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広島大学医学部保健学集談会演題,抄録および質疑応答

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広島大学医学部保健学集談会演題,抄録および質疑応答
広大保健学ジャーナル,Vol, 4
, 2005
広島大学大学院保健学研究科保健学集談会(演題名・抄録・質疑応答)
(平成16年11月∼平成17年 2 月)
第34回 保健学集談会
平成16年11月17日(木)午後3時 開催予定
開催せず
第35回 保健学集談会
平成16年12月16日(木)午後3時 開催予定
開催せず
第36回 保健学集談会
平成17年1月20日(木)午前10時∼
於:保健学科棟203号講義室(博士(保健学)に関連する発表)
1.早産児における神経学的評価と短期予後との関連について−Dubowitz 神経学的評価によ
る−
広島大学大学院医学系研究科博士課程後期 烏山 亜紀
新生児集中治療室に入院し治療・管理を受け,明らかな脳障害や奇形・染色体異常のない早産児 57名を対象に,
出産予定日頃に Dubowitz 神経学的評価を行った.出生体重,在胎週数により対象児を4群に分類し検討した.また
Light−for−dates 児(出生時体重が出生時体格基準曲線の 10パーセンタイル値未満の児)と,Appropriate−for−dates
児(出生時体重が基準の範囲であった児)の2群間の比較検討を行った.Dubowitz 神経学的評価のスコアでは有意
差を認めず,出産予定日頃の神経学的状態は,早産・低体重や Light−for−dates の影響を受けないものと考えられた.
また運動発達の短期予後を従属変数としたロジスティック回帰分析の結果は,新生児期の周産期要因は関連せず,
Dubowitz 神経学的評価との関連が有意であった.このことから Dubowitz 神経学的評価が運動発達の短期予後を知
る上で有用であることが示唆された.
【質疑応答】
質問1:短期予後と長期予後の定義について説明してください.
回 答:研究では実際の判断時の修正年齢が4∼19カ月の範囲であり,長期予後の最初の段階となる3歳以前の運
動発達の判断なので,短期予後と定義しました.長期予後について今回は追跡調査を行っていませんが,
先行研究では3歳以降を長期予後と定義して比較しているものが多くあります.
質問2:長期予後を改善する上で,短期予後を評価する意義をどう考えますか.
回 答:今回は長期予後まで調査を行っていませんが,短期予後を知ることでフォローアップの対象の選択・方法
についての問題点を考える一助になると考えます.
質問3:他職種(医師,看護師など)が早産児に関与していると思われますが,今回研究した理学療法士の立場か
らの神経学的評価の必要性はどの辺にあったのか説明してください.
回 答:評価という点ではおおまかな評価が医師により行われることもありますが,周産期要因から発達にリスク
がある症例については理学療法士による詳細な運動機能の評価を行う必要があります.またフォローアッ
プの対象の選出という点においても理学療法士によるフォローか,医師による定期検診のみでいいかどう
かという事を判断する上で,理学療法士による評価の必要があると考えます.
2.作業活動に伴う対象者の実感に関する研究−統合失調症者の身体感覚の自覚に注目して−
広島大学大学院保健学研究科博士課程後期 新宮 尚人
精神障害に対する作業療法において,作業活動に伴う対象者自身の実感を含めながら治療構造を検討した報告は
少ない.演者は先行研究において,作業活動に伴う実感について尋ねる OT 治療要素経験尺度を作成し社会生活能力
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との関連を検討し,作業活動に伴う身体性に関する因子が関係することが示唆された.そこで本研究では,本質問
票の信頼性・妥当性を確認した後に,21名の統合失調症者に対して週1回 60分の運動プログラムを内容とする作業
療法を8週間実施し,『身体感覚の自覚』因子の得点推移から,その因子に関連する要因を検討した.その結果,重
回帰分析により,BAS(Body Awareness Scale)の「観察による精神病理学所見」のみが説明変数として抽出され,
特に感情変化が関係していることが示唆された.本結果は,作業療法における身体運動が統合失調症の回復になぜ
効果があるのかという疑問に1つの根拠を提示しており,今後の作業療法の治療戦略を考えるきっかけを与えたと
思われた.
【質疑応答】
質問1:拒否された対象者に対してむしろ身体感覚を促すような作業療法の提供が有効になるような場合があるの
ではないか,そのような対象者にはどのような研究が適切だと考えられるか.
回 答:拒否された対象者の中には,十分に急性状態を脱しておらず外界との接触に恐怖感を持つ者がいたと推測
される.このような対象者は,身体プログラムに参加することで離人体験等が改善されるメリットを感じ
る段階には至っておらず,不安が先立ち拒否という意思表示をしたのではないかと推測される.対応とし
てはこの点に配慮し,個別でゆっくりとプログラムへ導入することが考えられるが,研究デザインについ
ては今後の課題としたい.
質問2:統合失調症の早期発見の現状と,介入時期による効果についてはどうか.
回 答:統合失調症の早期発見については,生物学的な研究に加え,児童期の頃からの病前性格分析や対人交流の
仕方などから発症を予測するなどの見方があるが,いまだ有効な早期発見法は見出せていないと思われる.
ただし再発については,症状悪化のサインについて本人と一緒に確認することが,退院指導時などでなさ
れている.作業療法の介入時期の効果については,回復段階によって異なってくると考えられている.例
えば,急性期直後は作業療法を行わず安静にさせることが原則となっており,その後は作業活動を用いて
適度な働きかけを行いながら徐々に回復を促進していくことなどである.
質問3:患者から情報を得る時の信頼性・妥当性についてどのように考えるか.また,OT 治療要素経験尺度37項目
のうち,因子分析の結果によって最終的に12項目の尺度となったが,その内容についてはどのように考え
るか.
回 答:本研究の対象者の適格条件は,質問の意図を理解し質問紙への記入が可能である者としたので,回答結果
に問題はないと考えている.しかし,その条件により対象抽出にバイアスが生じている可能性があること
が本研究の限界の1つであると思われる.因子分析の結果抽出された3因子構造12項目は,他の項目を代表
する内容のものであり,内容的に妥当な項目が抽出されたと考えている.
3.入院患者の在宅療養移行期における病院と訪問看護ステーションの看護者間の情報の共有
化に関する研究
広島大学大学院医学系研究科博士課程後期 柏木 聖代
本研究では,病院と訪問看護ステーション間で交換可能性のある情報の入院記録への記載実態把握目的の郵送調
査を,1999年2∼3月に実施した.分析対象の国立大学病院及び広島県内病院等計 46病院,171病棟の管理者の
90%以上が記載と回答した項目の多くは,患者属性,診療情報分類情報であった.従って,看護サマリー等の標準
化で情報共有化促進が可能と思われた.次いで,訪問看護ステーションの退院前訪問実態を明らかにする目的で,
2002年8∼10月に全訪問看護ステーションの約半数の 2,108事業所への郵送調査を実施した.回答 954事業所中,適
格条件に合致した 621事業所を分析した.退院前訪問の平均実施率は 35.4%で,病院併設有無,24時間連絡体制有無,
医療処置割合との関連を認めた(p<0.05).今後は,患者特性や地域特性を踏まえた情報共有化の検討が必要と考え
る.
【質疑応答】
質問1:独立型の訪問看護ステーションの退院前訪問実施率をあげるためには,どうすればよいか.
回 答:病院併設の訪問看護ステーションのように病院と特別な関係を有しない独立型の訪問看護ステーションは,
病院併設の訪問看護ステーションに比べて病院との日常的な関わり等も少ないことが先行研究で指摘され
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広大保健学ジャーナル,Vol, 4
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ている.このようなことを考えると,地域のケアカンファレンス等,関係職種が一堂に会する場に積極的
に参加するなど,訪問看護が必要な患者に関する情報共有にむけた積極的取り組みが必要であると考える.
