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丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号(通号 159 号)2009 年 11 月 10 日
ISSN 1883-5767
発行 / 丸善株式会社 発行人 小城武彦
第 7・8 合併号
対談
根
本
彰
常世田
良
根本
あの本を書いた頃は、例の﹁無料
貸本屋批判﹂があって、かなり生々しい
出版と読者、図書館
豊
田
高
広
︵聞き手︶
静岡市立御幸町図書館長
東京大学大学院教授
日本図書館協会事務局次長
﹁公共図書館を考える﹂
公共図書館の将来に、課題の分析、解
の目線で再構築し、行政政策の視点から、
を捉えようと書きました。著作者、出版
議論があったところで、自分なりにそれ
決への取組みに向け、根本彰氏、常世田
誰のための図書館であるかに語っていた
況 の 問 題 で す。 根 本 先 生 が、﹃ 続・ 情 報
豊田 情勢として、二つポイントを用意
させていただきました。一つは、出版不
として燻っていることがあるのかなと認
まっているように見えるけれども、依然
いう話だったと思います。その後矛が収
サービス﹂として何処までやるべきかと
良氏に対談をお願い致しました。利用者
だきました。聞き手は豊田高広氏です。
界の人達、あるいは書店関係者は、文芸
基 盤 と し て の 図 書 館 ﹄︵ 勁 草 書 房、 平 成
識しています。
書 の 複 本 提 供 に か な り 警 戒 的 で、﹁ 公 共
十六年︶の中で、出版との関わりにおい
いが図書館界で十分に認識されていない
私が一番思うのは、出版と図書館の違
て図書館の果たすべき役割をべきか問う
ておられる訳ですが、今の出版状況での
お考えを伺いたいと思います。
版界がマスマーケット化した時代に、同
時に図書館も貸出を中心としたサービス
ということです。1970年代以降、出
を展開することで、同じ土俵に乗ったと
もう一つは、地方分権の動きは更にこ
す。その中で、図書館がもっと重視され
いうことだと思うんです。市場原理の出
れから進んでいくんじゃないかと思いま
ても良いんじゃないかと個人的には思う
は、貸出は一つの戦略として重要だった
んですがいかがでしょうか。この二つに
と思うんですが、それが切り替えられず
版と公共サービスの図書館が同じ土俵で
さっそくですけれど、出版の状況と公
ついて、それぞれお考えを伺えればと思
共 図 書 館 と い う こ と で、
﹃ 続・ 情 報 基 盤
に、そのまま来たところに問題があるよ
やることの難しさがそこにあります。私
としての図書館﹄以後の変化についてお
うに思います。
います。
願いします。
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号(通号 159 号)
1
豊田
図書館なりの新しい役割が、在り
そうですね。
あと、ウェブ書店みたいなものが、か
なり出てきていますが、その辺りは図書
館との関係でお考えはありますでしょう
常世田
私は、読者と出版流通の位置関
係が少し変わって来てるんじゃないかと
しょうか。
豊田 常世田さんは、出版の今の状況と
の関わりで図書館をどのようにお考えで
います。
のは当然です。
書館もフロー中心でやれば批判を受ける
のストック機能を生かすべきなのに、図
なっていったのです。だからこそ図書館
内部で持っていたストック作用がなく
の 後 出 版 点 数 が ド ン ド ン 増 え る こ と で、
る必要があるんじゃないかと思うんです。
読者の質の変化についてもう少し研究す
な明らかに類似の行動が出てきています。
もかく最初に中央館に行っちゃうみたい
動図書館なんか全然人が集まらない。と
移動図書館が皆喜んで来たのに、今は移
ストックもフローも無い図書館がまだ日
常世田
建 物 が 狭 い し、 ド ン ド ン 廃 棄 し
な い と 新 し い 本 が 買 え な い と い う 状 況、
出版流通の過程で一番川上の版元でのス
庫 を も て な く な っ て き て し ま っ て い る。
優良版元でも、もう2年ぐらいしか在
ウンターに立ってると、ある程度テーマ
ト ッ ク 機 能 は、 著 し く 減 少 し つ つ あ る。
年間位図書館のカ
を持って本を探す人が増えてきているよ
本ではかなりあるんじゃないかと見てい
昔は、版元も在庫をしっかり 年とか
思います。僕なんか
うな気がするんですよ。
ます。ストックといってもストックの中
たかって言うと、まず生産調整をした上
ない。 年も前の本が未だ並んでいると
身は酷くて、コレクションにもなってい
本市場でも回転していた。だから図書館
年とか持っていたし、それがちゃんと古
バブル以降、一般的な産業界は何をし
で、徹底的に市場調査、消費者ニーズの
10
研究をしたわけだけれども、出版界はほ
いう図書館は、ストックでもフローでも
いたので、かなり専門的な本でも手に入
がなくても、かなり出版点数が限られて
ちゃっていると、本当にストックでキチ
れることが出来た。それがなくなって来
勝負していない。
しのライバルが物凄く増えてきています。 根本 フローでも勝負しないというのは、
どういうことですか?
ている状況を見ると、活字離れって言う
私は、浦安で年間200万冊も貸出し
館などに行くとかなりありますね。地域
もう買えないということは、小さな図書
常世田
予 算 が 少 な い ん で す よ。 フ ロ ー
も文学位しかなくて他の分野のフローは
いままに、もう限界に来てて、いろんな
ものを必要な形で残すと言うことをしな
化する﹂と言うんですけれども、必要な
根本 それが出来ないままに来ちゃった
のかなと思います。私は﹁知のストック
ンと回らない状況と言える。
のは本質的にないんじゃないかなと思っ
いと言えます。そんな状況じゃないかと
でのストック機能も充分持ちきれていな
根本 ネットで注文すれば一日で来ちゃ
うみたいな仕組みを作って、もしかした
思います。
必要があると思います。
育、文化政策の一環として大きく捉える
ところで齟齬を来たしている。
場合によってはオンデマンドブックみた
出会わないような本と市民が出合うよう
らそれ一軒が全国で機能していれば、大
常世田 戦後、日本の組織ではトップか
らの指示に基づいて一斉に動くというよ
いかなと考えます。
にする。それとネットとの組み合わせで、
きなストックと配送システムですんじゃ
うな非常に、よく言えば効率のいい動き
る手段の一つとして図書館が位置付けら
れる、と理解しています。そういう仕組
根本
日本では出版流通自体がフローだ
けではなくストックの仕組みを備えてい
状況ができているんだと思います。
んみたいなものがやっていくには難しい
いればいいという、なかなか街の本屋さ
は、むしろ、邪魔する行為になってしま
報収集し、独自に判断をするということ
が優先されてきたと言えます。独自に情
書館しかない訳です。
ました。歴史的に図書館がうまくいって
20
い、 娯 楽・ 教 養 以 外 の 情 報 と 言 う の は、
いなかったのは出版の仕組みだけで完結
あまり歓迎されない傾向があったんじゃ
していると考えられたからでしょう。そ
常世田 その点で、読者の質が変わって
きているじゃないかと思いますね。昔は
商業、ビジネスの政策だけでなく、教
インターネット、データベースと専門書
れども、入手する方法がキチンと出来て
う。手に取ることは無理かもしれないけ
豊田 選 択 肢 が 増 え る と い う こ と で す
ね?
根本
まだまだ色々仕掛けが必要で、日
本の場合著作権の問題は解決していない
ことですし、図書館はそういうものを上
手く使っていけば良いという立場だと思
ストックで勝負する、そして本屋では
みを提供してくれること自体は、利便性
を組み合わせて使える空間というのは図
いろんな手段があって、その中で入手す
は高く消費者からすれば喜ばれる筈です。
い な シ ス テ ム か ら 取 り 寄 せ る で も 良 い。
根本 出版流通構造として、ネット上で
検索したものが、最終的に入手できれば
良いと、
その入手する手段は、
本屋で買っ
てるんです。出会うチャンスが設定され
る原因じゃないかと思います。
相乗的に売れなくなってきてしまってい
とんどやってないと思うんです。暇つぶ
10
ていない。それが最大の問題なんじゃな
か?
30
ても良いし、図書館から借りても良いし、
根本 彰 氏 2
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
示・命令では、どうも上手く行かないっ
すべての面で従来の上部組織からの指
地方分権とか、産業の系列が崩れるとか、
ここに来て、自己判断・自己責任とか
又、別の方向性が在りうるのかについて、 期に来ている。
書 館 が 乗 り 越 え て い く 必 要 が あ る の か、
と思うんです。改めてどういう課題を図
いった方向性を示唆されることもあった
での図書館ではまずいと言った時、そう
たと思いますし、また根本先生も、今ま
他 方、﹁ こ れ か ら の 図 書 館 像 ﹂ の 問 題
に限界があって、提供している新しい価
て、これまでの消費文化対応型の図書館
てことはある程度コンセンサスを得てい
月︶を議論した立場からは、課題解決型っ
で、どうやれば突破できるレベルになる
だろうか。多くライブラリアンがどこま
す。本当に公共図書館でそれが出来るの
館があった。やはり迂闊なことが出来な
うからだと思います。昔、参考調査論の
根本
それは何故かと言えば、責任が伴
す。そこは整理したいなと思っています。
先へと進んでいるようなところがありま
ないかと思うんです。
て言うのが、判って来てるんじゃないか
資源で、どうやるかと言うそれこそ戦略
常世田
点は、サービスを広げる余裕がなくなっ
公共図書館の戦略って言った場
合、主語が誰かと言うこと問題があって、 ているのに、縮小的になっている図書館
お話をしていただければと思います。
が書かれてないというところにあるんで
いっていう部分があるからだと思うんで
いとか、規約として受けないという図書
教科書に、医療とか法律の質問は受けな
と思います。今の色んな混乱が起きてい
視点を変えるとそれぞれがそれぞれ主人
年
値、付加価値が見えなくって見直しの時
る事なんじゃないかと思います。
だと言えなくもないです。
本を沢山読む旧制高校的文化が昭和
根本 江戸以来の中間文化とか、日本の
教養主義では、広い範囲で専門じゃない
のかが、私には見えにくいところです。
けれども、私は、社会状況が変わって
す。既存サービスを、少し削ってでも新
年代まであったと思うんですが、急
文化はあって、それが日本の出版を支え
趣味にせよ幅広く見ていくと言うような
要になると思います。そこを埋めていく
になる、自己判断のための情報は絶対必
く言うと、自己判断・自己責任型の社会
イプのサービスは、もっと総合的に戦略
課題解決型等で言われている新しいタ
ですから、日本中の公立図書館が一斉に
そうだったと思います。僕は現場の人間
書館員はいなかった。障害者サービスも
しい部分に振り替えるべきだという議論
常世田
例 え ば、 児 童 サ ー ビ ス だ っ て 最
まで出来てなかった。これが反省点です。 初の頃は、定義や覚えて出来るような図
ていた面があったと思います。それがあ
こういう風にやりなさいなんて事はなく
て、自治体によって状況は違うんです。
レークスルーする考え方をキチンとしな
いと上手く行かないんじゃないかなと思
的 に そ こ を 突 破 す る 新 し い も の に、 ブ
有能なビジネスマンほど専門外の本を読
と思います。その前提で言えば、非常に
自己責任型社会は、恐らく維持できない
むという。これを図書館がどのくらい引
どんな小さな図書館でも、レベルの低
います。
き受けられるかでしょう。
そう言った意思を持った人々がゲリラ
ばいけないということになると思います。
うことを本来考えて、アピールしなけれ
付いていない。図書館をどうするかと言
しても、図書館の現場としては、充分気
応して図書館がどう対応すればいいかに
気付かないのは当たり前だし、それに対
付いていない。勿論経験していないから
支援と言いながら、社会の中で課題解決
状況が起こってきます。恐らく課題解決
を提供していかなければならないという
い 回 転 を 求 め ら れ、 常 に フ ロ ー の 情 報
ンターテイメントの書籍よりも更に速
報が必要とされるので、ある意味ではエ
るサービスをやろうとすると、新しい情
開しています。例えば医療情報に関連す
豊田 課題解決支援サービスということ
で私のいる図書館でも幾つかの事業を展
可能性をお聞かせください。
説 得 材 料 と し て、﹁ や る べ き だ ﹂ と い う
という話になる。そういう人達に対する
と気が付けば、人も予算も付けましょう
たちの課題として図書館が役に立つんだ
じゃないかと思います。
クションとサービスって言うのがあるん
も、小さいなりにバランスの取れたコレ
しょうと言っているつもりです。図書館
うって言うのは当たり前の事をやりま
が出てくるわけです。だからビジネス支
い質問でも、明らかにビジネスのニーズ
とかそういう分野の話であって、実用的、
的に、説得していくという現場の限定的
の機能を持つ他の機関とは違った図書館
常 世田
こ れ か ら の 図 書 館 と い う の は、 ているだと言う風に、私は思います。
ビジネス支援でも、実用書・科学技術だ
ただ問題は、何が大変かにほとんど気
教養主義的な読書がなかったのかなと
な取り組みと、政策的なロビー活動を両
読書支援・教育支援の機関として
課題解決支援の機関として
図書館の戦術的展開は
題解決支援サービスを標榜する図書館が
す。その辺りはよく見えないままに先へ
独自の果たすべき役割があると思うんで
徐々に出てきています。常世田さん自身
根本 ﹁ こ れ か ら の 図 書 館 像 ∼ 地 域 を 支
える情報拠点を目指して﹂
︵ 平 成 年3
18
医療で言えば、大学医学部付属図書館
側面もあるわけです。
もう一つは、戦略的に、為政者が自分
援や医療情報提供サービスをやりましょ
豊田
図書館は一体何をして行ったら良
いのかという話に移りたいと思います。
方やっていくことになると思います。
思ってます。
図書館界では、課題解決サービスや課
豊田さん、経験からのビジネス支援の
追い風でチャンスが目の前にぶら下がっ
る 時 期 に 失 わ れ た の で し ょ う。 し か し、 社会的インフラがなければ、自己判断・
速 に 失 わ れ ま し た。 専 門 と は 別 の 教 養、 きていて、非常に誤解を恐れず判りやす
代
30
そういったことが必要だと仰ってこられ
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
3
40
その人達が、公共図書館をバックアップ
う300館やっていて、少なくとも名前
ちりも積もれば、ビジネス支援だっても
根本 二 十 世 紀 初 頭 の ア メ リ カ に S L
A︵米国専門図書館協会︶の最初の指導
です。
ついて多少の準備してやっているよう
% 増 え た ね っ て 世 界 だ と 思 う ん で す。 神 経 質 な の で ビ ジ ネ ス・ 医 療・ 法 律 に
常 世田
見 落 と し し て は い け な い 事 は、
図書館だけに限られた現象でなくて、地
だろうと思います。
ていくという傾向は強くなっていくの
だと新しいサービスを現場で直接担っ
の 本 当 に 専 門 の 医 療 司 書 が 動 い て い て、
するから一緒にやろうよって言うのが実
は定着した。
の司書のバックアップなしには考えられ
が提供できたのは、静岡県立こども病院
市でも本年度から健康医療情報サービス
豊田 ネットワークで取り組むというの
は非常に重要なことだと思います。静岡
重要だと思います。
含 め て、
﹁兎も角やる﹂って言うことが
とで、後付で出来ていくという可能性も
ちゃんと担うような団体や研修プログラ
れ、それを共有・検証し体系化されるこ
ころからはじまって、ノウハウが蓄積さ
という風に動くようになってきていると
して圧力が加わると何とかやらなければ
やっぱり今の公務員は、市民ニーズと
対応したというよりも、潜在的にはあっ
トラインは、ニーズが寄せられてそれに
根本 仰ったように、児童サービスでも、 関 す る 専 門 的 な ニ ー ズ を す く い 上 げ て
郷土資料サービスでも多分素人がやると
サ ー ビ ス を 展 開 し な が ら、 S L A を 立
思うんです。
に意識的に対応したということです。こ
思 い ま す。 す ぐ に 出 来 た わ け で も な く、 て も 対 応 し て い な か っ た 専 門 的 な 領 域
とで、専門領域が形成されてきたんだと
のような戦略を考えたほうがいいと思
図 書 館 長 が い た の で す が、 ビ ジ ネ ス に
ニューヨーク郊外のニューワーク公共
者 で ジ ョ ン・ コ ッ ト ン・ デ イ ナ と い う
状況ですからね。法律の基本的なことが
たま異動してきた公務員がやっている
スワーカーだってただの公務員が、たま
ないと、改善は難しいと思います。ケー
もっと大きな国民運動につなげていか
き な 問 題 の 氷 山 の 一 角 で す。 図 書 館 の
なかで専門職が減っているって言う大
涯学習分野は当たり前で、行政の組織の
方自治体全体でおきている問題です。生
わからなくてやっているレベルで言え
と い う の は、 ち ょ っ と 的 外 れ で あ っ て、
