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AED 内部情報の活用を促進する方策に関わる研究

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AED 内部情報の活用を促進する方策に関わる研究
厚生労働科学研究費補助金
循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業
循環器疾患等の救命率向上に資する効果的な救急蘇生法の普及啓発に関する研究
(H21-心筋-一般-001 )
(研究代表者 丸川 征四郎)
平成 21-23 年度研究報告
分担研究報告
AED 内部情報の活用を促進する方策に関わる研究
研究分担者
小菅
宇之
横浜市立大学付属市民総合医療センター高度救命救急センター
平成 24(2012)年 3 月
小菅
目
1.研究者名簿
次
···················································
2
研究要旨
···················································
3
A.研究目的
···················································
3
B.研究方法
···················································
4
C.研究結果
···················································
5
D.考察
···················································
12
E.結論
···················································
13
F.健康危険情報
···················································
14
G.研究発表
···················································
14
2.分担研究報告書
H.知的財産権の出願、登録情報
·····································
3.資料
資料1、茨城県自動体外式除細動器(AED)設置施設登録制度実施要項
資料2、AED 内部データの保存に関する説明書
小菅
1
14
研究者名簿
研究分担者
小菅 宇之
横浜市立大学附属市民総合医療センター
高度救命救急センター
研究協力者
小菅
浅利 靖
弘前大学医学部 救急・災害医学
丸川 征四郎
医療法人医誠会 医誠会病院
2
AED 内部情報の活用を促進する方策に関わる研究
小菅
宇之*1、浅利 靖*2、丸川 征四郎*3
横浜市立大学付属市民総合医療センター高度救命救急センター*1、弘前大学大学院医学研
究科救急・災害医学講座*2 、医誠会病院*3
研 究 要 旨 : 市 民 が 自 動 体 外 式 除 細 動 器 ( AED ) を 使 用 す る PAD ( public access
defibrillation )による救命例が増大している。PAD で使用された AED 機器の内部には、除
細動前後の心電図波形などのデータが保存されている。この AED 機器の内部のデータ(以下
AED 内部データとする)の取り扱いは地域ごと、機器ごとに異なり、救急医療に充分活用さ
れているとは言いがたい。また、その検証が不十分である。
そこで我々は PAD で使用された AED 機器から内部データを取り出し、地域および全国規模で
PAD の効果を検証するためのシステム構築を目的に検討してきた。まず、AED の導入では先
んじているアメリカの状況を確認しつつ、回収システムを検討した。プランとして、①救急
隊が医療機関に AED 搬送する、
②医療機関が AED 内部データを取り出し救急医療に活用する、
③全国一ヶ所の解析センターにメール添付でデータを集約する、というシステムを検討して
きた。周囲の状況の変化もあり、このシステムでは問題があり、システムの変更を行った。
結論:医療機関に AED が運ばれた場合は、容易に運用することが可能であるが、AED の場所
が移動することが問題を引き起こす可能性があり、AED の設置場所に AED 内部データを回収
に行くシステムの構築が必要であり、AED 使用情報を集め、AED 機器メーカーに依頼をして
内部データを回収し、活用する方法を提案する。また、全国レベルでの AED データ回収の相
談窓口の設置を検討すべきである。
A.研究目的
チェックのログの保存、②AED の電源が投入さ
市民が AED
(自動体外式除細動器 Automated
れた時点から開始される、機器の作動状況とパ
External Defibrillator)を緊急時に使用す
ッドからのモニター心電図情報である。
ることが、2004 年 7 月より、認められている。
電源投入後に記録が開始される②のデータ
しかし、ほぼ同じ機器を使用している消防・救
の回収をすすめることにより、A:位置データ
急隊員に対しては、MC(メディカルコントロー
として、使用された AED の設置場所と使用場所
ル Medical Control)下での使用であり、使用
がわかる。B:時間データとして、電源が投入さ
後には検証制度があり、その使用と機器の管理
れた時間、パッドの貼付時間、解析時間、除細
がされている。これに対して市民による AED
動時間、電源切断時間までが記録される。C:
の 使 用 に よ る 除 細 動 ( Public Access
心電図データとして、パッド貼付直後の初期心
Defibrillation)は、所轄官庁への報告義務も
電図から始まり、解析時の波形、除細動時の波
なく、使用された実績の把握が困難な状況が続
形が時間経過と共に、記録される。
いている。さらには、AED にはデータ保存機能
