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第8回「ルイス構造と共鳴」 - 青山学院大学理工学部化学・生命科学科

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第8回「ルイス構造と共鳴」 - 青山学院大学理工学部化学・生命科学科
基礎化学
第8回「ルイス構造と共鳴」
担当︓⻘⼭学院⼤学理⼯学部化学・⽣命科学科
阿部 ⼆朗
1
【安定な電⼦配置】
価電⼦(valence electron)
原⼦内の最外殻の電⼦殻(原⼦から最も離れた電⼦殻)にある電⼦。原⼦価電⼦
ともいう。価電⼦は化学反応に重要な役割を果たす。
ただし、最外殻電⼦がちょうどその電⼦殻の最⼤収容数の場合、または最外殻電
⼦が8個の場合、価電⼦の数は0とする。
内殻電⼦(core electron)
最外殻電⼦(価電⼦)がある軌道より内側の軌道にある電⼦。通常の化学反応に
は関与しない。
オクテット則(octet rule)
⼋隅説(はちぐうせつ)ともいう。原⼦の最外殻電⼦の数(価電⼦数)が8個あ
ると化合物やイオンが安定に存在するという経験則。
18電⼦則(18-electron rule)
18個の電⼦を最外殻にもつ電⼦配置(価電⼦数=18)は⽐較的安定であり、こ
の電⼦配置は18外殻電⼦配置(18-outer electron configuration)とよばれて
いる。⼀般に、ns2 np6 nd10 型の外殻電⼦配置が特に安定であることを、簡単に
18電⼦則といい、イオンの安定性の予測にしばしば⽤いられる。
2
【ルイス記号(Lewis electron-dot symbol)】
価電⼦は化学的に重要な電⼦であるが、元素記号のまわりに価電⼦を点で表し
た表記法をルイス記号という。1916年に⽶国の化学者ルイス(Gilbert Newton
Lewis)によって導⼊された。また、分⼦の価電⼦を点で表した化学式をルイス
構造式(Lewis structure)という。
3
【ルイス記号(Lewis electron-dot symbol)】
4
⾼校教科書「化学基礎」より
5
6
7
【共有結合】
価電⼦数が8個に満たない原⼦は、オクテット則(外殻に8個の電⼦をもつと
化合物やイオンが安定に存在できる)を満⾜させるために、異なる原⼦間で電⼦
対(electron pair)を共有することで化学結合を形成する。
共有された電⼦対(共有電⼦対: covalent electron pair)により2個の原⼦間
に形成される結合を共有結合(covalent bond)といい、共有結合のみから形
成される化合物を共有結合化合物(covalent compound)という。
塩素原⼦
塩素分⼦
共有電⼦対
ルイス構造︓価電⼦を点で表した化学式。ルイス構造では結合を形成している
電⼦対は⼆つの原⼦を結ぶ線として描き、また他の電⼦は原⼦の周囲に対を形
成した点として描くことが慣例となっている。ルイス構造では、共有結合は2
個の原⼦の間で共有された電⼦対として表される。
⾮共有電⼦対(unshared electron pair)︓2個の原⼦に共有されていない
電⼦対。孤⽴電⼦対(lone electron pair, lone pair)ともいう。
8
【ルイス構造の描き⽅】
常にオクテット則を満たすように描く。
⼆フッ化酸素(OF2)のルイス構造
四塩化炭素(CCl4)のルイス構造
9
【価電⼦の総数】
分⼦を構成するすべての原⼦がもつ価電⼦の数を⾜し合わせることによって、
その分⼦の価電⼦の総数を求める。
化学種が分⼦でなくイオンの場合には、イオンの電荷も考慮しなければならない。
すなわち、もし陰イオンならばその価数だけ価電⼦に加え、陽イオンならばその
価数だけ価電⼦から引く。
化学種
個々の原⼦が
もつ価電⼦数
C 2 H4
2C
4H
電荷の調整
価電⼦の総数
なし
=12
+1
=8
-1
=8
(2×4) + (4×1)
NH2-
N
2H
(1×5) + (2×1)
NH4+
N
4H
(1×5) + (4×1)
10
化学種
個々の原⼦が
