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支え合いマップづくり 入門

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支え合いマップづくり 入門
支え合いマップづくり
入門
住民流福祉総合研究所
本冊子は、私ども住民流福祉総合研究所が、地域の実態把握の手法の一つとして普及させている「支え合い
マップ」の作り方に関する入門的なノウハウをまとめたものです。
本冊子は基本的にどなたも無料でお使いになれますが、集会などで配布したり、特定の冊子の中に盛り込ん
だりする場合、また住民や関係者向けの説明会等で本冊子を使う場合などは、あらかじめ本研究所にお問い
合わせ下さい。
私どもではマップづくりの入門編的なパワーポイントを作成し、講演の際に使用していますが、本冊子はこ
のパワーポイントの絵柄に対応する形で簡単な解説を付けるという手法を取りました。
1
第1章
「支え合いマップ」
いマップ」
とは?
とは?
■ 支え合いマップづくりが「目的」ではありません。
(1
(1)住民のふれあい・
住民のふれあい・支
のふれあい・支え合いの
実態を
実態を住宅地図に
住宅地図に乗せる
■ 目的は、
「ご近所福祉」をつくっていくことで、マッ
プづくりで取り組むべき課題を探すのです。
■ そのご近所には、どういう福祉課題があり、それに
①めざすは住民主体の「ご近所福祉」づくり
対してどう取り組んだらいいかという解決策を考え
②そのための取り組み課題を抽出すること
出すことです。
■ マップづくりの目的であるご近所福祉づくりとは何
か? これまで地域の福祉をすすめる場は町内圏域
(2)「ご
)「ご近所福祉」
近所福祉」とは?
とは?
とされてきましたが、実際に住民が助け合っている
①人々は約50世帯ごとに寄り集まっている
のは、もっと小さく、およそ50世帯程度の範囲で
②そこを「ご近所」と言ってみたら?
す。ここを「ご近所」と名づけてみました。
③「ご近所」は助け合いに最適の場
④住民主体で「ご近所福祉」を進めよう
班・組
町内
ご近所
地区
市町村
※「班・組」と「町内」の間に
「ご近所」があった
■ この「ご近所」は住民が助け合うのに最適な圏域で
すから、住民が主体となって「ご近所福祉」をすす
めればいいはずです。
■ マップはこの「ご近所」ごとに、そのご近所の住民
の手でつくり、取り組み課題を抽出するのです。
2
■ 「福祉」といえば、思い起こすのは「サービス」で
第2章
なぜ「
なぜ「住民の
住民の支え合い」
にこだわるのか?
にこだわるのか?
しょう。なのになぜ「住民の支え合い」にこだわる
のか。
■ むろん「サービス」も必要でしょうが、今はそれと
ともに、住民が助け合うことも大事になってきたの
です。
(1)「ご
)「ご近所福祉」
近所福祉」に4つの点検事項
つの点検事項
■ ご近所福祉をすすめるために、取り組み課題を抽出
する時、チェックすべきことはこの4つです。
①住民(特に要援護者)の安全は守られているか。
①
②
安全
困り事
の解決
③
④
介護
豊かな
生活
②彼等の困り事は解決されているか。
③介護やケアは実行されているか。そのすき間も埋めて
いるか。
④要援護者だって豊かな生活を追求する権利がありま
す。それが充足されているか。
(2)意外や
意外や、この多
この多くが共助
くが共助の
領分!
共助の領分!
■ ところで、地域の福祉を支えるのはⒶⒷⒸの3者で
す。
安全
困り事
の解決
介護
豊かな
生活
Ⓐ自助は要援護者が自身で解決努力をすること、Ⓑは住
民の助け合いや民生委員、町内会などの活動のすべて、
Ⓒは介護保険も含めた公共機関や専門機関によるサー
ビスです。
自助
共助
公助
■ ご覧のように、意外にも①②③④の多くが「共助」
の領分であることがわかります。
Ⓐ
Ⓑ
Ⓒ
(3)公助が
公助が充実とともに
充実とともに共助
とともに共助が
共助が衰弱
■ ところが、介護保険などで福祉サービスが整備され
ると、要援護者は「公助」に依存するようになりま
した。
①公助頼り
■ それとともに、
「私たちの役割は終わった」と、住民
自助
共助
は要援護者から手を引くようになりました。公助で
公助
は担えない部分が地域にたくさん残ってしまったの
②公助まかせ
です。
過重負担
■ そこで、地域福祉の最大の課題が「共助」の強化と
なりました。
3
(4)共助の
共助の強化でなぜマップ
強化でなぜマップ作
でなぜマップ作り?
