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カンキツ
4.ウイルス病・ウイロイド病
カ ン キ ツ の ウ イ ル ス 病 や ウ イ ロ イ ド 病 は 、主 に 接 ぎ 木 に よ り 伝 染 す る 病 害 で あ
り、保毒すると樹勢の衰弱や果実生産力の低下などが起こる。そのため、高接ぎ
な ど の 品 種 更 新 や 改 植 に 当 っ て は 、ウ イ ル ス 病 の 伝 染 蔓 延 防 止 に 十 分 な 注 意 を 払
う必要がある。
カンキツの温州萎縮病、カンキツモザイク病および接木部異常病については、診
断キット を 用 い る こ と で 圃 場 で 簡 易 に 診 断 で き る 。ウ イ ル ス 、ウ イ ロ イ ド の 正 確 な
診 断 の た め に は 、 サ ン プ ル 採 穂 時 期 、 方 法 等 適 切 に 行 う 必 要 が あ る た め JA や 普
及指導センターなどの関係機関へ問い合わせる。
1 .温 州 萎 縮 病
Satsuma dwarf virus (SDV)
(1) 生 態
温 州 ミ カ ン の 春 葉 に 舟 型 、サ ジ 型 の 病 徴 を 示 し 、樹
勢 が 衰 え 果 実 収 量 が 低 下 す る 。ま た 一 般 に 罹 病 樹 で は
春 枝 の 節 間 が つ ま り 、叢 生 す る 。果 実 は 腰 高 に な り 品
質 が 低 下 す る 。早 生 温 州 の 中 に は 、時 々 舟 型 、さ じ 型
葉 を 呈 し て 温 州 萎 縮 類 似 症 を 示 す 樹 が あ る が 、接 種 に
よ り サ サ ゲ 、シ ロ ゴ マ に も 反 応 を 示 さ な い も の は 温 州
萎縮病ではない。接木伝染のほか、土壌伝染もする。
(写真:福岡県園芸・茶
病害虫図鑑より)
○耕種的防除
ア.無病の母樹から採穂する。罹病樹でも夏枝では病徴が隠ぺいされているの
で注意する。
イ.罹病樹は伐採、抜根する。
ウ.発病園では、病徴跡と健全樹の境界に溝を掘って遮断する。
2 .カ ン キ ツ モ ザ イ ク 病
Cityus mosaic virus (CiMV)
(1) 生 態
果実の病徴は温州ミカンの他、レモン、ネーブルなどで発
生が知られている。果実に「トラミカン」と呼ばれる症状が
あ ら わ れ る が 、こ れ は 早 生 温 州 で は 9 月 頃 、普 通 温 州 で は 10
月頃にならないと判別できない。温州萎縮病ウイルスと近縁
のウイルスによりおこると考えられている。ササゲ、シロゴ
マなどに反応が認められる。罹病樹では舟型葉を表すがや
や軽い。
( 写 真:福 岡 県 園 芸・茶
病害虫図鑑より)
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温州ミカン以外のカンキツ品種への高接ぎ更新でも果実の被害が見られること
がある。接木伝染のほか、土壌伝染もする。
(2) 防 除 法
○耕種的防除
ア.罹病樹は伐採、抜根し、跡地にはカンキツ類を定植しない。
イ.発病園では、病徴跡と健全樹の境界に溝を掘って遮断する。
3 .接 ぎ 木 部 異 常 病
Apple stem grooving virus (ASGV)
(1) 生 態
罹病樹は穂木とカラタチ台との接合面に亀裂を生
じ、わい化または衰弱するとともに樹体はやがて枯
死に至る。外見的には穂木部分の肥大現象(台負け
症状)やくびれを生じるが、穂木部と台木のいずれ
にも特別の病徴はみられない。
病原ウイルスは実験的には樹液接種もできるが、
自然条件下で接触伝染がおこる可能性は少ない。
( 樹 皮 を 剥 ぐ と 、台 木 と の
境に亀裂が確認できる)
(2) 防 除 法
○耕種的防除
ア.伝染経路は感染穂木と考えられるので健全母樹(ウイルス検定済みが少なく
と も 10 年 以 上 の カ ラ タ チ 台 成 木 で 接 ぎ 木 部 が 正 常 の 樹 ) か ら 採 穂 す る 。
4 .カ ン キ ツ ス テ ム ピ ッ テ ィ ン グ 病( ハ ッ サ ク 萎 縮 病 ) Citrus tristeza virus (CTV)
(1) 生 態
接ぎ木やミカンクロアブラムシで伝染する。このウイルスはステムピッテイン
グ系とシードリングイエローズ系に分けられる。カラタチは免疫に近い抵抗性を
示す。
(紅まどか:葉の萎縮、奇形が
(紅まどか:葉の奇形、果実
みられる)
の小玉化がみられる)
