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2015年11月記事 - 全造船機械労働組合

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2015年11月記事 - 全造船機械労働組合
企業・産業動向レポート
= 2015年11月1日~30日の報道内容 =
Ⅰ.各分会所属企業、関連企業・関連地域の状況
◎函館ドック労連関連
◆名村造船/3.8万立方㍍型LPG船受注 名村造船所はこのほど、3万8,000立方㍍型LPG船を新たに開発し、1隻を受
注した。伊万里事業所で建造し、2019年に引き渡す予定とみられる。LPG船の建造は竣工ベースで約10年ぶりになる。バ
ルカーやタンカーに加え、LPG船を中長期的な戦略船種と位置づけて取り組んでいく方針だ。今回受注したLPG船はフ
ルレフ(完全冷凍式)になる。LPG船の建造実績は2万2,500立方㍍型4隻、8,700立方㍍型1隻があるが、いずれもセミレ
フ(半冷凍半加圧式)だった。LPG船市場に参入した当初からフルレフ仕様の建造も視野に入れていたものの、2008年に
アルジェリア炭化水素公社ソナトラックの海運子会社ヒプロックに2万2,500立方㍍型を引き渡して以降、しばらくLPG船
の受注が途絶えていた。ヒプロックのほかには、ギリシャ船主ナフトマールやスイスのジオガス向けに建造している。1万
2,000立方㍍以下のLPG船は日本でも手掛けている造船所が複数あるものの、2万~4万立方㍍型のLPG船は日本での建
造実績が少ない。2000年以降では、名村造船のほかに三菱重工業と三井造船がそれぞれ1隻を引き渡したのみとなっ
ている。2万~4万立方㍍型のLPG船市場はここ数年、韓国の現代尾浦造船の寡占となっている。
◆決算、名村造船/受注はタンカーなど12隻 ≪4-9月期、予想上回るも経常益7割減≫名村造船所が10月30日発表し
た2015年4-9月期の連結経常利益は前年同期比71%減の37億円だった。厳しい船価での受注船の建造が中心だった
ことや、新船型の受注に伴う工事損失引当金の計上により、減益となった。ただ、円安や新造船契約解約益などで従来
予想よりも業績は大幅に上振れした。また、新造船は開発を進めていた中型LPG船1隻の受注を明らかにしたほか、4-9
月にタンカーなど12隻を受注した。新造船は大型バルカー3隻、中型タンカー7隻、ハンディサイズ・バルカー2隻を受注
した。9月末時点での受注残高は前年同期比24%増の3,190億円で、約3年分の手持ち工事量を確保している。売上高は
19%増の710億円、営業利益は70%減の37億円、純利益は50%減の41億円だった。中型バルカー4隻とハンディサイズ・
バルカー11隻を引き渡した。セグメント別にみると、新造船事業は売上高が前年同期比16%増の558億円、セグメント利
益が70%減の37億円。修繕事業は売上高が46%増の60億円、セグメント利益が27%減の3億7,000万円だった。佐世保
重工の子会社化で売上高は増加した。通期業績は従来予想どおりで、売上高が6%増の1,440億円、経常利益が83%減
の38億円を見込む。為替は前提よりも円安で推移しているものの、新造船の受注環境やLPG船や新船型の受注を踏ま
えた工事損失引当金を想定し、予想を据え置いた。
◆名村造船所/アフラ15隻受注 ≪海外船主から獲得 今年、世界首位≫名村造船所(名村建介社長)は、2015年のア
フラマックスタンカー受注がグループで15隻に達した模様だ。今年7月の新たな国際ルール適用を前に、この規則適用
回避を狙った新造船駆け込み発注を海外船主から獲得した。この結果、同社伊万里事業所、子会社・佐世保重工の船台
を18年末まで埋めた。アフラマックス15隻受注は今年、世界首位となる。マーケット筋の話を総合すると、名村造船所は
今年に入り、アフラマックス15隻を受注した。堅調なタンカー市況を背景に、15隻全船を海外船主から受注した。15隻の
うち、8隻を伊万里事業所、7隻を子会社の佐世保重工でそれぞれ建造する模様。15年7月1日からは、タンカーとバルカ
ーの契約船に新たな国際ルール「H-CSR(調和共通構造規則)」が適用された。このルールでは、建造船の鋼材重量が
増加するため、建造コストアップ、燃費性能低下を余儀なくされる。そのため、ルール適用回避を狙った新造船駆け込み
契約が今年前半に発生。名村造船所が受注したアフラマックス15隻も6月までに契約されたものとみられる。名村造船
所はアフラマックス15隻を受注した結果、同社伊万里事業所、子会社・佐世保重工の船台を18年末まで埋めたものとみ
られる。伊万里事業所は一部受注案件で19年船台に突入した模様。15年のアフラマックス新造発注は、堅調なタンカー
市況を背景に、国際規則改正に伴う駆け込み契約もあり、11月6日現在、全世界で80隻に達している。本紙が集計した造
船所別の受注隻数は、住友車機械工業13隻、サムスン重工14隻を上回り、15隻の名村造船所が世界トップ。サムスンはH
-CSR適用のAET(シンガポール)の4隻を含め14隻となっているため、年内のアフラマックス新造商談はほぼ決着したも
のとみられる。
◎いすゞ自動車
◆いすゞ一転最高益に/今期最終1,200億円、円安・コスト削減 いすゞ自動車は6日、2016年3月期の連結純利益が前
期比3%増の1,200億円になるとの見通しを発表した。従来の減益予想(6%減の1,100億円)から一転して最高益となる。
東南アジア不振で世界販売の計画は引き下げたが、円安効果やコスト削減額が想定より膨らむ。売上高は4%増の1兆9,
600億円。インドネシアやタイでのピックアップトラック苦戦を受けて今期の世界販売計画を2%増の52万台から1%減の
50万6,000台に下方修正した。為替前提を1㌦=115円から120円(前期は107円)に見直し、円安効果がこれまでの60億円
から80億円に拡大する。鋼材など原材料安も追い風で、コスト削減効果も年200億円と従来より50億円増える。営業利
益は従来予想を80億円上方修正し、7%増の1,830億円を見込む。同日発表した15年4~9月期の連結決算は純利益が7
%増の530億円だった。
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◆三菱重工/営業益1・9%減 ≪蒸気タービン 不具合対策費計上、4-9月期≫三菱重工業の2015年4-9月期は営業利
益が前年同期比1・9%減となった。「エネルギー・環境」セグメントにおいて、関西電力姫路第2火力発電所に納入済み蒸
気タービンの不具合対策費用などを計上したことが影響した。また、同期中に客船事業で追加損失309億円を特別損
益に計上した。ただし、当初から全社で通期500億円の特損を織り込んでおり16年3月期の業績予想は売上高、各利益
項目ともに据え置いた。客船の追加損失について「シートライアル(海上試運転)で微妙な問題が生じた」(宮永俊一社
長)が「最後まで完璧なスペックで全うすることがブランドを守る上で必要」とし、2番船の建造に生かす。
◆三菱重工/交通・輸送営業益330億円 三菱重工が10月30日発表した2015年4-9月期連結決算は、船舶海洋事業
を含む交通・輸送ドメインの営業利益が前年同期比6倍の330億円となった。民間航空機のコスト改善や円安効果が主
因。売上高は15%増の2,800億円。新造船は前年同期比1隻多い商船5隻を引き渡した。受注高は、前年同期に大型受注
があった航空機MRJ、交通システムが減少し、22%減の2,923億円だった。新造船は、LNG(液化天然ガス)船4隻、潜水艦1
隻など計7隻を受注した。9月末現在の新造船受注残は、商船37隻(前年同期43隻)艦艇5隻(同3隻)計42隻(同46隻)16
年3月期通期の交通・輸送ドメインの連結業績予想は、営業利益が前期比92%増の450億円、売上高は22%増の6,500
億円と前回予想を変更していない。受注高は30%減の7,000億円を見込む。全社ベースの15年4-9月期連結決算は、売
上高が前年同期比7%増の1兆8,820億円、営業利益は2%減の1,159億円、経常利益は12%減の1,118億円、純利益は14
%増の433億円だった。16年3月期通期の連結業績予想は、売上高が前期比5%増の4兆2,000億円、営業利益は8%増
の3,200億円、経常利益は9%増の3,000億円、純利益は17%増の1,300億円と従来予想を変更していない。為替の前提
レートは1㌦=115円。
◆決算/客船で損失310億円を追加計上 ≪三菱重工、累積1,646億円に≫三菱重工業は10月30日に発表した2015年
4-9月期決算の中で、客船事業関連損失として310億円を特別損失に追加計上したことを明らかにした。前年度までに
計1,337億円の損失を計上しており、今年5月時点では「建造に集中できるよう、必要な損失引当処理は全て終わらせ
た」としていたが、その後に引き渡し時期を3カ月延期したことで、これに伴う各種費用などを新たに織り込み損失が
膨らんだ。これで客船の累積損失は1,646億円となった。アイーダ向け客船は1番船の納期を今年9月から12月に延期し
ていた。船内工事で、工事終盤に至っても詳細部での設計変更が発生して艤装工事と内装工事の工程に影響を及ぼし
たほか、各種機器の調整やコミッショニング時に不具合が発生したことが背景にあった。現状では12月の引き渡しに向
けて、海上試運転など各種機能確認試験を行うと同時に、内装工事の最終仕上げに注力しているが、不具合への対応
費用や納期延期に伴う追加コストが発生する見通しとなり、追加損失予想額を計上した。宮永俊一社長は、3カ月の納
期延期などの背景について「試運転で微妙な問題が出てきた。従来の客船にはない最新技術をいくつか導入する中
で、その影響を測りきれていなかった。三菱重工の名誉にかけて徹底的に回収すべきと判断した」と説明した。また、今
回計上した追加損失は1番船の関連費用。2番船については「1番船の課題を踏まえ、従来の引き当ての中で十分遂行で
きると考えている」(小口正範CFO)という。また、来年3月という2番船の納期については「現在顧客と交渉している」
(同)とした。商船事業が属する交通・輸送ドメインの4-9月期の売上高は前年同期比15%増の2,800億円、営業利益は6
倍の330億円だった。商船の受注は、LNG船4隻など6隻。受注残は37隻で、竣工ベースで2年程度の手持ち工事を確保し
た。
◆三菱重工、F35工場稼働/来月、最終組み立て・検査 三菱重工業は小牧南工場(愛知県豊山町)内に建設を進めて
きた、最新鋭戦闘機「F35」機体の最終組み立て・検査工場(FACO)を12月に稼働する方針を明らかにした。日本企業が
製造に参画することでわが国防衛産業における技術基盤の維持・育成、国際競争力の強化に貢献するとの期待が大き
い、最新鋭戦闘機の国内製造が動きだす。F35は米ロッキード・マーチンを主体に世界9カ国の政府・企業が共同開発す
る最新鋭ステルス戦闘機。防衛省は「F4」戦闘機の後継機として42機を取得し、一部完成機輸入を除き、国内企業が参
画することを決めた。米政府との調整を踏まえ、機体最終組立てやターボファンエンジン製造、レーダー部品の製造に
一部参画することになった。三菱重工は防衛省が調達するF35の最終組み立てと機能確認をロッキード・マーチンから
請け負う形で行う。F35をめぐり、IHIも現在、瑞穂工場(東京都瑞穂町)にF135ターボファンエンジンの組立工場を新設し
ており、完成後は米プラット・アンド・ホイットニー(P&W)の協力生産として参画することになる。
Ⅱ.国内造船・造機関係の動向
◆10月の受注量/349万㌧と高水準 ≪輸組統計、NOx前駆け込み続く≫日本船舶輸出組合(輸組)がまとめた10月の
輸出船契約実績は47隻・349万総㌧で、総㌧ベースで前年同期の2.9倍だった。メガコンテナ船の受注があったとみら
れることや、来年1月の起工船から適用される窒素酸化物(NOx)3次規制の回避を前提とした駆け込み契約などで受注
量は今年6月に次ぐ高水準となった。1-10月累計の輸出船契約実績は332隻・1,886万総㌧で、年間2,000万総㌧を超え
る可能性もありそうだ。2,000万総㌧を超えれば、造船ブーム最終年の2008年の水準を上回ることになる。今年は7月
の新共通構造規則(調和化船体構造規則:H-CSR)適用を受けて、6月に駆け込み契約が相次いだ。7月以降もNOx3次規
制適用を回避するため、内定案件を中心に駆け込み契約が続いており、6カ月連続で前年同月を上回った。また、ドライ
バルク市況の低迷を受けて、コンテナ船のほか、タンカーやガス船などバルカー以外の船種の受注も例年に比べて多
くなっている。10月の契約船の内訳はコンテナ船10隻、バルカー28隻(ハンディ10隻、ハンディマックス11隻、ポストパナ
マックス2隻、鉄鉱石運搬船4隻、木材運搬船1隻)、タンカー9隻(スエズマックス2隻、LNG船1隻、LPG船4隻、ケミカル船2
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隻)となっている。47隻のうち純輸出船は8隻で、邦船系向けの案件が中心だった。10月の受注船の契約態様は、㌧数
ベースで円建て契約4.7%、円・外貨ミックス9.8%、外貨建て85.5%だった。現金払い契約は100%、商社契約は8.3%。
納期別では2016年度もの11.0%、17年度もの17.8%、18年度もの40.2%、19年度もの27.5%、20年度もの3.5%だった。
竣工量に相当する通関実績は、前年同月比51%減の22隻・71万総㌧だった。
◆輸出船契約/10月2.9倍349万3,949総㌧、6カ月連続プラス 日本船舶輸出組合(JSEA)が16日発表した10月の輸出
船契約実績(一般鋼船)は、前年同月比2.9倍の349万3,949総㌧となり、6カ月連続のプラスとなった。隻数は47隻(前年
同月17隻)。2016年1月から施行される窒素酸化物(NOx)3次規制前の駆け込み需要が継続している模様で、前月に続
いて大幅増となった。船種別内訳はコンテナ船10隻、ハンディ型ばら積み運搬船10隻、ハンディマックス型ばら積み船11
隻、ポストパナマックス型ばら積み船2隻、鉄鉱石運搬船4隻、木材運搬船1席、スエズマックス型油送船2隻、液化天然ガ
ス(LNG)運搬船1隻、液化石油ガス(LPG)運搬船4隻、ケミカル油送船2隻。納期別内訳は16年度11.0%、17年度17.8%、18
年度40.2%、19年度27.5%、20年度3.5%。通関実績は22隻、同50.8%減の70万9,089総㌧。10月末時点の手持ち工事量
は734隻、3,656万688総㌧なった。
◆10月受注2.9倍349万総㌧/コンテナ船・タンカー増、規制回避の動きも 日本船舶輸出組合が16日発表した10月の輸
出船契約(受注)実績は、349万総㌧(150万CGT=標準貨物船換算トン)となり、前年同月実績の2.9倍(CGTベースで3倍)
に膨らんだ。船型がバルカ一に加え、コンテナ船、タンカー、ガス船など多分野に拡大。このうちコンテナ船は超大型船
で、総トン数を押し上げた。前年同期実績を大きく上回った理由は明らかでないが、NOx(窒素酸化物)3次規制の適用を
回避する発注の動きも反映しているとみられる。2015年度の実績は4~10月期累計ですでに1,553万総㌧となり、14年度
(4~3月)の1,288万総㌧を超えた。15年10月の契約隻数は30隻増の47隻で、このうち海外船主向けの純輸出船は8隻だ
った。47隻の船種別内訳は、コンテナ船10隻▽ハンディサイズバルカー10隻▽ハンディマックスバルカー11隻▽ポストパ
ナマックスバルカー2隻▽鉄鉱石運搬船4隻▽木材運搬船1隻▽スエズマックスタンカー2隻▽LNG(液化天然ガス)船1隻
▽LPG(液化石油ガス)船4隻▽ケミカル船2隻。契約は全て現金払いで、トン数ベースの契約形態別内訳(シェア)は円
建て5%、円・外貨ミックス10%、外貨建て86%となった。商社契約は8%だった。納期別内訳は16年度11%、17年度18%、
18年度40%、19年度28%、20年度4%。輸出船の竣工量を示す通関実績は10月が71万総㌧(36万CGT)と51%減(CGTベ
ースで44%減)で、通関隻数は5隻減の22隻となった。15年10月末の輸出船手持ち工事量は734隻、3,656万総㌧(1,764
万CGT)で、前年10月末の661隻、2,768万総㌧(1,332万CGT)を上回った。
◆手持ち工事量/3,656万㌧に増加 日本船舶輸出組合がまとめた今年10月末時点の手持ち工事量は734隻・3,656
万総㌧(1,764万CGT)で、総㌧ベースで9月末時点から282万総㌧増加した。納期別の内訳は、2015年度引き渡し分137
隻・570万総㌧、16年度242隻・1,090万総㌧、17年度184隻・949万総㌧、18年度119隻・693万総㌧、19年度以降52隻・355万
総㌧だった。
◆9月の造船統計、竣工32隻 国土交通省がまとめた2015年9月の造船主要53工場の鋼船受注・建造実績は、起工2
8隻・128万4,000総㌧、竣工32隻・99万3,000総㌧、竣工船価1,036億円だった。竣工船のうち国内船は6隻・3万4,000総
㌧で、一般貨物船2隻、セメント専用船2隻、自動車航送船1隻、その他船舶1隻。輸出船は26隻・95万9,000総㌧で、内訳は
貨物船21隻(一般貨物船1隻、ばら積み船8隻、鉱石兼ばら積み船9隻、木材兼ばら積み船3隻)、油送船4隻(一般油送船、
LPG船各1隻、化学薬品船2隻)、その他船舶1隻。鋼船修繕実績は112隻で、工事金額は56億円だった。
◎国土交通省(海事局)
◆国交省/船台過剰問題を共有/日中造船課長会議、3年9カ月ぶり実現 国土交通省は4日、先月26日に中国・北京で
行った日中造船課長会議の結果を発表した。2001年以降毎年開いていた同会議は、尖閣諸島の国有化に伴う日中関係
の悪化で12年1月を最後に中断。3年9カ月ぶりの会議は中国の過剰建造能力に懸念を持っていた日本政府の呼び掛け
を契機に実現し、両国が船腹・船台の2つの過剰への対策の必要性を共有した。会合では、日本側が船腹と建造能力が
過剰である現状について説明し、積極的な対策の必要性を主張。これに対し、中国側は建造能力の適正化は重要との
認識を示しつつ、具体策として、先進技術の導入状況などを評価項目とした優良事業者リスト(ホワイトリスト)の公表な
どを通じて選別が進む環境づくりに努めていることを紹介した。会議では、日本側が最大の造船国・中国の不在が懸案
となっているOECD(経済協力開発機構)造船部会にも言及し、中国の参加を呼び掛けた。中国側は内部で検討する必
要があるとしつつ、参加形態についてOECD事務局に照会していることを明かすなど、参加に一定の関心を持っている
ことを表明したという。OECD造船部会は、造船分野で唯一の多国政府間の枠組み。造船市場の健全化に向けた政策協
調は同部会の主要テーマの一つで、中国政府との間での過剰建造能力の分析などは行われているものの、同国の正
