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各種用途における 電磁開閉器の適用と選定

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各種用途における 電磁開閉器の適用と選定
目 次
まえがき
低圧配電機器と応用技術講座
…………………………………………………
1
1 電磁開閉器の適用と選定 …………………………
1
3.2.2 速動ヒューズ……………………………… 64
1. 1 モータ負荷への適用 ……………………………
1
3.2.3 配線用遮断器・サーマルリレー………… 66
1.1.1 三相かご形モータの各種始動法の概要 ……
1
3.2.4 サイリスタプロテクタ…………………… 67
1.1.2 じか入れ始動への適用 ………………………
2
4 マニュアルモータスタータ …………………… 69
1.1.3 スターデルタ始動への適用 …………………
6
5 米国輸出制御盤のSCCR (短絡電流定格)…… 71
1.1.4 各種始動法の選択 …………………………… 14
1. 2 抵抗負荷への適用 ……………………………… 17
1. 3 照明負荷への適用 ……………………………… 18
1. 4 コンデンサ負荷への適用 ……………………… 19
1.4.1 コンデンサ負荷 ……………………………… 19
1.4.2 進相コンデンサを含むモータ負荷への適用 …… 21
1. 5 瞬時電圧降下への対応 ………………………… 24
1. 6 インバータ回路への適用 ……………………… 29
1. 7 シーケンサへの適用 …………………………… 32
1. 8 開閉サージと対策 ……………………………… 37
1. 9 保護リレー ……………………………………… 40
1.9.1 サーマルリレー ……………………………… 40
1.9.2 モータ用保護リレー ………………………… 43
2 ソリッドステートコンタクタ…………………… 44
2. 1 ヒータ負荷への適用 …………………………… 44
2. 2 モータ負荷への適用 …………………………… 48
2.2.1 三相かご形モータのじか入れ始動 ………… 48
2.2.2 かご形モータのインチング ………………… 51
2.2.3 可逆運転への適用 …………………………… 53
3 保護協調 ……………………………………………… 56
3. 1 電磁開閉器と配線用遮断器 …………………… 56
3.1.1 電磁開閉器と配線用遮断器における
保護協調の一般的な検討 ……… 56
3.1.2 電磁開閉器,配線用遮断器の条件 ………… 57
3.1.3 保護協調 ……………………………………… 59
3. 2 ソリッドステートコンタクタ ………………… 63
3.2.1 ソリッドステートコンタクタの過電流耐量 ……… 63
まえがき
電磁開閉器・電磁接触器は各種産業装置・設備の,主としてモータ制御システムコンポーネントとして数多く使用さ
れており,安価で入手しやすいことからその用途はモータ制御のほか抵抗,コンデンサ,電灯回路など多方面で使用
されている。
本文では,これらの機器の適用と選定について述べる。
1. 電磁開閉器の適用と選定
1.1 モータ負荷への適用
1.1.1 三相かご形モータの各種始動法の概要
かご形モータの始動法は,概略つぎのように分類される。
全電圧始動(じか入れ始動)
かご形モータの始動法
減圧始動
スターデルタ始動
コンドルファ始動
リアクトル始動(クザ始動)
一次抵抗始動
以下に,電磁式各種始動法の概要を示す。また表 1.1 にその特性を記載する。
(1)全電圧始動(じか入れ始動)
全電圧始動は,かご形モータの最も一般的で経済的な始動法であるが,大きな始動電流(モータ定格電流の約 5 ~ 8
倍)が始動時に流れ,また始動トルクが制御されないままで始動されるので,始動時に電源に与えるショック,機械
系に与えるショックが問題となることがある。
これに対応する始動法が減圧始動であり,この始動法のなかで,始動電流の低減を主目的とするものにスターデルタ
始動とコンドルファ始動があり,また始動トルクの制御を主目的とするものにリアクトル始動と一次抵抗始動があ
る。
(2)スターデルタ始動
スターデルタ始動は減圧始動法のなかで最も安価なもので,5.5kW 以上のモータに適用可能であるが始動電流とトル
クが固定で調整が不可能なため,負荷をつけたままの始動には問題があることと,スターからデルタへの切り換え時
に一時的に開路されるため(Open transition)切り換え時のショックが大きい等の欠点がある。なお,これを改善す
るために切り換え時に開路しない方式(Closed transition)として,スターからデルタヘの切り換え時に抵抗を接続
するものがあり,この方式は切り換え時の突入電流が小さくなるので非常用発電機を電源とするような用途には発電
機容量を小さくできる利点があり,またコンドルファ始動の代替としても使用できる。
(3)コンドルファ始動
