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徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・製剤設計薬学分野 研究

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徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・製剤設計薬学分野 研究
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・製剤設計薬学分野
生体
研究概要
内での脂質代謝制御システムであるリポタンパク質代謝系において、その構造形
成・維持や機能発現を担っているのがアポリポタンパク質です。また、アポリポタンパク
質は、リポソームやリピッドスフェアなどの DDS キャリアーの体内動態にも深く関与して
いることが知られており、医学・薬学的に重要なターゲットタンパク質群です。
製剤
設計薬学分野では、アポリポタンパク質のなかで、血中及び脳内での HDL 産生・
コレステロール代謝調節を担うアポ A-I とアポ E について、物理化学・生化学・細胞生物
学などの多面的な手法を用いた研究を展開しています。また、アポ A-I が形成するナノディ
スク構造を基盤とした膜タンパク質固定化デバイスや遺伝子キャリアーの開発、アルギニ
ンペプチドの生体膜透過機構解明など、製剤・薬剤学的な研究展開も行っています。
(1) アポ A-I 遺伝子変異による低 HDL 血症、アミロイドーシス発症の分子メカニズム
ヒトアポ A-I には低 HDL 血症やアミロイドーシスなどの重篤な疾患の原因となる遺伝子
変異が数多く知られています。私たちはこれまで、アポ A-I Milano (R173C)や Nichinan
(∆E235) 変異が低 HDL 血症を引き起こすメカニズムについて、物理化学的アプローチによ
る解明を行ってきました(J. Lipid Res. 51, 809,
2010; J. Lipid Res. 50, 1409, 2009)
。現在はアミ
ロイドーシス変異である Iowa (G26R)をター
ゲットに、そのアミロイド線維形成・細胞毒
性発現の物理化学的・細胞生物学的機構解明
を行っています(JBC 288, 2848, 2013)。
(2) ABC トランスポーターによる HDL 形成機構
ABC トランスポーターである ABCA1 は細胞の過剰
コレステロールを細胞外のアポ A-I に受け渡すことで
HDL を形成します。この HDL 形成が抹消組織からコ
レステロールを除去する唯一の経路であるため、動脈
硬化症の予防・治療において重要な標的になっていま
す。しかし、どのようにして細胞のコレステロールと
リン脂質が ABCA1 によってアポ A-I に受け渡され、
1~2 分子のアポ A-I と 100 分子以上の脂質からなる
HDL が形成されるのかは未だよくわかっていません。
私たちは、物理化学的アプローチと生化学、細胞生物学的アプローチを駆使してその機構
の解明を目指しています(J. Lipid Res. 53, 126, 2012; BBA 1821, 530, 2012)
。
さらに、コレステロールを輸送する ABC トランスポーターが T 細胞や造血幹細胞の増殖
に影響を与えることが近年報告され、これらのトランスポーターの抗動脈硬化作用以外の
役割も注目されています。私たちは、疾患モデルを用いてコレステロールを輸送する ABC
トランスポーターの新たな機能の探索及びその解析も進めています。
徳島大学大学院ヘルスバイオサイエンス研究部・製剤設計薬学分野
研究概要
(3) アポ A-I ナノディスクを用いた新規キャリアー・ナノデバイスの開発
アポ A-I がナノサイズの脂質膜ディスク(人工 HDL 粒子)を形成
することに着目し、産業技術総合研究所と共同で人工安定脂質を新た
に設計することにより、アポ A-I ナノディスクの膜タンパク質再構
成・構造機能解析デバイスとしての応用や遺伝子キャリアーとしての
開発研究を進めています。
(4) アポ E-HDL による脳内コレステロール代謝調節機構
アポ E の遺伝子多型(アイソフォーム)は、III 型高脂血症
やアルツハイマー病発症の危険因子であることが知られてい
ます。
私たちは、
このアポ E アイソフォームの構造や脳内 HDL
産生・代謝調節機構について、神経変性疾患との関連に着目し
て 研 究 を 行 っ て い ま す ( Biochemistry 51, 5580, 2012;
Biochemistry 49, 10881, 2010; J. Neurosci. Res. 87, 2498, 2009)
。
(5) リポソーム製剤の品質評価技術の開発
DDS キャリアーとして既に臨床実用化されているポリエチ
レングリコール(PEG)修飾リポソーム製剤について、その体
内動態や生物学的利用能を決定する重要な因子である表面物
性の科学的・技術的評価方法の確立を目指し、様々な物理化学
的測定による品質評価法を検討しています(膜 Membrane,38,
50, 2013)
。
(6) アルギニンペプチドの生体膜透過メカニズム
アルギニンペプチドは、エネルギー非依存的に細胞膜
を透過することが知られており、臨床・薬剤的応用が広
く検討されています。このアルギニンペプチドの物理的
膜透過メカニズム解明を目指し、R8 や HIV-TAT ペプチ
ドと細胞膜/モデル脂質膜との相互作用の物理化学的・細
胞生物学的解析を行っています(Chem. Phys. Lett. 570, 136-140, 2013; Chem. Phys. Lipids 165,
51, 2012; Langmuir 27, 7099, 2011)
。
Key Words:アポ A-I (apolipoprotein A-I, apoA-I), アポ E (apolipoprotein E, apoE), HDL
(high-density lipoprotein, 高密度リポタンパク質),動脈硬化症,アミロイドーシス,神
経変性疾患,ABC トランスポーター,ナノディスク,膜透過ペプチド
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