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免疫抑制剤の基礎知識と具体的使用法

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免疫抑制剤の基礎知識と具体的使用法
2016/10/13
松山赤十字病院 リウマチ膠原病センター
リウマチ膠原病センター外来通院患者数
関節リウマチ
2015年新患者数
1日平均外来患者数
免疫抑制剤の基礎知識と
具体的使用法
松山赤十字病院 リウマチ・膠原病センター
押領司 健介
2016.10.13
松山赤十字病院 モーニングレクチャー
患者さん側の疑問
膠原病通院患者数
全身性エリテマトーデス
強皮症
関節リウマチの疫学:
人口比 0.5% (70万人)
女性に好発し、男女比は1:3~5
好発年齢は30~50歳
SLEの疫学:
人口比 0.05% (7万人)
男女比は1:9
好発年齢は20-40歳
128(82)
75(23)
混合性結合組織病
58(17)
皮膚筋炎および多発性筋炎
ベーチェット病
血管炎症候群
その他
54(26)
40(13)
40(14)
2015年1月現在 *( )内は2009年度
全身性エリテマトーデス ー生命予後の昔と今ー
%
最新の治療
による救命
100
• ステロイドのような副作用の多い薬を、なぜ
使用するのですか?
96%
ステロイドの副作用
あるいは
疾患自体による障害の回避
ステロイドがない時代
• 免疫力を低下させたら感染症が増えるので
はないですか?
約2100人
802人
73.1人
診断技術の向上
50
20%
0
0
メトトレキサートは関節リウマチ患者の
生命予後を劇的に改善する
生存率
5
10
年
関節リウマチって障害されるのは関節だけじゃ?
MTXが効いた方
MTXが効かなかった、
または使えなかった方
Arthritis Rheum. 2000 Jan;43(1):14-21.
1
2016/10/13
膠原病の種類
関節リウマチが生命予後を悪化させる理由
• 関節が痛む、壊れることによる日常動作の制限
• 動脈硬化が進むことによる心臓・脳の疾病
古典的膠原病
その他の膠原病・膠原病類縁疾患
関節リウマチ
混合性結合組織病
全身性エリテマトーデス
シェーグレン症候群
多発性筋炎/皮膚筋炎
成人スチル病
強皮症
リウマチ性多発筋痛症、RS3PE症候群など
結節性多発動脈炎
(リウマチ熱)
• リウマチ肺による呼吸の障害
• 炎症たんぱくが内臓を障害(アミロイドーシス)
血管炎症候群
広義含む自己炎症症候群
MPA(顕微鏡的多発血管炎)
結晶性関節炎(痛風・偽痛風)
GPA(多発血管炎性肉芽腫症)
ベーチェット病
EGPA(好酸球性多発血管炎性肉芽腫症)
先天性周期性発熱症候群(種々ある)
巨細胞性動脈炎
高安動脈炎
リウマチ患者さんの標準化死亡比(SMR)は、1.5くらい。
炎症のマーカー
✅ CRP
IL-1・IL-6・TNFαが肝臓に届いて産生
✅ 血沈1時間値
陽性荷電蛋白(IgG、Fibなど)の産生・
陰性荷電蛋白(Hb、Albなど)の減少で亢進
免疫抑制をかけるにあたり…
• 治療はどのように使い分けているの?
• どのタイミングで治療を減量中止するの?
• 免疫を抑えるならどれも一緒じゃ?
✅ あと補体やフェリチンetc
*例えば、CRP陰性で血沈亢進している場合は
IFNα増加によるIgG増加などが原因のことが多い
免疫のどこが異常なのか?