また,退院前訪問で発生するコストへの保障が弱い現状から,退院前訪問への適正な経済評価を行うなど,
特に連携を図りにくい独立型の訪問看護ステーションと病院との連携促進にむけた政策的関与も重要では
ないかと考える.
質問2:疾患の種類や重症度で,訪問看護ステーションが必要とする情報は異なるか.
回 答:訪問看護ステーション側が情報を受け取る時期によって,患者特性によって必要とする情報が異なる場合
と,そうでない場合とがある.私が関わった別の研究では,訪問看護の受け入れを判断するための情報と
して,最も必要度が高かったのは「患者が訪問看護を希望しているのか」という情報であり,医療ニーズ
の高さやターミナル期であるか等,患者の重症度等によって必要性に違いはなかったという結果を得てい
る.また,受け入れを判断した後に交わされる情報については,患者の疾患の種類や重症度によって,必
要とする情報は異なると思われるが,本研究は訪問看護ステーションを単位として調査を行っているため,
この点については本研究結果からは明らかにすることはできない.今後の検討としたい.
質問3:訪問看護ステーションが患者を受け入れた後に必要な情報が不足している場合には,どのように対応して
いるか.
回 答:現在,訪問看護依頼の連絡を受け取った後に訪問看護ステーションが情報を入手する手段として看護サマ
リーが最も多く使われている.本研究では,患者を受け入れた後の情報収集手段については検討していな
いが,発表者らによる別の研究の結果,文書により必要十分な情報が得られなかった場合には,訪問看護
ステーション側は病院や関係機関へ電話で追加情報を求めたり,FAX を活用して必要な文書を送信しても
らう等で対応しているという現状が明らかになっている.さらに,情報内容によっては,訪問看護ステー
ション側が直接病院に出向いて,情報収集を行ったり,患者や家族に直接確認する等の対応がとられてい
る現状も明らかになっているが,いずれも限られた対象へのヒアリング調査の結果であり,その実態は明
らかになっていない.
4.子育てのための地域ケアシステムづくりを目指す保健師の技術と活動方法 −地域子育て支
援事業の実践過程に焦点を当てて−
広島大学大学院医学系研究科博士課程後期 岡田 麻里
本研究の目的は,子育てのための地域ケアシステムづくりを目指す保健師の技術と活動方法を説明する概念を明
らかにすることである.研究方法は,理論的サンプリングと継続的比較分析を行った.研究対象は,4つの政令指
定都市で実施された 13の地域子育て支援事業の実践過程である.データ収集法は事業を担当した 16名の保健師に実
践過程を半構成的に面接調査した.併せて,参加観察,質問紙の活用,活動記録などの資料の収集を行った.その
結果,保健師の技術を説明する3つのコアカテゴリーが明らかになった.子育てしにくさの分析とは,子育ての情
報を頭の中で分析することによって子育てしにくいメカニズムが働いていることがだんだんと見えてくる過程であ
る.母親のニーズの企画化とは,母親のニーズを目に見える形にし,支援体制をつくっていく過程である.地域住
民のケア関係を育てる技術とは,母親の自立と地域住民の主体性を念頭においたケア関係を育てるための関わりの
技術である.保健師は実践過程においてこれらの技術を一連の活動方法とし実践することの重要性を考察した.
【質疑応答】
質問1:シンボリック相互作用の理論が本研究の中でどのように展開されているのか,具体的な例を示して下さい.
回 答:本研究では,地域子育て支援事業を実践する過程において,保健師の面接データから繰り返しあらわれる
内容を意味あるものとして解釈し,保健師の技術として概念化することを目的としました.すなわち,保
健師と関わった人々との間に生じた社会的相互作用に注目し,そこでなされている保健師の象徴的(シン
ボリック)な行動,象徴的な(シンボリック)ものの見方を意味あるものとして解釈することです.つま
り,それはある法則性をもち,保健師の技術として概念化できると考えているからです.例えば,保健師
は,「子育て中の母親は転勤族が多く,担当する地域は新しい高層のマンションが建ち,そのようなマンシ
ョンに住むのは子育て中の母親が多い」ことをとらえていました.これは,子育てを中心とした地域住民
の関わり合いを把握しようとする(母親と保健師,地域と保健師の社会的相互作用における)保健師の象
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徴的(シンボリック)な見方であると解釈しました.
質問2:理論の構造は何か,概念間の説明がされていない.概念の関連,関係が発生することに与えられる要因は
何か?
回 答:本研究の目的は,継続的比較分析によって子育てのための地域ケアシステムづくりを目指す保健師の技術
と活動方法の特質を明らかにすることです.その結果『子育てしにくさの分析』『母親のニーズの企画化』
『地域住民のケア関係を育てる技術』という3つのコアカテゴリーを保健師の技術を説明する特質として抽
出しました.これらの概念間の説明や概念間の関連を説明し,理論化に結びつけていくのは今後の課題で
す.
質問3:具体的に地域子育て支援の方法としてどのようなものがあるのか?
回 答:地域子育て支援事業における子育て支援の方法としては,地域子育て支援連絡会の開催,育児教室,育児
サロン,育児グループ育成支援などが行われています.これらは,地域における子育てを支援する社会資
源として非常に意味があると考えます.一方,本研究では,保健師がいかにそれらを立ち上げていったか,
それによって日常生活の中で人々の間にどのような関わり合いが育っていくかを重要視しました.すなわ
ち,『地域住民のケア関係を育てる技術』によって,子育てをサポートする人々のケア関係,母親同士のケ
ア関係,子育てをサポートする人々と母親集団のケア関係をつくることが,きめ細やかな地域子育て支援
の方法として求められています.
質問4:実際,母親はどのようなことを望んでいるのか?
回 答:このご質問は,本研究を通して回答します.地域子育て支援事業を立ち上げた保健師が気づいた母親が求
めていることは子どもを遊ばせながら母親同士楽しくおしゃべりすることであり,母親にとって必要なこ
とは地域の人々に子育てに関わってもらいながら母親として成長していくことでした.その背景には子育
てしにくいメカニズムが働いている地域の実態があります.さらに母親になる前に子どもと接する機会を
ほとんどもたない今の母親たちにとって,子どもを遊ばせながら母親同士楽しくおしゃべりするという体
験は,他の母親の子育てからも学び,子育ての現実と負担を他の母親と共有することによって心地よさを
体験するという大きな意味があります.それは,母親が自分の力で母親同士の友達や子育ての仲間づくり
をする一つのプロセスであり,そのような母親集団のなかに,地域の子育てボランティアや保育士らをも
巻き込むことは,子育てしやすい地域ケアシステムづくりを目指すことに結びつくと考えられました.
5.物理的環境が痴呆性高齢者の QOL に及ぼす影響
広島大学大学院保健学研究科博士課程後期 久野 真矢
高齢者施設共用空間の畳空間や仕切りを使った環境設定と痴呆性高齢者の QOL の関連について検討することを研
究目的とした.高齢者施設の食堂空間や畳空間の設定状況調査(研究1),痴呆性高齢者が営む社会的交流の評価指
標(研究2)について検討を行い,畳空間(研究3)と仕切り(研究4)の検討を行った.その結果,共用空間に
は動線上になじみがある畳空間や機能的で安全な洋式家具空間といった座る場を設定することで,主観的評価が高
まり行動や社会的交流が促されること,食堂空間ではテーブルの周囲に仕切りを設置することで主観的評価が高ま
り,特に軽・中等度痴呆には重要な QOL 要素である情動や社会的交流が促されることが明らかとなった.
