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Metalworking World 3/2009

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Metalworking World 3/2009
母なる自然の秘密を解き明かす:
新種の痕跡をたどって
a business ・
and
technology magazine from sandvik
coromant
サンドビック
コロマントが発信するビジネス&テク
ノロジー情報誌
#3/2009
静かな
生産性ブースター
カナディアン・
ツール&ダイ社
は不況知らず
PIPでコスト削減
動じることのないEMU社
(アルゼンチン):
成功への
新しい道
EMU社(アルゼンチン)
のCEO
エドアルド・ボシュハイマー氏
editorial
競争力の維持が全て
全てのビジネスは、常に競争力を向上させ
続ける必要があります。
その最善の道を見
つけた者が勝利の栄冠を手にするのです!
化手法や幅広いアドバイスをご提示いたし
ますのでお客さまにとってベストな選択を
していただけます。
この厳しい不況の中、会社の存続は生産コ
ストをどれだけ削減できるかにかかってい
ます。
ポイントは、長期に渡る全般的なコス
ト削減です。短期的なコスト削減は値下げ
と組合せたところで総合的には顕著な効果
がなく、
それだけでは事態は好転しません。
だからこそ私は、
コストを削減しつつ長期
的な競争力を高めることの出来るサンドビ
ック・コロマントのプログラムをお薦めいた
します。
テキサス州を拠点とするスミス・インター
ナショナル社で、
まさにこのようなことを行
当社のコスト削減プログラムでは、
当社の
エンジニアが生産プロセスを分析しコスト
削減が可能な箇所を見出します。
それと共
に時間やリソースの節約など、加工の最適
短期的なコスト削減は、
成果には結びつきません。
いました。事業が好調の時期に当社のエン
ジンニアがプログラムを行っていたおかげ
で、加工会社に出していた部品の生産を不
況時には本社で行うことができました。
これ
は従前の生産方法ではできなかったことで
す。
スミス・インターナショナル社にコスト削
減プログラムがいかに劇的な節約をもたら
したか、詳細は6ページをご覧下さい。
samir soudah
成功の鍵は会社ごとに異なります。
アルゼ
ンチンの自動車産業加工会社であるEMU
社は、生産プロセスの改良のみならず、顧客
からの要望を取り入れ顧客ベースを広げ、
単一産業だけに依存せぬよう改良や変更を
繰り返してきました。
この多様化によって同
社は現在の経済不況下においても好調な
状態を保っています。詳しくは7ページをお
読み下さい。
サンドビック・コロマント社長
ケネス・スンドー
PS1:当社オリジナルの防振コンセプトである
サイレント・ツールは、多くの新しい機械に不可
欠なものとなりました。投資回収期間を短縮する
ことができます。24ページの関連記事をお読み
下さい。
2 metalworking world
PS2:日本の稲見昌彦教授は、全ての子供の
夢を叶える──透明なマント──を開発されま
した。
この研究により、車をより簡単に駐車する
ことなどができるようになります。詳しくは30ペ
ージをご覧下さい。
目次
ken straiton
29
メタルワーキングワールド2009年第3号
テクノロジー
13 安定性の改善 34
14 滑らかなランディング
4
メタルワーキング
NEWS
7
アルゼンチン、利益獲得
の新手法
他に類のない新しいコンセプトiLockインタ
ーフェースは、
さまざまな切削工具コンセプ
トの安定性を増すと共に安全性の改善、工
具寿命の長期化、生産性の向上をもたらす。
航空機ランディングギアの製造には高い信
頼性と構造安定性に加え、重量・コスト面に
厳しい制限が求められるため、非常に高度
な技術が要求される。
23 切りくず処理を改善
突切り・溝入れ加工で多く見られる問題は、
16
カナディアン・
ツール&ダイ社
不況を吹き払う
34 アルミ加工のチャンピオン
新しいコロミル790は、
アルミの荒加工も仕
24
29
静音は生産性の音
38 難題を容易に
30
36
自然界の特殊部隊
非効率な切りくず処理性や弱い接近性に起
因することが多い。新しいコロターンHPで
解決できる。
上げ加工も生産性が向上、
より効率的に高
品質のワークが加工できるようになった。
航空機エンジンは難削材を用いた部品ばか
りである。
しかし、理想的な工具を利用すれ
ば、製造が容易になる。
子供の頃の夢を
現実にする男
30
16
メタルワーキング
OUTLOOK
Metalworking World
メタルワーキングワールドはサンドビック・コロマントABがお届けするビジネス&テクノロジー
マガジン。
811 81 Sandviken, Sweden, 電話 +46 (26)26 60 00。
年3回、
米語、
英語、
チェコスロバキア語、
中国語、
デンマーク
語、
オランダ語、
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ドイツ語、
ハンガリー語、
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ロ
シア語、
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スウェーデン語各言語で発行され、
サンドビック・コロマントの世界中のお客さまに無料で提供されています。
出版は
スウェーデン、
ストックホルム、
Spoon Publishing ISSN 1 652-5825。
martin adolfsson
編集主幹兼スウェーデン出版法による発行人: Pernilla Eriksson 契約担当: Christina Hoffmann 編集管理人: Johan
Andersson アートディレクター: Erik Westin 技術記事編集: Christer Richt 編集補佐: Valerie Mindel コーデ
ィネータ: BEATE TJERNSTROM 言語コーディネータ: Sergio Tenconi レイアウト: NINA KORNUNG 製版: Markus
Dahlstedt 表紙写真:eduardoi gil
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印刷:。
サンドビッケン、
スウェーデン。
Tryckeri社。
マルチアートマット紙 115gとマルチアートグロス紙200gを使用し、
ISO14001適
合、
EMAS登録。
コロマント・キャプト、
コロミル、
コロカット、
コロプレックスMT、
コロターン、
コロドリル、
コロボア、
コログリップ、
ハイドログリップ、
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TAS、
GCとiLockはすべてサンドビック・コロマントの登録商標です。
メタル・ワーキング・ワールドは無料で配布しています。
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メタルワーキングワールドは情報提供を目的に発行されていま
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サンドビック・コロマントは、直
接損害、
付帯損害、
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間接損害
を問わず、
メタルワーキングワールドに
掲載された情報の利用を事由として発
生するいかなる損害についても責を負
うものではありません。
metalworking world 3
news
より環境に優しい
エンジンへの道
新素材。現在、欧州連合の平均的
乗用車は1kmあたり160gの二酸
化炭素を排出する。
しかし、
もうすぐ
それは変わる。2012年から、EUの
新車に関する排ガス規制は、1km
あたり120gまで──25%の削減
──になる。
新たな規制に向けてヨーロッパ
の有名自動車メーカーは、
自動車
の小型化と大型車の燃費を高める
方法を模索している。
「要求される水準は上昇する一
方です。」
とオーストリア、
ゲオルグ・
フィッシャー・オートモーティブ社
の完成部品の加工マネージャーで
あるジョルゲン・ゾーナー氏は言
う。同社はエンジン環境負荷低減を
必要とされる、高温に対応可能なマ
ニホールド用の新素材を考案した。
2007年、
ゲオルク・フィッシャー
社は、新素材SiMo1000を世に出
した。
より高温に耐久性があり、従
来に比べニッケル含有率が34%少
ない──ニッケルの価格が高いこ
とから、原価優位性は明確だった。
問題は、
この新素材は効率良く
加工することが難しいということで
あった。
ゲオルク・フィッシャー社はこの
問題を解決するため、南ドイツ、
シ
ュトゥットガルト市郊外にあるサ
ンドビック・コロマント・自動車
アプリケーション・センターに
相談した。SiMo1000のテス
トを実施し、パイプの加工と
穴あけについての最善な方
法を開発しなければなら
なかった。4~6kgのエ
キゾーストマニホール
ドがエンジンケースに
固定されるのだ。
2007年の半ばに
SiMo1000に関する
一連のテストが行わ
れた。
サンドビック・
コロマント・チー
ムはテスト結果
に基づき、
その
素材に対処す
る新しい工具
を開発した。
このツール
はスーパーU
ドリルをベー
スにしてい
新素材SiMo1000
で作られたマニホー
る。10ミリの
ルド
ドリルを搭載
することができ、バリのあるコーナ
のフライス加工から
穴あけ加工まで、
チッ
プを変えることなく5
つの操作全てを行うこ
とが出来る。
ゲオルク・フィッシャ
ー社が納得した決め手
は、摩耗が均一にそして
連続的に増加したことだ
った。
それは、常にコスト
を意識する自動車産業用
部品の加工会社にとって
重要な要素である加工ライ
ン停止のリスクの減少を意
味する。
ヘルツォーゲンベル市
のゲオルク・フィッシャー
工場では、2009年の第
1四半期に徐々に導入さ
れた新しい工具に適応す
るよう、機械の調整が行わ
れている。
この取組みにより、全
く新しいビジネス分野──ターボ
ローダーのハウジング──への道
が開かれた。現在、
いくつかのター
ボローダーメーカーで試作品がテ
ストされている。
「 SiMo1000の将
来は明るいです。」
ゾーナー氏は語
る。
カナダ、若さ溢れる
競技を主催
教育。厳しい国際基準に基づいた
テストで各業種の技術を競うため、
ワールドスキルズインターナショナ
ルには2年ごとに世界中から何百
人もの若い技術者達が一斉に集ま
る。
第40回ワールドスキルズインタ
ーナショナルは2009年9月第一
週、
カナダのカルガリーで予定され
ている。51の国と地域からの参加
が見込まれている。
4 metalworking world
「主催国や地域により評価は異
なりますが、
ワールドスキル・インタ
ーナショナルに参加し入賞するの
は、
キャリアの中でも間違いなく輝
かしいひと時です。」
と、
ワールドス
キルズ・カルガリー2009のメディ
ア責任者ジェニファー・ララウェイ
氏は言う。
サンドビック・コロマント
は、金属切削部門の競技のスポン
サーとして、工具や、金属切削のノ
ウハウを提供した。
「素材が高周波
焼入れを施され
ていたので、手を
焼きました。」
工場長ロバート・ボヴィノ氏。
詳しくは16ページをお読み下さい。
響きわたる
イノベーション
研究開発。長年、
ギターの
弦は炭素鋼で作られてきた
が、
この素材はすぐに音質が
劣化してしまう。
しかし、
ギ
ターの弦の新時代が近づ
いている。
サンドビック・マ
テリアルズ・テクノロ
ジーはギターの弦
に最適な新しいス
テンレス鋼を開発
した。
ここまでのテ
ストでは、新素材
の弦が、汗で錆
びあっという間
に使い物にな
らなくなってし
まう従来の炭素
鋼の弦に比べ、
はるか
に耐久性のあることが実証され
ている。
「私は何ヶ月も使っています
が、
申し分ありません。」新たな
鋼のマーケティング・マネージャ
ーであり、経験豊かなギタープレ
ーヤーでもあるフィル・エサリッ
ジはコメントする。
いくつかの音楽会社が、
この新
しい鋼材に関心を示している。
この新素材はアコースティッ
ク‐ギターとエレキギターの両方
に使える。
「この
鋼材は、
バ
イオリンや
マンドリン
など、他の
楽器の弦
にも使えま
す。」
と述べ
る。
フィル・エサリッジ
nasa
5つの質問:
… 森精機製作所U.S.A社の航空宇
宙産業部門担当の加工技術マネー
ジャー、ジェフ・ウォーレス氏。
航空宇宙。変革と発展を続ける航空宇宙産業では、
メーカーは
加工の難しい新素材の課題に直面している。
研究開発。
ボーイング社は、
NASAや他社と協力してブ
レンデッドウィングボディ航空機の開発を行っている。
これはボーイング747と同じクラスで450~600人の
乗客を運ぶことになる。
この
「スティング・レイ(エイ型)設
計」
は、優れた航空力学、低燃費、静音という利点があ
る。複合素材およびプラスチック製で、軽量化も図られ
る。
インスピレーション
のチャンス
トレード・ショー。
サンドビック・コロ
マントは、不況によってひきおこされ
た課題を新手法で乗り越える手助
けをするため、9月末よりヨーロッパ
内のプロダクティビティー・センター
の門戸を開放した。
その目的は市場
が回復した時に備えて、
メーカーと
アイデアを共有し、課題やチャンス
について議論する場を設けることに
ある。
「今年のEMO2009には参加し
ません。」
とサンドビック・コロマント
の欧州地域マーケティング・コミュ
ニケーション・マネージャー、
ヴァー
ジン・ジェフリオンは言う。
「代わり
に当社はプロダクティビティー・セン
ターで数日間のイベントを開催しま
す。
テーマは、” お客さまのビジネス
への挑戦”です。」
「その場で、
当社の専門家が質
問に答え、効率的かつ恒久的なコス
トダウンやリードタイムの削減につ
ながる最新の加工方法やソリューシ
ョンを実演します。」
と言う。
「このイ
ベントに参加することによって、
お客
さまの将来の新たな課題への準備
は万全になるでしょう。」
1.昨今の不況下、
メーカー各社は設備投資をどのように捉えて
おられますか?