微生物
自然免疫
皮膚・粘膜
などのバリア
食細胞
獲得免疫
Bリンパ球
抗体をつくる
免疫を強化
Tリンパ球
各疾患の免疫学的背景の違い
補体
NK細胞
数時間
数日
感染からの時間
2
2016/10/13
RA関節内の獲得免疫と自然免疫
McInnes and Schett N Engl J Med 365:2205, 2011
食細胞
B cells
多発性筋炎・皮膚筋炎の診断・治療
・筋生検は、絶対したほうが良い!!(封入体筋炎・筋ジストロフィーなどの除外のため)
・筋生検は、MRIでT2高信号の部位から行うのが良い
・筋組織崩壊ではAST、ALT、LDHも上昇するため、治療開始後は薬剤性肝障害と要鑑別
・大量のステロイド(1mg/kg)薬から開始し4週間維持したあと、2週間隔で10%づつ減量
・ステロイド減量時に再燃傾向なら免疫抑制剤(メトトレキサート、イムラン、ネオーラルなど)を併用する
・難治の場合、大量ガンマグロブリン療法(保険適応)、リツキサン(保険適応外)を考慮
・難治性間質性肺炎合併の場合、エンドキサンやエンドキサン+ネオーラルの投与を考慮
自己抗体と特徴
T cells
食細胞
抗Jo-1
間質性肺炎多い
抗SRP
ステロイド抵抗性
抗Mi-2
間質性肺炎少ない
抗CADM140 筋症状少ない
間質性肺炎が急速
進行性
【ベーチェット病の病態】
成人スチル病の免疫機序
サイトカイン産生
抗TNFα薬など
‥膜型TNFα
IFN-γ, etc
Tリンパ球の閾値低下
2
4
シクロスポリン等
Macrophage
コルヒチン
T cell
可溶型TNFα

患者Tリンパ球が健常人Tリンパ球に比して種々の細菌抗原に対し過敏に反応することが知られている。(Arthritis
Res Ther 5:139-146.2003)



本症患者には扁桃炎・う歯の既往が多く、手術・外傷・抜歯などでの増悪がみられる。
活動性のベーチェット病では末梢血単核球のTNFα産生能が亢進している。 (J Rheumatol 17: 1428-1429, 1990)
本症の基本病態がこのようなTリンパ球の過剰反応性に基づくサイトカイン産生による好中球機能の亢進であり
、ターゲットを恒常的に阻害することで好中球機能亢進による急性炎症の発症を抑制できる。
→ T細胞の活性化や好中球の動員が生じた場所では、どこでも炎症を惹起しうる。
TNFα, IL-18, etc
B細胞の関与なし!!
B細胞の関与なし!!
免疫抑制剤
膠原病患者の免疫学的背景
B細胞活動性
アルキル化剤
T低活性
B高活性
T・Bいずれも
高活性
自然免疫
代謝拮抗剤
T細胞活動性
抗マラリア薬
T低活性
B低活性
T高活性
B低活性
T細胞活性阻害剤
B細胞除去薬
商品名
作用
代表的副作用
シクロフォスファミド
(エンドキサン®)
活発なB/Tリンパ球を殺す
骨髄抑制・出血性膀胱
炎・不妊
アザチオプリン
(イムラン®)
活発なB/Tリンパ球を抑える
骨髄抑制・肝障害
メトトレキサート
(リウマトレックス®)
B/Tリンパ球・好中球・
マクロファージを抑える
骨髄抑制・肝障害・胸や
け・肺障害
MMF
(セルセプト®)
活発なB/Tリンパ球を抑える
下痢・白血球減少
ヒドロキシクロロキン
感染防御・TLR/INFα抑制
(プラケニル®)
網膜障害
シクロスポリン
(ネオーラル®)
腎障害・高血圧
タクロリムス
(プログラフ®)
リツキシマブ
(リツキサン®)
Tリンパ球のみ抑える
Tリンパ球のみ抑える
Bリンパ球のみ殺す
腎障害・糖尿病
投与時反応・感染症
*ステロイドはだいたい全部抑える
3
2016/10/13
適切な免疫抑制のイメージ
MTX
TNFi
TNFi
B
T
I
B
T
MTX
I
T
MTX
免疫反応による病態の違い
IL-6 TNF
IL-6 TNF
others
others
others
I
TNFi
MTX
IL-6 TNF
B
自己抗体による組織障害のパターン