【質疑応答】
質問1:同じ環境条件で畳とその他の素材を用いた場合の比較を行った場合では結果が異なったのではないか.
回 答:今回の検討では,畳以外の素材を用いた環境設定についての検討は行っていません.先生のご指摘を参考
に今後の検討課題とさせていただきます.
質問2:仕切りに関して空間の大きさをどのように決定したのか空間の捉え方を教えてほしい.
回 答:空間の大きさには仕切りの高さが関係すると思います.本研究で検討した仕切りの高さについては,
Pulgram らが提示している仕切りの高さとプライバシーの確保の関連を参考にいたしました.具体的には,
椅子に座って過ごす空間では視線の高さがプライバシーを保てる限界の高さとされています.また,天井
まで仕切られている場合は,逆に窮屈感を生じさせるので不適切といわれています.従って,座ったとき
の視線の高さから頭が隠れる程度の高さまでを仕切りの高さにしました.
質問3:社会的交流の向上がみられたということであるが,活動性の向上と同義と捉えてよいか.活動性の評価は
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どう扱ったのか.
回 答:社会的交流は活動性を表す一部の指標と考えています.活動性の評価は,社会的交流以外に今回の検討で
は行っていません.
6.The cardiovascular responses and renal function during natural micturition(自然排尿時
の循環動態と腎機能の調節)
広島大学大学院医学系研究科博士課程後期 松本 睦子
麻酔下動物実験において膀胱伸展時の膀胱求心性神経の興奮は,交感神経活動を増加させ心血管系の変調や尿量,
腎血流量の低下をもたらすと示されている.しかし人間や意識下動物の排尿時に膀胱内圧がどの程度上昇するのか,
膀胱から心血管系や腎への反射が起こるかどうかは不明である.本研究は排尿時の膀胱内圧,膀胱−心血管反射,
膀胱−腎反射を調べることを目的にヒトと意識下ラットの排尿時にみられる循環応答を検討した.ヒトで排尿抑制
すると尿量は減少したが尿電解質排泄は変化しなかった.心血管応答は抑制排尿で亢進した.意識下ラット排尿時
の膀胱内圧上昇は 10 mmHg と低圧ながらも十分に心血管応答を引き起こした.意識下排尿時の循環調節は主に膀胱
からの反射で起こることを示した.人間や意識下動物の排尿時にも膀胱求心性神経を興奮させる内圧上昇は起こっ
ており,交感神経活動増加を介して心血管や腎への反射が起こり得ると示唆された.
【質疑応答】
質問1:膀胱反射に伴って血圧上昇と心拍数上昇が起こることの生体への意味を教えてください.
回 答:膀胱内圧上昇に伴う血圧上昇,心拍数増加について,多くの先行研究ではそのデメリットである血管収縮
や心血管の変調が問題視されています.生体にとっての意義(メリット)としては,膀胱内圧上昇による
交感神経活動の上昇が各臓器レベルにおける機能調節に働いている可能性があると考えられます.また,
排尿中枢が仙髄排尿調節と循環系調節の統合に働くという先行研究の結果があることから,排尿に至るま
での副交感神経興奮による徐脈や膀胱内圧の過上昇を防ぐ生体のアラームシステムの役割を担っている可
能性もあると考えられます.
質問2:排尿障害(二分脊椎のような)により,定期的に自己導尿によって排泄しなければならず,日常的に膀胱
内圧が上昇してしまう可能性のある人々が自己管理していく上での示唆はありますか.
回 答:臨床において,導尿時に腹圧をかけることによって排尿の補助をすることがあります.膀胱内に多量の尿
が貯留している場合には,腹圧をかけることによって尿管や腎への逆流のリスクが大きくなると思われま
す.また腹圧上昇による静脈還流の低下が循環血液量の減少をもたらすことで,排尿に関連した心拍出量
の低下や排尿失神のリスクを高めることにつながると考えます.この危険性を考慮して導尿を行うことが
必要だと思われます.
質問3:実験結果に性差が影響されると思いますか.
回 答:今回のヒトを対象にした実験においては女性のみを対象にしましたが,男性と女性では基礎代謝量が異な
ること,女性には月経があり黄体期にはプロゲステロンにより体内に水分が保持されることなどから考え
ますと,性差は尿量変化に影響を及ぼすと考えられます.また女性でも月経周期により尿量の差が生じる
可能性があると思います.今回の実験では月経周期を考慮し卵胞期に実験を行っておりますが,性差の有
無や月経周期による差に関して今後の実験として検討していきたいと思います.
質問4:膀胱内圧の上昇時間が及ぼす影響はありますか.
回 答:今回のデータには含まれておりませんが,本研究の意識下ラット実験モデルと同じモデルに対して膀胱内
に生理食塩水を注入したところ,膀胱内注入直後には排出が見られず,注入後 10∼25秒経過後に排尿反射
によって自発的排出が現れました.10秒の膀胱内圧上昇時間と 25秒の上昇時間では,同じ膀胱内圧の大き
さであれば持続時間による昇圧応答の変化はありませんでした.実験結果から考えますと,膀胱内圧上昇
の大きさによって血圧上昇,心拍数増加程度は影響しますが上昇時間にはあまり影響しないと思われます.
117
7.デモンストレーション提示方法の違いにおける「無菌操作」技術の習得に関する経時的変
化についての研究−基礎看護技術の効果的教育方法の検討−
広島大学大学院医学系研究科博士課程後期 松永 保子
被験者 60人の達成動機を測定後,「無菌操作」の1技術「鑷子の扱い方」に関する専門知識を提示後に,30人に教
員が学生の目の前で実際に身体を動かして技術を実施するデモンストレーション(実デモ),残り30人には同じ内容
のビデオを視聴させるデモンストレーション(ビデオデモ)を提示し,提示直後,1週間後,1ヵ月後に筆記テス
ト・技術テストによる評価を行い,デモ提示方法の違いによる提示後の知識・技術再生の経時的変化を比較した.
その結果,知識・技術再生がビデオデモ群で1週間後に低下したが,実デモ群は低下しなかった(p<0.05)
.しかし,
実デモ提示においても10ヵ月後の技術の保持・再生は知識に比べて低下した(p<0.05).今後は,技術の保持・再生
に効果的な教育方法の検討と反復訓練の効果の確認,より複雑な技術での結果確認が必要と考える.
【質疑応答】
質問1:看護実習にシミュレーション方式を利用することの可否について.
回 答:看護教育の当初より,看護技術を学習する方法として,シミュレーション方式が行われており,有効な学
習方法の一つと考えております.多く用いられる方法は,学生がお互いに模擬患者役となる方法です.代
役としてのモデル人形も多種市販されており,CAI(Computer Assisted Instruction)教材なども開発されて
いますが,それらを使用することで,看護技術の学習理解を深めていると考えます.
質問2:1.実デモとビデオデモの被験者の視距離は同じ様に設定されていたのか.
2.この実験の時には,実技練習は行っていたのか.
回 答:1.デモ内容は,ビデオデモも実デモも全く同じ物を同じ手順で同じナレーションで行いました.そして,
ビデオが画面に映し出された時に,ビデオデモ群の被験者がビデオの中の鑷子立てと万能つぼを見る視線
角度と,実デモ群の被験者が実物の鑷子立てと万能つぼを見る視線角度が同じになるように,ビデオを作
製しました.また,ビデオの中の鑷子が入っている鑷子立てと万能つぼが,実デモ鑷子立てと万能つぼと
同じ大きさで画面の中央に映し出されるように作製しました.このように,同じ様になるよう設定したつ
もりです.
