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高解像度PDA:Pocket LOOX v70

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高解像度PDA:Pocket LOOX v70
高解像度PDA:Pocket LOOX v70
High-Resolution PDA: Pocket LOOX v70
あらまし
55, 4, 07,2004
当初,スケジュール・アドレス帳といった個人情報を管理するためのツールとして開発
されたPDAも,通信機能の高度化・データ処理機能の向上・Windowsとの親和性の向上が
相まって,ユビキタス環境での情報ツールとしての用途が広がってきている。ここでの用途
では,画面の解像度が低いことが従来のPDAにおいて最大の問題であった。富士通はこの
問題を解決するとともに携帯性を高めた高解像度PDAを開発し,ユビキタス新端末として
提供を開始した。
本稿では,高解像度PDA“Pocket LOOX v70(FLXV7)
”の主な特徴を紹介する。
Abstract
The personal digital assistant (PDA) was originally developed as a tool for managing
personal information, including schedules and addresses.
Since its communication and
data processing capabilities have been upgraded and its compatibility with Windows
functions has been improved, its range of application is being extending to include use as an
information terminal for a ubiquitous-computing environment.
However, the biggest
problem with using conventional PDAs as information terminals is their low screen
resolution. Fujitsu has not only solved this problem by developing a high-resolution PDA
but has also improved its portability. We have already started marketing the new PDA, the
Pocket LOOX v70 (FLXV7), as a new ubiquitous terminal. This paper describes the main
features of this terminal.
330
大野秀浩(おおの ひでひろ)
佐藤裕一(さとう ゆういち)
ユビキタスクライアント事業部イン
ターネットアプライアンス開発部
所属
現在,PDAの開発に従事。
ユビキタスクライアント事業部イン
ターネットアプライアンス開発部
所属
現在,PDAのソフトウェア開発
に従事。
FUJITSU.55, 4, p.330-334 (07,2004)
高解像度PDA:Pocket LOOX v70
ま え が き
ユビキタス社会において,企業データに自由にア
クセスするためのツールとして,Microsoft社の
さらに,今回,画面表示機能を大幅に向上させる
とともに,携帯性を大幅に向上させたFLXV7を発
売し,よりユビキタス端末としての使い勝手の向上
を図った。
Pocket PC を OS と す る PDA ( Personal Digital
FLXV7の特徴
Assistant)が活用され始めている。Pocket PCは
Windowsと非常に高い互換性を持っており,パソ
FLXV7は,一世代前のFLX3AWと比較し,様々
コンと親和性の高いアプリケーションの開発が容易
な点でユビキタス端末としての使い勝手を向上させ
である。しかし,PDAの画面の解像度がパソコン
るための改良がなされている。まず,最大の特徴と
と大きく異なっているため,パソコンを前提とした
して,画面解像度の大幅な向上が挙げられる。つぎ
アプリケーションの画面設計・データの表現で閲覧
に,カメラ機能を内蔵することで,PDAでの写真
性の問題が発生することも少なくなかった。富士通
の取込みが容易に行えるようになっている。また,
はこれらの問題を解決するため,高解像度のPDA
これら機能追加を行いつつ,従来機種より大幅に小
であるPocket LOOX v70(FLXV7)の開発を行っ
型・軽量化を行うことにより,より携帯性が向上し
た。これにより,従来以上に親和性の高いアプリ
ている。これらの特徴について,次章以降で詳しく
ケーションを容易に開発できるようになった。
述べる。
本稿では,Pocket LOOXシリーズの概要,およ
びFLXV7の特徴について述べる。
Pocket LOOXシリーズの概要
これ以外でも,大画面アプリケーションをストレ
スなく実行するために,Intelの最新CPU PXA270
を採用し,動作速度を向上させた。SDカードス
ロット部においては,新たにSDIOカードをサポー
富士通は,2002年7月にPocket LOOX(FLX2H)
トすることで,今後携帯機器向けに発売が期待され
