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シンチレーション法を適用した熱収支解析と芝地のクール

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シンチレーション法を適用した熱収支解析と芝地のクール
2004 年修士論文
シンチレーション法を適用した熱収支解析と
芝地のクールアイランド効果について
Heat Balance Analysis using Scintillation Method
and the Effect of Cool Island on the Grassland
2005 年 1 月
指導教員 村上 雅博
高知工科大学 大学院 工学研究科 基盤工学専攻
社会システム工学コース 1075074 森 進一郎
修士論文要旨版
修士論文要旨
シンチレーション法を適用した熱収支解析と
芝地のクールアイランド効果について
Heat Balance Analysis using Scintillation Method
and the Effect of Cool Island on the Grassland
高知工科大学 大学院 工学研究科 基盤工学専攻
社会システム工学コース 1075074 森 進一郎
1.はじめに
近年,地球規模での環境問題が国際的に
注目されるようになってきた.特に,地球
温暖化に対しては,地球温暖化防止京都会
議にて取り決められた,京都議定書により
温室効果ガスの削減目標を具体的な数値で
設定した(1997 年開催,2005 年 2 月発行).
2004 年 12 月現在,環境問題に対し地球規
模での取り組みは多く行われている.しか
し,地球温暖化・オゾン層の破壊・水質汚
染・自然環境の破壊・急激な都市化による
温暖化現象(以下:ヒートアイランド現象)
などの環境問題は一向に解決せず,現況は
悪化している.人間生産活動の結果として
排出される汚染物質や自然破壊への対策は,
その原因となる人間のライフスタイルのあ
り方や社会システムの変革が必要である.
環境に配慮した,循環型社会を構築する必
要性がますます高まっている.
上記の社会的な背景をふまえて,ヒート
アイランド現象について研究を実施する.
ヒートアイランド現象は,私たち人間が活
動の中心としている都市部に起こる局地的
な温暖化現象である.主な原因は,都市活
動を急激に発展させた結果である.現在,
ヒートアイランド対策の具体的な改善策・
解決策の一貫として,クールアイランド効
果(緑化等)についての検討がなされ,都
市の熱環境が具体的に改善されることに大
きな関心が集まっている.そんな中,クー
ルアイランド効果についての熱環境緩和効
果の評価に加えて環境改善効果(経済性)
についての議論も研究の視野に入る段階に
i
なっている.
以上を研究の背景とし,本研究は,ヒー
トアイランド現象を緩和させる効果のある
緑を用いて都市の熱環境を改善し,都市の
熱環境を再生する為の緑化政策に貢献する
ことを最終的な目的としている.都市の熱
環境を改善することが都市環境を改善し,
ひいては地球温暖化現象にも歯止めをかけ
るきっかけをつくることである.
研究は,都市緑化に最も多く用いられて
いる芝地の熱環境の特性(以下:熱収支)
と都市の熱環境緩和効果を明らかにする.
方法として,最近開発されたシンチロメー
タを利用したシンチレーション法を用いて
芝地の 3 次元的な熱収支を把握し,熱環境
緩和効果について解析を行う.次に,都市
の熱環境緩和対策に芝地緑化を適用して,
クールアイランド効果を生み出し,都市の
熱環境を改善するための具体的なモデルプ
ロジェクトを提案する.芝地緑化を都市の
熱環境改善対策の一部に適用した場合の,
環境改善効果(経済性)について予備的な
検討を加える.
2.シンチレーション法について
熱収支観測に使用するシンチレーション
法とは,大気が揺らぐことを利用して,顕
熱フラックス(H)を測定する方法.測定の
原理は,シンチロメータ(レーザー光を送
受信する機器)を使い,大気中に 2 本の偏
光の異なるレーザー光を照射し,受信機側
で個々のレーザー光の強度変動を測定後,
その共分散等から顕熱フラックスを算出す
修士論文要旨版
り求める.
る.特徴として,現在,一般に使用されて
いる渦相関法による測定手段は,超音波風
速温度計の測定スパン長,数 10cm の空間に
よって測定された,測定値より算出される
顕熱フラックス(H)は,数 10cm 四方の空
間平均値でしかないことになる.しかし,
複雑な都市や植物キャノピーの熱収支を考
える上では,その空間代表性が問題になる.
その空間代表性の問題を解決する方法とし
て,シンチレーション法は空間平均的な顕
熱フラックス(H)を算出する新しい測定技
術である.スパン長は数 100~数 1000mに
なる(本観測ではスパン長 50~250m の観測
機器を使用).同様の性能を得るのには約
100 台の渦相関法に使用する測定器を光経
路上に設置することが必要になる.
シンチレーション法を用いた顕熱フラッ
クス(H)算出式を以下に示す.
Rn = H + LE + G
ここで,Rn;正味放射量,H;顕熱フラックス,
lE;潜熱フラックス,G;地中熱流量
正味放射量・地中熱流量は,熱収支測定
システムにより測定し,顕熱フラックス(H)
はシンチレーション法により試算し,残り
の潜熱フラックス(LE)は熱収支式から試
算する.
3.芝地の熱収支観測概要
シンチレーション法を使った現地観測の
概要は,高知工科大学の 2 ヵ所の芝地にお
いて実施した.観測場所としては,校庭脇
の両脇に樹木の植わった芝地において
2003 年 8 月,2004 年 2 月の 2 度観測,2004
年 8 月に大学本館前の一面芝地において観
測を行った(図 3-1 参照)
.図 3-2 に熱収支
観測システム配置図を示す.
H = −Cpρp T
*
2 − 1/ 3
⎧⎪
z
⎛ z ⎞ ⎫⎪
/
−
2
2
3
2
C (Kz )
T
= 4 β ⎨1 − 7 + 75⎜ ⎟ ⎬
T
*
1⎪
L
⎝ L ⎠ ⎪⎭
⎩
z ⎞− 1 z
⎛
εKzu − 3 = ⎜1 − 3 ⎟
−
*
L⎠
L
⎝
ここで,H;顕熱フラックス,Cp;空気の定圧
比熱,ρ;空気の密度,u*;摩擦速度,T*;
摩擦温度,CT ;温度の構造関数,K;カルマ
ン定数 0.4,z;シンチロメータの地表面か
らの高さ,β1;Obukhov-Corrsin 定数 0.86,
L;モニン-オブコフ長,ε;エネルギー消散
率
その他の熱収支項目は以下の熱収支式よ
図 3-1 高知工科大学における観測地点
観測距離60m~70m
放射収支計
レーザー光発信機
全天日射量計
レーザー光受信機
乾球温度
気圧計
シンチロメータ
温球温度
地中熱流計
土壌水分計
シンチロメータ
地中熱流計
土壌水分計
地中熱流計
土壌水分計
図 3-2 熱収支観測システム配置図
ii
高さ1.2m
修士論文要旨版
4.観測結果と考察
ッ
(W・m-2) 800
熱
600
フ
ラ 400
200
ク
0
ス
-200
0:00
6:00
ッ
80 0
正味放射量(Rn)
熱
600 顕熱フラックス(H)
フ
ラ 400
200
ク
0
ス
-200
0:00
6:00
ッ
800
熱
600
フ
ラ 400
200
ク
0
ス
- 20 0
0:00
12:00
18:00
2003/8/21
地中熱流量(G)
潜熱フラックス(LE)
面芝生(約 540 W・m-2)になった.両観測地
点とも 1 日のピーク時の潜熱フラックス
(LE)は 500 W・m-2以上と非常に大きい.顕
熱フラックス(H)は両観測地点とも 1 日の
ピーク時,1 時間平均約 50 W・m-2程度であり,
潜熱フラックス(LE)に比べれば非常に少
ない値を示している.
0:00
以上の観測結果についての考察をまとめ
(時間)
ると,芝地における夏期晴天の潜熱フラッ
クス(LE)は非常に大きく芝地緑化をおこ
なう事で大きな大気の冷却効果を得ること
が出来る.ただし,今回観測した芝地は,
大学により非常に良く管理された育成環境
0:00 にあり,恵まれた管理条件を考慮に入れて
(時間) のことである.
12:00
18:00
2004/2/18
正味放射量(Rn)
地中熱流量(G)
顕熱フラックス(H)
潜熱フラックス(LE)
5.芝地を利用したヒートアイランド対策
現在,ヒートアイランド対策として 1).
人工排熱の低減,2).地表面被覆の改善,3).
都市形態の改善,4).ライフスタイルの改善
6:00
12:00
18:00
0:00
の 4 つの大きな対策が行われている.本研
2004/8/12
(時間) 究では,地表面被覆の改善によるヒートア
正味放射量(Rn)
地中熱流量(G)
イランド対策として,芝地緑化を行う.緑
顕熱フラックス(H)
潜熱フラックス(LE)
化政策として,公園,緑地や街路樹の整備,
図 4-1 熱収支観測結果
建物の屋上や壁面の緑化,敷地の緑化が上
シンチレーション法を使用した熱収支観
げられる.しかし,都市部では今後まとま
測結果(それぞれ観測地点の 1 日の結果)
った土地の取得が困難なことから公園,緑
を図 4-1 に示す.ここでは,大気冷却効果
地や街路樹の整備は進んでいない.屋上緑
のある潜熱フラックス(LE)と顕熱フラッ
化に関しては,2001 年 4 月東京都は,改正
クス(H)のみの結果を考察する.
自然保護条例を施行,敷地面積 1000 m2以
両脇に樹木の植わった芝地において,夏
上の民間建築物(公共建築物は 250 m2以
期(2003/8/21)と冬期(2004/2/18)を比
上)を新改築する際,利用可能な屋上面積
較した際,潜熱フラックス(LE)の 1 日の
の 2 割以上の緑化を義務づけ,現在,自治
ピーク時において,夏期(1 時間平均約 600
体を中心に急速に緑化対策が進んでいる.
W・m-2)は冬期平均(1 時間平均約 160 W・m-2)
以上の現状を踏まえて,芝地緑化による
の約 3.8 倍であった.顕熱フラックス(H)
ヒートアイランド対策として,学校教育施
は,1 日のピーク時において,冬期(1 時間
設における校庭緑化をモデルプロジェクト
平均約 110 W・m-2)は夏期(1 時間平均約 50
して検討する.学校教育施設は地域に関係
W・m-2)の約 2.0 倍であった.
なく大きな偏りがなく設置されており,緑
両脇に樹木の植わった芝地(2003/8/21)
化に対する地域公平性が保たれる点も土地
と一面芝地(2004/8/12)の潜熱フラックス
の取得が困難な都市においての存在意義は
(LE)は,1 日のピーク時に両脇に樹木の
高く,新たなクールスポットの創出にも繋
植わった芝地(1 時間平均約 600 W・m-2),一
がる.また,文部科学省が中心になり実施
iii
修士論文要旨版
とが出来れば,土地取得の困難な,東京都
特別区では大きな熱環境緩和効果を生むと
考えられる.
されている「環境を考慮した学校施設(エ
コスクール)の整備推進に関するパイロッ
トモデル事業」の中でも校庭緑化について
は大きな期待が寄せられ整備が進んでいる
(行政による補助制度も整備されている).
芝地による校庭緑化を行う都市として東京
都(特別区)を選択する.その理由として
東 京 の 100 年 当 た り の 平 均 気 温 上 昇 は
+3.0℃と他のどの都市よりも高く,ヒート
アイランド対策が早急に必要である.学校
教育施設の密度も高く芝地緑化の効果が大
きいと考えられる.また,東京都特別区内
の都市公園に限って言えば 4.1%(約 25.49
km2)で都民一人当たりの都市公園面積は,
約 3.13 m2/人と政令指定都市の中では最低
である.
校庭の芝地化することによってのメリッ
トは様々なことが期待されている.期待さ
れている効果の中でデータとして実証され
ているものは少なく,経験的見地はある程
度認識されているが定量的に把握はされて
いな.芝地による校庭緑化の代表的なモデ
ルプロジェクトにおける熱環境緩和効果に
ついての効果の検証を行う.
表 6-1 特別区内の教育施設の校庭面積の試算結果
園数
面積(km2)
幼稚園
学校数
0.48
面積(km2)
小学校
907
3.58
中学校
555
2.58
高等学校
392
3.29
合計
2646
9.94
出所:東京都総務局統計部人口統計課学事統計係
「2004 年学校基本調査」より作成
特別区内の教育施設(幼稚園から高等学
校)における最低限必要な校庭面積を試算
した(学校法を元に)
.校庭を芝地による校
庭緑化した際の熱環境緩和効果(大気冷却
効果)について試算する.
(1).試算内容
校庭が芝生で緑化されていない場合とさ
れた場合の大気温度の冷却効果として,緑
から放出される蒸散による潜熱フラックス
(LE)だけど仮定する.また,蒸散のエネ
ルギーは大気冷却効果のみに用いられるこ
とと仮定する.
観測でえられた潜熱フラックス(LE)か
ら蒸散量(E)を求める.求める蒸散量(E)
は 2004/8/12 の潜熱フラックス(LE)と気
温を用いて試算する.ただし,求めた蒸散
量(E)は昼間(7:00~17:00)の蒸散量(E)
の合計を夏期の代表した 1 日の芝地におけ
る蒸散量とする.以下に 1 時間の蒸散量を
算出する式を以下に示す.
校庭芝生緑化の期待される効果
1).熱環境緩和効果
2).砂ぼこりの飛散防止
3).ぬかるみ防止
4).生徒の怪我防止,健康促進
5).環境教育への貢献
6).景観の向上
7).ゆとり空間の創出
8).新たなコミュニティの創出
792
等…
6.校庭緑化によるクールアイランド効果
東京都特別区(23 区)の教育施設(幼稚
園から高等学校)が約 2700 校存在し,約
10 km2の校庭があると見積もられる(表 6-1
参照).現在,東京都特別区にある都市公園
の合計面積は約 25.49 km2であり,校庭芝地
緑化すると都市公園の面積の約 40%に相
当し,仮にすべての校庭を芝生緑化するこ
L = 2.50 × 106 − 2400T
LE
E=
× 60 × 60
L
ここで,L:水の気化の潜熱(J・kg-1),T:
気温(℃)
,E:蒸散量(kg・m-2・s-1=mm・s-1)
LE:潜熱フラックス(W・m-2=J・m-2・s-1)
上記の式より,一面芝地の夏期の 1 日
(7:00~17:00)の蒸散量は約 165 mm・day-1
であった.
iv
修士論文要旨版
(3).考察
都市の熱環境緩和のための,緑化政策の
整備が整い次第,できるだけ速やかに実行
することが急務である.特別区内の教育施
設への校庭芝地緑化の大気冷却効果は,大
気境界線を 500m に仮定した場合,最大約
1℃の冷却効果(ポテンシャル)を得ること
が試算でき,このことから緑化政策を行う
ことはヒートアイランド対策としては大い
に期待できると考えられる.
次に,表 6-1 で試算した芝地緑化する面
積の蒸発潜熱を求める式を以下に示す.
AE = V × E × A
ここで,AE:蒸発潜熱(cal・day-1),V:気
温 30℃における水の気化熱(583 cal・g-1)
E:蒸散量(mm・dey-1)A:芝地緑化した校庭
面積(km2)
上記の式より,一日の芝地緑化した校庭
面積当たり約 9.7×1013 cal・day-1に達する.
最後に,特別区の面積と大気境界線の高
さとした箱の中で,芝地の蒸発潜熱によっ
て気温がどの程度変化するか以下の式を使
い試算する.
T =
7.まとめ
本研究は,シンチレーション法を使用し
て,芝地の熱収支観測を行い,大気冷却効
果のある潜熱フラックス(LE)を算出しそ
の結果を,校庭緑化の可能性について検証
してきた.結果として特別区内の校庭緑化
をした場合,最大約 1℃の大気冷却効果(ポ
テンシャル)を試算した.しかし,日本で
は研究・調査は進んではいるが,効果の検
証レベルだけで,具体的な効果を考慮した
政策は,対策段階であり国・地方自治体の
積極的な政策の意思決定が待たれる.また,
緑化を実施した地域が増えることで,緑化
効果は大きくなり,更なる緑化が推進され
相乗効果を生むと考えられる.
AE
Cpρ × A × h
ここで,AE:蒸発潜熱(cal・day-1),Cp:空
気の定圧比熱(気温 30℃の空気の定圧比熱
0.24 cal・g-1),ρ:空気の密度(気温 30℃,
湿度 20%,気圧 1003hPaで空気の密度が
1.15 kg・m-3,2004/8/12 の観測データより)
,
2
A:東京都特別区面積(km )h:大気境界線
の高さT:気温変化量(℃・day-1)
上記の式より,特別区内の教育施設の校
庭を芝地緑化した際の大気冷却効果は,
1.13℃となる(大気境界線 500m).最大約
1℃の大気冷却効果(ポテンシャル)を校庭
の芝地緑化することで得ることが出来る.
また大気境界線の高さを変えた大気冷却効
果について図 6-1 に示す.大気境界線の高
さを高くすると気温低下が小さくなる.こ
れは潜熱フラックス(LE)の影響が大気の
厚さが大きくなるほど弱くなることを示し
ている.
今後の問題と課題
1).今後の問題点として,研究で使用した
シンチレーション法を用いて長期的な
観測が必要である.
2).芝地だけでなく他の被覆・植生におい
てシンチレーション法での観測を加え
ることが必要である.
3).従来の観測方法とシンチレーション法
の観測結果の精度を含む比較検証が必
要である.
4).熱緩和効果の試算にも他の方法があり,
それらとの比較も必要である.
5).緑化による環境改善効果(経済性)に
ついても緑化事業の妥当性と有効性の
検討を加える必要がある.
(℃) 6
5
気4
温
3
低
下2
1
0
0
300
600
900
1200
1500
1800
大気境界線の高さ
図 6-1 大気境界線の高さと気温低下の推移
2100
(m)
v
Abstract
Abstract
Heat Balance Analysis using Scintillation Method
and the Effect of Cool Island on the Grassland
Kochi University of Technology
Graduate School of Engineering
Department of Engineering
Infrastructure System Engineering
1075074 Shinichiro MORI
Background:
Recently, the heat environmental problems such as global warming and the heat
island phenomenon have been observed in various places. The heat island phenomenon
is problematic for the urban life.
Purpose:
This research aims at improving the heat environment of the city by using greenery,
which has the effect of decreasing the heat island phenomenon. The heat budget
of grassland is observed that is used for urban greenery.
Method:
Recently, the heat budget of the grassland is observed by using the developed
scintillation method. Based on the observation results, a greening policy using
grassland is proposed. The green schoolyard at the school is considered as a model
project. The schoolyards at the schools in Tokyo 23 districts are green. The effect
of greening is evaluated from the decrease in temperature in the city.
Result:
The latent heat flux of the grassland is large compared with the sensible heat
flux. The temperature of Tokyo 23 districts decreased at about 1℃ when greening
it by the grasslands. Urban planting leads to the temperature decrease.