2.本研究では,単純に,一度のデモの体験が及ぼす影響のみを追跡する目標としたので,他の要素とな
る「練習」は行いませんでした.練習の効果についての報告は,別の技術を対象にして散見します.従っ
て,今回,練習を組み込んでいたら,違う結果を得る可能性があります.練習の効果については,今後,
確認していきたい課題と考えています.
質問3:1.筆記試験は10ヵ月経過しても得点が下がらないが,そうであれば,こういうものは1回の確認で万全
と考えてよいか
2.実技については10ヵ月で1点くらい低下しているが,これが意味するものをどう考えるか.
回 答:1.1回の確認で万全とは全く考えておりません.本研究での「無菌操作」の1技術「鑷子の扱い方」を
用いた場合においては,今回のような「下がらない」結果となりましたので,このようなかなりシンプル
に整えた内容であれば,今回のような結果を得る可能性があると考えます.複雑な内容であれば如何な結
果が得られるか,確認する必要があると思います.
2.今回,技術テストを11項目で評価しましたが,どの評価項目も無菌操作を保つ上で大切なポイントで,
1つでも出来なければこの技術としては成立しないものです.そのため,1点低下したといえども,大き
な意味を持つと考えます.今回の目的からは全体の評価で十分であると考え,評価項目毎の分析を提示し
ておりませんが,技術指導方法の立場からは,どの項目が出来なかったかを明らかにし,その項目の学習
が可能なように技術指導する検討が必要と考えます.今後,その検討も行いたいと思います.
質問4:デモンストレーションに加えて,練習することが技術習得に重要であるとのことであるが,カリキュラム
の面から,全ての技術操作において可能であるか.
回 答:どちらの教育機関においても,カリキュラム中の基礎看護技術演習に与えられた時間には限りがあり,全
ての技術を講義・演習・実習で教授し獲得させることは,不可能です.そこで,技術を精選し構造化して
得られる基本的技術については,確保することが重要であると考えます.
なお,そうした基本技術さえも,習得するための練習時間を時間割に組み込む余裕はほとんど無いと思い
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ます.そこで,学生自身が時間外に練習できるような環境を整えて,学生が興味を持つような技術指導の
工夫と同時に,学生が自発的に練習するような動機づけをする必要があると考えます.
第37回 保健学集談会
平成17年2月10日(木)午前8時30分∼
於:保健学科棟203号講義室(博士(保健学)に関連する発表)
1.2型糖尿病の疾病管理プログラム開発に向けた患者アセスメント・アルゴリズムの作成
広島大学大学院保健学研究科博士課程後期 中野 眞寿美
増加する2型糖尿病患者に対し,疾病管理の手法を用いて自己管理教育の実践を行うために必要となる患者アセ
スメント・アルゴリズムを作成した.
まず自己管理に影響する因子を過去10年間の文献から抽出,それをもとに質問紙調査を行い,因子間の関係性を
パス解析で求めた結果,HbA1c値が 8.0%以上の患者群で,13%の分散が説明できるパス図を作成した.これより,
米国における階層化の考え方を加え,自己管理行動を起こす前に解決すべき問題を抱える者を特定し,ケースマネ
ージメントに移行させた上で,Locus of Control の所在,自己効力感の高さ及び重要性の認識と行動変容の段階を考
慮した介入,教育プログラムの提供を実践するアセスメント・アルゴリズムを考案・作成した.また,わが国で疾
病管理を展開するための現状調査として,糖尿病ガイドラインや診療実態を分析し,自己管理に影響する心理社会
的側面へのアプローチ不足が明らかとなった.
【質疑応答】
質問1:アルゴリズム作成を行う対象者選定において,無症状者と有症者(合併症有)は,分けて検討される方が
良いのではないか?(あるいは,分けての結果の相違はないか?)
回 答:調査の時点で,除外基準を設定し,合併症を有していても,日常生活に支障がないこと,他者の援助を必
要としないことを挙げていた.よって,合併症を有していても,無症状者での検討となっている.
質問2:糖尿病は,男性が多いと思うが,その要因は何か?
回 答:要因としては,職業を有しており,食事療法の順守が出来ない機会が女性に比べて多いこと,喫煙・飲酒
の機会が多い事が挙げられる.
質問3:糖尿病の早期発見と教育・指導が行動変容を起こしやすいと考えるが,この点についての意見を聞きたい.
回 答:発症予防が最も重要と考えるが,本研究に関しては,対象患者の選定が困難な状況であった.しかし,慢
性疾患においては,自己管理による発症後の病状コントロール,つまり,合併症予防と悪化を防ぐことも
重要である.また,医療費は,合併症併発後に増加し,病状の悪化は,就労困難なども生じ,社会的損失
も大きい.そこで,3次予防に主眼を置いた.
質問4:文献レビューで,糖尿病の指導に関する要因,概念を抽出して,それらの概念からパス分析を行って,最
終的にアルゴリズムを作ったことは判った.非常に低い寄与率のパス分析から作ったアルゴリズムの提示
で研究が終わっている.本来は,ここから博士課程の EB 研究(根拠のある医療の研究)を始めるべきと思
う.これが出来なかったのはなぜなのか.
回 答:アルゴリズムの作成の基礎調査として,膨大な文献検索,及び,介入に必要なガイドライン,教育プログ
ラムの検索に時間を要したため,介入の時間的制約が生じた.ただし,現在,科学研究班の一員として,
介入プログラムを作成し,実際に介入を行っている.しかし,一般的に,介入は最低6ヵ月∼1年が必要
であり,現時点で発表できる段階までに至っていないため,本研究ではアルゴリズム作成までの発表を行
った.
2.高齢者に対するアドバンス・ディレクティブの啓発活動の効果に関する研究
広島大学大学院保健学研究科博士課程後期 松井 美帆
本研究では,高齢者に対するアドバンス・ディレクティブの啓発活動の効果を検討した.終末期ケアの意向につ
いては一般高齢者 313名と大学病院入院患者 52名では相違を認め,入院高齢患者では延命治療を「希望しない」と
119
した回答が多く,アドバンス・ディレクティブの支持は有意に低かった.次いで一般高齢者を対象としたアドバン
ス・ディレクティブへの賛同要因としてリビング・ウイルの認知度,延命治療の意向,死に対する態度,家族や医
療従事者との終末期ケアに関する話し合い等が関連していた.これらの調査をもとに一般高齢者121名を対象にアド
バンス・ディレクティブの啓発活動を行った.その結果,延命治療の意向,リビング・ウイルの支持,アドバン
ス・ディレクティブの知識に変化がみられた.また,介入プログラムの受入についても介入群で10段階中8.55と高く,
終末期ケアの話合いに関しては1カ月後評価では約2倍の効果を認めた.
【質疑応答】
質問1:アドバンス・ディレクティブと人の死生観,特に宗教との関連をどう考えるか.
回 答:今回の介入プログラムでは,アドバンス・ディレクティブの支持に関連していた延命治療の意向,アドバ
ンス・ディレクティブの知識等を内容としましたが,死の準備教育などについても信仰心に配慮した上で,
今後,高齢者に受け入れられる形で行っていくことが重要と考えられます.
質問2:King の相互作用システムを基礎的な枠組みに使っているが,その中で婚姻状況や世帯構成などは個人シス
テム,個人間システムではなく,社会システムの中に割り付けるのは適当でしょうか.
回 答:婚姻状況,世帯構成に関わる家族が社会システムに含まれていたため,このような適用としました.しか
し,全ての概念は人間と環境との相互作用に関連していますから,概念をどのシステムに配置するかは任
意的なものであるとされております.
質問3:本研究で,数多くある看護理論の中には哲学的理論もあるが,King の理論を用いた理由は何か.