コンドルファ始動は始動トルクの調整用に通常 単巻トランスに 80-65-50%の 3 つのタップが設けられ,また切り
換え時には単巻トランスの巻線がリアクトルとして働き回路が開路されないため(Closed transition)切り換え時の
ショックが小さい。しかしながら高価なため,あまり小さい容量のモータには適しない。小容量の発電機で始動する
場合には最適な始動法である。
(4)リアクトル始動
リアクトル始動はトルクの低減(印加電圧の 2 乗に比例)の割りには始動電流が低減せず(印加電圧に比例)したがっ
て始動トルクを調整して緩始動を行う場合に採用される。
この始動法は,回転数の上昇(すなわち始動電流の低減)とともに,モータにかかる印加電圧が上昇するのでトルク
も上昇し,切り換え時のショックはほとんど皆無なので回転数の上昇に比例して負荷が大きくなるような場合や緩始
動で切り換え時のショックを特にきらう負荷の場合には最適な始動法といえる。
(5)一次抵抗始動
一次抵抗始動はリアクトル始動のリアクトルの代わりに抵抗器を使用したもので,機能としてはリアクトル始動と
1
まったく変わりはないが,抵抗器の制限からあまり大きな容量のものは製作が難しい。
(6)クザ始動
リアクトル始動の 1 つの変形としてクザ始動がある。リアクトル始動は三相全てにリアクトルを挿入しているがクザ
始動はこのうちの 1 相または 2 相を抜いたものでトルクの調整のみを考えた安価な始動法である。
表 1.1 かご形モータの電磁式始動法
始 動 法
減
圧
始
動
全
電
圧
ス タ ー デ ル タ 始 動 ス タ ー デ ル タ 始 動
( じ か 入 れ 始 動 )
リ ア ク ト ル 始 動 コ ン ド ル フ ァ 始 動 一
(Open transition)
(Closed transition)
次
抵
抗
始
動
回路構成
電流特性
(線電流)
I1 = IS × 1/3:33%
V'
I2 = IS ×(|)
V
V'
I4 = IS ×(|)
V
:50 - 60 - 70 - 80 - 90%
V'
I3 = IS ×(|)2
V
:25 - 42 - 64%
V'
T = TS ×(|)2
2
V
:25 - 36 - 49 - 64 - 81%
V'
T3 = TS ×(|)2
V
:25 - 42 - 64%
V'
T = TS ×(|)2
2
V
:56 ~ 81%
I1 = IS × 1/3:33%
:75 ~ 90%
ト ル ク
特
性
Ts:100%
加 速 性
価
格
三菱形名
T1 = Ts × 1/3:33%
T1 = Ts × 1/3:33%
ト ル ク の 増 加 小 ト ル ク の 増 加 じ ん 大 ト ル ク の 増 加 や や 小 ト ル ク の 増 加 大
加 速 ト ル ク 最 大 ト ル ク の 増 加 小
最大トルクやや小
最大トルク最大
最 大 ト ル ク 小 最大トルク最大
始動時のショック大 最 大 ト ル ク 小
デルタ切換え時のショック小
円滑な加速
円滑な加速
円滑な加速
安
価
MS-N
MS-T
減圧始動ではもっとも安価 Open transition よりやや高価
EYD-N(3 接触器方式)
EY-N(2 接触器方式)
や
EYF-N
や
高
価
高
ERT-N
価
EG-N
や
や
高
価
―
注 使用記号は次のとおり。V:電源電圧 V’:電動機端子電圧 IS:じか入れの始動電流
Ts:じか入れの始動トルク I1 ~ I4 T1 ~ T4:じか入れ始動に対する始動電流 始動トルク
1.1.2 じか入れ始動への適用
じか入れ始動法はかご形モータの最も一般的で経済的な始動法であり,JIS 及び IEC 規格等ではその責務による級別
として通常の始動・運転責務(標準責務)の AC-3 級とインチング・プラッギング責務の AC-4 級が規定されている。
表 1.2 規格
用 途
級別
閉路・遮断電流容量
電気的耐久性試験
閉路
遮断
閉路
遮断
かご形モータの始動・停止
AC-3
10Ie
8Ie
6Ie
Ie
かご形モータの
インチング・プラッギング
AC-4
12Ie
10Ie
6Ie
6Ie
AC-3 級電気的耐久性試験の責務
AC-4 級電気的耐久性試験の責務
7
7
2
7
7
(1)AC-3 級標準責務
一般に,電磁開閉器・電磁接触器は AC-3 級定格容量で開閉頻度 1200 ~ 1800 回 / 時,電気的耐久性も 50 万回以上
を称呼しているので標準責務で使用するときは,ほとんどの場合下記でフレーム選定することができる。
[モータの定格出力]=[電磁開閉器・電磁接触器の定格容量]
またサーマルリレーは,下記で電流値を選定する。
[モータの定格電流]=[サーマルリレーの電流整定値]
表 1.3 に MS-N/T シリーズ電磁開閉器・電磁接触器の定格容量及び仕様を,表 1.4 に三相モータへの適用を示す。
表 1.3 MS-N/T シリーズ電磁開閉器の定格と仕様
適用
誘 導 電 動 機 負 荷(kW)
標準責務定格容量
三相かご形(AC-3 級)
フレーム
MS.MSO.