自己抗体による組織障害のパターン
Ⅱ型免疫反応
Ⅲ型免疫反応
Ⅱ型免疫反応で生じる自己免疫疾患
疾患
抗体のターゲット
症状
自己免疫性溶血性貧血
赤血球膜上蛋白
溶血・貧血
特発性
血小板減少性紫斑病
血小板膜上蛋白
血小板減少・出血
天疱瘡
表皮細胞同士をくっつけ
ている蛋白(デスモグレイン)
表皮水疱
グッドパスチャー症候群
NC1蛋白(糸球体・肺のみ)
腎炎・肺出血
重症筋無力症
アセチルコリン受容体
筋力低下・麻痺
バセドウ病
TSH受容体
甲状腺機能亢進
インスリン抵抗性糖尿病
インスリン受容体
高血糖
悪性貧血
胃傍細胞内因子
ビタミンB12吸収不良によ
る貧血
ANCA関連血管炎
好中球顆粒蛋白
血管炎
その物質があるところだ
け炎症が生じるので、炎
症の起こる場所がある程
度決まっている
→次表に示す病気一覧
免疫複合体がたまる場所
にならどこにでも炎症を生
じる
→血管のある場所ならどこ
にでも炎症を生じる
→全身性エリテマトーデス・
悪性関節リウマチ・皮膚筋
炎の一部
Ⅱ型とⅢ型の炎症の違い
(gpⅡb-Ⅲa インテグリン)
4
2016/10/13
Ⅲ型免疫反応で生じる病気
全身性エリテマトーデス・悪性関節リウマチなど
抗核抗体の産生機序
免疫複合体の大きさにより免疫複合体
がたまる血管の太さが違うので炎症を
起こす血管が異なる
→ 全身どこにでも炎症を生じ得る
遺伝的要因
環境要因
(紫外線・感染・薬剤など)
細胞死
死んだ細胞が
片付けられない
免疫複合体がたまった場所での炎症で、
補体が消費される
→炎症が強い時は、血液検査で補体が
下がる。
処理されない
核抗原が増える
核抗原に反応するリンパ球
抗核抗体と核抗原が
結合し免疫複合体を形成
免疫複合体がB細胞・
樹状細胞に取り込まれる
樹状細胞
Toll様受容体に
核抗原が結合
免疫複合体の大きさが変わること
で、どの大きさの血管に
溜まるかが変わる。
⇒炎症の起こる場所が変動する。
B細胞
インターフェロンα
B細胞・樹状細胞
が活性化
抗核抗体(IgG)が
多量に多く産生
SLEの病態
自分の細胞の核に対する抗体ができる
免疫複合体ができる
SLE 分類基準2012
臨床11項目
1. 急性皮膚ループス
ループス頬部皮疹、水疱性ループス、SLEに伴う中毒性表皮壊死症、斑状丘疹状ループス皮疹、光線過
敏ループス皮疹。あるいは、亜急性皮膚ループス
2. 慢性皮膚ループス
平ら~やや隆起した円形(コインのよう)。中心部は萎縮して色素が抜ける。
3. 口腔潰瘍
口蓋、頬部、舌、あるいは鼻腔潰瘍。
4. 非瘢痕性脱毛
びまん性に薄い、あるいは壊れた毛髪がみられる傷んだ毛髪。
5. 滑膜炎
2カ所以上の関節腫脹あるいは滑液貯留を伴う滑膜炎。または、2カ所以上の関節痛と30分以上の朝の
こわばり。
6. 漿膜炎
胸膜炎:胸痛・胸膜摩擦音・胸水。 心膜炎:心電図・心膜摩擦音・心のう水。
7. 腎障害
尿蛋白/クレアチニン比(または24時間尿蛋白)で一日500mgの尿蛋白が推定される。または赤血球円柱。
8. 神経障害
痙攣、精神障害、多発単神経炎、脊髄炎、末梢神経障害、脳神経障害
9. 溶血性貧血
免疫複合体が血管に溜まる
10. 白血球・リンパ球減少
少なくとも一回は白血球<4000/mm3あるいは、少なくとも一回はリンパ球<1000/mm3。
11. 血小板減少
少なくとも一回は<100,000/mm3。
免疫6項目
1. 抗核抗体
2. 抗dsDNA抗体
3. 抗Sm抗体
免疫複合体がたまった場所に炎症がおこる
4. 抗リン脂質抗体
LAC、RPR偽陽性、中~高力価の抗カルジオリピン抗体、抗β2-GPI抗体陽性
5. 低補体
6. 直接クームス陽性
溶血性貧血がない場合の直接クームステスト陽性
* 臨床11項目と免疫6項目からそれぞれ1項目以上、合計4項目でSLEと分類する
* 項目が同時に出現する必要はない
* 腎生検でSLEに合致した腎症があり抗核抗体か抗dsDNA抗体が陽性であればSLEと分類する
