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思川開発事業検討会(公聴会)議事録

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思川開発事業検討会(公聴会)議事録
思川開発事業検討会(公聴会)議事録
思川開発事業検討会(公聴会)議事録
1.日
時
平成 13 年 11 月 11 日(日)14:20∼16:30
2.場
所
コンセーレ
1階
大ホールB
3.出 席 者
[委
員]:敬称略
西谷
隆亘
(委員長・法政大学工学部土木工学科教授)
石倉
洋子
(白鴎大学経営学部経営学科教授)
小堀
志津子 (宇都宮大学教育学部理科教育講座教授)
新川
忠孝
鈴木
乙一郎 (栃木県水資源開発促進協議会会長(栃木市長))
永井
護
(宇都宮大学工学部建設学科教授)
田嶋
進
(栃木県企画部長)
阿部
和夫
(鹿沼市長)
駒場
久遠
(南摩ダム補償交渉委員会委員長)
廣田
義一
(南摩ダム絶対反対室瀬協議会会長)
(下野新聞社論説委員長)
[関東地方整備局]
安川河川部長、渡部水管理官、小島河川計画課長、唐澤河川調整課長
[水資源開発公団]
他
福田理事、丈達理事、松隈企画部長、大藪第一工務部長、大槻環境室長
青江思川開発建設所長、稲田計画課長
他
4.配布資料
議事次第
思川開発事業検討会委員名簿
出席者名簿
配席図
思川開発事業検討会公聴会の開催について
【資料−1 】
思川開発事業検討会公聴会実施要領
【資料−2 】
思川開発事業検討会公聴会公述人「意見書」
【資料−3 】
思川開発事業検討会公聴会応募「意見書」
【資料−4 】
公述に当たっての注意事項
【資料−5 】
思川開発事業検討会項目別意見等
【資料−6 】
5.公述人(公述順、敬称略)
上田憲一、岸
慶蔵、高松健比古、宮坂
拓
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思川開発事業検討会(公聴会)議事録
6.議
事
(1)開催趣旨説明(委員長)
・公聴会は地域の方々から直接ご意見を伺う仕組みとして開催するもので、公述人は検討
会の委員に対して意見を述べることとなっている。
(2)「意見書」応募状況及び公述人選定経緯説明(委員長)
・10 月9日から 23 日まで、公聴会の「意見書」を募集した結果、全部で 13 通の応募があ
った。
・11 月4日 13 時から、宇都宮市内の水資源開発公団思川開発建設所において、委員長、石
倉委員、新川委員の3人の選定委員が公述人の選定を行った。
・全 13 通の「意見書」のうち、事業に肯定的なものが6通、否定的なものが7通であった
ため、全体の時間も考え、双方からそれぞれ2人ずつの公述人を選定することとした。
・ただし、1通は公述を辞退する旨書かれていたため選定対象から除外した。
・意見の論点の幅の広さ、事業に対する考え方、公述人の地域性などを総合的に判断して、
4名(上田さん、岸さん、高松さん、宮坂さん)を公述人として選定した。
・公述の順番は受付順とした。
・各公述人には 11 月5日に公述人に選ばれたことを事務局から通知した。
(3)注意事項等(委員長)
・一人 15 分以内の公述とし、意見書の趣旨から逸脱しないこと。
・公述の後、各委員から公述人に対して 15 分程度質問の時間をとる。公述人から委員への
質問はできない。
・公聴会の進行は何事も委員長の指示に従うこと。
(4)各公述人による公述及び公述人に対する質疑
【上田公述人による公述】
当思川開発事業につきましては、思川の下流に地盤沈下地域が広がっておりますことか
ら、都市用水や農業用水等の安定的な確保や水環境の改善を図るため、事業が必要だと
いう立場から意見を述べさせていただきたいと思っております。我が国は、国土を縦走
する「青い山脈」が象徴しておりますように、比較的水に恵まれた国と言えます。
しかしながら利用できる水の量は足りず、年によって、季節によって、時期によってそ
して所によって、しばしば水不足・渇水が繰り返されてきております。水争いの歴史や
水かけ論、上流優先、我田引水、水商売等々、水にかかわる多くの言葉が示していると
おりであります。
特に、戦後我が国では、急速な経済成長、社会の発展に伴う水需要の増大に対応するた
め、公共事業など多くの努力で、無為に海へ流れ去る水を蓄えるダムなどによって、水
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思川開発事業検討会(公聴会)議事録
資源の開発・補給がなされてきました。
しかしながら、水需給の現状は、生活や生産活動の発展による需要量の増大に対応でき
ず、しばしば雨が少ないときには、都市用水等の水不足を回避するため、ダムの貯水量
を温存すべく、国土交通省による取水制限・給水制限などの渇水対策が行われて話題に
なっております。
一方、我が国の水の環境につきましては、象徴的なものとして、地下水の過剰な取水に
よります地下水位の低下や地盤沈下等の地下水障害の問題があります。また、河川の流
水不足による魚族等生態系保全が心配されておりますように、水問題の所在とその対策
に関しましては未解決であります。
水資源の開発や水利用システムの整備が待たれている、遅れているというのが今日であ
ります。
当思川開発事業につきましては、当初の事業計画が、途中で変更を加えたもののこじれ
にこじれて進捗を見ることができず今日に至りました。進捗を見なかった理由について、
過去のことですが、少し触れたいと思います。
[1]当初の計画が示されると同時に、大谷川からの分水に伴う地下水位の低下を過大に予測
する者たちがあって、そのアレルギーから脱却できなかったことがありました。ちなみ
に私は、地下水位への影響はないという立場にあります。
[2]大谷川からの分水に関して、非かんがい期のみの取水としていたことに不安や不信があ
ったことがあったかと思います。
[3]計画変更では、非かんがい期の分水量を減じてかんがい期の取水で補うということがあ
りましたし、見返りに行川ダムや逆送計画を加えましたが、分水のアレルギーから解放
できなかったことがありました。ちなみに、この点につきましても、私は、行川ダムや
逆送計画を取り入れたことによって、分水の論議が焦点を失うことになったと考えてお
ります。
[4]分水の取水量管理が完全に守られるのか、管理に関する不信感がぬぐえなかったことが
ございました。
[5]思川開発事業の参加者、水需要者に関しては、建設論議が長期を要したことも理由して、
ダム建設費が高騰し、高額な負担を必要とするということでございます。地下水とされ
る水から取水する、つまり地下水利用の場合は安価であることや、ダムをつくるなど公
共事業への投資を口にしづらい環境になったこと等があって、肝心の水需要者側から早
