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孤立対策としてのアマ無線[10.6MBytes]

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孤立対策としてのアマ無線[10.6MBytes]
岩手・宮城内陸地震・緊急被害調査速報会 平成20年6月27日
於 徳島大学工学部共通講義棟 4F K401教室
孤立地区でのアマチュア
無線の活用事例
徳島大学大学院
ソシオテクノサイエンス研究部
(工学部建設工学科)
准教授 上野勝利
博士(工学)、第一級陸上無線技術士
[email protected]
徳島大学地域防災無線研究会
都市部を想定した中央の
整備計画でなく、中山間地に
適した対策を考えよう。
H20年岩手・宮城内陸地震では、
アマチュア無線によって
多数の被災者が救助されました。
中山間地での孤立が危惧された
土砂災害による道路の被害
中山間地では、代替経路がない。
◎交通の途絶
◎電力線、電話線、通信線の切断
陸上交通・
通信の途絶
孤立の長期化
住民から行政へ
救援要請ができない
被害の拡大
電波の分類
波長の名称
伝播特性と
エネルギ
主な用途・特徴
名称
周波数
VLF
3~30kHz
LF
30~300kHz
長波
電波時計、標準電波
MF
300~3000kHz
中波
AMラジオ,アマ無線
HF
3~30MHz
短波
VHF
30~300MHz
超短波
UHF
300~3000MHz
極超短波
テレビ放送、業務無線、無線LAN
SHF
3~30GHz
マイクロ波
EHF
30~300GHz
ミリ波
衛星放送、衛星通信、高速
データ通信
水蒸気や雨の影響を受ける
エネルギー効率悪い
効率
よい
アマ無線
水中通信
短波放送、アマ無線
FMラジオ、テレビ放送、
防災無線、業務無線、アマ無線
効率
悪い
近距離通信に適したV,UHF帯が防災関係に利用されている。
公助による住民ー行政間の無線通信手段
孤立対策
(アマチュア局除く)
名称
防災無線(同報系)
ほぼ整備
周波数帯
アナログ
単方向
飛ぶ
60MHz帯
普段から
使うものがよい
備考
スピーカー放送や戸別受信機。
役場から住民への一方向のみ。
ほとんどの自治体で整備済み。
周波数再割り当ての要請からデジタ
ルへの移行が求められている。
消防団無線
全国整備率25%
アナログ 150MHz帯
双方向
H28年5月31日までに260MHz帯デジ
タルに移行。伝播距離は数km程度。
簡易無線
アナログ 150MHz帯
双方向
400MHz帯
一般の業務に利用可能。
固定機、車載機、携帯機あり。
伝播距離は数km~20km程度。
地域防災無線
全国整備率10%
アナログ 800MHz帯
双方向
公共施設、学校、病院などに設置。
平成17年度初めの全国整備率は市
町村数で10%程度。
中山間地では伝播特性が悪い。
NTT 孤立防止対策用
衛星電話(Ku1ch)
全国整備率2.2%
双方向
マイクロ波
一般の電話と通話可能。非常時ある
いは訓練時のみ使用可能。通話の有
無にかかわらず、バッテリーの寿命は
飛ばない 20分。
県内孤立集落からの通信手段は
(H17徳島県資料)
孤立の恐れのある集落数
消防団無線がある
364
122
衛星携帯電話
12
衛星電話ku-1ch
12
簡易無線
その他
通信手段はない
6
10
228
NTT超小型衛星通信方式
Ku-1ch




災害時に孤立したエリアと
の通信途絶を防止するた
めに衛星通信を利用して通
信手段を確保する。
持ち運びが可能で、特設公
衆電話としても利用できる。
電話は1回線分。
バッテリー運用の場合、通
話の有無にかかわらず寿
命は20分。
全国の配備率は孤立集落
の2.2%のみ
NTTポータブル衛星通信装置


オフセットカセグレンアンテナ
VoIPの文字が見える
2007年徳島県総合防災訓練にて

災害時に孤立したエリアと
の通信途絶を防止するた
めに衛星通信を利用して通
信手段を確保する。
最大16回線の電話回線を
確保できる。持ち運び可能
なため、山中での災害など
で威力を発揮する。
トラックが入れない場合は、
ヘリで輸送する。
アマチュア無線局とは





