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1. 田辺層群について 白浜温泉付近の地層は三段壁や千畳敷で見られる

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1. 田辺層群について 白浜温泉付近の地層は三段壁や千畳敷で見られる
1.
田辺層群について
白浜温泉付近の地層は三段壁や千畳敷で見られるように、泥岩や砂岩それに礫岩が堆積してできたも
のです。これらの地層は田辺層群と呼ばれています。
田辺層群は、今から 1500~1600 万年前の新生代新第三紀中新世頃に海底に堆積した地層で、下位の朝
来累層と上位の白浜累層に分けられています。白浜付近にはこのうちの白浜累層の
地層が分布します。
この時代の日本は、それまで大陸と陸続きであったものが、その間に大きな割れ
目が入り、日本海の原型の様なものができて、ようやく大陸から分離し始めていま
した。この時代は非常に暖かい時代で、亜熱帯的な気候だったとのことです。たぶ
ん沖縄以南のようにマングローブ林が繁茂していたことと考えます。そんなことで
白浜のこの辺りの地層からは、暖かい海に棲んでいたビカリアという化石が出土し
ています。今では絶滅していますがこの時代の示準化石です。
2.
白浜で見つかったビカリア
白浜温泉について
温泉には、火山地帯やその周辺に湧く火山性の温泉と、火山の全く存在しない地域から湧く非火山性
の温泉があります。火山性温泉は地下深くのマグマだまりから供給される熱源で地下水が温められるこ
とによってできているもので、火山の近くにある温泉はこの範疇に入ります。
一方、白浜温泉は近くに火山がありませんが、高温の温泉が湧出しています。これまでその成り立ち
はわかりませんでしたが、最近の研究結果からその成立過程が判明してきま
白浜温泉の成り立ち
した。それによると、白浜温泉はフィリピン海プレートが日本列島の下にも
ぐり込む時、大量の水を含んだ岩石からの脱水作用で発生した高温の熱水に
由来するものであるとのことです。
温泉には、それ以外に地温によって温められた地下水を汲み上げているも
のもあります。これは地下 100m深くなると、地温が約 3℃上がるという原
理を応用したもので、理論的には地下 1500m掘ると 50~60℃の温水となる
からです。
非火山型温泉の模式図
また、この白浜温泉は有馬温泉、道後温泉と共に日本三大古湯とされ、奈良時代より牟岐の湯として
大和の都人がたびたび訪れていました。飛鳥時代には有馬皇子も謀反の疑いをかけられて、ここへ湯治
に来ていた天皇のもとへ引きずり出されて処刑されるという悲しい出来事もあり、その歌は「磐白の 浜
松が枝を 引き結び ま幸くあらば また帰り見む」と万葉集にも載せられています。
3.
江津良浜の化石漣痕
白浜の半島を反時計回りに海沿いに走ると、京大の水族館まで行く途中に、
北に突き出た江津良海水浴場があります。小さいですがきれいな海水浴場で
す。この砂浜の東側には崖に続く磯場がありますが、この岩の表面に化石漣
痕が見られます。
化石漣痕とは、古代の浅い海底の砂に作られた砂紋が、薄い粘土に覆われ
て固まり地層となったものですが、隆起して薄い粘土が浸食され、再び化石
に見えるようになったものです。
江津良浜の化石漣痕
ここの化石漣痕もやはり新生代第三紀中新世で約 1,500 万年前の地層です。この漣痕は国の天然記念物に指
定されています。白浜近辺には、ここ以外に赤滑等でも漣痕が見られます。
4.白浜の目津礫層
田辺から白浜にかけての地域は約 1,500 万年前に堆積した田辺層群と呼ばれる比較的新しい地層です。白浜京大
水族館から西側(番所山)の地層は、それより後の約 700~800 万年前に海底に沈降した田辺層群の上に、新たに堆
積した礫層が後に隆起したものと推定されています。大小様々な丸い礫が集ま
った礫岩ですが、まだ固まりきっていないので、礫がはがれやすいのが特徴で
す。海岸には崖から崩れ落ちた大きな岩も見られます。崖には海蝕による洞窟
のような穴がところどころに見られます。
円月島や塔島も同じ地層からできているために大変もろく、海蝕により穴が
開きました。放置すると崩れる恐れがあるので、補強をしているそうです。
まだ完全に固結していない礫岩
5.
瀬戸鉛山の泥板岩岩脈
京大の水族館から南の方へ 1kmほど進むと、権現崎の付け根に御船足湯があります。ここに「白浜の泥岩
岩脈」の説明板と天然記念物に指定されたことを示す石碑が建っています。この付近の地層も約 1500 万年前
に浅い海で形成された砂岩と泥岩の互層からなる堆積層が隆起したもので田辺層群の一つです。
この泥岩岩脈のでき方は、大きな地震で表層部が地割れを起こし、地中深くにあってまだ完全に固まっていな
い泥の層が、地震などの衝撃によって液状化・流動化して地層の中に割れ目を
つくりながら、噴き上がっていったものと考えられています。地下の泥の層
が液状化現象により地上に吹き出し、固化したものです。満潮時は隠れて
見にくいですが、干潮時になると説明板に示されているような大規模なも
のが見られます。
どこに岩脈があるのか分かりにくいのですが、御船足湯からすぐ東側の
岸よりの磯に、幅 50~70cm 程で深さが 50cm 程の溝状になった大規模な
ものが確認できます。ここも国の天然記念物に指定されています。
6.
瀬戸鉛山の泥岩岩脈
千畳敷の地層
千畳敷は湯崎半島の西端に位置します。湯崎半島には田辺層群白浜累層が分布
しています。ここは著しい隆起が続いているため、海岸は絶壁をなしています。
海に向かって広がる畳を幾重にも重ねたような岩の大畳から、こういう
名称になったようです。ここから見える夕日はなんともすばらしい景観で
和歌山の朝日夕日百選にも選ばれています。
7.
千畳敷
三段壁の地層
千畳敷から南へ数百メートル行くと三段壁に至ります。土産物店の並びを通り抜けると眼前に巨大な
岩が海に向かって突き出ているのが見えます。ここが名勝三段壁です。三
段壁は高さ 50m、断崖絶壁が約 2kmも続く、勇壮な景観です。ここから
の景観は、足がすくんでしまいます。展望台の近くには、地下 36mの洞
窟まで降りられ、観光施設「三段壁洞窟」もあります。
南紀は本州の最南端に位置し、気候は温暖であることから暖地性の植物
がよく育っています。三段壁の近くにもキダチアロエが植えられていて、
真冬に真っ赤な花をつけていかにも南国の雰囲気を醸し出しています。
三段壁
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