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2013/11/11
豚丹毒(swine erysipelas) 人獣共通
対象家畜: 豚、いのしし
原因菌: 丹毒菌 Erysipelothrix rhusiopathiae は、グラム陽性
の短桿菌で、非運動性、無芽胞性、非抗酸性を示す。自然界に広く分
布しており、陸棲、水棲哺乳類および鳥類に感染する。
疫学: 陸棲、水棲哺乳類、鳥類の感染症で、世界中で発生が見ら
れる。産業的にはブタでの被害が最も多く、外見上健康なブタの扁桃
から約20~50%の高率で分離される。経口感染が主であるが、創傷
感染もおこり得る。ブタでは扁桃や消化管に存在する菌が、高温、多
湿、輸送などのストレスをきっかけとして血管系に入り、発症する。
臨床: 急性型である敗血症型および蕁麻疹型、慢性型である関節
炎型および心内膜炎型に分けられる。敗血症型は、40℃以上の高熱
が突発し、1~2日の経過で急死する。蕁麻疹型は菱形疹と呼ばれる
特徴的な皮膚病変を示し、慢性型の関節炎型は疼痛や跛行が認めら
れ、心内膜炎型は臨床的に異常を認めることはほとんどない。
敗血症型
蕁麻疹型
重度のチアノーゼを示した急性敗血症
心内膜炎型
心臓弁膜に細菌塊(イボ)
背部、臀部などに菱形疹(バラ状疹)
全食
部肉
廃セ
棄ン
処タ
分ー
さで
れ発
る見
さ
れ
、
関節炎型
関節の腫大,絨毛の増勢
1
2013/11/11
予防・治療: 予防には、生ワクチン(1a型弱毒株)、不活化ワクチ
ンが用いられている。生菌ワクチンは優れた免疫効果と安全性を備
えており、移行抗体や抗生物質などの影響がなければ約6ヵ月間免
疫が持続する。一方、不活化ワクチンは、免疫持続期間は短く、移行
抗体や抗生物質の影響を受けない。治療には、ペニシリン系抗生物
質が極めて有効である。
ヒトにおける豚丹毒菌による感染症は、連鎖球
菌による丹毒と区別するため、類丹毒と呼ばれる。
職業上、魚類、甲殻類、家禽または食肉を扱う
ヒトに発生する。3つの型の病型があり、侵入門
部位に腫脹と皮膚発赤を認める軽症型、発熱を
伴うことのあるびまん型、および心内膜炎を伴う
まれな全身感染症がある。
人畜共通感染症であることから、食肉センター
で豚丹毒と確認された豚は「全部廃棄」となる。
かつては「蕁麻疹型」や「敗血症型」の発生が多く、農場段階で淘汰
されていた。ワクチンの普及などにより発生頭数が減ってくると、
頭数/10万頭
70
60
50
罹
患 40
率
30
20
それらの病型に代って、「心内膜炎型」や「関節炎型」
が半数以上を占めるようになった。すなわち、農場で
見過ごされていたものが食肉センターで摘発されるこ
とになり、しかも全部廃棄処分にされることから、農家
にとっては不意打ちを食らうことになる。
25
バラ状疹
農場
罹 15
患
率 10
食肉センター
関節炎型
5
10
0
頭数/10万頭
20
0
1970
1974
1979
過去における豚丹毒の発生状況
近年における豚丹毒の発生状況
2
2013/11/11
豚丹毒が豚の疾病全体に
占める比重を米国の事例で
みると、繁殖用雌では低いも
のの、子豚や繁殖用雄では
処分頭数の4~6%を占めて
いる。一つの疾病が占める割
合としては、決して低くない。
「農場ACCP」先進国におい
ても、豚丹毒の制御は容易で
はないことを示している。
2012
2011
2010
2009
2008
2007
戸数
726
717
878
961
836
822
頭数
2,775
2,089
2,177
2,260
1,692
1,479
国内の豚丹毒はこれ以上減りそうにない。そ
の一方で、分離菌が生ワクチン株に類似してい
るとの指摘がある。その対策として、母豚群を
生ワクチンでしっかり免疫するとともに、仔豚に
対していは移行抗体を見計らって不活化ワクチ
ンを接種することが試みられている。
トキソプラズマ病(toxoplasmosis)
人獣共通
対象家畜: めん羊、山羊、豚、いのしし
原因: トキソプラズマ・ゴンディ(Toxoplasma gondii)と呼ばれる
原虫。 終宿主(ネコ科)
消化管寄生 有性生殖
オーシスト(虫卵)
砂場
糞便
飲用水
食品汚染
捕食
中間宿主
筋肉内寄生
シスト(嚢子)
無性生殖
捕食
感染豚由
来の豚肉
一般健康人は
発病しない。
妊婦および
免疫低下者のみ
3
2013/11/11
2500
発
生
率
(
豚
飼
養
1
千
万
頭
当
り
)
養豚業が専業化、大規模化し、衛生管理技術
が向上したことにより、豚の感染は激減した。
2000
発生率
一戸当り飼養頭数
猫を飼わない。
野良猫を近づけない
1500
頭数
750
500
1000