Key words:
Grassland, Scintillation method, Greening schoolyard, latent heat flux, sensible
heat flux
vi
目次
目次
要旨版
・・・
ⅰ
Abstract
・・・
ⅵ
目次
・・・
ⅶ
図目次
・・・
ⅸ
表目次
・・・
ⅺ
・・・
1
第1章
序論
1.1
研究の背景
・・・
1
1.2
研究の目的
・・・
2
1.3
研究の方法
・・・
3
1.4
論文の構成
・・・
3
・・・
5
・・・
5
第2章
2.1
地球温暖化とヒートアイランド現象
地球温暖化現象
2.1.1
地球温暖化問題とは
・・・
5
2.1.2
地球温暖化問題の原因と現状
・・・
6
・・・
15
2.2 ヒートアイランド現象
2.2.1
ヒートアイランド現象とは
・・・
15
2.2.2
ヒートアイランドの原因と現状
・・・
16
・・・
23
第3章
熱収支観測の概要
3.1
既存の熱収支(熱環境特性)研究のレビュー
・・・
23
3.2
熱収支とは
・・・
23
3.2.1
既存の熱収支測定の現状と問題点
・・・
24
3.2.2
熱収支測定の問題解決方法の検討
・・・
27
・・・
28
・・・
28
第4章
4.1
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
シンチレーション法とは
4.1.1
観測場所概要
・・・
30
4.1.2
観測装置概要(熱収支観測システム)
・・・
31
4.1.3
その他の観測装置概要
・・・
36
vii
目次
4.2
観測結果
・・・
38
4.2.1
2003 年夏期(8 月 19 日~22 日)の熱収支観測結果
・・・
38
4.2.2
2004 年冬期(2 月 17 日~20 日)の熱収支観測結果
・・・
41
4.2.3 夏期と冬期の観測結果比較
・・・
44
4.2.4
・・・
47
・・・
50
2004 年夏期(8 月 10 日~13 日)の熱収支観測結果
4.2.5 観測場所の違いによる比較
4.3
芝地における熱環境性(熱収支)の考察
・・・
53
第5章
芝地を利用したヒートアイランド対策
・・・
55
5.1
都市でのヒートアイランド対策として芝地をどう活かすか ・・・
55
5.2
校庭の芝生緑化
・・・
55
5.3
東京都の都市熱環境
・・・
58
5.3.1 東京の人口と土地利用
・・・
58
5.3.2
・・・
60
東京の気候
5.4
東京都特別区における校庭芝地緑化の提案
・・・
62
5.5
校庭緑化によるクールアイランド効果
・・・
64
・・・
67
第6章
まとめと今後の研究と課題
6.1
まとめ
・・・
67
6.2
問題点と今後の課題
・・・
68
6.3
終わりに
・・・
68
引用・参考文献・参考資料一覧
・・・
69
謝辞・観測データ等について
・・・
75
付録(解析データ等)
・・・
76
viii
目次
図目次
図 3-1 高知工科大学における観測地点
・・・
ⅰ
図 3-2 熱収支観測システム配置図
・・・
ⅰ
図 4-1 熱収支観測結果
・・・
ⅱ
図 6-1 大気境界線の高さと気温低下の推移
・・・
ⅴ
図 1.1 本論文の研究フロー
・・・
4
図 2.1 地球と太陽(宇宙空間)のエネルギーのやり取り
・・・
5
図 2.2 温暖化のメカニズム(正常)
・・・
6
図 2.3 温暖化のメカニズム(温室効果ガス増加)
・・・
7
図 2.4 大気中の温室効果ガスの環境への寄与度(1998 年)
・・・
9
図 2.5 1970~2003 年までの大気中の二酸化炭素の経年変化
・・・
9
図 2.6 1880~2003 年の地球平均気温からの温度の偏差
・・・
10
図 2.7 現在の夜間気温分布(夏期 5:00)
・・・
15
図 2.8 ヒートアイランド現象のメカニズム
・・・
17
図 3.1 地表面における熱収支
・・・
24
図 4.1 高知工科大学における観測地点
・・・
30
図 4.2 2003 年 8 月観測地点写真
・・・
31
図 4.3 2004 年 2 月観測地点写真
・・・
31
図 4.4 2004 年 8 月現地観測写真
・・・
31
図 4.5 シンチロメータ受信機写真
・・・
32
図 4.6 シンチロメータ送信機写真
・・・
32
図 4.7 気象観測装置写真
・・・
33
図 4.8 気象観測装置各センサーの接続図
・・・
33
図 4.9 全天日射量計写真
・・・
34
図 4.10 正味放射量計写真
・・・
34
図 4.11 地中熱流量計写真
・・・
34
図 4.12 気圧計写真
・・・
35
図 4.13 温度計写真
・・・
35
図 4.14 熱収支観測システム配置図
・・・
35
図 4.15 温度湿度データロガー写真
・・・
36
図 4.16 土壌水分計写真
・・・
36
図 4.17 赤外線熱画像装置写真
・・・
37
図 4.18 2003 年 8 月,2004 年 2 月の観測装置配置
・・・
39
ix
目次
図 4.19 2003 年 8 月 19 日~22 日の芝地の熱収支
・・・
40
図 4.20 2003 年 8 月 21 日の芝地の熱収支
・・・
40
図 4.21 2003 年 8 月 19 日~22 日の気温と表面温度の推移
・・・
41
図 4.22 2004 年 2 月 17 日~20 日の芝地の熱収支
・・・
43
図 4.23 2004 年 2 月 18 日の芝地の熱収支
・・・
43
図 4.24 2004 年 2 月 17 日~20 日の気温と表面温度の推移
・・・
44
図 4.25 夏期(2003 年 8 月 21 日)と冬期(2004 年 2 月 18 日)の熱収支(1 時間平均)
・・・
45
図 4.26 夏期(2003 年 8 月 21 日)と冬期(2004 年 2 月 18 日)の気温・表面温度(1 時間平均)
・・・
45
図 4.27 夏期(2003 年 8 月 21 日)の熱収支の比率(1 時間平均)
・・・
46
図 4.28 冬期(2004 年 2 月 18 日)の熱収支の比率(1 時間平均)
・・・
46
図 4.29 2004 年 8 月の観測装置配置図
・・・
48
図 4.30 2004 年 8 月 10 日~13 日の芝地の熱収支
・・・
49
図 4.31 2004 年 2 月 12 日の芝地の熱収支
・・・
49
図 4.32 2004 年 2 月 10 日~13 日の気温と表面温度の推移
・・・
50
図 4.33 夏期(2003 年 8 月 21 日)と夏期(2004 年 8 月 12 日)の熱収支(1 時間平均)
・・・
51
図 4.34 夏期(2003 年 8 月 21 日)と夏期(2004 年 8 月 12 日)の気温・表面温度(1 時間平均)
・・・
51
図 4.35 夏期(2003 年 8 月 21 日)の熱収支の比率(1 時間平均)
・・・
52
図 4.36 冬期(2004 年 8 月 12 日)の熱収支の比率(1 時間平均)
・・・
52
図 5.1 東京都特別区の土地利用
・・・
58
図 5.2 東京の真夏日と熱帯夜の年間日数の推移
・・・
60
図 5.3 東京都の冬日の年間日数の推移
・・・
61
図 5.4 2004 年 8 月 12 日の一面芝地の蒸散量(E)と潜熱フラックス(LE)の推移
図 5.5 大気境界線の高さと温度低下の推移
x
・・・
65
・・・
66
目次
表目次
表 6-1 特別区内の教育施設の校庭面積の試算結果
・・・
ⅳ
表 2.1 温室効果ガスの特徴
・・・
8
表 2.2 京都議定書,数値目標
・・・
14
表 2.3 日本の大都市の平均,日最高,日最低気温の 100 年あたりの上昇量
・・・
18
表 2.4 ヒートアイランド対策に関する政府や自治体の動き
・・・
21
表 4.1 シンチロメータの仕様
・・・
32
表 4.2 全天日射量計の仕様
・・・
34
表 4.3 正味放射量計の仕様
・・・
34
表 4.4 地中熱流量計の仕様
・・・
34
表 4.5 気圧計の仕様
・・・
35
表 4.6 温度計の仕様
・・・
35
表 4.7 温度湿度データロガーの仕様
・・・
36
表 4.8 土壌水分計の仕様
・・・
36
表 4.9 赤外線熱画像装置の仕様
・・・
37
表 4.10 2003 年 8 月 16 日~22 日の気象条件
・・・
38
表 4.11 2004 年 2 月 14 日~20 日の気象条件
・・・
42
表 4.12 2004 年 8 月 7 日~13 日の気象条件
・・・
47
表 5.1 屋外教育環境整備事業での補助条件
・・・
57
表 5.2 2003 年補助金により芝張りを施している主な学校
・・・
57
表 5.3 東京都と東京都特別区の面積と人口
・・・
58
表 5.4 東京都特別区の土地利用凡例
・・・
59
表 5.5 政令指定都市の都市公園 1 人当たりの面積
・・・
59
表 5.6 東京都特別区内の教育施設の校庭面積の試算結果
・・・
62
表 5.7 幼稚園設置基準運動場(校庭)の面積
・・・
62
表 5.8 小学校設置基準運動場(校庭)の面積
・・・
63
表 5.9 中学校設置基準運動場(校庭)の面積
・・・
63
xi
第1章
第1章
序論
序論
1.1 研究の背景
近年,地球規模での環境問題が国際的に注目されるようになってきた.注目を浴びる
ようになったきっかけは,1950~60 年代にかけて,先進国を中心として経済が大きく
発展し,その引き換えに多くの環境破壊が発生し,同時に発展途上国との経済的な格差
が広がり,先進国と発展途上国の環境衛生面での悪化も同時に深刻になった.国連人間
環境会議がスウェーデンのストックホルムで開催(1972 年)され,採択された「人間
環境宣言」は,地球規模での環境問題に関する社会的な関心を世界に広めるきっかけと
なった.ストックホルム会議 20 周年記念として,国連環境開発会議(地球サミット)
がブラジルのリオデジャネイロで開催(1992 年)された.会議の成果として,
「気象変
動枠組条約」と「生物多様性条約」の 2 つの条約が調印され,「環境と開発に関するリ
オ宣言」
・「森林原則声明」
・「アジェンダ 21」が採択された.この会議には約 180 カ国
が参加し,その中の国の約 100 カ国が首相・元首が出席した.また各国の政府代表だけ
でなく,多くの学識者や NGO 等が参加したことに大きな意義があった.翌年の 1993 年
には地球サミットの合意の実施状況を監視し・報告するために,国連経済社会理事会に
よって「持続可能な開発委員会」が設立された.地球温暖化防止京都会議が日本の京都
において開催(1997 年)され,会議の中で「気象変動枠組条約の京都議定書」が採択
された.京都議定書では温室効果ガスの削減目標を具体的な数値で設定した.地球サミ
ットから 10 年後には,南アフリカのヨハネスブルクで,
「持続可能な開発に関する世界
首脳会議」が開催(2002 年)された.会議では,持続可能な開発のための人類の行動
計画「アジェンダ 21」の取り組みが達成できたかを検証し,今後の課題を検討するた
めに,104 カ国の首脳,190 カ国を超える政府代表や NGO・市民団体等,合計 2 万人以
上が参加した.会議の成果として,持続可能な開発への実現へ向けた決意表明である「ヨ
ハネスブルク宣言」とその実行計画である「世界実施文書」が採択された.
2004 年 12 月現在,環境問題に対し地球規模での取り組みは多く行われている.しか
し,地球温暖化・オゾン層の破壊・水質汚染・自然環境の破壊・急激な都市化による温
暖化現象(ヒートアイランド現象)などの環境問題は一向に解決せず,現況は悪化して
いる.人間生産活動の結果として排出される汚染物質や自然破壊への対策は,その原因
となる人間のライフスタイルのあり方や社会システムの変革が必要である.環境に配慮
した,循環型社会を構築する必要性がますます高まっている.
上記の社会的な背景をふまえて,本論は都市の温暖化現象(以下:ヒートアイランド
現象)について研究を実施する.ヒートアイランド現象は,私たち人間が活動の中心と
している都市部に起こる局地的な温暖化現象である.都市の大気環境は,郊外に比べて
1
第1章
序論
気温は高く,湿度は相対的に低く,風速は弱くなる傾向(都市固有な風の発生等)があ
る.急激な都市化により,都市エネルギー需要の増加に伴う温室効果,都市のキャノピ
ー(高層ビル等)や被覆条件の変化(コンクリート,アスファルト化等)に伴う高温化
が上げられる.ヒートアイランド現象により,熱帯夜の増加や異常降雨の誘発,都市に
おけるエネルギー需要の増加等,都市機能にも弊害が生じており,早急な対策が必要で
ある.また,今後も魅力のある都市部への人口増加は更に進むと考えられ,都市人口の
増加と都市機能の向上と共に都市部から排出される排熱は増加し,その排熱に対してど
のように対処するかは大きな問題になっている.ヒートアイランド現象の具体的な改善
策・解決策の一貫として,クールアイランド効果(緑化等)についての検討がなされ,
都市の熱環境が具体的に改善されることに大きな関心が集まっている.そんな中,クー
ルアイランド効果についての熱環境緩和効果の評価に加えて環境改善効果(経済性)に
ついての議論も研究の視野に入る段階になってきている.
※地球温暖化現象とヒートアイランド現象については,第 2 章で詳しく説明する.
1.2
研究の目的
研究の背景より,都市の急激な発展によって悪化の一歩をたどる都市の熱環境を改善
することが都市環境を改善し,ひいては地球温暖化現象にも歯止めをかけるきっかけを
つくることである.
よって本論は都市のヒートアイランド現象を緩和させる効果のある緑を用いて都市
の熱環境を改善し,都市の熱環境を再生する為の緑化政策に貢献することを最終的な目
的としている.
都市緑化には,地球温暖化防止,省エネルギー,憩いの場の提供,景観の向上,土地
の有効利用といったメリットがある.ヒートアイランド対策としての緑化には,夏期の
都市大気温度を低下させる効果を持つ潜熱(クールアイランド効果)を生み,都市の熱
環境対策には大きな効果があると考えられている.
本論は,都市緑化に最も多く用いられている芝地の熱環境の特性(以下:熱収支)と
都市の熱環境緩和効果を明らかにすることを目的としている.芝地の熱収支を把握する
ために現在一般的に渦相関法が用いられてきたが,本論では最近開発されたシンチロメ
ータを利用したシンチレーション法を用いて芝地の 3 次元的な熱収支を把握し,熱環境
緩和効果について解析を行う.
つぎに,都市の熱環境緩和対策に芝地緑化を適用して,クールアイランド効果を生み
出し,都市の熱環境を改善するための具体的なモデルプロジェクトを提案する.緑化に
よるクールアイランド効果についての熱環境緩和効果の検討は,多方面で試みられてい
るが,プロジェクト化する為には熱環境緩和効果のみならず環境改善効果(経済性)に
2
第1章
序論
ついての考察が必要である.そこで,本論は,芝地緑化を都市の熱環境改善対策の一部
に適用した場合の,環境改善効果(経済性)について予備的な検討を加える.
1.3
研究の手順と方法
研究の手順を以下に示す.
(1).地球温暖化と都市温暖化の現象把握
現在の地球温暖化現象とヒートアイランド現象及びクールアイランド効果の特
質を検討した上で,都市の熱環境問題の解決には何が必要かについて考える.
(2)
.既存の熱収支(熱環境特性)文献のレビュー
現在までに行われてきた,熱収支観測に関わる現状と問題点及び課題について,
文献をレビューし,問題解決の方法と方策を検討する.
(3)
.新しく開発されたシンチレーション法を利用し,芝地の熱収支観測を行う.
熱収支を観測するための代表的な方法としては,渦相関法があるが,近年新しく
開発されたシンチロメータを使ったシンチレーション法を用いて,都市緑化に最
も多く利用されている芝生の熱収支観測を行い,より具体的な芝地の熱収支につ
いて検討する.
(4).芝地緑化を適用したヒートアイランド対策
ヒートアイランド現象の対策としての,芝地緑化の適用可能性の検討を行う.対
象地域として,東京都内にある学校の校庭をモデルに芝地緑化を適用したモデル
プロジェクトをもとに,芝地利用の可能性について検討する.
(5).観測結果,検討結果を総合的に整理して,関連する問題点の抽出を行い,今後
の課題を明らかにする.
(6).最後に,本研究の成果のまとめ,問題点,課題を示す.
1.4
論文の構成
本論文は 6 章から構成されており,論文の全体構成は図 1.1 に示す.以下に,各章に
ついて述べる.
第 1 章は序論であり,研究の背景,目的,手順,構成を述べる.
第 2 章では,論文の背景となる,地球温暖化とヒートアイランド現象のメカニズム,
実態,対応策等について述べる.
第 3 章では,既存の熱収支研究のレビューと本研究で使用するシンチレーション法の
利点について述べる.
第 4 章では,シンチレーション法を用いた,芝地の熱収支観測を行い,芝地における
熱収支特性について述べる.
3
第1章
序論
第 5 章では,第 4 章の結果より,芝地緑化を適用したヒートアイランド対策のモデル
プロジェクトについて述べる.
第 6 章は結論であり,研究成果のまとめ,問題点,課題を述べる.
第1章 序論
・研究の背景,目的,手順,構成
背景の問題点の把握
研究の手順と手法について
第2章 地球温暖化とヒートアイランド
・地球温暖化とは,ヒートアイランドとは
・メカニズム,原因,現状,影響,
問題に対する取り組み
都市の熱収支
観測について
第3章 既存の熱収支論文の把握
・熱収支観測に関わる現状と問題点を把握
・問題解決の方法を検討
緑化に多く用い
られている芝地
について
都市緑化に多く
用いられている
芝地の適用
第4章 新しく開発された方法を利用し観測
・緑化に最も多く利用されている芝生の熱収支観
測を行い,芝地の熱収支について検討
芝地の熱収支結果を適用
第5章 芝地を利用したヒートアイランド対策
・芝地の利用可能性の検討
・東京都内の学校校庭の緑化
研究結果を総合的に整理
第6章 結論
・研究成果のまとめ,問題点,課題
図 1.1 本論文の研究フロー
4
シンチレーション法
を用いて観測
第2章
第2章
2.1
2.1.1
地球温暖化現象とヒートアイランド現象
地球温暖化現象とヒートアイランド現象
地球温暖化現象
地球温暖化問題とは
本節では,現在国際的に問題になっている地球温暖化とはどんな現象なのかを,最初
に理解する.大気中に含まれる二酸化炭素(CO2)
・メタン(CH4)等の気体は,太陽から
地球に放射されるエネルギーと,赤外線の形で地表から宇宙空間に逃げていくエネルギ
ーの一部を吸収して大気を暖めている(図 2.1 参照)
.この効果のおかげで地球の気温
は生命を維持していく為に適した状態に保たれている(地球の平均気温は約 15℃)
.こ
のような働きを温室効果と呼び、この効果を持つ気体を温室効果ガスと呼んでいる.19
世紀以降(産業革命以降)
,化石燃料の大量消費などの為に放出された二酸化炭素(CO2)
等の温室効果ガスが大気中に増加し,結果として,20 世紀末までに地球の平均気温は
0.6℃前後上昇している(約 100 年前と比べて)
.これは,人類がかつて経験したことの
無い地球規模の急激な気温上昇であり,今後も気温上昇は続くと考えられる.地球規模
の気温上昇により,地球各地で異常気象が頻発し,氷河等が溶けて海水面が上昇するな
どの社会的・経済的に大きな影響を与えることが懸念されている現象のことを地球温暖
化と位置づけている.
図 2.1 地球と太陽(宇宙空間)のエネルギーのやり取り
5
第2章
2.1.2
地球温暖化現象とヒートアイランド現象
地球温暖化問題の原因と現状
(1).地球温暖化のメカニズム
現在,地球の平均気温は約 15℃であるが,もしも地球上に大気(水蒸気・温室効果
ガスを含む)がなかったとすれば,地球の平均気温はマイナス約 18℃となり,生命の
存在できない極寒の星になる.地球に大気が存在し地表面を暖めている.仕組みは図
2.1 に示す.
(A).太陽から地球に届く日射エネルギー(約 70%)は,大気を通過して地表面に吸収
され熱に変わる.
(B).加熱された地表面から、赤外線の形で熱が放射エネルギーとして地球外に向けて
放射される.
(C).地表面から地球外に向けて放射され,大気中に存在する「温室効果ガス」が一部
の熱を吸収する.
(D).温室効果ガスに吸収された熱の一部が再び下向き(地球に向けて)に放射し,再
び地表面や下層大気を加熱させる.
この仕組みにより生命が存在するのに適した気温を保っている(図 2.2 参照).とこ
ろが近年,産業の発展や森林の開拓などの人間活動の活発化に伴って,温室効果ガスの
濃度が急激に増加し,地球規模での気温上昇(温暖化)が進行している(図 2.3 参照)
.
図 2.2 温暖化のメカニズム(正常)
6
第2章
地球温暖化現象とヒートアイランド現象
図 2.3 温暖化のメカニズム(温室効果ガス増加)
(2).地球温暖化の原因
地球温暖化の原因は,人間の活動が活発になることにより発生する「温室効果ガス」
が原因だと考えられている.温室効果ガスには,二酸化炭素(CO2),メタン(CH4),一
酸化二窒素(N2O)等が含まれる.近年,こうした温室効果ガスの排出量が人間活動の
拡大により増加している.また,オゾン層を破壊するフロガス等も加わり大気中への排
出量が増加している(表 1.1 参照)
.こうした,温室効果ガスの中でも二酸化炭素(CO2)
は最も温暖化への影響度が大きいガスで全温室効果ガス中,温暖化への寄与度は 60.1%
を占めている(表 2.1,図 2.4 参照)
.産業革命以降,化石燃料の使用量が急激に増加
し,また二酸化炭素を吸収・貯蔵している森林が「開発」によって減少している.その
反作用として,大気中の二酸化炭素(CO2)の濃度が増加し二酸化炭素濃度は,1750 年
の 280ppmから 2002 年の 373ppmへと 33%も増加している(図 2.5 は 1970~2003 年の二
酸化炭素濃度変化 参照).このままのペース二酸化炭素が増加すれば,2100 年には産
業革命前の 2~3 倍以上の 540~970ppmへ増加すると予測されている.
7
第2章
地球温暖化現象とヒートアイランド現象
表 2.1 温室効果ガスの特徴
温室効果ガス
二酸化炭素(CO2)
メタン(CH4)
地球温暖
化係数
1
23
温暖化
への
性質
用途、排出源
代表的な温室効果
化石燃料の燃焼
ガス.
など.
天然ガスの主成分で,
稲作,家畜の腸内
常温で気体.よく燃え
発酵,廃棄物の埋
る.
め立てなど.
寄与度
60.1%
19.8%
数ある窒素酸化物の中
で最も安定した物質.
一酸化二窒素(N2O)
296
6.2%
他の窒素酸化物(例え
ば二酸化窒素)などの
燃料の燃焼,工業
プロセスなど.
ような害はない.
オゾン層を
破壊する
フロン類
塩素などを含むオゾン
CFCs、HCFC 類
数千から
1 万程度
層破壊物質で,同時に
13.5%
強力な温室効果ガス.
モントリオール議定書
で生産や消費を規制.
スプレー,エアコ
ン,冷蔵庫などの
冷媒,半導体洗浄
など.
スプレー,エアコ
フロン類
オゾン層を破壊しない
HFCs
(ハイドロフルオロ
カーボン類)
数百から
1 万程度
塩素がなく,オゾン層
ン,冷蔵庫などの
を破壊しないフロン.
冷媒,化学物質の
強力な温室効果ガス.
製造プロセスな
ど.
PFCs
(パーフルオロ
カーボン類)
SF6
(六フッ化硫黄)
数千から
0.4%
炭素とフッ素だけから
なるフロン.強力な温
1 万程度
室効果ガス.
硫黄とフッ素だけから
22200
なるフロンの仲間.強
力な温室効果ガス.
半導体の製造プロ
セスなど.
電気の絶縁体な
ど.
(注)地球温暖化係数とは,温室効果ガスそれぞれの温室効果の程度を示す値.ガスそれぞれの寿命の長
さが異なることから,温室効果を見積もる期間の長さによってこの係数は変化する.ここでの数値は,
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)第三次評価報告書の値(100 年間での試算)になる.
出所:IPCC 第三次評価報告書・京都議定書を参考に作成
8
第2章
地球温暖化現象とヒートアイランド現象
HFCs,PFCs,
SF6その他,
0.4%
CFCs,HCFCs,
13.5%
一酸化二炭素
(N2O), 6.2%
二酸化炭素
(CO2), 60.1%
メタン(CH4),
19.8%
出所:IPCC 第三次評価報告書より作成
図 2.4 大気中の温室効果ガスの温暖化への寄与度(1998 年)
(ppm)
390
380
370
二
酸 360
化
炭 350
素
濃 340
度
330
320
310
1965
1970
1975
1980
バロー(アラスカ)
1985
1990
ハワイ(マウナロア)
1995
2000
綾里(日本)
2005 (年)
南極
出所:World Data Centre for Greenhouse Gases (WDCGG)より作成
図 2.5 1970~2003 年までの大気中の二酸化炭素の経年変化
9
第2章
地球温暖化現象とヒートアイランド現象
(3).地球温暖化の現状
気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が 2001 年に取りまとめた第三次評価報告書
によると,地球の平均気温は 20 世紀中に約 0.6±0.2℃上昇し,それに伴い平均海面水
位が 10~20cm 上昇した(図 2.6 参照)
.報告書では,過去 50 年間に観測された温暖化
の大部分が人間活動に影響していると指摘している.10 年間移動平均を見てみると
1970 年代から急激な温度上昇が起きている.また報告書では,世界全体の経済成長や
人口,技術開発,経済・エネルギー構造等の動向について一定の前提条件を設けた複数
のシナリオに基づく将来予測を行っており,1990 年から 2100 年までの地球の平均気温
の上昇は,約 1.4~5.8℃と予測されている(IPCC 第三次評価報告書,一定の条件を加
えた 1990~2100 年までの平均気温予測シナリオより).こうした地球温暖化が進行する
のに伴い,人類の生活環境や生物の生息環境に広範に深刻な影響が生じるおそれがある.
(℃)
1
観 0.8
測 0.6
温
度 0.4
平
均 0.2
か
0
ら
の -0.2
温
度 -0.4
の
偏 -0.6
差 -0.8
-1
1880
1890
1900
1910
全世界
1920
1930
北半球
1940
1950
南半球
1960
1970
1980
1990
2000 (年)
10年間移動平均(全世界)
出所:気象庁,世界の気温より作成
図 2.6 1880~2003 年の地球平均気温からの温度の偏差の変化
(4).地球温暖化の影響
(A).水資源
~深刻となる水不足や洪水災害~
水資源は現在でも地域的に格差があるが,地球温暖化により気候が変動すると,半
乾燥帯ではさらに干ばつが進む地域,雨の多い中経度地帯では洪水が増加するなど,
水需給のバランスが崩れ,水資源の格差が世界的に拡大するおそれがある.また水資
10
第2章
地球温暖化現象とヒートアイランド現象
源の変動は,人の生存そのものはもとより食糧基盤としての農業などにも大きな影響
を及ぼす原因となる.
(B).自然生態系
~絶滅する種が増加する~
動植物はそれぞれに適した地域に生息しているが,温暖化すると北または高地に
移動しなければならなくなる.温暖化による気候帯の変化のスピードは約 1.5~
5.5km/年で移動している.この変化のスピードに付いていけない動植物は,行き場
を失い,絶滅の恐れがある.
(C).沿岸域
~海面上昇により沿岸域が水没する~
沿岸域には,多くの人間が居住し生産活動が集中ており,また動植物にとっても重
要な生息場所である.しかし,地球規模で気温が上昇すると,海水の膨張や氷河など
の融解により海水面が上昇し,沿岸域は,水没,海岸侵食,淡水帯水層への塩水の進
入などの影響を及ぼす.また標高の低い南国の島や,広いデルタ地帯をもつ国では,
国土の消失や台風・高潮の被害の増大などの,深刻な影響をもたらす.
(D).人の健康
~死亡率や伝染病危険地域が増加する~
地球温暖化により,夏期に気温が高くなる頻度と期間が増加すると,熱射病などの
発生率や死亡率が増加する.また,死亡率の高いマラリア・デング熱等の流行危険地
帯が現在より,北上すると予想されている.
(E).公害との複合影響
~温暖化は公害を加速する~
毎年夏になると光化学スモッグにより,目や喉の痛みなどの被害が発生している.
気温上昇は大気中の光化学反応を加速するので,温暖化した都市の多くで,大気汚染
や健康への影響が拡大すると予想される.また,水質汚濁等のさまざまな公害に影響
を助長すると考えられる.
(F).影響の度合い
~地球温暖化の影響は不公平である~
地球温暖化の影響は,どこの地域でも同じように現れるわけではない.気温の上昇
は高緯度地域ほど大きく,降水パターンは細かく変化し,地域による差が大きくなる
と予測されている.突然の冷害や局所的な異常降雨,異常乾燥なども増加する.経済
的・技術的事情から対応策を講じることが難しい開発途上国において,より影響が大
きくなると考えられている.
上述したように,地球温暖化の問題は,非常に広範囲・長期間にわたって地球環境
へ重大な影響を及ぼすと考えられている.地球温暖化の影響は,すぐに目に見える形
で影響が表面化しないものでもあり,局地的(地域的)な環境問題とは大きく異なる
現象である.
11
第2章
地球温暖化現象とヒートアイランド現象
(5).地球温暖化に対する国際的な取り組み
(A).気候変動に関する政府間パネル Intergovernmental Panel on Climate Change
(IPCC)
1988 年 11 月に国連環境計画(UNEP)と世界気象機関(WMO)の共同で設立した.