■ 共助の力をどうやって強めたらいいのか。
■ まず言えることは、住民は今、何もしていないわけ
ではないということです。ある程度は助け合いをし
①住民は既にある程度助け合っている
ているのです。それがマップづくりでありありと見
②それがマップづくりで見えてくる
えてきます。住民の助け合いの流儀といったものも
③住民の流儀も見えてくる
④それらを生かし発展させた方が効率的
見えてきます。
■ ならば、いま行われている助け合いを生かして、そ
れを最大限に発展させればいいことなのです。
■ ある福祉関係者が、足元の一人暮らしの認知症の男
(5)人名と
人名と位置で
位置で記憶がよみがえる
記憶がよみがえる
性にだれも関わっていないことが気になっていまし
た。ところが試しに支え合いマップをつくってみた
ら、このように、なんと周囲の10人が見守りなど
で関わっていることがわかり、ビックリしたという
ことです。
■ ただなんとなく地域を眺めても見えないのが、地図
上で人名とその位置関係を見ると、
「あっ、そう言え
ばこの人がおじいちゃんの所に行っていた!」と記
憶がよみがえってくるのです。
第3章
「福祉マップ
福祉マップ」
マップ」との との 違いは?
いは?
■ これまで「マップ」といえば、福祉機関が「福祉マ
ップ」をつくっていました。
(民生委員は「要援護者
マップ」を)
■ この「福祉マップ」と「支え合いマップ」は根本的
に異なっています。しかし、実際には「福祉マップ」
をつくりながら、それを「支え合いマップ」と呼ん
でいる人もいます。
■ 両者の違いはどこにあるのか?
(1)「福祉マップ」は・・・
■ 「福祉マップ」は、
「一人暮らし高齢者」等の要援護
者に印をつけることが目的です。この方たちへのケ
一定の要援護者に印
アは、
福祉関係者が担うものとされてきたからです。
■ 一方の「支え合いマップ」は、これらの要援護者に
近隣住民のだれがどのように関わっているのかを、
「支え合いマップ」は、
線で結んでいきます。こちらは住民主体の福祉づく
りをめざしているのです。
要援護者と周辺住民の 関わり合いを線で結ぶ
4
(2)「福祉マップ」は・・・
■ 「福祉マップ」は、
「福祉」に特化して要援護者が抱
える問題を取り上げますが、
「支え合いマップ」は、
いわゆる「要援護者」の課題を
住民が抱える様々な生活課題も取り上げます。
「支え合いマップ」は、
住民一般の生活課題も
この畑
この畑は誰が耕す?
■ 例えば、ある地区で住民の支え合いの状況を調べて
いたら、一人暮らし高齢者の全員が、住民によって
ほぼ完璧に見守られていることがわかりました。
■ だからこの地区には問題がないかといえば、そうで
はありません。「ここの畑はだれが耕しているの
か?」と尋ねたら、
「それが私らの最大の問題だ」と、
一人暮らしの女性がつぶやきました。
意外な
意外な地域問題も
地域問題も浮上
■ たまたま、ある寝たきりの高齢者のいる家庭につい
て話し合っていたら、
「そう言えば、この家にはまだ
結婚していない息子がいる」という話が出たので、
「他に未婚の男性はいるか?」と聞いたら、このよ
うに、驚くほどの数になることがわかったのです。
(3)「福祉マップ」は・・・
■ 「福祉マップ」は「気になる要援護者」が見つかれ
ば大抵はそれで終わりで、あとは彼等の福祉課題を
課題を抽出するだけ
掘り起こすぐらいですが、
「支え合いマップ」は、そ
の課題の解決のヒントも、マップづくりの中で探そ
うとするのです。マップの中に問題解決のヒントも
「支え合いマップ」は、
隠れているはずなのです。
課題解決のヒントも
5
■ ここは新旧住民が入り混じっている地区ですが、自
新旧住民の
新旧住民の交流は
交流は?
