵もちろん、全員にマリアとアナスタシア様は含まれません。︶
魔物狩りは順調で、帰ってからの夜は大宴会だった。
主に騒いでいたのは家の兵たちですが。
そして、それぞれ反省する点を確認し部屋に戻り寝た。
明日は最後なので、個人の伸ばす点などを確認し昼食後に王城へ戻
る予定だった。
その夜中。
ふと不穏な気配を幾つも感じる。
私は飛び起き、待機していた兵に全員を起こすように通達。
宴会をした割にはさすがに王子王女の護衛と意識していたからか、
酔っ払いはいない。
あいつらは、宴会なら水でも酔える。
なら、ずっと水にして欲しいものだがそれはダメらしい。
レイさん、エイミーに状況を伝える。
およそ100人ほどの気配を感じる。
その中には数名の魔法使いもいるようだ。
390
皆を起こし館の1階中央に退避メンバーを集める。
スザンヌが自分も戦うと言うが、
第3王女の聖女、誘拐を狙っている可能性がある。
最大戦力の一つのスザンヌがマリアのそばにいてこの場を守るよう
に説き伏せる。
そして、私の家族も守って欲しいとお願いした。
同じく、フィリップ王子とグレン様も残す。
お母様、アメリ、アナスタシア様や侍女達を中心に、
スザンヌとマリア、フィリップ王子とエレノア、ニーナ、グレン様
とクインをセットで三方にいるように指示した。
そして、全体にマリアが結界魔法を張る。
エイミーには太郎とセットで先行してもらった。
強いのは相手にせず数を減らすように指示。
こちらの夜番の30名の兵士に
﹁相手は全部で100名だが、恐れることは無い。
私とエイミーで半分にするから残りを頼む。
マクシミリアン王子は、索敵能力が高いので、
6名の兵を率いて屋敷の最終ラインで突破組みを各個撃破。
ルカ王子は、レイさんと一緒に前方で迎撃﹂と指示を出す。
そしてレイブリングさんから兵達に最後の指示が。
﹁良いか、相手が3倍の人数でも問題ない。落ち着いて対処しろ。
3人一組で屋敷の8方向に分かれて撃退しろ。
そして、良いか! 余計なプライドなど持つな。
敵1人に2名以上で対応しろ。勝ちの条件は単に殲滅ではない。
皆が生き残ることだ、生き残れ。多少の怪我はあとで治せる。
とにかく死ぬんじゃない。
391
周りと協力する事。では行け!﹂
相手は、塊ではなく、ばらばらに攻めて来る。
魔法で一気に殲滅ができないので、守りにくい。
私の苦手な防衛戦。
圧倒的に兵の数が違うが、先手をとって最初にどれだけ減らせられ
るか。
私が外にでると、すでにエイミーたちの戦闘が始めっていた。
屋敷の周りに張った結界に魔法が当たるのが解る。
私は、結界への反応と、索敵で見つけた魔法力の多いところに向か
う。
最初に攻撃をしてきた5名の魔法使いを発見し、戦闘が開始。
魔法使い5名にその護衛10名。
良かった、ここはある程度固まっている。
そして、エイミーは、前線で30名前後を相手にしている。
残り50名が屋敷に向かっているようだ。
時間をかけることはできない。
とりあえず、得意の水龍や、フェニックスの魔法をバンバン放ち、
15名の部隊を沈黙させる。
残っているのは1人の魔法使いだけだ。
どうやれ魔法攻撃無効の結界を持っているようだ。
それでも、私の水龍は、水と土、石が混じった物理攻撃もあり、ノ
ーダメージではない。
392
時間をかけたくないので、残った魔法使いは、剣で切る。
折角の優秀な魔法使い、説得して仲間にしたかったが今はそういう
ことを言っている時ではない。
残念ながら、生の保証なしで、切り倒す。
15名、全員が沈黙したのを確認後次に魔法力の高いポイントへ。
2名の魔法使いを発見し、水龍を放った後に剣でとどめを刺す。
次のところへ向かい、合計20名を倒す。
気がつくと、最前線の敵が屋敷に入ってしまったのが解った。
慌てて屋敷に戻ると、スザンヌが聖剣を出し1人倒したところだっ
た。
グレン、フィリップ王子もそれぞれ応戦していた。
クインとエレノアは魔法を撃っていた。
フィリップ王子と戦闘中の兵士にニーナがヌイグルミを操って足元
で蹴りを入れてた。
ここで余裕は見せない。
相手が爆発の魔道具を持っている危険性もある。
神格化を発動させ時間魔法も使って一瞬で殲滅する。
屋敷の外でまだ応戦しているのですぐにそちらに向かう。
フェニックスを数発撃ち、そこも沈黙させる。
最後に正面。
乱戦になっているので魔法が使えない。
393
とりあえず味方に回復魔法を使って体制を整える。
エイミーが戻ってきたので、挟み込んで残りの敵を倒す。
最後に、マクシミリアン王子と2人で索敵を全開にして残党を探す。
付近には敵はいない。
屋敷のメンバーも無事だった。
こちらの損害も殆どない。
重傷者1名に回復魔法を使って全員の無事を確認した。
生きている敵が何人かいたので捕縛し尋問をする。
前回同様、情報は聞き出せない。
明日、生きている人を王都へ連行し専門家に任せることにした。
突然の魔法の爆発音で、離れた領主館近くにいた兵士が馬で集まっ
て来た。
結局、そのまま寝ることはできず皆で片付けを開始。
マクシミリアン王子が、結構頑張っていたと兵から報告があった。
魔物退治のときから索敵能力の高さは際立っていたが、今回は非常
に役に立った。
たった6名で、裏からの侵入を全て各個撃破し、進入を阻止した。
今回は小隊長としては非常に有能であった。
マクシミリアン王子は、双子のスザンヌ様が持っている魔力可視化
の能力はないが、
代わりに魔力察知の能力が高い。
風魔法の能力も高く、暗部として高い能力を発揮しそうだ。
394
そして、その能力はまだまだ伸びる。
マクシミリアン王子も自分の成長の方向がわかったようだ。
ちなみに、マクシミリアン王子は、帰るときに私に自分の事をマッ
クと愛称で呼ぶようにして欲しいと言ってきた。
そしてマクシミリアン王子は、私の事をジルと呼ぶようだ。
マクシミリアン王子の名前は長かったし慣れれば呼べそう。
でも、ハンバーガーを連想するけど大丈夫かな?
朝になり、状況を一回り確認したら、魔法使いが1人生き残ってい
た。
魔力を封印する魔道具で拘束し生きている人たちを集める。
襲ってきた兵の備品に拘束具複数個あったことから、
王女もしくは王子の誘拐を狙ったのではないかと推察。
そして動きから、どこかの国の正規兵が混じっている。
しかし、ここには尋問の専門家はいないのでさっさと王城に送り届
けることに。
まずは、王城に行き王に状況を説明。
あとで、生き残りを連れてくるから教会前に兵を連れてくるように
頼んだ。
そして、3回の転移で全員を転送。
ちょっと休憩したいから、午後に王女達を連れてくると連絡した。
こうして3週間の夏休みが終った。
はー、疲れた。
395
4.26 帰宅
午後になり、全員を王城へ送った。
王城では、逮捕者の尋問が始まり、王子・王女の誘拐目的であった
ことがはっきりとはしたが、首謀者はわからなかった。
今回の王子・王女の移動は、身内に近い人と王城で働く一部、王子・
王女の学校の友達の一部しか知らない。
そもそも馬車の移動も無いので、内部に裏切っている人がいるのは
確実だ。
おそらく最初の1週目で襲った人たちが帰ってこなかったので、転
移での移動を確信し、襲ったと予想された。
そこから予想するに、転移の移動を知らない人に限定される。
直接の身内は、転移を見ているので、その周りであろう。
しかし、転移移動を知らない人の方が多い。
これから、近衛による周辺調査が始ったが、あまり期待できない。
さて、王は、戻ってきた王子・王女たちの頑張りを誉めていた。
が、一点納得がいかないところがあるようだ。
それはそうだろう。
今回の旅行と言う名の合宿で一番成長し、最も強くなったのがスザ
ンヌなのだから。
なんといっても見た目は、とても可憐な少女。
国一番の美少女が騎士団よりも強いというのは納得がいかないだろ
う。
どうしても確認すると言うので、ついでにみんなの成長を確認する
事になり、
396
見合いの時にも使った練習場に赴く。
剣の相手をするのは、騎士団長。
大怪我しないようにするにも、相手のレベルが高いほうが良い。
そして、マリア様と、アナスタシア様を除いたメンバー全員と手合
わせをした。
ルカ王子もかなり強くなっていた。
マクシミリアン王子も、以前よりはかなり向上。
フィリップ王子、グレン様は、10歳とは思えないほどの腕前を披
露した。
そして、いよいよスザンヌ様。
本気で良いのかと聞くと、良いと良いので、聖剣を出して、かかっ
ていった。
当然だが、騎士団長の攻撃を難なく防ぎ、最後は、練習用の模擬剣
を叩き切った。
王様は、聖剣の存在も、その強さも、驚きで硬直していた。
﹁おとうさま、大丈夫ですか?﹂とマリア様が優しく声をかけると、
﹁どうなってる、あれほんとに娘か、それにあの剣は、光を放った
ぞ、聖剣か?﹂と口走る。
マリアが、スザンヌ姉さまは、メリーナ様からジル様の婚約者にな
ったのを祝して、聖剣をもらったのだと伝えると、
﹁婚約者になったからと、神具と呼ばれる武具を与えるって、どう
なってるんだ。
それに、武具だけの強さではない。明らかに動く前に行動できてい
397
る。先読みしているようだ﹂
それから一言。
﹁ジルベールの関係する事に常識をあてはめてはいかんな﹂と妙に
納得したのか、
スザンヌの頭をなでて、褒めちぎっていた。
スザンヌは誉めて伸びるタイプだから、良いでしょう。
王様が喜んでくれたのが嬉しかったか、スザンヌ様もの笑顔はとも
てよい表情だった。
そんな感じで、ようやくイベントが終了した。
今日は、王家の人を夕食を一緒に食べ、王城に泊まった。
また、見たことの無い綺麗な侍女が世話をしてくれる。
この城、何人侍女が居るんだろ。
それも揃いも揃って美人ばっかり。
次の日、帰りに、王都の雑貨屋の状況を確認して、領主館に帰った。
家に泊まり、起きる。
そして、朝、その時に、またまたとんでも無いことが発覚した。
なんと、なんと。
妊娠発覚!!
398
4.26 帰宅︵後書き︶
誰が妊娠したんでしょうか?
もちろん、王女じゃないよ。
ジルベールは、清い交際してます。
399
4.27 妊娠︵前書き︶
エイミーじゃないよ。
400
4.27 妊娠
次の日の朝、食堂に行くと、以前どおりの人数に戻った。
おかあさま、アメリ、レイブリング、エイミーに私、
ヘイゼルさんクイン、エレノア、ニーナ、ナンシー。
合計、11人。
小さい頃に比べれば人数が増えた。
ン? あれ、10人しかいないのに、11の気配? そこにトシアキが来て、あトシアキか、これで11人。
気配が あれ12。
感知能力に集中すると、アメリのところで気配が重なっている。
明らかにお腹の部分でもう一つ何かがいる。
私は驚きいて、大きな声を上げてしまう。
皆も私のほうを見るが、私は、突然の事で、整理ができず、とりあ
えず、庭に出た。
深呼吸。
庭師のジジを呼んで、花束を作ってもらう。
そして急いで食堂に戻る。
401
皆、何があったか私を見るが、そのままアメリの方に行って、
﹁おねえさま、妊娠おめでとうございます﹂と言うと、アメリは、
恥ずかしそうに花を受け取る。
母は﹁は?﹂と声を出す。
エミリーは驚きで立ち上がったさいに、食器を落とした。
レイブリングさんは飲み物を吹きこぼす。
トシアキは、動きが止まる。
﹁ところで父親は、誰でしょうか?﹂
しばし答えないので、私はトシアキをにらむと、トシアキはぶんぶ
んと首を振る。
え、違うの? それ以外に、アメリと話をする男性なんかいたか?
ヘイゼルさんは、違うと言う顔、役所側で働いている人か?と疑問
に思っていると、
突然レイブリングさんが、土下座で、
﹁すまん、たぶん父親は私だ﹂と言う。
アメリは、その言葉でうなずく。
母は、小声で
﹁年配好きは血か?そんなところが似るなんて﹂と。
????
なにやら妙な言葉が聞こえたような、気のせいか。
402
エイミーは、
﹁知らなかった。そうだったのか﹂と。
﹁レイさん、エイミーと付き合ってるんじゃなかったの?﹂
するとエイミーから、
﹁いや、この人、親戚だから。それはナイナイ﹂
ちょっと待て、そういえば、レイさんの血縁関係とかぜんぜん知ら
ない。
その後、母が医者を呼び、診察してもらうと、妊娠3ヶ月。
けっこう立派に育っていた。
逆算すると、どうやら、私と母が王都に見合いに行っている時か。
問い詰めると、そうだと白状した。
そりゃそうか、アメリは普段、母親と一緒に寝ている。
隙があるとしたら、その時しかない。
その日、アメリが、珍しく酔ってしまい、レイさんが部屋に送った
まま送り狼になってしまったらしい。
レイブリングさんは、前からアメリの事が好きだったんだそうだ。
年が離れすぎているので、遠慮していたけど、
アメリが特に抵抗無く、逆に抱きついて来たので、そのまま最後ま
でと。
アメリは、レイさんが好きだから、結婚を許してくれるなら結婚し
403
たいと。
はいそうですか。
では、そう動くしかない。
トシアキは、ショックでうごかないし、
エイミーは、アメリを応援しているが、
﹁ヤベー、どこかに私の相手がいないのか、旅に出るか?﹂な
どと喚いてるので、役に立ちそうも無い。
私と母で頑張るしかない。
さて、まずは、相手のことをちゃんと聞きましょう。
っていままで一緒に住んで癖に、何も知らない。
同居前に、ちゃんと聞けよって、いまさら正論は必要ない。
いや、もちろん、お母様はちゃんと全部知ってるよ。
さあ、いまから私もちゃんと説明を聞きましょう。
404
4.27 妊娠︵後書き︶
アメリも、リリアーナに似て、年上好きです。
トシアキを平気になっては来ましたが、
そこまで年上じゃないから対象外です。
ジルベールの父アナベルも、当時のアメリにとってはおじさんだっ
たから、大丈夫だったんです。
405
4.28 レイブリング・クリュシュナーダ
さてさて、レイブリングさん、実は元アレクサンドロ公爵の末弟だ
った。
︵現公爵が40で、その父親は58。レイブリングさんは45です。
元公爵と子ほど離れてますが弟です。︶
元が侯爵家以上じゃなければ、将軍は無いのだから偉い人だとは思
っていたけど。
そして、エイミーは、現アレクサンドロ公爵夫人の妹とハイルデン
系の侯爵家の娘だった。
つまり侯爵家ご令嬢。
と言うわけで、レイブリングさんの素性から考えるとアメリの結婚
式は王都でやるしかなそうそうだ。
念のために、妊婦の転移移動が大丈夫なのか調べたら、転移装置で
王都に移動する妊婦は多いらしいということが解った。
結論:馬車より安全。
なるほど。
もちろん、事例であるのは安定期の移動。
妊娠6ヶ月で結婚式をやるのが良さそう。
結婚式は、3ヵ月後にやることになる。
さて本日、母と、レイさんを連れて王都にお出かけ。
レイさんはアレクサンドロ公爵家に行った。
おそらく数日は帰ってこないだろう。
406
母と私は、メルミーナ様の所に連絡を入れそのまま結婚式のドレス
を頼みに行く。
しかし、母とほぼ同じ体系とは言え、母で採寸する事はできないの
で、採寸する人を転移で領地に運ぶ。
最初は、転移門ですか?と聞いてきたが、転移で送ると言ったら不
思議がっていた。
私が、王女二人と婚約したジルベールと解ると納得していた。
そして、準備を行い転移。
ドレスのサンプルも持って行ったので、いろいろなタイプの中から
母が選んだのは最高級のドレス生地。
いや、母のアメリへの愛情はんぱないな。
最近その程度のドレスが買えるだけは稼いでいるので私も同意する。
アメリは、値段の桁を見て、ちょっと退いてたがそこは相手が元公
爵の弟だし。
おそらく、私の姉︵ほんとは母︶なのだから王家も来る。
今回は、妥協できないと説得していた。
装飾入れて、3000万円。
お店の人も大喜びでしょう。
さあ、今日は、頑張ってアイテムボックスを作ろう。
ちなみに、アイテムボックスでの現物払いを支払いの中に入れて欲
しいと言われました。
人気で、なかなか入手できないらしい。
王様はアレクサンドロ公爵とメルミーナ様から話が行くだろうけど、
スザンヌ様とマリア様は、私が言わないとまずくないか? と気が
つく。
407
採寸が済み、王都へ送る。
そして私は、王城へ、スザンヌ様とマリア様その母親に面会を申し
込む。
すぐに、マリア様と、王妃様方3人が来る。
スザンヌは、お友達のところにお出かけらしい。
最後の宿題を、みんなで集まってするそうです。
4人が面会室に現れ、私と母で挨拶を。
そして、姉アメリの妊娠と結婚の話をした。
マリアは、この3週間毎日会っていたのでとても喜んでいた。
アメリの事は、先にメルミーナ様から連絡が来ていたらしい。
王妃様方は、メルミーナ様からの情報は聞いていたが、
相手がレイブリングと聞き、元将軍で、元公爵の弟。
アメリの年と、レイブリングの年を考えかなり驚き、
間違いでは無いかと、私たちの口から直接聞こうと思っていたそう
です。
さて結婚式には、私の婚約者としてスザンヌ、マリアの参加は当然。
そして、王妃さまから、大聖堂の予約をする事を提案された。
大聖堂での結婚式は、侯爵家以上で使われる。
レイブリングさんは伯爵位だが、公爵家の関係者なので大丈夫だと
か。
おそらく参加者として公爵、もしかしたら王様も参加する可能性が
あるので、
王妃様が、大聖堂の空きと、王様の予定を合わせて日程調整したい
と提案された。
408
アレクサンドロ公爵とメルミーナ公爵にも王妃様から話を通すと言
われました。
お母様が、大変喜んだので、ありがたい申し出だとお願いしました。
それと、婚約者のドレスは、私が用意したいと言ったら、
王妃様から、国の行事への参加ではないので国費を使わない方が好
ましい。
ドレスを買ってくれると助かると。
ただし、店は指定した所でと言われた。
国費を使わない方が良いとの事でしたので、王妃様、他の王女・王
子の費用も出しますと言うと、
怪訝な顔をされましたが、お母様が是非と、お願いし了承されまし
た。
店は、王宮指定の幾つかの店がリストアップされており、
先ほどアメリのドレスを頼んだ店もあったので、そこを第1候補で
行くことになった。
次の休みに行くことになり、朝には迎えに行く約束をして王城を出
た。
そして、そのまま先ほどの店に行き、休みの日に王妃と王女が来る
ことを連絡し特別室を予約してきた。
︵本来は、店が王城に行くのが普通ですが、人数が多くなると、持
って行くドレスの種類が減ってしまう。
でも、いろいろ選びたい。
私がいれば、護衛も必要ないからと店に行くことになりました。
いざとなれば転移で逃げれば良いからと。王様も気楽に外出を許可
してくれました。︶
翌日の夜に、メルミーナ様と会う約束ができたが、会う場所がアレ
409
クサンドロ公爵家だった。
指定された時間より少し前に着くように移動し公爵家に入った。
予想通り、いつもの格好ではなく、かなり上質の服を来たレイさん
が待っていた。
アレクサンドロ公爵とは、何度が会っているが、対面で直接話をす
るのははじめてかも知れない。
お見合いの時には、結構嫌われていた感があったし。
しかし今回は、非常に友好的だ。
すごく友好的だ。
しかもアメリの年を聞いて、レイさんに羨ましいなと突っついた姿
を見ると、
先日の厳しい私への突込みをした人と同一人物とは思えなかった。
それは、それ、とりあえず今後の事の話も必要。
メルミーナ様が言うには、レイさんは公爵家の爵位は受け継いでい
ない。
将軍時代の功績で、クリュシュナーダ伯爵位をもっているが領地な
しの爵位だけであった。
また、私は将来的に公爵となり今の領地を出るのは確実。
そこで、成人とともに、レイさんが今の領地を受けつげば、
アメリが慣れ親しんだ土地を出る必要がなくなるが、どうだと?
領地なしで、王都に移動する事もできるが、その場合はレイさんに
は軍に復帰してもらう。
どちらが良いか、家族で話し合うように言われた。
とりあえず、結婚反対と言う考えは全く無いようだったので安心。
410
レイさんは、一緒にいる仲間、食も考えると今のところが良いと思
っていると言った。
食い気? とは思ったが、それは大事ですよね。
目下の問題は、逆に私が家を出るということがどういう事かを今こ
の瞬間に理解してしまったことだ。
そうか、私は、家を出るのか、公爵を受けつぐってそういうことか。
はっきり言おう、今の私は人のことより自分の事。
やばいぞ。
何よりも優先は、自分の食。
そうだ、食だ!!
メルミーナ様の今住んでいる公爵家、そしてその領地。
日本食、食べれるのか?
まだ数年あるんだ。
自分が困らないように、メルミーナ様の領地に食材を植えないと。
あれ、でも、最悪ご飯だけ転移で食べに家に帰っても良くないか?
おー、私には転移がある。
そう考えると少し落ち着いてきた。
はー、びっくりした。
411
4.29 衣装をそろえる
アレクサンドロ公爵家に行った次の日、王妃様から大聖堂での結
婚式の日取りが決まったと連絡が来ました。
王様も出席される予定。
結婚式の後の披露宴は、後見人であるアレクサンドロ公爵家が費用
負担する。
参加に関して、王家のドレスの費用を払うつもりと話したらメル
ミーナ様が払う事になった。
私に関する費用は、メルミーナ様が払うと言ってくれました。
エイミー、クインとその他は、私が支払うことでようやく合意しま
した。
そして、レイブリングさんを連れて家に帰る。
家に帰ると、結婚式の準備を開始。
領主館からの参加者を人選をする。
男女含め、10名を選び、明日服を買いに行くことに。
そして、休みの日。
王城へ王妃・王女を迎えに行き、王家の馬車でお出かけ。
王妃様3人と、王女4人全員で移動。
1妃様と王子3人の服はアレクサンドロ公爵が支払うと言ったそう
だが、
412
王妃様のドレスは、全員一気にそろえないと不揃いになるので、こ
こで一気に揃えることにしたそうです。
王子3人は、別の店でアレクサンドロ公爵が払うそうです。
ちなみに、第1王子のルカ王子の婚約者は、サフィーナ様と言うと
ても綺麗な人でアレクサンドロ公爵の娘です。
話に出ませんでしたが、王様の服はどうするのか?
国儀の場合は、王様、王妃様は決まった服を着るそうです。
王様は、国儀でなくてもあらかじめ決まった礼服から選ぶそうです。
一着が非常に高価な服らしいのでそうそう毎回作ることは無いそう
です。
魔法の攻撃を防御するなどとても高価なものなんだとか。
普段は、ドレスを作る場合、衣装屋が王城に来ることが多いそうで
すが、
今回は全員分だったので、持込が多すぎて、衣装屋へ行ってます。
今回の様に、全員分を一気に作ることはあまり無いそうで、
国儀の場合は、王妃1人が選ばれて参加する事が多いそうです。
さて、衣装屋へ着くと、ドレスは、結婚式、披露宴、夜会とあるの
で最大3種類作ります。
王女の社交デビューはまだ先なので、今回、夜のドレスは要らない
と言ってました。
ドレスを作っている間、私は暇です。
これどう、などと王女から聞かれるけど、正直、どれを着ても皆天
使にしか見えない。
413
スザンヌ様は薄い緑系、マリア様は薄い青系のドレスに決まった。
あとは、装飾品だが、これはすでにあるものを使うらしく、今回は
選ばなかった。
私は、暇なときに、デザイナーの人と話をする中で、
セーラー服のような物が無いのか聞いてみたら、学園ではセーラー
服といわれる制服が無いそうです。
男子は、黒の制服で軍服のようなもの。
女子は、普段は汚れにくい茶のワンピース。
デザイナーの人から、セーラー服とはどんな物なのか質問されたの
で、
簡単に絵で書いたら、マリアが見て絵を少し修正をしてくれた。
マリアとスザンヌに欲しいか聞くと着て欲しいなら着るという。
この店には生地もなかったので領地の服屋で作る事にして、
デザインを持って帰りお抱えの服屋に頼んだ。
マリアもエレノア、ニーナに会いたいと言ったので、
服ができたら子供だけのお茶会を開いてお披露目しようと言うこと
になった。
私が、領主館に帰ると、部屋変えがあった。
レイブリングさんを主人部屋に移して、アメリが妻の部屋に。
リリアーナ母様は、昔のおばあさまの部屋に行ったが、アメリが寂
しいからと、
ベッドだけ、アメリの部屋にも置いた。
妊娠中の心のケアが必要だし、まだ結婚してないのにレイブリング
414
さんとずっと2人なのは怖いらしい。
相変わらず、アメリは、母様にべったりの甘えん坊です。
母様も、頼られるとアメリのことはすぐに甘やかします。
私は、少しだけ羨ましく思いましたが、前世の影響か、未だそれほ
ど母を必要としない。
亡くなったおばあさまは、大好きで結構べったりだったけど、若い
女性に甘える感覚は無いようだ。
あれ?
もしかして年配好き?
いや、それとは違う。
スザンヌ、マリアも好きだ。
あー、母と認識するのが、前世の年齢加算かもしれないしれない。
きっとそうだ。
415
4.30 魔法陣の専門家︵前書き︶
夏休み前の補足
416
4.30 魔法陣の専門家
これは、夏休み前の話も含まれます。
公爵位を受けつぐ事が決まってから、婚約者であるスザンヌ、マリ
アに会いに王都にきていましたが、ちゃんとメルミーナ様の家にも
通っています。
行くのはデートの前日。
メルミーナ様の家には、文官の開発室で研究された文献が沢山おい
てあります。
各公爵家が持つ専用の図書館に文献が残されています。
ハイルデン公爵家には、武器や戦争に関する文献が、アレクサンド
ロ公爵家には、魔法に関する文献があります。
メルミーナ様の所は、生活、建築、水道、下水など様々な文献が眠
っている。
当然、必要に応じて魔法も組み合わせた資料もある。
それらの文献を全て読むと、人生数回分の時間がかかる。
なので、メルミーナ様のところの文献は、幾つかの分類で区分けさ
れている。
まずは、使える、使えないに。
使えないの中には、将来に期待、将来も使えない。となっています。
417
ちなみに将来も使えないが7割です。
使える技術が1割、将来に期待が2割。
それぞれの中は、人別に整理されている。
使えるの中から数個の良い内容を見つけ。
人名で使えない側の中を探す。
その中には転生者と思われる文献もある。
例えば、馬車のサスペンションや、自転車、魔道車両。
これらの問題点は幾つかありますが、一番大きい要因は、鉄の強度
不足。
この様に異世界の技術が突然出てくるのですが、どれもこれも一部
の技術が不足していて実現できないものばかり。
この世界は、現代日本の技術を全てそのまま使うことはできません。
鉄の精製にしても、魔法を使います。
なので、科学の一部を魔法を使う技術に置き換えなければいけませ
ん。
その変換がうまくできず、昔の転生者の設計図がそのまま使えない
ようです。
文献には、そういったすごい技術だけでなく、ちょっとした小技と
かもあったりします。
418
これらも、同じ転生者と思われる人の文献を探すと掘り起こせます。
ここから、指紋の採取や食器の汚れの落とし方などが掲載されてい
ました。
そもそも指紋が人によって異なることが証明されていないので、
指紋を取ってどうするという根本的な問題があるわけで、この人も
かなり抜けてますよね。
まず、普通に指紋を押してもらって、指紋が異なる証明をしてから
採取を出せば日の目を見たのに。
その文献のだいぶ後の文献に、ようやく指紋が人によって異なると
言う調査結果があった。
これらは、残念ながらばらばらに行われたので技術が結びついてい
ない。
指紋が異なる文献を書いた人は、押して区別をする事が可能と言っ
ている。
資料が多すぎるよな。紙だから検索できないし。
さて、この不足した技術についてだが、最近私の特殊召還はレベル
アップと共に地球の知識を検索できるようになった。
それによって、一部の技術が解決の方向に向かえそうだ。
昔は特定の種、その育て方だけでしたが、今は醤油の作り方味噌の
作り方など、
特定の内容を検索しその方法が書かれた紙を召還できます。
もちろん、この検索には大量の魔力が消費されます。
おそらく検索中にあちらの世界と繋がっているのではないかと思わ
419
れます。
そこで、鋼鉄の精製技術や、ばねの精製技術を召還しサスペンショ
ンに不足している技術を補います。
召還した文字は日本語なのでメルミーナ様のところの文献と合わせ、
新しい設計図や精製方法をこちらの言葉で書き上げ、領地内に持ち
帰って指示を出しています。
もちろん精製技術は、土魔法を中心とした魔法技術を使う方法に書
き換えています。
ただし、実際には試行錯誤の研究が必要で図面ができたからすぐに
実用化されるわけではありません。
こういった魔法をあまり使わない技術は、メルミーナ様のところの
文献から調べることができますが、
やはり魔道具を作るための基本となる魔法陣は、文献が無く、
アレクサンドロ公爵家の図書館を使いたいのですがいまはメルミー
ナ様からも止められ、
なかなか調べることができない状態でした。
そこに、突然魔法陣の専門家が領地にやってきました。
ロジクールと言う名の宮廷魔道士です。
なんと、1妃様からの紹介だそうです。
そういえば、お見合いの時に、魔道具・魔法陣の専門化が欲しいと
言う話をしたな。
忘れてたけど。
ラッキーです。
420
1妃様感謝。
さて、到着した彼のスキルを鑑定で確認したらメリーナ様の加護中
があった。
そこで、転生者なのか訊ねたらあっさりとそうだと認めた。
あちらも、アイテムボックスを見ておそらく転生者が作っていたと
思っていたようでした。
彼の調査で解ったのは、私の召還魔法の魔法陣は、古代語で書かれ
ているとの事でした。
命礼式は、古代語でも現在の言葉でも問題ないそうです。
彼独特の見解ですが自分のイメージに合わない場合は、漢字でも、
英語でも、何を使っても魔法陣の効果は発動するそうです。
結局、魔法同様に魔法陣も術者のイメージが大事。
万人が使う場合は、共通語が良いそうです。
実際にアイテムボックスに使っていた魔法を固定化する魔法陣は、
一部が古代語、一部を共通語を上書きし、上手く発動していました。
それを、全て共通語または日本語で作って見たら、私は日本語の方
が効果が高く他の人は共通語の方が効果が上がりました。
また、難しい命令式は魔法陣を複数枚重ねることで1枚に詰め込む
必要もないそうです。
転移機能付きのアイテムボックスは、元々セキュリティや、中身の
確認をするために、
複数枚使ってはいるが、ばらばらの位置にセットしていたので連携
421
の効率が悪くなっていたようです。
改良すると、魔石の消費が減り、色の変化だけでなくブザー音も出
せるようになりました。
そして、一定量の魔法力を蓄える効果を持たせる魔法陣を組み込み、
さらに、持ち主からも魔力が供給される魔法陣を重ねます。
それを、重ねることでかばんに虚無空間の効果をつける事ができる
ようになった。
これは、かばんをかけている間は、所有者から魔力を貰い体から離
してる間だけ、魔力を溜めた水晶から魔力を使う。
さらに消費した魔力は、かばんをかけている間に所有者から供給し
再び水晶に溜めておく。
魔物を退治するときに、リュックとして持っていくことができるの
で小隊での討伐で輸送力がかなり向上した。
サンプルなので、空間拡張タイプのアイテムリュックと虚無空間を
与えたマジックリュックの2種類があります。
空間拡張タイプの方が魔力消費が格段に少ないのですがマジックリ
ュックでも一般人で十分魔力消費に耐えられるようなので、今後は
マジックリュックタイプにしようと思いました。
もちろん作る時の魔力消費は、マジックリュックの方が多いけど、
討伐中に魔物の血抜きをしなくても良いなど、目的からしても格段
に使い勝手が良い。
今後は、取り出し口をさらに改良しもっと小さいものにしたい。
その他にも、魔道具を幾つか研究している。
例えば、遠征の時に火を使ったコンロなど、調理系の器具ができて
きた。
現在は、キャンプ用の簡易テントとして虚無空間付きの毛布に、数
422
人が泊まれる小屋を格納。
その小屋には、一連のベッドや料理器具などの備品をいれたままに
できるか、
それをスムーズに出し入れ、そして平行に建てれるか研究をしてい
る。
空間魔法は、通常空間を使う場合と、虚無空間を使う場合の2種類
があります。
通常空間を使う場合は、持っている空間を拡張して使用します。
倍率によって魔力が変わります。
それともう一つの時間停止を持つ虚無空間は、必要な空間の大きさ
を与えます。
与える大きさで魔力の消費が変わります。
薄い毛布に、家をしまいこむ場合は、通常空間の拡張ではなく、虚
無空間を与えれば出来るわけです。
種類を変えれば、いろいろ出来る。
作るときに、魔力消費量が多いほど維持の魔法石も多い。
できれば、しまいこんだ後は維持の魔石を使いたくない。
そいった、効果を与える魔法陣の研究を急ピッチで進めています。
リュックぐらいなら作れるけど家をしまい込む魔道具については、
単に空間を大きく与えるだけでは実現できません。
アレクサンドロ公爵家の図書館に行けば、何かアイデアが埋もれて
そうなのですが。
そちらは現状はつてが無く、若干あきらめムードでした。
そして、レイブリングさんの結婚で、急にアレクサンドロ公爵家と
も仲が良くなり、
423
一気に解決に進みます。
424
4.31 セーラー服を着た少女達
領地の服屋に注文し、数日で王女たちのセーラー服が出来上がった。
時同じくしてナンシーの新曲も出来上がった。
ついでに私が、それっぽい歌詞を付けてみた。
エレノア、ニーナにセーラー服を着せて、振り付けを教え歌を練習
しました。
エレノアと、ニーナは、私のお願いに嫌がりもせず新しい遊びとし
て付き合ってくれた。
ナンシーは、自分の曲に歌詞が付き踊れるということで、
途中で曲や歌詞を変更しながら完成させた。
踊りには、それほど難しいステップを入れていない。
今回は、可愛らしい感じを重視した。
そして王女たちのセーラー服を持って、王城に。
王女4人を前に、ナンシーがピアノを弾き、エレノア、ニーナが歌
って踊る見せた。
それを見て一緒に踊る練習をする王女4人。
シュミット様は、専用の少し簡単な踊りにした。
1日練習したら上手になったので、王様と王妃様方に披露した。
エレノアとニーナは、いなくても良いかと思ったのですが、
王女達が是非にということで2人とも王様の前で踊ることになりま
425
した。
出番前は、すごく緊張していた2人でしたが本番に強いタイプらし
く、
きちんと踊ってくれました。
さすが、我が妹。
結果、王様は、ご機嫌で評価してくれた。
そして、次の休みの女の子とその母親だけが集まるお茶会に招待さ
れたので、参加する事になった。
エレノア、ニーナの2人もセーラー服で参加する。
王妃様も、2人のことが気に入ってそうです。
ナンシーは、保護者として参加する。
お茶会は、一週間後に開催されます。
その間も、個別で練習をしてもらいました。
マイアー王女が特に気に入ったようで時間があればピアノも練習し
ていました。
特に、歌が気に入ったそうです。
スザンヌもピアノが上手かったが、マイアー王女はまだ5歳なのに、
びっくりするぐらいピアノが上手です。
また、歌も上手くて声がすごく良い。
将来は、かなりすごい音楽家になりそうでした。
6人で歌う時は、センターをマイアー王女とシュミット王女にしま
した。
私は、男性なので今回のお茶会には参加しません。
連れていくだけです。
完全なアッシー君です。
なので、お茶会の内容は解らない。
お茶会の間、侍女達の開催するお菓子試食会に招待され、そちらに
426
いました。
もちろん、領地で作っていた新しいデザートにお菓子も持参しまし
た。
このお茶会では、領地で作っている縫いぐるみやスリッパも紹介が
あったそうです。
その中で、6人で練習したダンスも見せたようです。
参加者からのあまりの好評に、2回も披露したそうです。
今後、こういう曲風のダンスも流行りそう。
現代日本風の曲やダンスも受け入れられそうな感じなんだと解って
よかった。
そして、ナンシーは、新しいイメージが出来上がってきたと言って
ます。
その後、王都の雑貨屋に、ぬぐるみに、スリッパ、セーラー服の大
量の注文が入り、
製造が全く追いつかなくなりました。
その後も、注文が減ることは無く作れば作るほど売れてしまう。
ふと、王都を歩くと、セーラー服を着ている女子を見かけるレベル
です。
柄も沢山つくったので、どうやら貴族や、上流商家の普段着として
認知されたようだ。
とりあえず、セーラー服については、メルミーナ様の領地に移して、
作る様にしました。
メルミーナ様の領地も、我が家の領地と同じように、まずは母子家
庭の婦人を中心に、
427
働き手を集めてもらいました。
そして、領地で開発したミシンを提供し、今までのドレスの作り方
とは異なる製法で製造してもらいます。
従来のドレス開発のように、一箇所で全ての工程を終らせるのでは
なく、
少し場所を別けて一人で全部作れるようにはしていません。
あえて、別けました。
セーラー服を作る場合でも、型を作るところ、型を使った布を切る
ところ、
そして、ミシンで製法するところも幾つかに分離します。
効率は悪くなりますが、このほうがノウハウが流出せず各工程も品
質が維持されやすいです。
次の工程の人が前の工程をチェックしていますし気が抜けることも
ありません。
弱い立場の人々を、助けはしますが、1人で全てが作れると、
簡単に、他所の領主に引き抜かれてしまう可能性がありそれは困り
ます。
同じように、メルミーナ様の領地に居る、魔力持ちも探し魔力操作
の訓練から教え、
アイテムボックス以外の魔道具作成もできるようにしました。
と言っても、魔法陣の作成で1人が一つの魔道具の付き一枚。
ただし、幾つかの種類の魔道具の魔法陣を頼んでいます。
内容を分散させることで、
どの様な組み合わせで完成するか解らないようにしています。
一人が全ての工程をやるわけではありません。
同じ作業を続けることで、習熟も早くなるし魔法の効果も早く高く
なります。
428
知っていて、全体を統括する人もいます。
それは、限られた信用できる人物だけ。
こうした作り方そのものがノウハウですが、それも含めて全体を把
握する人間を減らし、
なるべくノウハウの流出を防ぎ、独自性をもらせることで希少価値
を維持する事ができます。
他にも、作物も少しづつ広め、2つの領地で日本食も広めます。
こうして、セーラー服とともに、現代風の製造方法までもが異世界
に広まっていきます。
セーラー服を着た女子の歌にダンスも世界への広がりの気配を見せ
はじめています。
429
4.32 毒の混入
今日は、王家の方々を含めた夕食会に参加。
全員が揃って、スープから頂こうとした時に、
﹃ダメ!﹄という声が頭に響く。
瞬間、私は声をあげる
﹁みんな食べてはダメです﹂立ち上がり周りを見渡すとすでにシュ
ミット様が一口食べた後、急いでそちらに行く。
鑑定を使うと、やはりスープが毒入りと表示される。
鑑定は、効果が低くなるが、魔法禁止のこの場でも使うことができ
る。
ただの鑑定では無く上位鑑定だからだろうか。
不思議だ。
﹁毒です。解毒したいので、魔法を使えるようにできませんか﹂と
聞くと、
王様がすでに準備済みだった。
緊急用の、攻撃の意思が無ければ魔法を使える魔法陣を持ってきて
くれました。
シュミット様を抱いて、同じ魔法陣の中に入る。
そして、急いで水に魔力を込めて、
﹁食べた毒を体から出します。
まず、この水を全部飲んでください﹂と、シュミット様に説明する。
シュミット様は何も言わずにすぐに水を飲み干す。
その後、大きめのボールを取りシュミット様を裏返し、
口に指を突っ込み水を吐かせる。
胃の中の物を強制的に取り出すように飲んでいる水の魔素をコント
430
ロールする。
うまく行くと良いが。
吐き終ったシュミット様は、ゼーゼーと息をする。
そこに侍女が﹁食事に手をつけないで下さい﹂と叫びながら、飛び
込んできた。
私は、とりあえずその声を無視し、シミュット様に、
﹁もう一度、頑張れますか?﹂と聞くと、うんとうなずく。
そこでコップの水にもう一度魔力を込めて、飲んでもらう。
そして吐き出す。
﹁頑張りましたね。
たぶん大丈夫だと思いますが﹂
上を向いて王に﹁私は、この侍女の方に行きます﹂
と、続けて侍女に向かって
﹁倒れたのは何人だ﹂と質問すると、
﹁毒見の物が1人です。食べてから1時間たったのに先ほどから急
に苦しみ出しました﹂
﹁連れて行って﹂と歩き出した時に、思い出した。
﹁スー、君のネックレスを少しの間シュミット様にかけてあげて、
確か状態異常の軽減効果があったはず。
そして1時間様子見て﹂と言うと、スーがうなずいて動き出した。
私は、それを確認し部屋を出た。
侍女が連れいてった先に兵士が寝かされていた。
毒化と出た。
先ほどの魔法陣を敷いてその上に移動させてもらう。
兵士を鑑定で見ると状態異常
もう、時間が立っているので胃の洗浄では効果が無い。
431
毒消しがあるのかと聞くと毒の種類が特定できないと、毒消しは使
えないと言った。
魔法なら、適当に何とかなるのだろうかと回復魔法を使って見るが、
鑑定で確認すると毒の状態異常は消えない。
毒消しの魔法で﹁毒消えろ﹂と唱えても、ダメだ。
そこで、先ほどの毒入りスープ使ってスープから水を上手に分離し、
更に鑑定で見ると残った物質に毒がある。
残った粉を上手に広げ個別に鑑定を行うと、今回の毒の名前が解っ
た。
さて、再挑戦だ。
先ほど同様に回復魔法の中の毒消し魔法を使う。
相手の体全体に魔力を流し﹁毒消えろ﹂と唱えると、感覚的には効
いた感じの手ごたえがあった。
鑑定で再確認すると状態異常から毒が消えていた。
状態に、体力減少危険と表示されるので、再度回復魔法を使って状
態を改善しておいた。
その後、かなり症状が良くなった。
まだ完全ではないが、ちょうど医者が来たので状況を伝える。
息の感じからかなりの毒が抜けたようなので、医者の手持ちの毒消
しを飲ませ寝かせることにした。
それから、医者と王家の食事室に戻る。
食事は全て片付けられていたが、王家の人は全員シミュット様を囲
んで待っていた。
医者が様子を見る。
私はマリアに﹁どう?﹂と聞くと、
﹁たぶん大丈夫そうです。吐いた影響で少しぐったりしてるけど、
432
何も異常は無いようです。
すぐに胃の洗浄をしたのが良かったのでしょう﹂
もう暫くみんなで様子を見たが、大丈夫そうなので、改めて夕食を
どうするかと言う話に。
私がキープしているうどんを食べますか?
と聞くと﹁うどんって何?﹂と聞いてきたので、
﹁白い麺です。おいしいですよ。
あ、でもシュミット様は、胃が弱っているから、
うどんは少なめにしてくださいね。
その代わりおいしいジュースを出します﹂と、
マイボックスからうどんと、りんごジュースに、ハチミツを取り出
した。
魔石タイプの卓上コンロと鍋も出し、マイボックスに入れてあった
お湯を注ぐ。
魔法禁止でも、マイボックスからは取り出すことはできるし魔道具
は使える。
お湯が煮立つと、うどんを放り投げさっとゆでる。
お皿に醤油をちょっと入れてうどんを入れる。
マリア様が﹁うどんだ。うどん﹂と、前回の夏合宿で貰った箸を使
って食べ始める。
スザンヌ様もそれを見て、夏の3週間の特訓中に使えるようになっ
た箸でうどんを食べる。
王子達も箸で食べる。
それを見て、王様、王妃様はあきらめてフォークで食べる。
433
シミュミット様には、私が新しい箸をだして食べさせる。
マイアー王女も﹁食べさせて﹂と来たので﹁どうぞ﹂と食べさせる。
二人して﹁おいしい。もっと﹂と言うので交互に2人に食べさてい
ると、
スザンヌ様が来て、マイアー王女をひざに乗せて面倒を見てくれた。
シュミット様は、お腹がいっぱいなる前に、止めてもらう。
そしてジュースにハチミツを混ぜて、ハチミツりんごジュースを作
り飲んでもらう。
最後に、私が、ずずっと自分の分を食べて、出したものを片付けよ
うとしたら、
当然の様にしまえなかった。
やっぱりな。
先ほどの魔法が使えるようになる魔法陣に載り、片付ける。
この王城の魔法キャンセルは、魔法の発動を阻害するが魔法の解除
を阻害していない。
マイボックスからの取り出しは、魔法解除になるが、
そして先ほどの魔法キャンセルをさらにそれを無効にする魔法陣。
魔法の発動と終了、そして無効の無効化と言う、効果の上書き。
これは、次の魔道具作成に役立てれそうな気がしてきた。
なんとなく、魔石の消費を減らせられる、ぼんやりとアイデアが浮
かんできた。
後でアイデアを整理しよう。
434
4.33 毒の混入調査結果
おなかいっぱいになったところで、騎士からの調査報告が来た。
どうやら、スープ皿についたスープから僅かに毒の匂いがするが、
大元の鍋のスープには毒が入っていない。
皿についていたとすると、犯人の特定が難しいとのこと。
皿の表面に薄く毒を塗っておけば良いだけで、
皿が置いてあったところは監視があまく、かなりの人の出入りがあ
ったそうだ。
どうやって犯人を捜すのか聞いたら、この1週間、
料理部屋に入った人全員から事情聴取するだけとの事。
指紋を取らないのか聞いたら。
?の顔をされた。
やっぱり一般には知られていないのか。
魔法が使えるようにする魔法陣を敷いて、
とりあえず目の前の毒の入っていたスープ皿と
毒のはいっていないスープ皿を数枚選んでお盆にのせる。
そこで皿に魔力を流し、指紋に物体の吸引力を付加するイメージを
行う。
マイボックスから黒鉛の粉を取りだし、ふりかける。
浮き出た指紋に魔法でコーティング。
魔法ではぎとり、紙に置く。
メルミーナ様のところで調べた魔法を使った指紋採取の方法を実践
しました。
435
事前に試していたので楽勝です。
毒の入っていた皿と、入っていない皿で、2人分の異なる指紋が出
た。
明日からの事情聴取のときに、全ての指の指紋を取り、
一致するか確認するように言った。
の中に犯人がいる可能性が高い
両方に一致する人A、毒皿だけにある人をB。
A,B
特にBはかなり濃厚だが、犯人が、直接皿を触っていないと指紋が
出ないので、参考にしかならないと伝えた。
次の日から、事情聴取が始ったらしい。
Bの指紋に一致したのは、3日前に毒見役になった騎士だ。
Bのもう1人は、皿を運んだ侍女だ。
騎士は、そのまま捕縛され、さらに尋問された。
騎士がやったと自白があったが、黒幕は解らず。
ギャンブルでできた借金の肩代わりに、毒を塗るように頼まれたら
しい。
第三者の調査でもギャンブルの借金があり最近急に返却されたらし
いので間違いない。
ただしお金の出処はわからなかった。
報告によると、最近、国が人頭税を上げた事に対する王への警告と
言われたそうです。
お腹を壊す程度の毒だし、遅行性だし見つからない、と言われたよ
うだ。
けして殺す気は無かったと言い訳をしているらしい。
人頭税が上がったのは、一時的で今年のハリケーンによる被害で不
作地域への支援の為だ。
436
偽りの適当な理由だ。
この騎士も、その程度で怒るのはおかしいと思ったらしく、言われ
た通りではなく、さらに水で薄めて塗ったから効果は無いだろうと
思ったそうです。
結局、依頼主の黒幕の容姿もよく解らず、今回も不発。
だが、明らかに命を狙う相手がいることは確実で、暫くは厳戒態勢
が続くようだ。
そして、王から指紋で判断できると、誰から聞いたか問われました。
﹁メルミーナ様のところで保管されてる論文に似たような事が書い
てありました﹂と説明する。
100年前の論文だ。
おそらく転生者と思われる文献のシリーズに書かれていたので、覚
えていた。
﹁そうか、明日メルミーナに調べさせよう﹂
﹁関係する文献が二つに別れていますが、
私が整理してまとめたので、どこにあるか伝えておきます﹂と答え
ておいた。
これでやっとあの文献が日の目を見るのだな。
同じ研究者としては、ちょっと嬉しい。
それとは別に、魔法で指紋を取ったり、形を作る方法も教えておけ
と言われ、
宮廷魔道士の数名が、使えるようになるまで、数時間開放されなか
った。
とりえず、本件は終わろう。
437
4.34 犯人は捕まったが︵前書き︶
伏線のためのお話です。
閑話ぽい感じになってます。
438
4.34 犯人は捕まったが
太郎は、我が家の番犬︵狼︶?
太郎の親は、ホワイトドラゴンとの戦いで死んでしまい、
その時に傷ついていた子供の太郎を家につれて帰り、治療を行いま
した。
当初、怪我が治ったら山に帰す予定でしたが、我が家から出て行く
気配が無かった。
人に慣れすぎ、もう自力での生活は無理だろうと、そのまま我が家
で育てています。
太郎と名前を付けて以来、急激に大きくなり、おおよそ現在3歳ほ
どのはずですが、すでに元の親とほぼ同じ大きさです。
あちらが母親であの大きさでしたが、太郎はオスなのでもう少し大
きくなるのかも知れません。
太郎は、黒狼固有のスキルと、おそらく固体独自の感性に関する特
徴があります。
黒狼固有のスキルは、特殊な空間魔法で、人の近くに直系30cm
ほどの黒く影のような平面に隠れることができます。
現在、その空間におよそ数時間もぐっていることができ、空間に入
り込むと気配が完全に消え、索敵などのスキルでは見つけることが
できません。
目視で黒い丸が見つかれば解るといえば分かりますが、上手く影と
重なれば全く気がつきません。
あとは、高速移動。
時速100km/hを超えた速度で地面を走り抜けます。
そして、太郎本人だけだと思いますが、特殊な能力で犬好きの善人
をかぎ分けることが出来るようです。
439
犬好き
の善人です。
領地内では、たまに盗賊が出ます。
太郎は、いつもエイミーと一緒に出動しています。
盗賊を捕まえると、たまに盗賊の中から人を引っ張り出し、その人
を咥えて、自分で小屋に連れて行きます。
小屋でひとしきり遊んだ後、開放されます.
開放された後に話を聞くと、盗賊にさらわれ無理やり仲間にされて、
盗賊仲間からもいじめられていた人です。
そういう人がすでに4名。
以前、王子たちが来ていた時に来た人達の中にも1人いました。
彼らは、みんな交代で太郎の世話をしたり、隊のみんなの雑用を受
け、仕事をしています。
3食出るだけでもありがたいと、感謝しながらまじめに働く、良い
人ばかり。
盗賊たちの仲間として、いやいやでも悪いことをしていたから、死
刑にするなり、犯罪者として鉱山送りなどしないのかと言われます
が、太郎が気に入っているから、ちゃんと面倒を見る限り、生活は
保障するし、ある程度は自由を認めると言ってあります。
基本、この4人は本当にまじめです。
毎月、教会に行き、お祈りもするし、併設された孤児院の手伝いを
する。
前職さえ目を瞑れば、本当に良い人。
さて、実は昨日の夜、王子たちが来ていた時以来の襲撃時間がおき
ました。
と言ってもたったの5名での襲撃。
あっという間に捕まえて終り。
440
とりあえず朝まで太郎の小屋に放り込む。
朝になると、今回は太郎のお気に入りはいなかったようですが、以
前、王子達がいたときに捕まえた男が、今回の襲撃の親玉と思われ
る人を指し、自分を金で雇った人だと申告してきた。
まあ、特徴の無い、いたって普通の男。
主犯格が捕まえられるはずが無いと思っていたが、ここで自らそれ
もたったの5名で襲撃してくるとは。
なにか、裏事情があるのかも知れない。
王都に連れて行き、専門家によって取調べが行われた。
どうも、この雇い主から失敗の責任を求められ、今回の襲撃になっ
たらしい。
そして、先日の王城での毒混入も、こいつが騎士に接触した犯人と
判明した。
失敗続きで、騎士の逮捕からの足きりであることは明らか。
命を助けるかわりに、洗いざらいしゃべらせた。
王都から北上した山は、王家所有の鉱山がある。
その鉱山近くの山にある洞窟地帯に根城があり、そこに怪しい集団
がいることが解った。
すぐに、騎士団が派遣され、一体の捜索が行われ、およそ100名
の怪しい集団を逮捕した。
しかし、彼らは、殆どが近隣の伯爵家、子爵家の領地で税金が払え
ず、逃げ出した小作人や、貴族にいじめられたり、傷つけられたり
した為に逃げ出した、貴族に恨みを持つ者たちではあった。
だが、明らかに王家に恨みを持つ者たちではなかった。
彼らの証言から、貴族たちへの仕返しについての指示は、3名ほど
441
の神官の格好をした人が行っていたそうだ。
ちょうど1週間ほど前からいなくなり、自分達も食料も減り、どう
したら良いのか迷っていたらしい。
騎士たちから、悪い貴族の名前を聞き込み、実態調査が始った。
逮捕した100名の人達の殆どは、盗賊や実行犯とは無縁であった
ことから、希望する領地の小作として復帰した。
そして、実態調査の結果で、悪いことをしていた、伯爵家、子爵家
の数家が爵位の取り上げとなった。
結局、なぞの神官の行方は解らず、調査は振り出しに戻った。
何らかの宗教がかかわりを持つのではないかと、裏宗教の見張りを
きつくすることになった。
主犯の一角に、王都の偉い貴族の中にいるはずだが、わからなかっ
た。
この世界、魔法があるので、精神系魔法で洗いざらいの情報が聞き
出せるような気がしたが、
どうやら、そういった強い精神魔法が使える人がいないようだ。
魔法は、なんでも出来る。
しかし、都合の良い能力者が権力者の下にいる訳では無い。
精神系の特殊スキルは、後天的に発現することは稀だ。
なるべく小さいうちに見つけて保護する仕組みはあるが、
それでもなかなか見つからない。
そもそも、発見のための鑑定スキル持ちが少なく、王都から離れた
人のスキルは把握できていない。
便利なようで、なかなか、不便な世の中だ。
442
4.34 犯人は捕まったが︵後書き︶
この次の話から、ジルベールとマリア、スザンヌの秘密が公開され
る話になります。
ここでは、神官のキーワードを覚えておいてください。
443
4.35 2人は転生者︵前書き︶
PV10万、ユニーク1万超えました。
もう直ぐブックマーク200です。
444
4.35 2人は転生者
毒を入れた犯人が逮捕されてから数日後の事。
スザンヌ様と、マリア様との面会の時、スザンヌ様から
﹁そろそろ、私達を呼ぶときに、様付けやめませんか?﹂と提案さ
れた。
スザンヌはスーと、マリアは様だけ取れば良いかと聞けば、2人と
も了承してくれた。
その割に、2人はジルさまと呼びたいと。
﹁さまを取るんじゃないの?って聞いたら、名前は略すし、ジルさ
まの呼び名がかっこいいから、ジルさまが良い﹂
とスザンヌが。
マリアもその呼び方が呼びやすいと、
結局それで、落ち着いた。
その後、スーからついに鋭い指摘が来た。
﹁たまに2人だけで解ることを話してる。
うどんもそうだし。
わからない言葉でしゃべっている時もあるし。
何か変なのよね。
私に内緒で2人だけで手紙とかやりとりしてる?﹂
と聞いてきた。
マリアが﹁お姉さまに内緒で2人で会ったり、手紙のやり取りは無
いですよ﹂
と言いながら、視線が泳ぐ。
うん、マリア、嘘つけないね。
そして﹁ふーん。ねえ、折角、愛称で呼ぶようになったし、隠し事
445
も止めませんか?﹂とスザンヌから提案された。
マリアは、私に﹁どうしますか?﹂と聞いてきた。
﹁それ聞いたら、秘密があるのが、ばればれだね﹂と答えると。
﹁あ!ごめんなさい﹂と謝ってました。
そこで、私が、
﹁大丈夫です。
確かに私たちは、スーに少しだけ秘密にしていたことがあります。
それを話しても良いのですが、話すには幾つか約束して欲しいです﹂
﹁やっぱり、秘密があるのですね。
解りました。
それで、どんな約束をすれば良いのですか?﹂
﹁まず、今から話す内容を信じる信じないはお任せしますが、王や
王妃にも秘密にしてください﹂
﹁良いわ﹂
﹁次に、私達の秘密を話した後は、あなたの秘密も教えてください﹂
﹁それも、解ったわ。
ジルさまにしている秘密なんて、スリーサイズ以外には無いけどね﹂
と。
うーん、あるはずなんだけどな。
ひご
メリーナ様が降臨した後に、こっそり、彼女にはメリーナ様以外か
ら庇護されていると言っていたから。
そして、私から、話を始めた。
﹁実は、私とマリアは、転生者です﹂
﹁え、転生者。生まれ変わりと言うことですか?まさか﹂
何か言いたそうだったけど言葉を続ける。
﹁それも別の世界から。来ました﹂
446
﹁別の世界?﹂と残念そうな顔になる。
あれ、どうした?
まあ良いか、続けよう。
﹁そうです。私達は、こことは文化も生活方法も全く違う世界で生
きて来ました。
その世界で死んだ後、メリーナ様に転生させて貰いました。
ですが2人とも生前の自分の名前や、家族などについては全く覚え
ていません。
覚えていることは二つ。
一つは、前の世界の知識です。
にほんしょく
と言う食べ物がそうなのですね﹂
向こうの世界で得た知識や食べ物は覚えています﹂
﹁たまに食べる
﹁そうです。そして、覚えているもう一つの事は、最後に死んだ時
のことです。
私とマリアは、同じ場所で、数分の違いはありますが、ほぼ同時刻
に死にました﹂
﹁一緒に死んだ。それって、二人は前世も恋人同士で、一緒に自殺
でもしたの?﹂
マリアから、
﹁違います。私が、死んだ時の年は19歳でした。
先日、王様の前でセーラー服を着て、音楽に合わせてダンスをしま
したよね。
前世の私は、学校に通いながら、ああいったダンスをして生活して
いたんです。
は、私の先生でした。
もちろん、貴族ではなく、庶民です。
ジルさま
私がお仕事の帰り、たまたまジル様と帰っている時に襲われて、ジ
447
ルさまが殺され、その後私も殺されました﹂
﹁私は、国が運営する大学の先生をしていて、普段は研究ばかりし
ていました。
ちなみに、前世はずっと、彼女なんていませんでしたよ。
年は35歳でしたね。
私たちの住んでいた国には貴族と言う制度はありませんでした。
みな平等です。
王は、象徴として存在しましたが、何の権利も持っていません。
国は、選挙という制度で、平民から選ばれた人が、国を運営してい
ました。
そんな世界です。こちらの貴族制度とは異なります﹂
スーが﹁結局、ジルさまと、マリアは、付き合っていたわけではな
いのね﹂
マリアから﹁お付き合いはしてませんが、ジルさまは、先生の中で
も女子に人気がありましたよ。
私は、ジルさまが好きだったけど、あまり接触する機会がなくて、
親密にはなれませんでしたけど﹂
﹁え、そうだったかな? 人気なんてあったか?﹂
﹁他の先生に比べれば、人気が高かったですよ。
先生の授業の出席率、すごく高かったですよね。
休憩になると、みんな先生に質問に行ってたし﹂
﹁質問には来てくれたな。
女子でも数学が好きな人がいるんだなと、感心してた﹂
448
﹁あはは、女子で数学好きなんて、いないですよ。
みんな先生と話がしたくて先生のところに集まってたんですよ。
私も2度ほど質問に行きましたよ﹂
﹁ああ、それは、覚えてますよ。
かわいいこだなと思ってたから﹂
﹁総合すると、付き合ってはいなかったけど、それなりにお互い意
識はしてたということですね﹂
﹁少なくとも私は好きでした﹂とマリア
﹁私も否定しない。先生でありながら、実は、マリアの事は気にし
てた﹂
﹁だいたい解りました。異世界からの転生者。そして同郷。それが
二人の秘密ですね﹂
﹁はい。前世などといきなり話してしまいましたが、信じてもらえ
ますか?﹂
﹁信じます。前世は、とりあえず。
他の世界と言うのが、良くわかりませんが、
ジルさまの言動や、行動を見る限りでは納得できます﹂
﹁そうですか。
信じていただけるなら、もう少し説明を続けますね。
私たちは、死んだ後、各々、メリーナ様に会っています。
そして、メリーナ様直々に転生の説明を聞きました。
転生者や、転移者は、メリーナ様の実験で毎年1人この世界に連れ
て来ていると言ってました。
私は、その1000人目なので、全属性で魔法が使える能力を貰い
ました。
その時に、空間魔法や、鑑定の能力、回復魔法や、解呪の力も貰い
ました﹂
449
﹁私は、1001人目で、直前に死んだ先生を行き返させる力が欲
しいと言ったら、生き返りは無理だけど大怪我が治せるぐらい、強
力な回復魔法が使えるようにすると言われ、聖女の力を与えると言
われました。
ただ、生まれる時期が悪いので、少しだけ時間を調整して生まれる
ようにします。
とおっしゃったので3つ離れたみたいです﹂
﹁そうですが、ところでジルさまは、それだけ大きな力を授かって
いますが、メリーナ様からの使命があるのですか?﹂
と、スーが。
普通、そう思うよね。
﹁メリーナ様からは、特に使命は言われていません。
メリーナ様が言うには、転生者は老衰で死んだことが無いから、天
寿をまっとうするまで生きてと言われました。
それと他の転生者の手助けをするぐらいが言われたことですね。
表面的には、神が暇をもてあまして、この世界を使った実験をして
いるようにみせていると感じました。
まあ、神様のすることですから、言ったとおりの事は無いでしょう
し、私たちがすぐにわかるような愚かなこともするわけが無いので、
本当はなにか使命もあるのかもしれません。簡単には解らないよう
にしているのでしょう﹂
﹁へー、そうですか。それにしても、それだけの力を貰るなんて、
メリーナ様も太っ腹ですね﹂
﹁私は、1000人目だから与える力は特別だと言ってました。
特別なのは私とマリアだけなのでしょう。今のところ二人だけが加
護が大です。
450
通りすがりに見かけた人も入れて数名の加護を見かけましたが、メ
リーナ様からの加護は中でした﹂
﹁では、二人が特別なのですか﹂
﹁そうだと思います。
以前、スーがメリーナ様と会った時に、私とマリアが特別の秘蔵っ
子と言ってましたし﹂
﹁そうね、そういえば。
ああ、あの時によく考えたら今の話に気がついたはずなのに、どう
して言われるまで気がつかなかったのかしら﹂
﹁まあ、相手が神様ですから、思考誘導でもしたのでしょうね。
必要以上のことを探らないようにしてくれたけど、私たちが自重し
て無かったから、徐々にほころびが多くなり違和感が隠せなくなっ
てきたのでしょう。
では、次にスザンヌ様の秘密も教えてもらえますか﹂
﹁私の秘密ですか。
スリーサイズですね。
155cm、上から85、55、80です。
少しお尻が小さいけど胸はすでにeカップで形は良いと思います。
お母様が165cm、95、58、85のHカップなので私ももう
少し大きくなると思います﹂
と元気に答えた。
﹁いやそれじゃ無くて﹂と言ったら
﹁私は、まだ未発達なので内緒で﹂とマリアが。
451
﹁3妃様は、158cm、100、62、90のIカップよ﹂
﹁I、すげ。って、いやいや、だから違うって﹂
﹁解ってます。
冗談ですよ。ジルさま﹂
﹁︵; ̄ェ ̄︶﹂
﹁そうですね。
ジルさまの秘密の話を聞いたら、私も到底信じてもらえないと思っ
ていた秘密をお話しないと行けないようですね。
では、お話します﹂
と言って、彼女が持つ秘密を語ってくれた。
それは、想像もしていない秘密でした。
私は一瞬、自分の事を棚にあげて、彼女の話が信じられない状態で
した。
452
4.35 2人は転生者︵後書き︶
次で、スザンヌの秘密もわかる。
4章でもっとも面白いところだと思ってます。
では、次の話を楽しみに。
ちなみに、スリーサイズは自称です。
感想があれば、お願いします。
453
4.36 3人は転生者︵前書き︶
おー、タイトルで内容がばれてるな。
454
4.36 3人は転生者
﹁ジルさまの秘密の話を聞いたら、私も到底信じてもらえないと思
っていた秘密の事をお話しないと行けないようですね。
では今からお話します﹂
続けて。
﹁実は1妃様は、170cm、105、65、90のJカップよ。
JよJ。
フワフワのポワポワなのよ。
3人を比べると、母が一番小さいけど形が一番良いのは母なのよ。
未だに全然垂れてないんだから。
なんと言ってもドーンなのよ﹂
﹁ズゴ!﹂
スーってこんな感じだっけ?
﹁はー、言い切った。スッキリ。じゃあ、本番﹂
﹁︵; ̄ェ ̄︶﹂
今日はテンション高いな。
そう言った後、彼女は自分の秘密を語ってくれた。
﹁二人の秘密が転生だとは思ってもいなかったわ。
実は私にも同じような秘密があるので、それを今からお話します﹂
一呼吸置いて。
﹁実は、私も転生者です﹂
では、お姉さまも異世界から転生されたのですか﹂
﹁﹁え!! ﹂﹂
﹁
455
﹁いえ、違います。
あなた達とは異なり、私の前世は異世界ではなく、この世界です。
そして私は少しですが前世を覚えています﹂
﹁前世の記憶もち。それはメリーナ様とは別の神様が関わっている
のかな﹂
﹁私はあなた方のように生まれ変わる前に、女神様に会ったわけで
はないのでそこは明言できません。
とりあえず、前世の事を少しお話しましょう。
私は前世では、この国の建国の王シンの妻でした。
二人とも異世界から転生したのなら解っていると思いますが、建国
かみざきまこと
の王シンは転移者です。
ごとうまき
シンは神崎真なぜかまことはシンとも呼べるのだと。
そして聖女と呼ばれた妻の1人は、後藤真希マキと呼ばれていまし
た。
私はマリアが聖女になった時、それとジルさまに会った時に、こっ
そりシンとマキと呼びかけたことがあります。
でも、返答が無かったので貴方たち二人が転生している可能性を捨
てていました。
もちろん、何らかの関連を持っているとは思いましたが、異世界か
らの転生者と聞いて二人に似ているけど違うのだとわかりました。
残念です。
最初に転生と聞いた時喜んだのですが。
やっぱり、私だけだったのですね﹂
﹁お姉さま﹂とマリア。
しばし黙っているスー。
﹁スー、過去は過去だよ。
今、一緒になれたのだから僕たちでまた未来を作ろう﹂
456
と、私が。
二人で、スーを抱きしめる。
暫くすると落ち着いたらしくまた話し始めた。
﹁もう少し話をしますね。
私がシンと出会った時は単なる商人の娘でした。
私達家族が魔物に襲われたところを、助けてもらったのが出会いで
す。
マキの回復魔法で私と兄は命を救われましたが、残念ながら父と母
は亡くなった後でした。
詳しい話はまたの機会にお話しますが、私はシンに助けられた後未
来視の力が発現しました。
その後は物語にもなっている通り、国づくりを手伝い、そして国を
立ち上げた後に王の妻になりました。
建国後も未来視の力を使って、この国の長きに渡る基盤となる仕組
みも作りました。
詳しい政策はあまり覚えていませんが、兄とも協力し沢山の仕組み
を作りました。
兄はその一つの策として、シドニアを建国しそちらの王になりまし
た。
その他にも私はシンの暗殺を予知して、阻止していました。
ですので、私の事が邪魔だと思うものが多かったのでしょう。
未来視の特徴として、実は起きることを書き換えることが出来る人
物はとても少ないのです。
その中でシンや、マキは未来を書き換えることが出来る人でした。
恐らく異世界から人だけが、この世界の未来を書き換えることがで
きたのでしょう。
未来視は、変更できる。
457
いつでも何でも見えるわけではありませんでしたが、そのまま見守
ったり、場合によって変更し、私たちはそうやって国を作り上げこ
の地域の人たちを帝国の被害から守りました。
帝国の人たちは最初はシンに向けて暗殺者を放っていました。
私を殺す場合もシンが含まれていたので、暗殺を予知し防いでいま
した。
しかし、私の未来視は自分には使えないのです。
それを知られたのか、聖女が出かけているときに、王ではなく私に
毒矢を撃たれました。
私、単独の暗殺を仕掛けてきたのです。
結局、それを防ぐために王が毒にやられてしまいました。
未来を書き換える力が、逆に働いてしまったのです。
王は、毒で身動きが取れなくなり、倒れました。
私はそのまま暗殺者に剣で刺され、王と共に死んだのです﹂
﹁王が死んだ。あなたへの攻撃が防げず、結局あなたも死んだと。
似ている話だ﹂
と私がつぶやく。
﹁私は、前世の最後に、守られるだけの存在ではなく、守るぐらい
強くなりたいと願いました。
ジルさまと婚約した日に、改めて前世の最後の願いだとおもいだし
ました。
幾度か夢にはみていたのですが、それがどういうことかあまり実感
していませんでした。
願いが通じたからでしょうか。
私は、今世では未来視の力ではなく、右目が金眼で、体は以前より
458
もすごく強い。
剣もしっかりともてる様になりました。
これは、夏の訓練でもお話したとおりですね﹂
﹁そうですか、死ぬ前の意思が反映されているのですね。
ところでメリーナ様が、スーは別の女神の庇護下にあると言ってま
した。
スーは、その意味が分かりますか?﹂と訊ねる
﹁うーん、別の女神ですか。
元々建国の王が作ったといわれる大聖堂は3人の女神全員が祭られ
ています。
アメリさんの結婚式が行われる予定の教会ですね。
この国で一番大きな教会ですよ。
あらためてお祈りに行けば、別の女神様と話ができるかも知れない
ですね﹂
﹁大聖堂か。とりえず、行って見ましょうか。デートをかねて﹂と
ジルベール。
﹁デ、デートですね。そうですねお出かけだし。
では、行ける様に手配しますね。
前回のマリアの時のように、神が降臨されると混乱が起きるので、
貸切で訪れることができるように調整します。
少し後になると思いますから。お待ちを﹂
﹁はい、お願いします﹂と、私が答える。
マリアが
﹁お姉さまも転生者なら他の王族や貴族にも、転生者が沢山いるん
459
でしょうか﹂
﹁どうでしょう。
そういった文献は少しですが残されています。
ですが、前世の記憶持ちが沢山いるということは無いと思います﹂
﹁メリーナ様は平均で年に1人、今迄で1000人転生させてるよ。
転生者がこの国に集中しているか解らないけど、メリーナ様が転生
させた人はスキル欄にメリーナの加護、大、中のいずれかが表示さ
れるから解るよ。
は鑑定が使えるから、見ただけで解るので
我が家の領地にもすでに2人いるから。だけど他の神の加護は見た
ジルさま
ことが無い﹂
﹁加護? すね﹂とスザンヌが言う。
﹁あまり役に立たない情報ばかりだから、いつも見てるわけじゃ無
いですけどね。
それに鑑定を続けるには、集中力が続かないから見逃しは多いです
よ。多分﹂
﹁ジルさまは、便利な力を沢山お持ちですよね。
今世は、私も剣の力を持てたので、前世とは違って私もおそばで頑
張りますね﹂と
﹁あ、そうだ。
そういえばスーの魔力の可視化は魔力の流れが見えているだけでは、
なくてもっとはっきりと先読みしてるんですよ。
スーは、魔力の可視化と共に未来視の劣化版を使ってます。
夏の合宿前は未来視微小と言うスキルが封印されていましたが、合
460
宿が終る頃に総魔法量が増えたら、未来視微小の能力が使えるによ
うになっていました。
ずいぶんユニークな能力を持っているとは思っていましたがようや
く理由が分かりました。
あれは、前世で使っていた能力ですね﹂
﹁確かに、剣がどう動くか読めてることは否定しませんが、それが
魔力の可視化のおかげではないのですか?﹂
﹁魔力が見えることで腕や足の動く方向や軌跡が僅かに見えますが、
スーの力はもっと先を読んでるでしょ。
たぶん固有スキルが影響しているのだと思う﹂
そして改めてステータスを確認すると。
魔力の可視化と共に、未来視小と表示されていた。
スキルを意識したことで、スーが力を認識したのだろう。
それを念のため、スーに告げておいた。
今後は今までよりももっとはっきりと剣の軌跡が見えるようになる
だろう。
461
4.36 3人は転生者︵後書き︶
秘密、どうでしょうか?
スーは、元気な子です。
462
4.37 実は2度目の転○︵前書き︶
また、タイトルで中身がばれる。
一応マル文字にしたけど、バレバレだよね。
ブックマーク200です。
12月末に、神登場の感想追加してます。
463
4.37 実は2度目の転○
3人の告白後。
あれから数日後の平日夕方です。
大聖堂の一般解放時間が終わった後特別に許可を貰え、我々3人だ
け祈りの間に入りました。
一緒に来た護衛は、祈りの間の入り口を見張ってもらっています。
名目は、女神様への婚約の報告です。
王様と王妃様には王城の教会で済ませられないのか聞いてきました
が、3人の女神全員に報告が必要と言って頼んでもらいました。
大神官様に話を通したら、メリーナ様が降臨した2人がいるので、
大歓迎で迎え入れてくれました。
一般人以外にも、神官も絶対に近づけないように交渉しました。
ただし、他の神官は排除しましたが大神官様だけは近くで見守る。
これが条件でした。
メ
大神官様は、元々我々2人にメリーナ様が降臨された事を見ている
ので問題ないという判断です。
そして、3人で祈るとまずは、メリーナ様が降臨されました。
アロノニア、次女
ラキシス、三女
続いて、アロノニア様、ラキシス様も降臨されました。
長女
※3人の女神は姉妹と呼び合っています。
※姉妹関係
リーナの順となってます。
初めて見るメリーナ様以外の神。
464
メリーナ様の印象は、3神の中で身長も一番低く女子高生ぐらいの
若いイメージの女性。
いつも笑顔で可愛い感じの、女神と言うより天使の方がぴったり。
ラキシス様は、女子大生ぐらいか?
真面目な感じの女神様。
持っている魔力はとても強そうなのが解る。
メリーナ様でも私の数100倍は強そうな感じがあるが、ラキシス
様はさらに上とわかる。
さすが神。
それでもこの2神はアロノニア様と比べるとどんぐりの背比べなの
だろうか。
アロノニア様は、圧倒的な存在感だ。
成熟した女性の姿。
完璧な容姿。
そして圧倒的な異次元レベルの力。
他の2神と比べて、まともに見ることが難しい。
さすが3女神。
あれ、アロノニア様少し光を小さくしたかな、お顔が見えるように
なった。
綺麗だな。
私が、そんな感じで見つめている中、まずはラキシス様が話を始め
ました。
﹁私の、スザンヌ。
他の転生者を連れ、よく来ました。待っていましたよ﹂
465
﹁なに、やっぱりラキ姉さんだったのね。
ふたり
あれ。どういうこと? なんで、2神とも来てるの?
てっきりラキシス姉様だけと思ってたのに。
人間嫌いの、アロノニア姉様まで、どうなってるの?
未来視で何かしてたの?﹂とメリーナ様が慌てている。
﹁まあ、そうよ。 当たり前でしょ。これは、全部私の計画通りよ﹂
それをお話いただく事ができますか?﹄と私が
ラキシス様は、落ち着いた感じで答える。
﹃計画とは?
訪ねると。
﹁あなたがメリーナが転生させたジルベールね。
良いわ。
少し話が長くなりますが、この周辺だけ時間の流れを変えるので、
気にせずに﹂
周りを見ると、大神官様の動きが止まっているようにも見える。
﹁さて、何処から話しましょうか﹂
﹁姉さんは、話を飛ばしすぎるから、なるべく最初から話して。私
もさっぱり解らないから﹂
とメリーナ様。
大丈夫か、この女神と不安な感じで見つめる。
﹁メリーナはいつも通りね。
注意して見れていれば解っていたでしょうに。
466
︵か
そもそもジルベールの魂をちゃんと奥まで見ていれば最初に気がつ
けたのに。
はあ、いつまでたっても残念女神のままなのね﹂
とアロノニア様が。
少しプーとほおを膨らませるメリーナ様。
ちょっとかわいすぎるぞ、この女神。
そして、ラキシス様が話を進める。
﹁そうですね。では、300年前の事からにしましょう﹂
﹁え、そこまで戻るの?﹂とメリーナ様。
それを無視してラキシス様が話を続けます。
﹁300年前、メリーナが転移させた、王となった神崎真
みさきまこと︶。
悔しいことに、一緒に死んだのは、私が未来視の力を与えたスーレ
リア。
ごとうまき
知らないと思いますが、転移者の死んだ魂は元の異世界に戻り、普
通はそのまま消滅します。
同じく、その後、聖女だった後藤真希も死んだ後、その魂は異世界
に戻りました。
私は、神崎真と後藤真希の死んだ魂に術をかけ、魂の消滅を防止し
元の世界に転生させ、魂を保護しました。
そしてスーレリアの魂は、私が保管していました。
私の未来視の力を使えば、再びこちらの世界に戻るであろう人物に
転生さえることは簡単です。
今回は、メリーナが沢山の加護を与えるであろうタイミングに絞っ
て、神埼真の魂を転生させ、同じタイミングで後藤真希もこちらに
呼び寄せる様に異世界に少し干渉しました。
467
あとは、こちらに転生するタイミングに前後して、結婚できそうな
年齢の器にスーレリアの魂を入れて転生させておいたのです﹂
﹃え、どういうことですか? なにかやけに軽く話が出ましたけど、
私は神埼真の魂で、マリアは後藤真希の魂を持つ?
もしかしてそんなことを言いましたか?﹄と私が。
﹁う。そうなのラキ姉さん。私、知らなかったわ﹂
ここで、アロアニア様が、
﹁私が、念のため確認するわ﹂と言うと、
私と、マリアに頭上にふわっと光の輪ができ、頭から足に向けて通
り抜ける。
﹁終わったわ。
ジルベールは、確かに神崎真が契約した聖獣 朱雀王 ガルダ、水
龍王 イシスの再契約ができたわ。
そしてマリアは、まきが飼っていた猫の守護精霊がすでに付いてい
ますので、それも間違ないわ﹂
﹃猫の守護精霊とは、タマのことですか?﹄
とマリアが疑問の声を。
﹁そうです。あなたがタマと呼んでいる白猫は精霊の力を持つ精霊
獣です。
あなたの覚醒に反応し、子猫に入ったのよ。
今まで精霊の力は眠っていましたが、今、守護精霊として目覚めま
した﹂
﹁やった! やっぱり、私だけが転生したわけじゃなかったのね﹂
468
スーが声を出して喜んで私に抱きついてくる。
﹁そうですよ。スーレリアだけでなく、シンもマキも一緒です﹂
とラキシス様はスザンヌに声をかける。
﹃その、すいませんが、聖獣、朱雀王と水龍王ってなんですか?ま
ったく身に覚えがありません﹄
﹁私、アロノニアは、精霊界や、幻獣界を守っています。
聖獣は、幻獣界で大きな力を持つ4大幻獣の事で、朱雀王、水龍王、
白虎王、玄武王です。
私が作り出した最高傑作の幻獣です。
このうち、朱雀王、水龍王は、神崎が前世で召還可能な契約を交わ
していました﹂
続けてラキシス様が説明する。
﹁ジルベールと言いましたか。
あなたは魔法を無詠唱で使えるだけではなく、大抵の魔法がイメー
ジするだけで特に練習をしなくても使えることを不思議に思ったこ
とはありませんか?
そして火の魔法が鳥を形どり、水は、竜をかたちどる﹂
﹃確かに、魔法がスムーズに使えるのを不思議に思ったことはあり
ます。
火の鳥と水龍の魔法は、今世で自分で考えて作った物です。
確かになんであの形を選んだのかと言えば、根拠はありませんけど﹄
ラキシス様から、
﹁それが、前世の影響ですよ。
私が魂の消失を保護したとは言え、こちらでの記憶の大半は失われ
469
ました。
それでも、魂にしみこんだ魔法力や召還獣との契約はそのまま残っ
ています。
ちなみに、記憶は完全に消えてはいませんよ。これをきっかけに幾
つか思い出してくるはずです﹂
私も、マリアも黙ってします。
今日は、スザンヌの前世や加護をお願いに来たのに、いきなり私達
2人の前世の話。
それも、私たちはこの世界が2度目と言う事実を教えられ少し容量
オーバー。
しかし自分の事で焦っているなかで、一番ほうけた顔をしているの
がメリーナ様なんだよね。
メリーナ様ほんとに、何も知らなかったんですね。
良く解ります。
今まで何も知らされていなかったのが、メリーナ様のせいでないこ
とが良く解ります。
そろそろ、いつもかわいいお顔に戻られた方が良いと思います。
ラキシス様は、スザンヌ一筋って感じが伝わるな。
それにしてもアロノニア様は、美しいな。
うん、うん。
ずっと見てたい。
アロノニア様が私を見て一言。
﹁ジルベール、あなたが思っていることは、声に出さなくても私た
ちには全て伝わってますよ。
470
忘れてるみたいですが、メリーナと話したことがあるなら知ってい
たはずでしょう。
私たちを褒めてくれるのは嬉しいけれど、そろそろ私は恥ずかしさ
限界だわ﹂
と、ほおが赤くなった感じが。
え!!
えーーーーーーー!!!!
そうなの?
と、メリーナ様を見ると、うんうんと頷く。
あちゃー、恥ずかしい。
スーとマリアが私を見て﹁後でね﹂と。
でも、恥ずかしがってるアロノニア様が、またまた美しすぎる。
うわー、どうしよう。
考えちゃダメ。考えちゃダメ。
471
4.37 実は2度目の転○︵後書き︶
さてさて、この伏線、どの段階で気がついてましたか?
だいぶ、前から気がついてましたよね?
472
4.38 ラキシス様からの加護
頭の中が、少し容量オーバーですが、そろそろ、当初の目的をたっ
せいしなければ。
﹃なんとなく理解しました。
が、今日の本題は、スザンヌへの加護についてです。
スザンヌは、メリーナ様からは加護が与えられないと言われました。
今回、ラキシス様がスザンヌの転生をさせたのなら、ラキシス様か
ら加護をもらえるのでしょうか?﹄
﹁ああ、忘れていたわ。もちろんそのつもりよ。
私のスザンヌ。
大きくなりましたね。
ジルベールにも会えたし、ちゃんと婚約もできたのですね。
おめでとう。
心から祝福するわ。
与えた魔力の可視化も、未来視も含めて使えているようで良かった
わ。
計画以上にうまく行ってまね、ジルベールがいてくれたおかげね。
本当は、この場の集まりは後2年後の予定だったのです。
未来が少し変わっていますが、転生者のジルベールが関わっていま
すからでしょう。
異界からの転生者は、未来を変える力がありますから、若干の変更
は想定内です。
恐らくは、ジルベールが神格化までできるほど成長している影響な
のでしょう。
今のところ良い方向に変わっているので、このまま見守りましょう。
473
さて、スザンヌへの加護ですが、もう与えましたので、安心してく
ださい。
ただ、メリーナの与える加護とは質が違うので、心配でしたが、メ
リーナから神具を貰ったのですね。
安心しました﹂
﹃ありがとうございます﹄ 3人でお礼を言う。
﹁ラキ姉さんの未来視の計画が、壮大すぎて。
私何も言えないのですが、とりあえずOK?﹂
﹁メリーナ、あなたは今回ジルベールに神格化の力も授けたの?
それは私の未来視では見えなかったけど。
それに、前回と違って空間魔法に、回復魔法まで使える﹂
﹁私が与えたのは神の目と術よ。
全属性の魔法の許可に、時間・空間、回復とかとにかくジルベール
の魂の容量がたくさん空いていたから、
付けれる物は全部つけました。
神格化は良く解らないし、勝手に特殊召喚もできるのも、どうして
かは知らないわ﹂とメリーナ様。
注意。会話の一部、都合の悪い部分は、スーとマリアには聞こえて
いません。
アロノニア様が補足してくれた。
﹁神格化は、神の力を持つ者ならば、総魔力量が多ければ使えます。
私たち、神と人間は、総魔力量が大きく違います。
普通の人間は、多少の加護やスキルを与えても総魔力量が少なくて
使えないはずです。
474
竜王ハバムートが神格化を使えるから間違い無いでしょう。
はあ、ジルベール、私のことをそんなに見つめてもプレゼントはあ
りませんよ﹂
ガク。
え、また見ちゃいましたか。
もう、無意識になったな。
﹁そうなの、うーん、ジルベールは、確かに人間とは思えない総魔
力量ね。
アロノニア姉さま、どうして、総魔力量がそこまで多いか解る?﹂
とラキシス様がアロノニア様に聞くと、
﹁そうね、ジルベールが精霊の化身ならそのぐらいの総魔力量にな
るけれど、
見た感じ、ジルベールは人間ね。
確かに元の容量はとても大きいけれど人の枠の範囲よ。
恐らく、努力と根性だけで増やしているように思えるわ﹂
﹃なにかすごい言われようですが、魔力の可視化を上手に使って、
魔力操作の繰り返しと、大量消費を繰り返せば総魔力量が増えます。
私は特に小さい頃から魔力操作を繰り返し、
よく解らないけど、努力で増やしたのね。
特殊召還や神格化で魔力を大量消費しているから、総魔力量が多い
のだと思います﹄
﹁そうなの?