金銭上の利益のためでなく、もっぱら個人的な無線
技術の興味によって自己訓練、通信及び技術的研
究の業務を行う無線局をいう。
(電波法施行規則第四条二十四)
人と設備に免許が必要。
(無線従事者免許証、無線局免許状)
仕事に使ってはいけません。
通信の秘密は保護されません(秘話通信の禁止) 。
=誰でも受信してよい。
個人局と社団局があります。
多様性が特徴
多種多様な周波数、
伝播方法、電波形式
アマチュア無線局の特徴
多様性が特徴
アマチュア無線
amateur radio
相補的
非営利に限定
公共的(public service)
多様な周波数
(中波からマイクロ)
多様性が特徴
多様な電波形式(電信からデジタル)
不特定の相手方
秘話通信の禁止
実験、研究
試行錯誤的
テイラーメイド的
想定外への
柔軟な対応
業務無線
commercial radio
営利目的可
私的(private service)
特定の周波数
特定の電波形式
特定の相手方
通信の秘密の保護
事前の想定に対して
全国的に同じ
大きなシステムを作り
万全の体制をとる
一関市の受信者の体制
地域の無線クラブであるJARLグリーンクラブ(会長上
杉健一、会員58名)が対応
◎活発なクラブ(講習会、見学会、アワードなど)
◎消防、警察(H16.5)と協定を締結
◎積極的に防災訓練に参加
発災後孤立者からの信号を受信し、直ちに傍受体制に。
上杉会長が一関署にモービル局を設置し、
会員各局が、被災者からの情報を中継。
少なくとも、5,6名の会員が中継として協力した。

事例1 孤立集落からの情報発信
朝日新聞(asahi.com 2008年6月21日)
宮城県栗原市耕英地区。
自宅の無線機を稼動させた。
電源は発電機
けが人、人工透析などが必要な方は優先的に救出。
孤立した集落で、固いきずなが病人やけが人を救った。
約40分で大半の住民の無事を確認した。住民らが助け出した「駒の湯温泉」の菅原孝さん(86)ら3人が大けがを
していることが分かった。しかし、電話が通じない。
「緊急事態発生。誰かとってください」。観光イチゴ農園を営む菅原耕一さん(55)が無線で呼びかけた。「けが人
がいます。道路が寸断されています」。連絡が取れたのは午前10時半ごろだった。
道路のあちこちに亀裂が入っていた。集落とふもとを結ぶ2本の生活道路は、土砂崩れと地滑りで寸断されてい
た。停電し、電話も通じない。住民は間もなく、集落が孤立状態だと気づいた。
無線で救助を呼びかけた菅原耕一さんは集落内の様子を見回っているとき、「110番して」とのさけび声を聞いた。
「けが人がいる」。慌て て自宅に戻り、 物置から無線機をとり出した。発電機で無線機を作動させ、「緊急事態
発生」とさけんだ。受信した人を通じて消防に、負傷者数と地区が孤立状態であることを 伝えた。
けが人ならびに人工透析が必要な被災者がおり、優先的に救出された。
事例2 孤立旅行者からの情報発信

岩手県一関市国道342号線
祭畤(まつるべ)大橋落橋など、いたるところで被害



須川高原温泉へ向けて、矢櫃ダムから車で
2,30分の位置で、地震に遭遇
付近に観光バスや自家用車など、合わせて
48名が孤立
無線のリンクによって、安心感が生まれ、全
員無事救助された。
Oさんはどのような方か







気仙沼市の自営業の方
20歳くらいからアマチュア無線をはじめた。
H16年に(社)日本アマチュア無線連盟から会員歴
30年表彰
無線歴は一時期中断して、正味38年間。
V,UHF帯のほかにHF(3.5MHz, 7MHz)
SSTV、HAMPALなどのデジタルデータ伝送
一週間前に行われた防災訓練に参加していた。
使用した機器


144MHz帯と430MHz帯のデュアルバンドFM車載型
無線機 出力10W
自動車の12V バッテリーで稼動
アンテナは5/8λモービルホィップ
なお、短波の機材は
車載していない。
車載型無線機の一例
Oさんの経過






