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メタンハイドレート −これまでの研究成果と今後の展望

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メタンハイドレート −これまでの研究成果と今後の展望
メタンハイドレート
−これまでの研究成果と今後の展望−
島 田 忠 明
TADAAKI SHIMADA
((独)石油天然ガス・金属鉱物資源機構 R&D推進部 メタンハイドレート研究チーム)
はじめに
日本では石油の99.8%,天然ガスの96.5%を輸入に頼っ
ている。そしてこのうち天然ガスは,サウジアラビア,
アラブ首長国連邦,カタール,クウェートなどの中東湾
岸諸国やインドネシア,マレーシア,ブルネイなどの東
南アジア諸国から輸入している。しかしながら,日本に
もこれら産油・産ガス国に匹敵する「天然ガス」が存在
している。それがメタンハイドレートである。
天然ガスは環境への負荷という点でも注目されている。
石炭や石油と比較したときの同一熱量あたりのCO2排出
量は,石炭を100とした場合,石油は76,天然ガスは55
である1)。また,天然ガスの燃焼には硫化物や窒素酸化
物の排出も伴わない。日本周辺に分布するメタンハイド
レートを開発することができれば,エネルギー問題の解
決や地球温暖化への歯止めという点で貢献することがで
きよう。
わが国では,2001年7月に経済産業省から「我が国に
おけるメタンハイドレート開発計画」が発表され,資源
化を目指した研究が始まった。ここではメタンハイド
レートの資源化を目指した研究の概要を紹介する。
個にメタン分子8個から成り(CH4・5.75H2O,写真−1),
比重は0.91g/cm3で,1m3のメタンハイドレートは分解
すると172m3のメタンガスと0.82m3の水になる(標準状
態)。
写真−2は合成したメタンハイドレートであり,見た
目は氷そのものであるが,火をつけると水分子に取り込
まれたメタン分子が燃え,あとには水が残る。
このメタンハイドレートは永久凍土の下や深海堆積物
中に存在することがわかっており,今では「21世紀のエ
ネルギー」として注目を浴びている。
2.メタンハイドレートの探査
今でこそエネルギー資源として注目を浴びているもの
の,研究のきっかけとなったのは1930年代にロシアで起
1.メタンハイドレートとは
ガスハイドレート(Gas Hydrates)とは,水分子の
作る籠の中にガス分子が取り込まれた氷状の物質である。
ハイドレートという言葉には,「包接化合物」という日
本語をあてているが最近では英語の発音のまま「ハイド
レート」と表記することが多く,ここでもその例になら
うこととする。
この籠は,中の空間に別の分子を取り込むことで安定
する。取り込まれるガスは低分子のものに限られ,メタ
ン,エタン,プロパンなどの炭化水素のほか,窒素,二
酸化炭素,硫化水素などがあげられる。取り込まれたガ
ス分子がメタンならばメタンハイドレート(Methane
Hydrate)と呼ばれる。メタンハイドレートは水分子46
写真−1 メタンハイドレートの分子模型(林ほか,2007)
中央が炭素および水素(CH4),周辺にあるのが
酸素と水素(H2O)を示す。
写真−2 燃焼する人工メタンハイドレート(MH21提供)
2009・11・建築設備士 15
図−1 メタンハイドレートの安定領域(筆者作成)
図−3 世界におけるメタンハイドレートの分布域
(Kvenvolden et al. 2001およびIHS Energyの
EDIN-GISを基に筆者作成)
図−2 フロリダ沖ブレークアウターリッジにおけるBSR
(Kvenvolden et al. 1993より)
こったガスパイプラインの閉塞事故であった。ガスに水
分が含まれていると,この水分がガスと反応して何か固
体の物質が生成され,これがパイプライン閉塞の原因で
あることがわかったのだが,どのような反応が起こって
いるのかはわからなかった。この後に実験的研究が始ま
り,メタンハイドレート生成の温度圧力条件がはっきり
