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FIT 記事 No.30 (2008) パフォーマンス視点による「金融機関

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FIT 記事 No.30 (2008) パフォーマンス視点による「金融機関
FIT 記事 No.30 (2008) パフォーマンス視点による「金融機関向け新経営管理ソリューション」 | 金融 | Microsoft
FIT 記事 No.30 (2008)
パフォーマンス視点による「金融機関向け新経営管理ソリューション」
資本市場規律に沿った株主価値向上のための経営管理が求められて久しい。
現在では、真の企業価値向上と、これによる継続的な競争優位の確立に向
け、顧客リレーションシップやビジネスプロセス、イノベーションなどの無
形資産を有効活用し、新しい経営環境へ展開するための戦略が求められてい
る。そして、戦略実行の過程では、顧客、行員、株主など複数のステークホ
ルダーに対する戦略を策定し、最適化を図り、実行プロセスに展開する必要
がある。
このような経営管理の実現において、IT の果たす役割は大きい。個別業務
に特化したそれぞれのシステムと連携しながら、組織を横断したビジネス戦
略の策定、分析、モニタリングなどの機能を提供するシステムを確立するこ
とで、企業価値向上に直結した経営管理を実現することができる。
本稿では、このような経営管理の実現に向け、必要とされるプランニング、
分析レポーティング、モニタリングなどの各機能を、単一プラットフォー
ム、単一データモデル上で包括的に提供する、マイクロソフトの Office
PerformancePoint Server 2007 をご紹介する。
日本マイクロソフト株式会社
インダストリービジネス統括本部
金融営業本部
金融ソリューション推進グループ
インダストリーマネージャ
東 裕紀央
日本マイクロソフト株式会社
システムテクノロジー統括本部
ビジネスソリューション本部
ビジネスアプリケーショングループ
ソリューションスペシャリスト
福与 直也
トピック
経営管理における BSC の位置付け
パフォーマンスマネジメント実現における現状の課題
マイクロソフトが提供する統合パフォーマンスマネジメントアプリケーション: PPS 2007
PPS 2007 の提供機能がカバーする経営管理工程
機能 1: 監視 (モニタリング) 機能
機能 2: 分析レポーティング機能
機能 3: 計画 (プランニング) 機能
豊富な導入実績
まとめ
経営管理における BSC の位置付け
ステークホルダー毎に、さまざまな視点から業績評価を行うためのフレームワークとして、BSC (バランスト・スコアカード) は、
既に広く認知されている。1992 年に提唱され、今日では戦略実行のスタンダードフレームワークとして、米国企業などを中心に、
さまざまなビジネス領域で活用されていることは周知の通りである。
たとえば、次に示す表の内容を BSC 上に展開した場合を考えてみよう。それぞれの戦略目標間の相関を整理することで、個々の社
員の活動を、財務的視点に加えて、将来収益への貢献度の視点で評価することができるようになる。また、商品知識の向上やコンサ
ルティングノウハウ強化が、最終的にどのように顧客満足度の視点に影響するかを把握できるようになるなど、長期的な視点に立っ
たビジネス活動を推進する仕組みとして活用できる。(表 1)
今後の国際競争力強化に向けた国内金融機関の戦略方針では、海外投資を最重要戦略の 1 つとして掲げる場合も多いが、このような
海外拠点における戦略実行においても、BSC を十分活用することができる。たとえば、中国、インドなどのアジアマーケットは、リ
テールを軸としながら成長し続けており、世界の金融機関も集中的に資源を投下しているが、経営上の課題も多くあるようだ。この
中には、海外投資を現地でマネジメントできる人材が少ない点、異なるマーケットでの価値基準に応じた柔軟な戦略判断が難しい
点、さらに、買収先の金融機関で運用されているシステムとの統合や連携がうまくいかない点などさまざまなハードルがあると言わ
れている。
BSC のフレームワークを活用することで、新しい業務プロセス構築や現地ビジネスに明るい人材育成等の進捗把握を、長期的指標に
照らして評価・管理することができる。また、各国現地にあった業務展開への課題や改善ポイントを把握する仕組みが作れるため、
海外展開の戦略判断・実行を強力にサポートすることができる。
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パフォーマンスマネジメント実現における現状の課題
企業活動における、企画、予算計画、事業予測および財務連結、さらに BSC フレームワークなどを含んだ包括的な管理機能を、こ
こでは、「パフォーマンスマネジメント」と呼ぶことにする。パフォーマンスマネジメントにより、組織のあらゆるレベルにおける
適切な PDCA サイクルを実現することができ、企業および組織戦略に則った自律的な意思決定が促進される。
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このように、企業経営において適切なパフォーマンスマネジメントは不可欠だが、具体的にその仕組みを実現する際、関連システム
