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ITU-T TSAGの活動状況

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ITU-T TSAGの活動状況
グローバルスタンダード最前線
ITU-T TSAGの活動状況
ひらまつ
ゆ き お
平松 幸男
NTT知的財産センタ
TSAG(Telecommunication
Standardization Advisory Group)
報として提供されます.以下に各事項
定を行います.
・SGの作業方法の改善に関する事
はITU-Tの各SG(Study Group)に
項(WTSA 決議およびAシリーズ
横断的な事項を検討するグループで
勧告の拡張)
す.ここでは2001∼2004年会期にお
けるTSAGの活動状況を紹介します.
TSAGの位置付け,
TSAGの位置付け,役割および構成
役割および構成
T S A G は図1に示すように4年ご
と に開 催 されるW T S A ( W o r l d
Telecommunication Standardization
Assembly)の下に各S Gと並列に位
置付けられており,ITU-T 局長および
各 S Gに対して,標準化活動 の管理運
・SGの標準化作業計画およびこれ
に関する2001∼2004年会期の主な活
動状況を紹介します.
作業方法の改善
作業方法の改善
に関するSG間の調整
・EDH(Electric Document Handling)
,
I T 関 連 技 術 の急 速 な進 歩 と外 部
すなわち電子的文書取扱い方法お
フォーラム・コンソーシアムの活発化
よび ITU-Tのプロモーション活動
によりITU-Tの作業 の効率化が一層
・ITU-Tの戦略の策定と実行に関
求められています.2001∼2004年会
期初 めより,規制・政策事項を含ま
する事項
・ITU-Tと他組織との協力・協調
ない技術的な勧告の承認をWeb掲載
により行 う代 替 承 認 手 続 き, A A P
関係の促進
( Alternative Approval Process)
・ITU-Tの財政状況の改善
TSAGの構成は図2のとおりです.
の適用が始まりました.これにより従
営面に関する各種の助言を行うことを
このほかにI T U - T 局 長 直 轄 のI P R
来9カ月を要していた勧告の承認が平
役割としています.TSAGは各SGと
(Intellectual Property Rights)ア
均2カ月ほどでできるようになりまし
同様,約9カ月周期で開催され,次
ドホック会議が通常 TSAGの直前に開
た.本年6月時点まで,合計 750を超
のような事項に関する勧告や助言の策
催され,その結果が T SAGに参考情
える勧告がAAPにより承認されていま
WTSA
決議案の策定
TSAG
SG2
SG3
(管理運営側面)(サービス,オペレーション)
(料金)
(標準化推進のための体制と作業計画の決定)
・・・
図1 TSAGの位置付け
NTT技術ジャーナル 2004.11
SSG
(データ網と電気通信ソフトウェア) (IMT-2000とその将来)
SGへ助言
68
SG17
でASN.1 (Abstract Syntax NotaTSAG
WP1(Working Party1)
・ITU-Tの標準化活動に関する助言
議 長:Mr.Gary Fishman
(Lucent Technologies,米)
副議長:Mr. Stewart Alexander
(BT,英)
副議長:Mr. Nabil Kisrawi(シリア)
副議長:Mr. Andrea Macchioni(伊)
副議長:Mr. Oleg Mironnikov(露)
副議長:Dr. Ki-Shik Park(韓)
副議長:Mr. Aboubakar Zourmba
(カメルーン)
・作業方法
議長:Mr. Stewart Alexander(BT,英)
tion One)の作業分担が問題となり
T S A G にて調整の結果,2 0 0 1 年9月
に両S G が併合され S G 1 7 (データ網
と電気通信ソフトウェア)が設立され
WP2
・作業計画
議長:Mr. Jacques Boulvin(仏)
WP3
ました.また米国テロを背景としてセ
キュリティやTDR(Telecommunications for Disaster Relief and
・EDH およびプロモーション
議長:Dr. Ki-Shik Park(韓)
Mitigation)に関するSG横断的な検
討 体 制 が 整 備 されました. 2 0 0 1 ∼
WP4
2 0 0 4 年 会 期 の 後 半 になりW T S A -
・戦略
議長:Mr. Nabil Kisrawi (シリア)
副議長:Mr. Oleg Mironnikov (露)
C&C(Cooperation and Coordination)
・他組織との協力・協調
議長:Mr. Andrea Macchioni (伊)
2004に近づくとSG再編の議論が活発
化しました.最大の焦点は次会期の最
重 要 課 題 になると想 定 されるN G N
(Next Generation Network)の検
討体制,特にNGNを推進するSGが
分担する作業の範囲です.表1に現
財政
・財政
議長:Mr. Eckart Lieser(独)
図2 TSAG の構成(2001 ∼ 2004 年会期)
在のSG構成と来会期に向けた再編の
動向を示します.
