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第10章 自然環境の保全

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第10章 自然環境の保全
⑩
自然環境の保全
第10章
1
自然環境の保全
自然環境の保全
環境基本計画においては、自然と共生できる環
(単位:ha)
50,000
境をつくるために以下の目標を掲げています。
なお、1人当りの都市公園の面積にかかる目標
40,000
値については、北見市緑づくり計画に準じていま
30,000
す。
20,000
10,000
(1) 自然の概況
平成21年
平成20年
平成19年
平成18年
平成17年
平成16年
平成15年
平成14年
森林
平成13年
平成12年
1)
0
年度
※平成17年から端野・常呂・留辺蘂を含む
出典:北海道林業統計
①森林面積
北見市内の森林面積は94,536haで、市のおよ
図10-2
天然林面積の変化
そ66%が森林に覆われていることになります。
オホーツク総合振興局管内は、道内でも森林の
占める割合が高く72%にものぼっています。
②森林の減少
長い年月をかけて形成されてきた原生的な
表10-1
森林面積の比較(H22.4.1)
オホーツ
ク総合振
興局管内
北海道
森 林 面 積
(ha)
割合(%)
天然林には独自の生態系が形成され、貴重な動
植物の宝庫となっています。
北見市
こうした森林の機能を十分に発揮できるよう、
中核都市としての役割とバランスを保ちながら、
5,538,757
770,318
94,536
70.5
72.1
66.2
森林環境を維持・保全していくことが今後の課題
となっています。
出典:北海道林業統計
<おもな森林の機能>
(単位:ha)
100,000
・林産物などの有機物の蓄積と供給
80,000
・水資源のかん養と洪水の防止
平成21年
平成20年
平成19年
平成18年
平成17年
平成16年
・生物多様性の保全
平成15年
・保健、文化的機能
0
平成14年
・生活環境保全
20,000
平成13年
・土砂崩壊及び土壌流出防止
40,000
平成12年
60,000
・砂漠化・地球温暖化の防止、大気の浄化
年度
※平成17年から端野・常呂・留辺蘂を含む
③森林の人工林率
出典:北海道林業統計
図10-1
北見市内の森林に占める人工林の割合は
44.1%で、積極的に人工造林が進められた結果、
森林面積の変化
北海道の中でも群を抜いて高い値になってい
- 56 -
⑩
自然環境の保全
実施しました。
ます。
特に平成13年度からは、外来植物の分布状況
しかし、人工林は天然林(天然林率52.2%)に
を中心的課題として調査をまとめました。
比べて木の種類が少なく多様性が乏しいため、多
その結果、外来植物は都市部を中心に分布を
様な生物の生息および生育環境を保障するとい
う観点から、原生的な天然林をこれ以上減少させ
拡大していることがわかりました(表10-4)。
ないよう努めるとともに、森林資源の循環利用を
特に、平成18年2月に特定外来生物に追加指定
図り、森林が持つ多様な機能に配慮した長期的視
されたキク科の多年生草本で湿生地における在
野に立った森林育成が重要です。
来植物を駆遂するオオハンゴンソウは留辺蘂自
治区の国道39号線沿い、242号線沿い、瑞穂地区、
(%)
50
北見自治区の333号線沿い、常呂川河畔、常呂自
44.1
37.3
40
30
治区の道路沿いに散在していることが確認され
ました。留辺蘂自治区のイトムカ付近にある大規
27.1
20
模なミズバショウ群落への侵入や、ワッカ原生花
10
園への侵入が心配されることから、国道238号沿
いを防衛ラインとして常呂総合支所や市環境課
0
北海道
オホーツク総合振興局
を中心にした人海戦術により、ワッカ原生花園へ
北見市
出典:北海道林業統計
の侵入を辛うじて防いでいます。
森林に占める人工林の割合(H 2 1 年 度)
図10-3
駆除方法は、種を拡散させないため花序を切
り取り、根の部分を抜き、焼却処分するという
2)
植
物
駆除マニュアルが確立されているため、現実的
な対応が可能です。
従来は、平成20年度に北網圏北見文化センタ
①北見市を含む常呂川流域1市2町に生育する
植物
ーが実施した「特定外来植物等の分布調査(オ
北網圏北見文化センターでは、北見市周辺に
オハンゴンソウ・オオアワダチソウ)」で発見
生育する植物について詳細な整理がされてい
された留辺蘂町丸山の大群落が、市内での最大
ます。これらをもとに、常呂川流域での生育が
規模のものと考えられていました。
確認されている植物についてまとめました。
しかし、平成23年度に北海道網走開発建設部
が実施した常呂川水系訓子府川流域の「オオハ
平成23年度現在、144科554属1,306種の植物
の生育分布が確認されています。
ンゴンソウ植生状況調査」によって、北見市北
光の訓子府川の河岸から上流部の置戸町秋田
その中で本来常呂川流域に自生していなか
った外来植物(帰化植物含む)が341種ありま
まで最大規模の群落が河川、道路、農地などに
す。
広がっていることが確認されました。
このことから、上流域に広がる群落を駆除しな
これは開発行為などによる自然環境の悪化
が、外来植物の侵入を許したものと考えられて
ければ、中流、下流域への分布拡大を抑えること
おり、外来植物は自然環境悪化の指標ともされ
は難しく、常呂川流域全体での駆除に取組む必要
ています。
があることがわかりました。
さらに外来生物法で要注意外来生物に指定
さらに、この事態は在来植物の生息環境を脅
かし、時には絶滅の方向へ追いやってしまう恐
されているハリエンジュ(ニセアカシア)は、
れさえあります。
緑ヶ丘森林公園、野付牛公園などの都市公園、
北網圏北見文化センターでは平成23年度も
常呂川流域ばかりか、ワッカ原生花園などの海
平成22年度に引き続き、北見市動植物相調査を
岸部でも広く見られ、多様な植生を単純化させ
- 57 -
⑩
自然環境の保全
原風景を変貌させています。そのほか要注意外
省が要注意外来植物に指定したイタチハギ(マ
来生物リストに掲載された植物のうちオオア
メ科)の駆除をおこないました。
ワダチソウ(キク科)についても重点的に分布
平成元年から始まった「ワッカ地区植生環境
の把握に努めた結果、ワッカの泉にまで侵入し
調査事業」では、23年間の間に453種類の植物
ていることが分かりました。ハリエンジュやオ
が確認されたにもかかわらず、現存している植
オアワダチソウを含めて北見市に生育する要
物は304種類ほどであることが分かりました。
