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04 非鉄金属

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04 非鉄金属
特集:日本産業の動向〈中期見通し〉
(非鉄金属)
非鉄金属
【要約】
■ 2015 年の銅地金生産は、1,555 千トンと前年比横ばいで推移する見通し。内需は減少が見
込まれるものの、輸出増加が生産を下支えする見通し。2016 年については、消費増税前の
駆け込み需要もあり、電線、伸銅品ともに内需増加が見込まれ、銅地金生産は、1,573 千トン
と前年比+1.2%を予想する。
■ 2020 年の銅地金生産は、2015 年以降年平均成長率+0.5%で推移し、1,594 千トンを予想す
る。電線、伸銅品の内需は伸び悩みを、輸出が下支えする構図が続く見通し。
■ 日系銅製錬企業は、輸入鉱による買鉱製錬の形態をとっているため、戦略の方向性として原
料調達の安定化を掲げている。そのために権益投資とリサイクル投資を積極化している。権
益投資については、銅価格により収益変動リスクが増すが、中長期的な目線で優良鉱山を
確保することは必要不可欠な戦略であろう。リサイクル投資については、収益化が難しい半
面、鉱山外資源を活用できるという観点で寧ろリスクを下げられるため、有効な戦略と考え
る。
【図表4-1】 銅地金需給動向と見通し
【実数】
国内需要
輸出
輸入
国内生産
グローバル需要
摘要
(単位)
銅地金
(千t)
銅地金
(千t)
銅地金
(千t)
銅地金
(千t)
銅地金
(千t)
【増減率】
2014年
(実績)
2015年
(見込)
2016年
(予想)
2020年
(予想)
975
950
960
944
516
523
532
568
67
48
49
48
1,554
1,555
1,573
1,594
22,776
23,158
23,676
25,913
(対前年比)
国内需要
輸出
輸入
国内生産
グローバル需要
摘要
2014年
2015年
2016年
(単位)
銅地金
(%)
銅地金
(%)
銅地金
(%)
銅地金
(%)
銅地金
(%)
(実績)
(見込)
(予想)
2015-2020年
CAGR
(予想)
+ 6.9%
▲ 2.5%
+ 1.1%
▲ 0.1%
▲ 9.8%
+ 1.3%
+ 1.7%
+ 1.7%
+ 62.5%
▲ 28.3%
+ 1.1%
▲ 0.1%
+ 5.9%
+ 0.0%
+ 1.2%
+ 0.5%
+ 8.4%
+ 1.7%
+ 2.2%
+ 2.3%
(出所)経済産業省「非鉄金属等需給動態統計」、World Bureau of Metal Statistics, World Metal Statistics より
みずほ銀行産業調査部作成
(注)2015 年以降は、みずほ銀行産業調査部予測
みずほ銀行 産業調査部
46
特集:日本産業の動向〈中期見通し〉
(非鉄金属)
国内銅地金需給の動向
I.