寸動責務定格容量
三相巻線形(AC-2 級)
三相かご形
(AC-4 級)
単相(AC-3 級)
200 ~
380 ~
500 ~
200 ~
380 ~
500 ~
100 ~
200 ~
200 ~
380 ~
220V
440V
550V
220V
440V
550V
110V
220V
220V
550V
N10, T10
2.2
2.7
2.7
2.2
2.7
2.7
0.4
0.8
1.5
2.7〔2.2〕
N11 N12,T12
2.7
4
5.5
2.7
4
5.5
0.55
1.0
2.2
5.5〔4〕
N18
3.7
5.5
5.5
3.7
5.5
5.5
0.75
1.5
3.7
5.5〔4〕
3.7
7.5
7.5
3.7
7.5
7.5
0.75
1.5
3.7
T20
N20 N21,T21
N25, T25
N35
注1
4
5.5
7.5
7.5
11
7.5
11
4
5.5
7.5
7.5
11
7.5
5.5
0.9
1.8
3.7
5.5
11
1.2
―
4.5
7.5
15
15
15
15
1.7
―
5.5
11
N50
11
22
22
11
22
22
―
―
7.5
15
N65
15
30
30
15
30
30
―
―
11
22
N80
19
37
45
19
37
45
―
―
15
30
N95
22
45
45
22
45
45
―
―
19
37
N125
30
60
60
30
60
60
―
―
22
45
N150
37
75
90
37
75
90
―
―
30
55
N180
45
90
110
45
90
110
―
―
37
75
N220
55
110
132
55
110
132
―
―
45
90
N300
75
150
160
75
150
160
―
―
55
110
N400
110
200
200
100
200
200
―
―
75
150
N600
160
300
300
160
300
300
―
―
110
200
N800
200
400
400
200
400
400
―
―
160
300
注 1. 箱入電磁開閉器の時,電気用品安全法の関係から定格が変更になる
MS-N20,N/T21:3.7kW
注 2. 寸動責務定格容量の〔 〕内は 380 ~ 440V の定格を示す
3
表 1.4 標準三相モータに対する適用(標準責務)
200 ~ 220V
400 ~ 440V
N 180
N 220
N 125
N 150
N 95
N 18
N 20 N 21, T20 T21
N 25, T25
N 35
N 600
N 800
N 300
N 400
N 600
N 800
N 300
N 400
N 180
N 220
N 50
N 65
N 80
N 95
N 125
N 150
0.24
0.35
0.7
1.3
1.7
2.1
3.6
5
6.6
11
15
22
29
35
42
54
67
82
105
105
125
150
180
250
250
330
500
660
電磁開閉器フレーム
N 10, T10
N 11 N 12, T12
ヒータ呼び
N 35
電磁開閉器フレーム
N 50
N 65
N 80
ヒータ呼び
(A)
0.5
0.7
1.3
2.1
3.6
5
6.6
9
15
22
29
42
54
67
82
105
125
150
180
180
250
330
330
500
500
660
-
-
N 10, T 10
N 11 N12 , T 12
N 18
N 20 N 21, T20 T21
N 25, T25
モータ
容 量
(kW)
0.05
0.1
0.2
0.4
0.75
(1)
1.5
(1.9)2.2
3.7
5.5
7.5
11
15
18.5
22
30
37
45
(50)
55
75
90
110
132
150
200
300
400
(2)インチング・プラッギングを含む責務への適用
一般の電磁開閉器・電磁接触器はかご形モータのじか入れ始動を前提にしているので,AC-3 級または AC-4 級の性
能をもっている。じか入れ始動に要求される級別は AC-3 級であるが,インチングまたはプラッギングに適用すると
きは AC-4 級となり,モータの全負荷電流の数倍の突入電流を開閉することになり,電気的耐久性は極端に短くなる
ので必要な開閉耐久性によっては,大きなフレームを選定して使用することが必要である。
