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精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準

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精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準
(別紙)
精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準
精 神 障 害 者 保 健 福 祉 手 帳 の 障 害 等 級 の 判 定 は 、 (1)精 神 疾 患 の 存 在 の 確 認 、 (2)精 神 疾
患 ( 機 能 障 害 ) の 状 態 の 確 認 、 (3)能 力 障 害 ( 活 動 制 限 ) の 状 態 の 確 認 、 (4)精 神 障 害 の
程度の総合判定という順を追って行われる。障害の状態の判定に当たっての障害等級の
判定基準を下表に示す。
なお、判定に際しては、診断書に記載された精神疾患(機能障害)の状態
及び能力障害(活動制限)の状態について十分な審査を行い、対応すること。
また、精神障害者保健福祉手帳障害等級判定基準の説明(別添1)、障害等級の基本
的な考え方(別添2)を参照のこと。
障
害
の
状
態
障害等級
精神疾患(機能障害)の状態
1級
1
能力障害(活動制限)の状態
統合失調症によるものにあっては 1
(精神障
、高度の残遺状態又は高度の病状が
害であっ
あるため、高度の人格変化、思考障 2
て 、日 常 生
害、その他妄想・幻覚等の異常体験
活の用を
があるもの
弁ずるこ
2
調和のとれた適切な食事摂取が
できない。
洗面、入浴、更衣、清掃等の身
辺の清潔保持ができない。
3
金銭管理能力がなく、計画的で
気分(感情)障害によるものにあ
適切な買物ができない。
とを不能
っては、高度の気分、意欲・行動及 4
通院・服薬を必要とするが、規
ならしめ
び思考の障害の病相期があり、かつ
則的に行うことができない。
る程度の
、これらが持続したり、ひんぱんに 5
家族や知人・近隣等と適切な意
もの)
繰り返したりするもの
思伝達ができない。協調的な対
3
4
非定型精神病によるものにあって
身辺の安全を保持したり、危機
に準ずるもの
的状況に適切に対応できない。
てんかんによるものにあっては、 7
社会的手続をしたり、一般の公
ひんぱんに繰り返す発作又は知能障
共施設を利用することができな
害その他の精神神経症状が高度であ
い。
中毒精神病によるものにあっては
、認知症その他の精神神経症状が高
度のもの
6
関係を作れない。
は、残遺状態又は病状が前記1、2 6
るもの
5
人
器質性精神障害によるものにあっ
ては、記憶障害、遂行機能障害、注
意障害、社会的行動障害のいずれか
があり、そのうちひとつ以上が高度
8
社会情勢や趣味・娯楽に関心が
なく、文化的社会的活動に参加で
きない。
(上記1~8のうちいくつかに該当
するもの)
のもの
7
発達障害によるものにあっては、
その主症状とその他の精神神経症状
が高度のもの
8
その他の精神疾患によるものにあ
っては、上記の1~7に準ずるもの
2級
1
統合失調症によるものにあっては 1
(精神障
、残遺状態又は病状があるため、人
害であっ
格変化、思考障害、その他の妄想幻 2
て 、日 常 生
覚等の異常体験があるもの
活が著し 2
い制限を
気分(感情)障害によるものにあ
っては、気分、意欲・行動及び思考 3
受けるか、
の障害の病相期があり、かつ、これ
又は日常
らが持続したり、ひんぱんに繰り返 4
生活に著
したりするもの
しい制限 3
非定型精神病によるものにあって
を加える
は、残遺状態又は病状が前記1、2 5
ことを必
に準ずるもの
要とする 4
程度のも
てんかんによるものにあっては、
ひんぱんに繰り返す発作又は知能障 6
の)
害その他の精神神経症状があるもの
5
中毒精神病によるものにあっては
、認知症その他の精神神経症状があ 7
るもの
6
器質性精神障害によるものにあっ 8
調和のとれた適切な食事摂取は
援助なしにはできない。