【図表4-2】 生産・内需・輸出・輸入推移
(kt)
1,800
生産
内需
輸出
輸入
1,554
1,600
【図表4-3】 国内供給(内需+輸出)構成比推移
100%
1,594
輸出
80%
35%
35%
36%
38%
1%
1%
1%
1%
24%
23%
23%
22%
1,400
1,200
975
1,000
944
800
600
516
568
400
60%
40%
20%
200
67
0
00
02
04
06
08
10
12
その他
伸銅品
40%
40%
40%
39%
15e
16e
20e
電線
48
14 16e 18e 20e (CY)
0%
14
(CY)
(出所)【図表 4-2、3】とも、経済産業省「非鉄金属等需給動態統計」よりみずほ銀行産業調査部作成
(注)2015 年以降は、みずほ銀行産業調査部予測
2015 年の銅地金
生産は前年比横
ばいで推移
2015 年の銅地金生産は、銅地金内需が減少となる見通しも、輸出の増加や
輸入の減少により 1,555 千トンと前年比横ばいで推移する見通し(【図表 4-1】)。
銅地金内需は、主要需要製品である電線、伸銅品がともに低調に推移し、
950 千トンと前年比▲2.5%の減少となる見通し。輸入については、2014 年はイ
ンドネシアの禁輸政策を背景に一時的に製錬メーカーが輸入を増やしたため、
2015 年は 48 千トンと前年比▲28.3%の減少となる見通し。輸出については、
中国向け等で堅調な推移が見込まれるため、523 千トンと前年比+1.3%の増
加となる見通し。
2016 年の銅地金
生産は、前年比
+1.2%増加する見
通し
2016 年の銅地金生産は、消費増税前の駆け込み需要の影響による銅地金
内需の増加や、引続いて輸出の増加が見込まれることから、1,573 千トンと前
年比+1.2%増加すると予想する。銅地金内需については、電線、伸銅品向け
ともに増加し、960 千トンと前年比+1.1%の増加を予想する。輸出については、
日系ユーザーの海外生産の拡大に伴い増加が見込まれ、532 千トンと前年比
+1.7%を予想する。
2020 年にかけて
銅地金生産は、
年平均+0.5%で推
移する見通し
2020 年の銅地金生産は、銅地金内需の伸び悩みを輸出の増加でカバーす
る構図が続くことで、2015 年以降の年平均成長率が+0.5%で推移し、1,594 千
トンを予想する(【図表 4-2、3】)。銅地金内需は 944 千トンと同成長率が▲
0.1%で推移すると予想する。他方で、輸出については、568 千トンと同成長率
が+1.7%で推移すると予想する。2020 年の段階においても中国の地金需要
超過の状況は続くことが想定されるため、日系製錬メーカーの銅地金輸出の
緩やかな増加トレンドは継続すると見られる。
みずほ銀行 産業調査部
47
特集:日本産業の動向〈中期見通し〉
(非鉄金属)
II. 銅加工分野の需要動向
① 電線需要
【図表4-4】 銅電線需要分野別出荷動向と予測
(千t)
1,000
輸出
900
800
728 714 724
712
700
その他内需
通信
600
電力
500
400
自動車
300
電気機械
200
100
建設・電販
0
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15e 16e
20e
(CY)
(出所)日本電線工業会資料等よりみずほ銀行産業調査部作成
(注)2015 年以降は、みずほ銀行産業調査部予測
2015 年の電線需
要は、前年比▲
1.9%で推移
2015 年の電線需要は、電力向けが増加を見込むものの、その他用途につい
ては減少が見込まれるため、714 千トンと前年比▲1.9%の減少となる見通し
(【図表 4-4】)。電力向けについては、東日本大震災後、原子力発電所の稼
働停止で設備投資を抑制していた電力会社が、更新投資を一部実施するこ
とが寄与してくる見込み。他方で、主力の建設・電販向けは、再生エネルギー
関連需要が一巡し減少する見通しであり、電気機械向けについても、重電向
け以外の家電や電装品向けが低調に推移することで、減少となる見込み。ま
た、その他分野についても、国内自動車生産台数の減少に伴い、自動車向
けも減少、光化が続く通信向けも減少となる見込み。