司書だけを何とかできるかもしれない
ませんでした。こういう本も入れた方が
ムがあって出来たことだと思います。
います
ち上げたという伝統があります。スター
いいといったことまで教えていただいて
利用者も図書館サービスの限界を理解
したうえで使ってくれる間に、知識のス
常世田
現場の図書館員の若手に中には、
ト ッ ク が 出 来 て く る だ ろ う と 思 い ま す。 自分たちの先輩は新しい事を開拓してき
ということにつながっていくんだと思
ば、本当に福祉系の法律を全く判らない
療法の本だったり、怪しげな入門の本を
ただ、それには時間がかかる。また、推
きてないって感じている人達も多い。新
います。
よって言うと反対が多くて、次に医療を
て 言 う 会 議 が あ っ て、 ビ ジ ネ ス や ろ う
館でも実際に新しいサービスを現場で
悩 ま し い 話 で は あ る ん で す。 私 の 図 書
専門性の担保が必要な領域では問題が
プがあるような状況は図書館のような
豊田
若 い 人 っ て 話 が 出 ま し た け れ ど、 うんです。正規・非正規で大きくギャッ
けですよ。そういう問題をどうするんだ
出 す と、﹁ 医 療 の 方 が 取 り 組 み 易 い ﹂ か
あります。そうは言っても、図書館員養
るんで、図書館情報学検定試験を提案し
担っているのは、嘱託の司書、非常勤な
ています
ら始まるという話が多く、医療の方が向
す。恐らくそういう図書館もこれから増
あの試験をやろうとするもう一つは教
成教育の質が社会的な評価に耐えない
免 責 の こ と に つ い て は、 基 本 的 に は
え て く る で し ょ う し、 今、 指 定 管 理 に
育者に対する問題提起なんです。どちら
のではないかとの問題意識を持ってい
公開されている情報で答えるというこ
なっている図書館では、新しいサービス
ネージャーみたいな感じになっていま
と で 免 責 を 担 保 す る と A L A︵ ア メ リ
を展開するところまで言っていない図
と言うとそっちの方が大きくて、大学の
い ま す。 図 書 館 に は 普 通 の 公 務 員 が 沢
山 い る の で、 免 責 に つ い て は 僕 ら よ り、 書館がほとんどだと思います。今の状況
カ図書館協会︶のガイドラインに出て
いているんじゃないかと言われています。 ん で す。 正 規 職 員 は プ ロ ジ ェ ク ト・ マ
人達と話していると感じます。︵笑︶
20
人間がケースワーカーをやっているわ
平気で買ってたりしたんだけれど、そう
進する力はかなり限定されているように
いる水面下の欲求って言うものを、若い
しい事を自分たちでもやりたいと思って
年 で、
常世田 良 氏 たのに、ここ 年位は新しいものが出て
いう専門の司書と交流が出来るようにな
見えます。
年
20
つ ま り 三 歩 前 進、 二 歩 後 退 み た い な
ると、気付くわけですよ。
根本
日本の行政に限らず会社も組織は、
ゼ ネ ラ リ ス ト で、 効 率 万 能 主 義 だ と 思
常世田
今まで公共図書館が買ってきた
医療系の本にしても、下手をすると民間
います。
言うのが具体的なサービスに取り組むこ
態です。館種を超えたネットワークって
10
常世田
面 白 い 現 象 が あ っ て、 図 書 館 の
中で新しいサービスをなんかやろうよっ
事 を 続 け な が ら、 ト ー タ ル
10
4
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
ら、そういうことに対応できる人材を願
せようという議論もあったようですか
常 世田 今 回 の カ リ キ ュ ラ ム の 編 成 の
中 で も﹁ 行 政 ﹂
﹁法律﹂の科目を独立さ
ると思います。
くのかということも最終的には、出てく
いんで、そこのギャップをどう埋めてい
でない司書資格の市場価格って非常に安
る。公務員になった人は別として、そう
現場に、大きな影響を与える可能性があ
題提起が大きいんです。勿論結果的には
養成課程がこんなのでいいのかという問
いるんです。
べきなんじゃないでしょうかと言って
はなく、もっとニーズに合った事をやる
たり、無駄な予約みたいな事をするので
求で出ていることです。夜間開館をやっ
ところについては、行政サイドからの要
を判断している過剰サービスに見える
いです。図書館の予約の拡大や時間延長
は、現場の人間は必ずしも積極的ではな
体まで増やしてなんかをやるという事
こ と は な い ん で す け れ ど も、 事 務 量 自
楽して出来ることあればそれに越した
根本
ただ、何処かでコントロールしな
け れ ば い け な か っ た の か な と 思 い ま す。
です、決定には。
常世田
か な り 厄 介 な 問 題 で、 行 政 組 織
の問題なんです。司書が関与してないん
リしたほうがいいんじゃないでしょうか。
根本 予約システムをどう設計させたか
を、誰が決めていっているのかをハッキ
のとは違うと思います。
の予約サービスで貸出冊数アップさせる
に重要な機能です。それと携帯電話から
互貸借で借り受けて提供する事は、非常
て言うのは、正しい筈です。司書が、相
な い、 そ う い っ た 見 る 眼 を 持 っ た 人 間
て、 そ こ に ま と も な 図 書 館 の 司 書 が い
置 す る こ と が、 重 要 じ ゃ な い か と 私 は
て し ま い ま す。 司 書 を も う ち ょ っ と 配
間 も 長 く し ろ ﹂﹁ ク レ ー ム に は ド ン ド ン
テ ム が ド ン ド ン 投 入 さ れ て し ま う。﹁ 時
も う 上 か ら の 指 示 で、 業 務 拡 大 の シ ス
い て、 司 書 が 居 な く な っ ち ゃ っ た ん で、
ん で す。 野 放 図 な 業 務 の 拡 大 と か に つ
しているんです。サービスのコストにつ
司 書 は 関 与 し て い な い と 思 っ て い ま す。 なと思っております。
ます。今、図書館では、判断をする場合、 うではないかという事を言っていこうか
先順位をどうするか他課題は沢山あり
常世田
それを決めるのは行政なのか市
民なのかは議論の余地がありますね。優
そこら辺が気になりますネ。
丸善ライブラリーニュースを図書館内
組みや次の課題や、本来あるべき姿はこ
ても、もう限界があるし、外に向けて仕
て、考え方をキチンと伝えていかなきゃ
それらを受け止めるべき司書がい
図書館は図書館の論理があるわけだから、 根本
前でしょう。
が 居 な く な っ て い る 状 態 で は、 当 た り
思 う ん で す。 ほ っ た ら か し に し て お い
言う事を聞け﹂見たいなことが起こっ
いたいですね。大学の司書課程の教員が、
根本
図書館界内部の運動から発生した
ことではない?
いては、ハッキリしません。本当に日本
部の方も外部の方にもいい機会ですから
﹁図書館員に向かないから止めとけ﹂っ
世間の片隅にある職場だと思って司書の
の図書館がコストを考えるレベルにある
や は り あ る 程 度 ス タ ン ダ ー ド、 ご く 普
お読みいただきたいですネ。
いけない。私も図書館界に向けて発言し
資格でも取ろうというのが本当に多いで
のかと言う所からスタートです。
通の司書がもうちょっと現場に居ない
と し ょ う が な い。 今 み た い な 話 に 抵 抗
豊田 本日はありがとうございました。
います。
公共図書館を考えてみるいい時期だと思
い て い れ ば 付 け が 回 っ て く る わ け で す。
がりなりにも存在する社会では、手を抜
民主主義社会、議会制民主主義なのか曲
当たり前のことですけれど、市民社会、
ないと、いけないと思いますよ。
と思いますよ。こんなに図書館の多い街
常世田
確かに可笑しな所にお金をかけ
て い ま す か ら 私 も そ う 思 い ま す。 た だ
するようなことを司書たちがしてきた
サービスレベルで言えば低いと思います。
はないですからね。
て ハ ッ キ リ 言 っ て 欲 し い で す︵ 笑 ︶
。完
常世田 行政は、図書館の貸出やサービ
全に誤解をして、人と会わなくてもいい、 スよりも優先項目として、ニーズに対応
す︵笑︶
。
ます。東京なんて世界一の図書館都市だ
根本
私はすでにその段階にあると思い
全体戦略と現場での戦術的
住民サービス機関としての図書館の
根本 私 は、﹁ サ ー ビ ス ﹂ と い う 言 葉 を
使うことで利用者と図書館員の間に暗黙
ると感じます。これがアカウンタブルな
立派な建物を造るけれども、そこで働い
常世田 自分の住んでいる町の納税者と
して意見を言って、議員を育てる事をし
行政サービスとなるために考えなければ
ているのはワーキング・プアの非正規職
のもたれかかりのようなものができてい
ならないことは多い。
根本
日本では、貸出のことで言えば世
界的に見てもあるレベルに達していると
員ばかりの話ですから。
員は余計な仕事をしたくないと思って
思うんです。
10
常世田
根本さんは非常に原則的なお話
をされたんで、原則的に言えば、納税者
い る 人 は い く ら で も 居 ま す よ。 予 約 に
年 月9日 丸善㈱会議室にて︶
21
が判断すべきものだと思うんです。公務
しても貸出にしてもかなりの部分の公
︵平成
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
5
常世田 本当に必要な情報を手に入れる
ために、遠慮なく予約をしてくださいっ
務 員 は 別 に や り た く な い ん で す。 勿 論
豊田 高広 氏 月、創立125周年を迎
中元 誠
︵2︶図書館は﹁研究の早稲田﹂を実現するために
・学術情報資源の収集・提供の充実をはかる
研究者が必要とする学術情報資源をより有効に
かつ迅速に収集・提供するためのIT環境・施設
的 環 境の 整 備 や 図 書 関 係 予 算 諸 制 度の見 直 し を 進
める。とりわけ、早稲田キャンパスにおける研究
域等への適切なサービスのあり方を検討する。
︵4︶これらを支える﹁図書館﹂を実現するために
財源の安定的な確保をめざし、図書関係予算
・
の効率的な運用体制を確立する
より高度なスキルと知識を持ち、図書館サー
・
ビスの 中 核 的 な 役 割 を 実 践 で き る 図 書 館 職 員
・図書館諸制度、システム、IT環境の改善に
主体的に取り組む
の育成と若手研究者との教職協働を実現する
支援体制のいっそうの改善・強化を図ることを目
的として、高田早苗記念研究図書館︵以下高田記
ため、基礎的な調査、研究、開発などに図書館自身
今 後 の 図 書 館 にお け る 戦 略 的 諸 課 題 に 対 応 す る
念 図 書 館 ︶を 組 織 的 中 核 と し た 施 設 的 環 境の 整 備
を重点課題とする。
を 提 言 し てい く こ と を 目 的 と し て 総 合 研 究 機 構 な
が主体的に取り組み、改革に向けた様々な諸施策
・研究者支援体制を強化する
個 々 の 研 究 者 への よ り 直 接 的 な 研 究 支 援 体 制 を
どと連携して、図書館内に、研究開発部門を設ける。
て、
﹁ Waseda Next 125
﹂が掲げる﹁早稲田﹂か
ら﹁ WASEDA
﹂を実現する。
スの 充 実 お よ び 学 術 情 報 受 発 信 機 能 の 強 化 を 通 じ
早稲田大学図書館
長
事務部
﹁ Waseda Next 125
﹂と
早稲田大学図書館の戦略的課題について
はじめに
本学は、2007 年
2.﹁ Waseda Next 125
﹂と図書館の戦略的課題
強化し、生み出される研究成果︵学位論文・学術
世 紀の
︵1︶図書館は﹁教育の早稲田﹂を実現するために
そこでは、高 度な知識とスキルを持ったリエゾン
月、総長、理事会より図書館長に対し﹁
教 育 研 究 グ ラ ン ド デ ザ イ ンの 達 成 内 容 と 今 後 の 検
論 文 な ど ︶に 対 し て 統 合 的 なマ ネ ジ メン ト 支 援 機
情 報 化 社 会 や 知 識 創 造 型 社 会に対 応 した図 書 館 機
ライブラリアンと、若手研究者が協働して、高度
実現する。また、メディアネットワークセンター、
以 上 に 述 べ た 図 書 館 の ミ ッ シ ョン と 戦 略 的 課 題
能の強化・充実に向けた基礎的な調査、研究を行う。
積極的に支援し、基盤的教育の充実を図るために、
研究推進部、大学出版部などの学内関連諸機関と
への対応に向けて、この間の図書館サービスの改
よ り 直 接 的 な 関 与 を 通 じて 広 範 な 研 究 教 育 支 援 を
﹁ リ エ ゾ ン ラ イ ブ ラ リ ア ン ﹂ は、 研 究、 教 育 へ の
する﹁リエゾンライブラリアン制度﹂を確立する。
能︵学術情報資源の保存と発信の実現など︶を有
支援、推進する
学部、大学院、オープン教育センター、メディア
役割、例えば、研究活動に対する組織的なサポー
も緊密な連携をとりながら、図書館に期待される
教員、学生による学術情報資源の有効な活用を
ネットワークセンター、遠隔教育センターなどと
ト、若手研究者の育成支援、分野横断的プロジェ
展開を推進する。特に、入学後の出来るだけ早い
施策
∼
2007
年︶を概観する。
2010
3.図書館サービスの改善と諸課題
図 書 館 に お い て は、 図 書 館 長 の 諮 問 機 関 で
連携して、全学的な図書館情報リテラシー教育の
7 月 の﹁ 中 間 報 告 ﹂ を は さ ん で 2 0 0 8 年 2 月
び教育への還元などに応えていくための機能・体
クト管理、研究評価、研究成果の保存・発信およ
︵3︶図書館は
﹁開かれた早稲田﹂
を実現するために
本学の研究成果、教育資源、文化資源の発信
・
化資源を広く社会に還元するために、文化推進部
本学が有するあらゆる研究成果、教育資源、文
活用に加えて、学生が習得すべき基本的なリテラ
横断的なグループ学習の場︵コモンズ︶としての
チューデント・コモンズにおいては、学部・学科
スチューデント・コモンズの整備を開始する。ス
を 施 設 的 に 実 現 す る た め に 各 キ ャン パス に お い て
図書館による新たな学習支援サービスモデル
︵1︶施設的環境の改善︵ Library as place
︶
・図書館利用環境の維持、改善と適切な図書館
資料収蔵スペースの再配分、拡充をはかる
機会に、情報や情報手段を分析的・批判的に評価
り、
﹁自学自習﹂には不可欠である。
学生の﹁自学自習﹂を支援し、充実した情報資
・
発信基盤の整備を推進する。また、本学の国内地
や文化推進会議との連携のもと、本学の学術情報
を積極的に支援、推進する
学 生 の﹁ 自 学 自 習 ﹂ に 対 応 し て、 全 学 を 対 象
情報スキル、プレゼンテーションスキル等︶に関
シー︵リーディングスキル、ライティングスキル、
源の利用を高めるサービスモデルを実現する
とした汎用的な図書館情報リテラシー教育に加え、
際連携における今後の事業展開を念頭に、図書館
域連携、さらにアジア太平洋地域を中心とした国
お い て 図 書 館 職 員 の 教 育 現 場 への よ り 直 接 的 な 参
が 果 た す べき 役 割 と 取 り 組 む べき 実 践 的 な 課 題 に
びに専門の職員︵ITセンター・他︶から、日常
するサービスを、そこに常駐する図書館職員なら
て提供することや、ネットワーク環境下における
じめとしてより多くの人々に対して、より広範か
校 友 会 等 と 連 携 し て、 校 友、 在 学 生 家 族 を は
員図書室等の蔵書を共同管理すると共に各教員図
高 田 記 念 図 書 館 は、 早 稲 田 キ ャ ン パ ス の 各 教
らの学習支援サポートも実施する。
助手、博士課程大学院生等による研究者の立場か
の新たな教職協働の具体的な枠組みとして、助教・
的かつワンストップで提供する。また、各学部と
ついて検討する。
・開かれた図書館としての適切なサービスのあ
非来館型の図書館サービスとして、オンラインレ
教職員への利用サービスを中心としたうえで、地
つ多様な図書館サービスを提供する。また、学生、
り方を検討する
極的に展開する。
フ ァレンス な ど の 新 た な 利 用 者 接 点 サ ー ビス を 積
総 合 デ ー タ ベー ス を 活 用 し た 教 材 を 教 員 と 協 働 し
資源をいっそう身近なものとするために、古典籍
画 を め ざ す。 例 え ば、 本 学 の 充 実 し た 学 術 情 報
を実践する
応えるサービスモデルを構築する。また、ここに
学部、大学院等との連携のもと個別的なニーズに
・ 図 書 館 職 員 の 教 育 現 場 への よ り 直 接 的 な 参 画
制を整備する。
し、主体的に活用できるための基礎的な資質に働
月の全学の教職員に対する説明会をはじめ
め ら れ た。 図 書 館 に お い て も 答 申 を と り ま と め
る に あ た り、 図 書 館 職 員 を は じ め 図 書 館 協 議 員
をつうじて可能なかぎり関連する教職員の意見
集約につとめた。
2007
以 下 で は、 図 書 館 答 申 の 概 要 を 示 し、 あ わ せ
てこれにもとづく直近の図書館の取り組み︵
∼ 2010
年度︶について報告する。なお、﹁ Waseda
﹂ に つ い て は、 http://www.waseda.
Next 125
をご参照いただき
jp/keiei/next125/index.html
たい。
1.