してきた。
メタンハイドレートが安定する温度圧力条件を図−1
に示す。この図に示すように,メタンハイドレートは低
温・高圧下で安定して存在することがわかる。
ロシアのパイプライン閉塞事故から約40年が経った
1970年,フロリダ沖のブレークアウターリッジを調査し
ていた研究者たちは,地震探査反射面の中に海底と平行
で地層層理面と斜交する反射面を発見した(図−2)2)。
通常,地震探査における反射面というのは地質構造や地
層を反映したものであるが,この図のように層理面とは
無関係に海底面に平行な反射波が出現した。これを海底
面擬似反射面(Bottom Simulating Reflector,略称BSR)
と呼ぶ。
同年,国際深海掘削計画(Deep Sea Drilling Program,
DSDP)によって,このBSRの解明を目的とした掘削調
査が試みられ,その調査によってメタンガスを大量に含
む試料が回収された。そしてメタンガスを含んだ部分の
基底は地震探査反射面に現れたBSRに相当することがわ
かった。
地震探査の基本は,地表で地震波(弾性波)を発射し,
地中からはねかえってくる反射波を解析する探査手法で
ある。地震波は地中で岩石の音響インピーダンスという
物性値が変化する地層の境界などのところで反射がおこ
る。音響インピーダンスとは密度と地震波伝播速度の積
16 建築設備士・2009・11
図−4 日本におけるBSRの分布(石油公団ほか,2000)
のことであり,メタンハイドレートのある層はない層よ
りも伝播速度が速く,音響インピーダンスに差が生じる。
これによって地層境界とは関係ない物性境界面として反
射波が出現するのである。
その後,海洋における探査は進行し,世界中にBSRが
分布することが報告され,メタンハイドレートの試料も
回収されるようになった。図−3にメタンハイドレート
の分布3)を示すが,世界中に分布していることがわかる。
日本周辺では,静岡県から熊野灘,四国沖を経て九州
の東側に至る海域(南海トラフ)においてBSRが確認さ
4)
れている(図−4)
。ほかに十勝沖,鹿島灘,津軽西方,
佐渡周辺,南西諸島周辺にもBSRが分布する。BSR以外
にも,奥尻海嶺5)や佐渡南西沖6)では実際にメタンハイ
ドレートが分布することが確認されている。
こうして,パイプライン閉塞事故の原因として研究が
始まったメタンハイドレートであるが,今では世界中に
その分布が確認され,次世代のエネルギー資源として注
目を集めるようになったのである。
3.メタンハイドレートの資源量
メタンハイドレートの資源量については,いくつかの
推定値があり,Collet(2000)がその結果をまとめてい
表−1 メタンハイドレートの資源量(Collet,2000より)
陸 域
海 域
Amount(m3) Reference
Amount(m3) Reference
Meyer(1981)
3.1×1015
Meyer(1981)
1.4×1013
3.1×1013
McIver(1981)
5to 25×1015 Torofimuk et al.(1977)
Trofimuk et al.(1977)
2×1016
Kvenvolden(1988)
5.7×1013
MacDonald(1990)
2.1×1016
MacDonald(1990)
7.4×1014
3.4×1016
Dobrynin et al.(1981)
4×1016
Kvenvolden and
Claypool(1988)
Dobrynin et al.(1981)
7.6×1018
る(表−1)。これによれば,陸域では1013m3から1016m3,
海域では1015m3から1018m3である7)。2007年における世界
の 天 然 ガ ス 生 産 量 が103.8TCF(BP統 計 よ り,TCFは
trillion cubic feetのことで1TCF=283億m3に相当),す
なわち2.94×1012m3であるから,これより3桁から6桁
大きな値ということになる。
日本周辺海域におけるメタンハイドレートの資源量評