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ア.ステムピッティング系統
生育障害、萎縮、果実の小玉化、木部のピッテッングなどの症状をあらわ
す 。ハ ッ サ ク 、ナ ツ ダ イ ダ イ 、ネ ー ブ ル オ レ ン ジ 、伊 予 柑 、グ レ ー プ フ ル ー ツ
等に発病し被害が大きい。温州ミカンやレモンは保毒しても被害はない。
イ.シードリングイエローズ系統
葉が黄化し、生育を阻害する。ハッサク、ナツダイダイ、レモン、グレー
プフルーツ等が弱く被害が大きい。スィートオレンジやマンダリン等は保毒
しても害はない。
(2) 防 除 法
○耕種的防除
ア .穂 木 は 必 ず 母 樹 の ス テ ム ピ ッ テ ィ ン グ な ど の 有 無 を 検 査 し 、ピ ッ テ ィ ン グ
症 状 の な い も の を 使 用 す る 。温 州 ミ カ ン へ の 中 晩 柑 品 種 の 高 接 ぎ 更 新 は 保 毒
している可能性が強いので好ましくない。
イ.接ぎ穂の生育が悪い場合や明らかな症状を認める場合には伐採処分する。
ウ .強 剪 定 、結 果 過 多 、気 象 災 害 な ど に よ っ て 樹 が 衰 弱 す る と 被 害 が 大 き く な
るので、管理を良くし施肥を多く行い樹勢の維持に努める。
エ . 不 知 火 等 新 し い 品 種 で は 、 本 病 に か か り に く く す る 弱 毒 ウ イ ル ス M16A
を接種した苗も販売されている。改植にあたっては弱毒接種苗を栽植する。
5 .カ ン キ ツ エ ク ソ コ ー テ ィ ス 病
Citrus exocortis viroid (CEVd)
(1) 生 態
病原はウイロイドである。台木の亀裂、剥皮、生育障害などの
症状をあらわし、接ぎ木や樹液で伝染する。カラタチ、シトレン
ジなどの台木で侵され、レモン、グレープフルーツ、スィートオ
レンジ、温州ミカンなどに発生する。我が国で使用しているカラ
タチ台で被害が甚大となる。
CEVd に 保 毒 し て い な く て も 、 他 の カ ン キ ツ ウ イ ロ イ ド の 複 合
感染により上記の症状を発症する事例が多く見つかってい
る。
( 写 真:福 岡 県 園 芸・茶
病害虫図鑑より)
(2) 防 除 法
○耕種的防除
エ ク ソ コ ー テ ィ ス の 保 毒 樹 に 使 用 し た 剪 定 鋏 、鋸 は 水 酸 化 ナ ト リ ウ ム( 2~ 4% )
と ホ ル マ リ ン( 2~ 4% )の 等 量 混 液 を 使 用 直 前 に 作 っ て 、こ れ で 消 毒 す る 。ま た 、
簡 便 な 方 法 と し て 、台 所 用 漂 白 剤『 ハ イ タ ー 』で 洗 う こ と で 消 毒 が 可 能 で あ る が 、
開封後 6 ヶ月以内のものを使用する。
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ナシマルカイガラムシによる被害果
ナシマルカイガラムシ
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カンキツ
17.ワタミヒゲナガゾウムシ
1.生態と防除のねらい
成 虫 は 体 長 3.5mm 程 度 、 暗 褐 色 か ら 黒 褐 色 の ま だ ら 模 様 で 、 幼 虫 は 白 色 の ウ ジ
状 、 終 齢 幼 虫 で は 5mm 程 度 に 達 す る 。 成 虫 は 果 実 に 産 卵 し 、 ふ 化 幼 虫 は 果 実 内 部
を 食 害 す る 。 果 実 内 の 表 皮 に 近 い と こ ろ で 蛹 化 し 、 果 皮 に 2~ 3mm 程 度 の 穴 を あ
けて羽化する。
ウンシュウミカンでは、幼虫が幼果や成熟果を加害し、幼果が加害された場合、
果 実 は 黄 変 し 落 下 す る 。発 生 初 期 は 生 理 落 果 や 摘 果 し た 果 実 で 増 殖 し 、そ こ か ら 発
生 し た 成 虫 が 健 全 果 実 に も 産 卵 す る 。被 害 は 露 地 栽 培 園 で も 確 認 さ れ て い る が 、ハ
ウス栽培園で多い。薬剤防除は成虫発生時期に行う。
2.防除法
○耕種的防除
生理落果や摘果した果実は発生源となるので、園外に持ち出す。
ワタミヒゲナガゾウムシの成 虫
幼 虫 による果 実 へた部 の被 害 (ウンシュウミカン)
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カンキツ
18.