「切削加工産業全体に見られ
る不況の解決手段として、実は多
くのメーカーはハイテクに関心を
寄せておられ、
当社の5軸マシニン
グセンタや多機能機械が人気を
博しています。」
2. 航空宇宙産業部門において
最大の難問は何ですか?
「ガスタービンや他の航空宇
宙産業に必要な部品は、主として
ニッケル合金、
チタンやステンレス
鋼といった”超合金”でできていま
す。
これらの合金は加工も取り扱
いも容易ではありません。
これらの
課題を解決する新技術の模索に
は、1部品あたりの工具寿命とコス
ジェフ・ウォーレス氏
トが推進力になります。」
3. 御社とサンドビック・コロマントは、
この問題についてどの
ような協力をしているのでしょうか?
「当社は開発サイクルを休みなく続けています。サンドビック・
コロマントが新しい切削テクノロジーを開発し当社はその導入
を試みます。
同時に、
当社が新たな機械テクノロジーを開発し、
ツ
ーリング技術を次のステージに押し上げます。」
4 . 航空宇宙産業のメーカーにとって、次の大きな挑戦は何
ですか?
「コスト削減です。
これは革新的なツーリングソリューション
と、
きわめて強力なマシニングセンタの使用によって達成される
に違いありません。」
5. 航空宇宙産業のための工作機械に関する次
の大きな革新は何ですか?
「生産性をレベルアップさせる、
いくつかの
技術的な手法変更に着目しています。一つの
鍵は、共通ベースのプラットホームを持った
大型プラットホームの開発です。
これらの機
械は広範囲の加工に適応できると当時に
部品とパーツを共有することで全体のコス
トを削減することが出来ます。」
ご存知ですか?
…
…一機の航空
機を生産
するためには、
120
の穴を開けなけ 万も
ればな
りません。
metalworking world 5
NEWS
アメリカに拠点を置くスミ
ス・インターナショナル社
は、不況の中経費を節約し
つつ生産性を向上させてい
る。
コロミル300フライス
カッターは、補修部品製造の生産性を
大きく向上させた。
生産を取り戻す!
スミス・インターナショナル社は、石油・
が増加する中、同社は新たに導入した工
品やサービスを提供する世界的サプラ
上げなければならなかった。
スミス社は、
ガス産業の掘削・補修作業に必要な製
イヤーである。2006年、世界的に需要
作機械でこの補修部品の生産性を引き
顧客からの需要増に対応するため、
この
部品に要する加工時間を50時間から
25時間にまで短縮する必要があった。
えるため、生産の重要な部分を外注しな
工に時間のほとんどを費やしていまし
ード氏は説明する。
「昨今の景気低迷の
程に削減しました。
それでもフライス加
ッフォード氏が言う。
セールスエンジニア
スミス社は、不況下のコスト削
減のために、
サンドビック・コロ
マントの生産性向上プログラム
(PIP)
を活用した会社の一例で
あると、
サンドビック・コロマント
のセールスプロセスのシニアマ
ネージャー、
ビヨン・ペターソン
は言う。
「スミス社の例は、生産性向
上は柔軟性次第であることを示
しています。」
と言う。
「スミス社
は、柔軟性により好況時にも経
費を節約でき、会社に適した方
法で不況を克服することができ
たのです。」
6 metalworking world
ぺターソンは、不況時の生産
性改善がさまざまな可能性を提
供すると指摘する。
「たとえば受注が10%減少
したのであれば、PIPを利用する
ことによって20%のコスト削減
方法を見出すことができます。」
と言う。
「小さな加工改善提案に
より、加工が最適化され最も必
要とされることを行うための時
間と資源が見出されます。我々
はお客様との生産性改善課題
を共に解決していきます。」
「好景気時にはお客様のご要望に応
「まず部品の作業工程を7から1工
た。」
と、
スミス社の製造責任者レイ・スタ
コスト削減の方法
に相当する生産性の向上が得られた。
であるニール・マンソンの指
ければなりませんでした。」
と、
スタッフォ
結果、今日ではそうした生産の多くを自
社で行うようになりました。
この部品の
ための生産性向上に努め
ていなかったら、実現しな
導の下、
サンドビック・コロマ
かったことです。」
ントの担当者がフライス加
しかし、
コスト削減はそ
工の過程を調べ、生産性向
こでとどまらない。
上プログラム
(PIP)
を実施し
最近、
スミス社のプロ
た。
グラマーであるエイドリア
「その際、私たちはより
ン・マルチネス氏は、最も
多くのCIM[立方インチ/分]
を得られるツーリングを探し
ていました。」
とスタッフォー
ド氏が述べる。
「サンドビッ
レイ・スタッフォード氏
ク・コロマントから、RA300カッターを
時間のかかるフライス加
工工程で送りや切りくず
排出量を上げることで効
率性を改善することができると究明し
提案され、
それにより最も手間のかかる
た。
ることができました。」
(RA300カッター
ターの工具寿命が延びました。驚きで
フライス加工の工程を14時間も短縮す
はポジティブな丸チップカッターであり、
一般的にはコロミル300として知られて
いる。)
総計、年間770,000US$のコスト減
「実際、
コロミル300フライスカッ
す。」
マルティネス氏は言う。
「そのように
長く稼動できるカッターを持っている人
は他にいません。」
eduardo gil
EMU社のCEO 、
エドアルド・ボシュハイマー氏
変革を追及
アルゼンチン、ブエノスアイレス。メーカーであるEMU社は新
ビジネス開拓の為に、創業以来常に自らを変革してきた。
2008年に世界中が経済危機に見舞われた時にも、備えは万端
だった。
「自動車産業部門に頼りすぎてはいけないことに早くから気
づいていました。」オーナーであるエドアルド・ボシュハイマー
氏は言う。
❯❯
metalworking world 7
部品を自動車産業向けに製造する中規模の会社であ
る。同社は、200gから500kgに至る部品の加工を行っ
ている。
EMU社は、1930年にBock & Cia社として創業し
(囲み記事参照)、1950年代半ばに現在のオーナーで
あるボシュハイマー家に買収された。
EMU社の工場は、
ブエノスアイレス市街では数少な
い大規模工場の一つである。重工業工場のほとんどは、
大ブエノスアイレス都市圏の巨大工業ベルトにある。
「工場はヘネラス・パスと呼ばれるブエノスアイレス
の周りを囲む環状道路から近く、
自動車産業の主要取
引先から20~40分の距離にあります。」
とオーナーであ
るエドアルド・ボシュハイマー氏は言う。
EMU社のビジネス手法の中で変革は常に不可欠な
部分であった。
当初EMU社は家庭用湯沸かし器の銅製部品を製造
eduardo gil
❯❯ Establecimientos Metalurgicos Unidos(EMU)社は、特注
ドル旋盤、CMM(座標測定機)
やたて型マシニングセン
タといった最先端のCNC(コンピュータ数値制御)
シス
テムに投資してきた。EMU社はまた、一新された工場の
規模や任務に応じることができるよう工場を3,750㎡に
拡張した。1993年に1台だったCNC機械は今では53
台になっている。
「これは会社を中規模にする上で大きな一歩でし
た。」
とボシュハイマー氏は言う。
「次第に大手の中でも、
当社の仕事の質の高さが認知されるようになりました。」
EMU社はトヨタ、
フォルクスワーゲン、
フォードやGMとい
った大手自動車メーカーのサプライヤーとなり、2002
年に国内自動車売上の好景気が始まった時には絶好の
位置につけていた。多くの熟練技術者や4人の現場エン
ジニアを含む従業員が新規雇用され、従業員数は100
人になった。
また3シフト体制にもなった。
「私が2002年にEMU社に入社した時、
アルゼンチ
エンジンブラケット、EMU工場で製造されている
部品の内の一つ
していた。次にナット、
コネクタ及び接続金具などのネジ
ン経済はちょうど好転し始めていました。」
とEMU社の
場において手動で旋削やフライス加工された。
る前、
オジェア氏は15年間、
ブラジル及びアルゼンチン
効率化に着手し、
よこ型マシニングセンタ、
マルチスピン
業の好況に対しての備えは十分でしたが、
自動車部門へ ❯❯
部品の少量生産を請け負った。多くは、同社の小さな工
しかし、過去15年の間にEMU社は工場の近代化や
役員、
レオポルド・オジェア氏は言う。EMU社に入社す
にある化学大手のデュポン社で働いていた。
「自動車産
eduardo gil
EMU社の役員、
レオポルド・オジェア氏
8 metalworking world
eduardo gil
さまざまな機械の生産
効率を引き上げるため
に、EMU社は助けを必
要としていた
試行錯誤が前進への道
EMU社はそれぞれ異なる加工を最
も速く、簡単で安全に行うため、
工具の入替えを必要としていた。
自動ねじ切り盤(単一または複
数スピンドルのもの)、
自動フライ
ス盤、接線あるいは心なし研削
機、単軸及び多軸CNC旋盤、
たて
型及び横型マシニングセンタな
ど、大型機械は十分にあった。 欠落していたのは、200gから
500kgと多岐に渡る部品加工に
おいて、最大の生産高と時間の節
約を得るための核となるコンセプ
トだった。
「工作機械の適応性を高める
必要があり、
サンドビック・コロマ
ントがその手助けをしてくれまし
た。」
とEMU社の役員、
レオポル
ド・オジェア氏は言う。
EMU社とサンドビック・コロマ
ントのエンジニアとの間で行われ
た1年半に渡るハイレベルな会
議、
そしてさまざまなフライスカッ
ター、
バイトホルダ、
チップを試行
錯誤する期間を経て、最終的な機
械の設置と工程のコンピュータ化
が行われた。
「このような会議の中
でチームの合意を得ることができ
ました。」
とEMU社の工場マネー
ジャー、
アレハンドロ・ナスカ氏は
言う。
全部で9以上の工程やオペレー
ションが改善され、
コロミル490、
コロマントキャプト、GC1020チ
ップといった自動車部品のナック
ル製造に使われる高性能工具が
導入された。
「コロミル490の4コーナチッ
プによって切削が滑らかになり、
切削抵抗が減少しました。」
とサン
ドビック・コロマントのセールスエ
ンジニア、
アリエル・アルキエロが
言う。
「問題となっていた安定性を
改善し振動を削減するためにコロ
マントキャプトのクイックチェン
ジ・ツールホルダシステムが必要
でした。EMU社ではGC1020は
有名なチップ材種です。」
結果は素晴らしかった。両者に
よる最近の研究の結果、生産性改
善策によってEMU社は過去18ヶ
月に相当な費用を削減できた。加
えて年間6,400工数が削減され
た。
これは、100人を少し越えるぐ
らいの会社にとっては見事な実績
である。
工場長のナスカ氏は、
ある工程
の所要時間を30秒短縮しようと
した時に行われた当初のテストを
覚えている。
「370秒で行っていた
ものを、新たな手段で335秒にま
で短縮しました。」
と言う。
「必要な
剛性と時間短縮はコロマントキャ
プトのカップリングによってもたら
されたのです。」
metalworking world 9
❯❯ の売上が全体の95%を占めていたので多角化の必要性
も認識していました。」
と言う。
「また多角化するために
は、工作機械の適応性を高めなければならないこともわ
かっていました。」
EMU社はサンドビック・コロマント・アルゼンチンに助け
「多角化するために
は、工作機械の適応
性を高めなければな
らないこともわかっ
ていました。」
EMU社の役員、
レオポルド・オジェア氏
を求めた。
「当社のボトルネックになっていることを話し、
サンド
ビック・コロマントの技術者が3ヶ月以上かけて当社と