価は,佐藤ほか(1996)が最初である。この研究では,
BSRの面積6.0×104km2をベースとし,メタンハイドレー
ト分解ガスの資源量を4.65×1012m3,メタンハイドレー
ト層直下のフリーガス層の資源量を2.7×1012m3と見積
もった(合計で7.35×1012m3,260TCFに相当)8)。1994
年当時の日本の天然ガス消費量が5.4×1010m3であるため,
それより2桁大きな値となっている。「日本近海には100
年分のガス資源が眠っている」などと言われているが,
その根拠はこれである。
なお,この佐藤ほか(1996)の評価ではメタンハイド
レートだけでなく,「フリーガス層」も資源の対象と考
えられていた。当時,メタンハイドレート層の下位の層
には,その孔隙中にガスがトラップされているというモ
デルが示されていたためである。しかし,後の掘削調査
などにより,メタンハイドレート層の下位にはガスが含
まれていてもその飽和率は数パーセントであることが判
明し,以降,資源の対象はメタンハイドレートだけとなっ
た。
4.世界の国のメタンハイドレート資源化への取り
組み状況
次世代のエネルギー資源として注目を浴びているメタ
ンハイドレートであるが,ここで各国の取り組み状況を
簡単にまとめておく。
4.1 米国
米国エネルギー省(DOE)は2006年にメタンハイドレー
ト研究のロードマップ「An Interagency Road Map for
Methane Hydrate Research and Development」を発表
し,DOEを中心とした政府・産業界からなる研究体制
のもと研究を実施している。アラスカでは2007年にメタ
ンハイドレート調査井の掘削があり,今後,長期の産出
試験が検討されている。また,メキシコ湾においてもメ
タンハイドレート調査井の掘削が予定されている。
4.2 カナダ
カナダ政府はMHを将来有望な資源と評価し,1970年
代から研究を実施,物性の研究などでは世界で最も進ん
でいると言われている。また,Integrated Ocean Drilling Program,
( 統 合 国 際 深 海 掘 削 計 画, 略 称IODP,
2003年からODPを改称)との協力で,海域のガスハイ
ドレートの共同研究を実施するなど,各国の関係機関と
のガスハイドレート研究に活発に参加している。
カナダ天然資源省(NRCan)による管轄の下に,カ
ナダ地質調査所が「The Gas Hydrate Program」を担
当し ,地下科学調査,資源開発,環境対策,関連技術
開発を行い,カルガリー大学がメタンハイドレートの物
性研究を,ビクトリア大学がメタンハイドレート生成の
研究を行っている。
4.3 インド
インド石油天然ガス省が1997年に「Natural Gas Hydrate Program」を発表し,同省の炭化水素総局(DGH)
が中心となり計画を推進している。2006年にはインド沖
にて39坑の調査井を掘削し,メタンハイドレートを確認
した。DGHによれば「相当量の資源」を確認したとの
ことで,2010年には2回目の掘削調査を計画している。
なお,現在ではDGHの研究部門や国立の海洋研究所な
どを再編して「メタンハイドレート研究センター」を設
立すべく関係者が検討を続けている。
4.4 韓国
2005年にガスハイドレート研究機構(Gas Hydrate
Research Organization)が設立された。これには産業
資 源 部,KNOC,KOGAS,KIGAMが 参 加 し て い る。
2007年には日本海において掘削調査を行い,メタンハイ
ドレートを発見した。
4.5 中国
2001年の「第10次5か年計画」および2006年の「第11
次5か年計画」にハイドレート調査の実施が含まれる。
2007年には南シナ海北部でメタンハイドレートの発見が
なされた。
4.6 ベトナム
2007年,メタンハイドレート研究プロジェクトを設置
することが決定され,2009年から本格的に開始の予定で
ある。ベトナムにおけるメタンハイドレートの資源ポテ
ンシャルの把握,データベース整備,技術整備・人材育
