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不動産のコスト 中長期的な

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不動産のコスト 中長期的な
て み る と、こ の 問 題 は 次 の 事 業 計 画 と
も密接にからんでいることがほとんど
だという。
関 東 の あ る 企 業 の 場 合、創 業 者 は 会
長 に 退 き、す で に 息 子 た ち が 事 業 を 継
い で い る も の の、相 続 税 支 払 い が 現 実
の も の と な っ て き た の で、そ の 資 金 確
保のために手持ち不動産を意識するよ
うになった。
そ の 会 社 は 各 地 に 不 動 産 を 所 有 し、
一部はコンビニ経営などに利用してい
た が、必 ず し も 期 待 す る 収 益 は 上 げ て
お ら ず、遊 休 不 動 産 も 少 な く な か っ た
と い う。本 業 の ほ う も こ れ ま で の 事 業
形 態 で は 市 場 は 縮 減 す る 一 方 で、新 規
事業を準備しなければならない時期に
ンアップでも、近年
はドアシステムや引
こもれび神田紺屋町
ベストは、
ドアに取り付ける
レバーハンドルから回転式吊
「当社の製品ライ
エアの総合メーカー。今年で
いる。事業の方向性や、ものづくりによって社会貢献
創業80年を迎える。いま本社
するという企業理念からみても、高齢者向け賃貸集
と道路をはさんだ向かいの敷
地208平方㍍には、13階建て
合住宅建設は優れたプランでした」
バリアフリー化など住宅の質を確保するとともに、
事業は CRE コンサルタント
(プロジェクトマネ
緊急通報や安否確認などの生活支援サービスを提
ジャー)
との共同プロジェクトとして進んだ。東京都
供し、60 歳以上の高齢者が適切な家賃で入居する
の高齢者向け優良賃貸住宅制度や、定住人口増加
ことができる高齢者の生活特性に配慮した優良な
を進める千代田区の容積割増制度を活用、さらに
賃貸住宅だ。
建物の環境性能を高めることで、政府の住宅エコポ
ここはもともと同社の旧本社ビルがあった場所。
ビ
イント制度も利用できることになった。
これら補助金
ルの老朽化に伴い、隣接地と一体的にオフィスビル
は、約5億9000万円の整備費の2割近くに達する。高
を建設し、
賃貸事業を行うことも考えたが頓挫した。
級分譲住宅並みのハイグレードなベストの金物を
と で、新 規 事 業 の 方 向 性 も 見 え 始 め、
企業を分割するなど次の経営戦略も見
えてきました﹂
相 続 税 相 談 な ど を き っ か け に、自 覚
し て い な か っ た 不 動 産 戦 略 が、中 小 企
業 に も 見 え る よ う に な る。た だ で き る
なら早いうちから取り組むべきという
のが、平川氏のアドバイスだ。
﹁中 小 企 業 は 不 動 産 売 却 一 つ と っ て
も、大 企 業 の よ う な 経 済 合 理 性 だ け で
はことが進まない複雑な事情がありま
す。オ ー ナ ー 企 業 の 場 合 は 一 族 の 誰 が
事業を継承するかといったライフプラ
ンニングも同時に検討されなければな
り ま せ ん。だ か ら こ そ、早 い 段 階 か ら
不動産と事業経営を一体化したプラン
づくりが急がれるのです﹂
そ こ で 重 要 な の は、税 理 士、弁 護 士、
太田 哲郎氏
差し掛かっていた。
紺屋町」
が建設中だ。
ベスト 社長
来年4月から入居が始まる
平川氏はまず点在する所有不動産の
たいと、かねがね考
不 動 産 鑑 定 士、不 動 産 ア ド バ イ ザ ー な
品開発にも新しいヒントをもたらしてく
一 覧 表 を 整 理 し、時 価 と 簿 価 の 差 額 を
何かの恩 返しをし
ど専門職の活用だ。
れるはず」
と、太田社長は語る。
一つひとつ示すことにした。
世 話になった街に
点を両立する、
とっておきのCREソリューションだ。
﹁ 経 営 者 は こ れ ら の プ ロ を﹃ 使 い 倒 す ﹄
齢者向けマンションは、当社の今後の製
﹁こ れ だ け で も 最 新 の 資 産 台 帳 が で き
宅の建設を選んだ。本業の方向性と地域貢献の視