治会長は「新住民(マップ下方の集合住宅)は自治
会にも入らず、交流がうまくいかない」と嘆いてい
ました。
■ ところが旧住民たちに、
「個人的にでもいいから新住
民と交流していないか?」と聞いたら、Aさんは「彼
等に畑を貸している」
、Bさんは「犬の散歩友だちに
になった」と。ならばこれらをイベントに仕上げて
みたらどうか?
第4章
マップづくりのイロハ
①誰がマップづくりを?
がマップづくりを?
■ マップは自治会役員や民生委員、または社会福祉協
議会のスタッフ等が、ご近所の人を集めてつくるも
のだとされています。
◆マップづくりの主役はご近所内の住人
◆民生委員や町内会、社会福祉協議会等
が支援
■ しかし本来は、それぞれのご近所でそこに住む住民
たちが、
ご近所内の要援護者の問題などを出し合い、
解決策を考えるもので、自治会役員等はそのバック
アップ役であるべきです。
■ 場合によっては、
関係者が主導するのもいいですが、
本来のあり方を忘れてはなりません。
②マップづくりの範囲
マップづくりの範囲は
範囲は?
■ 町内会がマップづくりをすすめると、数百世帯の範
囲で一挙にやってしまおうと考えますが、あくまで
50世帯のご近所ごとに
世話焼き
50世帯ほどの「ご近所」ごとにつくるようにして
ご近所
ご近所
ご近所
下さい。
町内会
■ 町民が大体まとまって生活している範囲を区切って
(それがご近所)
、
その中の世話焼きさんたちに集ま
ってもらいマップを作るのです。
(民生委員)
6
③マップづくりの参加者
マップづくりの参加者は
参加者は?
◆「ご近所」内に在住の人5,6名
■ 主役はあくまでご近所在住の住民です。
■ 町内会役員や民生委員、社会福祉協議会が参加して
◆ご近所のことをよく知っている人
もいいですが、できる限りご近所の住人を主役にし
◆となると、主に女性?
て下さい。
■ 1人が見える範囲は10世帯程度です。したがって
ご近所内の5~6人の人が参加してくれるといいで
しょう。それも、ご近所のことをよく知っているの
は、やはり女性です。
④マップづくりに必要
マップづくりに必要な
必要な道具は
道具は?
◆住宅地図を拡大したもの
◆太い色マジック。丸いシール
■ できればたたみ1畳ぐらいに拡大した住宅地図があ
ると、参加する高齢者も見易いです。
■ ボールペンなどはやめて、太いマジックだけで書き
ましょう。色をどう使うかは、自由に考えて下さい。
5ミリ~1センチ大の丸いシールもあると便利で
す。
⑤かかる時間
かかる時間は
時間は?
■ 1時間30分というのは、これまでマップづくりを
してきた体験から割り出したもので、これ以上やる
◆1回あたり1時間30分程度
◆聴取対象を変えて何度も
と疲れてきて効率が落ちます。
■ マップ作成後、取り組み課題を抽出し、まとめるた
◆課題の整理でさらに2時間
めに1時間~2時間をとる必要があります。マップ
作成直後に、この作業をやった方がいいようです。
■ ご近所の人が集まって、ご近所内の要援護者の情報
⑥プライバシー問題
プライバシー問題にどう
問題にどう対処
にどう対処?
対処?