式参加は実現していない。
◆解撤国の改善/ロンドンで発信 ≪坂下海事局長≫国土交通省の坂下広朗海事局長は20日、記者団と懇談し、IMO
(国際海事機関)のシップリサイクル条約の発効に向けて、解撤国のリサイクルヤードの改善に国際的な認知向上が不
可欠となっていることを踏まえ、来年2月に海事局が主催するセミナーを英国・ロンドンで開催する計画であることを明
らかにした。坂下局長の発言要旨は次のとおり。≪2016年度予算要求の進捗≫◇ 要求した予算がつくよう、理解を得
るべくやっている。18日に公明党の国土交通部会、海事振興連盟の総会、19日は自民党の国土交通部会がそれぞれ開
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催され、税制に関しても要望にかかわる動きが順次出てきている。要望事項の実現に向けて全力を尽くす。≪COP≫◇
(今月末に予定されている気候変動枠組条約締約国会議について)われわれが主張するポイントは2つ。海運は途上
国、先進国を問わず国際的に統一されたルールで対応する枠組を確保することと、気候変動資金の財源として海運が
過重な負担を強いられることにならないようにすること。期間中の交渉に関係国とも連携しながら対応する。≪東洋ゴ
ムの試験不正問題≫◇ 10月30日に国交省としても発表を行っているが、その後はデータに不正があった製品につい
て、再現試験が第三者機関により実施されている。われわれとしてもその内容を確認し、結果、どういう結論が出てく
るかを受け、エンドユーザーが取るべき対応を国交省として示していく。≪シップリサイクル≫◇ 先般、日印政策対話を
実施したが、インドでは2013年に船舶解撤め法律が整備され、設備を改善した事業者が出てきているのは良い流れ。改
善の流れが全てのヤードに回っていくよう、今後もサポートしていく。9月にはNKが南アジアで初のシップリサイクル条
約への適合証明を、インドの解撤ヤードに対し行った。これまでは解撤国の施設を懸念する空気が強かったが、認証が
行われたことで、きちんと対応して条約に合ったものにできることが公た示された。◇ 条約が発効するためのカギは、
解撤国の批准。リサイクル施設の改善をサポートし、批准ができるようにしていきたい。同時に改善をPRしていくことが
重要。2月にロンドンでシップリサイクルに関するセミナーを開催し、インドの当局にも参加頂く予定だ。解撤ヤードの施
設を一番懸念している欧州の海事の中心地でセミナーを開いて、理解を深めていく。≪ASEF立ち上げ≫◇ 造船産業
の国際団体「ASEF」立ち上げの運びとなった。助走期間は長かったが、世界の9割の船を造る主要造船国の団体ができ
る。IMOのオブザーバーステータス取得を目指す。国際的な場に造船セクターの声を届ける体制が整うのは良いこと。
日韓中は造船市場で競争もしているが、同じ目的意識を持ってやろうという体制ができたのは大きな進展。安全でクリ
ーン、効率的な海上輸送サービスが実現できるハードを提供していけるのは造船業界があってこそであり、その業界が
海事社会が抱えている課題に対して前向きなアクションを取っていけることを期待している。≪ものづくり日本大賞≫◇
ものづくり日本大賞をジャパンマリンユナイテッド(JMU)とナカシマプロペラが授賞した。匠の技と、イノベーションの
両面で評価されたのは喜ばしいこと。授賞式会場では模型を見た総理がメーカー担当者に声をかける場面もあった。
今後の人材育成や、海事産業の認知向上につなげる意味でも良い材料であり、PRに取り組んでいただければと思う。
◆海事局長会見要旨 〈COP21(国連気候変動枠組み条約の第21回締約国会議)を控え〉(交渉のたたき台となる)テ
キストには、国際海運の温暖化対策についてはIMO(国際海事機関)で取り組むと整理されたものと、ノーテキスト(記述
しない)の2つの選択肢が盛り込まれている。海運は国際統一ルールで温暖化対策に取り組むという原則が確保される
枠組みとする、それから気候変動基金にまつわる海運の過重負担を避けるという2点に集約した方針で、交渉に当たる
ことになる。〈インドでのシップリサイクル環境の改善〉解撒事業者2社に対して、香港条約に基づく日本海事協会(NKの
認証が実現しており、インドの解撒環境を疑問視する見方を払拭する意義があった。非常にいい流れにあるが、まだす
べてが改善に向かっているとは限らず、インド政府と対話しながらサポートと助言を続けていく。同条約は、インドのよ
うな解撤国が批准しなければ発効しない仕組み。日本として支援し、インドが批准できる環境を整えたいと思っており、
先般行った日印政策対話でもそのような話をしている。欧州を中心とする国際社会への広報も重要で、来年2月に英ロ
ンドンでセミナーを開催することを予定している。インドの海事当局にも登壇してもらい、海運の本拠地でインドの解撒
業への理解を深めたい〈新たな内航海運政策策定に向けたヒアリング作業〉内航海運の活性化に向けた今後の方向性
の検討に当たり、関係者との意見交換を開始した。すでに18日に日本鉄鋼連盟と意見交換しており、年度内にかけて内
航事業者はもちろん荷主や金融機関、造船業、シンクタンクなど幅広い方面から意見を頂戴していく。意見交換を基に、
2016年度には海事局として議論のたたき台を示した上で、議論する場を設けたい。
◆海事局長/ASEF設立を歓迎 ≪「造船の一丁目一番地が一つに」≫国土交通省の坂下広朗海事局長は20日に行っ
た記者会見で、日本主導の世界的造船産業界団価ASEFが来月設立されるとの公式発表を受け、「ついに(参加国の造
船業が)世界のシェア9割を占める団体ができた。(中核となる日中韓3国は)造船業の一丁目一番地であり、それが一
つになってIMO(国際海事機関)のオブザーバーステータス(諮問的地位)を得ることになれば、国際的な場に造船セク
ターの声を届けられるいい形ができる」と歓迎の意向を表明した。坂下氏は一部報道で、シェアを争う日中韓の3国で
歩調が合うかを疑問視する指摘があることについて「まずは呉越同舟。小異を捨てて大同に就くことで、海運業に対
して安全でクリーンなツールを提供するという造船業の役割のために前向きなアクションができることにつなげていく
ことだ」とコメントした。ASEFは、日本財団の助成を受けた日本船舶技術研究協会が日本造船工業会と連携して2007年
から設立作業を主導。IMOの重要課題に関する議論の場に参加するため、本部の設置国を含めた事務局体制が固まる3
年後をめどにオブザーバーステータス取得を申請する運び。
◎日本造船事業者団体連合会(日造協)
◆外国人労働者への安全対策強化/日造協、協力工育成への協力提案へ 日本造船協力事業者団体連合会の山口
謙吉会長は12日会見し、造船協力業の現状や同会としての事業方針を説明した。造船現場で外国人労働者が増えてい
ることを背景に、外国人向けの安全教育を強化する方針。教材の製作・配布などを行う。また、今後協力業で未熟練技
能者が増えることが日本造船業全体の課題となることから、人材の確保・育成に向けて国土交通省や元請け造船所な
どにも協力を求めていく考えを示した。会見には宮村弘明専務理事や金井広和常務理事らが同席し、補足した。協力会
社の課題の1つが、外国人の安全。今年度から造船業を対象に、期限付きで外国人受入枠が拡大している。他産業のよ
うな事故がないよう、安全対策を強化する考えだ。各地で実施している労働災害の体験教育事業では、外国人が参加
する場面が増えているが、これに加えて今後は外国人向けの安全教材を会員に配布する計画。以前作成した中国語や
ベトナム語など5カ国語の安全衛生教育読本を増刷・CD化して配布するほか、対応言語も増やす方向。また、体験教育
を映像化し、外国語字幕を入れて配布する予定だ。熟練技能工の高齢化に伴う技能伝承も課題だ。協力業者は中小企
業が多く、独自に技能を伝える制度が整っていない。因島や今治などでは協力会社も参加できる地域の新人研修セン
ターがあるが、遠隔地の中小業者にとっては参加が困難という課題がある。元請け造船所でも人手不足で本工を十分
に配置できなくなり、協力工だけで構成される部署もあるため、工程・品質を守るためには協力工育成が業界全体の
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課題となる。今後、国交省や造船所などと協力して、育成策を模索する考えだ。その他、会見の要旨は次のとおり。〈景
況感〉▽協力業は当面の仕事量を確保しているが、人手不足による人材確保と賃金上昇で採算は厳しく、工程維持も
課題。人手不足は落ち着いた造船現場と、苦労している現場がある。今後は仕事増加に伴う下請け比率の増大と、現場
高齢化や未熟練技能者対策が課題。国交省や元請け造船所などと協力して人材確保・育成対策が必要。▽造船所の労
働災害は、高操業に加えて未熟練技能者が増えていることも影響してか、業界全体としては厳しいレベル。今年はこれ
まで9件の死亡災害が起きている。安全教育などをさらに強力に推し進めていく。〈今年度と来年度の事業〉▽今年度
は日本財団からの助成と、国交省・厚生労働省の後援を受けて、「安全衛生アドバイザー相談会」と「出張型労働災害リ
アル体験教育」を実施したほか、独自の労災補償共済制度を運営した。体験教育は従来の手法の良い点を合わせ、造船
業に最適な形に内容を一新して実施している。トラックに教育設備を積み、全国で計20回を予定している。また12月に
施行されるストレスチェック制度に向けて会員企業を対象に講習会を予定している。▽来年度は「アドバイザー相談会」
「体験教育」の2事業を継続事業とし、内容を充実させて行う予定。日本財団に申請した。〈会員数〉▽今年10月時点で
は会員数48(前年48)、所属企業数1,750社(同1,717社)、人員4万6,162人(同4万4,516人)。仕事量増加に比例して人員
が若干増えている。また未加入の協同組合や協力会に入会の勧誘を行っている。
◆下請け率上昇・高齢化が課題/人材確保業界と協力へ 日本造船協力事業者団体連合会の山口謙吉会長は12日、
東京都内の事務所で会見し、造船協力業での課題として「下請け比率の増大と、現場の高齢化、未熟練技能者対策」を
挙げた。人材育成が必要となっているものの、下請け事業者では対応が難しい点を強調。造船業界などと協力した人材
確保・育成の取り組みが必要なことを指摘した。このほか日造協では、安全を最優先課題としていることをあらためて
紹介。日本財団の助成による「安全管理者に対する危険排除のノウハウ等伝承」(安全衛生アドバイザー相談会)と「出
張型労働災害リアル体験教育」を、内容を充実させ進めていくことを強調した。山口会長は会見で、日本の造船業では
受注量拡大や、高操業が継続しており、造船協力業でも仕事量は十分確保されているとの見方を示した。事業環境に
ついては、人手不足による人材確保と賃金上昇、工程の維持に向けて取り組んでおり、採算的には厳しい状況が続いて
いることなどを紹介した。今後の見通しとして、下請け比率の増大と、現場の高齢化や未熟練技能者対策が課題となる
ことを指摘。会社規模が小さいことなどにより、下請け事業者では対応が難しいため、国土交通省、元請け造船所など
と協力し、人材の確保・育成に取り組む必要があることを強調した。人材確保の観点では、今年度から造船と建設業に
限り、外国人労働者の活用(期限付きの「外国人造船就労者受入事業」)を実施。安全対策として、過去に作成した安全
衛生教育読本の外国語版の増刷・CD化などを行っていることを説明した。日本財団の助成事業となる「出張型労働災
害リアル体験教育」は今年度から開始。2009~11年度実施の「出張型災害疑似体験教育」、12~14年度の「出張型災害再
現実験教育」双方を融合し、内容拡充、受講者の利便性向上を図っている。
◎新造船
◆バルカーの船価下落で受注手控え バルカーの新造船価が低迷している。ドライバルク市況の低迷や新規制に伴
う建造コストのアップにより、船主と造船所が提示する船価には大きな乖離が出ており、バルカーの新造船には値が付
かない状況だ。他の船型に比べれば引き合いのあるハンディサイズでも、船価指標を下回る案件がほとんど。国内の
ハンディサイズ建造ヤードは、少なくとも18年初めから半ばまでの手持ち工事にめどを付けていることから、無理にハ
ンディサイズで受注を進めずに、内航船へのシフトや他の船種の受注を模索しながら、次の受注機会を待つ方針を取る
ようだ。「現在は商談を進められる状況にはない。案件はあってもこの船価ではとても受注できない」「もう少し先まで
ハンディサイズで埋める計画だったが、しばらく様子を見ざるを得ない」。複数の造船所の関係者はそうこぼす。バル
カーの船価水準は、昨年半ば以降じり安基調となっており、足元ではその傾向が強くなっている。クラークソンの新造船
価指標では、ケープサイズからハンディサイズまで昨年のピークと比較して15~17%下落しているが、「成約がないため
指標は踏みとどまっているが、水面下の商談で提示される船価はもっと安い」(市場関係者)と指摘する声もある。プレ
イヤーが多いことから、他の船型に比べれば引き合いがあるハンディサイズでも、指標では3万5,000重量㌧型で2,00
0万㌦だが、足元の商談では指標を下回るオファーがほとんどだという。造船所にとっては、今後進める商談では窒素
酸化物(NOx)3次規制などへの対応でコストアップが不可避なため、現在の船価水準での受注はリスクも大きい。国内
の造船所は一定の手持ち工事を確保したことから、受注環境の悪化を受けて、しばらくバルカーの受注を手控える動き
も広がっている。内海造船や四国ドック、神田造船所などのハンディサイズを主力製品として建造する造船所でも、無理
にハンディサイズを受注せず、内航船などの受注にシフトする動きや、バルカー以外の船種の受注を模索しながら、次
の受注機会を見定める動きがでている。ハンディサイズ・バルカーの大半は、国際船級協会連合(IACS)の新共通構造
規則(調和化船体構造規則:H-CSR)の対象外になり、新規制が適用された7月以降でも商談を進めやすいはずだった。
また、来年の起工船から対象になる窒素酸化物(NOx)3次規制への対応へのコスト面でのインパクトも船型が小さい分
大きく、小型船型を主力とする造船所でも船表を18年いっぱいまで進める方針を採っていた造船所も少なくなかった。
だが、「建造隻数が少ないと、1隻が全体の採算に与える影響が大きい。この局面では慎重にならざるを得ない」(造船
所関係者)と話す。国内の造船所で近年ハンディサイズ・バルカーを手掛けているのは、今治造船グループ、名村造船
所グループ、新来島どっくグループ、尾道造船グループ、常石造船、大島造船所、内海造船、四国ドック、神田造船所の9
社グループ。今治造船や名村造船、新来島どっくグループのハンディサイズ建造工場は少なくとも18年いっぱいまで
は線表を確定しており、内海造船や四国ドック、神田造船は、18年初め~半ばまでの手持ち工事に概ねめどを付けてい
る。また、ハンディマックス・バルカーとMR型プロダクト船で受注を進めた尾道造船はグループの佐伯重工業とともに2
0~21年まで線表を進めているほか、中型バルカー中心の大島造船は19年前半まで、中型バルカーやアフラマックス・タ
ンカーで受注を進める常石造船は海外工場を含めて18年半ばまで確定している。ハンディサイズをはじめとしたバル
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カーは、国内外の造船所がひしめき合う市場だけに、船価の下落圧力も強い。また、船主側にも新造船でなくとも市場
から中古買船や用船を通じて新鋭船を安値で調達できるとの見方が広がっている。国内の造船所は消耗戦を避けて、
受注を手控える傾向も強くなってきそうだ。
◆新造船価/下落圧力強まる/タンカー・バルカー、他船種も軟化の可能性 新造船マーケットで、新造船価の下落圧力
が強まっている。ドライ市況低迷によりバルカーの新造船価がじり安基調で推移していることに加え、年前半のマーケ
ットをけん引したタンカーの発注がピークアウトし、これまで横ばいで推移してきた中型タンカーの新造船価が反落し
た。大型コンテナ船、ガス船、自動車船はこの秋が新造船駆け込み発注のピークとなるため、足元は横ばいを維持して
いるものの、目先は反動減により軟化する可能性がある。マーケット筋によると、タンカーの足元の新造船価レベルは、V
LCC(大型原油タンカー)9,500万㌦(32万重量㌧型)、スエズマックス6,350万㌦(15万7,000重量㌧型)、アフラマックス5,
230万㌦(11万5,000重量㌧型)、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカー3,550万㌦(5万1,000重量㌧
型)。スエズマックス、アフラマックスは夏場以降、やや弱含みながら横ばいを維持してきたが、先週までにそれぞれ50
万㌦、20万㌦下落した。バルカーほどではないにせよ、下落圧力が徐々に強まっている。国際規則改正に伴う年前半の
新造船駆け込み発注の反動が主因とみられる。バルカーは、ケープサイズ4,700万㌦(18万重量㌧型)、パナマックス2,6
00万㌦(7万6,000重量㌧型)、ハンディマックス2,450万㌦(6万2,000重量㌧型)、ハンディサイズ2,050万㌦(3万5,000
重量㌧型)。バルカーを得意とする日本の主要造船各社の船台が一定程度埋まっているため、成約がないとはいえ新
造船価は下げ渋っているが、ドライ市況が再び低迷色を強めている影響もあり、船価の下落圧力も強まっている。ガス
船は横ばいで推移している。足元はLNG(液化天然ガス)船が2億㌦(16万立方㍍型)、大型LPG(液化石油ガス)船VLGC
は7,700万㌦(8万2,000立方㍍型)。ただ、目先はエネルギー価格下落の影響、国際規則改正に伴う今秋の新造船駆け
込み発注の反動が懸念される。コンテナ船は、1万3,000TEU型が横ばいの1億1,600万㌦、2,750TEU型フィーダーは弱含
み横ばいの2,950万㌦。自動車船は6,000台積みが5,950万㌦と小じっかりとした展開となっている。
◆新造船価相場/弱含み横ばい続く、バルカー下落圧力強まる 新造船価相場は、弱含み横ばい基調が続いている。
ただ、運賃市況が好調なタンカーに比べドライ市況低迷が続くバルカーでは、下落圧力が強まっている。マーケット筋
によると、バルカーの足元の新造船価レベルは、ケープサイズ4,700万㌦(18万重量㌧型)、パナマックス2,600万㌦(7万
6,000重量㌧型)、ハンディマックス2,450万㌦(6万2,000重量㌧型)、ハンディサイズ2,050万㌦(3万5,000重量㌧型)。
ケープ、ハンディ両サイズの下落圧力が比較的強く、目先はじり安の展開が予想される。タンカーの足元の新造船価水
準は、運賃市況が好調なものの、年前半の新造船駆け込み発注の反動で発注自体が世界的に一般しているため、横ば