*感度97%、特異度84%
病気の強さの目安 (SLEDAI)
8
8
8
8
8
8
8
8
4
4
4
4
4
4
痙攣
精神症状
器質的脳障害
視力障害
脳神経障害
ループス頭痛
脳血管障害
血管炎 (12%)
関節炎 (80%)
筋炎
尿円柱
血尿
蛋白尿 (42%)
膿尿
2
2
2
2
2
2
2
1
1
1
新たな皮疹 (71%)
脱毛
粘膜潰瘍
胸膜炎 (44%)
心膜炎 (12%)
低補体血症 (51%)
抗DNA抗体上昇(46%)
発熱 (48%)
血小板減少
白血球減少 (46%)
()内は出現頻度。
105点満点。6点以上は活動性が高い。
SLEの治療
薬物治療
・治療の原則はステロイド。
・プレドニゾロンで、体重1kgあたり0.5-1.0mg/kgで開始されることが多い。
・重症病変を伴い(中枢神経病変、肺胞出血、高度の腎障害、高度の血球減少など)、治療が
急がれる場合は、メチルプレドニゾロン1000mg/日(または500mg/日)の3日間経静脈投与を1ク
ールとするステロイドパルス療法が選択される。
・ステロイドは、疾患の活動性が低下し、臓器障害の改善が得られれば、徐々に減量を行う(テ
ーパリング)。おおよそ、1~2週間ごとに10%程度(5mg程度)ずつ減量する。
・免疫抑制薬として、シクロスポリン(ネオーラル)、タクロリムス(プログラフ)、ミゾリビン(ブレデ
ィニン)、メトトレキサート(メトトレキサート、メトレート、リウマトレックス)、MMF(セルセプト)など
が使用されることがある。
・これらの免疫抑制薬は、ステロイドのみでは疾患の活動性がコントロールできない例や、ステ
ロイド減量により再燃してステロイドの減量がうまくできない例などに使用されることが多い。
生物学的製剤
B細胞の成熟に必要なB lymphocyte stimulator (BLyS)がB細胞表面の受容体に結合する点を
阻害する完全ヒト抗BlyS抗体ベリムマブ(belimumab)が開発され、米国ではSLEへの使用につい
て認可され、本邦での承認が待たれる。SLEの病態にIFNの関与が考えられており、これに対す
る抗体 sifalimumabやrontalizumabなども開発途中である。
5
2016/10/13
SLEのtreat-to-target recommendation
1.
2.
3.
SLEDAIや臓器障害のマーカーなどを使用し、寛解を目指す。無理なら、
最も低い疾患活動性を目指す。
疾患の再燃を防ぐことがSLE治療の現実的なターゲットである。
抗ds-DNA抗体や補体などが異常値でもそれがずっと同程度で遷延して
いる臨床的に無症状の患者の治療を増量することは勧めない。
疾患によるダメージがさらなるダメージや死を招くため、疾患によるダメ
ージを防ぐことがSLE治療の主要なゴールである。
5. 疾患活動性のコントロール・ダメージを防ぐことに加え、健康関連QOL(
例えば疲労感・疼痛・抑うつなど)を低下させる要素にも留意すべき。
6. 腎炎の早期発見早期治療は非常に重要。
7. 腎炎では寛解導入療法の後、少なくとも3年は維持療法が必要。
8. ステロイドは可能な限り減量し、中止を目指すべき。
9. 抗リン脂質抗体症候群の治療/予防も重要。アスピリン+HQなど。
10. ヒドロキシクロロキン(HQ)を禁忌がない限り積極的に使用すべき。
ループス腎炎
type
組織
Ⅰ
見た目正常。蛍光抗体で染めるとメサンギウムに免疫沈着物が見られる
Ⅱ
見た目でメサンギウム細胞の増殖があり、免疫沈着物が見られる
Ⅲ
活動性または非活動性、分節性または全節性、管内性または管外性、の
巣状糸球体腎炎。病変は全糸球体の50%未満。
典型例では巣状の内皮下免疫沈着物が認められる。
Ⅳ
活動性または非活動性、分節性または全節性、管内性または管外性の
びまん性糸球体腎炎。病変は全糸球体の50%以上。
典型例ではびまん性の内皮下免疫沈着物が認められる。
4.