共に解決策を見出しました。」
とオジェア氏は言う。
機械のラインを再設計し生産性や生産高を引き上げる
ために、
サンドビック・コロマント・アルゼンチンはEMU
いに新しい工具やプログラムが履行されました。」
チームが導入した改善の一つは自動車用ナック
ル――前輪が回るのを可能にするスピンドルとステアリ
ング・アームを含む部品――の加工工程全体の改良だ
った。
「我々が3台の異なる機械を使う工程全体を見直
し、全体的な生産時間を削減する新たな方式を見出し
ました。」
とアルキエロは言う。
「その結果は生産性と売
上高という点で我々の想像を遙かに超えるものでした。
(囲み記事ご参照)」
6年連続で平均9%の年間成長率を持続してきたアルゼ
社のエンジニアや技術者と共に取り組んだ。
ンチン経済は2009年度には2%以下に減速する見通し
ら3人とEMU社から6人――は、2007年半ばから定期
特に重要である。
「9人からなるチーム――サンドビック・コロマントか
的に打合せを開きました。
当初の目的は目標を決めるこ
で国際経済危機が実感され始めているため、
このことは
しかし、EMU社の社員は楽観的である。
それは正当
とで、
その後はいろいろな選択肢を試みました。」
とサン
な理由があってのことだ。
ア、
アリエル・アルキエロが言う。
「2008年の終わり、
つ
始めている。同社は、南アルゼンチンで陸上石油探索を ❯❯
ドビック・コロマント・アルゼンチンのセールスエンジニ
まずオジェア氏が強調した多角化の成果が既に見え
eduardo gil
eduardo gil
EMU社の工場は、
ブエノ
スアイレス市街では数少
ない大規模工場の一つ
である
10 metalworking world
eduardo gil
敷地面積3,750km2の
EMU社工場の中には
CNC旋盤が53台ある
CNCリーダーエリアス・
サアヴェドラ氏が機械の
セットアップを行う
EMU社について
と改革に着手、急成長する国内自
動車産業の利点を生かしながら、
大手自動車メーカー向け加工品や
特注品のサプライヤーとして隙間
産業の開拓に乗り出した。
ブエノス
アイレス近郊ビラ・プエーレドンに
ある工場は近代的な設備が整い、
敷地面積は3,750km2以上ある。
将来を見据えてEMU社では農業
車両、石油ガス掘削機械や整形外
科、歯科インプラントといった分野
にも多角化する予定である。
eduardo gil
eduardo gil
EMU社は1930年にBock & Cia
社として設立された。創業当時は
家庭用湯沸かし器の銅コネクタを
提供するため、旋盤や小型フライ
ス盤を使用していた。小さく汚い工
場で4人の従業員で行っていた。
そ
の後徐々に自動車部品ビジネスに
進出し、1943年来の取引は、初代
のフォードやGM工場のサプライ
ヤーの中で最も古い歴史を誇
る。1950年代中半、新たなオーナ
ーであるボシュハイマー一族のも
エンジンブラケット
metalworking world 11
eduardo gil
eduardo gil
EMU社は、
自動車産業
向けにエキゾースト
マニホールドも
製造する
自動車部品のナックル
(写真)
製造プロセス全体が改善された
❯❯ 行う石油ガス会社に対してドリル器具のサービス及びメ
ンテナンスを行っている。
また農業用製品メーカー向け
農業車両用部品の加工、
レーシングカーの会社との契
約、歯科インプラントや整形外科といった分野との取引
まで始めた。
加えてアルゼンチン人は経済危機については熟知して
いる。過去100年の間に10年から15年おきに堪え忍ん
できたのだ。
「他のどこよりもアルゼンチンの
(不況を乗り切る)備
えは万全です。」
とボシュハイマー氏は言う。
「既に何度も
層となった。
(以前の6~7%から上昇。)
「2001年の危機を切り抜けたのですから、
この新し
い危機を乗り越えいずれは強くなることができることで
しょう。」
とボシュハイマー氏は言う。
「2001年危機によ
って我々は柔軟性の増強及び新たな製品や市場の開
拓――最先端の機械を駆使して革新的な加工方法を開
発すること――に積極的になりました。今回の危機には
商機があり、競争力の激しい世界基準のコストを実現す
る熟練したチームが控えています。」
サンドビック・コロマントは当社の将来に大きな役割
経済の好不況を経験していますので、
それは既に我々の
を果たすであろう。EMU社の自動車部品生産に有利な
実際2001年から2002年、
アルゼンチン経済は破綻し
ングを見直している。
戦略、計画、金融に織り込まれています。」
た。政府は全ての銀行口座を凍結し、
アルゼンチンの人
々は約4ヶ月間預金の引出しができなかった。世界史上
最悪の公的債務不履行だった。
その経済破綻の中、
アル
ゼンチンの失業率は32%を記録し、人口の60%が貧困
12 metalworking world
革新策を作ったワーキンググループが、今度は農業及び
石油ガスプロジェクト用機械のツーリングやプログラミ
ジョー・ゴールドマン
emu
課題の概略
ニーズ:
EMU社は自動車産業への依存を減らさなけれ
ばならなかった。
そのために多様な部品加工が
できる適応性のある機械が必要だった。
ソリューション:
加工方法を変更し、
コロミル490、
コロマントキ
ャプト、GC1020チップといった高性能工具を
使用する。
結果:
当初18ヶ月でかなりのコストと年間約6,400
時間の時間を削減。
これにより農業や石油ガス
産業向け部品といった新規ビジネスへの資源
配分が可能になった。
eduardo gil
エキゾーストマニホールド
を取り扱うCNCオペレーター、
クリスチャン・フィシェーラ氏
テクノロジー
クリスター・リヒト
堅実さが
ねじ切り加工の鍵
課題: ねじ切り加工の性能と仕上げ精度
の新たなレベルへの引き上げ
解決策: 新たな工具の安定性と
チップ材種
ねじ切り加工で最高の品質と生産性を得るために
は、堅実性が鍵となる。ねじの品質が十分かつ常に
保たれなければ、費用効率の高い加工とは言えな
い。
いかなる製造条件下でも加工中断やスクラップ
の発生は、生産性や経済性を低下させる。
品質は工具寿命にも直結する。切刃の摩耗が
均一で適したパターンでなければ、ねじの品質が
一番に損なわれる。ねじの荒加工や仕上げ加工
は、鋭く尖った切刃によって行われる。
この間、高速
加工により切刃は非常に高い温度や圧力にさらさ
れる。
よって工具寿命が予想可能で安定しているこ
とが不可欠である。
するためのiLockインターフェースの開発によって
安全性が高められ、工具寿命が長期化し、生産性
が向上した。
コロスレッド266のねじ切り旋削では
他の旋削工程の妨げとならないよう、ねじ切り加
チップが所定の位置に確実に固定される。安定性
ためのパス回数と切込み深さとの間に一貫性がな
躍的な進歩といえる。
工には高い生産性が求められる。ねじ切りを行う
ければ、切刃に過剰な負荷がかかるか、逆にこする
ばかりで切削できない。
いずれにしても欠損が早発
することになる。
に対して脆弱なねじ切り旋削においては、
これは飛
ねじ切り加工においては高温下でのチップの塑性
変形が工具寿命を縮め速度低下の原因となるた
堅実性の成否は、工具や加工の安定性や工具
め、切刃への最大の脅威となる。
さまざまな切削工具コンセプトの安定性を改善
切り加工を最適化するチップ材種GC1125が開発
の切削条件によって常に決まる。
ねじ切り加工で最高の品質と生産性を得るた
めには、
チップがホルダの中でぐらつかず熱で
変形しないことが重要である。誤差のない傾き
角、
山の頂の丸みや平行度を得るためには、
あ
らゆる方向からの切削抵抗に耐性がなければ
ならない。
これに対応するために、
あらゆる材料へのねじ
された。
これは昨今の、
より高い高温硬度に対応す
るために行われた微粒子母材開発の賜である。工
具寿命が安定して長寿命化されると共に、十分に
生かされているとはいえないより高い切削速度に
よって生産性を向上させる可能性を広げることが
できる。
iLockインターフェース
を備えたコロスレッド
266に新たにチップサイズ
16㎜が導入された。
総括
他に類のない新しいコンセプト
iLockインターフェースは、
さまざま
な切削工具コンセプトの安定性を増
すと共に安全性の改善、工具寿命の
長期化、生産性の向上をもたらす。
コロスレッド266に小型チップが導
入されたため、新たな一貫性レベル
の利点はあらゆるねじ切り加工にお
いて享受される。
metalworking world 13
テクノロジー
エレーン・マクラレンス
着陸の成功事例
課題: 航空機ランディングギアを製造する際の技術的要求に応える
解決策:各部品の特徴に合った最良の手法を採用
getty images
航空機ランディングギアの設計や製造には高い信
頼性と構造安定性に加え、重量・コスト面に厳しい
制限が求められるため、非常に高度な技術が要求
される。
このため既存の超高張力鋼である300Mや
Aermet100の性能の改善、主要な構造部品への
チタンの多用、
ブレスなどの残留応力の低い部品へ
の複合技術の導入が行われるようになった。
ランデ
ィングギアに使用される材質は被削性が悪く、
さら
に高精度な要求も求められるため、如何に、
スクラ
ップを出さずに加工できるか、高度なソリューショ
ンが求められる。
ランディングギアは、
一般的に大型で複雑な幾
何学的形状のため長い加工時間を要する。
機能上
不可欠な部品なので応力を避けることも必要であ
る。
特に、
表面硬化や亀裂伝播はさけなければなら
ない。
大型部品では仕上げ面精度が損なわれる恐
れがあるので、
振動も重要な課題の一つである。
全てのランディングギアには重要部分に合った
深いボーリング穴が共通してあり、軟着陸のための
緩衝特性を有する。一般的にランディングギア部品
にはトラニオン、
ピストン、
シリンダー、
ステアリング
カラー、
ドラッグブレース、
トルクアーム、
ギアシャン
ク、
ベルクランクやアクスルがあり、
それぞれの特性
サンドビック・コロマントではランディングギア製造
ディングギアの製造でよくあるボーリングバイト径
中には深穴ドリル加工、外径倣いフライス加工、浅
成功した。
に合った加工ソリューションが求められる。安定し
に必要な総合加工パッケージを提供しており、
その
リングソリューションに対して適切な工作機械を選
穴ドリル加工、
そして深いボーリングの内径旋削に
た生産性の高い製造工程を得るには、正しいツー
択する必要がある。
今日のランディングギアの製造は、
フレキシブル
使われるサイレントツールが含まれている。主要メ
ーカーは内径加工にサイレントツールボーリングバ
で効率的な製造原則に基づいている。旋盤、
マシニ
イトを、
そして外径旋削やフライス加工にその他の
セルが、段取り時間を短縮し最適化された製造設
投資を行ってきた。深いボーリング穴の加工にはサ
ングセンタや複合加工機によって構成される製造
備の一助となっている。
14 metalworking world
工具を一体化する新たな複合加工機に大規模な
イレントツールが最適なソリューションであり、
ラン
が80~300mmに及ぶときの振動を制限するのに
サイレントツールのボーリングバイトは、長い突出
しや機械のセットアップが若干安定性に欠く際のニ
ーズに応じることができる。突出し量が、
バイト径の
10~14倍かそれ以上になるのはよくあることであ
る。一般に超硬補強バイトは突出し量がバイト径の
10倍以上の場合に使用される。
しかし、超硬素材
ケーススタディー:大型部品の大幅な時間短縮
大型民間旅客機の主翼ランディングギア
の主要部品の重量は1,000kgである。
この部品は、
最終寸法が長さ
3,500mm
