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【57】 未固結地盤のコア品質向上に関する一考察

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【57】 未固結地盤のコア品質向上に関する一考察
【57】
全地連「技術e-フォーラム2005」仙台
未固結地盤のコア品質向上に関する一考察
中央開発㈱
1. はじめに
○栗原
常男
前述の問題の対応としては、低送水量を維持できるポ
段丘礫層などのコア採取を行う場合、シングルコアチ
ンプを利用した微量微圧送水による掘削手法に着目し、
ューブによる無水掘削が一般的である。この掘削で採取
これを実践してきた。しかし微量送水においては、スラ
されたコアは撹乱試料となるばかりでなく、焼き付など
イム排除機能が十分でないといった欠点もあった。
による変化も認められることから、コアの品質に問題が
これまで筆者は砂礫層のような地層を掘削する業務を
あった。しかし、ダブルコアチューブによる送水掘削で
多数担当したが、コア品質の維持に非常に苦労した経験
は、コアが掘削流体により流失して乱された状態になる
がある。このため、通常送水と微量送水のそれぞれの長
ばかりでなく、詳細な観察にも支障をきたすことが多い。
所を生かした掘削の改良手法について検討した。
筆者は機長として日常の調査業務に関わっているが、
検討の結果、微量送水ポンプと通常送水ポンプを並列
前述のような地層において、採取コアの品質向上につい
に接続し、これを機械的に切り替えることで、コア品質
て取り組んだ。この結果、特別な技能や機器を使用せず
の向上に対して効果があることが分かった。
にコアの品質向上が可能となった手法について報告する
以下に、当該手法のコンセプトと手法の概要を示した。
ものである。
(2) 改良手法のコンセプト
2. 改良手法考案の経緯
本手法は、誰もが容易に利用することができ、その機
(1) 改良の経緯
構も単純になることに重点を置いた結果、以下の5点を
一般に段丘礫層等のコア品質を向上させるためには、
送水量を細かくコントロールすることが必要である。送
コンセプトとした。
①
段丘礫層などの未固結地盤掘削時に良質なコアを連
水量を細かくコンロトールする手法としては、送水のデ
続的に採取できること。
リバリーホースにリターン用の分岐を取り付け、ボール
②
水量調整を機械的に行うことによる操作性の向上。
バルブ等によりリターン排水量を調整する手法が一般的
③
掘削速度向上による施工コストの削減。
である(図-1参照)。
④
メンテナンス性の向上
圧力計
デリバリーホース
試錐ポンプ
デリバリーホース
ウォーター
スイベルへ
(孔 内)
3. 改良手法の概要
一般に段丘礫層の掘削には高度な技能が必要であり、
これらは特別なノウハウとして実践される。特に水量を
ボールバルブ
リターン排水
読みながらの掘削のようなノウハウの蓄積は、実際現場
で体験した者しか理解しえないことが多い。
しかし、何故特別なノウハウが必要となるのかといっ
図-1 従来の一般的な流量微調整方法の配管図
た問題に対して、掘削中業務中に様々なデータを蓄積・
しかしながら、実際の掘削中に細かな調整を行うこと
検証した結果、地層の変化に伴い送水量と送水圧が連動
は非常に困難であり、下記のような問題が生じる。この
して変化し、さらに掘削速度が変化し、コア詰まりやビ
問題は、掘進中において細かな操作が要求されるばかり
ットの焼き付きが起こり易い事に関係が深いことが判明
か、経験上のノウハウが必要であり、技術浸透の妨げに
した。
もなっている。
①
掘進にあたっては、本来一定の条件で行うことにより
段丘レキ層など未固結地盤掘削時には熟練したオペ
良質なコア採取が可能になると考えられるが、地層の変
レーターでなければ良質なコアを連続的に採取する
化が掘削条件の変化の要因となっている。このため、地
ことが困難である。
層がある程度変化しても掘削条件(特に送水量)が変化
水量水圧調整と掘削速度調整を同時に操作する為、
しないような方法を採用することが最適と考え、小型高
操作性が悪い。
圧ポンプを採用することとした。ただし、通常掘削には
③
逸水等のサイフォン現象時、水量調整が困難である。
適応できないために、通常のポンプを並列配管した。
④
デリバリーホース・リターンホース等、配管が多く
