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第7章その1(PDF:1292KB)

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第7章その1(PDF:1292KB)
第7章
外食、小売等のサービス提供
7.1. インド国内における流通の実際
7.1.1.流通市場の特徴83
インドの小売セクターの市場規模は、約 2,800 億ドルで、年間平均成長率(CAGR)は今後
9.5%に増加すると予想される。その中でも、食品雑貨の市場規模は全体の 54%を占め、約
1,520 億ドルとその割合は大きい。実際に、家計支出に占める食料品の割合も大きく全家計
支出の約 35%を占めている84。
2.9%
14.3%
製薬
2%
食品雑貨
54%
4.6%
5.9%
耐久消費財
7%
7.0%
2.9%
3.1%
10.0%
16.0%
5.5%
5.3%
5.2%
7.4%
8.8%
7.6%
10.4%
アパレル
7%
20.3%
約2,800
億ドル
その他
30%
20.1%
21.3%
34.6%
31.5%
34.4%
100万都市
新興都市
ニッチな都市
食品、飲料、たばこ
公共料金、住居費
アパレル
家族・個人用品
図 7-1 小売市場における各業種の市場割合
13.1%
8.0%
交通費
医療費
教育・娯楽
交際費
図 7-2 都市規模別の家計支出の内訳
出典:The Marketing Whitebook 2009-2010, Businessworld, p.269, p.278
インドの流通市場の特徴は、伝統的な個人経営でかつ組織的な零細・小規模業者が多数を
占めることである。全体売上のうち、こうした零細小売業者が約 95%を占める。これは、小
売業界 1,200 万店舗の 98%が 46.5m2 以下の規模で営業するキラナと呼ばれる家族経営型の
小規模店舗が依然大半を占めているためである。逆に言えば、組織的な大規模小売業者の売
83
84
インドビジネス実務ガイド, (社)企業研究会, 2007.12, p.393~p.397
The Marketin g Whitebook 2009-2010, Businessworld, p.278
146
上シェアは全体のわずかに約5%の約 140 億ドル85に過ぎない。実際に、他国との組織的な大
規模小売企業者の市場シェアを比較するとインドはかなり低く、中国でさえも 20%を組織低
な大規模小売業者が占めていることを考えると、インドの小売市場はまさに最後の巨大市場
ともいえる。市場全体の成長率は年率 5~6%だが、大規模小売業者の売上高は、毎年 25~
30%の成長が見込まれている86。それでも 10 年後の 2015 年でさえ、小売業全体に占める大
手業者の売上シェアは全体の 25%程度に過ぎず、長期にわたって開拓余地が残されている87。
15%
19%
45%
60%
70%
80%
95%
85%
81%
55%
40%
30%
20%
5%
米国
台湾
マレーシア
タイ
組織的な大規模小売業者(チェーン店等)
インドネシア
中国
インド
伝統的な小規模小売業者
図 7-3 組織的な大規模小売業者(チェーン店等)と伝統的な小規模小売業者の割合
出典:The Marketing Whitebook 2009-2010, Businessworld, p.271
実際に、インド国内でも組織的な大規模小売業者の成長が著しく、組織的な大規模小売企
業の登場によって販売チャネル自体も多様化しつつある。1980 年代初頭は市場やキラナでの
売買しか事実上行われていなかったが、1980 年末からスーパーマーケットやデパートといっ
た業態が登場するようになった。1990 年後半には都市部において、ショッピングモールが展
開されるようになった。現在 50 を超えるショッピングモールが営業を続けており、2 年以内
に 250 ヶ所で建設される予定であり、今後もこの動きが加速するものと予想される。
85
86
87
The Marketin g Whitebook 2009-2010, Businessworld, p.268
島田卓(2005)巨大市場インドのすべて, ダイヤモンド社, p.133~p.143
島田卓(2005)巨大市場インドのすべて, ダイヤモンド社, p.133~p.143
147
The Indian retail landscape
2000
年代へ
90年代
終わり
郊外型大型店舗
(Hypermarkets)
・食品・雑貨
・アパレル・アクセサリー
・小額な耐久消費財
ショッピングモール
(Shopping malls)
・食品・雑貨
・アパレル・アクセサリー
・小額な耐久消費財
・家財道具
80年代
始め
80年代
半ば
デパート (Department stores)
・アパレル・アクセサリー
・小額な耐久消費財
・家財道具
スーパーマーケット
(Supermarkets)
・食品・雑貨
・その他の家庭用品
国による営業支援を受けている店
(Government supported shops)
近所の店/キラナと呼ばれる雑貨店
80年代
以前
(Neighbourhood / kirana stores)
(Weekly markets)
・食品・雑貨
・その他の家庭用品
・小麦と米
・砂糖
・灯油
・衣料(カディ等)
・その他の家庭用品
・食品・雑貨
・衣料
・化粧品
・小額な耐久消費財
出典:The Knowledge Company, Technopak.