ジルベールは、努力家なのね。偉わ﹂とラキシス様が褒めてくれた。
﹃私の考えでは、資質の100倍までなら増やせるのだと思ってい
ます。
普通の宮廷魔道士が300ぐらい、聖女が3000と言われていま
す。
475
おそらく宮廷魔道士は、3万が上限。聖女が30万上限だと思って
ます﹄
﹁資質の100倍ね。ジルベールとマリアは成人したときに300
0∼4000になるように調整したから、
最高で30万∼40万の間ね。
あら、ジルベール、私がそんなにかわいすぎるって、もう﹂とメリ
ーナ様。
あっ、爆弾発言入れられた。
﹁スザンヌは、先ほど加護として総法力量の資質を1000底上げ
したから、
ジルベールが言う様に鍛えれば、10万まで増えるの?
未来視の力は与える魔力量で未来視の時間も質も変わるから、片目
でも、昔よりも未来を見える様になるのかしら﹂
﹃え、片目でも ってどういうことですか﹄
﹁さきほど、加護を与えたでしょ。スザンヌの左目は、未来視の目
よ﹂
私のほうを見るスザンヌ。
顔を見て、更に鑑定を使う。
元は、銀髪に右:金眼、左:青眼。
それが、左目が虹眼になっていた。
﹁スー、左目が虹色の目になってる﹂
﹁え、ほんと﹂と言って、かばんから手鏡をだして見る。
さすが女子。ちゃんと鏡を持っている。私のマイボックスにも念の
ため入れておこう。
﹁ほんとだ、なにこれ?目が虹?﹂
私が、スキルを鑑定の結果も告げる。
﹁未来視微小が未来視中になってる。微小が戦闘中0.5秒先、小
が1秒先。
476
中は、戦闘中に数秒先の出来事まで見通せる。
当然魔力は先の時間を見るほど増える。
通常時で現在は最長1日先に起きる周りに影響を及ぼす事がおぼろ
げに見えるらしいよ﹂と教えてあげた。
それを告げると、
﹁うーん。未来視は、実感無いなー。あとで、確認するわ。
それより、帰ったらお父様にどう説明したら良いのかな﹂
﹃ところで我々が建国の3人だというのはなんとなく分かりました
が、
それではスーレリアの兄はどうなっているのでしょうか?﹄
ラキシスが答える。
﹁彼は、この世界で生まれ、この世界で寿命を迎えて死にました。
残念ながら寿命で死ぬとその魂は浄化され、再び同じ魂となり転生
する事はありません。
彼は、あなた方と異なり、ちゃんと人生を生きれたのですよ。
つまり、残念ですが、今世ではいません﹂
﹃そうですか、ちゃんと寿命で。メリーナ様の目指している死に方
ですね﹄
﹁スーレリアには、私が未来視を、兄のヨハンには何も与えていま
せん。
元々商人の才があり、頭も良かったのですが、そういった意味では、
私もメリーナ同様、力を与えた人が寿命で死ぬケースは無いのです
よ﹂
﹃へー、力を与えると、人生は優位に進めるはずだけど、その人生
は短命になるのは異世界転生だけではないのか﹄
477
そして、私は自分のステータスを確認すると、
朱雀王ガルダ、水龍王イシスの召還が可能になっているのを確認し
た。
ここで、召還しても大丈夫なのか聞いたら、ダメと。
もっと広いところで実施するように厳重注意されました。
そして今の魔法の何倍の強いはずなので、試し撃ちは安全を確保し
てからにするよう注意を受けました。
最後にメリーナ様が。盛大に手を振って、
ラキシス様は、ちょっと軽く手を振る。
アロノニア様は、軽く笑ってくれた。
そして、3神が消え、時が動き出します。
大神官様が、近づいて来て、スーの目を見て驚いていますが、
内緒にしましょうねと警告だけ行い、王城に戻りました。
﹁王様には、ラキシス様から加護を貰ったと説明し、
私と一緒で、目の色を変えるイヤリングをした方が良いと思います
よ。
虹眼は、紫眼と同様に希少ですよね。
文献によれば、一流の占い師が片目虹色と聞くので聖女と同クラス
でしょうか﹂
では、明日は学校を休まないと。
明日も、王城で一緒に過ごしたいから、できれば泊まってください
と、
スーから頼まれたので、約束をしました。
今日は、いろいろなことがわかった。
478
全てを消化しきるのには、少し時間がかかりそうだな。
知らない別人の魂まであると言われても、急には納得できない。
徐々にだな。
その日の夜、スーと一緒に王様王妃様に目のことを説明に行った。
加護を貰った理由は、女神から話すなと言われているとして、内緒
にした。
女神様からならと、それ以上のツッコミは無かった。
479
4.39 守護精霊のタマちゃん︵前書き︶
久しぶりの登場タマちゃんです。
マリアの飼っている長毛の白猫です。
480
4.39 守護精霊のタマちゃん
スーが、すぐに2妃様に目の色が変わった事を告げに行った。
2妃様が、すぐに目の色を変える魔道具を王宮魔道士に頼んだ。
そして、夕食会にて王様が、虹色の目を確認した。
かなりびっくりしていました。
現在、この国を含め周辺国にも未来予知の巫女は居ない。
確認されている両眼が未来視の人は、この3百年でスーレリアを含
めて、二人だけらしい。
聖女は、50年∼100年に1人いた。
スーの様な片眼が未来視の人は、占い師として50年に1人いたよ
うです。
ラキシス様の加護を持つ人は、かなり少ないようだ。
その夜、王様と、王妃様3人は王の部屋に集まり、話し合いがある
そうで、
我々は、食事の後はちょっと暇だった。
最近、よく、こうして王城に泊まることが、あります。
今日は、早めに解放されたので、王家の王子・王女全員で魔力操作
の練習をやりました。
夏休みの特訓以降、王子3人は、魔力操作がかなり上手になってい
ました。
マイヤー様と、シュミット様二人は、魔力操作の訓練に慣れていな
い。
481
マイヤー様は、私とスーで丁寧に教え、
シュミット様は、まだ魔力操作がぜんぜんできないので、
私が外部からの操作をして、体の中の魔力をゆっくりと動かす。
シュミット様は、今までは魔力を感じたことすらなかったようです
が、今日の訓練で魔力がなんとなく解ったみたいです。
外部から強制的に魔力を操作したため、かなり疲れたのでしょう、
すぐに私のひざの上で寝てしまいました。
今日は、マリアが、途中から抱っこして、侍女に渡しました。
そして、その日の夜、私は、不思議な夢を見た。
スーに良く似た銀髪、両眼が虹色。
マリアに良く似た黒髪、両眼が紫の共に、20歳前後の女性。
2人ともウエディングドレスを身にまとい、私の両脇に立ち嬉しそ
うに微笑む。
2人の手をとり、式を挙げる夢だ。
朝起きても、夢を覚えていた。
きっと昨日ラキシス様から300年前の話をきいたせいだろうか。
夢に見たのが、おそらく、建国の王シンの傍らにいる二人の女性だ
ろう。
どうやら、私は、神崎真の生まれ変わりなのかも知れない。
未来視の目は、国家機密の部類らしく、やはりそのまま学校には行
けない。
結局、スザンヌは魔道具が来るまで学校を休むことになったようだ。
宮廷魔道士が特急で青眼に変える魔度具を作るようだ。
482
聖女の話が外に流れた後であるが、
マリアも元の茶色に変える魔道具を作る事になったようだ。
朝の朝食会場にて、挨拶を交わす。
﹁二日続けて会えるとのは嬉しいですね﹂とスザンヌ。
﹁私も、会えて嬉しいです﹂とマリア。
うーん、2人とも、朝から、かわいいなー。
そして、3人で会話をするために、会話室に移動。
マリアはタマを連れていた。
﹁お、タマちゃん、半年ぶりぐらいかな。大きくなりましたね﹂
と、なでなで。
すると、﹃よう、あの時の小僧﹄
急に猫の声が聞こえてビクッとした。
が猫はそれを無視して話を続ける。
﹃あの時は、わてを木から下ろしてくれて助かったわ。
つい、転生前と区別つかんくなって気が大きくなってなー。
高い木を見るとつい登りたくなるんやー﹄
﹁えーっと。なんで声が聞こえるの?
それも関西弁のような、変ななまりが﹂
すると、横からスーが
﹁昨日、アロノニアさまがタマは精霊が入ってるって説明してくだ
さった﹂
﹁あ、そうだった。
483
そうか、精霊が入ってるから、念話で話しかけているのか。
いえいえ、どういたしまして、おかげであの日マリアと会えました
から﹂
﹃おう、そうか。なら礼の話はおわりやな。
あと、わてを助けてはくれたけど、それはそれや。
マリアはわての主人や、わての許可無く婚約者とかありえん。
絶対にわたさへんで。助けたことと、結婚は別や、良いか﹄
と急にけんかごし。
﹁え、じゃあ、マリア様と婚約させてください﹂
﹃なんで、わてにそんな事をいうんや﹄
﹁いま、許可を貰えって﹂
﹃言葉のあやや、一度言って見たかっただけやがな。
冗談や、冗談。
マリアが婚約したい言うのに、守護精霊が反対するわけないやろ﹄
へんな精霊だな?
﹁そうですか、では今後もよろしくお願いします﹂
﹃解った。じゃ、わては眠いから寝る﹄
そういって、マリアのひざの上で、あっと言う間に寝てしまった。
はや!
体は、まだ子猫だもんな。
話を変えよう。
484
﹁そういえば、昨日の夜に夢を見ました。スーに似た銀髪、両目が
虹色。
マリアに似た黒髪、両目が紫の2人との結婚式の夢です﹂
﹁へー、どんなドレスを着ていた?﹂
﹁え﹂そうか、さすが女子。
そんな質問が来るとは。
﹁待ってください。良く思い出します﹂
目をつぶって、もう一度思いおこす。
﹁たしか、スーの方は、緑色のドレスで胸元が、がばっと開いてて、
ドキドキの格好でした。
マリアのほうは、淡い青いドレスです。
胸元が閉じてましたが、前のふくらみがすごくかったな。
あ、そういえば、この前、選んだドレスと同じ色だ﹂
﹁やっぱりジルサマも男子ですね。
まあ、よいでしょ。
私の記憶でも、その色です。間違いなく前世の記憶だと思
いますよ。
マリアに似た女性は、淡い青のドレスで、後ろに大きなリ
可愛いドレスの割りに、胸のところがどーん膨らんでまし
ボンが付いてました。
たね﹂
﹁マリアも見たよ。夕べ。
お姉さまに良く似た方が、薄い緑色のドレスで、ポワポワなお胸が
見えて、セクシーでした。
ジルベール様に似た黒髪、金眼のかっこいい男性は黒に金の刺繍の
入った騎士服を着てました﹂
485
﹁すいません、ごめんなさい。胸の話はなしで﹂と私が謝る。
﹁金の刺繍の柄を覚えてる?私はそこを思い出せないの。
お父様が着ている服につける刺繍とは違うのよね﹂とスーが気にせ
ず話を続ける。
﹁そうですね、稲穂が実っているような刺繍だったような。こんな
感じです﹂
﹁あ、そういえば自分の胸を見たときにそんな感じ、
麦のピンピンとしたヒゲがないから、稲だ。4本の稲。
4人をイメージしているのかな﹂
﹁言われると、思い出してきた。
4本の稲ですね。今作っている服に入れてみららどうですか﹂とス
ーが。
﹁4本で全く一緒だと過去を掘り起こして何か言われるかも知れな
いし、
今世は、私達、3人みたいだから、3本で作ります﹂
﹁うーん、ジルさまの相手が私達二人で終わりと言う事は無いと思
いますけど、
とりあえず、3人で3本ですね。
あー、自分の結婚式が楽しみ﹂
﹁ほんとですね。前世は、一緒に結婚式をしたようですが、
今世は、お姉さまの方が先に結婚されるから、羨ましいです﹂
﹁.....﹂
486
なんとなく危険な話のような気がして、
その話題に口を挟むのはやめた。
スーも、やばそうだと、話題を変えた。
マリアの回復魔法についてだ。
私は、前世で回復魔法を使っていなかったので、一から習得してい
るが、
私の、他の魔法同様、マリアの回復魔法は最初からスキルレベルが
高いのではないか?
私が、現状を鑑定でチェックすると、全体的に回復魔法のスキルは
低めだった。
やはり10歳までは体が出来上がっていないから、制約があるかも
知れないですね。
と言う話になった。
現状、メリーナ様からも、あまり回復魔法を使わないように言われ
ているので、
あせらないようにしようと言うことで、納得してもらった。
それよりは、基礎力。
魔力操作が上手いほうが、魔法の効果が高く、
総魔法量も増えやすい。
そして、マリアから、王城での魔力の消費方法を聞いた。
王城に居ると魔法が使えず、魔力が四散するだけだ。
しかし、この四散を使えば、消費量を増やすことが出来るそうだ。
487
聖魔法の結界を作ろうとすると、結界形成中にどんどん魔力が流れ
て行き、あっという間に魔力が枯渇する。
これで、魔力操作+大魔力消費のコンボが出来るようで、想定より
もマリアの総魔法力の増え方が早い。
スーは、結界を使えないが、魔力の消費は、未来視の目に魔力を注
げば、あっと言う間に枯渇するので、
それで、魔力を消費する様にした。
これで、二人の総魔法量を増やす練習方法も決まり、後は目の色を
変える魔道具待ちだ。
488
4.40 ジルベールの力を確認1
﹁イヤリング、いつ出来るのかな﹂とスザンヌが。
﹁超特急で作るそうですので、お姉さまの分は、今夜には持って来
るそうですよ﹂とマリアが答える。
朝食の時に言っていたが、スザンヌは私とのおしゃべりに一生懸命
で聞いていなかったようだ。
﹁そう。明日は学校に行けそうね。未来視の力も確認したかったの
だけど﹂
﹁なら、王城の訓練場で試しますか。私でよければ相手をしますよ﹂
と私が提案する。
﹁やったー。ジルさま、嬉しい。行きましょう﹂
と喜ぶスザンヌに対して、
﹁お姉さま、私は今日はこれから、同学年の方々との交流会なので、
着替えて行きますね。
ジルさま、お姉さまをよろしくお願いします﹂
と、令嬢の挨拶をして、残念そうに、タマをつれて戻って行った。
私とスーは、手を繋いで、訓練場に向かう。
スザンヌはウキウキだ。
私は、マリアがいないときに、二人きりだと少し後ろめたい。
スザンヌは、特に気にする気配なし。
まあ、彼女達は、姉妹で仲が良いから、遠慮しないのかな。
さて、訓練場について、その一部を借りる。
489
騎士たちも見ているので、熱々ぶりは少し押さえよう。
スーと、軽く手合わせをすると、結構良い感じで着いてくる。
少しスピードをアップしても難なく防ぎ、空いた場所に撃ち込んで
くる。
そして、急に逃げ切れない改心の一撃が私に撃ち込まれた。
しまった、防御用の魔力展開をしてない。
これあたると痛いな。
と、一瞬で転移し、距離をとる。
スーが﹁ジルさま、転移は反則。
ジルさま以外に転移使える人なんていないから、それじゃあ訓練に
ならないから禁止です﹂
﹁了解。ごめんね。防御結界はってなかったから。今のは痛そうだ
った。
でも今のは良かったよ。絶対にあたってた﹂
﹁今のは、良い具合に未来が見えたんですよ﹂
と、にっこり。
うーん、笑顔で婚約者を叩き潰すスー、怖いな。
さて、ここからは、防御結界もはり、本格的に撃ちあう。
おそらく5割程度の力を出したところが、スーも反撃が出来る限界
点のようだ。
暫く撃ちあって、休憩した。
﹁どうですか?﹂
﹁たまに、剣の軌跡のような線が見えます。
おそらくそれが未来視だと思うのですが、魔力の可視化と合わせる
と、
かなりの確立で軌跡が予想できます。
490
防御は、ほぼ完璧ですが、攻撃する隙を見つけるほどの予測はまだ
できないみたいです。
ただ、使っていればもっと精度が上がりそうです﹂
﹁それはすごいな﹂
﹁で、ジルさまは、今どの程度の力を出しているのですか?﹂
﹁大体半分ぐらいですよ。もっと速い剣速にできますけど、
現状はこのくらいの速度で撃ちあって、力に慣れる必要があります
からね。
徐々に、自分の剣速をあげる訓練が必要ですね﹂
﹁ふーん。まだ半分か。それでも少し前に比べれば格段に強くなっ
たでしょ﹂
﹁そうですね。能力覚醒前は、せいぜい2割で対決できてから、す
ごく進歩してますね﹂
﹁でも、さっきので魔力が切れたみたい。もう少し出来ると思って
たけど、未来視の性かな。
少し前の訓練の時に比べると、段違いで魔力が消えちゃう﹂
﹁そうですか、じゃあ、魔力操作の練習と、未来視で魔力を減らす
を繰り返せば、かなり総魔法量が増えると思いますよ。
今のうちに訓練ですね。
未来視の力をもらったときに、ベースの総魔法量が増えてますから、
この先、かなり増えますよ﹂
﹁今、私、どのくらいあるのですか?﹂
﹁最初の頃が、80ですね。一般の魔法を使える人が100なので、
少なめです。
夏の訓練で、200まで増えていました。
そして、先日の女神に会う前が、300。
ラキシス様から加護を貰った後が、1500です。
恐らくベースの基礎総魔法力が、1000ぐらいあるのでしょう。
だから、きちんと訓練すれば、最大10万を超えます。恐らく多少
491
効率が落ちても、5万∼8万までは増やせると思います﹂
﹁え、そんなに﹂
﹁はい、マリアは、今は、大結界魔法を使って魔力を強制的に消耗
させているみたいですが、
スーは、未来視で、なるべく未来を見ることをするだけで消耗でき
るから、
寝る前に必ず魔力操作を訓練して、限界まで未来視をすれば、どん
どん総魔法量が増えると思うよ﹂
﹁そうか、頑張る﹂
﹁では、今日は、未来視の確認だったから、これで終りましょうか﹂
﹁ねえ、ジルさま、参考に全力の剣撃を見せてもらえませんか?﹂
﹁良いですけど、参考になるのかな﹂
と言って、訓練場の中央に土魔法で人型の置物を作り、見ていてく
ださいねと、手を振った。
周りにいた兵士達に、危ないからどいてもらったら、こちら側の見
学席に集まってきた。
30mほど離れた地点から魔法なし、身体強化のみでスタート。
﹁じゃあ、最初は魔法無しでやりますよ﹂
身体強化のみを発動させ、一瞬で土人形の前に移動する。
すれ違いざまに、上から左下に一撃、そのまま返しで軌跡ずれで左
下から右少し上に一撃、
右上から頭の部分を振りきり、左上から、真下に切り抜く、最後に、
左側に構えたまま胴を振り切る。
人形は無残に大破。
スーが﹁ああ、ごめんなさい。ほんとに参考にはなりそうも無いで
492
すね。
最初の上から下の後に、振り返りまでは未来視でも見えましたが、
それ以外にも攻撃がありましたか?﹂
﹁最初の2撃だね。すごいな未来視。実は、上下も入れて、5回撃
ち込みました。普通は一発も見えないですよ﹂
兵士達が、騒いでいる。
見えてなかったらしい。
﹁では、次は、魔法も使いますね﹂
まずは、人形もどきを10体作っておいて、先ほどと同じように3
0mほど離れる。
今度は、私の現在の最強魔法、時間魔法を発動、時間の流れが10
0倍遅くなる。
空間魔法のレベルが上がったら、最近使えるようになった魔法だ。
まだ、レベルが低いので、使えるのは一瞬。
それでも、1回の攻撃ならば十分。
瞬転で一瞬で人形の前に、そして10体の人形もどきに2回づつ攻
撃を行う。
全ての対象の人形もどきは、無残に散る。
魔法を解除。
スーが﹁未来視でも、いきなり壊れた状態が見えただけ。なにが起
きたか解らない﹂と。
一瞬で、全ての人形もどきが、ばらばらに飛び散ったわけだから。
誰も、その姿を確認することなく、遠方から魔法攻撃があった訳で
もない。
兵士から悲鳴が上がっている。 が無視。
今日は、スーの相手をしているだけだし、彼らは関係ないから眼中
にない。
493
一応、時間魔法を説明するが、多用はできないし、時間も短いと告
げておく。
相手がこれ以上いたら間に合わない。
未来視も時間、なので、時間魔法とは同系になるので、少し干渉す
るのかも知れない。
スーが、魔力を完全に使いきったから、休憩したいと、
お茶を飲みに庭園に移動しました。
494
4.41 ジルベールの力を確認2
スーが、休憩したいと、お茶を飲みに庭園に移動する事になりまし
た。
折角の休憩ですから、雰囲気の良い所でデートを満喫したいそうで
す。
庭園に移動すると、マリア達がいました。
スーの侍女がお茶を持ってきてくれます。
そこで、花を見ながら、スーと2人で休憩していたら、マリアが来
て光魔法ができますかと聞いてきた。
今、マリアの友の会で魔法の教育をしていたが、光魔法の使い手が
いないから見たいと。
そういえば宮廷魔道士の人は、ハイルデン公爵家の家庭教師に行っ
たんですよね。
でも、ここ魔法の発動が阻害されてますけど。
特別に、魔法が使える魔法陣の上にいれば大丈夫との事。
はいはいそうでした。
スーも見たいというのでそちらに移動しました。
マリアから﹁私の婚約者のジルベール様です。いまから光魔法を見
せてくださいます﹂と紹介があった。
﹁はじめまして、ジルベール・クロスロードです﹂
先日のお見合いで会った、ロベール様が
﹁お久しぶりですジルベール様、スザンヌ様とご一緒に休憩されて
いるところお邪魔して申し訳ありません﹂と、
いやさすが侯爵家の坊ちゃまは、6歳なのにすごいね。
495
さすが、一流の貴族の子はすごいわ。
私が大人っぽく挨拶できていたのは前世の記憶があったから。
純の6歳、ロベール様の立派な挨拶には参りました。
で、他の方々からもせかされ、さっそく光魔法を見せることに。
まずは初歩のライティング。
右手の人差し指に魔力を集めて、光素子に変換し光らせます。
次に、右手に光素子を剣の形に集めなおし、硬質化させます。
同じように、左手に、盾として集めます。
最後に、全身に鎧として防具を作り出しました。
﹁どうでしょうか?﹂
これが光魔法。
すごい。かっこいいーなど、お子様方からの声援が飛びます。
今日は、マイアー様のグループも一緒にいたので、私の近くに来て
光の防具を触ろうとしました。
﹁危ないですよ﹂と声をかけ、
﹁結構、危険なんです。盾も触る場所が悪いと手が切れます﹂
と光魔法の攻防の防具についての説明をします。
つづいて、結界を見せましたが、あまり受けが良くない。
﹁では、最後に、すごいのをやりますから、みなさま、離れてくだ
さい﹂と警告し、特に後ろを要チェック。
誰もいないのを確認して、浮遊魔法で少し上昇し光の翼をイメージ。
そして魔力の展開と共に掛け声を。
﹁ひかりのつばさ!﹂ ガン○ムか!
自分では解りませんが、おそらく片翼5mの翼が二つ。
魔法陣から外に出ている先の部分で、光が四散しているが、逆に綺
麗になった。
魔法陣から1m程はまだ翼が維持され、その先は形をたもてず四散
してる。
496
翼が四散する分は、魔力を追加しないと維持できない。
めちゃくちゃ魔力が減るので1分ほどで解除した。
普通の宮廷魔道士なら、魔力が枯渇しているが、
減るといっても1000程度なので、私にとってはどうでもない。
1分で1%程度の消費。
﹁どうですか﹂と意見を聞くと、
子供達が感動したようで、みんなキラキラの目でこちらを見ていま
す。
まあ、実戦では全く意味が無いですけどね。
今回の魔法は、全くの見た目だけ。
あれだけの光を出すと、はっきり言って動けない。
イメージするだけで精一杯。
ホントに見掛け倒し。
でも、皆が気に入ったみたいなので良しとしよう。
ハイルデン公爵家のクリシュナ様8歳︵女の子︶が近くに来て自己
紹介をしてきました。
が、ちょともじもじして、次の言葉が出てこないようです。
スーが﹁どうしたの﹂と優しく声をかけると、
兄の事で、私に、相談があるとの事です。
﹁ジルさまは優しいから、怖がらなくても大丈夫だよ﹂と声をかけ
てました。
ああ、やっぱり怖かったのね。
変な魔法を見せたせいで、男の子の人気は上がったが、女の子から
は怖がられたのね。
で、相談内容ですが、
﹁ご存知だと思いますが、最近、兄のオレリアンが、光魔法に目覚
めたのですが、
師となってくれた宮廷魔道士は、魔法としてしか光を集められず、
497
剣に成型できていないのです。
兄も、独学でできない様なので、兄に教えてもらえませんか?﹂と
頼まれたました。
﹁もともと、光魔法は我が家の領地にいるレイブリング元将軍が使
っていたものです。
私の魔法は無詠唱で、他人が使えるような魔法の教え方はできな
いのですよ。
その気があるなら、領地に来れば、レイブリング元将軍が教えて
くれますよ。
公爵家なら、転移門がつかえるでしょうし、ついでに、クリシュ
ナ様も一緒に領地に遊びに来てください。
おいしい食べ物が沢山ありますから、お母様にも相談して見ては
どうでしょうか?﹂と伝えると。
スーが﹁ジルさまのところの料理長が作るご飯は、すごくおいしい
よ。特にデザートはもう。
ああ、また食べたいな﹂と。
﹁そうですが、そんなに。では、おいしい食べ物の話は、お母様に
相談します。
近いうちに、レイブリング元将軍が、王都に戻る話は無いですよね﹂
と聞いてきた。
﹁ちょうど、2ヵ月後にレイブリング元将軍の結婚式が行われます
ので、
その時に、王都に戻ってきますよ。
元アレクサンドロ公爵の末弟の結婚式なので、お父様のハイルデン
公爵は出席されると聞いています。
オレリアン様、クリシュナ様は出られないのですか?﹂
﹁2ヵ月後の結婚式。聞いた気がします。家に帰ったらお父様に相
談してみます。
498
ありがとうございます﹂と丁寧な挨拶をされました。
さすが、スザンヌの従妹になるので似た感じの美少女でした。
﹁スーに、似てるね﹂と言うと、
﹁うん。可愛いでしょ。浮気しちゃダメよ﹂と注意された。
﹁もちろん﹂と答えると、
ニコニコ笑っていた。
あ、もしかしてスザンヌ同様に総魔力量が少ないかも。
スザンヌに、オレリアン様の総魔力量が増える訓練を教えてもらえ
るか聞いてみました。
﹁学校で会えるけど、最初の指導は無理。
ジルさまがやってくれるなら伝えますけど。
その後は、魔力を見ながら補正すれば良いのでしょ。それならでき
ますよ﹂
﹁じゃあ、結婚式で会うからその時に相談しようかな﹂
成長中なので数値は変動します。
とりあえず、これにて本日は終了と、私は領地に帰りました。
現状整理
ジルベール
総魔力量 10万以上
最近、成長期なので、毎月1万前後増えてます。
200
その他身体能力は成長中︵一般成人平均が100︶
力
250
体力 250 すばやさ
499
器用さ
知力
魔法力
200
200
︵IQとほぼ一緒です︶
︵魔法の効果の倍率です。100が1倍︶
︵精神攻撃の耐性値です。︶
300
精神力 200
特技
剣術 レベル8
魔法 神の術補正により威力2倍
認識の変化によって、魔法スキルが一部統合・変化
基本魔法 最大
魔力操作 応用スキル 最大︵攻撃・防御系︶
魔素の高温化︵加熱︶
魔素の低温化︵吸熱︶
流体操作 ︵水など流体系の変形、操作、分離︶
個体操作 ︵金属などの固形物質の変形、操作、分離︶
気体操作 ︵風を使った攻撃など︶
音波操作 ︵防音、音楽︶
光子操作 ︵剣、防具、盾、結界構築︶
スキルレベル上昇中
空間操作 8 虚無空間付与、通常空間拡張、瞬転・転移︵魔法
陣が必要︶
時間操作 5︵レベル秒間×2 実際の100倍の速度で動ける
レベル上昇で条件変更︶
回復魔法 8
*ジルベールが忘れている特殊魔法
*忘却の魔法レベル1︵レベル×10分までの記憶を忘れさせる。
都合の良い様に書き換え可能︶
500
特殊
特殊召還魔法レベル6
上位鑑定魔法レベル8
魔力の可視化レベル9
索敵 レベル9
祈祷 レベル7︵解呪、死霊の解放など︶
メリーナの加護 大 固有スキル 神の目 無詠唱での魔法発動
神の術 神属性を含む全属性魔法使用可能。 魔法効果2倍
参考値
スザンヌ
120
総魔力量 1500
力
150
体力 160 すばやさ
200
120
160
器用さ
知力
魔法力
精神力 120
マリア
総魔力量 3000ぐらい
力
80
60
体力 80 すばやさ
150
器用さ
501
知力
魔法力
150
200
精神力 400
エレノア
総魔力量 5000ぐらい
80
体力 80
力
80
すばやさ
120
120
130
器用さ
知力
魔法力
精神力 150
ニーナ
50
総魔力量 3000ぐらい
力
50
体力 50
すばやさ
300
その他成長中 ほぼ姉に準じる
レイブリング
総魔力量 450
力
150
体力 400
すばやさ
120
120
135
器用さ
知力
魔法力
精神力 120
502
エイミー
総魔力量 120
300
180
体力 力
250
115
すばやさ
知力
80
150
魔法力
150
器用さ
精神力 503
4.41 ジルベールの力を確認2︵後書き︶
ステータスを公開しましたが、ジルベールや子供達のステータスは
固定されていません。
日々成長中です。
小説中、時間が前後している場面がありますので、ご注意を
504
4.42 スザンヌ・ラルクバッハ1
スザンヌ・ラルクバッハは、ラルクバッハ国の第1王女。
現在13歳。
私は、他の人とは少し変わっている。
7歳の朝、前世の記憶が戻った。
私の前世は、この国の建国の王だったシンの妻。
未来視の巫女と呼ばれたスーレリア。
急に、全てを思い出したわけではない。
7歳頃から、毎晩前世の夢を見た。
最初は、ただの夢だと思っていたけど、
徐々に起きている時もスーレリアであることが意識できるようにな
ってきた。
昔、覚えていた知識も思い出し、急に賢くなってしまったので、当
時の家庭教師を驚かせてしまった。
同じ双子のマックと急に差ができてしまい、慌てて、普通を演じた。
最近は、過去の事を夢に見ることは少なくなった。
前世の細かい部分までは思い出せませんが、
私は、自分の持つ未来視の力でシンの建国を助け、その後も毒殺や
暗殺を阻止していた。
普通、私が見た未来視は変更できない。
必ず起きるのだ。
しかし、シンだけは、私の予言を書き換えることが出来た。
私の未来視は、都合が悪ければシンが書き換え、都合がよければそ
505
のまま受け入れた。
そうやって、この国をグランスラム帝国から切り離し、この地の人
々を圧政から救った。
しかし、未来視は万能ではない。
私は、自分の事を予言する事はできなかった。
結局、私とシンが死んだのは、私に毒矢が打ち込まれ、それをシン
が防止した。
たまたまか、狙ってか、回復魔法の使える聖女マリアのいない時を
狙っての襲撃。
もともと、予言では今日シンが死ぬ予定は無かった。
私を助けようとした為に逆側に運命を書き換えてしまったのだ。
シンは、毒に犯され、動けなくなった。
その後、私も撃たれ、結局2人とも死んだ。
それから300年。
なぜか、再び現世に現れた私は、何の役割で生まれ変わったのか疑
問だった。
そして、現世にはシンもいない。
私が大人になると、前回同様、異世界から転移者としてやってくる
のだろうか?
そうは思っていたが、すでに13歳。
前世は、商家の娘だったので、シンとの出会う15歳まで決まった
相手がいなくても問題はなかった。
しかし今世は、王女と言う立場。
実は、7歳ぐらいから隣国アルフォンスのペルージャ王子から婚約
の打診があるまま、保留となっている。
おそらく14歳の誕生日までの残り半年で国内での出会いがなけれ
ば、ペルージャ王子との婚約が決まるはずだ。
506
父である王が、私を外国に送り出すのを渋り、ぎりぎりの限界まで
決めないと返事をしたので、あちらも待っている。
と言っても、ペルージャ王子は、すでに国内の王妃候補は決まって
いる。
この周辺の王家では、幼少の頃に国内の有力者から1人婚約者を選
び、成人前後で国外からのもう1人王妃を娶るのが一般的だ。
どこも外国に送り出す王妃候補は限界まで手元に置くことが検討さ
れるようだ。
近隣、どこも王家も家族仲が良く、子煩悩の王様が多いようだ。
300年前とはかなりの違いがある。
今は、とても平和な世の中。
さて、そんな中、妹のマリアが7歳の誕生日を迎えた。
その7歳を記念した、教会でのお祈りは衝撃的だった。
教会のメリーナ様の銅像に良く似た綺麗な女性が現れた。
姿を完全には認識できないが、女神様だ。
300年前に、シンの前にメリーナ様が降臨された事がある。
300年前と全く変わらない姿。 だと思う。
可愛い感じがする女神様。 だと思う。
メリーナ様の降臨は一瞬だったが、その後マリアの両目が紫。
聖女の証。
300年前、シンの妻は、私ともう1人、聖女のマキと呼ばれた女
性。
そういえば、マリアは夢で見たマキに似ている気がする。
マキは黒髪に両目が紫だった。
今、両目が紫になったマリアは、髪の色が黒から金になっただけで、
よく似ている。
507
マリアは、頭が良く、最近の話も7歳とは思えない落ち着きがある。
もしかしたら、私と同じ転生者で、マキの記憶があるのだろうか?
もしかしたら、シンもこの世界にいるのかも知れない。
その日の夜、私はマリアの後ろから、マキと呼んでみたが、全く反
応が無かった。
マキの転生では無いようだ。
残念だ。
転生者は、私1人だけなのだろうか。
さびしい。
夜の食事は、2年前に食べたメルミーナ様の知り合いからの珍しい
食べ物が出た。
特に、デザートのアイスは、とても美味しかった。
それから数日後、私とマリアの婚約者を探すお見合い会を開催する
と説明があった。
元々、私の婚約者を探すお見合いの予定だったそうですが、マリア
が聖女として目覚めたので、外国から正式な婚約の打診が来る前に
国内で候補者を探し出し、すぐに婚約をさせ国内に留めたいと言う
意図があるようだ。
私の第1候補はグレイ・オズワルト︵10︶と説明があった。
他、今まで交流が無かった有力候補を全てそろえるから、しっかり
と確認するようにと言われた。
はー、グレイ様は、すでに何回も会っているけど、どうしてもシン
と比べると気が向かない。
508
確かに片目金眼で、見目も良い。
おそらく美男子になるであろう。
でも、旦那様になると思うと、踏み切れない。
学園で、3歳上までの男子は全て確認しているが、そこにもピンと
来る男子はいない。
私の親衛隊なる組織もあるそうだが、全員芋ばっかりだった。
それならば、毎年会う、アルフォンス国の王子、ペルージャ様の方
がましだ。
まだ会ったことの無い方々の中に私の王子様がいることを期待して、
開催を待つことにしよう。
509
4.43 スザンヌ・ラルクバッハ2︵前書き︶
スザンヌが、どうしてあんなにすぐに、ジルベールを好きになった
のか。
転生者の話を書いたので、解っていると思いますが、改めスザンヌ
視点で話を書きます。
作者は、この話が気に入ってます。
510
4.43 スザンヌ・ラルクバッハ2
お見合い当日。
王様と王妃様が先に会場に入り、私とマリアは幕の後ろで待機。
マリアが緊張しているようだ。
7歳の子だもの、当たり前。
私は、姉として、マリアの不安を押さえるために、手を握って落ち
着かせる。
そして、準備が整うと、幕がどかされた。
手前に、王様と王妃様。
前方に、男の子とその両親が揃っています。
ぱっと見渡した感じ、やはり年下が多い。
ん、なんとなく、気になる男の子がいた。
雰囲気が、シンに似ている気がした。
まず、私たち二人の自己紹介。
そして、順番に自己紹介があった。
ロベール様の後に、
メルミーナ様の推薦と言うことで、伯爵家と言う立場とは関係なく、
ジルベール様の紹介があった。
﹁ジルベール・クロスロード、金眼ですが、目が弱いので、魔道具
で保護させてもらっています。
511
本日は、明るすぎるために、このままで、ご了承下さい﹂
私は、この時に気が付きました。
今の説明に、どちらの目が金眼と言う説明は無かった。
怪しい。
自己紹介後、ジルベール様は、何も無い空間から突然かわいいぬい
ぐるみと発現させ、私を含めて、他3人の王女にプレゼントをして
くれた。
空間魔法が使える。
そして、プレゼントを持って、ジルベール様が近くに来てくれた。
なんだか解らないけど、心臓がドキドキ。
自分に、何が起きているか解らない。
どうしよう!!!。
プレゼントを受け取る。
満面の笑みで答えると、ジルベール様も笑顔を見せくれた。
ドン! と言う音が聞こえるぐらい心臓がどきんとした。
たぶん、今、恋の矢が刺さった。
︵これ以降、恋する女子 恋に恋する女子かも。
後で目が覚めますので、お付き合い下さい︶
王から﹁空間魔法が使えるのか﹂と
私のジルベール様が、答える。︵もう、私のになってます︶
﹁ここは魔法禁止ですが、武器でなければ、空間魔法の取り出しだ
け使えますね。
空間に入れることは出来ないみたいですけど。
一概に魔法禁止と言っても、細かいルールがあるようですね﹂と、
512
とても10歳と思えないしっかりとした受け答え。
ジルベール様、かっこいいし、シンに似ている。
いや、間違いない。
シンだ。
金眼もあえてどちらの目との言わないし、魔道具が両方の耳につい
ている。
もしかしたら両目が金眼。
それならば確実にシンの生まれ変わり。
私の心が躍る。
その日、皆で教会へ移動するまで、実は途中の記憶が無い。
機会あるたびに、チョコチョコとジルベール様を盗み見。
どうしよう。
ぜんぜんお話ができないまま、どんどん時間が過ぎる。
そして、私の生みの母である2妃レオニーかあさまが、そろそろ退
出することになった。
おかあさまは近頃、体調の悪い日が多く、今日はたまたま参加がで
きた。
おそらく、今日は、私の為に、無理をして参加されたのだ。
すると、私のジルベール様が、
﹁マリア様、2妃様に診断のスキルを使ってみましたか?﹂と発言
をされた。
私のジルベール様が言った言葉は、全部覚えてます。
でも、他の人の言葉は全く覚えてません。
えっへん。
513
なぜか、それから教会に行って、マリアの診察のスキルで病気の確
認をする事になった。
明日でも良い気がするが、王城内は暗殺防止の為に、全て魔法が禁
止されている。
緊急用の魔法が使える魔法陣があるらしいが、完成はまだ先と言っ
ていた。
聖女のマリアは、いつでもいるとは言え、現状魔法禁止を解除する
には、
王城内全ての魔法禁止が解除される。
それは、よほどの事がない限り魔法禁止が解除されることが無い。
確かに次、いつ教会まで移動できるか考えると、体調の良い時に移
動して確認したほうが良さそうだ。
教会に入ると、1妃様が皆の対応をしている。
おかあさまと、マリア、それに私のジルベール様が奥に移動されて
話をしている。
私は、他の人が邪魔をして近づけない。
その後、王様が皆を外に出る様に言われました。
2、3妃様とマリア、私のジルベール様とそのお母様だけが残り、
私達は外で暫く待ちます。
何をしているか、非常に気になりました。
私のジルベール様と別れてしまった。
中が気になり、扉の隙間を良く見ていたら、一瞬、教会の扉から光
を漏れた気がしました。
その後、少ししてから、おかあさまが出てきましたが、顔色がすご
く良くなっています。
514
1妃様が、おかあさまを見てジルベール様に﹁成功なのね﹂と声を
かける。
愛しのジルベール様が﹁はい﹂と答えたのを聞きました。
なにがおきたか解らなかったけれど、きっと、私のジルベール様が
おかあさまを助けてくれたんだ。
前世では、私の両親は彼の登場が間に合わず死んでしまった。
次があれば、必ず私の両親を助けてくれると約束していただいてい
ました。
私は確信しました。彼はシンだ。
今回は、助けてくれた。
ああ、ありがとうございます神様。
私のジルベール様は、少しふらついています。
1妃様が、侍女に言って、ジルベール様を王城へ連れて行きました。
私も、後を追いかけます。
お見合い? 知りません。
愛しのジルベール様は、用意された椅子にすぐに座る。
私は、ジルベール様の、前に立ち、ひざをついて高さを合わせ、
﹁母を助けてくれてありがとうございます﹂と手を握ってお礼を言
った。
ジルベール様は、少し照れた顔をされましたが、お疲れのよう、と
ても眠そうでした。
部屋の支度が終わったらしく、迎えに来た侍女が愛しのジルベール
様を連れて行った。
そこに、おかあさまが来て、体調は良くなったが、念のために部屋
に下がるが、
お見合いはまだ終わっていないから、庭に戻るように言われた。
515
私は、言われたように戻ったものの、もう心は愛しのジルベール様
一色。
その日、お見合いの席で何をしたか全く覚えていない。
どうしよう。
−−−−−−−−−−−−−−−マリア視点をちょっとだけ−−−
−−−−−−−−−−−−
今日は、お見合い。
私は、ジルベールと言う人が第一候補と言われていましたが、
誕生日の日に見かけた少年の事が気になっていました。
メリーナ様とお話をされていたもう1人の転生者。
恐らくは、私とほぼ一緒に亡くなった先生では無いかと思っていた。
さあ、幕が開く、緊張する。
スザンヌ姉さまが、私の緊張に気がついて、手を握ってくれた。
暖かい手。
安心して、前を向くと、幕が開きました。
お姉さまの後に自己紹介をして、お相手の男性型の紹介を聞きます。
自己紹介で出てきた、ジルベール様。
あの日タマを助けてくれた少年です。
空間魔法を使って、プレゼントを頂く。
空間魔法はレア魔法のはず、恐らく、メリーナ様が言っていた転生
者だ。
その後、いろいろあったが、2妃様に聖女の魔法で診断をしたか聞
かれた。
ジルベール様、どうしたのだろう、突然。
なにか確信されているみたい。
結局、魔法が使える教会へ行って、2妃様を見ることに。
516
でも、残念ながら2妃様は体調が悪いとして表示されません。
ジルベール様が、診断では状態異常が確認できないのか聞いてきま
した。
スキルの欄には、状態異常を示すところがあるが、現在のレベルで
は見ることができないようだ。
すると、ジルベール様が、ご自分の鑑定スキルで見た結果を教えて
くれました。
﹁呪い﹂
恐ろしい言葉です。
歴代の聖女が使えた能力には祈祷が含まれていましたが、
今の私はまだ回復魔法だけです。
聖女の効果で自分への、呪いを防御する事はできても、払うことは
できないようです。
回復魔法を極めると、祈祷もできるのでしょうか。
すると、ジルベール様が祈祷で、解呪するとおっしゃりました。
そして、両目が金色に輝き、体も全体的に光る。
ええ! 目の前に神様?
メリーナ様と同じ輝きが。
そして、終わりました。
成功ですと。
ジルベール様は、顔色が悪くなってしまいましたが、診断で見ると、
急激な魔力喪失による、疲れと表示されました。
お休みすれば治りそうです。
外にでると、ジルベール様と2妃様は、お疲れでお休みになりまし
517
た。
私は、タマを助けれくれた少年がジルベール様。
メリーナ様が言っていた転生者がジルベール様。
そして、メルミーナ様が候補と言っていたジルベール様。
この3つが結びつき、安心しました。
後は、明日、先生がジルベール様と確認すれば、向かうゴールは結
婚。
なんてすばらしい。
ところで、スザンヌお姉さま、どうしてそんなにジルベール様の事
ばかりお話になるの?
ちょっと心配ですね。
518
4.44 スザンヌ・ラルクバッハ3
その日、結局、上の空のまま、お見合いが終了した。
お見合いの途中をまったく覚えてない。お相手の方々、すいません。
呪い
の影響だったと教えても
その夜、ジルベール様はずっと寝ているらしく、王城にはいるも
のの、食事にも来なかった。
王様から2妃様の体の不調は、
らえました。
夕方から夜まで王城内の魔法禁止を解除すると判断されました。
そして夕食前に大神官様が王城に来て、王家全員の状態の確認と、
お母様の部屋のものを確認して行った。なにやら怪しいものがある
が、はっきりとは解らないと言っていた。魔法禁止を一時的に止め
る魔法陣の上で魔法を発動させてはいるが、魔法が上手く使えず良
く見えないそうだ。明日また、王妃様方の部屋の魔法の発動禁止を
解除し、改めてもう一度調査をするそうです。
夕食。おかあさまは、体の調子は良いが、少し食べた後に、眠い
とすぐに下がられた。回復魔法の影響で、体の調子が戻りつつある
時に出る症状らしく、寝るのが一番だそうです。これは健康に向か
っている証拠なのだと。
私は夕食時に一生懸命ジルベール様の話をしました。でも1妃様
がジルベールはマリアの婚約者の筆頭だとおっしゃいました。私は
ショックで、それから黙り何も話せなくなりました。
天国から地獄に突き落とされました。
その後1妃様は私が落ち込んだ状態に気が付き、話しかけてくれ
519
ました。私は思い切ってジルベール様への思いを話した。
﹁ジルベール様が運命の人なの。でも、マリアの候補だって。どう
したら良いのでしょうか﹂と。
1妃様は﹁マリアの候補は他にもいますから。そんなのは気にしな
い。本当に運命の相手なら、必ず結ばれるわ。
まずはアタックあるのみ。相手が振り向いてくれないなら、チャン
スは無いわね。私は、いつでもスーの見方よ﹂と。
1妃様は私にいつも優しくしてくれる。
1妃様は女子が欲しかったらしい。でも、自分には女の子が出来
なかった。私は、ずっと1妃様に面倒を見てもらっていた。いつも
いつも1妃様に助けてもらっていた。1妃様が、味方で入れくれる
と考えたら、気が楽になり、その日に夜はしっかりと寝れた。
そして朝。
食堂で皆を待っていると、ジルベール様が起きてきたので朝食を
一緒にすると連絡を受けた。
やった! 朝からジルベール様を見れる。
うきうきで待っていると、ジルベール様が入室された。
その姿を見て、はっとする。予想通り両目が金眼。間違いない。ジ
ルベール様はシンだ。
でも残念ながら、ジルベール様はマリアの隣の席に座った。くや
しい。メルミーナ様の推薦があるから、私の隣にはならなかった。
でもお顔が見やすい位置でもあるので、それはそれで。
食事が終わると、シュミットが近づいて話をしている。昨日貰っ
たプレゼントのお礼を言っているようだ。
ジルベール様は小さな子供の面倒見も良いようだ。優しい人。
520
そういえば、シンも小さな子供に優しかったことを思い出した。
朝食が終わりましたが、お見合いが始るまで少し時間があります。
フィリップが、私について来いと合図をくれた。
フィリップの後ろにいると、フィリップが、ジルベール様に、朝
の訓練を誘った。そして二人で連れ立ち庭に行きました。フィリッ
プ、良くやった。チャンスだ。
私は急いでお見合いに行く支度を整え、タオルと水を侍女に用意
して貰っている間に、急いで今日のお見合いの衣装に着替える。そ
してジルベール様のところへ向かう。ちょうど訓練が終わったとこ
ろに間に合った。良かった。これで気に留めてもらえると良いので
すが。
ジルベール様にタオルと水を手渡しして、少しだけお話。にっこり
笑ってもらえた。
幸せ。
それから急いで、会場に向かう。
今日は、候補者皆さん剣の技を見る事に成っています。とわいえ、
みなさま12歳以下が大半。
聖騎士団副師団長のアシュリーと打ち合いをすれば、絶対に勝て
るわけがありません。年齢相当の動きが出来るのか、資質を見ろと
いうことらしいです。
ですが、ジルベール様、余裕で勝ってしまいました。さすがです。
私のジルベール様は、すごいのです。見ている私が誇らしくなって
しまいました。
私は、早速戻ってきたジルベール様の横をキープ。今日は、積極
521
的に話しかけます。でも、なぜかジルベール様は席を移動する。
逃がしませんよ。と私の席を移動。
すると、きちんとハンカチで椅子の上をさっと拭いて、どうぞと。
ああ、紳士ですわジルベール様。どんどん、好きになってしまい
ます。どうしましょう。
折角話が盛り上がっていたのですが、ジルベール様がミシュル様
も強いですねと。え、正直そんなのもうどうでも良いのですが、そ
れを顔に出してはまずい。一応、私の為に集まってくれた殿方達で
すし。
おほほ。
言われてから、その剣技を見てみると﹁あら、ほんと、オレリア
ン様より強いかも﹂
するとジルベール様から﹁戻ってこられたら、声をおかけになった
ほうが良いのではないですか、私もそろそろ周りの視線が痛くて。
折角の楽しいひと時でしたが、頑張っている彼に譲ります﹂
なんてこと。私の思いは伝わっているのかしら、くやしわ。
﹁まあ、良いようにあしらうわね。でもあなたの言うことも一理ね。
そろそろ他の方のところに行けと、お母様の目も語っているみたい
だし、名残惜しいけどミシュル様のところに行きますわ﹂
と言って席を立ち、押してだめなら退いてみましょう。
﹁マリア、交代です。私が戻るまで席を確保しておいてね﹂と言っ
て入れ替わった。
522
お昼からは、全員でゲーム。ジルベール様となかなか接触できず、
ダンスで2回一緒になるも、アピールできず。
どうしよう、午後からはジルベール様以外からのアピールが激し
すぎる。みんながいると、私がジルベール様に、アピールできない。
しょうがいない。今夜はジルベール様と一緒に夕食をするらしい
ので、チャンスは夜だ。
夜に勝負をかける。お見合い中は、あきらめよう。
夕食前、マリアとジルベールが話をしているらしい。先を越され
た。
夕食、メルミーナ様に邪魔をされ、隣の席を確保できなかったが、
お母様がジルベールにお礼を言うという夕食会だったので、ジルベ
ールの正面にお母様、私はその隣に座れた。机が大きいので、対面
で話をする時は、みんなで話すような話しかできない。
今度、劇場にみんなで見に行きましょうと言った話が出た。私も
ぜひジルベール様と行きたい。
夕食が終わると、呪具を確認探すことになった。そして、まずは、
お母様の部屋へ、大神官様が怪しいと睨んだあたりを探すようだ。
なんと大神官様が見つけられなかった呪具をあっさりと発見。
鏡台の鏡だったそうです。
これは確か少し遠い外国から届いた品。お母様いわく、同じ鏡台
が3台あるらしく、1台はこの鏡台を送ってきた近隣国ラスクにあ
るらしく、そちらの王妃様が使っているはず。お手紙で危険を知ら
せるそうだ。
523
他に、1妃様の侍女の1人が軽く呪われていました。見つかって
良かった。
ジルベール様、ほんとにすごい。
−−−−−−−−−−−−−−王家の裏事情−−−−−−−−−−
裏話1
レオン王と、エミリア1妃、レオニー2妃は、殆ど同時期に結婚
しました。
レオニー様はハイルデン公爵家の令嬢で、レオン王10歳、レオ
ニー7歳で婚約していました。
レオン王が14歳の時に、シドニア王国のエミリア王女が11歳
で婚約します。
レオン王が18歳の時に、エミリア王女15歳で結婚します。
実際に嫁いできたのは、エミリアが大学を出た18歳です。
レオニー様は、アルフォンス王国の大学に留学していたので、戻
ってきて2妃となります。レオン王21歳です。
それから、暫くして、エミリア王妃に女子が産まれ、レオニーに
も男子が生まれます。
しかし、3歳になる頃、二人とも死んでしまいます。
流行り病で、国内の子供達の半数が死んでしまいました。それか
ら、国内の病気が落ち着いた後で生まれたのがルカ王子です。
その1年後に、レオニーにも双子が生まれます。エミリア王妃は、
最初の女子が心に強く残っており、双子の面倒が大変と言うのもあ
り、幼い頃スザンヌの面倒を積極的に見ていました。
スザンヌの3歳の誕生日、本来はレオニー様がドレスを用意する
524
のですが、エミリア王妃たっての願いで、エミリア自ら手縫いで用
意したほど溺愛してました。
レオニー様は、エミリアの心がまだ回復しきっていないのを知っ
ていたので、王様とも相談して、エミリア王妃のスーへの我侭は、
かなりの部分妥協していました。
まあ、甘いものをあげたり、教育を甘やかしたりなどは、そのそ
もエミリア王妃が許さない性格でしたので、特に問題は起きていま
せん。
そんな感じで、二人の王妃からの愛情を注がれたスザンヌは、か
なりの我が侭に娘になるかといえばそんなことも無く。
ちょっと女王様気質が強めのとても優しい女子に育っていきます。
それは、途中で18歳で嫁入りした、3妃アナの影響です。アナ
は、メルミーナ様の子供です。
王様は、社交界デビューの夜にアナを見かけ気に入り、なんと結婚
前にマリアを妊娠させすぐに王城に入ってきました。
スザンヌが6歳前後の頃に新たに入ってきた18歳の令嬢は、非
常に優しいお姉さんでした。丁度、前後して前世の記憶もフラッシ
ュバック的に思い出された時期でもあります。そういう時に、スザ
ンヌと対等に、付き合い、正面から向き合い遊んでもくれました。
我が侭を言うときちんと正し、良いことをすれば褒めてくれる。
素敵なお姉さんを目標に、令嬢教育を受け育ったからです。もちろ
ん、スザンヌには前世もありますが、性格に影響するほど記憶が鮮
明に思い出されたわけではありません。あくまで、多少の知識が授
けられた程度で、今世の性格はこの成長の中で確立したものです。
裏話2
2妃がもう1人の妻に似ていると気がついたのは、婚約からずい
525
ぶん後の王になった後。
実は王は、建国王の絵姿を見ていたので、メルミーナの妻のカト
レアに少し面影があったことは知っていました。
しかし、他の姉妹はそれほど似てはいませんでした。なので気にし
たことはありませんでした。
もちろん、公爵家の令嬢ですので小さい頃の誕生日会などでは面
識がありましたが、その時点では特に気にせず。
小さい頃は毎年の誕生会でも会っていましたが、アナが10歳以降
はたまたま王も忙しい時期で、アナの誕生日に会うことも無かった
のです。
そしてデビュタントの時に、アナが建国王の妻の1人に似ている
事に気がついたのです。絵姿を見たときから好きになっていたマリ
の姿。その姿にそっくりのアナの姿。ほれるのは一瞬でした。
526
4.45 スザンヌ・ラルクバッハ4
それから、同じラスク国から送られた物をかき集めて、私のジルベ
ール様が見てくれた。
1妃様の侍女に、渡った手鏡にも呪があったようだ。
侍女も呪われており、解呪をしていた。
私のジルベール様は、すごい。
10歳とは思えない。
どうも、前世を覚えている雰囲気は無いが、私の中ではシン様の生
まれ変わり決定。
少し気分が興奮して眠れなかったので、侍女達を連れて庭を散歩す
ると、愛しのジルベール様発見。
すれ違って、通り過ぎようとするので、思い切って声をかける。
私を選んでもらえる可能性があるのか思い切って聞こう。
﹁メルミーナ様は、あなたが、マリアの婚約者で決まりみたい言っ
てるけど、私にも権利があるのよね。
見ていると、あたなが特別マリアを気に入っているとは思えないけ
ど、どうなの?﹂
﹁とても悩む問題ですね。どちらかを選べと言われても、はっきり
と選べるほどお二人を知っている訳ではありません。
その中であえて選べと言われれば、マリア様が優勢です﹂
﹁どうして?。メルミーナ様に言われたからなの?、それとも聖女
527
が欲しいの?﹂
﹁いえ、スザンヌ様も、マリア様も、とてもお綺麗で、
私が選ぶような立場には無いと思っていますが、
しいて言うなら会った順番でしょうか。
実は、私は、マリア様の誕生日に王城に来ていたのです。
会食の準備要員として、我が家の料理長と一緒に来ていました。
その日の朝です。
庭で猫が木に登って困っているマリア様にお会いしています。
と言うのが理由ですが、やはり明確に選べるほどではありません﹂
﹁そう、私と最初にあっていれば、私を一番に選んでくれたという
ことかしら﹂
﹁えっと、おそらく。
少なくとも両方ともに嫌いではなく、どちらかと言うと、好きです。
今もドキドキして緊張しています﹂
やった!。嬉しい。
ドキドキなんて、私の事も好きなのね!
﹁解ったわ。
まだ、チャンスはありそうなのね。
私の希望は、貴方が1番でお父様に話すわ。
心にとどめておいてね﹂
と、可能性について説明する。
とわいえ、妹と真剣に争うにはいやだ。
私もマリアが好き。
528
前世と一緒で、2人とも選ばれると良いのに。
﹁はい。選んでいただけたことは光栄です。では、おやすみなさい﹂
とジルベール様が答える。
﹁明日、1日があなたの隣に入れる最後かもしれないから、明日は
遠慮しないわ。ではまた明日﹂とにっこり笑顔。
実は、とても思い暗い話だ。
あまり真剣な顔をすると、ジルベール様も負担だろう。
明日も、笑顔を見せよう。
とわいえ、明日1日。
どうなってもしょうがない。
あたって砕けろ、そして、明日を楽しもう。
お見合い三日目
朝ごはん、メルミーナ様はいない。
おかあさまに頼んで、おかあさまと私の間にジルベール様が座るよ
うにしてもらう。
﹁今日はよろしくね﹂と、ウインクすると、愛しのジルベール様は
顔を赤くして照れている。
かわいい。
食事が終り、今日も朝の稽古をするようだ。
積極的に、愛しのジルベール様の手を握り、昨日の場所へ連れて行
く。
ああ、幸せ。
フィリップが変な顔で見てくるが無視。
529
私は、今が人生で一番に幸せ。
生まれ変わって良かった。
さて、本当は訓練を見たかったが、時間が無い。
急いで支度をして、稽古が終わるタイミングで上手く戻る。
愛しのジルベール様に、タオルと水を渡す。
ああ、かっこいい。
私は、他の候補生を迎え入れないといけないので、先に会場へ行く。
今日は候補者が、10人に減りました。
もともと最初からはずしても良かったらしいのですが、一応私が気
に入る可能性がないか、見せただけのようです。
私の為に、ごめんなさい。
と心の中で謝る。
皆が集まった頃にジルベール様が入ってきた。
私はすすすと動き、ジルベール様の横をキープ。
ジルベール様の横から候補者達を見ると、あれ、ロベール様がいな
い。
マリアの候補が帰ってる?
もしかして、この10名。全部私のための候補生?
まあ、気にしたら負けだ。
不可能を可能にするには、私の意地を見せるしかない。
と、お母様が近づいて来て、ジルベールに近づきすぎと怒られた。
少し離れたが、王宮魔道士副長ジェローム様が現れ、皆がそちらを
見ている間に、こっそりジルベール様の横に近づいた。
まずは、魔法を見せて欲しい。
530
と言うことで、ジルベール様の近くで魔法を見る。
ジルベール様は、聞いたことも無い呪文を唱える。
﹁地に眠る水よ、大気に留まる水たちよ、我が命ず、塊となりて、
障害を消し去れ、出でよ水龍﹂
そして、1mほどの水龍が具現化し、土壁にあたる。
小型の竜の威力はすごかった。
土壁を壊し、後ろの魔力障壁にぶつかった。
ジルベール様が、魔力少なめにしたけど、強すぎたか? と小声で
話すのが聞こえた。
すごすぎです。
でも、私はシンの魔法を知っている。
たしか、彼の得意な魔法の一つに、水龍の聖獣を呼び出し、攻撃す
る技があった。
今のは、それを小型化したものに酷似していた。
王宮魔道士副長ジェローム様が、魔法について質問してきた。
﹁今のは、水と土魔法の合成ですか?﹂
﹁そうですね。土と水を混ぜて概観をつくり、頭の部分を、氷と土
魔法で強化。
体の部分が水の流体に見えますが、中は泥と硬質の石を混ぜ、外側
に電気を纏わせて完成です。
今回は電気が少なめ、水系も氷の温度はそれほど下げてません﹂
私は、もう一歩近づき﹁すっごいです。複合魔法なんですね。他に
もできますか?﹂
﹁そうですね、とりあえず後、炎、風、土の複合魔法、フェニック
スの舞も得意ですよ﹂
と答えた後、私のジルベール様が、こっそりマリアの方へ近づいた
のを見逃してはいない。
531
マリアも、なぜか私のお母様が私のジルベール様のほうへ押して近
づけている。
ああ、お母様まで味方になってくれないなんて。
とはいえ、お母様も私を引き離すわけではなかった。
ジルベール様の両脇を、マリアと私で囲み、皆様の様子を見ていた
ら、
ジルベール様がオレリアン様の魔法を見て﹁違うな﹂と言う。
そして、オレリアン様の近くに行って﹁光と結界は使わないのです
か﹂と尋ねた。
光魔法は、使い手の少ない希少な魔法。
ジルベール様が、ジェローム様に、オレリアン様は光魔法に適正が
あるから、誰かが教えられないのかと頼んでいた。
いないなら、自分が見せなきゃと言っているのが聞こえたが、
王宮魔道士の中から、光魔法を使える人がいるらしい。
その人が急遽呼ばれて、オレリアン様に少し指導をすると、オレリ
アン様は、本当に光魔法を使った。
あらあら、すごいわ。
オレリアン様は従兄だ。
母の2妃は、ハイルデン公爵の妹。
なので、小さい時から良く知っている。
彼は、いつも、兄と自分を比較し、出来が悪いと自信を失っていた。
光魔法が使えるとわかったら、かつて魔法剣士として有名だった元
将軍のレイブリング様のように活躍できる可能性がある。
きっと、彼は自信を取り戻し、前向きに生きれるようになるのでは
ないか。
532
今日のお見合いが、従兄の転機となったなら、それは良かった。
ミシュル様が、私のところに来て、話をしたいと。
私はジルベール様と話をしたかったが、今日は公式には私のための
お見合い。
それは拒否できない。
ミシュル様と話してみると、一つ下とは思えない、しっかりした考
えを持つ青年だった。
ジルベール様に会う前だったら、彼を選んだかも知れない。
自分の中でも結構好印象。
ミシュル様が離れたので、再び愛しのジルベール様の隣に行った。
ジルベール様は、グレイ様と話をするように言うが、私は彼とは良
く話をしているので断る。
すると、マリアは﹁お姉さま﹂とつぶやく。
﹁あ、ごめんねマリア。あなたが気にする必要はないのよ。
あなたもジルベールが好きなんでしょ。
もう解っているの、あなたとジルベールが婚約するのは。
だから私がジルベールの近くにいれるのは今日だけなのよ。
今日だけだから、今日は譲って。お願い﹂
﹁お姉さま﹂
と繰り返すだけのマリア。
私の覚悟を話すと、解ってくれたみたいだ。
533
ジルベール様からの提案を、1妃様に相談すると、
結局、昼からは、グレイ様を入れた4人で話をする事になった。
−−−−−−−−−−マリア視点−−−−−−−−−−−−−
どうしましょう。
どうしましょう。
メルミーナ様から、昨日の夜に、ジルベールもマリアの事を気に入
っているようだし、
マリアも気にいったようだから、決まりだなと言われました。
メルミーナ様に、スザンヌお姉さまもジルベール様を気に入ったと
言ってます。
と言ったが、それは心配するな。
ジルベールもスザンヌを嫌っていないのは知っている。
侍女との対応は全て耳に入れておる。
しかし、私には最終的な秘策がある。
マリアが心配する必要は無いよ悲しませるようなことにはしないか
ら。
と言われました。
どうするのでしょ。
とりあえず、現在グレイ様を入れた4人でお話をしています。
グレイ様も、なかなか良い男ですよ。
でも、ジルベール様と比べると、1段、いや2段は劣る。
すべてにおいて、ジルベール様は、比較できる相手がいません。
運命の人だからなのでしょうか。
単に顔を気に入ってしまったのでしょうか。
性格でしょうか。
能力でしょうか。
534
悪いところが一つも無いです。
しいて言えば、現在の爵位ぐらいでしょうか。
でも、私と結婚するならば、メルミーナ様が後継者とおっしゃるぐ
らいですもの、
侯爵位以上にはしてくださるはす。
そうなると、やっぱり欠点が無いです。
ああ、ありました。唯一の欠点。
お姉さまも好きになってしまったことです。
ああ、どうしてジルベール様はジルベール様なのでしょう。
535
4.45 スザンヌ・ラルクバッハ4︵後書き︶
マリアの話は、蛇足かな。
536
4.46 スザンヌ・ラルクバッハ5︵前書き︶
もう、結果は知ってることだけですけどね。
一応、最後だけを切り出してます。
537
4.46 スザンヌ・ラルクバッハ5
4人で話をした時、最後のジルベール様との時間だと思い、一生懸
命お話をした。
最後は、さびしくて泣きたくなってきたが我慢した。
そして時間が来て夕方、解散した。
ジルベール様が馬車に乗り込む時、これで最後と愛しのジルベール
様にキスをしてお別れした。
私は部屋に戻ると泣いた。
お母様と1妃様が2人で慰めてくれた。
1妃様がお父様を呼んでくれ、私の心をきいてくれた。
涙を止めようと思っても、止まらない。
どうしても諦められない。
するとお父様は﹁任せなさいと﹂とおおみえ切ってお部屋に戻られ
た。
数日後お父様から
﹁父は頑張ったぞ。お前もマリアも2人ともハッピーだ。この国で
に留まり、頑張ってくれ﹂と言われた。
﹁それは、私がマリアの婚約者を奪ったと言うことですか?﹂
と質問すると
﹁いや、2人ともジルベールと婚約させる。
わしの娘を2人も取られるとは、ジルベールはモテルのう﹂と笑っ
ている。
538
一瞬、何?と理解できなかった。
この国は王は3人、公爵は2人の妻を娶れる。
それ以外は1人だけ。
法で決まっている。
ジルベールは、両金眼だが伯爵家ではなかったか?
王の後継者にでもするのか?
それだとルカお兄様が王の後継者ではなくなるの?
あまりに不思議な顔をしていたせいか、お父様がもう少しだけ説明
してくれた。
﹁ほんとは正式に公表するまでは言ってはいけないので、内緒だぞ。
メルミーナがジルベールに公爵を譲る。
だからジルベールは妻を2人娶れる。
よって、ジルベールはスザンヌとマリアの両方と結婚できるのだ。
どうだ、すごいだろ﹂
なんと、前世と一緒だ。マリアも悲しむことが無い。
私はジルベール様も好きだが、姉妹であるマリアも大好きだ。
﹁ええ、お父様、すごいわ。
メルミーナ様は、ジルベール様を私から引き離すだけの悪者だと思
っていたけど、私のために公爵を譲るなんて。
私、今夜から、メルミーナ様に足を向けて眠れないわ。
ベッドの向きを変えてきます﹂
と部屋に戻り、場所を確認して侍女にベッドの場所を動かしてもら
った。
この話は、後日メルミーナに伝わり、ベッドの向きは無事元に戻っ
539
た。
だいたい、メルミーナはスザンヌの為に公爵を譲る訳ではない。
あくまで国のために自分の後釜探しで譲るだけだ。
それから数日後。
正式に婚約者が決まり、私とマリアはジルベール様と婚約した。
マリアとジルベール様は、この場で初めて聞いたみたいで、以前の
私と一緒で、呆けた顔をしていた。
すぐに我に返り、私達のジルベール様が
﹁あの、まだ状況が理解できていないのですけど﹂と言うと、
メルミーナ様から﹁喜んでお受けしますと言えば良い﹂と叱責が。
﹁喜んでお受けします﹂
と言い、私達のジルベール様が深くお礼をする。
王から﹁ではこれで、儀礼を終了する﹂
これで私はジルベール様の婚約者。
生まれた良かった。
2度目の人生に感謝した。
これから、私はジルベール様の妻となるべく、それに相応しい令嬢
にならなければならない。
公爵夫人。
王妃に継ぐ国の重要な役割。
全ての貴族令嬢が目指すような手本にならなければならない立場。
それに、ジルベール様はきっとすばらしい偉業を達成するはず。
540
それに相応しい女にならなければならないし、前世のように守られ
る存在であってはいけない。
令嬢教育だけでなく、自分で自分を守れる技術も身につけなければ。
運動は得意だったけど、護身術に力を入れるようにしよう。
今の私には未来視の力が無い。
今は、前世とは違う。
だから、スーレリアとは違う自分を目指す。
マリアはマリアで、なにか思うことがあるようだ。
夢を見るような目ではなく、確実の将来を見ている目だ。
この子も、大丈夫だろう。
7歳にしては、落ち着きもあり、いろいろと考えている。
まるで私と同じように前世があるような雰囲気もあるし。
これからも、一緒にがんばって行ける。
そして、明けて次の日。
ああ、しまった。
私はジルベール様と婚約したのに、自分がいかにふがいないか気が
ついた。
ジルベール様は両金眼。
マリアは聖女。
そして私は片目が金眼なだけの未来視もできないクズ。
ただ、恋に恋する大ばか者。
541
これではいけない。
スーレリアで死んだときに、次は戦える力もある人を目指すと誓っ
たはずの2度目の人生。
私は、まだ何もしていない。
そして何もできない。
私のジルベール様とか愛しのジルベール様とか言っている場合では
ない。
恋に恋する時は終わった。
私は、ジルベール様の婚約者として隣に立つに相応しくならなけれ
ば。
とりあえず今日から体力強化だ。
今日から、走り込みね。
−−−−−−−−−−−後日−−−−−−−−−−−−−−−−−
それから、夏休みを過ぎ、結局ジルベール様がシンだったことが解
った。
マリアも前世がありマキの魂を持つ者だった。
私は、1人きりではなかった。
300年が経って、また再び会えた。
しかし、他の2人は私ほど前世を覚えていないようだ。
私は300年ぶりだが、2人は途中で別の人生を歩んだようだ。
2人の守護神はメリーナ様。
542
私の守護神はラキシス様。
私だけが別の特別なようだ。
ラキシス様は、私の事を私のスザンヌと、ものすごく親密的な表現
をされた。
私って、何者なのだろう。
ラキシス様からは、未来視の目を頂き、総魔力量もぐんと増やして
もらった。
今世は、未来視に戦う力も持っている。
私は頑張る。
でも、学園の教育に、王城での令嬢教育、護身術と最近すごく忙し
い。
マリアも、教育がすごく増えている。
私が7歳の時にはこんなに無かった。
追加で増えている教育で一番大きいのは、医学の教育だろう。
マリアは私と同じぐらい賢い。前世での知識もある。
だからこなせるのだろうか。
こちらの世界の医学と、ジルベール様がいろいろ調べたり、異世界
の知識をまとめた新たしい医学書もある。
マリアは、医学・薬学・魔法とものすごくたくさんの勉強をしてい
るようだ。
私は、魔法があまり得意では無い。
しかし魔力操作の訓練を続けると、基本といわれる土魔法、風魔法
が使えるようになった。
543
ジルベール様のまとめた新しい魔法学で言うと、流体操作、固体操
作、気体操作だ。
魔素の高温化、低温化、音波操作と、光子操作は良く解らないので、
使えない。
旧来の言い方だと、火・氷・音・光だ。
まあ、元々適正が土を風と言われていたので、流体操作、固体操作、
気体操作で妥当だ。
それに、魔力の可視化、身体強化の魔法、未来視が使える。
魔力の可視化に、未来視を使えば剣では無敵かも知れない。
それでも聖剣を使ってすら、ジルベール様には勝てない。
ジルベール様は、戦いの最中に未来視を無視する時間魔法が使える。
一瞬先の予知では無意味だ。
予知しても、防御不可能な攻撃だと解るだけ。
そもそも、転生者は未来視の予知を書き換えできる。
勝てる訳が無いのだけど。
それでも、前世のように守られるだけでは無いところまで来た。
マリアも私以上に頑張っている。
私も今世を後悔の無い様に日々頑張ろう。
−−−−−−−−−−−マリア−−−−−−−−−−−−−−
めでたく、お姉さまは、ジルベール様と結ばれました。
私も、一緒です。
544
ジルベール様を独占したい。
そういう思いもありますが、私はジルベール様と同じく、お姉さま
も大好きです。
その後、お姉さまが転生者、スーレリア様の生まれ変わりと解りま
した。
記憶にはありませんが、私もマキの生まれ変わりだそうです。
前世でも、お姉さまと二人でジルベール様の妻をやっていた事がわ
かり、他人であった前世でも仲良くやれていたなら、今世はさらに
姉妹。
絶対に上手くやって行けると思います。
その後、王室の勉強をしていて建国の王 シンが、妾を沢山持ち、
子供の沢山いたことを知りました。
でも、スーレリア様の計算で、300年先を見据えた基盤作りだと
書かれていました。
実際に300年、金眼の子が絶えることなく続き、国が保たれてき
ました。
しかし、現在の金眼は、名ばかりのところもあり、金眼で無い人と
圧倒的な差があるわけではありません。
事実、前将軍だったレイブリング様は、金眼でなかったにも関わら
ず国内一の戦士で戦術家でもありました。
そろそろ血が限界に来ていると、王室の危機と教えられました。
王妃様からは、ジルベールと言う新たな両金眼の優秀な人との子が
545
必要だと教えられました。
ジルベール様を1人で独占してはいけない。
その為に、スザンヌ姉さまと協力して、新たな300年の世を作る
仕組みを作りが必要だと。
妻は妻としての役割がある。
私たちは王女。
この先のラルクバッハ王国の未来も考えなければいけない役割があ
るのだと。
そのためにジルベール様の子供は沢山成しなさなければならない。
積極的に妾をすすめても良いが、悪女を見極めそんな女を近づかせ
てはいけない。
私たちも悪女を見極め、ジルベール様の役に立てるようにならなけ
ればならない。
王妃様からは﹁ジルベールも悪女の見極めを教える必要があるわ。
早めに信頼のおける侍女で女に慣らしておくけど、これは教育だか
ら、嫉妬してはいけません﹂
と指導されました。
お姉さまもこの教育を受けているようです。
だんだんと洗脳されている気がしますが、最近はそれが当たり前の
様に思えます。
ジルベール様が一緒の時は、私とお姉さま以外に見向きもせず、私
たち二人を優しく見てくれます。
546
取りえず今はそれで十分です。
やさしいおじい様、お父様、お兄様。
そして、毎日やさしいお母様方に囲まれ、
お姉さまに、ジルベール様。
そして可愛い妹達。
今が、幸せ。
転生して良かった。
547
4.47 ナンシー ミュージカルに目覚める︵前書き︶
ジルベールが後に後悔するきっかけ。
タイトル、本当は、﹁目覚めさせられる。﹂かな?
548
4.47 ナンシー ミュージカルに目覚める
家に帰ると、エレノアとニーナから、近況として、ナンシーがピア
ノを教えてくれないと報告があった。
そして、ピアノ教室がしまったままだけど、役場ではずっとピアノ
がなっているで、見に行って欲しいとお願いされた。
食事もしてないかも知れないと、非常に心配していた。
役場に行くと、確かに一心不乱に日本の現代風の曲をひたすら弾い
ていた。
﹁邪魔するよ﹂と、声をかけて、休憩させる。
体調を聞くと、ナンシーは声の変わりにお腹が返事をした。
一度、領主館につれて帰り、お昼を食べながら話をした。
新曲に集中したいから、ピアノの先生を辞めたいと言って来た。
辞めてどうするのか聞いたら、特に無いけど、今は時間が惜しいと。
もう少しやりたい事を聞き込み。
歌の曲や、劇で使う曲も書きたいと言うので、ミュージカルをやる
のかと聞くと、なんですかと聞いてくる。
恥ずかしさをおさえ、音楽を流し、ダンスを入れながら聞き覚えの
せりふしゃべる。
﹁あー、それそれ!。それがやりたい。ぜひやらせて欲しい﹂と言
って来る。
メリーナ様の加護は無いけど、転生者じゃないかのか?
なんでこんなにあちらの世界のものに反応するかと疑問に思うが、
その考えはとりあえず置いておく。
少し考える振りをしていると、土下座でお願いしてくる。
あまりに真剣に頼むのでやるなら、やらせても良いけど、ほかの楽
器も必要、話の流れ、歌、ダンスなど総合的にプロデュースが必要
549
だと伝えると、何人か他の楽器が弾ける人、作詞ができる人、ダン
スが出来る男女に心当たりがあるという。
この国は、やはり男性社会。
女性の文官採用がされ、働いている女性が多少はいる。
しかし女性の仕事の多くは、侍女や給仕などの仕事。
男女が混じると男性優遇となり、女性が冷遇される。
以前、劇を見に行った時も、3神の女性役よりも、
男性の主人公の方が給料など優遇されているらしいし。
もしかしたら、折角ナンシーが新しい曲を書いても、使われなかっ
たり、
思ったような事ができない気もする。
それに、こういった新しい試みをする時に、女性の地位を向上させ
る仕掛けにしたい。
男性が裏方。
表にでるのは、女性だけ。
女性だけでやれるんだと言うことをみせ、社会進出に役立つ1歩に
したいな。
お!、思い出した。
ミュージカルと宝塚って一緒かな?
あれは、とにかく男は必要なかった気がする。
まあ良いや。
﹁男は入れないようにしましょう。
男役が必要なら、女が男装して演技すれば良い。
女性だけでやるんです。できますか﹂と伝えると、
550
﹁どうして?﹂と
﹁男を入れるとナンシーの思った様な新しいことが出ない可能性あ
る。
それに、女子が思い描く理想の男子を演じるには女子じゃないと無
理です﹂
﹁何が違うんですか?﹂
﹁女子の理想の王子は、踊りながらかっこよく登場するでしょ﹂と、
超恥ずかしいが、なんとなくフワフワと回りながら登場し、ビシッ
とポーズを決めて見せる。
ナンシーが、ぱちぱちと手を叩く。
そこで、先ほどの続き。
﹁このような男子は現実にはいません。
大前提として、そもそも男は、踊りながら登場しません﹂
﹁えーーー。そういえばそうかも﹂
﹁女子の理想とする王子は、女子が演じなければ、満足する理想像
にならない。
それに男は恥ずかしすぎるし、必要性も理解できないから、満足に
演技できないと思います﹂
と、力説すると、納得してくれた。
その日のうちに王都に移動。
ナンシーに手紙を書かせて、直接の関係者及び、関係者に声をかけ
てもらう更なる友達を含め、3日後に集まってもらうようにした。
それと、もう一度ピアノ屋へ行き、ピアノ専任の教師を紹介しても
らう。
少し厳し目の女性だが、本当はやさしいと言う、50代の女性アー
スを紹介された。
アースには、地方拠点で過ごすこと、給金などについて説明し、領
地に移動してもらった。
領地のピアノの先生は片付いた。
551
さて、ナンシーのほうは、3日のうちに、練習場兼宿泊が出来る建
物を探した。
商人街から一般の人が住むような市街に、空いている物件を見つけ、
とりあえず3ヶ月間の契約をした。
ナンシーのお友達が集まった。
楽器担当6名。ダンサー4名。
とりあえず﹁勇者と魔王﹂と言う普通の演劇でも使われる有名な演
目があるので、それを30分程度にコンパクトにまとめ、大体の流
れを決める。
ナンシーの新しい曲を聴き、演目にダンスが取り入れられる事を聞
くと、みんな、このミュージカルに可能性を感じたらしい。
参加者全員がやる気になった。
とりあえずの目標は、アメリの結婚式の披露宴だ。
高位貴族が出るのだから、宣伝にはばっちり。
一応、全員に、女性の地位の向上のきっかけにしたいのだと説明し、
やるなら、男に頼るなと念押しした。
私は、まだ子供だからセーフだけど、他は絶対に入れてはいけない。
と言う条件でスタートした。
必要な楽器や、舞台装置などを用意し、みんなで演目内容の調整を
していた。
曲は簡単に出来る。
途中で勇者と王女が歌を歌う箇所があるらしく、歌詞作りに困って
いたようだが、1ヶ月前に全体の構成、セリフがきまり、練習が積
み重ねられた。
1週間前に確認したら、良い具合に魔法効果も加わり、とてもすば
らしい演目が出来上がっていた。
衣装も完成し、レベルアップに力を注いでいた。
552
4.48 朱雀王 ガルダ、水龍王 イシス
マリアのタマは、守護精霊として活動できるようになっていた。
私も、建国王シンが仲間にしたという、朱雀王 ガルダ、水龍王 イシスの様子を確認する必要がある。
記憶にはないので、召還して、知らないとすぐに殺されたらどうし
よう。
聖獣の召還は、とても危ない気がして、人里から離れた場所に行き、
聖獣召還の契約を行使した。
すると、大量の魔力を奪われる。
空になるまでは良いかと放置すると、1体に付き5万の魔法量を吸
い取られ、ガルダとイシスが現界した。
今、総魔法量が10万を超えたところだったので、空になるところ
だった。
ガルダがしゃべった。﹁すばらしい。完全体で現世に召還されたぞ﹂
イシスも﹁私も完全体。玄獣の状態を維持している。久しぶりの現
世か。
主よ、倒すべき敵がいるならば倒しますので、指示を下さい﹂
﹁いや、敵はいません。召還契約の、確認のために呼び出しました﹂
すると、ガルダが、
﹁完全体に驚いて忘れていた。
まこと
300年ぶりの召還であるが、そういえばおぬしは誰だ?
真なのか?
そうでないのか?
553
魂は似ておるが、何か違う。
そもそも人間が300年も生きているわけが無い。
まこと
しかし我は新たな契約をした訳でもない。すると、やはり真なのか
?﹂
まこと
﹁真とは、300年前の建国の王のことでしょうか?
