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蝦eの減圧による低温の生成費

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蝦eの減圧による低温の生成費
蝦eの減圧による低温の生成費
九州大学理学研究院物理学部門 矢山英樹
夏.は高めに
最も手軽に低温を得る方法は,断熱された容器の中に液体を入れそれをポンピングして
沸騰させることである.1K以下の潟度を得るには,最も低い沸点をもつ液体ヘリウムをポ
ンピングするだけでよい.この方法は,最初,通常のヘリウムすなわち蝦eを用いて行わ
れた.同じヘリウムの同位体である3:Heは,天然ガスから採取されたヘリウムガス中には,
わずか90−4%の濃度しか存在しない希ガスであるが,それを用いることで,より低温を得
ることができる.
本稿では,蝦eを用いて9K以下の温度を得る方法について述べる.もっとも,今ffで
は同じ程度の低温を得る簡便な方法が普及しているため,多くの部分は単に歴史的な興味
に対する記述を与えるに過ぎない.しかし,ここで述べる鰯畠クライオスタットは基本的
冷凍機であるため,今でもしばしば用いられている.また,この方法は低温生成に共通す
る一般的な技術を含んでいるため,他のタイプの冷凍機を作る際にも役に立つ.
黎.へ騒ノウムについて
ヘリウムは多くの特徴的な性質を有しており,それをうまく利用することで寒剤として
の働きをしている.まず第一の特徴として,飽和蒸気圧でヘリウムは三重点をもたない.
それは,ヘリウムが絶対零度まで液体のままであることを意味している.第二に,ヘリウ
ムは,絶対温度T== 2.972Kで超流動状態に転移するeこの状態では,熱伝導度が大きく
なり液体全体の温度が均一になるが,一方で超流動フィルム(膜)により熱の流入が増加
する.ヘリウムの蒸発熱は小さいため,クライオスタットの設計には断熱に関する注意が
必要である.燈eの最も特徴的なパラメータと熱力学的性質を表1と表2に示す.
3.ポンピングについて
燈eの飽和蒸気圧は,温度の低下と共に指数関数的に減少し,T<1Kでは旦0難以下
になる.そのため,ヘリウムをポンピングして低温を得る場合には,到達圧力の低い真空
ポンプが必要になる.それに加え,排気速度が大きくなければならない,なぜならヘリウ
ムの蒸発熱は小さいからである.この方法で汲み上げられる単位時間あたりの熱量,すな
わち冷却パワ・一 eは式¢= Pt A. しで計算できる。ここでAはポンピングしている蒸気の密
度,Lは蒸発潜熱である. e・ a PtWを得るために必要なポンプの排気速度とヘリウムの飽
和蒸気圧を表3に示す.表3に示されているシ@の値は,排気のためのパイプがポンプの
排気速度に負けないくらい十分太いときに成り立つものである.