注意外来植物の30種類についても監視(モニタ
100種類ほどの植物が消長を繰り返しているこ
リング)を強化する必要があります。
とになります。
また、留辺蘂自治区には北見市最高峰の武華
海岸草原の生態系が、海流や気候、観光客な
岳(1,758m)があり高山植物群落や北海道天
どの人為的な影響により、壊れ、傷つき、ダイ
然記念物に指定されているエゾムラサキツツ
ナミックに変化しやすいものであるかを物語
ジ群落があります。北見市には国内分布の東限
っています。
に位置するカタクリ群落があり、端野自治区に
今後とも適切な保護事業により、これらの豊
分布している分については市指定文化財のカ
かで貴重な植物生態系を未来へしっかりと引
タクリ及び周囲の北方落葉広葉樹林に含まれ
き継いでいく必要があります。
保護されています。
また、絶滅危惧種のカラフトアツモリソウ
仁頃町のカタクリ群落域ではその他、絶滅危
(ラン科)とされていた北見産のアツモリソウ
惧種に指定されているキタミフクジュソウ(キ
個体群が、平成17年度、種が別であるとして「キ
ンポウゲ科)、クリンソウ(サクラソウ科)な
タミアツモリソウ」と新名称を与えられました。
どの植物やニホンザリガニ(アメリカザリガニ
しかし、そのことによって、盗掘対象としての
科)、ヒメギフチョウ(アゲハチョウ科)、オ
危険性が特に高まりました。
オイチモンジ(タテハチョウ科)などの動物の
さらに、都市公園の生物多様性と原風景の保
生息も合わせて確認されました。
全を目的に、野付牛公園及びとん田公園のクロ
中でも、ヒメギフチョウはカタクリの花粉を
ユリやユキザサ(ユリ科)やニリンソウ(キン
運ぶ訪花昆虫として重要な役割をしています。
ポウゲ科)などの群落ごとに植生保護区域を設
群落は私有林内にあるため、今後も所有者の
けて 6~8 年ほど人の手を加えず放置したとこ
理解を得ながら、端野自治区の群落も含め生態
ろ、カシワ(ブナ科)やエゾヤマザクラ(バラ
系全体を解き明かす必要があります。
科)など、18 種類の広葉樹の稚樹が記録され、
さらに常呂自治区には300種類以上の植物が
潜在植生から想像される原風景が、とても豊か
咲き乱れ、その美しさに明治の文豪、大町桂月
で美しい広葉樹の森であったことが確認できま
は「龍宮街道」と名付けた日本最大級の海岸草
した。
原ワッカ原生花園があります。平成3年に車両
しかし、ヤチダモ(モクセイ科)やハンノキ
乗り入れを禁止しましたが、すでに傷ついた裸
(カバノキ科)、ハルニレ(ニレ科)などの稚
地にいち早く繁茂する外来植物などが侵入し、
樹の更新が進み閉鎖空間化したため、景観・防
在来種の生存を脅かしています。このため常呂
犯上の理由から稚樹の間伐をおこないました。
高校は「クリーンアップ・ワッカ」と銘打ち、
また、稚樹の生育過程で薮が形成され、シジ
外来植物やヨモギの抜き取り作業、ゴミ拾いと
ュウカラやヤマガラ(シジュウカラ科)などの
いったボランティア活動を、全校生徒で28年間
小鳥が安心して水浴びをしたり、アカゲラ(キ
にわたり展開しています。
ツツキ科)が安心して餌を求めていました。小さ
また、網走中部森林管理署などが林野庁退職
な小枝にはコガタ スズメバチ(スズメバチ科)
者を中心としたボランティア活動として、環境
が巣を作り、林床植物のアメリカスミレサイシ
- 58 -
⑩
自然環境の保全
ンやオオタチツボスミレ(スミレ科)などのス
て平成12年に発表された植物版レッドリスト
ミレ類にはチョウの仲間のミドリヒョウモン
(環境庁)には63種が、平成12年3月に発表さ
(タテハチョウ科)が、セリやミツバ(セリ科)
れた「北海道の希少野生生物
にはキアゲハ(アゲハチョウ科)の幼虫が姿を
ータブック2001(北海道レッドリスト)」(北
現し、多様性豊かな森の姿を垣間見ることがで
海道環境生活部)には55種が記載されています。
きました。これらことは原風景の回復を志した
北海道レッドデ
このような植物が開発行為等によって消滅
活動の一環として大きな収穫でした。
しないよう、その分布や生育状況について広く
そのほか、ユキザサ、マイヅルソウ、ヤブカ
データを蓄積し公表していくことが重要です。
ンゾウ(ユリ科)やスミレ科、アズマイチゲ、
しかし、キタミアツモリソウ(ラン科)や絶
ニリンソウ、キタミフクジュソウ、フクジュソ
滅危急種のベニバナヤマシャクヤク(キンポウ
ウ(キンポウゲ科)などの草本類が花を咲かせ
ゲ科)など数株しか発見されていない植物は、
るなど植物生態系は著しく回復しました。
盗掘のおそれがあるため公表すらできない現
学校の登下校で出会う道端の小さな草花や公
状にあります。
園で出会う様々な生き物は、幼児や児童生徒の
「自然のものは自然の中で」という、人と自然
自然や生命への興味関心を高め、情緒や感性、
が共生するための最低限のモラルを身につけ
ふるさと観を養う入り口として大切な役割を果
ることを、学校教育における環境教育はもとよ
たします。
り、日々の生活の場や自然体験、奉仕活動など
そのため、自然のままに生物多様性に育まれ
を通し、生涯にわたって培っていくことが大切
た緑地であることが大切ですが、自然の遷移に
です。
まかせるだけでは、要注意外来植物のハリエン
<参考文献>
ジュ(マメ科)やアメリカオニアザミ(キク科)
・『植物標本資料目録(離弁花類)』
などの葉や幼木に棘などがあり、危険を伴う外
(北網圏北見文化センター、平成6年)
来生物が侵入し、児童生徒にとっては野放図に
・『植物標本資料目録(単子葉/双子葉植物 合弁花類)』
放置するだけでは都市公園としての十分な管理
(北網圏北見文化センター、平成7年)
ができないこともわかりました。
・『植物標本資料目録(地衣/蘚苔/羊歯/裸子/被子)』
また、防火や雨水を受け止める水源涵養機能
(北網圏北見文化センター、平成9年)
を持つ大切なグリーンベルトのコアとして、市
・『平成13年度
民の安心、安全な生活環境に寄与していること
北見市動植物相調査結果報告書』
(北網圏北見文化センター、平成13年)
も忘れてはなりません。
植物は北見市のふるさとの景観を作る大切
な要素です。
緑あふれるまちづくりを進めるためには、緑
の量の拡大とともに帰化植物や自生植物など
に配慮した「緑の質」を考えることがより大切
であり、外来の植物をむやみに持ち込まないこ
と、野生の植物をむやみに採取しないことなど
を啓発していくことが重要です。
②北見市内の注目すべき植物
常呂川流域で生息が確認された1,300種には、
稀少な種も少なくありません。
絶滅の危機にある野生動植物のリストとし
常呂自治区に群生していた特定外来生物の
オオハンゴンソウ
- 59 -
⑩
自然環境の保全
表10-2
常呂川流域で確認された植物(H23年)