①
②
マップづくりは
井戸端会議の
再現
◆各自が既に知っている
ことを出し合うだけ。こ
れはご近所ケア会議だ
助け合いの輪
に居る者は 情報共有を
◆お互いのことを知り合わ
ねば、助け合えない
です。助け合いをするためには不可欠の作業です。
■ 民生委員や関係者は、行政から与えられた個人情報
は出さないようにしましょう。あくまで井戸端会議
の情報だけに限定するのです。
■ マップはご近所で助け合いをするためのものですか
③
情報はご近所内
に閉じ込める
を出し合い、どう関わったらいいのかを話し合う場
ら、ご近所外に持ち出してはいけません。便宜的に
◆マップは責任をもっ
て管理を
社会福祉協議会や町内会が預かるだけならいいでし
ょう。
7
日本人のおつき
日本人のおつき合
のおつき合いの習慣
いの習慣が
習慣が
マップ作
マップ作りの普及
りの普及を
普及を妨げている
■ 「自分のことをマップづくりの場で話題にされるの
はイヤ」だという人もいます。しかし、それを認め
ていたら助け合いはできません。日本人のこうした
◆私のことは知られたくない
◆私のことを噂話のタネにしないで!
習慣を改めていくのも重要な課題でしょう。
■ 個々に掲げたことを一つ一つ克服していかねば、マ
ップ作りはうまくいきません。
◆人のことを詮索すべきでない
◆お節介は嫌われる
第5章
どんなことを調
どんなことを調べるの?
べるの?
■ 既に述べたように、マップづくりによってそのご近
「取り組み課題」
課題」とは?
とは?
所の(福祉を進めていくための)取り組み課題を抽
出するのが目的です。
②
①
問題
+
■ 「取り組み課題」とはここでは、①「そのご近所が
抱える問題」と、②「その問題の解決策」の2つを
解決策
合わせた言葉です。
(1)「気
)「気になる人
になる人」を拾い出す
①
②
■ まずすべきことは、
「気になる人」を探し出すことで
す。
「気になる」と言ってもいろいろな意味が含まれ
一人暮らし高齢者
ています。ゴミ屋敷など、ご近所の人に迷惑をかけ
在宅要介護者
ている人も「気になる」人になります。
③
障害者
気になる人
④
引きこもりの人
⑤
⑥
施設入所者
息子に引き
取られた人
8
だれが見守
だれが見守っている
見守っている?
っている?
スーパー
毎日スーパーに
娘
娘が毎日
携帯電話
■ 福祉課題の点検事項の1番目は、
「見守り」です。こ
のように様々な見守り方があるので、それらを頭に
グラウンド
ゴルフ場
部屋の明りで 毎日グラウンド
ゴルフ
一人暮らし
息子
24時間見守り
入れて調べるといいでしょう。
■ このように、見守っている人から見守られている人
へ向けて矢印を引くのです。他の関わりも同様のや
息子が週に1回
通って来ている
散歩しているのを
見かける
り方になります。
一人暮らし
一人暮
らし
■ そこで見守りの欠けている人を抽出し、対策を考え
車の出入りで
るのが「取り組み課題の抽出」になります。
畑
畑で出会う
孤立死を
孤立死を防げる見守
げる見守りか
見守りか?
りか?
■ 見守りをする以上、できれば孤立死を防げるやり方
を考えたいものです。それには、その人と何らかの
①
本人を訪れる人
②
接点になっている人たちを探す必要があります。
本人を見守る人
③
連絡を取り合う家族
本人と接点の ある人を残らず
④
宅配・訪販業者
⑤
本人が出かける先
⑥
メーター検針員
■ 5人の人が住んでいるアパート。全員が一人暮らし
孤立者にも
孤立者にも接点
にも接点はあった
接点はあった!
はあった!
の男性でした。しかも、誰にも見守られていないと
いうことも分かりました。
ではどうしたらいいのか。
みんなに関わっている
民生委員
彼等の、ともかくも何らかの接点のある人を探した
福祉ヤクルト
( 世話焼 き)
ら、5人とも見つかりました。この接点の人に意識
コンビニ
付けをすればいいのです。
出前で食事
友人が通院介助
大家が1階で商売
福祉センターに入浴に行く
(2)「この
)「この人
この人は大丈夫」
大丈夫」でいいのか?
でいいのか?