’k
{稿は,f超低濃の実験技術」矢山英樹, B.1.ベルクトフ共訳,2000年九州大学出版会,から一部抜粋したもので
ある,
一 25 一
襲壌 噸巴の物性値[26]
ダイアグラム上の点
P (kPa)
P (kglm3>
T (K)
臨界点
227.・冬±0.董
S.!8988 ± O.Cmo()2
69.323 ± e.O()3
4.2翌5
萱25
1気圧での沸点
董0翌。3
液相一気稲繭線上のλ点
5.039士0.00璽
2.亘720±0,(頁》《)翌
亙46.15
液櫓一固稲麹線上のλ点
3,劔2±5
茎.7633土O.(購亙
璽琶(》.尋嬉士◎3
絶対零度での結晶化圧力
253且.8
g
krcc−hcp転移点
簸下点
畿上点
2635.S
丑。葡4
3039.講
g.772
互80.65
疑同軸cc転移点
9.盈×鞭
塁魂.∼》±《).1
3i6*
亙74.33
33ヨ**
rk液偉
牌固体
褻 2蟻¢の主な熱力学的物性値
3.03×i◎曽彗
唱且 璽 寮且 亙 蒐 夏 茎 墨53
55尋
互6.o
g3.3
287
760
置惑6×葺《)3
3.互7×亙03
葱且 羽且 豆 雪且 理 5.39 × gei
&禍×茎◎3
丑.25x亙◎4
盈.77x翌04
i 鴛且 亘 至 豆 −
2.尋3×萱04
3.23x旦◎尋
4,璽9×互《)4
5。3尋×亘04
6.67x童ぴ
&22×二野
9.99×亘(野
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2.5
尋.4
9.8
22.2
sg.g
目溢
322
78e
嚢57×互03
2.呂亙×亙G3
5.豆8x茎{野
3.98×璽(野
2.3呂×亘93
2.27x豆03
2.3鷹×豊03
2.49 × ag3
2.69 × ge:
2.97×亘03
3.26x飯)3
3.60 〉〈 iGi
3.99×董03
羅認xXO3
*ビリアル係数を用いた計糞値(倒えば[30]参照)
49
惑且
9璽
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23
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43
23
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7
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22
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3.7S × iif2
A222濠﹂②2鴻コ2鴻曝書34﹄5毒 662
互 丑 葦 旦 メ帳面03帳面面語論鱒籠語誌論語幽幽%銘聡㌶
葡嬉訴訟砺葡砺葡嬉葡砺妬婿幽幽嗣鐙37懸隔2825
2.認X翌(》弓
⑫5
2×亘併
3×旦0卿5
2.亘×茎0司
9.2 × ig一一ag
3。Ox夏0噺3
e.ee77
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◎.尋55
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3.4尋5
尋5童5
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32
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一 26 一
!◎嬉馨^◎ノ!◎
4.1
尋4。4.33
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雪^◎︵U◎0
夏9
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︵タδ︿蟄
令3司せ
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◎履と5
一旗
ッ1・︾1・Q3
表 3樋eポンピングによる冷却パワーの計算に用いられたパラメ…一タ
ら(炉噸 駆噂
1.2
2.4
0.5
2.9
G12
3.7
0.4
&03
gg.s
g.os
1.3x夏◎聯3
豆.9
520
システムの排気速度ジはコンダクタンスFをもつパイプの流体抵抗とポンプの排気速
度Ptgを用いてシー㌧庵1+F “1と表わされる.
分子流領域すなわちy・≦λ (ここで,rは排気パイプの半径λはガスの平均自由行程)
の条件が満たされる場合,コンダクタンスは式
P’ :AKv rt /4
a
で計算できる.ここで,躍はパイプの断面積㌔は分子の平均熱速度,Kはクラウジング
(Kgaxsing)係数でありパイプの長さと半径の比に依存し,通過確率を表わす.円筒型の
パイプについてのクラウジング係数の値は表婆に示されている.粘性流領域では,コンダ
クタンスがずっと大きくなりr/λの最大値に対してFαo=0.腫7〃λである.パイプのコ
ンダクタンスと分子流の関係をr /λの広い範囲に亘って表5に示す.
もし,パイプが,長さと半径の異なる溺固のセクションが直列につながったものから構
成され,それぞれの部分の温度が一定の場合には,分子流状態が維持される最大圧力(そ
してそれに対応する温度)は,次の式によって決定される睡.
曜β一騨喋畷ゲ鴇・ ω
ここで,Pgと為はポンプの入口でのヘリウムの圧力と温度である.ガス流が完全な分子流
領域にないときは,式(1)はPκとTκの近似値を与える.蝦eポンピングシステムの計算に
必要な燈愈ガスの性質を表6に示す.
4.実験装置
9922年,カマリンeオンネス(H.:K&灘e癒総麟0無es)はヘリウムのポンピングで◎.81
Kを得た{2].この方法を更に改良するために,よりパワフルなポンプを用い熱流入を最小
にするクライオスタットの構造が研究された13,4,5,6,7β】.この方法で最低温度に達したク
ライオスタットの模式図を図9に示す.空気に対する排気速度◎.9ee3/sをもつ拡散ポンプ
が,圧力0.9Paで用いられた.ポンピングは,直径305 mmのパイプを通して行われた.