本研究の目的は AED の内部データを回収・検
がある。これらのデータ保存機能は 2 種類のデ
討することにより①AED の使用に対する検証
ータを記録する。それは、①定期的な自己機器
を行う。②AED の内部データを診断治療に活用
小菅
3
する体制を整える。③AED の効率的配置を検討
体外式除細動器を用いた心疾患の救命率向上
すること、である。
のため体制の構築に関する研究(H18-心筋
現在、AED 使用時の内部データは、心停止の
-01)
」において AED 内部データの回収と使用に
発生状況と病院前(さらに詳細に加えると救急
おける問題点の抽出を行い、解決できる問題点
隊到着前)を正確に伝えるデータであり、傷病
として AED 内部データ読み出しソフトの普及
者の診療に必須であるが、現在国内において有
率が非常に低いことが判明し、全国の拠点とな
効に活用するシステムはなく、AED の内部デー
る救命センター20 カ所をデータ読み出し拠点
タは散発的に活用されているだけである。
としての整備を行った。今後、AED 内部データ
2004 年 7 月から、厚生労働省医政局長名の
の読み出し拠点を整備し、回収ポイントを増や
「非医療従事者による自動体外式除細動器(A
し MC 単位での AED 内部データ回収、検証シス
ED)の使用について」により非医療従事者の
テムが出来るように進めていく。
緊急時の AED 使用が認められ、AED が各所に設
B.研究方法
置されている。しかし、この通達には AED の非
AED データ収集における問題点の抽出とその
医療従事者の緊急時の使用を認めることが記
解決に主眼を置く。ただし、改善していける点
載されているが、努力目標として、
に関しては、早急に改善を計っていく。
―――――――――
以下の事業を行った。
4 効果の検証
非医療従事者がAEDを使用した場合の効
① AED データ回収システムのシステムの見
果について、救急搬送に係る事後検証のしくみ
直し:AED の使用現場、搬送救急隊、搬
の中で、的確に把握し、検証するよう努めるも
送先医療機関から情報聴取を行い、各現場
のとし、その際、
「メディカルコントロール体
での問題点の見直しを行い、AED データ
制の充実強化について(平成 15 年 3 月 26 日付
回収システムの再構築を検討した。さらに、
消防庁救急救助課長、厚生労働省医政局指導課
AED の普及とともにこれを取り巻く、
長通知)
」により、庁内関係部局間の連携を密
AED 製造販売メーカー、設置業者なども
に、事後検証体制の確立に引き続き努めること。
新規参入が増え状況が大きく変わってき
が掲げられているが、努力目標であり、現在、
ているため、この状況を取り入れたシステ
ムの構築を図った。
利用後の検証の仕組みはなく、成果の検証とさ
②
らなる向上のための見直しがはかられていな
AED 内部データ回収システム全国ネット
いことが、現況である。また、AED を使用され
ワークの強化:現在までの研究成果として、
た傷病者の受け入れ病院は、AED を使用した場
救命救急センターを中心として全国 20 カ
所の位置データは搬送救急隊から得ることが
所に AED データ回収拠点として整備を行
出来るが、内部データは臨床現場で必要である
い、本邦で発売されている三社すべての
にも関わらず、内部データを適時に取得するこ
AED 内部データ読み込みソフトを配布し
とができない。さらに、AED の使用データを広
た。これら拠点病院の整備と維持は今後の
く集めることにより、心停止発生時の要因を解
データ収集のための重要なポイントとな
析し AED の効率的配置を検討することが、可能
り、AED 内部データ回収網の維持発展の
となる。
ためにアドバイスを行う。さらに必要な地
域を選定しデータ回収拠点としての整備
平成 20 年までの厚生労働科学研究の「自動
を進めていく。1 県 1 データ回収拠点の整
小菅
4
備を行うことが目標となる。さらに唯一の
を行っている地域はほとんどなく、設置業者や
AED 国産メーカーである日本光電の新機
搬送先病院の負担となっている。これらの改善
種は以前のものと回収ソフトが異なるた
法を検討する。
め、新しく購入検討が必要である。また、
データ交信方法も最新式の Bluetooth を用
C.研究結果
いているためアダプターも新しく必要と
1)AED 内部データ回収の問題
なる。さらにデータ回収ポイントを増やし
使用後の AED 内部データを取り出す方法は、
た。
各メーカー各機種により様々である。コンピュ
③ 個人情報としての問題:AED 内部データ
ーターの通信機能の急速な進歩に歩調を合わ
は傷病者の個人情報であるが、取り扱い方
せ、大きく変化をしている。
法に関して、広く意見を求め公開する必要
がある。AED データの所有権は誰にある
A. 専用ケーブルについて
のか、厚生労働省、総務省、弁護士などの
日本光電では、アメリカ Cardiac Science
見解を確認し、付随する法律上の問題点と
(AED-9100、
社からの導入品の 9000 シリーズ
その解決策についての検討を行う。救急医
AED-9200、AED-9231)
、1200 シリーズでは、
学会、救急医療財団などの関連団体の見解、
専用の通信ケーブルを利用して、専用ソフ
意見も集約し検討、さらにそれを公開する。
ト RescueLink をインストールしたコンピ
④ 情報収集:AED の設置・使用・教育に関し
ューターの RS232 ポートに接続する方法を
ては米国に一足の長がある。研究者を海外
用いている。また、メドトロニック・フィ
派遣し、AED 内部データの AED 内部データ
ジオコントロールでは、LP500 などの初期
の回収と検証システムの情報収集を行った。
のモデルでは、専用ケーブルを用いてコン
また、現在の判明している問題点は、
ピューターの RS232C ポートに接続する。
①
AED が使用されたことの把握
ただし、現在のコンピューターには RS232
②
使用された AED 誰が回収し、そのデー