洗面、入浴、更衣、清掃等の身
辺の清潔保持は援助なしにはでき
ない。
金銭管理や計画的で適切な買物
は援助なしにはできない。
通院・服薬を必要とし、規則的
に行うことは援助なしにはできな
い。
家族や知人・近隣等と適切な意
思伝達や協調的な対人関係づくり
は援助なしにはできない。
身辺の安全保持や危機的状況で
の適切な対応は援助なしにはでき
ない。
社会的手続や一般の公共施設の
利用は援助なしにはできない。
社会情勢や趣味・娯楽に関心が
ては、記憶障害、遂行機能障害、注
薄く、文化的社会的活動への参加
意障害、社会的行動障害のいずれか
は援助なしにはできない。
があり、そのうちひとつ以上が中等 (上記1~8のうちいくつかに該当
度のもの
7
するもの)
発達障害によるものにあっては、
その主症状が高度であり、その他の
精神神経症状があるもの
8
その他の精神疾患によるものに
あっては、上記の1~7に準ずる
もの
3級
1
統合失調症によるものにあっては 1
調和のとれた適切な食事摂取は
(精神障
、残遺状態又は病状があり、人格変
自発的に行うことができるがなお
害であっ
化の程度は著しくはないが、思考障
援助を必要とする。
て 、日 常 生
害、その他の妄想・幻覚等の異常体 2
洗面、入浴、更衣、清掃等の身
活若しく
験があるもの
は社会生 2
辺の清潔保持は自発的に行うこと
気分(感情)障害によるものにあ
ができるがなお援助を必要とする
活が制限
っては、気分、意欲・行動及び思考
を受ける
の障害の病相期があり、その症状は 3
か 、又 は 日
常生活若
しくは社 3
金銭管理や計画的で適切な買物
著しくはないが、これを持続したり
はおおむねできるがなお援助を必
、ひんぱんに繰り返すもの
要とする。
非定型精神病によるものにあって 4
会生活に
は、残遺状態又は病状が前記1、2
制限を加
に準ずるもの
えること 4
。
規則的な通院・服薬はおおむね
できるがなお援助を必要とする。
5
家族や知人・近隣等と適切な意
てんかんによるものにあっては、
思伝達や協調的な対人関係づくり
を必要と
発作又は知能障害その他の精神神経
はなお十分とはいえず不安定であ
する程度
症状があるもの
る。
のもの)
5
6
中毒精神病によるものにあっては 6
、認 知 症 は 著 し く は な い が 、そ の 他
の対応はおおむね適切であるが、
の精神神経症状があるもの
なお援助を必要とする。
器質性精神障害によるものにあっ 7
8
社会的手続や一般の公共施設の
ては、記憶障害、遂行機能障害、注
利用はおおむねできるが、なお援
意障害、社会的行動障害のいずれか
助を必要とする。
があり、いずれも軽度のもの
7
身辺の安全保持や危機的状況で
8
社会情勢や趣味・娯楽に関心は
発達障害によるものにあっては、
あり、文化的社会的活動にも参加
その主症状とその他の精神神経症状
するが、なお十分とはいえず援助
があるもの
を必要とする。
その他の精神疾患によるものにあ (上記1~8のうちいくつかに該当
っては、上記の1~7に準ずるもの
するもの)
(別添1)
精神障害者保健福祉手帳等級判定基準の説明
精 神 障 害 の 判 定 基 準 は 、「 精 神 疾 患( 機 能 障 害 )の 状 態 」及 び「 能 力 障 害( 活 動 制 限 )
の 状 態 」に よ り 構 成 し て お り 、そ の 適 用 に 当 た っ て は 、総 合 判 定 に よ り 等 級 を 判 定 す る 。
(1)
精神疾患(機能障害)の状態
精 神 疾 患 ( 機 能 障 害 ) の 状 態 は 、「 統 合 失 調 症 」 、「 気 分 ( 感 情 ) 障 害 ) 」 、「 非
定 型 精 神 病 」 、「 て ん か ん 」 、 「 中 毒 精 神 病 」 、 「 器 質 性 精 神 障 害 」 、 「 発 達 障 害 」
及び「その他の精神疾患」のそれぞれについて精神疾患(機能障害)の状態につい
て判断するためのものであって、「能力障害(活動制限)の状態」とともに「障害
の程度」を判断するための指標として用いる。
①
統合失調症
統合失調症は、障害状態をもたらす精神疾患の中で頻度が高く、多くの場合思春