144MHzでモービル局が入感
QSO終了後、そのモービル局をコールした。
隣町であったが警察署まで直接出向いて、伝言を
伝えるよう依頼した。
車載移動局のため、信号が低下し、最後まで伝わっ
たが不安であった。
もう一度確認のために433MHzの呼び出し周波数で
CQ呼び出しを行い、グリーンクラブの方とつながっ
た。そこで警察署まで直接出向いていただいた。
同じように孤立し、無線交信を行っている方がいた。
Oさんのコメント





1回目の交信で情報は警察署の担当まで伝達され
ていた。リターンの確認がほしい。
グリーンクラブの方とは始めての交信だったが、5,6
名の方にご協力いただいた。
アナログレピータという中継施設を利用して、地元
気仙沼市の友人とつながり、家族への安否情報の
伝達を依頼した。
警察の窓口へ電話がつながりにくくなっているので、
警察まで直接出向いていただき、無線は有効だった。
ヘリコプターの交信も傍受し、状況の把握を行うこと
が出来た。
Oさんのコメント

先週は防災訓練に参加しており、その経験が
役に立った。

情報の伝達され方と、救助の行動方法を知り、
適切な連絡方法について考えることが出来た。

担当窓口へ電話がかかりにくいことが予想さ
れたため、直接警察署まで出向いていただい
た。
デジタルモード(HAMPALなど)は有用

成功の理由

発信者は上級資格を有するベテランで、また
防災訓練に参加するなど、無線や救助の体
制についてよく理解していた。(自助)

日ごろから防災意識を持った活発な地域クラ
ブがあり、複数の会員が地震後に活動した。
(共助)

警察等と地域クラブが平時より連携しており、
連絡体制が直ちに確立された。(公助)
幸運だった点

休日の午前中で、無線を行っている人が多
かった(平日の日中は少ない)。

孤立地は高原で、一関市方面に比較的開け
ており、V,UHFで市内までの伝搬が可能だっ
た。距離は30km弱。

レピータがアクセスでき、地元の友人とも交信
でき、心強かった。
アマチュア無線の活用
共助
自助
自らの身を守る
個人研究、自己訓練
みなで地域を守る
発信者
防災や無線の
知識、技能、工夫
受信者
公助
訓練体制
行政、
警察、消防
ネットワークの
コーディネイト
アマチュア無線を活用した災害時の通信は、
情報通信における自助・共助の活動である。
徳島の中山間地、
臨海部との通信確保は?
市民レベルでの
都市型
GoogleE
軽便な設備で!
いろいろな手段で!
VoIP?
レピータ?
山岳反射?
豪雨災害
土砂災害
直上電離層伝播
(NVIS)?
急峻な山地によっ
て分断されている
津波の脅威
Winlink?
試行錯誤を行うのが
アマチュア無線
災害時に対応できる
総合通信技能者としてのハム
災害への備えとして、通信技術について実践的な技能
をもつ人材が、地域に必要。
無線通信(無線機、アンテナ、電源、etc)
インターネット
パソコンなどの情報機器
無線通信技能については、次の世代への継承が必要
県内における実践の場
としてのVoIPやHFアマチュア
無線環境の整備を!
那賀町ではH18 年
に町の援助で多数
の町民が資格を取得
孤立対策としての短波帯通信
短波帯のNVIS伝搬の活用
中山間地の電波伝搬実験
8J5NVIS
スカイウェーブプロジェクト
中山間地域からの電波伝搬体験実験実施中
平成20年5月21日~7月31日まで
http://ict.cr.tokushima-u.ac.jp/solution/musen/modules/news/
ご希望があれば、
デモします。
本日18時ころから
準備して運用予定
エコ棟院生室にて
外国人被災者の情報孤立対策



日本語がわからない方でも、米国FCCのアマ
チュア無線免許が、日本国内で取得できます。
FCC試験は、資格を有しているボランティア試
験官が3名以上用意できれば、実施できます。
現在徳島に2名います。試験官募集中です。
1610台風における日赤アマチュア無線
奉仕団による災害ボランティア事例
2004年12月22日
徳島新聞
徳島の事例
若い活力が必要
初心者の
育成が必要
公との連携
外国人被災者の情報孤立対策