期建設の声が小さかったこと、つまりダムの費用負担に耐えられますかという論議にす
り変わっていったこと等々があったかと思います。
これら今市市民など反対派の皆様方のわかりにくい分水反対理由に、水対策を担当しま
す行政側が早期に適切に対応できなかったことがあって、進捗を見なかったのではない
かと思っております。
ここで今回の変更思川開発事業につきましてであります。南摩ダムの有効貯水量は、前
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思川開発事業検討会(公聴会)議事録
計画1億トンのところ、2分の1になります 5,000 万トンであります。計画利水量につ
きましては、都市用水の前計画が 4,950 万トンであったものが 1,810 万トンに落ちまし
た。流水の正常な機能の維持につきましてはほぼ同じ 1,690 万トン、異常渇水時の緊急
水補給につきましては 1,000 万トンというのが計画の内容であります。
南摩ダムは、思川流域にあって貴重なダムサイトであるにもかかわらず、その容量を利
用し切れず、大幅に貯水量を落とすこととなったということでございます。しかも、貯
水量が半減しても、犠牲をお願いすることになります水没者、移転対象農家の皆様の数
は 89 戸と同じであります。意味のわかりにくい分水反対などが理由になって、貴重なダ
ムサイトの活用が半減されるとすれば、残念であります。
都市用水等貯水計画(要望量)につきましては、近年、景気の低迷等もあって地方自治
体が疲弊しており、ダム建設などの公共投資が白眼視されている時期で、さらに、国交
省が大谷川からの分水を断念した中での需要量の把握となりました。これらの状況の中
での検討でありましたので、供給量が落ち込むのは理解できないではありませんが、思
川水系には二度と計画できないダム建設にしては、都市用水など需要量は大きくなるも
のと予想していただけに、空虚な思いをさせられております。
とりわけ南摩ダム建設地点の下流域につきましては、地下水の過剰な取水、つまり私に
言わせますと、地下水とされている水を取水する、この「取水」の「取る」という字に
つきましては、「盗る」に相当します「盗水」になるのではないかという立場で考えてお
りまして、「盗水」によって地盤沈下が広がっているとすれば、公平を旨といたします行
政がかかわります上水道など都市用水を初め、農業用水・工業用水で地下水を取水利用
している者は、思川開発事業をもって地下水依存から地表水に水源を変えることができ
る機会にありました。
さらに今後、水需要の増を考慮すれば、ダムへの依存水量の要望は少なかったと受け止
めるべきでなかったかと思っております。
ところで、自然環境に関心のある環境保全の皆さんたちは、ダム建設や道路建設など公
共事業の計画を自然破壊あるいはゼネコンに利益する無駄な支出と受け止めているきら
いがございます。
ここで、思川開発事業によりますダムの建設について見ますと、反対することによって
建設が後送りされますと、都市用水等の安定的な取水の確保が困難になることはもちろ
んですが、思川流水の正常な機能の維持のため、計画水量 1,650 万トンが確保できなく
なります。思川沖積地域、周辺地域の都市用水や農業用水、さらには栃木市市街地を流
れる巴波川の流水や、松尾芭蕉が立ち寄った栃木市東部の惣社にあります大神神社の「室
の八島」など環境、景観のための水が地下水で取水されておりますが、地下水利用を地
表水利用へ転換することによります生態系の保全や水環境の改善をも拒否することにな
ります。当思川開発事業の早期完成を理解してほしいものだと思っております。
環境派を自認する者の皆様にとっても、ダム等水資源開発の建設整備によって水環境が
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思川開発事業検討会(公聴会)議事録
改善されることについて素直に評価していただけないかと思っております。我が国では
例が少ないのですが、ある時には環境サイドの皆様も河川や用水堀、湖沼、池沼、湧水
等地表水の水環境改善のため、むしろ積極的にダム建設計画に参加してダム費用の負担
を行うよう働くとともに、ダムの早期完成に努力する必要があるのではないかと思った
りいたしております。
終わりになりますが、当変更思川開発計画の検討につきましては、国、地方にとって百
年の計に相当するダムづくりになります。全国に吹き荒れました公共事業の見直しの中、
地方自治体にとって財政がますます疲弊することが懸念されている中、しかも短期間で
の検討のため、地盤沈下に代表される地下水利用に関する水環境への責任については、
背に腹はかえられないの論に追い込まれまして、拙速な需要量の検討になってしまった
のではないかとの心配があります。
そういうことでございますが、当思川地域にとってはぜひ必要なダムであると考えてお
りますので、早期の完成に努力をいただきたいものだと思っております。
以上で私の話を終わらせていただきます。
【上田公述人に対する質疑】
Q:「ダム建設費負担が高額で、需要者としての早期の建設要求の声が小さかった」とは?
A:都市用水として地下水を盗って取水して供給することは、地盤沈下しようが現在の仕
組みとしては可能で安価。一方、ダムを造って供給すると費用を要し、市民からは「ダ
ムは高い」といった見方がなされ、反ダム事業の世論となるということ。
Q:「思川水系には二度と計画できないダム、これが思川開発事業の計画であった。」との
ことであるが、流域変更を伴う2河川からの取水や逆送も行う事業は、水資源開発の
限界を超えた事業ではないか?
A:思川水系にはダムはなく、下流域の農業地域、その周辺の都市の大半は地下水で用水
を賄っており、ダムの必要性は以前から認識されてきたところ。南摩ダムは優秀かつ
貴重なダムサイトであり、鬼怒川水系、大谷川の方々の同意の下でそこへ分水する計
画は決して間違ったものでも、実験でもなく、通常の話。分水について素直な論議が
できなかったことが、この事業の不幸なスタートだったと考える。
Q:ダムによって、環境が破壊されると考えるか、それとも破壊されないと考えるか?
A:水面下は環境が破壊されるが、無為に水が海に落ちるものを蓄え、それを下流で利用
することは環境に利すると考える。豊かな日本の自然をすべてこれからも残しておく
だけではなく、許容できる範囲で豊かな生活あるいは下流の自然のために利用するこ
ともまた自然なこと、現実的なことと考える。
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思川開発事業検討会(公聴会)議事録
Q:「ある時には環境サイドからも積極的にダム費用の負担を行うとともに、ダムの早期完
成に尽力」云々とあるが、ダムが下流地域に対して環境を破壊するか環境をより一層
良くするか、どちらが多いか?