ぐ ら い の 気 持 ち で 活 用 し て ほ し い。専
練ることができました。本社前にある高
た よ う な も の で、経 理 担 当 者 に は 感 謝
化も進む。80年間お
門 家 の 側 も、こ れ ま で の テ リ ト リ ー に
門家や行政とも連携して、独自の戦略を
緊急通報ボタン
さ れ ま し た。相 続 税 を 払 う だ け な ら 土
方で、人口の高 齢
ストは、自社CRE戦略として高齢者向け賃貸集合住
こ だ わ ら ず 、互 い の 専 門 知 識 を オ ー バ ー
ようなCRE 戦略がありうるか。社外の専
地 を 売 れ ば い い の で す が、そ れ を ど の
人口は年々減る一
ラップして総合的な視点で相談に答え
住んでみたくなる。
不動産のコス
ト化
中長期的な
住宅建設優遇策をフルに活用
のマンション「こもれび神田
「地域に根差す中小企業にとってどの
はどうかというCRE戦略提案を受けたのです」
と話す
ように転用するかで次の事業戦略も決
喧噪(けんそう)
から逃れ、中小のビルが林立する静
かなオフィス街だ。この地に本社を構えて80 年のベ
られるネットワークづくりが欠かせな
フィスビルにするよりも、高齢者向け賃貸住宅にして
ま っ て き ま す 。保 有 す る 土 地 、売 る 土 地 、
のは太田哲郎社長
だ。この地区の定住
い﹂と平川氏は語る。
ションは、区内在住の高齢者ならずとも
活用する土地をそれぞれ仕分けするこ
使用すると共に、震災への備えにも配慮したマン
していたところ、
あるデベロッパーから、
中途半端にオ
有 効 土 地 活 用 事 例 ベスト
「遊休地となった本社跡地の有効活用策を検討
中小企業のCRE戦略─
本業と地域貢献を両立
浮世絵「名所江戸百景」にも描かれた神田紺屋
町。当時は染物屋の街だったが、今はJR神田駅前の
∼旧本社跡地を高齢者向け賃貸住宅として再生
き戸クローザーなどバリアフリー製品に力を入れて
(つ)
り戸まで、建築ハードウ
えていたという。
バリアフリー製品にも力を入れる
企画・制作=日本経済新聞社クロスメディア営業局
広 告
「企業価値向上のための実践的CRE戦略」
オーナー企業の多い中小企業では大企業とは違った
相続争いの回避
︵遺留分の制限︶
納税額の引き下げ
のための株価対策
株式の移転と
納税資金の確保
内部統制・経営計画の策定・経営資源の活用
ぐし、具体的なアドバイスを重ねてきた税理士の平川茂
確実な相続移転
︵遺言書の作成︶
税務対策
事業承継者︵後継者︶の決定
法務対策
に 退 職 金 を 払 う と か、資 産 を 売 却 す る
な ど し て お 金 を つ く る 必 要 が あ り ま す。
いずれにしてもそうした対応を迫られ
ないと積極的に不動産を活用しようと
し な い の が、中 小 企 業 に 共 通 に 見 ら れ
る特徴です﹂
自社ビルや自社工場を
賃貸コストとして計算してみる
こ う し た﹁場 当 た り 主 義﹂を 克 服 し、
﹁不 動 産 を 計 画 的・戦 略 的 に 捉 え る 視 点
が 必 要 ﹂ と い う の が 平 川 氏 の 考 え だ 。C
RE戦 略 立 案 の た め に は、当 然 の こ と
ながら自社不動産の点検が前提になる。
﹁保 有 不 動 産 を 鑑 定 し、時 価 い く ら か
を 計 算 す る。さ ら に 総 資 産 利 益 率︵R
O A︶を 割 り 出 す。つ ま り 土 地 を コ ス
ト と し て 考 え る 視 点 が 重 要 で す。自 社
ビルや自社工場だとコスト意識が生ま
れ に く い の で す が、仮 に そ れ ら に 家 賃
を払っているとして計算するとどうな
る か。も し そ れ が 赤 字 だ と す れ ば、賃
貸事業や売却のほうが利益率が高い
ケ ー ス も あ る。こ れ ら は 基 本 的 な 点 で
す が、意 外 と 見 過 ご し て い る 経 営 者 が
多いのです﹂
不動産のうちどれを今後も保有し続
け る の か 、売 却 す る の か 、賃 貸 し て 別 の
け をする必要があるというわけだ。
﹁近 年 は 不 動 産 を 自 社 所 有 し て い な け
ればできない事業は少なくなってきま
し た。土 地 が 必 要 な ら そ れ を 借 り る と
い う 方 法 も あ り ま す 。﹃ 持 た ざ る 経 営 ﹄
