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患者が選ぶ乳房温存療法における寡分割照射

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患者が選ぶ乳房温存療法における寡分割照射
患者が選ぶ
乳房温存療法における
寡分割照射
NHO福山医療センター 放射線治療科1)
乳腺外科2)
中川富夫1) 兼安祐子1) 水本文美1)
三好和也2) 河田健吾2)
はじめに
方法
早期乳癌患者に対する治療方法として乳房温存療法が
普及している。乳房温存療法とは、乳房の整容性を保ち
つつ乳癌を根治させる目的で行われる治療法で、乳房温
存手術(乳房部分切除+センチネルリンパ節生検あるい
は腋窩郭清)の後に、患側全乳房に対し術後放射線治療
を行うことが必須となっている。
乳房に対する放射線治療として標準的な方法は、1回線
量2グレイ×25分割=総線量50グレイを照射する通常分
割照射である。この方法の問題点としては、治療期間が
長く、仕事をしている方や子育てをしている方、また遠隔
地に在住の方にとっては負担が大きい治療であることが
挙げられる。
そこで治療期間を短縮するために新しく始められるよう
になった治療が、寡分割照射である。2011年に米国放射
線腫瘍学会よりガイドラインが発表され、1回線量2.66グ
レイ×16分割=総線量42.56グレイを照射する方法が推
奨されている。
この方法は1回線量を増加させているため、治療期間を
通常分割照射の3分の2に減らすことができるが、治療効
果や副作用の程度は通常分割照射と変わらないと報告さ
れている。
アンケート調査
• 医師事務作業補助者がインタビュー形式で実施
アンケートの流れ
アンケート見本
②治療終了時
①治療開始時
Q1.
オレンジの項目について、あてはまる数字に○をつけてください。
治療番号
ID
照射方法
仕
事
通常照射
/
寡分割照射
1.している →[
2.していない
1.加入している[
2.していない
照射部位
フルタイム
高校生以下 1.いる →[
の 子 ど も 2.いない
がん保険
年齢
/
人]
パートタイム
介 護
アフラック
/
右
日本では平成26年4月の診療報酬改定をきっかけに、
全国的に寡分割照射を導入する病院が増加した。
当院でも4月より寡分割照射を開始している。
/
左
アフラック以外
思ったより長かった
2
思っていた通り長かった
3
思っていた通り短かった
4
思ったより短かった
Q2.
]
通院は大変でしたか?
1
大変だった
2
そうでもなかった
Q3.
副作用についておたずねします。
a.
皮膚炎の症状は思っていたより軽かったですか?重かったですか?
]
b.
Q1.
不十分
十分
1
3
2
4
5
Q4.
Q2.
医師の説明はわかりやすかったですか?
Q3.
Q4.
1
思ったより重かった
2
思っていた通り重かった
3
思っていた通り軽かった
4
思ったより軽かった
放射線肺炎に対する不安は強いですか?
通常照射と寡分割照射に関する医師の説明は十分でしたか?
1
とても強い
2
やや強い
3
そうでもない
照射回数を自分で選択できるのはよかったですか?それとも、医師に決めてほしかったですか?
1
自分で選択できてよかった
2
医師に決めてほしかった
わかりやすい
3
2
4
5
Q5.
今回選択された照射回数は、満足いくものでしたか?
1
満足している
2
満足していない〔理由:
〕
通常照射と寡分割照射を選ぶための用紙に書いてある説明は読みましたか?
1
読んだ
2
読んでいない
感想
用紙の内容は理解できましたか?
理解できた
2
3
4
5
結果
①対象患者14名のうち、
各照射方法の選択患者数
は以下のようであった。
②インフォームド・コンセントに対する
評価は以下のようであった。
Q. 医師の説明はわか
りやすかったか?
Q. 医師の説明は
十分であったか?
14%
7人
この際、医療機関側が一方的に治療を提供するのでは
なく、患者さん自身が通常照射と寡分割照射を選ぶこと
ができる制度を導入した。
14%
7人
86%
86%
通常分割照射
寡分割照射
目的
患者さんの選択理由や選択制に対する満足度を聞き、
今後の診療に役立てるためのアンケート調査を実施した
ので報告する。
治療期間についての感想として当てはまるものはどれですか?
1
以下の質問について、該当する数字に○をつけてください。
1
• 1回2.66グレイ×16分割
• 総線量42.56グレイ
• 治療日数:22日間
歳
1.している
2.していない
理解できなかった
• 1回2グレイ×25分割
• 総線量50グレイ
• 治療日数:33日間
該当する数字に○をつけてください。
乳房温存療法の照射方法選択アンケート
1
寡分割照射
• 治療の感想や選択の
満足度を聞き取り
• インフォームド・コンセ
ントの感想や選択理
由を聞き取り
わかりにくい
通常分割照射
②治療終了時
①治療開始時
わかりやすい
十分
ややわかりにくい
やや不十分
わかりにくい
不十分
③照射方法の選択制に関する感想は以下のようであった。
Q. 選択制はよかったか?
18%
Q. 自分の選択に満足しているか?
18%
対象
82%
82%
H26/4/1-10/31の期間で乳癌術後照射を受けた患者
29名のうち以下の条件に該当する患者
・乳房部分切除術を施行
・診断時年齢が50歳以上
・原発巣がpT1-2(腫瘍径5cm未満)
・化学療法を併用しない
選択制
対象
14人
選択制
対象外
15人
自分で選択できてよかった
満足している
医師に決めてほしかった
満足していない
結論
対象患者:14名
乳房全切除
3人
50歳以下
3人
DCIS
6人
その他 3人
乳癌術後照射患者内訳(H26年10月末)
充分なインフォームド・コンセントを行った上で選択され
た照射方法はそれぞれ同数であった。選択理由を聴
取したところ、患者一人一人が自分の体やライフ・スタ
イルに合わせた選択をしていることがわかった。照射
方法の選択制は多くの患者にとって有意義であると思
われる。
現在、広島県内の放射線治療施設19施設のうち、患
者が自分の意思で照射方法を選ぶことができる施設
は3施設、県東部では当院のみである。患者が安心し
て治療方法を選択できるよう、今後もアンケート調査を
実施し、診療に役立てていきたいと考えている。
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