■ マップで「気になる人」が出てきて、
「この人は?」
と住民に聞くと、大抵は「大丈夫」という答えが返
だれでも困
だれでも困り事を持っている
①物置の整理
②預金の払い戻し
③書類書き
④除雪
⑤病院等への送迎
⑥ゴミの処理
⑦電灯の修理
⑧重い物の持ち運び
ってきます。元気な姿が見られればそれでいいと思
っているのです。しかし、誰にだって困り事の1つ
や2つはあるはずです。それを聞き出せないことに
は仕方がありません。
■ この80歳の男性は、足元の一人暮らしの高齢女性
(5人)
の①~⑧のような困り事に応えていました。
彼女らにはこんなに多くの困り事があるのです。
9
①
②
■ ここに一人暮らし高齢者によくある「困り事」を並
回覧板がよく読めない
班(班長)の役割が負担
③
例えば一人 暮らし高齢者
の困り事
犬の散歩が大変
④
草取りや庭木の剪定
が大変
べてみました。
■ 「こんな困り事を持っている人はいない?」などと
聞いてみると、
「そう言えば…」と出てくるかもしれ
ません。
⑤
ゴミ出しが大変
⑥
具合が悪くなったとき
心配
■ マップづくりの中で実際に出てきた「困り事対応」
だれが関
だれが関わっている?
わっている?
の事例をヒントに、そのご近所らしい困り事対応の
活動を構想していくのです。
要援護者
要援護者
要援護者
買い物手伝い
移送
隣人
隣人
要援護者
隣人
要援護者
おかずの
おすそわけ
庭木の剪定
要援護者
■ ヘルパーが入っていると聞くと、住民はその人への
(3)介護のサポートは
介護のサポートは?
のサポートは?
関わりをやめてしまいますが、プロのサービスだけ
では足りない部分もあります。
ミニバレー
■ 寝たきりの舅を介護している家族に、①お嫁さんが
買い物に行っている間、隣の人が彼の様子を見る、
②近くの男性が彼のおしゃべり相手をしている、③
「お嫁さんのストレス対策に」と、ミニバレーのグ
買い物の
間見守り
ループが誘っている―などの活動が行われていまし
おしゃべり
た。このように、プロの介護のすき間を埋める必要
もあるのです。
①
介護者の負担を
軽減するために
ストレス対策・介護の一部代行
②
一人暮らしの要介護高齢者
■ 住民が担ってもいい「介護」の事例を並べてみまし
た。
生活全般で支援が必要
③
住民が担って
もいい「介護」
の部分
家族の介護力が
薄弱な要介護者
他地区から通ってく る家族
④
サービス漬けに
なっている人
サービスを減らして 住民で関わる
⑤
要介護でも豊かに
生きたがる人
地域グループへの参加等の支援を
⑥
施設入所者・子どもに
引き取られた人
里帰りやグループへの参加を支援
10
(4)施設入所者への
施設入所者への関
への関わりは?
わりは?
施設
入所
と思ってしまい、関心を失ってしまいます。
施設
自宅へ
帰った 入所
■ 「気になる人」
が施設入所したと聞くと、
「一件落着」
■ しかし、入所はしたけれど、たまには里帰りをした
里帰り
いし、昼間、地域のサロンや趣味グループに参加し
施設入所者
たいはずです。そういう願いが聞き届けられている
サロン
入所
施設から
サロンへ参加
施設
入所
施設
家族が
訪問
入所
ご近所の人が訪問
施設
か、マップで確かめてみましょう。事例がないこと
はないのです。その事例をもとに、取り組み課題を
考えたらどうでしょうか。
(5)福祉は
福祉は困り事の解決ばかりでない
解決ばかりでない
安全
困り事
介護
豊かな
生活
■ 福祉は安全が保たれればよし、とする考え方が広が
っていますが、図のような4つの項目を充足させね
ばなりません。この中に「豊かな生活」も含まれる
ことを知っている人は、あまりいません。
■ 国も言っています。地域福祉とは、どんなに要援護
になっても住み慣れた家や地域で、安全かつ「その
人らしく」生きていかれるようにすることだと。そ
の人のライフスタイルを、寝たきりになっても全う
させようというのです。
■ このマップの主人公は、認知症の女性です。毎日徘