EDHおよび
EDHおよびプロモーション活動
プロモーション活動
す.また日本や豪州の提案に基づき
ラムやコンソーシアムにおける作業方
これらの活動についてはTSAGと各
ITU-Tの作業をさらに効率化するため
法をベースとした提案であり,ITU-T
SGとの間で密接な協調を図りながら
に次のような事項が2001∼2004年会
の作業方法をフォーラムやコンソーシ
進められました.以下にそれぞれの活
期に検討されました.
アムのそれと整合させることにより,こ
動状況を示します.
・勧告に代わる規範的な出力ドキュ
れらの外部標準化組織との間でより効
■E D H
メント,
「技術仕様書(Technical
率的な協力・協調関係を実現しやす
2001∼2004年会期中にITU本部や
Specification)」の追加,およ
くする意図がありました.しかし,最
会 議 室 等 に有 線 L A N に加 えて無 線
び投票を含む技術仕様書の承認
初の2つの提案については必要性が不
LANが設置されたことにより,会合文
プロセスの提案
明確であるとして承認されず,最後の
書を即時にダウンロードすることが容
・課題(Question)に代わる,プ
2つについてもTSAGでは承認に至ら
易になりました.これを受けて各SGで
ロジェクト的な作業計画の枠組み
ず,アジア太平洋地域各国の共同提案
は作業のペーパレス化が進められまし
としての「標準化提案書」の提案
として本年10月のW TSA-2004に再度
た.またSSGをはじめいくつかのSG
・課題の新設,削除手続きの迅速化
提案することになりました.課題の新
においてはWebベースの討論ツールを
・SG間の協調をプロジェクト的に
設手続きの迅速化については一部合意
用いて中間ラポータ会合を電子的に実
される見通しです.
施する試みも始まりました.このよう
推進する「プロジェクトグループ」
あるいは「協調グループ」の提案
・コンセンサスによる勧告承認プロ
な経験を基に,勧告A.9(SSGの作業
作業計画
セスにおいて生ずる可能性がある
方法)が改訂されるとともにSGごと
にEDHガイドラインも作成されました.
1主管庁だけによる拒否権行使
2001∼2004年会期の初 頭 , S G 7
さらに,勧告やSG会合の文書を無
の防止方法(少数の主管庁の反
(データ網とオープンシステム通信)と
償でダウンロード可能とするべきかど
SG10(電気通信システムのための言
うかが検討され,前者については1つ
語と一般的ソフトウェア側面)との間
のEメールアドレス当り3件までダウ
対があっても承認可とする)
これらはいずれもITU-Tの外のフォー
NTT技術ジャーナル 2004.11
69
グローバルスタンダード最前線
表1 現在のSG構成と来会期に向けた再編の動向
現SG
役 割
再編動向
SG2
運用的側面からのサービス提供,
網および性能
案1:継続(オペレーション課題をSG4に移管)
案2:現状のまま継続
案3:SG4と併合
現状のまま継続
SG4
TMNを含む電気通信管理
案1:継続(SG2のオペレーション課題を統合)
案2:現状のまま継続
案3:SG2と併合
SG5
電磁気妨害からの通信設備の防護
現状のまま継続
SG6
屋外設備
現状のまま継続
SG9
統合広帯域ケーブルおよび
テレビジョン,音声伝送
現状のまま継続
信号要求条件とプロトコル
案1:現状のまま継続
案2:SG13のNGN関連課題と併合
(NGN-SG新設)
SG11
SG12
SG13
め関連組織・グループに助言を行って
います.特に,戦略計画と運用計画お
よび財政計画との間のリンクをとるこ
との重要性,将来のITU-Tの活動を
外部フォーラムやコンソーシアムに対
電気通信の経済的および政策的事
項を含む料金原則
SG3
な修正事項についてITU-T局長をはじ
して競争力を保てる分野に重点化する
必要性等を指摘しました.また理事
会,全権委員会等ITUの上部会合の
動向について情報共有を進め,メンバ
からの 新 提 案 を 呼 び 掛 けています.