A:水を溜め活用する、そこで生まれる環境は大切な環境である。発電などで流水がバイ
パスされ水無し川となる事例もあるが、そもそも計画と管理に欠陥があるだけ。ダム
は海に無為に落ちていく水を溜めて、それを必要な時期に必要な量落とすという偉大
な施設。
カリフォルニアのような砂漠地域では、環境派の人たちがダム建設に参加して環境用
水の確保を図っている。日本においても下流の地盤沈下を抑えるために環境派の人々
が積極的にダム事業に参加しようという論議があってもよいと考える。
Q:水の需要量というのが何回か出てきているが、何を指しているのか。先般、栃木県が
調査した需要量のことか?
A:一人当たり需要量、あるいは農業では「減水深」を基に積み上げて求める需要量は、
思川開発を計画した当時と今の意味合いは少し違っていると思う。需要量という把握
の仕方は、積み上げ方式の中で求められてきている数字ということで、概念として大
きくとらえたものという解釈をしている。
Q:需要量がもう少し大きく出るはずではなかったかとは?
A:力任せの地下水取り合戦、地下水依存を解消しようとする自治体が将来も含めて需要
量を求めていこうという機運が出てこなかったということ。改めて水需要の調査をし
たときに広く需要量が出ず、時代が悪かったいう思いで受け止めているということ。
【岸公述人による公述】
私の住む栃木市は、かつては街の中心を流れる巴波川の水量に恵まれ、栄えてきた街であ
ります。巴波川は、思川の支流として、金崎辺りより川底に浸透した伏流水が、小倉堰よ
り川原田一帯にかけて噴出し、その豊かな水量は計り知れず、渦巻く奔流となり、渡良瀬
川に向かって行きました。
しかるに、高度成長期より湧水量が急激に低下してまいりました。ひとときは、関東で最
も汚濁のひどい川の一つとして指摘された程でありましたが、県を初めとして関係機関の
配慮により、清流は蘇りつつあります。しかし湧水の低下は変わらず、機械揚水に頼って
いるのが現状であります。
図らずも、湧水不足が土地改良事業の推進にも一役買ったのであります。川による水利は
もはや限界に達し、機械揚水に頼らざるを得なくなったからであります。しかして今も、
地下水の不足はさらに進み、浅井戸から深井戸に切り替えられ、より高い電力料・機械の
負担を余儀なくされています。縄文水ともいわれる深層の水も、無限に存在するや否や予
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思川開発事業検討会(公聴会)議事録
測もつかない状況にあります。水不足の危機にさらされているのは、ひとり農業ばかりで
はないはずでもあります。
大気とか水という、人の生存に掛る資源について、「元より只のもの」との認識が深く、行
政的にも依然として漠然たる対応しかなく、河川敷・湖沼・海岸等の自然体は公物として
認定され扱われてまいりましたが、大気・川の流水又は地下水は公物という認識が浅く、
公の管理も疎く、その意味においては、未開の境地にあるといえます。法はこれらの資源
を一種の財産と見なし権利の不可侵を認めています。しかし、その財産権の内容は、公共
の福祉に適合するように法律によって制限出来るとしながらも、環境法の分野で、明快な
一貫性のある判断を示す法理論は、表に出ていないといわれております。
したがって、その資源の保全、計画的利用は、その視野に十分に入っていないうらみがあ
ると言えます。結果として、洪水・かんばつ等の自然災害に翻弄され、行政は復旧・補償
に終始するのみとなり、理解に対しては、その積極的な対応はとられていないとも言われ
ておるわけであります。
思えば河川の流水の枯渇により、いかに多くの生物が絶滅したか計り知れないものがあり
ます。これこそ環境破壊の最たるものと言わざるを得ないと思います。国民の付議を受け
ている政府は責任をもって対応しなければならない責務でもあると思います。
公共投資の見直し、財政再建は国是とすることにやぶさかではありませんが、水に関する
限り、他の公共事業とその趣を異にすべしと私は主張します。厳しい状況下における、新
たなダムの建設は容易ではありません。「山高ければ、谷深し」であります。緑のダムの放
流水を再び人工による次のダムにより無駄なく、効果的に利水することは、人類の文明で
もありまた文化でもあります。思川開発事業に期待する人は少なくありません。
将来の水事情を憂慮する心ある人は皆そうであります。栃木市でも、水道人口の増加に対
応し水源を郊外に求めなければならない状況です。さすれば、その地域の地下水の不足に
拍車をかけることになります。願わくば、本検討会の精査をいただき、本計画がつつがな
く達成される事を強く念願するものであります。
【岸公述人に対する質疑】
Q:計り知れないほど水量が豊かだったというのは、今から何年ぐらい前か?そして、急
速に水の量が減ってきたのはいつ頃からか?
A:俗に言う高度成長期と認識している。逐次減ってきた。
Q:ものすごく水が豊富だった時期は昭和何年頃か?
A:太平洋戦争前後まではすばらしい水量が保てていたと思う。
Q:地下水あるいは川の水が減ってきた原因は、農業が盛んになって田畑の面積が増えた
り人口が増えて水不足になったからか?
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思川開発事業検討会(公聴会)議事録
A:全てが農業とは言えないが、今まで豊富で自然の川から水を引いて水田を耕作してき
たが、その川の水が途切れがちになり、大水以外はほとんど流れない川となった。仕
方がなく国・県・市のご援助をいただき土地改良事業を導入し、地下水に切り替えな
ければ水田が保てない状況となった。
Q:井戸の深さは今は何mぐらいになってしまったのか?
A:私の所属する改良区には62本の井戸があるが、15m前後の浅井戸が約3分の2、
50∼80mを超すものが3分の1である。隣の改良区が深井戸を設置したため、私
の改
良区の隣接する井戸が干上がってしまった。このままいけば深層の水を取る競
争以外にない。
Q:公的措置が無かったとのことであるが、行政の復旧、補償などはどのようであったの
か?
A:現在、浅井戸で大体 1,000 万円、深井戸では 2,000∼ 2,300 万円の補助がある。1本
大きな深層の井戸があるが、電力量も揚水機で約 100 万円を負担している。
Q:それに対する対応を、行政側の補助制度でやってきたということでいいか?
A:はい。今一番の心配は、機械揚水の耐用年数が 10 年とか 20 年とかと言われており、
その時点になったときに、果たして何千万を要する費用が負担できるだろうかという
ことである。
Q:
「栃木市でも、水道人口の増加に対応し水源を郊外に求めなければならない」とあるが、
栃木市全体の上水道普及率、下水道普及率は?
A:上水道の普及率は、正確には分かりませんが、50∼60%か。下水道については予定の
40%か 50%に達している思う。
Q:これからますます水の需要は増すということか。水はもっともっと欲しいということ
か?