いながら若干弱含み。VLCC(大型原油タンカー)9,500万㌦(32万重量㌧型)、スエズマックス6,350万㌦(15万7,000重量
㌧型)、アフラマックス5,230万㌦(11万5,000重量㌧)、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカー3,550万
㌦(5万1,000重量㌧型)となっている。ガス船は横ばい。LNG(液化天然ガス)船は2億㌦(16万立方㍍型)、大型LPG(液化
石油ガス)船VLGCは7,700万㌦。コンテナ船は、1万3,000TEU型が横ばいの1億1,600万㌦、2,750TEU型フィーダーが弱
含み横ばいの2,950万㌦。自動車船(PCTC)は、6,000台積みが5,950万㌦。横ばいながら、小じっかりとした基調となっ
ている。
◆大・中型BC小幅続落 ≪新造船価 ほぼ直近底値状態に≫新造船マーケットで、バルカーの新造船価レベルが小幅
続落した。中型バルカーのパナマックス、ハンディマックスの足元の船価レベルは直近の底値だった2012年と並び、大型
バルカーのケープサイズは12年の底値が目前に迫っている。マーケット筋によると、バルカーの足元の新造船価レベル
は、直近と比べケープサイズが50万㌦安の4,650万㌦(18万重量㌧型)、パナマックスは20万㌦安の2,580万㌦(7万6,0
00重量㌧型)、ハンディマックスは20万㌦安の2430万㌦(6万2000重量㌦型)、ハンディサイズは弱含み横ばいの2,050
万 ㌦。直近底値の12年は、ケープサイズ4,600万㌦、パナマックス2,580万㌦、ハンディマックス2,430万㌦。ハンディサ
イズは2,100万㌦だったので、すでに12年レベルを下回っている。タンカーの足元の新造船価レベルは、VLCC(大型原油
タンカー)が横ばいの9,500万㌦(32万重量㌧型)、スエズマックスは横ばいの6,350万㌦(15万7,000重量㌧型)、アフラ
マックスは30万㌦安の5,200万㌦(11万5,000重量㌧型)、MR(ミディアムレンジ)型プロダクト(石油製品)タンカーは横
ばいの3,550万㌦(5万1,000重量㌧型)。
◎中古船
◆中古船価/バルカ一続落 ≪タンカーは全船型で上昇≫英国ボルチック・エクスチェンジの2日付の中古船価インデッ
クス(船齢5年)はバルカーが全船型で続落した一方、タンカーは全船型で上昇した。タンカーのアフラマックス、MR型は
5週連続の上昇。スクラップ船価は全船型で続落した。直近のマーケットレポートなどで報告されたバルカーの売買成約
は、ケープサイズで17万9,362重量㌧型”churchill Bulker”(2011年現代重工業建造)をダイアナ・シッビングが2,850万㌦
で買船。ポストパナマックスで8万8,300重量㌧型“PineWave”(2006年今治造船建造)が890万㌦で、パナマックスでは7
万6,600重量㌧型“Red Lily”(04年今治造船所建造)が850万㌦でそれぞれギリシャバイヤーに売船された。ハンディマ
ックスでは4万6,600重量㌧型“Dubai Fortune”(95年三井造船建造)を中国バイヤーが260万㌦で買船した。ハンディサ
イズでは3万2,100重量㌧型“Green Island”(09年函館どつく建造)をスイス船社ノヴァ・マリン・キャリアーズが1,020万㌦
で買船したほか、1万8,300重量㌧型“SirHenry”と“Sir Walter”(四国ドックで97年、96年建造)をトルコバイヤーがそれぞ
れ320万㌦、280万㌦で買船した。タンカーの売買成約は、VLCCで30万5,800重量㌧型“GC Guang-zhou”(99年サムス
ン重工業建造)をギリシャのニューシッビングが3,000万㌦で買船。アフラマックスでは11万4,900重量㌧型“MinervaAtlan
tica”と11万4,800重量㌧型“Minerva Antarctica”(ともに06年サムスン重工業建造)が買主不明で各2,800万㌦で買船
された。MR型では、4万7,000重量㌧型“Ma-hanadi Spirit”(00年尾道造船建造)が買主不明で1,180万㌦で買船された
ほか、4万6,000重量㌧型“seven Express”(07年新来島どつく建造)をシンガポールバイヤーが2,200万㌦で買船した。
◆中古船価/バルカー続落 ≪ケープ5年物3,000万㌦割る≫英国ボルチック・エクスチェンジの9日付の中古船価イン
デックス(船齢5年)はバルカー・タンカーともに全船型で下落した。バルカーの下落はケープサイズ、パナマックスで7週
連続、ハンディマックスで4週連続。ケープサイズは3,000万㌦を割り込んだ。スクラップ船価はインド亜大陸解撤の全船
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型で上昇した。直近のマーケットレポートなどで報告されたバルカーの中古船売買は、ハンディマックスで5万8,100重量
㌧型“Geraldine Manx”(2010年常石集団<舟山>建造)が1,350万㌦、4万9,016重量㌧型“pa-cific Emerald”(96年大島
造船所建造)が370万㌦で買船されたほか、4万6,600重量㌧型“Expander”(00年三井造船建造)を韓国バイヤーが550
万㌦で買船。4万2,584重量㌧型“Mosor”(01年ブロドスプリット造船建造)が500万㌦で買船された。ハンディサイズでは
2万7,300重量㌧型“HanjinBrisbane”(97年韓進重工建造)が280万㌦で買船された。タンカーの中古売買成約は、スエ
ズマックスで15万重量㌧型“Mindanao”(98年大宇造船海洋建造)を極東バイヤーが2,100万㌦で買船。14万9,258重量㌧
型“AIMubarakah”(94年イタリアのフィンカンティエリ建造)をインドバイヤーが1,375万㌦で買船した。ケミカル船では1
万8,000重量㌧型“Besiktas Scotland”(07年トルコのDeniz Endustrisi建造)をドイツのカール・F・ピーターズが1,630万
㌦で買船したほか、1万6,500重量㌧型“Golden Tiffany”(98年栗之浦ドック建造)を韓国バイヤーが800万㌦買船。1万2,
300重量㌧型“Golden Top”(04年伯方造船建造)が買主不明で1,200万㌦で売船された。
◆中古船価/大・中型バルカー続落、ケープ下げ幅拡大 中古船マーケットで、大・中型バルカーの中古船価が続落し
た。特にケープサイズの下げ幅が大きく、船齢5年物、10年物は直近と比べ350万~400万㌦下落。これまでと比べ、下げ
幅が拡大した。タンカーではVLCC(大型原油タンカー)、スエズマックスが一部で下落した。マーケット筋によると、バル
カーの足元の中古船価レベルは、ケープサイズが、新造リセールは弱含み横ばいの4,400万㌦、船齢5年物は350万㌦
安の2,850万㌦、船齢10年物は400万㌦安の1,600万㌦、船齢15年物は150万㌦安の900万㌦に値を下げた。パナマック
スは、新造リセールが50万㌦安の2,750万㌦、船齢5年物は100万㌦安の1,600万㌦、船齢10年物は100万㌦安の950万㌦
となった。ハンディマックスは、新造リセールが100万㌦安の2,450万㌦、船齢5年物は50万㌦安の1,500万㌦、船齢10年
物は弱含み横ばいの900万㌦で推移している。ハンディサイズは全般的に弱含み横ばい。新造リセールは2,100万㌦、
船齢5年物1,150万㌦、船齢10年物850万㌦、船齢15年物500万㌦となっている。タンカーの足元の中古船価レベルは、VL
CCが新造リセールは弱含み横ばいの1億㌦、船齢5年物は100万㌦安の7,900万㌦、船齢10年物、15年物はそれぞれ弱
含み横ばいで、5,500万㌦、3,800万㌦となっている。スエズマックスは、新造リセールが100万㌦安の6,900万㌦、船齢5
年物は100万㌦安の5,900万㌦、船齢10年物は横ばいの4,200万㌦。アフラマックスは全般的にやや弱含みながら横ば
い。新造リセール5,600万㌦、船齢5年物4,600万㌦、船齢10年物3,100万㌦となっている。
◆中古船価相場/大・中型BC小幅続落 ≪ケープ・パナマ型 50-100万㌦安≫中古船マーケットで大・中型バルカーの
中古船価相場が小幅続落した。大型バルカーのケープサイズ、中型バルカーのパナマックスが直近と比べそれぞれ50
万-100万㌦安となり、2週連続で値を下げた。タンカーの中古船価レベルは全般的に横ばいで推移している。マーケット
筋によると、バルカーの足元の中古船価レベルは、ケープサイズが、新造リセールは100万㌦安の4,300万㌦、船齢5年
物は50万㌦安の2,800万㌦、船齢10年物は50万㌦安の1,550万㌦、船齢15年物は弱含み横ばいの900万㌦。パナマック
スは、新造リセール、船齢5年物、10年物が50万㌦安で、それぞれ2,700万㌦、1,550万㌦、900万㌦となっている。船齢15
年物は弱含み横ばいの600万㌦。ハンディマックスは新造リセール、船齢5年物が50万㌦安となり、それぞれ2,400万
㌦、1,、450万㌦で推移している。船齢10年物、15年物は弱含み横ばいで、それぞれ900万㌦、550万㌦となっている。ハ
ンディサイズは、新造リセールが横ばいの2,100万㌦。船齢5年物、10年物は弱含み横ばいで、それぞれ1,150万㌦、850
万㌦。船齢15年物は強含み横ばいの500万㌦で推移している。タンカーの足元の中古船価レベルは横ばい基調で、VLC
C(大型原油タンカー)が新造リセール1億㌦、船齢5年物7,900万㌦、船齢10年物5,500万㌦、船齢15年物3,800万㌦。スエ
ズマックスは、新造リセール、船齢5年物が100万㌦高となり、それぞれ7,000万㌦、6,000万㌦に値を戻した。船齢10年物
は横ばいの4,200万㌦。アフラマックスは、新造リセール5,600万㌦、船齢5年物4,600万㌦、船齢10年物3,100万㌦。
◆中古船価/全船型で続落 ≪ケープサイズは前週比80万㌦安≫英国ボルチック・エクスチェンジの16日付の中古船
価インデックス(船齢5年)は、バルカー・タンカーの全船型で続落した。バルカーの下落はケープサイズ、パナマックスで
8週連続、ハンディマックスで5週連続。ケープサイズは先週から約80万㌦の大幅な下落となった。タンカーは2週続落し
た。スクラップ船価は中国解撤の全船型で上昇した一方、インド亜大陸解撤の全船型で反落した。直近のマーケットレポ
ートで報告されたバルカーの中古船売買は、ケープサイズで18万274重量㌧型“Aurora Venus”(2009年旧幸陽船渠建
造)が2,500万㌦で買船されたほか、17方2,517重量㌧型“Nisshin Trader”(01年NKK建造)をトルコのカラデニズが930
万㌦で買船。海外紙によると、カラデニズは同船を発電船に改造すると伝えられている。パナマックスでは7万5,940重
量㌧型“Brunhilde Salamon”(01年カナサシ重工建造)を中国バイヤーが510万㌦で買船したほか、8万3,688重量㌧型“T
iare”(09年サノヤス造船建造)をギリシャバイヤーが1,480万㌦で買船した。ノルウェー船主トルバルド・クラブネスがカ
ナダ船社アルゴマ・セントラルとCSLグループにセルフ・アンローダー付きバルカ一計5隻を合計1億9,000万㌦で売船。5
隻は7万重量㌧型3隻と4万重量㌧型2隻で、うち日本建造船は7万5,569重量㌧型“Baldock”(81年三井造船建造)と4万
9,463重量㌧型“Barkald”と4万8,184重量㌧型“Balder”(ともに02年大島造船所建造)の3隻。アルゴマとCSLが2隻ずつ
保有し、残る1隻は両社の合弁会社マルバルクが保有する。タンカーの中古売買では、4万7,221重量㌧型“Rainbow Ques
t”(99年尾道造船建造)をギリシャバイヤ-が1,000万㌦で買船。ケミカル船では10万5,715重量㌧型“Explorer”(99年
名村造船所建造)が1,575万㌦で売船されたほか、3万7,383重量㌧型“Elbtank Denmark”(02年現代尾浦建造)をインド
ネシアバイヤーが1,200万㌦で買船。1万7,589重量㌧型“Ardmore Calypso”と1万7,567重量㌧型“Ardmore Ca-pella”(い
ずれも10年現代三湖建造)をBTSタンカーズが各1,925万㌦で買船したほか、1万800重量㌧型“Mutiara Perak”と“Imbak
”(07年、08年韓国のノクボン造船建造)がそれぞれ520万㌦、480万㌦で買船された。
◆バルカー・タンカー続落 ≪中古船価、ケープ63万㌦安≫英国ボルチック・エクスチェンジの23日付の中古船価イン
デックス(船齢5年)は、バルカーの全船型と、アフラマックスを除くタンカーで続落した。バルカーの下落はケープサイ
ズ、パナマックスで9週連続、ハンディマックスで6週連続。ケープサイズとパナマックスのは先週比約63万㌦、41万㌦
安、タンカーのMR型は37万㌦安と大幅な下落となった。スクラップ船価は中国解撤の全船型で反落した一方、インド亜
大陸解撤船ではダーティータンカーを除いて続落した。直近のマーケットレポートで報告されたバルカーの中古船売買
は、ハンディサイズで2万9,900重量㌧型“Eco Vanquish”(2002年四国ドック建造)をベトナムバイヤーが560万㌦で買船
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したほか、2万8,700重量㌧型“Katherine”(97年カナサシ重工建造)を極東バイヤーが270万㌦で買船した。タンカーの
売買成約ではスエズマックスで15万2,900重量㌧型“DHT Trader”(00年現代重工建造)をギリシャバイヤーが2,700万
㌦で買船したほか、14万6,600重量㌧型(98年三星重工業建造)をインドのセブン・アイランズ・シッビングが2,275万㌦で
買船。アフラマックスでは11万3,300重量㌧型“pacific London”(99年三星重工業建造)をバクリ・ナビゲーションが1,550
万㌦で、l0万5,300重量㌧型“Aegean Leg-end”(00年三星重工業建造)をインドネシアバイヤーが1,850万㌦で買船し
た。MR型では5万1,300重量㌧型“Hellas Explorer”と5万1,200重量㌧型“Hellas En-terprise”(ともに08年STX造船建
造)をギリシャのエンパイア・ナビゲーションが各2,600万㌦で買船した。
◆中古船価相場、バルカー小幅続落 ≪ケープ5年物2,700万㌦≫中古船マーケットで、バルカーの中古船価が小幅続
落した。ドライ市況の低迷を反映し、全船型で値を下げた。中でもケープサイズは幅広い船齢で値を下げ、船齢5年物は
2,700万㌦となっている。タンカーの中古船価レベルは全般的にやや弱含みながら横ばい。マーケット筋によると、バル
カーの足元の中古船価レベルは、ケープサイズが新造リセールは100万㌦安の4,200万㌦、船齢5年物は100万㌦安の2,
700万㌦、船齢10年物は50万㌦安の1,500万㌦、船齢15年物は弱含み横ばいの900万㌦で推移している。パナマックス
は、新造リセールが50万㌦安の2,650万㌦、船齢5年物は50万㌦安の1,500万㌦。船齢10年物、15年物は弱含み横ばい
で、それぞれ900万㌦、600万㌦。ハンディマックスは、新造リセールが50万㌦安の2,350万㌦、船齢5年物は横ばいの1,4
50万㌦、船齢10年物は50万㌦安の850万㌦、船齢15年物は弱含み横ばいの550万㌦となっている。ハンディサイズは、
新造リセールが100万㌦安の2,000万㌦。船齢5年物、10年物はそれぞれ弱含み横ばいで、1,150万㌦、850万㌦。船齢15
年物は横ばいの500万㌦で推移している。タンカーの足元の中古船価レベルは、VLCC(大型原油タンカー)が新造リセ
ール1億㌦、船齢5年物7,900万㌦、船齢10年物5,500万㌦、船齢15年物3,800万㌦。スエズマックスは、新造リセール7,00
0万㌦、船齢5年物6,000万㌦、船齢10年物4,200万㌦。アブラマックスは、新造リセール5,600万㌦、船齢5年物4,600万
㌦、船齢10年物3,100万㌦。
◆中堅造船3社/名村・サノヤス減益 ≪低船価船建造など響く、新造受注は全社確保≫上場している中堅造船3社の2
015年4-9月期連結業績は、営業利益段階で名村造船所、サノヤスホールディングス(HD)が、低船価船の建造などによ
り減益だった。名村では、受注した新開発の中型低温式LPG(液化石油ガス)船1隻などで、工事損失引当金を計上した
ことも収益に響いた。内海造船は、建造船種の違いなどで1隻当たりの売り上げが拡大し、増益だった。新造船は3社と
も複数隻受注した。≪4-9月期≫期間中の名村の連結営業利益は36億円で前年同期比70%減だった。船価が暴落した
リーマン・ショック後に受注した船舶の建造が中心だったことなどが響いた。14年10月に佐世保重工業を完全子会社化
したことなどで、連結売上高は19%増の709億円に膨らんだ。新造船事業では、大型バルカー3隻、中型油送船7隻、ハ
ンディサイズバルカー2隻の計12隻を成約。同受注高は38%増の744億円となった。9月末の同受注残高は、前年9月末
比24%増の3,189億円となった。手持ち工事量は約3年分を確保している。名村の16年3月期連結業績予想は、5月発表
の前回予想を変更していない。売上高1,440億円(前期比6%増)、営業利益43億円(同80%限、経常利益38億円(同83
%減)、純利益37億円(同75%減)を見込む。配当は年20円配(中間、期末各10円)を予定する。サノヤスHDの4-9月期連
結営業利益は、前年同期比9%減の18億円だった。建造した新造船の中に低船価船が含まれていたことなどが影響し
た。連結売上高は12%増の255億円。期間中の新造船受注は82型、60型バルカ一計6隻だった。新造船に、改修船・修繕
船、プラント事業を加えた造船事業の受注高は39%増の252億円となった。9月末の同受注残高(新造船は工事進行基
準)は前年9月末比25%増の854億円となった。受注残隻数は、引き渡しベースで27隻、このほか改修船事業で作業船1
隻。手持ち工事は約3年分を維持している。サノヤスの16年3月期連結業績予想は、売上高518億円(前期比6%増)、営
業利益12億円(同47%減)、経常利益10億円(同54%減)、純利益5億円(同71%減)と、5月発表の前回予想を変更して
いない。配当は年5円配(期末5円)を継続する。内海造船の期間中の連結営業利益は1億2,300万円で、前年同期実績の
3・5倍に膨らんだ。新造船工事で、前年同期と比べ売り上げ対象船が2隻減少。一方、バルカーと比べ金額が高い自動車
船などの引き渡しがあり、1隻当たりの売り上げが増加したことなどが収益に反映した。連結売上高は16%増の139億円