期 前 後 に 発 症 す る 疾 患 で あ る 。幻 覚 等 の 知 覚 障 害 、妄 想 や 思 考 伝 播 等 の 思 考 の 障 害 、
感情の平板化等の感情の障害、無関心等の意志の障害、興奮や昏迷等の精神運動性
の障害等が見られる。意識の障害、知能の障害は通常見られない。急 激に発症する
ものから、緩徐な発症のために発病の時期が不明確なものまである。経過も変化に
富み、慢性化しない経過をとる場合もあり、障害状態も変化することがある。しか
しながら、統合失調症の障害は外見や行動や固定的な一場面だけからでは捉えられ
ないことも多く、障害状態の判断は主観症状や多様な生活場面を考慮して注意深く
行う必要がある。
なお、「精神疾患(機能障害)の状態」欄の状態像及び症状については、それぞ
れ以下のとおりである。
(a)
残遺状態
興奮や昏迷を伴う症状は一過性に経過することが多く急性期症状と呼ばれる 。
これに対し、急性期を経過した後に、精神運動の緩慢、活動性の低下(無為)、
感 情 平 板 化 、受 動 性 と 自 発 性 欠 如 、会 話 量 と そ の 内 容 の 貧 困 、非 言 語 的 コ ミ ュ ニ
ケ ー シ ョ ン の 乏 し さ 、自 己 管 理 と 社 会 的 役 割 遂 行 能 力 の 低 下 と い っ た 症 状 か ら な
る 陰 性 症 状 が 支 配 的 に な っ た 状 態 を 残 遺 状 態 と い う 。こ れ ら は 決 し て 非 可 逆 的 と
いうわけではないが、長期間持続する。
(b)
病状
「 精 神 疾 患( 機 能 障 害 )の 状 態 」の 記 述 中 に 使 用 さ れ て い る「 病 状 」と い う 用
語 は 残 遺 状 態 に 現 れ る 陰 性 症 状 と 対 比 的 に 使 用 さ れ る 陽 性 症 状 を 指 し て い る 。陽
性 症 状 は 、幻 覚 等 の 知 覚 の 障 害 、妄 想 や 思 考 伝 播 、思 考 奪 取 等 の 思 考 の 障 害 、興
奮 や 昏 迷 、緊 張 等 の 精 神 運 動 性 の 障 害 等 の よ う に 目 立 ち や す い 症 状 か ら な る 。陽
性症状は残遺状態や陰性症状に伴って生じる場合もある。
(c)
人格変化
陰 性 症 状 や 陽 性 症 状 が 慢 性 的 に 持 続 す る と 、連 合 弛 緩 の よ う な 持 続 的 な 思 考 過
程 の 障 害 や 言 語 的 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン の 障 害 が 生 じ 、そ の 人 ら し さ が 失 わ れ た り
変化したりする場合がある。これを統合失調症性人格変化という。
(d)
思考障害
思 考 の 障 害 は 、思 考 の 様 式 や 思 路 の 障 害 と 内 容 の 障 害 に 分 け ら れ る 。様 式 の 障
害 に は 、思 考 伝 播 、思 考 奪 取 、思 考 吹 入 、思 考 化 声 等 の 統 合 失 調 症 に 特 有 な 障 害
の 他 に 強 迫 思 考 等 が あ る 。思 路 の 障 害 に は 、観 念 奔 逸 、思 考 制 止 、粘 着 思 考 、思
考 保 続 、滅 裂 思 考 、連 合 弛 緩 等 が あ る 。内 容 の 障 害 は 、主 に 妄 想 を 指 す が 、そ の
他 に 思 考 内 容 の 貧 困 、支 配 観 念 等 も 含 ま れ る 。単 に 思 考 障 害 と い っ た 場 合 は 妄 想
等の思考内容の障害は含まず、主に思考様式の障害を指す。
(e)
異常体験
幻 覚 、妄 想 、思 考 伝 播 、思 考 奪 取 、思 考 吹 入 、思 考 化 声 等 の 陽 性 症 状 を 指 し て
いる。
②
気分(感情)障害
ICD- 10( 疾 病 及 び 関 連 保 健 問 題 の 国 際 統 計 分 類 第 10 回 改 正 ) で は 気 分 ( 感 情 )
障 害 と 呼 ば れ 、気 分 及 び 感 情 の 変 動 に よ っ て 特 徽 づ け ら れ る 疾 患 で あ る 。主 な 病 相
期 が そ う 状 態 の み で あ る も の を そ う 病 、う つ 状 態 の み で あ る も の を う つ 病 、そ う 状