成,管理体制の検討・法的整備,などを目標に挙げてい
る。
5.日本の取り組み
次世代のエネルギー資源として注目を集めているメタ
ンハイドレートであるが,日本では1995年度の「第8次
国内石油及び可燃性天然ガス資源開発5ヵ年計画」にお
いてメタンハイドレートの研究が取り上げられ,2001年
には「我が国におけるメタンハイドレート開発計画」が
2009・11・建築設備士 17
写真−3 基礎試錐「東海沖∼熊野灘」で回収されたコア試料。
砂層の孔隙をメタンハイドレートが充填するタイプで
あることが判明した。(Fujii et al. 2005より)
図−5 東部南海トラフの調査状況(林ほか,2007を一部改変)
策定され,メタンハイドレートの資源化を目指した研究
が動き始めた。
この計画の下,JOGMEC,産業総合技術研究所,エン
ジニアリング振興協会の3者が「メタンハイドレート資
源開発研究コンソーシアム」
(MH21)を組織し,2009年
3月までフェーズ1の研究を行ってきた。
フェーズ1の研究では,日本周辺海域におけるメタン
ハイドレートの賦存状況を明らかにすることと資源量の
評価,およびカナダ陸上でのメタンハイドレート産出試
験などを行った。
5.1 東部南海トラフの資源量
すでに1996年には東部南海トラフにおいて二次元の地
震探査がなされ,1999年には基礎試錐「南海トラフ」が
掘削されていたが,これに追加する形で2001年には二次
元の物理探査が行われ,翌2002年には三次元の物理探査
が行われた。2004年にはこれらの物理探査データの解釈
に基づき,基礎試錐「東海沖∼熊野灘」が実施された9)。
これは地層の各種パラメーターを測定できるLWD(Logging While Drilling,掘削同時検層)の物理検層調査と
コア試料の回収である。図−5はこれら物理探査や基礎
試錐の実施状況を示したものである。
写真−3は基礎試錐「東海沖∼熊野灘」の掘削調査で
回収したコア資料であり,砂層の孔隙をメタンハイド
レートが充填していることが確認できた10)。また,物理
検層によってメタンハイドレート層の特徴が明らかと
なった。
物理検層とは,坑井内に測定器を降下し,坑壁付近の
地層や岩石の物性値を深度に対して連続的に測定する技
術のことである。図−6は東部南海トラフで掘削された
18 建築設備士・2009・11
坑井のLWDデータである。
メタンハイドレート層の検層レスポンスは,比抵抗の
上昇,音波速度の増加,NMR(核磁気共鳴)孔隙率の
減少,という特徴がある11)。
通常,地層水には塩分が含まれており,導電体となる。
しかしメタンハイドレートが孔隙を充填すると,油やガ
スが含まれた場合と同様に地層水の割合が減少し,電流
を通しにくくなる。すなわち比抵抗が上昇するのである。
比抵抗が上昇するだけでは油・ガスとの見分けはつか
ない。油・ガスと見分けるには音波速度から判断できる。
メタンハイドレートは固体の結晶のため,音波の伝播速
度が油やガスよりも速い。この点に注目することで見分
けることができる。
もうひとつ重要なのがNMR孔隙率である。これは「動
きうる水」を検知するもので,メタンハイドレート中の
水は検知しないため,メタンハイドレート層では見かけ
上低孔隙率を呈する。よってバルク密度検層から得られ
た全孔隙率とNMR孔隙率の差がメタンハイドレートと
いうことになる。
これらの調査を通じて,東部南海トラフのメタンハイ
ドレートはタービダイト砂泥互層の砂層に賦存するタイ
プが主体であり,かつメタンハイドレートが砂層部分に
濃集している(濃集帯)ことが明らかとなった。また,
地震探査データからメタンハイドレート濃集帯を摘出す
る手法を確立し,東部南海トラフの原始資源量を約
40TCF(1兆1320億m3)と算定した(2007年3月経済
11)
産業省発表)
。このうち,濃集帯の資源量は約20TCF
である。なお「資源量」とは,技術的に回収可能・不可
能を問わず,かつ経済的に回収可能・不可能を問わない
メタン量のことである。
40TCFというのはLNGに換算すると8億トンに相当