彼はシンの名乗っていたと聞きました。
私は、ラキシス様から建国王シンの生まれ変わりと教えていただき
ました。
先日、300年前に結んだ契約を、アロノニア様に復活して頂きま
した。
おふたり
残念ながら、300年前の記憶はありません。
前年ながら、2聖獣の姿を見るのは、初めてなのです﹂
まこと
﹁真ではなく、シンと呼べと言っていたな。確か。
お主は、似ておるな。なつかしいと思ったが、だが、記憶が無いの
か﹂とガルダとイシスが共に言う。
﹁はい。今世は、ジルベール・クロスロードという名です。
よろしくお願いします﹂
﹁おおそうか。それは失礼した。
ワシは、ガルダと申す。見ての通り空を飛べる。男性タイプの聖獣
だ﹂とガルダが話す。
﹁わたしは、イシスと言います。
水の場を得意とします。女性タイプの聖獣です﹂
そして、今後は、念話で話が出来ること。
召還時に、与える魔力を減らせば、分体が現界し、攻撃に特化した
魔法になる。
完全体で召還すれば、ガルダやイシスが直接戦闘に参加できる。
554
ガルダは口から炎の塊を撃てる。
体から聖なる炎を出す攻撃が主体。最上級の攻撃は、体ごとぶつか
る技もある。
イシスも同様、水系の攻撃が出来る。
攻撃は、大半が神界から持ってきた聖獣本体の魔力と、1割ほどは
私の魔力を使って攻撃します。
現界している間は、僅かに私から魔力を貰って、体を維持するそう
ですが、
存在するだけなら微々たる消費です。
攻撃をすると、神力が消費する。
一度神界に戻れば暫くすれば復活するが、こちらの世界にいる場合
は、こちらの世界の食べ物を食べれば力が復活するそうです。
ただし、最長でも3日間しかこちらの世界にいることができないそ
うです。
攻撃をしなければ、それほど神力は減らないので、3日間いても、
食べるものは必要ない。
現界した時は僅かながら実態の体を持つが、
完全な実態がある訳ではなく、殆どが精神生命体なのだそうです。
さらに、陸地の上なら、ガルダに乗って高速で移動ができる。
大陸からあまり離れると、飛ぶ力が減る制約があるそうです。
イシスは、海や湖の中を移動できる。
イシスの場合は、頭の部分に大きな玉を空間ができ、そこに入って
移動できるそうです。
ガルダは、単体ならかなりの高度まで上昇できるが、人を乗せる場
合は、結界を使うが、
555
一番高い山を越えることはできない。
寒すぎるところに来ると、結界ではカバーできないそうです。
イシスも、単体ならものすごく深いところまでもぐったことがある
そうですが、
人を連れている時は、数百メートルが限界だそうです。
聖獣の召還攻撃以外に、
イシスの力を使えば、水の操作能力、氷の操作能力が10倍に増え
る。
同様に、ガルダの力を使えば、風と、火の操作能力が10倍になる
そうです。
もう、無敵だなこれ。
さらに、ガルダも、イシスも、もう少し大目の魔力を渡せば、2倍
まで大きくなれるそうです。
さらに総魔力量が無いと、無理だな。
ガルダが、土魔法で鞍を作って乗れと言われました。
現状は、最大、二人なら乗せられるらしい。
とりあえず、空と、湖を少し散歩する事にしました。
﹁私は、先に神界に戻ろうと思います﹂とイシスが話しかけてきた。
それを了承し、ガルダと一緒に周辺を飛び回る。
驚かすといけないので、かなりの高高度を飛んだ。
空の散歩が終り、ガルダが話しかけてきた。
﹁用があればいつでも呼び出すが良い。では、さらばだ﹂と言って、
消えた。
消えたと言っても、私の体の周辺にいる気配はする。
どうやら一度召還したので、つながりが増えたようです。
556
念話を試すと、話もできた。
これは良い。
こうして、聖獣の確認を終え、新たな戦力2体を得る事ができた。
557
4.49 アメリの結婚式引き出物︵前書き︶
ついに、100話
558
4.49 アメリの結婚式引き出物
アメリの結婚式で出す引き出物の準備をしている。
異世界でも、日本と同じように結婚式に披露宴がある。
披露宴では、帰りに来てくれたお客様へ感謝を伝えるための引き出
物を渡す。
披露宴自体は、アレクサンドロ公爵が費用を負担するので、
引き出物は、家で負担する事にした。
王家、公爵家、それに幾つかの侯爵家。
上位貴族ばかりが呼ばれるので、気合を入れて品を用意している。
アイテムボックスから発展した改造したリュック化したマジックリ
ュック。
これに、最近色々と調べた技術を追加し、更に小型のマジックバッ
クを完成させた。
以前開発したリュックは、魔石の消費が激しく、維持費がかかって
いた。
今回は、前に対して、蓋を開けるロック解除に魔法陣を同期させ、
開いた時に空間への入り口が開くように魔法が発動し、閉じると空
間が閉じる。
完全に空間が閉じている間は、魔法石の消費が無い。
開け閉めの時にロックを解除する一手間が面倒になったが、
魔石の消費が殆ど無く、非常に優れた荷物入れとなりました。
さらに、人が持っている時は、魔石からではなく、人の魔力を使う。
魔力消費量は少ないので、魔力の少ない人でも倒れたりはしない。
魔石の消費が少ないので、時間停止の機能をつけても問題ありませ
559
ん。
しかも小型のバック。
︵口は大きく開きます。全ての布地は口を大きく開けるために使っ
ている︶
ようやく完成したこのバッグを、お披露目込みで引き出物のメイン
とする事にした。
布地も最高級のものを仕入れ、見た目も非常に高級感を出した。
冒険者が使う前提のリュックに対して、貴族が持っていて問題ない。
令嬢が下げていても全く見劣りしない表面上は綺麗な皮のバックだ。
参加家族の50の家紋を全て調べ、一つづつマークを入れた完全お
手製のバック。
今回のアメリの結婚式、午前中に大聖堂で結婚式、
昼からは、昼食会をかねた身内の披露宴を行う。
王家に3公爵家。他の関係貴族合計50家約300名の大披露宴会
だ。
最近、王都で、日本食が流行って来た。
領地での温泉宿の食事もそうだし、貸し出し料理人が、
高位貴族のパティー料理の一部を担当している。
1膳のおはしを配る。
そのかいあってか、高位貴族の間では、少しずつ日本食が周知され
始めた。
なので、今回、1人
1家あたりに領地で作った、大皿や、中皿などのセットも配り、宣
伝する。
通常の食器よりも白く綺麗な中皿。
綺麗な赤色の深皿。
560
青が綺麗に出たコップ。
そして、綺麗な絵がかかられ、平たい大皿。
これらの領地で作り出し、そこそこ売れ始めた商品を少しだけ配り、
揃えたい家からの追加購入を期待する。
それに、このマジックバックをつける事にした。
マジックバックは、販売価格500万円を想定している。
バックは、空間魔法の効果が無くても原価で1個50万円する。
家紋を入れた今回のお手製は、量産品に対して1個100万円もか
かった。
金糸で家紋を入れたのが、金糸が高かった。
見栄えを浴するために、家紋以外にも全周を金糸で囲ったので、高
くついた。
余談ですが、ついでに以前のアイテムボックスも、改良版を作った。
これは魔石消費が少ないタイプを300万円で販売する。
そして、元のタイプは200万円で売っていたものを買い取りなら
150万円で。
交換なら、お得意様と言うことで、差額負担だけの100万円で交
換する事にした。
そうして集めた過去のアイテムボックスも使える魔法陣はそのまま
で、
新たな魔法陣だけを加えて、また300万円で売る戦略です。
量産型のマジックバックは、元の原価が数十万の高級バッグ相当の
刺繍が入っている。
更に魔法付加して、500万円。
材料原価1割、魔法陣を作る人たちの人件費1割。
原価率2割ぐらい。
これら、全て、原価ではコストがかかっている訳ではないが、購入
561
価格で考えるとかなりの高級品。
さらに、金糸のものは、特別製だけで、受注生産。
もちろん、皮の色も指定できます。
値段は決めてない。
ちなみに、マジックバックの配布だけは、王家の方々も1家に対し
て1個は、まずい。
そこだけは人数分作らないと。
通常のアイテムボックスが10倍空間の付与に対して、
こちらのマジックバックは、一定の虚無空間を付与します。
おおよそアイテムボックス同等の空間を付与しています。
マジックバックは、結婚式に間に合わせようと、職人が頑張ってく
れている。
最終工程は、私だ。
仕上がりが確認されたバックに、現在1日5個ペースで仕上げてい
る。
現状の日程なら余裕だ。
披露宴の全体スケジュールが決まり、30分、ナンシーのミュージ
カルを実行できるように手配もした。
ナンシーに時間等を告げ、練習を見学した。
ところどころ、ミュージカルぽく無い。
いまひとつだ。
腕の伸び、ジャンプの高さなどが足りてない。
しょうがないので、私が代理で歌を歌いながら大げさに立ち振る舞
う。
562
それをベースに、女性が気に入るポーズを話し合って決めてもらう。
それでも、上手くいかない。
どうしてだろう?
そして、気がついた。
鏡が小さい。
自分の姿が全部写らない。踊ると一瞬しか映らない。
これでは、練習にならない。自分の悪いところが見えないのだから。
すぐに、領地で作っている窓ガラス用の平板ガラスに、片側に水銀
を伸ばして、コーティングした。
それを何枚も作って練習場に運び込み、全面ガラスにした。
多少のゆがみはあるが、踊っている姿を確認するのに問題は無い。
ダンスの質が一気に向上していく。
みんなでかっこいいポーズを話し合って決めていく。
衣装も決まり、領地の服屋に発注する。
順調に、着々と準備が進んでいく。
余談だが、平板ガラスを鏡に仕立てたのを職人が見て、
平板ガラスのゆがみに気がついた。
ガラスを板状にする場を磨き、鏡を作り、ゆがみを確認。
一枚板で、高さ2m×横2m。
ドレスを着ても全体が写り、ゆがみが無い。
さらに、高さ2m×横1mのガラスも作る。
これを組み合わせれば3枚鏡なので、横も後ろも見える。
そして、このゆがみの無い姿見ガラスは、鏡として売れるほど安定
して作れるようになった。
563
当然ですが、まずは王妃様、王女達に納めます。
その後、口コミで広がり、板ガラスの10倍以上の値段で売れる。
公爵家、侯爵家など、結構高いのにどんどん売れました。
1家に1台かと思ったら、奥様に令嬢と、1人1台必要なようです。
さらに、服やドレスを売るところからの注文が来ました。
けっこう、利益率が高く、儲けました。
儲けた分を全部、自分で浪費などしてませんよ。
もちろん、開発してくれたガラス工房に大半はつぎ込みます。
彼らの生活向上も、彼らの子供達への教育にも使います。
それ以外に、儲けをどうつかうか、これが実に難しい。
大半のお金は、次の世代のために、人の教育や、道路の整備、
家の立替、新しく移住する人の建屋の建設。
そして、次の年の種を育てたり、新規事業への投資に使います。
そのかいあって、領地の子供達の教育費、給食費に使い識字率も向
上。
そろそろ、小説家や、漫画が出てこないかなと期待するが、教えて
いるのが、簡単な計算に簡単な文字。
名前を書いたり、物の名前を書いたり。
計算も買い物でだまされないようにする程度。
これからは聖書でも良いからなにか物語を読ませたり、もう少し教
育内容を充実させたいなと思うが聖書は無い。3神の物語も、それ
らしい道徳概念などを教えているわけではない。
物を盗んではいけない、人の為に動く、人を助けあう。これらは口
頭伝来。
564
それに貴族と平民の身分の違い、ルールの違い。これらも口頭。
うーん、貴族も平民も平等などとは教えられないし、この世界、貴
族と平民は、義務も責任も違いすぎる。
何を教えるべきか、世界を崩すことはしたくない。
悩むなー。
当面は、多くの平民に対しては、現状の継続。
その中で出来る子はさらに教えて、帳簿をつけたり、経理をさせる。
そういった人の給料は、高くする。
優劣つけながら、最低限を補償し、働く意欲、向上する意欲を増や
していく。
難しいなー。
565
4.50 アメリの結婚式開催
レイブリングさんに私の母親が実はアメリであると言う事実を告げ
たのは、
アメリの妊娠が発覚し、レイブリングさんとアメリの結婚を許可す
る場でのことだ。
私を除く3人の話し合いの場で、アメリから告げられたようだ。
レイブリングさんが、アレクサンドロ公爵家へ別れて行くときの会
話がぎこちない感じだった。
その後領地に戻ったとき、二人で剣の練習をしている時に、こちら
から母親の事は知っていると伝えた。
完璧に隠していると言っていたが、どうして知ってるのかと問われ
たので、
使用人が話しわけではない。とちゃんと弁護。
正直に、赤ちゃんの時の記憶があると言ったら、
ジルベールならありえるなと、妙に納得してくれた。
﹁これからは、立場上では兄になるので、家族になるから、
必要があれば頼ってくれと、特に女性の扱いは、ジルベールの何倍
も経験があるからな﹂
と、それは、心強い。
レイブリングさんはもてたらしいから、困った時には相談に行こう。
﹁王様が父親だから気楽に聞きに来いと言ってたけど、
王様よりも絶対に聞きやすいから頼りにしてますと。王様をお父様
と呼ぶのはつらい﹂
と言うと、笑いのつぼに入ったらしく、ものすごく笑ってた。
566
結局、メルミーナ様の判断で、私とアメリの秘密は、王家と公爵家
にのみ伝えられた。
特に、皆様子が変わるわけではなかったが、アレクサンドロ公爵家
は、
アメリの子供にものすごく期待をしているようだ。
レイブリングさんの両親は、当然金眼な訳で、先祖帰りなら金眼の
子供が生まれる可能性が高く、条件的には似ています。
王様とも勝手に話が進み、レイブリングさんをどうやって侯爵に上
げるか話し合ってもいるらしい。
そういったわけで、まだ生まれてもいないのに、結婚式前に既に妊
婦グッズに、赤ちゃんグッズが領主館に山のようにとどています。
さて、数日前にアメリを王都に送り、メルミーナ様の家で体調を整
え、結婚式の準備をし、そして迎えた結婚式の当日です。
大聖堂での結婚式は、一言で言えないほどすごかった。
王家と、3公爵家の家族、それにレイブリングさんの元部下の方々
が参加した。
我々も着替えて、大聖堂に入る。
スザンヌとマリアをエスコートして、自分達の席へ。
子供が前に行って良いと、最前列に子供達、次の列目に王家と我が
家の家族達。
スザンヌ、マリアも私の両隣に立ち、式を見守っていた。
スザンヌは、相変わらずのスーパー美少女。
マリアは、超絶かわいい。
そんな2人の間に立つと、どうしても緊張する。
大きな鐘の音と共に、アメリとレイブリングさんが入ってくる。
567
アメリのお腹はそれほど目立たないようにドレスを作ったので、妊
婦には見えなかった。
ドレスを着たアメリはとても綺麗だった。
誓いが終り、二人がこちらを向いて並ぶ。
今から来た道を祝福されながらゆっくりと移動する。
その時に、突然、周り中に何か高魔力の反応が感じられた。
しかし、邪悪ではない。
すると、妖精たちが沢山現れ、妖精の花と呼ばれる、キラキラした
花びらのようなものが降ってきた。
私達3人には、妖精の姿も見えますが、他の人は、妖精の花が見え
るだけ。
皆が、この奇跡に驚き、二人の結婚を精霊がお祝いしてくれた事に
感動していた。
突然、アロノニア様が、私の目の前に来た。
今日のアロノニア様は、超絶美人の完全体型のままではあるけど、
前回のような圧倒的な力を感じない。
どちらかと言うと虚像?
アロノニア様が、
﹁また、そんなに誉めなくても良いのですよ。ジルベール。
今の私は、精霊と交霊を通して見せているだけです。
他の人には見えていません。
ラキシスから、あなた達の結婚式で妖精の花を完璧にやりたいとい
うから、
アメリは、ラキシスのお気に入りだし、予行練習に丁度良さそうだ
から試したのよ﹂と。
568
へー。
今でも大騒ぎなのに、私たちの結婚式って、すごいことになりそう
だなーと、一抹の不安を覚える。
ところで、アメリが、ラキシス様のお気に入り。
この初情報を何気にゲットしたが、どういうことだろう。
スーの事も特別だと言っていたが、アメリは私の本当の母親。
しかし鑑定で何度も見ているが、特別な加護があった様には思えな
い。
どういうことだろうか?
少し疑問に思いながらも結婚式を楽しむ。
そのまま、無事に、式が終わった。
そして、披露宴が開始。
披露宴の参加は、子供達は、夕方まで。
大人は、その後の2部もある。
アメリは、用意していた合計4着の衣替える。
会場で見たのは3着目まで。
お色直しの途中で、暇な時に余興が行われる。
ただし、ミュージカルについては、新婦も席にいるまま、全員がい
る場で行われた。
30分ほどの簡単なミュージカル。
私から、出演者は全員女性、歌とダンスを取り入れた新しい劇のス
タイル。
平民を含め働く女性の地位を向上させたいための取り組みの一つと
紹介し、スタート。
569
本日の演目は、勇者が魔王に連れ去れた王女を助けに行くべたな話。
剣と魔法で敵を倒すのではなく、歌とダンスで敵を倒す。
今までの常識は考えられない劇だ。
最後の魔王は、勇者と王女が二人踊りながら歌で攻撃。
すると、魔王の邪気が消え、やさしい隣の国の王様に戻る。
そこに、隣の国の王妃様が現れ、歌で歓迎。
二組のカップルが仲良く踊り、フィナーレ。
どうでしょう、なかなかにめちゃくちゃなストーリーですが、
30分で話を収めるには、こんな感じです。
結果、王妃を含め、女性方から大歓声を貰った。
最後に、勇者と王様役の人を前に出して、握手会をしました。
打ち合わせどおり、男性役には超カッコ良いポーズで挨拶をして、
握手をして回りました。
大好評。作戦勝ちかな。
案の定、男性方は、目を丸くして見るだけで、驚きの顔が面白かっ
た。
王妃様から、劇場でもやるのか?と質問され。
やるつもりはあるが、もっと演目に参加できる人数を増やして、公
演時間も長くしたい。
準備には時間がかかるけど、数ヵ月後には必ずやると約束しました。
王妃様含め、公爵家の奥方様方もいたくお気に召されたようです。
女性の地位向上も賛同していただき、ぜひこのまま女性だけでやる
ように協力してくれると。
そして、絶対にチケットを購入すると約束してくれました。
570
ここで、そっと国王様が私のところに来て、話しかけて来た。
﹁さっき、アロノニア様から、派手な演出をするから、
スザンヌとマリアの結婚式は1回にしろと言われたよ。
ぎりぎりを狙って、マリアの誕生日に結婚式をすれば、マリアが1
5の時に、
スザンヌが20でジルベールが17だ。それで、式を同時に行う﹂
﹁解りました。他の方ももうご存知ですか?﹂
﹁王妃には言ってある。女神様からの指定だからな、それ以外に選
択肢は無かろう﹂
﹁そうですね。では、あと7年も先ですね﹂
﹁うむ、あと7年しか無い﹂
うん。
やっぱり王様とは言葉が違いますね。
﹁ところで、このミュージカルもジルベールが考えたのか?﹂と、
いかにも不可思議な顔で質問をしてきた。
なんとなく質問の意図を察して、こう答えた。
﹁これは、私が雇った音楽家達が作り上げたものです。
多少の協力はしましたが、私も子供とはいえ、男です。
これの良し悪しは解りません。
とりあえず女性が理想として描く王子様と
男性が理想として描くそれは大きく違います。
私は恥ずかしくて、ポーズは取れませんね﹂
﹁うむ、そうか。そうだよな、あれは無理だぞ﹂
571
﹁もしかして、王妃様に、ポーズをやって欲しいとお願いされまし
たか?﹂
﹁まあな﹂
﹁申し訳ありません。
私が途中途中でやらされた時のコツを教えておきますと、
演技だ、自分ではない別人だと割り切る。
これしかないですね﹂
﹁早く、劇場で見れるようにしてくれ﹂
おねだりされたら頑張ってやるんだな。
やらないって手を考えないところがやさしい王様だな。
とても、王妃様方を愛してるんだな。
﹁それと、女性の地位向上とは、お主その年でそんな事を考えてい
たのか。
まあ、なんと言うか、良く領地を見て、みなの暮らしを見ての事だ
と思うが、
協力できることがあれば言ってくれ、わしもお主の父親の様な物だ。
気楽に相談してくるが良い﹂
﹁はい。ありがとうございます。おとうさま﹂
と言ったら、にまーとした顔をして王妃のところに戻っていった。
しかし、王様より、私の身が心配だな。
最後の練習は、全く見てなかったから、ここまでパワーアップして
いるとは。
恐るべし異世界パワー。
絶対に元世界よりパワーアップしてる。
572
やばい。
こちらで広めた文化でもっとも危険な文化だったかも知れない。
そして、披露宴の最後に、引き出物でマジックバックを配ったとこ
ろ、
参加者から、国宝級の物をもらったと、大変喜んでいただけました。
メルミーナ様に、これ、国宝級ですか?と聞くと、うむ、いままで
見たことが無い。
すばらしいと、大絶賛。
500万円で売ろうと思ってたと言ったら、1億は行けたな。
と指摘された。
しかし、すでに50個も配っているので、1億は難しいだろう。
沢山作れる事を見せてしまったからな。
あまり数が出ると、他国の兵士が戦争で使うようになる可能性があ
る。
もう少しだけ容量を増やせるのか聞いてきたので、
あと2割ぐらいなら簡単にできますよと答えると、
それで、1個5000万円で売れば良いだろうといわれました。
予想の10倍。
いままでのアイテムボックスは、多少なりとも場所をとっていた。
人が持ち運ぶならば1個だけ。
女性でも持てるバックと考えたけど、兵士がこれを数個ぶら下げれ
ば、
食料など多くの荷物が必要なくなり、馬騎士だけで大規模な戦争が
行えてしまう。
1万の兵と言っても、半分以上が戦闘以外の人だ。
特に食料を運ぶ人が多い。
長距離になると実に7割が非戦闘民。
573
戦争目的での使用を考えると、思っている以上にやばい物を作った
ことが解る。
これは、機動力が段違い。
下手すると、ものすごい影響が出る可能性がある事がメルミーナ様
からの指摘で解った。
敵に渡ると、使用禁止にしたり、中身を没収したり出来るようにし
たいな。
アイテムボックスは、すでに我が国の軍でも使われるが大規模な進
行では数が足りない。
今のところは値段の高さと数で、それを防止しているようだ。
アイテムボックスは、徐々に値段を上げていったほうが良さそうだ。
昼の披露宴が終わり、控え室で4着目を着たアメリを見たあと、
スザンヌ、マリアと一緒に挨拶だけして、我々子供は各自家に帰っ
た。
574
4.51 スザンヌの誕生日
アメリの結婚式が終り、暫くたちました。
今は、12月の初めです。
今日は、スザンヌの14歳の誕生日です。
もちろん、双子のお兄様も。
誕生日は、平日だったので、私だけが王家に呼ばれて晩御飯を一緒
に食べました。
もちろん、家の料理長もスタッフとして呼ばれています。
メニューの半分は、家の料理長ゴルゴが担当したそうです。
そして、3名の料理スタッフを1年間入れ替えて育てることになっ
たそうです。
家の料理が、王宮と同じレベルだったとは。
この日私は、スーに誕生日のプレゼントを贈りました。
スザンヌには緑色の髪飾りマリアにはブルーの髪飾りを。
マリアは、誕生日にプレゼントを渡せていないから、ちょうどよい
でしょと。
ちなみに、もちろん、単なる髪飾りではありません。
髪飾りをつけると、暗いところで、少し光る。
光属性で、虫除けの効果を付けています。
この異世界は、元の綺麗な現代社会に比べると結構虫がいます。
今の季節は冬なので、あまり虫がいませんが、夏には、大量に虫が
飛んでいます。
あまりに虫がいるのが普通なので、気にしない人が多いです。
575
この髪飾りに使われているベースの石もかなりの高級品です。
今回は、その石に魔力を込めて虫除けの効果をつけてみました。
装着すると、本人の魔力を使いますが、虫が寄ってきません。
と、効果の話をしたら、王妃様が、
﹁これも、売るの?﹂と聞いてきた。
﹁え、2人のために作ったから考えていませんでした﹂
﹁ジルベール、婚約段階とは言え、私達はあなたの母親も同然よね。
言いたいことは解るかしら﹂と。
﹁はい。では、王妃様方の今の持ち物に効果を付与するというので
よろしいでしょうか。
髪飾り、ブローチ、イヤリングなど、お気に入りも物を持ってきて
ください。
お返しは、3日後になるますが、よろしいでしょうか﹂
王妃様方は、侍女に頼んで、アクセサリーを持ってこさせた。
1,2,3妃様は、公務でよくつけるティアラと、扇を持ってきま
した。
公務の時は、ティアラか扇の、どちらかを必ず持っているそうなの
で、それらを預かりました。
1妃様だけは、2日後に公務があるから、ティアラだけ急いで欲し
いと頼まれた。
大丈夫と答え、その日は解放された。
そうして、週末の誕生日会。
私は、スザンヌをエスコート。
私の服は、残念ながら前回作った物と一緒です。
スザンヌは、新しいドレスを着ています。
今日は、王様が選んだ、赤いドレスです。
576
﹁スー、14歳の誕生日おめでとう。今日の赤いドレスも似合うね。
とても綺麗だよ﹂
﹁ありがとうジルベール様。今日は私をエスコートしてね﹂
﹁はい、王女様ではお手を﹂
今日は、マリアと相談して、会場内では私はスーだけをエスコート
する事になった。
今日の招待客は、先日のアメリ結婚披露宴のメンバーとほぼ同一で
す。
まだ、夜会デビュー前なので、お昼のパーティです。
今日は、私達に注目が集まる。
王様が、私の服の模様に気が付きました。
﹁3本の金の稲穂。これは誰のデザインかな?﹂
﹁我が家の領地で米が取れますから、その稲の模様を使っています﹂
﹁ほう、実は建国の王が着ていたといわれる服が、王家の宝物庫に
しまってある。
それは歴代の王しか見たことが無いものだ。
そこに、4本の稲穂のマークが入っている。建国の王も両金眼。こ
れは、偶然なのかな?﹂
﹁そ、そうなのですか。建国の王と同じ発想ができたのは、嬉しい
です﹂
王様が何も言わずに考え事を始めた。
﹁このマークを使ってはいけなかったでしょうか?
一応、今の貴族図鑑に使用禁止マークとしては登録されていません
でしたから作ったのですが﹂
﹁いや、良い。建国の王は4本だし、違うといえば違う。
そもそもそれを知っているのは私だけだろう。かまわんよ。
577
ついでに、4本も登録して使用禁止で申請しておいてくれ。
おぬしが使うなら問題なかろう﹂
﹁はい。解りました﹂
﹁うむ、これからも我が娘の為に頑張ってくれ。あ、ところで、例
のミュージルカルじゃが、
早くやってくれんか、妻から毎日ポーズを求められてつらい﹂
﹁え、毎日ですか﹂
﹁王妃は3人おるから、彼女らは3日一度だろうが、ワシは毎日じ
ゃ﹂
﹁それは、おつらいですね。
開催は、もう少し先の予定ですが。準備は順調です。
会場も決めたので、そろそろチケットを作り始めます﹂
﹁そうか、それは良かった。早くチケットを持ってきてくれ﹂
﹁では、なるべく早くに。決まり次すぐに案内を送ります﹂
﹁そうしてくれ、助かる﹂
王様、頑張るなー。
いや、しかしここまで影響を及ぼすとは、恐るべし。
異世界を超えて更にパワーアップか。
実は、準備は、ほぼ完了している。
白バラ組みと、赤バラ組みの2体制を目指した体制を作ろうとした
が、
最初から2組は無理があった。
2組での交互公演はまだ無理だが、現状は、混ぜれば、開催可能だ。
スタッフの賃金の問題もあるが、必要ない飾りは後にする事にして、
なるべく早く公演を開始するようにしよう。
578
そうして、本日は、親戚の方々と、たっぷりお話をした。
その中で、ハイルデン公爵と、オレリアン様を入れて、特別休憩室
で個別の話をした。
前回のアメリの結婚式の時に相談されていた案件についてだ。
学園を卒業後、騎士戦術大学へは行かずに、
我が家の領地に来て、レイブリングさんの部下になりたいと。
大学と同じ3年間を、実践の場を含めて学ばせて欲しいと言われて
いたのです。
公爵家の子だからと、特別待遇をする事は無い。
光魔法の使い方については、優先的にレイブリングが面倒を見る。
と言う条件で、本日合意。
しかし、それは1年も先の事。
それまでの長期の休みのたびに領地へ来れば、教える約束をした。
ホテルは、特別室もあるし、正月は少しだけ空きがある。
春休み、そして8月の休みもまだ部屋が空いている。
営業マンとしても活躍しましたよ。
これで最上級の部屋が売れました。
ただ、この時に、オレリアン様の総魔力量を確認したら、まだ80
しかなかった。
ついでに、魔力操作を見てあげると、
まだまだ無駄が多すぎて、ぜんぜん操作ができていない。
すこしだけ、外部から魔力を操作し、魔力操作を体験してもらう。
暫くは訓練を続けるように、お願いしましたが、難しいようです。
ハイルデン公爵直々に、指導をお願いされたので、
579
ハイルデン公爵家の秘蔵図書館を見せてくれるなら、
その日の夜は、魔力操作の指導をすると交換条件を出すと、あっさ
り了承してくれました。
暫くは、2週間に1回、図書館調査に訪問します。
その日に、外から魔力の流れを正す訓練を設定しました。
これからチョコチョコと体感し、魔力操作を習得し、総魔法量も増
やしてもらおう。
ただし、最初は集中的に訓練したほうが良いので、明日からの1週
間は毎日行くことにしました。
これで、武器やその他の文献が見れる様になります。
良かった良かった。
実は、アレクサンドロ公爵家の図書館は、
レイブリングさん経由で聞いてもらっていて、マジックバックを二
つほど提供する代わりに、
100回の図書館への入館権利をもらえました。
ラッキーです。
このように、アメリの結婚式以来、ハイルデン公爵、アレクサンド
ロ公爵と、
かなり気兼ねなく話しかけてくれるようになりました。
良い傾向と受け取っておきます。
誕生日会が終わると、マリアが近づいて来て﹁もう良いですよね﹂
と私の片腕をつかむ。
上目遣いの目が可愛い。
つい、ニヤーと顔がゆがんだ。
580
スーが、反対の腕を取って﹁半分は私も大丈夫よね﹂
と、こちらの美少女の笑顔がたまらない。
そっちも見て、ついつい笑顔に。
笑顔なのか、顔がデレーっとしてるだけなのか。
二人をエスコートして王城の中へと短いデートを堪能する。
そして、今日の夜もお話をして、そのまま王城に泊まった。
そして、今日も、綺麗な侍女さんがやって来て、体をごしごしされ
ました。
581
4.52 閑話 魔道具の研究状況
私の最近の趣味は、魔道具の研究だ。
10歳の子供も趣味とは思えないが、これが楽しい。
やはり私は根っからの研究者なのだろう。
最近、アレクサンドロ公爵家とハイルデン公爵家の秘蔵図書館を見
れる様になったので、
幾つかの革新技術が実現できた。
同じ転生仲間のロジクールと一緒に魔法陣を研究し、それによって
色々な便利魔具が完成した。
スーにプレゼントした、虫除けの効果を持つ髪飾りもそうだ。
これについては、商品化前提ではなかった。
理由は二つ。
一つは、効果が永続ではなく、長くて5年。通常3年で効果が消え
るから。
もう一つは、宝飾品その物を製品として作っていなかったからだ。
結局、商売としては、効果が切れるほうが良いと言う事で、
まず、宝飾品については、メルミーナ様の領地で、作っていたので、
それに効果を付与し売り出すことにした。
今回は、効果を付与する魔法陣だけをこちらから提供し、実際の魔
法付与、販売はメルミーナ様の領地の方で担当する。
新たに販売店まで作ることも出来ないので、それが一番良さそうだ
った。
メルミーナ様のところも、最近他領の質が悪いが安い方が売れるよ
582
うになってしまい、
売れ行きが悪かったので、今後の商品の差別化になり、丁度良かっ
たらしい。
それと、購入した製品には通し番号があり、その番号がついていれ
ば、効果が無くなった時に、
追加で、付与だけを付加する事になった。
また、新たに、製品を、1個購入すれば、ここで作ったものではな
くても、
既存の持ち物に、1個だけ付与を請け負う事にした。
もちろん、料金は頂く。
これで、途中でメンテナンスも出来るし、結局お店に足を運べば別
のものも売れる。
貴族向けは訪問販売が基本だが、用が無ければ呼ばれないが、付与
をしに行く用事が出来るので、
効果3年から5年は丁度良いらしい。
それでも、元が高価なアクセサリーや、気に入っているものに付与
を希望する人が割りと多かった。
貴族階級の特に令嬢が買い求め、結構売れました。
継続的に事業が続くので、良い商売です。
その他の、最近、開発したアイテムを説明しよう。
アイテムボックスの魔石消費量を大幅に減らした。
鍵の技術と魔法の発動を合わせることで、常時使っていた魔法を、
アイテムボックスの開いた時だけに限定して発動するようにした。
これは、王城で魔法を封じられても、マイボックスから物が取り出
せたことで思いついた技術だ。
要するに、マイボックスは、中身を入れるには空間を空ける必要が
あり、空けるときに魔法が使われる。
そして、取り出すとき、普段は空間を空けて出すが、特定部位の空
583
間に対して魔法を解除すれば取り出せる。
キーをつける事で、空間を維持するだけなら、実は魔力が必要なか
ったことがわかった。
最近は、このアイテムボックスを応用して小型のマジックリュック
や、マジックバックを作った。
そして、画期的なものが、簡易テント。
マジックテント!!
これは、普段は、毛布だ。そこから、中身を出すと、およそ4から
6人が中に泊まれる大きなテントになる。
使い終わると、再び毛布に戻る。
極めつけは、テントに中に食料や、物品を入れたままでも大丈夫。
地面が多少傾いたり、でこぼこしていても、建てるとまっすぐに建
つ優れものだ。
これは、マジックバッグよりもさらに高くした。
虫除けも、持ち歩き用ではなく家に設置するタイプも作った。
家の中央に設置すると、半径50mの範囲で虫が来なくなる。
これは、魔石を消費するタイプ。
夏に、魔石をセットして使うのだ。
その他にも、持ち運び出来る魔道コンロを作った。
魔道具が無い場合は、まきや、炭を使うわけです。
しかし、魔物のいる外で、火をたいて、大量のまきの煙を出すのは
危険です。
いままで、外での食事は、結構火を使わない料理が多かったのです。
しかし、外にいても、食事は大切です。
ただ、魔道コンロは、魔石を使うだけだと消費量が多く、お値段的
に良くない。
584
魔石ではなく、個人の魔力を使ったほうが良さそうなので、人から
魔力を取り込めるようにもしてある。
さらに、温度を維持するなど、火力を落とす時には、ローソクを使
うこともできる。
ローソクは、便利です。
ちなみに、1日中コックをするような使い方には向いていない。
あくまで、マジックテント用の外での料理器具です。
もちろん、マジックテントの中でも料理はできますよ。
雨の日とか。
ちなみに、魔法を使えれば同じ事が出来るわけですが、
魔法で料理をするのは、非常に難しい。
あまりに細かい火力の調整を長時間行う必要があり、魔力が足りて
もあっという間に疲れてしまう。
だからこその専用の魔道具なのだ。
我が家の領内では、出かけるたびに魔力量の多い平民を勧誘し、
領地でこうした魔道具作成をやってもらっている。
魔力操作のコツも教え、日々魔力を増やしながら、皆頑張っている。
領地での製品作りは、多岐に渡っているが、
それらを助けるために、魔道ミシン、魔道ろくろなども、開発した。
はたき
や、
ほう
ただ、魔道掃除機は、うるさいし、侍女が持つとダサい却下された。
の方が良いようだった。
静電気をめぐらせ、ほこりを取りやすくした
き
魔道ほうき。 魔女の定番?
でも、それは飛べません。
そして、最悪なのが、魔道洗濯機だった。
585
これは、魔力の細かいコントロールもそれほど必要ないし、
結局全自動でなく、人がそこにいるなら、直接手で回した方が良い
と、手回し式になった。
なんで?
わかった事は、便利でも、人の仕事を取ってしまうのは、だめなよ
うだ。
つまり、人が主でなければならないのがこの世界のルール。
ちなみに、現在研究中の魔道具は、
魔道歯ブラシ 小型化が失敗 自分専用はあります。使ってます。
魔道扇風機 魔石の消費量が多すぎる。氷魔法の方が効率が良
い。
魔道のこぎり 歯を繋ぐ機構が作れない。木の伐採効率を上げた
い。
付与:状態異常の回復、無効化、大軽減 単純に難しい。微小ぐ
らいならできた。
付与:精神魔法の回復、無効化、大軽減 単純に難しい。 付与:毒の回復、無効化、大軽減 単純に難しい。種類を
限定すれば無効化できた。
魔道具関係なしで
サスペンション付きの馬車 強度不足。 自転車 スポークが作れない。
現代風の作り方は解っているけど、こちらの世界のルールにのっと
り魔力を使った製法がうまく行かない。
いくつかは、今一歩まで来ている。
ゆっくりとやっていこうと思う。
586
関係ないけど、ゴルゴさんは現在ラーメンを研究中です。
それなりのラーメンはできてるんですが、納得がいかないらしく、
正式メニューになりません。
とんこつのうまみが足りないそうです。
587
4.52 閑話 魔道具の研究状況︵後書き︶
魔道具の研究をしている転生者ロベールは、アレクサンドロ公爵家
に変更しました。
の息子と名前が一緒だったので、
ロジクール
どこかで見た名前だって?
そうですね。
道具といえばロジクール?。
588
4.53 侍女サラの教育︵前書き︶
この話の続きは、5章後半に出てきます。
ジルベールの専属侍女登場まで関係しません。
589
4.53 侍女サラの教育
スーの誕生日も過ぎ、年末に向けて準備中。
本日も用事があって、王城呼ばれ、そのまま泊まってます。
最近、王妃様や王様からよく呼ばれます。
王女に会いに行くより多い気がします。
大体は、何かを教えてくれる先生が特別に来るからと、王城で勉強
をさせられます。
大体、夕方に来るように呼ばれてそのまま夕食、泊まり、次の日の
朝から勉強されられます。
大体は、フィリップ王子と一緒に受けます。
スーとマリアは、喜んでますが、王城の泊まると、お客様扱いで侍
女が色々面倒を見てくれますが、
それが恥ずかしいし、面倒です。
自分でやるというと大抵は、侍女が怒られるから困ると言われ、
結局いつも面倒をかけてしまいます。
たまに、用事が侍女の練習と、ありえない呼び出しがあったりしま
す。
まあ、それはほんとに極たまにです。
何かにつけて呼び出し、スーやマリアと話をさせてくれているので
しょう。
たまに、王妃様とだけ話をして帰るときもありますが、なぞです。
そして、本日の用事は、年末のパーティースケジュールの確認でし
た。
用事はすぐに終り、ダンスのレッスンを受けさせられました。
スーと踊れたので、良かったです。
590
王妃様全員とも踊りました。
王妃様は、近づくと良い匂いがします。
どきどきしちゃいました。
今日の部屋付きの侍女は、かなり可愛い子です。
1妃様の一押しの娘だと言ってました。
自己紹介で、もうじき、フィリップ王子の専属侍女になるサラと言
うことだそうです。
まだ、教育中なので、粗相があったらすいませんと、侍女長から紹
介があった。
今日は、顔合わせを含めて担当になったらしい。
夜寝る前に、その子に風呂に入れられた。
体を洗ってくれるらしいが、自分で洗えますと断った。
その後で、今日は、垢落しをすると。
体臭がにおわないように、定期的にしましょうと。
前もやられたけど、確かに汚れの様なものが落ちるが、痛いんだよ
な。
それも断ったら、若い次女の練習が必要で、この子は特に恥ずかし
がりや。
フィリップに付ける前に、男性で練習をさせたいが、いきなり成人
は緊張するで、
できれば、子供で練習したいそうです。
ああ、それでか、垢落し何回目だろう。
そういえば、みんな侍女長が、今までの子も男性がはじめてみたい
なことを言っていた。
591
じゃあ、しょうがない、実験台ですね。
専用の台に寝かせられ、ブラシで体をごしごしと洗われた。
侍女長は、少し離れて監視している。
だんだん、痛くなる。
痛くなる。
ちょっと痛いよ。
体の向きを変えされられる。
いや、痛いって、痛い。
﹁痛い﹂と声が出た。
マジ、これ罰ゲーム?
一緒についていた、侍女長が、力の入れすぎだし、
そこはダメなところと説明したでしょと怒った。
この人侍女長も、ちょっとダメッ子
止めるの遅いって。
台から降りて、確認したら、あれの回りから血が出てた。
しょうがないから、自分で回復魔法を使った。
いやマジ勘弁して欲しいわ。
もう一度お風呂に入って、その後、お詫びと、侍女長が丁寧に洗っ
て、
二人で肌のコンディションを整える薬を塗って、マッサージして
くれたけど。
侍女長が、指導しながらやってる。
592
侍女長さん、さすがです。上手い。
けど、やっぱり、サラ 下手よ。
フィリップ王子、大丈夫か?
可愛いから、1妃様が選んだのかな。
1妃様が好きそうな子は、こういった可愛い感じの子なのかな。
でも、ドジッコだから、侍女長が、フィリップ王子で試す前に、私
にしたんだな。
ちくしょー。
まあ、私だから無事で良かったと思うことにした。
フィリップ王子だったら、痛くて寝込むな。
いや、そもそもあれに、だれが回復魔法使うのか考えたら、
あー、自分でよかったと思えてきた。
と、寝る前に、報告を聞いたのか慌てて1妃さまが来て、体を全部
確認した。
また全部ぬぐの。
パンツも脱げって、ああ、血がでたのは確かにそこですけど、見ま
す?
見るんですか!!
私の事も母と思いなさいと言われて、脱がされた。
体全部、しっかりと確認して、安心したようだ。
最後に、謝ってから、お詫びに、私が添い寝しましょうかと提案さ
れたが、丁寧にお断りした。
そして、ようやく、寝ました。
おやすみなさい。
593
....
朝、起きたら、サラが起きるのを待ってた。
また、ごめんなさいと、申し訳なさそうに謝られました。
もちろん、許しましたが、なぜか泣き出す。
頭をなでなでし続け、ようやく落ち着いたらしい。
着替えを手伝ってもらって、朝食の間へいざ!
開口一番でスーから、昨日ひどい目にあったっと聞いたけど大丈夫
ですか、と心配されたが、
回復魔法があるから大丈夫だったと答えたら、本当に怪我して血が
出たんですね。
と真剣に心配してた。
朝、いつも通りフィリップ王子と鍛錬しましたが、
今日は、ちょっとしごいておきました。
はー、すっきり。
侍女、サラの教育は始ったばかりらしい。
きっと、先が長い子だな。
もしくは、失敗して死ぬな。
と不吉なことを思ったが、実際にそういう事件が起きると思っても
いなかった。
−−−−−−−−−−−サラ視点−−−−−−−−−−−−−
私は、16歳。
男爵家の3女に生まれた。
現在婚約者は無い。
どこぞの貴族と結婚する道もあったが、王城で働く侍女となれば、
594
さらなる教育を受けれて、ちょっと良いところの貴族と結婚できる
らしいと、
親に進められるまま、花嫁修行の一環で、侍女の採用試験を受けた。
4月に採用され、働きをしながら、教育を受けていた。
勤めてから、半年で、侍女長に連れられ、王妃様の世話役も少しづ
つするようになった。
そこで、なぜか、1妃様に気に入られ、フィリプ王子の専属侍女選
抜に選ばれた。
急に親も呼び出され、専属侍女に選ばれた際に、契約を交わすかど
うか聞かれた。
親は狂喜して喜び、当然だが、私は反対することなどできなかった。
そもそも、専属侍女の事が、よく解っていなかった。
私を含めて、3人が候補。
他の候補も綺麗な人だった。
各王妃推薦の人材だ。
これから半年かけて、競争し、専属が決まるらしい。
ただ、落ちても、チームとしてフィリップ王子の面倒を見ることは
決まっている。
先日、垢落とし教育を受けた。
侍女同士で試していたが、私のブラシは弱いらしい。
次は、もう少し強めにしよう。
今日は、スザンヌ様、マリア様の婚約者のジルベール様が宿泊され、
その方の面倒を見ることになった。
フィリップ王子と同じ10歳だからと、私の練習だと、侍女長が言
っていた。
ジルベール様は、噂には聞いていただけど、
さすがに二人の王女が惚れた婚約者だけあり、かっこいい。
595
フィリップ王子よりもハンサムかも知れない。
将来が楽しみの方だ。
お風呂に連れて行くと、勝手に自分で済ませてしまった。
侍女長がまたかと言う顔していたが、今日は文句を言わないようだ。
そして、問題の垢落し。
これも、同じように断られたが、侍女長が説明し、私の練習が始っ
た。
脱いだ体を良く見てびっくりした。
10歳ってこんなに筋肉があるの?
その後、ブラシで体を擦り始める。
頑張ってブラシで擦ります。
侍女仲間に、弱いと言われたいたので、一生懸命頑張ります。
ちゃんと垢も落ちているので、大丈夫でしょう。
そして、上を向いてもらう。
かっこいいな。
でも子供とは言え、男の子。
だんだん緊張してくる。
どうすれば良かった?
タオルをかけるんだ。
無い。
あ、私が落としたやつだ。塗れてる。
冷たいのは使えない。
もう良いや。
下を見るとあれが見える。
え、こんなに。 10歳よね。
子供の頃にみた、お父さんのと違うんだけど。
596
ふと、この先、習ったことが全て消えた。
とりあえず、急がなきゃ、ごしごし。
あ、ここはどうするんだったかな。
おしっこするところは汚いから、もっと強くするんだったかな。
えい!
﹁痛てー﹂
侍女長も急いできて、ここは、だめと言ったでしょと言われた。
﹁汚いところだから、一生懸命やったのですけど、ダメでしたか﹂
﹁ダメに決まってるでしょ。ここは大事なところだからしちゃい
けないの。 あー、ジルベール様、大変、血が出てます﹂
あ、ほんとだ、血が出てる。
どうしよう。
大変なことをしてしまった。
スザンヌ様とマリア様のお相手もしないうちに、血を出させてしま
うなんて。
どうしようと気が動転。
でも、ジルベール様は﹁自分で回復魔法を使うからと、大丈夫﹂と
おっしゃり、その後で
﹁サラの練習なんでしょ。私は丈夫だから、大丈夫。これフィリッ
プ王子じゃなくて良かったね﹂
とやさしく声をかけてくださりました。
その後、なんとかマッサージを行い、無事に終わった。
私は、お茶をいれ、ジルベール様にサービスをしていた。
597
すると、1妃様がやって来て、ジルベール様に謝っていました。
ああ、王妃様の手を煩わせてしまって、私はたぶんこれで首だろう
と覚悟をした。
王妃様は、ジルベール様を裸にして、体全体を確認すると、怪我が
無かったので安心され、
戻っていかれた。
戻るときに、私も一度部屋から外に出されました。
そして、王妃様から、
﹁侍女達に、慣らすための子供と安心してたけど、
ジルベールが、10歳だからまだ小さいと思って油断してたわ。
10歳で、あんなにしっかりしてるなんて。
あなたも予想以上のものを見たからと、あまり動揺してはダメよ。
私は、1度の失敗でとがめることはしないけど、何度も同じ失敗を
する子は許さないわ。
今後は、ちゃんと気をつけて御世話をしなさい﹂
と言われました。
どうやら首ではなかったようです。
朝、ジルベール様が起きたら、もう一度、昨夜の事を謝ると、許し
てくれました。
なぜか、涙が止まらず、逆にジルベール様に落ち着くまで頭をなで
なでされてました。
ジルベール様は、やさしいし、良い人です。
ジルベール様の専属侍女になる人はきっと幸せでしょう。
私は、フィリップ王子不満がある訳ではありませんが、
あまり話していないし、雲の上の存在のままでイメージがわきませ
ん。
さあ、気を取り直して、毎晩侍女相手に、垢落しに磨きをかけ、
598
え、それはもう良いのですか。
終り?
今から毒を見極める教育も、短剣使いも、ダンスもやるのですか。
貴族年鑑も全部覚える。
化粧も、簡易医療、礼儀作法にまだまだ先が長い。
私、大丈夫?
−−−−−−−侍女長から−−−
フィリップ王子の専属侍女候補三人の教育が始まりました。
母親である1妃様が決定権を持っているので、サラがイチ押しらし
いのです。
しかし、ドジです。
でも、他の二人の候補も、負けず劣らずドジです。
私は、この3人ドジ娘をサシストリオと呼んでいます。
3人の専属侍女候補の頭文字を取りました。
サラ、シルビア、スピア。
サシストリオは、本日もいろいろなところでやらかしながら、
3人の王妃に見守られ、育っていっています。
ちなみに、私も、昔はかなりのドジ娘でした。
ですのでサシストリオには、親近感がわきます。
歴代の侍女長にドジ娘が多いので、王城ではドジほど後の伸びがあ
る。
と信じられているらしく、ドジを優先的に教育し、伸びる人材を探
しているそうです。
ちなみに、同じ失敗を繰り返すドジっ子は、即座に首です。
さて、この子達の結果はどうなるのやら。
599
今日もサシストリオの教育を頑張りますか。
あっ、私、今日はお休みでしたわ。
厳しい指導は明日からですね。
残念。
600
5.1 年末前夜
12月30日に王城に来てます。
年の最後は12月31日です。
1年は、前の世界と一緒で365日
通常30日で、1月、2月、3月が31日
間を空けて11月、12月が31日
冬の方が1日長くなってます。
うるう年は10月も31日です。
私は今日から1月3日まで王城に泊まりの予定です。
私以外の、王家の子供達と婚約している方も全員泊まりです。
ちなみに、私以外の婚約者は全員女です。
ルカ王子の婚約者は、アレクサンドロ公爵家の令嬢サフィーナ︵1
5︶ ピンクの髪、右が赤、左が金。
母親が2妃様の妹、ハイルデン公爵家令嬢でもある。
なのでなんとなくスザンヌにも似てます。
両公爵からの血筋を持ち、恐らく国内でもっとも血筋が良い。
現状、国内で最高のお相手だ。
本人の意向がどうであったかは知らないが、貴族院での話し合いで
も他の候補を足元にも寄せず、文句なしでルカ王子の相手候補とな
ったらしい。
その場で、今代の 至宝 の称号を貰った 美人・才女です。
601
本人達は幼少の時からそう教えられていたようなので、別に当たり
前だったのだろうか。
サフィーナ様は幼少時から王妃教育を受けているので、私と同じ1
0歳前から私以上に王城に通っていたそうです。
マクシミリアン王子の婚約者は、アナスタシア侯爵家令嬢。
青の髪に、両目が青。
こちらはお見合いで、マクシミリアンが決めたご令嬢です。
二人ともおっとりとした雰囲気のお似合いのカップルです。
もちろん、貴族院での最終承認も通り問題なし。
そして、最後の3人目が私ジルベール。
この3人が王城の客室に泊まりです。
当たり前ですが別の部屋ですよ。
二人にはアメリの結婚式や、スザンヌの誕生日会で会っていますが
あまり話をした事は無かった。
明日の31日は王家の人と過ごすが30日から泊まりで呼ばれまし
た。
そして夕食後になぜかこの3人だけが部屋で話をしている。
理由は良くわかりませんが元々こういうスケジュールと説明があり
ました。
王家の方はなにやら年末年始のいろいろな支度があるらしく、夜は
別の部屋に分かれました。
そして私はお互いの婚約者もいない状態で、年上の女性二人とひと
時を過ごせと。
602
これは、私にどうしろと?
まあ交流してちゃんと知り合いになっておけということなのでしょ
うけど。
アナスタシア様とは、夏も一緒にすごしていたので多少慣れてます。
まずはこちらと会話。
﹁アナスタシア様、夏以降、魔力操作は慣れましたか﹂
と質問したら
﹁だいぶ良いと思うのですが、見てもらえますか?﹂
と言って
魔力操作を始める。
サフィーナ様は
何でいきなり魔力操作と言った顔でこちらを眺めます。
魔力を可視化してみると、流れによどみがあるのでそこを指摘し、
少し変えてもらう。
サフィーナ様が
﹁なに、魔力が見えるの?﹂
と聞いてきたので
﹁はい。私は魔力を目で直接見れます﹂
と答える。
﹁魔力が見える。それはすごい。初めて聞きました。私の魔力操作
も見てください﹂
と言って、サフィーナ様も一緒に魔力操作を始めました。
サフィーナ様も魔力操作はなかなか綺麗だった。
さすがアレクサンドロ公爵家令嬢。
魔法が得意な家系ですからね。
603
でも、まだ魔力のよどみがありそこを指摘して変えてもらう。
しかし、指摘しても変わらない。
上手くできないようだったので、部分的に外部から強制的に流れを
変えてみるとサフィーナ様が驚きの表情をする。
それで、すぐに理解したらしく正しい流れ方に出来るようになった。
2人とも、10分ほどで綺麗に流れたので良いですよと答える。
﹁ふああ、少し疲れましたわ。
で、これを繰り返すと魔法が強くなるの?
最近、ルカ王子もたまに魔力操作の練習をしているのを見ますが、
理由を教えてもらえますか?﹂
﹁そうです。魔力操作を訓練すれば魔法を放つ時の無駄が無くなる
ので、威力は増えます。
それだけではありません。
魔力操作を繰り返し続けさらに全ての魔力を消費する事で、総魔
力量が劇的に増えます﹂
と説明した。
そして鑑定で今の2人の総魔法量を教えてあげた。
現状整理
サフィーナ
総魔力量 420
70
80
体力 90 力
すばやさ
604
150
180
160
器用さ
知力
魔法力
精神力 150
アナスタシア
総魔力量 600
80
100
体力 80 力
すばやさ
110
120
120
器用さ
知力
魔法力
精神力 120
夏から半年間やり続けたアナスタシア様は、総魔法量が600ほど。
これでも元から3倍ほどに増えています。
サフィーナ様は、さすがに左目が金眼なだけあり普通に400超え
てます。
それを告げると
﹁アナスタシア様、600。宮廷魔道士よりも多いのですね。すご
い。
私、うぬぼれていました。私が学園でトップだと思っていましたの
に﹂
と言うので
﹁サフィーナ様も寝る前に1時間頑張れば、すぐに2倍、3倍に増
えますよ。10倍までは補償します﹂
と私が言うと
﹁10倍て、総魔力量3000あったら伝説の聖女クラスじゃな
605
い。
マリア様が大人になるとそのぐらいあるかも知れませんけど、私が
そんなになるとは思えないのですけど﹂
﹁マリアは、すでに3000超えてますよ。今で5000ぐらいだ
ったかな。
私は、7歳の時は1万を超えてました﹂
﹁7歳で1万。あなた今幾つあるんですか?﹂とサフィーナ様が。
﹁うーん、今で10万は超えてますけど、まだ日々増えてますよ。
聖獣を完全体で召還するのに5万必要ですから、まだまだ足りな
いでね﹂
2人が口を開けたまま黙ってしまった。
場の流れを変えようと、マイボックスからゴルゴが作った水羊羹を
取り出して侍女に渡した。
そして、緑茶を入れて貰った。
二人とも初めての黒いデザートに驚くも、何か解らずとも女子の感
なのだろう、おいしそうとしっかりと味わっていた。
︵侍女も欲しいそうだったので、残りは食べて良いよと言ってあり
ます。︶
サフィーナ様が気を取り直し、話題を変えてきた。
︵サ︶﹁そういえば、先日開演したミュージカルに行きましたのよ﹂
王子からチケットを頂いたので、お友達と行ったんです﹂
︵ア︶﹁3日間連続で公演があったんですよね。私も行きました。
606
﹁王家には沢山チケットを配りましたからね。良かったですね﹂
︵サ︶﹁最初に見たのはアメリ様の結婚式でしたが、あれもジルベ
ール様が企画されたと聞きましたがそうなのですか?﹂
﹁ええ、私のところにいた音楽家が是非にと言うので、出資しま
した﹂
げせわ
︵ア︶﹁下世話なことですが、儲かるんですか?﹂
﹁3日間の公演だけならプラスですが、次の公演までの練習代な
どまだまだ軌道には乗ってないですね。
それにあれは儲けを全て次の世代の教育に使うようにしてるんです。
先日の収益は、我が家の領地内ですが、次の世代に向けたダンスス
﹁え、そんな事でよいのですか?﹂
タジオや音楽教室を作るのに全額投資しました﹂
︵サ︶
﹁短期的に考えるとダメでしょうね。単独事業で、こんな経営をし
たらすぐに破綻します。
この事業は、元々、女性だけでやらせて、女性の地位や待遇の向上
を狙っているものです。
それに、ああいった文化の育成は、長期的に考える必要があります。
例えば、今、私の作る魔道具は利益が沢山出ています。
だから、今の儲けは、私がいなくなっても大丈夫なように将来への
投資をいろいろな形でやっているのです。
領民が暮らせてこその領主。
私が成人すると、今の領地からは離れることになっています。
私がいなければできない事業は新しい領地に持っていくしかありま
せん。
607
残した魔道具だけで出来る商売は残せます。
それ以外に今は、ぬいぐるみや、食堂などの経営資産を残している
ので、それらで幾分かは食べていけるでしょう。
でも、それだけでは続きません。以後はどうしますか?
領民が自分達で生きていける道筋が必要です。
多様性のある人材がいれば少しずつ産業が出来るかも知れない。
魔法に頼らない事業も必要です。
私は去る身にも関わらず、今の領民達は私のために色々と働いてく
れます。
だから私は、領民の未来に投資するのです。
その為に平民の子供達も立ちも含めて文字を教え、計算もできるよ
﹁ジルベール様はそのお年でしっかりと未来を見ているの
うにしています﹂
︵ア︶
ですね﹂
﹁ああでも大半は自分がやりたいからやってるだけですよ。
聖人君子ではありませんから。
それに儲けをそんなことにつぎ込むことが子供の証かも知れません
し﹂
︵サ︶﹁ルカ王子から聞いてましたが、スザンヌ様がお見合いで会
ったジルベールに1日で惚れてメロメロになってしまったと。
ジルベール様はメルミーナ様からマリアと結婚させると言っていた
から、スザンヌ様の説得行ったが、逆にジルベール様のすばらしさ
を1時間も聞かされ、説得し切れなかったと嘆いていた時があった
んですよ﹂
﹁へー、そんなことが。恥ずかしいな﹂
608
︵サ︶﹁ええ、スザンヌは小さい時から良く知っているので。それ
までは我がままを言うことも無くおしとやかな方でした。
以前自分は、私はきっと外国の王子と結婚するだと、あきらめてい
たことを言っていましたが、今回のわがままにはびっくりしました。
でも、あなたとお話すると納得もできます﹂
﹁え、それはどういう意味で?﹂
︵サ︶﹁スザンヌが一目ぼれするだけの器を持っていますね。
確かにチャンスがあるのなら逃がしたくはないかも。
あなたに王の器があるとは即答しませんが、よき指導者になること
は間違いないと思います。
﹁それを言うなら、マクシミリアン王子もかっこいいです
まあ、ルカ王子が一番ですけどね﹂
︵ア︶
よ。顔だけなら!﹂
﹁まあ、それは否定しません﹂とサフィーナ様があっさり
とアナスタシア様が答えると
︵サ︶
うなづいた。
﹁え! それで良いの﹂
ルカ王子、残念。顔は2番目だったのか。
﹁ははははは﹂と3人で笑って。
︵ア︶﹁ジルベール様が大きくなったらたぶん一番ですよ。
きっと、学園ではおもてになるでしょう。
スザンヌ様とマリア様はやきもちを焼いて、心配なさるでしょうね﹂
と言ってくださいましたが、お世辞ですよね。
作り笑い。ははは。
609
その後も、私の知らない学園を話を説明して下さいました。
そんな感じの適当な話題で盛り上がった。
話の途中で、マジックバックの話がでた。
自分用にもらえたか聞いて見たら、当然の様に親︵母親︶が使って
ると。
化粧品や、ドレス、靴を入れて出かけているそうです。
夜会や茶会でドレスがかぶっていると途中で着替えたり、化粧を変
えたり、小物を変えたりと非常に便利らしい。
私のマイボックスにまだマジックバッグが残っていたので、その場
でプレゼント。
量産品ですから、家紋は入ってませんよ。
え、良いのですか?
と聞かれたが王家の人には1人1個渡してるから、関係者だし大丈
夫です。
それと、年明けのミュージルカルの公演チケットを2人に渡した。
﹁王家の方からも誘われると思いますが、お友達とも行きたいです
よね。
それは王家に配った日とずれてますから、そちらで友達と行ってく
ださい﹂
と伝えるとそれはもう大変喜んでいた。
それからなぜか危うく私が、ポーズをとらされそうになり丁寧にお
断りした。
それでも見たいなーと。
﹁じゃあチケットと交換でと言うと今ポーズしてしましょうか?﹂
610
﹁えー、それじゃ友達が見れないですね。
後で友達の前でもやってもらえるならチケットいらないかな﹂とサ
フィーナ様。
アナスタシア様もうんうんと。
﹁すいません、勘弁してください﹂と謝った。
ふー、大変危険な交換条件になりそうだった。
結局大変悩まれた結果チケットをキープにしてもらった。
助かった。
しかし近くにいた侍女からはとても残念な顔をされた。
なんでそんなに見たいのでしょうか。
いや、なんだか想像以上に危険な文化を広めてしまったかもしれな
い。
さて、そろそろ寝る頃になったので
﹁寝る前に魔力操作をして魔力も使いきった方が良いですよ﹂
と伝え、私の部屋に戻り寝ることにした。
それにしても、サフィーナ様は、15歳。
もう大人の魅力もバンバン。
子供の私の体が反応しそうになった。
いや、ならないけどね。
あれに、惚れない男はいないな。
ルカ王子の幸せ者。
まあ、原因はスーに似てるせいだな。
結局スーとマリアが一番。
611
さっきの部屋にいた侍女はそのまま私の世話係りでした。
シルビアです。
サラ、シルビア、スピアの3人でフィリップ王子の専属侍女となる
教育を受けているそうだ。
そしてシルビアから3人の名前を聞いたときに
﹁サラって、あのサラ?﹂
と聞いたら
﹁その節はすいませんでした﹂と謝ってきました。
どうも、苛めにあっていたらしく、その後の侍女仲間で練習しあっ
たときに、あかすりの勉強の時に力加減の感想に嘘を教えられてい
た事が解ったそうです。
ただその嘘を言った侍女は既に王城を辞めているし、証拠もないの
でどうしようも無いのだとか。
侍女競争のいじめか大変だな。
ようかん
ねぎらいも、含めて羊羹も渡しておいた。
王妃様には別に献上していたので仲間で分けて食べてねと言ってお
いた。
サラも喜ぶと思いますと言って、その後のお風呂はこっそり自分で
洗わして貰った。
でもくさくないか、匂いをチェックされ髪の毛はやり直しだった。
エー、ダメなの。
﹁ジルベール様、手を抜きすぎです﹂としっかりと洗われた。
シルビアちゃんはサラちゃんと違って上手でした。
612
足も綺麗にしましょう荒れてますよ。
と言われ、足をごしごし、爪もきちんと切ってもらった。
この子は、気がきくな。
613
5.2年末の夜
年末の夜。
王様、王妃様を含めて夜の食事会が行われた。
この国で年末に食べるお決まりの食材を使った伝統料理です。
食べ終わった後にその場で、大神官様が私と話がしたいから、1月
4日まで王城にいるように言われました。
本当はすぐにでも話をした方が良いのかも知れないが、と言うので、
何の件か内容だけ先に教えて欲しいと言えば、2妃様が呪われた呪
いの解呪についてだそうです。
旅行の準備も必要だからと、王様が知っている情報を先に内容を教
えてくれる事になりました。
そして、王様が話をしてくれた。
実は昨日、大神官様の所に手紙が届いたばかりらしいのですが、鏡
台を送ってくれたラスク国の王妃は今だ体調が悪く、2妃様と同じ
く呪われている状態のままだそうです。
ラスク国の神官や近隣の解呪能力の高い人を集めたが解呪できてい
ないらしい。
世間的には、王妃の解呪をこの国の大神官がやったことになってい
るらしく、友好国であるこの国の大神官に連絡が来たそうです。
しかし、ラスク王国の大神官とこちらの大神官は能力にそれほどの
差が無い。
ラスク王国の大神官が行っても解呪できないなら、こちらの大神官
614
が行っても解呪できる可能性が少ないから最初から私にお願いした
いらしい。
それを代理人経由で、先ほど王様に相談が来たそうです。
それなら、早く行ってあげないと大変ではないのかとか言ったが、
大神官は、年初の3日間大変忙しく一緒に行く時間が作れない。
現在、4日以降で出発できる準備をしているそうです。
別に、4日まで待って大神官様と行かなくても良いのではないだろ
うか?
聞くとここからかなりの距離があり、移動に1ヶ月以上かかる。
護衛の手配など、年明けにならないと何もできず、とりあえず4日
以降にならないと計画も立てれないそうです。
自分だけで行動すればすぐに動ける。
しかし、折角の婚約者と過ごすお正月。
いきなり私がいなくなるのも良くないのかと悩んだ。
とりあえず、ラスク国の偉い人を知っている人がいるかと聞けば、
2妃様が留学していた国なので2妃様が一番詳しいらしい。
地図を確認したら、一番近い転移可能な町から直線でおよそ600
km。
転移門は、ラルクバッハ王国内しかカバーしていない。
また、ラスク王国には転移門は無いそうです。
しかも途中に高い山があり、山越えにかなりの時間がかかるらしく、
山を迂回する経路でのたびとなり直線距離よりもさらに移動に時間
がかかるそうです。
615
でも、ガルダに乗っていけば3時間ちょっとで着くよな。
日帰りも可能だ。
とはいえ解呪をするとたぶん自分が倒れるから、一泊は必要。
その後解呪の人数次第だが、鏡台がもう一台あると言っていたよう
な。
その情報もラスク王国で解るらしい。
2泊から3泊かな。
そのことを説明し2妃様だけを連れて行くなら、
明日ラスク国に出発しても良いと告げると皆が驚く。
国王様は、少し考える。
2妃様が
﹁連絡してからすでに半年。
とっくに治っていると思っていたのに返事が無いことを心配してい
ました。
そのような話を聞いて自分だけ年初に楽しむなどできません。
ぜひ行きたいです。行かせて下さい﹂と王様にお願いしていた。
王は何人乗れるのかと訊ねられましたが、二人までそれ以上は乗れ
ません。
結局王様は2妃様のお願いに折れて行くことになった。
2妃様は、宿泊があるからと旅行の用意をするために部屋に戻られ
た。
ルカ王子とマックシミリアン王子は、それぞれの婚約者と別部屋で
お話に行きました。
スザンヌが、暫く会えないからもう少しだけ一緒に居たいというが、
616
他の王女も遊びたいと言うので子供たちだけで少し遊びました。
そして私と、スザンヌ、フィリップ王子、マリアでカードゲームを。
ババ抜きです。
この世界も13枚、4種類のカードでした。
だれか転生者か転移者が流行らせたのでしょう。
もちろん、この世界にはオセロもあります。
マイアー様は、スザンヌのひざの上に。
そして、シュミット様はマリアではなくフィリップ王子でもなく、
なぜかお兄ちゃんと私のひざの上に来ています。
確かに、マリアの婚約者なのでお兄ちゃんで良いのだけどなぜにい
つも私に来るのだろう?
そんな6人で、カードゲームを楽しむとシュミット様はひざの上で
眠ってしまいました。
それでも、私から離れず結局抱っこしたままゲームを継続。
降ろそうとすると離れまいとくっつく。
侍女は、引き剥がすのをすぐにあきらめフィップ王子は笑っている。
マリアは良いなーと。
数回ゲームを続けましたが、きつくなってシュミット様をベッドに
運ぶことになった。
抱っこしたままベッドへ運び降ろそうとすると、泣き出す。
しょうがないのでとんとん背中を叩きながらマリアと一緒に子守唄
を歌う。
暫くするとようやく眠りました。
本当は夜通し遊ぶと言う話もありましたが、私は明日急に移動する
事になったのでこれでお開き。
マリアを残して私とスザンヌはそれぞれ自分の部屋へ。
617
現状整理
ルカ
150
万能型でステータス的にはハイスペック
基本ステータス
総魔力量 500
力
120
体力 250 すばやさ
120
140
160
器用さ
知力
魔法力
精神力 140
特技
剣術レベル5
1.5倍
レベル3 格闘レベル4
身体強化
基本魔法 魔力操作
応用スキル ︵攻撃・防御系︶
レベル3
レベル4
物質集積 レベル3
魔素の高温化
流体操作 レベル2
レベル2
個体操作 レベル2
魔素の低温化
気体操作 音波操作 0
光子操作 0
電気操作 0
618
マクシミリアン
隠密系が得意。
基本ステータス
総魔力量 300
力
155
140
体力 180 すばやさ
200
120
125
器用さ
知力
魔法力
精神力 150
特技
剣術レベル4
格闘レベル3
レベル4 身体強化 2.0倍
基本魔法 魔力操作
応用スキル ︵攻撃・防御系︶
物質集積 0
レベル3
レベル2
流体操作 0
魔素の高温化
個体操作 レベル2
0
気体操作 レベル2
魔素の低温化
音波操作 光子操作 0
電気操作 0
619
特殊
索敵 レベル5
隠密 レベル2 気配を消せる
フィリップ
総魔力量 400
まだ能力が安定していない。
本人は剣士タイプが望みだったが、魔法タイプの能力値が高い。
特技
剣術レベル4
格闘レベル2
レベル3
身体強化 1.5倍
基本魔法 魔力操作
応用スキル ︵攻撃・防御系︶
流体操作 物質集積 レベル0
レベル3
レベル3
レベル4
個体操作 レベル4
魔素の高温化
気体操作 レベル0
レベル0
音波操作 レベル0
魔素の低温化
光子操作 電気操作 レベル3
スザンヌ
基本ステータス
総魔力量 1650
620
力
155
130
体力 170 すばやさ
200
130
160
器用さ
知力
魔法力
精神力 130
特技
剣術レベル5
格闘レベル3
レベル5 身体強化 2.0倍
基本魔法 魔力操作
応用スキル ︵攻撃・防御系︶
流体操作 物質集積 レベル3
レベル3
レベル3
0
個体操作 レベル3
魔素の高温化
気体操作 0
0
音波操作 0
魔素の低温化
光子操作 電気操作 0
特殊
魔力可視化 レベル3
未来視 レベル1
称号
未来を見定めるもの
加速思考によって、未来︵年単位︶の事象を予測できる。
621
未来視とは異なる。
聖剣効果: 攻撃:光魔法効果を発動
防御:結界による魔法攻撃大軽減、状態異常大軽減
マリア
総魔力量 5200
65
体力 80 力
80
すばやさ
150
200
150
器用さ
知力
魔法力
精神力 400
特技
短剣 レベル2
体術 レベル1
レベル5 身体強化 1.5倍
基本魔法 魔力操作
応用スキル ︵攻撃・防御系︶
流体操作 物質集積 レベル4︵攻撃耐性防御特化︶
レベル4︵攻撃耐性防御特化︶
レベル3︵攻撃耐性防御特化︶
レベル2︵攻撃耐性防御特化︶
個体操作 レベル4︵攻撃耐性防御特化︶
魔素の高温化
気体操作 レベル4︵防音に特化︶
レベル2︵攻撃耐性防御特化︶
音波操作 レベル4︵結界系に特化︶
魔素の低温化
光子操作 622
電気操作 称号
聖女
レベル4︵攻撃耐性防御特化︶
聖女効果により、回復魔法の効果を2倍に高める
無詠唱での魔法発動
レベル4
全属性の魔法を多少使える︵防御特化︶
特殊
回復魔法 強化付与 レベル3 ︵1.2倍の身体強化を他の人に付与でき
る︶
絶対防御 レベル1 :あらゆる物理・魔法・精神攻撃を無効化
する
レベルがあがれば、倍率と効果時間が増える
加護
︵まだ小さいから未成長︶
メリーナの加護 大 ︵状態異常大軽減︶
マイアー
総魔力量 120
風、音魔法が得意
称号
音楽に愛されし物:
︵まだ小さいから未成長︶
音楽の才能が飛びぬけている。
奇跡の歌声
絶対音感
シュミット
総魔力量 100
王家待望の間接系スキル持ち
特殊
623
鑑定 現在封印 ステータスの確認能力 物品の状態を見
極める
索敵 現在封印 魔力を察知する
隠密 現在封印 魔力を隠し、存在を消せる
思考分析 現在封印 相手の考えを少し読み取れる︵YES,
NO程度︶
レベルが上がると、レジストできなくなり、精度が向
上する。
精霊召還 現在封印 契約した精霊を召還できる
624
5.3 2度目の解呪
翌日の朝、朝食を食べた後したくを終え謁見の間えと向かう。
一応王命で行くので、王からの命令書を受けとる必要があります。
年初からメルミーナ様も呼び出され、王様の前に2妃様と一緒に並
んでいます。
他は出勤していないので誰もいません。
もちろん、護衛の兵士はいますよ。
王妃様が、王様から王命で動いている証明となる命令書を受け取り
ました。
書状と、念のためのペンダントと短剣。
フルセットです。
私はペンダントを受け取ります。
王妃様が、マジックバックに書状と短剣を入れていました。
メルミーナ様に﹁年初から呼び出しになってご迷惑をおかけします﹂
と言ったら。
﹁気にするな。これで1枚外交カードが切れるからな。
こんなに早くにワシの役に立ってくれるとはおもわなんだ。期待以
上じゃ。
だが気をつけてな﹂
と、言葉の交わし移動を開始した。
まず、2人でまずは王城近くの転移可能な教会へ行き目的地に一番
近いところまで転移する。
そして、到着した地でガルダを召還。
625
土魔法で作り上げた座席を載せて飛んでもらう。
事前に念話で目的地を説明し、地図も見せていたので順調に飛行し
ている。
ガルダは以前ラスク国に行ったことがあるらしく行くのは簡単と言
ってました。
ガルダは、およそ時速200km/hで飛びます。
ちなみに、最高速度は300km/hを超えることができます。
飛ぶ時は我々の周りだけ結界によって守ってくれる。
ガルダだけの時は高高度まで上昇しさらに速く跳ぶことが出来る。
聖獣は、厳密には生物ではないので魔力さえあれば高高度でも凍ら
ないらしく、そのぐらいの高度まで上昇しても活動出来るようです。
寒かったでしょと聞くと、
﹁かなり上級の氷魔法の攻撃が来たが我を凍らせられるほどの攻撃
ではなかった。
しかし同時に強い風魔法を使われ耐え切れず陸から離されてしまっ
た﹂
と言ってます。
何かと戦っていたつもりみたいですがそれ自然相手だよと教えてあ
げたら、
ガルダもイシスも驚いていました。
イシスも単独なら結界なしでゆっくりとゆっくりともぐれば100
0mでもなんとも無いそうです。
ただ、深くもぐると急に上昇する事はできないと言ってました。
﹁急に上昇すると体が膨れ上がり内側から爆発する魔法を使われる﹂
と言ってました。
﹁もしかして、それも自然なのか?﹂と聞かれたので圧力の説明を
626
しました。
イシスに、簡単な圧力の実験を見せたら科学って怖いなと驚いてま
した。
圧力の話で納得したらしく、私が死んで自由になったら気を付ける
と言ってました。
何気に聞けた情報ですが、やっぱり私が死ねば契約が終了し自由に
なれるようだ。
では、この300年どうしていたのか聞いたら、
アロノニア様が魂を感じるからと、契約を仮継承し眠りについてい
たそうです。
意識はあるけどじっと眠った状態だったらしい。
ふたり
契約した理由は、まだ話をしてくれません。
まこと
勝負して負けた話だから、話はしないと2聖獣とも言ってました。
まこと
﹁今のお主は、あの時の真の様な手を使う必要もないほど力が強い。
だが、あの時の真ほど悪知恵は無いの。
まあ我らを従えるに十分な実力はあるようじゃから暫くはお子様の
面倒を見るのも良かろう﹂
そして過去を知りたければ思い出せということらしい。
ただできれば思い出すなとも言ってました。
そのうち聞ける時が来るでしょう。
さて、移動の話に戻りましょう。
一応中間地点あたりの景色の良い所で一度休憩しました。
上空から見た時にとても綺麗な花畑だったのでそこに降りました。
その時に早めの昼食を済ませます。
627
マジックバックに入れてあった食事なのでちゃんと暖かいものです。
私のマイボックスに、机やテーブルも入れてあったので結構ちゃん
とした食事をしました。
2妃様が﹁王様とも2人きりのデートはした事が無かったけれど、
ジルベールとこんな感じの良いところで2人きりでデートなんて幸
せね。
でも少しだけ娘に悪いわね﹂と言ってました。
そうか、デートか。今度、スーとマリアを連れてこようかな。
転移のポイントとしてマークをしておこう。
そして休憩を取った後、再度目的地へ向かう。
到着したのは昼過ぎです。
出発から休憩を含め4時間で到着。
王城へ直接降りると混乱するだろうからガルダとは空中で別れるこ
とにした。
ガルダは、念話で連絡したら迎えに来れるようなので近くの森で待
機してもらった。
空中で浮遊術に切り替え、王城前に瞬転で移動しました。
見える範囲は魔法陣を設置しなくても移動できます。
2妃様が、書状を門番に見せて偉い人を呼んでもらおうとしました。
﹁なぜ、ラルクバッハの王妃が、部下も連れず馬車でもなく徒歩で
来るのだと。
怪しい者は中には入れない﹂と取り合ってもくれない。
王妃様は、書状と短剣を、私も証のペンダントを見せましたが、全
く取り合ってくれない。
628
﹁これほどの美女なのに王妃と思わないのか?﹂
と言うも
﹁ラルクバッハの王妃が美女とは聞いているが、これほどの美人が
本当の王妃の訳がない。
偉い人の噂は、誇大に言われるものだ。わざわざ美人を連れてくる
など、逆に怪しいわ﹂
うーん、話にならないな。
﹁王妃様、勝手に扉を開けて中に入りましょうよ。そしたら偉い人
が来ますよ﹂
﹁そうね、ここで時間をつぶしても何にもならないし﹂
﹁では、行きましょう﹂
﹁おい、何を言って....﹂ ドーン。
火の鳥で攻撃し王城の正門に大きな穴が開く。
﹁ではまいりましょう、姫﹂
と言うと
王妃様はニコと笑って、手を差し出した。
私が手を取り、王妃様をエスコートして堂々と中に入っていく。
まず、瞬転で門の中へ移動。
王城内に入ると兵士が次々に集まってくる。
それを無視。
2人で歩いてどんどん進む。
1人の兵士が﹁止まれ、止まらないと攻撃する﹂
と言うので、申し訳ないけど前方に集まった兵士10名ぐらいを風
629
魔法で吹っ飛ばす。
﹁さすがジルベールね。最高の護衛だわ。でも殺してはダメよ。で
きる限り怪我もさせないようにね﹂
﹁心得てます。姫、さあ行きましょう﹂
などと、気楽に姫と護衛の役を楽しみながら進んでいた。
すると、ようやく偉そうな隊長クラスの兵士が出てきたので、
﹁ラルクバッハ王国から来た使者だ。
門番が、話すら通さないから強引が入った。
私はジルベール・クロスロード。
こちらは、レオニー・ラルクバッハ。
ラルクバッハ王国の第2王妃だ。
宰相なり、話の通じる人を呼んで来い﹂
すると、大慌てで宰相を呼びに行く兵士。
しかし、周りの兵士は剣を構えたまま。
うーん、あまり居心地が良くない。
万一王妃様になにか攻撃されるとさすがにこの人数はまずいかな。
﹁悪いが、こちらに敵意は無い。すぐに剣を降ろせ﹂
と言うが、降ろさない。
しょうがない。
時間魔法を発動させ、光の剣で全員の剣を折っていく。
100人ぐらいに囲まれていたので、全員だと2回連続で時間魔法
を使わないといけなかった。
剣を全て切り、王妃様に所に戻って時間魔法を解除する。
全員の剣が、途中から切れた部分がポキンと下に落ちる。
驚愕の目でこちらを見る。
﹁解ってると思うが命が惜しければ動くなよ。王妃に剣を向ける罪
630
を知れ。その折れた剣をすぐに捨てよ﹂
とかっこよく言い放つ。
全員、剣を捨て、その場で停止。
両手を挙げて攻撃の意思が無いことを示す兵もいるし、足が震え座
ってしまう兵も。
すぐに、宰相と王太子が慌てて到着。
最初、周りの状況を見て少し驚いた顔を見せたが、すぐにこちらに
話しかけてきた。
王妃様が書状を見せ私がペンダントを見せました。
すると﹁申し訳ありません、衛兵が大変失礼なことをしました﹂と
謝ってきました。
ようやく、我々二人を王城の中へ案内してくれるそうです。
王城内は、ラルクバッハの王城と同じく魔法禁止だった。
王妃様のところで魔法が使える様にして欲しいとお願いし、ラスク
王国の王様のところへ。
ラルクバッハの王様が書いた書状の効果でラスク王に緊急で謁見で
きました。
そして、解呪に来たことを告げる。
﹁昨日、書状が届いたので年初の慌しい中ではありますが、苦しん
でいる王妃様が心配で急いで解呪出来る者を連れて来ました﹂
と伝えた。
書いた手紙が着いただろうと思った頃に、急にやって来たので驚い
ていたようだ。
王様から、年初の家族で過ごすであろう時に王妃様自らが解呪に来
631
たことに大変感謝された。
その後で王妃様が﹁解呪は、この一緒に来ている少年のジルベール
が行います﹂と伝え。
そして紹介。
﹁この者は、私の娘の婚約者、ジルベール・クロスロードです。
実は、私の呪いを解呪したのもこの者です。
少年ですので、あまり世間に公開したくはないのです。
だれが解呪したからは秘密にする事をお約束下さい﹂とお願いして
くれた。
私も自己紹介し、早速王妃のところへ案内をして欲しいと頼みまし
た。
それと、解呪をすると眠くなるので今日泊まる部屋を用意し欲しい
こと。
さらに、夜になにかあれば、王妃様を守るために起きるから部屋は
一緒にしてもらった。
念のために、先ほど王城の上を飛んでいた聖獣が仲間で近くで待機
しているから不要なマネはするなと脅す。
ラスク国の王妃様の所に到着すると、部屋に魔法が使えるように大
きな魔法陣が敷いてありました。
準備ができているので、まず、鑑定で確認する。
2妃様と同じく強呪の状態。
それも、体の状態からはかなり悪い。
ステータスを見る限りでは、今にも死にそうな状態だった。
神格化が必要なので、申し訳ないが2妃様と私だけで解呪をさせて
欲しいとお願いし、部屋から出てもらう。
632
神格化を発動させ解呪を行う。
そして回復魔法で全回復を。
すぐに終わりましたが、2妃様よりも呪が強かった。
私の体が重く感じる。
案の定、すぐに眠くなった。
スキルを確認すると、今回は20時間魔法が封印されていた。
2妃様に、成功したことを伝え、最後に眠る言い放ち残念ながらそ
の場で崩れ眠ってしまった。
633
5.3 2度目の解呪︵後書き︶
ガルダとイシスが真を契約したときの話。
ガルダとイシス、どちらが強いかそれは下さない口げんかから始ま
りました。
そして、近隣で暴れ、被害が出始めました。
そこに、真が来てうるさいと怒鳴って来ました。
静かにさせるために2聖獣に勝負を持ちかけました。
1日で約束の物を持ってここに置けなければ真の配下となり契約す
る。
1日以内に約束を守れたら自分の命を上げるという勝負です。
条件を聞いてふたりとも面白そうだと了承しました。
︵結局、このふたりは暇だったのだ。︶
そして、ガルダには熱気球に付けたぬいぐるみを取ってくる。
イシスには、指定された場所で鉛でできたボールを海に投げ込み、
30分経後にそれを取りにもぐる。
正し、イシスの動きは水に入ると見えなくなるから自分を連れて
行く事。
見届け人の自分が死んだら、イシスの負けと言う条件が追加され
いた。
なんだ、簡単ではないかと契約してスタート。
ガルダは、一生懸命熱気球を追いかけるが、上空に上がり季節風が
流れるところまで来てしまった。
634
そして、あっと言う間に強烈な風に流され、陸から外れ力を失い、
暫く飛ばされた。
イシスとの馴れ合いで、海辺ギリギリだったのも不利に働いた。
イシスは、指定された陸から離れた地点でボールを投げ入れそれを
追いかける。
30分の差は、なかなか埋まらない。
活動限界ギリギリでボールをつかむ。
それから上昇しようとすると、体の内側が急に膨れ上がり爆発する。
ゆっくりとゆっくりと上昇し、結局陸に戻るのに3日かかった。
ガルダにいたっては、生還するのに1週間以上かかった。
そして約束どおり、契約を交わしました。
635
5.4 原因の調査
次の日の朝早くに目が覚めた。
目の前に、ふわふわのやわらかい物があって良い匂いがします。
なんだろう、少し動いくと同じベッドに2妃様と一緒に寝ていたよ
うです。
私はどうやら2妃様の抱き枕になっていた。
目が覚めたのを確認した侍女が駆け寄ってきて水を出してくれまし
た。
それを飲み現状を確認。
2妃様も気がついたようです。
自分の専属護衛も居ないし、そもそもジルベールが寝ている間に連
れ去れると困るのでしっかりと抱きしめて寝ていたそうです。
自分が守るつもりでしたが守られていたようです。
すいません。
やっぱり子供でした。
としょんぼり。
王妃様は、まあまあとしょげる私をなだめてくれました。
あれから、ラスク王国の王妃は、体調も良くなり王様も大変喜んで
くれたそうです。
そして、私をベッドに寝かした後2妃様は、
高位の方々だけでも挨拶をして欲しいと言うことで夜会に少しだけ
636
出たそうです。
一通りの人と挨拶をして、夜中にようやく部屋に戻り私と一緒に寝
たそうです。
公務ご苦労様です。
朝食の用意をするが、それまでまだ時間があるそうなのでお風呂に
入ってくださいと言われました。
王妃様はマジックバックから、私は、マイボックスから服を取り出
しこれに着替えますと服を渡した。
そして侍女に連れられお風呂に行った。
裸にされてお風呂に入る。
すると親子だと思われたのか、2妃様が裸で現れ一緒にお風呂に入
ってきてニコニコされた。
2妃様の裸をばっちり見てしまった。
﹁少し前まで、マックやスザンヌともこうしてお風呂に入っていた
んですよ。懐かしい﹂
と言ってます。
それ何歳の時か聞いたら、10歳の仮成人儀までは母子でお風呂に
入れるのよ。
と教えてくれた。
仮成人儀ってなんだっけ?
﹁侯爵家以上で行われるから、ジルベールは知らなかったかしら。
10歳の3月に行うのよ。
あなたは、フィリップ王子と一緒にやりましょうね﹂
と提案された。
ふーん。まあ良いや。
そして今日は少し体もだるかったので黙って侍女のされるがままに。
着替えを済ます。
637
私は、夜に食事をしていなかったので部屋で軽く果物を食べた。
そして、ソファーで休憩しながら2妃様の支度が終るのを待つ。
侍女が何か本でも読みますかと言うのでこの国の観光や、
特色を書いた本があれば読みたいと告げると10冊ぐらい持ってき
てくれました。
1時間ほど時間がたつと2妃様の支度が終わり朝食の会場へ。
読むのが早いので、もって来てくれた本は全部読み終わりました。
侍女さんに﹁読み終わったから片付けておいて﹂とお願いしたら、
﹁え、全部読まれたのですか﹂
﹁うん、読んだよ。この国の名産品とかは解ったよ。ありがとうね﹂
と言って、2妃様と会場へ移動。
昨日の王妃様と、王様、王太子を含め子供達が参加した。
こちらの国も王妃は3名。
解呪したのは3妃様です。
ラルクバッハ王国のレオン王よりもこちらの王の方が少し年上のよ
うです。
ただし、最年長の子供は、23歳の王太子。
22歳の王女は嫁に言ったそうです。
王太子は、既に結婚し子供も既にいます。
はやりやまい
そこから急に間があいてルカ王子と同い年の子供から3人。
ラルクバッハ同様、近隣国一帯で流行った流行病でその時に子供達
が沢山死んだそうです。
この国の王子・王女も死んだそうです。
638
はやりやまい
国の平均では半数以上が生きているが、平民の方が生き残る率が高
いのもこの流行病の特徴。
普通の病気は貴族の方が生存率が高い。
ラルクバッハ同様王家の死亡率100%はおかしいと思う。
その後にルカ王子の年代の子供が生まれている。
うーん、なにか引っかかるな。
もしかして、回復魔法が余計に病状を悪化させる病でもあるのか?