態 と う つ 状 態 の 2 つ の 病 相 期 を 持 つ も の を そ う う つ 病 と い う 。病 相 期 以 外 の 期 間 は
精 神 症 状 が 無 い こ と が 多 い が 、頻 回 の 病 相 期 を 繰 り 返 す 場 合 に は 人 格 変 化 を 来 す 場
合 も あ る 。病 相 期 は 数 か 月 で 終 了 す る も の が 多 い 。病 相 期 を 繰 り 返 す 頻 度 は 様 々 で 、
一生に1回しかない場合から、年問に十数回繰り返す場合もある。
な お 、「 精 神 疾 患( 機 能 障 害 )の 状 態 」欄 の 状 態 像 及 び 症 状 に つ い て は 、そ れ ぞ
れ以下のとおりである。
(a)
気分の障害
気分とは持続的な基底をなす感情のことであり、情動のような強い短期的感
情 と は 区 別 す る 。気 分 の 障 害 に は 、病 的 爽 快 さ で あ る 爽 快 気 分 と 、抑 う つ 気 分
がある。
(b)
意欲・行動の障害
そう状態では、自我感情の亢進のため行動の抑制ができない状態(行為心
迫 )、う つ 状 態 では 、お っ くう で 何 も 手 につ か ず、何 も で き ない 状 態(行 動 抑
制)である。
(c)
思考障害
思 考 の 障 害 に つ い て は 統 合 失 調 症 の 記 載 を 参 照 の こ と 。そ う や う つ の 場 合 に
は 、観 念 奔 逸 や 思 考 制 止 等 の 思 考 過 程 の 障 害 や 、思 考 内 容 の 障 害 で あ る 妄 想 が
出現しやすい。
また、そうまたはうつの病状がある病相期は、長期にわたる場合もあれば短期
間で回復し、安定化する場合もある。病相期の持続期間は、問欠期に障害を残さ
ないことが多いそううつ病の障害状態の持続期間である。間欠期にも障害状態を
持つ場合は病相期の持続期間のみが障害状態であることにはならない。一般にそ
ううつ病の病相期は数か月で軽快することが多い。
病相期が短期間であっても、頻回に繰り返せば、障害状態がより重くなる。 1
年間に 1 回以上の病相期が存在すれば、病相期がひんぱんに繰り返し、通常の社
会生括は送りにくいというベきだろう。
③
非定型精神病
非定型精神病の発病は急激で、多くは周期性の経過を示し、予後が良い。病像は
意識障害(錯乱状態、夢幻状態)、情動障害、精神運動性障害を主とし、幻覚は 感
覚性が著しく妄想は浮動的、非体系的なものが多い。発病にさいして精神的あるい
は身体的誘因が認められることが多い。経過が周期的で欠陥を残す傾向が尐ない点
は、統合失調症よりもそううつ病に近い。
な お 、 ICD- 10 で は F25 統 合 失 調 感 情 障 害 に ほ ぼ あ た る 。 こ の 統 合 失 調 感 情 障 害
とは、統合失調性の症状とそううつの気分障害の症状の両者が同程度に同時に存在
する疾患群を指す。
④
てんかん
てんかんは反復する発作を主徴とする慢性の大脳疾患であり、特発性および症候
性てんかんに二大分される。症候性てんかんの発作ならびに精神神経学的予後は、
特発性てんかんにくらベて不良のことが多い。てんかんの大半は小児期に年齢依存
性に発病し、発作をもったまま青年・成人期をむかえる。
てんかん発作は一般に激烈な精神神経症状を呈する。多くの場合、発作の持続時
間は短いが、時に反復・遷延することがある。発作は予期せずに突然起き、患者自
身は発作中の出来事を想起できないことが多い。姿勢が保てなくなる発作、意識が
曇る発作では、身体的外傷の危険をともなう。
発作に加えててんかんには、発作間欠期の精神神経症状を伴うことがある。脳器
質性障害としての知的機能の障害や、知覚・注意・情動・気分・思考・言語等の精
神機能、および行為や運動の障害がみられる。発作間欠期の障害は小児から成人に
至る発達の途上で深甚な修飾をこうむる。それは精神生活の脆弱性や社会適応能力
の劣化を引き起こし、学習・作業能力さらに行動のコントロールや日常生活の管理
にも障害が現れる。てんかん患者は発作寛解に至るまで長期にわたり薬物治療を継
続する必要がある。なお、「精神疾患(機能障害)の状態」欄の状態像及び症 状に