回 答:King の相互作用モデルはシステム理論と相互作用理論の両方の特徴を併せ持ち,アドバンス・ディレクテ
ィブの賛同要因など複雑な現象を捉え,啓発活動といった本研究課題の枠組みを示す上で適切と考えられ
ます.また,アドバンス・ディレクティブの意思決定モデルの基礎として本モデルが有用であったとする
報告もみられたためです.
3.早産児の痛みのアセスメントのためのフェース・スケールの作成と信頼・妥当性の検証
広島大学大学院保健学研究科博士課程後期 阿部 明子
在胎 32週未満の早産児を対象に,顔面表情運動の定量に基づいた痛みのアセスメントのためのフェース・スケー
ルを作成し,その信頼・妥当性を検証した.侵害受容性刺激に対する顔面表情の定性的・定量的分析結果と対象の
特性・処置との関連から,痛みの反応はレベル1∼3の3段階に集約され,文献上認められた反応を加えたレベル
0∼4の5段階から成るスケールを作成することができた.信頼・妥当性の検証では,評定者間信頼性ではかなり
の一致を得,評定者内信頼性では検証方法上の限界があったが,中等度の一致を得ることができた.また,併存的
妥当性では,既存のペイン・スケール PIPP との相関は高かった.以上より,本スケールは,早産児の痛みのアセス
メントのために,日常的に使用できるものと考えられた.
【質疑応答】
質問1:痛かったら泣いたりするが,空腹などの痛み以外の原因のものがあると思われる.このような他の要因か
らも,顔をしかめるという表情は起こると考えられるように,(日常的に)なんとなく気分が悪いなどもあ
るが,その辺のところをどのように判断できると考えているか.
回 答:出現した反応に先行する刺激が明らかに痛みを引き起こす刺激である場合には,痛みに対する反応である
と判断できるが,「気分が悪い」などという不快というような感覚に対する判断は,早産児では不快に対す
る反応と情緒発達が明らかにされていないので,反応が出現する状況から,お腹が空いているのか,光や
音の刺激が過剰なのか,などの他の要因を考え,痛みであるか不快であるかを判断している現状です.
質問2:評定者内信頼性が評定者間の信頼性よりも低い理由は?
回 答:本研究では,状況が再現不可能であったため,評定者内の観察にビデオ画面を用いたが,ビデオ画面では
画質や光の反射の影響で,皺が入っているのか,色が変化しただけなのかの区別がつき難く,判断が難し
いため,個人内の一致度が低くなったものと考えます.
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広大保健学ジャーナル,Vol, 4
, 2005
4.手関節自動関節運動改善のアプローチ法の検討
広島大学大学院保健学研究科博士課程後期 新井 光男
整形外科疾患患者群において拮抗筋を伸張位にしない状態での上肢静止性収縮後に手関節自動関節可動域が変化
し, PNF(固有受容性神経筋促通)肢位での静止性収縮(直接的アプローチ)が短縮位保持収縮角度の変化に有効
であることが示唆された.また,痛み等により,上肢へ直接アプローチ(当該関節筋群の静止性収縮)できない場
合の変法として,骨盤の後方下制の静止性収縮を促通する抵抗運動(Static Contraction of Posterior Depression;
SCPD)の効果を検証した.健常群・患者群とも骨盤への SCPD 手技が上肢の静止性収縮よりも手関節屈曲の短縮位
保持収縮角度が大きくなった.健常者への SCPD 手技が橈側手根屈筋のH波に影響を及ぼす遠隔反応を検証した結果,
SCPD 手技後のM波は安静時と運動後に変化が無かったにも関わらず,SCPD 手技に橈側手根屈筋H波振幅値は運動
時は小さくなり抑制作用が示唆され,運動後20秒以後にH波振幅値は大きくなったことより促通作用が生じること
が本研究で初めて検証できた.
【質疑応答】
質問1:今回の結果に対しては脊髄レベルだけで説明できるのか,あるいは皮質,間脳等の関与も考える必要があ
るか生理学的機序について説明をお願いしたい・
回 答:H波(反射)は脊髄内で形成されるものであるが,脊髄レベルでも種々の因子が働いて抑制をかけH波に
強い影響を与える.SCPD 群の遠隔筋の収縮による橈側手根屈筋の反応は,文献レビューの結果,3つの反
射の影響や仮説が考えられる.
①上行性の脊髄固有反射
下部体幹の刺激が上行し興奮性の反応が生じるが今回の反応は抵抗運動時は抑制性でありオーバーフロー
等の興奮性の反射とは考えにくい.
②長経路反射の影響
脳幹レベルまでインパルスが上行し橈側手根屈筋に下行性に影響を与える長経路反射 の影響が考えられ
る.発表者の SCPD の総指伸筋の長潜時反射に及ぼす影響は短絡現象が観察されており,脳幹レベル以上
の関与が考えられる.
③中枢パターン発動
ラットでは仙髄の刺激により前肢の動きが誘発される中枢パターン発動の報告があります.中枢は延髄
網様体とされ,上肢筋群と下肢筋群の柔軟な神経学的連結が生じている可能性が示唆されています.
SCPD 手技による刺激は,長経路反射あるいは中枢パターン発動を促すことにより手関節屈曲自動関節運
動の活動に影響を及ぼすと推測できます.
質問2:本研究実施のために必要な PNF テクニックを習得するには,トレーニングはどれくらい必要ですか?
回 答:研究1の手技はトレーニングはいりません.SCPD は PNF 手技の PD(Posterior Depression;後方下制)
から発展させて発表者が考案した手技です.PNFを習得して1∼2ヵ月必要です.
質問3:今回の結果が実用的な効果,社会参加に結びつくことはまだ検証されていないのか?
回 答:経時的効果としては,ストレッチをコントロールにして比較した結果,4週目から有意に SCPD が他動関
節可動域,自動関節可動域の改善が見られています(未発表).また,短縮域保持収縮角度が増大すること
から新たな可動域での短縮域保持抵抗収縮が可能になり,筋再教育に有益なアプローチであり,筋力の回
復が早い傾向にあります.
5.在宅介護者の介護家族負担尺度の開発
広島大学大学院保健学研究科博士課程後期 坪井 章雄
本研究は,高齢者を介護する家族の負担感を評価する簡便な尺度を新たに開発することを目的として行った.第
1章の文献検討をもとに,研究Ⅰでは,介護負担感に関する概念規定を明確にする.介護負担感に関与する因子を
明確にする.対象である介護者やケアの受け手の多様な特性をふまえた調査を実施し「仮介護家族負担尺度」を作
成した.研究Ⅱでは,「仮介護家族負担尺度」に関する予備調査を実施し質問内容に答えにくい質問はないか,重複
した内容はないか,質問の内容が回答者に正確に伝わっているか,などの質問文や回答選択肢の表現や内容に不備
121
な点について検討を行い「介護家族負担尺度」を作成した.研究Ⅲでは,「介護家族負担尺度」の精度(信頼性・妥
当性)及び有用性(実用性)を2段無作為標本抽出による調査によって検討し,従来用いられてきた介護負担感尺
度に比べ高い妥当性,実用性と信頼性を有した有用なる尺度と考えられた.
【質疑応答】
質問1:概念構成が結果的にどうなったのか.この「介護家族負担」の構成概念は最終的に何なのか.
回 答:FCS(The Family Caregiver Burden Scale)における介護家族の介護負担の構成概念は,
「心身にかかる負担」
「経済的負担」「人的支援」「介護意欲」「心身の健康」の5つの要因から構成されています.
質問2:得点分布がどのようになっているのか,具体的なデータを示して欲しかった.
回 答:得点分布については,今回具体的には示していません.ご指摘のように,対象者の類別による得点分布や
質問項目別の分布などを示す必要があったと思われます.