まあ、それは良いか。後で考えよう。
王様から、
﹁失礼とは思ったが、すがる思いで年末か年初の忙しい時期に着く
と解っていながら手紙を書いてしまった。
こんなに早く訪問してくれ、とても感謝している﹂
とお礼を言われました。
もちろん、第2王妃からもお礼を言われました。
3妃が体調が悪く、国内は年初の祝いの中でも暗いパーティになり
そうだったが、
昨夜のパーティーは非常ににぎやかで明るいパーティーになったそ
うです。
朝だけではあるが同い年ぐらいの子たちと、
魔法などの談話し少しだけ交流をした。
男15歳、女14歳、男10歳です。
上、二人は婚約者も決まっています。
10歳どおしで話が合うかと思いましたが、フィリップ王子と比べ
てもこちらの王子は甘えん坊なのか思ったよりもずっと子供だった。
結局、上の二人を中心に話をした。
1時間ほどの談笑を終えてそろそろ行動しなければ。
639
さて、本日の予定を考えなければ。
私は、昨日14時ぐらいに解呪をした。
20時間後なので、午前中の10時ぐらいに魔法が復活する。
現在8時なので、あと2時間休憩しその後で鏡台を確認させて欲し
いと頼みます。
また、昨日と同じく魔法禁止の解除と侍女を含め持っている手鏡な
ど全ての鏡を集めてもらう。
2時間後、鏡を集めた部屋に移動する。
また、全員に外に出てもらう。
以前確認した瞬間に繋がりを解除され鏡が割れてしまったので今回
は慎重に。
まず、神格化する。
鏡台の外側に魔法攻撃を排除する結界を展開し、鏡台を開ける。
そして、鑑定を開始。
意識を鏡に集中させる。
繋がっている先を見る。
何かが見える。
遠い。
ここよりも北。
具体的な距離や場所は解らないがおおよその方向と距離が解った。
そこに、神官の格好をした数十名の人影と、邪神像。
とそこで鏡が割れる。
つながりも切れた。
残念。ここまで。
置いてあった他の鏡を確認しようとしたが、先ほどの鏡が割れた時
に3枚ほどが一緒に割れていた。
640
それらしきものは、他に確認できず終了である。
まあ、収穫はあったので、良しとしよう。
ラスク国の3妃様に体調の確認をし鏡台についての説明を聞く。
やはり、同じ鏡台がもう一台ある。
そしてその所有者も同じ状況。
この地からそれほど遠くなくラスク国の隣マルリア公国の侯爵家あ
るらしい。
2妃様と同じく、留学中に仲の良かった人でこの公国に住む侯爵家
の娘が隣国に嫁いだとの事でした。
連絡は取れていないが、場所を確認し午後からそこに向かうことに
した。
3妃様方にお別れを言う。
お土産でチョコレートなどラスク王国のお菓子を沢山貰った。
お礼に、マジックバックを一つ献上する。
﹁なに、綺麗なバックね﹂
﹁2妃様も持ってますが、マジックバックと言ってこれ一つに荷箱
10個以上の容量があります﹂
と教える。
﹁これが噂の空間魔法を使ったバッグなのね。
ラルクバッハの国からもなかなか入手ができないといっていたけど、
本当に貰っても良いの﹂
﹁ええ、私が作った物ですから、王家に納めるのなら国外でも大丈
夫でしょ﹂
︵あとで、ラルクバッハの王様からお金が送られてきました︶
﹁これは、すごく便利よ。
ドレスも、化粧道具もたっぷり入るから、旅行にも最適。
気楽に領地周りも出来るわよ。
641
体調も回復したら、ぜひ、ラルクバッハに来てね﹂
という話があった。
そして馬車を用意してもらい、近くの丘まで移動。
そこにガルダに戻ってきてもらう。
残念だが、昨日の解呪で魔力を使いすぎ。
恐らく到着した時点では解呪を実施できるほど総魔法量が回復しき
っていない。
着いても解呪は明日になるだろう。
とりあえずマルリア公国にむけて出発。
642
5.5 3度目の解呪
2時間ほど飛ぶと目的地に到着。
ラスク王国の隣のマルリア公国は小さな国だ。
もともと、ラスク王国の一部から独立した国。
そして思っていたよりも直線距離は近かった。
残念ながら目的地の侯爵家の場所が解らないので、まずはマルリア
公国の王城へ行くことにする。
前回同様、ガルダから降りて王城へ向かう。
今回の門番は、あっさりと偉い人を呼びに行ってくれた。
兵隊長が走って来て、書状を確認しそのまま王城へ案内してくれた。
公王様が、侯爵家に行く馬車を手配してくれ先使いの早馬を出して
くれた。
準備が出来るまで暫く王城で休憩。
公王様のところにも、侯爵家の妻の体調が悪いことは知っていたよ
うです。
侯爵家では、ラスク王国の3妃様から解呪が成功した、方法を手紙
で連絡する事になっていたが、何時までたっても連絡が無くそのま
ま年明けとなり、大変不安に思っていたところだったらしい。
今日は、侯爵夫人の解呪をするだけの魔力が足りないので症状の確
認と原因となっている鏡台を確認します。
今日は、この国に宿泊すると伝えると、ぜひ王城に泊まってほしい
と言われました。
643
なので、昨日同様、宿泊は王妃の護衛を連れて来れなかったから同
じ部屋にして欲しいとお願いする。
公王様は﹁ははは、小さな護衛さん、頑張ってね﹂といかにも子供
として扱う。
まあ、目的を達すればどうでも良いかと思った。
が、なぜか私を馬鹿にされたのが悔しいのか、王妃様が
﹁小さな護衛ですが、この国の誰よりも強いのですよ。おほほほほ﹂
と言うものだから、
﹁ほう、それは聞き捨てならんな、ラルクバッハの王妃ともあろう
人が、わが国の戦士が子供よりも弱いといわれるか﹂とすごんでき
た。
﹁まあ、そんな、馬鹿にするだなんて。私の娘の婚約者のジルベー
ルは、ラルクバッハの中でも一番強いのよ﹂
﹁ほう、それほどに強いというか。ならば軽くあいつと戦って見せ
てくれ﹂と
我々の後ろに立っていた、2mを越す巨体の戦士が引っ張り出され
た。
私が﹁良いですけど、殺しても問題ないのですか?﹂と言うと
﹁やれるのなら、腕の一本ぐらいなら飛ばしてもかまわんよ﹂と言
うので
有無を言わさず時間魔法を発動させ瞬歩で移動。
あっさり一瞬で左腕を切り飛ばして時間魔法を解除。
全員があっけに取られる。
その中で、私は、淡々と落ちた腕を拾い、切れた部分にあてがい回
復魔法で元に戻す。
644
戦士は、苦痛でゆがんでいた顔も戻り、不思議な感じで左手を開い
たり閉じたりする。
そして﹁まいりました﹂と頭を下げた。
戦うことすらできず、終わりました。
公王様も﹁いやたまげた。強いなジルベールと言ったか、強さに偽
りは無かったな。
すばらしい。いや疑って悪かった。今宵は最上のもてなしをするの
で許してくれまいか?﹂
﹁はい、公王様。では夜を楽しみにしております。我々急いでおり
ますので、そろそろ行かせて貰います﹂
公王様が用意してくれた馬車で侯爵家に移動します。
﹁王妃様。王妃様から面倒ごとを起こしてはダメじゃないですか。
適当に流せば良かっただけなのに﹂
﹁だってジルベールが馬鹿にされたのよ。悔しいじゃない。
それに結局、大丈夫だったでしょ。だいたいあの公王はケチで有名
なのよ。
きっとそのままなら今日の夕飯はしょぼかったはずよ。
み込ませる。
これで、恐らくちゃんとした夕飯になるはずだから良かったでしょ。
作戦勝ちよ﹂
とウインクされた。
何とも言えないお茶目な感じが、次の言葉を
そして侯爵家に到着。
とりあえず、侯爵夫人の部屋に行き、婦人に会う。
侯爵様も、侯爵夫人も私が解呪をする事に驚いていました。
鑑定を行うとやはり想定どおり呪われていた。
645
残念ながら、移動等で総魔法量の残りが無いので、
明日の朝解呪させて欲しくつらいだろうがもう一日頑張ってもらう
ように伝える。
先に、問題の鏡台を調査させてもらう。
今度はマイボックスから地図を取りだし地図を見ながら繋がりを確
認。
おおよその場所を特定できたところで鏡が割れた。
解ったと言っても、半径100kmほどの誤差があり細かいところ
は解らなかった。
ラルクバッハ国に戻ってからその地にある教会らしきものを確認す
る為の部隊を派遣してもらおう。
そして我々の宿泊すべく王城へ戻る。
昨夜同様、2妃様は強制的に夜会へ行くことになった。
そして高位の方々へ挨拶をする。
公務、ご苦労様です。
私はこの国の伝統的な料理が振舞われ王様の同年代の子供達と一緒
に食事をしました。
ちゃんと、王子・王女と同じ料理でしたよ。
本日は、第2王子と、王女方とおしゃべりをしました。
その中で、12歳のジュリアナ第3王女は私に積極的に近づいてき
た。
12歳にしては大きい胸を押し付けて話をしてくる。
申し訳ないのですが普通に見ればジュリアナ姫は確かに美少女です。
残念ながらおこちゃまの私の体は全く反応しないしドキドキはしま
646
せん。
スーやマリアと比べると美少女レベルも違いました。
そんな事を正面から言えるはずも無くなんとか受け流しました。
王子、王女曰く、普段お客様が来てもこんなに豪華な料理は奮われ
ないらしい。
今日は、特別だといわれて嬉しかったらしい。
これで豪華だったのか。でもデザートが無かった。
なので、私のマイボックスからアイスクリームを出して皆に振舞っ
たら泣いて喜ばれた。
え、そこまで!
王子王女なのに普段のご飯が気になった。
ちなみにこの公国は貧乏ではない。
もともと優良な金山を持っているから独立国としてやっていける。
本来は大金持ちだ。
質素堅実なのだろうか、ちょっとケチりすぎな気がしたが、自分が
贅沢をしすぎているのだろうか?
感覚が麻痺しているのかも知れない。
そうして、夜が更けると部屋に戻らせてもらいました。
部屋は2妃様と同じ。
他国で眠ている間に2妃様を守る為の同じ部屋。
ベッドが大きいから特に気にする必要もないだろう。
本当は2妃様を待ったほうが良いのかも知れませんが、
私はおこちゃまなので遅くなると眠くなり残念ながら先に寝てしま
いました。
647
次の日の朝、目が覚めるとまた2妃様の抱き枕になってました。
ここに来て思うのですが、私は寝てるときに殺意など悪意が無けれ
ば、
かなり無防備かも知れないと言う事実が解ってきた。
3歳から1人で寝ていたので実に全く気がついていませんでした。
そして、2妃様曰く、
﹁なんとなくジルベールと寝るとよく眠れるわ。
すごく静かで落ち着くのよね。これから毎日一緒に寝て欲しいわ﹂
とご冗談を。
ははは。
うーん、静かなのは寝てるときも防音魔法を展開してるせいかな。
起きたら、侍女がやって来て昨日と一緒で二人してお風呂に入れら
れました。
私は、完全に子供扱いです。
まあ、本当におこちゃまだしもう2回目だから気にしません。
体が何かに反応する事も無く無事2度目のお風呂を済ませました。
そして、朝食を取った後で、再び侯爵家へ。
さっそく、解呪しましたがさっき起きたばかりなのに、やっぱり眠
くなる。
そのままばたんと寝てしまいました。
ですが、さすがに寝続ける事はなく昼には、目が覚めました。
648
しかし、またまた魔法が封印されていました。
ただ、近くて待機していたガルダとは念話で会話ができたので呼ぶ
と迎えに来てくれました。
とりあえず、乗って帰る分には魔法が必要無いのでそのまま国内に
向けて出発する事にしました。
侯爵家の方々にお別れを言い、ガルダに乗って帰国。
休憩を2回ほど挟みラルクバッハ国内に到着。
転移装置を使って王都へ移動。
転移装置は、教会にあるのでついでにメリーナ様の新年のお祈り。
するとメリーナ様が現れた。
﹁ジルベール、あなた、なにやってる?
そんなに次から次に危ない魔法を使ってはダメよ﹂とお怒り。
﹃やっぱり、危険なんですか﹄
﹁魔法が封印されるのだから、危ないに決まってるでしょ。
何度も警告してるのに、何で使うのですか﹂
﹃だって﹄
﹁だってじゃありません。自重しなさい﹂
﹃はい﹄
﹁それと、この件は失われし神が関わっているみたいだから、あな
たが直接手を出してはいけませんよ。
それは、ラキシスお姉さまが対処する話....う、..あれ..﹂
649
﹃邪神像が見えたことの件ですね。 あれ、メリーナ様どうされた
のですか﹄
﹁もしかして、ラキシス姉さま、アークロン関係でジルベールを使
うつもり。
んん。
まさか私に内緒でいろいろやってるのは...う﹂
なにか、独り言がぶつぶつと聞こえてきます。
﹃メリーナ様、どうされたのですか﹄
﹁いえ、何でも無いわ。とにかく、邪神アークロン関係に手を出し
てはダメよ。
ジルベールが強い力を持っていて神格化ができても、相手は神よ。
人は、神には勝てないのよ。
神を倒せるのは神だけ。
次になにかあったら、ラキシス姉さまを呼ぶのよ﹂
﹃メリーナ様は?﹄
﹁私は、異界人に力を与えることと、神具を作れる代わりに、
自分自身の戦う力は無いのよ。
アノロニア姉さまが最強。
その次がラキシス姉さまよ。
ラキシス姉さまは、アノロニア姉さまとアークロンを会わせたくな
いみたいなのよね。
だからラキシス姉さまに連絡するのよ。解りましたね﹂
﹃はい。でも教会でもないところで、呼び出して声が聞こえるので
650
すか?﹄
﹁そうね、ジルベールと私は繋がりが強いから聞こえるけど、解っ
たわ。
これをもっていなさい﹂と言って、私の手の上に腕輪が現れた。
﹃これは?﹄
﹁お姉さま方を含め、精霊や神と話ができる腕輪よ。
普段はしまっておきなさい。
不用意に話しかけて、不興を買うと、危ないから気をつけて。
私なら、ジルベールならいつでも大歓迎だけど。
お姉さまたちは、怖いのよ。
ほんと。気をつけてね。
あと、私がこう言ったって事は内緒よ﹂と言って腕輪をくれた。
︵ジルベールは、精霊の部分を聞き逃してます。そもそも自分は聖
獣を通して精霊と話ができます。︶
王妃様が
﹁あなたと教会に行くと、メリーナ様が出るのね。
特に違和感もなくお話されているように思えたけど﹂
﹁あ、うんそうですね。メリーナ様とは良く話をしていると思いま
す﹂
﹁そう、やはりあなたは普通ではないのね。なにかもらったようで
すけど﹂
﹁ああ、神様と話ができる腕輪です。緊急時につかえと﹂
﹁神様と話。ああ、そういえば常識で考えてはいけないのでした。
まあ良いわ。いまのは内緒にしたほうが良いのよね﹂
﹁そうですね。そのほうが助かります﹂
﹁そう、じゃあ帰りましょう﹂
651
暗くなった頃にようやく王城に到着。
王様含め、皆が心配していましたが、2つの解呪が成功したことを
伝え成功を喜んでいました。
そして、王様へ呪いに関する調査部隊を編成について依頼し調査団
の場所を説明した。
シュミット様は、あまり事情が解ってはおらず年初に沢山私と遊べ
ると聞いていたのがいなかったとしょげてました。
しかし、王様から、ご褒美にスーとマリアを連れて2泊3日で領地
に帰っても良いと提案がありました。
3妃様と第3王女、第4王女も一緒です。
シミュット様が期待に満ちた目で見るので了承すると、シミュット
様は大喜び。
マリアよりも喜んでいるのを見て、王様がまた﹁ジルベールに3人
も嫁には出さんぞ﹂
と、またまた警告してきた。
私、そんなつもりは全くありません。
私は、疲れ果て、そのまま領地への転移は止めて王城に部屋を借り
ました。
とりあえず、疲れもピークとなりそのまま寝ました。
652
5.6 領地での冬休み
久しぶりに我が家の領地に帰ってきました。
3妃様と、4人の王女を突然連れてきたのでさぞびっくりするだろ
うと思っていたら、
転送装置で手紙だけ先に送ってあったようです。
準備万端でした。
そりゃそうか。
突然来たら、おどろくどころの騒ぎじゃないですよね。
到着後、領主館の人々に挨拶をすませ部屋に荷物を置いてから、3
妃様を連れて領地の見学に回ります。
まずは工房見学に出発。
領地内の工房で皿作りを体験したり魔道具を作る工程を見学、
そして最後にぬいぐるみを作っている工房。
働いている各所に、子育て中の未亡人が働き孤児院の子供達が勉強
を兼ねたお手伝いをしています。
マイアー様シュミット様は、自分でデザインしたぬいぐるみをその
場で作ってくれたので、お気に召していただけたようです。
マイアー様とシュミット様が二人で
﹁また絵を描くから、姉妹を作って下さい、お願いします﹂
と丁寧に挨拶をしていました。
二人の天使に挨拶に皆が舞い上がってました。
653
マイアー様、シュミット様は、ちゃんとお小遣いを貰ってきており
ぬいぐるみはプレゼントではなくお金を払っていました。
工房側は、寄付金も貰っていたので受け取りに難色を示しましたが、
製品には、きちんと対価を払う練習ですからとの教育の一環として
お金をきちんと受け取ることになりました。
王家の教育、しっかりしてます。
途中で買い食いした食べ物も、マリアが払っていたし、こういった
旅行の中で庶民の生活をきちんと体験させるようにしているようで
す。
シミュット様は3月3日が誕生日でようやく4歳になります。
現在、3歳9ヶ月の割に、しっかりしているなと感心します。
ニーナもそうですが異世界だからなのか、
貴族だからなのか、幼いときの成長が少し早い気がします。
さて、その大人びた顔を見せるシュミット様は現在移動中の馬車の
中は、椅子に座らずずっと私に抱っこされてます。
そこはしっかりと3歳をアピール。
マイアー様は、スザンヌのひざの上ではなく3妃様のひざの上に乗
ってます。
マイアー様はいつも優しい3妃様が大好きです。
最近は、シュミット様をいつも抱っこされていたので久しぶりなの
でしょう。
シュミット様が私のところに行くのを良いことに今日は3妃様にべ
ったりと甘えてます。
二人とも、年齢相当の使い所を心得ています。
マリアはエスコートで手を取る程度のふれあいがあります。
654
その時毎回恥ずかしそうに、とてもかわいい笑顔を見せるのでドキ
ドキです。
スーは気品ある風格があり、エスコートされる時も堂々としてます。
でも馬車の中では恥ずかしげに近づいて結構甘えてきます。
そのギャップがすごく良い。
ギャップ萌えです。
たったの、2泊3日ですが領地内の色々な施設の訪問を行いました。
家でマリアはエレノアと遊び。
マイアー様とシュミット様はニーナと遊んでました。
私は、小さな子の方を中心に面倒を見ています。
そしてスーはアメリと沢山話をしていました。
どうやら私の小さいころの話を聞いているみたいです。
マリアが異世界の音楽を演奏してくれ歌詞を付けた歌を歌ってくれ
た。
エレノア、ニーナにマイアー様、シュミット様はとても気に入った
らしく、
この3日間よく歌を歌っていた。
おかあさまは3妃様と談笑されていた。
領主館は温泉があるのでお風呂を堪能してもらいました。
この領主館は温泉を利用した床暖房を完備しています。
3妃様は床が暖かくて良いですねと感心していました。
床に直接温泉を流しているのですかと聞いてきたので、
温泉を直接流すと、管が腐るので魔法で作り出した綺麗な水を閉じ
込め、
655
管の一部を温めて水を回していると説明しました。
夏は、領主館の南側の部屋の壁に井戸水で冷やした水を巡回させる
仕組み、
屋根から霧魔法でミストをかける仕掛けが作ってあり快適に過ごせ
るようになっていると説明しました。
ぜひ王城にも入れて欲しいなと言ってましたが、
現状王城には温泉が無いので床暖房は無理かも知れない。
さらに、王城の王妃様の部屋は領主館の部屋よりも高いので圧力が
問題です。
魔道具でポンプでも作って上げないと無理かな。
この領地よりも、もっと深いところから取り出すと圧力も高いのか
な?
そうして、楽しい期間はあっという間に過ぎる。
3日が過ぎ5人と専任の侍女を王都に送りました。
無事送り届けたことを王様に報告してから、領主館に戻ってきまし
た。
ちなみにハイルデン公爵家のオレリアン様は、
冬休みの間単独で温泉宿に泊まり、レイブリングさんから指導を受
けていました。
もちろん年末年始も休み無く。
私も戻ってからは、旅館を訪問し魔力操作の訓練だけ手伝いました。
だいぶ魔力操作も上手くなり、総魔力量も増えてきてます。
現状はレイブリングさんから習った詠唱を使って光剣を僅かですが
656
出せる様になりました。
まだまだ光剣を作り上げる魔力操作の力も不足しているので無駄が
多い。
そして維持するだけの総魔力量も不足。
致命的なのが、基本の剣術が不足です。
ただ、レイブリングさんの見立てではオレリアン様は、剣よりも槍
の方が得意ではないかと。
領地のメンバーでは、レイブリングさんともう1人だけ槍使いの人
がいました。
その方から指導を受けてました。
ちなみに、私は槍を習ったことが無かったのでこの機会にちょっと
やってみました。
結論を言うともう少し身長が伸びるのを待ちます。
槍を回したら盛大に地面を削ってしまいました。
身長が低くても使える槍の種類もあるそうですが、
この領地にあるのは長身向けの槍でした。
どう頑張っても振り回せそうにありませんでした。
レイブリングさんは身長が190cm。
槍使いの人は、身長2m。
オレリアン様も、195cmとものすごい高身長。
ちなみに私はまだ、130から140cmです。
50cm近くの違いは大きい。
人生初の挫折です。
657
と言うほど大きい事ではありませんけど。
こうして、2週間ほどオレリアン様は訓練を受けて王都に戻りまし
た。
次は、春休みに母親や兄妹も一緒に連れてくるそうです。
湖近くの、避暑地が開くのでそちらを予約して帰りました。
3月は、アレクサンドラ公爵夫人もアメリの出産にあわせて来るそ
うなので、
高級部屋から埋まって行きました。
運営的には、良かった。
リリアーナかあさまは、3月に領地に公爵夫人が来るので、そこに
向けて領地内のイベントを企画するそうです。
忙しそうです。
サフィーナ様が来るみたいだからもしかしたら第1王子も来るのか
な。
すごい騒ぎになりそうだな。
警備大丈夫かな。
658
5.7 アロノニアからの頼みごと︵前書き︶
やっと 白虎王の話です。
こちらに、昔の話が記載されてます。
聖獣 白虎王
http://ncode.syosetu.com/n2451
dp/
659
5.7 アロノニアからの頼みごと
マイアー王女の誕生は2月10日です。
今からおよそ1ヵ月後の誕生日に向けてどんなプレゼントを贈るか、
スーとマリアに相談してました。
でも、今日は答えが出ないまま領地へと帰った。
その日の夜メリーナ様から貰った腕輪と手に眺め新しい魔度具の事
を考えていた。
すると、まだ腕にもつけていないし魔力も込めていないのにアロノ
ニア様から声が聞こえた。
﹃ジルベール、聞こえますか?﹄
突然の声にびっくりして、
﹁ひゃー、は、ひゃい﹂と、変な高い声を出してし、しかもかんだ。
﹃まあ、突然で、驚かせてしまったみたいですね﹄
﹁いえ、私が腕輪を触っていたから、お邪魔してしまったのでしょ
うか?﹂
﹃腕輪?何のこと﹄
﹁メリーナ様から、女神と話が出来る腕輪を貰いました。今、手に
持っています﹂
﹃そんな便利なものがあったの、メリーナは、ほんとに何でも作れ
るのね、あの子﹄
﹁え、これのせいじゃないのですか?﹂
﹃違うわ、聖獣を通して声をかけているのよ、これきついからその
腕輪をつけてくれるかしら﹄
660
﹁はい﹂と言って、腕輪をはめて魔力を流し込む。
﹃どうでしょうか、聞こえますか﹄
﹃ああ、聞こえるわ、これ楽で便利ね﹄
﹃それで、なにか用事があったのでしょうか?﹄
﹃あなた、今、プレゼントを探しているのでしょう﹄
﹃良く、ご存知で﹄
﹃まあね。私は何でも知っているのよ。神だから﹄
﹃そうですか、何でも﹄と言うので、少し考えて、
﹃呪い鏡台を作った邪神を信仰している人たちについても知ってい
るのですか﹄
﹃いきなり確信をついた質問をするわね。
普通の人間は、もっと当たり障りの無いことから聞いてくるものよ﹄
﹃そうですが、でも、そんなの時間の無駄だし、知っていても、
教えてもらえないだろうと思っていたので、時間を無駄に使うより、
ズバッと聞いたほうが良いかなと。もし、教えていただけるならお
願いします﹄
と伝えると、予想しない回答が来た。
﹃あなた、そんなに結論を急ぐと、女にもてないわよ。
女は結果ではなくて、途中のやり取りを大切にするのよ。解った﹄
﹃はい﹄
ち、失敗したか。
やはり、女神も女性か。神だから格好だけで、性別無いのかと思っ
てた。
女性を扱うように、丁寧にしなければならないのか、反省。
661
﹃一応、いつもの事の繰り返しだけど知らせておくわ。
私の考えている事は、そちらに筒抜けにはならないけど、貴方の思
ってること全部聞こえてるわよ。
まあ良いわ答えれる範囲の情報はあげるわ﹄
﹃なんと、だから普段これは着けるなとメリーナ様が言ったのか﹄
﹃着けるな?
かんいっぱつ
の言葉を思い出す直前に間一髪で無
それだけではなさそうね。なんていったの﹄
お姉さまたちは、怖いのよ
心になった。
﹃ジルベール、なんで無心になるの。
メリーナ、絶対なにか言ったわね﹄
ああ、無駄だったかな。
ごめんなさいメリーナ様。
﹃まあ、良いわ、邪神の話ね。
今回のお願いにも関係しているから、関係する部分は話してあげ
るわ。
まずは、お願いの話からね﹄
と、ひとくぎり入れて、説明をしてくれた。
﹃まず、500年前、その邪神を崇拝する集団が、私の生み出した
4聖獣の一角である白虎王を封印したのよ。
それは、あなたの領地から直接行ける山奥に封印されているわ。
封印を解くには爆発的な魔力が必要なのです。
あなたは、総魔力量が10万を越えているから、もしかしたら封印
を解ける様な気がしているわ。
封印の場所を教えるから行ってくれないかな。
662
その代わりに守護精霊となる精霊の御霊を提供するわ。それを彼女
達のプレゼントにしなさい﹄
﹃守護精霊と言う事は、マリアのタマちゃんみたいなのですか﹄
﹃そうよ、用意できるのは、5体よ﹄
﹃おお、スザンヌ、マイアー様、シミュット様にエレノアとニーナ
まで渡せる﹄
﹃スザンヌは、別ね。
白虎王と一緒に銀狐の精霊が捕らえられていたからその子をそばに
置けばよいわ。
スザンヌは、メリーナが聖剣を渡したのでしょ。
あれがあれば守護精霊よりも強いはずよ。
でも銀狐は、守護精霊よりももっと能力が高いから近くに置くなら
銀狐ね﹄
﹃ああ、そういうことですか。
あれそうすると残りの一つはだれに﹄
﹃アメリの子供よ。
あの子は、ラ.... ああ何でも無いわ。
そう、アメリの子供よ。
生まれる赤ちゃんに。
それと、御霊を入れる母体となる動物はそちらで用意してね。
できれば10年以上生きる個体で、生まれておよそ3ヶ月前後の赤
ちゃんじゃなきゃ御霊が入れないから﹄
そばに置いた時が3ヶ月前後なら、御霊を入れるまでに多少大きく
なっても大丈夫だそうです。
﹃解りました。それで邪神の集団はまだ、その封印のところにいる
のですか?﹄
663
﹃いえ、いないわ。
封印周辺は、500年前に私がイシスを使って洪水で全部流したか
ら。
ああ、あなたが前世で国を作ったのはその洪水のあと200年経っ
た後よ。
200年で新しく住み着いた住民をまとめて国として立ち上げたの
よ。
邪神の関係者は、あなたが先日探し当てた通り今は北の地に集まっ
ているわ。
あと数箇所残ってはいるけど今回邪神の神殿を見つけて壊せば、
大きな拠点が無くなるので数年はおとなしくなるでしょ。
さて、ここからは私からの追加情報よ。
グランスラム帝国に気をつけなさい。
竜王バハムートの一族から竜を2体捕まえたのよ。
竜の意識をのっとる魔道具を作り出したようだわ。
それを使って戦争に使おうとしているわ。
ここは要注意よ。
今は、活動を停止させることしかできないようですが、意思を奪っ
て戦わせることが出来るのもすぐでしょう。
それで、竜を投入した戦争をすぐおこす事は無いと思うけど。
邪神を崇める集団に資金を提供している国のひとつがこの国よ。
それに、近いうちに貴方達の所に戦争をしかけてこようとしている
わ。
さすがに竜を使う気はないみたいだけど。
とにかく気をつけるように国王に言っておきなさい﹄
﹃はい。思ったよりも沢山の情報をありがとうございます﹄
664
﹃いえ、白虎王はあきらめていたけどあなたで望みが出てきたから
頑張ってね。
あと、念の為に神石にできる限り魔力を溜め込んでおきなさい。
今半分ぐらいに減っているみたいだから。
神石に魔力を溜め込んでおけば足りない分をそこから使えるわ。
今で5万程溜の容量よ。この世界では最大級の魔力保持能力がある
石ね。
まあホントにメリーナは色々と優れた神具を沢山持っているわね﹄
﹃はい。あ、それで地図で場所を確認したいのですが、ここで私の
地図を出して記載しますか?﹄
﹃あなたの地図をだせる?封印されてから気配が読めなくて正確な
場所は解らないのよ。
おおよその位置を教えるから、現地で探してね。
大きな黒い石の中に閉じ込められているわ。
石に魔力をそぞぎ続ければ壊れるので、それで聖獣が出てくるはず
よ﹄
と言うので地図を取り出す。
指示に従って円をつける。
﹃じゃあ、お願いね﹄
﹃解りました。ではおやすみなさい﹄と言って腕輪への魔力供給を
切り念ため腕輪をはずす。
明日、エイミー達に相談して、部隊を編成しよう。
ジルベール
身体能力は成長中︵一般成人平均が100︶
総魔力量 15万ぐらい
665
最近、成長期なので、毎月1万前後増えてます。
︵IQとほぼ一緒です︶
体力 250 力 200
すばやさ 250
知力 200
︵魔法の効果の倍率です。一般平均が100︶
器用さ 200
魔法力 300
︵精神攻撃の耐性値です。︶
珍しくできない
精神力 200
特技
剣術 レベル8
格闘 レベル8
槍術 レベル0
魔法 神の術補正により威力2倍
認識の変化によって、魔法スキルが一部統合・変化
基本魔法 最大
魔力操作 応用スキル 最大︵攻撃・防御系︶
魔素の高温化︵加熱︶
魔素の低温化︵吸熱︶
流体操作 ︵水など流体系の変形、操作、分離︶
個体操作 ︵金属などの固形物質の変形、操作、分離︶
気体操作 ︵風を使った攻撃など︶
音波操作 ︵防音、音楽︶
光子操作 ︵剣、防具、盾、結界構築︶
スキルレベル上昇中
空間操作 8 虚無空間付与、通常空間拡張、瞬転・転移︵魔
法陣が必要︶
666
レベル上昇で条件変更︶
時間操作 6︵レベル秒間×2 実際の100倍の速度で動け
る
回復魔法 8
*ジルベールが忘れている特殊魔法
*忘却の魔法レベル1︵レベル×10分までの記憶を忘れさせ
る。都合の良い様に書き換え可能︶
特殊
特殊召還魔法レベル7
聖獣召還 ガルダ、イシス
上位鑑定魔法レベル8
魔力の可視化レベル9
索敵 レベル9
祈祷 レベル7︵解呪、死霊の解放など︶
メリーナの加護 大 ︵状態異常大軽減︶
固有スキル 神の目 無詠唱での魔法発動
神の術 神属性を含む全属性魔法使用可能。 魔法効果2倍
667
5.8 白虎王の復活へ向けて
レイさん、エイミーにアロノニア様の事を伝え部隊編成や作戦を考
えてもらう。
同時に、王様、王妃様方への手紙を書き3,4王女に守護精霊を用
意するから、
生まれて3ヶ月前後のペットを用意して欲しいと連絡する。
そして、エレノアとニーナ、アメリに近日中にペットを選ぶように
伝える。
結局、ペットと言うのは高位貴族が飼う物でこの辺にはきちんとし
たペットは売っていない。
結局、王都で選んだ方が種類が豊富らしいので王都まで連れて行く
ことにした。
ついでに、エレノア、ニーナにはメルミーナ様の家を見せる。
﹁大きい∼﹂と感動してました。
私が学園に行く時に、王都に住む時ここに住むから、エレとニナも
ここに住むかもよ。と伝えたら、
﹁迷子になっちゃう﹂と困り顔。
喜んでるのか、困ってるのか良くわからない。
大丈夫かな?
そのあと王城へ。
王城は何回連れて行ってますので良く知っている。
そして、王妃様も含めみんなでペットを見に行った。
668
わんわん。
きゃんきゃん。
ミャーミャー。
ブフォー。
ギャオー。
いろいろなペットがいました。
スライムも売ってました。
ニーナが最初に選んだのは、でっかいスライム。
その名も、ビックスライム。
まんまや!
しかし、なんだかピカピカしていて、結構可愛かった。
ですが、寿命が不明しかも生まれてから既に5年以上経っている。
却下です。
なんだかんだもめた結果、今回は10年以上生きて生まれれ3ヶ月
以内。
いろいろいますが、お世話のにしやすさから犬と猫に決定しました。
その後は、割と簡単に決まりました。
アメリがセントバーナードに似てる犬
大型になる犬︵オス:パトリッシュ︶。
とても、賢くて大人しい犬だそうだ。
マイアー様は、ゴールデンリトリバーに似てる犬
ペットショップで販売している一番賢い犬と言っていた。︵メス:
リリエンタール︶
669
エレノアとニーナが、チンチラゴールデンの兄妹の猫
エレノアが兄 オス:マロ
ニーナが、妹 メス:ミュウ
シミュット様は、タマが白いので、長毛種の少し赤い毛質の猫にし
たようだ。 メス: サクラ
購入した犬猫を育てる道具も一通り購入し王城へ帰りました。
すると、王城でルカ王子とサフィーナ様をお見かけました。
明日から、隣国シドニア王国へ訪問するそうです。
1妃様の出身国です。
成人と共に王太子になるので、その前にあちらの王様と王妃様の両
親へ挨拶に行くそうです。
往復でおよそ1ヶ月だとか。
ご苦労様です。
お気をつけて下さいと。
なぜか、白虎王の救出作戦もご存知だったようです。
ルカ王子は﹁ジルベールなら心配ないね﹂
と言ってましたが、
サフィーナ様は私の事をあまり知らないようで﹁まだ小さいのだか
ら、無理せずに﹂と。
やさしい言葉をかけてくれました。
王子が、やきもちを焼いてそうだったので早々にお別れしました。
遠征部隊の準備も明日には終わるそうなので、
670
私も杖に十分な魔力を溜め込み準備OKです。
数週間の捜索が必要なので、ベースキャンプの見張りを3交代でや
る想定で全部で10名。
それにレイさん、エイミー、太郎と私です。
出発です。
私とエイミーは太郎に乗って他は皆馬に乗って移動です。
領地の端の方、馬で行ける所は3日だけ。
馬は近くに預けた。
そこからは、徒歩で2日進入する。
すぐに、霧の濃いところへ到着。
アロノニア様からの約束どおり霧を突破するための案内役が来まし
た。
ユニコーンです。
我々は、ユニコーンの案内に従い更に4日進み霧が終了。
ユニコーンの案内の霧の地は、進んでいるのか戻っているのか全く
解りませんでした。
そして、霧が晴れたところから1日進みようやく捜索地帯の中心地
へ到着。
これですでに合計10日。
ここに、ベースキャンプを設営してもらいます。
他の兵士は、ベースキャンプを守るお仕事。
食事の準備やもろもろ。
捜索部隊は、 レイさん、エイミー、太郎と私。
671
それに兵士から1隊だけ出てもらう。
まずは、北へ少し進んだあと、右回りで怪しいところをぐるぐると
数周捜索し徐々に検索範囲を広くする。
2日ほど荒く、捜索したところで強い魔力を感じる
北東と南西の2箇所に絞って探すことにしました。
まずは、北東へ。
ここは、割と深い泉があります。
その泉の入り口に巨大なマンイータがいました。
到着と同時に、襲い掛かってきました。
レイさんが光の剣で対応。
エイミーも枝を払い対応していますが、相手の手数が多くエイミー
の足がつかまってしまう。
太郎がすかさず体当たりでエイミーを逃がす。
私は、魔力を温存していて攻撃していませんでしたが、
燃やさないとジリ貧な状態だったので結局炎の攻撃で大破。
戦闘終了後に、マンイータ退治後に周辺を探しましたが黒い大きな
石は見つからず。
次の日に、南西へと向かう。
そこには大型の魔物化した熊がいました。
有無を言わさず襲い掛かってくる熊。
ですが、マンイータほど脅威はありません。
マンイータよりも強いのですが、1体だけで魔法も使ってこないの
で楽勝です。
672
エイミーとレイさんの剣による攻撃で即撃退できました。
こちらの周辺をくまなく二日ほど探すが、何も無い。
残された、南東、北西を探すが見つからない。
一旦作戦会議。
レイさんが、北東のマンイータの後ろにあった泉の中を調べないか
と。
自分が、探させない様にするなら泉に沈めるだろうと。
なるほど、確かに。
明日は泉の中を探すことに。
出発から20日目、泉の前に来てイシスを召還。
魔力の温存と言ってられません。
そもそも、黒い石がないと何もできない。
私は、イシスと共に水の中を探します。
光魔法を使って泉の底を光らせくまなく探す。
たまに、魔法で邪魔な木を吹き飛ばし、泉の中央、水深100mの
深いところにたどり着いた。
すると、ありました。
だれかが沈めたとしか思えませんね。
後で、自然に水が増えたとは思えません。
ここでは魔力を込める事ができないので、
イシスが石を支えながら、陸地の近くへと移動してくれました。
673
水深ぎりぎりで止まってしまっいましたが、
そこからは私が土魔法を使って土を隆起させ石を陸に上げまました。
大きな黒い石が地上に上がりました。
イシスを陸に戻し、私も外に出ます。
ふー、地上の空気はおいしいな。
さあ、いよいよ聖獣を解放しましょう。
その前に、少し休憩して魔力を戻さないと解放に足りないかも。
674
5.9 白虎王の復活︵前書き︶
そういえばブックマーク250超えました。
白虎王の発見、えらくあっさり見つかってます。
イベント的には重要な所なんですが、ここからの事件の方が長い。
675
5.9 白虎王の復活
石を陸地にあげたせいか、沢山の魔物が襲い掛かってきました。
私は、魔力の回復薬を飲み自分の魔力回復に努めます。
その間、皆が護衛をしてくれました。
部隊の10名とレイさんエイミーが頑張ります。
もちろん、イシスもいるのでそこまで大変ではありません。
大型の魔獣が来たらイシスが尻尾でポイと攻撃してました。
私の魔力は、予定通りなら3時間ぐらいで全回復。
無理にでもと寝てとにかく回復を急ぐ。
そして、全回復したところで石に魔力を注ぎ込み始めます。
﹁頑張ってジルちゃん﹂とエイミーが応援してくれる。
﹁ハーイ﹂と手を振りながら石の前に。
まずは、神石に溜め込んだ魔力を自分に還元しながらどんどん魔力
を石に込めていきます。
神石に魔力がある時は、黒石に自分の魔力を2送りこむと神石から
1供給される。
神石の魔力も無くなり、自分の魔力が残り3万前後ぐらいで石が割
れました。
良かった魔力は足りたようだ。
神石無かったら足りてないな。
﹁よし、開いたよ皆下がって﹂
皆で少し離れて、出てきたものが突然襲ってこないか確認する。
676
石が崩れ去り、中から立派な青年男性と綺麗な若い女性が出てきま
した。
女性はなんとなくだけどアロノニア様にも似てる。
何となく1妃様を若くしたような感じでちょうど二人を足して2で
割った感じ。
でも、虎と狐じゃなかったの?
まあとりあえず声をかけます。
﹁アロノニア様から頼まれて、白虎王の救出に来ました。
私はジルベール・クロスロードと申します﹂
﹁人間、それも子供に助けられるとは。
屈辱であるが、アロノニア様からなら致し方ない。
ありがとう。礼を言おう。
ところで、私を捕まえた人間の仲間がどこにいるか知っておるか?﹂
﹁アロノニア様からは、封印されてから500年たっていると聞い
ています。
ですので、当時の人間は全て死んでいると思います﹂
﹁そうか、500年も﹂
﹁白虎王、久しぶりね。あなたを封印させた一族は、私が500年
前に全滅させましたよ﹂
と、イシスが説明したら、
次の声が。
﹃白虎王、助かったのね。良かったわ﹄
677
アロノニア様から念話が聞こえた。
そして、この場にいるユニコーンが形を変えアロノニア様に変化し
た。
﹁ジルベールありがとう。
ああ、500年も。
ようやく我が子が解放されたわ。
にくいあやつらは、イシスに起こさせた津波で全滅させたとは言え
思い出すとまだ許せないわ﹂
怒っているアロノニア様が突然怒った。
ちょっと怖い。いやかなり怖い。
メリーナ様が恐れている通りアロノニア様はやっぱりやばいのか。
﹁アロノニア様、お久しぶりでございます。
このたび、封印を解いて頂きありがとうございます。
しかし、聖獣にも戻れず力も出せません。
どの様な状況でしょうか教えていただけませんか﹂
﹁500年封印されたことで、あなたの神力がつきかけているので
す。
石の中でも外の神気を少し取り込んでいたようですがそれでも足り
てはいなかったのでしょう。
一緒に封印された銀狐に多くの力を渡したことも要因です。
あと数年、そのまま封印されていたらあなたは消えてしまったでし
ょう。
一度、精霊界に戻って力を元に戻さなければいけません。
しかし、現世から精霊界には普通のルートでは行けません。
今は、時間が足りません。急がなければあなたが消えてしまいます。
ですが、唯一の手段がありますのでそれを教えましょう。
678
あなたは、そこにいるジルベールと契約を結び、召還の儀を交わし
なさい。
そうして召還を解除するとあなたは精霊界に身をおくことができま
す﹂
﹁召還の契約。それではアロノニア様は、私にこの人間を主人とし
ろと言うことですか﹂
﹁そうです。
ですがその人間ジルベールは、すでにここにいるイシスとも契約を
交わしています。
この世界で唯一、聖獣を完全体で召還することも出来ます。
契約者としては一番望ましい相手でしょう。
あまり時間がありません。
急がないとあなたの体が崩壊します。さあ﹂
﹁アロノニア様が言ったとおり、私も、ガルダもジルベールと契約
していますよ。
見ての通り、召還されても完全体が維持できるほど優秀な使い手だ
から、安心して契約しなさい﹂
﹁おお、イシス。召喚に応じると分体しか出せぬと思っていたが、
その姿が召還されているとは思えなかった。
昔どおりの姿では無いか。
解りました。
不本意ですが、応じましょう。
ジルベールと言ったか、では私がお前の召還を受け入れる、
私の名を呼び、自らの名を名のり、我に召還の儀に応じよ命じてく
679
れ﹂
﹁はい、解りました。では貴方のお名前を教えてください﹂
﹁名は無い。この場で名を付けよ﹂
それを聞いて、エイミーが、
﹁うわ、よりによってジルちゃんに頼むとは勇気があるな。
トラちゃん、アドバイスすると、幾つか候補を言って貰って、
そこから選ぶようにしたほうが良いよ。
ジルちゃんのネーミングセンスはひどいからね﹂
とらきち
﹁そうか、ちなみに一つ言ってみよ﹂
﹁じゃあ、虎吉﹂
﹁うむ、やはり他も言ってくれ﹂
はくと
﹁では、どうしようかな。
こてつ
白虎
タイガ
虎鉄
大河
こんなものかな、どれが良い?﹂
﹁アロノニア様が付けてくれた名は呼ばれても認識できず名になら
なかったのに、
悔しいがなぜお主の呼びかけは聞こえる。
不思議だ。
まあ良い、では、コテツを選ぼう。
我の伴侶であるコハクに似ていて、良い響きだ﹂
﹁では、コテツ、我ジルベールの召還の儀に応じよ﹂
﹁了承した﹂
するとコテツは人間の形から白い大きな虎に変わりすっと消えた。
680
同時にイシスが﹁私も戻るわ﹂と言って消えました。
﹁ああ良かった。間に合ったわ。
コテツは1年ほどは静養しなければならないので、
暫くは召還はできないと思いますが、よろしくね。
それと、コハクでしたか?﹂
﹁はい、アロノニア様﹂
﹁あなたは、コテツからの神力も加わり元の精霊交じりから成長し、
存在レベルが玄獣に上がっています。
すでに私のかけていた魔法は解け人間の形状も貴方の魂に刻まれて
いますので、
自分の意思で銀狐にも人間にも変身できるはずです。
試して見なさい﹂
すると綺麗な女性は尻尾が6つある銀狐に変わった。
そして人間に戻るとあれ?
狐の耳が残ってる。
さすがに尻尾は無い。
﹁おや、姿は私が与えたものですが、耳が残るようですね。
人間そのものにはならないようですね。
まあ、その姿も可愛らしくて良いでしょ。
では、コハク、あなたはコテツが復活するまでこのジルベールに使
えなさい。
コテツを復活させる変わりにそのような約束を私としました。
当面は、彼が頼む人を守りなさい﹂
﹁はい、アロノニア様の言うとおりに。
681
これより、コテツ様を助けて頂いたジルベール様のお役に立つよう
勤めたいと思います﹂
﹁まあ、今の王城の3人の王妃が相手なら、
王城に連れて行っても、王がコハクに夢中になることも無いでしょ。
ああ、あとは、王太子ね。そこは少し気をつけた方が良いかも知れ
ないわね﹂
﹁え、王太子にはサフィーナ様がいますから。大丈夫だと思います
よ﹂
﹁まあ、コハクは私が造形した姿を持つのよ。
1妃は、元々が私が生み出した精霊の子の子孫で、力は引継げな
かったけど、姿は継承している。
2妃と3妃は、良くは知らないけどラキシスが用意した母体。
この三人以外にこの子を上回る美人がいるのですか?﹂
﹁え、王妃様方全員が女神様が関係してた人。
ええーーー。ちょっと驚いた。
でも、逆に納得。だからあれだけの美人なのか。
まあ、良いや。
とりあえず、サフィーナ様は、至宝と呼ばれる称号を持ってますよ。
2妃様の妹の子ですから、2妃様にラキシス様が関与されたならお
かしくないと思いますよ。
現状は、国内一の美少女です。
なので、王太子もコハクに対しては大丈夫だと思います。
まあ、国内一の美少女はすぐにスザンヌとマリアに変わりますけど
ね﹂
﹁ジルベールはずいぶんとスザンヌとマリアびいきね。
682
ちょっと焼けるわね。
私の子もその中に入れたいけど、コハクは相手がいるし。まあ良い
わ。
サフィーナね、そんな美人がいるのね。
私の造形よりも美人なんて、ラキシスが関与したとはいえ悔しいわ
ね。
ちょっと覗いて見ましょ﹂
と言って、黙り込む。
﹁あら、ほんとに綺麗ね。 でも、おかしいわねこの雰囲気﹂
そのまま僅かな間をあけ、再びアロアニア様が不穏な言葉を続ける。
﹁あら、あら、これは、これは。
人間は、いつもこんなことを繰り返して。ばかね。
さて、どうしましょ﹂
﹁どうしたんですか﹂
﹁うーん。私はあまり人間が好きではないから。
まず、私が人間を直接助けることは無いのよ。
なので、今の状況でも普段の私は黙認なのですが、
まあ、今日は機嫌が良いし、どうしようかしら。
特別に、助けの手伝をしてあげましょうかね﹂
﹁サフィーナ様がどうしたんですか? 手助けが必要なのですか?﹂
﹁うん、説明する時間ないし、じゃあジルベールを転送させるから、
後は頑張ってね。
ああ、他の人たちは安全に領地までいけるようにユニコーンが連れ
て行くから安心して、
それとコハクが役に立つと思うからコハクもつけて転移させるわ。
683
じゃあね急ぎだから、ばいばい!﹂
﹁え?!﹂
急に目の前の映像が変わる。
684
5.9 白虎王の復活︵後書き︶
こちらに白虎王のお話があります。
http://ncode.syosetu.com/n1403
dr/
685
5.10 サフィーナ救出︵前書き︶
昨日、旅行中に行方不明になってた猫が見つかりました。
軽井沢の保健所から連絡があり、迎えに行きました。
本物でした。3カ月半ぶり。
着いた時は私達の事も、家も覚えて無い感じ。
朝になると夢では無くて今日もいました。
ネコちゃんの名前を呼ぶとニャーと返事が、
少し思い出したのかな。
ボロボロ、痩せてました。
これから、ゆっくりと治療です。
もともと、猫が死んだと思って、その悲しみを忘れるために書き始
めた小説。
忘れる必要も無いなら、書かなくても良いかもしれませんが、
すっかりライフワークになったので、そこそこ頑張ろうと思います。
686
5.10 サフィーナ救出
﹁じゃあね。急ぎだから、ばいばい!﹂
﹁え?!﹂
アロノニアさまーーーーーー!!
急に目の前の映像が変わる。
場面がいきなり切り替わっている。
強制的に転移させられている。
瞬間、時間魔法を使い自分だけ100倍に加速した状態に。
周りを確認。
1m右にサフィーナ様。
その正面に裸の知らない男が立っている。
私の後ろにコハクがいるようだ。
まずい、余裕が無いな。
すばやくサフィーナ様を正面から確認。
上半身がはだけて肌が見えるが下はちゃんと穿いてる。
良かった、まだ大丈夫。
サフィーナ様の後ろに男が1人いて体を押さえつけている。
両足に1人づつ足を捕まえている。
687
さらに離れて後ろに侍女2人。
その前に立って二人を剣で脅す男1人。
状況は確認できたが、なぜこうなっているかは解らない。
とりあえず、この男達からサフィーナ様を助けろと言う事だろう。
まず、裸の男を後ろに吹き飛ばし場所を確保。
サフィーナ様の安全確保が最優先、躊躇はしない。
捕まえている男を3人、光の剣で眉間を貫き瞬間的に殺す。
死んだ男は、マイボックスに収納できるのでそこに隠す。
血の1滴すら漏らさず、消す。
サフィーナ様に汚れはつけない。
それに時間の流れを変えている世界で手荒に動かすと、触れている
サフィーナ様にダメージが伝わる可能性がある。
極力動きが伝わらないようにした。
そして侍女の前にいる男は侍女に触れているわけでもないので殴っ
て気絶させる。
それで男が死んでも気にしない。
外部時間で2秒未満。
割と丁寧に処理しました。
が、我ながら急に切り替わったこの場面でよく対応できたな。
終わると時間魔法を解除。
同時に周りに防音魔法を展開、音が部屋の外に漏れないようにしま
す。
そして光魔法で近くを明るくする。
688
サフィーナ様に﹁助けに来ました。たぶん﹂
サフィーナ様が、そっと目を開ける。
私を見て﹁ジルベール様、どうして?﹂
﹁うーん、理由は後にしてください。
すいませんが、私も状況が把握できてません。
とりあえず無事ですか?お怪我は?﹂
後ろにいた侍女が、
﹁ささささ、 サフィーナ様は、スリ傷や打撲があります。
おおおおお、
お体は、間に合いました。なんとかぎりぎり。
あああああ、
ありがとうございます﹂
そうとう動揺している。
怖かったのだろう。可愛そうに。
﹁そうですか、良かった。
コハク、サフィーナ様の着替え手伝って﹂
私はその間に侍女の縄を切る。
こうい時に記憶が消せると便利なのに。
ふと、記憶を消す魔法をメリーナ様から貰っていた事を思い出した。
スキルを確認。
忘却の魔法:レベル×10分までの記憶を忘れさせる。
689
都合の良い様に書き換え可能。
使ってないから、スキルレベル1。
よし、10分だな。
急いでサフィーナ様の着替えを終わらてもらう。
そしてすぐにサフィーナ様に向かって忘却の魔法をかける。
記憶については、縛られた状態で男に手出しはされず囲まれてた時
に私が突然現れた事に改ざんする。
侍女二人も同じように魔法をかける。
状況を再度確認したら、なんとか10分の記憶の忘却で変な記憶が
無くなっていたようで良かった。
改ざんもうまくいったようだ。
サフィーナ様と侍女に回復魔法を使う。
それから、私は最初に吹き飛ばした男と気絶させた男をその辺にあ
った布と縄をくるくると巻いて、箱に詰めて荷物で隠した。
そして、王子が何処にいるか質問する。
王子は、扉の向こうにいるはずとのこと。
外の部屋に、20名以上の敵。
総数は、全部で100名近くいることが解った。
さて、王子を助けに行かないと。
魔力はまだあるので、普通の兵士が100人ぐらいなら魔力が切れ
ても大丈夫だろう。
よし、さっさと行くか。
690
﹁コハク、結界は張れますか?﹂
﹁できます﹂
﹁では、ここで結界を張って3人を守っていてください﹂
﹁お手伝いしなくても宜しいのですか?﹂︵コハク︶
﹁もしかしたら魔法の余波がくるかも知れないから離れていたほう
が気が楽だ。
ここで待っていて欲しい﹂︵ジル︶
﹁解りました。この方々をお守りします﹂︵コハク︶
﹁じゃあ、行ってきます﹂︵ジル︶
﹁え、ジルベール様、私も魔法が使えますのでお手伝いさせてくだ
さい﹂︵サフィーナ︶
﹁いや、邪魔だから。確実に。
コハクと一緒に居てください﹂︵ジル︶
﹁そんな、10歳の少年に全てを任せるなど、私には....﹂ ︵サフィーナ︶
の言葉の途中でそれを無視して、さっさと行動を開始。
どうぜ、コハクの結界からは出れらないだろうし今は急いで行動し
たほうが良さそうだ。
691
5.11 脱出︵前書き︶
本編関係ありませんが、帰ってきた猫ちゃんを病気に連れて行きま
した。
なんと、病気も無いようで、良かった良かった。
お気に入りのタイプの爪研ぎを買ってきたら、上に乗ってます。
いつもどおり、爪研ぎが爪研ぎの役割をしてません。
いやー、いつもの日常です。
692
5.11 脱出
サフィーナ様の言葉を無視して、さっさと行動開始。
扉を開けて再び時間魔法を発動。
扉を開けた先の壁に王子がはり付けられている。
即座に王子の前にいる貴族風の男の前に瞬転で移動。
目の前にいる貴族風のソファーに座っていた男の、両手と両足を切
り落とし抵抗できないようにする。
一応、この男は生かしておく。
周りを確認。
立っているもの、座っているものをあわせて6つのグループ20名
ぐらい。
まだ誰も動けてはいない。
瞬転で6つのグループに移動し全員を切り裂く。
最後の1人を切って、最初に切った男の前に戻る。
そして時間魔法を解除。
生きているのは恐らく転がっている男だけ。
男の周りに防音魔法を展開。
男の手足が急に落ちたことに気がつき、大声で悲鳴を上げる。
が周りには聞こえない。
足が無いので起き上がろうとした時にソファーから転がり落ちる。
693
念のため、転がっている男の傷だけふさいですぐに死なないように
しておく。
そして眠らせる。
王子は気絶していた。
王子の縄を切り落とし回復魔法をかける。
念のため、脈を確認。
どうやら無事なようだ。
この屋敷を含め庭全体まで索敵を展開してみる。
この部屋の先にある玄関ホールに10名。
横の食堂におよそ20名。
庭にばらばらと50名ほど。
とりあえず玄関ホールに移動。
10名を次々に倒すと何事かと食堂からぞどぞろと出てきた。それ
も撃破。
全員が食堂から出てきたわけではないので食堂内に移動する。
テーブルの下に隠れている兵士も索敵ではっきりとわかるので、テ
ーブルと一緒に火の鳥で焼き払う。
一瞬で燃え尽き最後に水を雨のように撒き散らし、火が燃えないよ
うにする。
外に出る。
玄関前にいた連中がこちらを見る前に雷を落とし気絶させる。
威力が強すぎたのか、電気ショック程度ではなくクロこげになった。
おそらく生きて無いだろう。
694
急に雷の攻撃の威力が増えていた。
聖獣 白虎王との契約をしたので、雷の特性を持つ魔法効果が10
倍だった。
これで火、水、雷の攻撃が強化された。
最弱でも一般の魔法使いの最大攻撃魔法よりも強い。
手加減がきなくなった。
そして、先ほどの大きな雷音に反応し、外を見張っていた兵士が次
々に玄関前に移動してくる。
雷でも手加減できないので、それらを火の鳥で次々に燃やしつくす。
残念ながら全員がこちらに向かってきた訳ではない。
逃げ出そうとする兵士数名がいるようだ。
こちらは索敵で確認できているので逃げる兵士の前に瞬転で移動す
る。
残党を全て探し出し、光の剣で足を切り落とし逃げれないようにす
る。
全員を全滅させると屋敷に戻った。
そして王子を抱えてサフィーナ様の所に戻る。
ここまででサフィーナ様たちの部屋を出てから5分ぐらいだろうか。
サフィーナ様に終わったことを告げると
﹁敵が100名ほどいたはずなのに、この僅かな時間で倒したので
すか。
695
本当にお強いのですね。 私、足手まといになるところでしたね。
待っていて正解でした。
コハクさんも、ありがとうございます﹂サフィーナ様から丁寧な挨
拶が。
そして、サフィーナ様に今の場所がわかるか確認した。
﹁シドニア王国の端の方です。もうすぐラルクバッハ王国に入る所
だったはずですが。
襲われた後に少し移動しているので正確な場所は解りません﹂
﹁そうですか。とりあえず襲われた状況を詳しくお話頂けますか?﹂
﹁はい、襲われたのは今日の昼間です。
私たちの乗っている馬車が100名を超える賊に襲われました。
こちら側の護衛は、あっというまに殺され恐らく護衛は全滅。
そして私や王子も捕まってしまいました。
魔法が使えなくなる腕輪で拘束され目隠しをされてここに連れてこ
られたのです﹂
﹁おおよそは解りました﹂
﹁ジルベール様は、なぜここに?
白虎王の封印を解きに行っていたはずでは﹂
﹁そうです。先ほどようやく封印を解いたところです。
そこのコハクは、白虎王と一緒に封印されていた銀狐です。
封印を解除後に、アロノニア様が現世を見回したら、
たまたまサフィーナ様と王子がさらわれいるのを見つけられて、
機嫌が良いからサービスだと言って私をココに送ってくれたのです﹂
696
﹁そうですか、たまたまココをアロノニア様が発見して下さったか
ら助かったのですね。
ああ、アロノニア様、感謝します﹂
と、お祈りを始める。
他の侍女もお祈り。
敵もいないし、邪魔しても悪いので1分ほどのお祈りを待つ。
﹁それで、どうしましょう。
どうも、自分の位置が正確に解らないせいか、王都から遠すぎるせ
いか解りませんが転移はできそうに無いです。
今日は、白虎王の解放をしたので残りの魔力もあまり残っていませ
ん。
もう大きな攻防は出来そうにありません。
でもここはまだ敵地ですから、移動したいのですが大丈夫でしょう
か?﹂
﹁はい、では移動しましょう。
が、どうしますか、馬車などどこにあるか解りません﹂︵サフィー
ナ︶
﹁そうですね、とりあえず屋敷の表には何も無かったので裏に回っ
て馬車を探しましょう﹂
王子が起きないので私が運ぼうとすると、
コハクが1人で運べるとお姫様抱っこで王子を抱えた。
うーん、逆だな。
でも絵になるなー。
コハク かっこいいぞ。
裏に異動すると馬車が何台かあった。
697
その中の大型の馬車を持ってきて王子たちを乗せ出発する。
コテツを助け出した時は、まだ太陽が見えていた。
こちらは東なのだろう日が沈もうとしている。
時間の進みがある。
夕日の位置を参考に、西側にラルクバッハ国があるのだろうと、
とりあえず、そちらへ向けて馬車を走らせる。
暫く走ると、屋敷が見えた。
敵かも知れないので、とりあえず近づき門番に地図を見せてもらう。
そして場所を確認する。
地図上の場所が解り、この館の貴族の名前も教えてもらった。
ようやく目が覚めた王子に、貴族の名を言ったが伯爵位だが知らな
い名との事だった。
ここで、知らない貴族に助けを求めるのもリスクがある。
一応、門番に、近くに住む他の貴族の名前を聞く。
1人、王子が解る貴族の名前があり、場所を聞けたのでそちらに向
かうことにした。
個人情報保護法が無いので親切に教えてくれた門番さん。
ありがとう。
馬車を急がせる。
あ、運転はコハクです。
さすが幻獣です。
ただの獣などお手の物。
私は隣にいます。
四人は馬車の中。
698
そこから1時間ほど走ると、目的の貴族の家についた。
門番に王子の名前を告げ突然の訪問だが家に入れて欲しいと頼む。
門番が急いで連絡に行く。
家の家長と思われる人が走ってきた。
転んだ。
起き上がって、また走る。
急ぎすぎて、最後は転がりながら到着した。
ずだぼろに怪我をしている。
すごくひどい顔になっている。
コハクが回復魔法を使って回復させた。
コハクはどうやらほとんどの支援系魔法が使えるようだ。
攻撃は、不得意だって。
回復魔法に驚く家長さん。
﹁ミレール・サイファトと申します。
回復魔法ありがとうございます。
うん、ゴホン、ああ、
ルカ・ラルクバッハ王子とお聞きして、驚いています。
以前お会いした時は5年前でしたが、、、、確かにルカ王子ですね。
今日はどの様なご用件で﹂
さきほど、賊に襲われたことを伝え、今夜かくまって欲しいと伝え
る。
家長は、馬車も違うのでおかしいと思ったと、とにかく急いで中に
入るようにと。
699
我々が、家に入ると執事が出てきて応接間に連れて行く。
すぐに部屋の用意ができたと、二部屋貸してくれた。
ミレールさんが﹁狭い家で申し訳わりません﹂
と言ってくるが、突然の訪問だしこのような状況なので問題はない。
ありがたい限りだ。
私は、長らくの外暮らしだったので先に湯浴みをさせてもらった。
サフィーナ様たちは、我々よりも広い部屋に4人で泊まる。
食事を出して貰えたみんなで食べる。
家族の食事は終わっていたので自分達だけいただいた。
ルカ王子達は、お昼も食べてなかった。
死を覚悟していたので、食事ができる事が嬉しくて皆で食事前にア
ロノニア様に感謝のお祈りをしました。
ミレールさんの奥様も出てきて状況を聞き、
明日、周辺の騎士団に王子の無事を連絡してくれる事になりました。
ただし、騎士すらも信用できるかはわからないので、
我々からは、ある程度の距離進んでから報告に行ってほしいとお願
いした。
ミレールさんはお昼過ぎに騎士の所に行くようだ。
部屋に帰ると、王子がコハクの事を聞いてきたので軽く説明した。
﹁幻獣を初めて見た。
だから耳があったのか。
耳付きも可愛いけど、サフィーナはもっと可愛いけどね﹂っ
とのろけられた。
ハイハイ。
ごちそうさまです。
ちなみに幻獣を見たのは私も今日が初めてです。
700
﹁今度、サフィーナも耳つけて貰えないかな﹂
と小声で言ってました。
エーーーー。
王子の新たな趣向の扉を開いてしまったか?
さて、私は、魔力もなくなってきていたので先に休ませて貰った。
後で、王子が眠るときに交代する事にした。
何かあったときのために4時間後に王子と交代し、起きて様子を見
る。
特に何もなったようで、4時間後に王子と交代し、王子に寝てもら
う。
私は、部屋の外に立って索敵の範囲を最大限で周りを監視した。
特に怪しい動きは無いまま朝になった。
701
5.12 帰国
王子が寝た後、3時間後ぐらいで朝食の時間になりました。
ミレール・サイファトさんと、その奥様、10歳ぐらいの子供男女
1名づつ。
簡単な自己紹介をされ、こちらも自己紹介をした。
王子はあと1時間ほどは寝るので少し食事をずらして欲しいと伝え、
残りのメンバーで食事を取った。
出発は王子の準備含め2時間後と決めた。
2時間後に準備を終え、ミレールさんにお礼を言い馬車で教えても
らった道を進む。
馬車の運転はコハクと私。
もともと国境が近いと言われていた通りその日の夕方前に国境へと
到達。
ラルクバッハ国との国境でようやくラルクバッハ国の警備兵に状況
が連絡できた。
ラルクバッハ国の警備兵は昨日到着予定の王子達が来ないので、明
日になったら捜索隊を出そうと昼過ぎから準備をしていたらしい。
我々は馬車を入れ替え護衛もつけて貰い移動を再開。
もちろんようやく、私もコハクも馬車の中へ。
702
昨日からの疲れで馬車の中に入るや、すぐに寝てしまった。
それから更に2時間ほど進んだ町の宿屋に着いた時に起こされ、部
屋に入る。
護衛含め小さな宿屋では、部屋が足りなかった。
今日はサフィーナ様と侍女2人にコハクと私の5人で同じ部屋にな
った。
王子は、護衛含め6人が同じ部屋だ。
いろいろと部屋割りを工夫した結果、私は子供枠に入りサフィーナ
様の部屋をゲットした。
王子たちの部屋のベッドはシングルベット6つ。
サフィーナ様の部屋はベッドが2つです。
サフィーナ様と侍女2人が巨大なキングサイズのベット一つ。
私とコハクが2人でクイーンサイズのベットに寝ます。
折角なのでと、寝る前に年末に一度一緒にやった魔力操作の指導を
して欲しいと言われ、
サフィーナ様と一緒に魔力操作を練習した。
疲れるまでやりこみ、それぞれのベッドに入り寝ます。
ちなみに、コハクは、寝るときに、ちょっと小さめの銀狐にもどっ
て私と一緒に寝ます。
大きさが、ある程度自由に出来るのが便利です。
サフィーナ様は、昨日コハクと一緒に寝たそうで、
﹁コハクは、ふわふわで気持ちよいのよ。良いなー﹂と言ってまし
703
た。
確かにふわふわであったかくて、これはよく眠れそうだ。
で、夜中にふと良い匂いがするので目が覚めた。
目を開けると、目の前に良いにおいの正体が。
サフィーナ様がコハクと私を抱き枕にして、私のベッドで一緒に寝
てました。
目の前のサフィーナ様の綺麗なお顔が。
いや、子供とは言え心臓がバクバクと。
冷静に、冷静にと呪文の様に繰り返す。
目の前からは、すごく良い匂い。
なんでしょ。
なんでしょうねこれ、香水とかじゃ無いんですよね。
不思議な甘美な匂いです。
暫く目が覚めて、眠れない。
1時間ほど起きていたかも知れない。
しかし、結局昨日の疲れからいつのまにかしっかり寝てしまいまし
た。
やはり体はおこちゃまでした。
侍女に起こされた時は、サフィーナ様はすでに着替えも済ませてい
ます。
当然、コハクも。
704
サフィーナ様が、
﹁壁が薄いせいで、隣の兵士のいびきがうるさくて眠れなかったか
らコハクをさわりに行ったら、
不思議なことにいびきが聞こえなくなって静かになって良く眠れた
わ﹂
と、頭をなでなで。
そして、コハクと侍女に着替えされられ、朝食に移動。
食堂で、王子が夜はどうだったと?聞いてきた。
︵サ︶﹁侍女の2人が、いびきがうるさくてあまり眠れませんでし
た﹂
とサフィーナ様は、
︵サ︶﹁私は、疲れていたせいか朝までしっかり寝てしまいました﹂
と言ってました。
私も、うんうんとうなづきます。
︵ル︶﹁侍女には申し訳なかった。私もあまり眠れなくてね。
サフィーナが良く寝れたなんて、やはり、気を使わせしまったね。
すまない﹂
︵サ︶﹁ジルベール様も良く眠られてましたよ﹂
︵ジ︶﹁はい﹂
︵ル︶﹁ジルベールは、敵意あるやつが来なきゃ、大きな音立てて
も、起きないんだよ。
レイブリングがそう言ってたからね。全く心配してない﹂
︵ジ︶﹁そうですか、その通りなので何も言えません。お気遣いな
く﹂
705
ちなみに、既に兵士は外に行って準備中。
誰がいびきをかいていたのかは不明。
私の魔力が全回復したので転移を試すか聞いてみる。
︵ル︶﹁飛べるのか?﹂
︵ジ︶﹁地図で確認すると、王都までは、まだ400km以上あり
ます。
一気に飛ぶと、遠いのですが自分の領地へならギリギリ飛べそうで
す﹂と伝える。
護衛の方々は、準備が完了しいつでも出発ができるようでした。
︵ル︶﹁ジルベールが転移を試す。我々が飛べたら、このまま国境
警備に戻るように﹂と王子が伝えます。
そして転移を試す。
と、あっさり領地へ転移できた。
アメリやおかあさまに連絡し、とりあえず一度休憩。
エレノア、ニーナが私が帰ってきたのを知って走ってきた。
みたま
そして、昨日の夜ペットが光ったんだよと教えてくれた。
おー、御霊が入ったんだなと。
少し大きくなったら、言葉が話せるようになるかもから大切に育て
てね。
とりあえず、ネコちゃん2匹と、アメリの犬をなでなで。
706
コハクも来てなでながら﹁精霊の気配を感じますね﹂と。
﹁アロノニア様との約束で、コテツを助けたら、5つの精霊の御霊
を貰える約束になっていた。
その約束の子達だよ﹂と伝える。
﹁そうですか、うまく育てば私の様になれますね﹂
と言う。
﹁へー、精霊が育てば、幻獣になるの?﹂
﹁どうでしょう。私はそんな感じですが、コテツ様がそばにいたせ
いかも知れません﹂
﹁あー、そうだよね。やっぱり﹂
︵答え、守護精霊は普通、幻獣にまで育ちません︶
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
賊に襲われた。
ぞく
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
サフィーナ回想
シドニアからの帰国中に、突然
一緒にいた護衛の騎士たちは一流の騎士ばかりが20名以上いたは
ず。
それが、襲われた。
しかも、あっという間に馬車が占拠され、私達は馬車から降ろされ
た。
周りを見渡すと、100人ぐらいの人が居て、さらに周りには50
707
名ほどの人が倒れている。
恐らく20名の騎士が倒したのであろう。それでも多勢、無勢無理
があった。
へきち
まさかこのような僻地で、突然これほどの規模の賊に襲われるとは
想定外だ。
私達は魔法封じの腕輪で拘束され、別の馬車に乗せられ目隠しをさ
れたまま移動した。
そして、王子と私達は、幽閉された。
が、相手の1人が、味見してーと騒ぎだした。
別の部屋に行ってやれよ。
殺すな、人質だからな。などと。
私と侍女2人の3人は、5人に男に連れられて、別の部屋に入れら
れる。
言いだした偉そうな男が、指示を出し私を押さえつける。
言う事を聞かないと殴られた。
そして引きずられて、後ろから押さえられ、足も押さえつけられた。
そして男はいきなり脱ぎだし、私の服を破った。
ああ、もうだめだ。そう思って目を瞑る。
しかし、なにもおきない。
﹁助けに来ました。たぶん﹂と言う声?
708
ほえ?
と目を開けると、目の前にジルちゃん。
﹁ジルベール様、どうして?﹂
﹁うーん、理由は後にしてください。すいませんが、私も状況が把
握できてません。
とりあえず無事ですか?お怪我は?﹂
とにこっと笑顔に。
ああ、そういうことすると、惚れちゃうじゃないですか。
さすがスザンヌを一瞬で落としただけある。
ちょっとやばい。
かなりやばい、どうしよう。
もしかしてドキドキしちゃってる?
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−
ドキドキ?
あれ、なにが?
そうそう、閉じ込められて怖いから、目をつぶってた。
そして、ジルちゃんが危機一髪を救ってくれた。
ジルちゃん、ありがとう。
王子よりも王子様よ!。
ちょっとドキドキするわ。
709
さすが、スザンヌを一瞬で落としただけあるわね。
なぜか服が変わっている気がするが、気のせいかな。
きっとそう。
︵記憶を少し消したので、意図せず、フラグ効果は半分ほどに減少。
︶
そしてなんだかんだいろいろあって、ようやくラルクバッハ王国に
着いた。
兵士も来てくれた。
やっと宿屋。
安心だ。
今日も、なぜか二部屋。
そして、ジルちゃんも同じ部屋。
まあ、子供だしね。
でも、ジルちゃんは、コハクちゃんと寝るのね。
ああ、ジルちゃんとコハクちゃんの両方と寝たいわ。
で、寝れない。
うるさい。
なにこのいびき。
そして、ジルちゃんとコハクちゃんはなんでこんなにぐっすり寝て
るの。
さすが動物に子供!!
710
なんでこんなにうるさいのに寝れるの?
悔しいから一緒に寝よう。
あれ、あれれ!!!
ジルちゃんに近づくと音がしない。
なに、この子寝ながら防音魔法使ってるの、ちょっとすごいわ。
でも、丁度良いわね。
コハクをなでなで、超気持ちよい。
ついでにジルちゃんもなでなで、ああ、寝顔がかわいい。
さあ、一緒に、おやすみなさいしましょうね。
ジルちゃんを抱っこ、コハクも間に入れて、ああー、至福。
711
5.12 帰国︵後書き︶
みたま
御霊を入れた動物が大きくなっても、幻獣にはなれません。
そこまでの道のりは通常ではありえません。
という設定です。
サフィーナは、対外的にはジルベール様と言うが、
自分の中では、ジルちゃんと子供扱いです。
712
5.13 ラルクバッハ到着そして再び
そしてお昼前に王城の教会に転移。
ようやく到着。
教会から出ると周りが騒がしい。
時間的に、ルカ王子たちが連れ去られた事はまだ連絡がきていない
はずだが、
王城周辺の兵士達は慌しく動いていた。
なにかあったのだろうか?
いそいでルカ王子と共に王様のところで出向く。
サフィーナ様と侍女は、すぐに王城の医務室へ直行してもらう。
予定の無い謁見だが、緊急と伝え時間を空けてもらう。
コハクは、謁見の間の入り口で待ってもらう。
突然、予定よりも王子が早く帰ってきたので驚く王様。
シドニアの途中で賊に襲われたこと。
その時に、ジルベールが白虎王の救出に成功し、機嫌を良くしたア
ロノニア様がルカ王子とサフィーナ様の救出にジルベールを転移で
送ってくれ助かったことを説明した。
﹁シドニアから別件の早馬が来ていたので、その件かと思ったが、
別件であったか﹂
と王様が言った。
713
シドニアの別件ってなんだろ。
とにかく、王子たちが無事で良かったと安堵してました。
事件のあった館の庭に、転移の魔法陣を埋め込んできたので、
もう一度行けるという話しをしたら、調査団として数名ほど選ぶか
ら後で送る様にお願いされた。
私から、王様にアロノニア様から聞いた話をした。
﹁アロノニア様から、グランスラム帝国が戦争を仕かけようとして
いるそうです。
それに、竜王バハム−トの配下の竜を捕縛したそうです。
すぐに戦争に導入はできないそうですが注意しろと言われました﹂
︵王︶﹁そうか、グランスラムが戦争か、それならばシドニアから
の報告と一致するな﹂
︵ルカ︶﹁どういことですか?﹂
︵王︶﹁ルカ達がシドニアの王都を立ってからすぐのことだ、
グランスラム側に動きがあり国境近くに兵が集まって来たそうだ。
昨日、早馬で連絡が来たのだ﹂
︵ルカ︶﹁そうですか、ではジルベールをシドニアも戻すのは危険
では無いのですか﹂
︵王︶﹁うむ、ジルベール、なにかあれば手助けをするのは良いが、
危険が無いように気をつけてくれ。
騎士団長をつけるので、判断を仰ぐが良い﹂
﹁はい、一緒に行ってくださる騎士の方にお任せします﹂
ルカ王子は、用事が終わると医者に体を見てもらうということで先
に退出した。
というか、
1妃様とお付の侍女達が強制的に連行して行った。
714
私はこの時既にシドニアとグランスラム帝国との戦争が危険な状態
とは知らないので、
のんびりと、自分の用事を王様に伝えます。
﹁それと王様、王城の教会についてお願いがあります﹂
︵王︶﹁なんじゃ、教会?﹂
﹁ええ、実は、前に伝えたとおりスザンヌはラキシス様、
私とマリアはメリーナ様が関係されています。
実は、それだけでなくアロノニア様がおっしゃるには、1妃様はア
ロノニア様の、
2,3妃様はラキシス様が関係されているようです。
ですので王城内の像ですが、やはり全ての女神様を飾った方が良い
と思うのです﹂
︵王︶﹁なに、王妃3人全てか﹂
﹁はい、3人ともが絶世の美女たるゆえんは、女神様が関係されて
いたかのようです﹂
︵王︶﹁そうか、私の妻は3人ともに女神との関係がある。
それはすばらしい。
それに、アロノニア様には、ルカとサフィーナを救ってもらった
し、
スザンヌにはラキシス様から未来視の加護か。
そうだな。では、像を置いたほうが良いのだな﹂
﹁今のメリーナ像が少し大きいので、あのままだと3体入りません。
お許しがいただけるならば、今のメリーナ像は我が領地へ移し、
新たな3神の像を私に作らせもらえないでしょうか。
715
私の記憶どおりに魔法で作り、それを飾らせてください﹂
︵王︶﹁うむ、それは良いが、3神全て作れるのか?﹂
﹁はい、3神全て記憶していますので、そっくりに像を作れます﹂
︵王︶﹁ほう、私はマリアの祈りのさいにメリーナ様を見ただけだ
が、ワシはきちんと認識でなんだ。
そちは、3神ともきちんと見て認識できておるのか。すばらしいな。
して、何時ぐらいに作る﹂
﹁はい、シドニアから戻り、落ち着いたにします﹂
︵王︶﹁先ほどの事は王妃達にも伝えても良いのか?﹂
﹁グランスラムの件は、王へ伝えるように言われましたが、
王妃様の事は止められてはいません。
ですが伝えろとも言われていません。
別件の話の中で、うっかりお話になったような感じですので
後で怒られると困りますし、秘密にして別の理由を伝え方が良い
かと﹂
︵王︶﹁うむ、ではそうしよう﹂
と言って、王様と別れました。
私は、コハクを連れてスザンヌとマリアに会いに行く。
スザンヌとマリアが来てくれた。
開口一番で、マイアー様、シュミット様のペットも、昨日の夜光る
716
のが確認されたと教えてくれた。
私から、スザンヌにコハクを紹介する。
コハクから
﹁失礼ですが、スザンヌ様は、とても強そうですね。
私の守護の必要性を感じません﹂とばっさりと。
﹁まあ、そんな気はしてたけど、アロノニア様との話では、
コテツを助けた礼に守護精霊をつけてもらうことになっていたけ
ど、
スザンヌに守護精霊をつけても役に立たないって。
スザンヌが危険になる時なら、コハクなら役に立つだろうと言わ
れてるんですよ﹂
と約束の内容を話す。
すると、コハクは、
﹁そうですか、恐らくは、私がアロノニア様が考えるほど強くない
か、
スザンヌ様が強すぎるかなのでしょう。
できれば、さきほどまで一緒だったサフィーナ様をお守りする事
でも宜しいでしょうか?
私と愛称の良い魔力を持っていました。
どのみちコテツ様が復活されるまでですので﹂と。
するとスザンヌが
﹁サフィーナ様が良いなら、それで良いんじゃない﹂
﹁よろしいでしょうか﹂とコハク。
﹁ああ、スザンヌとサフィーナ様が良いなら、好きにして良いよ﹂
717
﹁じゃあ、サフィーナ様のいる場所解るから、連れいて行ってあげ
るね。
ジルさまは、このあとどうされるの?﹂
﹁件の調査部隊を送る約束をしてます。
これからトンボ帰りで、もう1泊ぐらい向うに泊まるかも﹂
﹁え、お疲れなのにご苦労様です。あまりがんばりすぎないように﹂
とスザンヌ。
﹁では、次に会える時は、お休みの日ですね。楽しみにしています。
お気をつけ下さい﹂
と丁寧に挨拶をするマリア。
でもしっかりと私の手を握ってくる。
いや、かわいい。
それやられると出かけれない。
スザンヌが気づいて、スザンヌも空いている手を握ってきた。
﹁すいません、別れがたいけど行きます﹂
﹁﹁はい、頑張ってください﹂﹂
と2人と別れた。
スーが、コハクに、お耳ちょうかわいいー。
私も今度付けてみようかな。えへへ。
と言っているのが後ろで聞こえた。
ミミが流行るのだろうか?
718
私は、準備ができたと呼びに来た兵士と共に王様が待っている部屋
へ。
調査兵が4名と、偉い隊長さん1名の合計5名を連れて再びシドニ
アへ転移した。
719
5.14 調査へ︵前書き︶
地図を挿絵で入れて見ました。
720
5.14 調査へ
目的地を意識したら、一気に飛べそうだったので手抜きで経由地を
飛ばして頑張って転移してみました。
結論から言いましょう。
失敗です。
領地に飛んでから、もう一度飛んだほうが良かった。
どうも、一回の距離が長いと、魔力の消費が多い。
中間地点を設置できるなら途中があったほうが魔力消費が少ない。
今回、ごっそりと魔力が減りました。
1回1回の転移のインターバルはそこまで長くない。
現状1分も待て次の転移が出来る。
それほど手間ではないので経由地があったほうが楽です。
いつも、領地と王城の転移では、魔力2000程度で飛べるのに、
距離が2倍のはずが魔力消費がはそれ以上に多い。
おそらくある距離を越えると、消費量が増えるのでしょう。
空間転移のスキルレベルは他の魔法と比べて最大になっているわけ
ではないので何らかの制約があるのかもしれない、が過去最高レベ
ルまで到達した人がいないので、文献にも残っておらず条件が不明
である。
国内にも転移魔法を単独で使える魔道士は数名。
それも非常に短い距離、王都内しか転移できない人ばかり。
721
長距離の転移については解らないことが多すぎる。
さて、無駄話はその辺で。
転移すると、周りにシドニア王国の兵士が沢山。
我々が急に出てきた事にあわてるが、兵士の装備を見てラルクバッ
ハ王国の兵士と認識してくれた。
何処かに隠れていた兵士が安全を確認して出てきたと思ったらしい。
シドニア王国の偉い人、おそらくこの隊を指揮する隊長と思われる
人が来てこちらの兵士と話を初め、状況を確認していた。
シドニアからラルクバッハへの道中で王子の護衛が全滅した。
僅か2人の生き残りから王子たちが連れ去れたことを確認し、付近
を捜索してここを発見し調査中だったらしい。
別途、ミレール・サイファトから王子達の無事の連絡があり、犯人
に繋がる証拠と残りの生存者捜索の為にここの調査をやっていたそ
うです。
﹁敵は数名、生きていたはずだ。﹂と言うが、彼らがここに着いた
のは今朝方。
屋敷の中も含め、すでに全員が焼死体となり、死体も見分けができ
ない状態だったそうです。
死体の顔も判別不明な状態なので、何も得られないと言っている。
そういえば、サフィーナ様を捕まえていた賊を3名ほどマイボック
スに入れていたのを思い出した。
﹁遺体なら3体ある﹂と伝え、マイボックスから取り出す。
722
隊長さんは眉間に一筋の見事な切れ口で死んでいる賊を見て、一言
もしゃべらず私を見つめてきた。
なにが言いたいのか良く解らなかった。
暫くすると隊長は遺体の調査を兵に指示した。
だが、生きている人はいないので、それほど有益な証拠は出ないだ
ろう。
そういえば、同じくサフィーナ様を襲っていた男を箱に入れて、荷
物の裏に隠していたの事を思い出した。
兵士を連れて建屋の中に行く。
やはり、王子の前にいた男は手足が無いだけでなく、顔が判別出来
ないぐらい焼かれていた。
そこを通り越し、サフィーナ様が閉じ込められていた部屋に入る。
荷物をどけて、箱を調べる。
すると、居ました。
ぎりぎり生きてます。
回復魔法を使って元気にさせる。
そのままシドニアの隊長に引き渡した。
それを見て王子たちを救出し賊を私が倒したと言うのを今の今まで
嘘だと思っていたみたいですが、ようやく信じるようになりました。
そして調査はシドニアの隊長たちに任せ、こちらも報告員を2人残
し、我々は無事だというラルクバッハ王国の兵士のところへ向かっ
た。
723
ここから2時間ほど移動した病院に居るそうです。
馬車での移動を案内してもらう。
2人の兵士が瀕死の状態で寝ていました。
私がすぐに回復魔法を使いそこそこ元気にしました。
残念ながら傷が深く、一度で全部治すことができない状態でした。
とても酷い状態です。
︵神格化すれば治せますけど、緊急性も低くそこまでする気が無い︶
しかし、生き残っていて良かった。
会話が出来るぐらいまで回復したので、王子とサフィーナ様が無事
である事を告げるととても安心していました。
シドニアの兵から、他の護衛は全員死んでいたと聞いた。
そして、生きていた兵士が
﹁お預かりした兵を死なせて、自分だけが生き残り申し訳ない﹂と、
大隊長さんに謝っていました。
生きていた人は、この大隊長さんの部下で中隊長さんでした。
大隊長は﹁生き残ってくれてありがとう﹂と泣いて喜んでいました。
さてここでこの状態で転移させ王城へ連れて帰るか、明日また回復
魔法でもう少し回復させてから移動させるか、どちらが良いか訊ね
たら、無理をさせたくないからと一泊して明日にして欲しいとお願
いされました。
とりあえずこのままで様子を見ましょう。
724
大隊長さんが用事をしている間
ちょっと休憩。
気になった空間魔法のスキルを上位鑑定の能力で確認したら、
空間魔法の詳細が表示された。
すごく詳しく説明になっている。
いつも、単にステータス確認で見ていたせいかも。
上位鑑定で自分を見れば、詳しく見れるのかな。
空間操作 レベル8 1
m^3
m^3
マイボックス空間の大きさ ︵レベル×10︶^3
通常空間拡張付与 拡大率=40倍まで設定可能 通常アイテムボックス元が1m^3 ↓ 10∼12
000程度の魔力を消費
で 5,000∼8,
m^3 量を増やすと、
m^3
虚無空間付与 最大レベル*10
急激に増加
マジックバックが 15∼20
000程度の魔力を消費。
m^3で25,
200消費
マジックテント 6m×4m×高さ2m=32
000程度の魔力を消費
瞬転 見える範囲への瞬間移動
転移 任意の場所から設置した魔法陣周辺に移動可能。
転移消費魔力
250km以内は、距離×10の魔力で移動可能
2,400 距離×10
以降50km毎に、倍率が10づつ増える。
よし、ちょっと計算。
王都、領地が240km
725
領地、シドニアが300km
650km
王都、シドニアの端が470km
王都、シドニア王都
6,000 距離×20
23,500 距離×50
58,500 距離×90
つまり、中央に魔法陣があれば消費量をだいぶ減らすことができる
ようだ。
どうやら、シドニアの飛ばされた日に転移ができなかったのは距離
が長かったために総魔力量が足りなかったせいかも知れない。
暇なの時にガルダで飛び回り領地と王都から250km範囲に魔法
陣を置いた方が良いかな。
<i220724|19844>
726
5.15 報告 そしてシドニアの英雄に︵前書き︶
自重なしのやっちまった事件です。
ちょっと話が長いです
727
5.15 報告 そしてシドニアの英雄に
朝シドニアからラルクバッハ国まで転移し、王様に報告してからす
ぐにシドニアに戻る。
生きていた敵の兵士を回復させ、そして馬車でここまで。
とっくに昼を過ぎ病院で遅めの昼食をとって、大隊長の用事が終わ
るのを待つ。
そろそろ帰るか、と思ってました。
しかし大隊長から次のお願いが。
更にシドニア王国の王都に転移してシドニア王へ報告ができないか
と。
いやいや、このおっさん無茶言うな。
結論をズバッと。
行ったことがないところには転移ができないと伝えた。
ただし、ここからシドニアの王都までなら2時間以内で移動できる
方法があると伝える。
﹁ジルベール殿が問題ないなら、ぜひお願いしたい﹂と言う返事で
した。
へいへい。
移動前にシドニアの地図を貰った。
一般人向けに他国の詳細な地図は売っていない。
私が持っている地図はすごく粗い地図だ。
728
ようやく今自分のいる位置を正確に把握した。
シドニアは、ラルクバッハほど大きくはない。
温暖な気候に肥沃な土地。
人が住めない魔物が出る北はラルクバッハが防衛している。
建国時代にスーレリアの兄が、グランスラムからの緩衝地として作
った国だ。
基本的な法や、習慣はラルクバッハと一緒。
祈る主神がラキシス様。と言う違いがあるぐらい。
払ってねで
ビクッとした。
移動はしても良いけど、送迎代金はちゃんと払ってねと。
大隊長は、
﹁たぶん大丈夫だ。王子を助けてくれたのだから、王様から絶対に
何か褒美が出る﹂
と自信を持って返事をされた。
はいはい。
まあ期待してないけどね。
とりあえず外にでて、帰ってくるための魔法陣を病院の庭に埋める。
そしてその場で、ガルダを召還。
びびる大隊長。
一緒に連れてきた2名の兵士は病院に居る兵士の面倒を見ながら、
このあたりの調査を継続するそうです。
729
で、有無を言わさず大隊長をガルダに乗せて移動開始。
1時間を少し過ぎたぐらいで大きな城が見えた。
ですけど、あれ?