分類
確認全種
確認種内訳
科数 属数 種数 自生種 帰化種
地衣
3
3
3
蘚苔 16 19
20
羊歯 11 26
67
裸子
5 11
22
被子 107 481 1,218
総計 142 540 1,300
表10-3
絶滅危急種
希 少 種
地域個体群
留 意 種
3
20
67
7
872
980
0
0
0
15
305
320
出展:北海道レッドリスト、北海道環境生活部、平成12年
3)
(CR)
(EN)
(VU)
(NT)
(DD)
物
○『常呂川水系河川水辺の国勢調査』(表10-
6)
平成4年~平成6年にかけての調査結果から、
種数
6
26
28
2
1
常呂川水系一帯にはおよそ784種の動物たちが
生息していることが分かりました。
注)この数字には、市域外で確認された生物も含まれます。
表10-6
出典:植物版レッドリスト、環境庁、2000
表10-4
動
①生息種
レッドリストに記載された種数
分
類
絶滅危惧ⅠA類
絶滅危惧ⅠB類
絶 滅 危 惧 Ⅱ 類
準 絶 滅 危 惧
情 報 不 足
15
29
0
1
調査地点ごとの植物確認数及び帰化植物と帰化率
主な調査地点
科
種
帰化率
帰
化
植 %
物
数
北見市公園町(野付牛公園)
67
311
77
24.8
北見市南丘・中ノ島
68
281
51
18.1
北 見 市 若 松 ( 含 む 17番 沢 )
69
250
33
13.2
北見市川東(共栄ダム)
52
152
25
16.4
北見市緑ヶ丘(森林公園)
74
344
73
21.2
北見市富里
北見市常呂町
(ワッカ原生花園)
85
467
62
13.3
65
304
43
14.1
常呂川水系で確認された生物種数
項 目
哺 乳 類
鳥
類
は 虫 類
両 生 類
魚
類
エビ・カニ類
陸上昆虫
底生動物
種数
9
58
2
2
14
3
602
94
調査年
H5-6
H4-5
H5-6
H5-6
H5
H5
H6
H5
出典:常呂川水系河川水辺の国勢調査
○『中ノ島公園・北見ヶ丘・南丘森林公園の野鳥
マップ』
『オホーツク圏内の野鳥』
上記2つの文献からは、オホーツク圏内に生息
している鳥類329種を確認しました。このうち163
種は、北見市内での生息も確認されています。
出典:北網圏北見文化センター植物資料管理システム、
北網圏北見文化センター、平成23年度
表10-5
②北見市内の注目すべき動物
北海道レッドリストに記載された種数
北海道レッドデータブック
カテゴリー
絶 滅 種
野生絶滅種
絶滅危機種
絶滅危惧種
北網圏北見文化センターでは、平成23年度も
平成22年度に引き続き、北見市動植物相調査を
種数
実施し、市内各所の自然環境マップとリスト作
0
0
4
6
りを行っています。
このような、地域生態系における基礎的な生
物種のリスト等(インベントリー)は、自然、
- 60 -
⑩
自然環境の保全
環境教育等の教育活動はもとより、緊急的な社
の哺乳類は、赤外線センサーカメラやロードキ
会要請である道路、河川、公園等の開発行為に
ル(交通死亡事故)によって個体数の増減を把
おける環境影響評価や、北見市環境基本計画、
握することができます。
北見市緑づくり計画など、各施策からの協力要
このため高速道路網が整備される中、道路を
請に対応するために、欠くことのできない情報
管理している北海道開発局とも連携しながら、
を提供するものです。
適切な保護管理のための調査研究を進め、対策
平成 23 年度には、生物多様性基本法に基づい
案を構築しなければなりません。
て北海道生物多様保全計画が発表され、「北海
そのほか、文化センターに隣接する野付牛公
道を世界に冠たる多様性の島にしたい」との方
園では、エゾリス(リス科)やキタキツネ(イ
針を打ち出しました。そのため国や道とも連携
ヌ科)が見られ、エゾタヌキ(イヌ科)と見ら
しながら生物多様性保全に関する施策を進める
れる獣糞まで観察できました。北見ヶ丘ではエ
ためにも、今年、有害駆除数が過去最高を記録
ゾモモンガ(リス科)が生息し、駅から 3km
したヒグマ(クマ科)やエゾシカ(シカ科)等
ほどの市街地の南丘森林公園付近ではヒグマの
の大型哺乳類との「共生」を目指し、「人と自然
目撃情報までありました。
との共生」という大きなテーマに向かい前進す
生息状況が明かされていない、希少種が多い
る必要があります。
コウモリ類やオコジョなどのイタチ科、ネズミ
特にヒグマは、絶滅のおそれのある野生生物
類、ナキウサギなどの小型哺乳類に関しては、
の種の取引に関する国際条約(ワシントン条約)
バットディテクターやシャーマントラップ、赤
附属書Ⅰに掲載される国際的な希少動物にあた
外線センサーカメラなどを使い地道な調査研究
り、また、北海道の生態系の構成要素として重
をおこなう必要があります。
要な存在であることから、人との軋轢を避ける
昨年に引き続き、大きな問題として注目され
ための適切な施策を実行する必要があります。
たのが、外来生物です。ペットのアライグマや
このような大型哺乳類の保護管理に係る学術
農業用に輸入されるセイヨウオオマルハナバ
調査は、箱わなによる捕獲作業、科学的なデー
チなどが逃げ出し、もとからその土地で暮らす
タ―の採取、ラジオテレメトリー(電波発信装
生き物(在来種)をおびやかすことが問題とな
置)やGPS付携帯電話を取付けて放獣し、追
っています。
跡・監視をして、個体の行動範囲を把握し、適
平成14年、新・生物多様性国家戦略に基づい
切な保護管理に役立てます。そのためには学術
て平成16年6月「外来生物法」が公布され、生
的な専門技術を必要とし、専門の職員が配置さ
態系や農業、人に被害を及ぼすものを特定外来
れていない現状では、猟友会と連携したなかで
生物に指定し、飼育・栽培・保管・運搬・販売
対応をせざる得ない状況にあります。
・譲渡・輸入などが原則禁止されました。
特に生息数が多い留辺蘂自治区の大雪山国立
これらの項目に違反した場合、最高で個人の
公園隣接地では、住民とヒグマとの軋轢が高く、
場合3年以下の懲役、もしくは300万円以下の
適切な保護管理が必要と考えられます。
罰金、法人の場合1億円以下の罰金が科せられ
「ヒグマとの共生」という北海道が抱える難
ます。
しい課題も、幼少の頃より野生生物との接し方
また、北海道でも、「北海道の外来種リスト」
を環境教育の中で学習し身につけ、国・道・市
(北海道ブルーリスト2004)を作成し、860種(表
が連携しながら継続的、組織的な対応をはかる
-7)に関して種毎に導入された経緯や生態学的
必要があります。
特性、その影響などを取りまとめ、本道における
また、全道的に個体数が増えているエゾタヌ
キ(イヌ科)やキタキツネ(イヌ科)など中型