だった。改修船工事を含む船舶事業の期間中の受注高は26%増の218億円に膨らんだ。新造船では、貨物船、フェリー、
自動車道搬船など計6隻を成約した。9月末の同事業受注残高は、前年9月末比14%増の544億円新造船受注残、隻数
は19隻となっている。内海の16年3月期連結業績予想は、5月発表の前回予想を変更していない。売上高295億円(前期
比14%増)、営業利益2億5,000万円(同85%増)、経常利益2億円(同68%増)、純利益2億円(同50%増)を見込む。配当
は年2円配(期末2円)を継続する。
◆造船決算/海洋が足かぜに ≪IHI・三井・川重が営業赤字に≫国内造船所の決算でも、海洋開発関連の事業が足か
せとなってきた。三井造船と川崎重工業、IHIが船舶海洋部門の2016年3月期の業績予想を下方修正し、営業損益がそろ
って赤字になる見通しとなった。いずれも海洋関連の工事での工程遅れや採算悪化が響いた。三菱重工業の客船の混
乱や、韓国造船所の海洋の赤字による経営危機も含めて、造船各社が将来の成長マーケットとして挑んだ高付加価値
市場でそろって困難に直面している格好だ。総合重工各社で相次いだ業績予想の下方修正。その要因はいずれも海洋
だ。IHIは今期は海洋部門で310億円の赤字に陥る見通しとなった。シンガポール向けドリルシップ船体工事の相次ぐ図面
改正が引き金となり、後続のFPSO(浮体式原油生産積出設備)船体工事も遅れ、愛知工場の海洋事業が混乱に陥って
いる。三井造船は、船舶海洋部門の営業損益が、10億円の赤字に転落する見通しとなった。従来予想は30億円の黒字
だったが、連結子会社の新潟造船が建造中のAHTS(アンカー・ハンドリング・タグ・サプライ船)4隻で、工期遅延による損
失が広がっている。川崎重工業も船舶海洋部門の今期の営業損益を、従来予想の30億円の黒字から、30億円の赤字へ
と下方修正した。トップホール・ドリリング船と呼ばれる特殊なオフショア支援船と、ドリルシップ船体部の納期延期など
に伴い、費用が増加した。海洋を手掛けていない造船所は今期は黒字を維持する見通しだが、不採算船の建造で減益
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は免れない。ジャパンマリンユナイテッドが4-9月期に経常利益が前年同期比91%と大幅減益となったほか、名村造船
所も通期の経常利益が前期比83%減、サノヤスホールディングスも54%減を見込むなど、利益水準が大きく後退する
見通しとなった。
◆決算、造船・重機5社/増収もリスク顕在化 ≪4-9月期 大型プロ管理が課題≫造船・重機5社の2015年4-9月期は全
社増収ながら、個別プロジェクトの採算悪化や新興国経済の減速が利益を押し下げるなどリスクも顕在化した。当期損
益が赤字に転落したIHIをはじめ川崎重工業、三井造船が海洋開発案件の納期延期などが響いた。三菱重工業は蒸気タ
ービンの不具合対策費用や客船事業で追加損失を計上した。住友重機械工業は中国での建設機械販売が落ち込んだ。
15年4-9月期業績を4日発表したIHIは赤字主因の海洋構造物について、独自のアルミ製のガス貯蔵タンク「SPB」を軸と
した事業体制に移行、ドリルシップなど鋼製大型工事の受注を手控え、事業を大幅縮小する方針を示した。「(愛知工場
の)設備が一部余剰になる可能性がある」(斎藤保社長)とし、人員対策を含めて事業モデルの再構築を検討する。各
社とも総じて民間航空機やエネルギー事業などを中心に成長基調は続くが、大型プロジェクトの採算管理などが共通
課題になりそうだ。また「米ゼネラル・エレクトリック(GE)によるアルストムの事業買収が終わり、エネルギー・環境業界は
新しい戦いのフェーズに入る。事業構造をもう一段強くする」(宮永俊一三菱重工社長)など、グローバル競争環境の変
化も注視する必要がある。
◆決算、船大手5社船舶部門/4-9月期、不採算船建造が業績直撃 ≪営業黒字はJMUl社≫造船大手5社船舶部門の2
015年4-9月期連結決算が4日出そろい、営業黒字はジャパンマリンユナイテッド(JMU1社)だけとなった(交通・輸送ドメ
インで業績開示の三菱重工を除く)。12年末まで4年にわたり続いた海運・造船不況、超円高の局面で受注せざるを得な
かった採算の悪い新造船の建造が直撃した。原油価格下落の影響でオフショア(海洋)関連でも逆風が吹いた。16年3月
期通期の連結営業損益は、予想数値の公表を見合わせたJMUを除き、黒字予想は住友重機械工業1社。新造発注ブーム
の反動と海運市況低迷の影響により、来年には新造発注激減も予想される。造船各社は足元のコスト削減と新造船受
注確保の両面で対応を迫られそうだ。JMUが4日発表した15年4-9月期連結決算は、営業利益が11億円と前年同期比89
%の大幅減益となった。コストダウンによる収益改善に努めたものの、採算の厳しい新造船の売り上げ計上が響いた。
売上高は22%増の1,604億円。経常利益は91%減の7億円、最終利益は91%減の5億円だった。この結果、営業黒字を確
保したのはJMUだけ。住重はトントンだった。川崎重工、三井造船はそれぞれ31億円、89億円の営業赤字だった。オフショ
ア関連でそれぞれ採算が悪化した。16年3月期通期の連結営業損益は、川重が30億円の赤字、三井造船が10億円の赤
字を見込む。住重は5億円の黒字予想を変更していない。JMUは「外国為替相場、マーケット動向による相当の影響が想
定される」ことを理由に、見通しの公表を見合わせた。各社とも新造船の引き渡しは下期に偏るため、収益改善に向け、
これからが正念場となる。下期の為替の前提レートは、川重、住重が1㌦=120円、三井造船、三菱重工が115円。新造船
マーケットは、13年の超円高是正による発注ブーム、14-15年の国際ルール改正に伴う駆け込み発注の反動により、来年
は閑散商状を予想する向きが強い。日本勢が得意とするバルカーの新造発注は今年半ば以降、ドライ市況低迷の影響
により全世界的に激減している。その影響で、新造船価相場は気配値先行で続落。足元のケープサイズバルカーの新
造船価レベルは4,700万㌦(18万重量㌧型)と近年の底値となった12年の4,600万㌦に迫っている。16-17年に引き渡す
新造船は、船価が多少上昇した13-14年に受注したものであるため、為替が安定すれば業績は若干回復する見通し。一
方、造船各社の船台は18年末までほぼ埋まり、3年強の仕事を確保しているものの、新造発注の反動減が長引けば、受
注確保で一段の苦戦を強いられるシナリオもあり得る。
◆大手船舶部門業績/不採算船建造で悪化 〈デスク〉造船大手船舶部門の2015年4~9月期連結決算からいこうか。
〈A〉営業黒字は、交通・輸送ドメインで業績開示の三菱重工を除き、ジャパンマリンユナイテッド(JMU)だけとなりました。
12年末まで4年にわたり続いた海運・造船不況、超円高の局面で受注せざるを得なかった低船価船の建造が直撃しまし
た。〈B〉原油価格下落の影響でオフショア(海洋)関連でも逆風が吹きました。〈C〉JMUの営業利益11億円を計上しました
が、前年同期と比べ89%の大幅減益です。売上高は1,604億円で22%の増収だったので、いかに建造船の採算が厳し
いかがわかります。〈A〉住友重機械工業はトントン。川崎重工、三井造船はそれぞれ31億円、89億円の営業赤字でした。
オフショア関連でそれぞれ採算が悪化しました。〈デスク〉16年3月期通期の連結営業損益の予想はどうなっているか。
〈A〉川重は30億円の赤字、三井造船は10億円の赤字です。住重は5億円の黒字予想を変更していません。〈B〉JMUは外
国為替相場、マーケット動向による相当の影響が想定されるとして、予想の公表を見合わせました。何とか通期でも営
業黒字を確保してほしいものです。〈C〉各社とも新造船の引き渡しは下期に偏るため、収益改善に向け、これからが正
念場です。〈デスク〉下期の為替の前提レートは?〈A〉川重、住重が1㌦=120円、三井造船、三菱重工が115円です。〈デス
ク〉来期以降の見通しはどうか。〈A〉16~17年に引き渡す新造船は、船価が多少上昇した13~14年に受注したものである
ため、為替が安定すれば業績は若干回復するとみられています。〈B〉造船各社の業績は16~17年度と多少上向くものと
みられますが、一方で、新造発注の反動減が長引けば、受注確保で一段の苦戦を強いられる可能性があります。〈C〉日
本勢が得意とするバルカーの新造発注は今年半ば以降、ドライ市況低迷の影響により全世界的に激減しています。ドラ
イ市況が低迷のトンネルからいつ抜け出すのかはまったく見えません。〈デスク〉この1カ月は、名村造船所が初のフルレ
フ(冷凍式)タイプのLPG(液化石油ガス)船をくみあい船舶から受注したという話題や、内海造船が某邦船社から20年
ぶりに自動車船(PCTC)を受注したという話題もあった。来年は新造発注そのものが限定的となるだろうが、そうした
ときこそ新たな動きが出てくるぞ。〈デスク〉さて、中堅造船の4~9月期連結決算が出そろったね。〈A〉リーマン・ショック
以後に受注した比較的船価の低い船舶の建造などがあり、営業利益段階では名村造船所は前年同期比70%減の36億
円、サノヤスホールディングスが9%減の18億円と、それぞれ減益でした。〈B〉内海造船は、売り上げ対象船が2隻減の1
0隻にとどまりましたが、船種が前年同期のバルカーから金額の高い自動車船などに変わったこともあり、1隻当たりの
売り上げが増加しました。それにより営業利益は、前年同期の3,500万円から1億2,300万円に増えました。〈C〉名村で
は、環境負荷やシェールガス革命など将来的なエネルギー構造の変化をにらみ、開発を進めてきた中型低温式LPG(液
化石油ガス)船1隻を受注しました。同船などをはじめとする案件について、工事引当金を計上したことも業績に響きま
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した。〈デスク〉バルカー市況の低迷、中国経済の失速もあるが、受注はどうかな。〈A〉新造船受注は全社が確保しまし
た。隻数ベースでみると、名村が12隻、サノヤスホールディングスは6隻、内海が6隻でした。名村は前年同期の20隻と比
べ減少していますが、サノヤス(前年同期3隻)、内海(4隻)は増えています。〈B〉市況が低迷しており、バルカー以外の
船種受注もじわり増えてきました。佐世保重工業を株式交換で完全子会社化する会見を14年5月に行った名村の名村
建介社長は当時、1つの挑戦分野としてガス船に言及していました。その後のインタビューなどでは、「チャンスがあれば
やりたい」など慎重に答えていましたが今回、中型低温式もLPG船1隻を受注し、具体的な動きにつなげました。〈C〉上
場企業以外では、従来のバルカーと並行して他船種への取り組みとしてすでに今治造船が超大型コンテナ船建造に踏
み切ったほか、大島造船所が3,000TEU型以下のフィーダーコンテナ船を開発したことを明らかにしました。常石造船で
も、新規船種として2,700TEU型コンテナ船とLR(ロングレンジ)1型プロダクト船の開発を進めています。サノヤスの首脳
も9月末の定例会見で、バルカーマーケットが厳しい中で、他船種の検討を行っていることを紹介しました。ヤード特性
などにより、おのずと船種は絞られるとし、技術伝承などの観点からも、実績のあるタンカーが候補の一つとなってい
ます。
◆鉄鉱石スポット最安値 ≪金融危機後、l㌧43-44㌦≫鉄鉱石のスポット(随時契約)価格が一段と下落し、2008年の
金融危機後の最安値を更新した。指標となるオーストラリア産の中国向け輸出価格は11月下旬時点で1㌧43-44㌦。直
近の高値を付けた9月上旬に比べ26%安い。7月に付けた年初来の安値を下回った。最大輸入国の中国で鉄鋼生産の減
速感が強まり、鉱石需要が鈍るとの観測が広がった。世界鉄鋼協会によると、10月の中国の粗鋼生産量は約6,612万㌧
と前年同月比3%減。中国国内では鋼材価格の安値が続き、資金繰りに行き詰まった中小規模の製鉄所の操業停止や
閉鎖が相次いでいる。中国の鉄鉱石在庫も再び増えている。今年半ば以降は港頭在庫が7千万㌧台にとどまっていた
が、11月に入り8千万㌧を上回る水準が続いている。「製鉄所の稼働が鈍り在庫消化が遅れている」(大手商社)。同国の
鉄鉱石輸入量も10月は前年同月比5%近く減った。中国では冬場にかけて鉄鋼の需要産業である建設業の工事量が減
る。国際価格の下落で鋼材の輸出環境も悪化しており、中国の粗鋼減産に拍車がかかるとの見方が強い。
◆造船この1カ月<上> ≪海洋工場、世界同時不況、高付加価値への挑戦が軒並み苦境≫韓国造船所が史上最悪の
赤字決算に陥り、日本でも総合重工が軒並み赤字決算に下方修正している。原因の大半は、海洋関連の工事だ。理由は
様々だが、共通しているのは、相次ぐ設計変更などに伴う工程の遅れ。海洋独特の慣行に対して、造船所がとっていた
リスク管理も効果が薄かった。造船所が海洋産業から利益を生み出すことは不可能なのだろうか。≪世界中で採算悪
化≫司会 ここ数週間、造船所の業績で悪いニュースが相次いでいる。特に重工系が酷い。― 韓国大手は史上最悪
の決算だ。1-9月期の税引前段階での赤字額は、大宇造船海洋が5,300億円、現代重工が1,500億円、サムスン重工が1,6
00億円だ。赤字の規模でみれば、過去の造船不況期よりもはるかに悪い。― 全て原因は海洋だね。経営危機に発展
している。― 日本でも、IHIがドリルシップとFPSO(浮体式原油生産積出設備)の船体工事の遅れで、今期の海洋部門が
310億円の赤字に陥る見通しになった。三井造船は子会社の新潟造船の作業船で混乱し、船舶部門が今期は10億円の
赤字。川崎重工も作業船とドリルシップ船体の延期で、30億円の赤字になる見通しだ。― 具体的な赤字額は出ていな
いが、三井造船のFPSO船体も赤字だったと聞くし、JMUの支援船も想定より採算が悪化して苦労しているようだ。三菱
重工業も客船だけでなく、物理探査船も赤字だ。韓国ほどではないにしても、日本も海洋関連は全て赤字になってい
る。― ノルウェーの造船所が、海洋作業船のキャンセルで倒産に直面という発表も見た。作業船大手のヴァルドも、今
月発表する1-9月期決算が大きく悪化することを事前に公表している。こうなると、海洋関連の造船所は、「世界同時不
況」と言ってよい。掘削リグ、生産用のFPSO、作業船、全て悪化している。― 唯一黒字を出しているのは、シンガポール
の2大ヤードくらいだろうか。大幅な減益だが、高い利益率は維持している。≪造船所が受注を急いだせいか≫司会 海
洋は成長市場だったはずだが、これほど悲惨な状況になっているのはなぜだろう。原油価格下落が影響しているのだ
ろうか。― 大きく見れば影響はしているだろう。ただ個別に見ていくと、赤字の理由はさまざまだ。工程が遅れて挽
回のための費用が増えたり、見積もりのミスで調達費用が膨らんだり、納期延期やキャンセルで損失につながった例な
どがある。― ただ共通点もある。造船所によって程度の差はあるが、見積もりが甘かったり、建造計画が詰められて
いなかったり、受注時点での見通しのミスがあったという面が響いている。― 韓国の場合は、受注を焦り過ぎたとい
う点が指摘されている。当時は大手3社が食べていけるだけの案件があったにも関わらず、海洋での実績を高めるた
めに3社間で競争が激化して皆が受注を急ぎ、後でほころびが出てしまったという分析だ。― 日本も同じような部分
はあると思う。多くの造船所が受注時に、損失覚悟だったのは事実だ。“勉強代”とか、市場参入のための“切符代”とも
言っていた。三菱重工の客船のように、後続船の建造まで含めてトータルで利益を出すような作戦だったところもあ
る。― ただ勉強代にしては、想定よりもはるかに高過ぎたということだろう。― うん。IHIの斎藤保社長も「甘かった
面がある」と話していた。― 日本はリスクを抑えるために船体だけの建造にしたはずだが…。― リスクを抑えたか
らこそ、この規模の赤字で済んだのでは、という意見もある。韓国のような1,000億円規模の赤字は回避したわけだか
ら。― 金額が大きすぎて麻痺してきたよ。それにしても、IHIが海洋で苦戦し、三菱重工が客船で混乱しているという
のは、10年少し前に見たのと全く同じ光景だ。― そもそも海洋で皆が赤字と言うのも過去何度も見た光景だ。≪構造
上の問題か≫司会 だけれど、これほど多くの造船所が一斉に赤字になっているのを見ると、果たして造船所側の落
ち度だけが問題なのかという気もしてくる。― 三菱重工の技術不足とか、IHIの経験不足とか、韓国の過当競争体質と
か、造船所側の体制を問題視する意見は多いが、そもそも、この海洋や客船のビジネスが構造的にどうなのか、という
疑問はある。― 海洋にも客船にも共通しているのは、客先の仕様確定が遅れたり設計が何度も変更されて、設計が
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いつまでも固まらないということだ。ほとんどの造船所がここをきっかけにして損失を出している。― チェンジオー
ダーは絶対入る、設計は絶対に遅れる。そういうビジネスとして割り切って取り組むしかないのだろうか。― ただ、韓
国は契約書を事前にかなり作り込んで、チェンジオーダーに伴う追加コストを船主負担とするような点を明確化してい
たと聞くし、そもそも造船所負担の上限を設けていたという話しも聞いた。米国で技術者も大量に育てて、エンジニア
リング会社も使うなど、考えられることは相当やっていたように見える。それでもあれほどの赤字を出した。もう造船
所が決して利益を出せないような構造なのではないか。― 韓国造船所は少し前まで、ドリルシップで相当高い利益
率を出していた。― それも、掘削需要が高いので、顧客が早く欲しかったからではないか、という見方もあるね。―
いずれにしても、1件で数百億円-千億円単位の赤字が発生するリスクがあると、他の利益は吹き飛ぶし、会社ももたな
い。― 契約を作り込んでいても、最終的には現場判断で進めるしかない部分は多い。そうすると、工事を一刻も早く
前に進めるために要望を飲まないといけない場面もある。もともと海洋は短納期だ。それに、船主に対して強気に出れ
ないのも事実だ。― 韓国は造船所が協力して船級やオイルメジャーと共に、仕様の標準化などに取り組み始めた。効
果はどこまで上がるだろうか。― 気になるのは、最近のキャンセルだ。設計変更で工程が遅れて、損失が出るだけだ
けでなく、納期遅れを理由に解約されてしまっている。現代重工やサムスン重工が、ほぼ完成している段階でリグとドリ
ルシップのキャンセルを受けている。― 完工して引き取りの通知を出したのに船主が取りに来ず、解約通知が来たと
いう。ほとんどマーケットクレームではないかという気がする。こんなことがまかり通る事業なら、リスク管理も何もでき
ない。― 実際に何が起こっているのかはわからないが、過去にも、油価が下がったからといって、FAX一枚でキャンセ
ル通知という例はあったと聞く。― 発注者の力が絶対的というのは一般商船も同じだが、お互い話し合える土壌が
