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食の輸出拡大に向けた商流・物流の構築(2)

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食の輸出拡大に向けた商流・物流の構築(2)
(参考3) 新千歳空港の「保税蔵置場」
※輸出エリア
冷凍倉庫
22.5㎡
保税蔵置場(ほぜいぞうちじょう)
税関長が許可した外国貨物
(輸出の許可を受けた貨物、
輸入手続が済んでいない貨物、
日本を通過する貨物)を置く
ことができる場所。
※冷凍倉庫が狭隘なため、
冷凍品の保管は早い者勝ち
いつもホタテ貝(冷凍)が占有
※入口が狭く、
フォークリフトで搬入・搬出
することができない
航空コンテナ(タイ航空)
1,990.5㎡
保税蔵置場
※保税蔵置場が手狭なため、保税エリアが外まで拡大することがある(赤線箇所)
14
参考事例①:低率関税の適用 (タイへの輸出)
〇日本とタイ王国との間に「日タイ経済連携協定(JTEPA)」が締結
(2007年11月1日発効)
※JTEPA:Japan Thailand Economic Partnership Agreement
〇JTEPAによる特恵税率(通常の関税率よりも低い関税率)の適用を受けるためには、
輸出産品がJTEPAに基づく原産資格を満たしていることを証明する「特定原産地
証明書」(商工会議所が発給)を取得し、輸入国での通関時に税関に提出する必要が
ある。(特恵税率が設定されている品目であることが前提)
<事例1> 米(精米)
(HSコード:1006.30)
・通常関税
52%(輸入割当枠なし)
・輸入割当枠適用 30%
(1社:100t/回×3回/年=300t/年)
・JTEPA適用
5.45%
※2017年にはFree(0%)
★52% → 5.45%(▲46.55%)
<事例2> ミネラルウォーター
(HSコード:2201.10)
・通常関税
2バーツ/ℓ
・JTEPA適用
0.36バーツ/ℓ(▲1.64バーツ/ℓ)
※2017年にはFree(0%)
(参考)2ℓの場合
☞ 4バーツ/本 → 0.72バーツ/本
(▲3.28バーツ ≒ ▲11円/本)
(300円/kg・100t(=30百万円)の場合、約14百万円減)
※輸入割当枠(quota)を有している事業者が必須
<事例4> 日本酒(清酒)
(HSコード:2206.00.200)
<事例3> 牛肉(冷蔵、冷凍)
(HSコード:0201.30、0202.30)
・通常関税
50%
・JTEPA適用
0%
※2014年よりFree(0 %)
・通常関税
60%
・JTEPA適用
0%
※2012年よりFree(0%)
※ただし、物品税(酒税)、内国税、健康振興基金
負担金およびVAT(付加価値税)が別途必要
換算レート:3.29 円/バーツ
※2016.3.4 現在のTTSレート(三菱東京UFJ銀行)
15
参考事例②:輸出入に関する規制(タイへの牛肉の輸出)
<事例> タイへの牛肉の輸出
★物流に関する条件があるのはタイのみ
✡ 解決。3/18、森山農林水産大臣が記者会見で、タイ政府当局と (出所)
http://www.maff.go.jp/j/press/syouan/douei/
日本産牛肉の輸出条件の緩和について合意したことを発表
160318.html
○タイへ牛肉を輸出する際の輸出条件「REQUIREMENTS FOR THE IMPORTATION OF BONELESS
BEEF FROM JAPAN INTO THE KINGDOM OF THAILAND」の第12項に以下の条項がある。
12) The boneless beef shall not be transshipped at any intermediate port.