(3.5m)
、
直径220mmとなる
ようタッキ社製フラットベッド旋盤で荒
加工と仕上げ加工が行われる。
ワークの
材質は、
強度がとても高く(280
~305ksi)低合金真空溶解鋼として特徴
づけられる改良鋼A300Mである。
完成
したランディングギアの長さは約4mであ
る。
の鋼性によって軸方向たわみ量は減少するので、
バイト径8倍の突き出し量であってもかなりの改善
が得られる。
切削速度が比較的遅いチタンや高硬度の
(ロック
ウェル硬さ58)Aermet100などの難削材加工に
おいては、超硬補強されたサイレントツールの利点
は、
パス数が少ないことである。
また工程は荒加工
ツーリングソリューション
工具:コロターンSLクイックチェンジ
(220mmCR)、突出し量はバイト径の
12.5倍
チップ:荒・仕上げ加工-
DNMG15408-PR4225(焼き入れ前)
仕上げ-
DNGA 150408 7025 (焼き入れ鋼)
機械セットアップ:
1~5mmの軸方向切り込み
ワーク速度:93m/分
ワーク除去速度:0.2~0.4mm/回転
220mmCR、
バイト径の12.5倍の
コロターンSL。
これにより従来3シフトを要したランディ
ングギアの加工が1シフトで可能になっ
た。結果、年間製造時間が960時間短縮
され、年間76,830米ドルのコスト削減に
つながった。
と、
コーナR部を含む加工面を完璧に調和させる
仕上げ加工一回に削減される。超硬補強バイト
は、鋼防振バイトと比較して3倍の鋼性があり、結
果として主分力や送り分力が減少し、少ないパス、
で、複合加工機も重要性を増している。
自動工具交
といった利点がもたらされる。
ク・コロマントはこのような機械にサイレントツール
高精度の寸法、
スクラップの削減、工具寿命の改善
サイレントツールボーリングバイトには、
カッテ
ィングヘッド交換の迅速化(コロターンSLクイック
換の柔軟性や安定性の改善を図るため、
サンドビッ
ボーリングバイトを積極的に搭載してきた。
ランディングギアをより軽く、
より剛性を高くす
チェンジを使用)、切りくずの分断による良好な切
るニーズは製造コストの削減ニーズと共に高まって
改善した設計開発が施された。
ク・コロマントは従来の倣いフライス加工に代わっ
りくず処理が可能な高圧クーラントの使用などの
ボーリングバイトを正確にクランプすることは必須
いる。
このような課題に対処するため、
サンドビッ
てミルターン加工を採用している。
これにより切削
時間が大幅に削減されると同時に、
ミルターン加工
である。
セットアップの際、機械やタレットの安定性
の表面仕上げは加工面に対する厳しいニーズに対
とを考慮にいれなければならない。
このような検討
る。
からボーリングバイトの重量に至るまであらゆるこ
がなされないと、許容量以上の振動が発生し機械
応することができるので研削工程を省くことができ
の経済性は低下する。
ランディングギアの加工で最もよく使われるフ
ラットベッド旋盤にボーリングバイトを設置する時
には、工具ポストの重量やサイズを適切に選定し
なければならない。
詳細は
なく一度のセットアップで加工することができるの
をご覧ください。
(英文)
ランディングギアのさまざまな部品を複数では
www.aero-knowledge.com
総括
航空機ランディングギアには、
主に3
つの役割がある。
それらは、
地上で
機体の支えとなること、
離着陸時の
地上走行や滑走のために胴体の安
定を供給すること、
そして着陸時の
ショックを吸収するシステムを提供
することである。
世界最大の民間航
空機は170トンもあるので、
ランディ
ングギアはその機能上の要求に応え
るため最高水準で製造されなけれ
ばならない。
サンドビック・コロマントはこのよ
うな大型で複雑な部品について最
良の手法を取っている。
即ち各部品
の加工結果を最適化し、
個々の特性
に合った工具ソリューションを開発
している。
metalworking world 15
ウィニペグ
での勝利
カナダ、ウィニペグ。カナディアン・ツール&ダイ社は昨今の不
況にも関わらず20%の年間成長率を維持している。その秘訣
は優れた技術や設計で製造ソリューションを提供する顧客本
位の姿勢にある。
CTスキャン
(コンピューター断層撮影)
の経験があれ
長兼最高経営責任者、
ジェームス・ウムラ氏が言う。同
う。
スキャナーの下にある硬くて細長いベッドに横たわ
ョン・ガッツチャフ氏からCTD社を受け継いだ。
「自動車
ば、
それがストレスの多い撮影であることはわかるだろ
らなければならない。少しでも動けば画像が不明瞭にな
氏は有名な投資銀行で働いていたが、2004年に義父ジ
のフレームに似たところがあります。
フレームが機能しな
ければABSやGPSといった洒落たシステムの価値は発
揮されません。
このような医療機器の部品には、失敗は
許されません。」
CTD社は、5年前に医療機器分野に進出した。
「この
るので、
スキャン中は絶対に動いてはならない。
スキャン
ような製品を取り扱うようになったことをとても嬉しく
によって臓器、血管、骨、筋肉についてわかることが命に
思っています。」
と勤続38年のカパッソ氏は言う。
関わることかもしれないのだ。
要求の厳しい産業や遠隔地を専門とするCTD社は、
「判っていると思いますが、患者さんは奇妙な音など
聞きたくないし、異常があるかのような印象を受けたく
この分野での失敗を回避する設計が施された丈夫な部
副社長、
フランク・カパッソ氏は言う。同社は重要な役割
カーなのです。」
とウムラ氏が説明する。
「当社は製造業
品で名声を築いた。
「当社は他の製造業者のためのメー
はありません。」
とカナディアン・ツール&ダイ(CTD)社の
者が望むいかなる特注品でも製造します。」
を持つスキャン機器を固定し、厳しい公差を満たす金属
ベースを製造している。顧客は世界中の医療産業向けサ
最も大きな市場は、
ジョンディアやケース、
ニューホラン
プライヤーであるシーメンス・ヘルスケア社である。
失敗はありえない。
それはカナダのマニトバ州ウィニ
ペグに本社がある家族経営のCTD社のおかげでもある。
「CTの中にはごく一般的な部品が多くあります。」
と社
16 metalworking world
CTスキャンの
可動式土台
ドブランド機器といった北アメリカの農業機器メーカー
である。
ハブ、
ホイール、
スピンドルや他部品を製造する。
北アメリカ、
ヨーロッパ、
ロシアやオーストラリアに大型
❯❯
martin adolfsson
「当社の製造品よりも安い
類似品は常に存在するで
しょう。しかし、同じ価格
で同じ解決策が提供され
ていないことを確信してい
ます。」
社長兼最高経営責任者、
ジェームス・ウムラ氏
農業用ホイールを持つ
溶接工、
エドウィン・ドミンケス氏
metalworking world 17
martin adolfsson
❯❯ トラクターや種まき機、吹き付け機などの農業機械を販
売している。
「農業を行う国であれば、世界中どこでも当
西2,400㎞に位置する。
このレッド川沿いにある歴史的
都市は毛皮貿易をきっかけに成長し、北アメリカの主要
社の農業部品が使用されているのを見ることができるで
な交通輸送のハブ都市となりカナダの穀物取引や農業
CTD社は
「アウトソーシングの受益者」
であると言う。
な
界中でも秘宝のようなところです。」
ウムラ氏は言う。
「気
自身で製造していたものだからだ。
「現在CTD社が製造
材がいるという点では最高です。」
また多くの作業員がフ
しょう。」
とウムラ氏が言う。
ぜならば同社が製造する部品のほとんどは、以前は顧客
している部品は、業務上重要なものなの
機器製造の中心となった。
「ウィニペグとマニトバ州はビジネスをする上で、世
候こそ最適ではないかもしれませんが、有能で勤勉な人
は正規の学校教育を終える前の16歳か
大きな抵抗を示されました。」
CTD社はまた鉱業、石油ガス、工業及
ら同社で働き始め、経営者になるまでに
る。
テキサス郊外にある石油掘削機は高
た。CTD社は厳しい時代にもレイオフに
圧シリンダー部品に頼っている。
「ブーム
るような切り詰めをした上での話です
加工現場のあらゆるポジションを経験し
び医療機器部門への販売を増加させてい
頼ることはなかった。
「壁を三度塗り替え
コストの故障を避けるためにCTD社の油
が。」
とウムラ氏は言う。
リフトの漏れや故障に対処するために石
CTD社の強みは高品質で費用効率の
油サービストラックや油圧シリンダーに、
良い製品を予定通りに納品できることで
時間当たり3,000~4,000カナダドルを
これら油圧シリンダー用
高周波焼入れ鋼ピンには全く
新しい加工手法が必要だった
ィリピンやインドから来ているので加工
現場を
「国連」
だと説明する。
カパッソ氏
で、
これをアウトソーシングすることには
費やしていては、全ての工程が稼働しなく
なってしまいます。」
とウムラ氏は言う。
ウィニペグ南部にある同社の工場は敷
地面積が30,000㎡あり、
トロントから北
ある。
「当社の製造品よりも安い類似品は
常に存在するでしょう。」
とウムラ氏は言
カナディアン・ツール&ダイ社、
う。
「しかし、
同じ価格で同じ解決策が提
社長兼最高経営責任者、
供されていないことを確信しています。」 ❯❯
ジェームス・ウムラ氏
高周波焼入れ鋼ピンが性能を最適化する
カナダ最大の重機部品メーカーが
カナディアン・ツール&ダイ(CTD)社
に油圧シリンダー用高周波焼入れ
鋼ピンの製造を持ちかけた時、
「非
常に困りました」
とCTD社製造部門
副社長、
フランク・カパッソ氏は言
う。
ウエルドコ・ビールズ・マニファク
チャリング社は、
ヨーロッパ、
カナダ
やアメリカで使われている高さ25m
の掘削機用ツイスタバケット技術に
対して最高の性能を求めた。
必要な耐摩耗性を得るためにピ
ンの外側には高周波焼入れ加工を
施し、
内側はピンに柔軟性を与える
ために柔らかくしなければならなか
った。課題は高周波焼入れ鋼に
+/-0.001インチ
(0.025mm)
の寸
法公差で穴あけをすることだった。
ピンの長さは18インチ
(457mm)
で、直径4インチ(102mm)、穴の直
径は1.761インチ
(44.7mm)
だっ
た。
ピンの外側は内側のおよそ2倍の
硬度なので、
ドリル加工での穴あけ
18 metalworking world
は不可能だった。
「ピンの上部と下
部から硬い部分を取り除かなけれ
ばなりませんでした。」
とカパッソ氏
は説明する。
「手持ち式の研削機で
は満足のいく仕上げ精度が得られ
ませんでしたので、加工の必要があ
りました。」
カパッソ氏とサンドビック・コロマ
ント・カナダのチームは、超硬エンド
ミルを使った倣い加工は時間がか
かり過ぎると却下した。
しかし、
ウィニペグにおけるサンド
ビック・コロマントの営業技術担当
者、
トム・グルートは丸い部品に穴を
開けると横の外径がアール形状にな
ることに気がついた。
「そして4インチ
(102mm)
のRA210スタイルミリ
ングカッターと新材種GC1010の
チップでプランジ加工をすることに
よって、高周波焼入れ部分を切り取
り、
スカラップを作ればいいとひらめ
いたのです。」
サンドビック・コロマントの工程
開発チームがその箇所を3Dで描
き、
アール形状を測定した。半径は2
インチ(51mm)を少し下回った。
グ
ルートは4インチのRA210カッター
と新しいGC1010材種のチップを
使い、
ピンの両側のスカラップ箇所
サンドビック・コロマントの
営業技術担当者、
トム・グルート
にプランジミリング加工を施し高周
波焼入れ鋼を取り除くことを提案し
た。
「硬いレイヤーを除去すれば、一