海運業にはある。海洋産業はその点が少し違うような印象を受ける。― 愚痴を言っていても仕方がない。持続可能
性がある形に持っていくには、ヤード側が結束するしかないのではないか。
◆造船この1カ月<下> ≪新造船価がじり安、バルカーは値付かず、国内造船は様子見≫新造船価が下落基調となっ
ている。ドライバルク市況の低迷からバルカーは値が付かない状況で、わずかに案件のあるハンディサイズでも水面下
では成約を大幅に下回るオファーが相次いでいる。好調だったタンカーにもバルカー需要低迷の影響が広がっている。
手持ち工事を確保していない中国造船所がVLCCで相場を大きく下回る安値オファーを出しているようだ。こうした状
況を受けて国内の造船所にはしばらく受注を手控えて、次の受注機会を待つ動きも広がっている。≪タンカーでも安値
オファー≫司会 新規制適用まであと2カ月を切ったが、新造船の商談はどうだろうか。― 新規制前の新規商談は一
段落した。年内に起工しなければいけないので、資機材の発注なども済ませた造船所が多い。これからは起工ラッシュ
になりそうだ。― 一方、新共通構造規則(調和化船体構造規則:H-CSR)や窒素酸化物(NOx)3次規制をフル適用した
船型の商談はなかなか進んでいない。規制フル適用の新船型の開発を完了した造船所も続々と出てきているが、顧客
の反応は鈍いようだ。― NOx3次規制対瓜こ伴う燃費悪化を懸念する声も大きいし、造船所の提示する船価も建造コ
ストが上昇する分だけ割高にならざるを得ない。― ドライ市況が低迷するバルカーはもちろん、市況が好調なタンカ
ーでも商談は減速気味のようだね。― バルカーの商談停止で手持ち工事が確保できていない中国造船所などが、
タンカーの営業にシフトして安値のオファーを提示しているようだ。― 極端な例かもしれないが、中国民営造船所で
はVLCCで8,000万㌦台前半というオファーもあるようだ。直近に表面化した成約例よりも1割以上安値になる。― “底
値買い”を狙って発注に意欲を見せる海外船主がいるのも事実で、日本の造船所にも話はあったが、船価の面で話に
ならなかったようだ。― ただ、具体化した成約はない。いくら中国造船所でもその船価では赤字が避けられないだろ
う。― 油濁のリスクが大きいタンカーで、安値とはいえ船主が実績の少ない造船所に発注することに懐疑的な見方
もある。少なくとも中長期的に保有・運航を考えているタンカー船主やオペレーターは中国ではなく、韓国や日本での
建造を選ぶだろう。アセットプレーを前提とした船主やファンドでも、建造実績の少ない造船所の船がすんなり売れるの
かどうかは不透明だ。― タンカーのプライスリーダーの韓国造船所が安値受注には踏み切れないため、船価は値崩
れしていないという見方もある。韓国大手は、海洋案件による巨額の損失があり、商船でも赤字を出すわけにはいかな
い。― とはいっても、日本の造船所と比べて期近な船台にもまだ空きもあるとみられ、受注目標にも達していない。
背に腹は代えられない面もあるのではないだろうか― 今年は好調なタンカーだったけど、今後は不透明感もある
ね。司会 タンカーですらそんな状況だとすると、バルカーでも安値オファーが相次いでいるのだろうか― 安値が
相次ぐというよりは、値が付かないといった方が正しいかもしれない。船主と造船所が提示する船価には大幅な乖離
がある。オーナーにしてみれば、ドライ市況に回復の兆しが見られない中、バルカーは安値でなければ発注する理由が
ない。現在の中古船価に比べると、新造船価は割高だ。一方、造船所は新規制対応に伴う建造コストの上昇もあり、これ
以上船価は下げられない。― 中大型バルカーと比べると、プレイヤーも多く、老齢船の比率も高いハンディサイズは
新造案件自体はなくはない。ただ、水面下のオファーとしては2,000万㌦を下回ってくるようなものも多いという。―
昨年のピーク時は2,500万㌦前後での成約もあったから、最大2割近く下落していることになるね。― ハンディサイズ
・バルカーの大半は、国際船級協会連合(IACS)のH-CSRの対象外になり、新規制が適用された7月以降でも商談を進め
やすいはずだったが、受注環境としては良くなかった。消耗戦になっている。― オペレーターの経営不振などもあり、
船主側も新造船でなくとも市場から中古買船や用船を通じて新鋭船を安値で調達できる。また、新造リセールを前提
とした案件も一定数あり、コストの安いリセール案件も売りに出される。― NOx3次規制はいずれ対応しなくてはなら
ないが、将来のリセールバリューを見込んで新規制に対応した船型を発注しようという動きはまだしばらく出てこない
かもしれないな。≪日本の造船所は慎重姿勢≫司会 こうした状況の中、造船所はどのような方針をとっているのか。
― 日本の造船所は一昨年来の受注で一定量の手持ち工事を確保しているため、無理に受注を進めず、様子を見な
がら受注機会を探っている。― いくら円安とはいってもこの船価で受注を進めるのはリスクも大きい。鋼材価格は落
ち着いているものの、人手不足の影響もあり、舶用メーカーから供給を受ける機器類の価格が上がっている。― ハン
ディサイズなどの小型船型を主力としている造船所は、当初の予定では18年いっぱいまで線表を進める計画だったと
ころもあるが、想定していたよりも手持ち工事は短くなっている。ただ、18年初めから半ばまでは工事を確保しており、
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当面様子を見極められる状況だ。― 建造隻数の少ないヤードにとっては、1隻の受注が命取りになることもあり、慎重
にならざるを得ないだろう。― 日本の造船所は韓国や中国に比べると、線表は圧倒的に進んでいる。中型以上の船
型を建造する造船所は2018年いっぱいまで埋めた造船所も多く、まだ18年納期の船台を残すところでも概ね18年後
半までは進めている状況だ。― 統計上の数字からも手持ち工事が潤沢なことがみてとれる。日本船舶輸出組合によ
ると、日本国内の造船所の輸出船契約は1-9月で1,537万総㌧。既に昨年の年間受注量を上回り、リーマン・ショック後最
高を更新した。今年はH-CSRとNOxの2つの新規制が重なり、ドライ市況低迷下にあっても受注量は大幅に増加した。―
ここ数年の受注状況を振り返ってみると、日本の造船所は2013年、14年と2年連続で1,400万総㌧以上を受注してい
る。13年は円高修正やエコシップブーム、14年には船内騒音規制適用前の駆け込みなど時流にうまく対応できた。―
造船ブーム期の年間受注量は、03年が2,676万総㌧、04年が1,952万総㌧、05年が1,398万総㌧、06年が2,659万総㌧、0
7年が2,472万総㌧、08年が1,943万総㌧。仮に10月以降も月間150万総㌧ペースの受注が続けば、今年は年間2,000万
総㌧弱となり、04年、08年とほぼ同水準になる。― ただ、日本の造船所は今後の商談では18年後半から19年納期以
降の納期での商談となることから、納期の面で韓国や中国に比べて不利になる。― 最近ではMISCグループのAETタ
ンカー向けの中型タンカーの新造商談が決着したが、日本の造船所は期近の納期が合わず、サムスン重工業と現代重
工業に受注が決まった。― AETは日本の造船所での建造実績も多く、日本の造船所にも広く話があった。ここ数年で
アフラマックスの受注があるのは、住友重機械、名村造船所グループ、常石造船だが、このほかに今治造船や三井造船
にも声がかかっていたそうだ。― タンーは市況が好調だから、期近な納期を要望する船主が多い。日本の造船所で
建造したいという思惑があっても、やはり韓国に流れてしまう。― 韓国造船所の受注攻勢はまだまだ続きそうだ。現
代尾浦造船を中心として現代重工業の受注が際立っている。特に現代グループは年間の建造量も多いので、まだまだ
受注できるだろう。― 現代尾浦は今年8-9月にかけて30隻近い新造船を受注している。いまだ数多くの受注が表面
化している。― それが落ち着くまではなかなか日本の造船所の受注環境は厳しいかもしれないね。
◆18年船台を埋める発注はあるか{記者の視点} 中型タンカーの新造船価相場が10月最終週、下落に転じた。国際
ルール改正に伴う新造船駆け込み発注が発生したことにより、年前半はじり高基調が続き、駆け込み発注が終わった7
月以降はやや弱含みながら横ばいで推移してきた。この現象が意味するところを探ってみたい。タンカー市況が昨年
末、5年続いた低迷のトンネルを抜け回復・上昇したのを受け、今年前半の新造船マーケットはタンカーが主役となった。
新たな国際ルール「H-CSR(調和共通構造規則)」が7月1日以降、タンカーとバルカーの契約船に適用され、鋼材重量増
加に伴い建造コスト・燃費性能が影響を受けるのを避けようと、6月までに新造船の駆け込み発注が発生した。駆け込み
発注は、ドライ市況低迷を受けバルカーが不発に終わった半面、運賃市況が好調なタンカーで盛り上がった。夏場以降
は反動で、タンカーの新造発注は世界的にほぼ止まった。その影響により、まずVLCC(大型原油タンカー)の新造船価
が小反落。そして、10月最終週、横ばいで推移してきたスエズマックス、アフラマックスがそろって小幅下落した。マーケ
ット筋によると、足元の新造船価レベルは、VLCC9,500万㌦、スエズマックス6,350万㌦、アフラマックス5,230万㌦。建造
ヤードの船台が一定程度埋まっているため、目先は急落することはないにせよ、発注が止まった影響により気配値先
行でじり安基調が続くことが予想される。訪日したギリシャ船主などからは「これだけタンカーが新造発注されて、なぜ
船価が下がるんだ?」との声が上がっているという。タンカーの新造引き合いは、実需筋のインダストリアル・キャリアの
一部に、新規則フル適用で既存船のリプレース(代替)発注をする意欲があるなど、皆無となったわけではない。しかし、
数から見ると、そうした案件は例外に属することになるだろう。その結果、バルカ一に続き、タンカーも新造発注はほぼ
止まることになる。一方、IMO(国際海事機関)によるNOx(窒素酸化物)3次規制が2016年1月1日以降の起工船に適用さ
れるのを受け、これを回避しようと今秋、コンテナ船、ガス船、自動車船などで新造駆け込み発注が発生した。全容が姿
を現すのは来年に入ってからとなりそうだが、10日付本紙1面で報じたようにコンテナ船の駆け込み発注が11月第1週、
一挙に21隻表面化した。駆け込み発注はその陰に、来年以降の反動減を伴っていると踏んで、まず間違いはないだろ
う。韓国・中国の17年後半の船台は、この秋の駆け込み発注である程度埋まるかもしれない。しかし、年が明けたら、18
年船台を埋めにかからねばならない。だが、新造船マーケットに魚は泳いでいるだろうか。新造船価が下がるとき、海
運市況もいいはずがない。この冬の寒さは、ひとしお身に染みるものとなるかもしれない。
◆造船支える中国人材 ≪川重やツネイシ進出から10年超、技術蓄積 日本に技能工≫中国で造船所を展開する日本
企業が中国人材の活用の幅を広げている。川崎重工業の中国合弁は、製造現場の技能者を団塊世代の大量退職で人
材不足感が強まる日本の拠点に派遣。ツネイシホールディングス(広島県福山市)の中国子会社は設計力を高め、コスト
競争力に磨きをかける。両社はいずれも10年以上前に中国に進出しており、現地の技術力は着実に向上している。受注
環境に陰りが見えるなか、中国人材の活用で「荒波」に挑む。≪基本設計の一部も担う≫ 中国の大河、長江沿岸。飛び散
る火花をものともせず、中国人従業員が溶接作業に没頭する。川重と中国国有海運大手、中国遠洋運輸(COSCO)グル
ープの造船合弁、南通中速川崎船舶工程(NACKS、江蘇省)。2014年度にばら積み船など18隻を送り出した。川重の日本
の主力拠点、坂出工場(香川県坂出市)の2隻を大きく上回る。1995年の設立以来、建造した船は100隻以上。ものづくり
のノウハウは蓄積され、「溶接や曲げ加工などは日本よりも優れているだろう」とNACKSの水野雅方総経理は自信を見
せる。坂出工場にかねて技能実習生として年20-30人を派遣してきたが、現在は約70人に増えた。世代交代で熟練工
が抜けて人材が不足しがちな坂出工場の貴重な戦力だ。NACKSは07年に同社がCOSCOグループと出資する形で設立
した大連中速川崎船舶工程(DACKS、遼寧省)の立ち上げも支援した。「かつて日本で研修を受けた中国人が今度は指
導する立場になった」とDACKSの杉崎公俊常務副総経理は話す。今も30-40人を派遣しており、半分は部長以上の幹部
として力を発揮する。常石集団(舟山)造船(TZS、折江省)を03年に設立したツネイシホ ールディングス。TZSはばら積
み船など100隻以上を建造するツネイシの主力拠点に育ったが、もう1社、頼れる会社がある。上海に拠点を置き、約240
人が働く設計子会社だ。同社が開発した設計の自動化ソフトは日本の拠点でも採用、グループの設計効率化に一役買
う。これまで日本で手掛けてきた設計の基礎となる「基本設計」の一部も、中国側で始めた。日本の設計部門の「下請
け」を脱し、自ら顧客と向き合って設計した船を現地で建造する。そんな一貫体制が構築できれば、コスト競争力は一段
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と増す。両社が中国に拠点を置く狙いは日本の3分の2程度の人件費の安さにある。川重の15年4-9月期の船舶海洋部
門の営業損益は31億円の赤字だったが、川重の船舶海洋カンパニートップの村上彰男常務は「NACKSには業績面で非
常に助けてもらっている」と話す。好不況の波が押し寄せるのが常の新造船市場だが、この2年ほどは環境規制の強化
などを受けて需要が堅調だった。しかし、中国景気の減速で、ばら積み船の運賃が下落するなど、海運市況は低迷。船
舶を保有する船主の発注意欲も減退してきた。56年から99年まで40年あまり、建造量で世界一を誇ってきた日本勢も
今や中国勢や韓国勢と激しい受注競争を繰り広げる。大手でも三菱重工業が10月1日に祖業の長崎造船所(長崎市)か
ら商船部門を切り離すなど、抜本的なコスト構造改革に踏み出す企業も出てきた。そうしたなかで、中国拠点に活路を
求める川重とツネイシ。人件費の上昇が続く中国ではいずれ「安さ」だけでは勝負ができなくなる。日本政策投資銀行
で造船市場を分析する大久保康三氏は「今後は中国の船主のニーズを現地で拾えることが長期的な強みになる」と
見る。その強みを最大限引き出すにはこれからも現地人材を育て、生かす取り組みが欠かせない。
Ⅲ.世界・各国造船業の動向
◆世界の新造発注/今年1,200隻突破 ≪タンカー・コンテナ船積み上がる≫2015年の世界の新造発注が1,200隻を突
破した。国際ルール改正により建造コストや燃費性能が影響を受けるのを回避しようと、運賃市況が堅調なタンカー、船
型大型化が進むコンテナ船で発注が積み上がった。この10月をピークに発注された新造船の大半が表面化してくるの
はこれからで、今年の新造発注はさらに増える公算。海運業界ではこれら新造船のデリバリーが集中する17年以降の
海運市況への影響を懸念する向きが強まりそうだ。造船業界はルール改正に伴う需要先食いによる反動減、中国・韓国
の設備過剰下での新造船価への影響が懸念される。≪国際規則改正が影響≫15年の世界の新造発注は11月11日現在、
本紙集計で1,253隻(オプション、転売含む)。7月1日以降のタンカーとバルカーの契約船に新たな国際ルール「H-CSR
(調和共通構造規則)」が適用され、鋼材重量の増加により建造コスト・燃費性能が影響を受けるのを避けようと、6月ま
での年前半に新造船の駆け込み発注が発生した。加えて、IMO(国際海事機関)によるNOX(窒素酸化物)3次規制が16年
1月1日以降の起工船に適用されるのに伴い、摘用を回避しようと新造船の駆け込み発注が10月をピークにコンテナ船、
ガス船、自動車船で発生した。主な船種別内訳は、タンカー424隻、コンテナ船311隻、バルカー141隻、ガス船51隻、自動
車船(PCTC)56隻。主な船型別でみると、タンカーは、原油船がVLCC(大型原油タンカー)63隻▽スエズマックス60隻▽
アフラマックス80隻。プロダクト(石油製品)船は、LR(ロングレンジ)2型36隻▽LR1型51隻▽MR(ミディアムレンジ)型66
隻。ケミカル船は68隻。足元のタンカー市況は、新造船の供給圧力が低く船腹需給がタイトなため、冬場の需要期の船
腹手当てに入った原油船が好調で、年明けに向けて上値を追う展開が予想される。ただし、発注済み新造船をめぐって
は、欧州船社ユーロナブが10月、VLCCのオプション4隻を行使しないと公表。ケミカル船では4隻のキャンセル(解約)が
発生するなど、市況の先行きへの警戒感が広がっている。コンテナ船では、世界最大船型となる2万TEUクラスが67隻
発注された。この船型が投入される欧州航路はすでに厳しい運賃レベル。定航世界首位のマースクラインは最近、1万9,
630TEU型6隻のオプション、3,600TEU型2隻のオプションをそれぞれ行使しないことを決めた。また、1万4,000TEU型8
隻のオプション行使は延期した。バルカーの主な船型別内訳は、ケープサイズ15隻▽ポストパナマックス8隻▽カムサ
マックス・パナマックス17隻▽ハンディマックス20隻▽ハンディサイズ81隻。ドライ市況低迷が続くなか、投資しやすい船
型であるハンディサイズに年前半の駆け込み発注が集中した。ガス船は、大型LNG(液化天然ガス)船26隻、大型LPG(液
化石油ガス)船VLGC25隻。PCTCは、3,800台積み、3900台積みが各2隻で、ほとんどが大型船となっている。
◆初の造船産業国際団体を設立 日本の主導で世界的な造船産業の国際団体が設立される運びになった。日本、韓
国、中国を含め、世界の9割を建造する9カ国の造船工業会などが加盟する「ASEF(Active Ship-builing Experts’Feder
ation)」が26日に総会を開き、発足する。海運団体の意見が通りやすいIMO(国際海事機関)の国際規制の議論で、造船
国の意見発信を強化するねらい。3年内をめどに本部事務局の設置場所を定め、IMOへの発言資格(オブザーバーステ
ータス)の取得を目指す。日本造船工業会と日本船舶技術研究協会が18日、今月26日に中国・南通市でASEF設立総会
(第1回総会)が開かれると発表した。現在IMOでは国際海運会議所(ICS)やタンカー業界の国際団体であるインタータン
コ、バルカー船主で構成するインターカーゴがオブザーバーステータスを既に取得しており、海運は意見を発信できる
枠組みが出来上がっている。だが、造船で意見発信できるのはEU(欧州連合)の各国造工が参加している欧州造船工
業会(CESA:Community of European Shipyards’Association、本部:ブリュッセル)のみ。欧州の造船業は盛んではないこ