す る。2008年 のLNGの 価 格 は67,190円/ト ン な の で,
40TCFという天然ガスは50兆円以上の規模ということ
になる。また,2007年における日本のLNG総輸入量は
6152万トンであることから,13年分の輸入量に相当する。
5.2 生産手法
石油やガスは液体・気体であるため,坑井を掘削する
図−6 東部南海トラフにて掘削された坑井のLWDデータ(藤井,2009)
方法で5日間産出テストを行い,470m3のガスを回収し
た。その後,2008年に実施した試験では減圧による手法
で6日間産出テストを実施し(写真−4)
,累計13,000m3
のガスを回収し,減圧法が生産手法として有効であるこ
とを実証した。
6.今後の展望
写真−4 カナダにおける産出試験(JOGMEC提供)
ことで採集することが可能であるが,メタンハイドレー
トは,地下では氷と同じ固体であるため,そのままでは
採集できない。まず地下で分解して気体にしなければ採
集することはできない。どうやって気化させるか,とい
うことであるが,再度メタンハイドレートの安定条件(図
−1)を思い出していただきたい。メタンハイドレート
は低温高圧の条件下で安定であるのだから,高温あるい
は低圧にすることで気化させることができる。この生産
手法の評価のため,生産シミュレーターを開発して検討
を行ったところ,主たる手法として減圧法が効果的であ
ることがわかった。
この生産手法の実証のため,カナダ北極圏の永久凍土
下に賦存するメタンハイドレートに対して産出試験を実
施した。2002年の第1回目の試験では温水を循環させる
2009年から始まったフェーズ2においては,日本周辺
の海域においてメタンハイドレートの産出試験を行う計
画となっている。さらに2016年にはフェーズ3に移行し,
商業的産出のための技術の整備や環境保全に配慮した開
発システムを確立することが目標となっている。今後の
課題をまとめると下記のようになる。
a 他の海域でのメタンハイドレート賦存状況の評価
東部南海トラフにおける調査・研究を通じて得られた
知見をもとに,他の海域でのメタンハイドレート賦存状
況評価を進める。
s より長期にわたる産出試験の実施
カナダ陸上での産出試験は6日間であった。今後はよ
り長期にわたる産出試験を行い,メタンハイドレートか
らのメタンガス生産の長期生産性,生産挙動,生産障害
などについて検証する。
d 海洋における産出試験の実施
わが国ではメタンハイドレート資源が海域に賦存して
いることから,海洋におけるメタンハイドレートの産出
試験を行う。この試験を通じて採集方法の検証を行い,
同時に技術課題を抽出する。
2009・11・建築設備士 19
f 生産手法の高度化に必要な技術開発や開発シス
テムの最適化の検討
メタンハイドレート層からガスを経済的に生産するた
め,より効率的な採収法・生産技術の開発や,経済性向
上のための掘削・開発システムの検討を行う。
g 環境影響の把握と評価手法の確立
メタンハイドレートの資源開発においては,海底や坑
井周辺からのメタン漏洩,地層変形等の環境に与える影
響を考慮する必要があり,環境影響を予測・評価するた
めの技術開発が必要である。このため,海洋産出試験に
おける環境リスクの抽出・特性把握・対応策の検討を行
い,あわせて,商業生産をめざして環境影響評価手法を
確立する。
Worldwide Distribution of Subaquatic Gas Hydrate.
Geo-Marine Letters, 13, p. 32-40, Springer-Verlag, 1993.
3)Kvenvolden, K.A., and Lorenson, T.D.: The Global Occurrence of Natural Gas Hydrates. in Paull, C.K. and
Dillon. W.P.,(ed)
“natural Gas Hydrates, Occurrence,
Distributions and Detection”
, Geophysical Monograph
124, p.3-18, 2001.