ポートがなく、USB を介して RS232 ポート
USB 変換ケーブルを使用する必要があり、
タを誰が取り出すか
専門店での購入が必要となる。AED の発売
AED データ回収方法として、①現場の救急隊
初期に、大量に発売されている AED である
が使用された AED を搬送される患者と共に搬送
が、現在このデータ通信を必要とするタイ
し、収容先病院へ携帯する。収容先病院でこの
プは日本光電、メドトロニック・フィジオ
AED からデータを取り出す。救急隊が AED を返
コントロールからは発売されていない。し
却する。②AED 設置業者に AED 使用時には、パ
かし、2011 年より、新規参入したオムロン
ッド交換などの再整備のために設置業者に連
では、アメリカ Cardiac Science 社から、
絡が行き、整備を行う。AED データを再整備時
パワーハート 3G を導入しており、本機種
に回収し設置業者に依頼し AED 内部データを取
のデータ通信は RS232C ケーブルを用いて
り出し、データ回収拠点で収集する。③搬送先
いる。
医療機関が使用された AED を取りに行き、デー
B. CF カードについて
フィリップス/レールダル/フクダ電子は、
タを取り出し返却をする。
これは救急隊と地域のメディカルコントロ
初期はコンパクトフラッシュカード(CF
ールと関わって問題である。現状では①の方法
カード)などのデータカードを介して、そ
小菅
5
のカード内に保存されたデータをコンピ
カタログ上オプションとして IrDA アダプ
ューターとカードリーダーを用いて接続
ターが掲載されている。この IrDA の方式
し、データを回収する。FR2 は平成 22 年
は、携帯電話ではプロフィールの送受信な
末でほぼ発売が終了したが、日本だけでな
どで身近な方式であり、通信面を正対させ
く世界でも非常に販売量の多い AED であ
るなど、意図して通信させるには非常に優
った FR2は、CF カードを用いている。こ
れた方法であるが、携帯電話以外の分野で
の CF カードの読み取り機能は、標準的な
は通信方法として通信スピードに限界が
カード読み取り器には附属している。しか
あり、今後の期待が出来ない存在となって
し、最新型の SD カードなどとは異なり、
いる。以前は国内の大手メーカーからアダ
細いピンを用いているためにこのピンが
プターが発売されていたが、現在では発売
破損しやすく、破損後は使用が困難となる。
が中止され、通常の家電量販店ではすでに
今後のカードリーダーの供給が問題にな
入手が出来ず、インターネットの専門店を
る可能性がある。また、CF カードメモリ
経由し、入手する必要がある。また、今後
ー本体自体も通常のコンピューター専門
さらに価格が上昇し、今後の供給が困難と
店で見つけることは難しくなっている。
なる可能性が高い。
C. 赤外線通信について
D. Bluetooth について
CF カードでは、問題があると考えられ、フ
日本光電が新しく自社開発した AED-2100
ィリップス/レールダル/フクダ電子は最
では、Bluetooth(ブルートゥース)を採
新機種の HS-1 と FRxでは赤外線を用いた
用して専用ソフトをインストールしたコ
IrDA(Infrared Data Association)規格で
ンピューターと接続するようにしている。
赤外線通信データ交換を行うようになっ
Bluetooth は、携帯情報機器などで数 m 程
ている。AED 本体には赤外線の IrDA ポート
度の機器間接続に使われる短距離無線通
があり、コンピューターに専用ソフトと
信技術の一つで、ノートパソコンや PDA、
USB 経由の赤外線ポートを装着して、AED
携帯電話などでケーブルを使わずに接続
データ通信を行う。メドトロニック・フィ
し、音声やデータをやりとりすることがで
ジオコントロールでは、新しいモデルの
きるが、通信する機器全てに Bluetooth を
CR-Plus、LP1000 等では赤外線ポート IrDA
搭載しているか、USB を介して Bluetooth
を利用して内部データ転送を行う仕組み
に接続するかが必要である。Bluetooth(ブ
になっている。メドトロニック・フィジオ
ルートゥース)は、デジタル機器用の近距
コントロールでは、価格は高価であるが、
離無線通信規格の 1 つである。数 m から数
カタログ上オプションとして IrDA アダプ
十 m 程度の距離の情報機器間で、電波を使
ターが掲載されている。韓国の大宇から発
い簡易な情報のやりとりを行うのに使用
売されている Paramedic CU-ER1、アイパッ
される。PC(主にノートパソコン)等のマ
ド NF1200 も赤外線 IrDA を用いてコンピュ
ウス、キーボードをはじめ、携帯電話、PHS、
ーターにデータ転送が可能となっている。
スマートフォン、PDA での文字情報や音声
旭化成アドミスでは、アメリカ ZOLL 社よ
情報といった比較的低速度のデジタル情
り、AED Plus™を導入し販売しているが、
報の無線通信を行う用途に採用されてい
AED Plus™も赤外線 IrDA を用いてコンピュ
る 。 半 径 10 - 100 メ ー ト ル 程 度 の
ーターにデータ転送が可能となっている。
Bluetooth 搭載機器と、最大 24Mbps で無線
小菅
6
通信を行う。モバイル通信における廉価な
換ケーブルを装着し、この RS232C ケーブル
通信端末用の規格であり、それほど厳密な
に、日本光電 AED-9000 シリーズ用の専用ケ
送受信の制御や秘匿性は考慮されていな
ーブル(本体に付属している)を装着し、有線
い。現在では簡易なデジタル無線通信とし
で AED とコンピューターがつながる。ソフト
ての利便性が認識され、多様な分野で普及
は本体に付属している。
が進んでいる。Bluetooth は、無線接続の
②メドトロニック LP500 シリーズ
状態を意識せずに常時つないだままでの