標準責務または寸動責務(インチング)のみのときの電流(容量)―関閉耐久性曲線の例を図 1.1 に示す。
標準責務のなかにインチングを含む場合の開閉耐久性は,接点消耗量が大略遮断電流の 2 乗に比例することにより,
下式で求めることができる。
Nr
N =――――――――――……………①
α
Nr
1 +――(――- 1)
100 N1
N :インチングをα%含む場合の開閉耐久性
Nr:AC-3 級定格での開閉耐久性
N1 :インチング 100%の場合の開閉耐久性
寸動運転の回数
α=――――――――――――――――× 100%
標準運転の回数+寸動運転の回数
4
なお,P(kW)(全負荷電流 I(A))のモータ負荷でインチングの割合が α(%),必要な開閉耐久性が N(回)の
場合の接触器フレーム〔定格容量 P0(kW)(全負荷電流 I 0(A))〕は下式により概略算出できる。
I 0=I×
α
N
1+―― (β2 −1)
100
Nr
――
……… ②
モータ始動電流
β=―――――――――
モータ全負荷電流
N
α
ただし ―― 1+―― (β 2−1)
Nr
100
<1のときは1とする ……… ③
開閉耐久性は,電流の概略 2 乗に反比例するが,接触器フレームの定格使用電流以下において成り立つ関係であり,
定格使用電流以上では必ずしも成り立たない。そこで,定格使用電流以上での使用を防止するために③の条件をつけ
ている。
また,AC-4 級の開閉耐久性 N1(定格使用電流におけるインチング 100%のときの開閉耐久性)は図 1.1 において,
AC-4 級の耐久性曲線における折曲点が定格使用電流での AC-4 級の開閉耐久回数となるので,これを N1 として求め
る。
AC-3 級(標準責務)
モータ容量(kW)
AC-4 級(寸動,逆相制動責務)
図 1.1 電流(容量)-開閉耐久性曲線の例(3φ 220V β = 6 の場合の平均)
5
[例題]
3 φ 200V 7.5kW(全負荷電流 28A,始動電流 168A)をインチング 30%を含む運転で 50 万回まで開閉できる
電磁接触器のフレームを求める。
ここで定格電流Ⅰ= 28A β= 168A/28A = 6 α = 30%
N = 50 万回 Nr = 100 万回
であるから
30
50
②式より I 0=28× ――
1+―― (6 2−1)
100
100
= 67(A)
となり,200-220V 定格電流 67A 以上のフレーム,すなわち S-N80 を選定すればよい。
以上のように,②式より概略の容量選定ができる。
表 1.5 にインチング,プラッギングを含む場合の適用容量を示す。
表 1.5 インチング,プラッギングを含む場合の適用
区 分
主回路電圧
寸動の%
10%
電気的耐久性(回)
10 万
50 万
フレーム
N10
2.2
1.0
N11 N12
2.7
1.5
N18
3.7
2.7
N20 N21
4
3.7
N25
5.5
4.5
N35
7.5
5.5
N50
11
7.5
N65
15
11
N80
19
15
N95
22
15
N125
30
22
N150
37
25
N180
45
30
N220
55
37
N300
75
50
N400
110
65
N600
160
75
N800
200
132
寸動運転を含む場合の三相モータ適用容量(kW)
200 ~ 220V
380 ~ 440V
50%
100%
10%
50%
10 万
1.0
1.5
2.7
3.7
4.5
5.5
7.5
11
15
19
22
30
37
45
55
75
90
150
50 万
10 万
50 万
0.5
0.75
1.1
1.5
2.2
3.7
3.7
5.5
7.5
9
9
11
15
19
25
30
37
45
0.75
1.1
1.5
2.5
4.5
4.5
5.5
7.5
11
11
15
19
25
30
37
45
55
75
0.3
0.5
0.75
1.1
1.8
2.7
3.7
4
5.5
5.5
7.5
9
11
15
22
25
37
45
10 万
2.7
4
4
7.5
11
11
22
30
37
45
60
75
90
110
150
200
300
400
50 万
1.5
2.2
3.7
7.5
9
9
15
22
30
37
45
55
75
90
125
132
150
190
10 万
1.5
3.7
4
7.5
9
9
15
22
30
37
45
