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増加している輸入真菌症―コクシジオイデス症― 輸入感染症とは海外の

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増加している輸入真菌症―コクシジオイデス症― 輸入感染症とは海外の
増加している輸入真菌症―コクシジオイデス症―
輸入感染症とは海外の特定地域でのみ流行している感染症が日本に持ち込まれて発症す
る感染症で、海外旅行の一般化やビジネスのグローバル化、外国人労働者の流入などに伴
い近年増加傾向にあります。今年9月に問題になったデング熱なども輸入感染症で、最近
はエボラ出血熱の輸入も懸念されています。これらのうちで真菌を原因とする場合を輸入
真菌症といいます。原因となる真菌は日本には生息しておらず、患者の多くは流行地を訪
問滞在して感染し日本国内に入国したものですが、稀に原因となる真菌に汚染した物品が
輸入され国内で感染・発症する場合もあります。わが国ではコクシジオイデス症、ヒスト
プラズマ症、パラコクシジオイデス症、マルネッフェイ型ペニシリウム症などがそれらの
代表的な疾患です。この中でわが国ではコクシジオイデス症、ヒストプラズマ症は 10 年あ
まり前から急速に患者数が増加し現在は概ね毎年 20名前後が確認されています。なかで
もコクシジオイデス症はその輸入真菌症のなかでも代表的な疾患であり、最も危険性の高
い真菌症として有名です。
文献1)より転載
全ての輸入真菌症が増加していることがわかります。
主な輸入真菌症を一覧表にします2)。
疾患名(原因菌)
主な流行地
危険因子
標的臓器(病態) 潜伏期
コクシジオイデス症
北米(アリゾナ,カリフォル
細胞性免疫障害( AIDS
肺,皮膚,髄膜, 1-4W
( Coccidioides
ニア,ニューメキシコ,テキ
など),糖尿病,妊娠,
骨
immitis or C. Posadasii )
サス),メキシコなど中南米
COPD,喫煙,人種(黒
など
人,アジア人)
ヒストプラズマ症
北米(オハイオーミシシッ
細胞性免疫障害( AIDS
肺,肝,脾臓,骨
(カプスラーツム型)
ピー渓谷),中南米,東南
など), COPD
髄
1-4W
( Histoplasmacapsulatum
アジア(タイなど),オセ
)
アニアなど
パラコクシジオイデス症
中南米(ブラジル,コロ
飲酒,喫煙,男性肺(肺
皮膚粘膜(潰瘍), 数ヶ月
ンビア,ベネズエラなど)
炎,肺線維症)
リンパ節,副腎な
から数
ど
十年
肺,肝,脾臓など
不明
4-6W
(
Paracoccidioidesbrasilie
副腎,粘膜など
nsis)
マルネッフェイ型
タイ,中国南部,ベトナ
細胞性免疫障害( AIDS
ペニシリウム症
ムなど
など)
ブラストミセス症
北米(ウイスコンシン,
細胞性免疫障害( AIDS
肺,皮膚,骨,前
( Blastomycesdermatitidis
イリノイ,オハイオーミ
など)
立腺など
)
シシッピー渓谷),アフリ
不明
肺,脳,髄膜な
( Penicilliummarneff )
カ,中南米など
ガッティ型クリプト
オセアニア,東南アジア,
コッカス症
中南米,カナダ西海岸,
( Cryptococcus gattii)
米国の一部(西海岸,ハ
ワイなど)など広汎
上記の代表的 6 疾患ではコクシジオイデス症がもっとも重要な真菌です。その理由は極め
て感染力が強く、人間に対する毒性が強いからです。また他の真菌も人への毒性が強く、
日本で治療される真菌症は体力の弱った人やもともと肺に病気のあるひとが罹る病気です
が、上記の輸入真菌症は健康で屈強な成人も胞子の吸入で感染することが大きく異なる点
です。
今回、コクシジオイデス症について調べてみます。
―コクシジオイデス症―