徊しているというのですが、ちゃんとした目的があ
ったのです。①近くの同窓生を訪問、②趣味グルー
プに「入れて!」
、③ゲートボールに「入れて!」
、
④サロンに
「入れて!」
、
⑤井戸端会議に
「入れて!」
。
この中の③④⑤が、受け入れていました。
■ 彼女は何をしたいのか? 「豊かに生きたい」という
ことでしょう。それを実現するために、誰が何をし
たらいいのか。住民がグループに入れてあげればい
いことです。要援護者の「豊かな生活」を実現して
あげるのは、住民の役割なのです。
11
■ 要援護者の「豊かな生活」欲求がどのように充足さ
豊かさダイヤグラムに乗
かさダイヤグラムに乗せれば
れているのかを調べるために、
「豊かさダイヤグラ
ム」を開発しました。
家庭・夫婦
人が豊かさを実感するためには、この6項目を充
②
友達
趣味・学習
③
①
社会活動
健康
④
⑥
足させる必要があります。例えばある一人暮らしの
認知症の人を調べたら、①趣味は山でナメコ採り、
②夫は施設入所、③友達は4匹の猫、④社会活動の
機会はゼロ、⑤お金は夫の施設入所で大変、⑥健康
は悪い―という結果でした。
お金・仕事
⑤
■ どうすればこの人がもっと豊かに生きられるのか。
①ナメコ採りに介助人をつける、③ナメコ採りグル
ープをつくって仲間が一緒に行ってあげる、④ナメ
コがよく生える場所を皆に教えてあげる、⑤採った
ナメコを市場で売る、など。これが取り組み課題に
なります。
(6)「気
)「気になる人
になる人」 を4つの観点
つの観点からチェック
観点からチェック
とりについて、この4点から充足状況を点検し、充
①
安全
が確保されているか
困り事
は解決されているか
介護
は保障されているか
②
気になる人
■ これまで紹介してきたように、
「気になる人」1人ひ
足されていない部分をどのように解決するかを考え
るのです。
■ それらをすぐにサービスに手渡すのでなく、なるべ
③
④
豊かな生活 は実現しているか
く「共助」の手で担えないかを考える必要がありま
す。課題は「共助の強化」なのですから。
できるかぎり共助の手で
(7)当人の
当人の自助努力もチェック
自助努力もチェック
いますが、じつは要援護者も上手に支援を求める努
①
自宅でがんばっているか
②
例えば一人 暮らし高齢者
③
■ 私たちは、担い手のあり方にばかり目を向けてしま
困り事を周りに
発信しているか
力をしなければなりません。マップづくりの場でそ
ういう人が浮かび上がってきます。
見守りをお願い
しているか
④
一人暮らし同士で
助け合っているか
⑤
豊かな人生を
めざしているか
12
■ 例えば、一人暮らしの90歳の女性の所に6本も関
わりの線が入っているので、いきなり訪問してみた
ら、彼女(写真左)が自宅に近所の人を呼び込んで
お茶をごちそうしたりしていました。自分が要介護
になった時に助けてくれる人を今、
「育成」している
のです。これもまた自助努力です。
(8)住民の
住民の住みづらさも福祉課題
みづらさも 福祉課題だ
福祉課題だ
■ 気にすべき対象は、要援護者だけではありません。
①
買い物・通学・通院に不便
②
③
住みづらさの
原因さがし
地域の実情によっては、
そこの住民全体が一種の
「要
援護者」状態になっている場合もあるのです。いわ
災害が起きたら・・・
ゆる「住民の生活課題」です。
少子高齢化が急進行
④
犯罪多発地帯
⑤
交通事故多発地帯
⑥
新旧住民の交流がない
■ 石川県のある市。空き家が多い所で、
「住人はどこへ
老人ホーム
行ったのか?」と聞くと、ほとんどが金沢市へ移り
空き家
月に2回里帰り
(息子が金沢から)
親を金沢の老人ホームに入れた。
通っている。
「家へ帰 りたい」→外だけ見て
戻った。
家の空気の入れ替え
掃除・除雪
住んでいたのです。そのために親を老人ホームへ入
所させていました。それでも時々、金沢へ戻って親
の里帰りをさせていました。このように、大都市に
Aさん
たまに
帰る
よって地方の集落が壊されている現実が浮かび上が