般的な鋼加工をするだけなので標
準的な加工手法を採ることができま
した。」
とグルートは説明する。
その
箇所は、
その後横型マシニングセン
タで90°回転し、穴を開けるのにス
ーパーUドリルを使うことができ
た。+/-0.001インチの公差要求の
中で穴を仕上げるために、
ファイン
ボーリングヘッドR825が使用され
た。
新たなR210 GC1010チップは
切削時間を25%短縮した。
「とても
良いソリューションです。」
とCTD社
工場スーパバイザーのロベルト・ボ
ヴィーノ氏は言う。
「チップの品質に
ついて大変満足しています。」
「サンドビック・コロマントからい
ただいた技術サポートは天下一品
でした。」
とカパッソ氏は付け加え
る。
martin adolfsson
アクスルに取り付けられるボルト
穴部分となる、
タイヤリムの中心
部分を打ち抜く工程に機械式
プレス金型が使われている
metalworking world 19
martin adolfsson
今日の不況にもかかわらず
カナディアン・ツール&ダイ社
は成長を続ける。
溶接工、
クリス・ヒュー氏
20 metalworking world
「当社が機械ビジネス
に従事しているとは
思っていません。
お客さまへ解決策を
提供するビジネス
なのです。」
社長兼最高経営責任者、
ジェームス・ウムラ氏
metalworking world 21
martin adolfsson
加工されたスピンドル
生産プランナー、
レベッカ・ランダル氏と
CNCオペレーター、
ルーベン・パバラン氏
CTD社製造部門副社長、
フランク・カパッソ氏
「サンドビック・コロマントから受けた技術
サポートは天下一品でした。」
CTD社製造部門副社長、フランク・カパッソ氏
CTD社の競争力を高めるために、
サンドビック・コロ
❯❯
マントが念頭におく生産性向上策をカパッソ氏もウムラ
氏も評価している。
材料が高周波焼入れ鋼だったので実際はかなり複雑で
した。」
(囲み記事参照)
経済危機にもかかわらずCTD社は新規顧客との取
「お客さまへ解決策を提供することが当社のビジネ
引を得、20%の年間成長率を維持している。
「農業用製
ています。」
とウムラ氏は付け加える。
「最後には生産コス
マニトバ州の経済もカナダの中で最も多様で安定して
スであることを、
サンドビック・コロマントは理解してくれ
トを最も低くしなければなりません。我々はそれを有能
な技術と設計によって実現しています。」
最近サンドビック・コロマントと新たな切削工具(新た
なR210 GC1010チップ)
を開発する中で、南極向け重
品への強い需要は健在です。」
とウムラ氏は言う。
また、
いる。
景気が良い時も悪い時もお客さま第一主義であるこ
とが成果につながっている。
「当社が機械ビジネスに従
事しているとは思っていません。」
とウムラ氏は言う。
「我
々の商売は、
お客さまへ解決策を提供するビジネスなの
機メーカーへの足がかりを得た。
「特殊チップ材種を必
です。
だからこそサンドビック・コロマントとの相性が良
ノ氏が説明する。
「簡単な課題のように見えましたが、
要としていました。」
と加工現場監督者、
ロバート・ボビー
22 metalworking world
好なのです。」
ゲイル・ヘルガソン
カナディアン・
ツール&ダイ社について
カナディアン・ツール&ダイグループ
(CTD)
は、農業及び工業用製造部門への世界的な
サプライヤーである。主な製品は、
ハブ、
ホイ
ール、
スピンドル、油圧シリンダーと特注加工
品である。
家族経営のCTD社は1947年にジ
ョニー・ガッツチャフ氏によって設立された。
本社と製造工場はウィニペグにあり、工場支
部がマニトバ州のウェスト・セント・ポール―
ウィニペグとウィンクラーにある。
他の専門分野として鉱業、機械ツーリン
グ、医療機器、石油ガスや産業建設があげら
れる。CTDグループの従業員数は400名。社
員の離職率は低く、惜しみない社内研修や
福利厚生が用意されている。子会社として特
注加工用工場のBMWマシンワークス社(在
ウェスト・セント・ポール―ウィニペグ)、金属
鋳物工場のインテグラ・キャスティング社(在
ウィンクラー)
とパワーピン社(連結装置メー
カー)
がサスカチュワン州、
フォートカペルに
ある。
テクノロジー
トゥルッカ・クーマラ
溝入れ加工の問題を解決
課題: 突切り・溝入れ加工における切りくず処理の改善及び
工具アプローチの問題の解決
解決策:最適な工具と先進的な加工知識を得るために
信頼性の高いパートナーと提携
ガスタービンの製造は典型的な旋削加工であり、
ステンレス鋼や耐熱合金(HRSA)といった難削材
が使われ、複雑な突切り・溝入れ加工が行われる。
このような加工での主要な問題は、難しい工具ア
プローチや切りくず処理である。
一定間隔で切削送りを停止させるといった、切
りくず形成を改善するための従来の手法では生産
性が低下する。
しかしサンドビック・コロマントの新
しいコロターンHP(ハイプレッシャー)
は、切りくず
処理を新たなレベルにまで引き上げることのでき
る効率的で生産的な解決策を提供する。
圧力のかけられたクーラントが刃先に正確に噴
射されることによって、刃先を冷却し、浮き上がら
せた切りくずを効率的に除去する水圧のクサビが
形成される。抜群の精度と最高80barもの高圧ク
ーラントが切りくず処理を大幅に改善し、
ガスター
新しいコロターンHPは高圧下で抜群の精度を
誇る
提供する。
良好な接近性は、
コロターンSL70のカ
ビンの製造のように限られたスペースで行われる
ップリングが持つ楕円形の形状、幅広い角度で提
す。
る。
%向上し、工具寿命は最高50%延びる。
またこれ
またサンドビック・コロマントは、
コロカットの標準
交換システムの使用が容易になる。
ダーで、
スクエアおよびフルRチップを提供する。
こ
内径の突切り・溝入れ加工に大きな利点をもたら
コロターンHPの使用により切削速度は最高20
により切りくず詰まりを防ぎ、
ワークや工具の自動
コロターンSL70のブレードやアダプタは、突切
り・溝入れ加工のもう一つの主要課題である接近
供されるシャンクタイプや長短のブレードに起因す
品であるストレートタイプやアングルタイプのホル
れらのチップは、
良好な接近性を要するTスロット
溝入れ加工、
バック加工やぬすみ加工用に設計さ
れている。特別な工具は不要で、標準品のコロカッ
性に対処するために設計された工具に高圧クーラ
トホルダに適応する。
近性の問題は、小規模な研削会社が提供する特殊
システム、
コロターンSL70ブレードやアダプタ、新
ントを供給する。従来、航空機エンジンにおける接
先進的な加工知識に、
コロターンHPクーラント
な改良を施された工具によって解決してきた。
しいコロカットチップを組合せることによって、難削
基本的には専用クリアランスをもった標準工具を
行うための包括的なソリューションとなる。
サンドビック・コロマントのコロターンSL70は、
コロカットチップはTスロット溝入れ加工、
バック加工や
ぬすみ加工のために開発された
材に複雑な形状の突切り・溝入れ加工を生産的に
総括
突切り・溝入れ加工で多く見られる
問題は、非効率な切りくず処理や弱
い接近性に起因することが多い。高
圧クーラントを高精度で供給するこ
とによって、切りくず処理の問題を
効率的に解決することができる。
サ
ンドビック・コロマントの新しいチッ
プ、
ブレードやアダプタは、
良好な接
近性を要する加工に対して生産性
や経済性の高い解決策となる。
また
工具を特殊改良する必要もなくな
る。
metalworking world 23
お静かに!
新規設備へのサイレントツールの標準装備が
投資回収を速やかにする
1960年代にサイレントツールコンセプトが導入されて以降、製造
業者は長い突出しで加工する際の振動を防ぐことができるように
なった。
現在このコンセプトは、多くの新しいフライス加工機、旋盤や複合
加工機に取り入れられ、
その結果投資回収期間が大幅に短縮さ
れた。
「今日メーカーは、
ある部品を生産するための工作機
械だけでなく、製造プロセスをも購入します。」
と、
ノルウ
ェーのトロンヘイム市を拠点にするサンドビック・コロ
マントサイレントツールのマネージャー、
ニルス・ルード
は述べる。
多くの製造業者は、粗悪な表面仕上げ、不十分な精
度、生産性の低下、
チップ摩耗や機械の騒音といった振
動が引き起こす不具合を経験済みである。
「その結果プ
ロセスの効率は落ち、品質も下がります。」
とルードは言
う。
「最終的には投資回収に影響を及ぼすのです。」
工作機械メーカーが機械や切削の問題を解決する
中で、
サイレントツールの搭載がますます増加している。
「自明のことです。」
とルードは語る。
「サイレントツ
ールは、物理的な限界点に至った時に、信頼がおけ、
ま
た見通しの立つプロセスを持っています。
さもなけれ
ば、
プロセスのパラメータを下げ、切削速度と送りを落
24 metalworking world
「サイレントツールのニーズは、加工に
とし、時間のかかる別のプロセスを行うこ
とになります。
それは結局、生産性の低
左右されます。」
とルードは説明する。
「深
ます。」
いフライス加工などのように良好なプロセ
穴のボーリング、内径旋削、突出し量の長
下、
ひいては資本回収の長期化を意味し
スコントロールが必要な場合は必ずあり
ノルウェーの発明家、
ローリッツ・アン
ドレソン氏によって1969年に発表された
ます。」
命を起こした。以来旋削工具は改良が重
から防振工具またはサイレントツールを
「旋削やフライス加工の最初の時点
防振ボーリングバイトは、旋削の分野に革
ねられ、
その適用範囲は仕上げボーリン
グ/荒ボーリングのほか、
フライス加工に
ニルス・ルード
まで広がった。
今日サイレントツールと呼ばれるこの独特のコンセ
プトは、振動の問題を最小化する内蔵式防振機構を特
徴としている。
サイレントツールは、非効率なレベルにプロセスの
パラメータを落とすことなく振動を大幅に削減する。
利用すれば、最初から生産性の高い加工
を行えるでしょう。」
と続ける。
「生産性ブ
ースターを利用しつつ、同時に競争力も
向上します。」
現在、
サイレントツールの技術が利用されているの
は主として航空宇宙産業である。
サンドビック・コロマン
トは、
ランディングギアの内径旋削用工具の世界No.1
メーカーである。
ジェットエンジンシャフトにおいても対
30
30
25
25
20
20
15
15
10
10
5
kjell eriksson
35
切りくず排出量(cm3/分)
35
5
0
ボーリングバイト:
防振ボーリングバイト
(ショートタイプ)
鋼バイト
防振ボーリングバイト
(ロングタイプ)
超硬バイト
超硬補強防振ボーリングバイト
長い突出しのある
加工において、
サ
イレントツールは、
生産性を上げつつ
最良の品質を提供
する。
この表は、各種
φ25㎜のボーリ
ングバイトの生産
効率を示す。
0
3
3
4
4
5
5
6
6
7
静かな技術
サイレントツールは、
内径旋削加工、
フラ
イス加工、
ボーリング加工、穴あけ加工
に対応する製品群である。
これらの製品
は、防振機構を内蔵している。振動の発
生と同時に、特許を受けた防振機構が不
要な動きに反応し、防振型ツールホルダ
を安定作動させる。
必要に応じ、
お客さまのニーズに合わ
せた特殊な防振ボーリングバイトも生産
可能である。旋削用はφ10~600㎜に
対応している。
応している。
いずれの分野においてもサイレントツール
を大胆な方法で使っているとルードは言う。
「最近では──」
と続ける。
「メーカーは、”スマート
7
8
8
9
9
10
長さ:直径比
10