遮蔽容器を温度2Kのヘリウムで満たし,最低到達温度は0.734 Kであった.遮蔽容器の
目的は,主デュワーへの熱流入の低下ではなくて,それによって冷却されたヘリウム蒸気
の粘性を減少させるためである.
超流動ヘリウムの発見とその後の研究臨姻によって,ヘリウムのポンピングによって
温度を減少させる方法の場合,物体の表面を覆う超流動フィルム(膜〉が障害となること
が明らかになった.超流動フィルムは,装置の温度が高い部分に熱機械効果によって移動
し,そこで蒸発してポンプの負荷になる。その影響は特に低温で大きくなる.その理由は,
蒸気圧および排気速度は低温で急激に減少するが,超流動フィルムの輸送速度は(図2か
ら分かるように)一定であるからである.
超流動フィルムの影響を減少させるための最初の試みは,文献巨11に示されている.そ
れは,ポンピングラインの途中に直径◎.3∼1m鵬のパイプを用いる方法である.排気速度
一 27 一
褻 4 クラウジング係数の9/r依存tr [39]
e.購2
g.g699
0.834丑
◎.80蓋3
0.77亙亘
0.7尋3尋
0.7叢77
0.6多聡
g.672g
o.g320
g.5970
g.S6S9
8
互0
22
2鴫
26
28
2◎
32
3蔭
3O
尋5§7謬
童
亘
0亘
2璽
尋璽
轟豊
0
02
03
⑪尋
05
06
07
0菖
§多O
e.952ag
0538尋
9
05墓36
0.㈱騰
1e
12
O.471亘
蓋6
0.亘367
0.尋527
◎.璽翌35’
035豹
2C
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鱒
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憩
70
9.3亘葡
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0.03置参
O.2897
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嚢翻
g.g2sg
0.23璽6
至,(◎o
9.《翼》265呂
e.4359
9,爆2⑪5
0.鱒62
6.38(}9
◎2i3丑
0.拶73
0.蓋7夏9
e.g797
0.《簸3
0.《鱗釘
0.鱗20
g.g363
褻 §rノλの蘭数として表わしたパイプのコンダクタンスと分子流コンダクタンスの比
i3g]
夏
=di=Ept=[ urEff M EiE=
g.ee4
O.1
g.g79
。.s
a.gsg
e.es
9.98蒙
璽5.23
e.323
O.952
9.⑪璽
0.勢7
2.2鍵
&2
e.962
e
1.倉eo
亘(野
藍,472。呂亘
夏◎3
嘱4&o彊
丑《ド
茎◎
s
155g
襲 鍾 燈eガスの性質
第2ビリアル係数
T㈹
@駅。瓢3ノ贈豊)
[32]のデータ
エンタルピー
@瓶漁墓)
粘性係数
[33]のデータ
[34静のデータ 〔30】のデータ
? 互◎7(鋪漁2)
熱伝導度
ネ(醗騨ノ紬)
爵=童Ok難
雪盈冒且角∠凸∠り3
’盈234.5婚20鎗葡5◎700050◎050◎0
一豊87
302
3.4
4.9
3.g
一一一 iX7
29.6
7.5
s.g
一一 g2
35.e
旦G.母
7.9
一一 62
4g.3
茎4.2
一 23
66.S
22.3
一 4.e
互盈85
34.9
2.4
豆70.5
45.4
$.6
222.5
54.6
尋2
7.6
27鳳4
63.1
9.8
37g.3
7g.5
豊夏.2
534.蓑
98.8
[42]のデータ
[43]のデータ
IC
i7
27
34
亘童.6
793.7
茎285
48
59
75
97
豆1.6
1,053.4
gss
1a7
亙豊.5
亘,3畳3.1
g79
135
葺且.4
蓋,572.フ
2◎蔓
153
*T>4Kではη讐5.◎23×10−7 TOM7が用いられている〔35】。
一 28 一
亘GL/sのポンプを用いて,最低到達温度0.77Kが得られた.パイプの直径を減少すること
は排気速度の減少につながる.そのため,小さな穴をもったオリフィス*を通して大きなパ
イプでヘリウム容器をポンピングするのが合理的である.