※transship:貿易用語では「コンテナを他の船に積み替える」という意味
(出所)
http://www.maff.go.jp/aqs/hou/pdf/
th_ex_beef_req.pdf
○「北海道-タイ」の物流ルートは、空輸・海上の直行・経由便を含め以下の①~④
に示す4つのルートがあるが、上記の条項があるため、北海道“発”の輸出ルートは、
①の空輸(直行便)「新千歳空港→バンコク」しか利用できない。
①空輸(直行便)
②空輸(経由便)
③海上(経由便)
④海上(経由便)
新千歳空港 → バンコク・スワンナプーム国際空港(タイ航空)
道内空港 → (国内港 経由) → バンコク・スワンナプーム国際空港
道内港(石狩・苫小牧) → 釜山港(経由) → バンコク ⇒ 利用できない
道内港 → (国内港 経由) → バンコク ⇒ 利用可能だが運賃が高い
※②、④のルートは運賃が高く、輸出通関が当該空港・港湾(北海道外)になることが多い。
※③は一番安価な物流ルートであり、「北海道⇒タイ」の基幹ルートでもあるが、上記条項
があるため利用できない。
★道内の動物検疫所から指摘されたため、③のルートを断念し、④のルート(横浜港)で輸出。
この結果、高い物流経費となっている。
◎在タイ日本大使館がタイ政府と交渉・調整を実施。(昨年7月、北海道経済連合会より農水省へ要望)
「密閉式コンテナに収容され、輸出国政府機関により封印された日本産牛肉について、
第3国経由地における積み替えを認めるよう」タイ政府に要請し、了解が得られた。
現在、タイ政府からの正式文書待ち。 ※タイ到着までコンテナを開けなければ、
経由地で他の航空機・船舶への積み替えはOK
16
4-1.主な輸出対象国・地域の概要①
所
得:一人当たり名目GDP
市場規模:人口
図表4 東アジア・東南アジアの各国・地域の比較
国・地域名
(★=ASEAN加盟国)
★ シンガポール
★ マレーシア
★ タ
イ
★ インドネシア
★ フィリピン
★ ベ ト ナ ム
中
香
国
港
台
湾
韓
国
日
本
2014年人口
(百万人)
(注1)
5.4
首都人口
2014年名目
一人当たり
日本のコンビニ(注2)
(百万人)
GDP(US億$)
(US$/人)
(店舗数)
5.4 36位
3,078
56,287
458
セブンイレブン
458
1.7 35位
3,381
11,049
1,944
セブンイレブン
1,944
8 30位
4,048
5,896
9,995
セブンイレブン
ファミリーマート
8,832
1,117
10 16位
8,886
3,524
256
セブンイレブン
ローソン
187
38
12.5 40位
2,846
2,862
2,257
セブンイレブン
MINI STOP
1,602
519
90.7
ハノイ 6.9
56位
(1.3万人) ホーチミン 7.8
1,858
2,051
118
ファミリーマート
MINI STOP
88
30
1,364.2
7.2
23.4
21 2位 103,565
7.2 38位
2,908
7,572
40,033
4,397
セブンイレブン
ファミリーマート
2,183
1,501
22,600
8,015
セブンイレブン
ファミリーマート
5,029
2,986
セブンイレブン
MINI STOP
8,000
2,200
(3.5万人)
30.1
(2.2万人)
67.2
(6.4万人)
252.8
(1.7万人)
100.0
(1.8万人)
(1.8万人)
50.4
(3.6万人)
(※首都圏)
3 26位
5,295
10 13位
14,103
27,970 10,200
52,089
127.1
9 3位
46,023
36,222
セブンイレブン
★北海道 ローソン
(2,892) ファミリーマート
18,249
12,254
11,499
(注1) 人口の下の( )内の人数は在留邦人数を示す。 詳細は「別紙2 海外在留邦人数」参照(参6)
(注2) セブンイレブン、ローソン、ファミリーマート、MINI STOP、サークルKサンクス(国内) 、セイコーマート(国内)の店舗数
(出所)各社のホームページより最新の店舗数を集計
(資料)GLOBAL NOTE(人口:世銀、名目GDP・一人当たりGDP:IMF) 17
4-2.主な輸出対象国・地域の概要②
★ 中 国
☞ 有望な市場はどこか?(国・地域)
① 所得は高いが、市場規模は小さい
A ✔ シンガポール、香港、台湾、マレーシア
※北海道の知名度高い(マレーシアも意外と高い)
② 所得は低いが、市場規模は大きい
(今後の所得向上が期待される)
B ✔ インドネシア、フィリピン、ベトナム
③ 所得・市場規模ともに中程度であるが、日本の
コンビニ数、日本食レストランが多い(2,126店舗)
C ✔ タイ
※北海道の知名度高い
※各国・地域の首都圏は国の平均よりも所得が高い
千万人
大
(多)
B
15
市
場
規
模
(
人
口
)
10
9
8
7
6
5
★
★
人口多
所得低
★ 日 本
フィリピン
ベトナム
★
C
★
タ イ
韓 国
人口少
所得高
4
★ マレーシア
3
20.3%が月 5万バーツ超(≒US$18M/年) ≒ 台湾
6.7%が月10万バーツ超(≒US$35M/年) ≒ 香港
○輸入規制が厳しい
✔ インドネシア ※輸入許可・輸入割当枠が必要
✔ ベトナム
※登録制
人口増加
所得向上
20
例:バンコク都市圏の所得(JETRO BANGKOK調べ)
☞ 輸入しやすいか?(輸入規制等)
★ インドネシア
25
A
2
★ 台 湾
香 港
1
小
(少)
○輸入規制がやや厳しい
✔ タイ ※登録制。最低限HACCPがないと輸入は困難
✔ 台湾 ※植物検疫が厳しい