外来種の実態を把握し、関係機関、団体等が対策
を行う上での基礎資料とすることとしました。
- 61 -
⑩
自然環境の保全
また、これらの動きと前後して、関係機関や
北陽地区では、スイートコーン畑において野生
市民団体等による防除活動が活発化するととも
生物による食害等が確認されており、アライグ
に、外来種の情報の蓄積なども進み、こうした
マが出没した可能性が疑われています。これ以
背景を踏まえ、道では外来種問題への道民理解
上分布を広げてきた場合、自然生態系における
を深めるとともに、道はもとより関係機関・団
捕食活動によって、美園のアオサギコロニー
体等が行う外来種対策の推進に資するよう「北
(集団営巣地)や、絶滅の危機にある野生動植
海道ブルーリスト 2004」を改訂し、「北海道ブ
物リスト(環境省)の希少種に指定されている
ルーリスト 2010」を作成しました。
ニホンザリガニ、北海道レッドリスト(北海道
このリストでは、リストに掲載する外来種の
環境生活部)留意種のエゾサンショウウオへの
追加、削除を行うとともに、従来のカテゴリー
影響が心配されます。
区分(種毎に外来種の導入や定着の状況や影響
また、市の基幹産業である農業への被害は多
の有無などにより A から K に区分)に加え、
大なものになると予測され、地元経済への打撃
カテゴリーA に区分された外来種を「対策の優
も心配されます。
先度」に応じて、新たに A1 ~ A3 に細区分し
オホーツク総合振興局管内のアライグマの
ました。
生息地は、網走市を中心に拡大しており、北見
また、ホームページで公表する掲載種の解説
市と隣接する佐呂間町・訓子府町・美幌町でも
(個票)では、被害の実態やおそれなどをより
確認されていることから、北見市内でも確認さ
具体的に記載するとともに「特定外来生物」の
れる可能性が高いと思われます。
指定や「日本の侵略的外来種ワースト 100」(日
アライグマのような、侵略的な外来生物は、
本生態学会)の選定状況を記載するなど内容も
侵入初期には天敵も少ないことから爆発的な
充実させています。
指数曲線的に増加することから、生息が確認さ
これらのカテゴリーは、環境省の策定したラ
れた場合、初動での組織的な取組みが重要です。
ンク付けと異なる北海道独自の自然環境に合わ
詳細な実態の把握に努め、駆除計画の立案、実
せた内容となっています。
施が必要です。
セイヨウオオマルハナバチは、ヨーロッパに
表 10―7
生息するマルハナバチの仲間で、日本には温室
トマトの受粉に利用するため、原産地のオラン
ダやベルギーから大量に輸入されています。
在来のマルハナバチの仲間に比べ、競争力が
強く、飼育下では在来種の女王を殺して巣の乗
っ取りを行う例が確認され、エサや巣穴を奪い、
エゾオオマルハナバチなどの在来種を駆逐し
て定着しています。飼育下での観察では、1巣
(コロニー)あたり平均800頭から1000頭の働
きバチと雄バチが生息し、8月下旬に60頭から
北見地方には、アライグマ、ウチダザリガニ、
180頭の新女王バチが生まれます。タスマニア
アメリカミンク、オオハンゴンソウ、セイヨウ
では、帰化以来約30km/年の速さで拡大したと
オオマルハナバチの5種類の特定外来生物が
の報告があります。
生息しているので注意が必要です。
本年度は、市民協力の下、14,646頭(内女王
特に注目されたこととして、北見市大和地区
1,823頭)を駆除することができました。
において、アライグマの目撃情報があり、また、
- 62 -
北見市以外に、斜里町、小清水町、網走市、
⑩
自然環境の保全
湧別町、紋別市、興部町、雄武町、佐呂間町、
リカから摩周湖に導入しました。その後、阿寒湖
訓子府町、置戸町、美幌町、津別町、遠軽町、
や釧路川水系に分布を拡大し、繁殖能力も強く、
滝上町と近隣市町村並びに豊かな北海道の自
魚類、底生生物、水草などを捕食して生態系に著
然を代表する大雪山や知床などの国立公園に
しく影響を与えます。特に、ニホンザリガニ(環
も侵入しながら全道的に定着地域が広がって
境省レッドデータブック:絶滅危惧Ⅱ類)に対す
いることがわかります。
る影響は大きく、ウチダザリガニが侵入した場所
また、蜜だけ奪って花粉を運ばない「盗蜜」
では、その姿を消しています。
の癖が強く、エゾエンゴサクでの結実実験の結
本市内では、平成9年、富里ダムで開催された
果、結実率および種子数が著しく低下し、在来
「せせらぎスクール」に参加した児童・生徒の手
マルハナバチに頼ってきた在来の植物には大
により大量のウチダザリガニが発見されました。
きな脅威となる可能性があります。
その後、北海道大学大学院の予備調査でも、高密
また、はじめて留辺蘂自治区の温根湯までの
度で生息していることが確認されたため、ダムか
分布が確認され、特産品として栽培されている
らの持ち出し禁止、放流禁止の看板を設置してい
シロハナマメ(マメ科)に訪花したことも、確
ます。
認されました。シロハナマメの栽培にはミツバ
また、平成18年2月に特定外来生物に指定され
チによる授粉が役立っています。イスラエルで
たことから、環境省の作成した移動、飼育等の禁
は、侵入した本種が蜜を採る花を独占したこと
止をポスター等で周知しました。
により、ミツバチを含むハナバチ全てが著しく
その他の外来生物については国内外来種の
衰退したとの報告があります。授粉を助けてい
カブトムシ、道内各地で「ホタル祭り」と称し
るミツバチが衰退すれば農業被害に発展する
て繰り返されるイベント型の放流事業により
可能性もあり、注意深く監視する必要がありま
遺伝子汚染が心配されるヘイケボタル(他地域
す。
産)、さらにホタル飼育用のカワニナ、その他
侵略的な外来昆虫は、その爆発的な増殖率と
巻貝類、海外から人為的に移入されたミシシッ
移動能力があるため、指数曲線的に増加します。
ピーアカミミガメ(ヌマガメ科)通称ミドリガ
そのため、初動対策が決定的に重要です。本種
メと称され夜店などで販売されている子ガメ、
を効果的に駆除するためには、越冬した女王蜂
自然帰化したオオモンシロチョウやイチイカ
を、巣作り前の春に駆除することが最も有効で
タカイガラムシなどは、北見市の在来生物の生
す。
存に大きな影響を与える可能性をはらんでい
ます。
さらに、近隣市町村からの侵入も防がなくて
はなりません。早急に組織的、継続的な全市、
また、平成15年8月25日に北見市仁頃町で東
南アジア原産のアトラスオオカブトムシの雄
全道的な取り組みが必要です。
アメリカミンクは、北アメリカを原産とするイ
1個体が捕獲され、続けて市内の川沿町でも同
種の雄1個体が発見され、国内でも注目されま
タチ科の哺乳類です。
常呂川流域に広く生息しています。哺乳類、鳥