2016 年の電線需
要は、前年比
+1.3%増加する見
通し
2016 年の電線需要は、消費増税前の駆け込み需要の影響もあり、建設・電販
向けや自動車向け、電気機械向けで増加が見込まれ 730 千トンと前年比
+1.3 %の増加となる見通し。また電力向けについても、力強さには欠けるもの
の、引続き高経年設備の更新需要が見込まれる。他方で、通信向けについて
は、引続き光化により伸び悩む見通し。
2020 年にかけて
電線需要は、年
平 均 ▲ 0.1% で 推
移する見通し
2020 年の電線需要は、2015 年以降の年平均成長率が▲0.1%で推移し、712
千トンと予想する。2016 年の一時的な需要増は期待できるものの、国内建設
投資や国内自動車生産台数の減少トレンドが予想されることから、建設・電販
向けや自動車向けは伸び悩むことが予想される。他方で、国内製造業による
設備投資の回復もあり電気機械向けは緩やかな復調が期待され、また、電力
会社による更新投資需要も継続的に見込まれることから、結果として、電線需
要全体では横ばいを維持すると予想する。
みずほ銀行 産業調査部
48
特集:日本産業の動向〈中期見通し〉
(非鉄金属)
② 伸銅品需要
【図表4-5】 伸銅品需要分野別出荷動向と予測
(千t)
1,200
輸出
1,000
その他
813 783 788
800
773
一般機械
600
輸送機械
400
電気機械
200
金属製品
0
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15e 16e
20e
(CY)
(出所)日本伸銅協会資料等よりみずほ銀行産業調査部作成
(注)2015 年以降は、みずほ銀行産業調査部予測
2015 年の伸銅品
需要は、前年比
▲3.8%で推移
2015 年の伸銅品需要は、783 千トンと前年比▲3.8%の減少となる見通し(【図
表 4-5】)。主力の電気機械向けは、半導体リードフレーム向け需要が鈍化す
ることに加え、製品の小型化も続いていることから減少し、また、自動車生産
台数の減少により輸送機械向けも低調、その他、エアコン向け等の一般機械
向けも減少で着地すると予想する。伸銅品は電線に比べ輸出比率が高いが、
半導体向けなどの電気機械向けの輸出低迷もあり、減少で着地すると見られ
る。
2016 年の伸銅品
需要は、前年比
+0.6%増加する見
通し
2016 年の伸銅品需要は、788 千トンと前年比+0.6%のほぼ横ばいとなる見通
し。消費増税前の駆け込み需要により建設、自動車、電気機器需要の増加が
予想されるため、輸送機器向け、日用品やガス機器を含む金属製品向け、エ
アコン等を含む一般機械向けが増加すると予想する。他方で、輸出について
は、生産の現地化が続くこともあり減少すると予想する。
2020 年にかけて
伸銅品需要は、
年 平 均 ▲ 0.3% で
推移する見通し
2020 年の伸銅品需要は、2015 年以降の年平均成長率が▲0.3%で推移し、
773 千トンと予想する。電子機器搭載数量増に伴い半導体向けなどの電気
機械向けは増加し、また、緩やかな消費回復に伴い、金属製品向けやエアコ
ン等の一般機器向けは横ばいを維持することができると予想する。他方で、自
動車生産台数の緩やかな減少が見込まれるため、輸送用機器向けは減少を
見込む。また、輸出向けはユーザーの現地生産化が継続すると見られ、減少
トレンドを続ける見通し。
みずほ銀行 産業調査部
49
特集:日本産業の動向〈中期見通し〉
(非鉄金属)
III. グローバル銅地金の需要動向
【図表4-6】 グローバル銅地金需要と見通し
【実数】
米国
欧州(EU)
中国
ASEAN
グローバル需要
摘要
(単位)
銅地金
(千t)
銅地金
(千t)
銅地金
(千t)
銅地金
(千t)
銅地金
(千t)
【増減率】
2014年
(実績)
2015年
(見込)
2016年
(予想)
2020年
(予想)
1,841
1,866
1,893
1,990
3,215
3,245
3,279
3,416
11,352
11,637
12,036
13,722
800
826
854
984
22,776
23,158
23,676
25,913
(対前年比)
米国
欧州(EU)
中国
ASEAN
グローバル需要