の状況などにより簡単にいかないケースも少なくない。たとえば、金融機関の場合を考えてみよう。多くの金融機関では、人事シス
テムとセットになった業績評価システム、会計システムとセットになった管理会計分析システム、そして、経営企画部門が統括する
個別の予算管理システムなどが存在している。各アプリケーションシステムの発展の経緯を考えればごく自然なことであるが、問題
はそれらのシステムが、連携されない形で個別に稼働している点である。パフォーマンスマネジメントの観点で考えれば、これらの
システムからプランニング/分析/モニタリング領域を独立させ、それぞれを横串で刺したように横断的に連携できれば、全社最適の
経営管理フレームワークを実現できる。しかし、それぞれのシステムが個別に稼働し、連携がとれていない既存のシステム構成で
は、このような全体最適の実現は困難となる。(図 1)
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マイクロソフトが提供する統合パフォーマンスマネジメントアプリケーション: PPS 2007
マイクロソフトでは、このような課題を解決し、組織横断的に金融機関の戦略策定、分析、モニタリングを実施するための新しいプ
ラットフォームとして、 PPS 2007 (Microsoft Office PerformancePoint Server 2007) を提供している。日本市場では、2007
年秋に製品が公開されたが、米国では既に中央銀行、最大手銀行、保険会社などに採用され、高いコストパフォーマンスや Excel と
の親和性などにより、急激にシェアを拡大している。
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PPS 2007 は、Business Scorecard Manager と呼ばれるバランスト・スコアカードのフレームワーク製品をベースに、予算管理
および連結決算を実現するプランニング機能を加え、さらに、マイクロソフトのパートナー企業であった ProClarity が提供する分
析製品の使用ライセンスをバンドルしたものである。
Business Scorecard Manager は、欧米の金融機関、特に開発銀行で広く採用されており、中長期の戦略実行および評価を実現す
る仕組みとして活用されていた。また、ProClarity については、もともと Microsoft の分析プラットフォームのフロントエンドとし
て、世界 76 か国約 2000 社で採用されていた製品である。リテールや消費財、ヘルスケアなど様々な業界において、(1) マーケ
ティング分析領域、(2) 営業活動分析領域、(3) 事務分析領域、(4) 財務/人事分析領域、などで幅広く利用されている。具体的な用
途としては、たとえば、既存顧客へのアップセルやクロスセル戦略において、顧客、アセット、商品軸でのトレンド分析と可視化の
ための利用 (Raymond James) や、競合分析、販売員/代理店業績分析、顧客価値分析、顧客リクエストの事務パフォーマンス分析
への利用 (AceInsurance) など、幅広い活用例が存在する。そして、これら分析対象となるデータを補完するためのプランニング機
能も用意されている。プランニング機能では、 Excel インターフェイスから入力したデータをサーバー側でキューブ化し、自動的に
データを収集/集計して、様々な角度で参照することができる。本機能により、基幹システムには格納されていない、部門レベルの
当月の見通しや関係子会社の当月決算値など、多種多様なリアルタイムデータを容易に収集することが可能となる。
製品の特徴として注目すべきは、これらの機能がすべて「標準搭載」されている点である。通常のパフォーマンスマネジメントアプ
リケーション製品は、モジュールごとに別売りされているケースが多く、システムを拡張する際には多大な追加投資が必須とな
る。PPS 2007 は、包括的なパフォーマンスマネジメントサイクルを実現するため、モニタリング、分析・レポーティング、プラン
ニング機能がすべて網羅されており、追加投資なくすべての機能を利用することができる。 (図 2)
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PPS 2007 の提供機能がカバーする経営管理工程
経営管理の工程には、業務評価、分析など過去の実績分析ステップから、実際の業務遂行、そして、予算管理や目標管理など将来に
向けた計画のためのステップがある。PPS 2007 では、以下に示す図中で赤い表示となっているアナリティクス、モニタリング、そ
して、プラニンング機能を提供し、実績分析および将来 (計画) 工程をカバーしている。マイクロソフトが提供するBI製品と連携す
ることで、経営管理に関わる一連の工程を、包括的に支援する。(図 3)
次に、PPS 2007 が提供する 3 つの主要機能について、それぞれの概要をご紹介しよう。
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機能 1: 監視 (モニタリング) 機能