11
11
12
15
に連携する方式をとっています。」
とルードは言う。
「た
可能な突出し。
あるいは、部品の奥深くの直径を検出
し、
そのデータを比較対照用に返すことの出来る工具
の前に配置されたセンサー。
この産業のより基本的な
「生産性ブースターを利用しつつ、
同時に競争力も向上します。」
部分でさえも、
さまざまなことがより洗練されつつあり
ます。」
サイレントツールの認知度はまだ低いが、
より深く、
発明はより一般的なものとなるだろう、
とルードは言
「サンドビック・コロマントの一員として、正しい工
具の適用が生産性と競争力を向上させる情報を、世界
中の卸売業者や営業担当者に提供することができま
す。」
とルードは言う。
「多くの加工、製造会社にとって、
のツールが同時に準備されていなければならないこと
ヘンリック・エミルソン
dsf sdf sd fsfsd
15
とえば、
マシンコントローラーによって制御される調整
fsdf sdf一般的になりつつある。
sd sdf sd sd fsdf
加工機は、
これは、停止や再ロ
ードにかかるダウンタイムを最小限にするために全て
14
「我々は洗練された加工方法を提供し、
サイレンツ
う。
sdfsdfsdf sdfsdfsdfsd
内径及び外径加工が一度のセットアッ
プでできる複合
14
ールを新機能として搭載する工作機械メーカーと密接
産効率を上げることなので、各社はこの理念の支えと
旋削加工、
部品の取付けやクランプ、
sdf sdf sdfフライス加工、
sdf sdf
13
載は増えつつある。
より長い加工をに手を焼いている企業にとっては、
この
なるような設備を求めています。」
13
を意味する。
このような機械へのサイレントツールの搭
生産”──つまり、
セットアップやクランプの時間を短縮
した、完璧な切削加工を求めています。最終目的は生
12
サイレントツールは最高の選択肢です。」
metalworking world 25
Richard surman
米国の石油関連大手、
キャメロン社のルーマニア
工場で行われるサッカー
ロッドの最終検査
沈黙は金なり
ルーマニア、カンピーナ。2005年、米国の石油関連大手のキャメ
ロン社がルーマニアの石油ガス部品工場を買収し、
その設備のア
ップグレードや従業員の再研修を行った。そこで行われた一つの
工具ソリューションは大きな成功を収め、グループ全体で適用さ
れるようになった。
ルーマニアのカルパチアン丘陵地帯、
ブカレストから北
る掘削・製造装置の主要メーカー、
キャメロン・ルーマニ
は、木製ロッドやオージェ式のドリルビットを使用して
1861年に掘削された。
に100㎞のカンピーナという小さな町に近づくと、明る
ア社の本拠地である。
が連なっているのが見える。
これは、
ルーマニアがヨーロ
レシジョン・キャスト・パーツ社から同工場を買収した。
エネルギー産業に加えてルーマニアには確立した金属
取の歴史を持つ国であることを思い出させる光景であ
工場では100年以上石油ガス産業向けの専門機器を
ベアリング、
自動車、航空宇宙産業や鉄道、
そして国内石
い色でペンキが塗られている小型移動式ビームポンプ
ッパの中では重要な産油国であり、活発な石油ガス採
る。
この町は、石油・天然ガス産業向けにサッカーロッ
ド、仕切り弁、油井頭部部品、地下ポンプなどを供給す
26 metalworking world
2005年、
アメリカのキャメロン社がルーマニアのプ
国や民間企業などさまざまなオーナーシップのもと、同
製造してきた。
ルーマニアは、工業用原油を生産した世
界最初の国の一つである。
ルーマニアで初めての油井
切削の伝統があり、蒸気タービンや風力発電機用部品、
油ガス産業向けの部品を製造してきた。
キャメロン社による工場の買収によって、人員、工具、
richard surman
キャメロン・ルーマニア社の
製造エンジニアリングマネージャー、
ソリン・ステファン氏
カンピーナ工場の従業員
数は約800名。仕切り弁
が搬送される
機械や設備などに対して幅広い投資が行われた。広範
り、加工に対する安全、
メンテナンス、機械操作方法、
オペレーターはCNC旋盤の取扱いを習得した
(工場内
この方式の採用によって我々の仕事の質は常に高めら
囲に及ぶ社内研修プログラムが実施され、汎用旋盤の
に約60のCNC旋盤が稼働中)。製品転換、新しい材料
や工具、
そしてマーケティングに対するダイナミックなア
れています。」
ステファン氏によると
「それゆえに、最高の
コロマントの工具を使用してきた。
「ダイナミックでとて
合された石油ガスグループであるペトロム社、
トルクメ
として、深穴ボーリング加工で生じる潜行性の
「ビビリ」
ニスタンの国営石油会社であるトルクネフト社、
サウジ・
アラムコ社やPDOオマーン社などがある。
キャメロン社の製造エンジニアリングマネージャー
であるソリン・ステファン氏は1975年以来、同工場で働
いている。今では同社の製品はオマーンやサウジアラビ
アの砂漠や、紅海やアラビア湾内の水中など、多様な環
も生産性の高い関係です。」
と言う。両者の関係の一例
の問題を克服したことがあげられる。突出しが長いほど
工具の先端に振動が伝わりやすくワークの表面にビビ
リが生じ、厳しい寸法精度が失われ、表面仕上げが損
なわれる。
サンドビック・コロマントのセールスマネージャー、
コン
境下で使用されているとステファン氏は言う。
スタンチン・ステファンは、
キャメロン社が工具先端部の
最高水準の信頼性が求められます。」
とステファン氏は
ロン社は、切削工具の摩耗が激しく、仕上げ面精度も悪
「これらの環境は厳しく、時には腐食性も高いため、
言い、加工に対する同社の考え方を説明する。
「我々は
キャメロン社の素晴らしい成功事例方式を生かしてお
2005年、米国のキャメロン社はルーマニ
アのプレシジョン・キャスト・パーツ社を買
収すると同時に高いレベルの人員、設備
及び製品開発を取得することができた。
同社は現在カンピーナ工場に800人の従
業員を抱える。本年近隣のプロイツィの
新規工場に6,300万米ドルをかけて設備
投資をする予定で、
その後の総従業員数
は約1,100人になる。2007年の同社の
売上高は約1億2,000万米ドルだった。
工具しか通用しません。」
このため、同社はサンドビック・
プローチによってキャメロン社の他部門や外部市場へ
の売上は拡大した。取引企業の中には、
ルーマニアの統
キャメロン・ルーマニア社
工具、検査などをマニュアル化する方式を採っています。
振動を解決する方法を探していたと回想する。
「キャメ
く、機械音がうるさいことに苦慮されておられました。」
と言う。
「ノルウェーにあるサンドビック・コロマントのサ
❯❯
metalworking world 27
防振バイトを機械に装備する
CNC旋盤オペレーター、
ストイカ・ルシアン氏
❯❯ イレントツールチームにコンタクトを取り、サイレントツ
ールの製品スペシャリストのスタイナー・ヘッゲストがキ
ャメロン社を訪れサイレントツールの製品や利点を紹介
しました。」
後にサイレントツールである防振バイトはキャメロン
社の世界中の拠点で紹介され、同社の成功事例の一つ
となった。
ワークの廃棄量が減少し、生産性は向上、加
工現場周辺の騒音も改善した。
キャメロン社のソリン・ステファン氏は、昨今の世界経
済危機の課題を承知している。
「石油ガス産業の要求に
応じるためには、競争力を維持しなければなりません。」
と言う。
「決して楽な時期ではありませんが、
サイレント
ツールなどによって加工水準を改善することによって生
産性を向上し、
ワークの廃棄量を減らし、CNCオペレー
ターにとってより快適な職場環境を提供することができ
るようになります。」
ステファン氏は製品品質、
ずばぬけたエンジニアリン
グ上の解決策、素晴らしいアフターセールス体制、実証
ルーマニアは工業用原油を世界で最初
に生産した国の一つ。最初の油井は
1861年に木製ロッドとオージェ式のドリ
ルビッドで掘削された
された原油採取技術といったキャメロン社特有のセー
ルスポイントをあげる。
「その全てが競争の過熱するな
かでもでも当社が市場の優位に立つ要因となっていま
す。」
石油ガス関連メーカーのリーダーとしての地位を維
持することは、
ステファン氏によると
「生産性や品質の改
善をもってお客さまのニーズに応えることです。」
リチャード・サーマン
安定した加工
「米国のキャメロン社がプレシジョン・キャ
スト・パーツ社を買収した時には、我々は既
に取引関係にありました。」
とサンドビック・
コロマントのコンスタンチン・ステファンは
言う。
「17年来のパートナーです。今日で
は、
ルーマニアでの主要なお客さまの一社
です。
当社は、
コロターン107、
コロターン
SLやT-Max Pセラミックチップなど、
さま
ざまなボーリング工具や旋削チップをキャ
メロン・ルーマニア社に提供しています。」
2005年、
キャメロン社では振動によっ
て工具先端部が仕上げ面へ与える影響に
ついて苦慮していた。
「切削工具の長い突
出しによってびびりが生じ、仕上げ面品質
が低下し、不快な機械音が生じていた深穴
ボーリング加工での振動を排除することが
我々の課題でした。」
とステファンは言う。
サンドビック・コロマントが提供する優れ
た防振工具、
サイレントツールが解決策と
なった。
「サイレントツールの専門家が派遣さ
28 metalworking world
れ、防振バイトが提案されました。」
とステ
ファンが続ける。防振バイトの設置は大成
功だったためキャメロン社はカンピーナ工
場でその使用を続け、世界中のキャメロン
社の工場でも成功事例として使われるよう
になった。
メーカーの機械投資へのサポートを行
うサンドビック・コロマントのスペシャリス
ト、
ソリン・バラバンが防振バー技術につ
いて説明する。
「長いボーリングバイトで
生じる無用の振動を排除するための最良
のソリューションは、
サイレントツールを使
うことです。
サイレントツールシステムで
は、
ボーリングバイトに内蔵されている受
動的な振動吸収体が、加工プロセスで生
じる運動エネルギーを吸収します。」
穴工具の最高の性能を引き出すために
は、
カッティングヘッドを防振バイトに合
わせることが重要であるとバラバランは指
摘する。
サンドビック・コロマントのセールスエンジニア、
コンスタンチン・ステファン
(右)
と
キャメロン社のマリン・ヴィオレル氏(左)
と
イリー・ガブリエル氏。
quick time
文:キャロル・アキヤマ 写真:ケン・ストライトン
稲見昌彦氏、37歳。世界で活
躍するデジタルメディア領域
における創造的リーダーを育
成するため2008年に設立さ
れた、慶應義塾大学大学院の
メディアデザイン研究科の専
任教授。稲見氏はインタラク
ティブ技術、複合現実感、
ロボ
ット、物理メディアの専門家で
ある。
透明人間
子供のころに夢見た透明人間が稲見教授のマジックスーツで実現。
漫画やアニメの世界にしか存在しな
いと思われてきた透明人間──稲
見教授が発表した
「光学迷彩」
の研
究成果は世界中のメディアの注目を
集め、TIME誌のCoolest Inventions of the Yearを受賞すること
になった。
マント部分が
「透けて見える」光学迷
彩。実は、再帰性反射材が塗られた
マント部分に、背景を撮影したビデ
オカメラの映像を投影しているの
だ。
斜めに置かれたハーフミラーによ
って、
プロジェクターからの映像は
反射してマントに投影され、見る側
からはガラス越しに
「透明人間」
が見
えるという仕組みだ。
光学迷彩は子供の遊びではない。
「技術的な応用は、
さまざまにあり
ます。例えば自動車をバックさせると