質問3:新しい評価開発に臨んで考えた開発のコンセプトを説明して下さい.
回 答:開発のコンセプトとしては,第1に主観的介護負担に関する定義や概念化が,研究者によって違う現状か
ら,主観的介護負担尺度の構成概念について調査し明確にすること.第2に日本で主に用いられている CCI
(The Cost of Care Index)や J−ZBI(The Japanese Zarit Caregiver Burden Interview)などの介護負担感尺度
の質問項目が 20項目以上と項目数が多く答を得るのに労力を必要とするために,質問項目を少なくした簡
便な介護負担感尺度を開発することです.
質問4:この開発コンセプトの結果,実際得られた評価尺度で今までの方法で得られなかったもので,今回の方法
で改善したことは何か.
回 答:日本で主に用いられている CCI や J−ZBI などの介護負担感尺度では,介護負担感に関与する構成概念上の
因子として多くの研究者が介護負担に影響を与える因子として人的支援因子は示されていませんでしたが,
FCS ではこの人的支援因子が示されています.また質問項目数も,CCI や J−ZBI の半分以下と簡便な評価
表になっています.
質問5:人間項目のスケールを入れた方が良いと考えるがその辺のことについてはどのように考えるか.
回 答:人間項目のスケールとしては,今回の FCS には人的支援因子の質問項目が2つ含まれています.ご指摘の
とおり,介護負担に関する重要な因子と考えています.今後継続してその内容を精査する必要があると考
えています.
6.ラット横隔膜における加齢変化および脱神経による機能・構造変化について
広島大学大学院保健学研究科博士課程後期 今北 英高
本研究の目的は,Wistar 系ラットにおける横隔膜筋線維が成長や加齢によってどのように変化するのか,また片
側横隔神経切除における脱神経横隔膜はどのように変化し,年齢の違いによりその変化が異なるのかを明らかにす
ることであった.分析は組織化学染色および収縮張力測定,ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気
泳動法を行った.その結果,成長による運動様式と筋線維の変化については十分な関連が得られなかったが,加齢
による遅筋化が明らかとなった.また,片側横隔神経切除における脱神経横隔膜の変化についても機能的・構造的
遅筋化が示された.その中でも特異的な変化は SO(slow-twitch oxidative)線維や FOG(fast-twitch oxidative
glycolytic)線維の萎縮抑制であった.しかし,2年齢ラットにおける変化は 10週齢ラットのそれとは異なり,すべ
ての筋線維で萎縮が起こり,加齢が脱神経による筋の変化に影響を及ぼす要因であることを示唆するものであった.
【質疑応答】
質問1:ミオシン重鎖(MHC)アイソフォームの中で,新生仔期に発現するneonatal が成熟とともに消失したが,
これは slow MHC や fast MHC に移行するのか?
回 答:MHCneonatal は出生後3週から4週で消失したが,これらは slow MHC や fast MHC に変換されたのでは
なく,消失したあとに成熟型の MHC が発現したと思われる.ただ,neonatal の消失とこれら成熟型 MHC
はどのように関係しているのかは不明である.
質問2:加齢により筋線維のタイプ組成が変化するという知見は,運動選手においては個人によってタイプ線維の
組成は決まっているという意見とは相容れないがどう理解したらよいのか?
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広大保健学ジャーナル,Vol, 4
, 2005
回 答:個人によって筋線維タイプの組成は,遺伝的な要因によって決定されているといわれています.本研究で
の老齢ラットにおける筋線維タイプの遅筋化は主に type IIB 線維が萎縮し,運動単位に関しても速筋タイプ
である FF 型および FR 型運動ニューロンの消滅することによりいくつかの速筋線維はS型運動ニューロン
に再神経支配され,筋線維において速筋線維から遅筋線維へのタイプ移行が生じたと考えられ,神経系に
も作用したのではないかと思われます.
質問3:脱神経横隔膜では筋萎縮が生じないのはなぜか?速筋化は認められないのか?
回 答:推測ですが,筋萎縮が生じなかった原因としては,対側横隔膜の収縮によるストレッチの影響や対側横隔
神経の再神経支配が考えられます.また,脱神経横隔膜での遅筋化は SO 線維や FOG 線維の萎縮が抑制さ
れたことが遅筋化につながったと思われます.
質問4:間歇的ストレッチにより筋萎縮が生じないメカニズムを説明してください.
回 答:推測ですが,最近の報告では筋細胞膜に機械的伸張により活性化されるイオンチャンネル,いわゆるスト
レッチ感受性チャンネルが存在することが報告されています.本研究において脱神経横隔膜で機械的伸張
が生じていると仮定すれば,このチャンネルの活性化により筋細胞が活性化されたため筋萎縮が生じなか
ったと思われます.
質問5:横隔膜に注目した理由は?
回 答:今回,横隔膜を呼吸筋としてとらえたのではなく,呼吸活動を行っている骨格筋として捉えました.横隔
膜は呼吸における吸気筋であり,その活動量が高いこと,また左右の横隔膜筋が腱中心部で融合した膜状
筋であるため,脱神経横隔膜に機械的伸張が加わることなどに注目しました.
質問6:今回の知見は臨床的にどのような応用が可能と考えているか?
回 答:通常,ストレッチは筋や軟部組織の柔軟性を高め,可動域を改善するための手技として使用されますが,
このような間歇的なストレッチでは脱神経筋に対して筋萎縮を予防する効果があるのかもしれません.In
vitro での先行研究では,培養された筋細胞に機械的ストレッチをかける事で筋肥大が生じると報告されて
います.今回は in vivo にてこの現象を捉えようとしました.
質問7:脱神経により麻痺した横隔膜は本当にストレッチされているのか?
回 答:本実験において,脱神経横隔膜の動きをビデオカメラに撮影して分析しました.その結果,水平面状の動
きではありますが,脱神経横隔膜は安静時の状態より約11%偏位しているのが確認されました.しかし,
水平面状の動きだけですので,実際にどの程度伸張されていたかはわかりません.また,1枚の膜状筋で
あり,筋線維が放線状に広がっているため,それぞれの部位で一様に伸張されているかもわかりません.
7.地域高齢者のための転倒予防チェックシートの作成と保健指導への活用
広島大学大学院保健学研究科博士課程後期 田中 昭子
本研究は,地域高齢者のための転倒予防チェックシートを作成し,それを用いた保健指導の効果について検討す
ることを目的とした.先行研究を参考に,地域高齢者が日常生活において注意しなければならない転倒危険因子に
ついての質問項目を作成し,老人クラブ会員 444名を対象に,その妥当性を検討した結果,内的一貫性,構成概念妥
当性,基準関連妥当性が認められた.この項目を基に転倒予防チェックシートを作成し,それを用いた保健指導の
効果を,過去1年間の転倒経験,年齢(±5)をマッチングさせた介入群 17名,対照群 34名で検討した結果,介入後
には過去3ヵ月間の転倒に有意差がみられ(p=0.040),介入群では介入後に転倒した者がいなかったことから,転倒
予防の効果があることが示唆された.本研究の結果は,介護予防の重要な課題である転倒予防に対する新しい保健
指導方法について提示し,保健師の地域保健活動に寄与すると考えられる.
【質疑応答】
質問1:調査対象とならなかった者(途中で除外適用した者)や,教室・クラブに出てこれない者の方が転倒の問
題は切実である.そのような者に対してアプローチするための方法は?
回 答:集団指導に参加しない者の中には,身体能力が低下し,より転倒予防の必要性の高い者がいることが推測
される.本研究で作成した転倒危険性チェック項目を活用し,転倒予防の必要性の高い対象者をスクリー
ニングし,集団指導に参加するよう勧誘することも必要と考える.また,集団指導に参加できない者には
個別訪問による介入が必要と考える.