IPCC は,地球温暖化に関する科学的側面をテーマとした初めての公式の政府間の検
討の場として設置された.政府間の機構ではあるが,政府関係者だけではなく各国を
代表する専門家(科学者)が中心となって,地球温暖化についての最新の科学的,技
術的,社会経済的な知見をまとめて評価し,地球温暖化の影響,対応戦略について検
討が行われている.調査検討・評価し,国際的対策の進展に合わせ政府決定者に対し,
科学的・技術的知見を提供し,政策の助言をおこなう.IPCC は,1990 年,1995 年,
2001 年にそれぞれ第 1 次,第 2 次,第 3 次評価報告書を発表している.報告書の内
容は国際社会に対して大きなインパクトをあたえ,気候変動枠組み条約の交渉開始,
京都議定書(1997 年)の策定などをうながしてきた.
(B).気候変動に関する国際連合枠組条約 United Nations Framework Convention on
Climate Change(UNFCCC)
1988 年に設立された「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)
」の報告などにより,
気候変動に対する国際的な取り組みの必要性が認識され,1991 年から始まった国際
交渉の結果,1992 年にブラジル・リオデジャネイロで開催された地球サミットにお
いて 155 ヶ国が「気候変動に関する国際連合枠組条約」に署名,1994 年同条約が発
効した.条約では,大気中の温室効果ガス濃度を安定化させることを最大の目標に掲
げ「締約国の共通だが差異のある責任」の原則のもとで,条約の附属書締約国とよば
れる先進国(ロシア・旧東欧諸国を含む)が率先して温室効果ガス排出削減に取り組
み,2000 年における温室効果ガス排出量を 1990 年水準にすることを求めているほか,
附属書締約国と呼ばれる先進国に対して,途上国に気候変動に関する資金援助や技術
移転などを実施することを求めている.
(C).気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書(京都議定書)Kyoto Protocol
to the United Nations Framework Convention on Climate Change
1995 年 3 月~4 月にドイツのベルリンで開催された気候変動枠組み条約の第 1 回締
約国会議(COP1)で,条約には 2000 年以降の具体的な約束の記述がないなど問題が
あるとの意見が出された.そして,先進国における温室効果ガスの排出量の削減目標
などを 1997 年の第 3 回締約国会議(COP3)で決めるとするベルリンマンデートが採
択され,議定書採択にむけた交渉が始まった.その後 2 年間におよぶ交渉をへて COP3
は 1997 年 12 月に京都で開催された気候変動枠組み条約第 3 回締約国会議(COP3)で
12
第2章
地球温暖化現象とヒートアイランド現象
採択された.議定書には,先進締約国に対して温室効果ガスの排出量削減の数値目標
を設定したことと,国際的に協調して柔軟に目標達成するための京都メカニズム(排
出量取引や先進締約国間で排出削減のための事業を行う共同実施,先進締約国と開発
途上締約国との間で排出削減のための事業等を行うクリーン開発メカニズム)等の新
たな仕組みを導入している(表 2.2 参照)
.議定書は,これまでの国際条約にはない
まったく新しい内容であったために,運用規則などの詳細は COP3 で決めることが出
来なかった.さらに 4 年間の交渉をへて,2001 年 11 月モロッコのマラケシュで開催
された第 7 回締約国会議(COP7)で議定書の運用規則が合意に達し,翌 2002 年に EU
や日本が批准した.しかし,議定書が発効するための条件は,2 つの条件が定められ
ている.
(1).55 カ国以上の国が締結.
(2).締結した先進国の 1990 年における二酸化炭素排出量の合計が全先進国の合計
の 55%を超える.
2004 年 9 月現在では,108 カ国が締結しているので,(1).の条件はみたしている
が,先進国の排出量の合計は 43.9%しかないので,(2).の条件をみたしていない.
また,先進国の 36.1%を排出しているアメリカのブッシュ大統領は,2001 年 3 月に議
定書に途上国が参加していないことと,アメリカの経済への悪影響が懸念されること
から,議定書から離脱しました.そのため,55%を上回る条件をみたすためには排出
量が 17.4%のロシアの締結が不可欠であった.2004 年 11 月にロシアのプーチン大統
領は上下両院が採択した京都議定書批准文書に署名したと発表し,同国は批准手続き
を完了した.このことにより,地球温暖化防止のための拘束力を持った初の国際協定
である同議定書の発効が正式に確定し,批准文書の国連への寄託を経て,2005 年 2
月に発効が確定した.
京都議定書の概要
1).先進国の温室効果ガス排出量について,法的拘束力のある数値目標を各国毎に設定.
2).国際的に協調して,目標を達成するための仕組みを導入(排出量取引,クリーン開
発メカニズム,共同実施など)
3).途上国に対しては,数値目標などの新たな義務は導入せず.
13
第2章
地球温暖化現象とヒートアイランド現象
表 2.2 京都議定書,数値目標
対象ガス
二酸化炭素(CO2),メタン(CH4),一酸化二窒素(N2O),
HFCs,PFCs,SF6
吸収源
森林等の吸収源による温室効果ガス吸収量を算入
基準年
1990 年(HFCs,PFCs,SF6は,1995 年としてもよい)
目標期間
2008 年から 2012 年
各国毎の目標:日本△6%,米国△7%,EU△8%等.
目標
先進国全体で少なくとも 5%以上削減を目指す.
出所:京都議定書より作成
14
第2章
2.2
2.2.1
地球温暖化現象とヒートアイランド現象
ヒートアイランド現象
ヒートアイランド現象とは
本節では,地球温暖化現象が集中的に現れている都市の温暖化現象(以下:ヒートア
イランド現象)とはどんな現象なのかを,把握する.はじめに,「都市」とは,人口が
密集した地域で,政治・経済・文化の中心になっている場所を指す.ヒートアイランド
現象は,私たち人間が活動の中心としている都市部に起こる局地的な温暖化現象である.
人口が集中し建造物が増加し緑地が減少することなどによって,大気環境に局所的な変
化が生じることで,都市部の気候が周辺の地域とは異なってしまう事を指す.都市の大
気環境は,郊外に比べて気温は高く,湿度は相対的に低く,風速は弱くなる傾向(都市
固有な風系の発生),大気汚染の増加,日射量の減少などが上げられる.この中でも最
も顕著な現象である都市部の高温は,都市とその郊外を含めた地域について気温の等値
線を描くと(都市部と郊外では 1℃~4℃の気温差),洋上に浮かぶ島の形のような高温
部が都市部に現れることから,ヒートアイランド現象と呼ばれている(図 2.7 参照)
.
ヒートアイランド現象に関しては,1850 年代ごろからヨーロッパで観測されていたが,
1960 年代から近代建築の冷房や車の増大がシカゴやニューヨークで顕著になり,排熱
を河川に捨てるなどの対策がとられてきた.しかし,欧米先進諸都市に比べ,東京首都
圏や近畿圏の都市規模の人工排熱は比較にならない程に大きい.
出所:ヒートアイランドの対策と技術より
図 2.7 現在の夜間温度分布(夏期 5:00)
15
第2章
2.2.2
地球温暖化現象とヒートアイランド現象
ヒートアイランドの原因と現状
(1).ヒートアイランド現象の原因とメカニズム
ヒートアイランド現象は今日になって起きた現象ではなく,産業革命以降の,社会の
工業化によって人々の生活が便利を勝ち取った結果とし生まれた現象である.今まで人
間を取り巻いてきた自然環境を破壊し,また自然環境に対して人間生活が生む莫大なエ
ネルギー消費による「人工排熱」を自然環境へ負荷としておわせている.ヒートアイラ
ンド現象の原因は,人間が生活の中心としている都市部への人口集中と都市生活をより
快適にするために行った行動によって引き起こされていと考えられている.ヒートアイ
ランド現象の仕組みを図 2.8 に示す.
(A).都市部では,人間の利便を確保するために,地表面の緑地,水面を減少させ,
人工物(オフィス,住宅,工場)や道路の舗装による地表面の変化が起きた.
(B).結果として,地表面からの水分の蒸発量の低下や地表面の反射率の低下による
熱吸収量の増加,地表面の反射率の低下による放射冷却の減少が起こった.
(C).また,人間生活のため自動車等からの温室効果ガスの排出や工場等の生産活動
から排出される人工排熱の増加,快適な住空間を求めエアコンの使用増加による人
工排熱の増加が起こった.
(D).上記の 3 つの現象により,地表面の高温化,人工排熱量の増加,温室効果ガス
の増加により都市部の大気の高温化させる.
この仕組みにより,ヒートアイランド現象が起きている.
気温上昇の原因としては,
・都市の中で消費される多量の燃料,エネルギーによって発生する人工熱
・建築物や道路の舗装や植生の減少など,地表面の状態の変化
・都心部は高層建築が多くて換気されにくい
・建物があるために空の見える割合(天空率)が減り,空へ逃げる赤外放射量が減る
・ビルとビルの間で日射が乱反射しあう間に吸収され,空に反射される量が減る
などが考えられていますが,これらの影響の現れ方は,都市の規模や地形的な条件な
どによっても変わる.結果として,都市部の気温は周辺地域より局地的に 1℃~4℃も
高くなっている.
16
第2章
地球温暖化現象とヒートアイランド現象
人工排熱量の増加
都市部の
大気の高温化
輻射熱の増大
エアコンの
使用増加
輻射熱の増大
工場等からの排熱
地表面からの大気
への熱輸送量増大
建物の高温化
建物による
熱の吸収量
の増加
自動車等から排出さ
れる温室効果ガスの
増加
地表面からの水分の蒸発量減少
緑地,水面の減少,
人口物・舗装面の増加
反射率の低下
放射冷却の減少
地表面の高温化
反射率の低下,地表面の熱吸収量の増加
出所:環境省大気保全局発行パンフレット「ヒートアイランド対策推進のために」を参考に作成
図 2.8 ヒートアイランド現象のメカニズム
(2).ヒートアイランド現象の現状
ここでは,都市の年平均気温の変化を日本の主要な大都市(札幌,仙台,東京,名古
屋,京都,福岡)と中小規模の都市(17 都市)とを比較しながら,ヒートアイランド
現象の現状を示す.大都市とは,1997 年における人口が 90 万人以上の都市で気象観測
所のうち,1931 年から移転や観測方法の変更による影響のない,観測地点 6 地点.比
較のための中小規模の都市には,日本の年平均気温を算出するのに用いたれている(網
走,根室,寿都,山形,石巻,伏木,長野,水戸,飯田,銚子,境,浜田,彦根,宮崎,
多度津,名瀬,石垣島)17 地点(表 2.3 参照)
.
年平均気温は,どの都市でも上昇傾向を示しており,中小規模の都市平均でも同様の
傾向を示している.中小規模の都市の平均気温の上昇量は 100 年につき+1.0℃である
のに対して,大都市の特に東京の上昇量は非常に大きく,100 年につき+3.0℃となっ
ている.
年平均気温,1 月平均気温,8 月平均気温の上昇量をそれぞれ比べると,中小規模の
都市平均では上昇量が小さいのに対して,福岡を除く大都市では違いが大きくなってい
る(1 月の平均気温を見ると)
.大都市では 1 月の平均気温の上昇量は,年平均気温の
上昇量より 1℃程度大きくなっている(仙台を除き).8 月の平均気温の上昇量は都市に
17
第2章
地球温暖化現象とヒートアイランド現象
より違いが見られ,全体に 1 月の平均気温より小さくなっている(福岡を除き).
日最高気温の年平均値の上昇量は,東京(+1.7℃/100 年)を除いて+0.5~+1.0℃/100
年で,中小規模の都市平均+0.7℃/100 年と同じ程度の値となっている.また,どの都
市でも上昇量は年平均気温より小さい.
大都市での日最低気温の年平均値の上昇量は,+3.1~+4.1℃/100 年で,中小規模の
都市平均+1.4℃/100 年に比べて大きな変化を示している.また,大都市,中小規模の
都市平均とも年平均気温の上昇量より大きい.ヒートアイランド現象として見られる都
市部と郊外部の気温差は,放射冷却による地表面付近の気温の下がり方に差が出る夜間
に最も大きくなるといわれており,大都市と中小規模の都市では,日最低気温の変化量
の差が最も大きく示している.つまり,日最高気温の上昇量は大きくは無いが,日最低
気温が上昇することで,都市全体が温暖化していることが表より読み取ることが出来る.
表 2.3 日本の大都市の平均,日最高,日最低気温の 100 年当たりの上昇量
100 年当たりの上昇量(℃/100 年)
地点
使用データ開始年
平均気温
日最高気温
日最低気温
(年)
(1 月)
(8 月)
(年平均)
(年平均)
札幌
1901 年
+2.3
+3.0
+1.5
+0.9
+4.1
仙台
1927 年
+2.3
+3.5
+0.6
+0.7
+3.1
東京
1901 年
+3.0
+3.8
+2.6
+1.7
+3.8
名古屋
1923 年
+2.6
+3.6
+1.9
+0.9
+3.8
京都
1914 年
+2.5
+3.2
+2.3
+0.5
+3.8
福岡
1901 年
+2.5
+1.9
+2.1
+1.0
+4.0
大都市平均
-
+2.5
+3.2
+1.8
+1.0
+3.8
中小都市平均
-
+1.0
+1.0
+1.0
+0.7
+1.4
出所:気象庁「20 世紀の日本の気候」より作成
18
第2章
地球温暖化現象とヒートアイランド現象
(3).ヒートアイランド現象の影響
(A).真夏日の増加
1980 年代は,6 月から 10 月の最高気温が 30℃を超える真夏日は,約 35~40 日程
度であったのに対して,1990 年代からは,50 日以上にまで増加している(東京都).
(B).熱帯夜の増加
6 月から 10 月の熱帯夜の日数は、1970 年代は約 17 日なのに対し,2000 年代は約
31 日にまで増加している(東京都)
.
(C).熱中症や睡眠障害などの人間への影響
熱中症により病院に運ばれた人の数は,1985 年は 100 人程度だったのが,2000 年
は 300 人を超えている.熱中症による死亡と真夏日,熱帯夜の日数に相関関係がある
とする研究が報告されている.また,熱帯夜が続くことによる睡眠障害等も起きてい
る.
(D).集中豪雨の増加
ヒートアイランド現象により都市部の高温化で上昇気流が活発になり,積乱雲が発
達しやすくなり,その結果,短時間に記録的な雨量(10mm/毎時以上)をともなう夕
立や局所的な豪雨が頻発するようになってきている.これは,日本の都市だけでなく
アメリカやメキシコなどでも確認されている.
(E).エネルギー消費の増大
夏の暑いときに,各家庭やオフィスなどがエアコンを盛んに利用され,室内の熱が
室外に排出される.その結果,室外の気温が上昇し,エアコンの効率がさがるために
エアコンをさらに強力にはたらかせなくてはならない悪循環が起きている.
(F).ビルの谷間における熱環境の問題
東京では高層ビルが林立する影響で,ビルや自動車からの排熱,またはアスファル
トや建物表面にたまった熱などがビルの谷間に蓄積し,輻射熱を増加させることでヒ
ートアイランド現象を悪化させている.
(G).風速は弱くなる傾向があり又,都市固有の風の発生
都市の土地被覆の変化による影響により本来,吹いていた風の風速が減少し,ヒー
トアイランド現象を促進している.また,ビルとビルの間の狭い路地などに風が入り
込み局地的な強風が発生する,都市固有のビル風が発生している.
(H).都市大気の汚染の増加
ヒートアイランドにより大気が高温化し,化学反応を活発化させるので光化学スモ
ッグなどの汚染物質が発生しやすくなる.工業地帯などがあれば,中心部で発生する
上昇気流によって周囲から汚染物質を集めることになる.また,暖められた大気によ
って冬期には気温の逆転層も形成されやすくなり,その結果として大気汚染はよりい
っそう深刻化することになる.
19
第2章
地球温暖化現象とヒートアイランド現象
(I).都市の乾燥化
都市化により,都市部にふった雨水の多くは大地をうるおすことなく下水をとおり,
海に直接流れさっている.その結果,都市部ではますます乾燥化と砂漠化が進行して
いる.
(J).生態系への影響
都市化により温暖化が進むことで,植物の開花時期への影響が考えられる.都市の
気象が亜熱帯化し,生物の生息北限に影響を与え,マラリア等の病原菌を媒介する微
生物等の北上が懸念される.また,人工排熱の排出の方法として,水を媒体とした冷
却水(自然の水から見ると温排水)が多用された場合には,河川や海水の水温上昇を
まねいて水中生態系への影響が発生する.
上述したように,ヒートアイランド現象問題は,非常に多くの分野にわたって都市
環境に重大な影響を及ぼしていると考えられる.地球温暖化と比べてヒートアイラン
ド現象の影響は,私達人間の生活に直結している問題が多く,早急な対処が求められ
ている.
(4).ヒートアイランド現象に対する取り組み
ヒートアイランド現象を緩和させる取り組み及び対策として以下のものが考えられ
る.
(A).人工排熱の低減
1.建物の断熱等各方面の省エネルギーの更なる推進
2.冷却塔の活用による人工排熱の潜熱化(建築設備面の工夫)
3.地域冷房施設による都市排熱の回収と適正な排熱処理
4.低公害車の技術開発,普及促進
5.交通流対策及び物流の効率化
(B).地表面被覆の改善
1.公園,緑地や街路樹の整備
2.建物の屋上,敷地の緑化
3.水面の確保
4.保水性,透水性舗装,保水性建材等による建物および地表の表面温度の高温化
を抑制
(C).都市形態の改善
1.海陸風、山谷風等の地域風が持つ冷却力の活用
2.都市内の水面,緑地のネットワーク化による冷気の通り道の確保
3.街路や建物の配置による風通しや熱放射の改善
20
第2章
地球温暖化現象とヒートアイランド現象
4.都市緑地保全法等の改正により,都市に残されて緑地の保全
(D).ライフスタイルの改善
1.自治体,事業者,住民等に対し,政府広報等を利用し,冷暖房の温度の適正化,
省エネ製品への積極的な買い替え等の促進
2.公共交通機関の利用促進
ヒートアイランド現象に対する政府・自治体の取り組み
政府や自治体において,ヒートアイランド対策のための取り組みが活発化してきて
いる(表 2.4 参照).2004 年度には環境省による「ヒートアイランド対策大綱」が策
定され,今後具体的な対策が推進される.自治体の中でも,特に東京都は,いち早く
問題に着目しその具体的な対策を実施している.
表 2.4 ヒートアイランド対策に関する政府や自治体の動き
自治体
年度
政府
東京都
2001 年
以前
その他の自治体
環境省調査
ヒートアイランド現象に関する調査
実施
総合規制改革会議
自然保護条例改正
ヒートアイランド解消を明文化
屋上緑化の義務化
ヒートアイランド対策会議設置
東京都環境基本計画
2001 年
2002 年
兵庫県:屋上緑化義務化
ヒートアイランド
環境省,国土交通省,経済産業省連携
環境の保全と創造に関する条例
対策目標
ヒートアイランド
「ヒートアイランド対策大網」策定
大阪府:緑化指導指針改正
取組方針
2003 年
具体的な施策の設定
具体的な施策の実施
屋上,壁緑化を緑化面積に
具体的な施策の実施
自然保護条例の改正
自治体における対策の義務化
2004 年
以降
出所:名古屋ヒートアイランド対策への提言より作成
(4.1).政府の取り組み
2003 年 3 月に閣議決定された「規制改革推進 3 ヶ年計画(再改定)」よって,2004
年 3 月に「ヒートアイランド対策大綱」が策定された.大綱の基本方針は,
「都市の
熱環境の把握と現象の要因,寄与度分析及び対策に関する効果分析を行いながら,総
合的かつ効果的なヒートアイランド対策の実施を図ることにより,ヒートアイランド
21
第2章
地球温暖化現象とヒートアイランド現象
現象の緩和を目指す.」となっている.ヒートアイランド対策の柱としては,次の 4
つが挙げられている.
・人工排熱の低減(人間活動から排熱される人工排熱削減)
・地表面被覆の改善(人工化された地表面被覆の改善)
・都市形態の改善(風の通り道の確保する為の水と緑のネットワーク形成等)
・ライフスタイルの改善(都市おいて,ヒートアイランド現象を緩和するためのラ
イフスタイルの改善)
また,大網は,政府におけるこれまでの議論を踏まえて,ヒートアイランド現象対
策に関する国,地方公共団体,事業者,国民等の取り組みを適切に推進するための基
本方針を示すとともに,実施すべき具体の対策を体系的に取りまとめたものである.
(4.2).東京都の取り組み
ヒートアイランド現象対策を東京都の施策として明確に位置付け,2003 年 3 月に
「ヒートアイランド対策取組方針」を策定した.東京都の積極的な取り組みは,民間
を誘導するためのリーディングプロジェクトとしての位置付けをなすものでもあり,
率先してヒートアイランド対策に取り組んでいく方針である.特に,屋上緑化に関し
ては,2001 年 4 月東京都は,改正自然保護条例を施行,敷地面積 1000 m2以上の民
間建築物(公共建築物は 250 m2以上)を新改築する際,利用可能な屋上面積の 2 割
以上の緑化を義務づけている.
(4.3).兵庫県の取り組み
兵庫県では,建築物を新たに緑化スペースとして考え,2001 年 10 月に「環境の保
全と創造に関する条例」を施行し,建築物の緑化に関する義務や計画の届け出,勧告
及び公表について制度化を図り,都市環境問題の改善に向けて建築物の緑化を推進し
ている.
ヒートアイランドの緩和には資源やエネルギーの効率的な利用(省エネ)と長期的
なビジョンを持った都市機能構造の持続的な改善が必要不可欠である.
22
第3章
第3章
3.1
熱収支観測の概要
熱収支観測の概要
既往の熱収支(熱環境特性)研究のレビュー
熱収支観測についての研究は,渦相関法に基づくものが圧倒的に多い中で,近年新し
く開発されたシンチレーション法は,都市の複雑な熱収支観測で問題になっている代表
性の問題を解決する方法として,最近注目を浴びている.観測機器がかなり高価である
事からシンチレーション法を使用した研究事例は非常に少ないものの「銀座オフィスビ
ル街における熱収支特性」
「住宅地の接地境界線層における乱流フラックスの実測-シン
チロメータの利用-」,等の研究例が報告されている(神田学他 1997 年,2000 年).長
期的な観測事例として 1).札幌森林気象試験地において(1999 年 5 月から),冷温帯落
葉広葉樹林を対象として,2).川越森林気象試験地において(1995 年 7 月から),落葉
広葉樹林を対象として,現在も継続的に熱収支観測が行われている事例が報告されてい
る.
3.2
熱収支とは
はじめに,熱収支とは何かについて説明をする.本論文の熱収支とは,地表面におけ
る熱の輸送量のことを指す.夏の日に,芝地等の植物の繁った草地の中に入ると「草い
きれ」で息のつまる思いをすることがある.これは地表面で行われている熱や水蒸気の
出入りの量を反映している.熱収支は様々な表面(裸地面,植被面,雪面,水面)での
熱の出入りを定量的に把握する上で極めて有効な手段である.温度の異なる流体と物体
が接するとき高温から低温に熱が流れていく,これを顕熱とよび蒸発や凝結のように水
の相変化に伴って出入り(変化)する熱を潜熱と呼ぶ.以下に地表面における熱収支の
式を示す.
地表面における熱収支
Rn = H + LE + G ・・・・・・(3.1)
・Rn:正味放射量(太陽や大気から放射されるエネルギー)
・H:顕熱フラックス(空気を直接,加熱又は冷却するエネルギー.主に加熱効果)
・LE:潜熱フラックス(蒸発,凝結に伴いやり取りが行われるエネルギー.冷却効果)
・G:地中熱流量(地中を加熱,冷却するエネルギー)
上記の 3.1 式は,熱収支解析の最も基本的な式で熱収支研究の出発点になっている.
23
第3章
熱収支観測の概要
Rn
LH
H
G
地表面
図 3.1 地表面における熱収支
3.2.1
既存の熱収支測定の現状と問題点
地表面から大気中への熱輸送量(フラックス)を測定することは,地表面被覆の状態
により気温がどのように変化し,熱環境対策を導入した際の熱環境改善効果を評価する
上では重要である.ここでは,熱輸送量を測定する方法について説明する.