治療
免疫抑制の必要なし
大量ステロイド+
免疫抑制剤
(PSL 1mg/kg+
エンドキサンパルス
or セルセプト
or プログラフ)
Ⅴ
全節性または分節性の上皮下免疫沈着物が認められる。
中等量ステロイド+
免疫抑制剤
Ⅵ
糸球体の90%以上が全節性硬化を示し、残存腎機能は認められない。
薬物療法無効
腎移植の適応を考慮
• 全節性:一つの糸球体で病変が糸球体係蹄の半分を超える。分節性:一つの糸球体で病変が糸球体係蹄の半分未満である。
• 維持療法は、イムラン・セルセプトが推奨(level A)。3年以上。
11. 降圧薬・糖尿病薬・高脂血症薬・骨粗しょう症予防薬なども積極的に使
用すべき。
中枢神経ループス(NPSLE)
•
SLEに神経、精神障害を伴う病態
•
SLEの5%以上で脳血管障害やけいれんが見られる
•
SLEの診断以前や経過後にも生じるが、50~60%は診断後1年未満で、
SLEの活動性が存在する時におきやすい
•
脳血管障害やけいれんが5~15%、重度の認知障害や大うつ、急性錯乱
、末梢神経障害は1~5%、精神病、脊髄炎、舞踏病、脳神経障害、無菌
性髄膜炎は1%未満である
•
SLEの一般的活動性、NPSLE(特に認知障害とけいれん)の既往、抗リン
脂質抗体などがリスクとなる
NPSLEの検査
髄液検査
・感染症を鑑別するために重要。細菌性、結核性、クリプトコッカス髄膜炎などの鑑別、単純ヘ
ルペス、JCウイルスのPCRを行う。
・髄液中の抗DNA抗体、IgGオリゴクローナルバンド、免疫複合体、IL-6高値、IgG index上昇など
、髄液でのB細胞の活性化を示唆するマーカーがみられ、あるいは、髄液中の抗ニューロナル
抗体、血清中での抗リボゾーマルP抗体 (MBLで測定可)などの自己抗体検出がNPSLEの診断の
補助となる。
画像検査
・MRIは有効な画像検査で、活動期NPSLEに対する感度は57%。
・MRIが正常の場合でもSPECT、PET-CTや他の画像検査で情報が得られることがある。
中枢神経ループスの画像
脳血流ECD: 36歳女性
頭部MRI: 24歳女性
やっと、ステロイドの話
6
2016/10/13
ステロイド使用量とねらい
ステロイドで生じ得る副作用
多くは下記の様であるが、疾患により微妙にプロトコールは異なる。
特にⅢ型の場合は、急速な減量は避けるべき。
Ⅱ型は逆に抗体価が低下したら早めに減らすべき。
減量スピードは疾患が寛解を維持
していることを前提に概ね右表の
ような感じ。
維持量は免疫抑制剤を駆使して
2.5mg-5mgにおさえたい。
ステロイドで無視できない副作用
1.
骨粗鬆症
PSL 5mgを3ヶ月以上投与する際は、予防をする。ビスホスホネート・活性型ビ
ステロイドで無視できない副作用
5. 無菌性骨壊死
SLEで最もハイリスク。IgA腎症では1/4000程度。
タミンD・K・テリパラチド・デノスマブなど。
2.
感染症
細菌感染は早期に、抗酸菌・ウイルス感染(帯状疱疹など)・真菌は長期治療時
に生じやすい。プレドニゾロン療法(オッズ比[OR]1.12、95%CI 1.04~1.19)および肺合併症(
6. 白内障
発症したら手術しかない。
OR 4.41、95%CI 1.06~18.36)では重大な感染症リスクが増加したのに対し、抗マラリア薬療法
(OR 0.06、95%CI 0.02~0.18)では同リスクが低下したことが報告された。重大な感染症を発症
した患者では、プレドニゾロン用量の中央値は1日7.5mg であり、用量が1日あたり10mg増加す
7. 精神障害
SLEによるもの・甲状腺機能低下(low T3 syndrome)によ
るものが多い。突発性難聴で大量ステロイドを使用しても精神障害が
出ることはほとんどない。
るごとに感染症リスクは11倍増加。
3.
耐糖能異常
血糖値に合わせ、インスリン・経口糖尿病薬を使い分ける。朝食前が低血糖
となりやすいため、DPP-4阻害薬などが使いやすい。
4.