2001∼2004年会期後半では発展途上
国 のI T U - T 活 動 を支 援 するW T S A -
網および端末のエンド・エンドの
伝送性能
継続(SG13の品質関連課題を吸収)
マルチプロトコルおよびIPに基づ
く網とその相互接続
案1:継続(SG17データ網課題の一部を吸収,
品質課題,イーサネット課題を他SGに
移管)
案2:案1に加えNGN関連課題をSG11と統合
(NGN-SG新設)
2004決議案,将来の標準化動向を見
極めるための新グループの提案などが
検討されました.
協力と協調
協力と協調
SG15
光伝送網およびその他の伝送網
継続(SG13のイーサネット課題,SG17のデー
タ網課題の一部を吸収)
SG16
マルチメディアサービス,システ
ムおよび端末
継続(SG15の網信号処理課題を吸収)
SG17
データ網と電気通信ソフトウェア
継続(データ網課題の一部をSG13,SG15へ移管)
SSG*
IMT-2000とその将来
案1:現状のまま継続
案2:SG11,SG13のNGN関連課題と統合
(NGN-SG新設)
TSAG
電気通信標準化アドバイザリーグ
ループ
ITU-Tの各 SGと外部標準化組織と
の間で作業を適切に分担するための協
力,協調の方法が次の勧告に規定さ
れています.
・勧告A.4(ITU-Tとフォーラム・コ
ンソーシアムとの間の通信手順)
・勧告A.5(ITU-T 勧告において他組
織 の文書を参照するための一般的
手順)
・勧告A.6(ITU-Tと国内および地域
の標準化組織との間の協力と情報
現状のまま継続
*Special Study Group on IMT-2000 and beyond
交換)
勧告A.4およびA.6ではそれぞれフォー
ンロード可能とする試みが始まりまし
等)の作成が進められました.また
ラム・コンソーシアム,国内/地域標
た.後者については著作権の問題もあ
ITU-Tメンバ以外の参加者を交えて広
準化組織との間の協力・協調関係を
り継続検討中になっています.なお,
く意見交換し,将来の標準化課題を明
開始するまでのプロセスが規定されて
次会期よりEWM(Electric Working
確化する目的でNGN,セキュリティ,
おり,勧告A.5では外部標準化組織に
Method)という用語に変更すること
IMT-2000をはじめ合計4 8に及ぶ各
おいて策定された規格類をITU-T 勧告
が合意されました.
種のワークショップが開催されました.