した。
類、甲殻類など様々な生物を捕食しており、生態
北網圏北見文化センターで毎年開催されて
系に係る被害と共に、留辺蘂町厚和の釣堀では養
いる、市内小・中学校夏休み作品・標本展の中
殖魚にも被害が出ているとのことです。詳細な実
にも外国産カブトムシやクワガタムシが目立
態の把握に努め、駆除計画の立案、実施が必要で
つようになり、飼育中に逃亡する、飼育後に放
す。
されるなどの恐れが十分予想されていました。
ウチダザリガニは、国内最大級の水生底生動物
で、昭和7年に水産庁がニジマスの餌としてアメ
- 63 -
今回、市内で発見された外国産カブトムシは、
いずれも飼育中に逃げ出した可能性が高く、新
⑩
自然環境の保全
たな生態系への影響をもたらす危険もあり、飼
面だけでなく、地域の生態系や生物生態系の保全
育モラルの普及を行う必要があります。
を図っていく上でも象徴的な意味があります。」
と述べられていました。
次に注目していかなくてはならない問題とし
このことから、オジロワシが生息する北見市は、
て、国指定天然記念物で絶滅危惧ⅠB類(環境省)
でもあるオジロワシが北見市の中心部から約3.5
「自然との共生」という人類共通の夢の具体的な
㎞の場所で営巣し、ワッカ原生花園の周辺部や常
例として日本が目指す国土の姿そのものである
呂川に沿って数箇所の営巣地があることです。
ことが分かります。
オジロワシの営巣を維持していくためには、早
また、ワッカ原生花園のサロマ湖に流れ込むラ
イトコロ川の河口付近は、ハクチョウやカモなど
春から夏にかけた営巣期間中に営巣木周辺への
多くの渡り鳥が羽を休め、生態系の頂点に立つオ
立ち入りを制限することに加え、採餌場等も含め
オワシやオジロワシのねぐらがあり、自然の豊か
た環境保全が必要です。
また、北見市では、北海道にのみ分布するとい
さを物語ります。
これが、新たな自然と人類の関係に向けていか
われる猛禽類で国指定天然記念物のシマフクロ
に重大なことであるかは、我が国が平成7年に
ウも確認されており、これらもあわせた生息環境
「生物多様性条約」に基づく生物多様性国家戦略
の保全が望まれます。
北見市の各基本構想・計画の中でよく使われて
を決定し、平成14年、平成19年の見直しを経て、
「生物多様性基本法」に基づいて、平成22年3月
いる「豊かな自然の・・・北見市」「自然豊かな
16日に閣議決定された初めての生物多様性国家
・・・北見市」などの枕詞も、オジロワシが営巣
戦略となる「生物多様性国家戦略2010」から読み
したことで具体的な事実として立証されたこと
取ることができます。
になります。また、常呂自治区、留辺蘂自治区で
オジロワシを含む猛禽類が関係する部分を抜
も営巣情報があり、将来、オジロワシやシマフク
粋すると、第1部第3章第2節「生物多様性から
ロウと共生するまちを実現し続けるならば、北見
見た国土のグランドデザイン」の中に、目指すべ
市のイメージに計り知れない財産を生み、未来を
き都市地域の望ましい地域イメージとして「明治
担う子供たちにはもちろん、未来の北見市民への
神宮のような森と呼べる大規模な緑地が造成さ
大切な贈りものとなり、市民が誇りに思えるまち
れることで、各都市の中にも巨木がそびえ、その
の姿を創造することにもつながります。
上を猛禽類が悠々と空を舞うとともに、都市住民
都市化に伴い、年々急激に変化する北見の自
や子どもたちが身近な生きものとふれあうこと
然環境の中においても、環境省や北海道が指定
のできる小さな空間が市街地内のあちこちに湧
している絶滅の危機にある野生動物リストの
水なども活用して生まれている。」と述べられて
中から、哺乳類4種、鳥類23種、両生類の留意
います。
種1種、甲殻類1種、昆虫類49種の生息を確認
また、平成14年の「新・生物多様性国家戦略」
の中では、第3部第2章第5節2項「猛禽類保護
することができました。
中でも生息地が限定され準絶滅危惧種(希少
の対応」に「食物連鎖の頂点に位置する猛禽類は、
種)に指定されているヒョウモンチョウ(タテ
地域の多様な生物相からなる生態系に支えられ
ハチョウ科)は、平成17年ちほく高原鉄道(ふ
て、はじめて生息することが可能です。このため、
るさと銀河線)が廃止となり、線路の撤去とと
猛禽類の減少・絶滅は、単に生態系の頂点が欠け
もに現在の環境を維持することは困難となり
ることを意味するだけでなく、その生息を支える
ました。そのため環境変化とともに生育環境が
生態系の健全性が、何らかの要因により損なわれ
変化すると予想されるため、平成22年度に引き
たことを意味しているとも言えます。このように、
続き生息推移を調査しました。
猛禽類の保護を図ることは、希少種の保護という
- 64 -
次に注目していかなくてはならない点とし
⑩
自然環境の保全
て、地球温暖化の兆しとの見方もできる昆虫類
に常呂川流域に生息する昆虫について詳細な整
の変化です。道内では道央、道南に分布の中心
理がされています。当館に保管されている昆虫標
があり、オホーツク海側では、遠軽町で生息が
本をデータベース化した「北網圏北見文化センタ
確認されていたオナガアゲハ(アゲハチョウ
ー昆虫資料管理システム」をもとに、市内及び常
科)が市内の山中で見つかりました。同じく道
呂川流域1市2町で生息が確認されている昆虫
内では道央、道南に分布の中心があり、オホー
についてまとめました。
ツク海側では、2007年まで記録がなかったクス
平成23年度現在、常呂川流域1市2町では、14
サン(ヤママユガ科)も市内で多数見つかりま
目 214 科 2,374 種 の 生 息 分 布 が 確 認 さ れ ま し た
した。
(表10-8)。
さらに、ウスバキトンボ(トンボ科)やメス
オホーツク昆虫研究会によれば、常呂川に生息
グロヒョウモン(タテハチョウ科)など、比較
する昆虫は約8,000種以上と見込まれています。
今後も継続して当地域の昆虫相の解明に努め
的南方に分布の中心を持つ昆虫類が増えてい
る必要があると思われます。
ることなどがあげられます。
<参考文献>
・『北見の蝶』
(北網圏北見文化センター、平成6年)
・『北網圏文化センター昆虫資料管理システム』
(北網圏北見文化センター、平成22年)
・『北見市動植物相調査結果報告書~身近な生き物調べ』
(北網圏北見文化センター、平成15年)
・『日本の絶滅のおそれのある野生生物』
ワッカ原生花園のセンダイハギ(マメ科)から
(環境省、平成3年)
盗蜜する特定外来生物のセイヨウオオマル
・『北見市史上巻』(北見市、昭和56年)
ハナバチ
・
『北海道の希少野生生物
北海道レッドデータブッ
ク2001』(北海道、平成13年)
・
『しれとこライブラリー5
知床の昆虫』(斜里町