﹁ Waseda Next 125
﹂と図書館のミッション
図書館は、学術情報基盤の要として、利用者が
必要とする図書館情報資源の構築と図書館サービ
き か け て い く こ と が 教 育 分 野 に お いて は 重 要 で あ
﹂と図書館の戦略的課題﹄
に﹃﹁ Waseda Next 125
と 題 し た 最 終 的 な﹁ 答 申 書 ﹂ を 総 長 に 提 出 し た。
考え方が諮問された。
あ る 図 書 館 協 議 員 会 に お い て 意 見 を と り ま と め、
善の概要と取り組むべき当面の諸課題︵短期的諸
方が説明され、これとの関係において今後の総合
年 間の 達 成 目 標 にかかわる 理 事 会の基 本 的 な 考 え
﹁グランドデザイン﹂を総括するとともに今後
年 を 迎 え る 20 07 年 度 ま で の 達 成 目 標 を 述 べ た
21
大 学 としての図 書 館のあ り 方についての 基 本 的 な
教員、学生による情報資源の利用を積極的に
・
・ 教育、学習支援に必要とされる情報資源を的
確に提供する
10
討課題﹂が提示された。ここでは、創立125 周
えた。創立125 周年を迎えるにあたり、同年4
10
﹂中間報
この間、 月には﹃﹁ Waseda Next 125
告に関する理事会の基本的な考え方﹄が提示さ
れ
10
としてさまざまなチャンネルで意見聴取がすす
12
6
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
協 力 体 制 の も と、 大 学 院 学 生、 研 究 者 を 対 象 と し
関 連 す る 各 学 術 院、 研 究 科 等 と の い っ そ う の 連 携、
施 策 と 考 え る。 ま た、 同 施 設 の 拡 充 と 並 行 し て、
と は、 全 学 の 共 同 利 用 の 観 点 か ら も 重 要 な 図 書 館
所蔵する雑誌コレクションを施設的に集約するこ
課 題 と な っ て い る。 関 連 す る 各 教 員 図 書 室 が 現 在、
員図書室における書庫の満杯状況の解消が喫緊の
ほ ぼ 困 難 な 見 通 し と な っ て お り、 同 館 お よ び 各 教
年 に 開 館 し た が、 そ の 後、 施 設 的 な 改 善、 拡 充 が
書 室 と の 一 体 的 な 運 営 を 基 本 方 針 と し、 1 9 9 4
授業等への活用を2009年度中に具体化する。
図 書 館 職 員 の 連 携・ 協 働 に よ る 同 デ ー タ ベ ー ス の
制へと軸足を移行させる。すなわち、協力教員と
本データベース利用を中軸とした新たな連携の体
クト室﹂の体制から、関係する学術院、教員との
で の デ ー タ ベ ー ス 構 築 に 主 眼 を お い た﹁ プ ロ ジ ェ
開をはかる。その事業展開の一環として、これま
ベースの利用と普及に主眼をおいた新たな事業展
ら な る 充 実 と あ わ せ て 20 0 9 年 度 よ り 本 デ ー タ
タベースの構築の実績をふまえ、コンテンツのさ
た。さらに、2008年度までの古典籍総合デー
した。本委員会では、学部学生に対する学習支援
る﹁学習支援連携委員会﹂を2008年度に設置
書館サービスのより密接な連携の実現を目的とす
化や各学部において展開される教育研究活動と図
観点から、図書館に期待される新たな役割の具現
多数を占める学部学生に対する教育・学習支援の
造、再構築などに取り組んでいる。特に利用者の
化、 進 化 に 対 応 し た 新 た な 利 用 者 接 点 業 務 の 創
接点業務の改善や利用者のアクセス環境の多様
報検索ポータルの見直し、利用者来館型における
インチュートリアルのコンテンツの拡充、学術情
視野に入れた見直しを進め、2006年度より雑
稲田キャンパスにおける雑誌管理業務の集約化を
制の整備を行ってきた。2005年度では、西早
課﹂の設置など、図書館組織の再編、業務処理体
関 わ る 共 通 業 務 の 集 約 化 を 主 軸 と し て﹁ 資 料 管 理
2003年度より図書の発注、受入、目録業務に
︵図書館組織の再編︶
︵4︶図書館組織の再編︵ Personnel
︶
諸課題の実現を担う図書館職員の育成をすす
・
める
み︶の抜本的な見直しは不可避である。この間の
︵図書館サービスを提供するための制度的な枠組
調達︶をはじめとして、これまでの図書館諸制度
整備︵図書館予算制度の構造的見直しや外部資金
拡充をさらに推進するためには、財政的な基盤の
点からリポジトリ構築と並行して開発されたオン
断的な検討を進める。また、成果発信の強化の視
子的な蓄積と発信の具体的な展開について組織横
連 携 を は か る 趣 旨 か ら、 今 後 の 教 育 研 究 成 果 の 電
な展開との関連で、教員、研究者とのいっそうの
上 で 述 べ た﹁ 古 典 籍 総 合 デ ー タ ベ ー ス ﹂ の 中 期 的
スを予定している﹁紀要等編集査読システム﹂や
開している。また、新たに開発、ベータ版のリリー
電子化し、公開を始め、現在も継続的に事業を展
されてきた紀要に掲載された学術論文を組織的に
ることとした。初年度より、各学術院等から刊行
に電子媒体により蓄積し広く社会にむけて公開す
成 果 を 図 書 館 に 設 置 さ れ た リ ポ ジ ト リ︵ 格 納 庫 ︶
20 05 年 度 よ り 学 内 で 産 み 出 さ れ た 教 育 研 究
各キャンパスや設置箇所の諸事情により、各図
︵開館・開室時間の延長、開館・開室日数の拡大︶
ととした。
携による企画の策定、実施までの業務にあたるこ
などと密接な連絡調整をはかりながら各学部と連
ター、オープン教育センターや遠隔教育センター
位 置 付 け、 関 連 す る メ デ ィ ア ネ ッ ト ワ ー ク セ ン
ゾ ン︵ 学 習 連 携 支 援 担 当 ︶
﹂ と し て、 そ の 役 割 を
たるすべての図書館職員を﹁アカデミック・リエ
に実現することを目的として利用者接点業務にあ
ここにおいて検討される各学部との連携を具体的
ま た、﹁ 学 習 支 援 連 携 委 員 会 ﹂ の 設 置 と あ わ せ て、
な学習支援の枠組みについて検討を開始している。
を 念 頭 に お き、 各 学 部 と 図 書 館 の 連 携 に よ る 新 た
若手研究者と図書館職員の新たな協働体制の構築
の一層の充実、強化をめざし、各学部に所属する
浸透していくことに伴い、専任職員業務のコンピ
業務に関わる業務処理体制にアウトソーシングが
を実現してきた。しかし、一方で、とりわけ基盤
率化を図りながら一体的な図書館サービスの改善
用者支援課﹂として再編することとした。
をあわせた業務分掌とし、2009年度より﹁利
リエゾン制度の中核を担う部署として全学に焦点
連して、
﹁総合閲覧課﹂においては、アカデミック・
リ エ ゾ ン︵ 学 習 連 携 支 援 担 当 ︶﹂ 制 度 の 創 設 と 関
能な体制とした。また、
上で述べた
﹁アカデミック・
による情報基盤整備に一元的、集約的な対応が可
情報課﹂を﹁情報管理課﹂へと改組し、電子媒体
図書館が積極的な役割を担うことを目的に﹁学術
子 媒 体 に よ る 学 術 情 報 の 受 発 信 基 盤 の 要 と し て、
誌課業務を﹁資料管理課﹂に統合した。また、電
図 書 館 業 務 処 理 体 制 の 見 直 し に つ い て は、
た サ ー ビ ス 体 制 の 組 織 的 整 備︵ 高 田 記 念 図 書 館 の
電子媒体資料の導入整備状況と学内の研究・教育
ラ イ ン・ ジ ャ ー ナ ル・ シ ス テ ム︵ O J S ︶ の 学 内
書館、図書室、読書室等の開室日数や利用時間は、
テンシーともいうべき中核的業務ないし職務の輪
︵学術機関リポジトリの構築︶
体制の整備状況を踏まえ、大胆な制度の見直しが
関係箇所への普及、実装をすすめる。具体化の手
個別に定められていたが、段階的な見直し、改善
郭が現場レベルで不明確になってくるという事態
機能強化︶についても施設的環境の改善策の一環
必要である。
始 め と し て、 図 書 館 刊 行 物 の 電 子 ジ ャ ー ナ ル 化 を
を経て、2007 年度より中央図書館の開館時間
書館コンソーシアムの構築︶
︵ デ ー タ ベ ー ス、 電 子 ジ ャ ー ナ ル 導 入 に か か る 図
図 書 館 に お け る 学 術 情 報 の 受 発 信 基 盤 の 強 化、
︵図書関係予算制度の見直し︶
な図書館情報資源の構築を推進する
︵2︶図書館情報資源の充実と拡充︵ Contents
︶
教育研究活動を基盤的に支援するために必要
・
として取り組んでいく。
本 学 図 書 館 は、電 子 ジ ャ ー ナ ル、デ ー タ ベ ー ス
2009年度に実施する。また、本システムの実
を構築し、開室時間および開室日数の拡充、平準
田記念図書館を中心とした一体的な業務委託体制
基盤業務について、各学部と調整を取りながら高
カウンター業務および書架整備業務などの定型的
ては、 WINE
ネットワーク参入や利用規則の平準
化などの成果を踏まえ、貸出、返却を中心とした
また、早稲田キャンパスの学部学生読書室におい
についての検討を進め、大学全体の職員人事施策
等々︶や図書館職員に関わる労働市場の動向など
成や要員数、業務処理体制や図書館組織のあり方
図書館職員の育成に必要な諸条件︵適切な年齢構
員としての方向性を具現化する必要がある。当面、
長期的な視点から検討を深め、目指すべき図書館
職員の中核的業務ないし職務、役割について中・
提供にかかわる基盤業務の見直しや継承すべきス
を生じつつある。紙媒体による蔵書の保全、管理、
あたっては、アウトソーシング手法を導入し、効
図書館の組織再編と共通的諸業務の集約化に
︵図書館職員の育成︶
導 入 に か か わ る 公 私 立 大 学 図 書 館 コン ソ ー シ ア ム
時︶と日曜開館日数を拡大︵
日
時↓
延長︵
Private & Public University Libraries
日 ︶ し、 年 間 の 開 館 日 数 を 3 1 0 日 と し た。
電子ジャーナル、データベース導入の拡大、利
化を推進している。また、これら整備の進捗と歩
との整合性も勘案しながら、図書館職員に関する
諸 コン ソ ー シ ア ム と の 連 携 強 化 に 向 け て 積 極 的 な
役 割 を 発 揮 す る と 共 にス ケ ールメ リット を 活 か し
た 電 子 媒 体 資 料 導 入 の コン ソ ー シ ア ム 契 約 交 渉 を
継続的に実施する。
︵古典籍総合データベースの構築︶
︶
anytime, anyplace
利 用 者 ニー ズ に 対 応 し た 図 書 館 サ ー ビ ス の 拡
・
充、充実をはかる
︵アクセスの改善と利用者接点業務の再構築︶
諸施策を具体化する。
キルの検討と併せて、新たな環境に対応する専任
用の浸透と歩調をあわせアクセス環境の改善を経
調をあわせながら、今後、サービス業務総体のあ
書館が所蔵する和漢の古典籍約
︵3︶利用者サービスの充実と拡充︵ Services at
2005年度より5ヵ年計画により本学中央図
常 的 に す す め て き た が、 よ り 一 層 の 利 用 の 拡 大 を
り方に関する評価、点検、改善を継続的に実施し
的な役割を果たしてきた。今後とも国内、海外の
万冊を目録所在
たい。
↓
装を前提として、出版企画委員会等とも密接な連
︵
携をはかりながら新たな成果発信媒体の創出を図
33
はかることを目的として図書館情報リテラシーの
書館のイニシアチブによりすすめる。
22
取り組みを強化する必要がある。この間、オンラ
︶の 運 営 に お い て 幹 事 会 事 務
Consortium, PULC
局 と し て 各 出 版 社 との 交 渉 の 窓 口 と な る な ど 中 心
21
情報と共に全文を電子化しデータベースとして学
36
内構成員はもとより広く社会に公開することとし
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
7
30
﹁つながり﹂を生み育む
図書館協力業務における
情報の発信と共有
︶。 冊 子 版 及 び メ ー ル マ
報学に関する内外の様々な情報を発信し
て い ま す︵ 図
ガジンの記事、ニュース速報﹁カレント
R﹂に加えて、国立国会図書館が実施し
館に興味をもってもらえればありがたい、
という思いもあるからです。
以降、勤務日には毎日更新を行い、新着
カレントRは、カレントポータル開始
■利用者と﹁つながる﹂ために
究リポート等を掲載しており、これらを
情報についてのRSSフィードを発信し
た図書館・図書館情報学に関する調査研
合わせた記事数は 万件を突破し、記事
ています。たとえ少量ずつでも定期的に
は約
へ の 月 間 ア ク セ ス 数︵ 20 0 9 年
体で提供しています。以下では主に、開
の記事です。その執筆は、図書館協力課
加されるニュース速報であるカレントR
﹁役に立った﹂﹁面白かった﹂という感想
す。冊子版やメールマガジンの記事でも、
また、ウェブならではの利点もありま
かと考えています。
がりや信頼感の醸成に役立つのではない
情報発信をすることが、利用者とのつな
月︶
たメールマガジン﹃カレントアウェアネ
前述の 万件の記事の大半は、日々追
■ニュースは硬軟とりまぜて
万アクセスとなっています。
国立国会図書館関西館図書館協力課で
実施、図書館及び図書館情報学に関する
情報の収集と提供、総合目録ネットワー
ク事業、レファレンス協同データベース
年余を経過したポータルサイト
1
内 外 の 図 書 館 関 連 サ イ ト・ ブ ロ グ 等 の
新聞・雑誌のほか、RSSリーダー等で
や反応が見えるようになりました。例え
開設によって、ウェブ上で利用者の関心
ど多くはありません。カレントポータル
ざわざ感想を教えてくださる方はそれほ
下、
﹁カレントポータル﹂︶について紹介
ウェブ上の情報をチェックし、担当者そ
﹁カレントアウェアネス・ポータル﹂︵以
れぞれが興味や得意分野に応じて、アン
インターネット環境下での情報発信、そ
カレントポータルは、2006年
します。
から正式運用を開始した、国立国会図書
焦点をあて、カレントアウェアネス・ポー
タルとレファレンス協同データベース事
5
ソーシャルブックマークの数やそこに付
けられたコメントを見ることで、より明
﹁ 面 白 い ﹂ も 含 め て い ま す。 こ れ ま で に
﹁新しい﹂
﹁重要﹂
﹁役に立つ﹂だけでなく、
うなコメントを見ると、こちらも喜びを
ますが、役に立ったことがうかがえるよ
間違い等を指摘されたりすることもあり
カレントRで紹介するニュースは出
取 り 上 げ た﹁ 面 白 い ﹂ ニ ュ ー ス と し て
典 を 記 載 し て お り、 そ れ ら の サ イ ト の
感じます。利用者の反応が分かることで、
等があります。このように、硬いニュー
情報をRSSリーダー等でチェックす
は、 例 え ば、
﹁ 図 書 館 を 利 用 中、 ず っ と
スだけでなく、いわばB級ニュース的な
れ ば、 カ レ ン ト ポ ー タ ル を 利 用 し な く
こちらにもより一層のやりがい・緊張感
ものも取り上げるのは、それをきっかけ
が生まれます。
にこのサイトに興味をもってもらい、さ
て も、 同 じ 情 報 に ア ク セ ス す る こ と は
後ろをついてきてくれるイス登場︵オラ
らには﹁カレントアウェアネス﹂や図書
ンダ︶﹂や﹁犬を聞き手に本を読む練習﹂
取 り 上 げ る ニ ュ ー ス の 選 択 基 準 に は、 確に反応が分かります。時には、訳語の
性を重視しています。
度で概要を簡潔に伝えるものとし、速報
3
月
業についてご紹介したいと思います。
ウェアネス﹄でしたが、多くの方々のご
協 力 の お か げ で、 2 0 0 9 年 に 創 刊
周 年・ 通 巻 3 0 0 号 と い う 節 目 を 迎 え
る こ と が で き ま し た。 現 在、﹁ カ レ ン ト
ア ウ ェ ア ネ ス ﹂ は、 季 刊 の 冊 子 版 に 加
え、2002年の関西館開館時に開始し
30
も 関 心 の 傾 向 が 分 か り ま す が、 さ ら に、
ば、記事ごとのアクセス数を見るだけで
6
∼ 行程
テナにひっかかったものをニュースとし
カレントアウェアネス・ポータル│
情報発信により生まれる
﹁つながり﹂
年・300号・ 万アクセス
1979年 月でした。わずか ページ
ントアウェアネス﹄が誕生したのは
図 書 館 に 関 す る 情 報 誌 と し て﹃ カ レ
■
30
の冊子としてスタートした﹃カレントア
8
て取り上げています。内容は
館のウェブサイトで、図書館・図書館情
こから生まれる﹁つながり﹂という面に
等 を 行 っ て い ま す。 本 稿 で は こ の う ち、 設から
事業、障害者図書館サービスの支援業務
30
をいただくことはあります。しかし、わ
︵以
ス速報﹃カレントアウェアネス R
-﹄
下、
﹁カレントR﹂
︶をあわせた つの媒
は、
図書館職員を対象とする研修の企画・
図 1 カレントアウェアネス・ポータル 調査情報係の係員 名が担当しています。
3
ス E
- ﹄、 2 0 0 6 年 の ポ ー タ ル サ イ ト
開設時に開始されたブログ形式のニュー
国立国会図書館関西館図書館協力課
1
9
1
3
3
6
30
8
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
で き る か も し れ ま せ ん。 そ の よ う な 状
況におけるカレントポータルの存在意
義 と し て は、 大 量 の 情 報 か ら 図 書 館 に
関 連 す る・ 役 立 つ 情 報 を 選 択 し て 掲 載
す る と い う 点 が あ る と 思 い ま す。 も ち
ろ ん、 膨 大 な 情 報 全 て を チ ェ ッ ク す る
こ と は 不 可 能 で す が、 情 報 の 取 捨 選 択
は、 図 書 館 の 業 務 に 共 通 す る 大 事 な 役
割 だ と 考 え て い ま す。 今 後 も、 利 用 者
れ、調べ物の参考に活用されるなど、よ