A:現在、私どもの地域に水源を求めるという計画を聞いている。
Q:「したがって、その資源の保全、計画的利用は、その視野に十分に入ってはいない」と
あり、「その積極的な対応はとられていないといわれている」という文章がある。この
文章は公述人の意見の中でどこに位置づく言葉か。この文章は、これだから本検討会
の精査で本計画が達成されることを強く念願するという一つの理由になっていると理
解してよろしいか。
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思川開発事業検討会(公聴会)議事録
A:私どもは、豊かな地下水を望んでいる。現在の地下水等については制限もなく、取り
放題、使い放題という現状が、法律的には一貫した理論体系として整理されないと思
う。何らかの形で、すべての人が豊かな水の恩恵に浴せるような政治的な政策を渇望
している。
Q:自然環境の分野を入れた場合の一貫性のある判断が法律論の中ではない。地下水の問
題もその一つとして考えられると理解してよいか。
A:環境保護では、流水とか湖沼等において公害等が発生した場合が主たる対応になって
いる。湖沼あるいは河川等に対する水の確保あるいは水をはぐくむという措置は、余
り具体的な事例が示されていないと思う。
Q:表流水ではなくて地下水を望んでいるということか?
A:はい。
【高松公述人による公述】
本日、公聴会で意見を述べることになりました高松健比古と申します。私の資料は、お手
元に配られていると思いますが、私自身の意見書と、「思川開発事業の水問題に関する考え
方(嶋津暉之氏の資料による)」という綴じてある数枚の資料、カラーコピーの「鹿沼市水
道第五次拡張計画∼その計画と現実」、それから水資源開発公団の近藤総裁宛に「日本野鳥
の会栃木県支部」が提出しました意見と要望の資料です。なお、「むだなダムはいらない」
という「思川開発事業を考える流域の会」の資料がありますが、ぜひお読みいただきたい
と思います。以上で説明に入ります。
私どもは、この思川開発事業は、1964 年から延々と現在に至るまで継続されている事業で
すけれども、これに対して、基本的に「計画は中止すべきである」と思います。計画当初
からこの思川開発計画は、非常に細い流れしかない南摩川に巨大なダムを造り、山々を越
すあるいはトンネルで結ぶ導水管でほかの川から多量の水を持ってきて初めて成り立つよ
うなダム計画でありまして、これ自体が非常に自然の摂理に反して、また無理を重ねた計
画であったと今になって思えば言えるのではないか。しかも、東京に水を送るのだという
当初の目的が、途中で、東京が「もう水は要らない」ということで失われてしまっている
わけです。しかも最近では、大谷川からの取水も断念せざるを得なくなって大幅な計画縮
小となっているのですが、こういうことであれば、本来はとっくに計画そのものが破綻し
て、事業者みずからがこの計画を撤回すべきであると思うのですが、依然として継続され
ている。
その一つの大きな原因としては、水需要があるんだということですけれども、実際に栃木
県・埼玉県・茨城県・千葉県の各県で毎秒 3.2 トンの水が求められていると言われていま
すけれども、例えば栃木県内だけを考えても、非常に過大な水の要求が出されている。例
9
思川開発事業検討会(公聴会)議事録
えば、カラーコピーの鹿沼市の水道第五次拡張計画を見ると、将来鹿沼市は、現在9万
3,000 人のところ 11 万人になるという予定が立てられており、給水人口も9万人に及ぶ、
一人の最大給水量も 561 リットルと、現在と全然違うようなかけ離れた値がとられている
わけです。このグラフを見ていただくとわかるのですが、現実と計画に非常に大きなギャ
ップがある。これから言っても、この水需要計画の予想と現実は全然違うということが言
えると思います。カラーコピーの次のページを見てもわかると思いますが、我々は鹿沼市
が要求している5万 500 トンは大き過ぎる、再試算をぜひすべきだと思います。
県内の他の市町村についても非常に大きな需要量が出されています。「思川開発事業の水問
題に関する考え方」の4ページ目を開いていただきたいと思います。これは流域の会のホ
ームページに出ている資料です。市町別要求量分析を見ていただけばわかると思いますが、
鹿沼もその他の市町も、実際の人口増を見込んでいる量と人口増加率を見ても、ピーク人
口等を見ても、どれを見ても非常に過大な要求量が出されていることが一目でわかると思
います。鹿沼が突出していますけれども、その他の市や町でもこういうふうな量を挙げて、
それで水が必要だと言っているわけです。でも実際にきちんと調べると、恐らくこれは相
当ぐらついてくるんじゃないかと私どもは考えております。
実は埼玉・茨城・千葉の栃木県以外の県でも問題があると思います。カラーコピーの一番
最後のページを見ていただくとわかるのですが、千葉県の例がここに出ています。これは
宇都宮の山本さんという方の資料です。山本さんが一生懸命調べてくださって、千葉にも
問い合わせをしました。千葉の方は、実際に鬼怒川上流の川治ダムに未利用の工業用水を
既に保持しているわけです。それでも南摩ダムに水がほしいと言っているわけですが、こ
の主張を見ると、途中水を通せないんだという話ですが、実際にはそんなことはなく、通
そうと思えば通る。利根運河という水路があって、2000 年まで実際に使用されていたもの
です。現在、非常に水質悪化に悩んでいます。こういうところに水を通せば、千葉に川治
ダムの水が行くわけです。南摩ダムの水を使う必要はなくなってしまうわけです。この辺
の問題を実際にどの辺まで公団あるいは各県は考えておられるのか、私は非常に疑問だと
思います。そのほか、思川開発事業の水問題に関する考え方という嶋津さんの資料から見
ても、いかに現在までの思川開発事業を推進する必要がないかということが、いろいろと
明らかになってくると思います。
もう一つ、嶋津さんの資料を見ますと、水収支の問題が挙げられております。この水収支
の問題は、当初から非常に問題になっていた部分です。大谷川から取水することによって
初めて思川の事業計画が成立し得ていたはずなのですが、大谷川からの取水中止によって、
計画を大幅に縮小しても成り立たなくなっているのではないか。第4回のこの検討会で、
南摩ダムの貯水池運用の計算経過が示されたということですが、1955∼1984 年までの 30 年
間で、貯水率がほぼゼロになってしまう年が、実は度々生じているということが言われま
す。30 年間で 13 回、実に 10 年で4回以上はダムの水が空っぽになってしまう。空っぽに
近くなるということでしょうが、利用できないことになってしまうと思います。結局、公
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思川開発事業検討会(公聴会)議事録
団の方で計算の基準年としたのは 1960 年ですが、これは渇水年ではなかったわけです。普
通は渇水年を想定してダム計画を策定すべきなのに、渇水年ではない年を基準に毎秒約3