PPS 2007 のモニタリングモジュールは、柔軟かつ高度な「スコアカード機能」と「ダッシュボード機能」を搭載している。技術的
な知識をあまり持たないビジネスユーザーでも、日頃使い慣れた Excel と同様の操作感で、高度な業績評価スコアカードや戦略マッ
プ、分析チャート、KPI (主要業績評価指標) 予測グラフなどの分析レポート、さらにそれらを統合した Web ベースのダッシュボー
ドを素早く簡単に作成し共有できる。
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ビジネスを可視化するスコアカード機能
スコアカード機能では、SQL Server などの RDBMS に加え、多次元データベースや Excel ファイル、SharePoint リストなど、散
在するさまざまなデータソースからリアルタイムで業績データを取得し、複数の KPI が集約された単一のマトリックス上で、スコア
リングと集計を行い、業績を可視化することができる。また、KPI の実績値や目標値のスコアリング表示に加え、ダッシュボード機
能により、信号やメーターのように直観的、かつ瞬時に情報を把握できる視認性の高いアイコンを用いることも可能である。さら
に、値やステータスにフィルタをかけたり、並び替えをしたり、注釈を残して共有することもできる。
情報を集約するダッシュボード機能
ダッシュボード機能では、Web ページ上に、スコアカードや戦略マップ、分析レポートなどをパーツとして集約することができ
る。グラフ、アイコンなどさまざまな表示形式が可能なため、直観的で理解しやすいものとなっている。また、これらのパーツ間で
の連携が可能なため、スコアカードの特定行のクリック動作に応じて、スコアカードやレポートの内容を動的に変更することもでき
る。さらに、表示されたスコアカードや分析グラフを、Excel や PowerPoint へ直接エクスポートすることも可能である。ダッシュ
ボードの作成にあたっては、Excel と同様の操作感で、一連の作成作業をカバーできる Dashboard Designer と呼ばれるデスク
トップツールが提供されている。本ツールを使用することで、プログラミング経験のないビジネスユーザーでも、独自の用途に合わ
せたモニタリング用のダッシュボードを実現できる。 (図 5)
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機能 2: 分析レポーティング機能
PPS 2007 のモニタリングモジュールは、柔軟かつ高度な「スコアカード機能」と「ダッシュボード機能」を搭載している。技術的
な知識をあまり持たないビジネスユーザーでも、日頃使い慣れた Excel と同様の操作感で、高度な業績評価スコアカードや戦略マッ
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プ、分析チャート、KPI (主要業績評価指標) 予測グラフなどの分析レポート、さらにそれらを統合した Web ベースのダッシュボー
ドを素早く簡単に作成し共有できる。
また、サーバー上で集中管理される Excel ベースのレポートテンプレートを用いて、高度でリッチな表現のビジネスレポートを、リ
アルタイムに素早く生成できる。マネジメントレポートから外部公開用の財務帳票まで、Excel の機能をフル活用し、安全かつ透過
的なレポートを生成、さらに、その Excel レポートを SQL Server 2005 Reporting Services にエクスポートして、Web レポー
トとして組織全体で簡単に共有することも可能である。
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機能 3: 計画 (プランニング) 機能
プランニングモジュールでは、予算編成や予測、連結などに代表されるプランニング業務の品質向上、スピードアップ、そしてプロ
セスの統制強化を実現する。
利用にあたっては、日頃使い慣れた Excel をそのまま活用でき、サーバー上に集中管理されるプランニングデータベースやビジネス
ロジック、ワークフローや入出力テンプレートにより、内部統制要件に対応した安全かつ効率的な業務を実現、予算編成や予測、連
結といったプランニングプロセス全体をサポートする。
データ入力や加工は、利用の都度ダウンロードする Excel 入力フォームを通して、サーバー上のデータベースに対して直接リアルタ
イムに実行。利用者のデスクトップに入力用の Excel ファイルを配信したり、保存したりする必要はない。もちろん、関数やマクロ
は引き続き利用できるため、既存の業務 Excel ファイルをそのまま入力フォームに流用することも可能である。
また、サーバーのワークフロー制御により、利用者は割り当てられたタスク以外の処理を行うことができない。入力期日に基づく警
告の通知や割り当ての変更、ドラフトや最終、レビューや承認といったステータスの管理も可能である。さらに、アクセス権制御に
より、入力可能セルを指定、権限を持たないデータの変更を防止することができる。より複雑なデータ処理が必要な場合は、集計
データを再編成するための個別な業務ロジックをサーバー上に定義し、自動的もしくは Excel から呼び出して利用することもでき
る。さらに、標準化されたプロセスをサーバー上で管理しておくことで、集中化された高度なデータ処理が可能となる。また、既存