②
⑤
前述の趣旨にしたがって考案した掘削時の送水に関わ
なることによる作業スペースの減少。
る機器類の基本仕様とその掘削結果について以下に示
掘削速度が遅い。
す。
全地連「技術e-フォーラム2005」仙台
(1) 基本仕様
削したものである。また、表-2には掘削時の掘進データ
当該手法の機器類に対する基本仕様は、表-1に示すも
のが最適と考え、その組み立て概念図を図-2に示した。
表-1改良装置基本仕様
備 考
ポンプ形式
形式番号
メーカー名
寸法(L×W×H)
㎜
乾燥重量 Kg
ポンプ
吐出量 l/min
仕 様
最大圧力 MPa
備 考
を示した。同表から明らかように、送水量は微小な値で
制御されている。
なお、掘進速度は同一地層で比較できなかったが、改
ポンプ1
(微量送水用)
三連プランジャー
ポンプ
MKW22ED-1
株式会社
丸山製作所
680×360×840
ポンプ2
(通常送水用)
単筒往復ピストン
ポンプ
BG-3C
東邦地下工機
株式会社
678×450×569
28.0
5.5
5.0
67.0
54.0
1.5
良手法では、毎分2cm~毎分3cm と若干バラツキが見ら
れるものの、当初の課題を改善出来た。また、残留スラ
イムの問題もポンプの切り替えによりスムーズに排出で
きた。
φ8㎜ホース配管
ボールバルブ2
圧力計
試錐ポンプ2
(BG-3C)
通常送水用
デリバリーホース
デリバリーホース
ウォーター
スイベルへ
(孔 内)
写-1 崖錐レキ(孔径φ86㎜)
ボールバルブ1
Φ 8 ㎜高圧ホース
試錐ポンプ1
(MKW22GP)
微量送水用
写-2 花崗岩強風化部と新鮮岩(孔径φ66㎜)
表-2 掘進データ
図-2 改良手法の流量微調整方法の配管図
掘削深度
2.3-2.6
2.6-3.5
3.6-4.5
地層でポンプを切り替えるが、その切り替えは、掘進状
地 質
崖錐
崖錐
崖錐
況で判断する。なお、ポンプ切り替え時の操作手順とし
ポンプ送水量
(l/min)
使用ビット
2.0
3.0
3.0
改良手法の掘削では、段丘礫層のような地層と通常の
ては、一旦ボールバルブ1及びボールバルブ2を開放し、
必要としないポンプを停止させて、停止した側のボール
バルブを閉じる。
5.1-6.0
花崗岩
(強風化)
1.8
インプリグネーテッドビット
回転数(回転/分)
60
60
120
給圧(kg)
60
120
写真-1
120
対応写真
60-120
60-300
写真-2
(2) 改良手法を利用した掘削の結果
改良手法を利用して段丘礫層等に適用した結果、送水
4.今後の課題
量の変化は、従来手法と比較して非常に小さく抑えるこ
今回の改良手法は当初の目的を達成することができた
とができた。実際の送水量は1.6l/min~3.8 l/min の範囲
が、適用範囲を広げるためには、問題点も残されている。
で調整に容易に調整できるように改良した
送水量を微量一定に制御することができた効果として
(1) 改良手法の問題点
当該手法は、従来型手法と比較して優位であることが
は、地層の変化に対しても一定の送水を与えることから、
確認できたが、装置として小流量の高圧ポンプを使用し
①コアの乱れを極力押さえる、②ビット先端の冷却効果
ているため、送水量と送水圧の変化に時間的な差が生じ
を確保することができた。また、ボーリングオペレータ
る。深度が浅い場合には問題ないものの、改良手法適用
ーによる調節が容易になったため、操作の煩わしさに対
の制限となっている。また、ポンプ仕様より掘削流体の
する軽減ができた。
循環利用ができないこともあり、市街地での使用も制限
また、ポンプ1の微量送水用の配管をφ8㎜とした結
果、逸水発生時においても配管抵抗により急激な水量の
増大を制御することが可能になった。
される等の問題点を有する。
(2) 今後の展望
改良手法は微量送水を安定して行う事ができることか
ら、礫質土砂の不撹乱試料採取にも応用できる可能性が
3. 実際の掘削事例
崖錐及び強風化花崗岩において適用した事例を以下に
示す。いずれの事例もダブルコアチューブを利用して掘
あり、今後は改良を進めながら適応地盤の拡大や不撹乱
試料の採取等を視野に入れ、完成度の高いものとして多
くの調査に利用できるようにしたいと考えている。
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