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ハウス雨よけ栽培アスパラガスの減農薬栽培技術の確立

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ハウス雨よけ栽培アスパラガスの減農薬栽培技術の確立
ハウス雨よけ栽培アスパラガスの減農薬栽培技術の確立
住
所
氏
名
所属組織名
鉾田市飯島
飯島 優樹
大洋サンサンアスパラ組合
1
課題化の背景
ハウス雨よけ栽培アスパラガスでの主要害虫であるヨトウムシ類とアザミウマ類に対
し,防虫ネットと天敵昆虫を組み合わせた防除技術の利用による減化学農薬栽培技術の
確立を目指した。
2
技術開発しようとする内容
防虫ネット(天窓有り),光反射シート及び天敵昆虫を組み合わせた害虫防除技術の
利用による,ハウス雨よけ栽培アスパラガスの減化学農薬栽培技術の確立
実施内容
1)試験材料
(1)供試作物
アスパラガス
(2)供試資材
防虫ネット
天敵昆虫
スーパーウエルカム
: 目 合 0.4mm
: タ イ リ ク ヒ メ ハ ナ カ メ ム シ 2,000 頭 /10a
:ククメリスカブリダニ
200,000 頭 /10a
バ ン カ ー プ ラ ン ツ : 平 成 1 7 年 度 シ シ ト ウ 74 株 /10a, カ ラ ン コ エ 37 株 /10a
平 成 1 8 年 度 ピ ー マ ン 74 株 /10a, カ ラ ン コ エ 37 株 /10a
光反射シート
: 幅 100 ㎝
※1
2)試験区構成
上段:導入の有無 下段:導入日
年度
平 成 17 年 度
平 成 18 年 度
試験区名
実証区
対照区
実証区 1
実証区 2
対照区
略名
【 17 実 】
【 17 対 】
【 18 実 1】
【 18 実 2】
【 18 対 】
年生
6 年生
6 年生
7 年生
7 年生
8 年生
間 口 ×長 さ
5.4m×50m
5.4m×50m
5.4m×50m
5.4m×50m
5.4m×60m
株 間 ×畝 数
防虫ネット
(天 窓 有 り )
35 ㎝ ×3
○
4/下 旬
○
6/22
○
5/30, 6/23
35 ㎝ ×3
35 ㎝ ×3
○
35 ㎝ ×3
35 ㎝ ×3
天敵昆虫
○
5/16, 8/3 ※ 2
○
4/22
○
7/11 ※ 3
バンカー
プランツ
光反射
シート
※1 各ハウス 1 棟
※ 2 タ イ リ ク ヒ メ ハ ナ カ メ ム シ 2,000 頭 /10a 再 放 飼
※ 3 6/27 か ら 7/11 に か け て ハ ウ ス 外 周 へ 設 置
○
7/11 ※ 3
3)調査内容
(1)各試験区の温度及び湿度(平成17年度,平成18年度)
(2)各試験区のヨトウムシ類の発生数(平成17年度)
(3)各試験区のアザミウマ類の発生数(平成18年度,平成18年度)
(4)各試験区の収量(平成17年度,平成18年度)
技術開発の成果
表 1 天 窓 開 放 時 の温 度 差
1)各試験区の温度及び湿度
【17 実 】-【17 対 】
【17 実 】- 外 気
防 虫 ネ ッ ト 区 【 18 実 1】 で
は , 無 ネ ッ ト 区 【 18 実 2】 と
平均
-0.3
1.5
比較して温度がやや高かった
最高
-0.2
6.7
( 図 1)。ま た ,防 虫 ネ ッ ト 区
最低
-0.2
0.1
【 17 実 】 で 最 高 気 温 を 記 録 し
た 天 窓 閉 鎖 時( H17.8.15)と , 表 2 天 窓 閉 鎖 時 の温 度 差
ほぼ同様の外気温変化を示し
【17 実 】-【17 対 】
【17 実 】- 外 気
た 天 窓 開 放 時( H17.8.1)の 温
平均
1.9
6.1
度を比較したところ,天窓を
最高
6.1
19.0
開 放 す る こ と で 【 17 実 】 も 無
最低
0.0
0.8
ネ ッ ト 区【 17 対 】と ほ ぼ 同 じ
温度で推移し,温度上昇が押
さ え ら れ て い た ( 表 1,2) 。
天窓開放時には懸念されたほ
どの温度差は認められなかっ
た。
(℃)
【17 対 】 - 外 気
外気温
1.8
6.9
0.3