き。道路や塀、電柱などの障害物は
そのままに、車の後部部分のみを“透
けて”見せると、視界がはっきりして
後進の安全性を高めることができる
でしょう。」
と語る稲見氏。
「現在、車
の内部が透明に見える実験を自動
車メーカーと共同で行っています。」
また医療用途として、特定の骨や臓
器を残して“透かせる”技術も検討さ
れている。
これが実現すれば内視鏡
手術などで真価を発揮できる可能
性がある。 彼にとっては、
五感にあふれる現実
の世界は無限の研究材料となってい
る。
たとえば、
口唇部触覚と呼吸抵抗
を用いて、
吸入感覚を提示する新た
なインタフェース
「SUI
(Strawlike
User Interface)
」
を利用すれば、
ラ
ーメンやポップコーンなどを吸い込
む気分にもなれる。
また、
「SmartTool」
と言う開発は
電気抵抗を計測するセンサーを装
備したロボットアームである。
センサ
ーからのフィードバック次第で、水と
油や、
ゆで卵の黄身と白身の境界面
を感触で区別することができる。応
用としては、例えば医療現場で、
ガン
の患部以外の正常な組織だけを”固
く”表示すれば、
これまで人の手で行
っていたよりもはるかに安全にガン
を切除できるようになるだろう。稲
見教授の世界は、
いわばSFファンタ
ジーと現実とのインターフェイスな
のである。
getty images
ジャングル
の秘密
彼らは、絶滅危惧種保護のため人跡未踏の地に分け入る、
母なる自然の特殊部隊。
30 metalworking world
getty images
k spider
Atewa hooded tic
a)
ew
at
s
(Ricinoide
は3億年
チック・スパイダーの存在
しかし
。
遡る
まで
紀に
以上前の石炭
アフリカ
と西
リカ
アメ
中央
では
今日
ほん
林に、
の原始状態の熱帯多雨
っている
き残
が生
の種
ぎり
とに
のひ
oded tick
にすぎない。Atewa ho
されたこ
発見
年に
08
20
、
rは
de
spi
る。
であ
の仲間の新種
Atewa predat
ory katydid
(Amyttosa in
sectivora)
バッタの親戚のこ
のキリギリスは、非
常に珍しい生殖行
動をとる。メスは
地上に卵を産み落
とす。
「この卵は外
見が種子そっくりで
、
アリは本物の種
子と共に集め、巣に
持って行くので
す。」
と、2008年に南東
ガーナの熱
帯多雨林でこの変
わった昆虫を発見
したピオトル・ナス
クレッキ氏は語る
。
「キリギリスはそこ
で孵化し、
アリの
存在によって捕食
者から保護される
のです。」
らしい種を見つけています。」
と言う。
「これは、我々がその地域を伐採地で
はなく国立公園にするべきであることを政治家に分からせる材料になるで
しょう。」
ビーラー氏によると、世界中には300~3000万の種が存在するとい
うのが通説である。
そのうち命名・記述されているのはわずか150万種ほ
1800年代は発見の時代であった。恐れを知らぬ冒険家たちは海を渡り、
どである。
駆り立てたのは、知的好奇心とそれに劣らぬ虚栄心であったが、彼らこそ
は、
いずれも、何百万もの未知の種が存在すると言われている地域であ
見知らぬ場所や見慣れぬ動植物を発見・記録していった。
この時代の男を
が新世界を広く光で照らしていったのだ。
「このような探検のありかたは、
すっかり支持されなくなりました。」昔
ながらの冒険家、
ブルース・ビーラー氏は言う。
「あらゆる探検はし尽くさ
れていると思われているようですが、
とんでもなく見当はずれなことです。」
と言う。
コンサベーションインターナショナルの研究主幹で鳥類学者のビーラ
ー氏は、人里離れた土地で発見される野生生物を記録することに、研究
者としてのキャリアをかけている。
「私たちは、新種や希少種、
それに素晴
熱帯のアンデス山脈、
アマゾン西域、西アフリカ、
およびインドネシア
り、
さまざまな病気の治療に応用できる医薬品原料が眠っている可能性
がある。
ビーラー氏はまた、熱帯生物学の分野で米国ニュージャージー州のプ
リンストン大学から博士号を受けており、氏自身も新種を発見して命名し
たことがある──ニューギニアで発見したキホオミツスイの一種を、彼の
妻の名であるキャロルにちなみ
「Melipotes Carolae」
と名づけた。
ビー
ラー氏は笑いながら
「めったにないことですよ。
そうですね、私にとって
は、35年の中で一度だけのことです。」
と話した。
❯❯
metalworking world 31
Melipotes carolae
このキホオミツスイ独特の特徴は、
顔の両側にペンダントのようにぶら
下る肉垂である。
この鳥は西ニュー
ギニアのパプア行政区で2005年
に科学者ブルース・ビーラー氏に発
見され、文書化された。
この小さな
領域以外での観測例はない。
コンサベーション
インターナショナルの
研究主幹で鳥類学者の
ブルース・ビーラー氏は、
人里離れた土地で発見
される野生生物を記録す
ることに研究者としての
キャリアをかけている。
❯❯ 同僚のピオトロ・ナスクレッキ氏にとっては、新しい種を発見するのは、も
う少し容易であった。同氏はポーランド人の分類学者で、現在、
マサチュ
ーセッツ州のハーバード大学を拠点にしている。
ナスクレッキ氏は長年に
わたり、主に西アフリカで昆虫を研究してきた。
「昆虫界では、
まだ多くのものが未発見のままとなっています。」
と言
う。
「西アフリカの熱帯多雨林、
または未開拓の熱帯地域は、調査を実行
すればほぼ確実に新しい種を見つけることが出来ます。
ただ、
これら多様
さを極める動物相を特定し分類するには時間がかかります。」
彼らは、
「Rapid Assessment Programmes(生物多様性短期集
中調査:RAP)」
という名の調査探検に時間を割く世界中でわずか200
~300人しかいない科学者の中の2人である。
「RAPは、科学者の特殊部隊です。」
ビーラー氏は言う。
「”Rapid(短
期)”とはほんの1ヶ月程度のフィールドワークのことで、私たちはそのレポ
する。
『センティネラ型絶滅』
の名は、
エクアドルの一地域センティネラ尾根
に由来する。1978年、科学者によって90種もの──新種の野生生物と
してはきわめて莫大な数の──植物が発見されながら、生物学者が誰も
詳細に記録できないうちに農地にされてしまった土地である。
そして、
この
風土特有の希少な植物相は永遠に失われてしまった。
「このような事例は大規模に発生し続けています。」
ナスクレッキ氏は
語る。
ビーラー、
ナスクレッキ両氏は、
だからこそRAPの仕事はますます緊急
性を帯びていると受けとめている。
しかしまた、世界の果てに行くのは、非常に魅力的なことでもある。
「それは純粋に楽しみでもあります。」
とビーラー氏。
「これらは世界で
ートを1年以内に提出します。」
最も美しい場所です。──綺麗で、新鮮で、平和なところなのです。」
だが、”Rapid”にはもう一つの意味があるという。
すなわち、”Rapid(迅
がある。
かねないような森林伐採などの活動を許可する前に、
その土地に何があ
は述べる。
「しかし、外国人として、政治的側面には慎重を期さなければ
速)”な介入のことである。重要なのは、地方自治体が生物多様性を破壊し
るかを示すことだという。
「我々は、科学的に記録されることなく種が絶えてしまう
『センティネ
32 ラ型絶滅』
と呼ばれる絶滅を防ぎたいのです。」
と、
ナスクレッキ氏は説明
metalworking world
しかしながら、科学者が対処しなければならない多数の政治的問題
「私たちは実験室での分析のために組織を収集します。」
ビーラー氏
いけません。”科学的帝国主義”や”バイオピラシー(生物資源を巡る盗賊
行為)”といった問題です。
Mallomys
まだ文書記録化が済んでいないた
め、
このカエル(パイエラ産の小さな
カエル)は
「潜在的に新しい種」
とし
て扱われている。
しかし、
その長い
腕と指は極めてユニークである。
そ
れはパプアニューギニアの生態系
に富む森林の林床、地上5メートル
以上の所で発見された。
Mallomysはネズミ科の齧歯動物
に属している。2005年にブルース・
ビーラー氏のチームは体重1.4キ
ロの巨大な新種のネズミを発見し
た。
より正確に言うならば、
そのネ
ズミが、彼らのチームを発見したの
だ。科学者達のキャンプで残飯を漁
っているところを見つけられた。
持続可能性(サステイナビリティ)
を中心に
サンドビックグループは、持続可能性の発展と環境負荷の低
減に取組み続けている。
これらの努力により、
当社は、2つの
ダウ・ジョーンズサステイナビリティ・インデックスに選定さ
れた。
世界中の熱帯雨林にある貴重な資源は、
そこに位置する──多くは
貧しい──国々の財産です。
もし特効薬が発見された場合には、
その薬
の利益が地元の人々と、
その生物多様性を持つ国々に、確実に行き渡る
よう保証したいと思っています。
いつかは、科学者の探検する新天地がなくならないのだろうか?
「空白地帯は、確かに減りつつあります。」
ビーラー氏も認め
る。
「しかしまだまだ多くのものが未発見のまま残されていま
す。」
空白地帯の多くは、
インドネシアなどの孤立した山岳
地帯や、南アメリカの熱帯雨林地域にある。
「鳥類学者は南米で最も多くの鳥の新種を毎年
発見しています。」
と、
ビーラー氏は言う。
ただし、
こうした探査は決して安くはない。RAP
遠征のための人材や予算がネックであると、
ナスクレ
ッキ氏も認めている。
「無数の新種が未だに存在することを考えれば、
ずっと多くの分類学者とフィールド生物学者が必要
です。
しかしそのような仕事は極めて少なく、
また労
働条件も決してよくはないのです。」
ヘンリック・エック
ダウ・ジョーンズサステイナビリティ・
インデックスは、世界中の持続可能性
を重視する企業の業績を追う。
サンド
ビックグループは、
その銘柄の一つで
ある。
「当社は原料やエネルギーの消費
量と二酸化炭素排出量の削減に力を
入れています。」
とサンドビックグルー
プのCSR(企業の社会的責任)事業の
責任者、
ボー・バーグランドは言う。
1862年にヨーラン・フレドリック・
ヨーランソンがサンドビックを設立し
た当時、彼の目標の一つは、小さな都
市サンドビケンとともに成長するとい
うことであった。
「その点では、今日”持続可能性”と
して知られていることは、
常にサンドビ
ック文化の一部であったと言えます。」
とバーグランドは言う。
「私たちは、
グ
ループ内で同一の高い水準の規格を
持つべきだと信じています。
また、
ある
地域の環境に対する不十分な法規制
を悪用すべきではないと考えていま
す。」持続可能性に関する最新のレポ
ートでは、環境負荷を更に低減するサ
ンドビックグループの目標を提示して
いる。
以下がその例である:
・(売上高あたりの)二酸化炭素作
用を2012年までに10パーセン
ト削減。
・(売上高あたりの)エネルギー使
用量を10パーセント抑制。
・2010年内に塩素系溶剤に代わ
る技術の採用。
「当社には世界中にタイプの異な
る約150の生産拠点があります。
目標
に応じて仕事を改善するのは拠点次
第です。
そして、
そのフォローアップ
は、私のチーム次第なのです。」
とバー
グランドは言う。
このような努力の甲斐あってサンド
ビックグループは2008年に栄誉ある
2つのダウ・ジョーンズインデックス、
サステイナビリティ・ワールド・インデ
ックスとユーロストック・サステナビリ
ティ・インデックスの座を獲得した。
metalworking world 33
getty images
Albericus sp.