ついては、それぞれ以下のとおりである。
(a)
発作
てんかんにおける障害の程度を判定する観点から、てんかんの発作を次のよう
に分類する。
(b)
イ
意識障害はないが、随意運動が失われる発作
ロ
意識を失い、行為が途絶するが、倒れない発作
ハ
意識障害の有無を問わず、転倒する発作
ニ
意識障害を呈し、状況にそぐわない行為を示す発作
知能障害
知能や記憶等の知的機能の障害の程度は、器質性精神障害の認知症の判定基準
に準じて判定する。
(c)
その他の精神神経症状
その他の精神神経症状とは、注意障害、情動制御の障害、気分障害、思考障害
(緩慢・迂遠等)、幻覚・妄想等の病的体験、知覚や言語の障害、対人関係・行
動パターンの障害、あるいは脳器質症状としての行為や運動の障害(たとえば高
度の不器用、失調等)を指す。
⑤
中毒精神病
精神作用物質の摂取によって引き起こされる精神および行動の障害を指す。有機
溶剤等の産業化合物、アルコール等の嗜好品、麻薬、覚醒剤、コカイン、向精神薬
等の医薬品が含まれる。これらの中には依存を生じる化学物質が含まれ、また法的
に使用が制限されている物質も含まれる。
なお、「精神疾患(機能障害)の状態」欄の状態像及び症状については、以下の
とおりである。
(a)
認知症、その他の精神神経症状
中 毒 精 神 病 に 現 れ る 残 遺 及 び 遅 発 性 精 神 病 性 障 害 に は 、フ ラ ッ シ ュ バ ッ ク 、パ
ーソナリティ障害、気分障害、認知症等がある。
⑥
器質性精神障害(高次脳機能障害を含む)
器質性精神障害とは、先天異常、頭部外傷、変性疾患、新生物、中毒(一酸化炭
素中毒、有機水銀中毒)、中枢神経の感染症、膠原病や内分泌疾患を含む全身疾患
による中枢神経障害等を原因として生じる精神疾患であって、従来、症状精神病と
して区別されていた疾患を含む概念である。ただしここでは、中毒精神病、精神遅
滞を除外する。
脳 に 急 性 の 器 質 性 異 常 が 生 じ る と 、そ の 病 因 に よ ら ず 、急 性 器 質 性 症 状 群( AOS)
と 呼 ば れ る 一 群 の 神 経 症 状 が 見 ら れ る 。 AOS は 多 彩 な 意 識 障 害 を 主 体 と し 、 可 逆 的
な 症 状 で あ る 場 合 が 多 い 。 AOS の 消 退 後 、 ま た は 、 潜 在 性 が 進 行 し た 器 質 異 常 の 結
果 生 じ る の が 慢 性 器 質 性 症 状 群( COS)で あ る 。COS は 、知 的 能 力 の 低 下( 認 知 症 )
と 性 格 変 化 に 代 表 さ れ 、 多 く の 場 合 非 可 逆 的 で あ る 。 COS に は 、 病 因 に よ ら ず 、 脳
の広範な障害によって生じる非特異的な症状と、病因や障害部位によって異なる特
異的症状とがある。巣症状等の神経症状、幻覚、妄想、気分の障害 等、多彩な精神
症状が合併しうる。
初老期、老年期に発症する認知症も器質性精神症状として理解される。これらの
うち代表的なアルツハイマー型認知症と血管性認知症を例にとると、血管性認知症
は 、様 々 な 原 因 で AOS( せ ん 妄 等 )を 起 こ し 、そ の た び に COS の 一 症 状 と し て の 認
知症が段階的に進行する。アルツハイマー型認知症では、急性に器質性変化が起こ
る こ と は な い の で 、AOS を 見 る 頻 度 は 比 較 的 尐 な く 、 COS と し て の 認 知 症 が 潜 在 的
に発現し、スロープを降りるように徐々に進行する。
なお、「精神疾患(機能障害)の状態」欄の状態像及び症状については、それぞ
れ以下のとおりである。
(a)
認知症
慢 性 器 質 性 精 神 症 状 の 代 表 的 な 症 状 の 一 つ は 、記 憶 、記 銘 力 、知 能 等 の 知 的 機
能の障害である。これらは記憶、記銘力検査、知能検査 等で量的評価が可能で
ある。
(b)
高次脳機能障害
高 次 脳 機 能 障 害 と は 、1)脳 の 器 質 的 病 変 の 原 因 と な る 事 故 に よ る 受 傷 や 疾 病 の