知床博物館、平成15年)
・
市内中の島公園で特定外来生物のアメリカ
ミンクを捕食するオジロワシの亜成鳥
③北見市を含む常呂川流域1市2町に生息する
昆虫
北網圏北見文化センターでは、北見盆地を中心
- 65 -
『第三次生物多様性国家戦略』(環境省、平成19年)
⑩
自然環境の保全
表10-8
平成22年度までに常呂川流域で確認
された昆虫
確認全種
分類
科数
種数
カゲロウ目
5科
13種
トンボ目
9科
37種
カワゲラ目
5科
10種
ゴキブリ目
1科
1種
バッタ目
7科
22種
ハサミムシ目
1科
1種
カメムシ目
26科
97種
アミメカゲロウ目
6科
25種
コウチュウ目
65科
611種
ハチ目
10科
54種
ハエ目
16科
58種
トビケラ目
15科
60種
チョウ目
48科 1,385種
総計
214科 2,374種
出典:北網圏北見文化センター昆虫資料管理システム、
北網圏北見文化センター、平成23年度
表10-9
No
主
1
アカエゾマツ
若松(道有林)
2
ヤチハンノキ
とん田公園内
3
ポプラ
野付牛公園内
4
5
サワラ
河西牡丹園内
ハルニレ・ヤチダモ他
藤学園内
6
カラマツ・アカマツ・シラ
緋牛内神社内
要
木
位
置
カンバ
7
8
9
10
11
(2) 自然環境の保全
12
1) 環境緑地保護地区および鳥獣保護区等の指
保存樹林
ヨーロッパトウヒ・ 屯田の杜公園内
カラマツ他
エゾヤマザクラ・
無量寿寺内
ヤチダモ・イチイ他
カシワ・カラマツ・ 三区神社内
トドマツ
カシワ
川向神社内
ハルニレ・シラカン 川向花木園内
バ
エゾヤマザクラ・ 協和神社、桜の森
チシマザクラ
公園
定地域
北見市内では、北海道自然環境等保全条例に基
づいて、市街地およびその周辺の樹林地や水辺地、
表10-10
No
樹
良好な自然景観地、学術的に重要な植物の生息地
1
ヤチダモ
相内公園内
などを保護することを目的に緑ヶ丘66.55haが環
2
カシワ
東陵中学校前
境緑地保護地区の指定を受けています。
また、野生鳥獣の保護繁殖を図るために、若
3
ケヤキ
北見ヶ丘霊園内
4
スズカケノキ
昭和(個人所有)
5
キリ
昭和(個人所有)
6
センダンバノボダイジュ 花月町(牡丹園内)
7
アカマツ
常盤町(個人所有)
8
アカマツ
常盤町(個人所有)
9
カラマツ
仁頃神社内
10
ミズナラ
豊地神社内
市では、市民から親しまれている「名木」や「記
11
ハルニレ
上仁頃 常善寺内
念樹」を、開発行為等により姿を消すことなく、
12
カシワ
大町 高台寺内
後世へ末永く保存することを目的に指定を行な
13
ハルニレ
三楽町仁頃通
っています。合併後、全自治区を対象に見直しを
14
クロマツ
日赤駐車場内
行ない、平成21年4月1日に、次のとおり新たな指
15
ヤチダモ
南仲町公園内
定を行ないました。
16
シダレヤナギ
南仲町公園内
松、美園、栄浦など7箇所に道設の鳥獣保護区
があります。市内には、これらの他にも優れた
自然環境を有する地域として、保健保安林に指
定されている南丘、富里湖森林公園などがあり
ます。
2)
保存樹木・保存樹林の指定
- 66 -
木
名
保存樹木
位
置
⑩
No
自然環境の保全
樹
木
名
位
置
(3) 自然とのふれあい
17
カシワ
ピアソン公園内
18
イタヤカエデ
西相内32号
19
カシワ
旧緋牛内小学校跡
など自然性の高い公園・緑地が残されております。
20
カラマツ
一区神社
公園などで緑のネットワーク化を図りながら、身
21
ハンノキ
端野町川向(個人所有)
22
スモモ
端野町川向(個人所有)
23
シラカンバ
協和文化センター内
24
リギダマツ
協和文化センター内
25
ヤマナラシ
協和文化センター内
26
メタセコイヤ
協和文化センター内
27
イタヤカエデ
豊北農村生活センター内
28
アカマツ
北登高齢者センター内
29
カラコギカエデ
北登高齢者センター内
30
アカマツ
北登神社内
31
キタコブシ
端野町川向(個人所有)
32
シダレヤナギ
常呂小学校内
33
ハルニレ
常呂小学校内
34
キタコブシ
常呂町岐阜(個人所有)
っており、国土保全の面からも適切な土地利用が
35
ハルニレ
常呂町老人憩いの家裏
図られるよう、後継者の育成や農地管理システム
36
ハルニレ
瑞穂小中学校内
の確立が求められています。
37
ヤチダモ
瑞穂小中学校内
また、農村地域は市民にとって身近な自然環境
38
ハルニレ
瑞穂小中学校内
の一つであり、市民農園の整備や、市営の公共牧
39
ハンノキ
瑞穂小中学校内
場の開放など、市民にとって安らぎの場となるよ
40
イチイ
留辺蘂町花園(個人所有)
う農村環境の整備も図られています。
41
イタヤカエデ
留辺蘂町泉(個人所有)
42
イチイ
留辺蘂町中央公民館前
43
クロマツ
留辺蘂総合支所前
44
カツラ
景勝寺内
和、そして都市景観の向上等を図るために、常呂
45
アズキナシ(カタスギ)
留辺蘂神社内
川水系緑地、若葉緑地、双葉緑道、美山北緑地、
46
シダレヤナギ
留辺蘂神社内
田端中央緑地、小町ふれあい緑地、フラワーパラ
47
クロマツ
留辺蘂町大富(個人所有)
ダイスの7ヶ所が設けられています。
48
ハルニレ
温根湯東児童公園
49
ミズナラ
温根湯神社内
50
カラマツ
留辺蘂町大和(個人所有)
51
トドマツ
留辺蘂町開拓資料館前
北見市の市街地には、中ノ島公園や野付牛公園
近な自然を保全していくことが必要です。
1) 農
地
近年、農産物に対し安全性を求める消費者ニー
ズが高まる中、残留農薬問題や地下水等への硝酸
性窒素の浸出問題などが顕在化してきており、農
薬散布や肥料施用の詳細な履歴を残すトレーサ
ビリティーの実施による消費者との信頼関係の
再構築のみならず、有機栽培や農薬の使用回数と
化学肥料の使用量を慣行の5割以下に削減する
特別栽培など、より環境に配慮したクリーン農業
の推進を図らなければなりません。
一方では農家戸数の減少や農業者の高齢化に
伴い、山間部を中心に農地の遊休地化が問題とな
2)
緑
地
緑地は、自然環境の保全、改善、公害などの緩
3)
森林公園
北見市の郊外には、自然環境を満喫できる樹林
地として富里湖森林公園、緑ヶ丘森林公園、南丘
森林公園などがあります。こうした森林公園は動
植物はもとより、市民にとっても自然散策の場と
して貴重な財産であることから、適正に保全整備
していかなければなりません。
- 67 -
⑩
自然環境の保全
親しまれています。
①
また昭和48年には北海道自然環境保全条例に
富里湖森林公園(189.44ha)
富里湖森林公園は、仁頃山の麓に位置し、富里
基づく「環境緑地保護地区」に指定されるととも
