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教職員の児童と向き合う時間の確保・勤務時間の適正化のための学校

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教職員の児童と向き合う時間の確保・勤務時間の適正化のための学校
教職員の児童と向き合う時間の確保・勤務時間の適正化のための学校業務改善
-学校徴収金制度導入と学校業務支援ソフト・校務事務処理ソフトの活用-
上郡町立上郡小学校
学校副主幹
高 橋 一 行
1 取組の内容・方法
(1)はじめに
上郡町では、児童数・生徒数が減少していくなかでより質の高い教育を行うことを
目指し「上郡町幼稚園・小学校統合計画」が示された。計画に基づき小学校、幼稚園の
統廃合が実施され、平成22年4月に梨ヶ原小学校・船坂小学校が山野里小学校に統合、
平成24年4月には鞍居小学校・赤松小学校が上郡小学校に統合された。その結果、上
郡町教育委員会管内の小中学校は3小学校1中学校となっている。存続校である本校に
おいても児童数は増えたが、統廃合により教育環境整備、関係機関との調整、諸帳簿作
成事務などのほか、町内教職員数の大幅減による教職員の負担が大きくなった。そして
なにより子どもと向き合う時間の確保が課題となっている。本校では、平成24年度・
25年度と上郡町学校業務改善中心校として学校事務職員の加配を受け、教職員の児童
と向き合う時間の確保、教職員の事務負担軽減・勤務時間の適正化を目指し学校業務改
善・学校事務改善に取り組んできた。
(2)学校徴収金システムへの取組
取組前の集金方法は、学級担任が保護者負担の教材費やPTA会費等を集計し、毎月
集金袋により児童に現金を持参させ行っていた。保護者からの現金出納だけでなく、業
者への支払い、現金の保管や保護者への文書作成も担任が行っていたため、担任の時間
的・精神的負担は少なくなかった。
〈平成24年度 学校徴収金規定の作成
会計担当者を中心としたシステム〉
『上郡小学校学校徴収金規程』を作成し、会計担当者(事務室)を中心に現金の出納
や口座による残高の管理、業者への支払い、保護者等への会計報告を行うこととした。
集金方法は従来通り児童による現金持参の集金であったため、担任の事務負担や担当者
による金融機関での現金出納、業者への支払いなどの負担は残った。
〈平成25年度 インターネットを利用した新しいシステム〉
銀行のインターネットバンキング(法人・事業者向け)を利用した徴収金制度を平
成25年9月から開始した。保護者の指定した口座から集金額振替・取引業者等への
支払いなどの入出金を事務室のパソコン入力で行うこととした。年度当初に集金予定
額を集計し、年4回口座振替をすることとし、前3回は定額を口座振替、最終回は
年間の差引額を決算額として保護者に提示し口座振替を行っている。
〈事務室の新しいシステムへの取組〉
・金融機関との調整
インターネットバンキングシステムについての概要把握、契
約書締結事務や初期設定費用・月額管理料・口座振替手数料について調整を行う。イン
ターネットバンキングの学校利用は、金融機関にとって県下初となり調整に時間を必要
とした。調整の結果、初期設定費用・管理費用は無料でして頂けることとなった。また、
システム導入にあたり銀行担当者による各学校管理職・担当者への概要説明やパソコン
の初期設定、初回の入力支援も依頼できスムーズに新システムを開始できた。
※金融機関は全ての事柄で内部決裁を必要としたため、預金口座振替依頼書の記入例一
つにしても本部(担当部署)の承認が必要となり時間がかかった。
・保護者への説明
新しい徴収金システムについて保護者への説明文書の作成と説
明を行う。また、取扱金融機関を限定したために新規口座開設を必要とする保護者も多
数いた。口座開設の説明文書作成や問い合わせへの対応などの事務支援を行った。同時
に学校として保護者の負担軽減のための教材見直し等の検討も行った。
・教職員の共通理解
新しい徴収金システムを教職員に説明し共通理解を図った。
各担任が共通のパソコンホルダーに教材費をその都度記入し、執行状況を確認するとと
もに管理職が執行状況を何時でも確認できるシステムを作成。また、事務簡素化のため
記入した表を使い年度末の保護者への決算報告を行うこととした。
(3)学校業務支援ソフトウエアの活用への取組
上郡町では、教職員に各1台のパソコンが貸与され、上郡町教育委員会及び町立小中
学校を結ぶ業務支援のためのオープンコミュニケーションソフト〈職員スケジュール、
行事予定、相互連絡管理ソフト〉が導入されている。その有効利用を促進するため、教
職員の共通理解のためのルール作りを行う。
〈共通ルールの例〉
・出勤直後に机上のパソコンを立ち上げて行事予定・連絡事項の確認をする
・職員間の連絡事項、共通理解事項において生徒指導関係や緊急を要する連絡以外はパ
ソコン掲示板を利用し周知する
・学校行事予定は月初めまでに担当者が入力する
・職員の勤務予定(出張・職専免・校内会議)を入力する
・職員朝会(朝の打ち合わせ)の廃止、職員会議・打ち合わせ時間の短縮
・職員間の連絡事項、共通
理解事項の徹底、
・連絡事項等の長期保存
・勤務状況、勤務予定確認
の簡素化
※スズキ教育ソフト
Open School コミュニケーション
学校業務支援ソフト
〈事務室による入力支援〉
職員の勤務動静予定(出張・職専免・校内会議)を文書処理担当者(事務室)が依頼文書
などの受付時に勤務事項、場所、開始時間・終了時刻、勤務者名を職員予定欄に入力す