消化性潰瘍
ステロイド単独ではリスクは高くないと考えられている。胃粘膜保護薬程度
8. 高血圧
プレドニゾロンにはコルチゾールの40%程度のNa貯留作用
があり、発症する可能性がある。
で良い。NSAIDsとの併用でリスク高く、PPI併用が望ましい。
海外データ
ステロイドで無視できない副作用
薬剤と心血管リスク
リスク低下
9. 副腎不全
プレドニゾロン10mgを半年服用すると副腎不全状態。
好酸球増加・低Na・K上昇などで疑う。
感染症を発症したからといってステロイドを中止するのはもってのほか。
むしろ増量する必要がある時もある。
手術に際したステロイドカバーは、
小手術:術前にソルコーテフ100mg iv
中手術:術前からソルコーテフ100mg iv、8時間毎、計4回
大手術(心血管系など):4-6時間毎
関連なし
リスク増加
全心血管イベント
心筋梗塞
うっ血性心不全
脳卒中
MACES
TNF阻害薬
0.70
(0.54-0.90)
0.59
(0.36-0.97)
0.75
(0.49-1.15)
0.57
(0.35-0.92)
0.30
(0.15-0.57)
MTX
0.72
0.57-0.91)
NSAIDs
1.18
(1.01-1.38)
RR(95%信頼区間)
16
6
0.81
(0.68-0.96)
8
3
1.13
(0.93-1.37)
8
非選択的NSAIDs
1.08
(0.94-1.24)
Celecoxib
1.03
(0.80-1.32)
Rofecoxib
1.58
(1.24-2.00)
7
0.80
(0.60-1.00)
6
0.78
(0.40-1.50)
1
0.86
(0.71-1.03)
3
4
0.38
(0.05-2.84)
1
2.15
(1.19-3.87)
1
2
1.56
(0.82-2.97)
2
2
4
5
6
ステロイド
1.47
(1.34-1.60)
1.41
(1.22-1.63)
11
1.42
(1.10-1.82)
3
1.57
(1.05-2.35)
1
1.62
(1.22-2.16)
2
4
MACEs: 主要心血管イベント
8 各セルの右端の数字は試験の数
42
Eular2014 OP0169
7
2016/10/13
感染症による入院
免疫抑制中のリスクマネジメント
2006/10~2007/9
2009/7~
2010/6
2012/7~
2013/6
2015/1~
2016/1
入院数
入院数
入院数
入院数
肺炎
27
16
9
6
• ST合剤予防投与
免疫抑制が高度な例(MTXとPSL併用例 and/or
生物学的製剤使用)・肺合併症を有する例・70歳以上でMTX
以上使用例。
尿路感染症
4
4
4
2
化膿性関節炎
4
3
2
3
その他
12
4
3
5
計
47
27
18
16
• HBV-DNA測定
HBc抗体陽性で免疫抑制剤使用例につき、受診毎に測定。
総入院
• 肺炎球菌ワクチン
2010年から現在までに、500人以上の患者さんに接種。
総入院に占める
感染症の割合
総入院に占める
肺炎の割合
302
229
278
280
15.6%
11.8%
6.5%
5.7%
8.9%
7.0%
3.2%
2.1%
注1:当科外来で通院治療中の患者に限る。注2:嘔吐下痢による脱水症を除く。
注3:2015年 他院からの紹介感染症患者は12名
2012年7月~2013年6月肺炎入院患者の背景
2013年以降初診患者の詳細(合併症関連)
(n=375)
QFT陽性率
年齢
肺炎の種類
原疾患
NB接種
88
誤嚥性肺炎
RA
-
78
肺クリプトコッカス症
RA
-
65
マイコプラズマ、ARDS
RA
-
70
肺炎(緑膿菌)
RA
-
81
肺炎(不明)
RA
-
79
誤嚥性肺炎
RA
-
82
肺炎(緑膿菌)
RA
-
60
ニューモシスチス肺炎
RA
-
61
肺炎(緑膿菌)
Overlap、IP
-
HBc抗体
肺疾患全体
間質性肺炎
11%
5.6%
25%
8.3%
松山赤十字病院リウマチ膠原病センター
ニューモシスチス肺炎(PCP)
• 関節リウマチにおける致死率は約30パーセント。
• 年齢・肺疾患の有無・他の免疫抑制剤やステロイドの使用で
リスク上昇。→予防内服を!予防率98%!
