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二国間交流事業 共同研究報告書

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二国間交流事業 共同研究報告書
(様式5)
二国間交流事業 共同研究報告書
平成
独立行政法人日本学術振興会理事長
21年
4月
8日
殿
共同研究代表者所属・部局 東北大学・大学院理学研究科
(ふりがな)
こばやし
職・氏 名 教授・小
1. 事
業
名 相手国(南アフリカ)との共同研究
2. 研 究 課 題 名
林
ながお
長
夫
振興会対応機関(NRF)
触媒機能を有したフタロシアニン類の合成
3. 全 採 用 期 間
平成19年
6月
1日 ~ 平成21年
3月
31日 (
1年
10ヶ月)
4. 研 究 経 費 総 額
(1)本事業により交付された研究経費総額 5,000千円
初年度経費2,500千円、 2年度経費2,500千円、 3年度経費
(2)本事業による経費以外の国内研究経費総額
千円
0千円
-1-
5.研究組織
(1)日本側参加者
(ふりがな)
氏
こばやし
小林
所 属・職 名
研 究 協 力 テ ー マ
東北大学大学院理学研究科・教授
研究総括、分光学的手法を用いたフタロシア
名
ながお
長夫
ニン類縁体の物性の解明
ふくだ
福田
たかみつ
貴光
東北大学大学院理学研究科・講師
新規フタロシアニン類縁体の合成と物性解
明
し み ず
清水
そ う じ
宗治
東北大学大学院理学研究科・助教
新規フタロシアニン類縁体の合成と物性解
明
まっく
じょん
Mack John
東北大学大学院理学研究科・助教
理論計算を用いたフタロシアニン類縁体の
物性解明
むらなか
村中
あつや
厚哉
理化学研究所・協力研究員
理論計算を用いたフタロシアニン類縁体の
物性解明
なかい
中井
かつのり
克典
東京大学大学院理学系研究科・特 理論計算を用いたフタロシアニン類縁体の
任研究員
物性解明
(2)相手国側研究代表者
所属・職名・氏名
Rhodes 大学・教授・Nyokong Tebello
(3)相手国参加者(代表者の氏名の前に○印を付すこと)
氏
名
所属・職名(国名)
研 究 協 力 テ ー マ
○Nyokong Tebello
Rhodes 大学・教授(南アフリカ)
研究総括、新規フタロシアニンの合成及び物性評価
Ozoemena Kenneth
Pretoria 大学・講師(南アフリカ)
フタロシアニン類縁体の電気化学手法による物性評価
Vilakazi Sibulelo
Limpopo 大学・講師(南アフリカ)
電気化学手法によるフタロシアニンの触媒機能の評価
Chidawanyika Wadzi
Rhodes 大学・大学院生(南アフリカ)
新規フタロシアニンの合成及び物性評価
Khene Samson
Rhodes 大学・大学院生(南アフリカ)
新規フタロシアニンの合成及び物性評価
Mbambisa Gcineka
Rhodes 大学・大学院生(南アフリカ)
新規フタロシアニンの合成及び物性評価
Britton Jonathan
Rhodes 大学・大学院生(南アフリカ)
新規フタロシアニンの合成及び物性評価
Nombona Nolwazi
Rhodes 大学・大学院生(南アフリカ)
新規フタロシアニンの合成及び物性評価
Chauke Vongani
Rhodes 大学・大学院生(南アフリカ)
新規フタロシアニンの合成及び物性評価
Mashazi Philani
Rhodes 大学・大学院生(南アフリカ)
新規フタロシアニンの合成及び物性評価
-2-
6.研究概要(研究の目的・内容・成果等の概要を簡潔に記載してください。)
本二国間交流事業共同研究では触媒機能を有したフタロシアニン類を合成し、触媒や光増感材などへの
応用を志向した研究を行った。
本事業でまず合成したのは、フラーレンが結合したテトラアザクロリンの鉄とコバルト錯体であった。
ポルフィリン類縁体の鉄とコバルト錯体は酸素の電気化学的還元に対して触媒活性を示すために、燃料電池
への応用が期待でき、これまでに多数の研究が報告されている。今回の我々の系ではフラーレンとテトラア
ザクロリンが最近接に位置しており、軌道間で相互作用があるために、触媒反応における電位又は電流の制
御が可能と考えられた。実験の結果、触媒活性はテトラアザクロリンの周辺に電子吸引性の置換基を有した
化合物で高いことを明らかにし、特に鉄錯体では−0.2V での4電子還元を観測した。この研究成果は
Electrochemistry Communications で発表した。
また酸素還元では、フタロシアニン間の相互作用を考慮して隣接させた対面型2量体でも高い活性を示
すことが期待できるため、現在この様な化合物の合成を南アフリカ側の博士学生が試みている。また、平面
型に結合した2量体では電位の制御が可能な金属錯体が得られることが予想できるため、こちらも南アフリ
カ側の研究室で合成を行っている。上記対面型および平面型2量体の分子デザイン、合成法は我々が考案し、
南アフリカ側の博士学生が滞在中に、合成についてもこちらで指導を行い、合成の技術を学んでいただいた。
触媒能の生体への応用としては癌の光化学治療に有効と思われる化合物を合成し、その特性を調べた。
光化学治療とは、癌組織に蓄積させた光増感材に体外から光を当てることで励起し、増感剤の活性化状態か
らのエネルギー移動を経て、生体中の酸素を細胞毒性の高い1重項に活性化することで、最終的に癌組織を
破壊し除去する治療法である。光増感剤に求められる条件は励起状態が安定であることと、吸収帯の幅が広
く光吸収効率が高いことである。本目的を達成するために、無金属体のフタロシアニン誘導体を合成した。
また吸収帯の幅を広げるため、骨格中の4つのベンゼンの一つに電子吸引性基を導入し、分極した分子構造
を設計した。我々の期待通りの皮膚透過率の高い可視領域の波長の長い領域に強い吸収を示す化合物が得ら
れた。本結果は J. Porphyrins & Phthalocyanines に報告した。
更に幅広いエネルギーを効率良く吸収させる目的で、共平面型のヘテロ2量体の合成を南アフリカ側の
研究室で引き続き行っている。分子間の励起子相互作用を利用したこの方法は、我々が以前見いだした方法
であり、無金属体で置換基を調製してある程度水溶性を向上させれば、活性が上げる事が期待できる。
カルボキシル基を4つあるいは8つ含む水溶性の鉄或はコバルトフタロシアニンを電極表面上に修飾す
ることで環境汚染物質を検出するセンサーに用いる事ができる。南アフリカ側から派遣された Sibulelo 博士
は東北大学で当研究室で合成した水溶性フタロシアニンで修飾した電極を用いた電気化学実験から、農薬に
用いられている dicrotophos pesticide の分解に良い活性を示すことを見出した。現在論文誌に投稿するた
めに結果を纏めている段階である。また Sibulelo 博士には我々になじみの無かった電極表面へのフタロシア
ニンの修飾法について講義をしていただいた。
本二国間交流事業共同研究において、日本側としては分子の設計指針や、合成法について助言を行い、
また実際に共に実験を行うことで合成技術を教授した。更に化合物の性質をある程度予測するのに役立つ分
子軌道計算法等を南アフリカ側に教授した。又南アフリカ側の要望により、現地の幾つかの大学を訪ね、フ
タロシアニンの触媒能力、応用に関して講演を行った。
-3-
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