り幅広いつながりが生まれています。
用者と利用者をつなぐ場となっています。
サービスを行う際、同様の質問に対する
それぞれの図書館がレファレンス
■参加館をつなぐ
レファレンスサービスは図書館の重要
回答事例がレファ協に登録されていれ
■利用者と図書館をつなぐ
な サ ー ビ ス の 一 つ と い わ れ て い ま す が、
利用者には説明しにくいものではないで
で き ま す。 こ の﹁ プ ロ セ ス ﹂ が 記 載 さ
ば、そこから回答のヒントを得ることが
協の事例には、回答プロセスが記載され
どのようなサービスが行われているのか、 ば、回答の助けとなります。またレファ
しょうか? レファ協には、図書館が実
際に行ったレファレンスの記録が登録さ
ていることが多いため、関連事例があれ
れているので、図書館がどのような質問
※公共・大学図書館の母数は『図書館年鑑 2009』より。専門
図書館の母数は、
『専門情報機関総覧 2009』の専門図書館協
議会正会員数。
※国立国会図書館には支部図書館を含む。
と の つ な が り を 意 識 し な が ら、 情 報 発
れていることがレファ協の特徴です。ど
か、さらには﹁なぜ﹂そのツールを使っ
27 館 6 分館
信を継続していきたいと考えています。
を受け、どう答えているのかを具体的に
の ツ ー ル を 使 っ た か、 他 に 何 を 調 べ た
たかなど調査の考え方を知ることがで
10
カレントアウェアネス・ポータル
伝えることができます。
また、一般公開された未解決のレファ
国立国会図書館
http://current.ndl.go.jp/
レンス事例に、利用者から情報が寄せら
(約 507 館)
http://crd.ndl.go.jp/
レファレンス協同データベース
度アクセスして見て下さい。
事例が数多く登録されています。ぜひ一
レファ協には、読み物としても面白い
られています。
ゆるやかな協力レファレンスがかたち作
共有し、さらには相互に補い合うという、
を超え、レファレンスに関するデータを
利用することにより、気軽に館種や地域
ネット環境下の共通プラットフォームを
つ 参 加 館 が、 レ フ ァ 協 と い う イ ン タ ー
情報も異なります。さまざまな情報を持
ります。また、それぞれ持っている地域
参加館は、それぞれ得意な分野が異な
なくありません。
この機能によって解決に至った事例も少
報等をお知らせするコメント機能があり、
またレファ協には、参加館間で追加情
れ解決に至るというケースもありました。 きます。
さらにその情報は元々の質問者にも伝え
られ、非常に喜ばれたそうです。
このように、レファ協は、図書館と利
37
用者をつなぐ、時には図書館を介して利
専門図書館等
レファレンス協同データベース事業│
レファレンス事例を通じた﹁つながり﹂
マ ニ ュ ア ル ﹂、
1,659 館
ビ ス を 記 録 し た﹁ レ フ ァ レ ン ス 事 例 ﹂、
書など、参加館が所蔵する特殊なコレク
129
つ目は特定のテーマ、トピックに関す
大 学 図 書 館、 専 門 図 書 館 等 に お け る レ
ションに関する情報を記載した﹁特別コ
つ目は参加館に関する
大学図書館
レファレンス協同データベース事業
ファレンスに関するデータを蓄積し、イ
レ ク シ ョ ン ﹂、
3,126 館
︵ 以 下、
﹁レファ協﹂
︶ は、 公 共 図 書 館、 る情報源の探索方法を説明した﹁調べ方
ンターネットを通じて提供することによ
情 報 を 記 載 し た﹁ 参 加 館 プ ロ フ ァ イ ル ﹂
割のデータが一般公
万件ものアクセスを集め
ているものもあります。個々の図書館で
には、累計で
現在の参加館数は約490館で、さま
対 のやりとりですが、レ
行われているレファレンスは、基本的に
利用者との
310
つ目は個人文庫や貴重
り、図書館等におけるレファレンスサー
です。 種類合計で約 万 千件が登録
され、このうち約
5
登録されているレファレンス事例の中
開されています。
4
レンスの記録が非常に多くの方に利用さ
公共図書館
3
1
種 類 で す。 ファ協に登録することで、一つのレファ
1
母 数
図 2 レファレンス協同データベース データベース検索画面
ビス及び一般利用者の調査研究活動を支
に至っています︵図 ︶。
6
4
ざまな規模や館種、地域の図書館が参加
しています︵表 ︶。
登録されているデータは
4
(2009 年 9 月末現在)
表1 参加館数
2
援 す る こ と を 目 的 と し て、2002 年
月に実験事業としてスタートしまし
し、同年 月にデータベースの一般公開
た。その後2005年 月に本格事業化
4
2
つ目は参加館で行われた質問回答サー
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
9
1
参加数
館 種
12
4
4
8
1
人文・社会科学の学術情報流通
︵下︶
そ の 要 因 は、 平 成
和信
小西
武蔵野大学
前号で人文・社会科学分野の研究を盛
年4月からウェ
場で読めてしまうことに一般ユーザは驚
検索語にヒットした﹁学術論文﹂がその
会 誌 の 本 文 の 電 子 化 を 進 め る﹁ 電 子 図
成8年来新たなサービスとして国内学協
試み﹁引用文献索引データベース﹂と平
ま た 同 分 野 の 充 実 に 対 す る 期 待 も 高 い。
倒的に人文・社会科学分野の利用が多く、
ている利用者アンケートの結果でも、圧
かったが、国立情報学研究所が例年行っ
は、 必 ず し も 人 文・ 社 会 科 学 分
CiNii
野へのサービスを意図したものではな
タベースに、わが国のSCIを目指した
︶
﹂と統合
書 館 サ ー ビ ス︵ NACSIS-ELS
し、 そ の 上 に 国 立 国 会 図 書 館 の﹁ 雑 誌
ほかに類似のサービスがないこともある
ない。
利用者の期待に応えていかなければなら
は 人 文・ 社
だろうが、だからこそ CiNii
会科学の学術情報流通への貢献を意識し、
記事索引﹂を加えた、わが国の研究者に
た
サービスの延命策として
NACSIS-IR
し か 意 識 さ れ て お ら ず、 ポ ジ シ ョ ン を
及 び Google よる論文データベースである。 CiNii
開
りたてるには、その前提として当該分野
ブ 検 索 エ ン ジ ン Google
で一部の情報が検索可能になっ
始︵ 平 成 年 4 月 ︶ 当 初 は、 魅 力 あ る
の 学 術 情 報 流 通 が 問 題 と な る の で あ り、
Scholar
たことにあると思われる。自分の入れた
データベースの不在で輝きを失ってい
政策を出し、施策を実行してきたか、果
国や国の機関がどのような学術情報流通
たしてその成果はあったのかを一瞥した。
失 っ た デ ー タ ベ ー ス・ サ ー ビ ス と し て、
︶
タ ベ ー ス の 形 成・ 提 供︵ NACSIS -CAT
と、わが国研究者の論文データベースの
について、全国大学所蔵資料の目録デー
む経験のなかった層にも利用され始めて
て力があるだろう。従来、学術論文を読
フェースが洗練されたことなども与かっ
し た こ と、 検 索 結 果 表 示 な ど の イ ン タ
リニューアルし、検索性能が格段に向上
に
たデジタル資料の管理や発信を行うため
公 開 す る 場 所 で、 の ち NACSIS-ELS
に組み込まれることになる。 に、大学がそのコミュニティの構成員に
CiNii
提供する一連のサービス﹂とされている。
大学等の紀要の電子化支援事業の成果を
は国立情報学研究所が当時推進していた
ス﹁研究紀要ポータル﹂があった。これ
大学等の研究紀要の全文画像データベー
に よ る と、
﹁大学とその構成員が創造し
連携支援事業﹂のページにある︶の定義
訳がNIIの﹁学術機関リポジトリ構築
ジトリは、2003年のリンチの論文︵邦
無限の可能性︱学術機関リポジトリ
いたのである。最初は偶然訪れたが、次
も う 一 つ の 成 果 と し て、﹁ 学 術 機 関 リ
そ の 中 で、 国 立 国 会 図 書 館 や 国 文 学
回からは自覚的に使うようになる、そん
ポジトリ﹂を挙げておきたい。機関リポ
研究資料館等の諸成果もさることなが
年に試験公開されていた
︶、および新たな学術
形成・提供︵ CiNii
情報流通の仕組みとしての全国大学図
いる。また、一部には論文の重要性では
大学等の研究機関に所属する研究者の許
一方、平成
などの陰に隠れた存在で
NACSIS-CAT
あった。
なサービスとして受け入れられた。
書館等による機関リポジトリ形成支援
は、このようなそれぞれ別途の
CiNii
目的で作成されたデータベース群のいわ
諾を得て、その研究成果物を機関として
加えて、今年4月からシステムが全面
ら、筆者の身びいきを棚上げして、国立
の三点を採り上げさせていただくこと
で読める論文だけを利用し
なく、 CiNii
てレポートを書く学生も現れはじめ、教
蓄積保管し、無料で世界に発信する仕組
や科学研究費補
Webcat Plus
由来のデー
NACSIS-IR
らである。また、特に強みと意識してい
うコンセプトが時代に受け入れられたか
直に提供する論文情報データベースとい
先端学術情報基盤︵サイバー・サイエン
立情報学研究所では、自らが進める﹁最
年急速に推進されているものである。国
みで、オープンアクセスの手段として近
リポジトリ構築支援事業﹂を開始し、そ
ス・ イ ン フ ラ ス ト ラ ク チ ャ︶﹂ 構 築 事 業
の結果、わが国にも100を超える機関
年 度 以 来、
﹁機関
その欠落部分を埋めていく作業が望まれ
の発展を考える場合、結果
今後の CiNii
的 に 明 確 に な っ た コ ン セ プ ト に 基 づ き、
リポジトリの誕生を見、蓄積された本文
の 一 環 と し て、 平 成
るということである。
を特徴づけることになった。
点も、 CiNii
な か っ た﹁ 日 本 人 の 研 究 成 果 ﹂ と い う
合流し
にした。今号では、その続きを紹介する
ば﹁ごった煮﹂であった。今日脚光を浴
︵
︶などが入っている。
NII-DBR
︶
、
助 金 研 究 成 果 デ ー タ ベ ー ス︵ KAKEN
学 術 研 究 デ ー タ ベ ー ス・ デ ィ レ ク ト リ
紹介した
の
る 学 術 コ ン テ ン ツ・ ポ ー タ ル GeNii
コンポーネントの一つ。ほかに、前号で
は、国立情報学研究所の提供す
CiNii
びるに至ったのは、おそらく本文情報を
察してみたい。
論文が読めてしまう
CiNii
師たちを嘆かしめているとも聞いた。
14
とともに、これから何が必要になるか考
情報学研究所の学術情報流通への貢献
15
18
は、学術情報システムのもう一
CiNii
つの柱として昭和 年から開始された情
報検索サービス
17
NII論文情報ナビゲータ CiNii
が話
題を呼んでいる。論文データベースとい
う馴染みのない分野にもかかわらず、ブ
ログ等での言及が多く見られるように
なった。世間の人々がこのデータベース
の有用性に気づき始めたようである。
62
10
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
付き論文は、約 万件になっている。膨
年が経 過した現 在 も、そ
大な論文数を考えると微々たるものでは
ジャーナルから得ているとする人文・社会
特にわが国では、研 究 情 報の大 半を 電 子
の恩 恵は人 文・社 会 科 学に及んでいない。
になってほ ぼ
あるが、ここ2∼3年の整備結果という
め て い る サ ー ビ ス と 言 え よ う。︵
︵愛知淑徳大院︶は、﹁人文学分野の論文
集合し個々のデータベースの中身を検索
評価の試み﹂ 可能とすることである。国立情報学研究
データベース収録況 : CiNii
Journal of Library and Information 所の学術研究データベース・ディレクト
︵
の対象となる。人文・社会科学分野にお
和前期雑誌記事索引集成﹄全百二〇巻を
て 作 っ て い る も の で、
﹃ 明 治・ 大 正・ 昭
皓星社の藤巻修一氏が渾身の力を傾注し
︶は そ の よ う な も の と し て
リ︵ NII-DBR
意図され、サービスされているが、今は
︶
nii.ac.jp/analysis/index.php
何よりも学術機関リポジトリは、著作
ける論文発表形態が依然として紙媒体を
ベースにデータベース化したもの。ごく
人文・社会科学分野の学術情報流通に
︶で、その欠落状況に
Science, 21, 2007
ついて指摘している。
権処理の容易さからか各大学とも紀要や
前提としても、機関リポジトリには電子
最近、旧植民地時代の雑誌記事も収録し、
ついて概観してみた。お断りしなかった
単なる小規模データベースの倉庫と化し
研究報告から手掛けることが多かったの
化情報が集積されるのである。その点で
﹁雑誌記事索引集成データベース﹂とし
が、電子化された情報の流通を中心とし
明治、大正、昭和前期の人文・社会科
で、結果的に人文・社会科学分野の文献
も期待が膨らむのである。
代文学研究者は、いまやなくてはならな
て有料サービスを行っている。同僚の近
http://irdb.
が多く収録される傾向にあり、同分野の
、 CiNii
、学術機
さ て、 NACSIS-CAT
関リポジトリと国立情報学研究所や大学
、
www.nii.ac.jp/irp/list/
学術情報流通の面からも今後の拡充発展
図 書 館 の 献 身 的 な 努 力 の 成 果 に よ っ て、
再 開 発の設 計の
学分野の雑誌記事のデータベースがある。 て い る。こ こ は、 CiNii
中心にあった大向一輝氏はじめNIIの
が大いに期待されるところである。
わが国の人文・社会科学分野の学術情報
おわりに
皆様に再生計画をお願いしたい。
のコン
国 立 情 報 学 研 究 所 で は、 GeNii
ポーネントの一つとして﹁学術機関リポ
果たすのではないかと思っている。紙媒
た。その点では、
e B-oo k︵電子書籍︶
い ツ ー ル の 一 つ と 高 く 評 価 す る。
CiNii
の よ う な サ ー ビ ス は、 将 来 こ の よ う な
が、この分野の情報流通に大きな役割を
データベースとも適切な連携を図り、人
体の文献の重要性を蔑ろにする気持ちは
同意することはできない。
たビューアも登場している。さらにイン
書籍の持つ﹁可読性﹂に限りなく近づけ
館にとっても個人にとっても深刻である。
文・社会科学に関心を持つユーザの利便
としている。また、機関リポジトリに蓄
足りないといえば、これまでの斯界の
毛頭ないが、保存スペースの問題は図書
個人データベースへの目配りである。後
性を追求していく必要があるだろう。
る が、 詳 細 な 分 析 と し て は、 気 谷 陽 子
ては、すでにその項目で書いた通りであ
藤斉氏︵東北大︶は早くからウェブ上に
タフェースの改良とコンテンツの充実が
全国蔵書のデータベースの不備につい
機 関 リ ポ ジ ト リ に つ い て は、 科 学 技
側
積された学術論文のタイプは、 CiNii
からも一括検索可能になっている。
氏︵筑波大︶の﹁学術情報システム﹂の
存 在 す る 貴 重 な 人 文 学 デ ー タベースの
術・学術審議会学術分科会研究環境基盤
総体としての蔵書における未所蔵図書
部会・学術情報基盤作業部会︵部会主査・
望まれるが、個人で膨大な蔵書を持つこ
の 発 生 ﹂︵﹃ 日 本 図 書 館 情 報 学 会 誌 ﹄
につ
CiNii
︶
。こうした貴重なデータベー
理﹄ 15, 1997
︶など一連の
成 ﹂の 必 要 性 を 訴 えていた︵
﹁人文学研
︵ ︶
,
.
NACSIS-CAT
2007
6
2
データベース評価がある。
究とインターネット﹂
、
﹃人 文 学 と情 報 処
では、論文データベースの
結論として、人文・社会科学を振興す
をもたらすのではないだろうか。
るための要件は、適切なデータベースの
国を挙げて作っていくことに尽きるので
整備、それも本文付きのデータベースを、
はないだろうか。
国立情報学研究所客員教授︶
︵文学部教授・
残念ながらすでに更新が止まっているが、
を紹介し続けている。問題は、これらを
岡本氏はその後も網羅的に学術情報資源
タベースへのリンクを作成した。これは
いてはどうか? このデータベースの成
ス へ の ナ ビ ゲ ー シ ョ ン を 実 現 し た の は、
の岡本
り立ちからも想像できるように、一貫し
ACADEMIC RESOURCE GUIDE
た 方 針 の 下 に 形 成 さ れ た わ け で は な い。 真氏で﹁生成する目録﹂で744個のデー
結果的に人文・社会科学分野の論文も含
むということで期待されてはいるが、そ
れは他に代替するデータベースが存在し
なかったという理由による。後藤宣子氏
と を 可 能 に す るe B-o o k シ ス テ ム は
情報流通︵特に人文・社会科学︶に革新
﹁ ゆ る や か な 総 合 学 術 情 報 シス テ ムの 形
53
を新たに開発し、 流通の未来は明るいと言えるのだろうか。
ジトリポータル﹂ JAIRO
わが国の機関リポジトリの総合検索窓口
さすがに筆者といえども、この問いに
ともと紙媒体で発行された論文も電子化
http:// 科学研究者はいないのではないだろうか。
しかし、機関リポジトリの場合は、も
こ と を 考 慮 す る と、 無 限 の 可 能 性 を 秘
10
有川節夫九大総長︶によって今年7月に
まとめられた﹁大学図書館の整備及び学
術情報流通の在り方について︵審議のま
とめ︶
﹂の中で、第2章﹁学術情報発信・
流通の推進﹂の主要な柱として整備の必
要性が提言されている。国の政策レベル
でも明確に方向性が出されている。
これで十分なのだろうか?
電子ジャーナルが研究に不可欠な存在
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
11
50
ラーニング・コモンズを例に
FD活動との接点から図書館を視る
察することが大切なのだが⋮⋮。
真琴
井上
︵財︶大学コンソーシアム京都
●欧米のFDは図書館に期待する?