チャノホコリダニ
1.生態と防除のねらい
体長は 0.2mm程度とかなり微小である。極めて雑食性で、カンキツ類のほかナス、
キュウリ、チャ、シクラメンなどを加害し、カンキツ類ではレモンやライム、宮内伊予
柑で多発する傾向がある。チャでは雌成虫が芽の中で越冬する。
本種に加害されると灰白色のかさぶた状の傷が果梗部周辺から放射状に連続して発
生することが多い。チャノキイロアザミウマによる傷と似るが、果面全体に被害が発生
する場合は本種による被害の可能性が高い。
虫が微小で発見が難しい上、加害から症状が発現するまでに時間がかかることから、
症状が認められた頃には高密度になっていることが多い。このため、予防散布が重要で
ある。前年に発生が認められた園では落弁期から7月にかけて薬剤防除を行う。
チャノホコリダニ成虫(上)
チャノホコリダニによる被害果
と卵(下)
チャノキイロアザミウマ
による被害果
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Colletotrichum horii
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カキ
14.
カキサビダニ
1.生態と防除のねらい
体長は 0.15mm程度とかなり微小である。加害されると果面や葉にさび症状が発生
する。被害の発生程度は品種によって異なり、果実に溝のある‘西条’や‘次郎’では
多く、‘富有’では寄生は認められるものの被害は少ない。
本種は休眠芽の鱗片下で成虫越冬し、3月下旬頃から増殖を始める。5月頃からは上
位展開葉に移動し、増殖する。新梢の伸長停止および葉の硬化に伴い幼果のヘタ下に侵
入するが、8月頃から密度は漸減する。7~8月の2次伸長枝でも増殖する。
薬剤防除は、本種が薬剤のかかりやすい展葉に寄生する4月下旬から5月中旬(展葉
終止期)に行う。
カブリダニ類は本種の重要な天敵と考えられている。
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Botryosphaeria sp.
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ブドウ
12. ウ イ ル ス 病
西南暖地の巨峰等では、夏季の高温等気象要因により果実の着色不良や遅延が
起こる。しかし、着色不良や遅延さらには糖度低下にはウイルス病が関与してい
る場合がある。病気を保毒している樹では、農薬での防除は不可能であるためウ
イルスフリー苗木への更新を行う。
1 .リ ー フ ロ ー ル 病
Grapevine lrafroll virus
(1) 生 態
世界中のブドウ産地に広く分布しており、ブドウの病害の中で最も被害が大き
いものの一つである。欧州系ブドウでは、葉巻症状や早期紅葉が発生するが、県
内で栽培されている品種では葉に症状が発生しない。しかし、果実の糖度低下、
熟期の遅延、着色不良、果房の発育不良といった症状がどの品種でも程度の差は
あるがあらわれる。
従来、国内における伝染は、接ぎ木によってのみ行われるとされていたが、ク
ワコナカイガラムシによる伝染が低率ながら確認されている。
(2) 防 除 法
○耕種的防除
定植する際はウイルスフリー苗木を植栽する。また、苗木を育成する場合は検
定済みのウイルスフリー樹から採穂する。
(写真左:ウイルス保毒
樹の着色不良果実)
(写真右:ウイルスフリ
ー樹の健全果実)
2 .え そ 果 病
Grapevine berry inner necrosis virus
(1) 生 態
1984 年 、 茨 城 県 の 巨 峰 に 初 め て 発 生 し 、 そ の 後 、 青 森 、 秋 田 、 栃 木 、 山 梨 の 各
県で発生が確認されている。幸いにこれまで本県では未発生であるが、今後、注
意を要する病害である。病徴は、巨峰では葉が小さくなり、退緑黄色~白色のモ
ザイク斑を葉の一部または全体に生じる。果実は幼果の果面に果肉内部まで達す
る濃緑色のえ死斑が入る。果実糖度は低く、品質が悪くなり、収量も低下する。
伝染は、接ぎ木によるほか樹液によって行われる。
(2) 防 除 法
○耕種的防除
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定植する際はウイルスフリー苗木を植栽する。また、苗木を育成する場合は検
定済みのウイルスフリー樹から採穂する。
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12.スジブトホコリダニ
1.生態と防除のねらい
成 虫 の 体 長 は 0.2mm 程 度 、淡 黄 褐 色 で 、幼 虫 は 白 色 、卵 は 半 透 明 楕 円 形 で あ る 。
高 温 多 湿 を 好 み 、施 設 栽 培 で の 発 生 が 多 い 。主 に 生 育 初 期 の 芯 部( 生 長 点 )、特
に展葉前の副梢基部に多く寄生する。幼果、穂軸、果梗も吸汁加害し、加害部位
は褐変する。数頭で劇症化するが、展開した葉では寄生は少なくなる。発育速度
が 速 く 、 25℃ で は 5 ~ 7 日 で 1 世 代 経 過 す る 。
本種は食菌性であり、健全な植物上で繁殖・加害することはほとんどない。し
かし、果粒上に花冠が長く残って灰色かび病などの病害が発生するとそこで繁殖
し植物を加害するので、花冠の除去やほ場の湿度管理等の予防に努める。薬剤防
除は発生初期に行う。
2.防除法
○耕種的防除
資材に付着して移動する可能性があるので、発生ほ場で使用した資材を流用する
際には注意する。
果 実 および果 梗 の被 害
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