流行地はアリゾナ州、カリフォルニア州を中心とした米国南西部から国境を越えたメキ
シコ近辺までが濃厚汚染地域です。カリフォルニア州ではロサンゼルスの内陸部から北に
延びるサンホワキン渓谷が最多発生地域であることから Valley Fever と呼ばれています。
近年、カナダ国境に近いワシントン州などでも集団発生が見られ、これまで理解されてい
た流行地域が拡大している可能性が懸念されています3)。本菌はこれらの地域の土中に生息
し、土を掘り返す作業や土埃の舞う強風、大地震などでとくに感染機会が高まり、多数大
量発生例が報告されています。まれに胞子が物品に付着したまま遠方に輸送され、流行地
外で感染を起こしたりすることも報告されています。日本人がアリゾナでゴルフをして本
症に罹患した報告もあります4)。米国では 2011 年で 18,000 人あまりの患者が報告されて
いますが、実数では 10~15 万人あまりの新規感染者が発生しているものと推測されていま
す1)。本菌の主たる感染経路は気道であり、おもに胞子を気道から吸入することより肺内に
侵入します。健常人が少数の胞子を吸入した場合は多くは発病に至らず不顕性感染か感冒
様症状で自然治癒しますが、一部は肺炎を発症し急性肺コクシジオイデス症を呈したり、
不明
そののちに慢性化あるいは全身播種をおこすことがあります。重症化する危険因子として
は AIDS を代表とする細胞性免疫障害、移植,ステロイド使用,妊娠等が挙げられていま
す。また人種による感受性の差もあり、黒人>ヒスパニック≧アジア人>白人の順でかか
りやすいとされています。
急性肺コクシジオイデス症は肺に限局した急性化膿性病変です。潜伏期は 1~4 週間程度
で、症状は一般的な肺炎の症状と同様です。慢性肺コクシジオイデス症は肺の肉芽腫性病
変を中心とした慢性炎症で、急性肺炎が何らかの理由で治癒しない場合にこの病型に至る
ものと考えられています。症状は活動性のない場合は無症状ですが、ときに咳嗽,喀痰(血
痰),体重減少等が見られ、肺結核と類似します。播種性コクシジオイデス症は急性肺コク
シジオイデス症から直接、あるいは慢性肺コクシジオイデス症を経て、全身のあらゆる臓
器に播種し、重篤な状態になる病態です。
コクシジオイデス感染症の診断は該当する流行地への渡航歴が疑うきっかけとして重要
です。確定診断は培養による原因菌の確認、血清診断、病理診断などが可能ですが、培養
法は検査中のリスクが高く検査技師が作業中に感染する可能性があるため禁忌です。治療
は原則としてアゾール薬あるいは amphotericin B を 6~12 カ月継続する必要があります1)。
予防は流行地を訪れないことが第一で、やむを得ない場合は、できるだけ都市部の屋内
にとどまり、屋外では適切なマスクを利用する等が考えられますが完全なものではありま
せん。
本症は流行地を通過しただけで罹患した報告もあり3)、感染症患者の問診は詳細におこな
うべきであり、グローバル化がすすむ現在、このような感染症も知っておく必要がありま
す。
平成26年12月5日
参考文献
1)亀井
克彦ら:コクシジオイデス症
https://med.astellas.jp/jp/provide.aspx?path=/med/jp/infection/the_infection/vol44_no04/
13.htm
2)亀井
克彦:輸入真菌症とその問題点 . Med. Mycol. J. 2012 ; 53 ; 103 – 108 .
3)渡辺
哲ら:輸入真菌症の現状と対策 . 日内会誌 2014 ; 103 ; 2674 – 2679 .
4)森野
英里子ら:両肺尖部に空洞を呈した慢性肺コクシジオイデス感染症の 1 例 . 日
呼吸会誌 2006 ; 44 ; 711 – 715 .
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