粘性流領域で,面積Aの小さな穴(オリフィス)を通して移動するガスの輸送量は,次
の式で計算できる(例えば1鰯を参照せよ).
峠喉鱗〕ず ②
ここで,PlとP2はオリフィスの入口と出口の圧力, Mはガスの分子量,7:CYCvは定圧
比熱と定積比熱の比熱比を表わす.己惚一定の場合,ガスの輸送速度はP2の減少と共に増
加し,Pl/4 sg O.5のとき最大になる.これは,ガスの流速が音速と一致する条件のときであ
る.この場合,平均流速は次のようになる。
ゑ
略痛r〔為・ザ ③
ヘリウムの場合,概姐7翅eex $一1 K Y2である.亨の値とガスの輸送速度碗評ρ,(ここ
でρ。は飽和ヘリウム蒸気の密度)が,温度に対して表3に示されている.
分子流状態は,低温でオリフィスの穴が小さいときに実現され,そのとき平均流速は
%μである(表3参照〉.これらのデータから分かるように,粘性流領域と分子流領域で
のガス輸送速度の差は小さい.そのため,実際には,オリフィスの穴の最適値は,ガス流
を解析しなくても十分精度良く求めることができる.表3にはまた,直径1満載のオリフ
ィスを通して排気されるガスの輸送速度と暴挙のデータから計算された超流動フィルムの
輸送速度との比vや,この場合の冷却パワー9kの値や,排気パイプのコンダクタンスに関
連するポンプの最低排気速度なども示されている.
超流動フィルムの流汗は,パイプの径の最も小さい部分の一周の長さに比例する.した
がって,比γはオリフィスの大きさに比例し,いずれのサイズの場合にも計算できる.図露
に示されたデータは,ガラス基板の場合に得られたものであるが,多くの実験結果から超
流動フィルムの流速は材料にあまり依存しないことが分かっている.基板の表面が非常に
汚れていたり非常に荒い場合にのみ,流速の増加が見られる。
オリフィスを通して排気する実験は,CeekとH磁1131によって最初に行なわれ,排気
速度10L/sのポンプを用いて0.74 Kが得られた.このタイプのクライオスタットによる最
低温度の記録0.72K拠1をもつ実験装置を図3に示す.排気は,排気速度15L/sのポンプ
を用いて,直径0.05m瓢のオリフィスを通してなされた.この方法の主な欠点は,冷却パ
ワーが小さいことである.このクライオスタットの場合,最低温度で恥Wであった.
*超流動フィルムが這い上がらないように薄い金属板に小さな穴をあけたもの.
一 29 一
s
母
2
2
毒 「r
3
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4
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?增B︶りO側×﹀
(の
o講 o.8 1.2 塁.6 2.o
ア(K》
図 2 超流動フィルムの輸送速度め
温度依存性〔26】
周囲畏亘幡に規格化されている.
亙
図 9鰻低温度&734 Kが得られた‘Keクライオスタットの模
式図〔3§]
亙はヘリウムデュワー,2は輻財シールド容器,3は容器2にヘリウム
を注ぎ込むためのバルブ,扇ま容器2のポンピングパイプ,5は主デュ
ワーのポンピングパイプ.
看
ヨ﹃
三
場
=齢
=
o
魑
二
一
聯
禰
3
二
二
二=
o
二!
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㎝
嗣
1㌘ 一 一
楠
=
ψ,
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=㌦
楠脚
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一
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{
:
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轍
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贈
騨
=
=
} 一
一 一
一
}
ご.
一
輻
一
二
一 }
,
一
s
図 3 オリフィスを備えた低温実験装置[94]
亘は内側のデュワー,2は主デュワー,3と4は輻
嬉
射シールド,5はポンピングパイプ,6はオリフイ
ス,7は冷却されるヘリウム.