伝統的な小売業
近代的な小売業
図 7-4 インドにおける小売セクターの発展
出典:The Marketing Whitebook 2009-2010, Buinessworld, p.270
7.1.2.規制緩和と外資企業のインド進出88
このような小売セクターの構造変化は、所得向上に伴う消費者構造の変化にインパクトを
与え、都市部を中心に企業経営による組織型の大型店舗が急速に台頭するようなインド社会
の変容の一因になっている。また、こうした組織型の大型店舗の展開には、従来の流通業に
携わっていない国内資本が新規に複数参入し、開発を競い始めている。さらに、国内資本だ
けでなく、欧米を中心とする海外資本も、インドの流通市場が、近い未来、市場開放の流れ
にあると読んでいる。このため、国内資本との提携につき、政府の規制の範囲内で、インド
進出を積極的に進め、市場の自由化(規制緩和)の際には攻勢に出る構えをみせている。
88
インドビジネス実務ガイド, (社)企業研究会, 2007.12 , p.397~p.402
148
実際に新規参入のケースとして、2007 年 2 月、インド財閥大手バルティ・エンタープライ
ズは、100%出資の子会社バルティ・リテールを設立し、230-420 平米の小型店を 7 店舗開設
済(2008 年 10 月時点)である。また、米国ウォルマートとのジョイントベンチャー事業(提
携による折半出資の合弁にて、Cash&Carry 方式の卸売業の新会社を設立し、アイスクリー
ムなどの冷凍倉庫・仕入れ・在庫管理・物流などバックエンド(後方業務)を担う 4000-9300
平米規模の卸売1号店を 2009 年にインド北部に開業予定)も加わり、バルティ・リテールは
世界1位の米国ウォルマートのブランドを武器として市場で展開を図る戦略である。同社で
は 2015 年までに 20 億ドル以上を投入し、従業員 6 万人、全体で 1,000 万平方フィートの売
り場を確保、年間売上高 50 億ドルを目標としている。今後は国内の人口 100 万人以上の都
市を中心に、地元の店舗と提携も視野に入れながら、ハイパーマーケット、スーパーマーケ
ット、コンビニエンスストアの3業態を展開していく方針という。このように、現在のイン
ド流通市場では、既存流通資本以外の国内資本や他業種の財閥・資本が、こぞって新規参入
し、大型店舗を新設した上、インド全土に展開していくという計画を打ち出すケースが多い89。
このように、欧米を中心としたグローバル展開している、米国ウォルマート、英国テスコ、
仏国カルフールなどの流通大手が、インドへの参入を虎視眈々と狙っているのが現状である。
先進国では人口増加が望めず、食料も含め、生活日用品の市場が成熟し、その成長性には限
界がある。このため、これら外資大手は積極的に海外進出を図っている。これらのグローバ
ル展開する流通大手企業は、インド政府に対して、小売自由化・小売市場の開放という圧力
を加え続けている90。実際に、外資直接投資(FDI)によるサプライチェーンや不動産への投
資が増加しており、小売業界の対外開放も検討段階である。
一方で外資台頭への懸念が国内小売業界から出ていることから、消費者問題・食糧公共流
通省は外資小売企業の合弁企業への出資比率は 3~5 年の間、49%を上限とすることを提言し
ている。Cash&Carry 方式による 100%外資投資は外国投資促進委員会(FIPB)の承認が不
要で、自動認可されている。ドイツの Metro Cash&Carry 社はインドに 4 店舗を設立し、BtoB
取引を積極的に行っている。インド小売業者連合はこうした現状を踏まえて、包括的な小売
業政策を政府に求めている。その例として、個人投資家や商業デベロッパーに対するインセ
ンティブの付与や、通信、道路、電気などのインフラ整備、小売商業施設用地確保、政策を
遂行する強力な委員会の設置や、小売ライセンスの発行簡素化及び一本化、関連規制の緩和
並びに免税等があげられる。
7.1.3.流通市場成長を握るカギ91
小売セクターの市場成長については、拡大する中流階級が市場成長のカギを握っている。
89
90
91
インドビジネス実務ガイド, (社)企業研究会, 2007.12, p.393~p.397 を基に最新情報に更新。
インドビジネス実務ガイド, (社)企業研究会, 2007.12 , p.393~p.397
インドビジネス実務ガイド, (社)企業研究会, 2007.12, p.393~p.397
149
インドでは年収が 500-1,000 ドル・1,000-4,700 ドルの家計が 1995 年の 4,800 万・2,900 万
世帯から、2006 年には 7,800 万・7,500 万世帯(成長率:62.5%・158.6%)に増加し、これら
の家計がインドの購買力を押し上げている。92加えて、消費マインドの高い若者層が全人口の
52%を占め、40 歳以下の年齢層をみても全体の8割強を占める。また、女性の社会進出、新
興都市・都市近郊部の拡大も所得増加に寄与している。また、月給 30,000Rs 以上の富裕層
はインドの全労働人口の 0.2%弱程度である93。
一方で、インド市場は他国と異なり、独自性が非常に強く、外資に不利との見方がある。
人口構成比率の高い若年層は自国文化への愛着が深く、小売業界はその特色を見極めなけれ
ばならない94。
78
75
66
Low (US$350未満)
55
Lower Middle (US$350-500)
48 48
Middle (US$500-1000)