摘要
2014年
2015年
2016年
(単位)
銅地金
(%)
銅地金
(%)
銅地金
(%)
銅地金
(%)
銅地金
(%)
(実績)
(見込)
(予想)
2015-2020年
CAGR
(予想)
+ 0.8%
+ 1.3%
+ 1.5%
+ 1.3%
+ 5.9%
+ 0.9%
+ 1.0%
+ 1.0%
+ 15.5%
+ 2.5%
+ 3.4%
+ 3.4%
+ 0.3%
+ 3.2%
+ 3.4%
+ 3.6%
+ 8.4%
+ 1.7%
+ 2.2%
+ 2.3%
(出所)World Bureau of Metal Statistics, World Metal Statistics よりみずほ銀行産業調査部作成
(注)2015 年以降は、みずほ銀行産業調査部予測
2015 年のグロー
バル銅地金需要
は 、 前 年 比 +1.7%
で推移
2015 年のグローバル銅地金需要は、前年比+1.7%の 23,158 千トンと予想する
(【図表 4-6】)。2014 年の前年比+8.4%からは大幅に成長率が鈍化するが、グ
ローバル需要のおよそ 50%を占める中国の成長率鈍化が主な要因となる。中
国需要は、11,637 千トンと前年比+2.5%の増加を見込む。2015 年の中国の経
済成長率は 6.9%と未だ高い水準が維持される見通しながら、工業製品の輸
出減少や不動産開発投資の減速等もあり工業生産の伸びは鈍化、銅地金需
要の増加率も、2012 年以降の 10%を超える水準は維持できなくなると予想す
る。米国需要は、前年比+1.3%の 1,866 千トンと安定成長を見込む。個人消費
が堅調に推移することで銅需要の安定成長が期待される。欧州需要について
も、前年比+0.9%の 3,245 千トンとプラス成長の維持を予想する。ASEAN 需要
は、前年比+3.2%の 826 千トンの増加を見込む。マレーシアの一時的な需要
の落ち込みで 2014 年は低調な推移であったが、人口の増加や都市への人口
集中が続く見通しでありインフラ投資等が銅需要を牽引する見通し。
みずほ銀行 産業調査部
50
特集:日本産業の動向〈中期見通し〉
(非鉄金属)
2016 年のグロー
バル銅地金需要
は 、 前 年 比 +2.2%
増加する見通し
2016 年のグローバル銅地金需要は、前年比+2.2%の 23,676 千トンと予想する。
2020 年にかけて
グローバル銅地
金需要は、年平
均+2.3%で推移す
る見通し
2020 年のグローバル銅地金需要は、2015 年以降の年平均成長率が+2.3%で
中国需要が前年比+3.4%まで回復することで、グローバル需要を若干押し上
げる構図。中国は不動産分野では停滞が続く見通しも、中国政府による送電
網の近代化に関する投資計画もあり、銅需要の増加が期待される。
推移し 25,913 千トンと予想する。欧米先進国は、リーマンショック後に大きく銅
需要が減少しており、2020 年までの緩やかな経済成長下で、年平均成長率 1
~1.3%程度の需要回復が進むと予想する。ASEAN は銅消費量が未だ低く
需要増加のポテンシャルは高いことから年平均成長率+3.6%の成長が続くと
考えられる。中国は、2020 年にかけても経済成長率が年平均+6%を維持する
見通しであり、銅地金消費量は年平均成長率+3.4%で推移すると予想する。
IV. アルミ加工分野(圧延品)の需要動向
【図表4-7】 アルミ圧延品需要分野別出荷動向と予測
(千t)
3,000
輸出
2,500
2,080
2,044
2,039
2,000
その他
2,114
建設
1,500
自動車
1,000
箔地
500
缶材
0
00 01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 14 15e 16e
20e
(CY)
(出所)日本アルミニウム協会資料等よりみずほ銀行産業調査部作成
(注)2015 年以降は、みずほ銀行産業調査部予測
2015 年のアルミ
圧延品需要は、
前年比+0.2%で推
移
2015 年のアルミ圧延品需要は、2,044 千トンと前年比+0.2%の横ばいで推移
する見通し(【図表 4-7】)。缶材においてコーヒー缶向けボトル缶が好調であり、
またスチール缶のアルミ化も進展し前年比増加で着地すると見られる。また輸