とから、有益な意見発信をIMOにできておらず、海運の意見がIMOに通りやすい状態にある。ASEF設立により各国造船工
業会の意見を交換し、造船国の共通見解が得られた見解について、IMOのオブザーバーとして造船業界の意見を発信
していく。また、国際標準化機構(ISO)にもASEFから意見発信する。ASEFのスキームは7年前から船技協と造工が連携
し、日本財団から支援を受けてつくり上げた。従来、ASEFはアジアの造船国が意見を交換する「アジア造船技術フォーラ
ム」の略称だったが、IMOのオブザーバーステータスを取得するためには、世界的な団体であることが必要なため、略
称元の名称を改めた。組織はアジアに限らず世界の造工に開く形にした。将来的には他地域の造工が入ることもあり
得る。ASEFの参加国(組織)は日本造船工業会、韓国海洋造船工業会、中国船舶工業行業協会、インド造船工業会、インド
ネシア造船海洋工業会、マレーシア海事産業界、タイ造船修繕工業会、コロンボドックヤード(スリランカ)、ベトナム造船
企業体。代表的な造船工業会が存在しない国は代表的な造船所が参加する(ASEF憲章)。初代会長(任期1年)には日本
造船工業会の村山滋会長(川崎重工業社長)、副会長には韓国、中国の造工幹部、事務局長にはジャパンマリンユナイ
テッドの岩本洋氏が総会の承認を受け就任する予定。本部は設立後1年間は日本造船工業会内に置き、2年目は韓国、3
年目は中国に移設する。その後の本部の場所は3年目終了時までに決める。ホームページ(https://asef2015.com)を2
6日に開設予定。
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◆造船業界が新国際組織/日中韓など9カ国 日本造船工業会(東京・港)などは18日、日中韓を含む9カ国の業界団
体が加盟する国際組織を立ち上げると発表した。日中韓は新造船受注量の9割以上を占める。協調して国際海事機関(I
MO)で有利なルール作りを進める狙いだ。ただ受注活動でしのぎを削る日中韓のメーカーの呉越同舟で、主導権を巡
る綱引きも予想される。26日に立ち上げる国際業界団体「ASEF」には日中韓を含むインドやインドネシア、マレーシアな
どの9カ国の業界団体が参加。初代会長には日本造船工業会の村山滋会長(川崎重工業社長)が就く。約170カ国が参
加するIMOでは各国の投票で、船舶の強度や環境規制などの国際的なルールが決まる。70以上の業界団体などがオブ
ザーバーとして参加するが、造船関連は2団体のみ。海運関連は10団体以上に上り、「維持しやすさを優先し、不必要に
厚い鋼板の利用が求められるなど海運側寄りの意見が多い」と関係者は指摘する。ASEFは3年後にオブザーバー申請
し、メーカーの立場でコストや技術面などから実現しやすい提案や意見を出していく。ASEFの構想は2007年に浮上した
が、オブザーバーの要件を満たす準備に加え、中韓の説得に時間が掛かった。それでも受注の多くを占めるばら積み
船が世界的な過剰で市況が低迷したこともあり、ようやく足並みがそろった。ただ、日中韓のメーカーがどこまで一枚
岩になれるかは未知数との指摘が早くも出ている
◆造船関連で新組織/9カ国参加、会長に村山氏 日本造船工業会と日本船舶技術研究協会は18日、世界9カ国の造
船工業会で構成する新組織「ASEF(アクティブ・シップビルディング・エキスパーツ・フェデレーション)」を26日に設立す
ると発表した。国際海事機関(IMO)の条約制定などに関わる議論に参画し、業界の意向を適切に反映できるようにす
る。会員国で世界新造船建造量の9割以上を占める大規模団体となり、造船関連の条約・規制の制定に一定の影響を与
えそうだ。26日に中国江蘇省で開催する第1回総会で正式に発足する。日本、韓国、中国、インド、インドネシア、マレーシ
ア、タイ、スリランカ、ベトナムが参加する。初代会長には、造工会の村山滋会長(川崎重工業社長)が就任する。IMOや国
際標準化機構(ISO)、国際船級協会連合(IACS)の議題に対し、業界団体としての意向を提案する。現在、IMOの会議へ正
式参加を目指し、オブザーバー資格の取得申請を行っている。
◆「従来予想よりも回復に時間」 ≪世界造船首脳会議、過剰船腹への懸念表明≫造船5極(日本、欧州、中国、韓国、米
国)の主要造船所の経営者が一堂に会する「JECKU造船首脳会議」が4-6日に中国の広東省中山市で開催された。各国
の造船を代表して123人が参加した。過剰船腹による市況低迷や下落への懸念が示され、造船業の回復について「過去
の見込みよりも長い時間を要する」との見解で一致した。今年のJECKUには日本からは、日本造船工業会の村山滋会長
(川崎重工会長)や、副会長を務める住友重機械工業の日納義郎相談役、三井造船の加藤泰彦会長、三菱重工業の大
宮英明会長、ジャパンマリンユナイテッドの三島愼次郎社長、今治造船の檜垣幸人社長、新来島どっくの門田尚社長、大
島造船所の南尚代表ら25人が出席した。韓国からは21人、中国は63人、欧州は12人、米国は2人が出席。世界経済や造
船市況などについて討議した。次回の首脳会議は来年秋に韓国の慶州で開催予定。【JECKU議長声明概要】◇ 世界経
済はゆるやかに回復しているが、地域の経済成長は大きく異なる。世界貿易の成長は遅く、海運業界は厳しい状況のま
まだ。造船業回復には過去の見込みより長い時間を要する。◇ 日本造船業の受注残は継続して増加し、タンカーが受
注の大きなシェアを占める。中国は竣工量が安定しているが、受注は今年劇的に減少した。韓国は竣工が減少し、受注
船が多様化している。LNG燃料船は海運業の将来トレンドになりうる。◇ 原油タンカー市況が活況を呈しているが、来年
の多大な竣工が、将来の市況に大きな圧力をもたらす見込み。バルカー市況は過剰船腹と低運賃によって下落してい
る。コンテナ船は大型化傾向が明らかとなっており、過剰船腹によって2016年の市況回復が妨げられる懸念がある。LN
G船の過剰供給は用船料低下と用船期間の縮小をもたらす。クルーズ船市況の将来は明るい。◇ 世界貿易の成長は年
初から減速し、将来の回復には多くの不確実性が存在する。過剰建造能力と、受注残の多さは、将来の造船需要に負の
影響をもたらす。造船所でも稼働率低下が生じている。オフショア構造物を建造するための能力の一部が造船に回帰
するだろう。◇ 世界経済の回復にはより長い時間を要する。世界造船業は一層の回復を未だ必要としており、諸課題
を打開するため、すべての当事者による情報共有と、建設的な意見交換を行うことに合意した。
◆「造船業回復なお時間」 ≪JECKU 中国会合で議長声明≫日本、欧州、中国、韓国、米国5極の主要造船経営者に
よる造船首脳会議(JECKUトップ・エグゼクティブ・ミーティング)の第24回会合が今月上旬、中国広東省中山市で開か
れた。今回は造船会社首脳や業界団体関係者123人が参加。議長声明では、世界貿易の成長が遅く海運業界は厳しい
状況が続くため、会議出席者の共通認識として、造船業界の回復には過去の見込みと比べて長い時間を要すると指摘
した。議長声明では船種別の造船市況について、石油価格の低下により原油タンカー市況が活況を呈しているものの、
来年の多大な竣工が将来の市況に大きな圧力をもたらす可能性を懸念。コンテナ船に関しては1万TEU超型の竣工が2
013年以降大幅に増え、船型大型化の傾向を示すほか、過剰船腹により16年にコンテナ船市況の回復が妨げられる可能
性があるとの見方を示した。原油価格の低下によりオフショア構造物、オフショア支援船の市況が大幅に悪化したこと
も付け加えた。各国・地域の造船業の状況については、日本では受注残が継続して増加し、タンカーが新造契約で大き
なシェアを占めると紹介。欧州は受注残がわずかに増え、その60%は客船で構成、中国の竣工量は安定しているもの
の、今年の新造船契約は激減すると説明した。韓国は竣工量減少と受注船種の多様化がみられると指摘した。次回の
第25回会合は、16年秋に韓国・慶州で開催される予定。
◆日本の受注シェアが3割に回復 ≪IHSの1-9月統計、世界で6,188万㌧≫IHS(旧ロイド)統計速報値によると、2015年1
-9月の新造船受注量は、1,573隻・6,188万総㌧で、前年同期比11%減(総㌧ベース、以下同)となった。総㌧ベースで日本
が韓国に次ぐ受注量となり、シェアが29%に達した。日本の受注シェアが3割近くになるのは造船ブーム初期以来とみ
られる。また、新規制前の駆け込み発注の反動などで今後の新造発注は急減速する懸念が強くなっているが、「タンカ
ーはトレードの環境が変わらなければ、一定の新造需要を今後も期待できそうだ」(IHSマリタイム&トレード、以下同)と
の見通しを示した。受注量はIHS統計1-6月の確定値と7-9月の速報値の合計。仮にこのペースが続けば年間8,000万総
㌧超となる。新共通構造規則(H-CSR)や窒素酸化物(NOx)3次規制の新規制を回避する駆け込み発注もあり、高水準と
なっている。国別の受注量をみると、日本が前年同期比5%増の392隻・1,813総㌧、韓国が12%増の224隻・2,122万総
㌧、中国が41%減の500隻・1,695万総㌧。シェアはそれぞれ29%、34%、27%で、ここ数年トップシェアだった中国が3位
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に転落した。主力とする船種の差が顕著に表れており、バルカーを主力とする中国は苦戦が続いている。日本は円安の
追い風に加えて、バルカー以外の船種の受注も積極的に進めた。船種別にみると、コンテナ船が233隻・2,253万総㌧、
タンカーが316隻・1,906万総㌧、バルカーが312隻・1,275万総㌧、ガス船が65隻・411万総㌧だった。コンテナ船とタンカー
が多いのが特徴で、昨年は全体の過半数を占めていたバルカーが大幅に減少した。IHSのアナリストは今後の発注動向
について、有望な船種としてタンカーを挙げ、「発注残は多いものの、原油価格の安値や製油所の高い稼働率が続け
ば、今後も新造需要を期待できる」との見通しを示した。コンテナ船については「足元のマーケットが低迷している上に
発注残も多い。ただ、アジア/米国トレードの伸びやアジア/欧州トレードに若干の回復が見込めるとの予測から、いく
らかの発注を期待している」とした。バルカーは「来年竣工予定の新造船も多く、需給面で大幅な改善が見込めないこ
とから、発注も期待できない」と指摘。ドライバルク市況については、「少なくとも1年は大幅な改善が見込めないだろ
う。竣工の遅延や解約はあっても、根本的な供給過剰は解消されない。船齢構成をみても、今後のスクラップは多くな
い」とした。竣工量は世界全体で計2,040隻・5,450万総㌧で、前年同期比9%増となった。日本は2%増の398隻・1,090万
総㌧、韓国は9%増の288隻・1,856万総㌧、中国は13%増の690隻・2,014万総㌧。建造量では中国が首位を維持してい
る。9月末時点の世界の手持ち工事量は計6,188隻・2億1,067万総㌧(1億1,319万CGT)で、1年前と比べて総㌧ベースで
若干増加した。日本は991隻・4,228万総㌧、韓国は834隻・6,527万総㌧、中国は2,418隻・7,912万総㌧で、6月末時点と比
べて日本の増加が顕著だった。2014年の竣工量をベースにすると、手持ち工事量は約3.3年分に相当する。
◆アジア造船業の国際団体発足 ≪「ASEF」が設立総会≫初の造船業の国際団体、「ASEF(Active ShipbuiIing Exper
ts’Federation)」が発足した。中国江蘇省南通市で26日、設立総会を開催した。日本、韓国、中国などアジア9カ国が加
盟。初代会長に日本造船工業会(造工)の村山滋会長(川崎重工業社長)、事務局長にジャパンマリンユナイテッドの岩本
洋氏が就任した。当初1年間、本部は東京の造工内に置く。日本財団の支援を受けて日本船舶技術研究協会(船技協)と
造工が中心となって各国に呼び掛け、長年追及してきた日本主導によるアジア造船業の共同体の取り組みが結実し
た。今後はIMO(国際海事機関)の場で、造船の意見発信に努めていく。造工、韓国海洋造船工業会(KOSHIPA)、中国船舶
工業行業協会(CANSI)、インド造船工業会、インドネシア造船海洋工業会、マレーシア海事産業界、タイ造船修繕工業会、
コロンボドックヤード(スリランカ)、ベトナム造船企業体が加盟した。初代の副会長には韓国KOSHIPAのソ・ヨン・ジュ氏、中
国CANSIの陳民俊氏、理事に造工の木内大助専務理事、韓国KOSHIPAのカン・サ・ジュン常務理事、中国CANSIの金鵬秘書
長、技術代表に日本から北村欧氏(三菱重工業船海エンジニアリング部主席技師)、韓国リ・ジョン・カプ氏、中国・呉嘉蒙
氏が就任した。本部と事務局機能は当初3年間、「トライアル・ピリオド」として、日韓中3カ国が持ち回りで担当。当初1年
を日本、次に韓国、3年目を中国が務める。設立総会で村山会長は「『技術フォーラム』として生まれた組織が本日、新AS
EFとしてスタートした。アジアの造船業を構成する各国が親しい友人として手を取り合い、海事産業に有益な行動をす
る。今後もともにサポートと協力を続けていこう」と述べた。岩本事務局長がIMOの発言資格(オブザーバーステータ
ス)にあたる「IMO-NGO」の取得を目指す公式宣言を示したほか、1年目の業務計画などを決議した。総会後には第1回理
事会と設立セレモニーが行われた。セレモニーでは記念のテープカットや日本酒の鏡割りも行われた。各国の造船業界
の重鎮たちが酒を酌み交わしながら、交流を深めていた。同日にはASEFのホームページ(https://asef2015.com)もス
タート。第2回総会は来年11月、東京で行われる予定だ。≪長年の取り組みが結実≫IMOでは、海運から国際海運会議所(I
CS)やタンカー業界のインタータンコ、バルカー船主で構成するインターカーゴがオブザーバーステータスを持つ一
方、造船は欧州造船工業会(CESA)のみで、国際規制の議論で海運の意見が通りやすい状態だ。建造現場となるアジア
の造船界の声を反映する手法が模索されてきた。今回発足したASEFの基盤は、日本財団の支援を受けて8年前に船技
協と造工が連携して立ち上げた「アジア造船技術フォーラム」だ。国際的な技術課題に対する討論のプラットフォームと
して日本が主導してつくり上げた。以来、今回までに8回のフォーラムを開催。日中韓の造船大国3カ国を中心としたア
ジア造船業の共同体への発展を目指して、船技協の関係者らが長年各国を行脚して立場や思考の異なる各国のコンセ
ンサス取り付けにまい進し、今回ついに国際団体の設立へとこぎっけた。ASEF加盟9カ国で世界の建造量の9割を占め
る。来年には日韓中に次ぐ世界第4位の造船国、フィリピンも加盟する予定だ。セレモニーでは、スキームづくりに奔走し
た船技協に対し、日韓中からそれぞれ記念品が送られた。船技協の松田章会長は「2007年、オリジナル・プロポーザー
としてASEFを立ち上げた。技術のディスカッションの場から始め、国際的に意見表明できる造船団体を目指してきた。非
常に近い将来にはIMOのステータスを取得し、プレゼンスを一層高められると信じている」と話した。船技協からは神林
伸光理事長、田中護史専務理事らも出席した。また総会に先立った25日と26日午前には第9回アジア造船技術フォーラ
ムが行われ、船舶のゴールベース構造基準(GBS)、エネルギー効率設計指標(EEDI)などについて発表が行われた。
◆造船大国・中国/曲がり角 ≪ばら積み船低迷で閉鎖も≫2000年代に入って急成長を遂げてきた中国の造船業界。
川崎重工業とツネイシホールディングスが現地人材の活用で競争力を磨く傍らで、ライバルの中国勢は苦境にあえぐ。
象徴は世界トップを走ってきた船舶受注量だ。今年1-9月の中国の受注量は1,740万総㌧。2,096万総㌧の韓国、1,815万
総㌧の日本を下回り3位に転落した。中国勢が得意とするばら積み船の市況が低迷、一時は3千カ所あったとされる造
船所の閉鎖も相次ぐ。中国政府は一定の技術力を持つ優良企業60社を選び、育成する方針だが、金融機関の中には
「政府がお墨付きを与えた優良企業に対しても融資を渋るケースも出てきた」(業界関係者)。これまで雇用への影響
を懸念して経営不振の造船所を陰に陽に支えてきた地方政府の財政も悪化しており、手をさしのべる余力は乏しい。
「市場原理」で淘汰は進むのか。その行方は供給過剰で低迷する市況にも影響を与えそうだ。
◆中国造船/1-10月受注量6割減 ≪CANSI統計、累計2,000万重量㌧≫中国船舶工業行業協会(CANSI)によると、今
年10月の中国造船業の新造船受注量は前年同月比79%増の222万重量㌧だった。バルカーの新造商談の停止を受け
て低水準だったものの、昨年10月が単月の年間最低だったことから、単月ベースの受注量は13カ月ぶりに前年同月を
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上回った。1-10月累計は前年同期比62%減の2,038万重量㌧となった。竣工量は10月が前年同月比45%増の350万重
量㌧、1-10月累計が前年同期比15%増の3,287万重量㌧としており、昨年に比べて上向いている。手持ち工事量は受注
低迷に伴って減少が続いており、10月末時点で1億3,201万重量㌧で、9月末時点と比べて126万重量㌧減少。1年前と比
べると2,154万重量㌧減少した。重点観測企業とする造船54社の1-10月の受注量は前年同期比63%減の1,865万重量
㌧、竣工量は14%増の3,025万重量㌧、10月末時点の手持ち工事量は14%減の1億2,996万重量㌧だった。船舶関連の
重点観測企業とする88社の1-10月の完成工業総生産額は5%増の3,450億元(約6兆6,300億円)。このうち造船関連が
3%増の1,650億元(約3兆1,700億円)、舶用が8%増の280億元(約5,400億円)、修繕がほぼ横ばいの107億元(約2,050
億円)としている。また、主要事業収入は2%増の2,440億元(約4兆6,900億円)で、利潤総額は36億元(約690億円)で1
6%減少した。
◆韓国造船大手/1~9月期訂正続出、ドリル船・リグ解約で 韓国造船大手で2015年1~9月期連結業績(速報ベース)
の訂正が相次いでいる。現代重工業は10月30日、セミサブマーシブル・リグ(半潜水型掘削装置)1基を納期遅延など
の理由で発注者から解約された損失を反映させるため、同期の業績を見直した。サムスン重工業も今月に入り、同様に
ドリルシップ(掘削船)1隻の解約に伴う貸倒引当金の計上で業績修正を余儀なくされた。同社は韓国造船大手3社の中
で唯一、15年7~9月期に営業黒字を確保していたが、今回の修正により赤字となった。サムスン重工は4日、既に発表済
みの1~9月期連結決算の修正を韓国取引所に告示した。発注者の米パシフィック・ドリリングがドリルシップ1隻を解約した