で活用していた Excel 上のマクロや関数と組み合わせることで、過去の資産をそのまま流用することも可能となる。 (図 7)
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このような提供機能により、PPS 2007 は、多くの金融機関に採用されており、そのシェアはさらに高まっている。それでは、次に
米国における実際の導入事例を紹介して本稿を締めくくりたい。
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豊富な導入実績
最後に、導入事例として数多くの存在する事例の中から、銀行および保険会社の例をご紹介したい。いずれの例もマイクロソフトソ
リューションの導入で、明確な効果をあげている。
The Development Bank of Southern Africa
The Development Bank of Southern Africa (南アフリカ共和国) は、1983 年創業の国有の金融機関である。同行では、インフラ
プロジェクトの推進による国民生活の改善を事業目的としているが、35 のビジネスユニットから提出される Excel スプレッドシー
トでは、各プロジェクトの状況把握が困難な状況にあった。また、各プロジェクトの投資効果を、生活者の満足度や政府指針に基づ
いて測定し、開発予算を小さなプロジェクトベースに効率的に配分していく仕組みも存在しなかった。このため、戦略をアクション
に落とし込み、プロジェクトのパフォーマンスを図る仕組みが必要となった。
そこで同行は、マイクロソフトのテクノロジーを導入して、分断された情報を集約し、バランスト・スコアカード視点での可視化に
取り組んだ (メインの 4 指標は、インフラ開発の加速、顧客の人的資源と協会開発、広範囲な経済成長と地域連携、ナレッジマネジ
メント)。
この結果、プロジェクトごとに固有の特性と雇用率、GDP 貢献、家計への影響等の経済インパクトの関係性をスコアリングができ
るようになり、従業員の評価、個別プロジェクトの採算性評価にも活用できるようになった。また、従業員に受け入れられたこと
で、戦略に対するコミュニケーションが活性化するとともに、パフォーマンスの問題や個別の課題へ迅速に対応できるようになっ
た。さらに、可視化の向上によって銀行内の結束が高まるとともに、組織全体の目的、パフォーマンス状況が銀行全体レベル、部門
レベル、ビジネスユニットレベル、チームレベル、個人レベルで明快に把握できる環境を実現することができた。
ACE Group
ACE Groupは、1985 年に設立された保険・再保険分野で世界有数の保険会社である。社内には、保険料計算や支払、再保険処理等
のための大量のデータが、それぞれ異なったレコード体系で存在していた。一方、経営層や事務部門では、ビジネスに必要な情報を
使いやすい形で手に入れたいというニーズが高まっており、マイクロソフトの分析プラットフォームを採用することで、低コストで
効率的な分析環境を実現することになった。
ProClarity と SQL Server Analysis Services を併用することで、どんな業種でどれだけの引受があったか、どれだけの代理店がど
んな商品を売ったか、ターゲット別にどれだけ売上が伸びているのか、などの分析ができるようになった。わずか 4 ~ 5 回のク
リックで、ユーザーは高いビジネス視点から、特定の保険契約詳細のビューまでドリルダウンができる。また、いくつかのアンダー
ライティング部門、ブローカー、地域別といった形でオペレーションのパフォーマンスを評価することもできるようになった。そし
て、きめ細かい分析能力によって、新契約と既契約維持のバランスを整理したり、潜在的な保険料増加がどのようにビジネスに影響
を与えるかを調査することも可能となった。
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まとめ
経営管理というテーマは、非常に高次元であり、簡単に改善ができるものではない、という指摘もあるだろう。しかし、経営管理に
おける実作業の場面で、 Excel を使った集計や分析など、単純な作業の積み重ねが日々遂行されているのも事実だ。今回ご紹介した
PPS 2007 は、これら経営管理を支える個々の作業を効率化し、さらに統合されたプラットフォームの提供で、企業や組織を横断し
た経営レベルでの可視化を実現する。
駆け足でのご紹介となってしまったが、本稿が、経営管理におけるパフォーマンスマネジンメントを考えるお客様の検討や情報収集
の一助となれば幸いだ。
FIT 記事 No.30 (2008) パフォーマンス視点による「金融機関向け新経営管理ソリューション」 | 金融 | Microsoft
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金融 IT 情報誌 FIT No.30「2008 秋号」
本サイトに記載の情報は、日本金融通信社発行「FIT」誌の発行日時点におけるものです。Microsoft は本サイトに記載した内容について
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