(1).渦相関法
大気境界層の中で地表面から 10~数 10mまでの大気層は接地境界層と呼ばれている.
接地境界層とは,平坦な土地の場合,鉛直方向の輸送量が高さ方向に近似的に一定とみ
なさせる高度範囲を言う.接地境界層では摩擦作用や熱的な要因により発生する乱流に
よる物質輸送の影響が大きい.
渦相関法とは,接地境界層で発生している,乱れの渦が主として熱輸送量(以下:フ
ラックス)に用いられることに着目し,直接的に個々のフラックス(顕熱,潜熱など)
を観測する方法である.渦相関法は,個々のフラックスを測る方法としては信頼性の高
い方法である.顕熱フラックスは鉛直方向の風速の変動成分と気温の変動成分で表され,
潜熱フラックスは風速の変動成分と比湿の変動成分で表される.以下に式を示す.
顕熱フラックス
H = Cpρ w't ' ・・・・・・(3.2)
潜熱フラックス
LH = Lρ w' q '・・・・・・(3.3)
ここに,H:顕熱フラックス,LE:潜熱フラックス,Cp:空気の定圧比熱,ρ:空気
の密度,w’:鉛直方向の風速の変動成分,t’:気温の変動成分,q’:比湿の変動成
分,L:水の気化熱, ̄:平均時間.
24
第3章
熱収支観測の概要
渦相関法を用いて顕熱,潜熱フラックスを測定するために必要なパラメータは,鉛直
方向の風速の変動,気温の変動及び比湿の変動の計 3 つが必要である.測定装置として
は,鉛直方向の風速の変動及び気温の変動は超音波風速温度計,比湿の変動は赤外線湿
度計が一般的に用いられている.装置の特徴として,これらの装置は渦相関法に適応し
た応答性を十分に備えているが,価格が非常に高い.この測定方法の特徴として,w’,
t’, q’を測定装置から得られることから顕熱,潜熱フラックスを独立して測定でき
る.また計算式の空気の密度などの定数が測定条件に影響されにくいなどの点が挙げら
れる.
(2).熱収支法
地表面が吸収する正味放射量(Rn)は地表面がから外に出て行くエネルギー顕熱フラ
ックス(H)と潜熱フラックス(LE)及び地中に入るエネルギー地中熱流量(G)となり,
エネルギー保存の法則により以下の式が成り立つ.
地表面熱収支式
Rn = H + LE + G ・・・・・・(3.1)
ここで,Rn:正味放射量,H:顕熱フラックス,LE:潜熱フラックス,G:地中熱流量.
この式は,地方面の熱収支を考える上の基本式である.ボーエン比式と式(3.2)
,
(3.3)
を用いると以下のような式が表せる.
ボーエン比式
B=
H Cpt ' ・・・・・・(3.4)
=
LE Lq '
B ( Rn − G )・・・・・・(3.5)
B +1
顕熱フラックス
H=
潜熱フラックス
LE =
Rn − G ・・・・・・・(3.6)
B +1
ここで,B:ボーエン比,H:顕熱フラックス,LE:潜熱フラックス,Cp:空気の定圧
比熱,t’
:気温の変動成分,L:水の気化熱,q’
:比湿の変動成分,Rn:正味放射量,
G:地中熱流量.
よって,熱収支法を用いて顕熱,潜熱フラックスを測定するために必要なパラメータ
は,正味放射量,地中熱フラックス,ボーエン比の計 3 つが必要である.測定装置とし
て正味放射量は長短波放射計,地中熱フラックスは熱流板により,ボーエン比は異なる
25
第3章
熱収支観測の概要
高度における気温と湿度を乾湿計などによって求めるのが一般的に用いられている.こ
の測定方法の特徴として,水平方向に均一な状態を仮定している為,移流の大きい場所
や土地被覆状態が一様でない場所などでは使用できない.
(3).傾度法
地表面から大気への熱や物質のフラックスを観測的に推定しようとするときに用い
られる方法の一つ.測定場所が十分な広がりもった均質な平坦面であると仮定すると,
顕熱フラックス,潜熱フラックスは大気中の温度傾度及び湿度傾度から求めることが出
来る.以下に式を示す.
顕熱フラックス
H = −CpρKH
潜熱フラックス
LE = − LρKE
dt ・・・・・・(3.7)
dz
dq ・・・・・・(3.8)
dz
ここで,H:顕熱フラックス,Cp:空気の定圧比熱,ρ:空気の密度,KH:顕熱輸送
に対する乱流拡散係数,d:植生地などにおいて地表面の基準を修正する(ゼロ面変位)
t:気温,LE:潜熱フラックス,L:水の気化熱,KE:水蒸気輸送に対する乱流拡散係
数,q:比湿,z:地表面からの高さ,z-d=zとする.
KH,KEはそれぞれ顕熱,水蒸気輸送に対する乱流拡散係数である.傾度法においては,
KH,KEをどのように決定するかが大きな問題である.一般に傾度法は,2 高度での気温,
比湿,風速を測定することで求めることが出来る.この測定方法の特徴として,一様に
平坦面を仮定しているため,複雑な地形においては適応できない.
また,2 高度のうち一方を地表面としたものを特にバルク式と言う.
以下に式を示す.
顕熱フラックス
H = Cp ρCH (ts − t )U ・・・・・・(3.9)
潜熱フラックス
LH = LρCE (qs − q )U ・・・・・・(3.10)
ここで,H:顕熱フラックス,Cp:空気の定圧比熱,ρ:空気の密度,CH:顕熱輸送
に対するバルク輸送係数(無次元),ts:地表面温度,t:気温,U:平均風速のx座標
成分,LE:潜熱フラックス,L:水の気化熱,CE:水蒸気輸送に対するバルク輸送係数
(無次元)
,qs:地表面温度tsに対する飽和比湿,q:比湿.
26
第3章
熱収支観測の概要
(4).シンチレーション法
大気中を伝わっていく光は,屈折率の不均等性により揺らいでいる.大気中では温度
勾配が屈折率の不均等性に関与していることから,熱フラックス等の熱輸送に関連して
いる.よって,光の揺らぎを測定することで顕熱フラックスを導くことが出来る方法を
シンチレーション法と言う.測定は,大気中に 2 本の偏光の異なるレーザー光を照射し,
受信機側で個々のレーザー光の強度変動を測定後,その共分散等から顕熱フラックスを
算出する.この測定方法の特徴として,レーザー受信機,送信機間の光線の軌跡での空
間平均された顕熱フラックスを測定することが出来る.しかし,限定された空間(十分
な光路長がとれる場所)でないと測定することが出来ない.シンチレーション法の計算
式と熱収支測定については,第 4 章 4.1 で説明する.
3.2.2
熱収支測定の問題解決方法の検討
地表面の熱フラックスの測定方法は 3.1.2 で示したように多くのものがあるが,それ
ぞれに特徴があり,場合によって使い分けられている.
現在,多く使用されている測定方法は,測定制度の高さや測定場所に制限が少ない特
徴から,渦相関法が一般的に用いられている.測定範囲が広範囲であり,複雑に変化し
ている場所では,複数の測定装置を用いて測定が行われている.しかし,一つの測定点
での測定でとの程度の領域についてカバーできるのかが大きな問題として出てきてい
る.つまり,一つの点での測定結果をその場所を代表した測定結果としてよいものなの
かについての問題に対しては明確な答えが出せないでいる.
測定地点の代表性の問題を解決する方法として,最近開発されたシンチレーション法
が考えられる.シンチレーション法は,レーザー光の揺らぎにより広域の空間平均的な
顕熱フラックスを算出できる新しい技術である.この方法は,点測定の代表性が大きな
問題となる都市や植物キャノピー,混在土地利用地域などの平均的な顕熱フラックス算
出に利用されることが期待されている.またこの方法を応用した事例報告は少ない.
本論文では,上記で述べたことより,新しく開発されたシンチレーション法を用いて
熱収支測定を実施する.
27
第4章
第4章
4.1
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
シンチレーション法とは
本論文の熱収支観測に使用したシンチレーション法についてここで,詳しく説明する.
シンチレーション法とは,大気が揺らぐことを利用して,熱フラックス(顕熱フラック
ス)を測定する方法.測定の原理は,シンチロメータ(レーザー光を送受信する機器)
を使い,大気中に 2 本の偏光の異なるレーザー光を照射し,受信機側で個々のレーザー
光の強度変動を測定後,その共分散等から顕熱フラックスを算出する.特徴として,現
在,一般に使用されている渦相関法による測定手段は,超音波風速温度計の測定スパン
長,数 10cm の空間によって測定された,測定値より算出される顕熱フラックスは,数
10cm 四方の空間平均値でしかないことになる.しかし,複雑な都市や植物キャノピー
の熱収支を考える上では,その空間代表性が問題になる.その空間代表性の問題を解決
する方法として,シンチロメータを利用したシンチレーション法はレーザー光の揺らぎ
により広域の空間平均的な顕熱フラックスを算出する新しい測定技術である.スパン長
は数 100~数 1000mになる(本観測ではスパン長 50~250m の観測機器を使用).同様の
性能を得るのには約 100 台の渦相関法に使用する測定器を光経路上に設置することが
必要になる.
シンチレーション法を用いた顕熱フラックス算出式を以下に示す.
H = −Cp ρu T ・・・・・・(4.1)
* *
z ⎞ − 1 z ・・・・・・(4.2)
⎛
−
3
= ⎜1 − 3 ⎟ −
εKzu
L⎠
L
*
⎝
2
⎧⎪
z
⎛ z ⎞ ⎫⎪
−
2
2
/
3
2
C ( Kz )
T
= 4 β ⎨1 − 7 + 75⎜ ⎟ ⎬
L
T
*
1⎪
⎝ L ⎠ ⎪⎭
⎩
−1/ 3
・・・・・・
(4.3)
ここで,H:顕熱フラックス,Cp:空気の定圧比熱,ρ:空気の密度,u*:摩擦速度,
T*:摩擦温度,CT :温度の構造関数,K:カルマン定数 0.4,z:シンチロメータの地表
面からの高さ,β1:Obukhov-Corrsin定数 0.86,L:モニン-オブコフ長,ε:エネルギ
ー消散率
顕熱フラックスを試算するには,はじめに式(4.2,4.3)を用いてu*:摩擦速度とT*:
摩擦温度を求めてから,式(4.1)に代入し,H:顕熱フラックスを求める.
28
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
熱収支のその他の項目については,熱収支式(4.4)を用いて算出する.以下に示す.
Rn = H + LE + G ・・・・・・(4.4)
ここで,Rn:正味放射量,H:顕熱フラックス,LE:潜熱フラックス,G:地中熱流量.
正味放射量,地中熱流量は,観測より測定し,顕熱フラックスはシンチレーション法
により算出し,残りの潜熱フラックスは式(4.4)から算出する.
シンチレーション法による熱収支測定のメリット
(1).シンチロメータのレーザー光の送受信間の広域な空間平均した顕熱フラックスを
算出することが出来る.
シンチレーション法による熱収支測定のデメリット
(1).レーザー光は,雨や微小なゴミ(砂等)で遮られると,測定データを得る事が難
しい.
(2).天候に左右されやすく,天気の良い日でないと測定ができない(雨天では測定で
きない)
.
(3).観測場所が,一つの被覆でないと顕熱フラックス以外のデータは,非常に取得が
難しい.
(4).都市の熱収支を測定する際,式 Rn=H+LE+G が必ずしも適切でない場合もある.都
市部での観測では,人工排熱等に関して何か定義しなければならない.
(5).観測機器が非常に高い.
シンチレーション法は現在の熱収支観測で問題となっている観測地点の代表性問題
を解決する効果的な観測方法である.しかし,上記に指摘した通り多くの解決しなけれ
ばならない問題点も多い.観測場所によっては従来の方法(渦相関法,バルク式等)と
あわせて使用するか,対象地域の環境条件によって使い分けることが望ましい.
29
第4章
4.1.1
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
観測場所概要
シンチレーション法を使用して,熱収支観測を行う場所は,都市緑化に最も多く利用
されている芝地を対象とする.本観測では,高知工科大学の芝地において熱収支観測を
実施した.観測場所としては,校庭脇の両脇に樹木の植わった芝地において 2003 年 8
月,2004 年 2 月の 2 度観測,2004 年 8 月に大学本館前の一面芝地において観測を行っ
た(図 4.1,4.2,4.3,4.4 参照)
.
図 4.1 高知工科大学における観測地点図
30
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
図 4.2 2003 年 8 月観測地点写真
図 4.3 2004 年 2 月観測地点写真
図 4.4 2004 年 8 月観測地点写真
4.1.2
観測装置概要(熱収支観測システム)
シンチレーション法と熱収支法を使用した,熱収支観測システムについて説明する.
本観測では,シンチロメータと気象観測装置を用い,熱収支を観測した.本測定システ
ム(熱収支観測システム)で取得可能なデータは,顕熱フラックス,潜熱フラックス,
全天日射量,放射収支量(正味放射量),地中熱流量,気温,気圧の 7 つのデータを取
得することが可能で,データ取得間隔は 2 分ごとに取得し,1 時間で 30 データを取得
可能である.
使用したシンチロメータは,ドイツの Scintec 社製の SLS20 を使用.670nm レーザー
光を使った乱流計測装置.シンチロメータは,レーザー発信器,受信器,処理解析ソフ
トから構成されている.光路中の乱流による屈折率の変動をレーザー強度変動(瞬き)
として捕らえ,最終データとして顕熱フラックス(LE),運動フラックスを得ることが
できる(表 4.1,図 4.5,4.6 参照)
.
31
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
表 4.1 シンチロメータの仕様
仕様
レーザー光源
光路長
変調周波数
電源電圧
670nm
50 ~ 250m
20kHz
12VDC(送信器バッテリー駆動可)
発信器
0.65×0.11×0.11m
2.9kg
受信器
0.65×0.11×0.11m
2.7kg
サイズ,重量
図 4.6 シンチロメータ送信機写真
図 4.5 シンチロメータ受信器写真
気象観測装置には,全天日射量,正味放射量,地中熱流量,気圧,気温を直接的に測
定するセンサーが接続されている(図 4.7,4.8 参照)
.全天日射量の測定には Nova Lynx
社製の全天日射量計 MODEL 8101(表 4.2,図 4.9 参照)を使用した.正味放射量の測定
には Nova Lynx 社製の放射収支計 MODEL 8111(表 4.3,図 4.10 参照)を使用した.地
中熱流量の測定には Hukseflux 社製の地中熱流計 HFP01SC(表 4.4,図 4.11 参照)を使
用した.気圧の測定には R.M.YOUNG 社製の気圧計 MODEL 61202V(表 4.5,図 4.12 参照)
を使用した.気温の測定には R.M.YOUNG 社製の温度計 MODEL 43408(表 4.6,図 4.13 参
照)を使用した.シンチロメータと気象観測装置を組み合わせた,熱収支観測システム
の配置については図 4.14 を参照に示す.
32
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
図 4.7 気象観測装置写真
全天日射量計
放射収支計
温度センサー1
気圧計
温度センサー2
地中熱流計1
地中熱流計2
地中熱流計3
図 4.8 気象観測装置各センサーの接続図
33
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
表 4.2 全天日射量計の仕様
仕様
測定範囲
0 ~ 1500 W m-2
使用温度
-40 ~ +60℃
正確さ
0.3 ~ 30µm
電源電圧
サイズ,重量
直径 159m 厚さ 92mm
1.0kg
図 4.9 全天日射量計写真
表 4.3 正味放射量計の仕様
仕様
測定範囲
0 ~ 1500 W m-2
使用温度
-40 ~ +60℃
正確さ
電源電圧
サイズ,重量
0.3 > 30µm
355×100×90mm
1.25kg
図 4.10 正味放射量計写真
表 4.4 地中熱流計の仕様
仕様
測定範囲
-
使用温度
-30 ~ +70℃
正確さ
50µV/ W m-2
電源電圧
9 ~ 15VDC
サイズ,重量
図 4.11 地中熱流計写真
34
直径 80mm 厚さ 5m
0.3kg
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
表 4.5 気圧計の仕様
仕様
測定範囲
600 ~ 1100 hPa
使用温度
-50 ~ +50℃
20℃の時±0.3hPa,
正確さ
-50~50℃の時 1hPa
電源電圧
7 ~ 30VDC
サイズ,重量
0.6kg
図 4.12 気圧計写真
表 4.6 温度計の仕様
仕様
測定範囲
-50 ~ +50℃
センサー
直径 19mm の筒の中に温度,
タイプ
湿度センサーを収納
正確さ
±0.3℃
電源電圧
サイズ,重量
12VDC
1.1 ~ 1.9m 調整可能
2.4kg
図 4.13 温度計写真
観測距離60m~70m
放射収支計
レーザー光発信機
全天日射量計
レーザー光受信機
乾球温度
気圧計
シンチロメータ
温球温度
地中熱流計
土壌水分計
シンチロメータ
地中熱流計
土壌水分計
地中熱流計
土壌水分計
図 4.14 熱収支観測システム配置図
35
高さ1.2m
第4章
4.1.3
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
その他の観測装置概要
芝地における気温湿度を測定するために,佐藤計量器製作所社製の気温湿度データロ
ガーSK-L200TH(表 4.7,図 4.15 参照)を使用した.芝地における土壌水分量を測定す
るために大起理化工業社製の土壌水分計 DIK-330A(表 4.8,図 4.16 参照)を使用した.
芝地の表面温度測定のために NEC 三栄社製の赤外線熱画像装置サーモトレーサ TH5102
(図 4.17 参照)を使用した.
表 4.7 温度湿度データロガーの仕様
仕様
測定範囲
-10 ~ +60℃,20 ~ 99.9%
使用温度
-10 ~ +60℃
正確さ
±0.5,±5%
電源電圧
サイズ,重量
7 ~ 15VDC
120×84×28mm
270g
図 4.15 温度湿度データロガー写真
表 4.8 土壌水分計の仕様
仕様
測定範囲
0 ~ 50%,体積含水率
使用温度
0 ~ +40℃
正確さ
電源電圧
±2% ~ 5%
7 ~ 15VDC
直径 40×172mm,160×80×58mm
サイズ,重量
480g
図 4.16 土壌水分計写真
36
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
表 4.9 赤外線熱画像装置の仕様
仕様
測定範囲
-10 ~ 200℃,0 ~ 800℃
使用温度
0 ~ +40℃
正確さ
8 ~ 12µm
電源電圧
サイズ,重量
図 4.17 赤外線熱画像装置写真
37
12VDC
198×235×93mm
3.8kg
第4章
4.2
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
観測結果
シンチレーション法を使った現地観測の概要を説明する.本観測は,高知工科大学の
2 ヵ所の芝地において熱収支観測を実施した.観測場所としては,校庭脇の両脇に樹木
の植わった芝地において 2003 年 8 月,2004 年 2 月の 2 度観測,2004 年 8 月に大学本館
前の一面芝地において観測を行った(図 4.1 参照).
4.2.1
2003 年夏期(8 月 19 日~22 日)の熱収支観測結果
2003 年 8 月 19 日~22 日の観測では,熱収支観測システム,赤外線熱画像装置,温度
湿度データロガーを使用した(図 4.18 参照).シンチロメータの観測距離 60m高さ 1.2
m.観測時間は,19 日の 11:00~16:00,20 日の 11:00~22 日の 15:00 までの計 59 時
間観測を行った.
観測 4 日間の気象条件と観測前 3 日間の気象条件(高知県後免,緯度:北緯 33 度 35.4
分,経度:東経 133 度 38.6 分,1日の平均値)を表 4.10 に示す.観測期間中の後免の
気温に関しては,期間を通じて最高気温が 30℃を超える真夏日であり,夜間も熱帯夜
の指標である最低気温 25℃を少し下回る約 23℃の気温を記録した.1 日の平均気温は
約 27℃を記録した.また,観測期間直前までにまとまった降水量を記録しており,観
測開始時には芝地に散水を行った時と同じような状態にあったが,観測期間中は晴天が
続き芝地の乾燥が進行した.
表 4.10 2003 年 8 月 16 日~22 日の気象条件
降水量
平均気温
最高気温
最低気温
平均風速
日照時間
(mm)
(℃)
(℃)
(℃)
(m/s)
(h)
8/16
4
24.3
28.2
20.8
1.4
0.0
8/17
94
24.5
26.4
23.4
1.2
0.0
8/18
4
26.4
29.8
23.7
1.4
1.9
8/19
0
27.1
30.8
23.4
2.0
11.0
8/20
0
27.1
30.9
23.1
1.9
11.9
8/21
0
27.1
31.1
23.1
1.5
9.9
8/22
0
27.8
32.0
23.7
1.5
10.8
出所:気象庁,高知県後免
38
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
図 4.18 2003 年 8 月,2004 年 2 月の観測装置配置図
図 4.19 に観測期間中の芝地の熱収支の推移を,図 4.20 に 4 日間の観測結果の代表
(夏
期)として 8 月 21 日の熱収支の推移を示す.冷却効果のある,潜熱フラックス(LE)
は観測期間中 1 日のピークは約 600 W・m-2を 11:00~12:00 の間に観測した.それに対し
加熱効果のある,顕熱フラックス(H)は観測期間中 1 日のピークは約 50 W・m-2を 12:00
~13:00 の間に観測した.12:00 の時点で顕熱フラックス(H)よりも潜熱フラックス
(LE)が約 12.0 倍程度多く,芝地からの蒸散効果が顕著に示されている.地中熱流量
(G)は,観測期間中 1 日のピークは約 40 W・m-2を 12:00~13:00 の間に観測した.正味
放射量(Rn)は,観測期間中 1 日のピークは約 680 W・m-2を 12:00~13:00 の間に観測し
た.
図 4.21 に観測期間中の気温,芝地の表面温度と気温と表面温度の差の推移を示す.
芝地の表面温度は観測期間中 1 日最高約 40℃,最低約 22℃を観測し,
気温は最高約 32℃,
最低約 24℃を観測した.観測期間を通して夜間は芝地の表面温度が気温を平均約 1.0℃
下回り,昼間は芝地の表面温度が気温をピーク時,約 8.0℃上回る結果を観測した.芝
地の表面温度は気温に比べて,変動が激しいことが観測から読み取ることが出来る.
39
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
正味放射量(Rn)
顕熱フラックス(H)
地中熱流量(G)
潜熱フラックス(LE)
(W・m-2)
800
700
600
ッ
熱 500
フ
ラ 400
300
ク
ス 200
100
0
-100
0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00
8/19
8/20
8/21
8/22
(時間)
図 4.19 2003 年 8 月 19 日~22 日の芝地の熱収支
(W・m-2) 800
700
600
ッ
熱 500
フ
400
ラ
300
ク
ス 200
100
0
-100
0:00
正味放射量(Rn)
6:00
地中熱流量(G)
12:00
18:00
顕熱フラックス(H)
図 4.20 2003 年 8 月 21 日の芝地の熱収支
40
0:00 (時間)
潜熱フラックス(LE)
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
温度差(気温-芝地)
気温
芝地の表面温度
15(℃)
(℃) 45
40
10
35
気 30
温 25
・
表 20
面
温 15
度 10
5
0
温
度
差
-5
5
-10
0
-5
-15
0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00
8/19
8/20
8/21
8/22
(時間)
図 4.21 2003 年 8 月 19 日~22 日の気温と表面温度の推移
4.2.2
2004 年冬期(2 月 17 日~20 日)の熱収支観測結果
2004 年 2 月 17 日~20 日の観測は,2003 年 8 月と同じ校庭脇の芝地において,熱収
支観測システム,赤外線熱画像装置,温度湿度データロガーを使用し観測を行った(図
4.18 参照)
.シンチロメータの観測距離 60m高さ 1.2m.観測時間は,17 日の 16:00~
20 日の 16:00 までの計 73 時間観測を行った.
観測 4 日間の気象条件と観測前 3 日間の気象条件を表 4.11 に示す.観測期間中の後
免の気温に関しては,期間を通じて最高気温が 20℃を超えない日であり,夜間は冬日
の指標である最低気温 0℃を少し上回る約 1℃の気温を記録した.1 日の平均気温は約
9℃を記録した.また,観測期間直前までは晴天に恵まれたが,観測期間中の 17 日,19
日は晴天に恵まれなかった.