●イギリス・レスター大学の視察
去る二月、
海外のFD活動を調査する目的
昨年来、着任した仕事の関係で、教育
改善や学習支援の視軸から図書館を眺め
改善の努力と研究の充実ぶりで、大学評価
で、イギリスのレスター大学を訪れた。教育
ワークルームが居並び、各部屋にはホワ
イトボードやディスプレイ装置がおかれ、
学生たちが議論をする姿が目につく。P
ど工夫を凝らした配置で盛況である。
Cコーナーも円形テーブルを採用するな
にいる
利用に悩む学生は、 Help Zone
に声をかけて支援を受けている。
とプリントされた
図書館員、 Help Team
Tシャツを着用したアシスタントに気軽
上 階 の Student Development Zone
●空間を体験して感じること
には、 Student Learning Centre
があって、
新図書館の空間を体験した感想を述べ
学習支援活動を展開している。デスクに
的な教育能力向上を図るFD︵ファカル
図書館員が常駐し、学習アドバイス︵予約
る機会が多い。というのも、教員の組織
ランキングの地位を急激に上昇させている
こう書くと日本でなら、﹁学生が何をやっ
グループ学習室はガラス張りである。
プワークを行う学生の様子が見て取れる。
よう。館内に足を踏み入れると、グルー
ティ・ディベロップメント︶活動の推進
実施する。セミナールームはすぐ傍にある。
ンを 行い、各 種セミナーの開 催 も 盛んに
、調査研究スキルのコンサルテーショ
Times Higher Education 制︶
The University of the Year 2008/に
9
輝き、本年はQAA︵英国高等教育質保証
機 構 ︶の推 薦で、
ているか丸見えなので、管理がしやすい﹂と
そして、周 辺には多 彩 な 学 習 指 導 用の
Outstanding
support
for
部門のトップに選ばれた。
チップス資 料 が 並ぶ。学 習スキル系では、 いう声が聞こえてきそうだ。実にズレた評
Student
の
大 学 だ。昨 年は
﹁ 図 書 館 をいか にFD 活 動 に 巻 き 込 む か
図書館と教育の連携が希薄だと嘆く日本
一二月にオープンしたばかりの図書館を
なんだ。後で私が建設 委員を務め、昨年
箋 紙 に 書 き あ げ、 机 の 上 に 並 べ て 分 類
が鍵だ﹂との重要発言があった。しかし、 と て も 重 要 な 役 割 を 果 た す の が 図 書 館
の図書館関係者が、この種の会議に参加
是非みてほしい﹂と開口一番に言われた。 図書館が教育の手伝いをやってくれるの
うそぶ
いやサービスを教育に組み込む能力がな
それを見て、﹁なるほど、あのように分析
試しているのに、あなた方に関心がない、 イに映し出して相談している⋮⋮。
作業をしている。また、あるグループは、
することは稀である。実に残念なことだ。
に 出 向 き、工 学 部 長 の 直 々 の 説
Library
明で案内をしてもらう。
例えば昨今、大学図書館界で喧伝され
食傷気味の方も多いであろう。既にコモ
るラーニング・コモンズ。耳にしす ぎて、
図書館のエントランスを入ると、空間
の入館ゲートへと至る。
右側には大学の新刊書店が配され、正面
コンセプトの絞り込み、教育機能との連
育の質の向上、教育方法の改善、学生の
図書館内部は、ガラス張りのグループ
携面では、まだまだ認識は甘い。高等教
学びの支援といったより広い文脈から考
をつくる素晴らしい機会であろう。
近い将来図書館の味方になってくれる人
内空間で展開される議論や作業が映し出
クスにするのか﹂と自然と目を凝らす。館
構成は左側に利用者が寛ぐためのカフェ、 いだけ だ! と 嘯いてしま う。とはいえ、 するのか﹂
、﹁グラフを作ればプレゼンテー
教 員 に 外 国 の 現 状 を 見 て も ら う こ と は、 ションが効果的だな﹂
、﹁作業計画をマトリ
ンズ設置を実現した大学図書館もあるが、
早 速、 昼 休 み に 新 図 書 館
何やらグラフかマトリクスをディスプレ
けんでん
David Wilson か﹂と感嘆の声があがる。日本の大学図
書館も工夫を凝らして様々なサービスを
、
板に書いて、解決に向けて議論を行って
Using
Visual
Powerful Presentation
などに興味を覚えた。
いる。ま た あ る グルー プ は、ブレイン・
Aids
同行の日本人の教員からは、
﹁ここまで、 ストーミング作業でひとつずつ問題を付
、 Improving 価である。少なくとも私には、管理面より教
体系的かつ豊富なFD研修プログラム
できるのか。私の関心事はここにある。
Effective
Note
Making
、ライティング系では、 育的効果に視線がいく。透明でオープンな
の内容と開発方法を解説してくれたのは、
本年一月に京都大学で開催された国際
your
Reading
Skills
、
、
空間の利点はなにか。それは、学び方が﹁見
会議﹁日本のFDの未来﹂でいみじくも、 工学部長であった。挨拶を交わした折り、
Planning
Essays
Writing
essays
What
、 Avoiding Plagiarism
、 える化﹂され、
私が図書館関係者と知って、
﹁君、教育方
お互いに触発されることにある。
ノースカロライナ大学本部・副部長から
is critical writing
法 や 学 習 支 援 の 質 向 上 を 考 え る う え で、 プ レ ゼン テ ー ション 系 で は、 Planning a
あるグループはコンセプトマップを白
で、図書館は今後どうあるべきか、何が
る機会が多い。教育との連携という文脈
FD活動と高等教育改革の実相を視察す
こうした事情で、国内および諸外国の
業務に就いているためである。
Group Study Room(上)と
Student Development Zone(下)
12
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
す風景は、作業手順や学習の仕方を盗むよ
符号している。
を行っている教員もいるが、先の指摘と
図書館員ともに、
﹁人はどのように学ぶの
するのに必要なものは何か。それは、
教員・
うなが
う促す。考え抜かれた利用者相互の教育的
親しんでおくことをお薦めしたい。
グループの活動がお互いに見えて参考に
授業の課題をこなす作業も、他の学生や
いた。学生の学び方を理解して、はじめ
のインタヴューに対して繰り返し陳べて
レスター大学のFD委員長は、私たち
習、課題解決・探求学習などを取り入れ
例えば、学生参加型授業、協調・協同学
能動的な学びを引き出す教授法を重視し、
に向けて︵答申︶
﹂では、
﹁学生の主体的・
中央教育審議会﹁学士課程教育の構築
●教育改善の波に乗れ
できるほうがよい。リサーチの方法や作
理論を知れば、どのような課題の出し方
て教育方法を議論できる。つまり、学習
これは学生同士の学習活動でも同様だ。 か﹂ということ学ぶことである。
業プロセスが﹁見える化﹂され、学生同
間の仕掛け﹂なっているとの印象を受けた。
士、あるいは教員と学生との双方向の反
る﹂ことが提言されている。教育が﹁知
な﹁気づきの場﹂
であり、
創造につながる﹁空
その時、ふと思い出したのが﹁アトリ
をすれば教育効果があがるのか、理解度
●学びのアトリエ空間
エとしての授業﹂というエッセイである。
応が共有できれば創造活動に繋がってい
具 体的には、PBL︵ Project/Problem
︶
やTBL
︵ Team Based
Based Learning
へと向かうのは明らかだ。
同志社大学の佐伯順子先生は言う。
早速、イギリスから帰国して学習理論
アウトカムを呼ぶのかがわかると言う。
識の伝達﹂から﹁知識の創出・自主的学習﹂
●情報リテラシーを育む空間
く。まさに﹁学びのアトリエ空間﹂である。 を増す説明とは何か、どんな支援がよい
﹁ 理 路 整 然 と し た 研 究 成 果 を 知 り たい
のなら、本を読む方がはるかに効果的で
ある。だが、
授業に出席することの意義は、
ひもと
︶などの教育手法の実践を指す
Learning
が、これは、授業の設計・運営・評価の面
や学びの科学を扱う書物を繙いた。する
﹁ 認 知 的 徒 弟 制 ﹂ とい う 学 習 方 法 で 説 明
で教員に相当な力量と負担を強いる。F
この空間は、情報リテラシーを育む空間
できることがわかる。
担当するための職能開発コースも準備さ
D研 修 プログラムには、この種の授 業を
一見整然とした学問の裏にある試行錯誤
事実を学習する学校教育と違って、職
と、私が学びのアトリエと感じたものは、
使いこなせるものではない。実際の探索作
人の親方と弟子たちが教え学び合うプロ
データベース。こうした﹁道具﹂は、すぐに
業や問題解決の文脈に埋め込んで活用し
でもある。授業で紹介される参考ツールや
きれない行間のあわい、知的創造の〝秘
ないかぎり、生きた知識の学習はできない
べきものに直にふれ、そこから活字にし
密〟を読み取ることではないか﹂
︵京都新
の過程、研究者の仕事の舞台裏ともいう
聞2004年3月 日夕刊︶
教員が研究過程で体験した迷いや思考の
同様に、リサーチの現場でしか教えられ
こそ、使いこなす実践知を得られるはずだ。
準備をするプロセスのなかで検索を行って
整理された知識を伝授される授業より、 からである。レポートの執筆やゼミ発表の
﹁ 考 え方 ﹂
︵認知︶を学ぶ点に焦点を当て
際の問 題 解 決の場で使 う 親 方 や 先 輩の
学習理論である。知識という道具を、実
セス、技を盗むプロセスをモデルにした
の自主的学習を誘発し、学習時間を担保
化﹂が叫ばれている。学生たちの教室外
さらにいま、高等教育の﹁単位の実質
れているほどだ。
道筋が披露される授業が望ましい。実際
こうした教育活動は、図書館の支援な
マとなってきた。
に﹁勉強させる﹂方法論もFDの課題テー
する指導、学生への課題の出し方や学生
また、プロの能力は﹁行為の中の省察﹂
た理論で、実感を伴って理解できる。
に図書館のラーニング・コモンズで授業
ない、学べない知識がある。講義で教えら
れる学術知や専門知は、具体的な探究行為
論も刺激的であった。情報リテラシー教
で磨かれると主張する﹁省察的実践﹂理
育のプログラム開発に、
﹁調べながら考え、 しには実 効 性を持たない。昨 年 度のFD
のなかで実践知に変換される。このプロセ
義務化、教育の質向上の潮流に歩調をあ
スを経験でき、図書館による人的支援︵レ
ファレンスや機器操作指導︶も受けられる
わせ、積極的に図書館が教育改善に向け
てできること、学習支援で可能なことを主
考えながら調べる行為﹂とする視点を持
張すべき時を迎えている。いまほどその好
ち込む重要性を教えてくれる。
単 に 物 理 空 間 と お 仕 着 せのサ ポ ー ト
機はない。ラーニング・コモンズひとつを
情報を消費するだけでなく、生産や創造に
サービスがあれば、ラーニング・コモン
とっても図書館と教育改善の接点となる。
場というのはなんと贅 沢な空間であろう。
ズが成り立つわけではない。教育支援や
結びつける﹁学びの身体技法﹂を磨く場所。
﹁学習環境としての図書館﹂が注目を浴び
学習支援を図書館が担いたいなら、無自
︵副事務局長・同志社大学所属︶
図書館の踏ん張りに期待したい。
と対等に議論したいのなら、学習理論に
覚な運営に陥りたくないなら、また教員
つつあるのはこうした理由による。
●学習理論を知る必要性
効果のある教育改善、学習支援を実行
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
13
17
学習相談のため待機する図書館員 事業対象としての図書館
岡本 真
NPO法人化という道もある中で、あ
ARG法人化の意図と目的
ARGフォーラムの開催に先立ち、私
えて株式会社という形態を選んだ理由の
退職とARG法人化
Yahoo! JAPAN
年間勤務した
自身は1999年から
を 退 職 し た。 Yahoo! 一つは、
﹁事業対象としての図書館﹂とい
Yahoo! JAPAN
で は、 前 半 の 5 年 間 を Yahoo! う挑戦をしてみたかったからだ。すでに
JAPAN
カ テ ゴ リ を 編 集 す る サ ー フ ァ ー と し て、 様々な議論のあるところだが、日本にお
いて図書館、特に公共図書館は、地方自
が、語られた。ここでは、ここから始ま
そ れ ぞ れ が 抱 く﹁ こ の 先 に あ る 本 の 形 ﹂
かけがえのない体験を私に与えてくれた。 ︵TRC︶のような企業群が存在している。
躍動するウェブ企業で過ごした
治体による公共的な事業として営まれて
知恵袋などを企
後半の5 年間を Yahoo!
スキームが語られ、次いで金正勲︵慶應
義塾大学︶
、津田大介︵ジャーナリスト︶、 画・設計するプロデューサーとして過ご
いる。もちろん、その周辺には本誌の出
一つの形として長尾館長が構想する長尾
︵ ARG
︶編集長
ACADEMIC RESOURCE GUIDE
アカデミック・リソース・ガイド株式会社
│ ARG法人化を踏まえて
ARGフォーラムの開催
お盆明けの8月 日、東京・神保町の
氏によって、 した。ARGを編集・発行する傍ら、日々
版者である丸善や、図書館流通センター
気に満ちていた。聴衆に語りかけるのは、
橋本大也︵IT起業家︶の
年間は
長尾真国立国会図書館長をはじめ、広い
最初に、国立国会図書館が進める大規模
ジ ン ACADEMIC RESOURCE GUIDE
︵ARG︶
︵以下、ARG︶による催しだ。
トの学術利用をテーマにしたメールマガ
ム。筆者が編集・発行するインターネッ
されたこの催しの名は、ARGフォーラ
きっかけになったという意味で、このA
いなかった長尾スキームが広く知られる
界や出版業界の外ではそれほど知られて
記事になったことで、これまで図書館業
越しいただき、さらにニュースサイトで
を行ったのは初めてだ。大勢の方々にお
ARGであるが、これほど大規模な催し
誌刊行時には通算400号に達している
毎回4700部程度の発行を継続し、本
界により広く、より深くコミットしたい
ばウェブも含む﹁情報﹂や﹁知識﹂の世
に、図書館や出版、さらに還元して言え
た。 活 動 に 割 け る 時 間 と い う 問 題 以 上
制約をしばしば感じるようになってい
に つ れ、 安 定 の 半 面 と し て あ る 活 動 の
捧げるようになり、その比重が年々増す
動の幾分かを図書館業界へのコミットに
年くらいからだろうか、ARGという活
くれた。だが、ここ数年、特に2005
年間、 を継続できる安定した生活を保障しても
の横芝光町立図書館は、公共図書館の世
えば、茨城県のゆうき図書館や、千葉県
アンが見られるようになっている。たと
と経験、そして見識を備えたライブラリ
展が見られるようになり、そこには知識
るが、確実に図書館のウェブ活用には進
しかし、この1、
2年の変化と感じてい
核としている企業はほぼ見当たらない。
業として営めている企業、特にそれを中
ライブラリアンのウェブ活用の促進を事
RGが取り組んできたような、図書館や
決して少なくない。だが、ここ数年、A
図書館に関わる事業を営んでいる企業は
同時に見方によっては余技であるARG
意味で﹁情報﹂に関わる若手
デジタル化事業、そしてその先の未来の
RGフォーラムは一定の成果を収めたと
という渇望にも近い心理が強まってきた
Gとしては、従来のような主宰者個人の
余技として勤務の合間をぬって、自己反
歳に駆け出し小
を 去 り、 活 動 を A R G
Yahoo! JAPAN
に一本化することにした。冒頭のARG
年の歳月を
省を含めて述べれば、中途半端に関われ
る段階を過ぎつつある。そして、その際、
一種のボランティア的な要素のある取り
僧が始めたメディアが、約
フォーラムはその皮きりであり、その約
年間、個人
一ヶ月後の9月
による任意の活動してきたARGを、ア
組みとしてではなく、自分を含め、志を
日には、
経て一定の成熟を果たし、出版・図書館・
で、
﹁この先にある本のかたち﹂という
カデミック・リソース・ガイド株式会社
ナルとしての満足感を得られるエコシス
生活の安定化を、同時にプロフェッショ
同じくする人々が、そこできちんとした
公共的な議論の場を創り出したことでは
ている。
催者たる自分としては、こう自己評価し
へと衣替えしたのである。
11
してわずか2年、若干
のである。そこで、在職 年を区切りに、 界におけるトップランナーだろう。AR
10
ウェブのいずれの業界にも等距離の立場
10
11
ないかと思う。手前味噌ではあるが、主
30
10
26
言 え る だ ろ う。 だ が 、 よ り 重 要 な こ と
3 名。
﹁この先にある本のかたち﹂と題
30
は、1998年の創刊当時は大学を卒業
1998年の創刊以来、すでに
るARGの新たな展開を述べてみたい。
一橋記念講堂は400名以上の聴衆の熱
10
代の論客
3
17
14
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
テムを確立すべき時期と考えたのである。
定 款 に 記 し た A R G の 事 業 目 的 は、
ウェブ技術に関
インターネット活用の研修、
イ ン タ ー ネ ッ ト サ ー ビ ス の 企 画、 開
発、
運用﹂
﹁
﹁
コ ン サ ル テ ィ ン グ ﹂﹁
前各号に附帯する執
地域社会の活性化に関わるコン
わる産官学連携のコンサルティング、仲
介 ﹂﹁
サ ル テ ィ ン グ ﹂﹁
館種、業種といった壁を越えて、各地で図
格の有無、雇用形態の差異を問わず、職種、
抱 く 市 民 ら、実に200 名 以 上。司 書 資
アンが図書館の論理が通用する世界に留
書館の夢が語り合われた。引き続き、この
ような機会を創り出しそこを一つの起点
広く社会・世界とつながる橋渡しをする
ことだ。図書館やライブラリアンは身内
に図書館の復権・再生を図っていきたい。
まるのではなく、そこから一歩 踏み出し、
のウェブ活用│サイト、ブログ、RSS、 は二つある。一つは、図書館やライブラリ
を事例に﹂
Twitter
日 千葉県立中央図書館公共図
ソーシャル系サービスを使い倒す!ツ
の論理に籠ることなく、小さくも偉大な
も う一つの ゴ ー ル は、図 書 館 に 籍 を 置
書館中堅職員研修会﹁図書館サイトで
●9月
ナガリを育み生かすネットサービスが
かなくても社会で活動できるライブラリ
月
日
その一つの実 践として、この
一歩を外界に対して踏み出すべきなのだ。
月9日 岡山県立図書館図書館職員
プレミアセッ
アンを生み出すための基盤を築くことだ。
図書館に与える可能性﹂
●
には、全国図書館大会U
料理人の世界、板前の世界では、流しの職
は、我々の社会における基本的なインフ
う。なぜなら、それほどに図書館や出版
目的も図書館や出版に関わりもするだろ
間に及ぶ討論や実習をプログラムに組み
の一方向的な講義・講演ではなく、数時
単に長時間なだけではなく、講師側から
イベントである。集ったのは、公共、大学、 はない。ライブラリアンが真の専門職で
込 こ ん で い る。 上 記 の 実 施 例 で 言 え ば、 書館に抱く夢を語り合った同時多発的な
らの図書館を背負って立つ人々が集い、図
で、図書館関係者、特に 歳以下のこれか
名古屋、
三重、
京都、
大阪、
岡山、
福岡、沖縄︶
を過ごすプログラムになっている。また、 国
あるならば、流しでも生きていける地位
館員足りえないのだろうか。いや、そうで
すように図書館に属していない限り、図書
呼ばれることが多い。だが、この言葉が示
ライブラリアンは一般には﹁図書館員﹂と
月
人である﹁流れ板﹂が存在する。同じよう
もに開催した。これは翌
日に開催
えてレファレンスのアーキテクチャー
名以上の仲間とと
を再設計する﹂
ラであり、その表面的な姿かたちを変え
三重県の研修では図書館サービスとウェ
学校、専門、国立といった、いわゆる館種
を獲得・確立しなければいけないはずだ。
に、図書館の世界でも、流しのライブラリ
ることはあっても、その本質的な重要性
ブサービスの連携についての討論、千葉
の壁を超えたライブラリアンであり、さ
講師がある。同様の活動は従来も行って
の図書館協会によって行われる研修での
る。その一つに各地で主に都道府県単位
後して、いくつかの活動に取り組んでい
新生ARGであるが、すでに法人化に前
以上のような考えに立って、始動した
田市立図書館 新着雑誌記事速報﹂の作
修での試作からわずか
の研修に参加した野田市立図書館は、研
上がりに留まっていない。事実、千葉県
そして、取り組みはその場限りの盛り
わせた全員参加の研修に取り組んでいる。
考え直す討論、とそれぞれのテーマにあ
ファレンスサービスのあり方を根本的に
成を完了し、公開している。
図書館事業の当面のゴール
このような成果をあげつつ進む新生A
40
http://www.ne.jp/asahi/coffee/house/ARG/
大な一歩を刻んでいきたい。
けは数限りなく詰め込んで、小さくも偉
て図書館は成立するという希望と期待だ
な小さな会社ではあるが、事業対象とし
一人発起人、一人役員、一人社員の小さ
い う 形 態 が 好 ま し い と 判 断 し た か ら だ。
ていくための仕組みとして、株式会社と
このような夢を形に、理想を現実に変え
たい。ARGを法人化した理由の一つは、
クエストに応える組織を創り上げていき
ラリアンを結集し、あらゆるニーズやリ
LCという形態で腕に覚えのあるライブ
的には合同会社の一種であるLLPやL
ヶ 所︵ 山 形、仙 台、新 潟、水 戸、東 京、 アン、流れライブラリアンを生み出したい。
や必要性はなんら変わらないからだ。
県 の 場 合 は、 図 書 館 サ ー ビ ス と ウ ェ ブ
まだ企画・構想の段階にあるが、具体
きたが、講師として招いていただき、研
週間後には、﹁野
修参加者にご清聴いただいて終わりとい
う文化講演会的な研修とは一線を画すよ
月には、三重、千葉、岡山で以下
う強く意識している。たとえば、この
月、
日 三重県図書館協会研修会図
の研修講師を担当している・
●9月
18
1
RGの図書館事業だが、その当面のゴール
野田市立図書館 新着雑誌記事速報
http://www.library-noda.jp/homepage/info/magind.html
法人化前後の取り組み
らに図書館に興味や関心、そして期待を
30
30
サ ー ビ ス の 連 携 の 試 作、 岡 山 県 で は レ
10
ションというものを
帯する一切の事業﹂であり、このすべて
等研修講座﹁レファレンスの限界を超
29
が図書館業界や出版業界に関わるわけで
前各号に附
10
された全国図 書 館 大 会に先立ち、日本 全
筆、 出 版、 講 演、 講 義 ﹂﹁
25
研修は朝から夕方までと、濃厚な一日
9
はない。だが、見方によってはいずれの
40
10
3.