トンの開発を可能としている、これは非常におかしいのではないかということです。84 年
は 10 カ月も水が空っぽになる状態が続くと計算されますし、85 年以降も 85、86、87、88
と連続して毎年ゼロになってしまう。こういうものが実際に役に立つダムなのだろうか。
我々からすると到底こういうものは役に立たないものである。必要性もないし、また役に
立たないものなのではないかというのが私どもの結論です。
もう一つ大きな問題があります。それは生態系破壊の問題です。私は「日本野鳥の会栃木
県支部」の支部長をしておりまして、つい先日の7日、水資源開発公団の近藤総裁宛に文
書を出したものです。そちらの資料を見ていただきたいと思います。ここでは、今回公団
の方で報告書をまとめられたことに関して、いろいろ問題点があるということを指摘して
いるわけですが、これについては時間がないので詳しくは申し上げません。一番焦点にな
っているのは、猛禽類の存在であります。マスコミ等でも報道されていますように、南摩
ダム、あるいはこれは県の計画であります東大芦川ダム等ではオオタカやクマタカが生息
していることが明らかになっているわけです。特に南摩ダムに関しては、オオタカが現在
4つがい繁殖していることが明らかになっています。これは公団のきちんとした資料であ
りまして、私どももその調査結果を評価するものです。誰がやってもきちんとした調査が
やれれば同じ結果が出るだろうと思います。それが科学的な結論だと思います。地図を見
ていただきたいと思います。図−4.1.1は公団の資料からコピーしたものですが、オ
オタカの繁殖期行動圏が示されております。ここにAつがい、Bつがい、Cつがい、Dつ
がいの4つがいが南摩ダムの予定地周辺に生息しています。一目でわかると思いますが、
特にBつがいは、南摩ダムのダム本体と湛水される区域とぴったり重なってしまうわけで
す。Cつがいも、約半分ぐらいが湛水予定区域と重なると予定されています。これはどう
いうことを意味するかといいますと、確実にB及びCの2つがいのオオタカは大きな影響
をダム建設によって受けるだろうということです。恐らくBつがいはここにすめなくなる
だろうと思われます。すめなくなるというのはどういうことかといいますと、ほかへ行か
ざるを得ないわけですが、実際には野生の生物においては、専門家の方がおられるのでよ
くご存じだと思いますが、ほかへ行っても最終的には生き延びていくことは極めて厳しい。
ということは、オオタカという鳥が、ここにダムが建設されることによって一部分消滅す
ることになるわけです。
これは実は、例えば栃木県では福田知事が、思川の事業に参画するときに「自然に影響を
与えない方法を検討するように」という要望をしているはずなのです。これとぶつかって
くるわけです。何よりオオタカという鳥は「レッドデータブック」の絶滅危惧・類に指定
されていますし、種の保存法の対象種にもなっているわけです。国としてオオタカという
鳥やその生息地を保護する義務があるわけです。にもかかわらず、今回のダム計画では、
まともにオオタカを消滅させるような開発計画しか出し得ない。これを修正するわけには
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思川開発事業検討会(公聴会)議事録
恐らくいかないと思います。この要望書をまとめたのは遠藤孝一という私の支部の副支部
長ですが、彼は日本オオタカネットワークの代表でもありまして、恐らく日本を代表する
オオタカの研究家であります。その専門家の意見としてそういうことが言われていまして、
このダム計画は生き物にとって非常に厳しい結果を生むだろうと我々は思っております。
また意見書の方に戻りますが、長い計画によって地元住民の方は大変な苦労をされてきた。
これは私自身が山村に住んでいる人間であり、また本業が林業者であるということで、実
はよくわかるのです。室瀬地区の方も含めてこのダム計画にずっと翻弄され、非常に心労
を重ねられてきた方々のことは、私自身の立場から考えても察して余りあると思います。
けれどもやはり、このダム計画は非常に無駄物であると結論づけざるを得ないわけです。
事業主体者に求めること、水資源公団に求めることは、一刻も早くこの開発計画を中止し、
事業計画地内全居住者に対して速やかに謝罪をし償いをすることです。それしか私は方法
はないと今、考えております。
最後に申し上げたいのですが、私は水問題の専門家ではないのですが、最終答申を出す前
に、水問題と環境問題の専門家の意見をきちんと聞いていただきたいと思います。そして
民主的なフェアなやり方でぜひ考えていただきたいと思っています。本当にこのダム計画
が必要なのか、水を要求している各自治体の要求量は本当に本当なのかということなんで
す。これはどこかの機関できちんと検証また精査する必要あると私は思うのです。
○西谷委員長
時間がきましたので、手短に終わらせてください。
○高松公述人
はい。そういうことで、公正な第三者の機関で、ぜひこの水の問題は検討していただきた
いと思います。そしてこの思川開発の計画は、私から考えますと、一番大切な命の流れ、
生命の流れという里山がずっとはぐくんできた人と自然が融合した生命の流れを立ち切ろ
うとしていると思わざるを得ないわけです。私としては、ぜひ公団には撤退する勇気を持
っていただきたい、そして、検討会の皆様には中止の答申を出す勇気を持っていただきた
いと思います。ありがとうございました。
【高松公述人に対する質疑】
Q:「県南各自治体に対する水需要の調査が、都賀町などにおいては二転三転した」という
新聞報道があるが、これに対してどのようにお考えか?
A:必要な量から積み上げて南摩ダムが必要という結論に達したわけではなく、最初にダ
ムありきでそのための辻褄合わせ、数字合わせですべてが組み立てられているのでは
ないか。
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思川開発事業検討会(公聴会)議事録
Q:オオタカの4つがいのうちAとDの2つがいに影響が出るのか出ないのか。あるいは
オオタカはA、Dの奥の方にまた新たな巣をつくることがあるか?
A:公団側が調査したデータが完全に公表されておらず、我々もまだわからない。調査を
してそれを検討しないと、Aつがい及びDつがいにダム工事や完成後にどのくらい影
響が及ぶのかは全くわからない。工事の車両が出入りするだけでも営巣期には影響を
受けることからAつがいがだめになるおそれは非常にある。Dつがいにしても、人が
入る等のいろいろな影響によって、地形的な影響や気象条件によって変わるわけで、
非常にデリケート、微妙な問題。これについては、調査データを積み重ね、私どもも
実際に現地で検討をしていかないと、きちんとした結論は出ない。
Q:鹿沼市として、市民にサービスしなければならないことから、水需要を最小限に見て
いくことはいかがなものかと考える。平成 22 年度(2010 年)までの水需要予想を適当
にやっている、過大であるということはどういうことか?