発 症 の 事 実 が 確 認 さ れ 、 2)日 常 生 活 ま た は 社 会 生 活 に 制 約 が あ り 、 そ の 主 た る
原因が記憶障害、注意障害、遂行機能障害、社会的行動障害等の認知障害であ
る も の を い う 。 ICD- 10 コ ー ド で F04、 F06、 F07 に 該 当 す る 。
F04: 器 質 性 健 忘 症 候 群 ( 記 憶 障 害 が 主 体 と な る 病 態 を 呈 す る 症 例 )
F06: 他 の 器 質 性 精 神 障 害 ( 記 憶 障 害 が 主 体 で な い 症 例 、 遂 行 機 能 障 害 、 注 意
障害が主体となる病態を呈する症例)
F07:器 質 性 パ ー ソ ナ リ テ ィ お よ び 行 動 の 障 害( 人 格 や 行 動 の 障 害 が 主 体 と な る
病態を呈する症例)
⑦
発 達 障 害( 心 理 的 発 達 の 障 害 、小 児( 児 童 )期 及 び 青 年 期 に 生 じ る 行 動 及 び 情 緒
の障害)
発 達 障 害 と は 、自 閉 症 、ア ス ペ ル ガ ー 症 候 群 そ の 他 の 広 汎 性 発 達 障 害 、学 習 障 害 、
注 意 欠 陥 多 動 性 障 害 そ の 他 こ れ に 類 す る 脳 機 能 の 障 害 で あ っ て 、そ の 症 状 が 、通 常
低 年 齢 に お い て 発 現 す る も の で あ る 。 ICD- 10 で は F80 か ら F89, F90 か ら F98 に
当 た る 。「 精 神 疾 患( 機 能 障 害 )の 状 態 」欄 の 状 態 像 及 び 症 状 に つ い て は 以 下 の 通
りである。
( a)
知能・記憶・学習・注意の障害
<学習の困難、遂行機能障害、注意障害>
知的障害や認知症、意識障害及びその他の記憶障害、過去の学習の機会欠如
を 原 因 と し な い 学 習( 読 み や 書 き 、算 数 に 関 す る こ と )に 関 す る 著 し い 困 難 さ 、
遂行機能(計画を立てる、見通しを持つ、実行する、計画を変更する柔軟性を
持つこと)に関する著しい困難さ、注意保持(注意の時間的な持続、注意を安
定的に対象に向ける)に関する著しい困難さを持つ場合が該当する。
( b)
広汎性発達障害関連症状
<相互的な社会関係の質的障害>
社会的場面で発達水準にふさわしい他者との関わり方ができず孤立しがち
である、本人は意図していないが周囲に気まずい思いをさせてしまうことが多
い、特に同年代の仲間関係が持てない等の特性が顕著に見られる場合が該当す
る。
<コミュニケーションのパターンにおける質的障害>
一方通行の会話が目立つ、冗談や皮肉の理解ができない、身振りや視線等に
よるコミュニケーションが苦手等の特性が顕著に見られる場合が該当する。
<限定した常同的で反復的な関心と活動>
決 ま っ た お も ち ゃ や 道 具 等 以 外 を 使 う よ う に 促 し て も 拒 否 す る 、他 者 と 共 有
し な い 個 人 収 集 に 没 頭 す る 等 の 限 定 的 な 関 心 や 、お も ち ゃ を 一 列 に 並 べ る 、 映
像の同じ場面だけを繰り返し見る等の反復的な活動が顕著に見られる場合が
該当する。
( c)
その他の精神神経症状
周 囲 か ら は わ か ら な い が 、本 人 の 感 じ て い る 知 覚 過 敏 や 知 覚 平 板 化 、手 先 の
不 器 用 が あ る た め に 、著 し く 生 活 範 囲 が 狭 め ら れ て い る 場 合 も 該 当 す る 。ま た 、
軽 度 の 瞬 目 、咳 払 い 等 の 一 般 的 な チ ッ ク で は な く 、よ り 重 症 な 多 発 性 チ ッ ク を
伴う場合(トゥレット症候群)も該当する。
⑧
その他の精神疾患
そ の 他 の 精 神 疾 患 に は ICD- 10 に 従 え ば 、 「 神 経 症 性 障 害 、 ス ト レ ス 関
連 障 害 及 び 身 体 表 現 性 障 害 」、
「 成 人 の パ ー ソ ナ リ テ ィ お よ び 行 動 の 障 害 」、
「生理的障害および身体的要因に関連した行動症候群」等を含んでいる。
(2)
能力障害(活動制限)の状態