コンピューターの、USB ポートに RS232C
使用状況に適している。今後開発される
変換ケーブルを装着し、この RS232C ケーブ
AED 機器の接続方法として、現在最も進め
ルに、LP500 用の専用ケーブルを装着し、有
られる接続法である。
線で AED とコンピューターがつながる。ソフ
トは別販売である。
2)AED データ回収システム用コンピューター
現在使用している AED データ回収用のコン
③フィリップス/レールダル/フクダ電子の
ピューターを示す。コンピューター本体の機能
FR-2
は、余り高機能で有る必要はなく、2004 年に
コンピューターの USB に、メモリーカード読み
発売されたパナソニック社製造の CF-T2 を本
取り機を接続し、本体から CF カードを外し、
体として使用している。各社のソフトはほとん
読み取り機に挿入し読み取る。ソフトは、イン
どが CD-ROM で提供されているため、ソフト導
ターネットから無料でダウンロードできる機
入時には、外付けドライブを使用しソフトを導
能が非常に限定されたものと、購入する高機能
入している。また、OS(Operating System)
のものがある。
は Windows® XP Professional である。
AED
④メドトロニック CR-Plus
関連各社のデータ管理ソフトは、OS の対応
コンピューターの USB ポートに、IrDA 赤外線
が Windows® XP であったが、ほとんどのソ
ポートを装着し、このコンピューターに増設し
フトは Windows® Vista、Windows® 7など
た赤外線ポートと CR-Plus の赤外線ポートを
には対応できていない状況である。ただし、メ
正対させてデータ交換を行う。ソフトは②と同
ドトロニック・フィジオコントロールは
じソフトである。
Windows 7に対応している。まして Apple 社
⑥フィリップス/レールダル/フクダ電子
製のマックなどには対応していない。この状況
HS-1、FRx
は、通常のソフトなどに比較すると対応が著し
コンピューターの USB ポートに、IrDA 赤外線
く悪く思われるが、AED 回収ソフト自体の購
ポートを装着し、このコンピューターに増設し
入希望がほとんどなく、発売数が非常に少ない
た赤外線ポートと HS-1、FRxの赤外線ポート
ために OS の進化に合わせてデータ管理ソフ
を正対させてデータ交換を行う。ソフトは③と
トを変更していくコスト負担にメーカーが耐
同じソフトである。
えられない状況がある。2010 年 10 月に、Xp
⑦日本光電 AED-2100
の発売も終了となり、今後の各メーカーの対応
コンピューターの USB ポートに、Bluetooth ア
が注目される。
ダプターを装着し、無線通信を行う。④、⑤と
異なり正対させる必要はないが、通信初期のデ
AED 本体との接続
ータのやり取りが完全に無線であるため煩雑
①日本光電 AED-9000 シリーズ、AED-1200
である。
コンピューターの、USB ポートに RS232C 変
小菅
7
AED 内部データ回収システムを運用する場合
AED の使用状況の把握ができていたが、設置
には、これらのソフトの取り扱い、コンピュー
現場では、予備 AED パッドなどを準備するよ
ター機器の取り扱いを説明する必要がある。こ
うになり。AED の使用状況の把握が困難な状
のため回収システム自体を整備しても、運用の
況になっている。
ノウハウを伝える必要がある。さらに、少なく
とも各社の 6 種類の AED データ管理ソフトが存
②AED 内部データを必要とする立場から
在し、赤外線、RS232C ポートによりデータ通
1.循環器科医の立場から(救急医側からの視
信を行うため、各社のソフトがポートの競合を
点)
2004 年の一般の方の AED 使用が可能にな
起こし、データ通信時にトラブルが発生しやす
医)。
った当初は、AED が PAD として使用された場
合には、救急隊員、救急救命士の存在もない現
3)AED を巡る周囲環境の変化
場での心室細動の診断と除細動は信用されず、
①AED 関連のメーカーの立場と対応)
とにかく AED の内部データの確認を早く行う
メーカーの対応:AED 関連の会社は
ことが求められた。これは、日本光電の初期の
増加しているが、日本光電など販売メーカーと
AED の内部データ保存機能が適切な使用でな
AED を配置管理するセコム、アルソックなど
く 1 件のみでかつ、非常に消去されやすい仕様
の管理会社がある。ヒアリングによれば、各社
であったことも遠因である。しかし、症例の蓄
ともに AED 使用後の内部データの回収を医療
積とともに経験度が増し、現場での AED の使
機関・消防機関などから依頼されれば断ること
用は、心室細動のために除細動を行っているこ
はなく対応をしていると回答がある。事実、周
とが明確となり、AED 内部データの即時性は
囲でメーカーに依頼し断られた例はない。ただ
求められなくなっている。ただし、AED 内部
し、時間的余裕は必要である。時間的余裕とは
データが必要ないわけではなく、傷病者の疾患
AED 使用後の当日中になどでは対応が不能
状況の把握のためには、必要なデータである。
であり、1 週間程度の余裕があればほぼ対応可
さらには、AED が使用された傷病者は効率で、
能であることをさしている。メーカー側の立場
植 え 込 み 型 除 細 動 器 ( ICD : Implantable
からは、非常に困るのが AED 内部データを今
Cardioverter Defibrillator)の移植適応となる
すぐに出してくれという依頼であり、AED デ
ことが多く、このためには心室細動の発生の確
ータ取り出しのための対応を 365 日すること
認が必要であり、AED の内部データが必須で
は不可能であるが、1 週間程度の余裕があれば、
ある。しかし、緊急手術で ICD を移植するわ
いつでもその対応が可能となる。これは前述の、
