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2015年9月シンガポールの航空機MRO(整備・修理・分解点検)産業

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2015年9月シンガポールの航空機MRO(整備・修理・分解点検)産業
シンガポールの航空機 MRO(整備・修理・分解点検)産業
シンガポール駐在員事務所
佐藤
憲彦
シンガポールは東南アジア諸国のハブ空港としてチャンギ国際空港を擁し、2014 年には年間 5,400 万
人の旅客数を誇っています。更なる需要拡大を見込み、2017 年には第 4 ターミナル、2025 年頃には第 5
ターミナルが完成する見通しで、拡張工事が進んでいます。第 5 ターミナル完成後は、年間約 1 億 5,000
万人の利用が可能となります。アジア太平洋諸国の旅客数は、2014 年の 11 億人から 2020 年には 29 億人
に増える見通しで、この需要を吸い上げる戦略をとっています。
シンガポールはこのようにハブ空港として有名である傍ら、あまり知られていませんが航空機の MRO
(Maintenance, Repair & Overhaul:整備・修理・分解点検)産業の集積地でもあります。MRO の市場規
模は 2014 年は全世界で 577 億 US ドルですが、2024 年には約 1.5 倍の 868 億 US ドルに拡大すると言われ、
なかでもアジア市場は 2 倍の拡大が見込まれています。シンガポールはこのアジア市場の 25%を占め域
内トップのシェアを持っているのです。シンガポール北部に位置するセレター空港は、320ha の敷地を擁
し、CAAS(民間航空庁)と JTC(工業団地の開発・管理を行っている機関)が MRO 事業の工業団地として
Seletar Aerospace Park を運営しています。この工業団地には、100 社を超える航空関連企業があり 2
万人の労働者が従事しています。①地理的な優位性と安定した社会・経済、②豊富な路線を有する 24 時
間ハブ空港、③積極的な政府支援と質の高い研究拠点、④エンジンメーカーの地域拠点、を背景に更な
る発展をめざしています。ANA や JAL などの日本の航空会社の機体も分解点検などの重整備の多くはシン
ガポールで行っているようです。
MRO 産業は、シンガポールのみならず、コストの安い中国やメキシコ、東南アジア諸国でも産業基盤が
整い始めています。一方、日本は航空機製造分野と同様に遅れをとっているのが現状です。理由として
は、以下の事項が考えられます。
【航空機市場規模の比較】
日本
・コスト競争力が低い
・法制度の未整備
・整備を行う広大な土地が少ない
・航空機の市場規模が小さい
定期航空機
イギリス
アメリカ
約 600 機
約 900 機
約 7,300 機
ビジネスジェット
約 50 機
約 470 機
約 17,000 機
固定翼エンジン機
数百機
約 9,600 機
約 20 万機
98
約 200
約 5,000
空港数(公共)
MRO 産業分野に強みをもつ日本企業は、こうした大きな海外市場の開拓を模索しています。世界の MRO
事業者が多数出展する「シンガポールエアショー」、次回は 2016 年 2 月の開催です。日本企業も多数の
出展が期待されています。
(28.2.9 現在)201602 広告審査済
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