A:水需要は、市で十分に検討されて出されていると考える。我々も決していいかげんだ
と言うつもりはないが、どう考えても過大な水需要ではないかと考えている。また、
東大芦川ダムが完成したときに南摩ダムから水をもらうのかどうか我々としては大変
気になる。また地下水が本当にないのか。地下水から表流水に全部転換するような気
がするが、その辺が非常に気になっている。
Q:鹿沼では地下水汚染の問題で騒がれたことがある。テトラクロロエチレンの問題もあ
り、ある地域では水が飲めない状況になった。地下水汚染等についても公述人はどの
ように考えているのか。2系統から取っていくことは、一つの市民サービスの基本で
あるが、どのように考えているのか?
A:地下水汚染の実態がどのようであるかは、正直なところ全然わからない。地下水汚染
がもし本当にあるとすれば非常に問題であるが、これについて鹿沼市と住民、特にダ
ム計画に反対している人たちとの対話をやっていただくようにお願いする。
Q:大谷川からの取水を断念した現在、大幅な計画縮小を余儀なくされているとのことで
あり、本来の計画そのものが破綻していると認定され、事業者みずから撤退すべきで
あるとのことであるが、必要とされている水需要にはどういう手当をするのか?
A:今までどおりダムに頼っていくという自治体の方針もあろうが、下流の自治体は自前
の水源を持つべきと考える。雨水利用、地下水も汚染の問題は出ているが水道水とし
ては適しているはず。地盤沈下の問題があると指摘されるが、まだまだ地下水は十分
使える道がある。何より大事なのは節水。たくさんの人に大変な心労を与えて移住さ
せ、南摩ダムをつくる必要があるのか疑問に思う。
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思川開発事業検討会(公聴会)議事録
Q:下流の水需要は、2市8町で絞り込んで提案をしたもの。最初は国分寺町は入ってい
なかったが、後から欲しいということで入ってきた。都賀の場合は、(県による水道用
水供給事業に費用負担するというのではなく)ダムを造るのに費用負担をするという
解釈をしたために、あのような事態となった。栃木市は、水道水にする(県による水
道用水供給事業に費用負担する)ということで発表している。このような事情を調べ
たのかどうか。
A:今後、人口は途中でピークを迎えて緩やかに減少していくと考えるのが非常に自然で
あって、これは日本の国全体も栃木県内も同じ。水需要量は、明らかに過大ではない
かと思う。
水需要量の増加は、市町村の地域計画とも関連するが、その地域の自治体が本当に人
口が増えると思われているのかどうか。具体的にどういう都市づくりを行おうとして
いるのか。水需要量は水洗トイレの普及等いろいろな要因があると思うが、これは過
剰ではないかと思う。
Q:県内の水需要量は他の水源で供給可能である場合が多い、他の水源で十分代替可能と
述べているが、「他の水源」というのは何を考えているか。
A:鬼怒川水系の水、鬼怒川水系と思川水系で違うとは思うが、例えば宇都宮は非常に大
量の水が余剰になっていると思われる。鬼怒工水というものも使われていないことか
ら、水の融通が全く考えられていない。新たなダムをつくろうということで済まされ
ている。宇都宮の北から取水し宇都宮市内に送水すれば、鹿沼に水を供給するのは非
常に安価に、また簡単にできるはず。鹿沼と宇都宮の協力が必要になってくると思う
が、この辺の問題が果たして考えられているのか。
私自身はクマタカがいて問題は多いと思うが、湯西川ダムができた場合には、さらに
大量の水が供給される。
Q:それらの水で十分に可能という積算をしているか。
A:プラス節水と例えば雨水利用とか未地下水の利用等で可能だと思う。
【宮坂公述人による公述】
それでは自己紹介ということで、鹿沼市草久498に住んでいます宮坂といいます。私の
流域は思川上流、水源地付近ということで、そういった絡みもあって発言させていただき
たいと思います。
まず最初に私が言いたい点だけを言わないと 15 分が過ぎてしまうと思いますので、そこか
ら触れたいと思います。今まで「水源開発」という言葉を使った場合には、必ず上流の山
間地域にダムをつくるということで、法整備等も全部されていまして、一般の方に与える
印象もだんだんそういったものになってしまったと思います。私が言いたいことは、本当
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思川開発事業検討会(公聴会)議事録
に水源開発イコールダム建設という認識でいいのかということです。そろそろダム建設予
定地も余り適切な場所がなくなっている。ダム建設自体も、自然環境とかそういったもの
をすべて考えたときに、必ずしも利益を上げるものであるかどうかが怪しくなってきたと
いうことが言われています。ですので、そろそろこの辺で思川開発事業を本格的に見直し
て、政治的に政策転換の時期ということで、皆さん方にぜひ一つ一つの数字等も検証して
いただいて、本当の検証をしていただきたいと思います。これが私のまず最初の意見にな
ります。
それでは、資料を見ていただいてざっと触れていきたいと思います。
最初に、私の職場が、下水道課というところに5年ほどいまして、水道課に2年ほどいた
という関係もありますので、公務員の守秘義務等もあってなかなか難しいところもありま
すが、守秘義務ではなくて、正直に話すということでいきたいと思います。
まず、表流水から水道水を得ることが本当に一番いいことかという点について触れたいと
思います。いろいろな本があるのですが、皆さんご一読しておられる方もいらっしゃるか
と思いますが、鯖田豊之さんの「水道の思想」という本がありまして、この本の中でヨー
ロッパの水道の話をしています。ヨーロッパの水道といった場合には、表流水より人工的
な地下水も引っくるめて地下水の方が比率が高いということは、知っている人は知ってい
るし知らない人は知らない、一般市民は大体知らない。こういった事業を今まで水道先進
諸国のヨーロッパと比べてきている中で、この辺が表に出ていないところになると思いま
す。これは後で資料を見ていただければわかると思います。
続いて2番にいきたいと思います。2番で私が言いたいのは、水道原水としての地下水と、
原水としての表流水のどちらが得でどちらが損かという話は、はっきり言って正確にはで
きないのですが、一つだけ言えることは、優秀な地下水であれば、日本の法律で残念なが
ら塩素を入れなければいけないことなっているので、塩素を入れなければならないのです
が、もう少しヨーロッパ的に考えた場合は、塩素はできる限り入れていないのはご存じだ
と思います。
ここで塩素の問題から少しずつ考えていきますと、塩素使用は上水道で1回行われ、下水
道でも行われることはご存じだと思います。最後に下水処理の水にも塩素を加えます。そ
してこれが、思川開発事業の最終ユーザーの方に行くまでに、何度人間の消化管の間を通