4)石油公団,石油資源開発㈱,帝国石油㈱,東京ガス㈱,
大阪ガス㈱,日本海洋掘削㈱,㈱テルナイト,電源開発㈱,
AOCエネルギー開発㈱,インドネシア石油㈱,東邦ガ
ス㈱:メタンハイドレート開発技術総括報告書,石油公
団石油開発技術センター,2000年
おわりに
5)松本良,奥田義久,青木豊:メタンハイドレート 21世
1990年代の半ば,地質学雑誌や地質調査所月報などの
学術雑誌がメタンハイドレートを特集として取りあげ,
これが契機となって経済産業省の諮問機関である石油審
議会などの場で資源化の論議が始まり,今日の流れと
なっている。
従来,メタンハイドレートは氷の塊として海底下に分
布すると考えられていた。しかし実際の東部南海トラフ
の調査を通じ,砂層の孔隙中を充填する形で分布するこ
とが明らかとなった。また,生産手法も減圧法によって
採集できることを実証できた。すなわち,石油・天然ガ
スの開発技術の応用によってメタンハイドレートが開発
できる期待が出てきたのである。開発技術が確立し,商
業化が実現すれば,エネルギーの安定供給に大きく貢献
することになろう。
フェーズ2では海洋産出試験,フェーズ3では商業生
産のための技術整備が主題であるが,一番の重要な課題
のひとつは環境への負荷をいかに抑えるか,ではないだ
ろうか。単なる採集技術の研究だけでなく,環境への影
響評価,環境リスクマネジメントなどの努力も必要であ
る。
メタンハイドレートに限らず,オイルシェール,オイ
ルサンド,タイトサンドガス,コールベッドメタン,
シェールガスなどが非在来型資源として挙げられる。こ
れらの中には商業生産を行っているものはあるが,商業
化に至るまでには地道な努力があってこそである。メタ
ンハイドレートに関しても今後の研究開発を長い目で見
守ってもらいたい。
最後に,本稿の発表の許可をいただいた経済産業省・
資源エネルギー庁およびメタンハイドレート資源開発研
究コンソーシアム,石油天然ガス・金属鉱物資源機構に
謝意を表します。
参考文献
1)森島宏:天然ガス新世紀,㈱ガスエネルギー新聞,2003
20 建築設備士・2009・11
年4月
2)Kvenvolden, K.A., Ginsburg, G.D., and Soloviev, T.D.:
紀の巨大天然ガス資源,日経サイエンス社,1993年12月
6)経済界,2008年12月16日号,66-67ページ
7)Collett, Timothy S.: Natural Gas Hydrate as a Potential Energy Resource, in Max, M.D.(ed), Natural Gas
Hydrate in Oceanic and Permafrost Environments, P.
123-136, Kluwer Academic Publishers, Printed in the
Netherlands, 2000.
8)佐藤幹夫,前川竜男,奥田義久:天然ガスハイドレート
のメタン量と資源量の推定,地質学雑誌,第102巻第11号,
959-971ページ(1996年11月発行)
9)林雅雄,中水勝,長田順子:メタンハイドレート−資源
量評価研究の経緯と最新の成果−,石油・天然ガスレ
ビュー,第41巻5号,P.57-68.(2007年9月発行)
10)Fujii, T., Namikawa, T., Nakamizu, M., Tsuji, Y.: Models of Occurrence and Accumulation Mechanism of
Methane Hydrate, Result of METI Exploratory Test
Wells“Tokai-Oki to Kumano-Nada”
, in Proceedings of
the Fifth International Conference on Gas Hydrate,
2005.
11)藤井哲哉:メタンハイドレート資源開発の最新動向 第
3章メタンハイドレート層の検層技術と貯留層特性,地
盤工学会誌,社団法人地盤工学会(2009年11月発行予定)
(平成21年4月20日 原稿受理)
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