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子ども自らが見通しをもって課題解決できる学習過程の在り方

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子ども自らが見通しをもって課題解決できる学習過程の在り方
子ども自らが見通しをもって課題解決できる学習過程の在り方
第3学年
「明かりをつけてしらべよう」
高山市立北小学校
1
指導の立場
(1)主題設定の理由
3年生になり、子どもたちは初めて理科の学習をす
ることになった。4月6日の学級開きでは、理科が専
門の担任として子どもたちに理科好きになって欲しい
2
小森
邦弘
実践
(1)おもちゃを使った遊びとおもちゃづくりを取り
入れた単元指導計画の工夫
本単元を構成するにあたって、子どもたちにアンケ
ートをとり意識調査を行った。
という願いから、簡単な実験を演示して見せたところ、
子どもたちには、何となく理科は面白そうだという気
持ちを持たせることができた。
Q:理科の勉強は好きですか、きらいですか?
・大好き
・・・・・
11人
・好き
・・・・・
10人
観察、実験などを行い、問題解決の能力と自然を愛す
・ふつう
・・・・・
9人
る心情を育てるとともに自然の事物・現象についての
・きらい
・・・・・
1人
理解を図り、科学的な見方や考え方を養う。」とあり、
・大きらい
・・・・・
0人
理科の目標では、「自然に親しみ、見通しをもって
子ども一人一人に問題解決の力を培うためには、子ど
回答数
31人
も自らが見通しをもって課題解決できることが大切で
あると考える。
図1
アンケート結果1
そこで、3年生の「明かりをつけてしらべよう」の
単元において、子どもが自ら見通しをもって課題解決
できる学習過程の在り方を考え、実践を行った。
アンケートの結果を見ると理科が大好き・好きと答
えた児童が21人で全体の約3分の2を占め、残りの
約3分の1がふつうと答えており、嫌いと答えた児童
(2)研究の仮説
は、1人にとどまった。好きな理由としては、やはり
観察や実験が行えることを挙げており、理科の学習に
豆電球とスイッチを利用したおもちゃを使った
興味・関心が高いことが分かった。このことは、4月
遊びやおもちゃづくりを効果的に位置づけること
の学級開きで興味・関心を引いたことと、1学期の「草
で子ども自らが見通しをもって課題解決できるで
花の種をまこう 」「こん虫をそだてよう 」「草花のか
あろう。
らだをしらべよう」の単元で、観察したり、飼育・栽
培することに時間をかけたことに関係すると考えられ
る。そこで、さらに興味・関心を高め、単元を見通し
(3)研究の内容
た課題意識をもたせるために、豆電球とスイッチを利
①おもちゃを使った遊びとおもちゃづくりを取り入れ
用して作られたおもちゃを使った遊びを単元の導入と
た単元指導計画の工夫
②くらべて考えることを大切にした学習過程の工夫
して第1次に位置づけた。その活動で生まれた課題意
識の解決の場を、その後の学習過程の中で位置づけた。
第3学年「明かりをつけてしらべよう」単元指導計画
単元の目標
○豆電球と乾電池と導線をつないで電気の通り道ができると、豆電球の明かりがつくことが分かる。
○ものには、電気を通すものと通さないものがあり、電気を通すものは金属でできていることが分かる。
○電気の通り道にいろいろなものをつなぐと、金属と金属でないものを見分けられることが分かる。
ね
ら
い
学
習
活
動
第
1
次
お
も
ち
ゃ
で
遊
ぼ
う
○豆電球とスイッチを利用して作ら
れたおもちゃに興味や関心をもって
①② 豆電球を使ったおもちゃで遊ぼう
遊び、どうすれば明かりがつくのか
疑問をもつことができる。
・どうやったら明かりがつくのかな。
・明かりがついたり消えたりするのはどうしてかな。
・自分でもおもちゃを作ってみたいな。
・ここにさわると明かりがつくのかな。
・どんなしくみになっているのかな。
第
2
次
明
か
り
を
つ
け
よ
う
○豆電球と導線と乾電池を使って豆
電球に明かりがつく場合とつかない
③④ 豆電球と乾電池と導線をつないで豆電球に明か
場合を調べることを通して、乾電池
りをつけてみよう
の+極、豆電球、乾電池の−極を導
線で1つの輪のようにつなぐと明か ・乾電池の+極と−極につなぐと明かりがつきそうだ。
りがつくことが分かる。
・+極と+極、−極と−極につないでも明かりはつかない。
・一つの輪になるようにつなぐと明かりがつきそうだ。
第
3
次
ス
イ
ッ
チ
を
作
ろ
う
○電気の通り道にいろいろなものを
つないだとき、電気を通すものと通
⑤⑥ 電気の通り道に他のものをつないでも豆電球に
さないものがあることが分かり、電
明かりはつくだろうか。
気を通すものは金属でできているこ
とが分かる。
・電気を通し明かりがつくものと、電気を通さず明かりが
つかないものがある。
○電気を通すものと通さないものを ・いろいろしらべてみよう。
組み合わせてスイッチを作ることが ・金属でできたものは電気を通す。
できる。
・金属でできていないものは電気を通さない。
第
4
次
お
も
ち
ゃ
を
作
ろ
う
○スイッチを工夫して豆電球を使っ
たおもちゃを作ることができる。
⑦
スイッチを工夫して作ろう。
⑧
おもちゃづくりの計画を立てよう
・スイッチを工夫しておもちゃを作ろう。
・スイッチをうまく生かしておもちゃを作ろう。
⑨⑩
図2
