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租税条約個別 論点⑥

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租税条約個別 論点⑥
#
05
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マエストロの解説
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マエストロの解説
□□□□■□□□□■□□□
複雑になりすぎた 法人税をもう
一度勉強しよう
租税条約では、相手国による不合理な課税な
どの紛争があった場合に、通常の外交ルートと
は別に税務当局同士が直接協議を行い、そうし
た紛争を解決する「相互協議」の手続きが定め
られている。この相互協議は、国際税務の領域
税務における第一人者 〝税務マエストロ 〟による税実務講座
では重要な手段、手続きとなっている。
今週のマエストロ&テーマ
租税条約個別
論点⑥
−仲裁条項
#
25
品川克己
日本公認会計士協会租税
調査会専門委員(国際租
税専門部会)
税理士法人プライスウォーターハウスクーパ
ース
(マネージング・ディレクター)
略歴
89年より大蔵省主税局に勤務。90年7月より同国
際租税課にて国際課税関係の政策立案・立法及
しかしながら、昨今、この相互協議において
も解決できない事案が増加している。相互協議
によっても解決できない場合は、不合理な課税
が放置され結果的に二重課税となる等、納税者
の負担が非常に大きくなる。こうしたことを背
景に、相互協議をより効果的、確実な手段とす
べく、
「仲裁」という手続きが導入されつつある。
日本においても、日本・オランダ租税条約や日
1
本・香港租税条約 において導入されたところ
である。
1
仲裁手続きの導入
① 相互協議の限界
相互協議は、相手国において、「条約の規定
に適合しない」課税を受けた場合や「受ける恐
び租税条約交渉等に従事。96年ハーバード・ロー
れのある」場合に、そのような課税を排除する
スクールにて客員研究員として日米租税条約につ
ため、2 国間の税務当局が話し合うものである
いて研究。97年より00年までOECD租税委員会
に主任行政官として出向(在フランス)
し、
「 OECD
移転価格ガイドライン」及び「OECDモデル条約」
の改定、及び関連会議の運営に従事。01年9月財
務省を辞職し現職。
26
の合意に至る必要がないこととされている。し
たがって、結果として協議が決裂することも
多々あるようである。決裂する場合には、二重
課税等、望ましくない状況に至るにもかかわら
次回のテーマ
#
が、担当当局は、協議の結果、必ずしも何らか
経営戦略に応える
企業再編成税制
ずこうした結果となるのは、そもそも相互協議
朝長英樹
いるためである。
税理士
経営戦略の1つとして組織再編成税制を活
用できる方法を、同税制等の創設を主導し
た筆者が事例形式で解説する。
※取り上げて欲しいテーマを編集部にお寄せください。
[email protected]
そのものが、次のように「努力規定」となって
1
正式には「所得に対する租税に関する二重課税の回避及
び脱税の防止のための日本国政府と中華人民共和国香港特
別行政区政府との間の協定」という。平成 22 年 11 月 9 日
に署名、平成 23 年 8 月 14 日に発効している。
No.421 2011.10.3
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(日本・香港租税条約第 24 条第 2 項)
りある者がこの協定の規定に適合しな
権限のある当局は、1 に規定する申立てを
い課税を受けた事案について、1 の規定
正当と認めるが、自ら満足すべき解決を与
に従い、当事者が一方の締約者の権限
えることができない場合には、この協定の
ある当局に対して申立てをし、かつ、
規定に適合しない課税を回避するため、他
(b)当該一方の締約者の権限ある当局か
方の締約者の権限のある当局との合意に
ら他方の締約者の権限ある当局に対し
よって当該事案を解決するよう努める。成
当該事案に関する協議の申立てをした
立したすべての合意は、両締約者の法令上
日から二年以内に、2 の規定に従い、両
のいかなる期間制限にもかかわらず、実施
締約者の権限ある当局が当該事案を解
されなければならない。
決するために合意に達することができ
権限ある当局は事案解決のための努力をすれ
ばよいのであって、具体的な解決のための何ら
かの妥協までは求められていないのである。移
転価格課税の解決も含め、
相互協議での合意は、
ない場合において、
当該者が要請するときは、当該事案の未
解決の事項は、仲裁に付託される。
(以下略)
自国の課税の一部(若しくは全部)を放棄する
意味合いもあり、課税当局としては相手の主張
を受け入れることは本質的に難しいといえよ
2
具体的手続き
う。それゆえ、努力規定としての相互協議では
仲裁は、現在のところ実例はないが、概ね、
限界があるのである。
次のような手順で進められると考えられる(日
② 仲裁への移行
本・香港租税協定議定書6及び「実施取決め 」)。
相互協議が、紛争解決のために権限ある当局
以下、日本・香港租税協定に定められた手続き
による努力を求めるだけの制度にすぎず、紛争
を概観する。
が確実に解決されるとは限らない。こうしたこ
① 仲裁への付託
とから、相互協議を確実でより実効性の高いも
日本、香港両者(国)のいずれかが相手側に
のとするため、相互協議手続きの一環として導
相互協議の申立てをした日から 2 年以内に、両
入された制度が「仲裁」という手続きである。
当局が事案解決のための合意に達することがで
これは、相互協議の開始後 2 年を経過しても当
きない場合に、協議の基因となった課税対象者
局間の解決に至らない場合に、納税者の要請に
(納税者)が要請するときに仲裁に付託される
より、独立の仲裁人により構成される委員会に
こととなる。ただし、対象事項について、いず
より解決を求める手続きで、原則として、その
れかの締約者(国)の裁判所又は行政審判所が
決定に従った相互協議の合意が行われることと
すでに決定を行った場合には、仲裁に付託され
なる。
ないこととなっている。
(日本・香港租税条約第 24 条第 5 項)
(a)一方の又は双方の締約者の措置によ
2
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2
② 仲裁の要請
仲裁の要請を行う者が、それぞれの居住地国
の権限ある当局に書面で要請する。日本の場合
「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府と中華人民共和国香港特別行政区政府との間
の協定二十四条 5 に係る実施取決め」(2010 年 12 月 7 日署名)
。
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は国税庁相互協議室となる。要請を受け入れた
員長は当事者(国)以外の国籍、居住者である
権限ある当局は、10 日以内に、相手国へ写し
ことが求められる。
を送付する。
⑤ 仲裁決定
③ 付託事項の決定
仲裁は、仲裁人の単純多数決で決められる。
両締約国の権限のある当局が仲裁の要請を受
仲裁決定は、委員長が事案の検討を開始する
領した日の翌日から 90 日以内に、両者は、仲
に必要なすべての情報を受領した旨を両権限あ
裁のための委員会によって解決されるべき事項
る当局及び仲裁の要請を行った者に対して書面
(「付託事項」
)を決定し、書面で仲裁の要請を
で通知した日の翌日から 180 日以内に両権限あ
行った者に通知する。 る当局及び仲裁の要請を行った者に対して通知
④ 仲裁人の選定
される。
仲裁の要請を行った者が付託事項を受領した
⑥ 仲裁決定の実施
日の翌日から 90 日以内に、両締約者の権限あ
両締約者の権限ある当局は、仲裁に至った事
る当局は、それぞれ 1 名の仲裁人を任命する。
案に関し相互協議の合意を行うことにより、仲
2 人目の仲裁人が任命された日の翌日から 60 日
裁決定の通知が行われた日の翌日から 180 日以
以内に、この 2 名の仲裁人が第 3 の仲裁人を任
内に仲裁決定を実施することとなる。
命する。この第 3 の仲裁人が委員長となる。委
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