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B2-18 - 大阪大学レーザーエネルギー学研究センター

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B2-18 - 大阪大学レーザーエネルギー学研究センター
ガラス中の銀および希土類イオンの分光特性に関する研究
角野広平 1)・藤本
靖 2)・秋山則之 1)・土井貴文 1)・黒田邦義 1)・若杉
隆 1)
京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科 1)・大阪大学レーザーエネルギー学研究センター2)
EXPERIMENTAL PROCEDURES
25Na2O・25Al2O3・10B2O3・40SiO2(mol%)の組成の
ガラスを作製した。これを 20×10 mm2 で厚さ 1 mm
になるように成形し、全面を光学研磨して、ガラス
基板とした。このガラス基板を、種々の組成比の混
合溶融塩 xAgNO3・(100-x)NaNO(mol%)
(x = 0.01, 0.1,
3
0.2, 0.5, 3)に、400℃で 48 時間浸漬し、イオン交換
により銀を導入した。EDX によるガラス断面での濃
RESULTS AND DISCUSSION
銀ドープガラスの作製と分光特性
Fig. 1 に、溶融塩中の硝酸銀のモル比 (x)に対する
ガラスのイオン交換率 f の変化を示す。混合溶融塩
の組成比を x = 0.01 から 3 mol%まで変えることによ
り、f を 0.2%から 60%まで変化させることができた。
また、いずれのガラスも可視領域に強い吸収をもた
ず、銀ナノ微粒子は形成されていないと考えられる。
屈折率は基板ガラスの 1.51 から 1.61(x = 3 mol%, f =
60%)まで増加した。
60
50
40
30
20
10
0
0.0
3
Absorbance
銀ドープガラスは、古くからステンドグラスなど
の着色ガラスに用いられてきた。また、近年では、
屈折率分布型光学素子やナノ微粒子の非線形光学効
果を応用したフォトニック材料などとしての研究も
行われている。さらに、銀ナノ微粒子と希土類イオ
ンなどの他の発光中心との相互作用を利用した発光
強度の増強などの研究も進められている。
ガラスやセラミックス、あるいは水などの種々の
媒質中に導入された銀は、Ag0, Ag+, Ag2+などの原子
やイオンとして、また、Ag2+, Ag32+などのクラスタ、
さらには、Ag ナノ微粒子などとして安定に存在し、
これらの状態間の変移も条件により、容易に起こる
ことが知られている[1, 2]。それぞれの状態にある銀
は、吸収や発光などにおいて特徴的な性質を有し、
その構造や電子状態、周りの媒質との相互作用など
について多くの研究がなされてきた。特にガラスは
安定な媒質であり、材料の観点からも優れているこ
とから、活発に研究が行われているが、媒質そのも
のが非平衡材料であるため、ガラス中での銀の存在
状態については、十分に解明されていない。
そこで本研究では、光学素子の基板として良好な
特性を有するアルミノホウケイ酸塩ガラスについて、
組成比の異なる混合溶融塩で Ag+/Na+イオン交換を
行い、銀ドープ量が大きく異なるガラスを作製し、
これらのガラスについてガラス中の銀の発光特性と
イオンの状態との関係について調査した。
また、銀と希土類イオンとの相互作用について調
査することを目的として、ガラス中にドープされた
Pr3+の発光特性についても調べた。Pr3+は可視域で複
数の遷移を有し、励起源として青色半導体レーザー
を用いることができることから、可視固体レーザー
への応用が期待される[3, 4]。ここでは、良好な量子
効率と可視透過性を有するカルコハライドガラス
Ga2S3–GeS2–CsBr(X=Cl, Br)に Pr3+をドープしたガ
ラスを作製し、その光学特性を調査した。
度プロファイルから、銀はガラス中にほぼ均一に導
入されていることが分かった。イオン交換前後の質
量変化から銀の導入量を見積もり、イオン交換率 f =
[Ag]/([Ag]+[Na])を求めた。
一方、Pr3+ドープカルコハライドガラスは、以下
の方法で作製した。Ar で満たしたグローブボックス
内で、蒸留により精製した S および純金属(Ge,Sb)
、
真空乾燥した CsX(X=Cl, Br)をシリカガラス管に
秤量し、真空封緘した。封緘したシリカガラス管を
揺動炉で 950℃まで昇温し、試料を反応させた。こ
のシリカガラス管を空気中で急冷することにより試
料を作製した。ガラス化判定は目視および XRD で
行った。ガラス転移温度は DTA により測定した。
これらのガラス試料について、光吸収を分光光度
計および FT-IR を用いて測定した。また、屈折率は
プリズムカップラーを用いて測定を行なった。蛍光
分光光度計を用いて発光特性、発光寿命を調査した。
Ion exchange rate, f (%)
INTRODUCTION
2
1
Before IE
x = 0.01
x = 0.1
x = 0.2
x = 0.5
x=3
0
200 300 400 500 600 700 800 900
Wavelength (nm)
0.5
1.0
1.5
2.0
2.5
3.0
AgNO3 molar ratio of molten salt, x (mol%)
Fig. 1 Ion exchange rate, f, versus AgNO3 molar
ratio of molten salt, x. Absorption spectra of the
glasses before and after the ion exchange are also
shown.
