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継目用鉄まくらぎの改良試験敷設と保守効果(続報)

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継目用鉄まくらぎの改良試験敷設と保守効果(続報)
IV-285
継目用鉄まくらぎの改良試験敷設と保守効果(続報)
○日本貨物鉄道 正会員 宮本 三平
日本貨物鉄道 正会員 三枝 長生
日本貨物鉄道 正会員 中薗
裕
東亜道路工業 正会員 阿部 長門
1.はじめに
昨年1)に続き、常磐線田端操・隅田川駅間で敷設されている継目用鉄まくらぎの振動試験を行なった。今回
はさらに、車輪の継目通過時に発生する音の周波数分析を行い、音圧・騒音レベルを測定した。
2.試験の概要
試験箇所は昨年と同じ場所で、鉄まくらぎも昨年の試験以降そのまま残したものを使用した。継目用鉄まく
らぎの種類は、鉄まくらぎ(現在使用のまくらぎ)、鉄まくらぎ内筒袋3本、鉄まくらぎ内外筒袋9本、重軸
重用鉄まくらぎ、ダクタイル製まくらぎの5種類であり、まくらぎの上でレールの内、外、及び隣接木まくら
ぎのレール外側まくらぎ上の3箇所で振動加速度を測定し、各々の継目側面(軌道中心より2.5m地点)で車輪
の通過音を、マイクを使い測定した。その測定位置・方法は図-1に示すとおりである。
ケース1:鉄 ケース2:鉄内袋 ケース3:鉄内外袋 ケース4:重軸重鉄 ケース5:ダクタイル鉄
●:まくらぎ中央加速度計
▲:まくらぎ端部加速度計
◆:隣接まくらぎ加速度
r
■:マイク設置位置
図1 測定位置図
3.試験結果
(1)列車速度とAP(オールパス振動加速度レベル)との関係(図-2~4)
鉄まくらぎと袋を配置したものとの比較では、袋を多く配置するほど経年によるレベルの増加が低く抑えら
れることや、継目まくらぎと隣接まくらぎとの差が少なくなることが判る。これより、袋を配置することによ
り継目局部の破壊が低く抑えられ、より広域的に衝撃を吸収していることが伺われる。
また、まくらぎ形状による比較では、従来の鉄まくらぎと重軸重用で1年後の継目部のレベルが大きくなっ
ているのに対し、隣接まくらぎは逆に低くなっている。その傾向は重軸重用のほうが小さく、ダクタイルでは
これらの変化はほとんどない。このことより継目への衝撃の集中度は従来の鉄まくらぎが最も大きく、重軸重
160
ケース2(H11.12)
ケース4(H11.12)
ケース1(H12.12)
ケース3(H12.12)
ケース5(H12.12)
150
140
130
120
ケース1(H11.12)
ケース3(H11.12)
ケース5(H11.12)
ケース2(H12.12)
ケース4(H12.12)
150
<隣接木まくらぎ上>
ケース2(H11.12)
ケース4(H11.12)
ケース1(H12.12)
ケース3(H12.12)
ケース5(H12.12)
140
130
120
110
0
10
20
30
機関車速度(km/h)
40
50
0
10
20
30
機関車速度(km/h)
40
50
1年後の通過速度に対する加速度増加率
<継目まくらぎ内軌側>
ケース1(H11.12)
ケース3(H11.12)
ケース5(H11.12)
ケース2(H12.12)
ケース4(H12.12)
振動加速度レベル(dB)
振動加速度レベル(dB)
用、ダクタイルの順に小さくなっていると考えられる。逆に継目部の道床破壊の進行速度は従来の鉄まくらぎ
2.5
軌道内
レール外側
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
ケース1
ケース2
ケース3
ケース4
ケース5
図-2 振動加速度レベルと速度の関係 図-3 振動加速度レベルと速度の関係 図-4 経年による加速度レベルの
(継目まくらぎ内軌側) (隣接木まくらぎ上) 増加率
キーワード 鉄まくらぎ、継目用まくらぎ