○輸入商品によっては“ハラール(Halal)認証”が必要
✔ インドネシア、マレーシア 等
※上記の他に、植物検疫・動物検疫にも注意が必要(日本・相手国)
また、関税率にも注意が必要(特恵関税の適用など)
★
シンガポール
★
US$
1,000
11 22 33 44 55 66 77 88 9910101515202025253030353540404545505055556060
/人
小
(低)
所得(一人当たりGDP)
大
(高)
➽ シンガポール、香港は、他の国・地域と比
較すると輸入規制は厳しくないが、その分
世界各地から輸入されるため、競合品との
価格競争が厳しい
※最大のライバルは日本産(他府県産)商品
➽ 輸入規制等をクリアするのは難しいが、
他社に先駆けて市場を獲得した方が良い 18
(参考3) 輸出条件①
(植物(果物、野菜など)を貨物として輸出する場合に、相手国から求められている検疫条件)
×
◎
×
×
◎
◎
(輸出できるもの) ★検疫の他にも輸入条件あり
※検疫条件として輸出可能という意味
◎:植物検疫証明書(注1)無しで輸出できます。
Q:植物検疫証明書を添付すれば輸出できます。
P:相手国の「輸入許可証(注2)」の取得が必要です。
☆:二国間合意に基づく特別な検疫条件を満たした
もののみ輸出できます。
○ほとんど輸出可能
香港、シンガポール、マレーシア
○ほとんど輸出できない
中国、フィリピン、ベトナム
(輸出できないもの又は不明)
△:輸出相手国の検疫条件が未設定の
ため輸出できないか、又は不明。
注1:植物検疫証明書は輸出検査に合格すると発給
されます。
注2:輸入許可証は輸出相手国より発給されます。
(出所) 農林水産省 植物防疫所のホームページ
http://www.maff.go.jp/pps/j/search/pdf/ex_quickhelp20151120_2.pdf
19
(参考4) 輸出条件②
(日本から輸出される食肉の受入れ状況一覧)
(出所)農林水産省 動物検疫所のホームページ
http://www.maff.go.jp/aqs/hou/require/pdf/ex.pdf
○道内の輸出食肉取扱施設
香 港
◎
タ イ
ベトナム
◎
●
豚肉 鶏肉
牛肉
牛肉 豚肉 鶏肉
マカオ
牛肉
ミャンマー
牛肉
UAE
牛肉
豚肉商品(ソーセージ、
ハム)が輸出できない
◎
◎
※食肉を輸出する際には、
認定を受けた「輸出食肉取扱施設(と畜場等)」
で処理する必要がある
◎
(出所) 厚生労働省のホームページ「輸出食肉認定制度」
◎
◎:道内に「輸出食肉取扱施設」がある国
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/
haccp/other/yusyutu_syokuniku/index.html
20
5-1.商流・物流の構築① ~ 輸出者側の課題
輸出者側の課題
☞ 輸出入手続き等
✔ 手続き(書類作成(英文)、輸出入通関・FDA登録(タイの場合)、特恵関税の適用 等)
✔ 代金回収(決済方法、与信情報、通貨 等)
⇒ 貿易商社の活用
国内取引(貿易商社へ販売)により、貿易実務、語学、商流・物流等の問題を解決
(事前に輸出入の可否(植物・動物検疫等)や必要書類等(原産地証明書等)を調査)
※輸出国・地域の事業者の与信情報をどのように入手するか
国内の植物・動物検疫や輸出国・地域の輸入通関等で、新たな課題への対応が発生
☞ 物流
✔ 輸出国・地域や輸出対象商品に“最適な物流”の選定・手配
貿易商社が手掛ける
(物流コスト、所要日数、温度帯対応、物量の確保 等)
⇒ 小口混載便(LCL)の有効活用(北海道“発”の物流ルート)
既存の物流の利用(相手国の事業者の物流=道外発(東京・大阪等)、国内物流が必要)
☞ 価格の設定
(注) LCL=Less than Container Load
✔ 現地渡し価格の設定(CIF、CFR(C&F)価格等)
現地渡し価格、現地通貨での商談・取引が一般的
⇒ 商流・物流を設定の上、国内渡し価格(FOB価格)に運賃等を加算 ⇒ 貿易商社が手掛ける
✔ 価格競争力のある価格の設定
物流コスト、関税等によるコストupで価格が合わず、商談が成約しないケースがある。
道内の生産者・企業に負担を強いるのではなく、物流コストの削減や関税対策(特恵関税
の上手な利用等)などの中間コストの削減により、実現していきたい。
21
5-2.商流・物流の構築② ~ 輸出チャレンジの意味
輸出チャレンジの意味
~
「まとめ」に代えて
実際に輸出してみなければ分からない。 輸出することで課題等も見えてくる。
成功の可・否の分析
世界の食マーケットの基準を知る
✔ 商品のアピール(優位性)は何?
相手に上手く伝わったのか?
✔ ISO、HACCP取得の必要性
✔ ターゲットは妥当だったのか?
(輸出国・地域、売り先)
✔ 食文化・食習慣(宗教も含む)や
商慣習の違い
✔ 成約/不成約の要因は何?
(価格、スペック、取引条件等)
✔ 現地のマーケットニーズ、価格設定
✔ 課題の把握と解決方策
✔ 各国の食品輸入の規制を学ぶ
✔ PR方法
(広告媒体、マーケティング)
成功のキー
初期投資が必要
最初から利益は出ず、商売が軌道に乗るまで
には時間がかかる。初期段階は投資が必要。
信頼できる現地パートナーとの連携
商売や課題解決を任せられる信頼できる現地
パートナーとの連携が必須(卸売事業者等)
輸入規制を恐れるな
輸入規制をクリアするのは難しいが、他社に
先駆けてマーケットを獲得すべき
作成:堀コーディネーター、多田羅コーディネーター(タイ在住)
※一部修正
22
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