ってしまうかということをご存じの方はいらっしゃいますか・・・と本当は聞きたかった
のですが……。私も残念ながらわからないのです。これは東京都水道局さんあたりに聞い
ていただければきちんとマッピングしてあるはずなので、ぜひ後で聞いていただければと
思います。
これはどんな意味で言ったかというと、トリハロメタンの再生産に役に立つメカニズムが
ここにあるということです。これも重要なことであると思います。
また、表流水事故は、栃木県などでも、小山で給水停止になったのはたしか去年だと思い
ます。栃木では、コカコーラさんと名前を言っていいかどうかわかりませんけれども、あ
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思川開発事業検討会(公聴会)議事録
る企業の方がそのような原水に近いものを流してしまって問題があったとか、永野の方で
油を流してしまったということがあります。
一方で、通常地下水はだめと言っている人の場合には、トリクロロエチレンのことが出ま
す。実際には「地下水保全のマネジメント」といった本を見てみますと、トリクロロエチ
レンの処理システムが大体確立されてきているわけです。ですのでどっちがどっちという
わけではなくて、システム的にきちんと見直すことをやれるチャンスにきていることをぜ
ひ、訴えておきたいと思います。
続きまして3番、高くついているダム水源開発。これは最初の私の資料を見ていただきた
いと思います。これは「土木學會誌」からいただきました。高い本なのでめったに買えな
いのですが、これを私は買って載せさせていただきました。私の資料の中で、ダムの名前
を間違ってしまったのです。直してもらえるかと思って期待したのですが、残念ながら直
っていないということで、ダムの名前が「布部ダム」ではなく「布目ダム」といいます。
奈良県奈良市郊外にあるダムです。私が資料をつくったときには、うろ覚えだったので 200
億円と書いてしまいましたが、 279 億円が水源開発単価で、アロケーションの水源開発費
水利分を表流水の1秒間に何立方メートルの利用可能水量で割った数字です。どれが安く
てどれが高いかは数字を見ただけで議論できることではないのです。長良川河口堰の 42 億
円とか三重県比奈知ダムの 232 億円と書いてあります。これを見てどうこうと私は議論を
したくないのですが、これは建設官僚のお手盛りの部分が多くを占めているので、これに
関して金額がどうこうということではないと思います。あえてこれを載せさせてもらった
のは、アロケーションの問題もあると思ったのでちょっとだけ載せさせてもらいました。
これに私が手書きした何立方メートルというのを掛けていただければ、水源開発の事業負
担分に事業体がどれだけ払わざるを得なかったかということが逆算すればわかる。これが
アロケーションの比率ということなので、ぜひ検討委員の方もご自分ではじいていただけ
ればと思います。
最初に、水源開発の単価の話をしました。今度は水需要の伸びですが、埼玉県南水道さん
の資料を載せてみました。これはどういう点を見てほしいかというと、私の主張の3と4
の絡みになるわけですが、まずマジックで線を引いた取水の施設能力と1日最大給水量の
差を見ていただきたいと思います。施設能力がまだ余っていることを認識していただけれ
ば十分だと思います。
今度は繰出金・出資金の問題ですが、これについては水の価格が出ている資料をご覧いた
だきたいと思います。単純に全国の事業体を平均しまして、平成 11 年度現在で1立方メー
トルの原水単価が 180 円と書いてあります。これが今のところの1リットルの水のお値段
になります。10 立方メートルにすると少し安くなりまして、10 立方メートル使った人は
1,400 円という値段になります。
その後ろの「水需要の動向」を見るために、参考4−1−1の「生活用水使用水量の推移」
をご覧いただければと思います。今回の事業でかかわりがあるのは、関東内陸、関東臨海
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思川開発事業検討会(公聴会)議事録
の双方です。数字を左から右にご覧いただければ、年間に 10 億 3,000 とか 44 億 1,000 と
いう数字が出ているわけです。これがどんなふうに推移しているかという数字を見ていた
だいて、こういう数字をもとにして、今後の需要動向を見た上で計画ができているという
ことを、もちろんご存じだと思いますが、もう一度見ていただきたいと思います。
あえて上の数字を載せたのは、5番にちょっとだけ書かせていただいたのですが、私が下
水道に5年間いたのでせっかくなので下水道の話もしたいということで入れたわけですが、
単純に入れたわけではありません。下水道の処理原価を見ていただきたいと思います。処
理原価は平成 11 年で 204 円幾らという値段です。もうひとつ前の水道使用単価 180 円な
り 181 円を見ていただきたいと思います。つまり、皆さん方が検討していらっしゃる水需
要の問題を引っくるめた話は、水を処理することである。つまり水を処理することは非常
に高くついている。無責任な使用を勧めていいものかという議論を、ごく普通の人も引っ
くるめて進めなければならない。それが、先ほど言ったトリハロメタンの生成システムに
協力してしまうということも全部引っくるめた話になります。
下水管を流れる汚水を処理するためにかなりのお金がかかっている。その中で、最終ユー
ザーから直接いただいているお金は使用量単価です。204.58 円かかっているにもかかわら
ず 121 円しかいただいていない。下水道のシステムを見た場合に、水道システム以上に、
この差を何で埋めているかということを言いたかったわけです。この差を何で埋めている
かというと、行政からの水道企業とか下水道企業または特別会計への繰出金ということで、
税投入をやっているのが主になるわけです。この税投入が最終使用者の方に十分説明され
ずに今まで行われているのが、大半の市町村なり、県営企業もそうだと思いますし、そう
いったシステムになってしまっています。この辺をぜひきちんと見ていただければと思い
ます。
余り時間がございませんので、あとはざっといきたいと思います。節水システムについて
です。出典は同じです。これは東陶さんの資料で、これで節水機器の普及のところをご覧
いただければ、アメリカ・ニューヨークの例で見ますと、最終的に、大便器を1回につい
て6リットル使用の節水タイプのものに補助金を出して強制的に変えたわけです。それに
よって大幅な節水ができた事例があります。これは別な本を見ていただけばわかります。
そういったこともありまして、節水は単にけちけちするということではなくて、水の有効
利用、水循環の上で大事なことだということがわかっていただけると思います。
もう一度後ろから2枚目を見ていただきたいと思います。これは建築学界関係の人が出し
ている本の一部です。水循環の話をしたかったわけです。雨水の利用、雨水の浸透につい