ることとした。その日の勤務予定の再確認に役立つことを期待した。
(4)校務関係事務処理教育ソフト『校務シリーズ』の活用
上郡町では、校務関係事務支援ソフトとして『スズキ校務シリーズ』を導入した。児
童の『名簿情報処理』から、『児童出欠席情報管理』・『通知表作成』・『指導要録作
成』までソフトを使用し管理作成している。事務室では、導入時において学籍管理や成
績書類の入力支援を行い、また、連携校でのシステム定着支援に取り組んだ。
※業者ソフトを使用することのメリット
・町内間での異動後も同じシステムなので職員の負担が少ない
・メンテナンスを業者が行うため対応が早く、修正要望にも対応してもらえる
・権限事項が明確であるため、権限者以外が許可なく修正等ができない
・サーバー(上郡町庁舎内)を含めセキュリティ面で安心である
(5)文書情報の活用への取組
受付処理される文書は、本校において例年1800件を超える。通知通達等の公文
書から出張依頼、児童への募集案内まで各種あるが、全てパソコン上の文書処理簿に
おいて受付し決裁をした。受付文書は、担当者名、保存ファイル名を事務室及び教頭
で指定記入した。文書処理簿を職員共有のパソコンホルダーに掲載したので、何時で
も全職員が文書送達の有無や保存場所を机上パソコンにて検索できるようになった。
2 取組の成果
(1)学校徴収金への取組の成果
インターネットを利用し入出金することにより、一部の立替金等を除き現金を取り
扱わなくなった。このことは、現金の集計や保管をしてきた学級担任や担当者にとっ
て時間的、精神的負担の軽減になっている。他にも
・常時パソコンで執行状況を確認できる ⇒
会計の透明性の確保
・口座振替による集金(現金を使用しない)⇒
誤りの防止・軽減
児童・保護者の負担軽減
・担当者(事務室)による入力会計処理 ⇒
学級担任の負担軽減
・口座振替による業者支払い
⇒
業者の負担軽減
・共有ホルダーに購入一覧等を保存
⇒
職員のデータ共有(参考資料活用)
一方で、口座振替手数料を保護者負担としたこと、年度末振替処理日の都合で2月上
旬には年度内仮決算が必要なこと、口座振替不能分への対応、セキュリティなど課題も
ある。しかしながら、教職員(特に学級担任)には事務負担の大幅な軽減になっている。
(2)学校業務支援ソフト・校務関係処理ソフトの活用への取組成果
学校業務支援ソフトの活用により、職員間の連絡事項や指示事項、共通理解事項を掲
示板に記入することとし、朝の職員打ち合わせ(職員朝礼)を廃止した。担任が児童の
登校時や朝学習の時間に各教室に在室できるようになり、児童の健康観察や生活指導上
も成果を上げている。また、職員会議の時間短縮や打ち合わせ回数の削減にも取り組み
教職員の児童と向き合う時間の確保につながった。掲示板に記入することにより連絡事
項が長期間保存され、職員が出勤時刻に合わせてパソコンを立ち上げて連絡事項を確認
するだけでなく、空き時間や後日の再確認に役立つことがわかった。
緊急を要する連絡事項や生徒指導上の協議事項については、勤務終了10分前に職員
終礼を実施している。その際、管理職より職員の健康維持や定時退庁を促している。
校務関係事務処理ソフトの活用は、学籍管理や成績処理にかかる時間が削減できた。
業者ソフトの活用により、ソフトのメンテナンス業務を業者が行うため、ソフトの補修
や訂正の労力が減るとともに、より迅速に処理できるようになった。学期末、学級担任
や教科担任による成績処理のための超過勤務は大幅に削減されたと感じている。
※本校においては、過去5年間、病気等による職員の長期休暇取得者はいない。
3 課題及び今後の取組
〈学校徴収金の課題と取組〉
・口座振替手数料を含む保護者負担の軽減
・転出入児童への対応、早期(年度末)の決算事務処理への対応(時間的負担が大きい)
・口座振替不能分、未納者への対応
などの課題はあるが、新しいシステムで1年間を通し事務処理したことで教職員の理
解は深まり負担軽減を実感できた。学校徴収金について保護者に理解していただくため
の説明は管理職、担任と共にこれからも丁寧に対応していきたい。
〈情報管理の課題と取組〉
学校にもたらせる情報は文書受付された件数を見ただけでも多いことが分かる。受付
された多くの情報の種類や必要度を調査・分析し簡素化に向けて町教育委員会とも協議
していく。また、情報保存(文書・メール)や情報検索のルールの再検討により、有効
活用、負担軽減につなげる。
学校業務改善・学校事務改善については、教職員の児童と向き合う時間の確保、教職
員の負担軽減を目指し取り組んできたが、事務負担軽減が単に教育職員(教員)から
行政職員や管理職への事務の移管や担当者変更にならないように考えている。たとえ
ば、学校徴収金システムにしても、システムやルール作りは事務室が担当したが、実
際のパソコン入力や報告書等の作成は教員を含め誰にでも出来るシステムやマニュア
ルを作成していく必要があると考える。それぞれの特性を生かした事務分担や、全教
職員の負担軽減のための創意工夫に努めたい。
上郡町では、「夢をひらく教育」を教育のシンボルフレーズとし、子どもたちに「確
かな学力」「豊かな人間性」「健康と体力」を身に付けさせ、変化の激しい社会を生
きぬくための「生きる力」を育む学習づくりを進めている。学校数、児童数、職員数
が減少する中で子どもに力をつけるには、子どもと向き合う時間の確保は不可欠であ
り、解決すべき諸問題への迅速かつ丁寧な対応を行い学校業務改善に努めていきたい。
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