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-2622 〒300
茨城県つくば市要315-126 ℡0298-77-4150
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Fax0298-77-4151
土木学会第56回年次学術講演会(平成13年10月)
IV-285
が最も大きいことが判る。
これらの結果から、継目部の経年劣化に対しダクタイル製が最も有効で、次いで袋9個を配置したもの、重
軸重用の順であることが見受けられる。
(2)継目沈下量の経年変化について(図-5)
ケース2を除き沈下が漸増している傾向を示しており、15ヶ月
ケース1
ケース2
ケース3
ケース4
ケース5
経過時点での沈下総量は筒袋9個のものが最も大きく、ダクタイル
0
が最小となった。これより、(1)で示された形状や袋の配置によ
沈下量 (mm)
10
20
り道床の劣化速度が大きく違う傾向は、沈下量からは明確に裏付け
30
40
られなかった。
50
60
0
2
4
6
8
10
12
14
16
(3)上下沈下量の経年変化について(図-6)
供用月数 (月)
測定した振動加速度波形を、時間に対し2回積分して求めたまく
図-5 継目沈下量の経年変化
らぎの上下変位量の経年的な変化を示す。
増加の傾向は図-4から得られる傾向とほぼ同じで、鉄まくらぎでは1年後の変位量が他に際立って大きい。
また重軸重用鉄まくらぎでは経年による変位の増加率がやや大きいものの変位の総量は小さい。一方、袋を9
個配置したものやダクタイルは総量が小さいだけでなく、1年後の変位量の増加も見られないことから、継目
部分の道床が安定していることが裏付けられる。
50
40
騒音レベルAP値 [dB(A)]
上下変位量 (mm)
(鉄
(鉄
(鉄
(重
(継
まくらぎ中央 直後
まくらぎ中央 1年後
まくらぎ端部 直後
まくらぎ端部 1年後
60
30
20
10
0
ケース1
ケース2
ケース3
ケース4
ケース5
130
120
110
100
90
80
120
条件
図-6 上下変位量の経年変化
ま くら ぎ )
ま くら ぎ +筒 袋 3本 )
ま くら ぎ +筒 袋 9本 )
軸 重 鉄 ま くらぎ )
目 用ダクタイル)
130
140
150
160
ま く ら 木 外 側 A C C A P 値 (d B )
170
図-7 騒音レベル測定結果
(4)継目振動による騒音レベルについて(図-7)
図-7に、発生音の騒音レベルをオールパス加速度レベルに対して整理したものを示す。これらは加速度レ
ベルに対し、袋を配置した鉄まくらぎ、ダクタイルではほぼ直線近似で表すことができる。また加速度レベル
に対し、重軸重用レベルは最も音圧・騒音レベルが小さい結果となっており、対騒音性の面では最も優れた性
能を示している。
4.まとめ
昨年からの継続調査により、保守効果を考慮した有道床継目構造の最適化について、
①ダクタイル製まくらぎにすることで経年による道床劣化を著しく遅くすることができる。
②重量化(または断面係数を増大化)することにより道床劣化をある程度遅くでき、また継目の通過音によ
る騒音の減少に効果がある。
③鉄まくらぎに重量のある袋を配置することで道床の劣化速度を遅く出来るが、その場合鉄まくらぎの内側
だけでなく外側にも配置することでかなりの効果が期待できる。
等の知見が得られた。
今後は、継目の隣接まくらぎなどの影響を考え、短まくらぎを改良したものやかけつぎ等の違った継目構造
についても研究を行なってゆきたい。
〈参考文献〉
1)中薗 裕、三枝長生、宮本三平、阿部長門:継目用鉄まくらぎの改良敷設試験と保守効果;第55回土木
学会年次講演会;2000.
-571-
土木学会第56回年次学術講演会(平成13年10月)
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