日本語がわからない方でも、米国FCCのアマ
チュア無線免許が、日本国内で取得できます。
FCC試験は、資格を有しているボランティア試
験官が3名以上用意できれば、実施できます。
現在徳島に2名います。試験官募集中です。
中継局の例( EchoLink)
安定化電源
ソフトはフリーウエア
モービル機
ラップトップPC
インターフェース
IFはPSKやSSTV用と同じ
VoIPアマチュア無線
IP網では、複数の
経路を利用するこ
とにより、災害に
対する靭性を高め
ることができる。
無線
インターネット網
VoIP
光ファイバ
VoIP
サービス
エリア
被災地近隣
中継局
無線電話
メタルライン
VoIP
サービス
被災地 エリア
他地域
中継局
無線電話
無線電話
被災地内
クライアント局
ハンディ機でも、10km
程度の範囲は通信可能
被災地近隣
中継局
サービス
エリア
ハンディ機などの
軽便な無線局で
国内外各地と交信可
木沢支所からのサービスエリア予測
固定局
アンテナ地上高10m
出力5W
移動局
アンテナ地上高7m
出力5W
145.54MHz, FM
実効放射出力16W
15.3km
木沢支所固定局ー移動局間の通信可能性
マゼンタ S9+20dB
赤
S9+10dB
黄色
S9
緑
S5
青
S1
S9以上で良好に通信可
那賀町の構成案イメージ
町内ネットワーク網
再生塾
中継局
サービス
エリア
町役場
中継局
中継局
中継局
各支所のアマ無線機をパソコンと
接続し、中継局とする。
VoIP無線(エコーリンク)の
コミュニティの形成と災害時活用事例
*BOUSAI*
JH1PGO
JR5YAU-L
徳島市
JG6YAD-L
JA6BHL
*NAGANO*
オール長野ネット
JR0CST
*JN4OQT*
広島ネット
JN4OQT
*KYUSYU*
オール九州
カンファランス
JE6QJV
平時は地域の懇親ネット
*JQ1YJC-L*
いばらきネット
JM1CZS
*CHIBA*
千葉ネット
JJ1MQF
1905台風の東進と共に地域のエコーリンク
ネットワークを、*BOUSAI*カンファランスに
順次接続し、台風に備える体制をとった。
 その後の中越沖地震では、被災地の情報が
*BOUSAI*カンファランスを通じて発信された。

将来像 コミュニティの形成
地域の中学校などに
クラブを
スダチネット(仮称)
ノード局 国内外の
他地域
VoIPレイヤ
地域
ICTクラブ
中山間地 ノード局
無線電話
レイヤ
シニアの
アマチュア局
ノード局
県央部
お遍路さん
アマチュア局
ハンディ機
大学
ノード局
学生
アマチュア局
ハンディ機
地域の防災力
災害に対する靭性
学校
ICTクラブ
ノード局
児童、生徒の
アマチュア局
ハンディ機
自主防災会
ノード局
県南の
臨海部
ボランティア
アマチュア局
皆とつながって
いる安心感
アマチュア局
県西部
アマチュア局
VHF, UHFでの伝搬
徳島大工学部からのサービスエリア予測
固定局
アンテナ地上高20m
出力5W
移動局
アンテナ地上高1m
出力5W
145.54MHz, FM
実効放射出力16W
マゼンタ
赤
黄色
緑
青
徳島大学固定局ー移動局間の通信可能性
サービスエリアは限定的
S9+20dB
S9+10dB
S9
S5
S1
S9以上で良好に通信可
インターネットを介した
VoIPシステム
上那賀支所からのサービスエリア予測
上那賀支所固定局ー移動局間の通信可能性
固定局
アンテナ地上高10m
出力5W
移動局
アンテナ地上高7m
出力5W
145.54MHz, FM
実効放射出力16W
マゼンタ S9+20dB
赤
S9+10dB
黄色
S9
緑
S5
青
S1
S9以上で良好に通信可
木頭支所からのサービスエリア予測
木頭支所固定局ー移動局間の通信可能性
固定局
アンテナ地上高10m
出力5W
移動局
アンテナ地上高7m
出力5W
145.54MHz, FM
実効放射出力16W
マゼンタ S9+20dB
赤
S9+10dB
黄色
S9
緑
S5
青
S1
S9以上で良好に通信可
まとめ





資格の有効活用を!
さまざまな知識・技能が地域の防災力を高める。
中山間地では他地域まで電波は届きにくい。
平時の練習にVoIP無線を。
短波通信は中山間地の孤立時に有効。
想定外を想定しよう。
都市部を想定した中央の
整備計画でなく、中山間地に
適した対策を考えよう。
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