41
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
表 4.11 2004 年 2 月 14 日~20 日の気象条件
降水量
平均気温
最高気温
最低気温
平均風速
日照時間
(mm)
(℃)
(℃)
(℃)
(m/s)
(h)
2/14
0
8.2
16.3
-0.5
2.0
6.7
2/15
0
8.8
13.7
3.7
3.3
10.4
2/16
0
7.9
14.1
2.8
2.5
10.3
2/17
0
7.8
16.6
0.0
1.6
5.8
2/18
0
9.1
16.9
0.5
2.0
10.1
2/19
0
8.5
17.3
1.1
1.2
5.0
2/20
0
10.5
18.4
2.2
1.6
10.2
出所:気象庁,高知県後免
図 4.22 に観測期間中の芝地の熱収支の推移を,図 4.23 に 4 日間の観測結果の代表
(冬
期)として 2 月 18 日の熱収支の推移を示す.気象条件より,晴天の 18 日,20 日を対
象とする.冷却効果のある,潜熱フラックス(LE)は観測期間中 1 日のピークは約 160
W・m-2を 13:00~14:00 の間に観測した.それに対し加熱効果のある,顕熱フラックス(H)
は観測期間中 1 日のピークは約 110 W・m-2を 12:00~13:00 の間に観測した.13:00 の時
点で顕熱フラックス(H)よりも潜熱フラックス(LE)が約 1.5 倍多く,芝地からの蒸
散効果はほとんど行われていない事が示されている.地中熱流量(G)は,観測期間中
1 日のピークは約 45 W・m-2を 12:00~13:00 の間に観測した.正味放射量(Rn)は,観測
期間中 1 日のピークは約 300 W・m-2を 12:00~13:00 の間に観測した.
図 4.24 に観測期間中の気温,芝地の表面温度と気温と表面温度の差の推移を示す.
芝地の表面温度は観測期間中 1 日最高約 30℃,最低約-3℃を観測し,
気温は最高約 17℃,
最低約 4℃を観測した.観測期間を通して夜間は芝地の表面温度が気温を約 8℃下回り,
昼間は芝地の表面温度が気温を約 12℃上回る結果を観測した.芝地の表面温度は気温
に比べて,非常に変動が激しいことが観測から読み取ることが出来る.
42
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
正味放射量(Rn)
顕熱フラックス(H)
地中熱流量(G)
潜熱フラックス(LE)
(W・m-2)
800
700
600
ッ
熱 500
フ
ラ 400
300
ク
ス 200
100
0
-100
0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00
2/17
2/18
2/19
2/20
(時間)
図 4.22 2004 年 2 月 17 日~20 日の芝地の熱収支
(W・m-2) 800
700
600
ッ
熱 500
フ
ラ 400
300
ク
ス 200
100
0
-100
0:00
6:00
12:00
18:00
0:00
(時間)
正味放射量(Rn)
顕熱フラックス(H)
地中熱流量(G)
潜熱フラックス(LE)
図 4.23 2004 年 2 月 18 日の芝地の熱収支
43
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
温度差(気温-芝地)
気温
芝地の表面温度
(℃) 45
15(℃)
40
10
35
気
温
・
表
面
温
度
30
5
25
20
0
15
温
度
差
-5
10
5
-10
0
-15
0:
00
6:
00
12
:0
0
18
:0
0
0:
00
6:
00
12
:0
0
18
:0
0
0:
00
6:
00
12
:0
0
18
:0
0
0:
00
6:
00
12
:0
0
18
:0
0
0:
00
-5
2/17
2/18
2/19
2/20
(時間)
図 4.24 2004 年 2 月 17 日~20 日の気温と表面温度の推移
4.2.3
夏期と冬期の観測結果比較
図 4.25 に夏期(2003 年 8 月 21 日)と冬期(2004 年 2 月 18 日)の代表的な熱収支観
測結果(観測データを 1 時間平均)の推移を示す.図 4.25 の実線が夏期の熱収支,破
線が冬期の熱収支観測結果を示している.正味放射量(Rn)は,夏期の日中のピークは
約 700 W・m-2,冬期で約 300 W・m-2程で夏期は冬期の約 2.4 倍であった.地中熱流量(G)
は,夏期の 10:00~14:00 頃にピークの約 45 W・m-2を観測,冬期では 13:00~14:00 に
ピークの約 45 W・m-2に達した.地中熱流量は夏期冬期ともに約 45 W・m-2を観測したが地
中熱流量がピークになる時間帯が異なっている.潜熱フラックス(LE)は,夏期の日中
のピークは約 600 W・m-2,冬期で約 160 W・m-2程で夏期は冬期の約 3.8 倍多く,夏期は芝
地からの蒸散効果が顕著に示されている.顕熱フラックス(H)は,夏期の日中のピー
クは約 50 W・m-2,冬期で約 110 W・m-2程で冬期は夏期の約 2.0 倍であった.顕熱フラッ
クス(H)を除いた,熱収支は夏期から冬期にかけて,太陽の高度の低下とともに,小
さくなる.ただし,地中熱流量(G)は,ピークに達する時間帯が異なる.顕熱フラッ
クス(H)の夏期と冬期の逆転は次の図 4.27 で説明が出来る.
図 4.26 に夏期,冬期両日の気温,芝地の表面温度と気温と表面温度の差の推移を示
す.図 4.26 の実線が気温,破線が芝地の表面温度の観測結果を示し,棒グラフが気温
と表面温度の差を示している.図 4.26 を見ると,夏期に比べて冬期の気温,表面温度
の差が非常に大きい.また気温と表面温度の差も夏期の 12:00 で約 9℃,夜間の温度差
はほとんど見られないが,冬期は 12:00 で約 15℃,夜間も約 7℃の温度差が見られた.
44
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
冬期の温度差は,芝地表面から上空に向けて熱の対流が盛んに行われている事を意味し
ていると考えられる.従って,冬期の顕熱フラックス(H)が高くなった原因として,
芝地表面の温度と気温の差が大きく関係していると考えられる.
(W・m-2) 800
700
ッ
600
熱
500
フ
ラ 400
300
ク
200
ス
100
0
-100
0:00
6:00
12:00
冬期正味放射量(Rn)
冬期顕熱フラックス(H)
夏期正味放射量(Rn)
夏期顕熱フラックス(H)
18:00
0:00
(時間)
冬期地中熱流量(G)
冬期潜熱フラックス(LE)
夏期地中熱流量(G)
夏期潜熱フラックス(LE)
図 4.25 夏期(2003 年 8 月 21 日)と冬期(2004 年 2 月 18 日)の熱収支(1 時間平均)
15(℃)
(℃) 45
40
10
35
気 30
温
25
・
表 20
面 15
温
度 10
5
0
温
度
差
-5
5
-10
0
-5
-15
0:00
6:00
12:00
夏期の気温と表面温度の差
夏期気温
夏期芝地の表面温度
18:00
0:00
冬期の気温と表面温度の差 (時間)
冬期気温
冬期芝地の表面温度
図 4.26 夏期(2003 年 8 月 21 日)と冬期(2004 年 2 月 18 日)の気温・表面温度(1 時間平均)
図 4.27 に夏期(2003 年 8 月 21 日)と図 4.28 に冬期(2004 年 2 月 18 日)の顕熱フ
45
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
ラックス(H),潜熱フラックス(LE)
,地中熱流量(G)の比率を積み上げ棒グラフ,正
味放射量(Rn)を折れ線グラフに示す(式 4.4 参照).夏期昼間(8:00~17:00)の芝
地に置いて潜熱フラックス(LE)約 84%,顕熱フラックス(H)約 9%,地中熱流量(G)
約 7%であった.冬期昼間(9:00~16:00)は潜熱フラックス(LE)約 50%,顕熱フラ
ックス(H)約 35%,地中熱流量(G)約 15%であった.顕熱フラックス(H)
,潜熱フ
ラックス(LE),地中熱流量(G)の比率は夏期と冬期では大きな違いが見られる.
100%
80%
700
60%
600
40%
500
20%
400
0%
300
-20%
200
-40%
-60%
100
-80%
0
-100%
0:00
地中熱流量(G)
6:00
12:00
顕熱フラックス(H)
18:00
潜熱フラックス(LE)
熱
フ
ラ
ッ
H
,
E
,
G
の
比
率
800(W・m-2)
ク
ス
-100
0:00
(時間)
正味放射量(Rn)
図 4.27 夏期(2003 年 8 月 21 日)の熱収支の比率(1 時間平均)
100%
80%
700
60%
600
40%
500
20%
400
0%
300
-20%
200
-40%
-60%
100
-80%
0
-100%
0:00
地中熱流量(G)
6:00
12:00
顕熱フラックス(H)
18:00
潜熱フラックス(LE)
ク
ス
-100
0:00
(時間)
正味放射量(Rn)
図 4.28 冬期(2004 年 2 月 18 日)の熱収支の比率(1 時間平均)
46
熱
フ
ラ
ッ
H
,
L
E
,
G
の
比
率
800(W・m-2)
第4章
4.2.4
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
2004 年夏期(8 月 10 日~13 日)の熱収支観測結果
2004 年 8 月 10 日~13 日の観測では,前回観測を行った場所とは異なり,一面芝地の
場所で熱収支観測を行った.熱収支観測システム,赤外線熱画像装置,温度湿度データ
ロガー,土壌水分計を使用した(図 4.29 参照)
.シンチロメータの観測距離 70m.観
測時間は,10 日の 0:00~13 日の 24:00 までの計 96 時間観測を行った.
観測 4 日間の気象条件と観測前 3 日間の気象条件を表 4.12 に示す.観測期間中の後
免の気温に関しては,期間を通じて最高気温が 30℃を超える真夏日であり,夜間も約
22℃の気温を記録した.1 日の平均気温は約 27℃を記録.また,観測期間直前までは,
晴天に恵まれたとは言えない天気であったが,観測開始時からは晴天の日が続き芝地の
乾燥が進行した.
表 4.12 2004 年 8 月 7 日~13 日の気象条件
降水量
平均気温
最高気温
最低気温
平均風速
日照時間
(mm)
(℃)
(℃)
(℃)
(m/s)
(h)
8/7
0
27.8
31.3
24.9
1.3
7.9
8/8
0
27.0
30.7
24.3
1.8
6.2
8/9
0
26.6
29.8
23.5
1.7
3.3
8/10
0
26.7
31.0
22.9
2.0
10.1
8/11
0
27.0
31.6
22.7
1.8
9.3
8/12
0
27.0
31.5
22.2
1.8
11.1
8/13
0
27.3
31.2
23.1
1.7
10.3
出所:気象庁,高知県後免
47
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
図 4.29 2004 年 8 月の観測装置配置図
図 4.30 に観測期間中の芝地の熱収支の推移を,図 4.31 に 4 日間の観測結果の代表
(夏
期)として 8 月 12 日の熱収支の推移を示す.冷却効果のある,潜熱フラックス(LE)
は観測期間中 1 日のピークは約 540 W・m-2を 12:00~13:00 の間に観測した.それに対し
加熱効果のある,顕熱フラックス(H)は観測期間中 1 日のピークは約 65 W・m-2を 13:00
~14:00 の間に観測した.12:00 の時点で顕熱フラックス(H)よりも潜熱フラックス
(LE)が約 8.3 倍程度多く,芝地からの蒸散効果が顕著に示されている.地中熱流量(G)
は,観測期間中 1 日のピークは約 35 W・m-2を 12:00~13:00 の間に観測した.正味放射
量(Rn)は,観測期間中 1 日のピークは約 640 W・m-2を 12:00~13:00 の間に観測した.
図 4.32 に観測期間中の気温,芝地の表面温度と気温と表面温度の差の推移を示す.
48
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
芝地の表面温度は観測期間中 1 日最高約 35℃,最低約 21℃を観測し,
気温は最高約 31℃,
最低約 23℃を観測した.観測期間を通して夜間は芝地の表面温度が気温を約 1.7℃下回
り,昼間は芝地の表面温度が気温をピーク時,約 3.8℃上回る結果を観測した.芝地の
表面温度は気温に比べて,変動が大きいことが観測から読み取ることが出来る.土壌水
分計の観測結果は,土壌水分量は 4 日間で減少していたが本観測では,潜熱フラックス
(LE)に影響を与えるような結果は得られなかった(土壌水分量については付録参照)
.
正味放射量(Rn)
顕熱フラックス(H)
地中熱流量(G)
潜熱フラックス(LE)
(W・m-2)
800
700
600
ッ
熱 500
フ
ラ 400
300
ク
ス 200
100
0
-100
0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00
8/10
8/11
8/12
8/13
(時間)
図 4.30 2004 年 8 月 10 日~13 日の芝地の熱収支
(W・m-2) 800
700
600
ッ
熱 500
フ
ラ 400
300
ク
ス 200
100
0
-100
0:00
6:00
12:00
18:00
0:00
(時間)
正味放射量(Rn)
顕熱フラックス(H)
地中熱流量(G)
潜熱フラックス(LE)
図 4.31 2004 年 8 月 12 日の芝地の熱収支
49
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
温度差(気温-芝地)
気温
芝地の表面温度
(℃) 45
15(℃)
40
10
35
気 30
温 25
・
表 20
面
温 15
度 10
5
0
温
度
差
-5
5
-10
0
-5
-15
0:00 6:00 12:0018:00 0:00 6:00 12:0018:00 0:00 6:00 12:0018:00 0:00 6:00 12:0018:00 0:00
8/10
8/11
8/12
8/13
(時間)
図 4.32 2004 年 8 月 10 日~13 日の気温と表面温度の推移
4.2.5
観測場所の違いによる比較
図 4.33 に夏期の両脇に樹木の植わった芝地(2003 年 8 月 21 日)と夏期の一面芝地
(2004 年 8 月 12 日)の代表的な熱収支観測結果(観測データを 1 時間平均)の推移を
示す.図 4.33 の実線が夏期(2003 年)の熱収支,破線が夏期(2004 年)の熱収支観測
結果を示している.正味放射量(Rn)は,2003 年の日中のピークは約 700 W・m-2,2004
年で約 640 W・m-2程で 2003 年と 2004 年の差は約 60 W・m-2であった.地中熱流量(G)は,
2003 年では 10:00~14:00 頃にピークの約 45W m-2を観測,2004 年では 12:00~13:00 の
間にピークの約 35 W・m-2を観測した.地中熱流量のピークの差は約 10 W・m-2.潜熱フラ
ックス(LE)は,2003 年の日中のピークは約 600 W・m-2,2004 年で約 540 W・m-2程で両
観測場所ともに,500 W・m-2を越える潜熱フラックスを示しており,芝地からの蒸散効果
が顕著に示されている.顕熱フラックス(H)は,2003 年の日中のピークは約 50 W・m-2,
2004 年で約 65 W・m-2程であった.顕熱フラックス(H)のみ 2004 年の観測結果が他の熱
収支の項目より大きい値を示している.これは,2003 年の観測が両脇に樹木の植わっ
た芝地で観測したことが関わっていると考えられる.
図 4.34 に 2003 年,2004 年の気温,芝地の表面温度と気温と表面温度の差の推移を
示す.図 4.34 の実線が気温,破線が芝地の表面温度の観測結果を示し,棒グラフが気
温と表面温度の差を示している.図 4.34 を見ると,2003 年,2004 年ともに昼間は表面
温度が気温を上回っていて,夜間は気温が表面温度を上回っている.また気温と表面温
50
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
度の差も 2003 年の 12:00 で約 9.0℃,夜間の温度差はほとんど見られないが,2004 年
は 12:00 で約 2.5℃,夜間の温度差はほとんど見られなかった.
(W・m-2) 800
700
ッ
600
熱 500
フ
ラ 400
300
ク
ス 200
100
0
-100
0:00
6:00
12:00
2004年の正味放射量(Rn)
2004年の顕熱フラックス(H)
2003年の正味放射量(Rn)
2003年の顕熱フラックス(H)
18:00
0:00
(時間)
2004年の地中熱流量(G)
2004年の潜熱フラックス(LE)
2003年の地中熱流量(G)
2003年の潜熱フラックス(LE)
図 4.33 夏期(2003 年 8 月 21 日)と夏期(2004 年 8 月 12 日)の熱収支(1 時間平均)
(℃) 45
15(℃)
40
10
35
気 30
温
25
・
表 20
面
15
温
度 10
5
5
0
温
度
差
-5
-10
0
-5
-15
0:00
6:00
12:00
2003年の気温と表面温度の差
2003年気温
2003年芝地の表面温度
18:00
0:00
2004年の気温と表面温度の差 (時間)
2004年気温
2004年芝地の表面温度
図 4.34 夏期(2003 年 8 月 21 日)と夏期(2004 年 8 月 12 日)の気温・表面温度(1 時間平均)
図 4.35 に夏期(2003 年 8 月 21 日)と図 4.36 に夏期(2004 年 8 月 12 日)の顕熱フ
ラックス(H),潜熱フラックス(LE)
,地中熱流量(G)の比率を積み上げ棒グラフ,正
51
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
味放射量を折れ線グラフに示す(式 4.4 参照)
.2003 年昼間(8:00~17:00)の芝地に
置いて潜熱フラックス(LE)約 84%,顕熱フラックス(H)約 9%,地中熱流量(G)約
7%であった.2004 年昼間(8:00~17:00)は潜熱フラックス(LE)約 82%,顕熱フラ
ックス(H)約 11%,地中熱流量(G)約 6%であった.2003 年,2004 年ともに昼間の
潜熱フラックス(H)は熱フラックスの 8 割以上を占めている.
800(W・m-2)
100%
700
60%
600
40%
500
20%
400
0%
300
-20%
200
-40%
-60%
100
-80%
0
-100%
0:00
地中熱流量(G)
6:00
12:00
顕熱フラックス(H)
18:00
潜熱フラックス(LE)
熱
フ
ラ
ッ
H
,
E
,
G
の
比
率
80%
ク
ス
-100
0:00
(時間)
正味放射量(Rn)
図 4.35 夏期(2003 年 8 月 21 日)の熱収支の比率(1 時間平均)
800(W・m-2)
100%
700
60%
600
40%
500
20%
400
0%
300
-20%
200
-40%
-60%
100
-80%
0
-100%
0:00
地中熱流量(G)
6:00
12:00
顕熱フラックス(H)
18:00
潜熱フラックス(LE)
ク
ス
-100
0:00
(時間)
正味放射量(Rn)
図 4.36 夏期(2004 年 8 月 12 日)の熱収支の比率(1 時間平均)
52
熱
フ
ラ
ッ
H
,
L
E
,
G
の
比
率
80%
第4章
4.3
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
芝地における熱環境性(熱収支)の考察
高知工科大学の敷地の芝地 2 箇所を対象とした,夏期 2 回(8 月)冬期 1 回(2 月)
の計 3 回のシンチレーション法による熱収支観測により,芝地の熱収支の特性を把握す
ることをおこなった現地観測結果を,以下に整理する.
○夏期と冬期について(両脇に樹木の植わった芝地において)
(1).夏期と冬期を比較した際,潜熱フラックス(LE)の 1 日のピーク時において,夏
期(1 時間平均約 600 W・m-2)は冬期平均(1 時間平均約 160 W・m-2)の約 3.8 倍で
あった.
(2).顕熱フラックス(H)は,1 日のピーク時において,冬期(1 時間平均約 110 W・m-2)
は夏期(1 時間平均約 50 W・m-2)の約 2.0 倍であった.
(3).夏期に比べて冬期の気温,表面温度の差が 1 日の一定の時間(日出と日暮)を除
き非常に大きい.
(4).顕熱フラックス(H),潜熱フラックス(LE),地中熱流量(G)の比率は夏期の昼
間(8:00~17:00)と冬期の昼間(9:00~16:00)では大きな違いが見られる.特に
夏期は潜熱フラックス(H)の比率が 8 割以上あり,冬期は 5 割に減少した.
(5).夏期の昼間(8:00~17:00)の平均的な潜熱フラックス(LE)は約 350 W・m-2,冬
期の昼間(9:00~16:00)は約 100 W・m-2)あった.
○夏期の場所の違いについて(両脇に樹木の植わった芝地と一面芝地において)
(1).両脇に樹木の植わった芝地と一面芝地の潜熱フラックス(LE)は,1 日のピーク
時に両脇に樹木の植わった芝地(1 時間平均約 600 W・m-2),一面芝生(約 540 W・m-2)
になった.両観測地点とも 1 日のピーク時の潜熱フラックス(LE)は 500 W・m-2以
上と非常に大きい.
(2).12:00 の時点で顕熱フラックス(H)よりも潜熱フラックス(LE)が両脇に樹木
の植わった芝地で約 12.0 倍,一面芝地で約 8.3 倍程度多く,芝地からの蒸散効果
が顕著である.
(3).両観測地点ともに昼間は表面温度が気温を上回っていて,夜間は気温が表面温度
を上回っている.
(4).顕熱フラックス(H),潜熱フラックス(LE),地中熱流量(G)の比率は両観測地
点の昼間(8:00~17:00)ともに,潜熱フラックス(H)の比率が 8 割以上を占めて
いる.
(5).観測地点の昼間(8:00~17:00)の平均的な潜熱フラックス(LE)は約 350 W・m-2で
あった.
53
第4章
シンチレーション法を適用した芝地の熱収支観測
以上の観測結果についての考察をまとめると,芝地における夏期晴天の潜熱フラック
ス(LE)は非常に大きく芝地緑化をおこなう事で大きな大気の冷却効果を得ることが出
来る.ただし,今回観測した芝地は,大学により非常に良く管理された育成環境にあり,
恵まれた管理条件を考慮に入れてのことである.
従来の観測方法(バルク式)とシンチレーション法の観測結果の比較検証については
付録に仮定条件を加えた形で検証をおこなった.
54
第5章
第5章
5.1
芝地を利用したヒートアイランド対策
芝地を利用したヒートアイランド対策
都市でのヒートアイランド対策として芝地をどう活かすか
現在,ヒートアイランド対策として 1).人工排熱の低減,2).地表面被覆の改善,3).
都市形態の改善,4).ライフスタイルの改善の 4 つの大きな対策が行われている.本研
究では,地表面被覆の改善によるヒートアイランド対策として,芝地緑化による具体的
な対策について考察する.緑化政策として,公園,緑地や街路樹の整備,建物の屋上や
壁面の緑化,敷地の緑化が上げられる.しかし,都市部では今後まとまった土地の取得
が困難なことから公園,緑地や街路樹の整備は進んでいない.屋上緑化に関しては,2001
年 4 月東京都は,改正自然保護条例を施行,敷地面積 1000 m2以上の民間建築物(公共
建築物は 250 m2以上)を新改築する際,利用可能な屋上面積の 2 割以上の緑化を義務
づけ,現在,自治体を中心に急速に緑化対策が進んでいる.
以上の現状を踏まえて,芝地緑化によるヒートアイランド対策として,学校教育施設
における校庭緑化をモデルプロジェクトして検討する.学校教育施設は地域に関係なく
地理的にも大きな偏りがなく設置されており,緑化に対する地域公平性が保たれる点も
土地の取得が困難な都市においての存在意義は高く,新たなクールスポットの創出にも
繋がる.また,文部科学省が中心になり実施されている「環境を考慮した学校施設(エ
コスクール)の整備推進に関するパイロットモデル事業」の中でも校庭緑化については
大きな期待が寄せられ整備が進んでいる.
芝地による校庭緑化を行う都市として東京都を選択する.その理由として東京の 100
年当たりの平均気温上昇は+3.0℃と他のどの都市よりも高く(第 2 章,表 2.3 参照),
ヒートアイランド対策が早急に必要である.また,学校教育施設の密度が高く芝地緑化
の効果が大きいと考えられる.
校庭の芝地化することによってのメリットは様々なことが期待されている(5.2 校庭
の芝地緑化メリット参照).期待されている効果の中でデータとして実証されているも
のは少なく,経験的見地はある程度認識されているが定量的に把握はされていな.本章
では,芝地による校庭緑化の代表的なケースにおける熱環境緩和効果についての効果の
検証を行う.
5.2
校庭の芝生緑化
近年,環境教育の一環として,自然環境に配慮した学校施設(エコスクール)の整備
推進が図られており,その中でも校庭緑化(芝地化)に対する注目が集り期待も大きい.