「能力障害(活動制限)の状態」は、精神疾患(機能障害)による日常生活ある
い は 社 会 生 活 の 支 障 の 程 度 に つ い て 判 断 す る も の で あ っ て 、「 精 神 疾 患( 機 能 障 害 )
の状態」とともに「障害の程度」を判断するための指標として用いる。 なお、年齢
相応の能力と比較の上で判断する。
この場合、日常生活あるいは社会生括において必要な「援助」とは、助言、指導、
介助等をいう。
①
適切な食事摂取や身辺の清潔保持、規則正しい生活
洗面、洗髪、排泄後の衛生、入浴等身体の衛生の保持、更衣(清潔な身なりを
す る )清 掃 等 の 清 潔 の 保 特 に つ い て 、あ る い は 、食 物 摂 取( 栄 養 の バ ラ ン ス を 考 え 、
自 ら 準 備 し て 食 べ る )の 判 断 等 に つ い て の 能 力 障 害( 活 動 制 限 )の 有 無 を 判 断 す る 。
こ れ ら に つ い て 、意 志 の 発 動 性 と い う 観 点 か ら 、自 発 的 に 適 切 に 行 う こ と が で き る
かどうか、援助が必要であるかどうか判断する。
②
金銭管理と買い物
金銭を独力で適切に管理し、自発的に適切な買い物ができるか、援助が必要で
あ る か ど う か 判 断 す る 。( 金 銭 の 認 知 、買 い 物 ヘ の 意 欲 、買 い 物 に 伴 う 対 人 関 係 処
理能力に着目する。)
③
通院と服薬
自 発 的 に 規 則 的 に 通 院 と( 服 薬 が 必 要 な 場 合 は )服 薬 を 行 い 、病 状 や 副 作 用 等 に
ついてうまく主治医に伝えることができるか、援助が必要であるか判断する。
④
他人との意思伝達・対人関係
他 人 の 話 を 聞 き 取 り 、自 分 の 意 思 を 相 手 に 伝 え る コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 、他 人
と適切につきあう能力に着目する。
⑤
身辺の安全保持・危機対応
自 傷 や 危 険 か ら 身 を 守 る 能 カ が あ る か 、危 機 的 状 況 で パ ニ ッ ク に な ら ず に 他 人 に 援
助を求める等適切に対応ができるかどうか判断する。
⑥
社会的手続や公共施設の利用
各 種 の 申 請 等 社 会 的 手 続 を 行 っ た り 、銀 行 や 福 祉 事 務 所 、保 健 所 等 の 公 共 施 設 を 適
切に利用できるかどうか判断する。
⑦
趣味・娯楽ヘの関心、文化的社会的活動への参加
新 聞 、テ レ ビ 、趣 味 、娯 楽 、余 暇 活 動 に 関 心 を 持 ち 、地 域 の 講 演 会 や イ べ ン ト 等
に参加しているか、これらが適切であって援助を必要としないかどうか判断する。
( 別 添 2)
障害等級の基本的なとらえ方
障害等級を判定基準に照らして判定する際の各障害等級の基本的なとらえ方を参考と
して示すと、おおむね以下のとおりである。
(1)
l級
精 神 障 害 が 日 常 生 活 の 用 を 弁 ず る こ と を 不 能 な ら し め る 程 度 の も の 。こ の 日 常 生 活
の 用 を 弁 ず る こ と を 不 能 な ら し め る 程 度 と は 、他 人 の 援 助 を 受 け な け れ ば 、ほ と ん ど
自分の用を弁ずることができない程度のものである。
例 え ば 、入 院 患 者 に お い て は 、院 内 で の 生 活 に 常 時 援 助 を 必 要 と す る 。在 宅 患 者 に
お い て は 、医 療 機 関 等 ヘ の 外 出 を 自 発 的 に で き ず 、付 き 添 い が 必 要 で あ る 。家 庭 生 括
に お い て も 、適 切 な 食 事 を 用 意 し た り 、後 片 付 け 等 の 家 事 や 身 辺 の 清 潔 保 持 も 自 発 的
には行えず、常時援助を必要とする。
親 し い 人 と の 交 流 も 乏 し く 引 き こ も り が ち で あ る 。自 発 性 が 著 し く 乏 し い 。自 発 的