もつ価電⼦数
NH2-
N
2H
電荷の調整
価電⼦の総数
+1
=8
-1
=8
(1×5) + (2×1)
NH4+
N
4H
(1×5) + (4×1)
11
【形式電荷】
ルイス構造を表記する際に、オクテット則を満たす原⼦や結合、あるいは⾮共
有電⼦対の配列を複数描くことができる場合がある。このような場合、それらの
うちどの配列が、その化学種のルイス構造として最も適切であるかを判定しなけ
ればならない。この判定のために、分⼦やイオンを構成するそれぞれの原⼦に割
り当てた電荷を⽤いることができる。この電荷を形式電荷というが、必ずしもそ
の原⼦上に存在する実際の電荷を表すものではない。
【形式電荷を割り当てる⽅法】
1. 共有結合を形成している電⼦対は、2個の原⼦の間に等しく共有されている
と仮定し、それぞれの原⼦に1個ずつ配分する。
2. ルイス構造における形式電荷は、それぞれの原⼦に配分された電⼦による正
味の電荷であり、次の式によって求めることができる。
ルイス構造に
単独の原⼦に
おける原⼦上 = おける価電⼦
の形式電荷
の総数
12
-
⾮共有電⼦対
を形成してい
る電⼦の総数
1
- ー
2
共有結合で共
有されている
電⼦の総数
【形式電荷】
1. 共有結合を形成している電⼦対は、2個の原⼦の間に等しく共有されている
と仮定し、それぞれの原⼦に1個ずつ配分する。
2. ルイス構造における形式電荷は、それぞれの原⼦に配分された電⼦による正
味の電荷であり、次の式によって求めることができる。
ルイス構造に
単独の原⼦に
おける原⼦上 = おける価電⼦
の形式電荷
の総数
-
⾮共有電⼦対
を形成してい
る電⼦の総数
1
- ー
2
共有結合で共
有されている
電⼦の総数
例)アンモニウムイオン NH4+
Hの形式電荷=1-0-0.5×2=0
Nの形式電荷=5-0-0.5×8=+1
13
【形式電荷】
1. 共有結合を形成している電⼦対は、2個の原⼦の間に等しく共有されている
と仮定し、それぞれの原⼦に1個ずつ配分する。
2. ルイス構造における形式電荷は、それぞれの原⼦に配分された電⼦による正
味の電荷であり、次の式によって求めることができる。
ルイス構造に
単独の原⼦に
おける原⼦上 = おける価電⼦
の形式電荷
の総数
-
⾮共有電⼦対
を形成してい
る電⼦の総数
1
- ー
2
共有結合で共
有されている
電⼦の総数
例)アミドイオン NH2-
Hの形式電荷=1-0-0.5×2=0
Nの形式電荷=5-4-0.5×4=-1
14
【⼆フッ化酸素(OF2)のルイス構造】
Fの形式電荷=7-6-0.5×2=0
Oの形式電荷=6-4-0.5×4=0
左側のFの形式電荷=7-6-0.5×2=0
真中のFの形式電荷=7-4-0.5×4=+1
Oの形式電荷=6-6-0.5×2=-1
⼀般に、より⼩さい形式電荷をもつルイス構造、あるいは正負に分離し
た形式電荷が最も少ないルイス構造が、その化学種において有利な(最も
エネルギーの低い)ルイス構造となる。
したがって、⼆フッ化酸素分⼦の実際の構造は、酸素原⼦が分⼦の中⼼
に位置するルイス構造によって表されると予測することができる。
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【例題1】次のルイス構造ⅠおよびⅡのうち、ヒドロキシルアミンNH3O分⼦のル
イス構造として、より適切なものはどちらか判定せよ。
I
16
II
【多重結合】
⼆重結合(double bond)︓2個の原⼦が⼆組の電⼦対によって結合してい
るとき、その結合を⼆重結合という。⼀般に、2個の原⼦間の⼆重結合は、同
じ種類の原⼦間の単結合(single bond)よりも短くて強い。
三重結合(triple bond)︓2個の原⼦が三組の電⼦対によって結合している
とき、その結合を三重結合という。⼀般に、2個の原⼦間の三重結合は、同じ
種類の原⼦間の⼆重結合よりも短くて強い。
17
【例題2】シアン化⽔素HCN分⼦のルイス構造を描け。
18
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