城の奥の方、50kmほどさきでしょうか。
高空から見ているので、かなり遠いところも見えます。
なんかやばくないかな。
火事?
兵士達が争っているように見える。
煙が何本も上がり、土けむりも見える。
訓練?
とりあえず、王城を一旦通り越し、争っている上を旋回して様子を
見る。
大隊長の意見を聞くと、シドニア兵とグランスラム帝国の兵士が戦
っているらしいと教えてくれた。
え、戦争って始まってるの?
先頭部分の小競り合いの部分は、1000人ほど。
後ろに控えるグランスラム帝国1000人ぐらいの部隊が4つ。
さらに後方に、兵糧だろか、荷馬車置いてありそれを守ったり移動
させたりする人員がいる。
そこに大部隊、全部で5000人を確実に超える規模。
補給含めて最大で1万人ぐらいだろうか。
730
この国は王都から僅か50kmほどに国境があり、毎年の様に10
00∼2000人で攻めてくる戦いか必ず行われているそうです。
しかし、いつもは後ろにあれほどの大部隊が控えていることがない
との事。
国境に近くに王都がある理由は100年前の戦争で領地を一部グラ
ンスラム帝国に取られたからです。
王様から助けられるなら支援して欲しいとは言われてましたが、ど
うするんだろ。
大隊長にどうするか指示を仰ぎます。
大隊長が私に魔法で上から攻撃が出来るか聞いてきました。
するとガルダが暴れても良いかと聞いてきた。
大隊長にガルダが攻撃できると言うと、頼むとの事。
許可が出たので、ガルダに攻撃を了承する。
ただし、シドニア兵がいる前方と後ろの荷馬車と明らかに防具すら
着てない一般人には攻撃しないように念を押す。
ガルダが、後方に控えるグランスラム帝国の兵士の中央部へ低空で
滑降し、大部隊の前方、騎士と思われるグループに火の塊を放つ。
大爆発と共に、グランスラム帝国の兵士が大量に消えていく。
そのあともグランスラム帝国の兵士に数回程の炎の攻撃を繰り返し、
ほぼ全滅させた。
前方の1000人はシドニアと混戦状態だったのでガルダは、攻撃
していない。
731
残りの1000人の4つの部隊は、ほぼ全滅。
後方の大部隊は、前半分が攻撃でボロボロ。
後方の一般人2000人ほどは無事。
つまり、無事なのは合計3000人だけ。
さらに攻撃を受けたところの該当兵士7000人の8割がおそらく
死んでいる。
グランスラム帝国の残存兵士は多くても5割。
ガルダは、久しぶりに暴れることができたとご満悦。
いやいやガルダさん、やりすぎじゃね。
私は油断していた。
まさか一瞬でここまでの被害を出すとは。
攻撃を許可すると急に速度が上がり大きく揺れた。
私はガルダの上で落とされないように大隊長を抑えながらしがみつ
いて、気がついたらこうなっていた。
ガルダの攻撃はガルダが神界から持ってきた魔法力のほかに、私の
魔力もある一定割合で使われる。
魔法力も底をつきかけいるしどう考えてもやりすぎだ。
とにかくもう戦闘は終わり敵は逃走を始めた。
建国王のシン、ああ、本当は自分らしいけどこんなすごい力を持つ
聖獣を良く従えたものだ。
どう考えても自分よりも圧倒的に強い気がする。
732
神格化して、対応できるか、疑問だ。
攻撃を止めて、敵の上を数周周回。
敵が敗走し、国に戻り始めたのを確認したので、我々も王城へ向か
う。
王城の庭に手旗信号で呼びかける人がいたのでそこに降り立つ。
大隊長さ
先ほどの攻撃を城から見ていたのか、大歓声で迎え入れられた。
。
そして、ガルダから降りたら、英雄として向かられらる
ん
いや、良かった良かった。
ラッキー勘違い。
私もガルダから降りてガルダにこのまま王城に居ても大丈夫か尋ね
る。
攻撃で腹が減ったから豚2頭を丸ごと欲しいと言う答え。
大隊長に伝え、シドニアの兵に用意できるか聞いてもらった。
ガルダの面倒を見ると言ったシドニアの兵にまかせ、我々は王城の
中へ。
私は、大隊長の後ろにくっ付いていく。
どうやら、大隊長の子供と思われているようだ。
それはそれで気が楽だ。
丁度良いのでこのまま誤解してもらい、大隊長に英雄をやってもら
おうと思っていた。
謁見の間
の扉前に到着。
﹁英雄様どうぞ﹂と偉そうな衛兵が王様の下へ案内してくれた。
そして
733
大隊長だけが謁見の間に入り、私は兵士に止められた。
はいはい、おとなしく待ってますよ。
扉前から下がる。
気がついた大隊長が、急いで私を抱き上げて謁見の間に連れ込まれ
た。
中に入ってから、大隊長に
﹁面倒くさいから外で良かったのに﹂
と言うと
﹁そんなこと言わないで、ちゃんと誤解を解きましょう﹂
というが、シドニアの兵のあの盛り上がり、いや、もう無理でしょ。
英雄になったんだから頑張ってね。
とくだらない会話をしていると王様が登場した。
王様が、まず初めにお礼を言ってきた。
そして、ラルクバッハ王国の兵士だと思うが、自己紹介をして欲し
いと。
大隊長が、自己紹介を行い状況の説明をする。
王子が襲われたこと、そしてジルベールが助け、王子は今ラルクバ
ッハ王国の王都に無事帰還した。
調査の為に現地に戻りこちらの王に、王子の無事を伝えに来たら、
戦争が始っていたので手伝ったと一通りの事を伝えた。
そして、私に自己紹介をしろと大隊長が言うので
﹁ラルクバッハ王国の第1王女スザンヌ様、第2王女のマリア様と
734
婚約を結んだジルベール・クロスロードと申します﹂と挨拶をした。
すると、婚約は国外にも連絡されていたし、ルカ王子が来ていたの
で話が出ていたのだろう。
﹁そうか、ルカ王子から規格外の男子と聞いていた。
話半分ぐらいだろうとあまり信用していなかったが、噂以上だった
ようだな。
ジルベール殿、お主のおかげで助かった。
礼を言う。
今夜は食事を取り、ゆっくり休んでいって欲しい﹂と続けて
﹁できれば、明日は、英雄のためにパーティを開きたいのだが﹂と
言うので
﹁では、これを残しますので、どうぞ﹂
と大隊長を差し出した。
﹁ぶわはははは。しゃれが上手いな。
すまない誤解したもの達の事は、詫びよう。
すまぬが、冗談抜きで、本気で頼む﹂
﹁私も結構本気だったのに。
私は、社交にはまだ出ていません、出席は、昼間の行事だけでよろ
しいでしょうか。
夜は、大隊長さんで我慢していただきたいです。
それと、明後日には帰ります。
こちらのわがままで大変申し訳ありませんが、予定していなかった
滞在なので早めに帰らさせて頂きたい。
王への報告もありますし﹂
735
﹁うむ。長くは退き止めできぬのは承知している。よろしく頼む﹂
そしてそのまま王が今回の件について見解を話してくれた。
おそらくラルクバッハの王子を人質にラルクバッハからの応援が来
ないようにした上で、この国を攻める算段だったのかも知れない。
ちょうどグランスラムが攻めて来る少し前に部隊へ早馬が着いてい
るのを確認している。
恐らく王子達を確保したという連絡だったのだろう。
グランスラムは通信機の魔道具を持っているから、後方部隊にある
通信機で連絡を受け前線へ伝えに来たのだろう。
グランスラムは、今回1万の兵で攻めてきた。
さらに後方にまだ兵がいるようだ。
追加応援が来て追い出されては侵略した意味が無い。
そこで、ラルクバッハの応援がなければ近隣国もシドニアの到着で
きないので、難なく征服できる。
今回のルカ王子たちの襲撃は、それが狙いだろうと言うことでした。
恐らくはずっと滞在し侵略し続けるのではなく、時間を稼ぎ食料や
財宝を運び出すことが狙いだったかも知れない。
その後、部屋を出て今日泊まる部屋に案内された。
食事が出るまで時間があるそうなので湯浴みして着替えて欲しいと。
侍女に連れられ、体を綺麗に洗われた。
久しぶりにゆっくりと湯に入った。
着る物をどれにするかと言われたので、とりあえず服をマイボック
736
スから何着が取り出しどれが良い?と聞く。
突然空間から出てきた服に驚くが、自分達が用意した服と目の前に
ある服で上手くコーディネートし、髪型を整えられると、なんかお
しゃれな格好になった。
珍しく、鏡の前でチェック。
前、横。
うん、良いな。
侍女の方を向いて
﹁どうですか?﹂とにっこり笑うと、緊張した顔がにっこり笑顔に
なり
﹁はい、とても良いと思います。お気に召して頂けたでしょうか?﹂
と聞いてきたので
﹁はい、とても﹂と答えておきました。
この子、センスが良いかも。
とりあえず、優種な人材は確保したいな。
少し自己紹介をして、侍女さんの事も聞き出す。
まず名前を聞く。
この侍女さんは、エリンと言うそうです。
ちょっと小さめの身長だがわりと可愛い。
16歳から王城で働き始め、今18歳だそうです。
食事までの時間に少し話をしてみたが感じの良い子だった。
737
食事に行く前に
﹁突然ですが、この国での滞在時間も少なく、チャンスがそうある
わけでは無いと思いますから言っておきます。
エリンさん、私の住む国に来て私の侍女になって頂けますか?
突然の事だし、異国に行くことなので簡単に返事ができると思えま
せんが、明後日までに返事をもらえないでしょうか。
私は転移ができるので移動の時期は相談出来ますから﹂と誘ってお
きました。
即答は無く、考えておきますと返事をしてくれた。
気楽に声をかけてしまったが、そう都合よく異国の地にほいほいと
付いて行く事は無いよな。
期待せずに返事を待ちましょう。
738
5.15 報告 そしてシドニアの英雄に︵後書き︶
後のほうで領地が返還されるとしたので、辻褄あわせでここに下記
を追加してます。
2017.01.02
国境に近くに王都がある理由は100年前の戦争で領地を一部グラ
ンスラム帝国に取られたからです。
739
5.16 ようやく帰国
着替えが終わると食堂に案内されました。
本日の夕食は王様、王妃様方に王女達が参加。
そして引退された離宮に住まわれている王様のお父様、お母様二人
片側が︵エミリア様のお母様︶が参加。
つまり王家フルメンバーが揃ってました。
大隊長は王様の近くに、私はこちらの王女様方に囲まれてます。
リアン13歳、クラリス12歳、イリアーナ10歳、コラン8歳の
4人。
この国には王子がいません。
昨年最後の7歳の王子が亡くなったそうで、ラルクバッハとも王家
存続について相談中。
ルカ王子が来たのはラルクバッハ王国の王太子になる報告と言って
ますが、
結局この国には来ないよの宣言だったわけですね。
で、目の前。
私は婚約者がいるしそんなにくっつけられるのは困るのですが、有
無を言わさず席が決まっていました。
王女方は、私の婚約の事は知っています。
キャピキャピと恋の逸話に聞いてきますが、そんなに話すことはあ
りません。
そして話は歌や踊りそして例のミュージカルの話に。
話には聞いてるが一度見たいと熱烈なアピール。
ぜひ、こちらの国にも興行に来て欲しいといってますが、うーん。
740
こうぎょう
この国まで興行に来るのは大変だろうな。
企画してもだいぶ後になる。
こちらで公演をするには場所の確保などかなり難しい。
﹁王女・王妃だけなら、頑張って転移で移動させた方が良いかな﹂
と言うと。
王妃様は離れたところに座っていたはずなのに聞きつけ
﹁ほんとですか、連れて行ってくるのですか?﹂と。
いや食いつきすげ。
地獄耳、ちょっと怖い。
魔法ですか?
﹁大丈夫ですよ。明後日、一緒に移動しますか?﹂と訊ねたら
3人の王妃が即答でそろって﹁﹁﹁行きます﹂﹂﹂と返事があった。
この国の王妃様も3人、お母様2人。
そして王女4人。
﹁大隊長さん、置き去りにして、後で往復の時に連れて帰っても良
いですか?
今回は、怪我した兵士2人を先に連れて帰るので﹂
と言うと
大隊長が﹁いつ迎えに?﹂
﹁王妃様、何日ぐらいあちらに居ますか?﹂
﹁折角だから、1週間ぐらいは過ごしたいわね﹂と。
うーん、いきなり王家の人を連れて行っても良いのかな?
741
いや、宿泊もあるし王城に連絡がいるよな。
連絡せずに、明後日連れて行ったらまずいよな?
そういえば、領地に繋がるものだけど転移ボックスが1個あったな。
﹁ラルクバッハの王様に連絡を取るので手紙を書いてください。手
紙を転移させてますから﹂とお願いする。
私は王城にシドニア王からの手紙を届けることを記載しついでに、
明後日から1週間、シドニア王国の王妃3名王女4名が行く。
おそらくラルクバッハの王妃、王女も一緒に行動するから、ミュー
ジカルや劇、歌などチケットを予約するように記載したメモを書い
た。
そして、明後日の昼ごろに領地を経由するので、領地の見学をお願
いした。
それらを、転送付きのアイテムボックス、転移ボックスに手紙を入
れ、様子を見る。
お、ちゃんと監視の人が見つけてくれたぞ。
再び、物が入った事を示すランプがついたので、開けてみる。
王城に手紙を届ける旨と、返事が来たら、連絡を入れると書かれた
カードが入っていた。
王様と王妃様に﹁連絡が伝わるはずなので、行く方向で準備しまし
ょう﹂と提案。
王様が、転移ボックスを置いて行って欲しいと。
これから、ラルクバッハと、グランスラムとの戦後賠償について、
手紙のやり取りが必要なのでなんとかならないかと。
現在は、我が家の領地経由なので、ラルクバッハに戻った時に、王
城に置いてきますと伝えた。
742
転移は、手紙だけで無く、普通のアイテムボックスまでは送れる。
生きた人間や、動物は送れない。
などの注意点を教えた。
その後で、私も王様に向けてグランスラム帝国を敗走させたことを
手紙に書き、
シドニア王国の国王に報告をしたら、なぜか王妃方をラルクバッハ
に連れて行くことになったと記載した。
ミュージカルや劇、歌のチケットはクロスロード家が手配するが他
の予定は王家で決めて欲しいと。
私が王城へ戻るときにシドニアと直接手紙のやり取りが出来る転移
ボックスを置くことも記載した。
その後もお茶を飲みながら、王妃様とお母様方も交えて会話した。
別れる前に持っているアイテムボックスを9個と、在庫が少なくな
ってきましたが、マジックバックを3つ王妃様に渡しました。
これで荷物入れが足りるか聞くと、1週間分でこれだけの容量があ
るなら大丈夫と言ってました。
マジックバックはアイテムボックスと違って時間停止機能付きで、
国宝級の性能であることを説明した。
﹁マジックバックは献上します。
後で誰が使っても構いません。
その代わりでは無いですのですが、一つお願いがあります。
もし許して頂けるならですが、エリンを私の侍女として領地に連れ
て帰りたい。
もちろん、本人が了承すればと言う条件です﹂とお願いした。
743
王妃様からは本人にも聞いておくと言われましたが、その場で否定
はなかったので一安心。
ちなみに、アイテムボックスは献上すると言わなかったので、後で
王様から移送料も含めて2割ましでアイテムボックスを買い取ると
言われました。
そして、部屋に戻り寝ました。
朝、エリンが私に付いてくれ、着替えを手伝ってくれました。
自分で自分の面倒は見れると思ってましたが、仕上げのレベルが違
いもう自分では支度ができないかも。
まだ朝の早い時間にもかかわらず、アイテムボックスに何かが入っ
ていることを示していた。
あけてみると王様からの手紙とリリアーナお母様から領地で作った
お菓子が入っていた。
お菓子はエリン達侍女で食べるように伝え、王様への手紙を渡して
もらう。
朝食時に王様から
﹁レオン・ラルクバッハ王から、王妃と母、王女の1週間、受け入
れると連絡が来た﹂と教えてもらった。
そしてその日お昼に、予定通り高位貴族を集めたパーティーが行わ
れた。
庭で、ガルダが寝ている。
途中で、王から頼まれたのでガルダに空を飛んで、聖獣をアピール
した。
744
そして、本日の夕食。
さきほどまでパーティだったのですが、パーティ中は食べられなか
った。
夕食は普通にテーブルの食事なので、しっかりとご飯を食べます。
そして、本日も王女方に囲まれてます。
王様、王妃様と大隊長は予定通り夜通しのパーティです。
戦勝祝いで昼よりも盛り上がるみたいです。
王女達からはお見合い大会の時の話を聞かせてくれと、
結局、聞かれたのはラルクバッハ国の高位イケメン貴族情報でした。
皆さん、やはりフィリップ第3王子への食いつきが良かったですね。
あちらに行った時にぜひアピールしてください。
さて何事も無く夜が過ぎ次の日になりました。
今日もエリンが私に付いてくれ、着替えを手伝ってくれました。
なんか、今日も決まったな。
髪型も、服の組み合わせも、なんか違う。
またまた珍しく今日も鏡を見てしまった。
そして元王妃、王妃、王女の9名を連れて移動です。
大隊長には、1週間後に迎えに来ますと伝えてある。
それを伝えた時に、後ろにいたエリンが
﹁私もその時に一緒に連れて行ってくれるのですか?﹂と聞いてき
た。
745
返事を聞いてなかったけど、OKってことか?
﹁異国での勤めですが、大丈夫なのですか?﹂と聞くと
﹁王妃様からも許可を頂き、もうこちらでの侍女は退職願を出まし
た。
ぜひお使えさせてください﹂と言ってきました。
﹁では1週間後に迎えに来ますが、準備は間に合いますか?間に合
わないなら別の機会を設けますけど﹂と伝える。
﹁1週間後で大丈夫です﹂と返事がありましたが、荷物大丈夫かな?
準備のためにマイボックスにしまってあったアイテムボックス2つ
と、最後の在庫のマジックバックを1つ渡して置きました。
さて、ラルクバッハに向けて移動開始。
まずは、約束どおりシドニア国の病院へ。
傷ついた兵士にもう一度回復魔法を使って、回復させると歩けるぐ
らいに回復。
王妃様達は、慰問訪問として1時間ほど病室を回っていました。
一緒にラルクバッハから連れてきた兵は今朝この病院で合流したそ
うです。
そして、兵士4名には1週間後に迎えに来ると伝え待ってもらう事
にした。
ちょうどこの周辺の調査の必要があるそうなので継続して調べ物を
するそうです。
そして、全員で途中の中継地として我が家の領地へ転移。
リリアーナお母様にも連絡してあったので歓迎も準備万端。
ついでの観光。
746
私は、その間に兵士だけ王城へ先に送り、王様にも事前に挨拶。
事前に連絡済の予定通りの行動ですよ。
もちろんリリアーナかあさまからの指示ですけど。
領地の未亡人や孤児が作る工房を中心に回ってもらう。
王妃様方は、感心し結構感動してました。
そして、孤児院の運営が非常に良く最低限の勉強も子供達の成長後
の職まで提供している事に驚いていました。
私と合流したときにぬいぐるみ工房、焼き物工房など最先端の工房
を見た後で、
シドニアにも是非入れたいと言ってました。
未亡人や孤児を全員助けきれる方法がないこと。
ある程度、製法を知る人を限定しないと、意図しないところでコピ
ーされ狙った人すら助けれないことを説明し、条件として、王直轄
地で実施してもらうことにしました。
人は、5人ほどこちらで受け入れ教育を行い、その後にシドニアも
戻って人数を増やすことにしてもらう。
未亡人、孤児の対策ならということで、ミシンや、焼き物の窯など
の魔道具を手配する事にした。
4時になると、王城へ移動。
王城では、王妃様方がしっかりと歓迎。
ただし今回は御忍びの正式な訪問ではない。
747
普通、このように王妃様方だけで移動は珍しい。
おそらくラルクバッハでも初の出来事。
人数ギリギリでの、非公式御忍び移動なので、シドニアの王妃様の
侍女達は今回いない。
全てラルクバッハ側が用意する。
1妃様は、久しぶりに会えた母親の姿を見て感動のあまり泣いてし
まいました。
互いに顔を合わせるのは、ルカ王子が生まれて以来だそうです。
これからの1週間、王城は華やかなことだろう。
ミュージカルや、その他の劇など手配は終わっているので心配は無
い。
そして今日の夕食は王城で私も一緒に過ごす。
ただし今日こそ夕食後は領地に戻る。
コテツを探しに行った部隊の事も気になる。
霧を抜けるのは帰りの方が早いらしいが、それでも1週間ぐらいか
かるはず。
あれから、もうすぐ一週間。
ほんとに怒涛のような忙しさだった。
748
5.17 婚約破棄? どうしてそうなった︵前書き︶
ルカ王子が婚約破棄
婚約破棄物のスタートか?
749
5.17 婚約破棄? どうしてそうなった
夕食前に、久しぶりにスザンヌとマリアと個別面会。
コテツの捜索に行ってから暫くしっかりと時間をとれてませんでし
たから。
スザンヌが﹁今日の格好は、いつもと違って更にかっこいいですね﹂
と
﹁なんか変えましたか?﹂とマリアが聞いてきた。
﹁エリンと言うシドニアの侍女が選んで着せてくれました。
髪のセットなども少し変わってます﹂と説明した。
そして﹁彼女を領地に誘ったら、来てくれるの事になったから、こ
れからおしゃれになりますよ﹂
と言うと、スザンヌが怪訝な顔をする。
あれ?
ちょっと補足説明しとこう。
﹁かっこよくしてくれるから、スザンヌとマリアが喜んでくれるか
なと思って誘ったんですよ。
どのみち侍女は必要なので、そういった人の方が良いでしょ﹂と言
うと、
スザンヌが
﹁いえ、ジルベール様が選んだ方に文句を言うことはありません。
それも私達が喜ぶためなんて、嬉しいです。
750
シドニアから連れてきたら、紹介してくださいね﹂
淡々と語るスー。
﹁ええ、もちろん﹂と、とりあえず答えておこう。
﹁それは、王妃にも伝えても良いでしょうか?﹂とスー。
﹁ええ、なにか問題でも﹂
﹁1妃様の国からですから、少なくとも1妃様には伝えないと。
それにお母様がずっとジルベール様のおめがねにかなう専属侍女を
探していたので、
探す必要が無くなった事を伝えないと﹂
未だ淡々と説明するスー。
え、やっぱり怒ってる?
﹁ああ、そういえば、探してましたね。
フィリップ王子の専属侍女と一緒に教育したいけど、ジルさまが良
いなと言わないから、どうしようと言ってましたね﹂
とマリアはいつもの感じで、特に変わらずにこにこしてる。
﹁え、そんな事を。
ところで、今さらだけど専属侍女って何の事?
ただ、服をコーディネイトして貰おうと思って誘っただけなんです
けど﹂
と、私がおろおろと返事をする。
﹁え、やっぱり。ジルさま、それはちょっとまずくないですか?﹂
とスー。
ああ、失敗してるねという顔だ。
751
﹁まずいの?﹂
﹁他国の王城から引き抜いたのでしょ。
しかも直接お声かけしてますから、あちらはジルベール様専属侍女
としての身請だと思ってますよ。
それは、侍女としての地位で言うと、最高級の地位への大抜擢です
よ﹂
とスーが驚いた顔で説明する。
﹁それで、普通の侍女と一緒だと、やばい?﹂
﹁だって、私達が公爵夫人になった場合、その次が主の専属侍女で
すよ。
侍女長も専属侍女の下です。唯一、主指定の執事長が対等な立場で
しょうか。
あちらもそう考えて受けてるだろうし、シドニアの王妃様もそう考
えていると思います﹂
﹁そんなの全然考えて無かったよ。
スーやマリアが喜ぶかなと思っただけなのに﹂
﹁うーん、やっぱりそういうことまで考えてなかったのですね。
聞いたときに、ちょっと不安に思いましたよ。
急にジルさまがお母様の思い通りに、それも自ら積極的に動くなん
ておかしいと思ったんですよね。
とりあえず、ジルさまの考えは内緒にしましょう﹂スーが。
﹁さすがお姉様、そこまで考えていたのですね。
そうですね。この話は、私達だけの秘密ですね。
思い違いがあったにせよ、その方が専属侍女で決まりですね。
752
私は、ジルベール様がお選びになった方なら、大歓迎ですよ。
ああ、どんな人でしょう。
優しい、お姉さまなら良いな﹂
とマリアは嬉しそうに。
﹁うん、安易な考えだったのは封印します。
スー、マリアありがとう。
もう誘ってしまったから後には引けないし。
彼女なら、このまま専属侍女にしても問題ないと思うし。
今日は時間が無いので、とりあえず王妃様には今週中に私から言い
ます。
聞かれるまでは黙っていてください。
お願いします。
まずは今日、領地に戻ってお母様に言わないと﹂
﹁﹁はーい﹂﹂
スーは、私の考えが読めるのかな?
﹁お話は変わりますけど、シドニアからの手紙に、ジルさまを王に
したいからシドニアの王女の中から一人婚約者に選べないかと書い
てあったそうですよ。
でもお父様が、ジルさまをあちらに送ると、私とマリアが他国に着
いて行かないといけないので、断ったと言ってました。
かわりに、フィリップを出しても良いと返事したそうでけど。
まあ、フィリップが気に入る王女がいればですけど﹂
﹁それは、また、王様らしい回答ですね。
でも、その断り方だと、スーやマリアと婚約してなければ、私はシ
ドニア送りだったと言うことですね。
二人に感謝です。
753
フィリップ王子には悪いけど﹂
﹁ああでも、フィリップも、この国にいれば王にはなれませんから、
行くのは良い事だと思いますけど﹂とスーが。
﹁そうですね、シドニアの4人の王女はスーやマリアと比べると劣
る感はありますが。
一般的なレベルで見れば、美少女の部類ですしね﹂
﹁ジルさま、気に入った子がいました?﹂
とマリアが聞いてきた。
シドニアの王女は、リアン13歳、クラリス12歳、イリアーナ1
0歳、コラン8歳の4人。
﹁リアン様はスザンヌ姉さまと同じ年、一番下のコラン様は、私と
一つ違い。皆様可愛いですよね﹂とマリアが続ける。
﹁いや、私にはスーとマリアがいますから、浮気はしませんよ﹂
﹁でも、侍女を入れるでしょ?﹂とスーが。
﹁いや、さっき説明したとおり。でもごめんなさい﹂
とりあえず、謝る。
マリアがくすくす笑っていた。
さて、そんな話をしていると夕食の時間になった。
今日の夕食は、サフィーナ様も参加している。
コハクは別室で待機中。
結局、サフィーナ様のところで落ち着いたようだ。
754
侍女兼護衛。
と言っても、さっき会った時は襟巻きになっていてびっくりした。
変身出来るらしい。
サフィーナ様は、
﹁寒い季節には、おしゃれだし、暖かいし、気持ち良いの﹂と
なんとまあ、便利な。
普段は、狐耳付き侍女の姿で歩き回り、状況に応じて変身する。
今日は、侍女の待機室で、襟巻きから、小型の銀狐になって眠って
まっているそうです。
ところで夕食の時ですが、どうもサフィーナ様とルカ王子がギクシ
ャクしている感じがする。
今は、サフィーナ様が話しかけて、ボーとしているのか反応が薄い。
スザンヌに何かあったのか聞いたが、知らないと。
しかし、その奇妙な感覚を見て、ルカ王子に何か言い忘れていたよ
うな。
ぱっと思い出せないなー。
食事の後に、こっそり1妃様に聞いたら
﹁あの事件で自信をなくしているのよ。
サフィーナを危ない目に合わせたのが許せないらしくて﹂
とのこと。
ふーん、許せないねー。
でも、ルカ王子が悪い訳では無いでしょ?
何か、理由が別か?
755
﹁さらに、婚約を破棄しよう﹂と言ってるの。
うん? 婚約破棄。
男性側から婚約破棄をするケースに、相手の女性が不義を働いた場
合があったな。
まてよ、不義?
あ、思い出した。
もしかして、ルカ王子、サフィーナ様がやられちゃったと思ってな
いか?
ルカ王子にこの後で個別に話をさせて欲しいと申し込むと、王も入
れて話がしたいとルカ王子の方から言ってきた。
食事の後に、王の私室に移動して王とルカ王子、私で話を始めた。
まず、サフィーナ様の状況について説明。
聖獣の白虎王コテツの召還に成功した時、アロノニア様が直接手は
貸さないが、私を送り込むぐらいは手伝ってやろうと言って、有無
を言わさず転移させたからあの場にいたこと。
そして、アロノニア様に誓って、サフィーナ様は不義の前に助けて
いること。
しかし裸の男に襲われる寸前で、しかも3人もの男に羽交い絞めに
され、恐怖の記憶があったはずなので、侍女含め忘却の魔法を使っ
て直前10分間の記憶を消しました。
もし、ルカ王子の思いと、彼女の証言に食い違いがあったとしても
それは記憶消去のせいで、嘘を言っている訳ではないから婚約破棄
756
などするべきでは無いと説明しました。
王子、どうか思いとどまってね。
王様が、すごくびっくりしている。
え、今の話で、何か言っちゃった?
757
5.17 婚約破棄? どうしてそうなった︵後書き︶
さて、王子の婚約破棄物語では無かったですね。
ところで、ジルベールは何を言ってしまったのでしょうか?
1.裸の男がのところ
2.ジルベールの口が達者すぎる
3.その他 758
5.18 ルカ王子反省︵前書き︶
前話から
王様が、すごくびっくりしている。
え、今の話で、何か言っちゃった?
さて、ジルベールは、何をしゃべってしまっていたのでしょうか?
759
5.18 ルカ王子反省
ルカ王子は、私の話の後に、自分の思いを語ってくれました。
﹁もちろん、サフィーナが無事だったのは信じている﹂
そこは問題ない。
しかし、ルカ王子の思いは、そこでは無いと。
﹁自分が何もできずに誘拐され、ジルベールに助けられ、さらにあ
っさりとグランスラム国の攻撃まで退けている。
もう、自分が王太子として立つ自信など無い。
王太子は、ジルベールがなってくれ。
王太子で無くなったなら、サフィーナとの婚約も一度無効にしてサ
フィーナの好きなようにさせようと思う﹂
なんだ、何と言うふがいないことを口にする。
突然、なにを言い出すのだこの王子は。
めったに怒らない、私はカチンと来ました。
﹁ルカ王子、貴方を守るために20名近くの騎士が死にました。
そして生き残っている2名も、貴方を守るために怪我をしました。
彼らはあなたを守れなかったこと、そして仲間を失った事を悔いて
います。
あなたがここで王太子を辞めると言うことは彼らの死を無駄にする
事です。
なぜならあなたが王にならないのならあの時の彼らは、貴方を置き
去りにして逃げれば良かった。
そうすればあの兵士達は死ななかったのですよ。
あなたは少なくとも死んだ彼らの為に、王を目指して努力しなけれ
760
ばならない。
それが王家に生まれた者の責務だ。
それを自分から放棄するなどなんということを。
それに、貴方は私が強いから王になれと言ってますが、それならば
レイブリングは貴方よりも今の王よりもはるかに強い。
しかし、今まで彼を王にするとは誰も言わなかった。
かつて公爵位の子が王になっている。
では、彼はなぜ王の候補として一度も議論されないのか?
レイブリングが金眼ではないからですか?
違うでしょ。
それだけが理由ではない事はわかっているでしょう。
王になるには、王の資質が必要だ。
私は、ただの貴族として生まれ、幼少の頃からメルミーナ様に公爵
として国を支えろと教わっている。
今も、せいぜい自分の領地の民のために頑張る程度しか考えてはい
ない。
シドニアを助けたのも、一緒にいた隊長が助けてと言うから手を貸
しただけ。
私が自ら好んでやったのではない。
王城に降りたとき、彼が英雄と呼ばれたのを見て、私は間違ってい
るなど一言も言っていない。
勘違いをラッキーだぐらいに思ってました。
手柄が欲しくてやったわけでも無い。
国ために生きる
な
責任を取るつもりで行動したわけでも無い。ただの成り行きだ。
だいたい私は、あなたにとって当たり前の、
どという考え方など一度も意識して行動した事などない。
そんな私が王になどなれるわけが無い。
761
それをあなたは王になれと。ばかげている。
まず王がこんな私に王位を引継ぐわけが無い。
王は王たる教育を受け、資質があるから王をやり、国を発展させ国
を守る。
それがこの国の王でしょ。そんなことぐらい解っているでしょ。
先ほど私が言ったとおり、私は忘却の魔法を持っている。
貴方が選ぶ道は二つ。
一つは、死んだ彼らの事を記憶に留め、王を目指す道を歩む。
もう一つは、今回の事件、死んだ彼らの事、これを全て忘れ旅に出
る前の状態に戻し王を目指す。
そのどちらかだ。
私は、あくまでも国をサポートするための最善策を実行する程度の
ことしかしない﹂
黙り込む王子。
王様が、
﹁そうだな、ルカよ、ジルベールが言ったことが全て正しいとは言
わんが、そなたを助ける為に死んだ彼らを忘れて良いはずが無い。
そしてそれを無駄にする事も。
今の話を聞いて確信しただろう。
ジルベールは確かに力はある。
だが、王たる資質を持つような教育もしていないし、その気もない。
王家に生まれたわけでも無い者にそれを無理強いする事もできん。
こやつは、自由に動き、自由に生きる気質が強い。
自分で責任を持つ地を認識するならば話は変わるかもしれぬが、今
のところそういう思いはまだなさそうだ。
少なくとも、このラルクバッハの国民全てを大切にとは思っておら
ん。
762
ルカ、この国はお主が導くしかないのだ﹂
﹁それでも、本当に私で良いのですか。
私は、自信が無いのです。
サフィーナに迷惑をかけた自分が情けない﹂
﹁ルカ王子、自信が無いならもっと強くなれば良い。
それにサフィーナ様は先ほど言った様に一番つらい部分は覚えてい
ません。
見て解るでしょ。
そして、彼女にはコハクを付けました。6本の尾がある銀狐、幻獣
ですよ。
よほどの事が無い限り、もうこのような事はおきません。
そして、死んだ人間は生き返りません。
時間を元に戻す魔法など、どの魔法書にも書かれていません。
もちろん、私も使えませんよ。
だから、終わったことや、できないことを嘆いてもしょうがない。
出来ることを探し、二度とおきないように手を講じ、生きている者
の勤めを果たしましょう﹂
私も一緒です。
私も今回沢山の人を殺してしまったのだから。
生きているものの勤めを果たさなければならない。
何をすべきかは全く解らないけど。
ルカ王子がこの部屋に来てから始めて顔あげて、私の顔を見る。
﹁ジルベール、お前ほんとに10歳なのか?
10歳の子に、ここまで言われるとは。ほんとに私は情けないな。
しかし、そう言って逃げてもしょうがないのだな﹂
763
﹁見た目で解るでしょ。ちょっと口が達者ですが、10歳ですよ私
は。
ルカ王子。
とりあえず、私が連れてきてくれた2名の兵士に会い礼を言い、話
を聞いてあげてください。
彼らも、仲間を死なせたことを後悔し悩んでいます。
私は、彼らの体は直せますが、心はどうしようもありません。
きっと彼らも貴方と同じように、騎士を辞めると言うかも知れない。
貴方が、それを癒してあげるしかないのですよ。
まず出来ることをやりましょう。
そして、やらなければならないことをきちんとやりましょう。
これからの先の事は、王や王妃、サフィーナ様とも話し合ってくだ
さい﹂
﹁そうだな。ジルベールありがとう﹂
﹁サフィーナ様に、何を言ったか知りませんが、この後自分の思い
を伝えてください。
そして、記憶を消されていることは絶対にしゃべってはいけません。
魔法で消した記憶は絶対では無いのです。
突然、何かをきっかけに思い出すかも知れません。
思い出さなくても、暫くは大人の男性から触れられるのが嫌かも知
れません。
良く症状を見て、ゆっくりと、触れ合ってください。良いですね﹂
そして、ようやく落ち着いたルカ王子を見て、王様が不意に私に話
しかけてきた。
﹁ところでジルベール、忘却の魔法とはなんだ?
聞いておらんが。
764
精神系の魔法が使えるものは届出が必要だ。
もちろんおぬしはまだ10歳ゆえに、届けは必要ないが、初めて聞
いたぞ﹂
﹁う、ええっと、その魔法が使えることを忘れてました﹂
﹁なに?使えるのに忘れると。普通はありえんぞ﹂
﹁マリアが7歳の時に、メリーナ様が出ましたよね。その時にメリ
ーナ様から忘却の魔法を頂いたのですが、
一度も使ったことが無かったので、すっかり忘れてました﹂
﹁おぬしは?!
そういう事があるのか。ほんとに常識が通用せんな﹂
﹁すいません。このあと届け出ておきます﹂
﹁いかん、アレクサンドロ公爵家が魔法の管理をやっておる。
通常経由で登録すると、サフィーナに知られる可能性がある。
お主から直接聞いたからもう良い。こちらでばれぬように処理する﹂
﹁よろしくお願いします﹂
と言って、私は、帰宅した。
そして、ルカ王子と私は部屋を出る。
扉から出た王子は、入る前と違ってきちんと正面を向いて歩いてた。
よかった。なんとかなったかな。
765
5.18 ルカ王子反省︵後書き︶
答え
﹁ところでジルベール、忘却の魔法とはなんだ?聞いておらんが。﹂
簡単でしたね。
ちなみに、王子の脅しで記憶を消してと言ってますが、
現在はレベルを上げてないので、できません。
ただのハッタリです。
レベル1で10分
レベル2で1時間
レベル3で6時間
レベル4で12時間
レベル5で1日
レベル6で6日
レベル7で15日
レベル8で1ヶ月
レベル9で6ヶ月
レベル10で1年
レベル8まで上げないとためです。
766
5.19 フィリップの悩み
もう、夜。
寝るだけの時間になって、ようやく家に帰ってきた。
お母様やアメリとは昼間に会っているが、リビングできちんと挨拶
をしてからすぐに寝た。
朝になってから、家を空けていた間の事を説明する。
なぜか白虎王の捜索途中でシドニアに転移したこと。
シドニアでルカ王子、サフィーナ様がさらわれたこと。
そして、なぜかグランスラム帝国軍を倒した話。
大半が予定に無かった話で大変驚いていた。
その後、なぜかシドニアの王妃達をこちらに運ぶことになったこと。
それと最後に、エリンを専属侍女で迎え入れたいと伝えた。
結局一番驚いたところが 全員がそこだった。
どんな子だと、しつこく聞かれる。
ちょっと小柄で、服のセンスが良い事を説明した。
専属侍女の向かい入れについては、問題ない逆に大歓迎とのことで
した。
今日は、いつもどおりの格好だが、昨日はいつもと違ったから良い
子だと期待してるそうです。
反対されず良かった。
767
専属侍女って事を考えてなかった事は内緒です。
そして、白虎王コテツを探しに行った部隊の情報を聞くが、まだ戻
ってきていないそうだ。
あと数日かかるよな多分。
さて、今日は久しぶりにお仕事をしないと。
とりあえず、たまりにたまったアイテムボックス作成をやって欲し
いということで、一日中アイテムボックスや、アイテムバックの作
成をやっていた。
手持ちも使い切っていたし、およそ20日分をまとめて作る。
疲れた。
久しぶりに、召還や、神格化無しで魔法力が空になった。
20日分以上あった気がする。最後は数を数えていない。
魔法陣を作る人が頑張ってくれているのでしょう。
慣れたので、作るのも早くなってきているようだ。
さすがに疲れて、早めに夕食を取り、さっさと寝た。
次の日、お昼すぎにエイミーが家に戻ってきた。
霧の山を抜けたので、先に連絡をするため太郎と一緒に駆け抜けて
きたらしい。
馬で数日かかるのに1日で着くんだ。
太郎、速いし長距離も移動できるのか。
一旦、休憩して一泊したら迎えに行くと言ってました。
ご苦労様です。
768
エリンの件を、エイミーにも説明すると﹁結婚もしてないのにもう
妾を取るのジルちゃんダメだよー﹂と
いつもの口調で冗談を言ってました。
そして、その口でじゃあ専属侍女ちゃんが来る前に最後に私と一緒
にお風呂入ろー。
洗ってあげるよーと。
え?
いや、婚約者もいるし、そんな事は。
と遠慮したら
﹁ジルちゃんは10歳だから、まだまだ大丈夫だよー﹂と、強引に
捕まってしまった。
女性に強く出れない私の性格を良く知ってます。
さらになぜか家の侍女が協力して私は素っ裸にされた。
なんて手馴れてるんだ。
いつもやらないくせに。
そして、家の温泉に、エイミーと一緒に入り洗われました。
ゴシゴシと。
昼間から、巨乳ちゃんゴチです。
お風呂から出ると、本日もお仕事。
新しい新規店や、領地内の工房の新製品などの打ち合わせ。
領地内の一般的な業務は役場でお母様やアメリが処理してくれてま
す。
いつのまにか新規事業は私の担当になってます。
魔道具や魔法陣の研究チームも要るので、そこからも3週間分の報
告を聞きます。
そんな事をしていると、数日があっというまに過ぎます。
あと、2日でシドニアのお客様が帰るので、今日からまた王城に行
769
きます。
夕食から合流し明日1日は、スザンヌ、マリアも一緒に王都の町を
見学に行きます。
もちろん、フィリップ王子も一緒に。
夕食前に、フィリップ王子から相談があるといわれました。
まあ、内容は予想はできます。
そして夜、寝る前にフィリップ王子が部屋にやってきました。
シドニアに行くかも知れないこと。
そして、行くには、王女を選ぶ必要がある事を悩んでいるようでし
た。
で、まずこの国に残った場合どうするか?
もともと、ルカ王子の手伝いをして、国を助けるつもりだったと。
では、シドニアに行ったら?
シドニアの国王になる場合。
生まれてからずっと、この国の民の為にと思っていたが、一番がシ
ドニア国民になるのか。
グランスラム帝国との壁になっているシドニア。
そこの王をすると言う事は、このラルクバッハのためにもなる。
まだ、時間はあるから、良く調べて考えれば良い。
機会があれば、シドニアに連れて行けるからまず自分の目で見るこ
とですね。
と言うことで、そのうちシドニアに行こうって事になりました。
そして、それはそれとして、もし選ぶとしたらどの王女を選んだら
良いか同い年の意見を聞かれました....
770
どの王女も綺麗だし、自分の性格に合いそうな人を選べは良いので
は。
と言いましたが、話は別もあるらしい。
王様からは、この国からも1人選ぶように言われたそうです。
どうしよと。
私は、あまりこの国の高位の女性と会った事がありません。
良く知っていると言えば、エレノアとニーナ。
それに、王都でマリアの会に参加していたメンバーぐらい。
その中なら、唯一のお勧めは、ハイルデン公爵家クリシュナ様かな。
頭が良さそうだし、スザンヌ、サフィーナ様に似て、
美人さんになるのは間違いない。
などと、独り言の部分も全て喋っていたらしい。
すると﹁エレノアは、うん良いかもな性格も良いし、私との話は面
白かった﹂
﹁え、そこ、エレノアは、ちょっと身分が離れてるでしょ。
殿下がこの国に残ってただの貴族になるならエレノアもありだろう
けど、国母の話ならそっちじゃなくて﹂
﹁ああ、いや。ダメか。うん、えっと他は、クリシュナか﹂
﹁シドニアの王女からのお勧めは、リアン様だね。
1人だけ、シドニアの2妃様の子供。
母親の2妃様は温和な感じがしますし、リアン様は長女というのも
ありますが、
他の妹達の面倒見が非常に良い。
可愛い感じの母親になると思います。国母と呼ばれる風格がありま
771
すね﹂
﹁リアンか、そうか、一番見てなかったな。
そういえば、話をした時もおっとりした雰囲気で、落ち着いた感じ
があったな。
そうかありがとう、明日はリアンも良く見てみる﹂
と言って、元気に部屋に帰っていった。
リアン様、スザンヌと同じ年なんだけど、スーよりも大人に見える。
っていうか、すでに母?。
比べたのが間違いだった。
とても落ち着いた雰囲気の人なんだよなー。
明日のフィリップ王子の行動が楽しみだな。
しかし、フィリップ王子からエレノアの名前が出るとは思わなかっ
たな。
私の妹的存在のエレノア、確かに結構可愛いけど、まさかそこを見
ているとは思わなかった。
と、いろいろ思うところはあれど、私はとりあえず寝よう。
侍女に案内され、用意された部屋に向かった。
772
5.20 専属侍女のお話
私が、王城に泊まるたびに違う、毎回違う侍女が来る。
今日の侍女は、スピアだ。
スピアは、特に悪くも無くてきぱきと仕事をしてくれる。
サラ、シルビア、スピアの3人がフィリップ王子の専属侍女として
教育中と言っていた。
その中の1人。
そして、今日のお風呂は有無を言わさずスピアに洗われた。
いつもは、自分で洗うか聞かれていたのに。
シルビア情報で、私の体洗いが手抜きだとばれてました。
情報共有がしっかりしてます。
最後に﹁また、デザートを期待してますね﹂としっかりお願いもさ
れた。
マイボックスに入っていたプリンを渡しておいた。
こっそり食べるようにね、と念押し。
さて朝ごはんの後、少し時間があったのでフィリップ王子に専属侍
女の話を聞いてみた。
﹁サラって子になりそうと聞いてるよ。一番良い子だし﹂
え!良い子?
﹁サラってあの3人の中で一番のドジッ子だろ。まあ一番可愛い気
773
はするけど﹂と言ったら、
﹁ああ、王妃様達からは、同じ失敗を繰り返さないドジッ子はしっ
かりとするから良いと言われているよ﹂
﹁へー、そうなの、ドジッ子は何時まで経ってもドジッ子だと思っ
てたけど、2度目がないドジッ子っているんだ﹂
﹁まあ、サラは確実に一度目失敗するけど、2度もやることはない
からね。
今は侍女仲間での優秀な方に成長したらしいよ﹂
﹁え、あのサラが﹂
﹁ジルベール、なんかサラのことをすごく馬鹿にしてない。
僕の前で、サラは失敗した事がないんだけど、何かあったの﹂
﹁え、あの血が出た事件知らないのか﹂
﹁血、って何やられたの﹂
﹁いや、知らないなら二度と失敗しない過去として封印しておこう、
その方がサラと殿下のためだ。
まあ可愛い子が専属になるみたいで良かったねと﹂
軽く流した。
いつも、朝食後は剣の練習もしているので、
最近、フィリップ王子とはかなりフレンドリーに話せるようになっ
た。
今日も、話をしながらの朝の訓練だった。
朝の訓練後に改めて1妃様達の所に行き、エリンを専属侍女として
774
誘ったことを伝えた。
3人王妃ともに、既にシドニアの王妃から聞いて知っていたらしい。
﹁王女を降嫁できなかったから、侍女を入れたか﹂
と1妃様が。
え、今、舌打ちしました?
﹁問題ありますか?スーも、マリアも問題ないと言ってましたけど﹂
﹁ええ、シドニアの子だから、私としては嬉しいわ﹂
といつものお顔に戻りました。
その後に侍女は、サラ、シルビア、スピアと合わせて教育するから
直接王城に連れてくるように言われた。
およそ1ヶ月研修をするそうです。
ああ、こうなったか。
うかつな事を口にした結果、思っていなかったほうに物事がどんど
ん進む。
もう、戻れないな。
覚悟を決めて、エリンにもちゃんと伝えよう。
2妃様と、3妃様には、1妃様が伝えてくれるそうです。
さて、我々も、そろそろ支度をして、出かける支度をしないと。
ジルベール現在の魔法レベル掲載
空間操作 8 虚無空間付与、通常空間拡張、瞬転・転移︵魔法
陣が必要︶
時間操作 6︵レベル秒間×2 実際の100倍の速度で動ける
レベル上昇で条件変更︶
775
回復魔法 8
忘却の魔法レベル1
特殊
特殊召還魔法レベル8
上位鑑定魔法レベル9
称号含む説明詳細化 追加で魔力を消費
スリーサイズ追加記載化。追加で魔力を消費
経験人数は、15禁。追加で魔力を消費
魔力の可視化レベル9
索敵 レベル9
祈祷 レベル8︵解呪、死霊の解放など︶
メリーナの加護 大 ︵状態異常大軽減︶ −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−
シドニアの2妃様。
・ジルベールが、聖獣を連れて王城に訪れたその日の事。
ジルベールと言う10歳の少年が救ってくれた。
ラルクバッハ王国から来たルカ王子の婚約者サフィーナが、ルカ王
子の妹二人と婚約したジルベールの事を誉めていた。
ルカ王子と婚約している身で、他の男の話をするのはどうかと思っ
たが、真剣に耳を傾けるとにわかに信じがたい事を言う。
ジルベールは10歳にして王宮魔道士を超える魔法の能力に、騎士
団長を軽く凌駕する剣の腕前。
時空魔法を使い、200km離れた領地と王都を転移魔法で行き来
しアイテムボックスを大量に作る。
領地では母子家庭を支援し、自活できるようにした。
776
そして、あの噂のミュージルカルも作った。
ルカ王子もジルベールの事は規格外、弟として味方になるのは本当
に頼もしいが、敵に回す事は恐ろしいすぎて考えられないと。
怒らせると国が滅ぶかも知れないと言っていた。
大げさなと思っていたが、今日それが間違いでは無かったことを知
った。
王は、ラルクバッハの王に、ジルベールに王位を譲れるか手紙に書
くと言っていた。
しかし、あれを手放すと思えない。
それに、王女の降嫁も無理だろう。
現在の婚約者は、ラルクバッハの2妃、3妃の子。
彼女らはどちらもかなりの美女。
特に、2妃の子スザンヌと、サフィーナは良く似ているという噂だ
った。
サフィーナと、家の4人の王女を比べれば残念ながらその差は歴然。
私自身、ラルクバッハの2妃と比べられる困る。
あれだけの美人と並ぶ女性は、周辺国一帯でもそういない。
だが、ジルベールとの繋がりは欲しい。
幸いなことにまだ専属侍女は決まっていない。
ならばわが国から専属侍女を出すことに狙いを絞り、わが国との関
係を持つ。
それしかない。
私が知りうるもっとも優秀な侍女をつけてチャンスを狙う。
侍女長に誰を付けるのか聞くと、私の一番のお気に入りのエリンが
777
担当になっていた。
さすがエリン。
きちんと解っている。
その晩に、エリンから国に一緒に行かないか誘われた、どうしたら
良いかと。
聴いた瞬間に一言﹁でかした﹂と大声で叫んでしまった。
まずいまずい。
つい素が出てしまった。
改めて
﹁シドニアとジルベールを繋ぐ架け橋になってね。私も協力するわ﹂
とやさしく伝え、実家に戻り準備が必要だろうと、馬車や道中の宿
泊について手配をした。
今回の侍女の引渡しは王家が保障した侍女を部下に降嫁とする場合
と同じ扱い。
今回の実家への帰省は王家の馬車を使う。
そしてエリンがラルクバッハに移動する際には、高級ドレスに宝石
も渡すつもりだ。
時間が無いので、ドレスは既製品を急いで手直ししてもらう。
立派な式典にして送り出そう。
そして、ラルクバッハ王国に着いた後、仲の良い1妃エミリアを含
め王妃達全員がいる場で、専属侍女を送り込んだと自慢した。
エミリアは、同国からの採用に喜んでくれた。
ラルクバッハの2妃様は
﹁数十人の王城の綺麗どころをあてがっていたのに、シドニアから
778
とは、やられたー﹂と
そして
﹁私が鍛えても良いわよね。
エリンってどんな子なの、楽しみだわ。
専属の侍女服どうしましょう。きっとジルちゃんが選んだ子だから
良い子よね。
新しくサフランサフランで作ろうかしら﹂
と言っていた。
侍女服にサフランサフラン。
いったい幾らするのやら。
ラルクバッハの2妃様はジルベールに命を救われた、先日友達の命
も救ったとか。
その礼として、自分が絶対に教育するんだと意気込んでました。
エリンが大切に扱われるようなので安心した。
よかったわねエリン。
でも、ちょっと気合が入りすぎてて、心配になった。
779
5.21 シドニア再び
王都の見学は、つつがなく終了。
大聖堂を含め歴史的な建造物の見学や、治水所、
これから行く高校や騎士戦術大学、魔法大学の見学もあった。
ついでに付いて行ったが、私は王都の事をあまり知らなかったので、
勉強になった。
今までもたまにスーとマリアと市内をこっそり回るぐらいだったし。
見学も終り、城に戻る。
今日の夜は大きなパーティがある。
ルカ王子と、サフィーナ様は一足先に社交デビューだ。
もともと、シドニアから帰ってきた後、王太子の宣言前に社交デビ
ューしておく必要があったので予定通りの開催日が、丁度シドニア
王妃達の帰る前日でした。
シドニアの王妃も非公式の訪問ですが参加してます。
参加者にはシドニアで戦争があり私がそれをシドニアに被害が無い
状態で納め、その報告を含め非公式にシドニアの王妃が来ている事
が伝わっています。
いちおう、王妃達は、連日遊んでばかりいたわけではないようです。
転移ボックスを使ってシドニアとの手紙でちゃんと仕事をしてまし
た。
王様が、王妃がいてくれたから、手紙に無い情報を直接聞き情報を
補間でき話がスムーズに進んだと言ってました。
我々、子供達はパーティに関係ないので、子供達だけで裏で夕食会
780
です。
シドニアの元王妃2人もこちらにいます。
今朝のうちに案内が出され、クリシュナ様も呼ばれてます。
みんな、その意図は解っている様で、シドニアの王女達は、クリシ
ュナ様を見てちょっと緊張してました。
しかし、予想通りというか、リアン様はそんなことに動じることも
無く、
クリシュナ様にも平等にそして丁寧に対応します。
そして、全体を見て妹たちとクリシュナ様が上手く話が出来るよう
にしてました。
もともと、自分が候補とも思っていないのだろうか?
うん、やっぱりこの人すごく良いよね。
私が、スーにそういう話をしていると、
﹁そうね。マリアタイプね、顔のレベルは違うけど、
将来も、2妃様が大きいから胸は同じぐらいになるのかしら﹂
と、スー私と同じ話してますか?
﹁フィリップ王子の相手としてだよ?﹂
と念ため確認すると、
﹁あらジルさまの妾にするって話じゃなかったのですね﹂
﹁スーとマリアという世界一の美少女が2人もいるのに、そんなこ
とあるわけないじゃないですか。
それに、1国の王女を妾ってありえないでしょ﹂
﹁あら、うふふ。冗談よ﹂
781
となんとなくあしらわれた。
なんか変だな?
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
その次の日、全員をシドニアの送り届けた。
到着後に王様に引渡しの挨拶をして、一度解放。
そして、シドニアにいる大隊長から一連の報告を受けた。
結果は予想以上の成果でした。
シドニア国内での謀反を起こそうとしていた犯人が逮捕されました。
ルカ王子達を捕まえて、グランスラム帝国に亡命するつもりだった
ようです。
そして、夏に我が領地を襲わせた犯人も先日王城での毒混入の裏の
犯人も同じ人物でした。
ラルクバッハの貴族と思っていましたが、国外の貴族が手を貸して
いたようです。
この貴族は、ラルクバッハに店を出しているようなのでラルクバッ
ハに帰ってから店調べるそうです。
ただし、まだグランスラム側に本当の親玉がいる。
ばれないように死体まで始末しに来た、グランスラム帝国の魔道士。
そしてその魔導師を送り出した真犯人。
残念ながら、魔道士の容姿などは不明で、捜査はそこまででした。
そして、その報告を聞い後、エリンを連れラルクバッハへの移動で
す。
エリンを迎えにまずは、謁見の間に行きます。
中に入ると綺麗なドレス姿のエリンがいました。
花嫁衣装ではありませんが、貴族の普段着よりも遥かに良いドレス
782
です。
王様から、私にエリンを専属侍女として譲るとの言葉がありました。
エリンは、王様、王妃様方から激励の言葉をかけられ、王様から私
へエスコートの引渡しがありました。
なんでしょ、すごく緊張します。
なんだかすごい式典なのでしょうか。
まるで、ちょっと変わった結婚式の様な雰囲気。
次に、王妃様に案内され、もしかして、後宮へ移動しているのかな?
エリンをエスコートしたまま、侍女達が待つ部屋や。
100人近い侍女達から祝福を受け、花びらが舞い散る中侍女達の
中を抜けて庭園に出ました。
いや、これ完全に結婚式だよね。
よいのか、相手が10歳の子供なのに。
庭園で、3人の王妃様から贈り物を受け取り、どうやら終了したよ
うです。
旅立ちの許可が出ました。
普段は、馬車での移動になるそうですが、私たちはこのまま転移す
るので、
このまま王妃様に見送られたまま庭園から1回目の転移。
中間地点に移動。
移動先でちょっと無駄話。
今の式典、すごかったねーなどとと、エリンと色々会話して、
さあ、そろそろ次に行こうかと言ったら、
エリンが、
783
﹁ところで、ジルベール様、大隊長さんや、他の兵の方も一緒に帰
ると聞いてましたけど、後で迎えに来るのですか?﹂と。
あ、完全に忘れてた。
で、慌ててもう一度 城に戻る。
先ほどの後宮の庭ではなく、王城前の広場で大隊長が待ってました。
そうそう、ここで待ってるって言ってたわ。
そして、大隊長は、顔面蒼白で立ってました。
どうやら、後宮の庭から帰ったという話を聞いてしまったらしい。
﹁ごめん、ごめん、王妃様に見送られたから、先に移動しなきゃと
思って﹂と言うと、
﹁ホントですか、レオン王に置いて行けって言われた訳じゃないで
すよね﹂
﹁いやいや、それは無いよ。単に私が忘れてただけだから。うん。
じゃあ帰りましょうね﹂
﹁うわ、正直に言われた。マジっすか。私、そんなに存在感無いで
すか﹂
﹁いや、そんなことないよ。思った以上にエリンが可愛くて、忘れ
てただけだから﹂
と言ったら、大隊長があらためてエリンを見て﹁天使だ﹂と言った。
﹁あ、この子私の専属侍女だから、見ちゃダメだよ﹂
というと、ショックを受けたようだ。
大隊長さんは、年を食っているが、独身です。
今度はきちんと移動。
途中で4人の兵士の方々も回収した。
784
兵士達がエリンに驚いてた。
美しすぎる侍女さんですねーって。
さすがジルベール様。
とか、いろいろ言われた。
みんなエリンを褒めるが、別に悪い気はしない。
何気に私の前で、エリンに自己紹介して、自分をアピールしようと
するので、
そこはきっちり止める。
そして、まずはラルクバッハの王城へ。
大隊長さんは、王様に挨拶に。
私は、王妃様方へ、エリンを紹介に。
だって、連れて来いって言われたから。
王妃様は、エリンを見て、皆の第一声は﹁まあ、かわいいわね。お
人形さんみたい﹂だった。
そして、2妃様が﹁1妃様の若い頃に似てなくも無いわね。ちょっ
と縮めた1妃ね。
髪
髪
153cm
170cm
薄い青に、両緑。
青に、両緑。
同じ国だから、何か関係があるのかしらね﹂だって。
エミリア
エリン
髪の色は、エリンの方が薄めの青だが、目の色は一緒。
ありゃりゃ、並ぶと似てますね。
大きさが段違いですけど。
エリンは、ニコニコ笑顔系なので、印象的には3妃様かと思ってた
けど、
顔の輪郭や造りは1妃様に似てた。
侍女服の時は、きちっとしていたけど、今日の様にドレスを着ると
印象が違う。
785
言われると、確かにそうだ。
今日は化粧も違うし、服装も違う。
そして自己紹介を始め、王妃様が、エリンにいろいろと質問したい
ことがあるから、
マリアと話でもしてこいと言って部屋を追い出さた。
スーは、学校だって。
うーん、3人とも今日は、顔が怖い。
マリアと適当に話をしていたら、シドニアの王妃達とこの侍女の件
はもめたらしいと聞いた。
え?
侍女の連れ出しが、ダメって話じゃなくて、だれが教育するかって
事で。
公爵家の専属侍女として、教育が足りないから、ラルクバッハで教
育をする。
ラルクバッハには、迷惑はかけれない、それならばシドニアで完遂
させると、シドニアの2妃が言ったらしい。
でも、こちらの2妃様が、私が教育するとかなり強く押したらしい。
エミリア様は、シドニアも、ラルクバッハの違いも解ってるから、
自分が、教育しようかと言う話があったが、先生としては頼むけど
責任者は2妃様になった。
いや、なんでそんなに気合入ってるのかな?
と聞いたら、ジルさま、2妃様の命の恩人ですからね。
それにお友達も救ったところだし、2妃様がなにかしてあげたかっ
たみたいですよ。
と言うことらしい。
ふーん。
じゃあ、とりあえず任せたほうが良いって事ですね。
786
暫くすると王妃様がエリンを連れて来た。
2妃様から
﹁もともとシドニアの王城で働いていたので、基礎はできています
が、
公爵家の専属侍女としては、まだ教育が足りません。
1ヶ月王城で教育し、公爵家でも通用する侍女としてからジルベー
ルに渡します﹂と。
そして、3妃様から、
﹁メルミーナ家の筆頭侍女と執事が引退すると言う話があります。
不足の教育は、あなたの領地でも受けれるようにお願いしようと思
ってます﹂
と言う話があった。
そうですか、やけに気合が入っている2妃様が少し怖かった。
﹁えっと、今日は一度連れて帰って明日からでも﹂
﹁だめです。1日でももったいない。今日から教育を始めます﹂
﹁よろしくお願いします﹂
と伝えて、エリンを人質に置いて、家に帰った。
ドナドナされちゃった。
エリン、ごめんね。
家では、エリンの歓迎会の準備がされていたが、1ヶ月延期と伝え
た。
エイミーが
﹁超残念。何でー。
1日ぐらい連れて帰ってきても良かったでしょ﹂と。
787
私が﹁王妃様が真剣な顔で怖かった﹂というと、
﹁そうか、王妃様怒らせると怖いからね。しょうがない。
じゃあ、エリンの分は私が食べちゃおうかな。
あ、じゃあ、今日も一緒にお風呂入ろうね﹂
と言って自己完結していた。
お母様は、公爵家でも通用する侍女がいなかったから教育は助かる
と言ってます。
それに、メルミーナ公爵家の筆頭侍女が来るのも安心していた。
お母様は、迎え入れる準備をしなきゃと。
はりきってました。
788
5.22 事後処理の準備
シドニアの王妃達を送り届け私が家に戻って来た翌日、レイブリン
グさん達がコテツ探索からようやく領地に戻ってきた。
その日は、皆が無事に帰ってきたので大宴会。
アメリも、久しぶりに旦那様の元気な姿を見て安心してました。
次の日に、レイブリングさんにグランスラム帝国への攻撃したこと
について相談をしました。
聖獣に攻撃の許可を出したら想像以上の効果が出た。
止める間も無く、自分の魔力が空になるまで消費され僅かな時間で
あっというまに全滅していた。
その日ジルベールは朝、長距離の転移移動でかなりの魔力を消費。
そしてガルダの召還を行い、いつもよりも少ない魔力しかなかった。
およそ半分以下の魔力で軍隊をあっさりと壊滅させた。
レイブリングさんと詳しい状況を確認しあい、その時にどうするべ
きだったのかそしてこの後どうするべきかを相談した。
レイブリングさんからは、まず最初に後悔しているのかと聞かれた。
私は、戦争だから結果について後悔はしていない。
後悔しても死んだ人は帰らない。
これからどうするべきかを相談したい。
恐らく、今回の戦勝で昔シドニアだった領地は帰ってくると王様が
789
言っていた。
私は、その地で親を亡くした沢山の人々の為に何かをしたいと伝え
た。
レイブリングさんは、一部は素直に好意を受け入れるだろうが全員
がそうではない。
また、そもそも大前提として全員は救えない。
それでもやるか?
好意を感謝もされず、逆に恨まれそれを覚悟しなならば下手に手助
けなどするな。
そもそも手助けの必要はないのだから。
そして、助けたいのは相手ではなく自分だと認識しなさい。
とても、厳しい意見です。
中途半端に助けてみたが、感謝されないと怒るようなら最初から何
もするな。
自分の我が侭で、気を軽くするために提供するなら見返りは求める
な。
愛情を無償で届けるのだとしても一緒だ。
なるほど正論だ。
しょくざい
それでもかまわない。
贖罪の為にやるのだ感謝される必要などない。
しょくざい
後悔はしていないが、やはり自分のせいだ。
自分のエゴで、贖罪だ。
自分が言い出した我が侭だから相手に何も求めない。
大丈夫だ。
790
では、今のこの領地の民にも話をして自分に協力してくれるか問い
かけなさい。
1人では何もできない。
自分のお金を出すと言っても、領地や国内でお金を回すのと他国で
お金を消費するのは違う。
そして、皆に協力を頼み、食材、魔道具、それらの物資を余分に作
りもって行かなければ身一つでは何も解決しない。
ただ、金を投資すれば相手側の生活が変わるわけでは無い。
現実には、色々な物が必要なのだみんなの協力は必要だ。
人も、物も。
良く解った。
そしてやることも、道筋が見えてきた。
良し!。
レイさんと話をして部屋を出たらエイミーに話しかけられた。
﹁少し心が軽くなった?。さすがレイさんだね。
何かやる事が決まったのかな。
私もジルちゃんの力になるから、一緒に頑張ろう﹂
と言って、抱きしめられた。
どうやら、エイミーが先に帰ってきた日も、エリンを連れて帰れな
かった日も暗い表情をしていたらしい。
だから急に一緒にお風呂に入ったのか。
うん、ありがとう、エイミー。
助かるよ。
と言うことで、とりあえずエイミーと一緒に役所や私の作った色々
な工房を回った。
791
それから母が、領地の子爵、男爵家などを役所前に作った舞踏会場
に集めてくれた。
そこで私が説明する。
クインさん、ヘイゼルさんと一緒に畑で働く農民達を集会に集め一
緒に説明した。
領民達からは今までのお世話になっているから、私が自分達の様に
困っていた他の地域を助けたいと言うのなら協力すると言ってくれ
ました。
王都では、レイブリングさんが伝のある貴族の家を紹介してくれた。
そして、レイブリングさん、エイミーと一緒に回り、説明し協力を
求める。
皆が、少しずつ色々と提供してくれる事になり、食料、魔道具、そ
して農業指導者などもめどが付いてきた。
王様にも相談し、私の行く部隊と場所を検討してくれる事になりま
した。
時期は、暫くしたら決まるそうですが、次の農作業など考えると4
月だろうと言ってます。
では、それまでに可能な限りの準備を進めましょう。
やはり、こういう時に相談できる大人の存在はありがたい。
レイブリングさんと知り合えて本当に良かった。
﹁やっぱり、こういう時に相談できるのはレイブリングさんですね﹂
﹁うん、そうか。まあ何もできんが、相談ぐらいはな﹂
﹁だって、王様が、お父さんになるのだから相談しろって言って来
るけど、やっぱり王様は王様ですよ﹂
﹁ふははは、王様をお父さんか、そうだな。私にもっと気楽に相談
792
してくれ。
だが、ジルベールにはもっと年の近い相談役が必要だな。
まあ、良い人が見つかるまでは、私が相談にのるから、ゆっくり探
すと良い﹂
と言うやり取りがあった。
そして、王城に行って、スーや、マリアにも話をした。
2人はすぐに理解してくれた。
2人も私が悩んでいた事を心配してたらしい。
王妃達は気にするなというが、協力出来る事はすると連れて行けそ
うな農業学者を10名も紹介してくれた。
みんなの協力で、だいぶ道筋が見えてきた。
良し、頑張ろう。
793
5.23 レオン王の誤算
全滅などするつもりは無かった。
前線を押し戻す程度を想定してたら1万の兵を全滅させる結果にな
った。
勝利となったが予想以上の大勝利を手放しで喜べるような状況では
なかった。
もちろん、グランスラム帝国からはこの数年分の攻撃に対する賠償
金を払わせる。
グランスラム国内の部隊を半減させる要求をする。
かつてシドニアだった領地の返還も150年ぶりの元に戻るだろう。
しかし、全滅した1万の兵全員が生粋の兵士ではない。
徴兵によって集められた農民も沢山いる。
それに、グランスラムの高位遺族の跡継ぎも沢山死んだ。
これによってグランスラム帝国内はかなりの混乱状態に陥っている。
これからの返還される領地の立ちなおしには、ラルクバッハも協力
する必要がある。
その後、ジルベールの残してくれた転移ボックスで手紙のやり取り
によりシドニアの周りの状況をつかみ戦後賠償の話し合いを進めて
いる。
転移ボックスは、距離が遠くても手紙程度ならば魔石の消費も少な
く大変使えるシステムだった。
これもジルベールが考えたそうだが、通常の使い方以上に軍事での
利用は効果を出せた。
794
結局、近隣国の王国すべてに転移ボックスを配ると数を作らせ早馬
で運ばせて配布した。
全ての転移ボックスにラルクバッハ王国の紋章を入れ、ラルクバッ
ハの王家所有である事を示す。
現在各国への重要な手紙は、ラルクバッハを中心に行われ、ラルク
バッハは想定以上に優位な立場になった。
︵実際に運用すると軍事・政治以外に高位貴族同士の手紙も混じっ
ていたので、料金を貰う様にした。︶
アルフォンス王国、ラスク王国からそれぞれが兵をシドニア経由を
送り込む。
今回は、戦争に行くわけではないので各国1000人。
彼らは、戦後の話し合いへの参加と、戦後復興で数ヶ月公共事業を
行ってから帰る。
1000人の兵士は、純粋な兵士だけでなく魔法部隊、農業指導、
橋などの建設の建設員で組み合わせられる。
すでに遠方の国は既に出発している。
ラルクバッハ国は、2月下旬から出発し3月下旬にシドニアに到着。
シドニア近隣の返還地で公共事業を開始する。
200名の生粋の兵士はそのまま4月中旬にグランスラムの戦後賠
償の話し合いを行う地に到着する予定だ。
ジルベールからも復興への参加希望があったので協力させるつもり
だ。
法の整備など最終的な返還まで時間がかかるが、返還されたこの地
はこのままシドニアの管理下に置かれる。
賠償金も半分以上をこの地に費やすことになるだろう。
ジルベールを行かせるならそこになるのだろう。
795
戦後賠償の話し合いに行くアレクサンドロ公爵はジルベールの尻拭
いをするのはこれが最後だ。
ここまでやらかした奴を子供だと隠せる訳が無い。
さっさと爵位を与えて表に出せ。
と言って出て行った。
ジルベールを子供のままの立場で生かせるか、子供をそのまま領主
とするか、他の公爵や侯爵等、貴族院の意見も聞いてから決めるこ
とにする。
そして問題は爵位だけでは無い。
今回の戦後賠償で、ジルベールは民に対する考え方が変わりつつあ
る。
レイブリングが上手く指導しておるようだ。
時代が変わろうとしている、意図せずどんどん時代が勝手にジルベ
ールを巻き込もうとしている。
それを感じ始めた王様でした。
796
5.24 前世持ちがばれる︵前書き︶
またまた、タイトルでネタバレです。
さて、王様は、どうやって聞き出すのでしょうか?
797
5.24 前世持ちがばれる
次の週に王城に来た時の事。
王城に泊まっている夜、王様から部屋に呼ばれた。
先日のルカ王子の救出、シドニアへの協力についての相談だと。
王の私室に入る。
王様から
﹁さてジルベール。ルカの救出にグランスラム帝国への戦勝、それ
に王女達への守護精霊といろいろあった礼をしたい。
まずは、言葉を先に伝える。
ありがとう。
これからもいろいろ頼むと思うが、よろしくな﹂
﹁お礼など、偶然の重なりですし、当たり前の事しかしていません
から﹂
﹁うむ、それで礼として何か欲しいものがあるか?
ああ、シュミットはやらんぞ。それ以外だ﹂
﹁王、ここで冗談を言うと締まりませんよ﹂
﹁うん、そうか? 半分は冗談ではないぞ﹂
﹁全く、まあ良いです。それは。
グランスラムでの復興は、順調に準備ができそうです。
そちらを除くと、今回も協力してくれる領地の民へなにかしてあげ
たいと思っています。
それには領地までの道路整備が一番良いと思うのですが﹂
798
﹁道路か、公共事業の割り振りか。今日の褒美はそなた個人にと思
っていたのだが﹂
﹁領地までの道路整備についてですが、私も責任者にして欲しいの
です。
将来にも備え、大規模な公共事業に携わりたいです。
私が領地で行っているのは工房の立ち上げが多く、公共事業は経験
がありません。
それで私個人へのお礼となりませんか。
領地までの道路建設なら、一石二鳥。ぜひお願いします﹂
﹁うむ、道路となると実現性や予算など含めメルミーナと相談しな
ければならんが、おそらく問題ないだろ。
今年の道路計画の一部をそちらに優先させれば大丈夫であろう﹂
﹁ありがとうございます﹂
﹁まあそれとは別に自分の欲しいものは無いのか?﹂
﹁別に、私は子供ですからお酒など必要ありませんし、高級な剣も
光の剣を出せば良いので。特に何も?﹂
﹁うむ、欲が無いの。受け答え方を聞く限りお主ほんとは幾つなの
だ?﹂
﹁見た目も、心も、立派な子供そのものですよ﹂
﹁まあ良い、礼だが例えば建国王とその家族の肖像画を見るとかど
うだ?﹂
﹁え、見れるのですか?﹂
﹁うむ、建国王の簡単な肖像画は紙幣にもなっておるから見ておろ
うが、正確ではないからな。
それに家族の肖像画となれば、出回ってはおらんからな﹂
799
﹁では、ぜひ見せてください﹂
﹁良かろう、すぐに見せてやるからこのまま私についてきてくれ﹂
と言って、王の私室の壁を押すと階段が出てきた。
王様と一緒に地下へと向かう。
最下層に降り、幾つかの部屋がある中で、赤い扉の前で止まった。
王から
﹁この部屋は、1人ずつしか入れないのだ。ジルベール、先に入っ
てくれ﹂
と言われ、扉に手をかける。
すると扉が少しひかり、そのまま押すと扉が開いた。
中が暗い。
扉を全て開けて、中に入ると明るくなった。
﹁扉を閉めなさい。その後でワシがはいる﹂
と言われたので、そっと扉を閉める。
王様が続いて入ってきた。
そして話し始める。
﹁ここは、代々の王家の肖像画が締まってある所で、300年前か
らの100年分が保存されている部屋だ。
一番奥に建国の王シンの肖像画があるので見に行こう﹂
﹁はい﹂
そして、一番奥に到着すると、王が2枚の肖像画を取り出した。
﹁これは、建国の王に嫁いだ2人の妻の肖像画だ。
800
結婚当初と言われている。誰に似ていると思う﹂
それは、夢で見たスーレリアとマキだった。
﹁お顔立ちは、2妃様、3妃様に似てますね。
目の色はスザンヌ様、マリア様に似ていると言えますが﹂
﹁そうじゃろ。私が王になってこの肖像画を見ておったから、レオ
ニー、アナと結婚した時は自分が建国の王の再来ではないかと思っ
たこともあった。
しかし、マリアの聖女、ジルベールの金眼を見たときに、このため
の準備で会ったのかとやっと解った。
決定的だったのは、スザンヌの未来視じゃな。片眼とは言えワシの
娘から建国の王の子が2人も生まれた。それで、一つの仮説を立て
た﹂
﹁どんな仮説ですか?﹂
王は、次にもう一枚の絵を出した。
﹁これが建国の王の結婚当時の肖像画じゃ﹂
黒髪、金眼。
ああ、私なのだろう。
家で見たお父様の肖像画にも少し面影がある。
﹁決定的だったのは、今この部屋に入った時だ﹂
﹁入った時とは、どういうことですか?﹂
﹁この部屋は、王となったものとその王妃しか入れぬ魔法がかけれ
ておる。
特にこの300年前の肖像画のある部屋は、建国王以降全て王が登
録されておる。
801
つまりお主が今世で特別な儀式もせずに入れたと言うことは、過去
この扉に認識された魂を持つということだ﹂
ガーン。
なにそれ。
あっさり決定的な証拠を見せてしまったか。
しかも、自分でもまだ信じ切れてはいなかったの。
﹁ジルベール。お前は、本当は何歳だ?﹂
﹁え、10歳ですよ。8月が誕生日でした﹂
﹁いや、前世を足してだ﹂
﹁前世ですか?﹂
﹁そうだ、前世だ。たまにそのような症例がある事は、書物の記載
で解っておる。
扉を開けた事で確定しておる。
おぬしの前世は建国の王じゃ。間違いないじゃろ﹂
﹁解りました、正直に答えます。
ですが、それでも私の答えは、[否定も肯定もしません。]としか
言えませんよ﹂
﹁どうしてじゃ﹂
﹁はい。実は、前世があるという事は覚えています。
しかし、はっきりと前世の事は覚えていません。
自分の親がどんな人だったのか、自分がどの様な暮らしをしてきた
のか何も覚えていません。
しかし、なんとなく前世があった事そして前世で覚えた知識の大半
が残っています。
802
ですが、残っている知識はこの世界のことではありません﹂
﹁この世界ではない?﹂
﹁はい、ラキシス様から、私はシン様の魂を持つと言われましたが、
シンとして死んだ後、異界で別の人生を歩んでいます。
私に残されている知識は、その途中の知識です。
ですので、シン様の記憶はありません。
異界で死んだ後、メリーナ様がこちらに転生させてくれたのです﹂
﹁それは、スザンヌも、マリアもか?﹂
﹁2人の事を私が伝えるのはおかしいので、それは答えかねます。
しかし、ラキシス様からは、運命の2人であると聞いています﹂
﹁そこも女神か﹂
﹁はい、この世界に生きる人々の為とラキシス様がおっしゃってお
りました。
私が何をなすのかは知りませんが伝えられているのは、前世で途中
で死んだから今度は天寿をまっとうするまで生き抜いて。
といわれているだけです﹂
﹁解った。女神が関わるのならば、これ以上詮索はやめよう﹂
﹁理解して頂き助かります﹂
803
5.24 前世持ちがばれる︵後書き︶
どうでしょうか、あっさりと王様の作戦勝ちです。
804
5.25 王家の事情︵前書き︶
みなさま、楽しんで頂けてるでしょうか?
805
5.25 王家の事情
﹁王せっかくなので、シン様、スーレリア様、マキ様と、その子供
達の肖像画も見せていただけないでしょうか﹂
﹁おお、良いぞ。シンの子供達はこれだ﹂
と言って全部で15枚の絵を出した。
え、2人に15人も生ませたの?
14人が片方金眼だ。
残りの片側の目の色も何種類かある。
1人は両目紫の聖女。
﹁スーレリア様は、この2人。
マキ様がこの3人を生んでいる。
後の10人は、どこかな、あった。この8名が生んだと書いてある﹂
﹁え、8人に生ませた?なんですかそれ。
シンの妻は2人ですよね。
なんで女性が全部で10人もいるのですか?﹂
﹁ああ、シンは、スーレリア様の未来視によって、妾を8人娶り、
全部で20人の子をなした。
5人は、肖像画を書く前になくなっておる。
さらに最終的に成人まで達したのは10人だけだ。
その10人が子をなし今の国の根幹をなしておる。
スーレリア様が、300年先を見越してそれだけの子供が必要だと、
歴代の王の中でシン様だけは1代限りの後宮を持っていた﹂
黙る私。
前世の知識があったしかし今は10歳。
806
理解しがたい。
現状2人の婚約者でも手一杯なのに、それに加えて8人って。
シン、頑張りすぎじゃない?