ため、これに対する貸倒引当金を計上。営業赤字が従来の1兆4,372億ウォンから1兆5,318億ウォンに拡大した。前年同
期は813億ウォンの営業黒字。同時に7~9月期の営業損益も、前回発表の846億ウォンの黒字から100億ウォンの赤字に修
正。前年同期は1,815億ウォンの黒字だった。今回の解約について、サムスン重工は契約通りに建造を終え、その旨を通
知後、発注者が一方的に解約したと説明している。権利保護のためにあらゆる対策を取る予定。現代重工、サムスン重
工の業績訂正により、韓国造船大手3社の1~9月期の営業赤字は現代重工が1兆2,610億ウォン、サムスン重工は1兆5,318
億ウォン、大宇造船海洋が4兆3,003億ウォンとなった。
◆韓国主要造船/1社除き赤字 ≪1-9月期、商船も不採算か≫韓国主力造船所の1-9月期連結決算が出そろった。既
に巨額の損失を公表していた最大手3社に続いて、STX造船海洋と現代三湖重工、韓進重工の中堅3社も税引前段階で
赤字。現代尾浦造船を除く全社が赤字決算となった。海洋だけでなく、一般商船でも不採算になっているようだ。大宇
造船海洋は先月末に公表していた速報値の決算よりも、赤字額がさらに拡大した。税引前損失は、5兆4,351億ウォン(5,
700億円)だった。現代重工グループの現代三湖重工は、税引前損益が4,296億ウォン(450億円)の赤字。商船メーンだ
が、一部で海洋工事も手掛けており、建造中だったシードリル向けの掘削リグが納期遅れを理由にキャンセルされるな
ど、海洋で苦労している。経営再建中のSTX造船海洋は営業段階で黒字化したものの、金融収支が悪化し、税引前は2,6
93億ウォン(280億円)の赤字に転落。韓進重工は赤字決算が継続している。一方、現代尾浦造船は黒字に転じた。海洋
支援船など不採算案件の建造や損失引当が終了したことで、改善したようだ。
◆苦境の韓国造船に再編論浮上 ≪大宇・サムスン合併案も、実現性は疑問≫経営危機が広がる韓国造船業界で、業
界再編をめぐる議論が活発化しているようだ。政府系の韓国産業銀行が管理している大宇造船海洋とSTX造船海洋を
グループ化する案や、産業銀行らが保有する大宇株をサムスン重工に売却して両社を統合し、現代重工との「大手2社
体制」に集約する案なども挙がっているようだ。業界内では「いずれも事情を知らない人が言っているだけで、実現性
は低い」(韓国造船関係者)との見方が大勢だが、一方では造船所への度重なる公的支援・金融支援に対する批判もあ
り、政府や金融機関が造船業再建に向けて、業界再編を強力に推し進める可能性も指摘されている。韓国ではリーマン
・ショック後に新興・中小造船所が次々と経営危機に陥り、ほぼ全社が法的整理や銀行管理へと進んだ。当時から債権金
融機関らが思い描いていた再建プランは、現代重工・サムスン重工・大宇造船海洋の造船大手3社による支援・救済だっ
た。当面の流動性不足を資金面で支援しつつ、大手3社にマネジメントや受注営業などで協力を受けて経営体制を立て
直し、造船の需要回復を待つという筋書き。最終的には大手への合併という構想もあった。かつて経営破綻した漢拏重
工を現代重工が支援し、最終的に「現代三湖重工」としてグループ化した例が念頭にもあったようだ。だがここにきて、
このシナリオが大きく狂った。1つは、造船市況の悪化が長期化していること。そしてもう1つは、盤石と思われた大手3
社が海洋構造物により巨額の損失を計上し、他社の再建を支援するような余裕がなくなってしまったことだ。こうした
中で浮上しているのが、大手も含めた形での再編・集約論だ。現地筋によると、産業銀行が管理している大宇造船とST
X造船をグループ化し、艦艇をSTXに移管するなどの案が囁かれているという。また、産業銀行は大宇に4兆2,000億ウ
ォンの支援を決めたばかりだが、大宇造船株の早期売却方針も示しており、この売却先候補としてサムスン・グループ
の名前を挙げる見方もあるもよう。2大造船所を統合して、大集約を図るという構想のようだ。一連の再編集約論の背
景には、足元の海洋や商船の赤字が、国内造船所間の過当競争にも理由があったという認識がある。韓国内での造船
集約論はこれが初めてではなく、リーマン・ショック直後にも、同国知識経済部が造船集約を望ましいとした内部資料が
出たことがあったが、過当競争体質は政府や金融機関によって問題視されているようだ。ただ、金融主導による造船
再編策はこれまで不調に終わっている。昨年からはSTX造船と成東造船の合併説が浮上したが、再建が比較的順調な
成東造船側の韓国輸銀がこれを拒否して立ち消えになった例がある。大手を含めた形での再編となれば、さらに困難
となりそうだ。一方では、中堅造船所が単独で再建を図るのも厳しくなってきている。現地紙によると、STX造船は社債
償還期限が迫っていることから、17日、追加の金融支援を得るための新たな再建策として、従業員の3割削減と賃金の1
割カットなどを軸とするリストラ策を債権銀行団に提示した。法的整理を回避しつつ、事業規模を大幅に縮小して再建を
図る方策というが、今後の新造船需要の状況をみると、簡単ではなさそうだ。プロダクト船などを得意とするSPP造船
は、再建銀行のウリィ銀行が資産売却に踏み切ることを決めた。造船所への金融支援の規模が膨らみ続ける中で、その
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大半を担っているのが産業銀行や韓国輸出入銀行などの政府系金融のため、韓国内では「血税による支援」として批
判も出ているもよう。このため、「政治的判断で一定の造船グループ化は避けられないのでは」(現地筋)との見方もあ
る。再建中の成東造船では今年、主債権銀行の輸銀が主導し、2019年までに7,200億ウォンを追加支援することを決め
ている。これと合わせて、サムスン重工が今後4年間、営業・購買・生産・技術部門を支援することで合意した。今後造船
の経営危機と金融支援が政治問題化すれば、現実的ではないと思われた再編論が一部で動き出す可能性もありそう
だ。
◆韓国造船/緊縮ムードー色に ≪給与カット拡大、現場人員の削減は回避か≫赤字に陥っている韓国造船業で、給与
カットなどの緊縮策が広がっている。現代重工はグループ全社長の給与全額カットなどを決めた。これまで管理職以上
の職員では希望退職などによる人員削減も進んでいる。この一方で、地元雇用や生産面などへの影響を考慮し、労働
組合員など現場の工員の人員削減は行わない方向だ。現地紙によると、現代重工業は23日、黒字転換するまでグルー
プ全体で「緊縮経営体制」をとることを決めた。当面の間は、親会社を含めたグループ全6社の社長が給与全額を返納
し、役員300人が最大50%の給与カットを行う。また、造船関連の事業・グループ会社では部長級150人が給与を10%カ
ットする。さらに、不要不急の社内外の全イベントや各種研修も黒字化まで暫定的に中止。設備投資も縮小・保留する。会
長以下役員の出張時のフライトをエコノミークラスにするなどの緊縮体制をとる。一連の措置により、年間5,000億ウォ
ン程度のコストを下げる考えだ。既に現代重工では、役職員以上の希望退職や、役員数の削減などを行い、社長も昨年1
1月から給与を全額返納しているが、こうした緊縮策をさらに広げる。大宇造船海洋は、公的支援を受ける引き換えとし
て、自助努力としてのリストラを進めている。資産売却以外に、役員数の縮小と役員の基本給10-20%カットを行ったほ
か、顧問もすべて解職。これに加えて、部長級以上の幹部職員1,300人中300人を削減する。
◆韓国造船大手/商船で受注積み増し ≪1-10月受注高7%減、サムスンは100億㌦≫韓国造船大手3社の今年1-10月
の造船・海洋(オフショア)部門の受注高は計268億㌦で、受注金額ベースで前年同期比7%減となった。ここまで海洋構
造物の受注があるサムスン重工業は100億㌦に達した。また、現代重工業グループもタンカーやLPG船など商船の受注
を伸ばしており、巻き返しを図っている。いずれの3社とも今年後半は、商船中心に営業を進めている。3社グループの1
-10月の受注実績は表のとおり。各社が公表しているIR資料によると、サムスン重工は受注高が100億㌦に達した。ここ
までの受注実績は49隻(コンテナ船10隻、LNG船3隻、タンカー30隻、海洋構造物6基)。10月にタンカー4隻を受注した。
今年前半に大型の海洋構造物の受注が相次ぎ、受注高の6割超を海洋案件が占めている。現代重工の造船・海洋部門
の受注実績は、グループの現代三湖重工や現代尾浦造船を含めて143隻・124億㌦で、前年同期比14%減だった。現代
重工が55隻(タンカー25隻、コンテナ船15隻、LNG船2隻、LPG船11隻、その他2隻)、現代三湖が37隻(タンカー18隻、コン
テナ船5隻、LNG船2隻、LPG船2隻、その他10隻)、現代尾浦が51隻(プロダクト船25隻、コンテナ船2隻、LPG船10隻、自動
車船10隻、その他4隻)を受注した。中小型船を主力とする現代尾浦を中心に8月以降、商船の受注が相次いでいる。大
宇造船海洋は、これまでに30隻(コンテナ船11隻、タンカー7隻、LNG船9隻、LPG船2隻、その他1隻)を受注した。8-9月は
受注がなかったが、10月にタンカー1隻、LNG船2隻、LPG船2隻を受注した。海洋部門で大幅な赤字を計上しており、商船
中心に受注を進めている。
◆韓国造船大手/1-10月受注 海洋低迷で苦戦 ≪サムスン重だけプラス≫韓国造船大手3社(現代重工業グループ、
サムスン重工業、大宇造船海洋)の1-10月期新造船・海洋プラント受注高は、サムスン重工が前年同期実績で唯一プラ
スを確保した。海洋プラントの成約がない現代重工グループ、大宇造船海洋は、それぞれ2桁減。ただ、海洋が苦戦する
中で一般商船の成約は拡大。現代重工グループでは、現代重工の造船(シップビルディング)部門、現代尾浦造船、現代
三湖重工業の個別受注高がそろってプラスを確傑した。現代重工グループの期間中の新造船・海洋プラント受注高は、
前年同期比14%減の124億㌦。一方、現代重工単独の受注高はオフショア・エンジニアリング部門が78%減の11億㌦にと
どまった半面、造船部門は10%増の54億㌦とプラスを確保。現代尾浦は47%増の25億㌦、現代三湖重工も23%増の34
億㌦で、それぞれ2桁増を記録した。サムスン重工の1-10月期新造船・海洋プラント受注高は、52%増の100億㌦。6-7月
に成約した海洋プラント3件(6基)の効果が継続している。一般商船でも、タンカーを中心に成約を伸ばしている。大宇
の期間中の受注高は44%減の44億㌦。10月単月の成約はゼロだったものの、11月に入りVLCC(大型原油タンカー)2隻
を受注した。ギリシャ船主アンジェリコーシス・グループのマラン・タンカース・マネジメント向け。これにより、足元の受注
高は45億㌦規模に達した。
Ⅳ.造船・造機以外の産業動向
◎外航海運
◆ばら積み用船料8割安 ≪前年比 中国の鉄鉱石、荷動き鈍く≫天然資源や穀物を運ぶ外航ばら積み船の需要
が落ち込んでいる。鉄鉱石などを運ぶ大型船の用船料(海運会社が船主に支払う賃借料)は現在、前年の同じ時期に
比べて8割近く安い。世界最大の鉄鉱石輸入国である中国の経済が減速し、荷動きが鈍り、需要期でも異例の安値にあ
る。中小型船を含めばら積み船の供給過剰感は一段と強くなっており、用船料が大きく上昇に転じる兆しほみられな
い。≪需要期でも安値続く≫積載重量17万㌧超の大型船、ケープサイズのスポット(随時契約)用船料は現在、主要航路
の平均で1日あたり約5,800㌦。9月下旬に付けた直近の高値に比べて6割近く下がった。毎年10-12月は中国の製鉄会
社が自国産鉄鉱石の輸送が難しくなる厳冬期に備えて原材料の輸入を増やすため、用船料も上昇する傾向がある。し
かし、今年は需要期に入っても下落基調が続き、海運業界の採算ラインとされる2万-2万5千㌦を大きく下回っている。
中国税関総署がまとめた10月の鉄鉱石輸入量は前年同月に比べて約5%減少し、2カ月ぶりに前年水準を割り込んだ。
海運調査会社のトランプデータサービス(東京・千代田)によると、ケープサイズの10月のスポット用船契約実績も前年
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同月比で2割減った。中国の粗鋼生産が頭打ちになるなど「資源の爆食が終わった」(商船三井の池田潤一郎社長)影
響が少しずつ表れている。石炭や穀物を運ぶ載荷重量5万㌧前後の中小型船のスポット用船料も前年同期に比べて35割安い。ばら積み船運賃の総合的な値動きを示すバルチック海運総合指数(BDI、1985年=1,000)は11日時点で599と
なり、5カ月ぶりに600を割った。前年の同じ時期に比べて6割低く、ばら積み船は全面安が続いている。ばら積み船の需
給は当面緩いとの見方が多い。日本郵船の予測によると、2016年はケープサイズの供給量が15年比で2・6%増えるの
に対し、鉄鉱石の輸送需要は1・7%減少する見通し。17年も同じ傾向が予想され、需給ギャップは一段と広がる可能性が
高い。同社は「急激に伸びてきた中国(の輸入量)がマイナスに転じた衝撃は大きい。最近の市況にも心理的に作用して
いるのではないか」(調査グループ)とみている。
◆バルチック指数/最低更新 ≪初の500割れ 鉄鉱石船の需要不振響く≫鉱物資源や穀物を運ぶ外航ばら積み船の
運賃下落が加速している。総合的な値動きを示すバルチック海運指数(BDI)は初めて500を割った。なかでも鉄鉱石や
石炭を運ぶ大型船の用船料(海運会社が船主に支払うチャーター料)は直近の高値を付けた9月下旬の3分の1に下が
った。中国経済の減速で需給が緩んだためで、需要が好調な原油タンカーなど他の貨物船との市況格差が広がってい
る。≪好調タンカーとの格差拡大≫BDI(1985年=1,000)は20日に前日比で6ポイント低下し、498となり、2日続けて過去
最低をつけた。2月18日の509を下回り、85年1月に指数の集計が始まって以来の最低値を9カ月ぶりに更新した。BDIの
低下はばら積み船の最大船型で、主に鉄鉱石を運ぶケープサイズの需要不振が響いている。積載重量17万㌧超のスポ
ット(随時契約)用船料は現在、主要航路平均で1日あたり約4千㌦と9月下旬に比べて7割下がった。昨年の同じ時期に
比べると8割以上安く、海運業界の採算ラインである2万-2万5千㌦を大きく下回る。ばら積み船市況は「大型船マーケ
ットが崩れると、より小さい船にも波及する」(川崎近海汽船)。石炭や穀物を運ぶ中小型船の用船料も前年同期の水準
を4-6割下回り、下落幅は少しずつ広がっている。タンカーと比べると、需要不振は際立つ。大型原油タンカーの運賃水
準の目安となるワールドスケール(WS、基準運賃=100)は中東-極東間で現在、68・5で、前年の同じ時期に比べて4割高
い。北半球で暖房油向けの需要が高まる秋口以降、採算ラインとみられる50以上でおおむね推移している。原油安で
備蓄向けの需要も増えており、荷動きは堅調だ。ばら積み船運賃の安値が際立つ背景には、中国経済への依存度の高
さがある。全世界に占める中国の輸入シェアをみると、原油の16%に対し、鉄鉱石は68%にのぼる。2010-14年の5年で
中国の鉄鉱石輸入量は1・5倍に拡大し、ケープサイズの建造も加速した。全世界の隻数は約1,630隻と中国など新興国
の需要拡大時に発注した新造船の就航増で5年間で5割近く増えた。15年は一転、中国の粗鋼生産が頭打ちになり、鉄
鉱石の輸入量も5年ぶりに減少に転じる可能性が高まっている。日本郵船の推計によると、16-17年も需給ギャップは広
がる見通しだ。
◆外航コンテナ船運賃、米向けスポット6割安 アジアから世界各地に向かう外航コンテナ船のスポット(随時契約)運
賃が軒並み下落した。主力の米国航路は空前の勢いだった荷動きに減速感が出ており、西海岸向けは比較可能な2009
年以降で初めて、コンテナ1個の運賃が1千㌦を下回った。欧州向けも前年同時期比で6割安い。船腹過剰に荷動きの鈍
化が重なり、需給が緩んでいる。≪空前の荷動きに陰り≫アジアから米国に向かう海上コンテナのおよそ6割を占める西
海岸向けのスポット運賃は現在、40フィートコンテナ1個あたり約920㌦。前年同時期に比べ6割安く、現行の運賃算定基準
が導入された09年10月以降で最も低い。東海岸も前年同期比6割安い1,700㌦前後と過去最安値圏にある。欧州向けも
下落に歯止めがかからない。現在は20フィートコンテナ1個あたり約300㌦で、前年の同じ時期に比べて6割安い。海運各社
の値上げがいったん実現した10月下旬に比べて7割下がった。今年6月に付けた09年以降の最安値(約200㌦)に再び
迫っている。ニ大航路の運賃が下がっているのは荷動きの鈍化が強く影響している。日本海事センター(東京・千代田)
によると、10月のアジア発米国向けの輸送量は前年同月比3・7%減と8カ月ぶりに前年水準を下回った。米国は昨年秋、
西海岸港湾の労使紛争で海上物流が停滞し、混乱を懸念した荷主が貨物を前倒しで運ぶ動きが相次いだ。今年10月は
反動減だったとの見方が多いが、「クリスマス商戦向け商品の輸送が伸び悩んでいる」(同センター)と米国消費の潮目
が変わった可能性を示唆する声もある。欧州向け輸送量は9月まで7カ月連続の前年割れ。自動車部品や住宅関連製品
などは「現地の在庫水準が高く、荷動きが頭打ちになっている」(日本の海運大手)。米国や欧州航路の運賃下落に悩
む国内外の海運各社は10-11月にスポット運賃を相次いで引き上げたが、値上げ効果が長続きしない。コンテナ船の余
剰スベースを埋めるため、値上げしてもすぐ運賃の割引に応じる海運会社が現れている。海運各社は稼働率の低いコ
ンテナ船の運航休止などを進め「すでに世界全体の5%がストップしている」(商船三井の池田潤一郎社長)。それでも
需給ギャップは埋まらず、運賃が本格的に上昇に転じる材料に乏しい。
◎内航海運
◆16年度建造計画84隻 ≪内航総連調査 今年度並み確保へ≫日本内航海連組合総連合会が行った内航船建造動
向調査によると、暫定措置事業の椚付金対象船の2016年度の受注量(起工ベース)は84隻・14万5,800重量㌧と、15年
度に比べ20隻・6万200重量㌧減少することが分かった。ただ、未公開の計画などもあるため、実際の隻数は調査結果
より上積みされ、今年度並みの建造水準に落ち着く可能性が高い。同調査は、内航総連が暫定措置事業の収支見通し
などを把握するため、これまでに内航船の建造実績がある造船所を対象に実施。15年度下期-17年度上期(4期2年間)
の建造予定を聞いた。最近の調査で回答があった造船所46社への聞き取りで39社が回答、うち29社が内航船建造を
予定している(前年調査では30社が建造予定と回答)。15年度は、上期起工分が51隻・10万4,000重量㌧下期は53隻・10
万2,100重量㌧の受注が決まっている。一方、16年度の受注量は、上期48隻・7万7,200重量㌧、下期36隻・6万8,700重量