出も一部メーカーによる母材輸出増加等により増加が見込まれる。他方で、サ
ッシ・ドア等の建設向けが低調に推移することで、全体で見れば前年比横ば
いで推移する見通し。その他、自動車向けは、高級車用アルミパネル材が好
調も自動車生産台数が減少するため横ばいで推移し、箔地は太陽光発電向
けコンデンサの出荷低迷等により減少すると見られる。
みずほ銀行 産業調査部
51
特集:日本産業の動向〈中期見通し〉
(非鉄金属)
2016 年のアルミ
圧延品需要は、
前年比+1.8%増加
する見通し
2016 年のアルミ圧延品需要は、2,080 千トンと前年比+1.8%の増加を予想する。
2020 年にかけて
アルミ圧延品需
要は、年平均
+0.7% で推移する
見通し
2020 年のアルミ圧延品需要は、2015 年以降の年平均成長率が+0.7%で推移
消費増税前の駆け込み需要により建設、自動車、電気機器需要の増加が予
想されるため、全てのセクターで内需の増加を予想する。輸出についても母
材輸出が続くと見られ増加を予想する。
し、2,114 千トンと予想する。サッシ等の建設向けは伸び悩むものの、自動車
向けは一台あたりの使用量増により増加すると予想する。缶材については、ア
ルミ缶需要の大宗を占める缶ビール需要の減少が続くことから、コーヒースチ
ール缶のアルミ化需要は見込めるものの全体では横ばい推移を予想する。輸
出は、母材輸出が継続すると予想する。
V. グローバルアルミ地金の需要動向
【図表4-8】 グローバルアルミ地金需要と見通し
【実数】
米国
欧州(EU)
中国
ASEAN
グローバル需要
摘要
(単位)
アルミ地金
(千t)
アルミ地金
(千t)
アルミ地金
(千t)
アルミ地金
(千t)
アルミ地金
(千t)
【増減率】
2014年
(実績)
2015年
(見込)
2016年
(予想)
2020年
(予想)
5,250
5,537
5,858
6,988
6,727
6,753
6,856
7,269
24,069
25,935
27,779
34,842
1,242
1,313
1,393
1,789
50,600
53,357
55,774
66,067
(対前年比)
米国
欧州(EU)
中国
ASEAN
グローバル需要
摘要
2014年
2015年
2016年
(単位)
アルミ地金
(%)
アルミ地金
(%)
アルミ地金
(%)
アルミ地金
(%)
アルミ地金
(%)
(実績)
(見込)
(予想)
2015-2020年
CAGR
(予想)
+ 13.3%
+ 5.5%
+ 5.8%
+ 4.8%
+ 8.1%
+ 0.4%
+ 1.5%
+ 1.5%
+ 9.6%
+ 7.8%
+ 7.1%
+ 6.1%
▲ 3.0%
+ 5.7%
+ 6.1%
+ 6.4%
+ 7.5%
+ 5.4%
+ 4.5%
+ 4.4%
(出所)World Bureau of Metal Statistics, World Metal Statistics よりみずほ銀行産業調査部作成
(注)2015 年以降は、みずほ銀行産業調査部予測
みずほ銀行 産業調査部
52
特集:日本産業の動向〈中期見通し〉
(非鉄金属)
グローバルアルミ
地金需要は、
2020 年にかけて
年平均+4.4%
グローバルアルミ地金需要は、2015 年は前年比+5.4%、2016 年は同比+4.5%、
2020 年にかけて年平均+4.4%の増加で推移すると予想する(【図表 4-8】)。ア
ルミニウムは、軽量化を目指す自動車向け需要増加や、人口増に伴うアルミ
缶材向け需要増加等の要因もあり、ベースメタルの中でもポジティブな推移が
予想される。
米国需要は、
2020 年にかけて
年平均+4.8%
米国需要は、2015 年で前年比+5.5%、2016 年で同比+5.8%、2020 年にかけ
て年平均+4.8%の増加で推移すると予想する。燃費規制を背景とした自動車
用アルミ需要が高まっており、グローバルで見てもアルミ需要を牽引するエリ
アとなっている。また、住宅投資の持ち直しも続いておりアルミ需要の安定的
な増加が見込まれる。
欧州需要は、
2020 年にかけて
年平均+1.5%
欧州需要は、2014 年は 2013 年の経済の持ち直しによる反動で大きく需要を
伸ばしたが、2015 年は 2014 年対比横ばいに留まる見通し。2016 年は前年比