校庭の緑化に関しては「屋外教育環境整備事業」で行政による補助を行い推進している
55
第5章
芝地を利用したヒートアイランド対策
(表 5.1 参照)
.現在,補助を受けて 300m2以上の芝張りを行った件数は,1997 年~2003
年度までに 266 校(表 5.2 参照)
.自治体が独自に整備したのを含めると全国の公立小
中高校で 1,119 校と全体(2003 年 37,856 校)の約 3%に相当する.今後も政府(地方
行政)補助金を使った校庭緑化整備は年間約 30 校のペースで促進されると予想される.
また,校庭を芝生で緑化することによるメリットは以下のようなものがある.
(1).熱環境緩和効果
土壌がむきだしの場合や舗装資材により覆われている状態に対して,芝生により覆わ
れた校庭では,直射日光の照り返しを緩和するとともに,地表面の温度変化を緩和する
事ができる.また,緑化面積を増やすことで,地域の温暖化防止にも期待ができる.
(2).砂ぼこりの飛散防止
土の校庭では,乾燥時の強風で校庭の土が舞い上がり,により砂ぼこりが発生する.
校内のみならず近隣地域にまで被害を及ぼすことがある.土壌表面を芝生で覆うことに
より砂ぼこりの飛散防止になる.
(3).ぬかるみ防止
土の校庭では大量の降雨後にぬかるみが発生する.土壌表面を芝生で覆うことで,芝
生が地中に根を張ることにより,ぬかるみを防止することが可能になる.また,土壌の
流出を防ぐ効果も持ち合わせている.同時に雨水の浸透が促進され雨水流出のピークの
一部と汚濁負荷が軽減される効果も期待できる.
(4).生徒の怪我防止,健康促進
芝生がクッションの役割をすることにより,転倒時の衝撃を軽減できる.また,素足
で芝生の上を歩いた場合,血行促進や偏平足の改善など,様々な健康促進が期待できる.
(5).教育への貢献
芝生に接することで,生き物への関心や環境に対する豊かな心を養うことが出来る.
特に緑に接する機会の少ない都会では,子供の心にプラスの影響をあたえる.また,芝
刈り,除草作業等を通して,集団活動での協調性を養うことができる.
(6).景観の向上
殺伐とした土の茶色の校庭よりも,一面を芝生により緑で染めることで,景観の向上
を促進する.緑の被面増加による美景効果,学校のみならず周辺の住居環境改善や美し
い都市環境の整備にも繋がる.
(6).ゆとり空間の創出
校庭の芝生による緑化を実施する事で,心理的な癒しの効果を生み,心のゆとりも創
出する事ができる.癒しの効果により,生徒の精神的安定に寄与する.
(8).新たなコミュニティの創出
校庭の芝地の植栽や管理を通じて学校,生徒,地域の人を繋ぐコミュニティが生まれ
る.また,地域住民に対して社会活動に参加できる喜びの場を提供する.
56
第5章
芝地を利用したヒートアイランド対策
表 5.1 屋外教育環境整備事業での補助条件
対象学校
補助率
小学校,中学校,特殊教育諸学校
イニシャルコストの 1/3
暗渠排水,表面排水及び表面舗装等が一体で整備された施設
補助要件
(芝生を張るだけのものは補助対象外)
整備面積の制限はなく,事業費での制限をしている.事業費
補助基準
ベースで,2,000 万円以上で 9,000 万円を限度
出所:文部科学省大臣官房文教施設企画部施設助成課(1995 年)より
表 5.2 2003 年度補助金により芝張りを施している主な学校
都道府県名
芝面積(m2)
設置者名
学校名
整備内容
旭川市
北光小学校
校庭
1,110
真狩村
真狩小学校
校庭
709
余市町
沢町小学校
校庭
1,758
山形県
村山市
葉山中学校
校庭
4,456
栃木県
足利市
毛野小学校
自然体験広場
埼玉県
川口市
芝小学校
校庭
2,332
千葉県
天津小湊町
安房東中学校
校庭
2,560
杉並第八小学校
運動体験広場
315
杉並第九小学校
運動体験広場
527
和田中学校
運動体験広場
382
北海道
東京都
杉並区
770
新潟県
新井市
新井南小学校
運動体験広場
738
石川県
根上町
根上中学校
観察の森
434
名古屋市
東桜小学校
校庭
2,820
小牧市
小牧南小学校
校庭
2,690
滋賀県
高月町
富永小学校
校庭
2,687
山口県
阿知須町
井関小学校
運動体験広場
356
長崎県
松浦市
志佐小学校
運動体験広場
1,242
大分県
鶴見町
松浦小学校
校庭
1,356
与論町
与論中学校
校庭
700
加世田市
久木野小学校
校庭
2,230
中種子町
中種子中学校
校庭
3,675
大宜味村
塩屋小学校
校庭
597
西原町
坂田小学校
校庭
1,840
愛知県
鹿児島県
沖縄県
出所:文部科学省大臣官房文教施設企画部施設助成課(2003 年)より
57
第5章
5.3
芝地を利用したヒートアイランド対策
東京都の都市熱環境
5.3.1 東京の人口と土地利用
表 5.3 に東京都と東京都特別区の面積,人口を示す.東京都特別区は 23 区から成り
立ち,約 813 万人が暮らす.特別区には東京都の人口の約 67.4%の人口が集中してい
る.
表 5.3 東京都と東京都特別区の面積と人口
2000 年国勢
面積(km2)
調査人口(万人)
東京都
約 2187.05 km2
約 1206 万人
東京都特別区
約 621.45 km2
約 813 万人
出所:2000 年国勢調査,東京都統計年鑑 2002 年土地面積及び気象より作成
図 5.1 に東京都特別区の土地利用について示す(凡例表 5.4 参照)
.宅地 56.6%,道
路等 21.1%の割合が高く,公園等 6.1%,水面 5.3%にとどまっている.都市公園に限
って言えば 4.1%(約 25.49 km2)で都民一人当たりの都市公園面積は,約 3.13 m2/人
と政令指定都市の中では最低である.都市公園面積最大は約 16.62 m2/人の神戸市,政
令指定都市平均は約 6.05 m2/人である(表 5.5 参照)
.
水 面
5.3%
森 林
0.1%
農用地
1.4%
原 野
0.9%
道路等
21.1%
宅地
56.6%
未利用
3.3%
公園等
6.1%
その他
5.2%
出所:東京都統計年鑑 2002 年土地面積及び気象より作成
図 5.1 東京都特別区の土地利用
58
第5章
芝地を利用したヒートアイランド対策
表 5.4 東京都特別区の土地利用凡例
凡例
宅地
公共用地,商業用地,住宅用地,工業用地,農業用地
その他
採石地,ごみ捨て場,基地,火薬庫等
公園等
公園緑地,運動場,野球場,遊園地,ゴルフ場,テニスコート,墓地等
未利用地
未建築宅地,区画整理中の土地,取りこわし跡地,廃屋,埋立地等
道路等
道路,鉄道,軌道,モノレール,空港,港湾
農用地
田,畑,樹園地,採草放牧地
水面
湖沼,河川,運河,遊水池
森林
樹林,竹林等木竹が集団的に生育する土地,山地
原野
野草地等小かん木類が生育する自然のままの土地,荒地,裸地
出所:東京都統計年鑑 2002 年土地面積及び気象より作成
表 5.5 政令指定都市の都市公園1人当たりの面積
都市公園合計
2000 年国勢
1 人当り公園
(km2)
調査人口(人)
面積(m2/人)
札幌市
18.97
1822368
10.41
仙台市
10.58
1008130
10.49
千葉市
7.80
887164
8.79
東京都特別区
25.49
8134688
3.13
横浜市
15.41
3426651
4.50
川崎市
4.55
1249905
3.64
名古屋市
14.66
2171557
6.75
京都市
5.91
1467785
4.03
大阪市
9.05
2598774
3.48
神戸市
24.82
1493398
16.62
広島市
8.43
1126239
7.48
北九州市
10.56
1011471
10.44
福岡市
11.54
1341470
8.61
政令市計
167.77
27739600
6.05
出所:環境省 2004 年環境統計集,2000 年国勢調査より作成
59
第5章
芝地を利用したヒートアイランド対策
5.3.2 東京の気候
図 5.2 は東京の夏期(6 月~9 月)の真夏日(最高気温 30℃以上)と熱帯夜(最低気
温 25℃以上)の年間発生日数の推移を示している.真夏日日数は,1876 年~2004 年で
は緩やかに上昇しているのに対して,熱帯夜日数は 1950 年以降に急激に上昇している.
これは,都市化に伴い被覆条件が熱容量の大きいアスファルト舗装や建物が増加し,日
中に蓄えられた熱を夜間に放出できなくなり気温低下が鈍くなり,その影響から都市部
の住居者は寝苦しい夜を回避するためにエアコンを使用し,その結果最低気温が 25℃
以上の熱帯夜の日数が急激に増えたと考えられる.
図 5.3 は東京の夏期(10 月~4 月)の冬日(最低気温 0℃未満)の年間発生日数の推
移を表している.東京の真冬日(最高気温 0℃未満)は 1876 年からの観測で 4 日のみ
である.ヒートアイランド現象は夏期より冬期に顕著に現れると考えられているように,
冬日の発生日数は近年では一桁あるいは観測されないほどに,130 年で急激に減ってい
る.これは,明らかに異常なことと言える.人間生活には,冬期に温暖化することで省
エネルギーに繋がると考えられるが,環境生態系への影響を考えると無視することの出
来ない問題である.
80
70
60
50
日
40
数
30
20
10
0
1870
1890
1910
1930
真夏日(最高気温30℃以上)
多項式(真夏日)
1950
1970
1990
2010 (年)
熱帯夜(最低気温25℃以上)
多項式(熱帯夜)
出所:気象庁より作成
図 5.2 東京の真夏日と熱帯夜の年間日数の推移
60
第5章
芝地を利用したヒートアイランド対策
120
100
80
日
60
数
40
20
0
1870
1890
1910
1930
1950
冬日(最低気温0℃未満)
1970
1990
2010 (年)
線形(冬日)
出所:気象庁より作成
図 5.3 東京の冬日の年間日数の推移
61
第5章
5.4
芝地を利用したヒートアイランド対策
東京都特別区における校庭芝地緑化の提案
東京都特別区(23 区)の教育施設(幼稚園から高等学校)が約 2700 校存在し,約 10
km2の校庭があると見積もられる(表 5.6 参照)
.現在,東京都特別区にある都市公園の
合計面積は約 25.49 km2である(表 5.5 参照).校庭芝地緑化すると都市公園の面積の約
40%に相当し,仮にすべての校庭を芝生緑化することが出来れば,土地取得の困難な,
東京都特別区では大きな熱環境緩和効果を生むと考えられる.
表 5.6 東京都特別区内の教育施設の校庭面積の試算結果
園数
面積(m2)
学級数
幼稚園
792
学校数
4428
480960
面積(m2)
生徒数
面積(km2)
0.48
面積(km2)
小学校
907
358346
3583460
3.58
中学校
555
191549
2581490
2.58
高等学校
392
218824
3292800
3.29
合計
2646
9938710
9.94
-
注)高等学校については,全日制のみの学生数,生徒数.学校数で私立校に関し
ては一貫教育の学校を重複カウトしている.
出所:東京都総務局統計部人口統計課学事統計係「2004 年学校基本調査」より作成
教育施設の校庭面積の試算に当たっては,学校教育法(昭和 22 年法律第 26 号)第 3
条の規定に基づき,現在の学級数,生徒数(東京都総務局統計部人口統計課学事統計係
「2004 年学校基本調査」
)のデータを用いて最低限必要な校庭面積を試算した(詳しい
試算結果は付録参照).学校教育法の各学校の設置基準の中の校庭(運動場)について
の設置基準について以下に示す(校庭に関する事のみ掲載).
(1).幼稚園設置基準(平成 14 年 3 月 29 日文部科学省令第 17 号)
第8条
園舎及び運動場(校庭)は,同一の敷地内又は隣接する位置に設けることを原則とす
る.園地,園舎及び運動場(校庭)の面積は,表 5.7 に定める.
表 5.7 幼稚園設置基準運動場(校庭)の面積
学級数
面積(m2)
2 学級以下
330+30×(学級数-1)
3 学級以上
400+80×(学級数-3)
出所:幼稚園設置基準(平成 14 年 3 月 29 日文部科学省令第 17 号)より
62
第5章
芝地を利用したヒートアイランド対策
(2).小学校設置基準(平成 14 年 3 月 29 日文部科学省令第 14 号)
第8条
校舎及び運動場の面積は,法令に特別の定めがある場合を除き,表 5.8 に定める面積
以上とする.ただし,地域の実態その他により特別の事情があり,かつ,教育上支障が
ない場合は,この限りでない.
表 5.8
小学校設置基準運動場(校庭)の面積
児童数
面積(m2)
1 人以上 240 人以下
2400
241 人以上 720 人以下
2400+10×(児童数-240)
721 人以上
7200
出所:小学校設置基準(平成 14 年 3 月 29 日文部科学省令第 14 号)より
(3).中学校設置基準(平成 14 年 3 月 29 日文部科学省令第 15 号)
第8条
校舎及び運動場の面積は,法令に特別の定めがある場合を除き,表 5.9 に定める面積
以上とする.ただし,地域の実態その他により特別の事情があり,かつ,教育上支障が
ない場合は,この限りでない.
表 5.9 中学校設置基準運動場(校庭)の面積
生徒数
面積(m2)
1 人以上 240 人以下
3600
241 人以上 720 人以下
3600+10×(生徒数-240)
721 人以上
8400
出所:中学校設置基準(平成 14 年 3 月 29 日文部科学省令第 15 号)より
(4).高等学校設置基準(平成 16 年 3 月 31 日文部科学省令第 20 号)
第 14 条
運動場の面積は,全日制の課程若しくは定時制の課程の別又は収容定員にかかわらず,
8400 m2とする.ただし、体育館等の屋内運動施設を備えている場合その他の教育上支
障がない場合は,この限りでない.
63
第5章
5.5
芝地を利用したヒートアイランド対策
校庭緑化によるクールアイランド効果
5.3 で東京都特別区内の教育施設(幼稚園から高等学校)における最低限必要な校庭
面積を試算したが,この校庭を芝地による校庭緑化した際の熱環境緩和効果についてこ
こでは試算する.
(1).試算内容
東京都特別区内の教育施設(幼稚園から高等学校)の最低限必要な校庭面積(約 10km2)
を芝地で緑化した際,緑化対象地域において気温は何度下がるかを試算する.
(2).試算方法について
校庭が芝生で緑化されていない場合とされた場合の大気温度の冷却効果として,緑か
ら放出される蒸散による潜熱フラックス(LE)だけど仮定する.また,蒸散のエネルギ
ーは大気冷却効果のみに用いられることと仮定する.
第 4 章で観測した潜熱フラックス(LE)から蒸散量(E)を求める.求める蒸散量(E)
は 2004 年 8 月 12 日の潜熱フラックス(LE)と気温を用いて試算する.ただし,求めた
蒸散量(E)は昼間(7:00~17:00)の蒸散量(E)の合計を夏期の代表した 1 日の芝地
における蒸散量とする.以下に 1 時間の蒸散量を算出する式を示す.
L = 2.50 × 10 6 − 2400T ・・・・・・(5.1)
E=
LE
× 60 × 60 ・・・・・・(5.2)
L
ここで,L:水の気化の潜熱(J・kg-1),T:気温(℃)
,E:蒸散量(kg・m-2・s-1=mm・s-1)
LE:潜熱フラックス(W・m-2=J・m-2・s-1)
上記の式(5.1,5.2)より,2004 年 8 月 12 日の潜熱フラックス(LE)と蒸散量(E)
を図 5.4 に示す.一面芝地の夏期の 1 日(7:00~17:00)の蒸散量は約 165 mm・day-1で
あった.
次に,5.3 で試算した芝地緑化した面積の蒸発潜熱を求める式を示す.
AE = V × E × A ・・・・・・(5.3)
ここで,AE:蒸発潜熱(cal・day-1),V:気温 30℃における水の気化熱(583 cal・g-1)
E:蒸散量(mm・dey-1)A:芝地緑化した校庭面積(km2)
64
第5章
芝地を利用したヒートアイランド対策
上記の式(5.3)より,一日の芝地緑化した校庭面積当たり約 9.7×1013 cal・day-1に
達する.
次に,東京都特別区の面積と大気境界線の高さとした箱の中で,芝地の蒸発潜熱によ
って気温がどの程度変化するか以下の式を使い試算する.
T=
AE
・・・・・・(5.4)
Cp ρ × A × h
ここで,AE:蒸発潜熱(cal・day-1),Cp:空気の定圧比熱(気温 30℃の空気の定圧比
熱 0.24 cal・g-1),ρ:空気の密度(気温 30℃,湿度 20%,気圧 1003hPaで空気の密度
が 1.15 kg・m-3,2004 年 8 月 12 日の観測データより)
,A:東京都特別区面積(km2)h:
大気境界線の高さ(500m)T:気温変化量(℃・day-1)
上記の式(5.4)より,東京都特別区内の教育施設の校庭を芝地緑化した際の大気冷
却効果(ポテンシャル)は,大気境界線の高さ(500m)の時,最大 1.13℃となる.最
大約 1℃の大気冷却効果(ポテンシャル)を校庭の芝地緑化することで得ることが出来
る.また大気境界線の高さを変えた大気冷却効果について図 5.5 に示す.大気境界線の
高さを高くすると気温低下が小さくなる.これは潜熱フラックス(LE)の影響が大気の
厚さが大きくなるほど弱くなることを示している.
(W・m-2) 800
0.8(mm・h-1)
700
0.7
600
0.6
熱 500
フ
400
ラ
0.5
300
ク
ス 200
0.3
100
0.1
0
0.0
ッ
0.4
蒸
散
量
0.2
-100
-0.1
0:00
6:00
蒸散量(E)
12:00
18:00
0:00
潜熱フラックス(LE)
(時間)
図 5.4 2004 年 8 月 12 日の一面芝地の蒸散量(E)と潜熱フラックス(LE)の推移
65
第5章
芝地を利用したヒートアイランド対策
(℃) 6
5
4
気
温
3
低
下
2
1
0
0
200
400
600
800
1000
1200
大気境界線の高さ
1400
1600
1800
2000 (m)
図 5.5 大気境界線の高さと気温低下の推移
(3).考察
都市の熱環境緩和のための,緑化政策の整備が整い次第,できるだけ速やかに実行す
ることが急務である.東京都特別区内の教育施設への校庭芝地緑化の大気冷却効果は,
大気境界線を 500m に仮定した場合(500m に設定した理由として,水環境の気象学より
「高度 0.5~2.0km 程度以下の層は大気境界層と呼ばれ,この層では地表面の摩擦の作
用と熱的な作用によって乱流が発生し,気温や風速などは激しく変動している.」この
ことから都市における熱緩和効果は約 500m までの空間の中が最も適切だと考えたた
め),最大約 1℃の大気冷却効果(ポテンシャル)を得ることが試算できた.校庭芝生
緑化の効果は大きく,都市熱環境緩和の為の分析型モデルとしては大いに可能性があり
都市環境改善へ繋がると考えられる.しかし,日本では研究・調査は進んではいるが,
効果の検証レベルだけで,具体的な効果を考慮(シミュレート)した政策はまだまだ,
対策段階(不十分)であり国・地方自治体の積極的な政策の意思決定が待たれる.また,
緑化を実施した地域が増えることで,緑化効果は大きくなり,更なる緑化が推進され相
乗効果を生むと考えられる.
66
第6章
第6章
6.1
まとめと今後の研究と課題
まとめと今後の研究と課題
まとめ
本節では,本論文の各章のまとめを以下に述べる.
2 章では,研究の社会的背景である地球温暖化問題とヒートアイランド現象のメカニ
ズムと実態,対応策についてまとめた.地球温暖化問題に対する国レベルの政策が依然
として各国間の利害関係のため問題の把握に終始している.しかし,京都議定書の発効
が正式に確定し,多くの問題を抱えながらも地球温暖化対策への各国の足並みが揃いつ
つある.ヒートアイランド現象の問題は,国・自治体が問題の重要性に気付く形で,多
くの対策を実行するための政策が次々に打ち出されつつある状況について述べた.
3 章では,熱収支の現地観測で使用したシンチレーション法の利点と問題点の把握を
した.現在代表的に行われている渦相関法に対し,研究で使用したシンチレーション法
は,都市の複雑の熱収支を考える上では多くの利点を持った観測方法である.しかし,
観測環境により適応が難しい場合もあり,観測場所によっては従来の方法(渦相関法,
バルク式等)とあわせて使用するか,対象地域の環境条件によって使い分けることが望
ましい.
4 章では,シンチレーション法を用いた,芝生の熱収支観測を行い,芝地における熱
収支特性について把握した.観測結果から特に潜熱フラックス(LE)が非常に高く夏期
の一面芝地の場合約 540 W・m-2であった.芝地は,非常に多くの蒸散効果を生み,大き
な大気冷却効果を得ることが出来る.ただし,観測した芝地は大学により非常に良く管
理された育成環境にあった.
5 章では,第 4 章の結果より,芝地緑化を適用したヒートアイランド対策のモデルケ
ースについて検討した.モデルケースとして東京都特別区内の教育施設(幼稚園から高
等学校)の校庭を芝地により緑化した場合,東京都特別区内の気温が芝地の潜熱フラッ
クス(LE)の効果によりどの程度,大気冷却効果を生むかを試算した.結果として,夏
期に最大約 1℃の大気冷却効果(ポテンシャル)を校庭芝地緑化により生み出すことが
出来た.緑化による環境改善効果は大きく都市の熱環境緩和に非常に貢献できると考え
られる.しかし,効果の検証レベルだけでなく,具体的な効果を考慮(シミュレート)
した政策はまだまだ,対策段階(不十分)であり国・地方自治体の積極的な政策の意思
決定が待たれる.緑化政策の実施しにより今後,ヒートアイランド現象が緩和すること
を期待する.
67
第6章
6.2
まとめと今後の研究と課題
問題点と今後の課題
(1).今後の問題点として,研究で使用したシンチレーション法を用いて長期的な観測
(モニタリング)が必要である.
(2).芝地だけでなく他の被覆・植生においてシンチレーション法での観測を加えるこ
とが必要である.
(3).従来の観測方法とシンチレーション法の観測結果の精度を含む比較検証が必要で
ある(仮定条件を加えた検証は付録に記載)
.
(4).熱緩和効果の試算にも他の方法があり,それらとの比較(クロスチェック)も必
要である.
(5).緑化による環境改善効果(経済性)についても緑化事業の妥当性と有効性の検討
を加える必要がある.
6.3
終わりに
今後,都市に生活する住人の1人として緑化の普及に協力し,緑化に伴う効果,問題
の解決における更なる研究を行うことが必要である.また,地球環境時代にあっても緑
化政策の利点(プロジェクトの妥当性・有効性)を社会に広く正しく理解してもらうた
めの努力をおこたらないことも必要である.最後に,本研究を通して,地球環境問題の
奥深さと重要性に気付かされ周辺の環境解析技術についても学ぶことが出来,その一端
に触れ,チャレンジできたことだけでも幸甚である.
68
引用・参考文献・参考資料一覧
引用・参考文献・参考資料一覧
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2004.03
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32. 気象庁電子閲覧室 http://www.data.kishou.go.jp/
33. 地球環境フロンティア研究センター http://www.jamstec.go.jp/frcgc/jp/
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35. Nature Net http://www.nature-n.com/
36. 気候変動枠組条約第6回締約国会議(COP6)について
http://www.env.go.jp/earth/cop6/
37. 環境問題と、その取り組み
http://www.eic.or.jp/library/ecolife/knowledge/knowledge01.html
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引用・参考文献・参考資料一覧
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50. 千葉大学園芸学部
緑地植物学研究室 http://www.h.chiba-u.jp/helloeps/
51. サイバーキャンパス「鷹山」 http://syllabus-pub.yz.yamagata-u.ac.jp/
74
謝辞・観測データ等について
謝辞
本論文「シンチレーション法を適用した熱収支解析と芝地のクールアイランド効果につ
いて」を執筆するにあたり,主査としてたびたび長時間に及ぶ議論や情熱あふれる御指導
と御教示を賜りました村上雅博教授,副査としてご多忙中にも関わらず貴重な意見・アド
バイスを頂きました,渡邊法美氏,審査員として貴重な意見・指摘をしてくださいました,
藤澤伸光氏,穴見健吾氏にはこの場を借りて深く感謝の意を示します.
