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23 市場・競争の制度と企業の戦略 早川 貴

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23 市場・競争の制度と企業の戦略 早川 貴
23 市場・競争の制度と企業の戦略
早川 貴
1970 年、島根県生まれ。学部卒業後、製造業によるリテールサポートと市場調査の実務を経て
大学院に進む。2011 年度から本学所属。専門はマーケティング論。マーケティング・コミュニケー
ション政策を中心に、マーケティング機関の戦略的行動に対する広義の制度の影響について研究し
ている。
1 政策科学部で本テーマを研究する意義(なぜ政策科学部でこの研究を行うのか)
政策科学部でマーケティングを学ぶ意義は、政策の客体としてのマーケティング活動や
マーケティング機関、マーケティング機構についての知見を深め、政策的営為の帰結を正
しく理解する助けとなる点に先ずあるでしょう。消費者や企業が自由に、利己的に、戦略
的に振る舞う結果として、政策は立案された当初の意図とは異なる社会的帰結をもたらす
事がありえます。政策の意図と帰結を一致させるためには、消費者や企業の振る舞いを正
しく推測し、当初の意図を実現できるような政策を立案・施行する事が求められます。
マーケティング活動に対する政策的な働きかけの例としては、直近では、薬事法の運用
変更により従来は対面販売を義務付けられていた薬種がインターネットで通信販売できる
ようになった事、その他の身近な所では広告やその内容に対する法的規制、さまざまな店
舗の出店に関わる法的規制などが挙げられます。
また、政策主体が推進しようとする個々の政策に対する社会的支持を得る際や、そもそ
も社会的に希求されている政策的措置が如何なるものであるかを知ろうとする際にも、
マーケティングの知見が有効になることは少なくありません。前者の場合は広告に関わる
マーケティング論の知見を政治宣伝や政府広報に応用することになりますし、後者の場合
は消費者調査に関わるマーケティング論の知見を有権者の意識調査などに応用することに
なります。
2 研究内容・目標
当ゼミでは広くマーケティング論全般を研究していますが、とりわけ市場取引に関わる
諸制度(法的・社会的規制や公的助成などのほか、取引慣行や既存のマーケティング機構
それ自体などの自生的で安定的な関係性を含む広い意味での制度)との関連でマーケティ
ングを捉えようとすることが奨励されます。
当ゼミの学修上の到達目標は、受講者が 2 年間のゼミを通じて、企業のマーケティング
行動や消費者の購買行動を、状況適応的な合理的主体による意思決定の帰結として分析・
理解できるようになることです。私たち人間の限られた能力では複雑な現実の事象を複雑
なままに分析・理解することは困難で、言語的モデルや数学的モデルを用いて複雑な事象
を単純化し、モデルの操作を通じて事象を分析・理解する事が普通です。当ゼミでは合理
性原理に基礎を置くモデルで現実の事象を分析・理解するための知見を、輪読、研究報告
と論文執筆を通じて身に着けてゆきます。
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3 運営方法
3 回生の間は 4 ∼ 6 名のグループでの研究が中心となります。前期にはテキストの輪読
をグループ報告制で行います。加えて、前期後半からは自主的に設定した研究テーマにつ
いてグループ研究を進め、後期中にグループ全員による共著論文としてまとめます。
4 回生になると卒業研究を個々に進めてもらいます。前期には 3 回生と共にテキストの
輪読を進めながら研究テーマを探り、前期後半から執筆に入ります。
4 テキスト・参考文献
〔A〕テキスト:3 回生前期に使用予定。
○石井淳蔵 他(2013)『ゼミナールマーケティング入門』(第 2 版)日本経済新聞社
○土井教之(2008)『産業組織論入門』ミネルヴァ書房
〔B〕基本書:入手・読解とも容易ですので開講前に読了してください。
○澤田昭夫(1977)『論文の書き方』講談社〔講談社学術文庫 153〕
○沼上幹(2008)『わかりやすいマーケティング戦略:新版』有斐閣〔有斐閣アルマ〕
○梶井厚志(2002)『戦略的思考の技術』中央公論新社〔中公新書 1658〕
〔C〕参考書:入手・読解ともに少々難儀ですが長期休暇に取り組んでみてください。
○成生達彦(1994)『流通の経済理論』名古屋大学出版会
5 受講生に望むこと
受講生諸君に望むことは、常にマナーとガッツのある行動の実践です。例えば、遅刻・
欠席はゼミでは基本的に認められません。ゼミは研究共同体です。所定の時間に共に居る
ことと発言することが最小限のマナーです。また、当ゼミの研究内容では英文の文献を参
照することと、線形代数か統計学かの初歩的な知見を用いることが殆ど不可避と考えられ
ます。この両者が不得意でないこと、あるいは現在不得意であれば必要に応じて修得する
ガッツを持っていることを望みます。
6 選考方法(書類、面接、試験)
書類と面接によります。
7 グループワークか個人学習主体か
上述の通り、3 回生はグループワーク主体、4 回生は個人学修主体となります。
8 ゼミ開始までに履修しておくべき科目
事前に履修している事が必須と考えられる科目は「ミクロ経済学入門」
、「マーケティン
グ論」、「意思決定論」の 3 科目です。
事前に履修している事が強く望まれる科目は「経済政策」、
「経営組織論」、
「経営戦略論」
の 3 科目です。
事前に履修している事が好ましい科目は「調査分析技法入門」、「分析技法入門」、「デー
タ解析入門」、「統計学」、「フィールド調査法」、「社会調査法」の 6 科目です。
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