+1.5%、2020 年にかけて年平均+1.5%の増加で推移すると予想する。欧州経
済は全体としては緩やかな経済成長が続く見通しである一方、フランス、イタリ
ア等回復ペースにはばらつきがあり、需要成長は緩やかに留まる。
中国需要は、
2020 年にかけて
年平均 6.1%
中国需要は、2015 年で前年比+7.8%、2016 年で同比+7.1%、2020 年にかけ
て年平均+6.1%の増加を予想する。中国が政府主導の投資経済から消費経
済に移行するにあたり、2 桁を超える需要成長は望めないまでも、未だ世界の
アルミ需要を牽引し続ける方向に変わりは無い。不動産投資減速により成長
率は減少するも、個人消費増加に伴う耐久消費材向け需要の増加や、飲料
缶向け需要の増加等が期待できる。
ASEAN 需要は、
2020 年にかけて
年平均 6.4%
ASEAN 需要は、2015 年で前年比+5.7%、2016 年で同比+6.1%、2020 年にか
けて年平均+6.4%の増加を予想する。人口の増加や都市への人口集中が続
きインフラ投資が拡大するため需要増が見込まれる。また、自動車生産台数
の増加もアルミ需要を押し上げていくと見られる。
VI. ベースメタルの価格動向(銅/アルミ)
銅価格は、足許
10 月 時 点 で
5,223$/トンまで
低下
銅価格は、足許 2015 年 10 月時点で 5,223$/トンまで低下している(【図表
4-9】)。足許の需給バランスはほぼバランスしていることから、銅価低迷の主因
は、中国の需要低迷に伴う世界的な銅需要拡大ペースの鈍化と、エネルギー
価格の下落と対ドルに対する新興国通貨安に伴う、ドルベースの生産コストの
低下と考えられる。銅価下落を受け、一部事業者の減産が発表されているが、
全体として大規模な生産能力の削減にはつながっておらず、結果として現在
の価格水準を許容する状況となっている。
みずほ銀行 産業調査部
53
特集:日本産業の動向〈中期見通し〉
(非鉄金属)
アルミ価格は、足許 2015 年 10 月時点で 1,524$/トンまで低下している。アル
アルミ価格は、足
許 10 月時点で
1,524$/ ト ン ま で
低下
ミについては、銅よりも高いグローバル需要の成長が期待されているが、最大
生産国である中国における供給過剰が世界的な供給過剰を招き、価格が弱
含みで推移している。中国では供給過剰を課題とし、競争力が低い沿岸部の
製錬所の停止を進める一方で、新疆ウイグル自治区等内陸部の生産能力は
大幅に増加しており、供給過剰は当面続く見通しとなっている。
【図表4-9】 銅/アルミの LME 価格推移
【銅】
2,000 (千トン)
1,800
1,600
1,400
1,200
1,000
($/トン)
10,000
期末在庫
(左目盛)
6,000
8,000
5,223
6,000
3,500
3,000
期中平均
価格
(右目盛)
5,000
7,000
期中平均
価格
(右目盛)
($/トン)
期末在庫
(左目盛)
9,000
6,859
【アルミ】
(千トン)
7,000
2,500
4,000
2,000
5,000
800
4,000
600
3,000
400
2,000
200
1,000
0
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 1415/12 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12
1,868
3,000
1,500
1,524
2,000
1,000
1,000
500
0
0
(CY)
0
01 02 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 1415/12 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 (CY)
年
(出所)産業新聞等よりみずほ銀行産業調査部作成
VII. レアアースの需要動向
【図表4-10】 レアアース用途別需要予測(酸化物換算)
(t)
40,000
その他
35,000
29,349
30,000
23,870
25,000
25,093
研磨剤
26,297
電池