2.
1.
書館職員専門講座﹁広報の前提として
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
15
6.
5.
4.
10
12
企業資料室の新戦略
■賢い節約
図書室の運営においてヒト・モノ・カ
雑誌購読タイトル見直し時に実施し
た 利 用 ア ン ケ ー ト で も、 利 用 者 が 定 常
少ない人数で多くの利用者のニーズに
ネ・スペースが潤沢に供給されることは
こたえるためには、ユーザー自身に調査
的に利用しているデータベースは一∼
ラ の ツ ー ル を 提 供 さ れ て も、 個 別 に 検
の 一 部 を 担 っ て も ら う し か 方 法 が な い。
まずない。限られた人員と予算のなかで
索を繰りかえすのは面倒なだけで興味
運 営 す る に は、
﹁賢い節約﹂をモットー
の 縮 小・ 見 直 し を 強 い ら れ た。 限 ら れ
を 示 さ な い の は 当 た り 前 で あ る。 利 用
二 つ で あ る。 そ れ 以 上 の デ ー タ ベ ー ス
た ス ペ ー ス を 活 か し き る た め に﹁ 残 す ﹂
やツールがあっても使わない利用者が
経済環境変化に対応する企業経営戦略
﹁ 捨 て る ﹂﹁ 加 え る ﹂ と 機 能 の メ リ ハ リ
にしている。
にとって情報戦における優勢は是非勝ち
ア ン ケ ー ト 結 果 と 実 際 の 利 用 統 計 か ら、 そのためには、ユーザーがストレスを感
多 い。 利 用 者 に と っ て み れ ば、 バ ラ バ
取らないとされている。企業内情報部門
を つ け た。 格 好 よ く 言 え ば、 図 書 室 の
アサヒビール株式会社 佐藤 和代
新日本有限責任監査法人 横山 彰
のあり方にも大きく影響を与えています。
を行える環境︵例えば、ユーザーフレン
じず、メリットになるような方法で調査
利用者自身が簡単にワンストップで調
をどこまで提供できるかにかかっている。
査 可 能 な ツ ー ル と し て﹁
移転を一つの契機と捉え機能の選択と
集中を図書室の移動にあわせて実施し
﹂を導入したこ
ル ゼ ビ ア 社 の﹁ Scopus
とにより電子ジャーナルの利用は急激
まず自分の組織サービスのなかで、人と
ば、なぜそれが必要なのかの組織への説
お金を投資するポイントの重点化を行え
ドリーなエンドユーザー検索環境など︶
に上昇した。
﹂、 エ
JDream
最新の事例を寄稿いただきました。
たと言えるのだろう。
まず、最初に考えたのは、﹁何を捨て﹂
目的として、アーカイブ機能に見切りを
﹁ 何 を 残 す か ﹂ で あ っ た。 機 能 の 集 約 を
情報を活かす・空間を活かす
アサヒビール株式会社
■ライブラリーという概念に
研究開発センター 様
つけ、研究開発センター内のどの場所か
現在の当社の情報部門でのレファレン
明も容易になると考える。
新しい図書室は従来の図書室の概念にこ
ス 案 件 は 年 間 3 0 0 ∼ 4 0 0 件 で あ る。
限定されない場づくり
だわる必要はないと考え、全く新しいス
それを担当者2人で処理していることを
アーカイブ機能に見切りをつけた以上、
組織に附属する専門図書館は、親組織
ペースをゼロから作ることとした。移転
らも﹁思いついたときに調べられる﹂ア
の 経 済 環 境 や 経 営 状 況 に 依 存 し て い る。
の機会に図書室の場に新しい意味づけを
クセス環境を整備することに軸を移した。
親組織の経営方針の転換、収益によって、
考えるとレファレンス案件としては多い
企業における情報部門の運営は
創造と工夫に満ちている
組織の位置づけやミッション、予算が大
考えてみた。
のではないかと思う。
■ワンストップサービスと人HUB
きく変動する運命にあると言ってもいい。
ためのコミュニケーションスペースを
①所員のコミュニケーションを促進する
企業の情報部門としては、相談すれば
情報がWe bを通じて入手できる環境が
習 コ ー ナ ー の 数 量 は 減 ら さ な い。
︵閲
②所員が自由に利用できるパソコン付自
議﹂を進化させる人HUBとして機能す
り、個々の研究員の﹁意味ある井戸端会
スの提供と、ヒントがもらえる部署であ
何かがわかる情報のワンストップサービ
覧のためだけのスペースは最小限に抑
る部門でありたいと思っている。
③コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ス ペ ー ス と 自 習
コーナーのスペースは両空間の音によ
る干渉を排除するためのゾーニングを
確保する。
アサヒビール株式会社
佐藤
和代
元 研究所総務部 情報技術室
︵現
知財戦略部勤務︶
える︶
創出する。
急速に整備され、情報源へのアクセスが
容易になると同時に維持コスト︵外国雑
誌価格の高騰、契約データベースの増加
など︶に頭を悩ませているのが現状であ
る。有限の資源をどこに投資するか、選
択の連続である。
2 0 0 8 年 の 夏、 当 社 研 究 開 発 セ ン
タ ー 内 で レ イ ア ウ ト 変 更 が あ り、 図 書
室 も 移 動 と な っ た。 移 転 先 の ス ペ ー ス
は 元 の 図 書 室 の 2 分 の 1 に な り、 機 能
16
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
監査法人におけるライブラリ
私ども新日本有限責任監査法人はアー
ンド ヤングから提供される情報をはじ
当 監 査 法 人 に お い て も、 ア ー ン ス ト ア
書類をチェックする部分がイメージしや
会計監査としてはこうした帳簿などの
構成員が業務上必要とする知識︵ナレッ
ンターに求められる機能の一つは、法人
いう部署が担当しています。ナレッジセ
担当クライアントへ往査し、夜間・早朝
会計士の一般的な一日として、日中は
ウハウ・コツ﹂があります。前者は﹁形
﹁ 業 務 を 通 じ て・ 人 づ て に 伝 達 さ れ る ノ
ジには大別して﹁文字ベースの知識﹂と
レッジは極めて属人的です。このナレッ
快適な空間設定と知の提供
公認会計士が必要とする業務上のナ
きありがとうございました。
容した新たなサービス展開を紹介いただ
し、資料ストックから情報フォローに変
ネジメントや、知識創造オフィスを目指
ションを大切にする雰囲気、ナレッジマ
明るく開放的な空間やコミュニケー
ナレッジセンター
横山
彰
新日本有限責任監査法人
システムはこれ
ようにしました。 RFID
を可能にするツールと言えます。
用度の高い有用な書籍が常時提供される
の頻度を増やし、利用者にとってより利
保管書籍は減少させ、その代わり見直し
スペースの制約から、オープン書架の
のライブラリです。
のような話しやすい雰囲気・場所として
てのオフィス椅子・机ではなく、サロン
す る こ と と し ま し た。
﹁作業場所﹂とし
によるナレッジの流通・
で face to face
交換を可能にすべく、快適な空間を提供
このため、リラックスした雰囲気の中
トすることが期待されます。
う意味で、文字にならない部分もサポー
れだけではなく、業務上のサポートとい
の部分が重視されていました。しかしそ
などを備えて提供する、
という﹁形式知﹂
リでは多数の良質な書籍・データベース
従 来︵ 現 在 も そ う で す が ︶、 ラ イ ブ ラ
良いかもしれません。
式 知 ﹂、 後 者 は﹁ 暗 黙 知 ﹂ と 言 い 換 え て
に事務所にて調べものを行う、というこ
以前はライブラリの貸出手続として
とが多くあります。
会計・監査に関する高いレベルの知識が期
ノート記入又はバーコード利用により対
こ う し た 業 務 を 行 う 公 認 会 計 士 に は、
新日本有限責任監査法人
待されます。また、生きている企業を相手
応していました。端末操作の関係から職
企業資料室2・0?
﹁ Café
と RFID
﹂
ナレッジ センター 様
にしている以上、担当している企業の属す
員の勤務時間中に貸出を限っており、
監査法人と監査業務
カバーすることも必 須です。さらに近い
る業種や業界事情、特有の会計論点等を
監査法人とは、企業の財務書類の監査
時 間 対 応 の 要 望 が 寄 せ ら れ て い ま し た。
これに対応すべく、無人貸出のシステム
システムは、ユーザーにとって
RFID
はストレスの低い快適な利用環境を提供
として
し、ライブラリ担当者にとってはたな卸
新しい知識を習得することが必要です。
等を組織的に行うことを目的として、公
といわ
将来には国際会計基準︵俗に
IFRS
認会計士法に基づき設立される法人です。 れています︶
の導入も予定されており、
日々
の源泉である以上、監査法人におけるラ
し作業を効率化させることでより効率的
我が国の多くの監査法人は会計監査を主
イブラリは業務を支えるインフラの一つ
システムを導入しました。
RFID
上場企業や一定規模以上の株式会社に
として非常に重要な存在です。
自らの専門的知識が公認会計士の収益
ついては法律上、会計監査が義務付けら
たる業務としています。
れており、法定監査は公認会計士又は監
ンスト アンド ヤングという 世 界 最 大 級
め、監査法人オリジナルのデータベース
昨今ではデータベースが充実しており、 な書籍管理を可能にしています。
の会計事 務所のメンバーファームであり、
にも多数の情報が蓄積されています。
査法人のみが業務を実施できます。
全国に約6、
000人を超える人員を擁し、
しかしながら全ての情報がデータベー
書籍・雑誌という紙媒体の情報は依然と
ス 化 さ れ て い る わ け で は あ り ま せ ん し、
実際の監査業務について、経理等を担
して非常に重要なものであり、ライブラ
務を含め、4、
000を超えています。
関与している会社は任意監査や非監査業
当している人を除けば、NHKのドラマ
リには日々利用者が訪れています。
新日本有限責任監査法人においてライ
ライブラリの機能
の印象が強いかもしれません。ドラマで
はかなり誇張されていましたが、実際に
会社へ赴き、担当者へ質問をしたり、会
社の帳簿を初めとした様々な資料を閲覧
したりすることで、適切な会計処理が行
すいですが、実際には会計処理の適否・
ジ︶を蓄積し、適時適切なクライアント
ブラリの維持運営はナレッジセンターと
開示制度等、各種の相談事項の比重が非
への提供をサポートすることです。
われているかを検証しています。
常に大きいものとなっています。
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
17
24
ハーバード日記 │ 誤算と誤解から │
敏哲
江上
modules / wordpress に
/ て 報 告 ︶。 得
難い経験も多数あった反面、失敗や後悔
は 自 ら 積 極 的 に 取 り に 行 く。 た だ 待 っ
言 い 換 え れ ば、﹁ 欲 し い と 思 っ た 情 報
どなく気付きました。
も少なくありません。最大の誤算は、丸
ていても何も与えられることはない﹂
刀 打 ち で き ん と は、 と 泣 き そ う に な っ
く引き受けたけども、こうも英語的に太
だけで英語が自然に聴き取れることはな
が、それを差っ引いても、海外に〝いる〟
を扱うのがメインだったこともあります
日本人スタッフに囲まれ、日本の古典籍
話 を 進 め ら れ る よ う に な り ま し た。 必
い。 そ れ が わ か っ て か ら は、 遠 慮 な く
と れ な い。 結 局 は 自 分 が 損 を し か ね な
この地で満足なコミュニケーションは
合 せ 中 ﹂﹁ 返 事 待 ち ﹂ と い っ た 姿 勢 で は、
とんど向上しなかった、ということです。 と い う こ と な の だ ろ う と 思 い ま す。﹁ 問
1年アメリカにいたのに英語力なんかほ
ていたのですが、さていざ問題の日本の
いんだなと痛感しました。
国際日本文化研究センター
丸1年続いたハーバードでの滞在生活
地図、幕末・明治あたりのそれを実際に
地図を読むカタロガーの話
日ほどで終わろうかという日
も、あと
おっしゃる。聞けば彼女は地図専門のカ
と手伝って欲しいことあるんだけど〟と
ると、意外そうな顔をしつつも、
〝ちょっ
く日本に帰国する予定である﹂と説明す
ジティング・ライブラリアンで、まもな
バード大学の東アジア分野図書館︶のビ
アン?
日本語わかる?〟と話しかけて
く る の で す。﹁ 自 分 は イ ェ ン チ ン︵ ハ ー
く見かけるけど、ジャパニーズ? コリ
見 知 ら ぬ 女 性 が そ ば に 寄 っ て き て、〝 よ
い つ も の よ う に そ っ と 聴 講 し て い る と、
何?〟﹁ エ ン ペ ラ ー の 住 居 で、 さ っ き の
出 版 事 情 や 歴 史 的 背 景︵〝 こ の エ リ ア は
信を持って伝えることができる。他にも、
とが手にとるようにわかるし、自分も自
実務に関わる話題は、相手の言いたいこ
レコードはすでにある﹂だのという目録
年 わ か る?〟﹁ い や、 有 名 人 だ か ら 典 拠
は版?