て、かなりの市町村で真面目に取り組んでいらっしゃいます。また雨水の利用を真剣に考
えることは新たな水源を見出すことと同じであること、また、東京都で漏水対策をやった
場合、1年間で1億 2,700 立方メートルが漏水しているわけで、これは下久保ダムの有効
水量と同じであると数字的には言えます。
著書は忘れてしまいましたが、厚生省が平成元年あたりに出した指針では、努力がなかな
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思川開発事業検討会(公聴会)議事録
か難しい事業体では 90%の有収率(お金がもらえる水量)の目標でやりなさい、90%いっ
ているところでは 95%までいきなさいという指導をしているわけです。こういう指導を本
気でやっていけば、新たな水源を見つけなくても5%、10%には十分耐えられる。
また、本当に節水が必要であるときの渇水対策として、日頃から少ない水量で生活するシ
ステムを身につけていないと、残念ながら節水はできません。
もう時間がないので「やめろ」と言われそうな感じもしましたが、本当はぜひこれを見て
いただきたいのです。福岡市に私が「節水対策の資料を送ってちょうだい」とお願いしま
したら、これだけのものが(示す)来ました。この中には、節水コマを交換するための金
具まで入っています。そこら辺までやらなければ、今までの全国平均がたしか 320 とか 330
リットルというのが一人当たりの一日の使用水量ですが、それを 200 ちょうどぐらいまで
なかなか落とせないのは事実だと思います。ただ 200 に落とすことはそんなに難しいこと
ではないということを理解していただきたいと思います。
これを皆さんに見せてはいけないでしょうか。
【宮坂公述人に対する質疑】
Q:生物にとって水は欠かせないもの。とくに人間にとっては、安全かつ安心して飲める
水を供給することが大事かと思うが、現在、塩素消毒をしなくても飲めるような状況
なのか。
A:私は技術系でないので、正確なコメントはできない。ただ、塩素を入れても死なない
細菌もいるし、微生物より大きな虫の類もいる。GHQ政策あたりからずっと日本が
進めてきた塩素殺菌が本当に効くかどうか甚だ怪しい。塩素だけに頼るのではなく、
塩素使用を多くすることによる水道管の老朽化もあることから、総合的に塩素がいい
のかどうか調べ、議論してほしいということが水道事業に2年間いた担当者としての
意見である。
Q:仮に1番、2番の意見をのんだとする。今、地盤沈下があって地下水が持続的に使え
ない状況にあるが、そこについてはどうお考えか。
A:地下水で問題にしなくてはいけないことは、大気の影響を受ける表層の地下水と、そ
の下の大気の影響を受けない深層の地下水の二つがあるということ。地盤沈下で問題
になっているのは表層ではなくて深層地下水の汲み上げである。深層地下水というの
は、沖積平野なり扇状地なりが長い間かけて耐水層の中にストックした水である。
ここで問題にすべき点は、地盤沈下の原因であることは間違いないが、都市の場合も
きちんと地下水になる水を地下に返すべき。東京駅のように逆に浮き上がってしまう
例があるが、どの程度まで、どういう方法できちんと地下に水を戻すシステムを本当
に動かすことだと思う。
今年の「水資源白書」の北関東の地下水監視区域では、残念ながら目標値平成 12 年 4.8
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思川開発事業検討会(公聴会)議事録
億トンの地下水汲み上げ量にはなっていないが、これが 5.1 億トンまで減少してきた
ということがある。単に産業が衰弱したとか、水を使わないタイプの産業になったか
らとかという理由で終わらせないで、きちんと戻すべき水は地下に戻すという政策転
換をやる。
Q:そっちの方向に向かいなさいということであって、地下水の収支がうまくバランスが
とれるかどうかについては見通しは持っていないと理解してよろしいか。
A:水収支についてきちんとした議論までいけない。
Q:議論が必要という意見でよいか。
A:はい。
Q:「地下水がどれだけ優れた水源かよく考えよう」というところで、「今からでも十分遅
くない。地下水を放棄してしまえば地下水汚染や土壌汚染の監視システムなど全く機
能しないと考えなければならない。つまり、水道水源としての地下水には何も添加を
しないでも使える状態である」と言い切っているが、これについて考えをお聞かせ願
いたい。
A:異論があるかもしれないが、畜産関係の硝酸性窒素が入っている等のことで溶血作用
が危惧され地下水を危険視する場合があるが、これは上質な地下水である。それほど
上質と言えない地下水でも、ほとんど問題のない(水質調査結果の)数字が得られて
いる。問題になるような数字であれば最初から地下水源は放棄されてしまい、地下水
源は使われない。水道企業体が出している年報等に地下水の毎月行われている調査結
果が出ているので、基準値と比べればいかに危険な所が少ないかがわかる。
Q:意見書に「地盤沈下が進んでいると」「行政側からの一方的な情報が流されている」あ
るが、栃木県内の地盤沈下の現状を見ているか。
A:数値しか見ていないので大変弱いというのが本音のところ。ただ、数値からは地盤沈
下の速度が非常に遅くなっていることがわかる。
Q:布目ダムの1立方メートル当たりの水単価を出しているが、水単価は条件によって異
なる。例えば水没者の戸数あるいは用地単価によって相当異なるが、これらについて
精査した上での比較はどうか。
A:精査していない。アロケーションの問題に触れてほしいということを言ったまで。行
政の事情、河川局の事情によってアロケーションを作為的に操作しているとしか思え
ない状態である。総事業費の中に占める水源開発費に当たる部分を計算すると目茶苦
茶である。なぜ目茶苦茶なのか、移転家屋の補償費用(例えば、八ツ場ダムでは 800 戸、
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思川開発事業検討会(公聴会)議事録
南摩ダムでは 78 戸)を入れても、本当にそれが水源開発単価に直接的に影響している
のかどうかを議論をする前に、コストアロケーションの中身を検討委員それぞれが生
数字で検討する必要がある。これが私の意見である。
Q:公述人は現在水洗を使っているか。あるいはお風呂の回数、毎日入っているかどうか、
答えられれば答えていただきたい。
A:私の家の場合は、水洗トイレです。4人家族ですが、夕方帰ってくるのは私と弟で、
実質的に水洗トイレのお世話になっている回数は少ない。河川の上流に住み、できる
だけ汚い水は流さないことに貢献している。
私の風呂は和洋折衷で、容量は 180 リットル。180 リットルを4で割れば、一人当たり
45 リットルで済む。
以
上
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