0.20
cm -1)
30
25
3P
2
1I +3P
6
1
3P
0
1D
2
20
3
0.15
Energy (10
Absorption coefficient(mm-1)
Fig. 2, 3 に x = 0.01 および 0.5 mol%のガラスについ
て、240, 340nm で励起したときの発光スペクトルを
示す。銀の導入量が最も少ない x = 0.01(f = 0.2%)
のガラスでは、240 nm で励起したとき、332 nm に
Ag+に帰属される強い発光を示した。しかし、x = 0.5
(f = 17%)のガラスでは、この発光は弱く、発光ピ
ークは長波長側にシフトした。また、340 nm で励起
したとき、x = 0.01 のガラスでは発光は観察されなか
ったが、x = 0.5 のガラスでは 497 nm に発光が見ら
れた。銀の導入量が多くなると銀イオン同士が会合
しやすくなると考えられるため、340 nm での励起に
よる発光は、会合した銀(Ag+-Ag+ ペアや Agnm+
クラスタ)によるものと考えられる。x = 3(f = 60 %)
のガラスでは発光は観察されなかった。
15
10
5
0.10
3
P0
3
F3
0
3
F2
1G
4
3F
3F4
3 3
F2
3H
6
3H
5
3H
4
3
0.05
1
F4
D2
0.00
400
1
G4
800
1200 1600 2000
Wavelength(nm)
2400
Fig. 4 Absorption spectrum of 40GaS3/2・40GeS2・
20CsBr + 0.5Pr glass and energy diagram of Pr3+.
800
Ex. 240nm
Ex. 340nm
600
3
P0-3H4
Intensity(a.u.)
Intensity (a. u.)
700
500
400
300
200
3
P0-3F2
100
0
300
3
400
500
600
Wavelength (nm)
P1-3H5
3
P0-3H6
700
500
Fig. 2 Emission spectra for the x = 0.01 mol%, f = 0.2%
glass measured with excitation at 240 and 340 nm.
550
600 650 700
Wavelength(nm)
750
800
Fig. 5 Fluorescence spectrum of 40GaS3/2・40GeS2・
20CsBr + 0.5Pr glass (Ex. 450nm).
Intensity (a. u.)
150
CONCLUSIONS
Ex. 240nm
Ex. 340nm
銀ナノ微粒子を形成することなく銀の濃度を大き
く変化させたガラスについて、銀濃度により蛍光特
性が大きく変化することが分かった。また、Pr ドー
プカルコハライドガラスについて、高効率の可視域
での発光が見出された。今後は、銀-希土類共ドー
プガラス材料についても発光特性を調査し、シンチ
レーションなどへの応用も含めて検討していく。
100
50
0
300
400
500
600
700
Wavelength (nm)
Fig. 3 Emission spectra for the x = 0.5 mol%, f = 17%
glass measured with excitation at 240 and 340 nm.
Pr ドープガラスの作製と分光特性
Fig. 4 に Pr3+ドープ 40GaS3/2・40GeS2・20CsBr ガラ
スの吸収スペクトルを示す。短波長側の吸収端は約
450 nm で Pr3+の励起準位である 3P0 がショルダーと
して観察された。Fig. 5 に 3P2 準位を励起したときの
発光スペクトルを示す。発光スペクトルはほとんど
すべてが 3P0 準位からの遷移によると考えられ、1D2
準位の遷移による発光は見られない。このことから
このガラス系では熱緩和による遷移はほとんど起こ
っていないものと考えられる。また、0.5 mol% Pr を
ドープしたガラスの 3P0 準位の発光寿命は 10 ms 程度
であった。Judd-Ofelt 解析を用いて見積もったこの準
位の輻射遷移確率と、実測の発光寿命から評価した
この準位の量子効率はほぼ 100%であった。
ACKNOWLEGEMENT
大阪大学レーザーエネルギー学研究センターでの
分光測定に当たりご支援頂いた門田速人氏、山田研
二氏に感謝致します。
REFERENCES
[1] I. Díez and R. H. A. Ras, Nanoscale, 3, 1963
(2011).
[2] G. De Cremer, E. Coutiño-Gonzalez, M. B. J.
Roeffaers, B. Moens, J. Ollevier, M. Van der
Auweraer, R. Schoonheydt, P. A. Jacobs, F. C. De
Schryver, J. Hokens, D. E. De Vos, B. F. Sels, and T.
Vosch, J. Am. Chem. Soc., 131, 3049 (2009).
[3] Y. Fujimoto, O. Ishii, and M. Yamazaki, Electron.
Lett., 45, 1301 (2009).
[4] J. Nakanishi, T. Yamada, Y. Fujimoto, O. Ishii, and
M. Yamazaki, Electron. Lett., 46, 1285 (2010).
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