本論文作成にあたり,お世話になりました先輩の馬渕泰氏,濱津陽一氏,同輩の公文
勇喜氏,春田修一氏,後輩の中本良徳氏をはじめとする村上研究室の皆様に心より御礼
申し上げます.また,論文作成中に切磋琢磨した,社会システム工学コースの皆様あり
がとうござました.
最後に大学・大学院への進学に同意し,今まで育ててくれた両親や家族に対し心より
感謝し,御礼申し上げます.
2005/01 森 進一郎
観測データ等について
本論文の中で使用した図・表等で付録,本文中に記載されていないデータに関しては,
社会システム工学コース村上研究室又は,本論文の執筆者,森まで問い合わせ下さい.
連絡先
森 進一郎
75
[email protected]
付録(解析データ等)
付録(解析データ等)
付録目次
シンチレーション法の精度検証
・・・
78
付録図目次
付録図 1 2004 年 8 月 10 日~13 日のバルク式とシンチレーション法の顕熱フラックス
(H)の推移
・・・
79
付録図 2 2004 年 8 月 10 日~13 日の土壌水分の推移
・・・
80
付録図 3 2003 年 8 月の観測場所写真
・・・
80
付録図 4 2003 年 8 月 20 日 12:00 熱画像
・・・
81
付録図 5 2003 年 8 月 20 日 18:00 熱画像
・・・
81
付録図 6 2003 年 8 月 21 日 00:00 熱画像
・・・
81
付録図 7 2003 年 8 月 21 日 06:00 熱画像
・・・
81
付録図 8 2003 年 8 月 21 日 12:00 熱画像
・・・
81
付録図 9 2004 年 2 月の観測場所写真
・・・
82
付録図 10 2004 年 2 月 18 日 00:00 熱画像
・・・
83
付録図 11 2004 年 2 月 18 日 06:00 熱画像
・・・
83
付録図 12 2004 年 2 月 18 日 12:00 熱画像
・・・
83
付録図 13 2004 年 2 月 18 日 18:00 熱画像
・・・
83
付録図 14 2004 年 2 月 19 日 00:00 熱画像
・・・
83
付録図 15 2004 年 8 月の観測場所写真
・・・
84
付録図 16 2004 年 8 月 12 日 00:00 熱画像
・・・
85
付録図 17 2004 年 8 月 12 日 06:00 熱画像
・・・
85
付録図 18 2004 年 8 月 12 日 12:00 熱画像
・・・
85
付録図 19 2004 年 8 月 12 日 18:00 熱画像
・・・
85
付録図 20 2004 年 8 月 13 日 00:00 熱画像
・・・
85
付録表目次
付録表 1 2003 年 08 月 19 日 01 時~2003 年 08 月 19 日 24 時の気象状況
・・・
76
86
付録(解析データ等)
付録表 2 2003 年 08 月 20 日 01 時~2003 年 08 月 20 日 24 時の気象状況
・・・
87
付録表 3 2003 年 08 月 21 日 01 時~2003 年 08 月 21 日 24 時の気象状況
・・・
88
付録表 4 2003 年 08 月 22 日 01 時~2003 年 08 月 22 日 24 時の気象状況
・・・
89
付録表 5 2004 年 02 月 17 日 01 時~2003 年 02 月 17 日 24 時の気象状況
・・・
90
付録表 6 2004 年 02 月 18 日 01 時~2003 年 02 月 18 日 24 時の気象状況
・・・
91
付録表 7 2004 年 02 月 19 日 01 時~2003 年 02 月 19 日 24 時の気象状況
・・・
92
付録表 8 2004 年 02 月 20 日 01 時~2003 年 02 月 20 日 24 時の気象状況
・・・
93
付録表 9 2004 年 08 月 10 日 01 時~2003 年 08 月 10 日 24 時の気象状況
・・・
94
付録表 10 2004 年 08 月 11 日 01 時~2003 年 08 月 11 日 24 時の気象状況
・・・
95
付録表 11 2004 年 08 月 12 日 01 時~2003 年 08 月 12 日 24 時の気象状況
・・・
96
付録表 12 2004 年 08 月 13 日 01 時~2003 年 08 月 13 日 24 時の気象状況
・・・
97
付録表 13 東京都特別区内の幼稚園(国立,公立)の校庭面積試算結果
付録表 14 東京都特別区内の幼稚園(私立)の校庭面積試算結果
・・・
98
・・・
99
付録表 15 東京都特別区内の小学校(国立,公立)の校庭面積試算結果
付録表 16 東京都特別区内の小学校(私立)の校庭面積試算結果
・・・
100
・・・
101
付録表 17 東京都特別区内の中学校(国立,公立)の校庭面積試算結果
付録表 18 東京都特別区内の中学校(私立)の校庭面積試算結果
・・・
102
・・・
103
付録表 19 東京都特別区内の高等学校(国立,公立)の校庭面積試算結果
・・・
104
付録表 20 東京都特別区内の高等学校(私立)の校庭面積試算結果 ・・・
105
77
付録(解析データ等)
シンチレーション法の精度検証
従来の観測方法(バルク式)と本観測で使用したシンチレーション法の観測結果の比
較検証.本観測では,観測地点の代表的な風速を観測していなかったため,風速につい
て仮定して検証しているため本論ではなく付録として,精度検証を行った.精度検証を
行う項目として,シンチレーション法により直接観測をする顕熱フラックス(H)とし,
検証期間を観測データが充実している,2004 年 8 月 10 日~13 日の期間とした.
仮定条件として,代表的な風速として 1m,高知県後免気象台のアメダスによる風速
を使用して検証を行う.
バルク式で顕熱フラックス(H)を試算する式として以下の 6 式を用いる.
H = CpρCH (ts − t )U ・・・・・・(1)
Cp =
7
× 287.05 ・・・・・・(2)
2
⎛ 273.15 ⎞ ⎛ P ⎞ ⎧
⎛ e ⎞⎫
⎟×⎜
⎟ × ⎨1 − 0.378⎜ ⎟⎬ ・・・・・・(3)
⎝ 273.15 + T ⎠ ⎝ 1013.25 ⎠ ⎩
⎝ P ⎠⎭
ρ = 1.293 × ⎜
e = rh ×
eSAT
・・・・・・(4)
100
( 7.5×T )
eSAT = 6.1078 × 10
C
H
=
k
( 237.3+T ) ・・・・・・
(5)
2
ln⎛⎜ z ⎞⎟ × ln⎛⎜ z ⎞⎟
⎝ zT ⎠
⎝ z0 ⎠
・・・・・・(6)
ここで,H:顕熱フラックス,Cp:空気の定圧比熱,ρ:空気の密度,ts:芝生の表
面温度,t:気温,U:風速,P:気圧,e:水蒸気圧,rh:相対湿度,eSAT:飽和水蒸気
圧,CH:顕熱輸送に対するバルク輸送係数,k:カルマン係数(0.4),z:高さ(1.2),
z0,zT:観測場所の粗度(草地高さ 10cm)z0(0.01)
,zT(0.002)
顕熱フラックスを試算するには,はじめに式(2,3,6)を用いて,Cp:空気の定圧
比熱,ρ:空気の密度,CH:顕熱輸送に対するバルク輸送係数を求めてから,式(1)
に代入し,H:顕熱フラックスを求める.
78
付録(解析データ等)
顕熱フラックス(H)の試算結果を付録図 1 に示す.風速を 1m と仮定した場合は,シ
ンチレーション法に比べると非常に低い値を示している.後免気象台の風速を使用した
場合は,シンチレーション法と比べると日中は同じような値を示している.しかし,夜
間になると,シンチレーション法は,プラスの値を示しているが,バルク式の試算結果
では,マイナスの値を示している.これは,芝地の表面温度と気温の差がマイナスにな
った結果である.
従来の観測方法(バルク式)と本観測で使用したシンチレーション法の観測結果の比
較検証した結果,今回は日中に関してはバルク式,シンチレーション法ともに同じよう
な値を示していた.しかし,夜間の試算結果はプラス(シンチレーション法)とマイナ
ス(バルク式)という結果であった.このことから,本観測においては,日中の顕熱フ
ラックス(H)に関しては,非常に信用性が高いという結果になった.
風速1mと仮定
後免気象台風速
シンチレーション法
(W・m-2) 120
90
ッ
熱
フ 60
ラ
ク 30
ス
0
-30
0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00
8/10
8/11
8/12
8/13
付録図 1 2004 年 8 月 10 日~13 日のバルク式とシンチレーション法の
顕熱フラックス(H)の推移
79
(時間)
付録(解析データ等)
No.1(データ欠損)
No.2
No.3
平均
1
(
0.8
土
壌
水 0.6
分
)
伝
導 0.4
率
0.2
0
0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00 6:00 12:00 18:00 0:00
8/10
8/11
8/12
8/13
付録図 2 2004 年 8 月 10 日~13 日の土壌水分の推移
2003 年 8 月 20 日 12:00~21 日 12:00 の間の 6 時間ごとの表面温度変化
付録図 3 2003 年 8 月の観測場所写真
80
(時間)
付録(解析データ等)
付録図 4 2003 年 8 月 20 日 12:00 熱画像
付録図 7 2003 年 8 月 21 日 06:00 熱画像
付録図 5 2003 年 8 月 20 日 18:00 熱画像
付録図 8 2003 年 8 月 21 日 12:00 熱画像
付録図 6 2003 年 8 月 21 日 00:00 熱画像
81
付録(解析データ等)
2004 年 2 月 18 日 00:00~19 日 00:00 の間の 6 時間ごとの表面温度変化
付録図 9 2004 年 2 月の観測場所写真
82
付録(解析データ等)
付録図 10 2004 年 2 月 18 日 00:00 熱画像
付録図 13 2004 年 2 月 18 日 18:00 熱画像
付録図 11 2004 年 2 月 18 日 06:00 熱画像
付録図 14 2004 年 2 月 19 日 00:00 熱画像
付録図 12 2004 年 2 月 18 日 12:00 熱画像
83
付録(解析データ等)
2004 年 8 月 12 日 00:00~13 日 00:00 の間の 6 時間ごとの表面温度変化
付録図 15 2004 年 8 月の観測場所写真
84
付録(解析データ等)
付録図 16 2004 年 8 月 12 日 00:00 熱画像
付録図 19 2004 年 8 月 12 日 18:00 熱画像
付録図 17 2004 年 8 月 12 日 06:00 熱画像
付録図 20 2004 年 8 月 13 日 00:00 熱画像
付録図 18 2004 年 8 月 12 日 12:00 熱画像
85
付録(解析データ等)
2003 年夏期(8 月 19 日~22 日)の熱収支観測の気象状況
後免アメダス(高知県),緯度:北緯 33 度 35.4 分,経度:東経 133 度 38.6 分
付録表 1 2003 年 08 月 19 日 01 時~2003 年 08 月 19 日 24 時の気象状況
降水量
気温
風速
風向
日照時間
mm
℃
m/s
方角
h
時間
1:00
0
25
2
北
0
2:00
0
24.9
2
北北東
0
3:00
0
24.5
2
北北東
0
4:00
0
24
3
北北東
0
5:00
0
23.7
2
北東
0
6:00
0
23.4
1
北北東
0
7:00
0
24.7
2
北北東
1
8:00
0
26.5
1
北北西
1
9:00
0
28.1
1
南西
1
10:00
0
29.3
2
南東
0.9
11:00
0
30.1
2
南東
1
12:00
0
30.8
3
南南東
1
13:00
0
30.7
3
南南東
1
14:00
0
30.1
3
南
1
15:00
0
29.7
3
南
1
16:00
0
29.3
4
南
1
17:00
0
29.2
3
南
0.9
18:00
0
28
2
南
0.2
19:00
0
27.4
1
南東
0
20:00
0
27.2
1
東
0
21:00
0
26.4
1
北北西
0
22:00
0
25.8
2
北東
0
23:00
0
25.6
1
北東
0
0:00
0
25.3
2
北北東
0
降水量
平均気温
最高気温
最低気温
平均風速
日照時間
mm
℃
℃
℃
m/s
h
0
27.1
30.8
86
23.4
2
11
付録(解析データ等)
付録表 2 2003 年 08 月 20 日 01 時~2003 年 08 月 20 日 24 時の気象状況
降水量
気温
風速
風向
日照時間
mm
℃
m/s
方角
h
時間
1:00
0
24.9
2
北北東
0
2:00
0
24.5
2
北北東
0
3:00
0
23.9
1
北北東
0
4:00
0
23.7
1
北北東
0
5:00
0
23.2
2
北北東
0
6:00
0
23.2
1
北北東
0
7:00
0
24.8
1
北
1
8:00
0
27.4
0
静穏
1
9:00
0
28.2
0
静穏
1
10:00
0
30.2
1
南
1
11:00
0
30.9
3
南東
1
12:00
0
30.5
3
南
1
13:00
0
30.4
4
南南西
1
14:00
0
30.3
3
南
1
15:00
0
30.1
3
南南西
1
16:00
0
29.9
3
南
1
17:00
0
29.3
3
南
1
18:00
0
28.5
2
南南西
19:00
0
27.6
2
南
0
20:00
0
26.5
1
北北西
0
21:00
0
26
2
北東
0
22:00
0
25.5
2
北東
0
23:00
0
25.2
2
北東
0
0:00
0
24.9
1
東北東
0
0.9
降水量
平均気温
最高気温
最低気温
平均風速
日照時間
mm
℃
℃
℃
m/s
h
0
27.1
30.9
87
23.1
1.9
11.9
付録(解析データ等)
付録表 3 2003 年 08 月 21 日 01 時~2003 年 08 月 21 日 24 時の気象状況
降水量
気温
風速
風向
日照時間
mm
℃
m/s
方角
h
時間
1:00
0
24.5
2
北東
0
2:00
0
24.2
1
北北東
0
3:00
0
23.9
0
静穏
0
4:00
0
23.3
0
静穏
0
5:00
0
23.2
0
静穏
0
6:00
0
23.3
0
静穏
0
7:00
0
24.8
1
北西
0.9
8:00
0
27.6
1
南南西
1
9:00
0
29.1
1
南西
1
10:00
0
30.2
3
南南東
1
11:00
0
29.8
3
南
1
12:00
0
30.1
3
南南東
1
13:00
0
30.1
3
南南東
1
14:00
0
30.7
3
南南西
1
15:00
0
30.2
3
南
1
16:00
0
30.2
2
南
0.8
17:00
0
29.2
2
南
0
18:00
0
28.7
1
南南東
19:00
0
27.9
1
南東
0
20:00
0
27.1
1
北
0
21:00
0
26.5
2
北北東
0
22:00
0
26
1
北
0
23:00
0
25.3
1
北北西
0
0:00
0
25.4
1
北
0
0.2
降水量
平均気温
最高気温
最低気温
平均風速
日照時間
mm
℃
℃
℃
m/s
h
0
27.1
31.1
88
23.1
1.5
9.9
付録(解析データ等)
付録表 4 2003 年 08 月 22 日 01 時~2003 年 08 月 22 日 24 時の気象状況
降水量
気温
風速
風向
日照時間
mm
℃
m/s
方角
h
時間
1:00
0
24.8
1
北北西
0
2:00
0
24.5
1
北北西
0
3:00
0
24.4
0
静穏
0
4:00
0
24
1
北北西
0
5:00
0
24
1
北
0
6:00
0
24
1
北北西
0
7:00
0
25.7
1
西南西
0.8
8:00
0
27.4
1
西北西
1
9:00
0
29.6
0
静穏
1
10:00
0
31.4
1
南東
1
11:00
0
31.2
2
南東
1
12:00
0
31.7
3
南南東
1
13:00
0
31.6
3
南南東
1
14:00
0
31.8
3
南南東
1
15:00
0
30.8
4
南南東
1
16:00
0
30.5
3
南
1
17:00
0
29.9
1
南東
0.9
18:00
0
29.6
1
東南東
0.1
19:00
0
28.6
1
南東
0
20:00
0
27.5
2
北
0
21:00
0
26.8
1
北北東
0
22:00
0
26.3
1
北
0
23:00
0
26.3
2
北北東
0
0:00
0
25.7
2
北北東
0
降水量
平均気温
最高気温
最低気温
平均風速
日照時間
mm
℃
℃
℃
m/s
h
0
27.8
32
89
23.7
1.5
10.8
付録(解析データ等)
2004 年冬期(2 月 17 日~20 日)の熱収支観測の気象状況
後免アメダス(高知県),緯度:北緯 33 度 35.4 分,経度:東経 133 度 38.6 分
付録表 5 2004 年 02 月 17 日 01 時~2003 年 02 月 17 日 24 時の気象状況
降水量
気温
風速
風向
日照時間
mm
℃
m/s
方角
h
時間
1:00
0
2.4
1
北
0
2:00
0
1.7
1
北西
0
3:00
0
1.2
0
静穏
0
4:00
0
1.2
2
北北西
0
5:00
0
0.5
0
静穏
0
6:00
0
0
0
静穏
0
7:00
0
0.5
0
静穏
0
8:00
0
1.9
1
西南西
0.4
9:00
0
5.5
2
西南西
1
10:00
0
7.7
1
西南西
0.9
11:00
0
11
1
西南西
0.1
12:00
0
12.5
2
南西
0.8
13:00
0
14.2
2
東
0.8
14:00
0
15.3
2
南南東
0.5
15:00
0
15.1
3
北
0.2
16:00
0
16
4
西南西
0.7
17:00
0
15.4
3
西
0.4
18:00
0
13.6
1
西北西
0
19:00
0
10.2
0
静穏
0
20:00
0
9.9
2
北東
0
21:00
0
8.1
3
北北東
0
22:00
0
7.1
2
北東
0
23:00
0
8.3
3
北東
0
0:00
0
8.6
3
北
0
降水量
平均気温
最高気温
最低気温
平均風速
日照時間
mm
℃
℃
℃
m/s
h
0
7.8
16.6
90
0
1.6
5.8
付録(解析データ等)
付録表 6 2004 年 02 月 18 日 01 時~2003 年 02 月 18 日 24 時の気象状況
降水量
気温
風速
風向
日照時間
mm
℃
m/s
方角
h
時間
1:00
0
8.6
4
北
0
2:00
0
6.3
1
東
0
3:00
0
6
2
北東
0
4:00
0
4.6
3
北東
0
5:00
0
4.5
2
北北東
0
6:00
0
1
0
静穏
0
7:00
0
0.5
0
静穏
0
8:00
0
3.3
1
西
9:00
0
7.2
2
西南西
1
10:00
0
11.4
3
西南西
1
11:00
0
13.5
3
南西
1
12:00
0
14.6
3
南南西
1
13:00
0
15.6
3
南南西
1
14:00
0
16.5
3
南南西
1
15:00
0
16.8
4
南南西
1
16:00
0
15.5
3
南
1
17:00
0
15.3
2
南
1
18:00
0
13.3
1
南東
19:00
0
10.1
1
北
0
20:00
0
9.6
3
北北東
0
21:00
0
8
2
北北東
0
22:00
0
7.5
1
北東
0
23:00
0
5.3
1
北北西
0
0:00
0
4.4
0
静穏
0
0.7
0.4
降水量
平均気温
最高気温
最低気温
平均風速
日照時間
mm
℃
℃
℃
m/s
h
0
9.1
16.9
91
0.5
2
10.1
付録(解析データ等)
付録表 7 2004 年 02 月 19 日 01 時~2003 年 02 月 19 日 24 時の気象状況
降水量
気温
風速
風向
日照時間
mm
℃
m/s
方角
h
時間
1:00
0
3.6
1
西
0
2:00
0
2.9
1
北
0
3:00
0
3
0
静穏
0
4:00
0
1.8
1
西南西
0
5:00
0
1.6
0
静穏
0
6:00
0
2.7
1
南西
0
7:00
0
1.7
0
静穏
0
8:00
0
4
1
西
0.4
9:00
0
7.2
2
西南西
0.4
10:00
0
8.8
1
南西
11:00
0
11.2
2
西南西
0.3
12:00
0
14.6
0
静穏
0.4
13:00
0
16.1
3
南
0.4
14:00
0
16.9
2
南南西
0.8
15:00
0
16.8
2
南
16:00
0
16.4
2
南東
0.8
17:00
0
15.2
3
南
0.5
18:00
0
12.3
0
静穏
0
19:00
0
10.7
1
北
0
20:00
0
10.1
2
北北東
0
21:00
0
8
1
北北西
0
22:00
0
6.8
1
西南西
0
23:00
0
6
1
北
0
0:00
0
4.8
1
北西
0
0
1
降水量
平均気温
最高気温
最低気温
平均風速
日照時間
mm
℃
℃
℃
m/s
h
0
8.5
17.3
92
1.1
1.2
5
付録(解析データ等)
付録表 8 2004 年 02 月 20 日 01 時~2003 年 02 月 20 日 24 時の気象状況
降水量
気温
風速
風向
日照時間
mm
℃
m/s
方角
h
時間
1:00
0
4.2
0
静穏
0
2:00
0
4.9
1
北
0
3:00
0
2.9
1
西南西
0
4:00
0
4
1
西
0
5:00
0
4.3
3
北東
0
6:00
0
2.3
1
南西
0
7:00
0
2.2
1
北北西
0
8:00
0
4.6
0
静穏
9:00
0
9.2
1
西
1
10:00
0
13.5
1
西南西
1
11:00
0
16.7
1
南南西
1
12:00
0
17.5
1
南南西
1
13:00
0
18.4
3
南
1
14:00
0
17.8
4
南南東
1
15:00
0
17.9
3
南南西
1
16:00
0
17.5
3
南南西
1
17:00
0
16.4
2
南南西
1
18:00
0
14.3
1
南
19:00
0
12.3
1
北東
0
20:00
0
11
1
北
0
21:00
0
10.5
2
北北東
0
22:00
0
10.6
2
東北東
0
23:00
0
9.7
3
北東
0
0:00
0
8.7
1
北
0
0.8
0.4
降水量
平均気温
最高気温
最低気温
平均風速
日照時間
mm
℃
℃
℃
m/s
h
0
10.5
18.4
93
2.2
1.6
10.2
付録(解析データ等)
2004 年夏期(8 月 10 日~13 日)の熱収支観測の気象状況
後免アメダス(高知県),緯度:北緯 33 度 35.4 分,経度:東経 133 度 38.6 分
付録表 9 2004 年 08 月 10 日 01 時~2003 年 08 月 10 日 24 時の気象状況
降水量
気温
風速
風向
日照時間
mm
℃
m/s
方角
h
時間
1:00
0
25
1
北東
0
2:00
0
24.3
2
北
0
3:00
0
23.7
2
北
0
4:00
0
23.3
2
北東
0
5:00
0
23
1
北
0
6:00
0
23.1
2
北北東
0
7:00
0
24.4
2
北北東
0.7
8:00
0
26.3
2
北北東
1
9:00
0
28.9
1
東南東
1
10:00
0
29.1
1
東
1
11:00
0
30.7
3
南南東
1
12:00
0
29.8
4
南南西
1
13:00
0
30.5
3
南
1
14:00
0
29.3
3
南南東
1
15:00
0
29.6
3
南南東
1
16:00
0
29.5
3
南南東
1
17:00
0
29.3
2
南
0.4
18:00
0
28
3
南
0
19:00
0
27.6
1
南南東
0
20:00
0
26.6
2
北東
0
21:00
0
25.5
1
北東
0
22:00
0
25.1
2
北東
0
23:00
0
24.7
1
北東
0
0:00
0
24.1
2
北東
0
降水量
平均気温
最高気温
最低気温
平均風速
日照時間
mm
℃
℃
℃
m/s
h
0
26.7
31
94
22.9
2
10.1
付録(解析データ等)
付録表 10 2004 年 08 月 11 日 01 時~2003 年 08 月 11 日 24 時の気象状況
降水量
気温
風速
風向
日照時間
mm
℃
m/s
方角
h
時間
1:00
0
23.6
2
北北東
0
2:00
0
23.9
1
東北東
0
3:00
0
23.1
2
北北東
0
4:00
0
23.1
1
北
0
5:00
0
22.7
0
静穏
0
6:00
0
23
1
北北東
0
7:00
0
24.4
1
北北東
0.6
8:00
0
26.2
1
北
1
9:00
0
29
1
西北西
1
10:00
0
30.7
1
南西
1
11:00
0
31.6
3
南南西
1
12:00
0
30.9
4
南南東
1
13:00
0
30.5
4
南南東
1
14:00
0
30.5
3
南
1
15:00
0
30.3
3
南南西
1
16:00
0
29.8
3
南南東
0.7
17:00
0
28.9
3
南南西
0
18:00
0
28.2
2
南南西
0
19:00
0
27.9
1
南
0
20:00
0
27.8
0
静穏
0
21:00
0
26.4
1
北北西
0
22:00
0
25.8
2
北
0
23:00
0
25.7
1
東北東
0
0:00
0
24.4
1
北北西
0
降水量
平均気温
最高気温
最低気温
平均風速
日照時間
mm
℃
℃
℃
m/s
h
0
27
31.6
95
22.7
1.8
9.3
付録(解析データ等)
付録表 11 2004 年 08 月 12 日 01 時~2003 年 08 月 12 日 24 時の気象状況
降水量
気温
風速
風向
日照時間
mm
℃
m/s
方角
h
時間
1:00
0
24.2
0
静穏
0
2:00
0
23.7
0
静穏
0
3:00
0
23
0
静穏
0
4:00
0
22.7
1
北北西
0
5:00
0
22.4
1
北北西
0
6:00
0
22.5
1
北
0
7:00
0
24
0
静穏
8:00
0
25.8
2
西南西
1
9:00
0
28.6
1
南南西
1
10:00
0
29.7
1
南
1
11:00
0
30.1
3
南東
1
12:00
0
30.8
4
南
1
13:00
0
31.5
3
南
1
14:00
0
31
3
南南東
1
15:00
0
30.4
3
南南西
1
16:00
0
30.2
4
南南西
1
17:00
0
29.9
3
南
0.9
18:00
0
29
2
南
0.5
19:00
0
28.1
1
南南西
0
20:00
0
26.4
2
北北西
0
21:00
0
26
1
北北西
0
22:00
0
26.4
2
北東
0
23:00
0
25.8
2
北北東
0
0:00
0
25.2
2
北北東
0
0.7
降水量
平均気温
最高気温
最低気温
平均風速
日照時間
mm
℃
℃
℃
m/s
h
0
27
31.5
96
22.2
1.8
11.1
付録(解析データ等)
付録表 12 2004 年 08 月 13 日 01 時~2003 年 08 月 13 日 24 時の気象状況
降水量
気温
風速
風向
日照時間
mm
℃
m/s
方角
h
時間
1:00
0
24.6
1
北東
0
2:00
0
24.3
1
北
0
3:00
0
23.9
1
北北東
0
4:00
0
23.6
1
北北東
0
5:00
0
23.5
0
静穏
0
6:00
0
23.3
1
北東
0
7:00
0
24.5
1
西北西
8:00
0
26.7
1
南西
1
9:00
0
28.1
1
西北西
1
10:00
0
30.2
1
南南東
1
11:00
0
31.1
2
南
1
12:00
0
30.7
4
南
1
13:00
0
30.5
4
南
1
14:00
0
30.4
3
南
1
15:00
0
30.4
3
南
1
16:00
0
30.2
3
南
1
17:00
0
29.1
3
南
0.4
18:00
0
28.4
3
南
0
19:00
0
28.1
2
南南西
0
20:00
0
28
0
静穏
0
21:00
0
26.6
2
北北西
0
22:00
0
26.2
1
北
0
23:00
0
26
1
北北西
0
0:00
0
26.2
1
北北西
0
0.9
降水量
平均気温
最高気温
最低気温
平均風速
日照時間
mm
℃
℃
℃
m/s
h
0
27.3
31.2
97
23.1
1.7
10.3
付録(解析データ等)
付録表 13 東京都特別区内の幼稚園(国立,公立)の校庭面積試算結果
1 学級当たりの
園数
学級数
平均学級数
面積(m2)
面積(km2)
最低必要面積
特別区合計
211
628
2.98
398
84000
0.084
千代田区
8
27
3.38
430
3440
0.003
中央区
16
49
3.06
405
6480
0.006
港区
15
41
2.73
379
5680
0.006
新宿区
30
67
2.23
339
10160
0.010
文京区
11
42
3.82
465
5120
0.005
台東区
13
39
3.00
400
5200
0.005
墨田区
7
14
2.00
320
2240
0.002
江東区
20
71
3.55
444
8880
0.009
品川区
9
20
2.22
338
3040
0.003
目黒区
5
14
2.80
384
1920
0.002
大田区
9
18
2.00
320
2880
0.003
世田谷区
11
44
4.00
480
5280
0.005
渋谷区
7
14
2.00
320
2240
0.002
中野区
4
16
4.00
480
1920
0.002
杉並区
6
24
4.00
480
2880
0.003
豊島区
3
6
2.00
320
960
0.001
北区
8
16
2.00
320
2560
0.003
荒川区
8
23
2.88
390
3120
0.003
板橋区
2
6
3.00
400
800
0.001
練馬区
5
30
6.00
640
3200
0.003
足立区
3
6
2.00
320
960
0.001
葛飾区
5
12
2.40
352
1760
0.002
江戸川区
6
29
4.83
547
3280
0.003
注意:緑で囲ってある箇所は,国立と公立を足した数.