一3
2
図 4 吸着ポンプを用いた塩e蒸発型のクライオス
タッ5[37】
1は抵抗温度計,2は実験空間,3は内働のデュワ 一,4と
7はバルブ,5は吸着材,6は外側のデュワー・一.
1
30 一
5.畷着ポンプの使用
ポンピング方法を改良するために,吸着ポンプの使用が採用された.吸着材を用いてヘ
リウム蒸気をポンピングする方法は,9939年にZ徽鋒輪鎧鰯によって最初に提案され,
B.N. Esels◎k, B.G. L&zavev, A.D. Shvets [X6]によって実現された.この方法は,コンパ
クトな装置を構成でき便利であるため,広く用いられている.
図4に,0.76Kまでの温度を生成維持できる,活性炭吸着ポンプを用いたクライオス
タットの模式図を示す.このクライオスタットの動作は次の通りである.液体ヘリウムを
外側のデュワーに注入し,荒引きポンプを用いて温度が9.3∼1.5Kに下げられる.バルブ
4を閉じ,バルブ7を通して必要な量のヘリウムを内側のデュワーに導入する.バルブ7
を閉じ,バルブ4を開くことによって吸着材を用いてヘリウム蒸気をポンピングし,デュ
ワー3と実験空間2の温度を下げる.温度は,抵抗温度計9で制御される.
クライオスタット中に吸着材を装備することにより,外部ポンプを必要としないコンパ
クトな構造が可能になる.その場合,ポンピングのためのパイプを短くできるばかりでな
く,配管の温度が低いため蒸気の粘性が低下することも加わり,排気速度が増加する.排
気速度は,多くの場合,吸着材の冷却条件および吸着熱の取り除きの条件によって決まるe
その条件についてはあまりよく分かっていないが,ガスによる熱りークが重要な役割を果
たすことが想像できる.これについては,ガスの圧力が吸着材の冷却速度に強く依存する
という事実がある1踊.その研究結果を,図5に示す.明らかに,吸着材の装備の仕方が重
要である(文献1181を参照).
吸着ポンプを用いて低温を得る場合に用いられる吸着材の性能を決定するのは,吸着能
すなわち吸着材9gあたりの吸着されたガス量(標準状態での体積em3で表わす)である.
この値は,吸着材の晶質や,温度,圧力に依存して非常に大きく変わる.最も一般的な吸
着材は,活性炭であるが,モレキュラーシープやパラジウムシリカゲルも用いられる.温
度4Kおよび4.2 Kでのいろいろな吸着材の吸着等温線図を,図6に示す.温度範囲2∼80
蔓《,圧力範囲1gs∼豆。㎝7ぬでの活性炭のデータを補間するために,次の式が提案されてい
る1甥.
甕・gPコ蜘醜+鋤選一豆一瓢)+嚢◎9㍗墨働
(4)
活性炭の吸着能の温度依存性を図7に示す1麟.温度の増加による吸着能の大きな減少は,
特に温度範囲10∼30Kで,活性炭を再生するのに利用できる.吸着材が25∼30 Kに加熱
されると,数%のヘリウムが吸着材の中に残るが,圧力は受端Paを超えない.活性炭は,
再生の後,4K以下の温度範囲で吸着材として再び利用できる.
すべての吸着材の表面は多孔質である.そのため吸着熱は吸着されたガスの量に強く依
存する(図8を参照).これらのデータは次の依存性によって表わされる,
一 31
s
gg2
弓
︵醐識︶
4.5琶、
鱒
as
4
互。−4
2 4 6 g
︵鯉§︶メ
g(h)
㈱
2
e
砲
欝
︵磁幽︶職
(b)
MAw
野一一eq 7
g
4 軸
豆 2 3 母
g
g(h)
夏〔}一窒 璽{ド 且翻 10‘“2 皇(ド
許幽)
図 謬噸¢蒸気圧とパラジウムシリカゲルの
図 臨 級藩材の畷藩等濫綴
温度の時間変化医7】
1は濤性毅Sa㈱でTww 4.2 K [鷺O],2は活牲疑S糟¢蜘蜘舗で丁湿艦〔X9 ],3はモレキュラー
畷藩されたガス量{S a:S7 cm3f露, b:夏58 cgTaSfgであ
シーブ5Aで7繹嬉.2 K[38]、4はパラジウムシリカゲルでア需42艦[20L 5は溝緯綴:BAYで
rut 4.2 K[39e.