20,000
15,000
磁石
10,000
5,000
触媒
0
08
09
10
11
12
13
14
15e
16e
20e
(CY)
(出所)アルム出版社「工業レアメタル」よりみずほ銀行産業調査部作成
(注)2015 年以降は、みずほ銀行産業調査部予測
みずほ銀行 産業調査部
54
特集:日本産業の動向〈中期見通し〉
(非鉄金属)
2015 年のレアアース需要は、25,093 千トンと前年比+5.1%の増加となる見通し
2015 年のレアア
ース需要は、前
年比+5.1%で推移
(【図表 4-10】)。レアアースは 2012 年を底に需要が回復傾向にあり、2015 年
も引続き需要が回復すると見られる。自動車関連需要が底堅く、排ガス浄化
触媒やハイブリッド用モータ等に使用される磁石需要が拡大を続けている。ま
た、メタル価格下落に伴い、研磨剤等で一部需要回復が予想される。
2016 年のレアア
ース需要は、前
年比+4.8%増加
2016 年のレアアース需要は、26,297 千トンと前年比+4.8%の増加となる見通し。
2020 年にかけて
レアアース需要
は 、 年 平 均 +3.2%
で推移
2020 年のレアアース需要は、2015 年以降の年平均成長率が+3.2%で推移し、
日本のレアアー
ス調達は、中国
への依存度が低
下
レアアースの供給は、オーストラリアのライナスが生産量を拡大したが、依然と
ハイブリッド車生産増加により、磁石、電池需要が大幅に増加することが全体
を牽引すると予想する。
29,349 千トンと予想する。ハイブリッド車、電動自動車の生産拡大を背景に、
磁石、電池需要が全体を牽引する構図が続くと見られる。
して世界のレアアースの生産は 89%を中国に依存する構造が続いている。日
本はレアアースを全量輸入しているが、フランスやベトナム等からの調達を増
やし供給源の多角化を進め、2015 年上期で約 5 割まで中国への依存度が低
下してきている。
レアアースの価格は、2011 年の価格高騰以降、グローバル供給の大半を握る
レアアース価格
は、供給過剰に
より低価格で推
移
中国でメーカーの乱立や違法採掘の横行により供給過剰が常態化、現在も
低位で推移している。また、2015 年 5 月以降、中国が輸出関税を撤廃したた
め、一段と低下している(【図表 4-11、12】)。中国政府は対応策として、違法業
者に対する罰則を厳格化、また、乱立していた企業を南方希土集団や五鉱
集団など 6 社に統合し、大手 6 社に中国生産量の 9 割を集中させるなどして
いる。10 月に入り 6 社は協調した生産調整を行うなど、供給の引き締めを図っ
ており、特にジスプロシウム等の中国への依存度の高い中重希土類は価格が
下げ止まる可能性もある。
【図表4-11】 中国レアアース輸出関税率推移
(0)
→
→
(20)
→
25
→
0
(0)
→
→
(20)
→
20
→
0
600
475
400
294
200
90
55
0
(出所)【図表 4-11、12】とも、アルム出版社「レアメタルニュース」よりみずほ銀行産業調査部作成
みずほ銀行 産業調査部
55
15/09
0
0
0
0
0
0
0
15/07
→
→
25
→
→
20
→
15/05
→
→
→
→
25
→
→
15/03
→
→
→
→
→
0
0
15/01
15
→
25
→
(15) →
25
→
(15) →
→ (20)
→ (20)
14/11
→
→
→
→
→
→
→
14/09
10
10
(10)
(10)
10
(0)
(0)
ジスプロシウム
800
14/07
0
14/05
→
14/03
→
14/01
→
13/11
→
13/09
その他フェロアロイ
25
13/07
10%以上のフェロアロイ
10
ネオジム
13/05
Ce化合物
酸化Y・Eu・Dy・Tb
酸化Pb
塩化Tb・Dy、炭酸Tb・
Dy
塩化La
Nd-Fe-B系SC合金
Nd-Fe-B系SC磁石粉
(MQ)
希土類元素が重量で
0
($/kg 、CIF日本)
1,000
13/03
金属Nd・Tb、金属のそ
の他元素・混合物
06.11 07.6 08初 09初 10初 11初 12初 15.5
10 15
→ → → → →
0
0
10 15
→ → 25
→
0
13/01