を発売し,PDA市場に参入した。Pocket LOOXは,
るSDIOカードの対応を可能にした。さらに,USB
従来のPDAの代表的な使い方である個人情報管理
ホスト機能を内蔵し様々な業務ソリューションに対
に主眼を置いたものではなく,通信機能を用いてイ
応できるようにするなどの多くの工夫を行っている。
ンターネット・イントラネットと接続することによ
FLXV7とFLX3AWの主な機能の比較を表-1に示す。
り,コミュニケーションツールとしての使い方を提
また,FLXV7の外観を図-1に示す。
案するものであった。FLX2Hでは,近距離通信手
段として,Bluetoothを採用し,公衆通信手段とし
高解像度ディスプレイによる閲覧性の向上
て,CF(Compact Flash)サイズの通信カードで
従来のPDAの画面は,主として手帳として使う
あるPHS(Personal Handy phone System)カー
ことが想定されており,この用途には必要十分な解
ドなどを想定していた。
像度を有していた。昨今,ユビキタス時代の情報へ
そ の 後 富 士 通 は , 2003 年 10 月 に FLX3AW と
のアクセスデバイスとして,PDAを用いる動きが
FLX3Aを発売した。FLX3AWでは,企業内でのワ
盛んになってきている。ここでは,PDAを手帳と
イヤレスLANの普及に対応して,IEEE 802.11b通
して使うわけではなく,Webブラウザを使って,情
信機能を内蔵することで,オフィス内ではワイヤレ
報へのアクセスを行うのが代表的な使い方となる。
スLANによる通信,そして,オフィス外ではPHS
この場合,従来のPDAの画面では,パソコンを前
カードなどによる通信と,より適切な通信手段を選
提としたWebページの画面表示を行える解像度を
択することができるようになった。また,これら異
持っていないので,PDAに専用に用意されたWeb
なる通信手段を簡単に切り替えることのできるLX
ページが必要となってくる。また,アプリケーショ
PlugfreeNETWORKを搭載し,ネットワークの切
ンにおいても,ほとんどの場合は,デスクトップパ
替えを自動で行うことにより,ユーザが使用場所に
ソコン・ノートパソコンなどで閲覧されることを想
おいて利用可能な通信手段を意識することなく通信
定して画面のデザインがなされているため,
できるようになった。
QVGA(Quarter VGA:解像度320×240画素)の
FUJITSU.55, 4, (07,2004)
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高解像度PDA:Pocket LOOX v70
表-1 FLXV7とFLX3AWの機能比較
FLXV7
FLX3AW
品名
Pocket LOOX v70
Pocket LOOX
CPU
PXA270 520 MHz
PXA255 400 MHz
RAM
128 Mバイト
128 Mバイト
ROM
64 Mバイト
64 Mバイト
ディスプレイ
3.7型 半透過
3.5型 半透過
画面解像度
480×640画素
240×320画素
CFカードスロット
Type II
Type II
SDカードスロット
SDメモリ/SDIO
SDメモリ
ワイヤレスLAN
IEEE 802.11b
IEEE 802.11b
カメラ
1.3 Mピクセル
なし
USBホスト機能
USB1.1
なし
外形
(幅×奥行×高さ)
73×16.9×118 mm 78×17.6×135 mm
質量
約165 g
約199 g
OS
Windows Mobile
2003 Second
Edition Software
For Pocket PCs
Windows Mobile
2003 Software For
Pocket PCs
発売開始
2004年7月
2003年10月
(a)QVGA画面によるホームページの表示
(b)VGA画面によるホームページの表示(縦長表示)
図-1 Pocket LOOX v70(FLXV7)
Fig.1-Pocket LOOX v70 (FLXV7).
(c)VGA画面によるホームページの表示(横長表示)
図-2 画面解像度による表示の違い
Fig.2-Display differentiation between QVGA and VGA.
画面では非常に閲覧性が悪かった{図-2(a)
}
。
今回,FLXV7では,この閲覧性を改善するため,
できるようにした。この結果,パソコンと同等とは
そんしょく
ディスプレイに解像度640×480画素のVGA画面を
言えないまでも,十分に 遜 色 のない表示を行うこと
採用した。またOSとして,Microsoft社のWindows
ができるようになった{図-2(b),(c)}。これらの
Mobile 2003 Second Edition Software For Pocket
表示機能の強化により,閲覧性が飛躍的に向上する
PCsを採用することで,従来のポートレート表示
とともに,PDAへのアプリケーションの移植の際に
(縦長表示)だけではなく,ランドスケープ表示
も,画面サイズに関して,従来ほど気を使うことな
(横長表示)にも対応し,ダイナミックに切替えを
く設計を行えるため,業務アプリケーション開発の
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FUJITSU.55, 4, (07,2004)
高解像度PDA:Pocket LOOX v70
図-3 LXカメラの操作画面
Fig.3-Control panel of “LX Camera”.