おもちゃづくりをしよう。
単元指導計画
おもちゃを使って遊ぶことを導入に取り入れたこと
で、子どもたちは、豆電球に明かりをつけることに興
味をもつことができた。特に、理科がきらいと事前調
査で書いていたM子も、積極的におもちゃで遊び、真
剣な目でやる気を見せていた。
おもちゃを使った遊びを取り入れることで次のよう
な疑問や課題が生まれてきた。
・どのようにしたら豆電球に明かりをつけること
ができるだろうか
・明かりがついたり消えたりするのはどうしてだ
ろうか
・箱の中(乾電池、導線、豆電球の接続部分をブ
ラックボックスにした)が、どうなっているか
調べてみたい。
・自分もおもちゃを作ってみたい。
子どもの中から生まれてきた疑問や課題を、教師が
写真2
M子が作ったおもちゃ
おもちゃづくりでは、計画の時間も入れ3時間の時
整理し方向付けることで、子どもが、本単元で何を学
間を割り当てた。これは、子どもたちに考える時間と、
習し、解決していけばよいかの見通しをもつことがで
制作する時間を十分に与えたいと考えたからである。
きたと考えられる。
そうすることによって子どもたちは、より満足のいく
このことから、豆電球やスイッチを使ったおもちゃ
おもちゃを仕上げることができた。
で遊ばせる活動を導入に取り入れたことは、子ども自
このおもちゃづくりで大切にしたいのが、スイッチ
らが見通しをもって課題解決することに有効にはたら
をうまく工夫することである。そのために、子どもた
いたと考えることができる。
ちに導入の遊びですでにスイッチを体験させた。そし
て、豆電球に明かりがつくわけを知り、金属でできた
ものは電気を通し、金属以外でできたものは電気を通
さないことを学習する過程を位置づけた。そこで学習
したこのような性質を有効に生かしてスイッチを工夫
したおもちゃづくりを行わせたいと考え、単元の最後
におもちゃづくりを位置づけた。
子どもたちは、学習したことを生かし、電気を通す
ものと通さないものを組み合わせてスイッチを工夫し
たり、クリップやくぎを使って金属どうし接すること
で電気が流れるようにスイッチを工夫した。
理科がきらいだと書いていたM子も、自分なりにス
イッチを工夫をして、おもちゃを完成させることがで
きた。
写真1
おもちゃで遊ぼう
(2)くらべて考えることを大切にした学習過程の
工夫
アンケート結果2を見てみると、Q1では、事前調
査で理科の勉強が、大好き・好きと回答した子どもが、
3年生の学習では、くらべて考えることが大切であ
全体の約3分の2であったものが、事後調査では、全
る。本単元の学習においてもくらべて考えられるよう
体の9割を占めるまでにもなっている。変動の内訳を
課題を工夫した。
見てみると、
第2次「明かりをつけよう」では、豆電球と乾電池
意識の上昇が見られたもの
と導線を使って明かりのつくつなぎ方と明かりのつか
・好き
→
大好き
2人
ないつなぎ方を調べ、それぞれのつなぎ方をくらべる
・ふつう
→
大好き
3人
ことで、明かりのつくつなぎ方は、乾電池の+極を豆
・ふつう
→
好き
4人
電球につないだ導線の一方とつなぎ、もう一方の導線
・きらい
→
ふつう
1人(M子)
を−極とつないで一つの輪にすると明かりがつくとい
意識の下降が見られたもの
うことをよりはっきりさせることができた。
大好き
→
好き
4人
第3次「スイッチをつくろう」では、電気を通すもの
という結果が得られたが、全体として意識があがって
と通さないものを調べ、それぞれの共通点と相違点を
いるととらえることができる。特に、事前調査では理
くらべることで、金属でできているものは電気を通す
科がきらいと回答していたM子は、好きとまではいか
ということを明確にすることができた。
なかったが、ふつうとなり意識の上昇が見られた。
くらべて考える過程を位置づけることで、子どもた
ちは、共通点や相違点を見つけようと、見通しをもっ
また、Q2においても、どちらとも言えないと回答
していたもの4割が好きと意識の上昇が見られた。
て課題解決できた。
これらのことから、研究内容の①と②で示したこと
が、有効にはたらき、子どもが自ら見通しをもって課
(3)考察
題解決できたのではないかと考えられる。
事前のアンケートと単元終了後に行ったアンケート
を比較してみると次のようになった。
3
成果と課題
(1)成果
Q1:理科の勉強はすきですか、きらいですか?
事前調査
事後調査
○おもちゃを使った遊びを単元の導入に位置づけた
ことで、豆電球に明かりをつけることに興味を持
大好き
11
12
ち、見通しをもって意欲的に学習に取り組むこと
好き
10
16
ができた。
ふつう
9
3
○明かりがつくつなぎ方とつかないつなぎ方をくら
きらい
1
0
べて考えることで明かりがつくつなぎ方を明確に
大きらい
0
0
とらえることができた。
Q2:2つのこと(もの)をくらべて、同じこと
やちがうことを調べたりすることは好きですか?
事前調査
好き
きらい
どちらとも言えない
事後調査
(2)課題
●電気を通すものは、金属でできているという共通
11
17
点はとらえることができた。しかし、電気を通さ
5
5
ないものについては、それぞれが電気を通さない
15
9
ものであることは調べたが、金属でできていない
(回答数31人)
ものであるという共通点をとらえることは、難し
かった。
図3
アンケート結果2
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