:青で囲ってある場所は,平均学級数が 3 以下である(校庭面積試算の際に使用した,式の条件が 3
学級以上の式『400+80×(学級数-3)』であるが,条件を満たして無くても 3 学級以上の式を使用して
試算した).
98
付録(解析データ等)
付録表 14 東京都特別区内の幼稚園(私立)の校庭面積試算結果
1 学級当たりの
園数
学級数
平均学級数
面積(m2)
面積(km2)
最低必要面積
特別区合計
581
3800
6.54
683
396960
0.397
千代田区
4
22
5.50
600
2400
0.002
中央区
1
3
3.00
400
400
0.000
港区
18
75
4.17
493
8880
0.009
新宿区
11
51
4.64
531
5840
0.006
文京区
17
76
4.47
518
8800
0.009
台東区
10
57
5.70
616
6160
0.006
墨田区
11
59
5.36
589
6480
0.006
江東区
12
99
8.25
820
9840
0.010
品川区
22
135
6.14
651
14320
0.014
目黒区
21
133
6.33
667
14000
0.014
大田区
49
343
7.00
720
35280
0.035
世田谷区
58
361
6.22
658
38160
0.038
渋谷区
17
78
4.59
527
8960
0.009
中野区
22
126
5.73
618
13600
0.014
杉並区
46
258
5.61
609
28000
0.028
豊島区
20
78
3.90
472
9440
0.009
北区
31
169
5.45
596
18480
0.018
荒川区
5
25
5.00
560
2800
0.003
板橋区
37
263
7.11
729
26960
0.027
練馬区
42
375
8.93
874
36720
0.037
足立区
55
410
7.45
756
41600
0.042
葛飾区
31
240
7.74
779
24160
0.024
江戸川区
41
364
8.88
870
35680
0.036
99
付録(解析データ等)
付録表 15 東京都特別区内の小学校(国立,公立)の校庭面積試算結果
1 校当たりの
学校数
生徒数
平均生徒数
面積(m2)
面積(km2)
最低必要面積
特別区合計
875
341039
390
3,898
3410390
3.410
千代田区
8
2789
349
3,486
27890
0.028
中央区
16
4327
270
2,704
43270
0.043
港区
19
5475
288
2,882
54750
0.055
新宿区
30
7989
266
2,663
79890
0.080
文京区
23
8792
382
3,823
87920
0.088
台東区
20
6285
314
3,143
62850
0.063
墨田区
28
8853
316
3,162
88530
0.089
江東区
43
16020
373
3,726
160200
0.160
品川区
40
11167
279
2,792
111670
0.112
目黒区
22
8340
379
3,791
83400
0.083
大田区
61
27765
455
4,552
277650
0.278
世田谷区
65
29995
461
4,615
299950
0.300
渋谷区
20
4989
249
2,495
49890
0.050
中野区
29
9540
329
3,290
95400
0.095
杉並区
44
17273
393
3,926
172730
0.173
豊島区
24
6833
285
2,847
68330
0.068
北区
40
11229
281
2,807
112290
0.112
荒川区
23
7059
307
3,069
70590
0.071
板橋区
55
21812
397
3,966
218120
0.218
練馬区
70
34104
487
4,872
341040
0.341
足立区
73
32846
450
4,499
328460
0.328
葛飾区
49
20963
428
4,278
209630
0.210
江戸川区
73
36594
501
5,013
365940
0.366
注意:緑で囲ってある箇所は,国立と公立を足した数.
100
付録(解析データ等)
付録表 16 東京都特別区内の小学校(私立)の校庭面積試算結果
1 校当たりの
学校数
生徒数
平均生徒数
面積(m2)
面積(km2)
最低必要面積
特別区合計
32
17307
541
5,408
173070
0.173
千代田区
3
1955
652
6,517
19550
0.020
中央区
0
0
0
0
0
0.000
港区
2
974
487
4,870
9740
0.010
新宿区
1
763
763
7,630
7630
0.008
文京区
1
708
708
7,080
7080
0.007
台東区
0
0
0
0
0
0.000
墨田区
0
0
0
0
0
0.000
江東区
0
0
0
0
0
0.000
品川区
1
247
247
2,470
2470
0.002
目黒区
2
990
495
4,950
9900
0.010
大田区
2
679
340
3,395
6790
0.007
世田谷区
7
3804
543
5,434
38040
0.038
渋谷区
3
1999
666
6,663
19990
0.020
中野区
1
461
461
4,610
4610
0.005
杉並区
3
1190
397
3,967
11900
0.012
豊島区
2
1417
709
7,085
14170
0.014
北区
2
1234
617
6,170
12340
0.012
荒川区
0
0
0
0
0
0.000
板橋区
1
715
715
7,150
7150
0.007
練馬区
1
171
171
1,710
1710
0.002
足立区
0
0
0
0
0
0.000
葛飾区
0
0
0
0
0
0.000
江戸川区
0
0
0
0
0
0.000
注意:青で囲ってある場所は,平均生徒数が 240 以下である(校庭面積試算の際に使用した,式の条件が
241 人以上 720 人以下の式『2400+10×(児童数-240)』であるが,条件を満たして無くても 241 人以上
720 人以下の式を使用して試算した).
101
付録(解析データ等)
付録表 17 東京都特別区内の中学校(国立,公立)の校庭面積試算結果
1 校当たりの
学校数
生徒数
平均生徒数
面積(m2)
面積(km2)
最低必要面積
特別区合計
417
133183
319
4,394
1832230
1.832
千代田区
5
1083
217
3,366
16830
0.017
中央区
4
1381
345
4,653
18610
0.019
港区
10
1653
165
2,853
28530
0.029
新宿区
13
3065
236
3,558
46250
0.046
文京区
14
3758
268
3,884
54380
0.054
台東区
7
2502
357
4,774
33420
0.033
墨田区
12
3701
308
4,284
51410
0.051
江東区
22
6653
302
4,224
92930
0.093
品川区
18
4497
250
3,698
66570
0.067
目黒区
12
2867
239
3,589
43070
0.043
大田区
28
10562
377
4,972
139220
0.139
世田谷区
33
10655
323
4,429
146150
0.146
渋谷区
8
1707
213
3,334
26670
0.027
中野区
14
3683
263
3,831
53630
0.054
杉並区
23
6493
282
4,023
92530
0.093
豊島区
10
2643
264
3,843
38430
0.038
北区
20
4779
239
3,590
71790
0.072
荒川区
10
2818
282
4,018
40180
0.040
板橋区
24
9009
375
4,954
118890
0.119
練馬区
35
13353
382
5,015
175530
0.176
足立区
38
13932
367
4,866
184920
0.185
葛飾区
24
8737
364
4,840
116170
0.116
江戸川区
33
13652
414
5,337
176120
0.176
注意:緑で囲ってある箇所は,国立と公立を足した数.
:青で囲ってある場所は,平均生徒数が 240 人以下である(校庭面積試算の際に使用した,式の条件
が 241 人以上 720 人以下の式『3600+10×(生徒数-240)』であるが,条件を満たして無くても 241 人以
上 720 人以下の式を使用して試算した)
.
102
付録(解析データ等)
付録表 18 東京都特別区内の中学校(私立)の校庭面積試算結果
1 校当たりの
学校数
生徒数
平均生徒数
面積(m2)
面積(km2)
最低必要面積
特別区合計
138
58366
423
5,429
749260
0.749
千代田区
14
6672
477
5,966
83520
0.084
中央区
1
35
35
1,550
1550
0.002
港区
11
6345
577
6,968
76650
0.077
新宿区
6
3287
548
6,678
40070
0.040
文京区
13
4820
371
4,908
63800
0.064
台東区
1
25
25
1,450
1450
0.001
墨田区
2
847
424
5,435
10870
0.011
江東区
1
166
166
2,860
2860
0.003
品川区
7
3641
520
6,401
44810
0.045
目黒区
6
1601
267
3,868
23210
0.023
大田区
1
215
215
3,350
3350
0.003
世田谷区
20
7509
375
4,955
99090
0.099
渋谷区
5
3504
701
8,208
41040
0.041
中野区
5
1549
310
4,298
21490
0.021
杉並区
9
4023
447
5,670
51030
0.051
豊島区
9
4966
552
6,718
60460
0.060
北区
9
2524
280
4,004
36040
0.036
荒川区
2
1014
507
6,270
12540
0.013
板橋区
6
3105
518
6,375
38250
0.038
練馬区
4
1322
331
4,505
18020
0.018
足立区
2
414
207
3,270
6540
0.007
葛飾区
2
299
150
2,695
5390
0.005
江戸川区
2
483
242
3,615
7230
0.007
注意:青で囲ってある場所は,平均生徒数が 240 人以下である(校庭面積試算の際に使用した,式の条件
が 241 人以上 720 人以下の式『3600+10×(生徒数-240)』であるが,条件を満たして無くても 241 人以
上 720 人以下の式を使用して試算した)
.
103
付録(解析データ等)
付録表 19 東京都特別区内の高等学校(国立,公立)の校庭面積試算結果
1 校当たりの
学校数
生徒数
平均生徒数
面積(m2)
面積(km2)
最低必要面積
特別区合計
226
79784
353
8,400
1898400
1.898
千代田区
15
2113
141
8,400
126000
0.126
中央区
3
1142
381
8,400
25200
0.025
港区
16
2444
153
8,400
134400
0.134
新宿区
8
1838
230
8,400
67200
0.067
文京区
23
4083
178
8,400
193200
0.193
台東区
4
3429
857
8,400
33600
0.034
墨田区
4
3940
985
8,400
33600
0.034
江東区
5
4737
947
8,400
42000
0.042
品川区
6
2405
401
8,400
50400
0.050
目黒区
13
3230
248
8,400
109200
0.109
大田区
8
3805
476
8,400
67200
0.067
世田谷区
31
6228
201
8,400
260400
0.260
渋谷区
8
2933
367
8,400
67200
0.067
中野区
6
3673
612
8,400
50400
0.050
杉並区
15
4358
291
8,400
126000
0.126
豊島区
12
1762
147
8,400
100800
0.101
北区
9
1673
186
8,400
75600
0.076
荒川区
3
1166
389
8,400
25200
0.025
板橋区
11
4533
412
8,400
92400
0.092
練馬区
10
5591
559
8,400
84000
0.084
足立区
8
6202
775
8,400
67200
0.067
葛飾区
3
3065
1,022
8,400
25200
0.025
江戸川区
5
5434
1,087
8,400
42000
0.042
注意:緑で囲ってある箇所は,国立と公立を足した数.
104
付録(解析データ等)
付録表 20 東京都特別区内の高等学校(私立)の校庭面積試算結果
1 校当たりの
学校数
生徒数
平均生徒数
面積(m2)
面積(km2)
最低必要面積
特別区合計
166
139040
838
8,400
1394400
1.394
千代田区
15
11582
772
8,400
126000
0.126
中央区
1
291
291
8,400
8400
0.008
港区
14
10075
720
8,400
117600
0.118
新宿区
7
5017
717
8,400
58800
0.059
文京区
20
11632
582
8,400
168000
0.168
台東区
2
1198
599
8,400
16800
0.017
墨田区
2
2453
1,227
8,400
16800
0.017
江東区
2
611
306
8,400
16800
0.017
品川区
6
6855
1,143
8,400
50400
0.050
目黒区
9
5831
648
8,400
75600
0.076
大田区
4
4823
1,206
8,400
33600
0.034
世田谷区
24
17954
748
8,400
201600
0.202
渋谷区
7
7731
1,104
8,400
58800
0.059
中野区
5
6084
1,217
8,400
42000
0.042
杉並区
11
10951
996
8,400
92400
0.092
豊島区
11
10238
931
8,400
92400
0.092
北区
8
7705
963
8,400
67200
0.067
荒川区
2
1429
715
8,400
16800
0.017
板橋区
7
6715
959
8,400
58800
0.059
練馬区
4
3399
850
8,400
33600
0.034
足立区
2
1460
730
8,400
16800
0.017
葛飾区
1
1545
1,545
8,400
8400
0.008
江戸川区
2
3461
1,731
8,400
16800
0.017
105
緑地(芝地)における,顕熱・潜熱について
~シンチレーション法を用いた現地観測~
高知工科大学大学院
高知工科大学大学院
高知工科大学
学生員
学生員
正会員
○森進一郎
馬渕 泰
村上雅博
1.はじめに
大都市の大気環境の一つの大きな特徴として,都市
として,シンチロメータを利用したシンチレーション法が
の気温が郊外と比較して高く,相対湿度が低くなるヒー
ある.今回使用したシンチロメータ(Sintec 製 SLS-40)は,
トアイランド現象が問題となってきている.都市の熱収支
50m~250m 離れた 2 地点間でレーザー光を送受信し,
(正味放射・顕熱・潜熱・地中熱流量)の実態を明らかに
乱流による大気の屈折率を検出することにより,長光路
するには,点から面(線)のレベルに観測範囲を広げるこ
の平均的な乱流状態を測定する事が出来る.この原理
とが求められており,シンチロメータを利用した観測方法
を利用して,顕熱・運動フラックスなどを算定する方法が
が検討されている.
シンチレーション法であり,顕熱は以下の式(1)(2)(3)で
本論の目的は.シンチロメータを用いて緑地(芝地)の
熱収支を夏期と冬期の二時期において観測し,芝地の
求められる.
(1)
H = −Cpρu*T・・・
*
−1 / 3
顕熱・潜熱を検討することである.
CT (Kz ) T*
2
2.観測の概要
2/3
観測は,高知工科大学のグランド脇の芝地を利用し,
夏期は 2003 年 8 月 19 日~22 日の 3 日間,冬期は 2004
εKzu*
年 2 月 17 日~20 日の 3 日間の観測を行った.周辺は
芝 地 の両 サ イドに樹 木 が植 栽 さ れ ている (図 -2.参
照) .
熱収支測定システム(シンチレーション法)を用いた観
−3
−2
2
⎧⎪
z
⎛ z ⎞ ⎫⎪
= 4 β 1 ⎨1 − 7 + 75⎜ ⎟ ⎬ ・・・(2 )
L
⎪⎩
⎝ L ⎠ ⎪⎭
−1
z⎞
z
⎛
= ⎜1 − 3 ⎟ − ・・・(3)
L⎠
L
⎝
H;顕熱,Cp;空気の定圧比熱,ρ;空気の密度,u*;摩擦
速度,T*;摩擦温度,CT ;温度の構造関数,K;カルマン
定数 0.4,z;シンチロメータの地表面からの高さ,
測項目は,顕熱フラックス・潜熱フラックス・地中熱フラッ
β1;Obukhov-Corrsin定数 0.86,L;モニン-オブコフ長,
クス・日射量・放射収支からなる (図-1.参照) .また,
ε;エネルギー消散率
芝地の表面温度を観測するために赤外線熱画像装置
その他の計測項目は以下の熱収支式(4)より求める.
(NEC 三栄製 TH5100)を使用した.
Rn = H + lE + G・・・(4)
3.シンチレーション法
Rn;正味放射,H;顕熱,lE;潜熱,G;地中熱流量
現在,熱収支を計測する方法は,計測地点(代表点)
正味放射・地中熱流量は,熱収支測定システムにより
の空間平均値により提案する方法が一般的である.しか
計測し,顕熱はシンチレーション法により算出し,残りの
し,都市の熱収支を把握するためには,その空間の代
潜熱は式(4)から算出する.
表的な熱収支が必要である.この問題を解決する方法
観測距離 60m
日射量
放射収支
気圧計
レーザー光発信
シンチロメータ
乾球温度
レーザー光受信機
温球温度
シンチロメータ
高さ 1.2m
地中熱流計
地中熱流計
図-1.熱収支観測装置・概要
計の温度差が夏期は,12:00 で約 10℃夜間は,ほとん
ど温度差はないが,冬期は 12:00 で約 16℃夜間も約
7℃と温度差があったため,地表面から上空への熱の対
流が盛んとなり,顕熱が高くなったと考えられる.(図-4.
気温(℃)
参照)
図-2. 夏期の観測風景
4.観測の結果と考察
2003/08/21
2003/08/21
700
Rn
G
H
lE
500
400
300
200
100
0
-100
0:00 3:00 6:00 9:00 12:00 15:00 18:00 21:00 0:00 時間
2004/02/17
2004/02/18
700
Rn
G
H
lE
熱流量(W m-2)
600
500
400
気温
表面温度
0:00
温度(℃)
熱流量(W m-2)
600
2003/08/21
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
-5
3:00
6:00
9:00 12:00 15:00 18:00 21:00 0:00 時間
2004/02/18
45
40
35
30
25
20
15
10
5
0
-5
気温
表面温度
0:00
3:00
6:00
9:00 12:00 15:00 18:00 21:00 0:00 時間
図-4.夏期と冬期の気温と芝地の表面温度
地中熱流量(G)には,夏期と冬期では大きな違いは
300
200
無かった.正味放射(Rn)は,夏期が約 700 W/m2に対
100
して冬期は約 300 W/m2と約 2 倍であった.
0
-100
0:00 3:00
6:00 9:00 12:00 15:00 18:00 21:00 0:00 時間
5.今後の課題
今回の観測では,芝地のみの熱収支観測であったた
図-3.夏期と冬期の熱収支
シンチレーション法を使った熱収支の結果を図-3 に示
め,夏期と冬期の比較のみしか行うことができなかった.
す.観測は,夏期の代表として 8 月 21 日,冬期の代表と
しかし,都市のヒートアイランド現象を検証するためには
して 2 月 18 日を取り上げる.熱収支の観測は,2 分ごと
多くの異なる地表面被覆(草木・樹木・アスファルト等)の
にデータを取得したが,結果をグラフとして表現するた
熱収支観測を行う必要がある.それらの地表面の熱収
めに 1 時間を平均したものを採用した.
支を把握することで,ヒートアイランド現象に対するクー
ヒートアイランド現象を緩和させるために効果の
ルアイランド効果を熱収支の視点から検証する方向性
ある,潜熱(lE)は,夏期と冬期を比べると,夏期のほう
を見いだすことができる.
が明 らかに冬 期 より高 い.12:00 を見 ると,夏 期 が約
参考文献
600W/m2に対し冬期は約 150W/m2と冬期の 4 倍程度あ
る.これは,夏期は日射量が多く,芝生の光合成が多く
行われることで出る蒸散効果が大きく関係していると考
えられる.
顕熱(H)は,夏期と冬期を比べた場合,夏期の顕熱の
ほうが冬期の顕熱より低い.12:00 を見ると,夏期が約
50W/m2に対し冬期は約 110 W/m2と約 2 倍である.これ
は,芝生表面と,地表面から高さ 1.2mに設置した温度
1) 近藤純正 (1994) 環境の気象学-地表面の水収支・
熱収支2) 日本農業気象学会 (1997) 新編農業気象学用語解
説集-生物生産と環境の科学3) 神田学・高柳百合子・横山仁・森脇亮 (1997) 銀座
オフィスビル街における熱収支特性,水文・水資源学会
誌,Vol.10 pp329-336
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