湖と市有林、国有林の天然林に囲まれた、自然環
に、林間歩道3,948mが設けられ、ハイキングや
境に恵まれた公園です。公園内にはバンガロー等
バードウオッチングなどの動植物の観察が行え
を整備したキャンプ場があり、森林と湖の大自然
る豊かな自然環境に恵まれた公園です。
の中でキャンプを楽しむことができます。
④
またキャンプ場に対峙する市有林は針広混交
仁頃森林公園(20.82ha)
林からなる天然林でシナ・イタヤ・ナラの広葉樹
仁頃森林公園は、北見市中心部より道道北見常
とエゾマツ・トドマツ等の針葉樹が生い茂る樹林
呂線を約12km北上した仁頃地区の丘陵地にあり、
の中延長3,100mにわたり林間歩道が設けられて
仁頃はっか公園と隣接した山林で、カラマツ・シ
います。
ラカバ・カシワ等の人工林及び天然林が育成され
ている。
⑤
常呂森林公園(69.71ha)
常呂森林公園は、北見市常呂町のオホーツク海
とサロマ湖の姿を眼下に見下ろす丘陵に広がり
ます。
ここには常呂町の開基100年を記念して建てた
百年記念塔、本格的な54ホール、6コースを備え
たパークゴルフ場、屋内のバーベキューハウスな
どがあり、家族で行楽を楽しめる場所となってい
富里湖森林公園
ます。
②
南丘森林公園(40.88ha)
南丘森林公園は、市内中心部から南方に3.5km
⑥
八方台森林公園(13ha)
の距離に位置し、常呂川の右岸に面する丘陵地に
八方台森林公園は、留辺蘂市街地南部の旭運動
あり、北見盆地を一望できる景勝地です。この公
公園と八方台スキー場に隣接した丘陵地にあり、
園は、天然広葉樹林と人工林からなり、林間歩道
2,765mの遊歩道やパークゴルフ場、研修施設、キ
2,439mが整備され、森林の保全と市民の保健休
ャンプ場などレクリエーション機能を持った公
養の場として展望ゾーン、郷土の森ゾーン、休憩
園で、市民の憩いの場として親しまれています。
ゾーン、学習ゾーン、野鳥観察ゾーンの5つのゾ
ーンに分かれ、樹木の持つ特色を学習できる場と
⑦
なっています。
ワッカ原生花園
幅200~700m、約20kmに及ぶ砂州(さす)に広
がるワッカ原生花園は、網走国定公園の区域に指
③
定されており、平成3年には植生環境の保全を目
緑ヶ丘森林公園(62.80ha)
緑ヶ丘森林公園は、市内中心部から北方へ約4
的に一般車両の乗り入れを規制しました。平成13
kmの距離に位置し、緑ヶ丘公園、緑ヶ丘霊園と
年10月には、北海道遺産に選定された日本最大級
一体となった丘陵地にあり、標高268mの通称「三
の海岸草原です。森があり、草原があり、砂丘や
角点」と呼ばれる頂上からは市街地を一望できる
湿地までが混在する多様な生態系の中で帰化植
ばかりでなく、晴れた日には、遠く大雪山連峰、
物も含め300種以上の草花が咲き香り、また、野
阿寒方面、知床連峰等が眺望でき、多くの市民に
鳥たちの繁殖地となっています。
- 68 -
⑩
自然環境の保全
こうした貴重な自然を保全していくことを目
的に北見市では、平成21年6月12日、「ワッカ自
表10-11
都市公園等の現況
然環境保全宣言」を行いました。
(平成23年3月31日)
種
類
種
別
都市公園
(開設公園)
面積
(ha)
箇所
基幹公園
住区基幹公園
都市基幹公園
ワッカ原生花園
2
特殊
公園
緑化の推進
街区公園
131
32.29
近隣公園
13
30.89
地区公園
4
21.30
総合公園
2
22.20
運動公園
2
43.00
小
計
152
149.68
墓
園
2
22.00
他
-
-
7
101.69
161
273.37
そ
の
都市緑地
合
(1) 緑の現況
※
計
データは市町合併後の北見市全体を表します。
北見市は、周囲を緑豊かな山々に囲まれ、常呂
川をはじめ、中小の河川が平地を縫って流れ、緑
表10-12
市民1人当りの都市公園面積(全市)
(単位
と水に恵まれた豊かな自然環境を有しています。
H20年度
都市の緑化は、住み良い生活環境を形成するた
めに欠かせない課題であり、住環境を向上させる
各種施策の中で公園や街路樹の整備など、緑豊か
な街づくりを積極的に進めてきました。
1)
21.53
※ 1
H22年度
21.77
21.89
目標値 ※1
北見
留辺蘂
34
54
目標値はH22年度策定「緑の基本計画」
による。
※ 2
公園・緑地
北見市の公園は、住み良い生活環境を求める市
民の要望が年々高まる中で地域の子どもたちを
はじめ、高齢者や障がい者が利用しやすい地域に
根ざした親しみのもてる公園や緑地を整備して
2)
目標年度は平成31年(2019年)度
道路緑化
街なかの緑の中で、最も身近な緑である街路樹
は、市街地の道路景観の向上をはじめ、環境機能
の向上など多くの役割を担っています。
います。
平成22年度末現在、市内には161箇所の都市公
園、緑地などが整備され、総面積は273.37haにの
ぼり、公園数、面積ともに年々増加しています。
主な公園としては、常呂川水系緑地(56.60ha)、
東陵公園(24.3ha)旭公園(18.7ha)野付牛公園
(12.1ha)ほか、森林公園などもレクリエーショ
ンやスポーツ、散策の場として、多くの市民に親
しまれています。
H21年度
m 2/人)
市内の街路樹の総本数は、平成21年度末現在で
13,447本です。樹種別(高木)には、ハルニレが
最も多く、以下エゾヤマザクラ、プラタナス、ニ
セアカシアの順となっています。
また、低木は高木の緑に対し、美しい花と紅葉
を提供してくれることから、できる限り高低木を
混合して植栽しています。低木の種類としては、
ツツジ類の82,500株、以下ニシキギ、モンタナマ
ツの順となっています。
- 69 -
⑩
自然環境の保全
1)
(単位:本)
緑づくりの施策
緑づくりの推進は、単に行政だけで成しうるも
のではなく、市民総ぐるみでの緑化推進運動を展
開しなければなりません。
高木総本数 13,395本
3,000
2,500
2,303
2,000
1,575
1,528
1,372
1,500
1,125
739
606
489
500
①
緑化協定制度
緑化協定は、一定の区域の緑化を進めようとす
る町内会、事業者、その他団体と北見市が協定を
結ぶことで助成を受けることができる制度です。
984
977
1,000
303
553 520
262
59
0
イチイ
そ の他
ハル ニレ
欧州赤松
シダ レヤ ナギ
イ ヌ エ ンジ ュ
イ チ ョウ
ネ グ ン ド カ エデ
カ ツラ
イ タ ヤ カ エデ
エゾ ヤ マザ ク ラ
ニセ ア カ シ ア
シラ カ ンバ
プラ タ ナ ス
ナ ナ カ マド
※
②
データは市町合併後の北見市全体を表します。
図10-4