けではなく、検査、ICD 移植に 1 週間程度の
販売メーカーだけでなく、管理会社でも対応は
時間的な余裕が生ずる。ここで AED 関連メー
同一である。管理会社でも、時間的な余裕を見
カーの 1 週間程度の余裕と合う状況となる。
た状況での AED 内部データの回収提供は可能
2.メディカルコントロールとしての必要性
AED は高度医療管理機器であり、適正に管
であると報告がある。
メーカーの苦悩:特に販売メーカーの
理され、使用に当たっては基本的には医師が使
問題点であるが、AED が使用された事実の把
用する機器であるが、2004 年 7 月の「医政発
握が困難となっている。以前は、AED の予備
第 0701001 号」より、非医療従事者が AED
パッドも準備がなく、使用されたのちにパッド
を用いても医師法違反とならない条件が示さ
の発注があり、パッドの補充を行うことにより、
れ、一般の方の AED 使用が認められたとされ
小菅
8
ているが、同一文書の中に AED の事後検証体
とを認識し対応する必要がある。また、AED
制の確立に努めることとなっている。AED の
使用傷病者を搬送した場合に、搬送先病院から
事後検証体制は、各都道府県の体制によりさま
現場の AED の内部データの取り出し、提供を
ざまであり、茨城県のように、AED 設置時に
求められることがある。この業務は、消防業務
包括的に AED 使用時にはデータ提供をするこ
であるのか意見が分かれるところであり、行う
とを積極的に求める地域もあれば、個々の消防
消防本部もあれば、一切行わない消防局もある。
本部の個別対応としている地域、さらには
データ取り出しソフトの問題や、メーカーへの
AED 使用時の AED 内部データに関して関与
依頼方法が周知されていないためである。
をまったくせず、検証も行わない地域などさま
4.発生現場での問題点
ざまである。理想的には茨城県の仕組みが、一
AED を使用した傷病者が発生した施設は、
つのゴールであり、データ回収システムがこれ
心肺停止の発生のリスクの高い現場となる。時
をアシストする状況にある。また、データ回収
間当たりの人口密度の高い駅や、スポーツ施設
までの時間的な余裕は、メディカルコントロー
がそれにあたるが、横浜市では救急条例でその
ルの中での検証であれば、緊急性はなく、当然
ような施設では AED を置くことを指示してお
時間的余裕も 1 週間以上のものであるといえ
り、そのような施設での AED 使用例では、治
る。
療に必要なため AED の傷病者と共に搬送先に
3.救急隊の立場から(現場から傷病者を搬送
持参したいと施設側に申し入れても断られる
する立場から、地域の消防本部として)
ケースが出てきている。ただし、この場合、内
2004 年の一般の方の AED 使用が可能にな
部データ提供を断れることはなく、すぐに予備
った当初には、AED が PAD として使用された
パッドに入れ替え、さらなる傷病者の発生に備
場合には、予備のパッドの準備もなく、傷病者
えるためであり、すでにおきた傷病者のために
に使用された AED は、もし同じ場所で他の傷
AED を現場から移動させることにメリットは
病者が発生しても使用できない状況であった。
あまりない。
しかし、パッドの期限切れ問題や、AED の必
――――
要性などが広く周知されるようにあり、AED
第 6 条(救急資器材の整備等)
:横浜市火災
の予備パッドの準備は当然のこととして行わ
予防条例( 昭和 48 年 12 月横浜市条例第 70
れるようになった。また、PAD として AED が
号) 第 68 条の2 第1 号及び第2 号に規定
使用される現場は高齢者が集まって行うスポ
する防火対象物その他安全管理局長( 以下「局
ーツ施設や時間当たりの人口密度の高い駅な
長」という。
) が指定する防火対象物( 以下
どが圧倒的に多く、傷病者の発生率も高いこと
「整備対象物」という。
) の管理について権原
が予想され、使用した AED を救急隊が傷病者
を有する者( 以下「管理権原者」という。
)は、
と共に AED を搬送先病院に持っていくことは
その整備対象物内に自動体外式除細動器その
安全管理上も危険であるといえる。また、内部
他応急手当に必要な資器材を整備しなければ
データ管理も努力目標であり、使用された
ならない。2 管理権原者は、その整備対象物
AED を搬送先病院へ運ぶことの法律的裏付け
において傷病者が発生した場合に、応急手当等
がない。このため使用された AED は、予備パ
を行うことができる体制を整備するよう努め
ッドに付け替えて現場においてくることが推
なければならない。
奨される。AED が使用された場所は、次回の
心肺停止が発生する危険が高い場所であるこ
小菅
9
この第 6 条2により、自動体外式除細動器(A
3.コマンダーと AED 発売メーカー
ED)その他応急手当に必要な資器材(担架、
消防機関、搬送先医療機関、AED 関連メーカ
毛布等)整備の義務化がうたわれている。画期
ーからの AED 使用情報を得たコマンダーは、
的な条例であり、このような条例は一部の自治
使用された AED の設置管理者に連絡し、内部
体のみにしかないものである。これにより、AED
データ回収の合意を得て、さらにメーカーを特
設置と心肺蘇生法の普及が進むと思われる。し
定し、販売メーカーに連絡し、AED 内部デー
かし、AED 内部データ回収の面からは使用後の
タ回収を依頼する。連絡を受けた販売メーカー
AED を現場の救急隊が病院へ持参することは
は、現場に赴き AED 内部データを回収し、コ
できない状況が生まれた。通常、各施設には
マンダーに届ける。コマンダーは AED のデー
AED は 1 台しか設置がなく、使用後の AED を傷
タを適切な形(PDF など)に加工し、必要な
病者とともに搬送してしまうと、現場施設には
現場に届ける。
AED がない状態となり、条例義務違反となって
しまうためである。
1.AED データが必要な現場は?