テクノロジー
クリスター・リヒト
最先端のアルミ用
のフライス加工
課題: スローアウェイチップ工具を使用したアルミ製航空宇宙部品加工の
性能および効果の向上
解決策:表面仕上げ精度や動力効率を改善する新たな切削工具を設計、
製造するために、斬新で高度な技術を開発
航空機フレームのようにキャビティ、
ショルダー、
エ
ッジの荒加工や仕上げ加工を要するアルミ部品加
たなブレーカ機能が備わったチップの組合せが生
まれた。
工には良い仕上げ加工面を得る為に優れた切りく
・ 刃先をよりシャープにしながらも強度を保つ最
は超硬ルータの加工領域であったが(刃先がシャー
・ 加工開始時のショックを緩和する滑らかな刃先
ず排出能力が必要である。従来これはハイスあるい
プでポジティブ)、
スローアウェイチップカッターの
もたらす追加的利点の可能性が指摘されている。
ス
ローアウェイチップの工具は剛性が高く、柔軟性が
あるので工具の経済性が良い。加えて、再研磨の必
適化されたすくい角
洗練されたモデルや手法の開発の結果、特徴あ
るチップが開発された。
その内いくつかは別途特許
を取得した。一例としてチップの刃先の逃げ面に1°
で、幅0.1mmの逃げ面ランドがあげられる。
(以前
は0.6mm以上の精度を得ることは不可能だった。)
・ 接触摩擦が小さくなり、切りくず飛散の方向が
このランドは他に類をみないものであり、振動が発
・ 振動傾向を防ぐ主切れ刃逃げ面ランド
ップブレーカやカッター径に合わせて入念に開発
改善するブレーカの形状
生する度にそれを防ぐバッファーとして機能する。
チ
要がなく、切りくず排出量は高い。
しかしアルミ加工
においてソリッドカッターのへリックス
(ねじれ)
が
もたらす比較的小さな切削抵抗やソフトな加工開
始は、
スローアウェイチップの工具では得られない。
スローアウェイチップの切削速度は速いので高動力
が必要となる。
特にいくつかのアルミ材での仕上げ加工のアプリケ
ーションでは、
スローアウェイチップの刃先が鈍く、
切削するというよりはむしろ引き裂くとみなされて
いた。切削抵抗により、小~中径カッターは径方向
にたわむ傾向があり、切込み部と壁面の間にミスマ
ッチが生じていた。
サンドビック・コロマントは工具開発のために、
新たな研削や測定技術さえも開発せねばならなか
った。
チップブレーカの設計の一環として行われた
徹底的な計算、FEMシミュレーションやテストなど
の新たな研究開発手法によって、
これまでにない新
34 metalworking world
コロミル790はアルミの荒加工及び仕上げ加工用の先進的
なエンドミルである。PVDコーティングチップを使用するこ
とによって鋼の径方向フライス加工を行う高性能仕上げ工
具としても使用することができる。
新しい技術を可能にした洗練されたモデル
中~大径カッターについては、従
来スローアウェイチップカッター
がソリッドカッターに対して優位
であった。
しかし、刃先は比較的
鈍く公差に対する要求は低かっ
た。性能の低さの要因は、鈍い刃
先がシャープに切削するのでは
なく切りくずをはぎ取っていたこ
とにあった。類のないコロミル
790スローアウェイチップは新た
な切削を可能にするために開発
された。
新たなコロミル790スローアウェイチップを
使用した際の切りくず
新たなコロミル790スローアウェイチップのシャープな刃先の裏には、
斬新な計算モデル、
シミュレーションや製造テクニックがある
や試行が行われたが、
この重要な特色こそがチッ
プ製造上の問題の原因となった。
径方向フライス加工における工具のたわみの主な
要因は径方向抵抗である。入念に設計された主切
れ刃逃げ面ランドは相当の振れ止め効果があり、
工具のびびりを引き起こす力振幅を防ぐことが証
明されている。大きなすくい角と鋭い刃先とを組合
せることにより、
かなりの消費動力の削減が実現し
た。
主分力が工具の消費動力を左右する。加えてア
ルミの融点は低いため、切削箇所の温度は超硬チ
ップに影響を与えるほどには上昇せず、高速切削
が可能になる。
しかしスピンドル速度が速くなると
消費動力も大きくなるので、抵抗の削減は有用で
ある。新たなチップブレーカは明らかに消費動力の
削減につながった。
エンドミルの加工面に向けられた、薄肉構造に
かかせない軸方向の切削抵抗も大幅に削減され
た。分断されていない切りくずの厚さは送りと比例
し、切削抵抗の影響を強く受けるにもかかわらず、
これらの改善点が特定の刃当たり送り速度と無関
係であることが証明された。
コロミル790カッターは当初切りくず排出量を
高めるために開発された。
チップを正確且つ安定
的に位置決めし固定するiLockコンセプトによって
総括
アルミ用スローアウェイチップエン
ドミルには、刃先をより鋭くポジティ
ブに改善すること、有効な加工始
め、切りくず形成の改良、切削抵抗
の最小化など、
さまざまな改良の余
地があった。新たな研究開発やチッ
プ製造技術により、
コロミル790の
新世代チップ刃先が開発された。
ア
ルミの荒加工及び仕上げ加工の生
産性は向上し、
より効率的に高い品
質のワークが加工できるようになっ
た。
典型的な航空宇宙産業用アルミ製部品。
コロミル790による加工が最適
アルミ加工に必要な高速加工が実現できる。
metalworking world 35
outlook
より軽い将来
風力エネルギー:
回転翼の羽の大型化に伴い、
メーカーは
強度を保ちながら重量を軽減する方法
を探さねばならなくなった。
その答えは、
羽根やその他の部品を複合素材で製作
することである。
研究開発。製造業
者は、複合素材の
利用により機能の
充実と軽量化を図っ
ている。以下、複合
素材が重要な役割
を果たしている分野
を紹介する。
主翼、水平尾翼、
垂直尾翼
ウイングレット
中央翼
航空宇宙産業:
航空宇宙産業では積載量を
向上させつつ排出量を低減し
ているため、航空機の構造材
の半分以上が複合素材にな
ることが予想される。
36 metalworking world
エンジンドアと
ノーズ
難削材加工
炭素繊維強化プラスチック(CFRP)は、鋼より剛性が強く、
アルミニ
ウムより軽く、
そして硬度はチタンと同等である。一方多くの複合素
材同様、難削材である。公差と生産性の向上を実現するため、
いく
つかの改良を加える余地がある。
詳しくは www.sandvik.coromant.com/jpをどうぞ。
医療機器のメッカ
医療。病院は──特にヨーロッパと米
国では──医療機器のコストを押し下
げるために協力体勢を強化してきてい
る。
そのため医療機器メーカーは、特
に、
チタンや最新の
合金などの難削材
を使用した製品に
ついて、
より新しく
より効率的な生産
方法を見つけなけ
ればならない。
南ドイツのトゥッ
トリンゲンという
ルドガー
小都市では、約
シュナイダー氏
300の医療技術会
社が30,000種類
を超える手術器具を生産しており、医療
技術産業では世界で最も重要な地域と
なっている。
「約2,000人の従業員を擁し手術器
具とインプラントで世界的に有名なエー
高速列車:
軽量化、空気力学的形
状といった要求への
適応性ゆえに、複合素
材は高速列車の本体
パネルに最適である。
Kjell Eriksson
準備万端
自動車産業:
自動車メーカーは、排
気ガスと燃費の双方を
低減化する必要があ
る。
自動車の重量は複
合素材の使用によって
約400キログラム
(30
%)抑えることができ
る。
複合素材の衝撃吸収
特性は、
自動車のボデ
ィパネルや骨組の材料
に最適である。
パートナーシップ。クルガンキムマッシュ
社は、化学、天然ガスや石油産業向け部
品と熱交換器用部品の生産を専門とす
る会社である。
同社はロシアの中部都
市、
ウラル山脈にほど近いクルガン市に
ある。
2007年の末、
クルガンキムマッシュ社
の生産チームは、5つのドリルツールメー
カーに対して、
パイプ格子の穴あけに最
善の方法をそれぞれに捜すという問題
スクラップ社や、内視鏡と手術
室システムの世界トップレ
ベルのメーカーであるカ
ール・ストルツ社のような
大会社がある一方、10社
中9社は、従業員20人以
下の小さな会社です。」
と
MITT(トゥットリンゲン郡
の非営利能力センター)の
スポークスマン、
ルドガー・
シュナイダー氏は言う。
「だからこそ、仕入れ時
の価格を抑え、世界中の
顧客に完全なソリュー
ションを提供するた
め、知識を共有しつ
つ協調体制を構築す
ることが重要なのです。
」
と言う。
サンドビック・コロマントは、
このこと
に貢献している。
「 近年、当社は専用の
に取り組んでいた。
「切削速度、
コスト、
穴の品質に関して、全体的なソリューシ
ョンを見つける必要があったのです。」
と、
クルガンキムマッシュ社の副主任技
術者、
アレキサンダー・ドラガリン氏は言
う。
その過程の中で、
チームはスーパーU
ドリルをテストした。
2008年前半、熱交換器を生産する大
口注文を受けた時には準備は万端だっ
た。
「きわめて短期間のうちに、
サイズ、長
さや精度の面で加工の難しい穴あけ加
工を数多く行う必要がありました。」
とド
ラガリン氏は言う。
スーパーUドリルの使
用により、
チームは課題に対処すること
ができ、全ての部品を速く且つ正確に生
産することができた。
「サンドビック・コロマントの担当者
は、最速のサポートを提供してくれまし
た。現在では、他のドリルやフライス加工
機器についても、実り多い協力を得られ
ています。」
とドラガリン氏は言う。
熱交換器の効率生産の注
文を受けたとき、
ロシアの
クルガンキムマッシュ社は
準備万端だった。
製品とプロセス・ノウハ
ウの両面で医療技術に
対して大きな投資を行
ってきています。」
サンド
ビック・コロマント・ドイ
ツのマーケティング・マ
ネージャー、ケネス・ス
ンドベリは語る。
「トゥッ
トリンゲン市周辺で
は、何十年も医療産業
の分野で活躍している
地元の卸売業者、オット
ービッツァー社を通して、当
社の専門知識を提供していま
す。」
医療技術の世界市場は
2600億米ドルと見積もられて
いる。
ヨーロッパはこのうち30%を
占め、
さらにドイツはヨーロッパの30%
を占めている。
トム・エリクソン、
サンドビック・
コロマントの
新社長
サンドビック・コロマント
の新社長
9月1日、
トム・エリクソンがサンドビ
ック・コロマントの新しい社長に就
任した。
エリクソンは、
サンドビック・
ツーリングの上級副社長に就任す
るケネス・V・スンドの後を引き継
ぐ。
エリクソン(48歳)は、
これまでサ
ンドビック・ツーリングの他の生産
部門であるサンドビック・ハードマ
テリアルの社長に就いていた。
ま
た、
ボストン・コンサルティング・グ
ループやサンドビック・グループの
管理職を歴任してきた。
ルンド大学
の法律修士とバルセロナIESEの
MBAを取得している。
metalworking world 37
the solution
もっとも
硬い存在
正確な角度
角度付きコロカットチップ
ファンディスクはチタン製で、加工を
施さなければならない溝やチューリ
ップ型溝がある。角度付コロカットチ
ップは、アクセスの難しい溝に届くよ
う開発された。多様な標準品を取り
揃えており、特殊品が必要ない。
スク
ィ
ンデ
ァ
フ
飛行機エンジンの部品は製造の最も難しいも
のの一つだが、製造業者は、
その加工において
最新の加工技術と理想的な工具を活用するこ
とができる。ここでは、航空宇宙エンジンの最
も重要な7つの部品について紹介する。
詳しくは:
www.aero-knowledge.com
へどうぞ。
(英文)
お静かに!
サイレント・ツール
その長さと内部に特性を持つシャフトは、サイレン
ト・ツールの防振バイトの独壇場である。ボーリ
ングバイトは、φ250mmまで対応し、従来の工
具では加工できなかったバイト径の14倍の突出
し量まで加工できる。
38 metalworking world
フト
シャ
冷却の維持
グ
ン
シ
ー
ケ
ン
ァ
フ
HPCとUHPC
チタン製ファンケーシングの加工における成功の秘訣は、切削時の温度
を低く保つことにある。サンドビック・コロマントの高圧クーラント(HP)
や、超高圧クーラント(UHP)システムは、正確に、最も有効な部位にクー
ラントが命中するよう設計されており、良好な切りくず処理、ならびに工
具寿命と生産性の向上をもたらす。
Kjell Eriksson
柔軟性と安定性
高速加工
セラミックターンミル加工
タービンケーシングの加工では、通常荒フライス加工によ
ってインコネルやワスパロイといった大量の難削材を取り
除かねばならない。
セラミックターンミルチップは、送り速度こそ落ちるが、超
硬チップの20~30倍のスピードで加工することができ、生
産性の向上をもたらす。
ブリス
ク
テーパボールエンドミル プルーラ
ブリスク部品、CAMソフトと工具の許容範囲内
であれば軸方向高切込みのフランクミリング加
工が最も速い選択肢である。テーパボールエンド
ミルの標準品は、この加工のために特化して設
計された。このエンドミルは傑出した安定性とリ
ーチの長さを合わせ持っている。
グ
ケーシン
ン
ビ
ー
タ
スク
スクとブリ
ィ
デ
ン
ビ
ター
バランスよい生産性
コロミル316
耐熱合金製タービンディスクへのスカラップフライス加工
のような低切込みで公差が高い加工には、コロミル316が
最適である。チタン製ブリスクの溝に荒加工をするのに最
も良い方法は、ヘッド交換式のコロミル316によるポイント
フライス加工であり、これは生産性と経済性のバランスが
非常に優れている。
タ
ー
ビ
ン
デ
ィス
ク
ル
ー
プ
ス
安定性が全て
防振機能付きブレード
スプールを生産する時の課題の一つは、概して最大150ミリに達
する深い内部チャンバーである。コロマント・キャプトツールホル
ダを使用した防振機能付きブレードは、振動を最小限に抑える安
定的なソリューションである。幅の4倍以上の長さを持つブレード
は特許を得た防振機能付で、同機能を有しない場合に比べ4倍以
上の切り込みが可能である。
複雑な旋削をたやすく
SL70
柔軟なモジュール式のSL70ツーリングシステムと丸チップ
の組合せは、一般的な倣い加工やポケット加工に対応して
いる。SLシステムは、セラミックや超硬材の荒加工から仕
上げ加工にまで使用できる。これは難削材の合金で複雑
な特徴を持つタービンディスクに最適である。
metalworking world 39
www.sandvik.coromant.com/jp
Print n:o C-5000:538 JAP/01
© AB Sandvik Coromant 2009:3
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