﹁王妃たちは、この建国の話は知っておるからスーとマリアの婚約
が決まった後に、他の候補も探すと言っておったぞ。本当かどうか
知らんが﹂
なにそれ。
しかも王様のこの口ぶり、少し逃げたな。
﹁いえ、必要ありませんから王から止めてください﹂
﹁今はお主が10歳だからそう思うのじゃ。良いか、良く聞け。
王家を絶やさぬために、王妃と協力し子を成さねばならん。
しかしそれも300年が限界じゃった。
スーレリア様が言われた予言された月日が流れた。
そもそもワシの兄弟は、男子は全て死んでおる。
両親もワシが子供の時に殺され、おばあさまと、それにハイルデン
のじいさまが王家のしきたりや王の教育をしてくれた。
シドニアに居たっては現在男子がいない。
みろ、見事に300年で末期的状況じゃ。
ワシの子供に男子が3人もいるのは、本当に奇跡じゃ。
しかし気がついておるとおり王の器はルカにはあるがマックには無
い。
あやつは政治は出来るだろうが、大きな物事の最終的な判断をでき
807
ん。
フィリップは、恐らく大丈夫じゃろうがまだ判断はしきれん。
同じようにハイルデン公爵家も金眼であっても資質が低い。
現に、最近はレイブリングのように金眼で無い者の方が資質が高い
事が多い﹂
﹁金眼の資質が低いのですか﹂
﹁ああ、そうじゃ。過去の金眼持ちに比べれば、明らかに能力が低
い。
古い血は限界なのじゃろう。
ワシは、ジルベールが出てくるまでは、金眼の継続を捨てる時期だ
と思っておった。
しかし、お主がおるのなら、この国は、新たに変わるかもしれん。
それは、お主の血筋だけではないのだろう。
ルカたちも、おぬしのおかげで強さが段違いになっておるしの﹂
﹁新たに、ですか﹂
﹁そうじゃ、鍵は、お主じゃがな﹂
黙る私。
﹁王妃たちも、王家の勤めとして動いておる﹂
﹁え、妾探し以外にもなにかやってるんですか﹂
﹁まずやっておるのは、王家の男児に昔からやっておる育て方じゃ
な。
毎回侍女を変えて、あたえておったじゃろ。
おぬしが専属侍女を選んだので、次のステップに進むと言っておっ
たが。
いままでやっておったのは、小さい時から女性に慣らし、変な女に
808
捕まらないようにするための儀式じゃ﹂
﹁儀式﹂
﹁別に、エッチなことは無いじゃろ。フィリップも同じようにやっ
ておる。
あやつは、あれだけ女に慣れさせようとしておるが、いまだに女性
とまともに話ができんがの。
成人後にそうであってはこまるでな。だから、女性に慣れるように
しておかんとな。
ジルベールは、自らの専属侍女を探せたし、役に立っただろう﹂
﹁女性に慣れる。ですか。まあ、確かにエリンの様な優秀な侍女を
見る目は養えたのかもしれませんね﹂
﹁ああ、外に出たときに変な女に捕まらないよう、女を見る目を養
うのだ。そういう修行の一種じゃな﹂
﹁修行﹂
﹁建国の王から生まれた10人の子が、その子孫を絶やさすによう
に築いたやり方じゃ。いまさら変えれんじゃろ﹂
﹁なんだ、止めて欲しそうな目で見るな。
これを、ワシが止めれるわけないだろ。
そんな恐ろしいことしたら、ワシの身が危ないわ。
いやなら、自分で王妃に直接言え﹂
ああ、この人王妃の尻に敷かれてるわ。
さらっと王妃に責任投げやがった。
私だって王妃に言えるわけ無いじゃないか。
809
﹁なにか言いたいことがあるなら、王妃ではなく、婚約者であるス
ーと良く話し合って置くように、一人で悩む必要はないぞ。
マリアはまだ早いから、そんな話をするなよ﹂
﹁それは、私も同じでは?﹂
﹁お主は前世があろう﹂
﹁恥ずかしくて黙ってましたが前世は、35歳まで生きましたが童
貞でした。もちろん結婚もしてません﹂
王様が、目を見開いて、びっくりしている。
﹁お主、前世、もてなかったのだな﹂
﹁女性とはお付き合いはしましたが、結婚までは至りませんでした。
理由は覚えていません﹂
﹁そうか、まあ今世はすでに婚約者もいるのだし、成人したら、頑
張れ﹂
﹁はい﹂
﹁あ、シュミットはやらんぞ﹂
﹁また、それですか。せっかくの良い話もそれで全部飛んじゃいま
したよ﹂
﹁こういのは、繰り返し言わんとな﹂
﹁漫才ですか!!﹂
﹁漫才とはなんじゃ?﹂
﹁え、漫才は、今度教えます。
マリアに聞かないとネタを思い出しませんから﹂
810
﹁マリアは、やはり別世界から来たのか!﹂
﹁あ、しまった。今のは内緒で﹂
﹁うむ、解った。
では、また後日漫才を教えてくれ﹂
そういって、王の部屋を出て、自室に戻った。
部屋に戻ると朝は寒いので、今日は夜に湯浴みをしますよーと、侍
女に連れて行かれた。
今日は、久しぶりのサラだった。
さて、これに慣れないといけないのだな。
私は、洗われている間
﹁儀式、儀式。これは修行﹂とつぶやいてされるがままに我慢した。
今日は、お風呂の後に、マッサージまで受けた。
乾燥している季節なので、お肌もつるつるにしないといけないそう
だ。
全身に髪の毛までしっかりと磨かれ疲れた。
でも今日は血は出なかった。
成長してるんだなサラ。
サラから
﹁今日は、大人しいですね。ついに、諦めましたか?﹂
と
うんうんとうなずく。
﹁そういえば、ジルベール様、専属侍女を選ばれたのですね。
811
エリンちゃんは、今の時間は、2妃様のところに呼ばれて修行して
ますけど、すごいかわいい子ですよね﹂
﹁ああ、そう。まあかわいいは否定しないけど﹂
﹁一緒に教育を受けてるんですけど、すごいですよね。3ヶ月分を
1ヶ月圧縮して勉強するって﹂
﹁え、そんなに短期に押し込んでるの﹂
﹁まあ、2年の侍女の基礎があるから、3ヶ月全部って訳じゃない
と思いますけど。
今日も半日ぐらいは一緒にいましたよ。
すごくセンスが良いですよね。私、必ず1度目に失敗するんですけ
ど、彼女は全てを1回で覚えちゃいますね。それも完璧に。さすが
ジルベール様が選んだ子ですね﹂
﹁へー、そんな才能があったんだ﹂
﹁え﹂︵サラ 知ってて選んだんじゃ︶
﹁あ!﹂︵ジル しまったばれたか︶
﹁もちろん、知ってて選ばれたんですよね。まさかお顔と体ですか
?﹂︵サラ︶
﹁まさか、あの子は、服のセンスが良いんだよ﹂
﹁ああ、服の着こなしも完璧ですものね﹂
﹁うーん、なんかずれてるか? まあいろいろセンスの良い子で良かったよ。
専属侍女がこんなに大変って知らずに声かけて、侍女教育も急に詰
め込まれてかわいそうなことをしちゃったな﹂
﹁そんなこと無いですよ。きっと。
812
エリンちゃん、がんばり屋さんだし、ジルベール様の事をすごく尊
敬してるみたいだし、選ばれたことを誇りに思ってるみたいですよ。
きっと嬉しいから一生懸命頑張ってるんですよ﹂
﹁君もそうなの、フィリップが選んだわけじゃなくて、1妃が選ん
だんでしょ﹂
﹁あ、実は私の事は、フィリップ王子が選んでくれたんです﹂
﹁え、そうなの﹂
﹁ええ、毒の教育で間違って毒を舐めて、倒れたときに、フィリッ
プ王子が看病についてくれて、その時に教えてもらいました﹂
﹁へー、じゃあ、1妃の推薦は、王子が気に入ったからなんだ﹂
﹁他の子も、2妃、3妃様の推薦って事になってますけど、フィリ
ップ王子が話しやすい子を選んだそうなんです。
王子はヘタレだから自分から声がかけれないんだ。って王妃様が言
ってました。
私は、王子がお優しいから、お声掛けするのを戸惑っていたのだと
思ってます。
フィリップ王子は、本当にお優しいんです﹂
﹁あはは、うん、そうだね。
でもちゃんと王妃様は王子の事を見てたんだね。そして、王子のか
わりに決めてたんだね﹂
﹁ええ、ジルベール様は、ご自分で選ばれたそうですけど、そちら
も体外的には、シドニアの2妃様とこちらの2妃様で決めたことに
なってますよ﹂
﹁そうなの﹂
813
﹁ええ先日、2妃様がエリンちゃんの両親に手紙を書いてました。
王家が決めた身請にした方が良いらしいですよ﹂
﹁へー。そうか﹂
﹁ジルベール様、なにかお飲みになりますか﹂
﹁ああ、ホットジンジャーを頂戴﹂
﹁はい、承知しました﹂
と、それを飲んで体を温め、本日は就寝。
おやすみなさい。
朝、研修中のエリンが来て、支度をしてくれた。
﹁つらくない?大丈夫?﹂と聞くと
﹁3人の王妃様皆様お優しく教えてくれますので、大丈夫です。
きちんと1ヶ月で勉強し、ジルベール様の下に行きますので、もう
暫くお待ち下さい﹂と言われました。
彼女、頑張っているようです。
けなげだわ。
頭なでなで。
なんだかが目がキラキラしてました。
かわいいなー。
今日もなんかかっこよくなった気がする。
エリンも頑張ってるし、私も頑張ろう。
814
5.25 王家の事情︵後書き︶
このお話は、ちょっと強引かなー。
こうやって、王様がジルベール君を、
こっそり洗脳してると言うお話です。
815
5.26 空間魔法の使い手集まる︵前書き︶
閑話です。
816
5.26 空間魔法の使い手集まる
たままた王都の店に顔を出している時に、アイテムボックスを作っ
た人に会いたいと言う男がやって来た。
アルフォンス王国からわざわざ来たらしく、自分も空間魔法が使え
るから弟子にして欲しいと言って訊ねてきた。
店の奥からその男性を鑑定で見ると空間魔法に、鑑定の能力まで持
っていた。
そしてやはり、メリーナの加護中がある。
転生者だ。
相手も私の事を鑑定で確認したらしく声をかけて来た。
店の奥に入り話を聞いてみる。
オメガ・パテックス子爵位を持つ28歳の男。
オメガ・パテックス
レベル3
総魔力量 415
基本魔法 魔力操作
応用スキル ︵攻撃・防御系︶
レベル0
レベル3
魔素の高温化
流体操作 レベル3
レベル0
個体操作 レベル3
魔素の低温化
気体操作 0
音波操作 レベル2
光子操作 817
身体強化 1倍
特殊
空間魔法 レベル2
鑑定 レベル4
メリーナの加護中
さすがに転生者、総魔力量が多く魔法の能力は高い。
火、氷は使えない。
間接型に特化している感じだ。
そして、アイテムボックスを作れるほどの総魔力量は無い。
話を聞くと、これまでアルフォンス王国で宮廷魔術師となり遠征時
の荷物持ちなどでマイボックスの能力で重宝されていたそうですが、
アイテムボックスの出現で自分の優位さが無くなった。
そして、そのアイテムボックスの有益さに愕然とし、宮廷魔術師を
辞めて弟子になりに来たそうです。
雇わないと言ったらどうするの?と聞くと、アイテムボックスを作
った人は絶対に転生者だと思っていた。
同郷のよしみでぜひお願いします。と見事な土下座をされた。
いきなり土下座でした。
弟子の件を了承し領地へ連れ帰る。
空間魔法の使い手の育成は前から王宮からも言われていたので、王
様に相談してラルクバッハの宮廷魔術師からも派遣してもらう。
そして、もう1人。
こういのは時期が重なるのでしょうか。
偶然とは恐ろしい。
818
ラスク王国の宮廷魔道士を辞めて来た女の人。
空間魔法の使い手
オメガ・パテックス︵28︶男 アルフォンス王国出身 空間魔法
レベル2
空間
ロレックス・ロドリゲス︵32︶男 ラルクバッハ王国出身 空間
魔法 レベル2
カルティエ・シファーナ︵22︶女 ラスク王国出身
魔法 レベル1
3人とも、転生者です。
転生者が一気に3人も集まりました。
領地でゴルゴさんが大歓迎。
ロジクールさんも含めて、日本食の大盤振る舞い。
領地で作った日本酒に、焼酎も出し、夜の大宴会。
そして、追加情報。
オメガさんの両親が揃って転生者。
現存は、47歳のお母様=ウッィカ・パテックスさん。
父親は、魔物との戦いでなくなってました。
それでも現存する転生者で最高齢。
いや、47歳で最高齢は失礼ですけどね。
とりあえず気候も良いし日本食も食べれるので、ここに呼ぶそうで
す。
そして、修行スタート。
基本は魔力操作から。
そして魔力の可視化で確認しながら、空間の与え方を指導。
819
それを1ヶ月繰り返すと、全員の空間魔法のレベルが3に。
そして総魔力量も1000を超えました。
なんとか3月末までに、アイテムボックスを1日1個作れるように
なりました。
転移については3人とも、瞬転での移動が出来るようです。
もちろん、呪文を詠唱が必要です。
瞬転の呪文は各宮廷で秘伝として伝わっていたそうです。
ちなみに、私は詠唱しないので呪文は知りません。
ロレックスさんが、魔法辞典と言う能力を持っていました。
1回200の魔力消費で目的の魔法の呪文を調べる事が出来るそう
です。
すごい魔法がありますね。
さすが転生者。
魔法辞典は、一度魔法を見ないと調べることはできないそうです。
未知の魔法を調べることはできないと言うことです。
その他、通常空間拡張付与、虚無空間付与、転移を見せて呪文を調
べてもらいました。
魔法書に書き書き。
ついでに、私の複合魔法も見せて、詠唱を調べてもらいました。
書き書き。
でも、見せても半分ぐらいは不明だった。
火鳥、水龍は、聖獣のせいだと断定されてしまいました。
820
自分で作ったのになー。
でも便利な技なので、水龍に見えない程度に精度を落として泥と石、
水でそれポイ物をゆっくりと作り、攻撃をしてそれを解析してもら
う。
泥、石、水魔法の組み合わせで出来る連成魔法詠唱が判明しました。
劣化版ならなんとかできました。
良かった良かった。
書き書き。
そして、魔道具用の魔法陣も調べられるか調査。
石を暖める魔法陣は調べることができましたが、空間魔法をそのま
ま添加させる魔法陣はありませんでした。
空間魔法を魔法陣で発動させるのは難しいようです。
やはり、魔法効果の維持が一番使いやすそうです。
2人とも空間魔法の付与を1回やると魔力が枯渇するので、残りの
時間は別の事をやってくれます。
ロレックスさんは、ロジクールさんと一緒に魔法陣や新しい魔法の
研究を行っています。
そして、出来上がりをオメガさんが鑑定でチェック。
オメガさんは、他の魔道具の最終検査をやってくれます。
この3人のセットはなかなか強力です。
1人残されたカルティエさんですが、空間魔法の他に香水作製のス
キルと持っています。
本人の特徴から、相性の良い香水を作れるそうです。
821
私の上位鑑定でもあまり説明が出ないのでかなり特殊なスキルです。
しかも魔法で香水を作るのではなく、レシピが解るのだとか。
レシピどおりに作れば良いから検索系のスキルでしょうか。
ただし、相手が16歳以上の成人した人にしか使えないそうです。
とりあえずエイミー相手に試してもらいました。
私は気になったことは無いのですが、本人が訓練後に汗の匂いがす
ると気にしていたので。
レシピにあわせて作ってみました。
今回は香水ではなく香油でした。
匂いも薄め。
でも、確かに良い匂いになったかも。
なんとなく安心する匂い。
ところが、オメガさんとロレックスさん曰く、別に普通。
と言う。
カルティエさんも、ほらあんまり使えないでしょと。
そこで、もう一度鑑定でスキルを確認。
使ったところを見た上で鑑定を行うとたまに説明が詳細になる事が
ある。
そこで、見た結果。
思う相手に対して最大の効果を発揮する匂い成分を持つ香水・香油
を作るレシピの作製。
レベルが上がると、相手が好む匂いを放つ石鹸や、シャンプーのレ
シピも作れる。
822
なんと、思う相手に対してって
一応、エイミーに確認。
作るとき誰に対して良いにおいにしたいと思ったのか?
﹁そりゃー、雇い主のジルちゃんだよー。臭いと追い出されちゃう
かなーって﹂
そういうことですか。
一応注意で、それ私に効果はあるけど他への効果は少ないから、舞
踏会とかでは使わない方が良いよと。
﹁りょうかーい﹂だって。
で後日、王妃様の所に連れて行って3人分のレシピを作り、王城の
薬を作る部門に頼んでおきました。
作るときに王様の事を考えてもらう。
そして、注意事項として王様と2人で会うときに使う。
王様以外と会うパーティーや舞踏会ではあまり効果が無い。
後日、王妃様からカルティエにお礼と言って宝石が送られてきまし
た。
その結果に、カルティエが一番驚いてました。
ちなみに、1妃様は、来年の2月に待望の王女を。
2妃様もその後5月に王女を出産します。
3妃様は、この時点で妊娠済み。10月に王子が生まれます。
つまり、特別な思い人が居る男女に効果を発揮するわけね。
最初は、休みの日に王都のお店に連れて行って訪れる子達のレシピ
を検索、そのレシピを店に渡して希望者だけ後日店頭で渡すことを
やってみました。
823
たまに、作れない製法もあるのでその場合はすぐにやり直す、する
と代案が出てくるそうです。
匂いなんて、正解は無いですからね。
数種類はOKでしょ。
空間魔法付与の業務はアイテムボックスの魔法付加無しを王都に送
りそこで作業をすれば良いので、カルティエには王都で働いてもら
うことにしました。
3月末の時点で、3人ともに1日1個アイテムボックスを作れるよ
うになったので、暫く領地を離れてもノルマ分を作ってくれるよう
なので助かります。
本人達の給金は、かなり高額で契約しました。
こんなに貰っても良いのかと、給金に驚いてました。
ロレックスさんは、王宮魔道士を辞めてしまいました。
王宮から怒られるかと思いましたが、王城に優先的にアイテムボッ
クスの配分を回すことで了承してもらえました。
こちらに来る直前の状態と一緒では、アイテムボックスの方が黙っ
て仕事をしてくれる分良かったらしい。
役に立つなら使ってくれと言われたのは、本人に言いにくいので、
黙っておきましょう。
824
5.27 木こりに聖剣を配っちゃえ︵前書き︶
閑話です。
ブックマークが300になりました。
誤字はあいかわず多いのですが、少しずつ修正していきます。
では、引き続きお楽しみください。
825
5.27 木こりに聖剣を配っちゃえ
領地には木が沢山あるが、あまり林業が盛んでは無い。
領地の木は森を少し入れば直系60cm∼1mと非常に大きく育っ
ている。
木も密集していて間伐が必要だ。
この領地の木は硬く、家の柱としてはとても良い性能。
必要性も高く、ニーズもある。
しかし木こりが少なく木の切り出し量はかなり少ない。
原因の一つは工具のせいだ。
斧に使う鉄が硬くないため簡単には木が切れない。
現状1本を倒すのに1日では倒れない。
のこぎりを作って試していたがすぐに歯がつぶれた。
そこで、魔法で強化した前世の電動ノコギリ、つまりチェーンソー
を作ろうとしていた。
ロジクールさんと試行錯誤したが無理だった。
複雑すぎる、耐えれる金属も無い。
チェーンもゆがみがすぐにでてしまう。
魔道のこぎりを作るのを諦めることにした。
しかし、ふと魔道のこぎりではなく、光の聖剣を作れば木が切れる
のではないかと思い浮かぶ。
826
魔道具としての薄く光を纏った剣。
ロジクールさんに、オメガさん、ロレックスさんを入れて、魔法陣
のアイデアを出しトライする。
すると、案外簡単に出来た。
使用者に光魔法の特性が無くても、多少の効果を持たせる事はあっ
さり出来た。
しかしそこそこの威力を持たせると魔力の消費半端ではない。
次に効果を高める方法。
今迄の経験から使用制約をつける事で効果が上がる事はわかってい
る。
ここからは、実現性を維持出来る限界まで制約を付ける試行錯誤。
ロジクールと構想を考えてみる。
人を切れないが木と魔物が切れる。
木にしか力が使えない
にすると消費量が減った。
これだと制約ではなく単なる制限で、効果が上がる気配は無い。
しかし
最初に比べ少ない魔力で光の効果がある。
大木でもさくさく切れる。
これをベースに、2種類の方向へ魔道具を調整する。
一つは、加工用の道具。
制約1:使える場所をこの土地に限定する。
制約2:木にしか力が使えない。
大きな丸太を加工して使いやすい柱、板に加工する据え置き型の装
置。
827
これは、数名で動かすので、数名分の魔力を使って歯を維持する。
今までに比べれば、圧倒的にさくさくと加工できる。
据え置きなので、大型の魔法陣を使えるのも良い。
二つ目は、実際に森に入って木を切る斧。
森に入ると、魔物がでる。
折角の光魔法の道具が、魔物相手に使えないと戦力にならない。
単に思い道具を持ち運ぶだけでは効率が悪い。
そこで、最初の加工用よりは制約を少しゆるくした斧にした。
制約1:使える場所を、森の中に限定する。
制約2:木を襲ってくる魔物しかにしか力が使えない。
当然、魔力消費は増えるが加工用に対して使う時間は短い。
今迄、巨木は1本の切り出しに1日から2日かかっていたが、1本
1時間もかからずに巨木が切れる。
しかも、光を纏うのは斧の刃だけなので剣に比べれば小さい。
木を切ったり魔物との戦いは1日に何時間もある訳では無い。
実際1本の木を切るには周りの木の状況を確認しどれを間伐するか
決めようやく1本を切り出す。
大きな木を伐採でも1本1時間。多くても1日に2,3本しか切ら
ない。
平均的な魔力があれば十分足りる。
次に、切った木を持ち帰るのだが、森の奥深くは数日かけて移動す
るもの。
大型のマジックリュックでも、数本入れれるぐらいが限界でそれで
は非常に効率が悪い。
そこで、現在の転移型のアイテムボックスを大きくして、ベース基
地に装置する。
828
その片割れを持ち運び、木を切る周辺の中央部に中継基地を設置す
る。
周りで切った木を大型のマジックリュックにしまい、中継基地に行
ってベース基地に木を送る。
ある程度木を切ったら中継基地を移動させる。
いままで木こりが森に入る場合は多くても5名一組で活動していた
ようだが、これからは森の奥深くで長い間活動するので10名以上
で中に入る。
マジックテントもあるので、生活もそれほど問題はない。
この世界の木こりは、森の木を維持する知識や経験が豊富だ。
自然を愛する人たちで継承してきたからだろう。間伐と植樹そうい
ったことも心得ていた。
焼畑農業が流行っていなくて良かった。
伐採しても、山がはげになる事もなさそうなのでやり方は任せる事
にした。
そして、枝など、家や家具に使えない木は、炭を作ってもらうよう
にした。
炭の作り方も指示した。
皿の焼きがまを参考に、薪を炭にする。
魔道具によって、温度がコントロールできる。
お試しで、温度によってどう変わるかも試してもらい、自分達で試
行錯誤してもらった。
829
結局、およそ1000度でまきを炭にする事になったようだ。
皿の焼きがまに対してだいぶ温度が低いのでやりやすい。
そして、最初に切った木で最初は教会を立ててもらう。
ついでに日本風の瓦も作った。
教会の完成は、3月末。
山の奥は、精霊が多く、こういう地ではアロノニア様の教会が一般
的だ。
なので、今回の教会は、アロノニア様の専用教会です。
私がグランスラム帝国に行く前に神像を設置する予定です。
大量の木が切り出される事で、木に関する職業に従事できる求人が
増えた。
彼らは、加工や、炭作りで働ける。
そして、領地の家を建てる速度も上がり、人の増員に追いついてな
い建物不足も解消されそうだ。
切りすぎなければ、良いことづくめ。
830
5.28 マイアー王女のお誕生日
マイアー王女とシュミット王女への誕生日プレゼントを求め、聖獣
を探しに行き、そしてそのままシドニアの戦争乱入と、この3週間
は忙しかった。
今日は、マイアー王城の誕生日会。
参加メンバーはいつもの王家と公爵家の方々、それにマイアー様の
ご学友の家族。
すでに守護精霊の御霊の入ったペットちゃんは、マイアー王女に渡
っている。
ちなみに、まだペットはしゃべれない。
タマちゃん曰く、早くても生後半年、遅くとも1年でしゃべるそう
です。
それでプレゼントを終わらせる訳にはいかないので、きちんと別の
プレゼントは用意しています。
王女に花束と、ネックレス、それに髪飾りをプレゼントしました。
姉のスーが持っている、聖剣の入ったネックレスを真似、それを少
し小さくしたネックレスです。
頑張って状態異常軽減の効果を付けました。
軽減だと、ちょっとした効果しかありませんが、まあ無いより増し
程度です。
蚊に刺されてもちょっとかゆくみが和らぐ程度でしょうか。
実用的なレベルのものは作れませんでした。
831
髪飾りは、虫除けの効果付き。
今日の、マイアー王女はいつも以上に綺麗に着飾り、まるでお人形
さんのようです。
髪の色が違うけど、着物を着せれば、日本人形みたいになりそうだ
な。
とマリアに言ったら、着物ですか、着てみたいですね。
と言うので、今度、作ってみようかなと思ったが、この世界絵付け
の技術が無い。
綺麗な絵を布に入れる技術が無いのです。
最近、あまり召還してないから、布の染め方や絵の入れ方を調べて
おこうかな。
そして、皆からのお祝いが一通りあった後に、マイアー様から、お
礼として、ピアノの演奏会が催されました。
最初は、緊張するので、スーと一緒に弾いてくれます。
2曲目、3曲目は、1人で弾きました。
6歳とは思えない、とても上手でした。
凄いですね。
最後に、スーがナンシーが作った新曲をピアノで弾いて、マイアー
様が歌を歌いながら踊ってくれました。
声がすごく綺麗です。
そしてダンスも上手かったです。
王様も、大変喜んでいました。
さすが、[音楽に愛されしもの]の称号付き
と王様に言ったら、なんだそれは?と聞かれ、称号について説明し
た。
王様からは、スキルに付く称号の事は、確かに文献で見たことは、
事例が少なく、
832
記載例も殆ど無いので、ホントか疑問なようです。
マリアは[聖女]が称号についてます。
スーは、[未来を見定めるもの]です。
人が呼んでいる剣王とか至宝の宝とは違う。
スキルに表示される称号は、ステータス補正や追加スキルがある。
どうやら、今の大神官様の鑑定では称号までは見れないらしい。
この世界の鑑定持ちでも、最高レベルは7ぐらいまでらしく、通常
鑑定と、私の上位鑑定の違いなのか、レベルの違いなのか、まだ分
かりません。
称号の事は解らないがそれはそれ、後で調べると言いながら、まず
は我が子の才能を喜んでました。
そして、誕生日会が無事に終わり今日は王城では無く、珍しくメル
ミーナ様の家に泊まりました。
今日の誕生日会は、エレノアとニーナも参加していました。
そして明日、とあるイベントの為、本日は王都の結構良い宿を予約
してあります。
リリアーナお母様と、クインさんヘイゼルさんにエレノア、ニーナ
が王都に泊まっています。
マイアー
風、音魔法が得意
称号
音楽に愛されしもの:
833
音楽の才能が飛びぬけている。
・奇跡の歌声
・絶対音感
834
5.29 公爵家令嬢
実は、エレノアとニーナが家を出ることに。
エレノアは、お嫁に行くことになりました。
伯爵家の庇護の下とはいえ、肝心の伯爵家は浮いたまま。
あまり強い権力は無い。
親が子爵家文官の立場では相手が侯爵家以上では手が出せない。
魔力の高いエレノアはあっという間に貴族のおっさんに囲われニー
ナは、養女に取られた。
チクショウ。
貴族なんて!!
なんてのは嘘です。
今日、メルミーナ様の養子になります。
どこから情報が漏れたのか非常に魔力が多い二人に、他の貴族から
養子縁組や婚約希望の申請が大量に届きました。
危うく冒頭の様になるところ。
最初はレイブリングさんの養子にして伯爵家令嬢にしようと言う話
がでましたが、養女の申し込みが侯爵家があったのであまり有効打
835
にならず。
しかしこの話をメルミーナ様が聞きつけ、二人は総魔力量が多いだ
けでなく頭も良い。
さすが学者ヘイゼルさんの子供。
メルミーナ様も気に入り、結局メルミーナ様の養子にする事になり
ました。
この話は出た途端にあっという間にまとまった。
そして決まるや1週間と言う僅かな期間で物事が動き出し。
2人は、子爵家令嬢から公爵家令嬢に。
で、今日は公爵家令嬢になるためメルミーナ様の家に来ています。
まずは、メルミーナ様に正式に挨拶。これからお父様になる人だ。
エレノアとニーナは、孫の年ですけど。
頭のはげた優しげなおじさんは、ファール・メルミーナ。
そして、3妃様の母親の、カトレア様。
3妃様がお年を召されるとこうなるのかやさしげな方です。
メルミーナ様の奥様は珍しく1人だけです。
金眼の家系では無いので本人達の意思が優先されたそうです。
今でも仲睦まじいおしどり夫婦。
カトレア様はエレノアのニーナの可愛さにメロメロ。
久しぶりに子供の世話が出来るとものすごく喜んでいる。
とりあえず、用意されていた服は決まってから日が無かったので急
836
遽用意した服です。
3妃アナ様を含め、公爵家の4女が昔着ていたドレスを、侍女とカ
トレア様が自ら加工してくださったそうです。
この対応にはメルミーナ様もびっくりしたそうです。
いきなり養女を迎えると言って反対されるかと思ったら、その喜び
ようと言ったらすごかったらしい。
2人は、用意されていたドレスに着替えて、戻ってきました。
なんてことでしょう。
元は、子爵家令嬢とは言え、私達の家に一緒に住んでいたので、リ
リアーナかあさまが伯爵家相当の服を買って着せていました。
なので、そこそこのご令嬢に見えるようにしてました。
しかし、今日は立派な公爵家令嬢に早代わり。
エレノア、ニーナは元が賢そうなしっかりとした顔つきなので、と
ても上品な感じがします。
うん、どう見ても公爵家令嬢。
さすがです。
服が華美ということもなく、どことなく気品もあり公爵家と言って
間違いない。
カトレア様もべた褒め。
メルミーナ様は、カトレア様が喜んでいるのが嬉しいのか、
始終にこやかでした。
エレノアとニーナは、今日からここに住むのかと言えばそうではあ
りません。
養女とは言え、保護のための養女の予定。本当の両親と別々に暮ら
837
したくは無い。
なので私が、13歳で学園に通うようになった時に、一緒に公爵家
に移動しここから学園に通うと言う話でした。
その時、エレノアは12歳で中学へ、ニーナは8歳で小学校へ行き
ます。
クインさん達も私と一緒に移動する予定でした。
それまでは、私の領地で令嬢教育は家庭教師が領地に移り勉強を行
う予定でした。
話し合いの時にカトレア様は、いませんでした。
そして、予定通りの行事は進む。
メルミーナ公爵家の筆頭執事長オブスレイと筆頭侍女長アマリリス
の夫婦が挨拶をされました。
3妃様からのお願いもあり、エリンの教育も含めて、我が家へ移動
してくるそうです。
それと別に、家庭教師との顔合わせもあります。
勉学の先生は3人。
そして、礼儀作法の先生が2人です。
マナーは、公爵家令嬢に相応しくなるよう、食事、歩き方、姿勢、
音楽、ダンスなど多岐に渡る指導があるそうです。
本日のお昼に、先生方も含め、一緒に食べました。
本日は、お箸ではなく、ナイフとフォークです。
実は、レイルーラおばあさまと、リリアーナかあさまの教育のおか
げで、
アメリ、私、エレノア、ニーナは、姿勢と食事のマナーは完璧だ。
夕食後に、マナーの先生から、とりあえず最大の課題が無いようで、
安心しましたと伝えられた。
それは良かった。
838
カトレア様は、できるだけ早くこちらに来てね
と言ってます。
4女のアナさまが、予定よりも早く王様と結婚し、最近は孫とたま
の触れ合いしかない、やはり自分の手元における子が良いのでしょ
うか。
あまりある母性が、子供を求めているようです。
やはりか。
あまりにカトレア様が要望するのでクインさんが根負けし、4月に
ジルベールがグランスラム帝国に遠征時は夫婦共に私に付いていく
事になりそうなので、その間は公爵家に移動してもらうことにした。
うーん、そのままなし崩し的に移動かもな。
そもそもクインさんは、メルミーナ様の部下だしな。
このまま、メルミーナ様に返すことになりそうだな。
とりあえずこの場ではその後については、グランスラムから戻って
から話し合うことになった。
そして、無事にそのまま帰ろうとしたらダンスを練習をさせられた。
なぜか私も。
やばい、最近昔ながらダンスはあまりやっていない。
エレノア、ニーナにいたっては皆無。
ダンスに関しては、残念と言われました。
3月の中旬に領地で、リリアーナかあさまと私が主催となっている
舞踏会が行われるそうで、10歳でも主催となるので、このダンス
ではダメと特訓を言い渡された。
839
リリアーナかあさまから春休みは、ハイルデン公爵家のオレリアン
様がレイブリングさんに特訓をしてもらいに来るが、一緒に母であ
るセルニア婦人が来ることになっていると言われていました。
その時に舞踏会をするとは聞いていた。
はー、まずいなー。
舞踏会をするとは聞いてたけど、私が出るとは知らなかった。
全員から、そんなの当たり前でしょという顔で見られ、常識だから
言われてないのねと反省。
そして、アメリが臨月なので、舞踏会には、アレクサンドロ公爵家
のルーナ婦人も来るそうな。
公爵家婦人が2人の揃うので、折角なので領地で始めての舞踏会を
開催する事にしたそうです。
この辺の話は、白虎王の探索前には決まっていた。
最近若い貴族が増えてきたが、田舎領地なのでたまにはそういうイ
ベントがないと出会いの場がないそうで、役場勤めの人たちからの
要望があったそうです。
ただし、会場がそれほど大きくないので二日に分けて、1日目、午
前中に子供達。
夕方から若手の独身貴族に限定した舞踏会、二日目に結婚後の人達
で集まります。
どちらも、100名ほどだそうです。
うちの領地、200人も貴族がいるんですかと聞いたら、既婚、独
身あわせて150名前後で50人は近隣の来る人を選んだそうです。
なるほど。
840
ふと、あれこれってエイミーも出るよな?
エイミーってダンスが出来るんだろうか?
これは、明日から私と特訓か?
まあ、相手がいるならまだましか。
頑張ろう。
841
5.30 王弟制度
先ほど、王が3人を王妃を王室に呼んだ。
私的な話をする時に3人の王妃を集めるが、普段はそれぞれの王妃
の部屋に王が来て話をする。
このように3人が揃って王室に集まるのは珍しい。
その場で王からジルベールが建国の王の生まれ変わりで間違いない
と言う話がありました。
証拠は、地下の歴代王の部屋に入れたということです。
私たちが婚姻後に特別な儀式をして初めて入れた部屋です。
王と王妃しか入れない部屋に入れたと言うことは、過去その儀式を
した事があるという証明になります。
その似姿からも可能性を疑ってはいましたが確証が取れたので、知
らせてくれたようです。
ただ、以前の建国王の時の記憶は無いと言う事も伝えました。
スザンヌとマリアについては、女神が関与しているので本人が言う
まで詮索しないようにと。
そして、両金眼のジルベールに王弟のプラチナキーを申請し3公爵
の承認も出たと言う事が伝えられました。
かつて、双子の王子が生まれた時にできた王弟制度だ。
双子の兄弟ともに優秀な王子で、どちらも王として十分な資格を持
っていた。
どちらを王にするかで国を分断する自体にもなりえたが、弟も王の
代わりとして同じ権利を有し、政治、外交、そして緊急時に王と同
じ権限を持てる制度。
842
王とは違うもう一人の王。
それが王弟制度。
その証明としてプラチナキーを持つ。
5代前に公爵家の出が王に代わったときも継承権1位王子に王弟の
役割を与え、プラチナキーが渡された。
﹁王、よろしいのですか?まだ10歳ですが。﹂と王妃方が。
﹁うむ、ジルベールの強さを考えると安易な行動の自重させる必要
もある。
キーを持っても持たなくてもあやつの行動は国に影響を及ぼす。
今回のようにな。
結果が出てからでは遅いのじゃ。
であるならばキーを持たせ、自分の行動が国を背負っていることを
自覚させなければならん。
そういう力を持っているだからな。﹂
国家レベルの力を持つジルベールのやることは成功すれば国として
の業績となる。
シドニアを攻撃しもし成功していなければそれはジルベールの失敗。
しかしそれをジルベール個人の責任とは言い切れない。
ラルクバッハ王国にもその責任を求める声は来たはずだ。
プラチナキーを持っていればそれはラルクバッハの王の判断として
正式な効力を持つ。
つまりは、行動すれば即それがラルクバッハ王国の意思と取られる。
失敗の責任を国が負うとなれば、今後、ジルベールはこのキーを持
っていることで、安易に国家レベルの問題に手を出さず余裕さえあ
れば王への報告がされるはずだ。
と、王、公爵、王妃達は期待をしているわけだ。
843
意図通りに行くかどうかは解らないが。
﹁では、王弟の部屋を解放ですね。暫く使っていなかったので中は
私が整えれば良いですか?﹂
と、1妃様が聞くと
﹁今回は、3妃に頼めるか。メルミーナ公爵家から幾つか移動させ
たいものがあるとメルミーナが言っておった。頼むぞ。﹂
﹁解りました。お父様に聞いて、用意いたします。﹂
﹁それとな、恐らくグランスラムの領地が返還され、わが国とシド
ニア両方の共同管理下に置かれるはずじゃ。
そこでアレクサンドロから進言じゃが、ジルベールの立場は既に隠
しきれぬから、早々に爵位を渡し成人扱いとし新しい領地を与えて
はどうかと言っておる。
前代の王弟は1代限りの公爵位で、領地は無かった。
今回のジルベールだが、爵位を与える場合公爵位でなければいろい
ろと都合が悪い。
新たな管理地も増えるので、公爵家を新たに作るかもしれん。
この場合、メルミーナの後継がマックになるだろう。
それとジルベールに爵位を与えた場合は、ジルベールが両金眼であ
る事も表明しようと思っておる。
もう隠せそうに無いし、十分に育っておるから隠す必要も無かろう。
もともとメルミーナも10歳前後で秘密を明かす予定じゃったそう
だ。これはメルミーナと相談中じゃが。
まだいろいろと細かい点が決まっておらぬで、秘密にしておくよう
にな。
ジルベールとマックに内政の教育が必要じゃ。
メルミーナは国内で探しておるが、分野が多く人材が見つからん、
844
1妃、2妃には伝を使って外から教師を探して欲しい。
どの分野を探すかはメルミーナに聞いてくれ。
では、頼んだぞ。﹂
﹁﹁﹁お任せ下さい。﹂﹂﹂
と言うことで、この場は終わり。
なにも知らないジルベールは、次の日王から王家の印が入った秘宝
の付いた豪華な短剣つまりプラチナキーを貰った。
その場で自分の行動が国としての責任を問われる行動になると聞か
された。
そしてそれを意識するためにキーを渡すと。
これで正式に緊急時は王としての効果を発揮するので、安易な行動
だけは取らないように厳重に注意を受けた。
責任が重くなったのかと、びびりながらキーを受け取った。
また王城に新しく専用の部屋が出来るのでそこもこのキーで開くと
聞いた。
私の新しい部屋は魔法を使えるようになるそうです。
どんな効果があるか聞いてませんが、昔使われたメルミーナ様の家
にある幾つかの仕かけも移動して設置されるそうです。
王弟については、現状は王妃と3公爵しか知らないのでむやみに公
言をするなと止められました。
発表は、3月末になる。色々と詳細を決めているのでそれらを全て
決めてから公にする。
それまでは、内定だと思ってくれ。
845
鍵の種類はプラチナ、ゴールド、シルバー、ブロンズの4種類があ
る。
プラチナキー:王または王弟の私室の鍵。短剣型の宝剣。
王家の秘宝が入った物で、2本しかない。
ゴールドキー:王妃の部屋や、金庫などの部屋。
シルバーキー:王の子など特定の部屋。
ブロンズキー:侍女の部屋や、書庫など。
その日、部屋に行くと今日はエリンが担当だった。
そしてフィリップ王子からの面会の要請があると。
せっかくエリンに会えたのに邪魔をするとは。
とりあえず会うと連絡してもらう。
すぐにフィリップ王子が来た。
エリンは、お茶を用意してくれ遠くに行こうとしたので、
フィリップ王子に、近くにいても良いか聞いたらOKだったので隣
に座ってもらった。
フィリップ王子から出た言葉が、
﹁エレノアとニーナがメルミーナ様の養女になったと聞いたが、本
当か。﹂
﹁王妃様から聞いたのですか?
その話は、本当ですよ。
マイアー王女の誕生日の次に日に養子の契約をしました。
契約が結ばれるまでは秘密だったので事前には伝えてませんでした
ね。﹂
﹁ああ、それでエレノアなんだが、..... 近いうちに会えな
いかな。﹂
﹁シュミット様の誕生日会に呼んでありますのでそこで会えますよ。
王様から、エレノアとニーナがメルミーナ様の養女になった事を発
846
表してくれる事になっています。﹂
﹁そうか、そうか。解った。えっと彼女になにかプレゼントしたい
けど、何をあげると喜ぶかな﹂
﹁え、ケーキは好きだけど、聞いてることは違うのですよね。
うーん。普段、そんな種類の会話してないから解らないな。
庭に咲いた花をたまに取ってきて上げますが大体何でも喜びますけ
ど。
どんな花が好きかとか色とかまでで気にしたこと無いな。﹂
と困っていると、
﹁失礼ですが、話の途中でよろしいでしょうか。﹂
とエリンが。
﹁あ、良いよ。どうしたの﹂
﹁エレノアお嬢様には、ジルベール様からの公爵家養子のお祝いと
して既に幾つか頼んだものがあります。
リリアーナ様からお手紙を貰い、既に商品は手配済みです。
そこから一つおわけしてはどうでしょうか。
帽子は複数個頼んでいますので、フィリップ王子様に一つお譲りし
ても問題ありません。
それと、購入はしませんでしたがエレノアお嬢様に似合いそうなネ
ックレスを選んであります。必要ならばそれを手配します。﹂
﹁おー、さすがエリン。﹂
と頭をなでなで。
喜んでるエリンちゃん。
﹁良いのかジルベール。﹂
﹁もちろん、じゃあそれで良いかな。エレノアも喜ぶと思うよ。﹂
﹁そうかな。うん。良かった安心したよ。﹂
と、本当に安心した顔をするフィリップ王子を見て、
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﹁うん、ところでさ、なんでエレノアにプレゼントするのかちょっ
と話してくれないかな?﹂
と、真意を聞き出そうと突っ込む。
すると、
﹁あ、うん。
えっと、その。﹂
﹁うん、うん﹂
﹁えっと、やっぱりクリシュナよりエレノアの事が好きなんだよ。﹂
と思い切って言ってくれました。
﹁そうか、それでか﹂
﹁良いだろ。前は、お前も身分が違うと言ってたけどそれはクリシ
ュナと条件が一緒になった。
エレニアは、魔力も高いし周りからは文句もでないだろ。﹂
﹁うーん、兄として一緒にいた立場からは、王の妻は苦労しそうで
素直に応援するとは言えないけど。
結局本人次第だからね。エレノアがフィリップ王子の事を好きなら、
応援するよ。頑張って。﹂
﹁ああ、今度の誕生会で頑張るよ。﹂
と、用事の終わった王子をさっさと部屋から追い出した。
そして久しぶりにあったエリンとお話。
さっき、王弟になっちゃたと話したら驚いていた。
エリンの教育が増えるかも知れない。
ごめんね。って謝ったら、尊敬するジルベール様の為に頑張ります
って。
848
頑張り過ぎなくても良いからね。
寝る前に、魔力操作の練習は2人でやりました。
そして、特殊召還で魔力を使いきり、ではおやすみなさい。
849
5.31 領地の採用面接
本日は、3月1日。
この国では、2月の中旬に進学する大学の入学試験や、王城内の文
官の採用試験がありすでに合否が公開されている。
文官はその試験結果によってすぐに働く一般文官と、優秀な人だけ
が進む政治・経済学を教える大学コースに分かれる。
本日は、各領地で働く人を募集をする日だ。
領主館で働く文官や、自警団、領主直営の様々な仕事に就く。
昨年まで、我が家の領地で働く人は、リリアーナおかあさまが行く
こともできず代理人をたてて募集をしていた。
王都近くの領地以外は、通常代理人を使って募集する。
領地で働く人は、現地採用が8割から9割。
我が家の領地はさらに応募率が低く、王都採用は2,3年に1人ぐ
らいだった。
しかし今年は私の転移魔法もあるので、リリアーナおかあさまと一
緒に直接面接をしようと言うことになった。
もちろん事前に募集用件は出してある。
枠は、最大限で300名。
いつも2,3年に1人しか来ないのに、300名。
大恥もいいところの募集数。
でも、現実人が足りないのです。
850
領地は急速に発達しています。
近隣からの農民の移動も多く、周辺で仕事のない人達が沢山集まっ
てきています。
現状労働者は増えるが管理者が足りない。
領地が遠いので王都採用は無理だろうと言うのは解ってはいますが、
今年は領地で働くだけではなくそのうちの100名は王都で働くと
記載したので、かなり期待している。
会場は、募集をかけている全領主が集まる国の施設です。
公営のホールに各領主ごとにブースを作り、その場で面談して決め
るのです。
現代のリクルート説明会のイメージが近い。
当然ですが、3公爵家がもっとも人気が高く、最大のブースが用意
されています。
我々の様に、小さな領地は、当然ですが小さなブースでした。
今までは代理人が1日に、2,3人来る人を歓迎し、面接していま
した。
今年は、少し大きめのブースにしてもらうように事前申請してあり
ます。
この日、私とお母様、執事のトシアキで、少し早めに出かけました。
そこで、会場の設置などを行う予定でした。
会場近くに馬車止めに着き、歩いて会場へ向かいます。
なんとまあ、長蛇の列ができています。
きっとこの列が公爵家なのでしょう。
お母様とすごいねーと感心していました。
851
開く前から、こんなに並んでいる所もあるんですね。
と言いながら会場に入ろうとすると、
その長蛇の列から﹁リリアーナ様、ジルベール様﹂と声をかけてく
る青年が。
見ると、なんと懐かしのジャックでした。
近くに行って、
﹁すごく久しぶりです。高校卒業なんですね。おめでとうございま
す。
そして、こんな長蛇の列で並んで、どこを狙ってるんですか?﹂と
聞くと。
﹁何言ってるんですか、これ全部クロスロード領地の募集ですよ。
私はもちろん、ジルベール様の所に戻るに決まってるじゃないです
か﹂と。
え。
お母様と2人で驚く。
なにこれ、だって1000人以上いませんか?
﹁王女2人と婚約し、王都にも沢山の店を出店、飛ぶ鳥を落とす勢
いの今年一番人気がクロスロード領ですよ。
幼馴染って事で、合格が欲しいところですが、ずるせずに実力で受
かろうとちゃんと並びに来たら、予想以上で。
夜中に来たのに、私でも半分ぐらいの位置ですよ﹂
えええ! 夜中!!!
おかあさまと、どうします?
とりあえず先頭を目指して移動すると、メルミーナ様の部下の方が、
昨日の夕方の準備中から既に並ばれていたので、夜の間にブースを
急遽変更したと。
852
最大級のところが使えると伝えられました。
さっと、場所を確認し、おかあさまは準備を開始。
私は待ちっている列の一番前を確認。
すると、いきなり、先頭の人が、
﹁あんたがジルベールか﹂と、身長が190cmはある、体も普通
の人の2倍ほどと、非常に良い体つきだ。
いかつい顔で、怒っているのか、普通の人ならビビッて逃げ出すで
と頭のなかで響いてしまう。
あろうタイプだ。
ゴンザレス
そんな名前がぴったりな残念青年。
周りは騒然となる。
とりあえず、本人と伝える。
すると、
﹁俺は、学園のスザンヌ様親衛隊の会長だ。
よくもお前みたいなへなちょこが、スザンヌ様を娶るなど、ゆせん。
天誅だー﹂といきなり殴ってきた。
もちろん、そんな攻撃は余裕なわけで、殴ってきた手をつかみ、一
本背負いで吹っ飛ばす。
おー などと感嘆の声が上がる。
周りを見回すが、他に襲ってくる人はいない感じだ。
結構打たれ強いらしく、ゴンザレスは、1分ほど立つと、立ち上が
って、私の前に土下座で、
﹁すまない、どうしてもスザンヌ様の婚約者を試したかった。
あんたに仕えれば、スザンヌ様の幸せに繋がるんだろ、ぜひ働かせ
853
てくれ﹂と土下座のままで言ってきた。
私は、鑑定を使って名前を調べることすらせず、勝手に名前を付け
直した。
﹁解った、その代わりお前は、ゴンザレスと名乗れ、そして、今、
この瞬間から仕事を言い渡すので、一生懸命働け﹂と言うと、
﹁ゴンザレスですか? なぜゴンザレスなのでしょうか?お聞きし
てもよろしいでしょうか﹂と聞いてきた。
周りからは、ぷぷ と笑い声も聞こえるが、そんなものは無視。
﹁イメージだ。もう俺の中でお前のイメージはゴンザレスで決まっ
た。それ以外に覆ることは無い。それに、私の元で働くなら、
私に襲い掛かかり、負けた時の名前など、必要ないだろ﹂
﹁解りました。私、ゴンザレスは、この時より貴方様の部下となり、
スザンヌ様の幸せの為に働きます﹂
﹁よし、じゃあ、まずはここから走って最後尾まで行って、似顔絵
が書ける人と声をかけて、こっちに連れて来い﹂
すると、ゴンザレスはすぐ探し始めた。
そして、私は、その辺の見目の良い女子を鑑定で調べ、文字が書け
る数名を選び、ジャックを連れて会場に入る。
ゴンザレスが、10名ほどの似顔絵を書く人を連れてきたので、絵
を描かせる。
3名ほどが早くて、特徴を性格につかんでいた。そして2名は少し
遅い。
854
5名は、とりあえず来た感じだ。
8人を1セットとして、先に書類を書いてもらう。
その紙の裏に、似顔絵を描き、絵を持って中に入ってもらう。
8人に、鑑定を使いながら、私が持っているスキルを記載し、面談
で何をやりたいか聞き取る。
やりたいことにあわせて、持っているスキルから仕事内容を提案す
る。
一致すれば採用。そうでなければ不合格。
8名で5分程度。
ちなみに面接中、ゴンザレスは常に私とかあさまの後ろに、腕組み
をして立っている。
ゴンザレスの足元に石が置いてあり、私が魔力で動かすと、指示し
た人を睨むようになっている。
睨んだ相手に、場合によっては私が威圧を発動させる。
脅された側は、全部ゴンザレス君がやったと勘違いする。ビビッて、
もめずに出て行ってくれるので便利だ。
ゴンザレスは、護衛のつもりでしっかりと立ってくれてる。
残念男子だが、まじめな男だった。
それでも、10時間かけて、半分ぐらいしか終らなかった。
事前に進む時間で、おおよその面接時間がわかるので、確実に明日
のなる人は、整理券を貰って帰ってもらった。
時間ぎりぎりの人は、その日の夕方までは別の場所で待機してもら
った。
そうやって二日に渡って面接を行い、ゴンザレスやジャックを含め、
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500名を採用した。
結局半分近くに合格を出した。
ここから、実際に来るのは少し減るはずだ。
予定は、300名だが、採用した500人が全員来るわけがない。
彼らは、別の領主館を受ける人もいるのだ。
合格を出した人々は、最終希望を2週間以内に確認し、指定期日ま
でに領地へ来てもらう。
ゴンザレスも、一度家に帰り、支度をしてから領地を目指す。
ちなみに、ゴンザレスは、本名と言うそうだ。
男爵家の長男だ。
名前は超かっこ良いが、はっきりいって残念男子。
どうみてもゴンザレス。
ゴンザレス意外に、別名をつけるとすると熊。︵はげてはいない︶
元は騎士志望だったようだ。
あれで文官希望だったら、回りの同僚が泣き喚くだろう。
領地に行ったら、レイブリングさんのチームに入ってもらい鍛えて
もらおう。
主に私、専属の威圧係りとして頑張ってもらおう。
ちなみに、後で鑑定をしたら、名前がカルロス・ゴンザレス・ザハス
とミドルネームにゴンザレスが入っていた。
鑑定、不思議だ。
二日間の面接ラッシュは、何事も無く、順調に終わった。
残念ながら、メリーナ様の加護中を持った人は、今日の面接の中に
は、含まれなかった。
今回は新人募集だったので、なにかの経験がある人は少なかった。
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殆どが、今年大学を卒業する人と、高校を卒業する人だった。
経験者とは今働いているわけだ、やはり今の生活を捨てて、領地も
異動を希望する人は少ない。
王都は、地方に比べれば住みやすい。
そうなると、経験者は、ほぼ、王都で働くことを希望する人となる
のも納得だ。
それでも、魔法大学を出たばかりの魔法が使える新人が結構いた。
即使えそうな人が、10名前後、少し優秀そうなのが、20名ほど
いた。
これで、魔道具作製の生産量を増やせそうだ。
種類も増やしたい。
作りたい道具も沢山あった。
人が増えたので、いろいろ作れそうだが、初めは魔力操作の訓練を
してレベルを上げ、
総魔力量も増やさなければいけない。
今は、時空魔法を使える3人を優先的に鍛えている。
同時に幾つもはできないので、順番に、あせらず、丁寧に鍛えよう。
。
857
5.32 シュミット王女のお誕生日
3月3日
本日、シュミット王女の誕生日会です。
この誕生日会は、メルミーナ公爵家で行われています。
シュミット様の同年齢のちっちゃい子供達も沢山いますが、サフィ
ーナ様も含め知り合いが多数います。
冒頭、王様からシュミット様の誕生日の祝いの言葉があり、シュミ
ット様からの挨拶がありました。
本日のシュミット様は人形の様にかわいらしい衣装で、皆からも誉
められています。
つづいてメルミーナ様から、エレノアとニーナがメルミーナ様の養
女になったと紹介があった。
私は、まずシュミット様の所に行って誕生日プレゼントを渡します。
守護精霊のペットとなっていますが、今日はそれとは別に花束とぬ
いぐるみに、マイヤー様とおそろいの髪飾り、マリアとセットのイ
ヤリングをプレゼントしました。
髪飾りは虫除け付の魔法がついてます。
イヤリングには魔法の効果はありません。
シュミット様は、頂いたプレンゼントに対して全員に丁寧なお礼を
言われてます。
幸せそうな顔を見るとこちらの幸福度も上がります。
その後でエレノアとニーナのところに行って身内ですがあらためて、
おめでとうと伝え用意していたプレゼントを渡しました。
858
その後カトレア様が孫であるシュミット様を抱いて、エレノアをニ
ーナを皆に紹介に回っていた。
今日は準主賓として紹介があることが事前に王様から連絡が回って
いたので、2人のドレスもシュミット様と同クラスの結構すごいも
のを用意していた。
︵メルミーナ様が用意すると言ったが、クロスロード家から費用を
出したそうだ。
リリアーナかあさまが、私がそういうだろうとく、メルミーナ様
と交渉してくれた。︶
王様と話をしていたら、いつもの通りシュミットは嫁にやらんぞと
言われました。
ああ、漫才のネタ探し忘れてた。
﹁マイアー様のピアノが上手でしたが、シュミット様はまだ封印さ
れて使えないけど、鑑定、索敵、隠密の能力。
初めて見た思考分析と精霊召還のスキルと盛りだくさんで将来が楽
しみですね﹂
と言ったら王様が固まってしまった。
王妃様が近くに来て、王様どうしたのと?
ふと我に返った王様がジルベール今の話は本当かお主鑑定で見えて
いるのか?
そして王妃様と話し込む。
3妃様がものすごく喜んでいた。
もっと早く教えておけば良かったかな。
どうやら封印状態だったので、大神官様の鑑定では見れていなかっ
たらしい。
859
そうだったのか。
魔力はたまの練習で少しづつ増やしているが、大人になるまでに頑
張ればかなりの能力者になるのだろうな。
これが普通の貴族だったら、ものすごい大事件だろう。
でも、既に王家の王女。
どこかの養女になるわけではないし、簡単に誘拐もされない。
守られた立場だから、ゆっくりと育ってくれれば特に問題は無い。
スーとマリアが、王様が騒いでいたのに気がついてこちらに来た。
2人にもシュミット様のスキルの話をした。
スーとマリアには、シュミット様のスペックが高すぎるから、もし
かしたら転生者でまだ記憶が覚醒していない状態かも知れないと伝
えた。
マリアが覚醒したのは5歳の時。
私は、生まれた頃から覚醒していたけどそれは特殊。
覚醒すると魔法の封印が解かれる。
転生者は生まれる前にスキルを与えられるが覚醒前は封印されてい
る。
なので、シュミット様も転生者である可能性が高いことを伝えてお
きました。
メリーナ様に聞けば解るのだろうが、何でもかんでも神様に聞くの
も失礼だろう。
早めに知ったところで何か出来るわけでもない。
これは待つだけで良い。
マリアも、覚醒した時は少しの間記憶混乱が起きたそうだ。
今回は、マリアが居るから覚醒の症状がでたら、マリア、スーで対
応したほうが良いと。
860
マイアーもそうなのと聞かれたけど、称号つきと言うだけで後の能
力は高くなく、魔法も封印されていないから精霊が好んで称号をつ
けただけかも知れないと答えました。
そして、周りを見渡すと変なイベントが発生していた。
フィリップ王子が、エレノアにプレゼントを渡そうとしている。
さっき、フィリップ王子が綺麗に着飾ったエレノアを誘って二人で
庭に出た。
私とスー、マリアでこっそり移動。
後ろをこっそり付けてます。
私達を見かけて、1妃様も後ろに付いてきたので4人に防音魔法を
かけて隠れてます。
最近習得した、気配隠蔽も全開で発動。
光魔法で、障壁を作りあちらから見難くする。
絶対ばれないぜこれ。
そして、さらに音魔法であちらの声をこちらに大きくしちゃってま
す。
全部筒抜け。
ばれたら怒られそう。
いや、ばれないから大丈夫だろう。
完全犯罪は、OKなのだ。
さて、庭に出てフィリップ王が、公爵令嬢になった事のお祝いを言
っている。
861
そして、フィリップ王子が持っているマジックバックから花束を取
り出して渡す。
エレノアは、ありがとうございますと。
お、にっこり笑って結構良い感じじゃないか。
そして王子がネックレスを取り出して渡す。
さらにそれをつけてあげてる。
今日のドレスにも合うね。って言ってるが、そりゃエリンが選んだ
んだから似合うでしょ。
帽子を渡す。
外だから、丁度良いとかぶる。
エレノアが好きな色の帽子だったみたいで喜んでるよ。
﹁こんな、お姫様みたいなことをされると勘違いしちゃいますよ﹂
って。
それって何、フィリップの事OKって事?
﹁今だ、行けフィリップ﹂ と大きな声援が。 あこれは1妃様ね。
防音魔法で聞こえないって安心して声大きすぎです。
﹁エレノア、あの、良かったら僕と、その﹂
﹁はい、なんでしょうか?﹂
﹁あ、と、と、ともだち、そう、ともだちになってくれないかな﹂
こける王妃様
﹁ええ、もちろん、私でよければ、でも私はまだ、王都には住んで
いませんよ。
ジルベール様がシドニアに行かれている間の4月と5月は王都にい
ますが、
フィリップ様もその時はシドニアに行かれるんですよね﹂
﹁ああ、4月はシドニアだけど、5月の途中で帰ってくるんだ。戻
ったらまた会えないかな﹂
﹁そうですか。
862
でも私の生みの父と母は、ジルベール様に雇われています。
今は、生みの父と母と住んでも良いと言われているので、まだ王
都から遠いところに住んでいます。
その友達といっても、ジルベール様に頼まないとなかなか会えま
せんけどそのような感じでよろしいでしょうか?﹂
﹁ああ、良いよ私も会いに行くから。夏休みも必ず行くよ。だから
もっと仲良くなりたいんだ﹂
−−−−ジルベール側では
﹁なに言ってるのフィリップ。ちゃんと伝えないと﹂ これはスー。
﹁ああ、へたれが出た、またへたれが﹂ これは1妃様。
﹁しょうがないですよ、お兄様の良いところがそこですから﹂ と
マリア。
−−−−エレノア、フィリップ側に戻る。
﹁はい。では、またレイブリング様に指導を受けられる時に会えま
すね﹂
﹁そうだね、うん、その時また沢山話をしよう。とりあえず友達に
なれて良かった。そろそろ戻ろうか﹂
と、エレノアの手を繋いで戻る二人。
−−−−ジルベール側では
﹁友達程度になっただけで、なんでエレノアの手を握ってるんだフ
ィリップ。!!﹂
と私が叫びながら、見つからないように慌てて戻る4人。
移動しながら、
1妃様が﹁あれだけ侍女つけて女なれさせたと思ったのに告白もで
きずに友達か﹂
﹁王妃様、そろろそ防音魔法解きますから普通に戻ってくださいね﹂
863
﹁ああ、ジルベール、解ったわ﹂
﹁最近、1妃様の素が見れる時が増えてきましたね。家族扱いして
もらっているみたいで嬉しいです﹂
﹁ジルベールはもう家族よ。愛してるわ!﹂
﹁愛してるって、うーん。 とりあえず防音魔法解きますよ﹂
部屋に戻り、 ﹁ふふふ。ではね﹂
と言って、1妃様は、いつもの王妃様に戻って王様の所に向かって
行った。
さて、そのまま3人で話をする。
﹁フィリップ王子に先は長そうだね﹂
﹁﹁そうですねー﹂﹂とスーとマリアが。
﹁ところで、ジルベール様、カルロス・ザハスを投げ飛ばしたって
聞いたけどホントなの﹂
﹁カルロス? だれそれ﹂
﹁え、ほら自称、私の親衛隊会長って言ってた人よ﹂
﹁ああ、ゴンザレスの事か﹂
﹁え、ゴンザレス?﹂
﹁うん、どう見てもゴンザレスでしょ。カルロスって名前かっこよ
すぎだしそれじゃ覚えられないよ。
それに、あれ、いきなり私に殴りかかってきたからね。まあゴンザ
レスで丁度良いんだよ﹂
﹁あはは、それでゴンザレス。良いわそれ。確かにあれはゴンザレ
スって顔ね。不器用だし﹂
とスザンヌが笑っている。
笑い声を聞いてアナスタシア様が近づいてきて、親衛隊について教
えてくれた。
864
現在、学園では、サフィーナ親衛隊と、スザンヌ親衛隊が2大派閥
と言われている。
実際には、殆どの人が重なって入ってるらしい。
まあ、2人とも似てるしね。
もう一つ、リリア派と言う派閥があるらしい。リリアは、伯爵家の
子女。
見目は良いかわいこぶりっこで、いつ、男性と一緒にいて、婚約者
がいる男子にも声をかけるらしく女子から嫌われているらしい。
1年の時は淑女で大人しい子だったらしいけど、途中から急に変わ
って変な痛い子になったらしい。
その辺の情報を伝えてくれたところで、アナスタシア様は別の方に
呼ばれてそちらに行った。
残された、私、スーにマリア。
マリアが﹁恋愛ゲームのハーレムコースを実践するヒロインみたい
ですね﹂と。
﹁恋愛ゲームって何?﹂とスーが聞くと、
マリアがあわわと慌てたので、私が
﹁恋愛小説みたな物ですよ﹂と説明した。
﹁そうです﹂と言って、
ハーレムルートと呼ばれる沢山の男性を攻略し、最後に王子を捕ま
える恋愛のお話に似ていると説明してくれた。
そして、もしかしたら転生者かも知れないと言う話になった。
機会があれば、私に見て欲しいが、あの女に近づけたくないなーと
言っていた。
その話の後で、サフィーナ様がこちらに来て、スーと話をしていた。
865
先ほどのリリアを呼び出そうと言うことになり、3月の中旬に年下
を愛でる会と称して、
女子を集めようと盛り上がった。
当然だが、年下で呼ばれるのは私とフィリップ王子だ。
スーが、フィリップ王子を呼んで、同じ年のかっこいい年下男子を
集めるように言われていた。
まあ、行けば良いだけだしそんなに問題ないだろ。
アレクサンドロ公爵家の庭に、梅の木があり、毎年綺麗に咲くので
梅を見るためのお茶会が開かれるそうだ。
早速準備をしますね。
私も、その季節用の服を持っていなかったので作らないといけない。
エリンに頼んで作ってもらおうかなと言ったら、フィリップ王子が
私の分もおそろいで作って欲しいと言われ、結局それを聞いてスー
が全員同じにすればと。
と言うことで、サイズは店に測ってもらい、服自体はエリンが選ん
で店に内容を伝えることになった。
まあ、何とかなるでしょ。
一通り話が終った後で、カトレア様から主役のシュミット様が開放
されていたので、そこへ行き少しお相手をして今日は王城に泊まっ
た。
866
5.33 シドニアへの戦後処理情報
夜、王に呼ばれて王室に言った。
ルカ王子とフィリップ王子がいました。
シドニア王国とグランスラム帝国の戦後処理の内容がほぼ決まり調
印の日取りが決まったそうです。
総責任者は、サフィーナ様の父アレクサンドロ公爵。
行くメンバーは、護衛として精鋭200名。
それに復旧支援部隊を足して合計1000人が行きます。
アレクサンドロ公爵は、彼らを引き連れて既にシドニアに向けて出
発しています。
人数が多いので、補給などを含めるとシドニア到着が1ヵ月後。
そこからグランスラム帝国のセブルクと言う5万都市に4月15日
に到着します。
ここで、他国も含め部隊を一旦集めます。
4月20日が調印日。
私達は、4月7日までに転移でシドニアに移動し、セブルクに向か
いアレクサンドロ公爵達と合流します。
そこから2,3日で着くクループと言う軍事都市に行くそうです。
調印日の2日前に到着予定で結構ぎりぎりの日程。
クループは、グランスラム帝国からシドニアいに一番近い大きな基
地です。
できれば、早めに出発する。
この日程は、アメリの子供が産まれるのを待つギリギリの日程らし
867
い。
王様、気を利かせてますね。
他国も既に出発している。
アルフォンス王国、エルドラ王国から兵が出ている。
今日は、3月3日。
で、ここに呼ばれた3人は、転移移動組みです。
フィリップ王子は、そのままシドニアを1ヶ月間視察し帰りは馬車
で帰ってきます。
シドニアから、ラルクバッハの国内を含め視察をしながら5月中ま
でに戻ってくる。
今回グランスラム帝国から奪い取った領地は、過去シドニア領地だ
った地域を含め大きくなりました。
いや、現段階ではなる予定です。
私とルカ王子は、交渉後もグランスラム帝国から譲渡予定の地を巡
り食料の支給や、農業指導を行います。
王様が手配中なのが30名の農業学者。
現在ヘイゼルさんが、新しい種の育て方を教えています。
農業学者の人は、このまま5年間貸してくれます。
あとは、本人希望があれば残っても良いそうです。
もちろん、途中で希望があれば家族を呼ぶ事もできるそうです。
途中の調印の期間を含めルカ王子とは、5月中ぐらいまで一緒に回
ります。
そのぐらいで、一旦ルカ王子と一緒に帰ります。
私に爵位を与える話もあるし、爵位が無い場合の領地経営権を誰に
やらせるかなど、詳細が決まるのはもう少し後になるそうです。
最後の細かい所は現地と打ち合わせになる。
868
新領地の大きな都市は、3つ。
担当行政官は教えてもらいました。
3大都市を管理する行政官のところには、転移ボックスを渡してあ
るそうなので、
手紙でやり取りすれば良いらしいです。
シーラリア:ミレール・サイファト子爵
セブルク:クロード・リンファット子爵
ラブルク:ナタン・クリスケット子爵
ミレールさんは、前回シドニアの行った時に御世話になった人です。
後の人も、王城で紹介された人ですね。顔と名前は一致しませんけ
ど確かにいたな。
彼らの現地入りは、3月末までに着くように移動を開始するそうで
す。
竜の解放についてはグランスラム側がなかなか許可を出さない。
現状の講和条件に入っていないので現地で調整します。
これは主に私の仕事になる。
﹁では、ルカ、ジルベールが無茶をしないようにちゃんと見てくれ
よ﹂
﹁はい﹂
と、そんな感じのやり取りがあった。
やっぱり私の信用はあまりないらしい。
まあ、そんなものか。
アメリの子供が生まれてから行けると良いな。
869
5.34 王城に温泉を︵前書き︶
閑話?
平和な話を入れときました。
ジルベール君は、温泉好きです。
870
5.34 王城に温泉を
私の部屋がお城の中に出来るらしいので、温泉を引こうかなと思っ
てます。
このお城には主塔と副塔の二つがあります。
主塔は王様の部屋に王妃部屋。
王太子と后の部屋。
そして子供達の部屋。
謁見の間に、その他交渉用の部屋や応接室。
全ての用事が主塔で行われていました。
副塔は、王弟の部屋とその后の部屋それに子供部屋が幾つか。
最近は、物置になっていたそうです。
主塔と副塔を繋ぐ建物に食堂など様々な部屋と、侍女の部屋、共同
風呂や、金庫、図書館などが揃っています。
私の部屋は副塔に用意されます。
そして副塔の改造が始ろうとしていました。
私の領地にある館は温泉を引き込んでいます。
私が住むならやはり温泉が外せません。
そこで王様に、温泉を掘っても良いか聞いて見ました。
こんなところで温泉は出ないぞと言われましたが、水龍王イシスの
871
力を使えば以前の限界だった500mを軽く超え、2000mまで
掘れちゃいます。
私の現代知識では、温泉がなさそうなところでも、1500∼20
00m掘れば、かなりの確立で温泉が出るはず。
それに、イシスが出そうなところは解ると言っていたし、大丈夫で
しょう。
王様からは許可が貰え、温泉が出たら王城内に引いてもらうことに
しました。
さて、忙しいスケジュールの隙間ちょうどこの二日間が空いてる。
今出さなければ工事予定に入らない。頑張って出そう。
現在の王城で使っている井戸に変な水が混じってはいけないので、
そこから少し離れたところで、掘削を開始。
もちろん、イシスが、この辺が出そうと言ったところを掘ってます。
ここは、王城から200mぐらい離れてます。
工事開始前に王宮の施設長には許可を貰いました。
もう少し行くと、王様が引退した時に住む離宮があります。
現在、王様の家族は皆亡くなってしまったので使われていません。
場所的には王城と離宮の真ん中ぐらい。
将来的に現在の王様が離宮に移動してもここから引っ張っていけま
す。
とりあえず掘り進めました。
500mまでは順調です。
神石もありますし、以前よりも魔法力が上がっていますので大丈夫
です。
予想通り500mでは温泉は出ませんでした。
872
途中までは、2系統を掘り進め冷たい地下水が出たところで片側は
水用として掘るのを停止。
もう片方に集中します。
掘った穴の回りはガラス化した物質で囲んでいきます。
掘り進めること二日。
以前は500m掘るのに数日かかりましたが今回は早い。
さすが聖獣様。イシスはすばらしい。
1700mで出ました。
出た直後は20mほど吹き上がり、ちょっとした観光名所になりそ
うなぐらいでした。
弱アルカリ性の温泉です。
温度も60∼70度ぐらいあります。
王城まで引いても、十分な温度が確保されます。
お風呂には楽勝で使える。
温泉卵はできないかな。
王様に温泉が出たと伝えたら、すぐに文官の温泉博士が来て成分を
調べ使えると許可がでました。
いるんだな、温泉博士。
とりあえず出たのだから入ってみる。
急遽、その場に風呂がまを作り上げ地下水で温度をあわせて仮説風
呂を作り上げる。
お風呂は、直系5mぐらいの結構な大きさ。
その周りを垂れ幕で囲っただけ。
873
王様と、王子3人と私が入れるぐらいの大きさは十分にあるので、
みんなでお風呂に入りました。
まだ、3月で少し寒いのですが、温泉でぽかぽか。
侍女が着替えなども用意してくれてたから、外でも特に問題はあり
ませんでした。
温泉は、良かった。
夜に、見張り番を交代で立てて、こっそり侍女達が入っていたらし
い。
肌がつるつるになったと、良い評判だった。
次の日に水周りを設計してくれる人と会って湯量と圧力が足りるか
確認し、温泉と部屋の床暖房について打ち合わせした。
床暖房を見たことが無いらしく、途中で私の家に戻り設備を見せた。
設備を理解し、再度現地確認。
私の掘った温泉は、穴の大きさも大きかったので水量的にも圧力的
にも十分らしい。
圧力は水魔法の応用で少し高めに出来るらしく足りない時は魔法で
調整するそうです。
現在の井戸水もそうやって王城内に水をめぐらせているそうです。
常時魔法使いが待機する王城ならではの設備です。
新しい地下水の方も、現在の井戸水より圧力高く水質も良いので、
現在の井戸水と入れ替えると言ってました。
結構深く掘ったので外の影響はあまり受けません、夏冬通して20
度前後の温度になるはずだそうだ。
領主館と同じく、夏の冷房に使える。
とりあえず、副塔の王弟部屋と后部屋の二つを床暖房に、南側の壁
874
は井戸水で冷やした水が巡回できるようにしてもらいました。
温泉用のパイプは、私の領地で改良したガラスをコーティングした
パイプを使ってもらいます。
主塔は大幅な改造を計画していないので、主塔の温泉と床暖房は別
の時にやるそうです。
今回は、王弟側と中央部に共同風呂に作る。
床暖房を領地の家に採用する時、工事の人は何も言わなかったので
普通の設備と思っていましたが、実はこの世界では新しいシステム
だったらしく、完成後に王様に見せて驚かせると言ってました。
この工事は秘密裏に行うと言ってました。
なので、完成までは秘密。
王妃様にも内緒。
875
5.35 エリンの研修終了︵前書き︶
ついに、エリンちゃんの研修終了
876
5.35 エリンの研修終了
約束どおり1ヶ月を過ぎ、ちょっと延長の後
今日、エリンの研修が終わったので、お迎えに行きました。
いままで王城で見かけた侍女の服と違います。
緑色を基調としたこの城で見かけなかった侍女服を着てました。
実は、私が王弟となったのでエリンの修行は公爵家侍女のレベルか
ら1段階あがり、王弟侍女としての教育に変わりより過酷な修行に
なっていたそうです。
ごめんなさい。すいませんです。
それでも、王弟侍女の教育は終わらせきれず4月の私がグランスラ
ムに行く間に継続されます。
途中3週間、一旦休憩で帰ってきました。
しかし、何をそんなに教育するのでしょうか?
とちょっと聞いたら、国内全貴族の家名年史風習や贈り物などなど
沢山の高位貴族の常識という私が嫌いな物のオンパレードでした。
特に追加されたのは、普通は執事がやる仕事部分。
公爵家の専属侍女なら執事と分担できますが、王弟は後宮内なので、
男の執事は入れません。
なので殆どの仕事を専属侍女がするそうです。
公爵としての仕事をするようになったら王弟の場所と別に家もある
ので、そちらにはきちんと執事をおいて仕事を別けるように言われ
ました。
877
執事のを知っておけば、離れていても執事との連携もしやすいだろ
うから、知っておくことに無駄は無いそうな。
さてさて、この緑の侍女服はなんでしょうか?と質問したら、私の
専属侍女の証として新たに作られた王弟に仕える専属侍女の服とし
て作られたそうです。
私の金の稲穂3本だけでなく、王宮のマークも入ってました。
2妃様が気合を入れた1品だとの事です。
普通の侍女服の軽く10倍のお値段らしい。
へー。
さあ、これで、ようやくエリンの修行が終り、明日領地に一緒に帰
ります。
部屋に入ってエリンから、研修中の事をいろいろ聞きました。
そして聞いている間いろいろ誉めました。
話しながら涙ぐんだりする場面もあり、いやいやそんなに過酷だっ
たのか。
そして、ちょっとステータスが気になって調べてみました。
けしてスリーサイズを確認しようとしたわけではありません。
でも追加の魔力は足してます。
エリン︵18︶:155cm,B88F,W60↓58,H85︵
やせました︶
ステータス値は特に一般的です。
レベル5 200
状態:健康
総魔力量
基本魔法 魔力操作
応用スキル ︵攻撃・防御系︶
878
流体操作 なし
レベル2
レベル2︵温度制御のみ︶
個体操作 なし
魔素の高温化
気体操作 なし
レベル2︵温度制御のみ︶
音波操作 なし
魔素の低温化
光子操作 魔力操作の能力値が高く、温度制御得意です。
意識していませんが、魔力制御で、ヘアーアイロンができます。
特殊能力
毒や暗殺気配の危険探知
主人との念話
主人の居場所探知
称号
伝説の侍女︵主人:ジルベール︶
生涯、唯一と定めた主人に尽くす覚悟を決めた侍女への称号
効果:
侍女能力の向上、危険探知能力の向上
念話効果:主従の証として作られた宝具を主従両方が身につけると
事で、それをキーとして、一定距離内に主人がいる場合、相互に念
話でのやり取りができる。
主人の魔力に応じて念話の聞こえ具合が変わる。通常は一言呼ぶ言
葉がなんとなく伝わる程度。
加護
小
アロノニアの加護 効果
美容補正効果
肌・髪が綺麗になりスタイルが良くなる。
小
身長が変わるような体型変化の効果は無い。
精霊友愛
879
好意を持ってくれた小精霊の声を聞いたり、話したりする
事ができる。
小精霊は、お菓子の提供でお願いを聞いてくれる。
精霊が協力し、毒や暗殺の危険を探知する。
上位鑑定のレベルが上がってきたから能力の説明が多くなった。
なんだろ、称号にある﹁伝説の侍女﹂?
それに、人間嫌いと言うアロノニア様加護がある。
初めて見た。
W60↓58︵やせました︶は、美容補正効果があるから?
﹁どうかされましたか?﹂とエリンが聞いてくる。
﹁ええ、そうですね。少し私の能力について説明しておきますね。
まず、私は全属性の魔法が使えます。
特殊魔法は、時間・空間・回復・祈祷、聖獣の召還です。
それと、鑑定のスキルも持っています﹂
﹁さすがジルベール様、すごいですね﹂
と、うっとりした目で見てきます。
﹁で、鑑定のスキルでエリンの状態を見せてもらいました﹂
﹁そうですかちょっと恥ずかしいですね﹂
と、少し下を向いて恥ずかしがる。
﹁ああ、勝手に見てしまってごめんね。まず、ステータス上は健康
です。それは良いとして、称号とか、特殊な加護って知ってますか
?﹂
﹁称号ですか、王や、英雄とか、勇者、聖女とかでしょうか?加護
は、女神様からの祝福ですよね﹂
880
﹁加護は合ってますね。称号は、人がつける称号ではなくスキルと
して持っている称号です。
それがあると能力が向上したりします。
例えば聖女の称号を持っていると、回復魔法の効果をステータス以
上に高める効果を持ちます。
書物によれば英雄と言う称号を持つと、力や素早さが増えるそうで
す。
ただ、私も称号の種類は良く解っていません﹂
﹁へー、そんなものがあるんですね﹂
﹁鑑定でもレベルが高くないと見えないようです。
私の鑑定は普通の鑑定よりも能力が高いのです。
ですから、もしかしたら称号に関しては普通の鑑定持ちでは見えな
いかも知れません。
称号は、書物でも正確な情報が無く一般的にもあまり知られていま
せん﹂
﹁それで、ジルベール様がなにか称号をお持ちと言う話ですか?﹂
﹁いえ、今のところ私は、称号は持っていません。持っているのは
エリンです﹂
﹁私?﹂
﹁はい、伝説の侍女と言う称号を持っています﹂
﹁伝説、え、なんですかそれ?﹂
﹁効果を確認したところ侍女能力の向上、危険探知能力の向上があ
るそうです。
それに加えて、主従の証として作った宝具を主従二人が互いが持て
ば、近い距離にいる時に念話で話ができ、居場所がある程度把握で
きるようです﹂
﹁それは便利ですね﹂
﹁そうですね便利といえば便利ですが、プライバシーが減るといえ
ば減りますね。
881
嫌なら宝具を作りませんが、良いなら一度作ってみましょう。はず
せば効果がなくなるようですから﹂
﹁はい、ありがとうございます﹂
﹁それと次に加護ですね﹂
﹁女神様からの祝福ですね﹂
﹁そうです。あなたは、アロノニア様を信仰していますか?﹂
﹁いえ、シドニアはラキシス様を信仰している教会が多く私もラキ
シス様の信者です。
アロノニア様の教会は、山奥や海など自然が沢山あるところにある
と聞いています﹂
﹁ラキシス様か。ではどうしてだろ?﹂
﹁どうかされましたか?﹂
﹁私は、メリーナ様の加護を持っています。加護の効果は、状態異
常を軽減する効果があるそうです﹂
﹁ああ、この国はメリーナ様を信仰されてますよね﹂
﹁あなたはなぜか、アロノニア様の加護を持っています﹂
﹁え、アロノニア様。精霊の神様ですよね。なんで私に﹂
﹁さあ、なぜか知りませんが、加護の効果は、あなたを気に入った
精霊がいれば、話をしたりお願い事が出来るそうです。小精霊は、
お菓子が好きでお菓子あげれば、頼みごとが出来るそうですよ。
それに、毒などの異状を知らせてくれるようです﹂
﹁まあ、ではこれからはいつもクッキーなどをお菓子を持ち歩かな
いといけないですね﹂
﹁あまり、驚かないですね。信じてないでしょ﹂
﹁そんな事はありません。私がジルベール様の事を疑うなどありえ
ません﹂
882
きっぱりと否定して、顔を膨らまして怒る。
そして﹁ジルベール様がお望みなら、なんでもする覚悟があります。
脱げといわれれば脱ぎますし、﹂
﹁ああ、だめだめ、そういうことは言っちゃダメだよ﹂
﹁はい。言い過ぎました﹂
﹁一応、ルールを作っておこうか。私はエリンの事は大切にします。
だから無茶なお願いはしません。嫌な時は嫌と言ってね。
長く付き合いたいから嫌なことを我慢するのはやめてね。
正直に言ってくれればよいから。
もし変なお願いを私がしたらちゃんと断って﹂
﹁はい﹂
﹁それで加護ね。アロノニア様と話をすれば解るかも知れないけど、
まずはお礼も言ったほうが良いから、明日王城の教会に行ってから
領地に帰ろうか﹂
﹁はい、了解しました﹂
﹁あと、魔力操作の能力が高くて意識してないかも知れないけど、
髪をいじる時に高温にしたり低温にしたりして、髪型を作っている
みたい﹂
﹁え、それは、魔法ですか?私は魔法は使えませんけど﹂
﹁うーん、魔法は派手な攻撃や呪文を唱えるのが魔法じゃない。
魔力を制御すれば結構使えるんだよ。
無詠唱の魔法をみんな驚くけど、意外に無詠唱魔法を使っている人
は多いんだよね。
魔力操作さえできれば、結構なんでも無詠唱で出来るんだよ。
エリンは、火を投げたりはできないけど、手に持った物を魔力で暖
めたり冷ましたりが得意なんだよ﹂
﹁ああ、言われてみれば髪をセットする時に持っているくしが熱く
883
なっている気がします。飲み物も冷たく出来る気がします﹂
﹁そうそう。で、それを補助する魔道具を作っておくよ。
気をつけないと火傷するかも知れないし、安全装置をつけた魔道具
の方が良いよね﹂
﹁ありがとうございます﹂
一通りの状況の確認が終わったので、この後の1ヶ月間のスケジュ
ールを渡されました。
予定を確認し、これからは、エリンがスケジュールの管理をしてく
れるそうです。
なので王城に戻るときは、一緒に行くと言ってます。
専属侍女と言うか、兼秘書ですね。
これからはいつも一緒にいますと宣言された。
もちろん、エリンが休みの日もあるので、それも含めてスケジュー
ルを良く確認して欲しいと言われました。
そして、直近の用事を見ると、
・雇い人を領地へ連れてく予定
・お茶会
・仮成人の儀
・ハイルデン公爵夫人の訪問
・アレクサンドロ公爵夫人訪問
・舞踏会
と、3月は結構沢山の用事が書いてあった。
これに、私が今までやっていた、魔道具作り、公爵家の図書館めぐ
り、
そして王弟教育とスケジュールが結構びっしり。
884
休みの日は、スーとマリアとのデートも記載されていた。
今月、忙しいな。
よく今までスケジュールも見ずに適当にやってこれたな。
さて、では、そろそろ寝ますか。
2人で魔力操作の練習をして、私は特殊召還で気になっていること
を検索し、残りの魔力を減らす。
そして、おやすみなさい。
885
5.36 エリン領地へ
本日からエリンが領地へ行きます。
まず、朝出発前に王城の教会でお祈りを。
女神様がでる事も無く平穏にお祈りが終わる。
腕輪をつけて呼べば答えてくれるかも知れませんがお礼を言ってい
るだけだから良いだろう。
お祈りが終わると、メルミーナ様の家から移動する人を迎えに行き
ます。
エレノアとニーナがメルミーナ様の養子に入ったのでその教育係り
5名。
それから、ちょうど辞める予定だった筆頭執事長オブスレイさんと
筆頭侍女長アマリリスさんの夫婦。
特に筆頭侍女長は3妃様がお願いしてエリンの指導役をお願いして
います。
現状は、オブレイさん夫婦は我が家が、それ以外はメルミーナ公爵
家が出してくれてます。
エリンとメルミーナ公爵家に移動し全員と顔合わせ。
聞いていた人数よりも二人多い。
筆頭侍女長のアマリリスさんからの要請で、専属侍女となったエリ
ンを補助する二人の侍女を手配していたそうです。
そういえば、3妃様からそういった話があったな。
イリスとミシュどちらも30前後。侍女経験10年のベテラン。
旦那は?
