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全国農業協同組合連合会徳島県本部[最終報告] (PDF:1231KB)

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全国農業協同組合連合会徳島県本部[最終報告] (PDF:1231KB)
実証試験結果報告書
1.対象品目と課題
たまねぎ
水稲単作地帯に適した加工・業務用たまねぎ品種の選定
2.目的
水稲単作地域に、たまねぎの機械栽培体系を導入し、たまねぎの生産を拡大推進し、生産農家
の収益向上を図る。そのために、排水不良田における適性品種の選定を行う。
3.実証機関名及び実施場所
(1)実証機関名:全国農業協同組合連合会 徳島県本部
(2)実証場所:徳島県小松島市田野町
4.試験方法
(1)試験区の構成
比較実証しようとする技術項目
試験区
品種名
種苗会社名
①
ターボ
タキイ種苗
②
アトン
タキイ種苗
③
ヒーロー
カネコ種苗
④
コマンダー
カネコ種苗
⑤
アンサー
七宝種苗
⑥
さつき
七宝種苗
⑦
ネオアース
タキイ種苗
⑧
もみじ3号
七宝種苗
対照
ターザン
七宝種苗
収穫期
5月下旬
5月下旬
5月下旬
5月下旬
5月下旬
5月下旬
6月上旬
6月上旬
5月下旬
(2)耕種概要
1)
2)
3)
土性土質:
前作物:
耕種概要
①播 種 日 :
②定 植 日 :
③栽 植 密 度
④施 肥 量 :
沖積埴壌土
水稲
9月27日
11月30日
:畦幅140cm×株間12cm・4条植え 27,000株/10a
基肥 N12-P15-K10(kg/10a)
追肥 N10-P 0 -K10(kg/10a)
(3)試験期間中の気象概要
播種後、育苗期間中10月までは、気温が平年より2℃前後上回る。その後、気温は平年並みと
なったが、年明け以降は、平年を1から2℃低く推移した。育苗期間である10月9日、定植後12月
2日に集中豪雨があったものの生育にはほとんど影響はみられなかった。しかし、生育期間中は
ほとんど雨量がなく、乾燥傾向であったため生育は遅れる傾向であった。
1
140
30
120
25
100
20
降
水
量
(
㎜
)
平
均
15 気
温
(
℃
10 )
80
60
40
5
20
0
0
降水量(H22.9~H23.2)
降水量(平年)
平均気温(H22.9~H23.2)
平均気温(平年)
図. 降水量と平均気温(平成22年9月中旬~23年2月上旬):
徳島
5.実証試験の結果
(1) 生育状況 育苗期間中の生育は、順調に推移した。定植後、大雨もあったが、病害もみられず品種間の生
育差はなっかた。年明け後からの低温と降水量がほとんどなかったことから、生育は全体的に遅
れている。このため、予定の収穫は遅れると思われる。2月での品種による差は、ほとんど認めら
れなかった。
写真 育苗期(11月10日)
写真 育苗期(10月19日)
2
図 定植日(11月30日)品種ターボ
図 定植日(11月30日)品種ターザン
(2)収穫物調査結果
収穫物調査結果は、表1のとおりである。対照のターザンと比較して、アンサー、ネオアース、ター
ボの順に球重が重く、収量は、ほぼ同等の結果が得られた。同時に収穫調査を行ったため、もみ
じ3号は、やや早めの収穫となった。このため、品種の特性よりやや球重も軽くなったと思われる。
表1 収量調査
品種名
ターボ
(タキイ種苗)
アトン
2 (タキイ種苗)
ヒーロー
3 (カネコ種苗)
コマンダー
4 (カネコ種苗)
アンサー
5 (七宝種苗)
さつき
6 (七宝種苗)
ネオアース
7 (タキイ種苗)
もみじ3号
8 (七宝種苗)
ターザン
対照 (七宝種苗)
1
草丈(全長)
(㎝)
葉数(枚)
球径(㎜)
球長(㎜)
全重(葉付)
(g)
球重(g)
80.3
7.5
79.7
70.8
372.2
264.1
77.6
7.5
75.0
69.5
328.5
228.7
66.6
7.4
76.4
67.0
324.8
227.2
75.4
6.7
74.6
72.1