26.9
31.7
23.1
8/15
(℃)
【17 対 】 - 外 気
外気温
4.2
12.9
0.8
26.5
31.5
23.1
【18実2】平均気温
【18実2】最高気温
【18実2】最低気温
【18実1】平均気温
【18実1】最高気温
【18実1】最低気温
気温の推移
60.0
50.0
40.0
気温(℃)
30.0
20.0
10.0
図 1
3 )ア ザ ミ ウ マ 類 の 発 生 数 に つ
いて
140
・平成17年度
120
【 17 実 】で は 天 敵 昆 虫 放
飼 後 30 日 後 ま で は ア ザ ミ
100
ウマの発生量は抑えられた
80
が ,そ の 後 は【 17 対 】と 同
60
様に増加し,抑制効果は認
め ら れ な か っ た ( 図 3) 。
40
・平成18年度
20
防 虫 ネ ッ ト ,天 敵 昆 虫 及
0
び光反射シートを導入した
【 18 実 1】 で は , 天 敵 昆 虫
放 飼 後 45 日 後 ま で は ア ザ
図 2
ミ ウ マ の 発 生 量 は【 18 対 】と 同 様 に
気温の推移
10月上旬
9月下旬
9月中旬
9月上旬
8月下旬
8月中旬
8月上旬
7月下旬
7月中旬
7月上旬
6月下旬
6月中旬
6月上旬
5月下旬
0.0
5月中旬
2)ヨトウムシ類の発生数につ
いて
【 17 実 】 で は 【 17 対 】 と
比 較 し て 25.8%の 発 生 数 で あ
り ,抑 制 効 果 が 認 め ら れ た( 図
2)。ま た ,ネ ッ ト 設 置 2 年 目
と な っ た 【 18 実 1】 で は , ヨ
トウムシ類による被害はほぼ
根絶された(達観)。
8/1
期間(旬)
8月下旬
8月中旬
8月上旬
7月下旬
7月中旬
7月上旬
6月下旬
6月中旬
6月上旬
ヨトウムシ頭数(頭/10a)
ヨトウムシ頭数(頭/10a)
3
【17実】
【17対】
ヨトウムシ類の幼虫発生数
推 移 し た が ,そ の 後 は【 18 対 】以 上 に 増 加 し ,抑 制 効 果 は 認 め ら れ な か っ た 。ま た ,
光 反 射 シ ー ト の み の【 18 実 2】も【 18 実 1】と お お む ね 同 様 の 推 移 を 示 し た( 図 3)。
【18 実 1】(7/12),【18 実 2】・【18 対 】(7/14)
【17 実 】・【17 対 】(6/10)殺 虫 剤 散 布
殺虫剤散布
120
【17実】
【17対】
【17対】
【17実】
【18実1】
【18対】
【18実2】
【18実1】
【18対】
【18実2】
アザミウマ頭数(頭/枚・日)
100
80
60
【17 実 】天 敵 放 飼
40
【18 実 1】天 敵 放 飼
20
6/12
アザミウマ類の発生数
7/2
7/22
4)収量について
・平成17年度
【 17 実 】で は【 17 対 】と 比 較 し て 103.7%
の収量であった。高温によって懸念され
た 減 収 は 認 め ら れ な か っ た ( 図 4) 。
・平成18年度
【 18 実 1】 で は 【 18 実 2】 と 比 較 し て
99.0 % の 収 量 で あ っ た 。 高 温 に よ っ て 懸
念 さ れ た 減 収 は 認 め ら れ な か っ た( 図 5)。
※ 【 18 対 】 は 年 生 が 異 な る た め , 単 純
比較できない。
4
8/11
考察
1)各試験区の温度及び湿度
天 窓 の 設 置 は , 目 合 0.4mm の 防 虫 ネ ッ ト
によって生じる通風不良による温度上昇を
抑制する有効な手段であることが示され
た。実際のハウス内作業においても,それ
ほどの温度差は感じられなかった。また,
天窓を設置したことにより湿度も若干低下
した。
2)ヨトウムシ類の発生数について
防虫ネットの設置によって侵入抑制効果
が認められたが,設置 2 年目にも,極少数
ではあるが幼虫の発生を確認した。原因と
して,ネット以外の隙間から侵入した可能
性が考えられた。
3)アザミウマ類の発生数について
8/31
9/20
【18 実 1】天 敵 再 放 飼
調査期間
450.0
450.0
400.0
