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船舶バラスト水に関する方針: 慎重に検討中 – 米国における最近

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船舶バラスト水に関する方針: 慎重に検討中 – 米国における最近
船舶バラスト水に関する方針: 慎重に検討中 – 米国における最近の動向
Vessel ballast water policies: going overboard? - A significant new development in the US
ここ数年、米国の政府機関(特に、沿岸警備隊と環境保護庁)と海運業界の間で、バラスト水の取
り扱いと処理に関する実行性のある基準の設定方法について多くの議論が行われている一方で、こ
れとは別にいくつかの政策の変更も同時に検討されてきました。
その一つが司法制度です。米国水域を通航する
い仕事に取り組まなければなりません。なぜな
船舶によるバラスト水の取り扱い、処理、廃棄
ら、その基準は、環境保護団体の同意が得られ、
に関する法令の変更を求めて、さまざまな環境
なおかつ船舶の運航会社が実際に利用可能な装
保護団体が多くの訴訟を起こしています。
置と技術を使って達成できるレベルのものでな
ければならないからです。EPA では、この難し
そのような訴訟の一つに、天然資源防衛協議会
い仕事を、外部の支援を取り付けて仕上げよう
や全米野生生物連盟などの有名な環境保護団体
としています。具体的には、全米科学アカデミーに
が、五大湖地域を含む米国水域を通航する船舶
EPA 科学諮問委員会への助言を委託し、生態系
のバラスト水処理基準に関して、米国環境保護
保護の観点からバラスト水排水の微生物含有濃
庁(EPA)に対して起こしたものがあります。
度の基準の設定方法と、その基準を達成するた
この訴訟は、連邦裁判制度の下、その過程でさ
めに利用可能なバラスト水処理技術とその効果
まざまな中間判決が下されながら、数年かけて
に関する報告書を作成しようとしています。
争われており、直近では D.C.巡回区の控訴審裁
判所で審理が行われていました。ただし、最終
カリフォルニア州やミネソタ州など一部の州に
的には判決ではなく、当事者間の和解によって
おいて、きわめて高い基準を発表したものの、
2011 年 3 月 9 日に決着しました。裁判所に提出
現在利用可能なバラスト水処理技術ではその要
された和解契約の中で、EPA は、五大湖および
求するレベルを実現できないという現実に直面
米国沿岸から 3 マイル以内の海域を通航する
し、ややトーンダウンせざるを得なくなったこ
300GT 以上の船舶に適用される船舶通航許可
とがあります。EPA は同じ轍を踏まないよう取
(VGP)プログラムのバラスト水の項目を完全
り組もうとしています。今回の和解契約は、各
に修正すると述べています。また、EPA は、和
州が独自の基準を設定することを妨げるもので
解契約の中で、動物プランクトン、植物プラン
はないことに留意が必要です。
クトンなどの微生物が一定量のバラスト水に含
まれる濃度に上限値を設定する意向を示してい
これらの基準は、米国の港に入港したり、米国
ます。EPA は、この新しい法令を 2012 年中に
の沿岸 3 マイル以内を通行する船舶の船主や運
公布することを約束しています(ただし、船舶
航業者に対して、必要な装置を揃え、船員の訓
に対応準備期間を与えるため、2013 年 12 月ま
練を行い、手順を整備するという負担をもたら
でには発効させるものとしています)。
す可能性があります。海運業界は、バラスト水
基準の今後の動向を注意深く見守る必要があり
ます。Gard もこの動向に注視し、EPA から公布
された後、同基準に関する報告を行います。米
国の新しい法令は、バラスト水に関する実務慣
行や基準の見直しなど、他国や IMO などの国
際機関の方針に影響を及ぼす可能性があります。
そのため、米国水域を通航しない運航業者も、
バラスト水浄化基準が変更される可能性がある
これを受けて、EPA の法案起草者は、バラスト
ことを理解しておいてください。
水中の外来微生物の濃度基準の設定という難し
Vessel ballast water policies: going overboard?
- A significant new development in the US
Gard News 202 May/July 2011
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