300.9
212.8
68.4
7.2
86.7
68.8
420.9
313.0
87.0
8.3
79.8
78.8
423.2
252.8
82.7
7.7
80.6
73.7
403.5
275.3
85.7
8.0
76.4
76.0
372.7
227.8
78.4
7.9
84.1
71.2
430.6
291.8
収穫日:平成23年6月2日(木) JA東とくしま・全農とくしま
3
写真 収穫物
①ターボ(タキイ種苗)
②アトン(タキイ種苗)
③ヒーロー(カネコ種苗)
④コマンダー(カネコ種苗)
⑤アンサー(七宝種苗)
⑥さつき(七宝種苗)
⑦ネオアース(タキイ種苗)
⑧もみじ3号(七宝種苗)
対照 ターザン(七宝種苗)
4
(3)経営収支
収量性が高い品種を選定することが経営安定につながる。また、実需者に合った品種の選定が、
今後の産地づくりに必要である。
表2 農業経営指標(実績・10a当たり)
試験区①~⑥
栽培品目: たまねぎ
試験区⑦~⑧
対照区
品種「ターボ」
品種「もみじ3号」 品種「ターザン」
(5月下旬収穫) (6月上旬収穫) (5月下旬収穫)
作 型:
(単位)
収穫量
kg
単 価
円/kg
7,100
6,000
6,700
45
45
45
粗収入・・・①
円
319,500
270,000
301,500
経営費・・・②(=③+④)
円
192,050
186,550
190,050
生産費・・・③
円
156,550
156,550
156,550
種苗費
円
22,650
22,650
22,650
肥料費
円
32,790
32,790
32,790
農薬費
円
23,880
23,880
23,880
諸材料費
円
37,230
37,230
37,230
農用建物(うち減価償却費)
円
農機具費(うち減価償却費)
円
光熱水費
円
-
-
-
その他
円
-
-
-
出荷・調製費・・・④
-
40,000
円
出荷資材費
円
出荷・運搬費
円
出荷手数料
円
その他
円
-
-
40,000
40,000
35,500
30,000
33,500
農業所得・・・⑤(=①-②)
円
127,450
83,450
111,450
所得率・・・⑥(=⑤÷①×100)
%
39.9
30.9
37.0
時間
35.5
37.5
35.5
3,590
2,225
3,139
労働時間・・・⑦(別紙5の数値を記載)
円
1時間当たり労働報酬・・・⑤÷⑦
*:出荷・調製費は出荷資材費、運搬費、手数料を含む。
(4)作業内容と労働時間
定植については、自動定植機を使用したため大幅に作業時間は短縮された。収穫について
も、収穫機で行った。
5
表3 主な作業内容と作業時間(10a当たり)
生産に係る作業時間(単位:時間)
試験区①~⑥
試験区⑦~⑧
対照区
(5月下旬収穫)
(6月上旬収穫)
(5月下旬収穫)
播 種
0.5
0.5
0.5
管理
5
5
5
施 肥
1
1
1
耕うん・ほ場準備
4
4
4
定植
1
1
1
管理
4
5
4
防 除
4
5
4
追肥
1
1
1
20.5
22.5
20.5
収穫
3
3
3
選別
5
5
5
乾燥
0
0
0
出荷
5
5
5
13
13
13
33.5
35.5
33.5
育苗
本圃準備
本圃管理
小計①
出荷・調製に係る作業時間(単位:時間)
小計②
作業時間の合計①+②(=⑦)
(5)実証技術の結果、成果等
水稲単作地域に、たまねぎの機械栽培体系を導入するための実証展示は予定どおりに進むこ
とができた。次年度では、栽培面積を増やし、産地づくりを考えている。水稲単作地域に、たまね
ぎの機械栽培体系を導入するための実証展示は予定どおりに進むことができた。次年度では、栽
培面積を増やし、産地づくりを考えている。
6.考察
(1)普及の見込み
全自動移植機・収穫機の導入により、大規模面積の栽培が可能である。貯蔵について品種選定
し、次年度は栽培面積の増加に向けて推進する。
(2)残された課題
収穫機を使用するため、梅雨期になるまでに収穫可能な品種の検討を行いたい。
(3)今後の取組み