35
Upper Middle (US$1000-4700)
33
32
29
24
High (Annual income >
US$4700)
17
(単位) 100 万世帯
1
1995
6
3
2000
2006
図 7-5 所得階級別の世帯数推移
出典:The Marketing Whitebook 2009-2010, Businessworld, p.274
7.2. 小売店販売の特徴とその対応
7.2.1.小売業の概要
インド国内で展開する小売業の概要を以下に整理する。
○「ビッグバザール」
The Marketin g Whitebook 2009-2010, Businessworld, p.274
The Marketing Whitebook 2009-2010, Businessworld, p.50-53,p66-69。なお、本データにおいては、全人口
が合計 824,288 千人となっているため、その値を母数として、割合を算出している。
94 インドビジネス実務ガイド, (社)企業研究会, 2007.12, p.308
92
93
150
インド主要都市に 20 店舗以上展開している。食品を中心に衣料品、家電製品、生活雑貨を
取り扱い、平均的な顧客モデルは、夫婦年齢 28 歳以上で子供 2 人の共稼ぎ世帯である。月当
たりの収入が 1 万~2 万ルピーという中間所得層を主な客層としている。1992 年に 1 号店が
オープンし、2008 年までに 200 店舗目標としている。
○「Shopper's Stop」
インド第一のデパートとされる。ターゲットは 16 歳~35 歳の若いカップルや家族連れで
ある。主な客層は、世帯あたりの月収は 2 万ルピー想定している。店舗形態は単独店舗を主
としており、ショッピングモールへの入居で、現在 20 店舗を展開している。今後 2 年で 30
店舗展開する予定である。
○「ゴドレージ・アードハール」
生活用品大手ゴドレジグループが開発した農村部に特化したスーパーである。主にデリー
のあるマハラシュトラ州などで 23 店舗展開中である。化学肥料や農薬から生活用品、衣料品、
家電品などを揃えている。各店には農学部出身の技師が常駐し、農家の持ち込む様々な問題
の相談にのるなど、農民を重要顧客とした店舗展開を進めている。
○「リライアンス・リテール」
インドの有力財閥が展開している。デリー、ムンバイなど主要都市にスーパー、コンビニ、
ハイパーマーケットを展開している。
○「デイリーニーズ」「インダリーズフレッシュ」
ニューデリーに展開する欧米風スーパーマーケットである。
表 7-1 インドにおける代表的な小売チェーン店
店名
Big Bazaar
Trinethra
Reliance Fresh
Subhiksha
Food World
Spencer's daily
Heritage Fresh
Spencer's hypermarket
Vishal Mega Mart
認知度
98%
98%
93%
93%
91%
71%
51%
46%
16%
来店経験
75%
83%
70%
71%
68%
54%
28%
27%
9%
購入経験(1 年以内)
11%
39%
27%
26%
16%
22%
9%
5%
5%
購入経験(3ヶ月以内)
7%
35%
24%
23%
14%
20%
9%
4%
4%
[Base: Modern format shoppers]過去 3 ヶ月で Modern Format で支払った金額が一定額を超える消費者:
Hyderabad で大規模なスーパーマーケットがある 25 地域の 750 人
出典:The Marketing Whitebook 2009-2010, Businessworld, p.297
151
7.2.2.インド国内の小売店の状況
インド国内の主要都市である、ニューデリー、ムンバイ、チェンナイに立地する代表的な
小売店の状況(調査実施月は 2009 年 2 月)を以下に記載する。
(1) Inorbit Mall(郊外型大型モール)〔ムンバイ〕
 日本食は、店内でキッコーマンのバーベキューソースなど調味料のみである。
 フロアーには、ノンベジタリアン専用の売場があり、鮮魚等の取り扱いがある。
 果物は、りんご(FUZI)、オレンジ、マスクメロン、巨峰などあり、野菜も多く
の種類がある。
 冷凍食品については、グリーピースが多く、その他アイス、ピザ、ハムなどが主
である。
図 7-6 店内の様子
152
図 7-7 魚市場の様子
図 7-8 冷凍食品の売場
153
図 7-9 野菜・果物の売場
(2) クロフォードマーケット(地元の一般的な市場)〔ムンバイ〕
 クロフォードマーケットは、地元住民が利用する市場であり、食料品(野菜、果
物、魚、肉類など)から日用雑貨、ペットなど、日常生活に必要なものが一通り
揃うムンバイ市内で最も有名な市場である。
 マーケットで売られている野菜・果物の価格は以下の通りである。
 ストロベリ :50Rs(1 パック)
 りんご
:100 Rs/kgm
 メロン
:50Rs/kg
 オレンジ
:120 Rs(20 ピース)
 すいか
:35 Rs/kg
 マンゴ
:1,000 Rs(12 個)
 トマト
:20Rs/kg
 白菜
:40 Rs/kg
 海老
:10 Rs/kg
154
図 7-10 野菜・果物の売場
図 7-11
肉・魚の売場
155
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