500
飼料の汚染
(ネズミの死体)
0
250
0
ブタにおけるトキソプラズマ症の発生推移
臨床: 2~4カ月齢の子豚がかかりやすく、しばしば集団
発生する。感染してから数日後に発熱がみられ、7~10日
間持続する。この間に下痢や発咳がみられ、呼吸困難、
すなわち腹式呼吸が次第に明瞭となり、歩行の不安定、
犬座姿勢などの症状がみられるようになる。やがて耳翼、
鼻端、下肢、下腹部などに赤紫斑がみられ、ついには起
立不能となって死亡する。
予防: 猫の豚舎・豚房へ
の出入りの防止を図ること
が最も有効な予防法である。
オーシストには一般の消毒
薬はほとんど無効なので、
豚舎は熱湯やスチームによ
る加熱消毒を行う必要があ
る。汚染飼料は焼却する。
耳翼の暗赤色(うっ血)と目やに
4
2013/11/11
トキソプラズマとCMVの母子感染,「医療者は正しい指導を」
患者会が日本小児感染症学会で訴え [2013年10月29日]
先天性感染症に悩む患者や家族でつくる「トーチの会」は,第45回
日本小児感染症学会(10月26~27日,札幌市)のシンポジウム「母子
感染~それぞれの立場から見えてくる問題点」で先天性感染症につ
いて「医療関係者は正しく理解した上で患者を指導してほしい」と呼び
かけた。
1985年に行われた全国調査で先天性トキソプラズマ症が「極めて
まれなケース」と指摘されたことから,長らく重要視されてこなかった。
歯科医でトーチの会代表の渡邊智美氏は,妊娠中にトキソプラズマ症
を来した体験を交えながら母子感染症対策の問題点を説明した。
妊娠30週ごろに近医で受けた妊婦健診で胎児の両側脳室拡大
が認められたが,健診時のスクリーニング項目にトキソプラズマ抗体
はなく,原因が特定されないまま周産期医療センターへ転院となった。
そこで行われた妊娠36週目の血液検査で,胎児の先天性トキソプラ
ズマ感染症が判明。胎児の症状悪化を予防するために分娩までスピ
ラマイシン1.2g/日の内服を続け,妊娠38週5日に予定帝王切開で出
産したという。
ブタの抗体陽性率
野生イノシシの抗体陽性率
調査年 陽性率
Argentina
Brazil
Amazon
Paraı´ba
Canada
Czech
Germany
Ghana
Indonesia
Italy
Netherlands
Peru
Poland
USA
2004
37.8
2006
2007
2006
2007
2008
2000
2001
2009
2006
2004
2008
2008
37.5
36.2
0.7
20.0
4.1
40.6
6.3
10.4
3.0
27.7
26.4
4.1
調査年 陽性率
Austria
Brazil
Czech
Germany
Japan
Spain
USA
Georgia
South Carolina
1996
2009
2006
1997
2004
2006
19.3
4.5
26.2
2.5
4.4
38.4
1997
1996
18.2
34.2
発展途上国で豚の感染は未だ高率
であり、先進国でも野生イノシシに
残っている。野生猫科の種類と生息
数によって影響される。
Toxoplasmosis in pigs—The last 20 years
5
2013/11/11
ヒト嚢虫症・有鈎条虫症
人獣共通・伝染病でない
嚢虫
有鈎条虫症(ヒトは終宿主)
嚢虫症
ヒトが中間宿主
サナダムシ
全長数m
排便
虫卵
豚は中間宿主
片節
成虫は,軽度の胃腸症状や
食料不足の地方では栄養失調
を悪化させるが、それほど重篤
ではない。
嚢虫症は幼虫が中枢神経系
に侵入しないかぎり通常症状を
欠き,侵入するとてんかんおよ
び他の様々な神経学的症状が
現れうる。脳の画像検査で神経
嚢虫症が認められることがある。
嚢虫症はラテンアメリカ,アフ
リカ,東南アジアおよび東ヨー
ロッパにおけるてんかんの主要
原因である。米国における感染
はこれらの地域からの移民と接
触することにより感染しているも
のと思われる。
豚における有鉤嚢虫症の発生状況
地域
感染率(%)
12.53
中国(青林)
0.3
韓国(斉州島)
5.35
インド
20.8
インド北部
5.86-12.43
ブラジル
0.27
ブラジル
0.54
メキシコ
0.019
メキシコ
調査(報告)年
1979
1989
1989
1981-84
(1984)
1998
1967-74
(1984)
16
14
12
死 10
者 8
数 6
4
2
0
89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 00
カリフォルニア州におけるヒト嚢虫症
6
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