123
質問2:①対象者の環境因子を考慮したか.②転倒の因子として多数あるが,それらの中でバランスがキーとなる
と考える.これについての見解を聞きたい.
回 答:①本研究では環境因子については調査していない.今後の検討課題としたい.②本研究の調査結果でも,バ
ランス能力に危険性ありの回答者が 47.3%と多く,バランス能力の改善は転倒予防のために重要と考える.
質問3:転倒の定義にあいまいさはなかったか?あるいは,予防教室を受けた人は,研究者への感謝の気持ちから
「転倒なし」と事実に反して答えている(Hello−Good−by効果)可能性はないか?
回 答:転倒の定義は先行研究で用いられているものを適用し,高齢者に理解しやすい言葉で調査票に明記し,適
切な回答が得られるよう配慮した.しかし,Hello−Good−by効果については不明である.このような回答の
バイアスをなくすためには,対照群に対して別の保健指導を実施することが必要だったのではないかと考
える.今後の検討課題としたい.
8.在宅医療の利用者の期待と満足の構造−訪問診療サービスに焦点を当てて−
広島大学大学院保健学研究科博士課程後期 畑中 祐子
本研究は,在宅医療の一部である訪問診療サービスの利用者が訪問診療サービスに抱く期待と満足の構造を明ら
かにする目的で,訪問診療専門の1施設の利用者 134人全員の協力を得て,自記式質問紙調査と半構成面接調査を行
なった.顧客満足度分析手法・因子分析・KJ法分析から調査満足構成要素と指標を抽出し,更に鋭敏な利用者満
足度測定指標を作成して有用性を検討した.その結果,利用者が訪問診療サービスを「安心できる利用者中心のサ
ービス提供」「24時間いつでも利用できる体制」「医療福祉サービスネットワークを生かした連続ケア提供」の3視
点で期待し評価しており,訪問看護など既存評価尺度より医療の専門性が示されていたことが判明した.利用者満
足に関与するニーズを十分に把握してサービス提供を行うことで,訪問看護サービスひいては訪問診療サービスの
質向上,快適な在宅医療につながると考えられた.
【質疑応答】
質問1:訪問診療サービスに焦点を合わせた理由は何か.
回 答:在宅医療は,第二次医療法改正により法的に医療サービスを在宅で提供することとされています.在宅医
療の展開は,医師・看護職・リハビリテーション職など多職種が協働して行っており,その質向上には,
こうしたサービス提供者への利用者からの評価が大切であると考えます.既に訪問看護などでは評価指標
が開発されていますが,訪問診療サービス指標の開発は未だなされておりません.そこで,在宅医療の一
翼を担う訪問診療サービス評価の開発に焦点を合わせることとしました.訪問診療を評価することにより,
訪問看護などの評価と合わせて,一層の在宅医療の質向上に繋がることが期待できると考えました.
質問2:「訪問診療サービス評価指標との併用により満足度をさらにあげることができる」ということは,どのよ
うな併用であるのか.
回 答:既に開発されている訪問看護の評価指標では,在宅医療の一側面である看護の評価しかできません.看護
職者には,患者の代弁者・擁護者としての役割がありますが,開発できた訪問診療評価指標を併用するこ
とで,在宅医療を受ける利用者のニーズがより鮮明になり,利用者が受ける在宅医療サービス全体の質を
把握できると期待され,看護機能としても有効に働くものと思われます.また,特に,訪問診療,訪問看
護等の多機能を備える施設でのサービス提供の質を評価する上で,併用する効果がより高いのではないか
と考えます.
質問3:「連携する」または「チーム医療」とは,具体的にどのようなことであるのか.
回 答:連携またはチーム医療とは,今回の調査協力を得た診療所が訪問診療のみを提供している施設ですので,
今回の調査対象者の意識としては,患者の容態変化に応じて入院設備のある施設に紹介したり,訪問看護
を依頼したりという機能を意味しているといえます.連携やチーム医療は,在宅医療では重要な要素であ
ると,私は考えます.それが,調査結果としても,最初は第1因子として,また面接のKJ法では「ネッ
トワークによる連続したケア提供」,最終では第3因子「ケア調整」として訪問診療サービスに期待されて
いる機能として出たのだと考えます.
質問4:訪問診療の主治医制はどうなっているのか.結果で,チーム診療が潜在的不満足に入っていたが,患者家
族にとってある特定の医師以外は,「代わりの医師」にしか見えていないのではないか,24時間診療を実現
124
広大保健学ジャーナル,Vol, 4
, 2005
するためにチームで行っているとしか見えないのではないか,“24時間”“チーム”は一つの概念になると
は考えられないか?
回 答:論文に詳細を示しておりますが,スライドでは簡略に述べましたので,失礼いたしました.協力いただい
た診療所の特徴は,①チーム診療を行っている,② 24時間制を採用していることにあり,患者には受診時
に十分な説明がなされます.この「チーム診療」は,複数の医師が交代して行われている診療を指してお
りますが,患者には所謂る主治医と類似の立場となる「担当医」が存在します.診療所から患者へは,必
ずしも同一医師が毎回診察しないことを十分に説明しているため,面接調査では,利用者は担当医と担当
でない医師との診療に対して,担当される医師が異なっても一定以上の診療技術が提供されているので不
満がないという評価とともに,セカンドオピニオン的な意見が聞けることが良いという評価がありました.
つまり,この診療所に所属している医師は全て「受け持ってもらっている医師」であり,担当医以外を
「代わりの医師」とは見ていないようでした.
「24時間 365日体制」については,単純に,「24時間いつでも連絡とれる体制」として評価しており,今回,
「チーム診療」と「24時間の体制」が別因子として抽出できたことで,利用者の認識もきちんとなされてい
ることが証明できたとも考えます.従って,1つの概念ではないと言えます.
質問5:サービスの内容を質と量的側面からは分析できないか?
回 答:御質問については,大変に難しい作業であると考えています.例えば,研究1で作成した質問紙では,訪問
診療の費用や訪問日時に関して単に「満足していますか」という項目を設定した結果,回答の分析では十
分な検討が困難でした.そこで研究2における面接で深く探ったところ,利用者は単純に「24時間 365日の
診療体制に満足している」のではなく,この先どのような診療を提供してくれるのであろうかというよう
な医師が提供する診療技術やケアマネジメント能力といった質的なものを同時に評価していることが判明
しました.それを研究3の質問紙に反映させて「1ヵ月の間に実際に利用した訪問診療回数と診療費用の
実数」を尋ねた項目とその回数や費用に「納得しいているか」という質問に変更しました.その結果を検
討すると,必ずしも同一因子として抽出されず,別の要素が含まれているようでした.このように,質と
量とを明確に分類して分析をおこなうことは,今回の結果から非常に難しいと考える次第です.しかし,
御指摘のように,構造的にも検討すべきと考えますので,今後の課題といたしたく存知ます.
質問6:① 再テストで再現性がばらつく要因をどのように考えているか.
② 再テストでの同一回答者の同定はどのようにして行ったのか.
回 答:① 再現性が分散した要因としては,訪問診療では,医療施設の受診と比較しても,診療回数が週1回と受診
頻度が多くなることや,体調の変化でさらに訪問が頻回になったり,一方で,処置が多くなったり少なく
なったりなど,診療の必要状況が固定されていないことが考えられます.今回の対象者の中にも診療に関
する項目等で相関が低かったことを考えると,再調査までの期間に訪問診療を数回利用している可能性が
あるなどのことが影響しているのではないかと考えます.