55
75
90
132
150
190
220
50 万
0.75
1.5
2.2
3.7
4.5
4.5
7.5
11
15
18.5
22
30
37
37
50
75
90
110
100%
10 万
1.1
2.2
3.7
5.5
7.5
7.5
15
15
22
25
30
45
55
60
75
110
132
160
逆相制動の定格容量(kW)
200 ~ 220V
380 ~ 440V
逆相制動 100%
逆相制動 100%
50 万
10 万
50 万
0.5
1.1
1.5
2.2
3.7
3.7
5.5
7.5
11
13
15
22
25
30
37
55
75
90
―
0.75
1.5
2.2
2.5
3.7
5.5
7.5
9
11
15
19
22
25
37
45
55
75
―
0.4
0.5
0.75
1.1
1.5
2.2
3.0
3.7
4.5
5.5
7.5
11
13
18.5
22
30
37
10 万
―
1
2.2
3.7
4.5
4.5
7.5
11
18.5
22
30
37
45
45
55
75
110
150
50 万
―
0.4
0.75
1.5
2.2
2.2
3.7
5.5
7.5
11
15
19
22
25
30
37
45
75
注1. 寸動の%とは全運転回数に対する寸動運転(インチング)回数の割合,即ち,寸動運転回数 /(寸動運転回数+標準責務運転回数)×100(%)を示す。
2. 寸動運動時の開閉頻度は AC-4 級電気的耐久性試験の責務のとおりであるが,短時間に高頻度で寸動運転を行うと寿命が短くなる。この場合の限界は 1 秒に 1 回程度の
寸動運転を連続で 10 回以内。
1.1.3 スターデルタ始動への適用
スターデルタ始動法はデルタ接続運転用のモータを始動時だけスター接続として各相が電源電圧の 1 /√3 で始動し
ほぼ全速に達してからデルタ接続に切り換えて各相を電源電圧で運転させる方法である。このスターデルタ始動法に
は 3 接触器式と 2 接触器式がありその代表例を図 1.2,1.3 に示す。図 1.2,1.3 で進相コンデンサ(SC)を接続する位
置を破線で示してあるが,電磁接触器よりモータ側に接続すると問題があるので注意のこと。
じか入れ始動とスターデルタ始動の接点間の電圧・電流を比較すると表 1.6 となる。
6
表 1.6
始動時(スター用電磁接触器)
始
じ
動
か
法
入
接 点 電 流
線 間 電 圧
接 点 電 圧
6Im
Em
Em
――
√3
1
6Im ×―= 2Im
3
Em
Em
――
√3
れ
スターデルタ
運転時(デルタ用電磁接触器)
線
電
流
接 点 電 圧
接 点 電 流
Im
Em
――
√3
Im
Im
Em
Im
――
√3
(1)接続方式
a.3 接触器式
電磁接触器を 3 台使用する一般的な方式で,モータの停止時にはモータ巻線に電圧が印加されないのでモータの 絶縁劣化を抑制できる。
b.2 接触器式
電磁接触器を 2 台使用する経済的な方法であるが,モータ停止中でもモータ巻線に電圧が印加されるので消火設
備など休止時間の長い用途には適しない。
図 1.2 3 接触器式の接続例
図 1.3 2 接触器式の接続例
(2)電磁接触器の選定
スターデルタ始動器は接続方式,制御回路方式により電磁接触器の容量が異なる場合があるので注意を要する。とく
に 3 接触器式の場合は主接触器(MCM)の接続位置及び制御方式により容量選定が異なるため,ここでは図 1.2 及び
図 1.3 の回路での選定について示す。
a.スター用電磁接触器(MCs)
スター用電磁接触器に流れる電流は,じか入れに比して 1 / 3 の電流となるので,モータの始動電流を 6Im(Im: モータ電流)とすると下記となる。
スター始動電流= 6Im × 1 / 3 = 2Im
またスター運転時間は 15 秒程度であり,一般的にはインチングや高頻度の始動は行わないのでスター用接触器は じか入れの 1 / 3 の容量の短時間定格で適用できる。しかしスターからデルタヘの切換えがモータの回転数が充
分上昇しないうちに行われると始動電流が減衰していない状態で大きな電流を遮断することになり,電磁接触器
の電気的耐久性を大幅に減少させることになる。一般的にスターからデルタへの切換えはモータの回転数が定格
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