な 発 言 が 尐 な く 発 言 内 容 が 不 適 切 で あ っ た り 不 明 瞭 で あ っ た り す る 。日 常 生 活 に お い
て 行 動 の テ ン ポ が 他 の 人 の ペ ー ス と 大 き く 隔 た っ て し ま う 。些 細 な 出 来 事 で 、病 状 の
再 燃 や 悪 化 を 来 し や す い 。金 銭 管 理 は 困 難 で あ る 。日 常 生 活 の 中 で そ の 場 に 適 さ な い
行動をとってしまいがちである。
(2)
2級
精 神 障 害 の 状 態 が 、日 常 生 活 が 著 し い 制 限 を 受 け る か 、又 は 日 常 生 活 に 著 し い 制 限
を加えることを必要とする程度のものである。この日常生活が著しい制限を受ける
か 、又 は 日 常 生 活 に 著 し い 制 限 を 加 え る こ と を 必 要 と す る 程 度 と は 、必 ず し も 他 人 の
助けを借りる必要はないが、日常生活は困難な程度のものである。
例 え ば 、付 き 添 わ れ な く て も 自 ら 外 出 で き る も の の 、ス ト レ ス が か か る 状 況 が 生 じ
た 場 合 に 対 処 す る こ と が 困 難 で あ る 。医 療 機 関 等 に 行 く 等 の 習 慣 化 さ れ た 外 出 は で き
る 。ま た 、デ イ ケ ア 、障 害 者 自 立 支 援 法 に 基 づ く 自 立 訓 練( 生 活 訓 練 )、就 労 移 行 支
援 事 業 や 就 労 継 続 支 援 事 業 等 を 利 用 す る こ と が で き る 。食 事 を バ ラ ン ス 良 く 用 意 す る
等 の 家 事 を こ な す た め に 、助 言 や 援 助 を 必 要 と す る 。清 潔 保 持 が 自 発 的 か つ 適 切 に は
で き な い 。社 会 的 な 対 人 交 流 は 乏 し い が 引 き こ も り は 顕 著 で は な い 。自 発 的 な 行 動 に
困 難 が あ る 。日 常 生 活 の 中 で の 発 言 が 適 切 に で き な い こ と が あ る 。行 動 の テ ン ポ が 他
の 人 と 隔 た っ て し ま う こ と が あ る 。ス ト レ ス が 大 き い と 病 状 の 再 燃 や 悪 化 を 来 し や す
い 。金 銭 管 理 が で き な い 場 合 が あ る 。社 会 生 活 の 中 で そ の 場 に 適 さ な い 行 動 を と っ て
しまうことがある。
(3)
3級
精 神 障 害 の 状 態 が 、日 常 生 活 又 は 社 会 生 活 に 制 限 を 受 け る か 、日 常 生 活 又 は 社 会 生
活に制限を加えることを必要とする程度のものである。
例 え ば 、一 人 で 外 出 で き る が 、過 大 な ス ト レ ス が か か る 状 況 が 生 じ た 場 合 に 対 処 が
困 難 で あ る 。デ イ ケ ア 、障 害 者 自 立 支 援 法 に 基 づ く 自 立 訓 練( 生 活 訓 練 )、就 労 移 行
支援事業や就労継続支援事業等を利用する者、あるいは保護的配慮のある事業所で、
雇 用 契 約 に よ る 一 般 就 労 を し て い る 者 も 含 ま れ る 。日 常 的 な 家 事 を こ な す こ と は で き
る が 、状 況 や 手 順 が 変 化 し た り す る と 困 難 が 生 じ て く る こ と も あ る 。清 潔 保 持 は 困 難
が 尐 な い 。対 人 交 流 は 乏 し く な い 。引 き こ も り が ち で は な い 。自 主 的 な 行 動 や 、社 会
生 活 の 中 で 発 言 が 適 切 に で き な い こ と が あ る 。行 動 の テ ン ポ は ほ ぼ 他 の 人 に 合 わ せ る
こ と が で き る 。普 通 の ス ト レ ス で は 症 状 の 再 燃 や 悪 化 が 起 き に く い 。金 銭 管 理 は お お
むねできる。社会生活の中で不適当な行動をとってしまうことは尐ない。
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