表-2 LXカメラの代表的な機能
機能
設定
図-4 FLXV7とFLX3AWの外形比較
Fig.4-Size differentiation between FLX3AW and
FLXV7.
撮影画像サイズ
QQVGA(120×160)/QVGA(320×240)/
VGA(640×480)/SXGA(1,280×1,024)
デジタルズーム
1倍/2倍
簡単に起動することができ(図-3),このボタンが
撮影モード
自動/白熱灯/蛍光灯/晴天
そのままシャッターとして機能する。カメラとして
コントラスト
低/中/高
標準的な機能に加えて富士通研究所の開発による画
逆光
オン/オフ
像補正機能を搭載している。LXカメラの代表的な
フラッシュ
常時発光/発光禁止
機能を表-2に示す。
保存画質
サイズ優先/標準/画質優先
画像補正
あり★/なし
画像保存先
シャッター音
撮影日付
本体メモリ/内蔵フラッシュディスク/CFカー
ド/SDカード
4種類のプリセットより選択(シャッター音
はオフにできない)
右下へ年月日/左上へ年月日/右下へ年月日時
分/左上へ年月日時分/なし
★:富士通研究所の画像補正技術による。
さらに,LXイメージビューアとの連携で撮影画
像への手書きでのメモ記入,撮影画像のEメール送
信,撮影画像の加工(回転,反転,明るさ調整),
HTMLアルバム形式での保存に加えてLXメニュー
とTodayの背景画像の作成が行える。
これらオリジナルアプリケーションはFLXV7に
プリインストールされており,購入後すぐに利用す
ることができる。
生産性にも大きく貢献できるものと考えている。
FLXV7では,単にデジタルカメラを内蔵するだ
さらに,FLXV7では,従来のQVGA表示と,新
けではなく,高解像度ディスプレイ採用による撮影
規にサポートしたVGA表示をダイナミックに切り
画像の閲覧性向上に加えてオリジナルアプリケー
替えることができる。この機能によって,QVGA
ションによる使い勝手の向上を図っている。従来の
表示で作成された従来アプリケーションに対して互
PDAではデータの受信・閲覧の利用が主であった
換性が保たれている。
が,使い勝手の良いデジタルカメラの内蔵により
デジタルカメラ内蔵による情報発信機能の強化
PDAから撮影画像を情報として発信する新しい用
途への展開が期待できる。
FLXV7では,Pocket LOOXシリーズとして初め
てデジタルカメラを内蔵した。高解像度ディスプレ
イを活用するアプリケーションとして,LXカメラ
の開発を行った。
LXカメラはFLXV7本体横のボタンを押すことで
FUJITSU.55, 4, (07,2004)
携帯性の向上
Pocket LOOXシリーズでは,当初FLX2Hで,個
人ユースも考え,ヨーロピアン調のデザインを採用
した。次機種FLX3AとFLX3AWでは,より企業
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高解像度PDA:Pocket LOOX v70
ユースに特化する形で,機能の拡充を優先した結果,
本体上部に内蔵した構造とし,アンテナの突起を削
若干サイズが大きめとなっており,業務用途には最
除するなど,携帯性向上に向けた様々な工夫がなさ
適なものの,企業内でのナレッジマネジメントなど
れている。
の用途を考えると,若干大きすぎることに対して反
む
省があった。このため,FLXV7では,機能の拡充
す
び
を行うのと同時に,小型・軽量化にも注力し,大画
本稿では,ユビキタス端末として開発した
面化したにもかかわらず,従来比80%程度の体
FLXV7の主な特徴を紹介した。FLXV7はユビキタ
積・質量を実現した。FLXV7とFLX3AWの外形比
ス時代のコミニュケーションデバイスとして,従来
較を図-4に示す。これにより,携帯性が飛躍的に向
機種と比較し飛躍的に機能・性能が向上しており,
上した。
今後の様々な利用シーンに十分対応できるものと考
また,FLXV7ではワイヤレスLANのアンテナを
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えている。
FUJITSU.55, 4, (07,2004)
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