の中で規範的に参照するための手順が
■プロモーション
重要な標準化作業結果を広く世の
規定されています.2001∼2004年会
戦 略
中に普及させS G活動への参加を促
期中 勧 告 A . 4 からA . 6 に対 応 した 協
力・協調対象の組織が増え続け,現
すことを目的とし,重要勧告承認時の
ITUの最高決定機関である全権委
在は表2に示す組織と協力・協調関
ニュースリリース,勧告内容を紹介す
員会において策定された標準化戦略に
係が確立しています.勧告A.4および
るパンフレット(xDSL,セキュリティ
基づき,ITU-Tの活動を評価し必要
A.6には協力・協調関係を確立するた
70
NTT技術ジャーナル 2004.11
ポリシーの整合性(全世界非差別等)
表2 勧告A.4,A.5,A.6の資格が認められた外部標準化組織
勧告A.4
勧告A.5
勧告A.6
ASN.1 Consortium
ARIB
ARIB
ATSC
ATIS
ATIS
ATM Forum
ATM Forum
BSI
DSL Forum
ATSC
CEA
ETIS
BSI (British Standards)
CCSA
IMTC
CCSA
ECMA-SICS
は重 要 な項 目 です. 例 えば, O M A
(Open Mobile Alliance)の場合,
IPRポリシーが整合しないという理由
から現在は懸案になっています.
財政
財 政
IPDR Organization
DSL Forum
ETSI
IPv6 Forum
ECMA-SICS
IEEE
MEF
ETSI
JCTEA
MPLS/Frame Relay
IEEE
NIST
会において来会期のITU-Tの予算が約
Alliance
ISOC/IETF
SCTE
8%削減され,活動の一層の効率化
MSF
JCTEA
SMPTE
OASIS
MEF
が求められることになりました.これを
TIA
OIF
MPLS/Frame Relay
TTA
TTC
2002年10月に開催された全権委員
受けて,2001∼2004年会期途中から
財政アドホックグループが設立され,
OMA
Alliance
OMG
NIST
SDL Forum Society
OASIS
SDL-TFC
OIF
TM Forum
OMA
会での決定を受けて2005年1月より
OMG
公用語が5カ国語(英語,フランス
SCTE
語,スペイン語,ロシア語,中国語)
W3C
TIA
予算の効率的な活用方法について検討
が進められています.特に,全権委員
TM Forum
からアラビア語を含めた6カ国語に増
TTA
えることを踏まえて,予算の中で大き
TTC
な割合を占める通訳および翻訳コスト
W3C
ARIB: Association of Radio Industries and Businesses
ATIS: Alliance for Telecommunications Industry Solutions
ATSC: Advanced Television Systems Committee
CCSA: China Communications Standards Association
CEA: Consumer Electronics Association
ECMA-SICS: ECMA Standardizing Information and Communication Systems
ETIS: E-and Telecommunication Information Services
ETSI: European Telecommunications Standards Institute
IEEE: Institute of Electrical and Electronics Engineers
ISOC/IETF: Internet Society/Internet Engineering Task Force
JCTEA: Japan Cable Television Engineering Association
MEF: Metro Ethernet Forum
MSF: Multiservice Switching Forum
NIST: National Institute of Standards and Technology
OIF: Optical Internetworking Forum
OMA: Open Mobile Alliance
OMG: Object Management Group
SCTE: Society of Cable Telecommunications Engineers
SDL-TFC: SDL Task Force Consortium
SMPTE: Society of Motion Picture and Television Engineers
TIA: Telecommunications Industry Association
TM Forum: Tele Management Forum
TTA: Telecommunications Technology Association
TTC: Telecommunication Technology Committee
W3C: World Wide Web Consortium
めに相手組織が満足するべき基準が8
グローバル性,メンバシップと作業方
項目示されています.このうち組織 の
法のオープン性・公平性,およびI P R
をいかに削減するかが重要な課題に
なっています.
おおわりに
わりに
ここでは本 年 7 月 に開 催 された
TSAG会合までの結果を基に記述しま
した.したがって,本年10月に開催さ
れたW TSA-2004の結果によりSG再
編や作業方法の動向をはじめいくつか
影響を受ける項目もあることを承知し
ていただきたいと思 います. 2001∼
2004年会期のTSAG活動を総括しま
すと残念ながらITU-Tの改革が十分に
進んだとは言いがたい状況です.日本
としては来会期も引き続きTSAGにお
いてITU-T活動の効率化に向けた提案
を継続することが重要です.
NTT技術ジャーナル 2004.11
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