886
と思ったら、既に旦那は荷物を持って馬車で私の領地に移動してい
るそうです。
旦那は文官として領地で雇われていました。
オブスレイさん、アマリリスさんの荷物も馬車で移動中。
荷物を先に送って人だけ転移で移動らしい。
メルミーナ様に、将来私専用の執事が必要になるから早めに探すよ
うに王妃様に言われたと相談したら、とりあえずオブスレイさんが
いる間に若手の教育をした方が良いと。
それとは別に、執事長の候補は経験者が必要だから探しておくとい
われました。
と言うことで、全員で領地へ移動しました。
リリアーナかあさまに皆を紹介し今日は歓迎会が行われます。
到着後にアマリリスさんから話があるから、リリアーナかあさま、
私、エリンで話を聞きました。
まず、アマリリスさんが、
﹁私は、3妃様とメルミーナ様から頼まれて、ジルベール様の公爵
への礼儀の指導とエリンの専属侍女としての教育を承っております。
雇い主はあくまでメルミーナさまで期間は5年間。
オブスレイは、連絡のあったとおり領地経営のサポートして役場で
若手の指導を行います。
ジルベール様は、男性用の礼儀に関して一部はオブスレイから教え
てもらいますから。
さて、エリン、あなたは少し寝不足ですね。
髪も艶が無く、着こなしも完璧ではありません。
王妃様の手紙では80点と書いてありますが私が見た感じでは60
887
点ですね﹂
うわ、厳しい。
これで60点なの。見た感じ完璧に見えるんだけど。
﹁ジルベール様、あなたはご自分でお風呂で体を洗われるとか﹂
﹁はい、自分の事はある程度自分で出来ると思ってました。
でも、王城の侍女にはダメだしもらってますので自覚はあります﹂
﹁ふむ。自覚があるなら良いのですが、遠征などにお出かけの際に
はご自分でしっかりとやってください。
ですが、普段はこれからは侍女に任せなさい。
貴方様は、ただの公爵になる男では無く既に王弟と言う立場もお持
ちとか。
ジルベール様は、見目も良いのに現状は髪も艶が足りず肌ももっと
綺麗になるはずです。
貴方様は王弟として身なりをきちんとしなければいけません。
これからは、貴方様の身の回りはエリンが見ます。
そしてエリン、あなたはこの2人と王城にも2人、4人があなた付
きの侍女が用意されます。
休みの日もありますので、交代要員を含めあなたが指示して動かし
なさい。
そして必要な技術は私が教えます。
良いですね﹂
﹁はい﹂と素直に答えるエリン。
私はあっけにとられてタイミングを逃した。
すると、
﹁素直でよろしい。ジルベール様は返事は必要ありませんよ。
拒否権はありませんから﹂
うわ、こわ。
888
おばあ
﹁さて、エリン、あなたはシドニアの国を出て1人なのよね。
私は、ここでは侍女ではありません。
と呼ぶことを許可します。
これからはあなたが私を頼りやすくするために、私の事を
さま
何でも聞いて私を頼りなさい﹂
﹁はい、おばあさま﹂
﹁では、まずあなたに美容関係から教える事が急務ですね。それと
訪問場所にあわせた服の着こなし、では明日から頑張りましょう﹂
﹁はい、おばあさま。よろしくお願いします﹂
﹁ええ、良い返事ね。お辞儀もとても良くできているわ。
なかなか可愛い子ね。でも1人で頑張りすぎてはダメよ。
これからはあなたの味方をする侍女イリスとミシュを頼って、サポ
ートをしてもらいなさい。
王城でのサポートは、2妃様が用意されるそうです。
丁度、来週末は、王城だったかしら。
必要なことは都度事前に教えるから、スケジュールは私にも見せる
様に﹂
とすぐにスケジュールを見せる。
﹁すいません、今1枚しかもっていないので後で書き写します﹂と
伝える。
その場でとりあえず近場の予定を確認したようだ。
﹁領地の人材募集は付いていかないからサポートね。服選びは一緒
にしましょう。
とりあえず、最初のイベントはアレクサンドロ家でのお茶会ね。
これがどういうお茶会かしら。詳しいことを教えてね。
貴方の立ち振る舞いも合わせて教えましょう。ではこれは後で﹂と
889
スケジュールを戻した。
﹁さて、ジルベール様、あなた様は普通の領主の方々と違って今日
の様に転移で移動されるそうですが、予定された泊まりの時には必
ずエリンを伴うように。
スケジュールを確認していつも一緒に行動するのですよ。
部屋は、事前の連絡をしてあったとおり、結婚されて伴侶が同じ部
屋となるまではエリンが同じ部屋で寝ます。
これは、王弟と言うあなたの立場の安全のために必要なことです。
この領地は、必要ないでしょうけど、王城ではエリンが同じ部屋で
女官の衛兵が1名部屋の前にいます。
勝手に出て行ってはダメですよ。誘拐されたと騒ぎになりますから
ね﹂
﹁そんな、私が誘拐なんて﹂
﹁あなたは知らないようですが、世の中には魔法を完全に封印する
古代に作られた危険な魔度具などがあります。
そして指定された場所に強制的に転移させる魔道具もあるのです。
そういった場合の為にも1人にならないことです。
かつて、あなたの様に強い強者はいくらでもいましたが、自信過剰
によって殆どの方が誘拐、毒殺、暗殺されたのですよ﹂
﹁え、そうなんですか﹂
﹁ええ、あなたがどれだけ強くても一人では危ないのです。エリン
に力が無くても、叫けぶ事で人を呼べるし一瞬の隙を作ることであ
なたが相手を倒すこともできます。
まず、1人で無いということが相手が付け入る隙を無くします。
良いですね。そもそもジルベール様は人を信用しすぎなのです。
今までは多くの善人も守られ安全に生活してきましたが、これから
は悪意ある人があなたに近づいてくる事を想定して生活してくださ
890
い﹂
﹁ハイ﹂となんとなく返事。
﹁まあ、気の無い返事だこと。常に気を張る必要はありませんが痛
い目を見てから後悔するようなことがあってはいけません。
例えば、私があなたを殺そうとする場合まずリリアーナ様、次にエ
リンを狙います﹂
﹁それは困りますね﹂
﹁そうでしょ。だからエリンはあなたと同じ部屋に入れておくんで
す。
これが一番納得がいきますか?﹂
母様は、アメリといるから近くにレイブリングさんがいる。
そうか、近しい存在の専属侍女なんて作ったから狙われるのはエリ
ンか。
そう思って真剣な眼でエリンを見つめる。
﹁まあ、思った以上の効果ですね。
やはりあなたは守られるよりも守ると考え方が扱いやすいですね。
ほんとにお人好しね﹂
﹁え、いまの嘘ですか?﹂
﹁嘘な訳ないでしょ。
あなたを知らない人は直接狙いますが、知っている人は周りの人を
狙います。
エレノア様、ニーナ様、そしてエリンにエイミー。
ああエイミー様に行くのはよほどの馬鹿でしょうが、とにかく気を
つけなさい﹂
﹁はい﹂
891
﹁では、リリアーナ様、二人の事はこのくらいです。
後はエレノア様とニーナ様の教育について相談があります。
ああ、ジルベール様とエリンは下がって良いわよ﹂
礼をして、二人で下がる。
部屋に入り、エリンがお茶を入れてくれた。
エリンのベッドは出口側。私のベッドは奥だ。
もともとそれほど広くは無かったので結構近い。
﹁暫くすると、食事だそうです。明日の予定を確認しますか?﹂
﹁はい、そうします﹂
その日の夜は歓迎会を行った。
我が家の流儀で使用人を含め皆で食事を一緒にしました。
使用人が増え家族も増えて来ました。
アメリの子供も生まれるし、エレノア、ニーナの為に、もう少し使
用人を増やすので北塔を追加で建ててます。
数日後、ロジクールと相談して新しい魔度具を作りました。
私とエリン専用の手紙交換が出来る魔道具です。
まず、以前渡したマジックバックは一旦回収。
新しく、緑の専用侍女服に合わせた薄い緑のバックにして目立たな
いようにしました。
手持ちにも、肩掛けにもなるバックです。
そして、そのマジックバックは2重構造となっていて、15m*1
5m*15mの虚無空間と、荷物のやり取りをする転移機能の1m
*1m*1mのものが送付できる2つの役割を持っています。
入り口を変更する事で二つの機能を使い分けできます。
小さな荷物のやり取りを前提としていますが、中に入れれば相手側
892
に転送されます。
転送されると、つけている腕輪が反応し振動します。
腕輪は、金で作り、2カラットのサファイアとルビーを埋め込みま
した。
中に物があると、赤つまりルビーが光り、無くなると青つまりサフ
ァイアが暫く光ります。
私と、おそろいです。
私のバックは、黒にしました。
ベルトにつけたり、持ち運んだりできる物です。
自分の空間は魔法禁止で中に入れれなくなるので、私もアイテムバ
ックを持つことにしました。
両方とも金の3本稲穂のマークを入れました。
バッグと腕輪のデザインは、エリンが書いたものです。
それと、ヘアーアイロン、ドライヤーを用意しました。
量産品ではないので、高価な材料を使って小さくしました。
ヘアーアイロンとドライヤーで、材料費で100万円でした。
結構な値段ですよね。
893
5.37 お茶会
さて王弟の住居が順調に作られいる中問題のお茶会、年下を愛でる
会が開催されました。
名目はアレクサンドロ公爵家の庭で梅の観賞となっています。
サフィーナ様、スザンヌの同級生から厳選された綺麗なお姉さま方。
1学年15名、全部で30名です。
件のリリアも居るそうです。
そこにエリンが選んでくれた服を来てた10歳の男子10名が参加
します。
本日エリンは念のため裏方として待機してます。
出番前に男子全員をエリンが最後の仕上げをしてくれた。
男性側から自己紹介が始まり、つづいて女性側の紹介がありました。
男性陣も10名全員が将来のイケメン候補ですが、女性人も美人率
がすごい。
この国、美人多いのかなってもちろん選ばれた人だからですよね。
男性側は、婚約者がいたのが私だけだったので私が一番最後。
女性側も同じように婚約者なしが最初で最後に婚約者あり。
リリアは婚約者が決まっていないので前半で紹介がありました。
もちろん鑑定でチェック。
メリーナ様の加護中です。転生者決定。
そしてスキルがすごい。
と
隠密
。
魔法はレベルが低いが回復魔法がある。
魅了
そして土、水魔法が使えます。
特殊スキルに
894
ああ、ちょっとやばい系だ。
確認すると魅了は常時発動方ではなく精神系の魔法スキルだ。
通常の鑑定では解らない特殊スキルに入っていた。
私の上位鑑定だから見れるわけですね。
ハーレム形成ってこれか。
魅了が特定の相手が自分を好きになり自分の命令に忠実になる。
隠密は自分の行動を他人が認識でない。
なんてスキルを持ってるんだ。
自己紹介の後、会は順調に進みます。
男性陣はあらかじめ準備していた歌を歌うぐらいです。
男子が5人で5人の2種類の服を着ていたのでだれかがコーディネ
イトしたのか聞いてきました。
﹁私の侍女のコーディネイトですよ﹂と答えると
﹁侍女連れてきてるの?﹂と
﹁来てますけど﹂と答えると紹介してと。
ちょっと悩んで、サフィーナ様とスザンヌに相談。
こういう場合に裏方のエリンを出しても良いのか?と。
正式な大人の茶会の場合、高位の人からの要求は断れない。
これは正式でも無いから断れるけど友達としてのお願いだから出し
たらと。
主従の関係を示す宝具は、マジックバッグにダイヤモンド。
知らせる腕輪にルビーとサファイアを埋め込んであります。
なので念話が使える。
﹃エリン、表に出て欲しいって来れる﹄
﹃承知しました﹄
すぐに裏からエリンが出てきて
﹁御用がおありでしょうか?﹂と聞いてきた。
895
サフィーナ様が
﹁今、呼ぼうと思っていたら呼ぶ前に来たのですね。
さすがジルベール様の専属侍女ですね。
優秀な執事や侍女は呼ぶときには隣にいると聞きますが、まさにそ
れ。
御若いのにすばらしいです﹂と感動してました。
﹁それはあまたの侍女の中からそれも隣国シドニアからジルベール
様が御選びになった方ですもの。
とてつもなく優秀なのですよ﹂
と、すーが自慢げに。
﹁まあ、そうなのスザンヌ。うちの侍女も見習わせたいものだわ﹂
﹁あの。ところでどうしますか?﹂
と私が聞くと
サフィーナ様がみんなに紹介してとお願いするので、私が紹介した
後にエリンが自己紹介することに。
﹁エリンと申します。
ジルベール様の専属侍女をしています。
本日は高位の男性方の服をコーディネイトさせて頂きました。
裏方の私ごときに挨拶の場を持っていただき、ありがとうございま
した﹂
と深々と挨拶をする。
すると、1人の女性が
﹁ねえ、この侍女の制服もしかしてサフランサフランじゃない﹂
﹁はい、2妃様から頂きました﹂
﹁すごい、みんなサフランサフランよ﹂
裏で、スーに
﹁サフランサフランって何?﹂
896
﹁アメリさんの結婚式のドレスを作った店のオリジナル製品の事よ。
アメリさんが着たのが最上級のサフランサフラン。
あとは、弟子のグレードによって、サフラン・ゴールド、サフラン・
シルバー単なるサフランとわかれる。
私たちが着たのは、結婚式で着たのは弟子作ったサフランゴールド。
値段が一桁変わるわ。
今、エリンが着ている服はサフランサフランよ。
お母様が妥協なしで作ったとは言ったけど、装飾が少ないから1千
万円ぐらいかしら﹂
﹁え、そんなにするの﹂
﹁まあ、王弟の専属侍女だからそんなものじゃないかな﹂
と裏話。
エリンが言うには今回の男子諸君のデザインは全てエリンがデザイ
ンしたもの、グレード的にサフランゴールドをもらったらしい。
原画の権利を渡す変わりに原価に近い値段で売ってくれたそうだ。
それで1着分の値段で全員分買えたのか。
意外なところで女性諸君のテンションが上がった。
まわりから
﹁侍女服にサフランサフランなんて、ジルベール様、スザンヌ様に
やきもちやかれて大変なんじゃないですか﹂
﹁さっき説明があったとおり2妃様が作ったからやきもち焼くなら
スーの母親にじゃないの。私は何もしてないよ﹂
と言うと、スーが
﹁あら、知らなかったのですが半分はジルベール様が出してるんで
すよ﹂
897
﹁え、そうなの﹂
﹁はい、リリアーナ様が払ってましたよ﹂
﹁知らなかった﹂
エリンが﹁ジルベール様すいません。こんな高いものを﹂
と言うので
﹁いや、全然。いまさらだけど全額払ってももったいなくないよ。
それだけのつらい修行をさせてしまったし。
それに、似合ってるしかわいいよ、エリン﹂
するとスーが﹁それに、来週のジルベール様の領地で行われる舞踏
会で着る私のドレスはサフランサフランで作ってもらいましたし﹂
﹁え、そうなの﹂
﹁ええ、エリンの侍女服を頼むときに一緒に頼んでありますよ。
リリアーナ様が、ジルベール様を驚かすために内緒にしてましたけ
ど﹂
﹁それは、舞踏会が楽しみだね﹂
﹁はい、マリアも一緒ですから楽しみにしておいてください﹂
﹁ははは﹂。と笑う私。
﹁おほほほ﹂と、わざと悪女ポイ笑い方をするスー。
うーん、最近忙しかったからか、いろいろと勝手に決まっていって
るけどしょうがないよな。
全部言われても処理しきれないし。
﹁ジルベール様、特にこれで用事が無いようでしたら下がりますが﹂
﹁ああ、御茶の用意をする侍女が足りないから申し訳ないけどジル
ベール様のところは任せても良いかな﹂
898
とサフィーナ様が。
﹁お手伝いをしてもよろしいでしょうか、ジルベール様﹂
﹁ああ、そうしてくれ﹂
﹁かりこまりました﹂
そして、各テーブルに男性2,3名を分配し女性人のグループが入
れ替わりでお話をした。
私は、フィリップ王子とセットで全員と談笑しました。
本日のリリアは、フィリップ王子を狙っているみたいです。
フィリップ王子がシドニアの王になる可能性を知っているのだろう
か。
后のポジションが狙っているみたいです。
シドニアに行くには正妃があちらに人になるので、こちらの国から
の王妃は第2王妃以下になります。
こちらの国の1妃、2妃は同等で正妃がいません。
しかし、今回は正妃が王位を継ぎ王は正妃から王位を預かる形です。
第2王妃と正妃には大きな差があります。
それでも、ルカ王が上手く攻略できないので最近はあきらめつつあ
ったのでしょうか。
王家とつながりがあった訳ではないので、今回はまさにラストチャ
ンスといえるでしょう。
899
5.38 転生者はしたたかに
一通りのグループでの話が終った後、最後にお気に入りの人と話せ
る時間を作ってもらっています。
あらかじめ言ってあったのでサフィーナ様が、私とフィリップ王子
リリアにスーの4人で1テーブルに集まるようにしてくれました。
私とスーが隣で、向かい合わせにリリアとフィリップ王子が座りま
した。
近くにエリンが待機します。
4人で席に移動するときから魔力の可視化でリリアを注意深く見て
います。
席に着くと直ぐにリリアが魅了を使ってきました。
魔素がフィリップ王子に向かうのが見えました。
その瞬間に時間魔法を発動させ、ゆっくりと魅了の魔法を見せても
らいました。
魔素がリリアから流れ、フィリップ王子を取り囲む。
脳に行くのかと思ったら全身でした。
特に、目、口、鼻、耳に魔素が集中しています。
もちろん一番強いのはもちろん頭の部分です。
匂いや、声も魅了に使うのでしょ。
はい。完了
フィリップ王子を鑑定すると、魅了にかかってました。
900
特殊状態と言うところに魅了と表示されます。
鑑定のスキル低い時は解らないところです。
さすがメリーナ様の与えたスキルです。
どうやら念のため私にも魅了を使うようです。
ですが、残念。
メリーナ様の加護大があるのでレジストしました。
メリーナ様の加護は自動発動ですね。
魅了が失敗したことが解ったのでしょう。
一瞬、変な顔をしました。
少しそのままでの状態で4人で会話をしています。
ですが今のところ、フィリップ王子は特に変わった様子はありませ
ん。
話を続けると徐々にリリアに興味を持っていくような感じがします。
即効性の魔法では無いのでしょうか。
フィリップ王子に事前に魅了の魔法について説明したせいでしょう
か。
10分ほど話をしていると、フィリップ王子が隣のリリアの手を握
り、少し見つめています。
王子を魅了のサンプルにしましたが。
最初は、危険だからリリアに鑑定を使って魅了があれば指摘して捕
まえるつもりでした。
ですが、その場で治せなくても、王宮に戻れば治るなら、面白そう
だから魅了にかかってみたいと。
王子なのに自ら渦中に飛び込むなんてフィリップ王子はこういう時、
妙に大胆で、好奇心旺盛です。
901
そろそろ解除しないと本格的に魅了に落ちそうなので、解除を試み
ます。
私の回復魔法でフィリップ王子の状態異常を回復させてみました。
成功!
どうやら回復魔法で魅了を解除できるようです。
少し前までの回復魔法は毒の解除も毒の種類が判別できなければ治
せませんでしたが、今のレベル8になってからは全状態異常を治す
ことができます。
呪いは別ですが、精神系の状態異常も回復魔法で治せるようです。
さて、そろそろ交渉に入りましょう。
2人に合図を送ります。
フィリップ王子には退席してもらいます。
フィリップ王子が、退席すると伝えると、リリアが怪訝な顔をする。
それはそうだろう、魅了が聞き始めたとたんに、急に手を離し、退
席すると言うのだから。
そして防音魔法と共にリリアの周りを光魔法の結界で囲み、魅了を
使っても外に漏れないようにする。
もう一度フィリップ王子に魅了をつかおうとするが、失敗が解るの
だろう。
ようやく何かを理解したようだ。
そのまま黙ってフィリップ王子の退席を見つめる。
902
私からリリアに一言。
﹁転生者ですよね﹂
の問いに、リリアは、ごく普通に答えた。
﹁ああ、そういこと。だから魅了が効かないのね﹂
﹁まあ、そういうことです。他にもそういひとがいましたか?﹂
﹁ええ、今年卒業する先輩に1人いましたよ。転生者だと言ってま
した。
今度紹介しましょうか?﹂
﹁それはぜひ﹂
﹁で、何?﹂
﹁精神系の魔法を使える人は、国への登録が必要です。ご存知です
か?﹂
﹁知ってるわ。学院に入る時に調べられるから。でも、私の魅了は
解らなかったみたいよ﹂
﹁そうでしょうね。貴方が知っていて隠したのか、そうでなかった
のか、状況にもよります﹂
﹁そう、なら大丈夫よ。私が転生者だと思い出したのは学院に入っ
た後よ。今から丁度1年ぐらい前よ﹂
﹁そうですか、では申告については、後日出してもらいましょう﹂
﹁あなたが公爵になるとは聞いているけど、今は学院にも行ってい
無いただの子供でしょう。
なんで、私の事に何を口出してくるのよ﹂
こちらの言葉に
﹁なぜ口を出すかですか。
903
私はメリーナ様から、他の転生者を救うように頼まれています。
あなたがやっている精神魔法は、ばれると処罰される可能性があり
ます。
だからあなたを守るために温和に動こうと思っています。
これで納得してもらうのが望ましいのですが。
どうですか?﹂
﹁べつに、貴方に頼らなくてもあなたが邪魔しなければ、私はこの
力で生きていけるわ﹂
﹁そうですか﹂
﹁でも、ばれているのよね。私はどうなるの?それを教えて﹂
﹁今後についてですね。
まず魅了のスキルは私が国に登録します。
今後は、王や私の為に働いてもらいたい。
この国には精神系の魔法を使える人があまりいなくて、暗殺者の尋
問もあまり成果が得られていません。
できれば、裏の部隊に所属してもらうと助かります。
もちろん、そのまま普通に令嬢として家に過ごしてもらってもかま
いません。
しかし、できれば高位文官として登城する役職付きになって貰いた
いですね﹂
﹁え、良いの?私がした事がばれてるなら、殺されたりとかしない
?﹂
﹁まず、誤解して欲しく無いのですが、先ほども説明したとおり私
はメリーナ様から同じ転生者を助けるように言われています。
私に敵対する意思が無い相手なら、きちんと保護する事を約束しま
904
す﹂
﹁ほんと、良かった。じゃあ協力するわ﹂
﹁では今は学園も残り1年ありますし、残りの1年は少なくとも学
園にそのまま通ってください。
ただし、これ以上魅了をつかわないことを約束してくださいね。
それと、魅了を使った人ですがご自分で解除できますか?﹂
﹁自分では解除できないわ。相手の状態も把握できないわ。
どうもルカ王子は魅了にはかかるけど、すぐに薄くなっている気が
するけど。
それも解らないの﹂
﹁そうですか、王城は魔法禁止となっています。
すぐに解除できるほどの効果は無くても、魅了の効果が散らされる
のでしょう。
しかし、即効性はなさそうですね。
対応は私が考えておきますから任せてください﹂
﹁ええ、お任せするわ﹂
﹁ところで、転生の時にどうして魅了のスキルなど希望したのです
か?﹂
﹁私は前世で恋愛ゲームにはまっていたのよ。
だから魅了が欲しかっただけです。転生すると言われたけどあまり
信用していなかったわ。
いまさらだけどもう少し良く考えてからお願いすれば良かったわ﹂
905
﹁そうですか。では次の質問です。
最近、男性の攻略をあきらめていた感じがすると聞いてます。それ
はどうしてですか﹂
﹁ルカ王子に対して魅了の効果が薄いというのが一つ。
それと、攻略がルートどおりに進まないのが二つ目の理由よ。
私の知っているシナリオどおりなら、まず夏に王子の妹が毒殺で亡
くなり、それを私が慰める。
次に先日の外国への視察の時に婚約者が犯されて、婚約を破棄する。
最後に私が空いたポジジョンに入る。そう聞いていたのよ﹂
﹁聞いていた?
それは妙は言い方ですね。
ゲームのシナリオと言うには表現がおかしいですね。
誰かにそう言われたのですか?
申し訳ありませんが、ゲームなら、どんなゲームの名前ですか?教
えてください﹂
﹁ゲームの名前?﹂
そういってリリアは首をかしげる。
おや、なにかおかしいな。。
906
5.39 結果は予想外に
﹁ゲームの名前?﹂
リリアは名前を思い出そうとしているのか、首を傾げて不思議な顔
をする。
少し黙った後、言葉を続けた。
﹁そうね、どうしてかしら名前を思い出さないわ。
そもそもゲームなんてどうして思ったのかしら。
ゲームの知識だと思っていたけどそれ以外のイベントや登場人物の
記憶も無いのに、さっきのイベントだけどうして知っていたのかし
ら﹂
また黙る。
﹁そうね、誰かに言われた? そう教えられたような気がするわ﹂
﹁誰に、言われたのですか、思い出せますか?﹂
﹁ごめんなさい。解らないわ。
どうしたのかしら王子以外の人は魅了の魔法を使っただけね。
私の以前の色々なゲーム知識を総動員して攻略したと思っていたけ
ど何もしてないわ。
適当に一緒にお話して遊んでいただけね。どういうこと。私、操ら
れてたの?﹂
907
もう一度鑑定でよく見ると精神状態が異常を示している。
やっぱり診断のスキルじゃないと詳しいところは解らないか。
﹁貴方は外から操られていた可能性があります。
私が今、魔法防御の効果を持つ結界を使ったので、外との繋がりが
切れ突然正気になったのかも知れません﹂
スーが
﹁ジルさま、誰が操っているか解りますか?﹂
﹁残念ながら。とりあえず、リリア様はこのまま王城に連れて行き
ましょう。魔法禁止が有効だと思います。体調は大丈夫ですか?﹂
﹁リリア様、大丈夫ですか。家族の方には、私から連絡を入れます。
少しお休みしましょう。顔色が急に悪くなってきてます﹂とスーが。
﹁ええ、私、どうしたのかしら。何がどうなっているの。
何時までの私は私じゃなかったのかしら﹂
﹁うーん。ちょっと待ってね。確認してみましょう。
ああエリン、サフィーナ様を呼んできて。結界を使える魔道士もい
るなら手配して。コハクがいると一番良いのだけど﹂
そして神との交信の腕輪を出してメリーナ様を呼びかける。
﹃メリーナ様、メリーナ様﹄
と声をかける。
数秒後に﹃なにジルベール?﹄
﹃リリアの事を聞きたいのですが、解りますか?﹄
﹃ごめんなさい、私の加護から消えていたので、解らないの。
リリアとも話をしたいから、手を繋いでくれる﹄
908
﹃解りました﹄
﹁リリア様、メリーナ様があなたと話がしたいそうです﹂
﹁メリーナ様、あの転生させてくれた女神様ですか。ホントにお話
できるのですか﹂
﹁できます。さあ、私と手を繋いでください。メリーナ様が呼んで
います﹂
リリアと手を繋ぐ。
﹃メリーナ様、手を繋ぎました﹄
﹃リリア、心配したわ。
1年前に覚醒してスキルが使える様になったと思ったら、すぐにあ
なたの所在が解らなくなったのよ。
誰かが操っていたのね﹄
﹃ああ、メリーナ様。転生したときに聞いた声。覚えています。お
久しぶりです﹄
﹃え、覚醒後に教会でメリーナ様に会ってスキルの封印を解いても
らったのではないのですか?﹄
﹃違うのよジルベール。この子は覚醒後に誰か別の何かが封印を解
いているわ。
7歳の時に覚醒していなかったから、加護だけは与えていたのよ。
特殊な能力だったから、記憶を思い出すまでは封印したままにした
のよ﹄
﹃別の何か? それは別の神と言う事ですか﹄
﹃別の神が関与しているはずだけど、直接来たのか封印を解くスキ
ルを持っているかは解らないわ。
909
操られた痕跡を読み取ってみたけど、邪神の気配がしますね。
ですが、かなり高位の術ね。気配を探れないわ﹄
﹃私はこの1年の記憶はありますが、なにか外から自分を見る様な
感じがしていました。
操られていたのですか﹄
﹃ええ、私の加護を与えているのに操れるなんて想定外だったわ。
これから、一旦与えていた加護を見直して穴をふさぐわ。
でもそれには時間がかかります。とりあえず、急いで精神系の進入
を阻害するお守りを作るわ。
明日にはジルベールに渡すから、暫くはそれを使って頂戴﹄
﹃お守りですね。ありがとうございます。明日受け取ったらリリア
に渡します﹄
﹃リリア、無事に、私の保護下に戻ってくれて良かったわ。心配し
ていたのよ﹄
﹃メリーナ様、ありがとうございます。せっかく新しい人生を頂い
たのに、無駄にするところでした。すいません﹄
﹃謝らなくても良いのよ。それは日本人の癖ね。あなたが悪いわけ
では無いし。
とにかく無事で良かったわ。後はジルベールに任せますから、お願
いね﹄
﹃はい。解りました﹄
﹃リリアと同じように解らなくなった、転生者があと3人いるのよ。
同じように操作されているのかしら﹄
﹃あと3人ですか﹄
﹃そう、気にしておいてね。そちらの世界で起きることは、ジルベ
ールに頼るしかないから﹄
910
﹃お任せ下さい。もしそのような人を見つけたらきちんと保護しま
す﹄
﹃じゃあ、お願いね﹄
と、ぷちっと通信が切れた感じがした。
腕輪を外して待つと、サフィーナ様とコハクが来た。
とりあえず、休憩室にリリアを移し、コハクに結界を引継いでもら
う。
暫くして会も無事終了し、客を見送った。
私は、スザンヌとエリンを連れて王城へ移動し王妃様に事情を話す。
王城の魔法禁止エリアに一旦リリアを保護する許可を貰い、リリア
を迎えに戻る。
同級生が1人いたほうがリリアも落ち着くだろうと、サフィーナ様
も行くと言うので、リリアとサフィーナ様を連れて王城へ戻った。
911
5.39 結果は予想外に︵後書き︶
私の書く恋愛物は、こんなもんだね。
純粋な恋愛ゲームは書けません。
ははは。
912
5.40 リリアの保護
王城に戻り、とりあえず、王城の部屋も使うので、王妃様を呼んで
もらう。
すぐに、3妃様が、来てくれた。
簡単な内容を聞いて、リリアを医者が診察してくれた。
王への報告も必要だろう、それも手配してくれた。
王は、転生者の事を知っているわけだし、魅了の精神魔法の使い手
だ。
きちんとした保護をしても良いだろう。
リリアの実家には、具合が悪くなったが、緊急性は低く、王城の医
者が見るので安心して欲しい。
明日の昼に、迎えに来るようにと言う内容で手紙を出してもらった。
体調的には、それほど問題が無いが、1年間も、操られていたとい
う精神的なショックが大きいだろう。
医者の見立てでも、精神的な負荷が高く、睡眠薬で寝させたほうが
良いとの事でした。
王様に直接話せる状況でもないので、薬を渡して、眠ってもらうこ
とにしました。
サフィーナ様が、事情を聞いて、隣にいてくれるそうです。
サフィーナ様から、
﹁嫌な人と思っていただけど、操られていたなんて、1年生の前半
と態度が違うことをもっと重要視すべきだったわ﹂
と、自分のせいのように話されます。
913
私が﹁今回の術は、非常に巧妙で、偶然解っただけです。女神様も
防げなかったのだろから、サフィーナ様が気にされることでありま
せん。後悔しても改善しませんよ。それよりも、これからを一緒に
支えてあげてください﹂とお願いしたら、
﹁そうね。あなたの言うとおりだわ。問題はこの先よね。リリアを
ちゃんと回復させて元に戻さないと﹂
﹁そうです。1年の前半で中の良かった友達とか解りますか?ぜひ
呼んで、一緒に回復させてあげてください﹂
と言うやり取りがあった。
サフィーナ様、優しいな。
夜になって、王様と話ができました。
彼女も転生者と言う話はしました。
そうでないとつじつまが合わなくて、説明ができないので。
そして今回の事件、国に精神系の魔法である魅了が使えるが届けて
いなかった件。
学園で、魅了を使って男性をとりこにしていた件については、操ら
れていたためであり、不問としてもらった。
そして、今後については、国の暗部系諜報課に所属してもらうこと。
危険な仕事には就けず、尋問等を専門とする事など、安全な環境を
約束してもらった。
今回の魅了は、特殊スキルのレベルがもっと上がれば、解りません
が、ルカ王子も王城にいるだけで徐々に効果が薄くなり、すぐに私
の鑑定にも引っかからないぐらいになっていたので、魅了からの回
復は以外に簡単なようだというのが解りました。
王城の魔法禁止程度で回復するなら、すでに魅了にかかっている人
については、魔法陣を使った回復が可能だろうという話になりまし
914
た。
915
5.41 リリア実家へ
リリアを王城に保護し、リリアの家には手紙を送る。
そして、無事朝を迎える。
リリアは少し落ちついたようだ。
昼前には親が心配して迎えに来た。
メリーナ様からのお守りができていないので、暫くこのまま王城で
待ってもらう。
母親と一緒に王城の庭に出てゆっくり過ごしてもらうことにした。
サフィーナ様も一緒に付き添っている。
昼過ぎに、リリアを心配した学園の男子が2名王城に来た。
手配どおり、王城の魔法禁止エリアに入る手前で待ってもらう。
私と、魔法陣を使う宮廷魔道士のセットで迎えに行く。
そして、私が鑑定で確認する。
魔法陣の治療前は、二人とも確かに魅了にかかっていた。
宮廷魔道士が、そのうちに1人に魔法陣を使って精神状態異状を回
復する魔法を使う。
私の鑑定でも表示されなくなった。
もう1人は、王城の魔法禁止エリアに入って貰う。
鑑定を行うと魅了のまま、やはり即効性が無い。
もう1人も魔法陣で治療する。
916
治せる事がわかったので、後は学園に行って対象者を治せば良い。
対象者は多く見積もって50人、全員に治療を実施すれば良い。
状態異常が回復した二人に、見舞いをどうするか再度聞く。
今は落ち着いているなら、またにするとあっさり帰ってくれた。
その後に、メリーナ様からお守りが贈られてきた。それをリリアに
渡す。
母親には、娘が特殊な能力を持っており、何者かに操られ悪用され
た事。
それに対してお守りが有効なので、暫く身につけ静養して欲しいと
伝える。
この件は王から私に対応が一任されている。
今後の対応については、元気になってから話をすることにした。
それと今回の行動については、学院内の事なので公には罰を与えな
いことを王と合意していることも合わせて説明した。
お礼を言われ、学園が春休みに入るので、このまま休み領地で静養
するという事になった。
とりあえず一件落着。
良かった良かった。
サフィーナ様は、もっと早く気がつけば何か手がうてたのではない
かと気にされていました。
リリアにも謝ってました。
917
ルカ王子がだまされたふりをして、王城に呼べば早く治ったのでは
ないかと。
精神支配が弱くなっていたから結界や魔法禁止で阻害できましたが、
最初の頃に王城の魔法禁止で元に戻れたかは解りません。
私も少し前なら魅了の解除はできなかった
と言う話をし、誰も死んでいないし直接的な被害は出ていないから、
タイミング的には丁度良かったのだと。
今回のお茶会のおかけで見つかったのだから、サフィーナ様のおか
げですよと。
とりあえずサフィーナ様も落ち着いた様なので、この話は何とか解
決しました。
あとで、リリアの扱いについて宮廷魔道士の裏調査隊の組織に入れ
る話を進めないといけないのですが、トップのアレクサンドロ公爵
は遠征に行っていないので、後日副司令官に相談に行きました。
学園に復帰後、学園卒業後に裏調査隊に入れるように準備をします。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
さて、私は今日から面接で合格した人を領地に転移させることにな
っていました。
そちらのお仕事もおろそかに出来ません。
918
採用後に、本当に領地に行く人は、先週末の金曜日に集まってもら
っていました。
500人の採用に対して、狙いは300人でしたが結局400人が
集まりました。
今までも王都の店で従業員を募集してたのに、なぜ急に領地の募集
案件に来たのか。
就職情報は個々のお店での募集よりも、領主からの募集の方が人気
が高いそうです。
店は、つぶれたら終り。
領主雇いは、店がなくなっても他の事に移動すれば良く、永久就職
先として人気が高い。
特に、今回我が家の領地は現在国内で最も成長率が高く、息子が王
女と婚約となれば、高い人気は当たり前と言うことでした。
王都勤めは100名です。
教育担当も用意されているのでこちらは順当。
王都で就労する人を、王都側の担当者が全て仕切るのでお任せです。
問題は、残り300名の領地へ移動です。
大半の人は、先週集まった後に、領地へ向けて集団で移動を開始し
てもらいました。
乗り合い馬車に15人ほど乗り、2週間で、移動してもらいます。
馬車10台。150人の男性の元気な若人は頑張って自力移動して
もらいます。
それ以上の馬車が予約できませんでした。
919
軍隊の移動ならまだしも、一般用途でたくさんの馬車を使った移動
はあまりなく、300名の移動は大変でした。
そこで、残りの女性100名と50名男性、高位者あるいは少し年
配の人を、私が転移で徐々に連れて行くことになりました。
今日は20名。
明日からも名簿にしたがって、10名から20名を移動させます。
本日の午後から、タクシーとして頑張ります。
がんばろ。
920
5.42 侍女エリン1︵前書き︶
たくさんの修正指摘、ご協力に感謝しています。
921
5.42 侍女エリン1
エリンは、シドニアの王城で働く侍女だ。
学園の高等学校を卒業後、王城で働く侍女の試験に合格し、その
まま勤めて2年。
現在18歳。
男爵家の長女として生まれたが、貴族とは名ばかり。
親は王都から少し離れた領地で文官をしている役人。特に高位の
役職でもない。いつまでたっても下位の文官だった。なので、裕福
な家ではなかった。
当然だが、婚姻関係を結んだところで優位になる家柄でもなかった
ので、婚約者などいるわけも無い。
母親は、それなりに良家出身だ。
父は割りとハンサムなほうだ。学生時代に、母が父の事を気に入り、
結婚したらしい。
私は、頭脳は母親、顔は父から。良いところを受けついだ。
しいていうなら、私はチビだ。スタイルも良いほうではない。
なので、なんとか学園で爵位の高い貴族に魅入られ、嫁入りでき
ればとも思っていたが、かっこいい男子や、条件の良い男子は、す
でに婚約が決まった状態で学園に来ている。
入学してすぐに、すでに勝負は終わっていたことに気がついた。
結局学園にいる間は勉学に励み、学園生活は女子ばかりの中で楽
922
しんだ。
そして卒業の頃になり、自分の進路で悩んだ。そこで、王城の侍
女の募集を発見し、応募する事にした。
王城の侍女として働けば、給金がもらえる。場合によっては、王妃
から良い縁談を紹介されることもあるらしい。相手が非常に立場が
上の場合は、一時的に王の妾とした後、降嫁されることもあるらし
い。
まあ、そんな事は稀ではあるが、普通に王城で勤めれば、適齢期
になれば王妃に気に入られたい貴族からの見合いが引切り無し、縁
談は事欠かないと聞く。
そんな事を夢見て王城の侍女試験を受け、成績が良かった私は、見
事合格。
現在侍女見習いを卒業し、一人前として働き出していた。
侍女になりたての頃は、離宮のほうへ配属された。元王妃の方が、
私を見かけて新人の受け入れ先になっていただけた。子供のエミリ
ア様に似ていると可愛がって頂けました。エミリア様は、姿絵でし
か見たころがありませんが、髪と目の色が一緒なだけで、とても似
ていると言い難く、その体型は全く違うと言っても良い。
エミリア様は背も高く、スタイルも抜群。何を着てもとてもすばら
しく着こなせていたそうですが、私はチビ。ですが、元王妃はそこ
が良いのよと、気にせずいろいろと教えて頂けました。
どうやらエミリア様の子供の頃に似ているらしい。
私はすでに大人なのに、ぐすん。
923
正式な侍女になると、2妃様付きの侍女に組み込まれましたが、
2妃様と元王妃様はよく一緒にお茶会を開かれ、とても仲が良かっ
たこともあり、同じように私もひいきしてもらえていました。事あ
るごとに、私が指名され2妃様の面倒を見ていました。
そんな中、シドニアは今週から戦争が始まり、王城内は何時に無
く騒がしい状態でした。まだ小競り合いの状況ですが、すでに死者
も数名で始めていた。それが今朝から一変し、ついに戦争が始った
という知らせが届いた。王城の中は、兵士が右往左往していた。
さすがに、現段階では後宮まで影響は無い。ただそこらかしこで
兵士へお別れを言う侍女達いる。なのでそれなりに騒がしかった。
そんな中、今日の昼食も終わり午後の仕事をしている最中だった。
たまたま王城の外を見たら、大きな鳥が飛んでいった。
上に二人乗っているのが解った。
なぜか、そのうちの1人が子供っぽく、とても気になった。
それから1時間ほどたっただろうか、王城の庭にその大きな鳥が
降りた。
丁度、私がいた部屋は、たまたまその様子が見えるところにいた。
どうやら王城の一番高い見張り塔から、この鳥がグランスラム帝国
の兵士を全滅させる様子が見えたらしい。
たしか、1時も経っていない。あっという間に全滅させている。
924
英雄様と言う声が聞こえて来た。
私達も、どんなすごい勇者だろうと、他の侍女達と一緒に上から
覗いた。
大人の男性が1人と子供が1人。皆は、大人騎士の方を英雄様だ。
ダンディで素敵な方と言っているが、私は違うような気がした。
もう1人の子供の方が英雄ではないだろうか。なぜなら、大きな
鳥に指示を出しているのは、騎士の方ではなく、子供の方だ。
彼らは王城の中に入って行き、見えなくなった。そしてすぐに、
今夜彼らが王城に宿泊するから侍女を決めると連絡があった。
騎士の部屋と、子供の部屋の侍女係り争奪戦となった。
私は、誰も希望しない子供の方の面倒を見ると立候補した。
当然だがそこは誰も希望しなかったため、私の要望はあっさりと
認められた。
私は数名のくじで外れた侍女達を連れて急いで部屋を整理。
部屋に来る直前に、王妃様から宿泊者の情報が来た。ジルベール・
クロスロード様。年は10歳。
ラルクバッハ王国の伯爵家の子供ですが、王女2人と婚約したば
かりで、将来は公爵位を継承する予定と記載されていた。
10歳で王女2人と婚約、そして公爵位の決定。これはすごい人な
んだと、会うのが楽しみだった。
王との謁見が終わると、ジルベール様はすぐに部屋へ案内されて
925
きた。少年は、割とかっこいいタイプの子だった。成長すると、と
てもハンサムになるだろうと思われた。
とりあえず、夕食まで時間があるので、湯浴みを進めた。
他の、侍女を連れて体を丁寧に洗う。10歳と言っていたが、とて
も筋肉質で子供に思えない立派な体つきだった。
そして着替えを準備しようと、こちらの国の服を出したが、ジル
ベール様が、突然何も無い空間から服を出して、どれが良いと聞い
てきた。空間魔法を使えるとは、すごい。
驚いていもしょうがない。
ここは私の得意分野。用意してあった服と、ジルベール様が取り出
した服を組み合わせ、着替えさせ、髪型も整え、全体的にコーディ
ネイトした。
すると、ジルベール様、鏡の前で姿を確認し始めました。
あ、もしかして気に入らなかったのだろうか、緊張します。
私のほうを向いて、
﹁どうですか?﹂とにっこり笑って来ました。
ああ、良かった気に入っていただけみたいだ。
緊張が解け
﹁はい、とても良いと思います。お気に召して頂けたでしょうか?﹂
と聞いてみた。
﹁はい、とても﹂と答えが、良かった。
その後、ジルベール様と少しお話をした。
926
高貴な方なのに、私に対して、気さくに受け答えしてくれます。
そして話がすごく面白い。
本当に10歳とは思えないほど賢く、受け答えの一つ一つが感心
させられた。
そして、楽しい時間はあっという間に過ぎ、ジルベール様が食事
に行く時間になりました。すると﹁突然ですが、﹂で始まり、私を
侍女として国に来て欲しいと誘われた。
私は、すごく喜んだ。が、そこは異国の地。
しかも、王女2人と婚約をした人。もしかしたら、この年で女の扱
いに手馴れていて、本当は私をただの妾として誘っているだろうか。
少し不安にもなり、どうしようと一瞬迷う。
しかし、私の結論は、すぐにでた。自分の感を信じることにした。
とりあえず、しっかりとした自己紹介をしていなかった事を思い
出し、エリンと名を伝え﹁考えておきます﹂と無難な答えを伝えた。
私の中では行く事は決定している。こんな小さな子の妾などとは
考えていない。
私は、最初に会った時に、この人が主人だと思ってしまった。なぜ
かは解らない。
さあ、王妃様にこのことを伝え、王城をやめさせてもらう許可を
貰わなければならない。
927
ジルベール様が、食事に言っている間に、まずは侍女長へ話を通
し、今日の夜に急ぎで私の担当である、2妃様に会えるようにして
もらった。
ジルベール様が、食事を終え、眠るのを確認したら、王妃様の部
屋へ行き、相談に行った。
王妃様は﹁でかした﹂と大喜びだった。やはり、本当の英雄は、あ
の子だったらしい。
ジルベール様は、剣の腕前は騎士団以上。それだけではなく、爆発
的な魔法の才能の持ち主で、魔法の腕前は、宮廷魔道士が束でかか
っても勝てないほど。
そして、聖獣を操り、空間魔法も使える。
王妃様が言うには、明後日に王妃様達を連れて、ラルクバッハ王
国に戻るそうだ。それからさらに、1週間後に王妃様達を連れて戻
ってくるそうなので、私をラルクバッハ王国に連れて行くならその
時になるだろうと。
王妃様達が、ラルクバッハ王国に旅立った後、親元へ帰る許可を
貰いました。1週間でラルクバッハへ旅立つ準備をするよう、言わ
れました。本当は、もう少しゆっくり準備をさせたいけど、相手側
の気が変わらないうちにさっさと済ませたいそうだ。
実家は、馬車で2日ほどなので、十分間に合います。馬車は、王
妃様が準備をしてくださるとの事。
今回は、国の英雄に侍女を渡すので、王様からかなりの支度をして
頂けるだろうとの事でした。
そして二日目の朝、王妃様達を連れて、ジルベール様は、ラルク
バッハ王国に帰ります。
928
1日目に声をかけて頂いて以降、その後、返事を催促される様な事
が無かったため、返事を保留したままでした。
このまま諦めて帰りそうだったので、思い切って、自分から迎え
が何時になるか聞いてみました。
すると﹁異国での勤めですが、大丈夫なのですか?﹂
﹁王妃様からも許可を頂き、もう、退職願は出ました。ジルベール
様からのお誘いなら、断る理由もありません。ぜひお使えさせてく
ださい﹂と正式に返事をしました。
すると、出発の準備が必要だろうからと、アイテムボックス2個
と、マジックバックと言う空間魔法がかけられた収納できる魔道具
を貸していただきました。予想外の対応に、腰が砕けそうでした。
マジックバックは、国宝級の品です。それをポイと貸していただ
けるとは、この方は私が思っている以上にすごい方かも知れない。
さあ、1週間後に向けて、準備をしなければ。
恐らく、もうシドニアに戻ることは無いのだろう。
アイテムボックスもあるので、実家においてある物も全て持ち出せ
そうだ。
ジルベール様たちが出かけた後、昼過ぎにはすぐに馬車が用意さ
れ、私は実家に向けて出発した。
用意された馬車は、高位の客人用の馬車だった。
嫁に行くわけではないが、降嫁の儀式とほぼ同じ待遇だった。
王妃様から指定で、途中の宿泊もかなりの高級宿。2日後に実家
に到着。
実家には先に帰ると早文を出してあったが、実家の前に停止した
高級な馬車を見て、どこの高位の方が来たのかと、近所中の人が集
929
まってきた。
王都での英雄騒ぎは皆が知っていた。私が、彼の侍女としてついて
いく事になったと言うと、家族のみんなも信じられないと言う顔を
していた。
それを無視し、もうシドニアには戻って来れないかも知れないか
らと、実家においてあった思い出の品を全部アイテムボックスにし
まって行くと、皆がそのような魔道具を与えられた事に驚き、本当
の事とようやく理解してくれた。最後にマジックバックを見て皆が
驚愕していていた。
お菓子や、果物など、生ものでも時間経過が無いという事で、私
の好きな物を沢山持たせてくれた。極めつけは、母親の作ったいつ
ものシチューをたっぷりと暖かい鍋ごと渡された。
その日の夜は、家族そろって大パーティが開かれた。
実家には、2泊の予定だったので、しっかりと親孝行もしてから、
王城へと戻った。
王様からも、激励を受け、何かあったら売ってシドニアに帰って
こいと、かなりの高級なネックレスを頂きました。シドニアの高位
侍女だけが持てる王家に関わる関係者の証となるペンダントを貰い
ました。
ラルクバッハ王家に嫁いだエミリア王妃の妹である公爵夫人とも会
いました。
公爵夫人からはエミリア王妃への、手紙を受け取った。
公爵夫人から、あらあら、私の子供に似ているわねと、12歳の
女の子と並べられたのは少しだけショックだった。それも、殆ど同
じ身長だった。公証値155cm実測153cmがばれた。
930
でも、さすがに12歳の子に胸は負けてませんでしたので、まあ、
セーフです。
なんだかんだと忙しく過ごした1週間が過ぎ、王妃様方の帰還と
入れ違いで、私はラルクバッハ王国へと旅立った。
−−−−−−−−−−−−−−−専属侍女とは
専属侍女は、公爵家以上の後継が10歳前後でつける専用の侍女
の事で、主人のために様々な事を行う。代表的なところでは、スケ
ジュールを把握し、あるイベントの服の事前手配、プレゼントなど
の案を作り主人と内容を決め手配する。参加者のリスト、挨拶希望
の順番、挨拶の文面などなど。勿論、毒味をする前に匂いなどで事
前確認、献立の栄養バランスの確認も行う。
ジルベールは好き嫌いもなく、アレルギーも無いので献立の確認
は楽だ。
そして、それらの仕事は結婚すると状況が変わってくる。一部の
仕事は結婚した妻がやる。
男性の執事が雇われると、さらに一部の仕事がなくなる。
専属侍女は10年の契約になっており、10年後に奥さんなどと
状況を再確認し、専属侍女に主人との子が出来ていれば大抵はその
まま妾になる。そうでなければ侍女長となり主人以外の男性と見合
いをし結婚をする。
もしくは、契約の更新を終了しそのまま辞める。
最後に暫定的に1年毎に専属侍女を延長する事もある。
が大半の専属侍女の最後はこの3つのどれかだ。
931
専属侍女は、妻と会う時間や相手もある程度調整する事が可能だ。
専属侍女が片側の妻にだけ肩入れすると、大半は10年を期にもう
片方の妻から辞めさせられる事もある。
現王の専属侍女は、10年の契約後は侍女長となりその5年後に
侯爵家の後妻となり侍女長を辞めた。
彼女は、エリンの教育に呼ばれ、指導をしてくれる。
例外としてルカ王子の1代目の専属侍女は、専属侍女になって1
年後に妊娠初期が発覚し、もめた。
後宮にしかいない専属侍女に他所の男と会う事など不可能だ。当時
10歳の王子がすでに子を作ったのかと言う話が出たが、相手は王
子の剣の先生だった。結局、これは王子が手引をするのを手伝って
いたのも解り、揉める事なく専属侍女を辞めそのまま侍女を退職し
嫁に行った。
現ハイルデン公爵の専属侍女は、妾になってますが子供はいませ
ん。奥様2人と仲が良くて、どこかに行かれるのが寂しいと奥様か
らの願いで妾になってます。妾は、普通は別の棟など妻から離れた
部屋に行きますが、この方は妻の近くに部屋があり堂々と存在する
珍しい妾でした。この方もエリンの教育に来てくれます。妻とも仲
良く暮らしている事が評判となり、家にいるよりも侍女教育で出か
ける事が多いほど大変忙しい人です。
専属侍女の仕事に性のお相手は、含まれません。ただし主人に恋
心を抱いていけない決まりもありません。
専属侍女である間は、主人以外の男性と直接話すことはありません。
家の中のコックや執事と話をしますが、1対1では話しません。1
対1が許されるのは主人だけ。
逆に主人も結婚前に1対1が許される女性は専属侍女だけ。主人
932
と婚約者は移動中の短時間なら1対1が許されてます。
933
5.43 侍女エリン2
ラルクバッハへの移動の日。
王妃様達が帰ってくるなり、出発のセレモニーが始まりました。
私は花嫁衣装とは異なりますが、男爵家が夜会で着るドレスとは比
較にならないほど高級なドレスを着ていました。王妃様が急遽用意
して下さった物です。
ジルベール様が私を見てとても綺麗と言っていただき、うれし、
はずかしでした。
私はジルベール様が見守る中、王様、王妃様方から激励の言葉を
かけらた。最後に王様が私をエスコートし、ジルベール様にエスコ
ートの引渡しをしました。
すごく緊張しました。もうまるで結婚式のような感じです。
次に王妃様に案内され、後宮の庭園へ移動しました。100人の
侍女達が花びらを投げ、それが舞い散る中を抜けて庭園に出ました。
花びらがとても綺麗でした。ジルベール様が緊張していたのが伝わ
ってきました。
最後に庭園で3人の王妃様から贈り物を受け取り、抱きしめてら
れセレモニーが終わりました。
皆が祝福してくれた。これからジルベール様の専属侍女として頑張
ろう。
そして、ラルクバッハへ移動しました。
934
移動した直後、初めての転移で動揺していました。
ジルベール様は、先ほどのセレモニーに驚き。そして私がかわい
過ぎると、ほめられ、ふたりでほのぼのと話をしていました。
そして、そのままラルクバッハへ移動しようと言うので、えっと、
確か大隊長さんも一緒に行くはずでは。と言うと。真顔で﹁あ、忘
れてた﹂と。
しっかりさんだと思っていましたが、結構お茶目なところもあるの
だなと。ジルベール様の事がまた一つ解りました。
それから大隊長さんを迎えに行き、他の方も連れてラルクバッハ
へ転移しました。
兵士の方々がなぜか猛烈にアピールしてくるので困りました。ジ
ルベール様が一喝して落ち着きましたが、男性の猛烈なアピールは
少し怖かった。
私達は、ラルクバッハ王国のジルベール様の領地へ直行し、まず
はジルベール様のお母様に挨拶をしました。ジルベール様の美形顔
は、母親譲りなのですね。お母様を見たら納得しました。
ここで働くのかと思っていたら、まずは王城で1ヶ月ほど研修を
受けることになったと伝えられました。ラルクバッハ王国の王妃様
直々の命令だそうです。
ジルベール様は、現在伯爵位に準じた生活をしておられますが、
いずれは公爵位となります。
935
専属侍女は、公爵家侍女として相応しい教育が必要と事で、元公爵
家令嬢の2妃様、3妃様が教育責任者となり侍女教育のカリキュラ
ムや先生を探してくださるそうです。
この1ヶ月の教育責任者は、2妃様になると伝えられました。そ
の後、4月にもう一度継続の教育を行うといわれました。そちらで
の教育は、3妃様がされるそうです。シドニアから行かれたエミリ
ア様は、同郷なので甘くなるかもと、今回は外れたそうです。
一緒に教育を受けるという4名の紹介がありました。3名は、各
王妃方が推薦したフィリップ王子の専属侍女。もう1名は、私が休
みの場合に代理が必要なので、そのための人です。
皆さん、大変綺麗な人達でした。この4名と比べられると思うと、
すでに、心が折れそうでした。
さて、侍女教育と言っても私はすでにシドニアで2年も教育を受
けていたわけで、楽勝でしょうと思っていましたがそれが馬鹿でし
た。
専属侍女教育と、一般の侍女教育が一緒のわけがありません。公
爵家の主人に使える専属侍女となれば、場合よっては侍女長も指示
する立場。専属侍女が相手をするのは、ただ一人、主人に対しての
み。侍女長は他の方々の侍女も取りまとめますが、最優先すべきは
やはり主です。主に関する侍女への指示は、侍女長ではなく専属侍
女の方が上になります。
専属侍女は、10年の長期契約なので、大抵は専属が終わると侍
女長になると聞いています。
その場合はあらかじめ侍女長を置かない事もあるのだとか。そうい
う場合は、専属侍女である間から侍女長の役割もしなければならな
いのだとか。
936
現ラルクバッハ王の専属侍女は、そのようなお仕事をこなしてい
たらしいです。彼女は、すでに侯爵夫人となっていますが、今回先
生として教えに来てくれ、何度か雑談の中で昔のお話をしてくださ
いました。
そして、そのようなまとめの仕事が専属侍女の仕事の仕方。当然
ですが一般の侍女のようにベッドメイキングや部屋の掃除などして
いる時間はありません。数名の侍女の指示を的確に出し、主人の仕
事が滞ること無くしなければいけません。
それに、食事の手配、毒等の知識も必要です。いちいち、毒見で
全てを解決している訳ではありません。
見た目、匂いなどで、毒を感じ取り、それで解るものはそれで避
けないと、人が沢山死にます。
専属侍女が毒見をする事はありません。しかし、事前に毒がある物
は極力取り除くのが役目です。
危険を察知する事が重要です。
護身術も必要ですし、マナー、貴族のルールなど、高位貴族が身
につけている基礎知識やルールに、さらに、スケジュールの割り振
り、必要品の準備など様々な技術を身につける必要がありました。
例えば、ご主人の部屋の花を飾るにしても、季節や本日訪れるお客
様の好みに応じて適切な花を飾らなければご主人様に恥をかかせて
しまいます。
もちろん花の飾り方も。
さらに教育開始後すぐにジルベール様が、王弟と言うポジション
937
になる事が決まりました。王城の副棟にジルベール様の専用部屋が
出来ることに。つまり、男性禁止区域に住まわれる。当然男性の執
事は中には入れません。専属侍女が、執事の一部の仕事も担当しま
す。
ジルベール様が正式に公務を担当される場合は、ご自宅にも執事
がいますので、全ての仕事をするわけではありませんが、かなりの
部分を私がやらなければいけません。そのための技術も習得しなけ
ればいけません。
恐らく、四六時中ジルベール様のおそばにいる事になります。そ
れはそれで嬉しいのですが、頑張らないと。
こうなると、教育がさらに厳しく。王の専属侍女だった侯爵夫人
からの教育も熱が入り、ほぼ私とマンツーマンで教育指導がありま
した。
ルカ王子の専属侍女より教えがいがあるはと言ってくださいます
が、褒められているのか困らせているのかわかりません。とにかく
必死でした。
でも、教育があまりにきつくて、あきらめそうになった事も。
そんな時に、スザンヌ様から﹁ジルベール様に選ばれた人が、こ
んな事で諦めてはダメよ。私もあなたと同じぐらい忙しいし、大変
だけど、ジルベール様のためと思えば何てこと無いわ。さあ、貴方
もジルベール様のすごさを更に知れば、もっと頑張れるわ﹂と励ま
され、いかにジルベール様がすごい人か説明されました。
スザンヌ様の話を聞けば聞くほど、ジルベール様がすごい人に思
え、そんなにすごい方にお使え出来る自分が嬉しくなり、やる気が
出てきました。
別の時には、専属侍女をうらやましいのか、私に対するいじめが
ありました。
938
その時に、マリア様が
﹁選ばれてもいない人のひがみなど聞く必要はありません。例えば
ジルベール様は今あなたの気に入っているところが一つだけかもし
れない。
でも今気に入って貰えるところが一つしかないから不安ならば、こ
れからお気に入りを増やしてもらえればもっと自信が出るでしょ。
ジルベール様に気に入られるところを増やすために教育を受けてい
ると思いましょう。今の辛さも未来のため、ジルベール様に気に入
ってもらえるところを増やすためと思えばどうという事は無いでし
ょ。
私は、まだまだ未熟です。
これからの10年、私ではなく、あなたが頑張ってジルベール様を
支えてもらわないといけないのです。こんなところで立ち止まらず、
頑張ってください。
そして私の代わりに、ジルベール様を支えてください。私も一緒に
頑張ります﹂
と励まされた。
さすが王家の王女様、7歳とは思えない。
ジルベール様並みに、しっかりとしたお言葉。
さすがジルベール様の婚約者です。王女2人は、ジルベール様同
さすが
ジルベール様の専属侍女と呼ばれるよう、頑張り
様、とてもすばらしい方です。
私も、
ます。
研修中に3度ほどジルベール様と会う機会がありました。いつも、
おやさしい言葉をかけて頂き、そして誉めまくられ、また頑張る気
939
合が出てきました。
1妃様は、私を見かけるたびに、優しく言葉をかけてくれました。
そして、ようやく卒業。
2妃様から合格の言葉を頂き、特別に作ったという緑色の専属侍
女の衣装を頂きま
した。制服は、ラルクバッハ王国で最高級の服、サフランサフラン
でした。
これ1枚で、平民の家ぐらいなら買えてしまいます。袖を通す時に
は、大変緊張しました。
2妃様が
﹁私と、シドニアの王妃が合格を出したのだから、遠慮せずに着な
さい。
王弟の専属侍女なのだから、このくらいの物を着ておかないとね。﹂
と言われました。
着替えが終わるとピシッと気が引き締まります。
そして、王城内の教会に行き、お祈りをしました。その後で、ジ
ルベール様に引き渡されました。なぜか教会でお祈りをした後、体
が少し軽くなったのですが、これは卒業の言葉のおかげでしょうか。
それになんとなくウエストが引き締まったような。
ジルベール様から﹁緑の衣装、似合ってるよ。素敵だね。﹂と誉
められました。とても嬉しかったです。そしてその後﹁今日も可愛
いよ。それに研修頑張ったね﹂と耳元で囁いてくれ、頭をなでられ
ました。
ジルベール様におつかえできて、私は幸せです。ジルベール様の為
940
に頑張ります。
941
5.43 侍女エリン2︵後書き︶
王妃様のジルベールへの教育が上手く行き過ぎて、女性慣れしすぎ
てるかな。
942
5.44 仮成人の儀
今日は仮成人の儀を行う日だ。
内容は事前に軽く聞いたが、大半は内緒と言われ不明です10歳
になった男子に対して3月中に行う儀式です。全ての貴族層で行わ
れるわけではなく、侯爵家以上で行っているしきたりだそうです。
当然ですが家は伯爵家扱いなのでそんな行事は知りません、関係
ないのでは? とおもいましたが、最近は裕福な伯爵家でも行うら
しい。
と言うことで私も巻き込まれた。
さてまずは父親との交流から始まります。
私は父がいないのでレオン王が代理になってくれるそうです。ま
ず最初に、今日は王ではなく、父と呼びなさいと言われちゃいまし
た。もちろん、フィリップ王子もですけど。
﹁﹁はい、おとうさま、今日はよろしくお願いします。﹂﹂と2人
で相談した挨拶をぴったりと重ねる。この言葉だけで、王様がすご
く上機嫌でした。
さて、フィリップ王子と私が交代で腕相撲をするそうです。当然
ですが10歳なので子供が負けます。フィリップ王子瞬殺です。王
様から小声で﹁ジルベール負けてくれ、これは父が勝たねば話が進
まん﹂と正直に言われました。
﹁はい、おとうさま﹂と返事をしたら二マーと笑顔になった。
なんだか今日は嬉しそうだな。
943
そしてスタートするともちろんギリギリで負ける感じの演技をし
ました。見ていたマリアが﹁お父様かっこいい﹂と声をかけてまし
た。スーはなんとなく気がついているのか本気なのか演技力がすご
いのでよくわかりません。とりあえず盛大な拍手を送ってます。王
妃様方も微笑んでます。
王様はすごく嬉しそうです。
フィリップ王子が﹁ジルベールでもお父様との力比べは負けるん
だな﹂と。え勝てますよ。軽く。
お互いに身体強化を使わなければステータス上でも私の方が腕力が
上です。腕は王様の方が太いのに、私の方がステータス上強いのも
不思議だな。異世界人は筋肉の質が違うのだろうか。
以前、メリーナ様が全身に魔力が巡っていると言っていたが、そ
のせいなのだろうか。身体強化をつかわなくても、そもそも強化さ
れて筋肉が作られるのかな。
お昼の最大のイベントを終了させ、教会でお祈りをしてから庭で
お茶を飲みます。
最後の甘えの時間と言われてな、ぜか王様・王妃様にリリアーナ
お母様のひざの上を順番に移動しました。
関係ないけどスー・マリア・マイアー様・シュミット様もひざの上
に乗ってました。
10歳で仮成人になり、甘え終りなのにスーは良いの?と聞いた
ら女の子にはそんな儀式はないそうです。あくまでも、ついでに甘
えたんだとか。いつでも甘えられるけど、だからと言っていつも甘
えてるわけじゃないから。という事です。
私は全員のひざの上を移動し頭を、なでなでされた。しかし、王
944
妃様にはしっかりと抱きしめられ顔があれに挟まれて息ができなか
った。苦しむまで抱かれてたし。もちろん、フィリップ王子も一緒
だった。私の肺活量は多いので、1人2分ぐらい抱擁された。
2人ですごいね。死にそうだったと話す。フィリップは1妃様か
らの抱擁ではなく、3妃様の事を幸せだと言ってました。2妃様が
一番クッション力があり、次が3妃さま。1妃様は柔らかくて包み
込まれた。特に1妃様は体も少し大きいのにあれも大きいから、頭
が全部埋まりました。
いやきっと大人になったら、あの時死んでも良かったと思うのか
な。などどと話をしてた。
その後の衝撃イベントを知らずに。
さて夕方になり最後の儀式に移動です。掘った温泉の近くに作っ
た仮風呂が本格的な温泉場に変わってました。
その完成に合わせて予定していた私とフィリップの仮成人の儀式
を合わせてありました。
王様は結構嬉しそうです。
お風呂なのでマリアとスーはもちろん参加しない。王女達は部屋
に戻りました。
ルカ王子もマクシミリアン王子も参加しない。男なんだからせっ
かくなら一緒に入ればよいのにと思ってましたが、勘違いです。そ
んな男通しのコミュニケーションの儀式ではありませんでした。
王様とフィリップ王子と一緒に完成したお風呂に入ります。
945
だれもいない。一番風呂を堪能。するとがやがやと音がして誰か
入ってきました。
誰?
王妃様3人とリリアーナかあさま、エイミー、エリン、アリサ。
アリサは王城でエリンを手伝ってくれる侍女。それに、フィリップ
の侍女のサラ、シルビア、スピア。
みんな素っ裸だ。タオルで下は隠してるけど上見えてるし。
え! 王様いるの、どういこと。
王様から﹁これを気に母親と一緒お風呂に入るのが最後。これで母
離れ子離れをするのだ。
そして身近で世話をする侍女や、それに近い人と一緒にお風呂に入
り、今後も仲良く暮らしていく事を確認する。
これが仮成人の締めの儀式だ﹂
それを見届けるのが父親の役目らしい。
もちろん私の父の代役は王様がやってくれたそうです。
﹁へーそうなんですか﹂と私が。
1妃様から﹁そうよ。これが母の見納めだからしっかりと見ておき
なさい﹂と言って私の正面に皆が半身浴で並ぶ。
﹁若い子も見れてレオン様が、1人役得よね﹂と2妃様が。
﹁レオン様ちゃんと隠してください。今日は儀式ですから﹂と3妃
様が。
﹁うむ﹂と言って下半身にきつくタオルを巻いていた。
そして私は、リリアーナかあさまに体を洗ってもらい、フィリッ
プ王子は、1妃様に体を洗ってもらった。
946
その後、私とフィリップ王子が全員の体を洗う。
私はリリアーナかあさまと、エリン、アリサにエイミーを洗った。
フィリップ王子は3人の王妃と、3人の侍女を洗うようだ。
だが、人数が多いのか、結局2妃様と3妃様は私が洗うことにな
った。王女と婚約してるから私達は、母の権利があると主張された。
なんでそんなに私に洗って欲しいのでしょうか疑問です。
洗い終わってホッとすると、1妃様が、私だけ洗ってくれないの
と、すねるので洗いましたよ。きちんと。
ちなみに洗ってる時に王妃様はこっそり、あれをもませて固さを確
認させられました。秘密です。って王様見てたし、お風呂から出る
ときに、どうだって笑いながら聞かれました。正直に﹁柔らかかっ
たです﹂と答えたら、﹁そうじゃろ﹂と自慢げに言われた。終始テ
ンションが高くて、今日はよく解らん王様でした。
もちろん、私が1妃様を洗っている間に、フィリップは2妃様と
3妃様を丁寧に洗ってました。
1妃様を洗い流した時に、フィリップよりも上手ねと誉められ、
あれで挟まれながら抱擁されました。こ、これはダメですよ1妃様。
私が1妃様から解放され、立ちあがるとふらついて起きる途中で
倒れそうになりました。
すると、ずっと横で見守っていたエリンがすぐに抱き上げて助け
てくれました。が、エリン、あなた今裸だから顔に近すぎ。じゃな
くて、触れてる唇に。ああやばい。力が抜けそう。
水を渡され、飲んで一息。
はー、危うく気を失いそうでした。
最後に王様の体をフィリップ王子と一緒に洗って儀式終了。
はー、これで少し冷静になれた。男の裸が役に立つとは、全く。
暫く温まってから出ます。
947
こうやってお風呂に入るので、仮成人の儀式は気温の関係で3月
の中旬から後半に行われるそうです。
しかしエリンもエイミーも割りと大きいとは思っていたがしっか
りしてた。
他が大きすぎるのでしょう。サラが少し小ぶりに見えるぐらいで
した。それでもDなので世間的には良いサイズのはず。
異世界だから? 貴族だから? 巨乳率高いなー。
実は、リリアーナかあさま、今日はなんとなく若くなってた気が
する。気のせいだろうか? 王様に見られるからなにかしたのかな
? そなな魔法でもあるのだろうか気になったので、領地に戻って
から聞いてみよう。
いや上位鑑定追加魔力で見ちゃいました。
1妃エミリア ︵41︶170cm,B105J,W65,H90
58kg
2妃レオニー ︵41︶165cm,B95H,W60,H85
55kg
3妃アナ ︵26︶158cm,B100I,W62,H90
49kg
リリアーナ ︵47︶163cm,B90E,W62,H92 53kg
エイミー ︵30︶170cm,B85F,W55,H82 57kg
サラ ︵19︶157cm,B84D,W62,H87 50kg
シルビア ︵19︶165cm,B85D,W62,H90 54kg
948
スピア ︵19︶162cm,B85E,W60,H87 52kg
アリサ ︵21︶160cm,B90F,W58,H90
52kg
この体型を維持︶
エリン ︵19︶153cm,B90G,W56,H83 46kg︵美容補正効果
エリンは、この数日でまたウエストが減っている。無駄なお肉が
お胸に集まったのか? どうやらこれで体型が維持されるようだ。
アロノニア様の加護ってすごいな。
949
5.45 侍女エリン3
4人の侍女教育仲間では、サラが一番中の良い子です。フィリッ
プ王子の選任侍女筆頭と言われている子ですが人当たりが良く話や
すく性格がとても良い子です。
私のサポートをしてくれるアリサは2妃様が探してくれた人です。
ナイスバディの美人さんです。でもジルベール様が選んだのではな
いから嫉妬しないように言われました。王妃様が言うには、ジルベ
ール様は絶対に巨乳好きなんだとか。サラもそんな事を言っていた。
フィリップ王子がシドニアに行くかも知れないと言う噂もあるの
でサラは良くシドニアの事も聞いてきました。
エミリア王妃もサラにシドニアの礼儀作法を教えていました。
ところでサラは必ず失敗をするドジッコ属性を持っています。以
前ジルベール様にも失敗し傷をつけたことがあるとかそれもあそこ
は
を。聞いた時はちょっとむかつきましたがジルベール様は回復魔法
が使えるそうなのですぐに治ったそうです。
良かった。
でもこれが後で解ってきましたが、彼女は嵌められたみたいです。
ジルベール様の所に出る前に侍女同士で練習があったそうですが、
その時にわざと弱すぎるからもっと力を入れないとダメよと、嘘を
教えた侍女がいた事が解ったのです。それを聞いていた別の侍女が
あとで証言してくれました。
フィリップ王子の専属侍女候補になったサラに嫉妬した侍女が言
ったのだ。しかしその時本当に弱かったのか、それは本人しか解ら
ず処罰はできない。しかもその子は伯爵家の妻が死んだ家が募集し
た侍女に受かりさっさと田舎に引っ越した。そして玉の輿作戦がう
まく行き既に伯爵婦人に納まっているらしい。
しかし王妃様の許可が出る前に王城の侍女を辞めたので、現在1
950
0年間王城出入り禁止になっている。
結婚相手の伯爵には、禁止は無いが婦人を伴った王城主宰の舞踏
会には来れない。
良い気味だ。
サラはドジッコですが一度した失敗を2度する事はありません。
なので教育中に早めに失敗させた方が良いと日々の侍女教育での失
敗で怒られる事はありませんでした。積極的に今のうちに失敗をし
ておけと言うぐらい。
でも1妃様が泣きながら怒った事件はすごかった。それは、毒皿
の研修の時です。
私もその時は、ああ死んだなと思いました。
毒の見極めを失敗し、舐めてしまったわけではありません。なんと
その日は、説明された毒の匂い、色の変化などでちゃんと毒の皿を
発見しました。私とサラは全問正解。残りの3名は正解率8割。良
くできたと誉められたのもつかの間、えへへと毒の皿を触って濡れ
た指を舐めてしまいました。
いきなり倒れるサラ。侍女長含め大慌て。侍女長が強引に用意し
ていた毒消しを飲ませましたが、それから3日間起きませんでした。
マリア様が最初に少しだけ回復魔法を使ってくれますがまだレベ
ルが低いから効かないのと。
ようやく起きた時はホッとしました。1妃様はもう涙を流しなが
らものすごく怒ってました。
そしてサラを抱きしめて良かった良かったと。もちろんこれ以降
サラは指を舐めなくなりました。
というか皿に指を入れる事も無くなりました。
卒業の時、正式にサラがフィリップ王子の専属侍女として発表さ
れ、二人で抱き合って喜びました。これから10年、2人とも頑張
951
ろうと誓い合いました。
そして、仮成人の儀にも一緒に出ました。
ちょっと恥ずかしかったけどジルベール様と一緒にお風呂に入れ
て嬉しかったです。侍女としてお風呂場でご一緒しますが、同じ湯
船に一緒につかることはありませんから。
その時に3人の王妃様全員のお姿も初めて見ました。サラは3王
妃の体を洗ったことがあり、そのすばらしさは聞いてはいましたが、
直接見ると本当に大変すばらしい体で、まさに殿方が理想とする姿
がそこにあり、ちょっと自信をなくしました。
まあサラよりはありますよ。
えっへん!
でも、サラ、シルビア、スピアの三人は確かに私とアリサより小
ぶり。どうやらフィリップ王子の好みが、そのあたりなのでしょう。
ところで、私、またウエストが減ってアンダーが細くなりました。
なのに胸は2cmほど大きくなって。なぜか、大きくなった割にた
れないし、鏡で見るとちょとすごいんです。チビですけど。
侍女服を着ても、なんかスタイルが良く見える。この体系を維持
すれば、ジルベール様も気に入っていただけるでしょうか。
私は妾ではないので嫌われなければ、それで良いのですが、でき
れば好かれた方が。
それに、専属侍女がぶくぶくと太っていては、ジルベール様が恥
ずかしいでしょうし。
うん、頑張って体系を維持しよう。
952
5.46 3神の女神像 以前王様に伝えていた、王城の教会に像を追加する話。
本当はもっと後で作るつもりだったのですが、仮成人の儀で意図
せず、1妃様を含め3人の王妃様の姿を拝見してしまった。現世で
最も女神に近い裸婦の姿を確認してしまったので、忘れないうちに
女神像を作ってしまいました。
実は、仮成人儀式前に空間魔法のレベルが最大になり、新しいス
キルが追加されていました。
空間完全記憶・再現とマップです。
・空間完全記憶・再現
見た物の立体的なスケールを完璧に記憶し再現できる。
・マップ移動 転移魔法の上位
空間完全記憶と連動
空間移動時に、魔法陣によらずマップ上で転移場所を指定できる。
マップは自分が行ったことのある場所が目の前に小型の模型立体
地図として表示される。
脳内のイメージが目の前にあるように見えるだけなので、地図は、
他人が見ることは出来ない。
転移させる物体は、自分の目で見て範囲指定可能
聖獣などの召還したものは置いていくか同時に移動するか指定可
能。
自分の一部とみなされ追加消費魔力必要なし。
空間完全記憶・再現は、レベルなどの習熟度はなく、特技に追加
されたスキルのようです。スキルがあれば、そういう事が可能にな
953
るようです。再現の能力を見る限り、空間魔法の他に魔力操作と個
体操作も最大だったから連動したスキル? あるいは、既に出来る
からステータス表示に出たのか解りません。とりあえず、そういう
事が出来るようになりました。
このうちの空間完全記憶・再現があったので、上位鑑定で見た王
妃のスタイルは、全員ほぼ完全に記憶しています。とはいえ、記憶
からの再現なので、日数が経過するほど再現精度が劣化しちゃいま
す。
これを使って、王妃3人の体型を3Dプリンター並の精度で再現
し、それを女神像に変更し、教会のメリーナ像と入れ替えました。
像が完成したから、いつでもお披露目できますと王に伝えたら、
翌日にはお披露目会となりました。王様も早く見たかったようです。
本日は王家の皆様に、婚約者のサフィーナ様とコハクはセット、
アナスタシア様も来ました。そして大神官様も呼ばれました。
像のベースは白い大理石を魔力で加工しました。髪と羽は別の材
料で細かく作りました。
3女神共に頭には天使の輪があるのです。
大体の参考年齢はこんなイメージ。アロノニア様は25歳ぐらい。
大人って感じの女性。
ラキシス様が20歳ぐらい。きちんとした令嬢風。メリーナ様は1
6歳ぐらいにも見える。女子高生ぽい明るい感じ。
3人の女神の顔を見て覚えているが詳細までしっかりと覚えてい
るわけではないので現世の王妃3人を参考にさせてもらった。
コハクは、アロノニア様が自分に似せたといっていたがコハクが
17歳ぐらいのイメージらしいので1妃様と中間的なイメージに。
手には杖を持たせている。髪は金を細く糸の様にして1本1本を再
954
現。背中に6枚の羽も白色で作った。
ラキシス像は2妃様とサフィーナ様を参考に20歳ぐらいをイメ
ージ。さらにもっと知的にキリッとさせるとかなり近い感じに。そ
して手にロッドを持たせ髪は銀色。4枚の銀色の翼がある。
メリーナ像は3妃様を参考に今までのメリーナ像と比べるとかな
り若く可愛く笑顔した。鞘に入った聖剣を抱えている。髪は黒、翼
は2枚の大きな金色の翼。
全員の目が両金眼にしてあります。神の目は金色でしたから。
それぞれの像のコンセプト
・自然を守るアロノニア様。
・未来を導くラキシス様。
・笑顔の生活を与えるメリーナ様。
これをプレート書いておいてあります。
お披露目の場で解ったが、マリアはメリーナの姿は見えるが他の
神の顔は認識できなかったらしい。同じくスザンヌはラキシス様は
しっかりと見えているが、他は認識できていない。
マリアは﹁ラキシス様って2妃様に似てますね﹂
スーは﹁メリーナ様は3妃様に似てますね﹂
そしてサフィーナ様が﹁アロノニア様はコハクに似ているのです
ね。と言うかコハクがアロノニア様に似てるのよね。たしか。﹂
﹁そうです。私の姿はアロノニア様が創造されましたから﹂とコハ
クが答える。
955
設置後にみんなでお祈りをしたら来ました3神登場。ほら似てる。
そっくり。と自分で思ってますが。
3神もいつもはこちらを見ますが、今日は像を見てますね。
アロノニア様から、﹁良いできです﹂と誉められたました。
ラキシス様からも、﹁自分の像を作ってくれてありがとう﹂とお
礼を言われました。
そしてメリーナ様が最後に、﹁今までの像よりも可愛くなったわ。
うれしい。﹂とキャピカヤピした感じで喜んでます。
まあ3神が満足したから良かった。
後で確認したが、降臨した神の姿はやはり全員がハッキリと認識
できないと言ってました。
大神官様は大聖堂の女神像を直すかとつぶやく。現在の大聖堂に
ある3人の女神像は、顔はメリーナ様のコピーで、アロノニア像と
ラキシス像は翼を増やしているだけ。
確かに、この王城の教会像とかなり違う感じになってしまった。だ
が大聖堂の像って4mぐらいあるけどな。
前のメリーナ像は、今私のマイボックスに。領地に持って帰って
修正します。
その後で、領主館の前に簡易の教会を作り、そこに設置する予定
です。
もちろん他の女神の像も作りますが、それらの作業はグランスラ
ム帝国から戻ってからです。設置予定の教会が出来上がるまで時間
がかかります。なので暫くはメリーナ像を領主館のホールにドンと
956
置いておきます。
山に建てているアロノニア様の教会は、もうすぐ完成予定。今日
のアロノニア像を1.5倍の大きさで作ってあります。同時並行で
作りましたから。それを飾る予定で、もう屋根はできていたので像
は置いて布でカバーしてある。完成したら外すそうだ。
王家へのお披露目後に、エリンを連れて像を見せてお祈りをしま
した。この時、お祈り中に女神が降りてくる事はありませんでした。
像をまじめに見ているエリンを見たらなんとなくエリンとこの像
が似ていることに気がついた。スーやマリアは、私がエリンを連れ
てきた時から1妃様に似ていると言っていたが、その時は髪の色と
眼の色が一緒だからでしょとあまり気にしていなっかった。
最初に会った時に第一印象で似てるとは思わなかった。そもそも、
最初に見た時、そこまで可愛いとは思わなかった。でも今はあきら
かにもっと可愛くなった気がする。気のせいだろうか?
もしかしてアロノニア様の加護は、美容効果だけじゃなくて、少
しずつ顔が変わってるのか?