に、
〝その year
刷?〟だの﹁情
報源上にないから角括弧で﹂だの〝生没
コミュニケーションがとれるのです。特
ないものの、不思議なくらい実に易々と
と、英語自体の聴き取れなさに変わりは
1、20 0 人!︶ で 個 人 の 特 定 も ま ま な
い ハ ー バ ー ド︵ ラ イ ブ ラ リ ア ン だ け で
き に は、 さ す が に 驚 き ま し た。 こ の 広
パスワードが電話で伝えられてきたと
ス テ ム 部 署 か ら、 ロ グ イ ン I D と 初 期
て話す、電話で話す。学内の見知らぬシ
ルや文書よりもまず会って話す、集まっ
だ け で な く、 業 務 連 絡 や 協 議 も、 メ ー
く 話 す。 そ れ は〝 お し ゃ べ り 好 き 〟 な
と に か く 皆 さ ん、 よ く し ゃ べ り、 よ
とのほうが、収穫だったと思います。
方の傾向と対策に触れることができたこ
会話のコツやコミュニケーションのとり
しましたが、あるとき〝クラスにおける
民等を対象とする︶を3ヶ月ほど受講
語としない留学生、海外からの職員・市
れている英語の夏季クラス︵英語を母国
のでしょうか。ハーバード学内で開講さ
では幼少期から当然のように教育される
自 ら 進 ん で 発 言 す る 姿 勢 は、 こ ち ら
かに気付かされます。
しなくても済む環境に身を置いていた
み る と、 日 本 で の 自 分 が い か に、 そ う
が、 い ざ 異 文 化 の 中 で そ れ を 体 験 し て
に 手 に 入 れ る。 当 た り 前 に も 思 え ま す
ア ピ ー ル し、 口 で 説 明 し て、 交 渉 の 末
が、語学としての英語力よりもむしろ、 要 な も の は そ の 都 度、 手 を 挙 げ、 目 で
タロガーで、最近見つかった日本の古地
地図ではショーグンの城だったところ﹂︶
広げ、ディスカッションが始まってみる
図数点に悩まされている。よかったら一
生徒の義務〟についてのディスカッショ
ど、スムーズに会話が進むという経験を
わ け で す が、 彼 女 の 英 語 が か な り の 早
で、ハーバード大学イェンチン図書館に
していた京都大学附属図書館からの派遣
2007年3月から1年間、当時在籍
シュすれば、その場で返事がくる。じっ
なく、電話なり会ったついでなりにプッ
態は進まない。それは放置でも多忙でも
し、と待っていても、返事は来ないし事
が 応 え る 番 だ ろ う、 せ っ つ い て も 悪 い
ちらはもう送ったんだから次は向こう
ないことなんか、しょっちゅうです。こ
教文化圏なはずの韓国人女子からも〝そ
られてきたように思うのですが。同じ儒
〝 No〟
! と言うのです。少なくとも私の
記憶では、日本の学校教育でそうしつけ
クラス中の全員が私のほうを振り返って
走ったところ、アメリカ人の先生を含む
る中、私がつい﹁静かに話を聴く﹂と口
た だ け で 口 伝 え す る の か? と。 逆 に、 ンがありました。皆が口々に〝遅刻をし
メールで問い合せを送っても返事が来
ない〟
〝積極的に参加する〟等と発言す
ら な い だ ろ う に、 電 話 で 名 前 を 確 認 し
なるほどそういうことなら、イェンチン
しました。
口、 し か も 若 者 口 調 の そ れ で、 パ ン ク
実地研修のため滞在しました︵当時の様
ていましたので、その場で快諾して、後
ロックかのようなおしゃべりのほんの一
まずは挨拶代わりの世間話から始まる
日彼女のオフィスにうかがいました。
端すら、何をおっしゃってるやらさっぱ
れはおかしい〟と言われてしまいました。
子は
http://www.kulib .kyoto-u. ac.jp / としていた自分が要領悪いだけか、とほ
りつかめない。これはマズい、なんとな
もったいない英語教師の話
で実際に古典籍の目録を仕事としてやっ
緒 に 見 て ア ド バ イ ス を く れ な い か、 と。 など、馴染みのある話題であればあるほ
のこと。学内ライブラリアンの勉強会を、
10
18
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
だけらしい、
という結論に落ち着きました。
結果、どうやら損をしているのは日本人
ラス終了後にディスカッションしてみた
日本びいきで親しくしていた彼女と、ク
とする、ある種の貪欲さは、研究者向き
得る方法を駆使して積極的に活用しよう
が、読めない外国語資料であっても考え
なら言語を学ぶべきでは、とも思います
かしてそれを読もうとするでしょう。
であっても、貪欲な理系研究者はなんと
に限らず、工学・技術分野の日本語文献
てそんなことはないと思います。人文系
愛称をつけることまでもが横並びの有
で な く、 シ ス テ ム や 広 報、 ダ ジ ャ レ で
果 と 言 え る で し ょ う か。 運 営 方 針 だ け
そ の 意 義 や 効 果 を 検 討 し、 判 断 し た 結
て、 ひ と つ ひ と つ デ ィ ス カ ッ シ ョ ン さ
されたような基本的な懸案事項につい
クセスについてのミーティングを拝聴
り 様 が、 真 に 自 主 的 な 判 断 の 結 果 と は
彼 女 は 極 端 な 例 で し ょ う か。 ア メ リ
れ て い ま し た。 オ ー プ ン ア ク セ ス の 意
と思えなくもありません。
て新潟に2年ほど滞在していたそうです。
分割して各自入力し、再度結合しようと
数 人 の ラ イ ブ ラ リ ア ン と Excel
を
て い 皆、 日 本 語 を 習 得 し て い ま し た。
使った分担作業をしていて、ファイルを
カ で 出 会 っ た 日 本 研 究 の 学 生 は、 た い
いう段取りになりました。数日後に持ち
余談ですが、このクラスの先生はかつ
当時のビデオテープの中では、実に流暢
University of Massachusetts Amherst
という大学を訪れ、いくつかの授業に参
義や効果を一般論として認めるにもし
学部4回生以上を対象とした文献探索の
加されていました。
にも、判断の結果か、記号や色分けが追
名 は ほ ぼ 読 め て い る よ う で し た。 ま た、 し た。 便 利 で し ょ〟
、 と。 ほ か の 人 の 表
と 思 い ま す。 決 し て〝 よ そ が や っ て る
取り組んでいることの表れではないか
い う こ と に、 自 身 の 問 題 と し て 真 摯 に
し ま し た が、 す で に 他 所 で 議 論 し 尽 く
思 え ま せ ん。 ハ ー バ ー ド で オ ー プ ン ア
な日本語で祭り文化の日米比較をコメン
加したことがあります。院生対象のくず
寄ったのですが、なぜか元通りにならな
ろ、ハーバードにとって、自分達にとっ
をいじるライブラリアンの話
Excel
では少しの単語しか覚えていない、﹁モッ
人弱の学生が竹
い、というのも、ある人の表に列が追加
て そ れ が ど う い う 意 味 を 持 つ の か、 と
字が読めない院生の話
トしていた先生ですが、残念ながら現在
タイナイね﹂と苦笑いしていました。
取物語の写本を読んでいました。週1回・
さ れ て い る の で す。〝 必 要 と 思 っ て 追 加
し字講読の授業では、
分程度の授業で、8週目にして変体仮
授業では、図書・論文等の検索・入手が
もともと自分の興味関心が、海外での
日本研究資料とその図書館、というテー
指導されていました。出題されていたの
人のアメリカ移住を研究していたようで
日本語の原作を収録する図書を示しなさ
いろな図書館を拝見し、多くのライブラ
す。滞在中にハーバードや米国内のいろ
自が自主的に判断をするというこの姿勢
は こ の よ う な も の で す。﹁ 英 題 を〝
The
〟という谷崎潤一郎の作品の、原
は、日本の図書館・図書館員がもっと見
Thief
題 は 何 か。 こ の 英 訳 を 収 録 す る 図 書 と、 習うべきことではないか、と私は思いま
地 図 の カ タ ロ ガ ー や 英 語 の 先 生 に は、
ひとつである必要はない、と思います。
な い し、 と る べ き 道 も ひ と つ で は な い、
各 所 に 存 在 す る。 ど れ が 正 解 と も 言 え
せ ん。 多 様 な 図 書 館 運 営・ サ ー ビ ス が
か ら 〟〝 誰 そ れ が 言 う か ら 〟 で は あ り ま
マでもあり、当地で日本について学び研
すが、当時の書簡の写しが束で手に入っ
い。﹂ 存 外 に ハ イ レ ベ ル で、 恥 ず か し な
リアンと接してきましたが、運営・サー
の結合には失敗しましたが、各
Excel
た、ところが書簡独特のくずし字が読め
がらしばし考え込んでしまいました。
が、
歴史研究でそれはやや不審です。
﹁私
語を学ばない人も少なくないようです
といいます。美術や政治・経済だと日本
ころか通常の日本語も読み書きできない
頼 で し た。 が、 実 は 彼 女、 く ず し 字 ど
資料を逃さず集めようとする熱意には学
をうかがう機会がありましたが、海外の
米国の様々なライブラリアンに収書の話
日本語を習得している彼らにしろ、わ
それに応じて、資料の取り扱い、サービ
向は大学によってまったく異なりますし、
語文献への貪欲さは同じかもしれません。 書館であっても、蔵書・ニーズ・研究動
からないという前述の彼女にしろ、外国
ス方針というものも千差万別です。
に様々なものがありました。同じ大学図
ビスの方法、考え方、取り組み方には実
とコメントを返してくれる気さくな人で
レンジジュースとベーコンエッグ〟など
食べるべきだろうか﹂とつぶやくと、〝オ
上 で 再 会 し ま し た。
Facebook
カタロガーの彼女はラテン語が難しいと
が翻字しても、あなたは理解できないの
ぶことが多かったように思います。
完読したときには謝金までいただきまし
気に早口でまくしたてます。1ヶ月後に
語わかる友だちが英訳するから〟と無邪
人だけだ、世界発信は必要ない、という
論で、日本語の文献なんて読むのは日本
日本での文献のネット公開に関する議
での取り組みは本当に各館が自主的に
ラ ー ニ ン グ・ コ モ ン ズ に し て も、 日 本
て し ま い が ち で す。 機 関 リ ポ ジ ト リ や
図書館運営は、どうしても横並びになっ
当 然 と も 思 え ま す が、 実 際、 日 本 の
でなければいいのですが。
長しない不出来な生徒に愛想が尽きたの
メントはありません。ちっとも英語の成
す。ただ残念ながら英語の先生からのコ
︵資料課資料利用係長︶
論調に出会うことがあります。が、決し
よく愚痴っています。私が﹁朝食に何を
帰 国 後、
で は ﹂ と 問 う と、〝 い い の い い の、 日 本
あります。彼女は中国系で、戦前の日本
ない、代わりに翻字して欲しいという依
ある院生の資料読解を手伝ったことが
究する学生に多く出会いました。
20
た。随分とドライではないか、研究する
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
19
40
研究の話
翔
佐藤
筑波大学
ンターネットを用いて収集・管理し、外
部に無料で発信するシステム、あるいは
一連のサービスである。2001年頃か
はじめに
図書館情報学にかかわりを持つきっか
問紙調査等で分析するにも対象の範囲
の設定が難しく、アクセスログ分析はリ
ポジトリの利用状況を知る数少ない手
自分がこの機関リポジトリのログ分
掛かりとなる。
析に携わるきっかけとなったのは、北海
“Zoological
道 大 学、 京 都 大 学、 日 本 動 物 学 会、 筑
波 大 学︵ 後 に 参 加 ︶ が 行 う
Science Meets Institutional
Repositoriesプ
” ロ ジ ェ ク ト︵ 通 称 Z S
プロジェクト︶に2008年5月から分
析担当として参加したことである。同プ
ら欧米で現われてきた取り組みで、日本
では2005年から千葉大学での正式運
け他について、編集室より依頼の﹁われ
いかにして図書館情報学徒になりしや﹂
ロジェクトの詳細については別稿に譲
ると想定できる。これに対し機関リポジ
用がはじまったことや国立情報学研究所
トリのようなオープンなコンテンツは
と 題 し、 い ざ 書 き 進 め て 見 る と、﹁ 図 書
筑波大学に加え、プロジェクトとは別に
誰が、どう使っているか全くわからない
︶
これをきっかけにプロジェクト
るが 1、
ご協力いただけたアジア経済研究所も
意外性がある。それは従来の範囲が限定
による支援事業等の影響を受け普及して
この機関リポジトリの取り組みにより
含めた4つの機関リポジトリのアクセ
館情報学にかかわりを持つきっかけ﹂の
既に国内で、無料で閲覧できるコンテン
スログ分析を現在、修士論文として進め
参 加 機 関 で あ る 北 海 道 大 学、 京 都 大 学、
を専攻するに至ったのは中高大と成り行
万件を超えており、最近ではこれ
きた。
き任せに歩んできた結果なので、きっか
ツは
部分でつまずいた。自分が図書館情報学
けも他人が聞いて面白いようなエピソー
ていたとか、好きな人に図書館情報専門
ドではない︵憧れの人が司書資格を持っ
いるかに注目が集まってきている。そし
らのコンテンツがどのように利用されて
ている。
された学術コミュニケーションのあり
方とは異なるものであり、そこで誰が何
てその利用状況を分析する手法の一つが
をしているのかは分析してみるまで︵時
主に携わっているテーマである﹁機関リ
記録をアクセスログと呼び、これを分析
スしてきたかの記録を取っている。この
を用いどこからリンクを辿ってアクセ
ファイルに対し誰が、いつ、どのソフト
のw e b サ イ ト で は サ ー バ に 置 い た
術コンテンツという過去にない存在の
ネットさえあれば自由に利用できる学
くても︶、どこに住んでいても、インター
で、誰でも︵研究者や学生や専門家でな
﹁ オ ー プ ン で あ る こ と ﹂、 す な わ ち 無 料
の醍醐味であるが、それは何と言っても
まず研究対象である機関リポジトリ
はあるが、それでもデータを示せること
けるデータと言うにはほど遠いもので
にも様々な限界があり、完璧に信頼が置
る点である。もちろんアクセスログ分析
れているかを﹁数字に示して﹂見せられ
どうやって﹂学術的なコンテンツが使わ
の 醍 醐 味 と は、﹁ ど れ だ け / ど こ か ら /
一方、手法としてのアクセスログ分析
に分析しても︶わからない。未知の世界
ポジトリのアクセスログ分析﹂の概要
す る の が ア ク セ ス ロ グ 分 析 で あ る。 質
面白さである。もちろん電子ジャーナル
は 強 い。 そ れ は 印 象 論 で は な い、︵ 一 定
研究対象・手法の醍醐味
と、その面白さについて述べていきたい
問紙調査等とは異なり利用の全数が記
等の分析でも様々な意外性はあると考
の限界はあるにせよ︶事実に基づいた議
機関リポジトリに限らず一般に多く
アクセスログ分析である。
と思う。
録でき、詳細な利用状況等も分析できる
え ら れ る が、 基 本 的 に 利 用 者 は 購 読 者・
広く公開されている文献については質
等教育、医療等の実践に携わるものであ
論の基礎を提供するものである︵そして
を切り開く面白さがそこにはある。
機関リポジトリとは、学術・研究機関
ことから電子的な学術文献の利用分析
購読機関の構成員であり、学術研究や高
、その他あら
会議予稿、 Working Paper
ゆる学術的なコンテンツを含む︶を、イ
機関リポジトリのアクセスログ分析
が構成員の生産したコンテンツ︵学術雑
る。特に機関リポジトリのような無料で
誌掲載論文、紀要論文、学位論文、教材、 の 世 界 で 近 年 一 般 化 し て い る 手 法 で あ
の醍醐味﹂と言う点に絞り、現在自分が
そ こ で 本 稿 で は﹁ 研 究 対 象、 研 究 手 法
学群を紹介されたとかである︶
。
50
著者の発表風景(三田図書館・情報学会 2009 年度研究大会にて)
20
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
ジトリを今実際に使っているのはどのよ
い た 時 の 面 白 さ は 何 倍 に も 増 す。
﹁リポ
そしてこの対象と方法、二つが結びつ
回答者を﹁良い回答﹂に選んでいること
されているものだったのである。青年が
文の一つが機関リポジトリにより公開
いるのであるが、その際に紹介された論
大学図書館関係者の方、あるいは研究者
定である︵本稿を読んで興味を持たれた
随時協力いただける機関を募っていく予
もご協力をいただいており、また今後も
あるが、それとは別に現在一橋大学から
文で扱っているのは4つのリポジトリで
見られるようになっていると言うかつて
うな人々なのか﹂
、
﹁そもそもコンテンツ
からも青年の悩みは解決に向かったと
で自分の論文をリポジトリに登録したら
れに対し﹁良い回答﹂と選ばれた回答者
は利用されるのか、されないのか、その
考えられる。機関リポジトリで公開され
本音を言えば、そうしたデータに基づい
理由は何なのか﹂
、
﹁機関リポジトリは今
たコンテンツが一人の青年を恋の悩み
ない事態を前に、現実に何が起こってい
どんな役に立っているのか﹂
、
﹁民間人の
何が起こるか興味を持たれた方はぜひ
は教育学等の文献を紹介しながら、同様
間で学術論文はどのように受容されてい
から救うのに一役買ったのである。その
て印象論に立ち向かっていくことには
るのか﹂
、
﹁論文を誰でも読めるようにす
他 に も﹃ ロ ミ オ と ジ ュ リ エ ッ ト ﹄ 関 連
までご連絡
min2fl[email protected]. ac.jp
下さい︶。
る か を 現 在 進 行 形 で 知 る こ と の で き る、
ることは︵狭い研究者コミュニティの中
検索した際に北海
キーワードで Google
道大学の紀要論文がトップに現れ、結果
大変刺激的なテーマなのである。修士論
に限らず︶この世界をどんな風に変えて
として本家であるイギリスから日本の
の事例は多く存在し青年の恋人が特別
い く の か ﹂。 こ の よ う な 様 々 な 問 い に 対
紀要に対し大量のアクセスがあった例
異常なわけではないこと等を説明して
し、不完全ではあっても印象論でも理想
など興味深い事例は数多い。
テーマは尽きそうにない。当分は図書館
︶
京都大学の機関リ
介した例としては 2、
ルリポジトリ連合︶ワークショップで紹
が、例えば2008年のDRF︵デジタ
を幾倍にもする。具体例には事欠かない
いる現実の面白さもまた、研究の面白さ
さらに今機関リポジトリで起こって
え、逆にどこからだと効果がないのかと
なサイトからリンクを貼れば利用が増
︶
どのよう
から明らかになっている︶ 3、
数倍の利用の差が現れること等も分析
た場合としなかった場合では数倍∼十
エンジンから全文検索できるようにし
が 出 る の か で あ る と か︵ 実 際、 サ ー チ
としなかった場合でどれだけ利用に差
ンから全文検索できるようにした場合
また、例えば論文本文をサーチエンジ
かは我ながら怪しいが、一方で今の興味
いたわけではないし、今も気にしている
書館情報学﹂という枠をあまり気にして
と 言 う こ と な の で は な い か と 思 う。﹁ 図
これまでずっと研究を続けられてきた
の テ ー マ が ど れ も 魅 力 的 だ っ た た め に、
らずその時々で取り組んできた目の前
関リポジトリのアクセスログ分析に限
学を学んだのは成り行きの結果だが、機
ついて考えて見ると、大学で図書館情報
書館情報学徒になりしや﹂ということに
ここで冒頭に戻り﹁われいかにして図
である。
て活躍すべく日夜精進に励みたい次第
あるならば図書館情報学の研究者とし
情報学に携わっていくことだろうし、で
ポジトリに収録された教育学研究科の
い っ た、 現 実 の リ ポ ジ ト リ 運 営 に 役 立
ということが出来るのである。
とか、研究評価、図書館の成果評価、物
図書館情報メディア研究科︶
たな価値創出に向けて∼.東京, 2009-07-09
,国
立 情 報 学 研 究 所, 2 0 0 9, http://hdl.handle.