たまに
帰る
って来ました。
たまに
帰る
たまに
帰る
金沢へ
第6章
取り組み課題の
課題の抽出は
抽出は
このようにして
13
(1)引っ越してきたばかりの弱視
してきたばかりの弱視の
弱視の男性
理髪店
③
れない道を歩いて、勤務先の整形外科へ通っていま
す。問題は何かと探ると、①の辺りに壊れた側溝、
信号機
小学校へ
■ 1ヶ月前に引っ越してきたばかりの弱視の男性。慣
②
①
路上駐車
壊れた側溝
②の辺りに路上駐車、③の通りは信号がないので危
険、ということが分かりました。
信号機なし
①②はすぐに対処するとして、③をどうするか。よ
一人暮らし・男性
弱視
引っ越してきたばかり
く聞くと、この地区のシニア男性が毎朝、小学生を
学校に送り届けているという。これを生かせないも
信号機
(勤務先)
整形外科
のか、話し合っているうちに、子どもを送り届けた
帰りに、ちょうどこの通りにさしかかり、ここで1
5分待てば弱視の男性と接触できることが分かり
ました。しかもこの横断歩道のそばにある理髪店の
主が、横断する人をよく見ているという。ならばそ
の人にも男性を見守ってもらったら、ということに
なりました。
■ そこで取り組み課題は、この通り。
そこで「
そこで「取り組み課題」
課題」は?
①壊れた側溝は修理。路上駐車も除去
②パトロールと彼の見守りの時間を調整
③理髪店の店主に見守りを依頼
④パトロ-ル隊で彼の生活全般の支援
⑤同じ通勤時間帯の同僚が付き添いも
(2)デイサービス利用
デイサービス利用はいいけど・・・
利用はいいけど・・・
利用の理由を聞くと、
「地域はつまらない」からデイ
デイサービス
要介護。(娘は仕事)
毎日デイ
入所
夫
へ(お楽しみに)行くという人が2人いました。彼
お楽しみ
女等は実は、足元で畑をやっている。この2つの事
妻(要介護)
娘が介護
グラウンド
ゴルフ (土日祝)
実をつなげられないものか。
年1回対抗戦
■ また、デイと日が合わないのでグラウンドゴルフを
やめたという人がいる。これも何かおかしい。
デイで日程
合わず退会
■ そのグラウンドゴルフに行けなくなった人がいる。
お楽しみ
グラウンドゴルフ
(土)
■ この地区でデイサービスを利用しているのは6人。
孫のお守で退会
畑
孫の子守だという。これもおかしい。
14
そこで「
そこで「取り組み課題」
課題」は?
■ というわけで、この地区の取り組み課題はこのよう
になりました。
①要援護者にも楽しい地域に
②要援護者をサロン等に迎え入れ
③「畑でデイサービス」を検討
④グランドゴルフができるようデイを調整
⑤孫をグランドゴルフのメンバーで面倒
(3)「取
)「取り組み課題」
課題」を整理
■ マップをつくった後、
取り組み課題を整理しますが、
テーマとして最低限、
次の3つは取り上げましょう。
■ ①は「気になる要援護者」個々の対応策。これはど
①「気になる要援護者」の個別対応策
のご近所でもあるはずです。
②ご近所の共通課題とその解決策
②は、そのご近所の要援護者の共通課題や、住民の
③「ご近所福祉」推進体制づくり
生活課題などです。この解決策も考えましょう。
(4)さあ、
さあ、課題にチャレンジ
課題にチャレンジ!
にチャレンジ!
■ 取り組み課題がまとまったら、即、活動を開始しま
しょう。時間が経つほど、やる気が失われてしまい
①福祉は困った人を助けてなんぼの世界
②マップづくりは「目的」ではない
③取り組み課題が見つかったら即行動へ
④解決したら、すぐさま次の課題へ
④住民対象に活動報告会も
ます。すぐに取りかかるのが成功するコツです。
■ 1つ解決したら、すぐさま次のテーマに移りましょ
う。
■ 活動が一段落した時点で、住民を対象に、成果の報
告会を開くのもいいのでしょう。マップづくりは、
ここではじめて終了となるのです。
支 え合いマップづくり入門
いマップづくり入門
おわり
住民流福祉総合研究所
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