内部データが必要な現場は、搬送先病院、地
③以上の状況を加味した新システム
これまで、発生現場から AED を搬送救急隊
域の消防機関、地域のメディカルコントロール、
に搬送先病院に如何にスムースに持ってこさ
厚生労働省などである。また、このときに設置
せ、データを取り出し、そのデータを救急現場
場所の管理者にフィードバックを兼ねてこの
に生かすかを検討してきたが、①,②の状況の
データを提示することは AED による救命シス
変化により、方針の変更をすべき状況であり、
テムの維持発展のためにも重要である。
状況の変化に対応した新システムを作成し、運
用した。
2.データの形式はどのようにするのか?
1.AED の使用情報はどこに集まるか?
AED を使用した場合には、救急要請がされ
AED 内部データを扱う場合には、データ形
傷病者が、病院へ搬送される。AED の使用情
式はコマンダーまでは AED データ回収ソフト
報は、消防機関と搬送先医療に集まり、この 2
の特異的なファイルで運用することが望まし
つの機関が、新システムを起動させるスイッチ
い。配布する場合は PDF などの形で充分であ
となる。また、一部の AED では、AED の管
るが、ソフトに依存した特異的なファイルであ
理業者や販売業者に使用情報が集まる。
れば AED の波形情報のみでなく、AED 本体
消防機関、搬送先医療機関、AED 関連メーカ
の機器情報、管理情報も確認ができトラブル発
ーは後述のコマンダーに AED 使用情報を伝え
生時の解析の手掛かりとなる。
る。
2.地域のメディカルコントロールはどうかか
④運用の実際
わるか?
平成 23 年 1 月より、新システムを運用し実際
地域のメディカルコントロールは、AED 内
にデータ回収が可能か検討した。8 例の回収実
部データの回収と検証を行う MC 内での AED
績があり、そのうちの 6 例は当院搬送症例であ
担当のコマンダーを決定し、AED の情報はこ
ったが、2 例は他院搬送症例で他院からの依頼
のコマンダーが処理するシステムを整える。
をうけ AED データを回収し、提供した。
メーカーは 4 メーカー(日本光電 3 例、フィ
小菅
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復帰率を高率に改善している。
リップス 3 例、メドトロニック 1 例、大宇 1
ここでの PAD データの回収状況は、PAD 使用
例)であった。すべてのメーカーが 1 週間以内
にデータ回収を行い、データの提供があった。
時には救急隊が病院に持参することを義務づ
設置先に電話連絡を行ったが、データ読み出し
けられている訳ではなく、救急隊が持参する場
を拒否する設置先はなく、スムースにデータ回
合もあり、持参していない場合には、必要に応
収は進んだ。システムとして妥当なものと思わ
じて Heart safe community 活動の一環として
れ、今後各地域にこのシステムの拡大をはかる
後日回収を行っているのが現状であった。回収
べきであると思われる。
率も 40%を切っている状況であった。また、
シアトルの Medic one でも調査を行ったが、回
収率は消防士や救命士が持参をしてきた AED
⑤運用上の問題点
茨城県のように、設置施設の登録時に AED
のデータをダウンロードする状況であるが、
の内部データ回収を行うことが包括的に含ま
25%程度の回収率であり、これでもアメリカ国
れている契約が結ばれている状況であれば、
内の状況としては高率に回収している状況で
AED のデータ回収への行政的裏付けがあるこ
あるとの回答を得た。
とになる。しかし、ほとんどの地方自治体では
平成 22 年度にはカリフォルニア州サンディ
AED の内部データ回収に行政的もしうは法的
エ ゴ で 開 催 さ れ た
ECCU ( Emergecy
な裏付けがない状況であることは今後解決す
Cardiovascular Care Update)に参加し、情報
べき問題点である。
収集を行った。まず、本年度は CPR50 周年でも
さらに、AED 販売メーカーの協力のもとに
あり、ECCU は 50 人の心停止からの回復者を招
成り立っている仕組みであり、各社の本社規模
いていた。
「大規模集客施設における PAD プロ
での本システムへの協力を得るべきである。
グ ラ ム の 改 善 と 維 持 ( Establishing and
Sustaining PAD Programs at Theme Parks and
4)アメリカにおける PAD データ回収について
Other Mass Gatherings)
」に出席したが、内容
平成 21 年度に訪問したミネソタ州では、病
としてはサンディエゴにある SeaWorld での
院・診療所・救急搬送を含む患者搬送を行う非
AED の配備状況とメディカルコントロールを
営利団体 Allina グループの病院前担当部門を
どのように行っているかの解説であった。
視察した。特徴的なのは病院・クリニック部門
Seaworld 内には非常にきめ細かく AED が 16 か
だけでなく、救急搬送部門がグループ内にあり、
所に配備されておりさらに、救護所も 1 か所で