呼吸困難や倦怠感あり、CRPが上昇し、胸写で違和感あり、
βDグルカンが陽性で、動脈ガスでCO2が著明に低下し、カン
ジダ・アスペルギルス抗原陰性ならほぼPCP。
B型肝炎
• B型肝炎ウイルスをもらったことがある方で、
肝炎を発症していないがリウマチの治療を始
めることで眠っていたウイルスが再び出てくる
ことがある。
• 初診時の検査でB型肝炎をもらったことがあ
る方を発見し、治療開始後ウイルスが出てこ
ないか定期的に検査をする必要がある。
8
2016/10/13
メトトレキサート単独でHBV再活性化を来したリウマチ患者の報告
Base line
serology
Immunosuppressive
regimen
Outcome, after onset
MTX duration (why stop), Treatment of
HBV reactivation of symptom
MTX discon to ALT flare
1
RA/ 59/F
HBsAg(-)
Anti-HBs(+)
MTX 10mg/wk po,
PSL 5 mg/day
7 years (ALT),
LVD 100mg/d
2
RA/ 72/F
Asymptomatic MTX 4mg/wk,
Carrier
PSL 5 mg/day
2y (ALT),
Died of fungal
Discontinue MTX pheumonia
Diagnosis/
Age/ sex
Infliximab 6mg/8wk +
MTX 10mg/wk
1y7m (ALT)
LVD 100mg/d
Alive,
INFLETN +LVD
Alive,
Normalized after
2mos
MTX 5-→7.5mg/week
PSL, 7.5 mg/day
3 ys (ALT), 2 mos
IFN-β (3MU/d)
Died
6 RA/ 67/M
MTX 7.5mg/wk,
Pred 5mg/day
2y (RS*), 3wk
Discontinue MTX Died
7
MTX 7.5-10mg
po/week
3y (RS*), 41d
Discontinue MTX Died
3
RA/ 58/F HBeAg(-)
HBsAg(+)
Anti-HBe(+)
4 RA/ 49/M Anti-HBc(+)
5
RA/ 75/F
RA/ 57/F
HBsAg(+)
HBeAg(+)
MTX 15mg/wk,
LD Pred (<7.5mg/d)
Died, 8wks
2y (ALT)
LVD 100mg
RS, respiratory symptom; indicates time between discontinuation or reduction of immunosuppressive therapy and hepatitis B flare.
RA, rheumatoid arthritis; MTX, methotrexate; Pred, prednisolone; LVD, lamivudine.
1)
2)
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Gwak GY, Clin Exp Rheumatol 2007;25:888-889
Hagiyama H, Clin Exp Rheumatol 2004;22:375–6
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L H Calabrese (Dept of Rheumatic and Immunological Disease, Cleveland Clinic), Ann Rheum Dis 2006; 65: 983
Hepatitis B virus (HBV) reactivation with immunosuppressive therapy in rheumatic diseases: assessment and preventive strategies.
http://ard.bmj.com/cgi/content/abstract/65/8/983
Hepatitis B reactivation after
chemotherapy: two decades of clinical
research
George K. K. Lau (The University of Hong Kong), Block K
(Queen Mary Hospital)
Hepatol Int. 2008 June; 2(2): 152-162.
HBV再活性化による肝炎は
2段階で進行する
1) 免疫抑制によるHBV複製が増強
• まずHBV DNAが増える。
• 炎症は抑えられているのでALTは上昇しない
2) 化学療法終了後の免疫回復
• 感染細胞に対する免疫の反応が強まり、肝障害がおこる
• 肝炎(一過性ALT上昇、慢性肝炎)、肝不全、死亡するケースも
初期の段階で、抗HBV作用のある核酸アナログを投与すれば、HBVの再生が効
果的に抑制され、その結果、HBVに起因する肝炎の頻度を下げることができる。
もしHBV-DNAが検出された場合は、免疫抑制療法を中止せず
抗ウイルス薬を開始したほうがよい。
膠原病の予後を改善するポイント
• 疾患活動性の速やかなコントロール
• 感染症対策、血管合併症対策
お疲れさまでした
• ステロイドの副作用を最小限とする
→ステロイド以外の薬剤を併用して効果を高め
、かつステロイド投与量を減らす
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