㌧だった。船種別の受注量(15年度比)は、一般貨物船52隻・9万5,100重量㌧(23隻減・4万3,700重量㌧減)▽RORO船や
コンテナ船といった特殊貨物船3隻・8,600重量㌧(7隻減・2万4,900重量㌧減)▽石油タンカー22隻・3万6,400立方㍍(8
隻増・8,900立方㍍増)▽ケミカルタンカー7隻・5,800重量㌧(2隻増・450重量㌧減)。一般船の主力船型の499総㌧型は
35隻・5万8,300重量㌧と、15年度に比べ6隻減・9,900重量㌧減。ただ、この船型は代替建造期を迎えている船も多く、
建造計画が非公表となっているケースもあるため、調査結果より建造数が増える可能性がある。石油タンカーは、小型
船を中心に16年度は建造数が伸びそうだ。大型船は6,000㌔㍑積み1隻と、建造の動きが表面化していない。暫定措置
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事業対象外の16年度の受注量は、特殊タンク船が8隻・6,200立方㍍(15年度比6隻増・4,400立方㍍減)、セメント船は4隻
・4,800重量㌧(同3隻減・3,700重量㌧減)だった。
◆9月期建造申請、18隻全て認定 日本内航海運組合総連合会は12日の理事会で、9月期の船舶建造募集で受け付
けた組合員(内航事業者)からの申請船18隻・3万2,400対象㌧(貨物船・重量㌧、油送船・立方㍍、曳船・馬力など)を全て
認定した。2015年度の認定累計隻数は5、7月期の回分も合わせ68隻・13万4,900対象㌧となった。9月期認定船の内訳
は一般貨物船14隻・2万3,000重量㌧、砂利船3隻・8,300重量㌧(プッシャーとバージはそれぞれ1隻として集計)、油送
船1隻・1,200立方㍍。9月期は前年同期(13隻・4万6,300対象㌧)と比べ、隻数は5隻増えが、499総㌧型以下の小型船が
申請の主体だったため、㌧数は1万3,900㌧減った。9月期の船舶建造募集は暫定措置事業規程に基づき、15年度実施の
第3回建造申請受け付け(募集期間9月1-20日)として行われた。
◆大西洋のメバチマグロ、漁獲枠を24%削減 大西洋と地中海の漁獲資源を管理する国際機関は、国内でも刺し身な
どで親しまれているメバチマグロについて、2016~18年の漁獲枠を現在から24%減の年6万5,000㌧にすると決定した。
日本は全漁獲量の約4分の1が同海域産となっているが、現在は漁獲枠の上限まで達しておらず、仕入れ量や価格など
への影響は限定的とみられる。米国や欧州連合(EU)、日本などが参加する「大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)」
が10~17日にマルタで開いた年次会合で決めた。現在の漁獲枠は全体で年8万5,000㌧だが、乱獲などで資源量が減っ
ているため漁獲規制を強める。日本の割り当ても2万3,611㌧から1万7,696㌧に減る。ただ、日本のメバチの漁獲は太平
洋が中心で、14年の大西洋での漁獲量は1万3,700㌧で、枠の上限に達していない。このため水産庁は「削減による日
本への大きな影響はない」としている。一方、太平洋でもメバチの資源量の減少を背景に、漁獲規制が強化されてい
る。今後ますます国際的な資源管理の重要性が高まってきそうだ。
◆推定鉄骨需要量は約41万㌧ ≪3カ月連続で前年を上回る≫国土交通省の9月の建築着工統計調査報告による
と、全着工床面積は前年同月比1・2%減(前月比2・4%減)の1,074万5,000平方㍍となった。構造別(※表1)では、S造が
同7・7%増(同2・2%減)の409万5,000平方㍍、SRC造は同68・5%減(同23・6%減)の9万4,000平方㍍。全床面積中のS
造、SRC造の比率は39・0%、推定される鉄骨需要量は約41万4,000の㌧水準(前年同月は約40万㌧※表2)と3カ月連続
で前年を上回った。
◆工作機械8社受注/10月7・9%減442億円 ≪本社まとめ、2カ月連続前年割れ≫日刊工業新聞社が11日まとめた工
作機械主要8社の10月受注は、前年同月比7・9%減442億7,400万円となり2カ月連続の前年割れだった。内需はDMG森
精機やOKKが半期決算月の前月を上回るなど健闘したが、外需は6社が減少した。地域別では中国、北米の減少が目立
つ。総額を大きく押し上げるスマートフォン(スマホ)向けの大口受注はなかった。内需の増加は27カ月連続だった。半期
決算月の翌月で、政府による設備投資支援の補助金制度の切り替えと重なる中、国内市場の堅調ぶりを印象付けた。O
KKは前月比も5・0%増で、3カ月ぶりの10億円台とした。オークマは「自動車向けを中心に中堅、大手から複数台の案件
がある」(営業部)と、前年同月比2ケタ増に伸ばした。中小企業は投資に慎重な姿勢が一部にあるが「冷え込んではい
ない」(同)と底堅く受注を重ねる。ジェイテクトは内需額が外需額を超えた。大幅増は前年水準が低かった上、自動車
関連の伸びが大きかった。外需の減少は3カ月連続。牧野フライス製作所は前年に北米で大口案件があり、減少幅が広
がった。中国の減少もあり、総額が60億円にとどまった。それでも「北米の引き合いが増えてきた」(牧野フ業務部広報
課)と11月以降の復調を期待する。中国で最大シェアのツガミは、中国が前年から数千万円の微増だった。輸出も2カ月
ぶり増加したが「これが回復を意味するのかはわかない。先行きは不透明なままだ」(管理部)と慎重だ。内需は国の主
要な補助金がなくても底堅い。中小企業の設備意欲は際立って衰退しておらず、中堅・大手は設備投資を淡々と進め
ている様子だ。高水準ながら下降傾向の北米の好転、中国の盛り返しが年内の焦点だ。
◆工作機械受注23%減 ≪10月1,028億円 3カ月連続減、日工会まとめ≫日本工作機械工業会(日工会)が11日に発
表した工作機械の10月受注(速報値)は、前年同月比23・1%減の1,028億4,100万円となり、3カ月連続の前年実績割れ
だった。内需は同1・5%減の442億3,100万円、外需は同34・0%減の586億1,000万円と、それぞれ減少した。受注総額は
健全水準とされる1,000億円を26カ月連続で上回った。内需の減少は2カ月連続。政府の設備投資補助金の切り替え時
であり、中国など世界経済の先行きを見定めてようとする動きも減少要因だ。また、外需は中国を中心にアジア市場の
弱含みが影響し、5カ月連続で減少した。
◆工作機械受注22%減 ≪10月1,030億円3カ月連続前年割れ、日工会まとめ≫日本工作機械工業会(日工会)が19
日発表した工作機械の10月受注実績(確報値)は、前年同月比22・9%減の1,030億8,000万円となり、3カ月連続の前年
割れだった。中国は一般機械や自動車といった主要4業種すべてが減少。外需が同34・0%減の585億9,500万円に落ち
込む主要因になった。2015年の受注総額は「1兆5,000億円程度になりそうだ」(花木義麿会長)と前年と同水準を見込
む。内需はものづくり補助金の2次採択分が一部反映され、同0・9%減の444億8,500万円と微減にとどまった。減少は2
カ月連続だった。同補助金の押し上げ効果は、11、12月分にピークを迎えそうだ。自動車向けが6カ月ぶりに一般機械を
上回った。自動車は1-10月の月平均額が173億円になり、「同178億円だったリーマン・ショック前とほぼ同じで、大変好調
と言える」(石丸雍二専務理事)と活発だ。外需の減少は5カ月連続だった。中国は同30・0%減の123億1,400万円で23
カ月ぶりに130億円を割り込んだ。日系の工作機械メーカーは堅調とされてきた中国の自動車向けが、同16・6%減で
「非常に落ちたのは驚き。想定していなかった」(花木会長)と中国経済の減速が響いた。1-10月の受注総額は、前年同
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期比2・7%増の1兆2,590億2,200万円。同期の内需総額は、14年暦年の内需総額を超えた。スマートフォン向けの特需が
「予想より早く終わったのが見込み違いだった」(同)ため、日工会の受注目標の1兆5,500億円を超えるのは難しそう。
それでも1兆5,000億円に届けば過去3位以上の高水準になる。
◆機械工業生産/上方修正 ≪今年度3・3%増72兆5,513億円 日機連≫日本機械工業連合会(日機連)は一般機械
や電気機械、輸送機械など8分野の国内生産額動向をまとめた「2015年度機械工業生産額見通し調査」について、15年
度の合計生産額を前年度比3・3%増の72兆5,513億6,000万円に上方修正した。7月公表の当初見通しは同2・6%増の72
兆485億4,400万円だった。自動車部品が当初の減少予想から増加に転じ、全体を押し上げた。自動車部品を含む輸送
機械は同1・2%増の31兆8,437億5,700万円になる見込み。当初は0・8%減の31兆2,429億1,90万円を見通していた。うち
自動車部品を当初予想の同7・3%減から同1・0%増の8兆1,650億円に引き上げた。自動車生産の増加や輸出向け、補修
部品向けの伸びなどを織り込んだようだ。また、一般機械も同4・4%増の14兆4,350億4,300万円(当初予想は同3・3%
増の14兆2,978億5,100万円)に引き上げた。一般機械のうち、冷凍機・同応用装置、半導体製造装置およびフラット・パネ
ル・ディスプレー(FPD)製造装置などが当初予想から改善した。
◎産業機械
◆産業機械/受注22%減 ≪上期 3年ぶりマイナス、産機工まとめ≫日本産業機械工業会(産機工)が16日発表した20
15年上期(4-9月)の産業機械受注額は前期比22・6%減の2兆3,472億円となり、上期として3年ぶりにマイナスとなっ
た。「金属加工機械」や「タンク」、「鉱山機械」など多くの機種がプラスになったが、ボリュームの大きい「化学機械」や
「ボイラ・原動機」がマイナスとなったことが響いた。輸出契約額は同44・6%減の7,983億円となった。産業機械受注額
の内需は同3・2%減の1兆4,802億円、外需は同42・3%減の8,670億円となり、いずれも3年ぶりに前年同期を下回った。
内需のうち製造業向けは同22・4%増の5,843億円となり、2年ぶりにプラスに転じたが、非製造業向けが同14・7%減の
4,645億円と3年ぶりにマイナスになった。官公需向けは同20・3%減、代理店向けは同1・0%減だった。機種別では多く
の機種がプラスになる中、「ボイラ・原動機」が石油・石炭、電力、運輸・郵便向けなどで減少し、上期として3年ぶりに前
年同期を下回ったほか、外需の減少により「化学機械」が大きく落ち込んだ。一方、主要約70社の産業機械輸出契約額
は同44・6%減の7,983億円。仕向け地別ではロシア・東欧が同97・2%減、アフリカが同90・6%減など大幅に落ち込んだ
ほか、アジア同14・5%減、欧州同42・2%減、北米同0・9%減とそれぞれマイナスだった。9月単月の産業機械受注額は前
年同月比32・9%減の4,253億1,600万円で2カ月ぶりにマイナス。化学機械やボイラ・原動機などが不振だった。金属加
工機械もマイナス。内需は同22・7%減、外需は同49・4%減といずれも前年同月を下回った。内需のうち製造業、非製造
業向けともマイナス。輸出契約額は同51・9%減の1,101億6,100万円。
◎環境装置
◆環境装置受注7・5%増 ≪民需不振も官公藷2ケタ増、9月≫日本産業機械工業会が16日発表した2015年9月の環
境装置受注実績は、前年同月比7・5%増の670億9,400万円で2カ月連続の増加となった。民需は全般に不振で同29・4
%減の78億8,300万円だったが、官公需は事業系廃棄物処理装置の受注増により同11・6%増の568億8,900万円となっ
た。外需は都市ゴミ処理装置の受注があり同9・6倍の23億2,200万円。民需の内訳は製造業が同36・6%減の55億5,100
万円、非製造業が同3・5%減の23億3,200万円。民需で伸びたのは電力向けの排煙脱硫装置のみ。主な装置別の内訳
は大気汚染防止装置が同22・5%増の26億8,100万円、水質汚濁防止装置が同30・8%減の195億3,700万円、ゴミ処理装
置が同40・9%増の447億2,400万円。
◆国内4輪生産7%減 ≪4-9月期 軽、2割超マイナス≫日本自動車工業会(自工会)がまとめた2015年4-9月期の生
産・輸出実績は、4輪車の国内生産が前年同期比7・0%減の444万6,586台となり、4-9月期として2年ぶりにマイナスと
なった。増税の影響で軽自動車の生産が同20%強減ったことが響いた。輸出は同0・2%減の223万348台と前年並み。
北米向けが堅調だった一方、中国向けは同約25%減、ロシアやインドネシア向けは同約50%減と足を引っ張った。国内
生産の内訳で乗用車は同7・6%減の373万4,685台だった。このうち普通車は同0・1%増の230万2,595台と横ばぃ。軽乗
用車は同23・6%減の67万7,719台となり、2年ぶりのマイナスとなった。9月単月の4輪車の国内生産は、前年同月比2・6
%減の82万8,817台と、15カ月連続で前年の水準を下回った。
◆新車販売/10月4%減 ≪10カ月連続のマイナス≫日本自動車販売協会連合会(自販連)と全国軽自動車協会連合
会(全軽協)が2日発表した10月の新車販売台数は、前年同月比4・1%減の38万89台だった。前年同月割れは10カ月連
続。登録車は2カ月ぶりにプラスに転じたが、軽自動車は増税の影響などが響き10カ月連続のマイナスとなった。登録
車は同0・2%増の24万889台。メーカー別ではホンダが13カ月ぶりにプラスに転じた。中でも「フィット」や「シャトル」が
合算で前年を上回ったほか、「ステップワゴン」も好調だった。商用車では国内メーカー4社の合計が同2%増と堅調に
推移した。外国車メーカーが占める「その他」では乗用車が同9・9%減少した。そのうち小型車は同49・3%減と大幅に
減少しており、自販連は「フォルクスワーゲン(VW)の排ガス試験不正問題の影響が多少あるのではないか」との見方を
示した。軽自動車は同10・8%減の13万9,200台。9月に続き全メーカーが前年同月割れとなった。
◆国内生産16カ月ぶり増 ≪10月 車8社、輸出伸長が寄与≫乗用車メーカー8社がまとめた10月の生産・販売・輸出
実績によると、国内生産は前年同月比0・1%増の76万7,725台となった。わずかだが16カ月ぶりに前年同月を超えた。
輸出の伸びが国内生産を享見た。世界生産は同3・1%増の240万3,444台となった。5カ月連続で前年同月超えとなっ
た。国内生産が増加したのはトヨタ自動車とマツダ、三菱自動車、ダイハツ工業の4社。トヨタは米国や中国向けの輸出
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が増えたほか、7月に全面改良した国内向けのミニバン「シエンタ」の販売好調で国内生産が2・2%増となった。マツダ
は国内外向けの小型SUV「CX-3」の純増が国内生産を牽引した。しばらく2ケタ減が続いたホンダは「消費増税後の反
動減が落ち着いた」(広報)ことや北米向けモデルの生産が本格化して輸出が大幅に増えたことで国内生産を微減に
とどめた。日産自動車も輸出増で国内生産の落ち込みを抑えた格好だ。海外生産はトヨタ、ホンダ、日産、スズキ、マツ
ダが過去最高を記録した。トヨタ、ホンダ、日産は中国で増え、米国で減少した。米国販売は各社好調だが「ガソリン安
でハイブリッド車(HV)が伸び悩んだ」(トヨタ)、「新型『シビック』の立ち上げで稼働を減らした」(ホンダ)、「稼働日が減
った」(日産)と背景はまちまちだ。
◆粗鋼生産10月3.8%減/14カ月連続前年割れ 日本鉄鋼連盟が19日発表した10月の粗鋼生産量は、前年同月比3.8
%減の900万㌧だった。14カ月連続のマイナスはリーマン・ショック後(2008年10月~09年10月、13カ月)を上回り、戦後4
番目に長い。国内の自動車生産の減少と中国の過剰生産に伴う世界の鋼材市況の悪化が影を落とす。鉄鋼大手は減
産を続けて在庫を調整してきたが需要の回復は弱く、少なくとも年内は在庫調整が必要との見方が広がる。新日鉄住
金の粗鋼生産量は2015年度下期(15年10月~16年3月)に2,170万㌧と前年同期比1.7%減を見込む。低~中級の汎用品の
輸出を抑え、採算を優先する。下期の輸出比率(金額ベース)は43%と前年同期比5ポイント低下する。JFEスチールは10
月末に15年度下期の粗鋼生産量の見通しを7月時点より25万㌧引き下げた。中国製と直接競合しない鋼材を拡販する
考えだが「10~12月だけでさらに10万㌧程度下振れする可能性がある」(関係者)という。
◆世界粗鋼生産、10カ月連続減/10月 世界鉄鋼協会がまとめた10月の世界66カ国・地域の粗鋼生産量(速報)は、
前年同月比3・1%減の1億3,364万㌧で10カ月連続の減少となった。全体の半分を占める中国が同3・1%減の6,612万4,0
00と㌧同じく10カ月連続で減少。主要国でも2位の日本(同3・8%減)をはじめ、4位の米国が同8・8%減、5位の韓国が
同5・6%減、6位のロシアが同2・4%減となった。一方、3位のインドは同4・9%増だった。
◆鉄鋼輸出/3カ月連続減 ≪鉄連まとめ l0月特殊鋼など大幅減≫日本鉄鋼連盟が財務省貿易統計を基にまとめた
10月の鉄鋼輸出実績は、前年同月比4・3%減の343万3,082㌧で、3カ月連続のマイナスとなった。普通鋼鋼材は同4・1%
増の226万9,921㌧と2カ月ぶりに増加に転じたものの、特殊鋼鋼材と半製品が大きく落ち込み、全体を押し下げた。仕
向け先別では韓国や中国、タイ、台湾がマイナスとなり、主要輸出先では米国のみ増加した。特殊鋼鋼材は同19・8%減
の64万5,847㌧、半製品が同16・8%減の40万7,398㌧で、二次製品も減少した。対照的に普通鋼鋼材は依然、日系メー
カーへの原板供給などが堅調と見られる。その半分近くを占める熱延広幅帯鋼が同14・1%増の104万2,021㌧で15カ月
連続のプラス、厚板も同6・5%増と2カ月ぶりに増加に転じた。一方、普通鋼鋼材の輸入量は同1・3%減の40万2,128㌧で
2カ月連続の減少だった。最大の仕入れ先である韓国からが26万7,181㌧と同6・3%減った。中国からは4万9,525㌧と数
は少ないものの、前年同月比では22・0%増と大幅に増えた。
◆8月の生活保護受給世帯減【朝日新聞/11.5】 8月の生活保護の受給世帯は、前月より181世帯減って162万8,724
世帯となった。減少は4カ月ぶり。受給者も1,922入減の216万3,356人で、3カ月ぶりに減った。厚生労働省が4日、速報値
を公表した。受給世帯(保護停止中を除く)のうち、高齢者世帯が最も多く49.3%、(79万9,103世帯)を占めた。厚労省
保護課の担当者は「高齢者世帯の伸びが例年より小さく、全体としては減少に転じた」と話している。
以
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