一体となって運用している事で合った。救急搬
はなく、5 か所設けられており、ここには医療
送部門の MC 部門は Allina グループの事務部門
スタッフが常駐し、半自動型の除細動器が設置
にあり、一体となって運営されている。さらに、
されている。さらに職員は、first-aid/CPR/AED
ここでは、Heart safe community 活動として、
のトレーニングが義務付けられており、当然施
アメリカにおける自治会のような Community
設内にトレーニングセンターをもち、7 名のト
単位で行っている心肺蘇生活動をポイント制
レーナーがいる。十分に考えられた PAD システ
で評価し、ある程度のポイントをクリアすると
ムを持っていた。既に 2 例の救命例があった。
Heart safe community として認定する活動や、
さらに San Diego 郡では、PAD プログラム推進
心停止患者に対する病院前から病院搬送後ま
団体として San
でのシステム化された治療を行う Take Heart
作られ、活発な活動をしている。San Diego 郡
活動などを積極的に行い心肺停止患者の社会
は人口122万人であり、横浜市の約3分の1
小菅
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Diego
Project Heart Beat
の規模である。San
Diego
Project Heart
中の AED の設置台数が急増している。これに伴
Beat の使命は、AED への認識を高め、心肺蘇生
い PAD による救命例も増大している。
教育を行い、すぐに使用できる環境を整えサン
PAD で使用された AED 機器の内部には、除細
ディエゴ郡での、救命率を上げることであり、
動前後の心電図波形などのデータが保存され
ゴールは、早期除細動により、救命率を改善し、
ている。この AED 機器の内部のデータ(以下
AED が消火器を使用するのと同じような状態
AED 内部データとする)の取り扱いは努力目標
にすることである。設立は2001年の1月で
として、検証を行うこととされているが、地域
あり、現在4名のスタッフで運営し、サンディ
ごと、機器ごとに異なり、救急医療に充分活用
エゴ郡の4000台の AED 設置にかかわり、2
されているとは言いがたい。平成 16 年 7 月の
10件の AED 使用事案にかかわり、78名の生
厚生労働省医政局通知では、
「救急搬送に関わ
存者を得ている。活動の内容は、AED 設置の相
る事後検証の仕組みの中で効果の検証に努め
談から、購入支援をおこない。設置後は最低月
ること」とされているが地域メディカルコント
に1度の機器管理を行っている。さらには管理
ロール協議会(以下、地域 MC 協議会)による
している AED の使用時には、再使用が可能であ
検証も地域ごとに異なっている。このように
るか検査と整備を行い、内部データとともに搬
PAD の検証が不十分なため、わが国における
送先医師と関係消防機関にレポートを提出す
PAD の問題点、有効性の検証は実施されていな
るシステムが作られていた。
い。理由として、AED の機器とソフト管理が非
5)個人情報としての問題についての検討
常に煩雑、約40万円と比較的高価な機器であ
AED 内部データは傷病者の個人情報である
り破損・紛失が問題、救急活動件数が増加して
が、取り扱い方法に関して、広く意見を求め公
いる昨今に新たな業務拡大は困難、条例などに
開する必要がある。現場となっている施設に対
より AED の移動が困難などが理由として挙げ
してデータ提供依頼文書をこちらから提出す
られている。
るように改善した。施設から、データ提供に対
そこで我々は PAD で使用された AED 機器から
して拒否されることはなかった。今後、AED
内部データを取り出し、活用することを検討し、
データの個人情報としての問題点は継続して
トライアルを行ってきた。我々の AED データ回
検討していく必要がある。
収の手法として、医師が現場に出向き、直接使
6)AED データ回収ポイントの増設
用された AED より、AED データ回収コンピュー
本年度はすでに、データ回収ポイントとなっ
ターを用いて AED データを回収し、AED を使用
ている施設と積極的に連絡をとり、回収方法に
した施設と直接にコンタクトをとる手法を用
おいて知見を得た。現在、回収ポイントとなる
いてきた。直接、医師が現場に赴きデータを直
AED データ回収ソフトを持つのは 29 か所にな
接回収することは、継続することは困難である
っている。前述のように、ソフト、器材の使用
が、メリットとして、PAD データを回収して、
が困難であり、充分に活用されているとは言い
システムや AED 自体のトラブルがないか検討
難い。
が出来ること、さらに現場で行われた救命処置
に対し、医師が直接に施行者に対してフィード
バックが出来る利点があった。現場での情報を
D.考察
市民による自動体外式除細動器(AED)の使
聴取することにより、AED の管理、使用の問題
用(PAD:public access defibrillation )は、