なんとなく女神に操作されている気がして、ちょっと気になる。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−
ジルベール
身体能力は成長中︵一般成人平均が100︶
総魔力量 18万ぐらい︵毎月1万前後増えてます︶
体力 250 力 220
すばやさ 250
957
知力 200
︵魔法の効果の倍率です。一般平均が100︶
︵IQとほぼ一緒です︶
器用さ 200
魔法力 300
︵精神攻撃の耐性値です。︶
珍しくできない
精神力 200
特技
剣術 レベル8
格闘 レベル8
槍術 レベル0
空間完全記憶・再現
マップ移動
エイミー
3倍まで 身体強化 最大効果 4倍まで 力とすばやさのステータスが上
昇する
通常 1.5∼2倍 魔法 神の術補正により威力2倍
基本魔法 魔力操作 レベル最大
応用スキル 最大︵攻撃・防御系︶
魔素の高温化︵加熱︶
魔素の低温化︵吸熱︶
物質集積 足元や大気中に魔素を流し、物質を集める。
流体操作 水など流体系の変形、操作、分離
個体操作 金属などの固形物質の変形、操作、分離
気体操作 風を使った攻撃など 空気の流れを操作する
音波操作 防音、音の増幅 気体操作に近いが、音の波に特化 魔素の薄い膜によって空気の振動を止める。
空気を振動させ音を出す。 特定箇所の音を近くで
増幅させる
958
光子操作 魔素を聖属性光り粒子への変換 ︵剣、防具、盾、結
界構築︶ 聖魔法、回復魔法の特性を持つ人が使える。 電気操作 魔素に電位差を作り電気を流す、最大で雷を落とすこ
イシス
ガルダ
電気が関係する効果が10倍
水が関係する効果が10倍
火が関係する効果が10倍
とができる。
コテツ
特殊
他人と一緒に空中を浮遊できる。敵が
魔力・魔素を代償にある決められた効果を得る。さらに魔素の操作
も必要となる。
重力操作 レベル8
1.5倍の重さになり、動きが鈍る。
空間操作 レベル10 虚無空間付与、通常空間拡張、瞬転 ︵
転移↓マップ移動に進化︶
レベル上昇で条件変更︶
時間操作 レベル7︵レベル秒間×2 実際の100倍の速度で
動ける
ガルダ、イシス、コテツ︵休眠︶
レベル8
回復魔法 レベル9
特殊召還魔法
聖獣召還 上位鑑定魔法 レベル9
魔力の可視化 レベル10
索敵 レベル10
祈祷 レベル7︵解呪、死霊の解放など︶
忘却の魔法 レベル3 6時間以内の都合の悪い記憶を削除、
辻褄合わせの記憶改変が可能
レベル3で6時間 レベル4で12時間 レベル5で1日 レベル
6で6日
959
レベル7で15日 レベル8で1ヶ月 レベル9で6ヶ月 レベル
10で1年
念話 近くにいる時だけ 簡単な意思の疎通が可能 太郎
︵太郎側のスキル︶
近くにいる時だけ 短い文の相互対話 エリ
ン︵エリン側のスキル︶
ガルダ、イシス、コテツ︵休眠︶
加護
メリーナの加護 大 ︵状態異常大軽減︶
固有スキル 神の目 無詠唱での魔法発動
神の術 神属性を含む全属性魔法使用可能。 魔法効果2倍
960
5.47 美肌薬
後で解りましたがリリアーナかあさまは少し前に美肌に効果のあ
る薬を飲んでいたそうです。かなり高価な薬で、飲んで半年ぐらい
は、若返った様な効果があり、そこから1年ぐらいで徐々に戻るが
それでも元の年齢よりも5年若い状態で落ち着くそうです。
ただし、年齢が若くなるわけではなく、肌の艶や、しわが減る。
そして顔や胸周りの筋肉に作用し、顔のたるみや、胸の落ちを防止
する効果もあるそうです。
先日は、飲んで数日なのでかなり効果が高い時だったそうです。
そうですよね30代ぐらいに見えましたし。
1妃様と2妃様も1本飲んでいて、飲んだのは10年前。後は努
力。普通に美容効果のある運動などを頑張る。それでゆっくりと加
齢するように努力で維持している。
そして、値段は1本500万円。リリアーナかあさまは、王妃様
から紹介されて購入したそうです。
値段の価値を決めるのは、買う側の状況に寄りますから何ともい
えませんが、アイテムボックスを2個買うぐらいの値段ですね。
私は売る側の原価コストの割合を計算してアイテムボックスと比
較したい。詳しくは手にとって調べなければ解りません。
とりあえず研究用に1本購入して調べよう。いままで魔道具ばか
り調べてきたけど薬にも興味がわいて来た。
上手く解析できれば、夢のハゲ治療薬が出来るのではないだろう
961
か。
ずっと色々と面倒を見てくれたメルミーナ様は、はげている。それ
はもう立派にはげている。もし治療できれば、すごく喜ぶだろうか。
そんな事を考え、エリンに王城経由で特上の美肌薬を入手するよう
え
と言う顔をされ、﹁誰に使われる予定か聞いても良い
に依頼する。
一瞬、
でしょうか?﹂
﹁うん、研究用だよ。どんな仕組みか調べようと思ってるんだ。も
っと効果を高める薬ができないかとか、用途を変えてハゲ治療がで
きないかなと。でも、研究で調査してあまった分はエイミーにでも
使ってもらうつもりだけど﹂と答えると。
﹁エイミー様ですか、喜ばれるとは思いますが、そんなに効果が出
ますかね?エイミー様は、すごく若く見えますけど﹂
﹁うーん、それ日焼けにも効果があるみたいだし、普通の回復薬や
回復魔法は日焼けは治らないからね。彼女は30ぐらいだけど浮い
た話も出ないし。舞踏会までに使えれば、そこで新しい恋人ができ
ないかなとも思ったんだけど﹂
﹁新しい恋人ですか。エイミー様が︵ジルベール以外の︶男性に気
を向けるとは思えませんが。ジルベール様が日焼けを気にされてい
るなら、エイミー様に飲んでもらうのは良いかも知れないですね﹂
﹁え、私はエイミーの日焼けは気にしてないよ。本人が気にしてる
だけだって﹂
﹁そうですか、解りました。とりあえず手配してみます。エイミー
様にも話をしておきます。では﹂
と言って、手配に行ってくれた。
962
そして、割とすぐに戻ってきた。
王城へは、直通の転移ボックスを置いてあるから、手紙はすぐに届
くけど、早いな。
﹁ジルベール様、薬ですが男性用もあるそうです。そちらも入手し
ましょうか?﹂
﹁男性用って、男が綺麗になるの?﹂
﹁いえ、その違います。﹂
なぜか、エリンが顔を真っ赤にして
﹁えっと、男性が夜に使われる薬だそうです。王妃様に特上の美肌
薬をジルベール様が調べたいから入手先を教えて欲しいと連絡を入
れたら、調査なら男性セットで調べたほうが良いと言われまして。﹂
﹁私が調べると言うと、改良版が出来ると期待してるのかな。まあ、
王様もそろそろ若くは無いし、いつも3人の王妃のお相手してる訳
だし、必要だよね﹂
﹁え、ジルベール様。夜の事でお判りになるのですか﹂
﹁え、子作りでしょ。そりゃ知ってるよ。医療学も習得済みだよ。
人体構造は全部知ってるし、行為もちゃんと理解してるよ﹂
﹁あ、なるほど、そういうご理解で﹂
と言った後で ? な顔をして
﹁え、ジルベール様、既に医療学を習得済み。もしかしてお医者様
だったのですか?﹂
﹁え、医者ではないよ。さすがに。回復術使うには医療に詳しくな
いとダメでしょ。医療学と言っても全ての病の勉強をしたわけじゃ
ないし、薬学を飛ばしてたからね。魔法と魔道具だけに注目してた
から知識が偏ってたよ。これから薬学も勉強しないとね﹂
﹁ジルベール様、尊敬します﹂
エリンの目がキラキラとしてる。
963
﹁あ、それで男性用の薬ね。それも入手できるなら頼んでおいて。
でもふた開けて飲む人がいないともったいないね。﹂
﹁ジルベール様はお飲みにならないですよね。﹂
﹁ああ、飲まないよ。まだ効果ないし﹂
﹁そうですか、残念ですね﹂
﹁え?﹂
﹁いえ、違います。すいません。では、ヘイゼル様に譲ってはどう
でしょうか。レイブリング様は、アメリ様が臨月ですし﹂
﹁ああ、そうね。でもそれってクインさんに許可取るって事でしょ。
そうすると特上の美肌薬はクインさんに渡さないとね﹂
﹁先ほどの話はまだエイミー様にはしていませんので、両方ともサ
イレーン家のお二方に話をすれば良いかと﹂
﹁じゃあ、そうしよう。エイミーの分は解析すれば自分で作れるよ
うな気がするし。じゃあ手配を頼むね﹂
﹁はい、了解しました﹂
964
5.48 春休みが始っていた
学園は春休みです。
スーは学園が休みなので王城にいますが、公爵夫人になるための
お勉強中です。元々予定されていた王妃教育からは手を抜かないと
言ってました。更なる令嬢としての特訓をされているそうです。
なので、昨日は王城に泊まって、夜にスーとマリアと話をした。
私は日々王都と領地の役場を転移でチョコチョコと往復し、人を
運んでます。人間タクシーです。王都と往復はしてますが、スザン
ヌにもマリアにも会えてません。
午前中の任務を終え、領主館に戻るとクリシュナ様とエレノアと
ニーナが遊んでました。
スケジュールに合ったな、そうそう今日だった。夕べスケジュール
確認したのに。最近時間と場所だけ見てた。危ない危ない。何でも
感でもエリンに頼り始めてちょっと注意力が足りないな。
﹁クリシュナ様お久しぶりです﹂と声をかける。
﹁あ、ジルベール様。お久しぶりです。今日は勝手にお邪魔させて
もらっています﹂とスカートをつまんで丁寧な令嬢挨拶。
エレノアとニーナも朝会ってなかったので、同じように私に令嬢
挨拶をしてくれた。おー、さすが2人とも公爵令嬢だもんな。
﹁お兄様が修行に来ているので、折角なのでお母様と一緒にこの領
地へ遊びに来ました。お兄様はレイブリング様とお出かけしました
ので、エレノア様とニーナ様に遊んでもらっていましたの﹂
エレノアが﹁ジル兄様、クリシュナ様が何時までたっても私達の
965
事を略称で呼んでくださらないの。私、もっと仲良くなりたいので
すけど、ジル兄様からも説得してください。﹂
﹁ああ、そうか。そうだね。クリシュナ様、私からもエレノア、ニ
ーナともっと仲良くなって貰いたいので、お願いします。エレノア
とニーナは養女で公爵令嬢になったばかり、いまだ違和感があると
思いますが、公爵令嬢のクリシュナ様が率先して愛称で呼んでもら
えると、周りも仲良くなれると思いますので、ぜひお願いします。﹂
﹁そんな、ジルベール様、私エレノア様の事を私よりも低位だから
とか思ったことはありませんよ。実力で公爵令嬢になられた方です
から、私の方が恐縮していたぐらいです。﹂
﹁では、クリシュナ様、エレノアとニーナと仲良くしてくださいね。
﹂
﹁ええ、もちろん、その代わり、エレノア様、ニーナ様に、ジルベ
ール様も私の事を、クシュナと呼んでくださることも条件ですよ。﹂
﹁ははは、そこに来たか。良いですよクシュナ。﹂
﹁では、クシュナ、私の事は遠慮なくエレと呼んでください﹂
﹁ニーナのことはニーで良いよ。クシュナさま﹂
﹁はい、エレ、ニーちゃん。それで良いかしら。﹂
﹁﹁はい﹂﹂
﹁じゃあ、3人とも公爵家の子女だから仲良くしてね﹂
﹁あ! クシュナさま、お兄ちゃんはジルにいって呼ぶと良いよ﹂
とニーナが呼び方を教えた。
﹁ではジルにいさまで良いでしょうか?﹂
とクリシュナが上目遣いで聞いてくる。
966
﹁最後にさまがついてる。スーもマリアもジルさまって呼んでるし。
それで良いか。
で、折角だから私も遊びの仲間に入れてもらえますか?次の用事ま
で少し時間があるし﹂
﹁やったジルにい、久しぶりにあそんでくれるー﹂とニーナが喜ぶ。
そういえば、最近忙しくて全然かまってなかったな。
﹁で、今何をやって遊んでいたのかな﹂
﹁いつものお人形遊びだよ﹂
﹁エレもニーちゃんもすごいですね。ぬいぐるみが生きてるみたい
に動きます。私はちょっと動かすだけで、精一杯でした。さすがで
すね﹂
﹁へー、初めてで少しだけでも動くのか、すごいですね。でもその
遊びだとクシュナはだいぶ疲れたでしょ。魔力も減ってるみたいだ
し、歌でも歌いますか?﹂
﹁歌うー﹂とニーナが代表して答える。
2人もうなずく。
﹁じゃあクシュナ、エレ、ニー、歌にしようね﹂
﹁じゃあ、ニーがお歌教えるね﹂とニーナがクリシュナにナンシー
が作った歌を教える。
歌詞を書いた紙を渡して、エレノアがピアノで曲を教える。
少し練習した後に、エレノアがピアノを弾きながら、3人が歌う。
もちろん私も一緒に歌う。
ニーナは楽しくなってきたのか習っていたダンスの振り付けもする。
967
クリシュナもそれを見て一緒に振りを覚えて踊りました。1時間
ほど繰り返すと歌って踊れるようになりました。最後は、私が音魔
法で曲を出し、3人で踊って私に披露してくれる。
﹁おー、すごいすごい。ものすごく贅沢なショーだった。3人とも
上手だね、エレもピアノが上手になったね。﹂と誉める。するとク
リシュナが、﹁ジルにいさま、お時間あるなら、私のピアノも聴い
てください。﹂と言ってピアノに座り演奏を始める。
上手でした。さすがに長年やっているだけあり、スーに匹敵する
上手さ。最後にクリシュナを3人で誉めまくる。ちょっと嬉しそう
だった。
私がエリンを念話で呼ぶと、エリンがゴルゴさんからケーキを受
け取って準備をしてくれる。
エリンから﹃準備が出来ました﹄と念話で連絡。さあ休憩しようか
と言った時に念話で﹃入って﹄と合図。ノック音がして﹁失礼しま
す﹂の声と共にすっと扉が開きエリンが部屋に入る。テキパキとお
茶の用意を始める。
部屋の中にいたエレノア、ニーナ、クリシュナは突然の事でびっ
くりしている。エレノアとニーナ付きの侍女は、最初驚きのあまり
体が動かない。エリンの指示で慌てて手伝う。
そしてケーキをみんなで食べる。
クリシュナが
﹁あの方が噂のジルベール様が選んだ専属侍女の方ですよね﹂
﹁ああそうだよ。エリンね。かわいいでしょ﹂
968
﹁はい、すごくかわいらしい方です。そしてびっくりするぐらいタ
イミングがぴったりでしたね。お茶にしましょう。バンですよ。私
こういうの初めてです。鳥肌が立ってしまいました。歴史的事件で
す﹂
とすごく興奮してた。
ふーん。念話で示し合わせたからな、そりゃタイミング合うわ。
まあ良いか。こういうのがお客さんに受けるんだなと理解したので、
またやろう。
休憩後に、クリシュナが動物好きと言うことで、エレノアとニーナ
が自分の飼い猫を連れてきた。
エレノアが兄 オス:マロ
ニーナが妹 メス:ミュウ
﹁まあ可愛いネコですね。ネコは大丈夫です﹂と答えると
﹁ニーが抱いてるのがミュウで、お姉ちゃんが抱いてるのがマロだ
よ﹂と教えてくれます。
﹁抱いても良いですか?﹂とクリシュナが。
﹁ミュウの方が大人しいからこの子抱いてて﹂とニーナがそっと渡
します。
クリシュナ様は座った体性で受け取りひざの上に乗せました。
ミュウは寝たままです。
大人しく、なでられたまま。
すると、マロもクリシュナの近くに行って、なでてなでてと、頭を
こすり付けてくる。
クリシュナは、両方のネコをなでて幸せそうでした。
暫くすると両方の猫が起きたので、ひもを使って走らせて遊ばせ
てました。守護精霊が入っているといっても今は完全な子猫ですね。
ひとしきり遊ぶと疲れたのか、両方の猫が寝てしまったので、また
969
部屋に戻します。
丁度アメリと女性が1人部屋に来ました。クリシュナ様のお母様
です。確かにアメリの結婚式で見ました。
セルニア様︵35歳H168cm,B88,W60,H87︶で
す。しっかりと鑑定で追加魔力消費で確認させてもらいました。う
ーん、最近美人を見ると無意識に追加の魔力消費してるな。
お互いにきちんと挨拶をします。
ちなみにアメリはもう臨月ですのでだいぶお腹が大きい。
予定では3月末から4月初で生まれます。あと早ければ2週間ほ
ど。アメリは二人目なので割りと落ち着いてます。
世間的には初産なので、周りはあまりの落ち着きに逆に心配にな
っているぐらいです。私が生まれた当時から働いている侍女も侍女
長以外はいないので、他は知らないのです。王家と公爵家は私とア
メリの秘密を知っている。恐らくセルニア様もアメリが2人目の出
産である事を知ってるのかな。
さて、彼女達はオレリアン様の修行期間の間ずっとこの地で過ご
す。予定は、4月10日までここにいるそうです。
今日来たのは、メルミーナ様手配の公爵家教育係がここにいるの
で、クリシュナ様も長くこちらにいるなら、明日から一緒に勉強を
したいという打ち合わせでした。もちろん最初から手紙でそういう
やり取りしてあり、クリシュナ様の教育家係りは最小限しか連れて
きてないそうです。
そして来週にはアレクサンドロ公爵家からルーナ様とサフィーナ
様も来るそうです。彼女達はアメリの出産の立会いが目的です。ル
970
ーナ様はハイルデン公爵の妹なのでセルニア様とは仲が良いらしい。
今回もオレリアン様の教育の為に、この領地に行くことは、最初
からセルニア様とルーナ様が2人で相談して計画した案です。時期
的にアメリの出産があるのでそれにあわせてこちらの領地で遊ぶ約
束をしていたみたいです。
そしてリリアーナかあさまと、手紙のやり取りで調整をし、来週
の二人の来訪に合わせてこの領地で初となる舞踏会が行われる事に
なっているそうです。
舞踏会と言っても、この近隣は王都から遠く、学園にいる時に参
加したデビュタント以外舞踏会に出ていない子爵家・男爵家の若い
子に声をかけているそうです。それでも大体100人ぐらいがあつ
まるそうなので作っていたホールが役に立ちます。
この領地にもだいぶ人が増えたし親を除いてもそのぐらいの貴族
がいるのですね。初日のパーティは2部構成になっており、お昼は
わりと10歳前後の子を集めて、社交の練習の場となっています。
そして夜からが舞踏会。
ただし地方の舞踏会なので正式な夜会ではありません。なので、
私はスーは社交デビュー前ですが、出席予定です。そして、挨拶も
しなければいけないそうです。
−−−−−−−−−−−−−−お茶の用意の時−−−−−−−−−
−−−−−−−−
エリンは別室でアマリリスさんから教えを受けていました。
﹃エリンお茶とケーキが欲しい﹄と伝えます。
﹃解りました。すぐに向かいます﹄
そしてアマリリスさんへ﹁おばあさま、ジルベール様が呼んでいる
ので少し席を外します﹂と伝える。
971
﹁エリン、私には何も聞こえないわよ﹂
﹁すいません、失礼します。すぐに戻ります﹂と声をかけ部屋を退
出する。
不思議に思ったアマリリスはエリンに付いて行く。エリンはお茶
を入れ、用意してあったケーキをゴルゴさんから受け取り部屋の前
のテーブルに置いて用意を整える。そしてしばし待って、ノックを
し﹁失礼します﹂と声をかける。中でお茶とケーキを並べる。
少し前に、クリシュナ様が疲れてきていたので、﹁後で甘いもの
を食べようか﹂とジルベール様が言っていたらしいが、子供の遊び
なので、いつ休憩に入るか解らず、休憩が始めるか、指示が出てか
らお茶の用意をすれば良いと思っていたようだ。中にいたエレノア
の侍女は動かず、待っていると、ジルベール様が声をかけた時にす
っと扉が開いたと証言している。
伝説級といわれる執事や侍女は、主人が呼ぶときには主人の前に
いるというが、目撃したのは初めた。
エリン、想像以上に出来の良い侍女だわ。
私が侍女人生で磨き上げた技術を全て与えるに相応しい。3妃様
に、このめぐり合わせのお礼を書いておこうかしら。
そしてこの件と、アレクサンドロ家であったエリンの紹介逸話は、
両方とも王妃に伝わった。
972
5.49 ジルベールのおばか
明日は、久しぶりにナンシーが来ます。リリアーナかあさまが公
爵家の為にスケジュールを押さえてました。ナンシーとミュージカ
ルの男役含め数名の送迎はもちろん私です。
公爵夫人は、すごく楽しみなようです。
クリシュナ様は、エレノア、ニーナにぬいぐるみの絵の描き方を
教わっている。3日後に領地のぬいぐるみを作っているところへ行
くので作ってもらうぬいぐるみの絵を書くそうです。三人とも頑張
れ。
夕食前にレイブリングさんたちが帰って着ました。公爵家の方々は
明日からは旅館で夕食を取りますが、本日は領主館で歓迎会です。
旅館と食事がかぶらないようにゴルゴさんが新作のオンパレードで
準備をしてくれました。
全ての料理がおいしく、大変喜んでいただけたようです。
夕食後はアマリリスさんに指導されエリンと共にダンスの練習でし
た。
それにエイミー、ゴルゴさんもダンスの練習です。
レッシィ様、セルニア様、ダリウス様、オレリアン様も付き合って
くれました。
ダリウス様はエイミーと一緒に踊ってます。
ゴルゴ様がセルニア様、レッシィ様が交代で。
オレリアン様は、一度踊ってアマリリスさんから個別指導を受けて
ます。けっこう酷かったです。
973
練習は2時間ほどで終わりました。
結構きついな。
エリンは今回の舞踏会に参加します。
普通の舞踏会で専属侍女が参加して踊ることはない。今回は領地内
でのお披露目的な意味合いもあり、私の専属侍女の紹介も含めて踊
る側で参加して紹介する事になりました。ちなみに、普通の侍女は、
主人の許可が出れば父親または婚約者にエスコートされ夜会に出席
できます。
エリンは参加するが私以外とはダンスをしないそうです。これは
アマリリスさんからの指示。舞踏会に特別参加はするが無礼講でも
ないので最低限のルールは守る。らしい。専属侍女は主人の求めで
ダンスをする場合は断らないが他人の誘いは100%断る。それが
専属侍女と言うものだそうです。
うーんそれだとエリン婚期を逃さない? と聞いたらアマリリス
さんから何言ってるの? と言う顔をされた。
え変なこと言いました?
エリンの恋は自由でしょ?
恋は自由ですが恋をして良い相手は決まってます。と言われた。
あれエリンって婚約してました?
アマリリスさんに﹁そんなわけあるか﹂と真剣に怒られた。
あとでエイミーが﹁専属侍女として身請けしたわけでしょ。だか
ら主人と別れるまでは結婚してるのと一緒さ。女性から見たら形の
違う夫だよ。恋をして良い相手は主人だけ。もちろん、恋はしなく
ても良い。主人以外の男性と踊ると浮気と一緒さ。そんな事をした
ら即座に首になるんだよ﹂と教えてもらった。
﹁えじゃあ恋愛して、別の男性と結婚はできないってこと?﹂
﹁だから専属侍女を受けた段階で、相手は主人以外に無いことが決
974
まってるのに、なんで他の人に恋をするの?﹂と逆に聞かれた。
﹁えーー、そうだったの。知らなかったよ。エイミーどうしよう﹂
﹁まあ10歳で知ってる人も少ないもんね。ルカ王子も知らなかっ
たから、専属侍女を1年目で別の男に紹介しちゃって失敗したし。
まあ、今知ったとしても、別に良いじゃん。ジルちゃんが幸せにし
てあげれば。ジルちゃんなら出来るでしょ。後悔させなきゃ良いん
だから﹂
﹁善処します﹂
そうしかいえなわね。
﹁一応、後でちゃんとルールを調べたほうが良いんじゃない。ジル
ちゃん、いろんな事を知ってるから、知ってる前提で誰も教えてく
れてない事が多そうだね。ジルちゃん興味ないことは全然知らない
のにね。誰もそう思ってないみたいだし。﹂
﹁うん、だれに聞けば良いの?﹂
﹁うーん。私が後で教えるよ﹂
﹁ありがとう。頼みます﹂
﹁良いよ。ジルちゃんだもんね、じゃあ最後私とのダンスレッスン
の順番だよ。行こう﹂
私はエイミーをエスコートしダンスを踊る。
ダンス終了後、体はぐったりだがダンス後に体の休憩を含め、ダリ
ウス様、オレリアン様、エリン、エイミー、レイブリングさんも入
って30分間みっちり魔力操作の練習をした。
そしてようやく解散。
御部屋に入って御風呂。
就寝。
寝る前にエリンに
975
﹁専属侍女になると恋愛禁止とか色々知らなかったんだ。エリンの
人生奪ってしまったんだね。知らずに気楽に声をかけてごめんね﹂
と謝った。
﹁いえ大丈夫ですよ。あまり知らないかもとは予想してました。逆
に、私もそれに付け込んで気がついていない振りをして了承しまし
た。それでも私を選んでくれたのが嬉しかったです﹂
﹁私もエリンが付いて来てくれて嬉しいよ。これからあなたの人生
を引き受けられるかは解らないけど、エイミーからも言われたとお
り、私の専属侍女になったことを後悔させないように頑張るよ﹂
﹁はい、私もジルベール様が私を選んだ事を後悔させないように頑
張ります﹂
﹁うん﹂
﹁では寝ましょう。明日も早いですよ﹂
と頭をなでなでされた。
どうやらすぐに寝たようだ。
そして、次の日エイミーから専属侍女の決まりごとを教えるよ。と
夜に部屋に来た。
エイミーがこっちで話そう。と私と、エリンもベットに乗り3人。
最初に、エリンから専属侍女の仕事の種類を説明してくれた。そ
の他の仕事は相談して決めていく。執事や、他の人が出来る仕事は
なるべく外に回すようにする必要があるよとエイミーが補足してく
れた。
そして、専属侍女の規約について、基本は10年間の契約で、一
生を縛るものではないこと。
延長は1年づつ。10年後に妾か侍女長になるコースを選ぶ人が
多いこと、それぞれの特徴を教えてくれた。
そして、1対1で話すことについて、そもそも年頃の男女は1対
1で話してはいけない。唯一婚約者と馬車で移動する時ぐらいが許
されている。
976
それに対して、主人と専属侍女は1対1が許される。他の侍女は、
業者からの物の受け取りや御使いなど1対1になることもあるが、
専属侍女はこれも禁止。
そしてもし、専属侍女が主人と、体の関係を持つことになった場
合、女性側がきちんと避妊をし子供ができないようにする責任があ
る。ただ、主人側から体の関係は持つことを強要はできない。侍女
側が望まず強要される場合の保護がきちんとしていると教えてくれ
た。
あと、忘れてること無い?とエイミーがエリンに聞いたが、もう
無い様だった。
とりあえず10年後にきちんと考えるのか。
﹁それじゃあ寝よう。おやすみ﹂とエイミーは、私のベットにその
まま入って寝た。
そして﹁エリン、ジルちゃんの隣って静かで良く寝れるんだよ。
このベッド広いし、3人で寝よ。良いよねジルちゃん﹂
と屈託の無い笑顔で聞いてくる。
まあ良いか、特別なにかあるわけじゃないし。今はまだ子供だか
ら。と言うことで私が真ん中で両端に綺麗な女性を並べて寝ました。
もうぐっすりと。いつもどおりです。
寝ていると、良い匂いですこし目が覚めた。見ると、匂いの元は
エイミーだった。そうか、私が好きなタイプの香油を作ったんだっ
た。布団の中が暖かいし、閉鎖された空間で匂いが強くなったのだ
ろう。
逆を向く。あれ、こっちも良い匂いだ。エリンは、エイミーと違
う香油を使っていた。
うわ、両方ともすごく良い匂い。まあ良いか、とりあえずエリン
の方を向いておくか。
朝、急に頭が前後両方から柔らかいものに押さえつけられた。起
977
きたらエリンの抱き閉められ、さらにエイミーの二人を抱き枕にぎ
ゅっと抱きしてめいた。
私の顔はエリンの胸の谷間にしっかりと収まり、頭はエイミーの
胸で押されていた。びっくりした。
すごい方法で起こされたよ。しかし、エイミーは、全く気にする
そぶりも無く、﹁ふあー、よく寝た。やっぱりジルちゃんと寝ると
よく寝れる。じゃあ、今夜も来るからね。ジルちゃん、さっさと朝
の訓練に行くよ﹂と元気よく部屋から出て行った。
エリンが、﹁すいません、変なものをお顔に当ててしまって﹂と謝
ってきたので
﹁謝るのはこっちだから、気持ちよかったし、においも良かったし、
柔らかかったし。とにかく、謝らなくて良いよ。私も訓練に行くか
ら﹂と言って、急いで練習着を着て外に出て行った。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
−−−−−−−−−−−
﹁いつもどおりジルちゃんの寝顔は子供ぽくてかわいいな﹂
﹁今朝は声をかけても、突っついても起きないですね。ジルベール
様。
どうしましょう。もう一度お声かけし起こしましょうか﹂
﹁えっとね、こうしよう、まえこれで起きたから﹂と、エイミー流
の起こし方を伝授され、2人に抱きしめて起こされたジルベールで
した。
978
5.50 舞踏会までの日常
朝起きるて鍛錬を行う、その後湯浴みで汗を流して着替える。軽
く朝食をとって、まずは予定通りのタクシーをこなす。
その後、幾つかある研究施設を回る。今日は魔道具の研究成果を
聞きながら、魔道具の最終工程で魔法を込めていた。
4月からシドニアを回るので今のうちに多めにつくって在庫を確
保しておかないといけない。もちろんシドニアでも少し配布したい
のでその分も作る。
昼食を食べた後、作物の育成状況などを確認したり領内の人々の
暮らし状況や自分の関係した衣料・食料加工を見て回る。
夕方になると、今日は夕食前にダンスの練習が組まれていた。
まずはエリンと一緒に練習。完璧だと思っていたけど足の運び、
姿勢、目線など微妙に修正が入る。
20分程でエリンからエイミーに交代。アマリリスさんの厳しい
指導はすごかった。エイミーの下手さを上手く誘導しろとエイミー
は怒られず私が怒られる。
﹁ダンスの失敗は全て男が悪い。﹂ということでした。マジか。
エイミーは慣れないヒールで頑張ってます。残り40分しっかり
と踊った。
ダンス中は回復魔法を使う暇はないので、久しぶりに足が痛くな
った。エイミーに散々踏まれ蹴られ最後に押し倒された。
二人とも回復魔法で怪我を治しておく。ちなみに、折れたヒール
は回復魔法では治りません。オブスレイさんが直してくれるそうで
す。さすが元筆頭執事長、何でもできます。
979
夕食を食べた後、修行組みも含めて魔力操作の練習。そして、私
はベットで薬学の本を読む。気になった事を特殊召還で検索し、メ
モを取る。
はー今日もようやく1日が終わった。
さあ寝ようかな。
バン。扉が開く。
﹁ジルちゃん、寝ようね。﹂
こんな感じで日々の用事をこなし、途中でスザンヌやマリアとも会
って、様々な用事をこなしていたら、あっと言う間に日がすぎ、も
うすぐ舞踏会です。
舞踏会は明後日です。
本日ルーナ様とサフィーナ様が到着しました。
アレクサンドロ家は主人が遠征中なので、奥方2人とも外出は出来
ない。ダイアナ様はご自宅にいます。
挨拶をして今日は、旅館の方に皆で集まり夕食を食べました。夜の
魔力操作は久しぶりにサフィーナ様も入ったのでちゃんと指導をし
ます。
クリシュナ様も1週間の練習でかなり魔力操作が出来るようにな
ってました。
もちろん、エレノアとニーナと毎日空いた時間でお人形遊びと言う
修行よりも過酷な遊びで魔力操作に魔力を酷使しているので、急速
に能力が高まってきています。
良い傾向です。
まだこちらには1週間はいるので、だいぶ成長するでしょう。
980
元々オレリアン様の為にやっていた修行ですが、総魔力量も当初
に比べれば3倍ほどまで増えてきました。ベースが少ないので3倍
でもまだまだですが。
魔力操作とおれが上手くなってきたので
皆に、現状の総魔力量を伝えると、増えている事を実感し、さらに
やる気を出してくれました。良い傾向です。
−−−−−−−−−−−−−−−−−
2公爵家の人が出てきているので、ここでもう一度3公爵家を整理
︻メルミーナ公爵家︼
48歳
家長:ファール・メルミーナ:50歳
妻:カトレア:
7歳
養女:エレノア9歳
養女:ニーナ
︻ハイルデン公爵家︼
20歳 成績優秀
160cm,B87,W60,H90 家長 レグルス・ハイルデン40歳
妻1:レッシィ様40歳
長男:ダリウス
青髪 右目が金、左が黒 ダリウスの母
身長180cm
14歳 右目が金です。
妻2:セルニア様37歳168cm,B88,W60,H87
次男:オレリアン
長女:クリシュナ8歳 妾:リーナウィル48歳:レグルスの元専属侍女
︻アレクサンドロ公爵家︼
家長:ルーカス・アレクサンドロ46歳
981
妻1:ダイアナ:42歳 黒髪 両目 黒
35歳 2男︵24,22︶、1女︵16︶
妻2:ルーナ:
現ハイルデン公爵家の妹で、レオニーの妹でもある。ピンクの髪 右目が青 左が青
3男:オニール :16歳 金髪 左金、右青 2女:サフィーナ :14歳 ルカ王子の婚約者。ピンクの髪、右
が赤、左が金。
妾:アリーナ52歳:ルーカスの元専属侍女
−−−−−−−−−−−−−−−−−
現状で専属侍女で不幸な人はいませんと言うお話
現メルミーナ公爵専属侍女
専属侍女が終り侍女長として働いていた。
40歳で亡くなりました。 アマリリスさんの姉です。
現ハイルデン公爵専属侍女
妾:リーナウィル48歳:レグルスの元専属侍女
レッシィ、セルニアの姉的存在だった。
専属侍女契約が切れた時に、診断で子ができない体質と解り辞める
つもりだった。
2人の妻が引きとめ妾と言う立場になった。
非常に優秀で、妾になった後も内政の手伝いもしてレグルスを助け
ていた。
専属侍女の教育あるたびに講師をしている。
現アレクサンドロ公爵専属侍女
妾:アリーナ52歳:ルーカスの元専属侍女
982
既に引退、領地の避暑地で静かに暮らしている。子供は女の子2人。
侯爵家に嫁いだ。
専属侍女の契約終了後、侍女長になるが、ルーカスとの間の子がで
き妾に変えた。
二人の妻とも仲は悪くない。
去年2番目の子が結婚した後、疲れたので引退しますと言って、去
年領地に引きこもった。
妻達は、これから時間が空くのだから楽しみましょうと言ったが、
とめられず。
現在ミュージカルを見に来るように誘っているらしい。
現王の専属侍女
侯爵夫人
現王の専属侍女は、10年の契約後は侍女長となりその5年後に侯
爵家の後妻となり侍女長を辞めた。
エリンの教育係に呼ばれ、指導をしてくれている。
ルカ王子の専属侍女
1代目:1年目にして、結婚して辞めた。当時ありえねーと話題に。
このときエイミーも軍に居た。相手の男性とは知り合い。よく事情
を知っていた。
男が、﹁やっちまった。王子が紹介してくれたから、ただの綺麗な
侍女と思ってたら専属じゃねえか。俺、死刑かも﹂と嘆いていたの
を聞いていた。
エイミーは﹁死刑なら、スパッと首切ってあげるよ。痛くないよう
にしてあげるね﹂
と冗談で答えたら、目の前で泣かれて困ったらしい。
結局、ルカ王子が、逢引を手伝った事を告白し、事なきを得る。
結局は、専属侍女契約の事を教えなかったのがまずいと言う話で落
ち着いた。
983
2代目は順調に勤めてます。
984
5.51 美肌薬を作る
待っていた美肌薬が入荷しました。
説明書を読む。
薬は、1回蓋を開けると1時間以内に飲まなければ効果がなくな
ります。
一度の服用で、半年ほどは大きな効果を得られますが、そこから効
果は下がり1年後に5歳ほどの若返りで落ち着きます。その後は普
通に年を取ります。
人生で最大4本しか飲めないと注意書きがあった。そして一気に
2本以上は飲めない。 1回飲むと間を7年は空ける。
男性用のお薬
薬は、1回蓋を開けると1時間以内に服用しなければ効果がなく
なります。
一度の服用で1日の間子作りの能力が上がります。服用後、精子
の増強が行われるので最初の性行は服用後8時間経過後からが望ま
しい。
妊娠は、1週間ほどの継続的な服用の方が効果が高くなります。
2週間以上の連続使用は控えたほうが健康のためです。
夜、食事後に部屋にヘイゼルさんとクインさんを呼びます。
クインさんとヘイゼルさんに、蓋を開けたら30分だけ私が調査
をし、その後クインさん、ヘイゼルさんに飲んでもらうことにしま
した。
そして、飲んでから1時間後にクインさんはスリーサイズの計測。
ヘイゼルさんは、体調を報告してもらいます。ちなみに測るのは
お互いでやってもらいます。
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では調査開始。1滴だけ板ガラスに取り出し、残りを透明なビン
に移す。
上位鑑定と魔力の可視化を使い、魔力の流れに鑑定したり、拡大
鏡を使って鑑定など、ひたすら続け、ようやく解りました。
まず中身は、ただの上位の回復薬だ。
材料構成はまさにそれ。 そこに魔力で制約をつけた回復の方向性が示されていました。
発見した規則は下の3つ。
・女性限定
・全身の表皮再生
・顔と胸の不足する筋力の追加
女性に効果を限定する事で効果を高めているのだろう。
元の回復薬の効果は自己治癒力の大幅向上。それをさらに限定によ
り効果を高め再生にレベルアップさせているようだ。
後の二つは魔法効果を方向性を示すルールだ。
回復魔法は術者の意思で効果を指示するが、薬は魔道具と一緒で魔
法効果の発動に対してルールが決められている。
そして、詳しくルールを見ると肌は表皮を全部新規再生させている。
筋肉量は5年前からの不足分に限定して再生、強化しているようだ。
最初に効果が高く感じるのは、表面の皮膚が新品になるから。その
あと皮膚は劣化し手入れを怠ると1年ほどで元のレベルになる。だ
が、筋肉はまだ残っているので5年ほど若く見える効果で落ち着く
のだろう。
効果をもっとあげるには。
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一つは再生する筋肉をもっと前まで戻り復活させる。もう一つは表
皮の下の部分の水分保持量が増えるようにする。
最後に、血流を増やすことだろう。
だが、美肌の薬で再生によって復活させることだけでなく、化粧水
を塗る感じで肌に潤い成分を補給させ続ける方法もあるような気が
する。一つの薬にあれもこれも入れるのは良くない気がする。
取りえず、毛細血管は薬の再生能力が無ければ増えないので、一つ
ルールを追加してみる。
・女性限定
・30歳以上限定
・全身の表皮再生
・顔と胸の筋力を不足分の追加
・皮膚周りの毛細血管の増加・再生
ルールを一つ追加し、限定を一つ増やしてみる。
残り時間一杯で、効果の鑑定をしながら、魔力を追加し効果を高め
てみる。
残り時間5分を残して成功となった。どうやらこれ以上は魔力を込
めても効果が上がらない感じです。
鑑定で見ると10年前の筋力まで戻せるようだ。
クインさんに、効果を一つ追加してみたけど、最初の効果はあま
り変わらないと思う。もしかしたら継続効果が伸びているかも知れ
ないと伝え問題が無いなら飲んでと言うと喜んでとごくごくと。
その後、暫く様子を見る。
その間に、男性用の薬を調べる。先ほどの調査結果と似たような
方法だろうと考え、同様の方法で調査をする。
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ベースになっている物は低級の回復薬
制約
・男性限定
・精嚢の働きの向上、常時
・女性のフェロモン検知で血流増加、海綿体の血管拡張
効果は、およそ1日。
調べた結果、飲んだら1日中強制的にあれが立つわけではないよう
だ。子作りが目的の薬なので、きちんと精子を作る機能向上が入っ
ていた。
こちらは改善するところは効果日数だけかな。再生や、若返りで無
い。値段も安いそうなのだろう。
・男性限定
・35歳以上限定
・精嚢の働きの大向上、常時
・女性のフェロモン検知で主に下半身の血流増加、海綿体の血管大
拡張
元々、込められていた魔力が少い。恐らく魔力を追加すれば効果
時間を簡単にふやせそうだ。込めた魔力が少ない理由があるのだろ
うか? 安いからなのか? 1日毎の方が使いやすいのか? 連日
だと何か問題があるのか? だが説明書には1週間ぐらい連日で使
ったほうが効果が高いとあったので、数日効果があるほうが良いは
ずだ。
魔力を増やし、鑑定で効果時間を確認する。2日、3日と増えて
いき、最終的に5日間有効な状態でそれ以上効果が伸びなかった。
これをヘイゼルさんに効果を説明し、体調だけ記録してもらう。
988
それと、血流が増えるから、もし心臓がドキドキしすぎる時は女性
から離れるように注意点を教える。効果は相手の女性がいると発動
するので、寝ていても隣に女性がいると無駄かもしれない。ドキド
キが強すぎる時は別の部屋に行くべきです。
ほんとは精子の出た量を測りたかったが、やめておいた。
クインさんの方は、1時間ほど経つと効果が現れだした。表皮が
変わっていくので、ぽろぽろとはげる。お風呂に行ってもらって綺
麗にし、前後のサイズを比較する。
肌は白くなり、つやつやで触ると吸い付くような肌触りだ。
肌のハリだけでなく、おっぱいもお尻も上向きになったらしい。
﹁舞踏会前に若くなってしまったわ﹂と喜ぶクインさん。
鑑定で注意深く見ると実年齢32歳と別に、肌年齢20歳と出た
ので12歳ほど若くなったようだ。
最初は効果が大きいはずなので、今後定期的に確認してもらおう。
そして、現在、急にお腹が空いてきたらしい。再生効果でエネル
ギーの消費がされたので何か食べる様に言う。
同じように、ヘイゼルさんもお腹が空いたと、食堂に行った。
ヘイゼルさんは、特に体調面で変わった様子は無い。
部屋から出る前に、ヘイゼルさんとクインさんは、自分達の部屋
だとエレノアとニーナがいるので、どこか部屋を借りたいと。
あ、しまったそうだよね。でも今部屋に空きが無い。とりあえず、
1週間ほどエイミーの部屋を借りることにしてもらった。その結果
エイミーは喜んでここにいる。
さて、寝るまではまだ時間がある。
マイバックに上級の回復薬が入っていたので取り出す。先ほどの
制約は解っているので、自分で試してみる。
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制約
・女性限定
・30歳以上限定
・全身の表皮再生
・顔と胸の筋力を不足分の追加
・皮膚周りの毛細血管の増加・再生
・髪のダメージ回復
と制約を増やして魔力を込める。
先ほどよりもルールを大目にした。すると、必要な魔力が大幅に
あがった。髪のダメージ回復にあまり特徴付けしなかったせいか大
きな魔力が必要になってしまった。
最初の回復薬は追加魔力が5000程でよかった。今回のルール
追加で、魔力を2万も使った。単純に髪に効果を適用させたのが失
敗だった。髪は長さによって消費量が異なる。エイミーに限定すす
れば消費魔力はもっと少なかったかも知れない。今回はちょっとや
りすぎのルールだったようだ。
﹁エイミー、飲む?﹂と聞いてみた。
﹁飲む飲む﹂とごくごくと気楽に飲んだ。
鑑定では成功と出ているので大丈夫だろう。
エリンに前後のサイズを測って比較してもらう。
1時間ほどで効果が現れ始めた。まず見た目で髪の毛がつやつや
に。
サイズを測り風呂場に移動してもらう。測り終わったら喜んだ顔
で裸のまま出てきた、ほら見て見てと。
確かに先日の仮成人の儀で見た時よりも肌が綺麗に白くなり、お
っぱいも上向き。せっかく裸で来てくれたので、ルーペを取り出し
て胸やおなか手の肌を拡大してよく見る。トントンとおなか、背中
を軽く触診。心音、おなかの音、呼吸音。特に問題はなさそうだっ
990
た。
クインさんを詳しく見たわけではないから、比較は出来ないが、
エイミーの方が若くなったような気がする。だが、半年から1年経
たないと違いは解らない。ただ、条件を3つも追加してはいけない
な。今の魔力消費量なら、直接回復で再生をやったほうがマシだっ
たと思われる。残念ながら、制約は、オリジナルがコストパフォー
マンス的には最適かも知れない。
まあ、すごく喜んでくれているが、そろそろ服を着ようね。エリ
ンがローブを着せて、なんとか落ち着く。
食堂はもう誰もいないので、マイバックに入れてあった食事を渡し
て食べてもらった。
さて、仕組みは解った。恐らく量産も出来る。一度開発した人と
話をしてから我々が作っても良いのか相談しよう。
エリンに、数日中に開発者に会えるように手紙を出して欲しいと
伝え。
3人で眠る。
﹁おやすみ!ジルちゃん﹂
﹁おやすみなさいジルベール様﹂
﹁おやすみ﹂
朝になり﹁やっぱりジルちゃんの隣よく寝れる。これからちょく
ちょくお邪魔するから、よろしくね﹂
﹁では私もよろしいでしょか? お邪魔なようならおっしゃってく
ださいね。私は大丈夫ですよ﹂
﹁ああ別にかまわないよ、ベッドも大きいし。一緒の方があったか
いし、でも夏は離れたほうが良いかもね﹂
991
﹁ジルちゃんのベッド、水が流れて涼しく出来るでしょ﹂
﹁知ってたか﹂
﹁知ってるよ。部屋に遊びに来た時にここだけ冷たかったもん。夏
こそ絶対だよ﹂
﹁ばれたならしょうがないな。まあ好きな時に来て良いよ﹂
﹁うんそうするね。じゃあ支度しなきゃ。あとでね。あ服も持って
くるの忘れた。
明日から着替え持ってこよう。じゃあね﹂
と言ってようやく出て行った。
明日は舞踏会。
スケジュールと挨拶の確認しとかなきゃ。
992
5.52 舞踏会お迎え
舞踏会は2日間あります。
1日目の昼間に8歳以上の子供達を集めた会食会夕方舞踏会に参
加しない子供を親が連れて帰ります。それから舞踏会が開始されま
す。通常は15歳以上でデビューとなりますが、地方ではめったに
開かれないので子供でもダンスが踊れるなら参加可能となりました。
主催者が私になっているのでまあ子供が参加できないとまずいで
すから。1日目は独身と既婚でも30歳以下の若手が参加します。
そして2日目はそれ以外の方々。
朝からエリンを連れて王城へ移動。参加してくれるお客様をお迎
えに行きます。スザンヌとマリアに挨拶をして支度が終わる時間ま
では王城で休憩。
侍女の1人がわざわざ私に挨拶に来ました。珍しい。
﹁温泉のお風呂を使うようになって肌が綺麗になりました。ありが
とうございます﹂と
弱アルカリ性のお湯だったのでツルツルになるけどそんなに変わ
ったのかな?。ちょっと鑑定で見てみると良くなったという割りに
まだ肌にはダメージがある。
﹁朝、顔を洗うのにも使ってますか?﹂
﹁恥ずかしながら冷たい水が苦手で部屋の水ではなく温泉のお湯で
顔を洗うようになってから綺麗になってきました﹂
﹁へー、ちょっと部屋を見せてもらえない?﹂
﹁え部屋ですか。私の部屋はそんなお見せできるような部屋では﹂
﹁いや見ないといけない。エリン連れていって﹂
エリンも、どうしたのだろうと疑問に思っているようですが、エ
993
リンは言われたとおり案内をしてくれました。
﹁鍵開けてくれるかな?﹂
﹁すいません困ります﹂
﹁入らないと君の命に関わるかも知れないから開けてくれるかな﹂
﹁えそんな﹂
エリンから﹁ジルベール様の持っている鍵なら侍女の部屋は全て開
きますよ﹂
﹁えそうなの﹂
﹁お聞きになっていませんか?﹂
﹁聞いてない。まあ良いや開けてみるか﹂
カチャ。 開いた。
侍女は呆然と入り口で立っている。
汚い水
飲むと体に良くない。
中に入り蛇口を見る。水を出して鑑定。
やはり。
飲料可。やっぱり。配管の組み合わせを覚える。
隣のトイレを開けてトレイの水を流す。
綺麗な水
汚い水
綺麗な水
飲むと体に良くない。
飲料可
隣の部屋の鍵も勝手に開けて中に入る。
水道:
トイレ:
あの部屋の配管間違ってる。
エリンに設備の担当者も呼んでもらう。さらに隣も確認。やっぱ
りさっきの部屋だけ配管が逆だ。先ほどの侍女は何か解らない感じ
994
で立っている。
しっかりと上位の回復魔法をかけて肌を再生させ完全に治す。古
い角質がはがれて来たので、お風呂に入って眠るようにしてもらう。
設備の担当者が来て配管を確認。配管ミス。全部点検したほうが
良いとお願いする。
問題は侍女になんと説明するか。侍女は勤務半年ほどらしい。そ
れまでずっと配管が間違っていた。顔を洗うのに使っていた水を正
直に教えるとショックの方が大きいのではないか。迷っていたら1
妃様が来てくれた。状況を説明して、侍女には、配管ミスは伝えず
水道管が古かったからゴミが入っていて、それが肌に悪い成分を出
していたと言う事に。
いや温泉からこんな問題が見つかるとは。
そんな、どたばたをしているとスザンヌ、マリア、ルカ王子、フ
ィリップ王子に2妃様が支度を終えたと連絡が。
5人と人数を聞いていたけどえ2妃様もだったのか。もう1人は
スザンヌとマリアの面倒を見る侍女だと思ってた。
﹁エリン人数だけじゃなくて名前を書いて欲しいな﹂と伝えると。
﹁申し訳ありません。リリアーナ様からジルベール様を驚かせたい
から内緒と言われていました﹂
﹁そうあそれなら良いよ。エリンが悪い訳じゃないから気にしない
で﹂
と言っていたら後ろから2妃様が入ってきて﹁ジルベールエリンを
苛めてはダメよ。しっかりやっているじゃない﹂と2妃様に言われ
た。
995
﹁はい。ごめんなさい﹂
﹁ジルベールは素直で良い子ね。ではそろそろ連れて行ってくれる
かしら﹂
﹁はい﹂
そしてスザンヌとマリアの見て﹁スーいつも綺麗だけど、今日の
ドレスを着たスーは世界で一番綺麗だよ。ダンスを踊るのが楽しみ
だ﹂
﹁ありがとう、ダンスも楽しみですね﹂とスーが返す。
マリアの方を見て﹁マリア、今日のドレスを着たマリアはまるで
妖精だね。一緒にダンスを踊るのは初めてだけど、すごく楽しみだ
よ。﹂
﹁はい、よろしくお願いします﹂
と受け答えをして2妃様がこっちを見てニコニコしている。
﹁2妃様も、とても美しい。今日は私ともダンスを踊ってもらえる
のでしょうか。楽しみです﹂
﹁ええもちろん、踊りましょうね﹂
他の2王子には軽く挨拶だけしてみんなで一度領主館へ移動。
王子に言葉をかけないのか?そんなものあるはず無い。男が男を誉
める文化はありません。
領主館に到着です。ルカ王子はすぐに、サフィーナ様のところへ
行きました。
夕方から合流です。
他のメンバーは舞踏会の会場へ馬車で移動します。まずは1部に
参加します。エリンは夕方の舞踏会に参加するので今から準備開始
996
なので一度お別れしました。
997
5.53 舞踏会1日目1部
舞踏会初日1部
最初は子供達との交流会です。領地に住んでいる子供達それに公
爵令嬢のエレノア、ニーナにクリシュナ様。そしてフィリップ王子、
マリアが参加。もちろん私もメイン参加メンバーです。
スザンヌは王妃様のサポートをするようです。王妃様と3人の公
爵夫人が子供達と交流します。
私達の組は子供達通しでゲームを楽しみます。子供は全部で4班
に分けてあって30分づつ入れ替わり全部で2時間。最後にダンス。
一番知られている簡単な曲を踊ります。これは最初から告知されて
いるので全員が練習済み。
私は最初マリアと踊ります。スザンヌは最初は見てるだけ。フィ
リップ王子はクリシュナ様と。
﹁よろしくね、マリア﹂
﹁こちらこそ。ジルさま﹂
﹁ドキドキするね。﹂
﹁そうですね。でもすごく楽しみです﹂
﹁そうか、私も楽しみだったよ。こんな可愛いマリアと踊れて、私
は幸せです﹂
﹁まあ、ジルさま。お世辞がお上手ですね。私もこんなにかっこよ
いジルさまと踊れるなんて幸せです。
998
それも1番にお相手してもらえるんですから。あ、始まりますね。
よろしくお願いします﹂
と礼をする。
私が手を取ってスタンバイ。
﹁行くよ﹂
﹁はい﹂
曲が始める。 隣はフィリップとクリシュナ。周りの子達も踊る。
さすがに私達の周りにはあまり人がいないのでスムーズに踊れる
が、他の子達はスタート位置が近すぎるところもあり、何組かぶつ
かっていた。
そして曲が終了し、失敗も無く終了。
2回目はスザンヌと。マリアは下がって見てます。フィリップ王
子はエレノアと踊ります。
﹁スー、綺麗だね。あんまり綺麗過ぎて見つめられるとドキドキし
て心臓が破裂しそうだよ﹂
﹁まあ、大変﹂と言って私の胸に耳をつける。
﹁冗談かと思いましたが、本当にすごくドキドキ言ってますね。う
ふ。嬉しいですわジルさま﹂
﹁はは、ちょっと落ちつこう﹂と言って深呼吸。
そしてスーの手を取って準備。
﹁じゃあ、頑張りますね﹂
曲がはじめる。
999
子供向けなので、同じ曲で同じダンスだ。先ほどと違ってぶつか
る人がいない。大人も少しいるので、今回は立ち位置の修正があっ
たようだ。みんなちびっ子なりにちゃんと踊ってます。
3回目。私はエレノアと踊る。
マリア、スザンヌ、クリシュナ様にはどこかの男の子が勇気を出し
て誘ってました。
﹁エレ、綺麗だね﹂
﹁ジルにい。よろしくお願いします。失敗しないように頑張ります﹂
﹁練習の成果をちゃんと出そうか。何度も踊ったからきっと大丈夫
だよ﹂
踊り始め、ステップを刻む。 と今回私達の方へ一組が向かって
きた。事前に察知していたので、ギリギリでくるりとターンを入れ
てエレノアに当たらないように避ける。上手く避けれたのでこちら
は被害無し。ぶつかっていないはずなのに、相手側が転んだ。
一旦、エレノアの手を離して、転んだ子供ところへ。
女の子に手を貸して起こす。﹁大丈夫? けっこう振り回されて
いたけど﹂
﹁大丈夫じゃないです。ダンスでこんなに振り回されるなんて私の
手が抜けそうでした﹂
﹁そうか﹂
男の子を見ると、ばつが悪そうに立ち上げる。練習不足だね。
﹁では、次の曲は私と踊りましょうか。脇にずれていてください﹂
と言って、エレノアと続きを踊る。
曲が終り、先ほどの子を迎えに行く。
1000
知らない子と初めて踊った。全般的に丁寧に最後のダンスを踊っ
た。
危なげなくダンスを終える。
﹁ジルベール様、とても、お上手ですね。すごく踊りやすかったで
す。ありがとうございます﹂
﹁いえいえ、私も踊りやすかったですよ。お上手ですね。今日は楽
しめましたか?﹂
﹁はい。とても楽しかったです。初めて見た王妃様はともて美しい
方で感動しましたし。ゲームもダンスも楽しかったです﹂
﹁それは良かった。主催者として嬉しいです。では﹂
﹁では、ありがとうございました﹂とお互いに挨拶をして別れる。
全員が中央に集まって終りです。
王妃様から声をかけて頂きリリアーナかあさまが挨拶を。最後に
私が挨拶をして解散。
夕方の舞踏会まで少し休憩です。我々は軽食を食べながら休憩し
ています。
2時間の間に入れ替えが行われます。馬車の混雑などもありみんな
早めに会場入りしてきます。
暫くしてエリン、エイミーも到着。
まずはエイミーに。
﹁エイミーすごく綺麗だよ。いつもの騎士姿に見慣れてたけど、今
日はどこのご令嬢かと思ったよ。その辺の伯爵令嬢なんて目じゃな
いね。きっとダンスは待ちの長蛇の列が出来るよ。﹂
1001
﹁ははは、美肌薬の影響かな。でも口調が治らないんだよねー。こ
れも薬でなんとかならないかなー﹂
﹁しゃべりはどうしてもね。それも含めて全部受け入れてくれる人
を探すでしょ﹂
﹁そうだねそういう人がいないかなー。まあ今日は無口のエイミー
で通して、しおらしくしておくよ﹂
﹁がんばって﹂と声をかける。
エリンのほうを向いて。
﹁エリン今日のドレス姿も可愛いよ。リボンも沢山付いてて、私の
年齢に会うように少し幼くしたんだね。とても似合ってるよ。かわ
いいよ﹂
﹁こんなにかわいいドレスを買っていただいて、ありがとうござい
ます。ジルベール様に恥をかかせないよに精一杯頑張ります﹂
とニコっとしながら気合が入ってた。
﹁まあ気合入れすぎずに、気楽にね﹂
そしてサフィーナ様たちも会場に入ってきて待合室に来ました。
﹁サフィーナ様、今日もとてもお綺麗ですね。今日はスーと似た髪
形ですね。スーと並ぶと姉妹みたいに、二人とも綺麗です﹂
﹁ああ事前に話して似せてみたのよ。ジルベール様も今日も素敵な
格好をしてますね﹂とサフィーナ様が。
﹁エリンが髪型まで調整してくれましたから﹂
﹁ああエリンお久しぶりね。今日はおひろめで一緒に参加するのよ
ね。悪いけどルカ王子の髪型も治せないかしら﹂
﹁よろしいのでしょうか?﹂と私に許可を求めてくる。
そうか、他の男性に触れちゃダメなんだよね。
﹁ああ、サフィーナ様のお願いだから、ルカ王子の髪型ちょっとい
じってくれるかな道具はある?﹂
1002
﹁道具はマジックバックに入れてありますので大丈夫です。ではル
カ王子様こちらの椅子に座って頂けないでしょうか﹂
ちゃちゃっと少し髪を切ったり10分ほどで調整して整えた。
﹁いかがでしょうか﹂とサフィーナ様に確認。
﹁うん良いね、ありがとうエリン﹂
﹁ルカ、確かにちょっと変わったわね。良い感じね。エリン悪いけ
どフィリップもやってあげて頂戴。1人だけダサいと変だわ﹂﹁は
い、了解しました﹂
王妃様からの命令は私の命令が無くても実行できるのね。使い分
けちゃんとしてるな。フィリップ王子も髪型が変わった。
でも私もルカ王子もフィリップ王子も一緒の髪型と言うわけではな
い。
良い感じだ。
﹁ところでその髪の毛に当てると髪がクルクルなる道具はどうした
の?﹂とサフィーナ様が。
﹁これはジルベール様に作って頂いたヘアーアイロンと言う魔道具
です。必要な箇所だけで仕上げる事が出来るので便利です。このア
イロンと温冷ドライヤーで髪型が自在に作れます﹂
﹁へーすごいわ。私のこの前髪の部分を少しだけ曲げたいのでけど
出来る﹂
と言って二人で相談していじっていた。
結局、前髪と横の部分をフワフワにしてもらっていた。スザンヌも
同じ髪型にして、マリアも横が少し流れていた部分を修正していた。
﹁これすごい。ジルベール様私達の分も作って下さいね﹂
﹁えっとはい。時間がある限り。使い方はエリンが王城でまだ訓練
1003
があるからその時に教えるのかな。まあ頑張って作ります﹂
1004
5.54 舞踏会開始前の雑談
2妃様が﹁用意した美肌薬は、エイミーが飲んだのね。若返ると
言うより、肌が白くなったのね。﹂
﹁用意して頂いた薬は、クインさんに使ってます。彼女の物は、私
が新たに作ってみました。効果が長くなるようにしたのですが、経
過を見ないと解らないですね。﹂と答えた。
﹁まあジルベール、そんな薬を作れるの?﹂
﹁昨日作りました。でも少し様子を見たいですね。とりあえず男性
用の方は5日で結果が出ます﹂
﹁5日? 男性用は1日しか持たないでしょ。﹂
﹁5日に効果を伸ばしたのですが、それが良い方向に出るのか、出
ないのかですね。もしかしたら5日寝れないかも知れないし。﹂
﹁結果が出たら、もちろん私たちに収めてくれるの?﹂と2妃様。
﹁もちろん。市場に出せない物が出来そうなので、王家に丸投げし
ます﹂
﹁まあ、やっちゃたのは理解してたのね﹂
﹁一応、元の薬を作った方に今後の権利等のついて相談してから、
今後の増産については考えようと思ってます。ただ肌の美容よりも
禿を治せないかと考えていたのです。メルミーナ様が喜ぶかなと思
ってるんですけど﹂
﹁ああ頭ね。メルミーナ様の禿なら20年ぐらい一気によみがえら
ないと生えてこないわね。それでも半分ぐらいかしら﹂
﹁えそ、そんなものですか﹂
1005
﹁うーん、私が子供の頃には、髪の毛があったけど。私が社交界デ
ビューした15歳の時にメルミーナ様は30歳でしょ。その時には
後退してたし。
10代まで戻さないとふさふさは無理じゃないかな。生えてもすぐ
に落ちそうだし﹂
﹁そうですか。方向性を変えた維持薬を考えないと無理かな。美肌
の方も、美肌薬は影響が大きすぎる気がしていて、維持薬のほうが
良さそうですよね。シドニアから帰ってから試してみようかな﹂
﹁エイミーに作った薬、私達にももらえないかしら﹂
﹁どうされるんですか﹂
﹁もちろん、私が飲むのよ。ジルベールが作ったのなら、鑑定で安
全なのは解っているのでしょう。私もエミリアも、そろそろ飲む予
定だったのよ。ジルベールが作ったものの方が良いわ﹂
﹁エイミーの物は試しに髪の毛までつやつやにしましたけど、あれ
は魔力消費が多いだけで効果を増やしすぎて魔力消費量が想定以上
に多くなり失敗でしたから、それは無しにしますよ。そうすると、
若干効果年数が多くなるぐらいで、効果は変わらないですよ。﹂
﹁それで良いわ。ジルベールが作ったものの方が安心だし。全部で
7本お願いね。私とエミリア、それに、公爵家の妻5人とで7本は
欲しいわ。﹂
﹁解りました。数日中に作っておきます。それに男性用も渡せば良
いのですね﹂
﹁まあそんなに簡単に作れるの﹂
﹁作るだけなら、でも費用は貰いますよ﹂
﹁1本幾らにするの﹂
﹁そうですね、そちらで値段を決めて頂いてかまいません。ですが、
できれば食料で貰えませんか領地には余剰分の食料は無くて集めら
1006
れませんでした。シドニアに運ぶ小麦粉が少し不足してます﹂
﹁どうして小麦粉。シドニアには軍が用意しているでしょ﹂
﹁それは国としての投資です。私の贖罪は自分で稼いだ中や、寄付
から集めてます。我が領地で用意した物は、種です。種を食料にす
ると次につながりません。明日、食べる食料も、もう少し必要なの
です。全員を助けられるわけはありませんか、私が訪問できたとこ
ろの人だけでも助けれればと思ってます﹂
﹁まあ私たちが、自分の美容で悩んでいたのにあなたはそういこと
を考えていたのね。解ったわ。集められるだけ小麦粉や日持ちする
食料を集めてあげるわ。カトレア様には私から連絡しておきますか
ら。﹂
と2妃様。そしてルーナ様、レッシィ様、セルニア様もうなずいた。
良かった領地内では限界を感じていたので食糧確保のめどが立っ
てよかった。間に合えばよいけど後で取りに来ても良いか。
﹁では王城の倉庫に入れてもらえれば空間魔法で収納して運びます﹂
﹁念のために聞くけど空間魔法でどのぐらい持っていけるの?﹂
﹁この舞踏会の会場と同じ大きさまでなら収納できます。今、種芋
や魔物の肉で半分ぐらい使ってます。まだ余裕があります﹂
﹁なるほどこの会場の半分ね。解ったわ。そのぐらいの食料なら倉
庫を一つ開ければ良さそうね。去年の古い物になるけど良いかしら。
それなら確実よ﹂
﹁多少の劣化は大丈夫でしょう。よろしくお願いします﹂
ゴンザレスが私のところに来ました。
﹁おおゴンザレス間に合ったんだね﹂
﹁ジルベール様、昨日到着しました﹂
1007
﹁ゴンザレス、私のジルベール様の部下のなったってホントだった
のね﹂
﹁スザンヌ様、お久しぶりです。私ごときに声をかけて頂きありが
とうございます。
スザンヌ様は今日もお美しい。あなた様の旦那となられるジルベー
ル様に仕えることができて私は本当に幸せです﹂
﹁ゴンザレスって名前で良いの?﹂とサフィーナ様が。
﹁はい。その名前をジルベール様から頂きました。サフィーナ様も
今日も一段とお美しい。ルカ王子がうらやましいですね﹂
﹁この男、私の記憶が正しければスザンヌの親衛隊とか作った男で
カルロス・ザハスだったと思うのだが、どこからゴンザレスの呼び
名が出たのだ﹂
﹁え、もちろん見た目﹂
﹁おまえ、たまに容赦ないな﹂
﹁会った時にいきなり私に勝負を仕かけてきて、その割りにあっさ
り負けたんですよ。だから負けた時の名前は必要ないと改名させま
した﹂
﹁は。私はあれより改心しゴンザレスとしてジルベールにお使いす
る事にしましたので問題ありません﹂
﹁まあ本人が納得してるなら良いけどな﹂
﹁ゴンザレスは、入隊後レイブリングさんの班に入って魔物討伐で
もやってもらう予定だったのだが、私が4月にシドニア経由でグラ
ンスラム帝国へ行くから、君も一緒に連れて行くつもりだ。レイブ
リングさんとはそういう話になってるんだが良いかい﹂
﹁いきなり私など新兵を護衛に連れて行っていただけるのですか?﹂
﹁え、ああ護衛といえば護衛かな。威張ってるやつが来たら顔で威
圧してくれれば良いから﹂
1008
﹁威圧ですか?﹂
﹁ああ威張った偉い人と会うときに後ろで難しい顔して立っててよ﹂
﹁それはどういう仕事で?﹂
﹁え、そのままだよ﹂サフィーナ様とスザンヌが後ろで爆笑してい
た。
ルカ王子が﹁またか。言うこときついな﹂
﹁だって私とルカ王子で交渉したら、ガキだって馬鹿にされて話が
進まないことがありえるでしょ。その点この男を後ろに立たせて置
けばそういう輩なら相手がビビルでしょ。私が、こっそり威圧を発
動させてもゴンザレスがやってると思われるし﹂
﹁えっと、弾除けと思っておけばよろしいでしょうか。なんにせよ
わが身がお役に立てるならば頑張ります﹂
ルカ王子が﹁ところで、私もガキと舐められると想定してるのかそ
れはどうしてだ﹂
﹁ルカ王子もちょっと童顔系じゃないですか。かっこよすぎるんで
すよ。顔に傷でも入れるか眼帯でもしてちょっと怖い顔にしますか
?﹂
﹁それはダメよ。ゴンザレスしっかり役割を担ってルカ王子を守っ
てね﹂とサフィーナ様が。
﹁頼られているのでしょうか? 頑張ります﹂とゴンザレスが敬礼
した。
﹁ああ、役割は人それぞれだからね。ジルベールにも言われたばか
1009
りだし、我々でできないところがあるからゴンザレスも頼むよ﹂
﹁は。了解しました﹂ゴンザレスがもう一度敬礼した。
﹁まだ出かけるまでに日があるから、レイブリング少しでも鍛えて
おいてね﹂
とか言うやり取りでくだらない時間をつぶしていたらあっという間
に開始の時間に。
1010
5.55 舞踏会スタート
私の両金眼の事はスザンヌ、マリアの両方と婚約した時に見た人
もいるので、徐々に噂は広まっていた。そして、この領地内の主だ
った貴族にはかなり噂が浸透している。
そろそろ公にしても良いとメルミーナ様から言われていた。なの
で初めての魔道具なしでの参加します。マリアも魔道具をはずして
後ろにいます。スザンヌは、ばれてないので魔道具をつけています。
最初に、私が開催の挨拶をします。ざわざわと噂が本当だったと
声が聞こえる。
﹁アナベル・クロスロード伯爵の子、ジルベール・クロスロードで
す。今日は遠いところから王妃様、王子、それに公爵家の方々を来
賓として迎えました。
そして、これよりこの領地初の舞踏会を開催します。この後、来賓
の方々からも挨拶がありますが、皆様本日の舞踏会をお楽しみ下さ
い﹂
それからリリアーナかあさまが王妃様、王子、王女、公爵夫人、
公爵令嬢と紹介をしました。
最初は歓談の時間が取ってあります。本日は若手の人ばかりです
が適当にあいさつに来てくれる人の相手をします。
王妃に王子がいるので皆緊張しながら偉い人たちに挨拶をしてま
す。田舎物の我々に対しても王家や公爵家婦人たちは丁寧に接して
くれてました。
1011
そうやって平和に進行していたはずですが、領地内では見たことが
無い20歳ぐらいの若者がこちらに来た。
馴れ馴れしく、スーとサフィーナ様にしゃべりかける。
私とルカ王子は、他の令嬢たちに取り囲まれていたので助けられそ
うにない。
暫く時間が経過、まだスーとサフィーナ様から離れないので、私が
二人のそばへ移動した。
私に気づかず、いまだ美女2人に馴れ馴れしくしゃべりかけてい
る。
私が会話に入り込む。2人は、ホッとした顔つきでこちらを見る。
それでもサフィーナ様に馴れ馴れしく触ろうとするので、私が手を
叩いて睨む。
ゴンザレスが来て、この若者を離した。
すると去り際に﹁両金眼が偉そうに金眼なだけのチビの癖に。金眼、
金眼って、王子も含めて金眼なんてそんなに偉いかね。挙句に、王
家も両金眼だってだけで、こんなチビに娘2人も差し出すほどへつ
らいやがって。王家も地に落ちたな。ルカなんてただのガキだじゃ
ないか。私の方が才能があるのに。サフィーナだって私の方が相応
しいのに。畜生﹂と馬鹿にした口調で文句を言う。
もちろん途中から防音魔法で声が外に出ないようにしましたが、
私と距離が離れていたので、防音魔法の空間が少し広範囲になって
しまっていた。しまったな。今の声が2妃様と公爵夫人のセルニア
様にも聞こえてたようだ。あの坊ちゃんを睨んでいる。
私がこの男の隣に移動し気絶させる。ゴンザレスが倒れこまない
1012
ように体を支えた。
そして注目を集めないうちに護衛に渡して片付ける。
時間的に少しだけ早かったが、騒ぎになる前にダンスを開始した。
ファーストダンスは二組だけが中央で踊る。主催の私と若者代表
ルカ王子にサフィーナ様のペア。私はスザンヌを連れて中央に。 隣にルカ王子にサフィーナ様。
少し難しい曲です。
私は、ファーストダンスの担当というか、そもそも舞踏会のダン
スが始めて。他の3名は小さい舞踏会で何度も踊ってたらしいけど。
私はちょっと緊張しながらも、2組がなんなく完璧に踊りきる。 皆から拍手がもらえました。
それから2曲目に入ります。皆がダンスフロアーに移動。私はエ
リンとダンス。スザンヌは下がってマリアの隣に移動します。
3曲目エイミーと踊る。エリンもスザンヌの隣に下がる。
一度休憩がはいり、皆4曲目の相手を探す。
スザンヌとエイミーにサフィーナ様が領地の人と踊るようだ。2人
の前に人が列をなして、同着の人がじゃんけんをしている。
エリンはマリアを連れて控え室にさがりました。
王妃様、公爵家夫人のところも、緊張した男子が列を成している。
私は、開催者特権で、レオニー王妃、レッシィ様、セルニア様、ル
ーナ様と並んでいる面々を無視して踊る。
1013
最後にサフィーナ様のところへ。
サフィーナ様は、大人気で列ができ、じゃんけんが白熱していまし
たが私が近くに行くと
﹁大変も申し訳ありません。主催者の方とはお約束があったのでご
めんなさいね﹂と順番待ちの人に丁寧に挨拶をする。
私も﹁すいませんね。主催者特権なんです﹂
みんな私に文句を言う人はいませんのでどうぞどうぞ譲ってくれ
た。私は最後のダンスを踊った。予定を全て踊り終わり丁度休憩。
おこちゃまの私はここで下がる予定だったのでスーのところに行
ってエスコートしながら控え室に行こうとした。ですが、知らない
16歳ぐらいの令嬢がやって来て﹁ダンスは終りですか?﹂と聞い
てきた。﹁まだ見た目どおり小さいので、そろそろ下がるつもりで
す﹂と正直に答えると﹁握手だけでもしていただけないでしょうか﹂
と頼まれた。
握手ぐらいと了承すると、すぐに10人ぐらいの列ができて全員
と握手をした。挨拶をしてスーと一緒に控え室に戻る。
スーが﹁ジルベール様、人気ですね﹂と言ったが、スーのダンス
の列の方が長かったよと。そんな会話を交わして我々子供組みは全
員退室。
皆で馬車に乗り込みスザンヌとマリアにフィリップは旅館で降ろ
し、我々は領主館へ戻った。
1014
眠るまでは少し時間があったので、ドレス姿のエリンと談笑し、
2人で少しダンス。ゆったりと踊っているとエイミーが戻ってきた。
﹁戦績0勝だったよー﹂と言って、エリンと交代し、私とダンスを
踊ってから着替え、疲れて就寝。
1015
5.56 舞踏会二日目
朝食後にクインさんとエイミーを診断。2人とも体調は良いよう
だ。さらにクインさんはすっきりとした顔をしていた。その後でヘ
イゼルさん。あれ? お疲れ? 心臓の鼓動も正常。脈拍も正常。
体への悪影響は出ていない。使った効果を説明してもらった。
人生で初めてクインさんを満足させることが出来たそうです。
違いといえば、いつもと同じ量の食べ物だと腹が空くのだとか。
その後兵舎から来て欲しいと連絡があった。
例の坊ちゃんを逮捕したままだった。
行くと、まあ騒がしい。
﹁僕は、シラーミル侯爵家の長男だぞこんなことをして許されると
思っているのか﹂
彼の言っていることは本当だ。身元を確認したら隣の領地に出し
た招待状で来た坊ちゃんだ。
どうやら今年、魔法大学を学年トップで卒業した期待のホープら
しい。
王家への不敬罪でさっさと裁けば良いのだが、今だああ言っている
と言うことは、自分がした事を解っていないらしい。
﹁ちょっと、しばくか。﹂と言ったら、﹁じゃあ、ゴンちゃんも連
れて行って良い﹂
﹁なんで?﹂
﹁だって、今からすごいのやるんでしょ。護衛ならだから、主人が
どの程度の攻撃が出来るか知っておかないと連携が取れないし。そ
もそもゴンちゃんにいたってはビビッて動けなくなるし﹂
﹁ああ、動けないと困るね。じゃあ連れてきて﹂
1016
﹁あいよ!﹂
と言ってすぐに連れてきてくれた。
シラーミル坊やを牢から出す。
﹁やっと出したか、迎えが来たのか。ははは。家は侯爵家だからな。
伯爵家程度で、僕にこんなことをしたんだから、お前達なんかあっ
といまに罪人だ。ははは、ざまみろ﹂
﹁まだ、そんな事が言えるんだな。お前学院にいても、情報ぐらい
入るだろ。私はグランスラムの敵兵1万を単独で敗走させたのだぞ。
知らないのか?﹂
﹁へ! そんな事出来るわけ無いだろ。何かの情報操作でさも両金
眼が強いと言うイメージを国民に植え付け、王女2人も出す価値が
あるってしたいんだろ。僕は騙されないぞ。僕は魔法の成績だって
トップなんだ。魔法でどんなことが出来るかなんか解ってるんだか
らな﹂
としゃべっている坊ちゃんと転移。
普段魔法の訓練をする場へ移動する。
﹁あ? ここどこだ。﹂
﹁転移で移動した。魔法が得意なんだよね。勝負しましょうか。あ
なたが勝てば解放しますよ﹂と言って魔法禁止の道具を外す。
﹁ははは、馬鹿め僕は歴代の魔法大学卒業のトップの中でもダント
ツの実力だぞ10歳の小僧如きに負けるわけがないだろう﹂
﹁まあ御託は良いよ。先制のチャンスだ。どうぞ﹂
﹁余裕だな。だが遠慮しないぜ死ね小僧﹂と詠唱をしてから炎の玉
がやってきた。
まあ、普通の魔法使いよりは強いのだろう。だがこの程度の魔法は
防止するまでも無い。けれどとりあえず無詠唱の水魔法を当てる。
あっさり消失。
﹁なんだとこんなバカな﹂
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﹁じゃあ次は私の番だね﹂
とりあえず、火の鳥を撃つが坊ちゃんには当てずに横をすり抜けて
後ろの壁に当てる。後ろで大爆発。
坊ちゃんは後ろを見て驚愕している。
﹁おい敵の前で後ろを向くなよ。次の攻撃が来るぞ﹂と言うとこち
らを向いた。
﹁出て来いイシス﹂
とイシスに最大魔力を注ぎ込み召還する。
私の後ろに巨大な水龍が立ち上る。
びびって漏らす坊ちゃん。
ゴンザレス、お前もか。
エイミーは女性なので見なかったことにしよう。
﹁さて、あんたが私のご主人様を馬鹿にした坊ちゃんですね。しっ
かり聞いていたからお仕置をしましょうか﹂
⋮.でも一つ
﹁ひー、すいません、すいません、すいません﹂と土下座して謝る。
﹁だめよ。坊ちゃんは私の中で溺れ死ぬのよ。⋮.
だけ助かる方法を教えてあげましょう﹂
﹁助かる方法。なんでしょうか﹂
﹁あんたの領地の人間全員を生贄に差し出しなさ。そうすれば、あ
んたは生かしてあげる﹂
考える坊ちゃん。
いや、考える余地無いだろ。
﹁すいません、領地の民は差し出せません。でも死にたくありませ
ん。何とか他の案は無いでしょうか﹂
﹁無いわ﹂
﹁⋮.お父様、お母様、馬鹿な息子ですいませんでした。おい、殺
してくれ﹂
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﹁ではいただきます﹂と、イシスの中に消えた。2分ほどで吐き出
されあた。
1分たった時にホントにそのまま殺すのかと思ったけど、ちゃんと
出てきた。気絶しているが、まだ死んでいないようだ。水を吐き出
させて、回復魔法をかける。
目が覚める坊ちゃん。
﹁う 生きてるのか﹂
﹁さて、反省したかい﹂
﹁は、はい﹂
﹁金眼がなんだったかな、もう一度自分の目で見た感想を言ってご
らん﹂
﹁両金眼のジルベール様は、素晴らしお力をお持ちです。王家がジ
ルベール様に王女を差し出すのは解ります﹂
﹁うーん、違うな。王女を差し出したんじゃない。婚約する前、私
は王家にこんな力は見せていない。スザンヌとマリアは、他の沢山
の男性の中から私を好きになってくれたんだ。私が脅したわけでも、
王が差し出したたわけでもない。良いかい﹂
﹁はい、はい、はい﹂
﹁返事が多いね。馬鹿にしてるのかな﹂
﹁いいえ、すいません。解りました﹂
﹁そう。誤解はなくなったかな﹂
﹁はい﹂
﹁うん、それと貴方の普段の態度はあまりに良くない。解るかな。﹂
﹁普段ですか﹂
﹁そう、王家への悪口以前に、全体的なしゃべり方とか、自分の傲
1019
慢さ。だよ﹂
﹁ああ。自分の実力は解りました。気をつけます。﹂
﹁いや、解ってないな。私達のように力を持つ者は、自分を誇示す
るために力を使うのではなく弱き者達を助け、世の中をよくするた
めに力を使わなければならない。解るかい﹂
﹁はい﹂
﹁もう一度、正直に答えなさい﹂
﹁今までそんな事は、考えたこともありませんでした。﹂
﹁そうだろうね。侯爵家の長男として生まれ、魔法の才があり、周
りからちやほやされて我侭に育つ。周りは腫れ物に触るように正し
き道を教えるでもなく、ただ災難に合わないように貴方を避けてい
たはずだ。﹂
﹁⋮.﹂
﹁まあ、まだすぐに理解できるとは思えないけど。力を持つ者は、
それに応じた権利もあるが、もちろん義務と責任もある。それは良
いね﹂
﹁はい﹂
﹁あなたは、力を持つ権利を行使してきたが、義務と責任は果たし
ていない﹂
﹁どんな義務がある﹂
﹁さきほどジルベール様が言ったとおり、弱気を守る義務がありま
す﹂
﹁そうだ。では責務は﹂
﹁人々を正しい方向、より良いほうへ導く責任があります。﹂
﹁では、君は今まで何をした﹂
﹁何もしていませんでした﹂
﹁だろう。権利ばかりを主張していた。それが目の前の情報を都合
の良いように解釈させる原因になった。物事を正しく見ることさえ
出来なくなっていた。すべてご都合主義だ﹂
﹁おっしゃることはわかりました﹂
1020
﹁最後に、悪い事をしたら罰を受けないといけない。﹂
﹁はい反省します﹂
﹁反省してもね。罰は受けるんだよ。解ったね﹂
後ろを向いてイシスを見る。
﹁イシス折角出てきてくれたけど戻すね。でも2倍ぐらいの大きさ
って言ってたはずだけどでかいね﹂
﹁我ながら、ここまで大きくなるとはジルベール様の魔力値が高い
からですね﹂
元が20m級の長さだったはず。
今50mを越えているようだ太さもすごい。
最大級のくじらが35m程度なのだからそれをはるかにしのぐこの
大きさ。
いやまあ、びびるわな。
領地に戻る。
彼にはもう少し牢に入っていてもらおう。
ゴンザレスは、自分の部屋に帰っていった。
エイミーと一緒に領主館にある自分の部屋に直接戻る。エイミー
の服がここにあってよかったわ。エリンを呼んで湯浴みの指示を。
エイミーは恥ずかしそうにお風呂に行った。
今日は、夕方の早い時間から舞踏会が始る。大人の部なので私は
挨拶をして1曲おどったら帰るようになっている。
ルカ王子とサフィーナ様は一緒に参加してくれるそうだ。
昨日の夜は、スーとマリア2妃様は旅館に泊まっている。
旅館前の警備が通常の倍以上の警備になっている。王家に公爵家夫
人が二組も来ているので、この日にあわせて他の領地からも応援に
来てもらっている。
1021
旅館前をレイブリングさんの部下が守り、その回りを他の領内を護
衛が回ってもらった。
旅館内は、王宮魔道士が数名交代で勤務し結界を張っている。
ゴンザレスのように今年雇った人たちも続々と到着していたがい
きなりの護衛シフトで疲れているようだ。
舞踏会に行く前に、領主館に2妃様と公爵夫人が来てくれた。昨
日の不敬についてどういう対応をするか話し合うことになっている。
公爵夫人は、王家を馬鹿にしてのうのうとさせるようことはあっ
てはならない。死刑が妥当だろうと言う。
そこで王妃様が不意に私に振った。
﹁ジルベールはどうしたい﹂
﹁王家を馬鹿にした不敬はあったと思いますが王家に対してよりは
私の方への敵意が多かったと思います。それに先ほどシバイタラお
しっこ漏らしながら謝ってきましたから、死刑は無しにしたいです
ね﹂
﹁まあ、ジルベールはいつも甘いわね﹂
﹁先ほどは改心したと言ってましたが、あの調子だと、そのまま生
きていくのは無理かな。優等生だったのかも知れませんが、優秀な
力を人の為に使わず人を見下す方に行くのであればすぐに人と衝突
します。そして次はもっと大きい問題を起こします。きっと﹂
﹁そうね。それが解ったうえでどうするの。死刑以外で﹂
﹁まず、謝罪の言葉をちゃんと言ってもらいます。忘れないように
文書にしておきましょう。そして、宮廷魔道士は首です。とりあえ
ず10年は跡継ぎも無しです。10年後に改心し領民に好かれる人
物になっていれば考えましょう。そしてそのための今後ですが、こ
の領地で昼間は魔道具作りに医療の手伝い。そして夜は孤児院に住
んで、子供達の面倒を見てもらいます。給料は、当面の間は8割を
寄付させる。こんな感じかな﹂
1022
王妃様から﹁ジルベールがそう決めたならそれで良いわ。文句は無
いのよ。貴方に任せましょう。でも、いずれもっと厳しい態度を取
らなければ成らないときが来ますよ。良いですね﹂
﹁はい。しかし盗賊は直接殺してますし、シドニアの戦でも殺して
ます。殺さなければいけない時は殺します。ですが、彼はまだ救え
る命です。救える命を無駄にしたくないのです﹂
﹁そうね。私のジルベールは良い子だわ。このまままっすぐに育っ
ね﹂
と言って頭をなでなでされた。
他の公爵夫人も順番に頭をなでて旅館に帰っていった。
さて魔道具作りはロジクールさんに任せるか。夜は教会で牧師の手
伝いと孤児院の手伝い。
魔道具作りは、魔力がなくなると作れないから割と短時間。午前中
だけ多いって言ってたな。午後は診療所で助手が欲しいと言ってた
か。よし、いっぱい働いてもらうか。
まずは受け入れ先に、手紙を書いて出しておくか。それと侯爵家だ
な。
夕方は舞踏会へ出向いた。
王妃様から挨拶があった。﹁ジルベール・クロスロードは、近いう
ちに爵位を貰います。そして、長きに空白であった王弟につきます。
4月には発表になりますので、クロスロードの領地の方々、そのつ
もりでいてください。くれぐれも正式な発表があるまでは広く口外
してはいけません。﹂
﹁王妃様、発表しても好かったのですか?﹂﹁良いのよ。もうじき
発表だし、この地で噂になっても、王都にうわさがつく頃には発表
と同時よ。それにあなたの周りの人ぐらいは先に知っておきたいで
しょう。さあ、挨拶をしなさい﹂
1023
﹁あ。ジルベールです。先ほど王妃様から話が合ったので、どうや
ら私はもうすぐ爵位を得、正式にクロスロードになります。たかが
この地に生まれてから10年。それでも私にとってはとても大切な
期間。人生全ての期間をこの領地の皆様と共に過ごしてきました。
皆様から愛され、両金眼を隠しきり、ようやく無事爵位を得られる
時が来ます。これからがようやくスタートです。私と共に、いやこ
こにいるレイブリング・クリシュナーダ伯爵と共に、この次の10
年を頑張りましょう﹂
クロスロード万歳!
ラルクバッハ万歳!
クリシュナーダ万歳!
と掛け声と共にみんなが声をかけ、拍手で終わった。
ヒエー、ちゃんと挨拶が終わって良かった。王妃様、急に発表する
から用意していた挨拶が半分も使えなかった。あせったー。
さて、その後偉い人と挨拶をした。そして、今日の最初の1曲踊
ったら帰る。
今日はスザンヌも舞踏会に来ていないのでエリンとだけ踊った。
もちろん、昨日とは違う高度な曲。ルカ王子とサフィーナ様。私
とエリンの二組だけがファーストダンスを踊る。
来ている人全員から拍手。ジルベール様の専属侍女は、かわいく
て綺麗だ。サフィーナ様もお綺麗だ。2人とも並んでもそん色ない
とても綺麗だ。などと言われて、エリンがほめられたのが嬉しかっ
た。
今日のエリンは、結構高いヒールを履いてます。サフィーナ様の
1024
ヒールは、少し低くしてもらいました。ちょっとインチキです。ご
めんなさい。
サフィーナ様は、笑って受け入れてくれました。
エリンのドレスは昨日のドレスと別物です。昨日は少し子供受け
するリボンがフリフリとした可愛いドレス。
今日は大人びて胸元もバシッと開いている。行きの馬車で﹁いつも
の侍女服は可愛い侍女さんって感じだけど、今日のこのドレスを着
たエリンは綺麗な令嬢だね﹂と誉めると顔を真っ赤にして喜んでま
した。
﹁ジルベール様、侍女をそんなに喜ばせてもこれ以上のサービスは
できませんよ﹂
﹁ああ別にそういうのじゃなくて正直に感想を言っただけだから、
また明日から侍女さんよろしくね﹂
﹁はい。明日からはいつもどおりですが、せっかくですので今日は
こちらのドレス姿ご堪能下さい﹂
と言っていた。なので、領主館に帰っても暫くはドレス姿で部屋で
お茶してました。
エリンが私の隣に座ってちょっとドキドキしながらお話して、そ
の後で2人だけでダンスを踊りました。エイミーが帰ってくるまで
ですけど。
エイミーは、私達がダンスをしているのを見て、次私ねーって事で
その後もダンスをしてました。
寝る前に本日のエイミーの成果を聞きましたが。ダンスは成功だ
った。後半で好きだと言う男が来たが、話をしたらだめだったと。
残念です。
1025
一旦 終わります ここで、更新を止めます。
いろいろな方々からのアドバイスをいただいた結果、このままの書
き方で継続するのは止めようと思います。
もう一度最初から書き直します。
それでも、小説として50点の出来に到達できる自信はありません。
ですがもう少し読めるようレベルアップを目指します。
ここまで読んでいただいた方々、誤字等報告していただいた方々、
大変ありがとうございました。
暫くしたら新しい話として再スタートさせるつもりです。
せっかくなので、設定も少し変更したいと思っています。
より面白い話にしたいと思いますので、楽しみに待っていてくださ
い。
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PDF小説ネット発足にあたって
http://ncode.syosetu.com/n1916do/
転生者はめぐりあう
2017年1月25日00時19分発行
ット発の縦書き小説を思う存分、堪能してください。
たんのう
公開できるようにしたのがこのPDF小説ネットです。インターネ
うとしています。そんな中、誰もが簡単にPDF形式の小説を作成、
など一部を除きインターネット関連=横書きという考えが定着しよ
行し、最近では横書きの書籍も誕生しており、既存書籍の電子出版
小説家になろうの子サイトとして誕生しました。ケータイ小説が流
ビ対応の縦書き小説をインターネット上で配布するという目的の基、
PDF小説ネット︵現、タテ書き小説ネット︶は2007年、ル
この小説の詳細については以下のURLをご覧ください。
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