る。ヘリウムバスの温度は尋.2Kである。
Tx2×
亘の一9
3. V.
2,See
2,(me
亘ik2
7 XXN 4
き
璽聡
6s
璽。−3
露
20
N g#
璽,◎§o
つ耀
乱つ脚
。饗︶
(蘭
og
盾
3a
亘《ダ
seg
亙2.5
釜5
璽9−s
49
5e
70
亘9−6
蓋◎隠13
亙(}一8 豆◎一3
g
o 200 4(}e 6ee
y.×鯉くgxa3fkg)
豆02
P (Pa)
函 霧 活性炭の吸着熱対吸着量の関
図 7 活性炭の吸着等温線[99 ]
係巨9〕
g.s
呈o
9
g.7
7σ−◎
︵翻ζ
8
︽﹂432
1
c
e.6
図 9 ◎.5Kが得られた実験装置の模
式pa [4e ]
F
O.5
1は銅容器の底部,2は液体ヘリウム表面,
3は銅容器,4は燈eデュワー一,5は超流
e
1 2 3 4
r(h)
動フィルムの移動経路,6はインジウム
シール,7は真空バルブ,8は吸着材,9
はヘリウム注入キャピラリー,leはバル
ブ.
図 鱒 吸着ポンピング開始後のヘリウム温度
の時間変化[4◎]
一 32 一
L. :8680 一2920 log(Y. +Xg2) .
(5)
ここで,Laは吸着熱であり単位は」触◎盈である。文me20]ではこの式に基づき吸着熱が計
算されている.図8には吸着熱の研:究結剰191が示されている。4Heの吸着に関する他の情
報が,文献謝1の研究に見られる.
墨Heの吸着ポンピングを用いた冷凍機の構造の改良は,温度0.7:K i122},◎.64藪臨3},
および0.5 K (24]に到達する可能性を与えた.0.5Kに到達した装置継1の模式図を図9に
示す.この装置の利点は,容積25◎cm3の内側のデュワーが,吸着ポンプのキャビティー
の中に直接置かれ,それに加えて外部ポンプもいっしょに用いられている点である.この
装置の動作原理は,前に述べたものと同様である.外部からの熱流入が無い場合について
(図9を参照),主バルブを開けた後の冷却過程の温度変化を,図10に示す.明らかに,
点Cで急に温度が下がり,超流動フィルムがすべて蒸発したことを示している.この温度
は消費電力10−9Wのスピアー〈S脚er》抵抗温度計で測定された.同じく,温度対印加パワ
ーの関係を図豊に示す.温度丁=◎&7 Kでの冷却パワーは10艶碑であり,このときの排気
速度は,室温で動作するポンプの排気速度1搬3/s以上に相当する.
これまでに述べた構造は,ワンショット型の動作を意図していた.低温を生成するため
の過程を繰返すタイプの構造が作られた.そのような構造の模式図を図12に示す。吸着ポ
ンプ3をクライオスタットの暖かい部分に持ち上げることによって,吸着材の再生が行わ
れる.ここで吸着されたヘリウムは脱着され,外の12∼璽。3Kのヘリウムによって冷やさ
れたパイプの冷たい壁で凝縮され,デュワーに流れて戻り,冷却過程が繰返される.活性
炭を95 g用いたときの最低温度は0.7魍Kであり,40灘ぬ持続できた12翻活性炭を持ち
上げた後で,次の冷却過程の繰返しを鶏◎搬諭以内に行うことができた。
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リー,7はモー一一ター.
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の摸式図149]
iはヒーター,2は低温デュワー一,3は活性炭ポンプ,4は直
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参考文慧
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