.
net/2241/103145
2︶佐 藤 翔.〝 リ ポ ジ ト リ の こ ん な 使 わ れ 方, あ ん な
使 わ れ 方 〟. 第 回 D R F ワ ー ク シ ョ ッ プ﹁ 日 本
の 機 関 リ ポ ジ ト リ と そ の テ ー マ 2 0 0 8﹂
.横
1︶佐 藤 翔.〝 Z S プ ロ ジ ェ ク ト リ ポ ジ ト リ 登 録 は,
次の引用を喚起するか こ
: れまでの成果と今後の
課題〟
.平成 年度CSI委託事業報告交流会︵コ
ン テ ン ツ 系 ︶∼ 機 関 リ ポ ジ ト リ の 更 な る 普 及 と 新
参考文献
研究室風景
癖になる楽しさがある︶。
論でもない、データとそれに基づく現実
紀要論文に対し、Q &Aサイトからリン
の対象が図書館情報学に関連するテー
﹁われいかにして
図書館情報学徒になりしや﹂
理 解 を 示 す こ と が で き る の で あ る。
﹁私
クが貼られ多くのアクセスが訪れてい
つデータを提供できること、それによっ
マに向いているのも確かである。アクセ
はこう思います﹂ではない、﹁こうです!﹂
ると言う例があった。その時のQ &Aサ
てリポジトリが改善されていくことも
スログ分析の他にも計量書誌学である
以上をまとめると、機関リポジトリの
理的な図書館における利用者行動、図書
︵大学院博士課程
イトの質問は、いつも親友について楽し
醍醐味の一つである。
アクセスログ分析とは、雑誌論文をはじ
館の外部委託などまだまだ興味のある
20
そ う に 語 っ て い た 恋 人 か ら、﹁ 実 は そ の
い﹂と打ち明けられた青年が今後どうす
めとする学術コンテンツが誰でも気軽に
親友は自分の空想上の存在で実在しな
べきか相談すると言ったものである。こ
浜, 2008-11-27
,DRFデジタルリポジトリ連合,
2008, http://hdl.handle.net/2241/103689
.
〝機関リポジトリ収録コンテンツ
3 ︶佐 藤 翔 , 逸 村 裕 .
における利用数とアクセス元,アクセス方法,コ
ン テ ン ツ 属 性 の 関 係 〟. 三 田 図 書 館・ 情 報 学 会
2009年度研究大会.東京, 2009-09-26
,三田
図書館・情報学会,2009.
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
21
4
拡散する読書空間
│ 体感するしつらえ
年先には
感じることが多い、疑いもなく既成の概
念に押さえられてしまってはいないだ
にはなかった情報の得方は
もっともっと考えられないくらいの新
ろうか。
に図書館環境の変化を考えてみたい。
私が携わった図書館家具デザインを例
しいシステムに変わっているかもしれ
では、将来は情報の得方がもっと激変
ない。
するだろうから図書館とよばれるもの
たちの生活の様が大きく変わった。この
活動して 年以上になるが、この間に私
私がインテリア家具デザイナーとして
ら離れ、何時でも何処でも自由に。今や
解放されたのである。スピーカーの前か
スイングしながら自分だけの音の世界に
応し、乗り物に乗っても歩きながらでも
ウォークマンの出現に人々は敏感に反
電話で得るニュースは早いけれども断
リアルが獲得できないことである。携帯
報を獲得することはできるが、絶対的な
落とし穴がある。確かに瞬時に膨大な情
そうだが、この電子メディアには大きな
ものである。慶応大学らしい気品のある
も最新のシステムが導入された立派な
蔵管理などの図書館システムにおいて
収蔵冊数や建物の規模が最も大きく、収
図 書 館 は、 当 時 の 大 学 図 書 館 と し て は、
1982年に完成した慶応大学三田新
建 築 家 槇 文 彦 氏 の 設 計 に よ っ て、
ことはだれもが実感するところであろう。
片的で、その背景までを知ることはでき
は 必 要 な い の か? と い う 疑 問 に 晒 さ れ
その変化の背景にはさまざまな理由があ
この自由さが当たり前になった。
T V に よ る ニ ュ ー ス、 映 像 情 報 を は じ
や こ の 束 縛 か ら 解 か れ た と い っ て 良 い。
にかつ直接的に結ばれていたのだが、今
私たちは、ずっと家や場所環境に密接
能を搭載したものが普通になったのであ
という、小型パソコン同様のマルチな機
字情報や画像や動画情報をも送受信可能
によってもはや通話機能にとどまらず文
時に、地球規模のインターネットの普及
て爆発的に普及した。そして小型化と同
から離れ、携帯電話として年々小型化し
大きな変化があった。家や電話ボックス
ションのニュアンス、表情に見える感情
のみえる会話の言葉やコミュニケー
に出会うことでの発見や体験や感動。顔
予定していなかったことやものや人
ないかと常々思っているからである。
感が得られる大きな要素となるのでは
間の時間と空間の体験こそが、生活の実
考するとか熟練するというように、その
左右というように両極に偏っている。熟
ナルのデザインによって出来上がって
建築空間のデザインにあわせたオリジ
子、 新 聞 架 に い た る ま で 全 て の 家 具 を、
く 開 架 閲 覧 エ リ ア の 書 架 や デ ス ク、 椅
れていて整然とした内部空間に相応し
ないし、即効性が求められ、優劣、白黒、 建築の佇まいが、隅々まで緻密に設計さ
め、電子メディアが大量に普及し、人々
る。いつでもどこでも、国内のみならず
いる。私にとっては、はじめての図書館
の情報の入手ルートが容易でかつ多様化
ない。この数値化できないことを体感す
したことは文明的変化とさえいえるもの
るリアルさこそ新しい図書館に求めら
の 機 微。 本 を 手 に し て 触 れ 感 じ る 肌 合
そもそも生活は、常に継続した時間の
れているのである。少なくとも今、従来
海外とも、時間も空間も飛び越えて、双
流れの中にあり決して途切れることは
の固定的なあり方ではなく、動的で流動
である。ウォークマンや携帯電話の普及
同時にできるのである。いつでもどこで
ない。そして時間の経過という流動的な
的な感覚の変化に対応できる環境でな
いや暖かさや重量感など、インターネッ
もなんでも、自由に選択できて束縛され
体験と空間の体験も同時に継続的に流
ければならない。今私たちは、本当に自
トでは得られない豊かさに触れるとい
るものがなくなった。
動的に体験するものだと考えると、生活
由に心地よく情報や本に触れることが
方向性をもった電子メディアとして成長
このように生活のかなりの部分が、ど
するという連続する流れの中において
したことで、生活の中になくてはならな
こか決められた場所に留めおかれること
空間的な規制のない電子メディアが受
できているだろうか。まだまだ不自由を
によって、音楽を聞くことも、遠方の人
のない、新しい生活スタイルは、空間の
年前
との会話も場所に縛られることなく、歩
ありかたの変化をも導き引き出している
け 入 れ ら れ る の は 必 然 で あ る。
うリアル。これは数値化することはでき
といえるのではないか。
いものとなった。
一方生活に必需な情報を得る手段にも
るだろうが、最も大きな要因は、人々の
藤江和子アトリエ 藤江 和子
50
きながらでも、別な行為をしながらでも
のではなかろうか。
情報の獲得の仕方の変化にあるといえる
30
30
茅野市民館・図書室 JR 駅に直結した図書室はいつも賑わっている
22
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
きたのである。
多くのことを学ぶ機会を得ることがで
書館システムを、管理運用の視点からも
ての体験的な視点だけでなく、最新の図
家具設計であり、それまでの利用者とし
思っている。
設計する際の根底を築くことができたと
わったが、その後の新しい図書館環境を
考察をつくし、惜しくも残念な結果に終
新しいメディア環境のしつらえについて
加し競った。私もグループの一員として
れながら本を探す、頭上の空間を感じな
大きな空間を、低い曲線の書架に誘導さ
独特の建築で、壁のない森か林のような
コンクリートのアーチ型が連続する
術系大学ならではの新しい図書館である。
のであり、私が全ての家具を設計した芸
年 代 に は い り、 私 た ち の 情 報 を 得
を 具 体 的 に 目 に し た 瞬 間 で あ っ た。 こ
したのである。新しいメディアとの関係
一体となって市民の大歓声とともに開館
う伊東氏の表現そのままにケヤキ並木と
2001年に﹁都市の中に広場を﹂とい
民を交えた膨大な議論を重ねた末、漸く
建築家伊東豊雄氏が勝利した後、市や市
索するきっかけとなった。このコンペは
家が新しい時代のメディアのあり方を模
の建築設計コンペが行われ、多くの建築
1994年に
﹁せんだいメディアテーク﹂
る シ ス テ ム が 大 き く 変 わ り は じ め た。
は公共性のある建築空間として大変に
記憶に刻み込まれていくのである。これ
緑や山並み、町の風景が無意識のうちに
あり、本棚や本の隙間から見える豊かな
いきとした心地のよい解放された姿で
して日常の生活に溶け込んだ様はいき
に触れることができる環境である。こう
母親もお年寄りも気軽に立ち寄れて本
かけを日常的に得られるし、子供連れの
るように目をやり、ここに足を運ぶきっ
に急ぐ人もウインドウショッピングす
に日常のリズムに溶け込んでいる。通勤
ぎりまでここで過ごす学生が多く、完全
物に触れながら電車の姿が見えるぎり
みると閲覧席は早い者勝ちで塞がり、書
ることを大事なテーマとした。完成して
彼らの居場所をつくることを大切にす
られるが、我々設計チームは将来を担う
中高校生がJRで通学する姿がよく見
るが不自由さを感じさせない。地方では
システムが組まれていて、小規模ではあ
接に連携して要求に即座に答えられる
結していることや市の中央図書館と密
︶の小さな
築 設 計 古 谷 誠 章 氏・ NASCA
図書館は大変利用者が多い。茅野駅に直
2005年に開館した茅野市民館︵建
心地良い本との関係を体感するための
な意味をもっている。ここまでに述べた
館にこのような家具があることは大き
大地のような家具をデザインした。図書
が得られるように、緩やかな起伏のある
り、腹這いになって本を読みふける感覚
に は、 原 っ ぱ に 寝 転 ん で 思 い に 耽 っ た
つながるこの建築の最も特徴的な場所
て緩やかに傾斜する床が芝生の広場に
に刻まれるのだと考えたのである。そし
空間や本との関わりを実感として記憶
し作用されることがあれば、この図書館
きるリアルな経験によって感覚を刺激
な建物の特徴的な空間を十分に体感で
境のあり様を追求してみると、このよう
知的探究者にとって、最も快適な図書環
いしつらえを工夫している。このように
求に対応できるように行為にふさわし
間じっくりと鑑賞するなど、利用者の欲
検索は、クイックリーに、あるいは長時
る。また美術大学ならではの映像情報の
覚をもたらすことを意図したものであ
り歩く空間体験が自由で解放された感
ができる。木々の間を散策するように巡
覧デスクで心地よい時間を過ごすこと
がらアーチをくぐり新しい発見をした
みせていくのではなかろうか。
の読書環境はますます拡散して広がりを
とりわけ新しいメディアで育った若者
ないのである。
空間は、既に従来の図書館の枠に収まら
感覚を求める知的探究者にとっての読書
制のない、不自由のない環境や、自由な
常的にしている。特別ではないことや規
ながら読書に没頭することを私たちは日
うか。音楽を聴きながらコーヒーを飲み
てではないと言っても良いのではなかろ
には、必ずしも整然とした静寂空間が全
本当に心地の良い読書環境とはの問い
れ最も人気の場所となっている。
に深く理解された様として受け入れら
境つくり、そしてそのしつらえは利用者
図書館の新しい姿を求める建築的な環
多摩美術大学図書館
アーチのある空間を誘導するような曲線の低い書架と閲覧テーブル
り、多摩丘陵の緑と陽光に満ちた窓際閲
のコンペには多くの建築家グループが参
重要な意味を持っているのである。
最も顕著にしつらえた姿であり従来の
︶
http://www.fujie-kazuko-atelier.com/
2007年開館した多摩美術大学新図
︵
図書館には見られない風景である。この
多摩美術大学図書館(写真:淺川敏)
起伏のある広場へつながるように床が浮いたようなラウンジソファー
書館は、建築家伊東豊雄氏設計によるも
丸善ライブラリーニュース 第 7・8 合併号
23
90
おはようございます
編集後記
﹁宝探し﹂ のおもいで
図書館が好きです。資料探しや、コ
ピ ー を と り に い き ま す。 自 分 で 編 集
し て る よ う な 本 が 多 い の で、 よ く い
きます。
最初からそ の 資 料 が あ る の は わ か っ
ているのです が 、 請 求 し て 、 あ る べ き
ところにある べ き 文 章 が の っ て い る と 、
ただそれだけ で う れ し い 。
地元の区立 図 書 館 か ら 国 立 国 会 図 書
館、都立中央 図 書 館 、 多 摩 図 書 館 、 早
稲田大学図書 館 、 大 宅 文 庫 、 松 竹 大 谷
図書館、現代 マ ン ガ 図 書 館 。 遠 山 さ ん
の 音 楽 図 書 館 は ま だ あ る で し ょ う か。
資料室では、 日 本 近 代 文 学 館 、 世 田 谷
文学館、演劇 博 物 館 、 俳 句 文 学 館 、 国
立劇場などな ど 、 お 世 話 に な り ま し た 。
それぞれにお も い で が あ り ま す 。
そ う い え ば、 む か し﹃ 日 本 の 名 山 ﹄
全二〇巻+別 巻 二 巻 ︵ 博 品 社 ︶ と い う
アンソロジー 編 纂 の お 手 伝 い を し た こ
とがあり、日 本 山 岳 会 の 資 料 室 に も お
世話になりま し た 。 久 生 十 蘭 の 仕 事 で
は、市立函館 図 書 館 に 、 居 な が ら に し
て資料を融通 し て い た だ き ま し た 。
あれはいつ だ っ た か 、 五 月 の 連 休 に 、
図書館に通いつめたことがありまし
た。せっかく の 休 み だ け ど 、 ま あ い い
か、すいてい て 、 そ れ は そ れ で 気 持 ち
︵河出書房新社編集部︶
もよかろう、というつもりが、おおぜ
いの若者でいっぱい。日本も捨てたも
んじゃないな、なんておもいました。
むかし、帰りぎわに、受付のおねえ
さんに、お疲れさまでした、と声をか
けられ、え、図書館で疲れないでしょ
う、 と 不 思 議 に お も っ た も の で す が、
歳をとったいま、閉館の時間に追われ、
たしかにへとへとになっています。
とうとつですが、子どものころ、町
内に﹁子ども会﹂というのがありまし
た。夏などに、バスにゆられて海水浴
にいったりするのですが、そこで生ま
れ て は じ め て、
﹁宝探し﹂というもの
をしました。砂浜のそこここに、木片
がさしてあって、それを探してひっこ
ぬく。ピーッという、笛が鳴ったら時
間切れ。木片の根っこに番号が書いて
あって、その数字によって、景品があ
れこれ。なにぶんはじめてのこと、お
たおたしてて、あ、あそこにちょっと
へ ん な 形 だ け ど、 あ れ も そ う な の か、
と近づいたところで笛の音が。
いまも、その、ちょっといびつな木
の形と、指先にかかるかかからないか
の触感がのこっていて、それをたずね
て、図書館にいくのです。
・ 究に係る大学図書館他色々な館種の方々にお届けしています。
図書館をキーワードに、教育 研
流
・ 通グループの一員として、取組みを始めております。︵中︶
本誌アドバイザーの根本彰氏、常世田良氏による対談﹁公共図書館を考える﹂、学術情報流通
にかかわる皆様からの﹁図書館のこれから﹂についてご協力いただきました。グーテンベルク
出
・版
以来の本の概容が提示されつつある転換期にこそ、新たな枠組みを皆様と考えて行きたいと思
います。弊社は、印刷
図書館で仕事をする人たちの現場からのレポートを連続掲載します。
様々な経歴・経験から、図書館に係るアイデア・ヒントと日々の積み重ねを紹介します。
西口 徹
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