② 回答者の同定は,匿名の場合には住所一部と生年月日,性別などで同定するとされていますが,今回の
調査では,1診療施設の利用者のみでしたので,対象となった利用者が結果的に112人に限定できたことか
ら,記載者が協力を敬遠する可能性を考慮して,生年月日の記載は年齢で代用しました.その結果,調査
票には居住区域,患者の年齢,介護者の年齢,疾患,診療利用期間等を記載してもらいました.これらの
特有情報から個人の判定が可能でしたので,それらを用いて同定を行いました.
9.看護師の与薬エラーに対する認識に関する研究
広島大学大学院保健学研究科博士課程後期 八代 利香
看護師のエラーに対する認識はこれまで明らかにされてはおらず,そのためのツールも存在しない.本研究では,
看護師のエラーに対する認識を,与薬エラーに焦点を当てて明らかにすることを目的とした.そして,そのための
質問紙を開発し,実態を把握するとともに,得られた結果から医療事故を防止する上で,看護師のエラーに対する
認識に関してどのような課題があるかを検討した.施設による違いやマスメディアからの情報の影響と考えられる
特徴などから,教育的取り組みの重要性が示唆された.また,年齢とともにエラーの重要性の判断力がついたり,
ある種の慣れが生じているような傾向がみられたことから,継続的な教育・情報提供が必要と考えられた.どのよ
うなエラーでも重大な医療事故に繋がる可能性があることから,看護師のエラーの重要性の認識を高めることと,
125
エラーはいつでも起こりうるという認識を形成することが特に重要であると考えられた.
【質疑応答】
質問1:病院による調査結果の違いは,その病院の特徴からどのように説明できるか.
回 答:エラーの起こりやすさの認識が低かった病院は,慢性疾患患者の多く入院する療養型の病院である.その
ため,与薬業務に緊急性がなく,エラーの発生も少ないことからエラーの起こりやすさの認識が低くなっ
たのではないかと考える.エラーの重要性の認識と,患者に与える影響の認識がこの病院で低かったこと
に関しては,今後,施設の教育体制や看護管理体制を調査し,関連性を明らかにしていきたいと考えてい
る.エラーの起こりやすさの認識が高かった病院は,急性期の患者が多く入院する病院であるため,与薬
業務にも緊急性が生じ,エラーの発生も高いことからエラーの起こりやすさの認識が高くなったのではな
いかと考える.
質問2:対象者の中に准看護師は含まれていたのか.また,人間の性分・性格がエラー発生に及ぼす影響をどう考
えるか.
回 答:今回の調査の対象者には,准看護師は含まれていない.エラーに対し,リスキーな人物を見つけ出し,ど
のように教育を行っていくかは,臨床現場で課題となっているところである.今後,特別な教育が必要な
人物を発見するための質問紙の開発にも取り組みたいと考えている.また,性格特性を測る心理テストと
ともに,エラー発生と性格がどのように関わっているのか調査していきたい.
質問3:今回は与薬業務に絞った調査であったが,NICU(Neonatal Intensive Care Unit)のような急性期では,他に
も抜管事故といった重要な事故もある.また,NICUのような急性期では,エラーの重要性の認識が高いと,
エラーが起こりにくいという結果にはならないのではないかと考える.今後,領域毎の検討をしていただ
けると良いと思う.
回 答:今回の調査は,看護師の一般的な認識を把握することを目的としたため,詳しい状況や薬剤等の設定は行
わなかった.今後,看護師の認識を高い精度で把握するためには,診療科別での詳しい状況設定などを行
った調査の必要性があると考えている.
質問4:各因子(群)のラベリングについて,この因子の分類を認識の構造としてあげることの妥当性など,因子
分析をしたことの妥当性と必要性について説明してほしい.
回 答:因子分析は,26の項目がどのような背景因子に要約できるか示唆的な情報を得るために行った.ヒヤリハッ
トやインシデントレベルでよく発生していると思われるエラーと,エラーが発生すれば直ちに医療事故に繋
がるような重要なエラーとで因子が抽出されたため,看護師の与薬エラーに対する認識の構造を明らかにす
る上での情報になったと考える.
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広大保健学ジャーナル,Vol, 4
, 2005
広島大学大学院保健学研究科 FD 研修会(Faculty Development)
1.Occupational Therapy: A Glimpse of Its Future.
Jeffrey L. Crabtree, OTD, OTR, FAOTA(Associate Professor, Texas University)
2004年7月26日 17:00−18:30
2.科学研究費・諸研究費取得向上へのポイント.
升島 努(広島大学大学院医歯薬学総合研究科教授)
2004年9月17日 13:00−15:00
3.私は私になっていく−痴呆とダンスを.
Mrs. Christine Bryden (International Arzheimer’s Disease Association Director)
2004年10月20日 16:30−19:00
4.スペシャリスト育成のためのCurriculum Development −臨床アウトカムを高めるための大学院教育の実際.
M. Terese Verklan, PhD, CCNS, RNC (Associate Professor, University of Texas Health Science Center)
2004年11月19日 17:00−19:00
5.障害児の保育と母親の就労支援
体験を通して.加藤燈惠
小児難病のボランティアを通して.黒田みさよ
2004年11月27日 13:00−14:45
6.国際派研究者のためのコミュニケーション・スキル・セミナー
「ルールに沿ったテクニカル・コミュニケーションを」
片岡英樹(国際技術コミュニケーション教育研究所代表)
2004年12月16日 15:00−18:00
7.看護の発展に、今、何が必要か.
久常節子(慶応義塾大学看護医療学部教授)
2005年3月25日
広島大学大学院保健学研究科第1回国際シンポジウム
テーマ:保健学における専門職大学院の展望
会 期:2004年10月22日(金)
会 場:広島大学大学院保健学研究科203号室
1.看護学における専門職大学院の展望
森山美知子
2.カナダ,アメリカ合衆国における大学院での理学療法学教育について
川口浩太郎
3.The post-graduate situation in Argentina, South America
Nishiwaki, Gaston Ariel
4.米国における advanced practice のための大学院教育
Anne W. Wojner
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第1回広島保健学学会学術集会
テーマ:保健学研究の現状と未来
会 期:2004年10月24日(日)
会 場:広仁会館
開会挨拶 広島大学大学院保健学研究科 村上恒二研究科長(10:00−10:20)
口演1 座長:金城利雄教授(10:20−11:00)
濱田佳代子:インターフェロン療法を受けるC型慢性肝炎患者の QOL とセルフ・エフィカシー
寺岡佐和:老人保健施設における QOL の向上を目指した園芸療法の取り組み
口演2 座長:浦邉幸夫教授(10:00−11:40)
関川清一:慢性呼吸不全患者における運動筋酸素動態に関する研究
金村尚彦:ラット膝前十字靱帯に存在するメカノレセプターについて−荷重除去と荷重運動による影響−
口演3 座長:岡村 仁教授(11:40−12:20)
藤原奈緒子:股関節疾患術後患者の QOL 調査− SF36 を用いて−
山路博文:統合失調症患者に対する認知行動療法に基づく心理教育プログラムの有用性の検討
広島保健学学会発足会(13:20−13:30)
特別講演 座長:横尾京子教授(13:30−14:30)
看護学における教育・研究の視座
新道幸恵 青森県立保健大学学長
講演1 座長:小林敏生教授(14:30−15:10)
津島ひろ江教授:わが国の学校看護の歩み
講演2 座長:奈良 勲教授(15:25−16:05)
新小田幸一教授:高齢者・障害者の転倒予防に関する研究の動向
講演3 座長:清水 一教授(16:05−16:45)
村田 潤:運動および感覚作業時の自律神経機能
閉会挨拶 広島大学医学部保健学科 田中義人学科長(16:45−17:00)
懇親会(17:15−19:00)
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