街路樹の内訳(市道)
(平成23年3月31日)
緑を育てる協定制度
この協定は、身近な緑をつくり・育てることを
目的に、町内会などから樹木の配布申請があった
場合、植栽後の維持管理に関し、町内会と北見市
が協定を結び緑豊かな生活環境が末永く確保さ
れるよう協力体制を整える制度です。
(2) 緑づくりと交流
③
都市の緑化は住み良い快適な生活環境を形
成する上で欠くことはできません。
北見市では従来から都市整備の一環として、都
市公園等の計画的整備により緑とオープンスペ
ースの確保を図ってきましたが、住民の日常生活
における自然とのふれあいに対するニーズの高
まりなどを踏まえ、都市における緑地の適正な保
全と緑化を総合的かつ計画的に推進していくこ
とを目指し、「北見市緑づくり計画」(緑の基本
計画)を策定しております。
計画の内容については、都市におけるあらゆる
緑を対象として「緑をまもる・緑をそだてる・緑
をいかす」を柱とし、森林・農地、河川・道路、
緑化推進母体「緑と花の市民の会」との
協力体制
「緑と花の市民の会」主催による市民植樹祭、
花壇コンクール、緑の募金運動などをはじめ、100
年後に“森の中に街がある北見”をめざす「私達
のみどり計画」の推進に向けた協力体制を図るも
のです。
④
花いっぱい推進
道路の植樹桝や地域会館などに地域の方々の
ご協力で市の配布する花を植えていただき、春か
ら秋まで花が咲き続ける手入れの行き届いた花
壇づくりを目指します。緑と花があふれる街づく
りのためには市民の方々のこうした取り組みを
大切に育てていくことが重要です。
都市公園・緑地、公共施設・民有地、都市拠点・
地域拠点、意識向上・支援・参加・協働体制づく
り等をその内容として定め、一定の目標の下に都
市公園の整備など都市計画に基づく施策のみな
らず、その他の公共施設の緑化や緑化ボランティ
ア活動にいたるまで、いろいろな施策や取り組み
を体系的に位置付けることにより市民・企業・行
政がパートナーシップを形成し、協働で緑づくり
に関わる施策を総合的に展開し、環境共生型市街
地の形成を目指します。
2)
緑の拠点
緑化推進の「拠点」と市民のみなさんとの交流
のための「接点」となり、各家庭の庭づくり、花
づくりのお手伝いをすることを目的とし、平成5
年6月に「北見市緑のセンター」を開設しました。
緑のセンターの主な業務は、毎日の園芸相談を
はじめ、毎月その時期に合ったテーマで開催され
る園芸教室、各種展示会などを開催し、多くの市
民が参加しています。
施設概要は、以下のとおりです。
- 70 -
⑩
自然環境の保全
① 温室・管理棟
緑化資料展示室、緑の相談コーナー、講堂(40
人収容)、図書閲覧、温室(400㎡の中に温帯・
亜熱帯植物を中心に約150種、1,000株植栽)
②
③
② 樹木見本園
12のゾーンに分け、138種、1,215本を見本として
植栽。
④
③ 洋風庭園
庭づくりの見本として、花壇7箇所に高木、中低
木、地被植物、合わせて25種、約13,400株を植栽。
⑤
④ 緑化ブロック花壇
土止め兼用として幅1m×0.5mのブロックを
400個設置し、7種820株を植栽。
⑤ 生け垣植栽
生け垣づくりの見本として、3種400株を植栽。
3
緑を守り、育て、生かします。
安全で安心できる緑のまちづくりとしては、
防災に配慮した公園緑地の確保や災害に強
い緑をつくります。
緑を活用したレクリエーション空間づくり
としては、地域に親しまれる公園緑地や親水
空間やレクリエーション空間の確保、活用を
図ります。
少子高齢化社会に対応した緑のまちづくり
としては、誰もが利用しやすい公園緑地づく
りや健康増進に対応した緑の活用を図りま
す。
市民参加による緑のまちづくりとしては、住
民参加による緑と花づくりを始め、公園管理
の推進など市民と連携し、緑のまちづくりを
進めます。
都市景観
(1) 都市景観の保全と創造の必要性
(3) 緑あるまちづくりの推進
北見市は、オホーツク圏における中核都市とし
て発展を続け、市街地の拡大が図られてきました。
しかしながら都市化が進む中で徐々にではあり
ますが緑が失われてきました。
緑を構成する樹木等の植物は、CO2 の吸収、
大気の浄化、気象や騒音、振動の緩和などの役割
をはじめ、大地震や火災時における避難地や避難
路を形成するなど防災の観点からも重要な役割
を担っています。
この失われた緑を速やかに回復、保全し、自然
と人間の共生する緑豊かな街づくりを進めてい
ます。
都市の緑を守り、育て、生かすための方針とし
て、
「緑の保全と創出による自然との共生」・「安
全で安心できる緑のまちづくり」・「緑を活用し
たレクリエーション空間づくり」・「少子高齢化
社会に対応した緑のまちづくり」・「市民参加に
よる緑のまちづくり」の5項目を位置づけ、これ
らの施策を総合的かつ計画的に進めています。
主な具体的方針については次の通りです。
① 緑の保全と創出による自然との共生として
は、市街地を取り囲む森林や丘陵地、河川の
これまでの都市づくりには、効率性、経済性が
重視されてきましたが、昨今、市民の意識、価値
観の変化に伴い精神的豊かさ、ゆとりを求める時
代となり、自分たちの住むまちの環境にも、静け
さ、うるおい、豊かな緑、きれいな水辺、歴史的
建造物など、いわゆる精神的なものの充足を求め
るようになってきました。
このため、これまでの機能性や合理性を追求し
て進められてきたまちづくりに代わり、ゆとり、
やすらぎなど精神的な豊かさを与えるものとし
て都市景観の形成が求められています。
(2) 北見市の良好な都市景観づくりに向けて
快適で良好な景観づくりのためには、総合的、
長期的視野に立った基本計画を策定し、それに基
づいた景観形成を図る必要があります。
景観法の成立により、景観が国民共通の資産で
あることがうたわれ、土地利用においても、地域
の自然や歴史、人々の生活、経済活動等との調和
のもとに、地域にふさわしい景観づくりが進めら
れるよう、法整備されました。
北海道においても、平成20年6月に景観法に基
- 71 -
⑩
自然環境の保全
づく北海道景観計画及び景観法施行細則が制定
されました。
当市では、平成10年に「景観ガイドプラン」を
制定しておりますが、北見市の景観に対する理解
をより深めながら、住民、企業、行政が一体とな
った良好な景観形成を図るため、今後は景観法に
基づく「景観行政団体」の指定及び「北見市景観
計画」の策定について検討を進めます。
北見市緑のセンター
北見市の景観
ワッカ原生花園の景観(常呂自治区)
つつじ山の景観(留辺蘂自治区)
山から望む農村の景観(端野自治区)
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