400.0
350.0
350.0
収量(㎏/10a)
収量(㎏/10a)
図 3
5/23
300.0
300.0
8月
8月
7月
7月
6月
6月
250.0
250.0
200.0
200.0
150.0
150.0
100.0
100.0
50.0
50.0
0.0
0.0
【17実】
【17実】
図 4
【17対】
【17対】
収 量 比 較 ( 平 成 17 年 度 )
450.0
400.0
350.0
収量(㎏/10a)
収量(㎏/10a)
0
5/3
300.0
8月
7月
6月
250.0
200.0
150.0
100.0
50.0
0.0
【18実1】
図 5
【18実2】
収 量 比 較 ( 平 成 18 年 度 )
・平成17年度
【 17 実 】の 天 敵 昆 虫 は ,7 月 21 日 の 調 査 時 ま で は わ ず か に 確 認 さ れ ,ア ザ ミ ウ マ
の 防 除 効 果 が 認 め ら れ た 。 し か し 8 月 中 旬 の 高 温 期 を 境 に 【 17 実 】 の ア ザ ミ ウ マ 数
は増加しており,天敵昆虫が定着しなかったものと思われた。
・平成18年度
前 年 度 の 結 果 を 受 け , 天 敵 昆 虫 導 入 区 の 【 18 実 1】 で は , 天 敵 昆 虫 の 放 飼 時 期 を
早 く す る と と も に ,バ ン カ ー プ ラ ン ツ と し て ピ ー マ ン 及 び カ ラ ン コ エ を 導 入 し た が ,
【 18 実 1】 の ア ザ ミ ウ マ 数 は 気 温 の 上 昇 と と も に 増 加 し , 天 敵 昆 虫 の 効 果 を 持 続 さ
せ る に は 至 ら な か っ た 。 ま た , 【 18 実 1】 で は 8/3 に 天 敵 昆 虫 を 再 放 飼 し た が , 放
飼後まもなくアザミウマ数が増加しはじめたことから,定着しなかったものと思わ
れた。
なお,光反射シートについては,作業労力の関係から布設時期が遅れたこともあ
り,アザミウマ抑制効果を確認することはできなかった。
5
開発した技術の問題点,留意事項等
以 上 の 結 果 か ら ,現 状 で は 天 敵 昆 虫( タ イ リ ク ヒ
メ ハ ナ カ メ ム シ ,ク ク メ リ ス カ ブ リ ダ ニ )を ア ス パ
ラガスほ場に定着させることは困難であるように
思 わ れ た 。原 因 と し て は ,ハ ウ ス 内 が 天 敵 昆 虫 の 生
存 限 界 温 度 を 超 え て い る か ,ア ス パ ラ ガ ス の 形 状 が
天敵昆虫の生態に適さない可能性などが考えられ
た 。な お ,ア ザ ミ ウ マ 類 を 捕 食 す る 天 敵 昆 虫 は 他 に
も 数 種 類 存 在 す る た め ,今 後 も 引 き 続 き ア ス パ ラ ガ
スのほ場環境に適応性の高い天敵昆虫の探索を行
いたい。
目 合 0.4 ㎜ の 防 虫 ネ ッ ト は ヨ ト ウ ム シ 類 の 侵 入 防
止 効 果 が 認 め ら れ た が ,ア ス パ ラ ガ ス は 栽 培 期 間 が
長期にわたることもあり,2 年目に入ると日陰部分
を中心に藻類等による汚れ・目詰まりが多発した
( 図 6) 。
ま た ,今 回 の 試 験 で 用 い た 光 反 射 シ ー ト は 不 透 水
性 で あ っ た た め ,布 設 に 当 た っ て は 明 渠 等 に よ っ て
ハウス周辺の排水対策を講ずる必要があった(図
7) 。
ハウス巻き上げ機を活用して自作した天窓はハ
ウ ス 内 の 気 温・ 湿 度 抑 制 に 有 効 で あ っ た が ,設 置 に
当 た っ て 多 大 な る 労 力 を 要 す る た め ,今 後 さ ら に 構
造 の 簡 素 化 を 図 る 必 要 が あ る ( 図 8) 。
6
図 6
藻類による防虫ネットの汚れ
図 7
ハウス周囲の排水対策
図 8
天窓の構造
問い合わせ先
鉾田地域農業改良普及センター
電 話 番 号 0291(33)4111
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