水稲単作地域に、たまねぎの機械栽培体系の導入するため、地域に適合した適性品種の選定
を行う。また、販路についても検討する。
6
7.協力機関等の意見
(1)試験研究機関(徳島県立農林水産総合技術センター)
たまねぎの移植機用育苗については、作業体系が確立されておりどの品種も苗の生育も順調で
あった。本地域でのたまねぎ栽培の取組みは初めてであり、1作の試験の途中段階ではあるが、
新しい品目導入による活性化につながる取り組めるよう期待したい。今後、収穫物調査の結果を
みて、さらに現地にあった作業体系、品種の検討をあわせて考察する必要があると思われる。
(2)都道府県の普及関係機関(徳島県東部農林水産局)
近隣の他県産地では、育苗から収穫まで機械栽培体系の普及が見られるが、本地域を含む県
内へはほとんど導入されていない。そこで、本地域でこれから新たに産地を育成するのであれば、
担い手が尐ない状況やほ場整備が完了した水田が活用できることから、機械栽培体系の導入は
不可欠であると考えられる。最終的な試験結果をふまえて、地域適正の高い品種が選定できるこ
とを期待する。なお、尐雨による生育の遅れがあり、水田裏作でのかんがい水の確保について、
検討が必要なのでないかと思われた。
(3)実需者
新しい産地として今後の安定供給を期待したい。
8.検討委員会委員の意見
本実証試験は、水田単作地帯において水田を利用した加工・業務用タマネギの産地化を目指
し、排水不良田に適する品種を選定すものである。
本試験では、供試品種の「アンサー」や「ネオアース」「ターボ」の球重が対照品種の「ターザン」
より重くなり、「ターボ」の10a当たり収量は7.1tと多く、排水不良水田でも多収が可能であることを
実証するとともに、有望品種の選定ができた。
タマネギは機械化が進んでいる作目で、本実証試験では、苗はセルトレイを利用したセル成型
苗、定植時には全自動移植機を、収穫作業は収穫機を利用し、10a当たり34時間前後と大幅な省
力化を達成しており、このような機械化一貫体系を目指した取り組みも評価できる。
これまでの事例をみると、加工・業務用野菜は、既存の産地より新たに生産を始める地域で産
地化が進むことが多く、このような視点からすれば当地域での取組は重要である。
本実証地区のように水田を利用したタマネギ産地は尐なくはなく、当地区に近いタマネギの大産
地である淡路島でも、タマネギはほとんど水田を利用して生産されている。今後、淡路島の栽培技
術情報等も参考にして技術確立を進めることも必要であろう。
本実証試験における当面の技術的課題は、排水性が不良な当地域に適する加工・業務用タマ
ネギの品種選定であるが、産地化を進める上では圃場の排水性を改善するための耕耘同時うね
立て作業機の利用なども検討することで一層の生産安定が図られるものと考える。
本実証試験では、育苗は農業研究所が担当し、現地調査には普及機関が深く関わるなど、実証
主体である全農徳島県本部と関係機関の連携が良く、このような連携の下で新産地が育成される
ことを期待したい。
(川城 英夫)
①加工業務用たまねぎは国内生産量に対する輸入量の割合が高く、とりわけ、加熱用途への要
求が多いので、これの国産振興には期待が大きいと感じている。
②生産コスト目標の40円/kgは、今後の農産物自由化の流れを鑑みても意味ある取り組みと考え
る。
③植付け・収穫の機械化に適した効率的な圃場環境が必要であり、当該地域は既に150haの区
画整備済みとの事であるが、今後、地域で連携した大規模機械化栽培収穫に向いた圃場環境
確保が肝要であると考える。
④湿潤型気候帯に於いては、「排水不良田に於けるたまねぎの適性品種探索」も重要ながら、
高畦等の栽培技術の開発が効果を得るにも、より早いと感じている。
⑤収穫後の乾燥と冷蔵貯蔵は、実需者に於ける最終的な歩留まりに大きく影響するので、生産
振興と同時に、使用を想定している当該地域の実需者とも協議の上、乾燥設備と冷蔵庫確保を
考えておく必要があると考える。
(藤本 幸佳)
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