点が分かり確認し、見直すことで AED のトラブ
平成 16 年7月に認可され、ここ数年の間に市
ルを予防することができてきた。
小菅
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製造・管理メーカーの立場より、現在の状況
ていないことが現状である。
を分析すると、以前は AED 使用が非常にまれな
さらに、本研究をすすめ PAD データの回収検
事象であったが、鉄道運行会社、スポーツクラ
討をするためには、AED データ回収ソフトを完
ブなどでは、現在ある程度は予想された事態と
備する施設・ポイントの増設が必要であるが、
なっており、AED を使用したからと言って製
それだけでなくアメリカにおけるサンディエ
造・管理メーカーに連絡することが無くなって
ゴのようなモデル都市を日本にもつくことが
いる。これによりメーカー側は AED の使用状況、
示唆された。
また、AED に関しての相談窓口がない状況で
管理状況、問題発生の有無などの把握が困難な
あることも、対策を講じる必要がある。AED が
事態となっている。
今後、AED のデータ回収システムは、地域の
PAD として使用され自己心拍が再開して、使用
救命センターなどの MC 関連医師が中心となり、
した AED の内部データを搬送先の医療機関が
地域消防組織、製造管理メーカー、心肺蘇生教
必要としても、どこに相談すべきかわからない
育団体を巻き込んだシステムが必要である。
状況が通常である。通常、消防機関に相談し消
AED 使用情報を病院や地域消防組織より集め、
防機関が対応している例が多いようであるが、
MC 関連医師が発生現場へ連絡し、AED データ回
消防機関としての仕事ではなく、特に大都市の
収のための根拠となる書類を準備提供し、製造
消防本部では断っている。そのため搬送先医療
管理メーカーが使用後の問題点確認を兼ねて
機関では、データを手に入れる方法がなく泣き
データ回収に発生現場を訪問し、内部データを
寝入りをしているのが、ほとんどであろう。こ
回収する。回収された AED データを MC 関連医
れに対し、新システムを利用すれば、全国で 1
師は搬送病院へ提供し、また、検証が進むよう
か所 AED の相談窓口が決まっていれば電話、メ
に地域消防団体へ提供する。このためには、消
ールなどの対応でデータ回収が出来る仕組み
防機関主導で出来る状況ではなく、MC 関連医
である。このような機関の開設、委託を検討す
師が中心であることを認識する意識を高めて
べきであろう。委託であればコストはあまりか
もらう必要がある。現在、各 MC におけるメデ
からずに運営していくことが可能である。
ィカルディレクターの不足が問題となってい
E.結論
るが、このメディカルディレクターの養成とリ
ンクさせ AED データ回収をすることを養成コ
PAD における AED の有効性の検証のためのシ
ースの中に取り入れ、さらに DPC 関連の係数に
ステムを運用するための準備を進めた。新 AED
入れる。循環器医に対しては、PAD 使用後の蘇
内部データ回収システム考案したが、これらは
生傷病者に対する ICD の植え込み時には必ず
各 MC に AED データ回収システムを配備し、運
使用した AED のデータが必要であることを明
用することが重要であり、MC 関連医師を中心
記し、ICD 植え込みの全国調査にも AED データ
とした、地域消防組織、AED 製造管理メーカー、
をさせるなどにより AED データの回収は改善
地域心肺蘇生普及団体などからなる、地域の
が出来る。成功例のデータを回収していけば、
AED 内部データー活用促進団体の作成が肝要
AED 機器のトラブルデータは付随して集まっ
である。さらに、まだ、全国的な AED データ回
てくる。AED 機器の改善だけでなく、心肺蘇生
収に対する窓口が必要であり、運営委託などを
の指導法などの改善にもつながってくると思
検討すべきである。
われる。アメリカでの、AED データが回収され
役立っているわけではなく、ほとんど回収でき
小菅
13
F.健康危険情報
システムの作成-」を発表した。
特になし
第 22 回臨床スポーツ医学会総会(平成 22
年 11 月青森県青森市)において「スポーツ施
G.研究発表
設における AED 使用時の AED 内部データの解析
第 37 回日本救急医学会学術集会(平成 21
の 1 例」を発表した。
年 10 月、盛岡)において「横浜市における AED
使用の現状」を発表した。
H.知的財産権の出願・登録状況
第 12 回臨床救急医学会
(平成 21 年 6 月大阪)
特になし
において「故意による半自動型除細動器の誤作
動-Asystole 症例への半自動型除細動器の誤
資料
解析と放電-」を発表した。
①茨城県自動体外式除細動器(AED)設置施
第 13 回臨床救急医学会(平成 22 年 5 月千葉
設登録制度実施要項
県幕張)において「AED 内部データ回収システ
②AED 内部データの保存に関する説明書
ムの確立へ向けて-モバイル型 AED データ回収
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