は 中 小 企 業 で も 重 要 な 戦 略。そ の ほ う
が む し ろ、事 業 転 換 し や す い と い う メ
リットがあります﹂
所有不動産の仕分けで
見えてくる、次の事業戦略
平 川 氏 に 持 ち 込 ま れ る 税 務 相 談 は、
やはり事業承継や相続税納税といった
タ イ ミ ン グ が 多 い が、よ く よ く 検 討 し
↓
平川 茂(ひらかわ・しげる) 東京都出身。税理士法人平川会計パートナーズ社員
税理士。1998 年に株式会社サテライト・コンサルティング・パートナーズ設立。
税理士・コンサルタントとして活動。著作:
『キャッシュフロー経営のための資産の
証券化』ほか。
事 業 に 転 換 す る の か 、そ の 腑︵ ふ ︶分
“
イ ミ ン グ と も い え る の が、相 続 税 の 納
そ し て も う 一 つ、中 小 企 業 特 有 の タ
ず、土地を手放すしかない。
需要が発生するときは、銀行融資は頼れ
社を買収するなど、リスク性の高い資金
られた市場でシェアを高めるため同業他
れたときだ。新規事業を起こすとか、限
の一つが事業内容に何らかの転換を迫ら
真剣に考えざるを得ないときがある。そ
それでも中小企業が土地売却や活用を
ない。
い う 判 断 が 働 き、土 地 は な か な か 動 か
う が、融 資 交 渉 を 有 利 に 進 め ら れ る と
よ り も、含 み 益 と し て 残 し て お い た ほ
不 動 産 で あ れ ば、売 却 し て 税 金 を 払 う
も 売 れ な い の だ。む し ろ 評 価 額 の 高 い
資をつなぎ止めるため土地は売りたくて
担保を求められるケースが多いため、融
げているものの一つ。融資条件に不動産
資政策も不動産売却による有効活用を妨
いない。また金融機関の中小企業向け融
年その内容が後退し、十分に活用されて
例など土地流動化のための政策税制は近
銀行融資の問題がある。不動産買換え特
産を戦略化しにくい要因としては税制や
平川氏によれば、中小企業が企業不動
E戦略に詳しい。
の 講 師 を 務 め る な ど、中 小 企 業 のCR
PO法 人 日 本 不 動 産 カ ウ ン セ ラ ー 協 会︶
不 動 産 戦 略 ア ド バ イ ザ ー 認 定 研 修︵N
と 指 摘 す る の は、税 理 士 の 平 川 茂 氏。
企 業 で は ま だ 不 十 分 と い う の が 現 状﹂
い る が、中 小 企 業、と り わ け オ ー ナ ー
﹁大 企 業 で はCRE戦 略 は 認 知 さ れ て
前向きに なれ ないわけ
中 小 企 業 が 土 地 活 用に
03 中堅中小企業のCRE戦略
税 だ。先 代 社 長 の 相 続 税 支 払 い や 財 産
企業発展のキーワード=事業承継対策とCRE戦略
プランづくりを
Vol.
分 与 を 巡 っ て 兄 弟 が 争 う こ と は、オ ー
事業承継対策
02 CSR視点のCRE戦略
ナ ー 企 業 で は よ く あ る 話。こ こ で は 親
財務リスクマネジメント
Vol.
族 問 題 は 単 な る ゴ シ ッ プ で は な く、深
永続的な企業の
発展と利益の再投資
01 ワークプレイス
刻な事業リスクにもなる。
経営資源の効率化と
リスクマネジメント
Vol.
﹁中 小 企 業 は 会 社 に は 資 産 は あ る が、
氏に、これからの中小企業の企業不動産(CRE)戦略の
企業価値の向上と安全性の確保
実践的CRE戦略
経営者個人にはないというケースが多
“
ツボを聞く。
を意識し、
却・土地活用に踏み切れないのだ。こうした問題を解きほ
CRE戦略の結果
●
事業承継対策の基本的な流れ
●
ているケースでは、単なる経済合理性だけでは土地売
●
企業不動産(CRE)戦略の目的
●
企業価値向上のための
い。相 続 税 の 捻 出 の た め に は、経 営 者
不動産戦略が求められる。例えば個人資産と企業資産
↓
広 告 特 集
が複雑にからみあい、親族間の事業承継問題などが生じ
特設サイト >> http://land.nikkei.co.jp/cre
「企業価値向上のための実践的CRE戦略」
協賛社(順不同)
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