改正年月
希土類鉱石
金属Nd
【図表4-12】 磁石用レアアース輸入価格推移
(年/月)
特集:日本産業の動向〈中期見通し〉
(非鉄金属)
【図表4-13】 レアアースグローバル生産予測(酸化物換算)
(t)
250,000
220,282
その他
Y2O3
200,000
169,450
Dy2O3
174,250
Tb4O7
Gd2O3
150,000
Eu2O3
Sm2O3
100,000
Nd2O3
Pr6O11
50,000
CeO2
La2O3
0
10
11
12
13
14
15e
20e
(CY)
(出所)アルム出版社「工業レアメタル」よりみずほ銀行産業調査部作成
(注)2015 年以降は、みずほ銀行産業調査部予測
2015 年のレアア
ースグローバル
生産は、前年比
+2.8%で推移
2015 年のレアアースグローバル生産量は、174,250t と前年比+2.8%増加する
2020 年にかけて
レアアースグロー
バル生産は、年
平均+4.8%で推移
する見通し
2020 年にかけてのレアアースグローバル生産量は、年平均成長率+4.8%で
見込み(【図表 4-13】)。ガラス研磨剤やガラス添加剤等に利用するセリウム
(Ce)やネオジム磁石に活用するネオジム(Nd)、蛍光体に利用するユウロピウ
ム(Eu)の増加が全体を牽引する見込み。
推移し、220,282t と予想する。自動車生産台数の増加や各種モータ需要拡大
に伴うネオジム磁石向けの増加、また、ニッケル水素電池向け、ならびに自動
車排ガス触媒向けが中期的に増加すると予想される。他方で蛍光灯の LED
化が進み蛍光体向けは減少が見込まれる。
2020 年にかけてネオジム磁石向け需要が増加する一方、蛍光体向け等の需
要の減少が予想されるが、レアアースは複数の元素が同時に生産されること
から、Nd/Pr(Dy)は供給不足に、Ce/La/Y は供給過剰となることが予想され
る。
みずほ銀行 産業調査部
56
特集:日本産業の動向〈中期見通し〉
(非鉄金属)
VIII.
日本企業のプレゼンスの方向性
日本の銅製錬企
●●●●●
業は、内需縮小
によりグローバル
プレゼンスは低
下
日本の銅製錬企業は、古くより輸入銅精鉱を原料とする買鉱製錬の形態で、
主に日系ユーザー向けに銅地金を供給している。日本の製錬設備は合理化
や効率化を進めてきたことで、生産効率の面では世界的にトップクラスにあり、
また、日本のユーザーに向け個々の高いスペック要求に応え、適時・適量の
地金を供給する強みも有している。然しながら、グローバル全体で見れば、日
本の銅地金の生産・消費に占める割合は減少の一途を辿っており、数量とい
う意味でのプレゼンスは低下の方向にあると言える。
他方で、銅製錬ビジネスは、銅鉱山側に収益の大半を奪われ、薄利の加工
賃ビジネス化していること、加えて、グローバル全体で見れば需給がバランス
もしくは供給過剰となっていることなどから、日系製錬企業は、必ずしも銅製錬
事業のみでの数量成長は目指していない。各社は上流権益への投資やリサ
イクル事業の強化、また、付加価値が出せる加工工程等の強化などバリュー
チェーンを通じた競争力強化を図っている。
日本の電線企業
は、世界でトップ
クラスの規模、特
に自動車向けワ
イヤーハーネス
では高いシェアを
維持できる
日本の電線企業については、グローバルで見てもトップクラスの売上規模を誇
っており、また、超高圧・海底ケーブル、光ファイバー等の優れた技術を有し
ている。然しながら、電線産業は、汎用製品の差別化が難しく、価格競争が激
化していることから、日系大手電線メーカーは、汎用品事業の強化では無く、
自動車向けワイヤーハーネス事業の強化や、高圧・海底ケーブル等の海外イ
ンフラプロジェクトの獲得を目指している。特に自動車用向けワイヤーハーネ
スについては、日系がトップシェアを有している。大手日系電線メーカーは、
日系自動車メーカーを顧客としており、また、買収により欧米自動車メーカー
向けの販路も一部獲得していることから、グローバルプレゼンスは維持できる
と考えられる。
日本のアルミ圧
延企業は、3 位グ
ループのポジショ
ンも、更なるプレ
ゼンス拡大には
規模拡大が必要
日本のアルミ圧延企業については、2012 年に UACJ が誕生することでアルミ
板材の生産能力でグローバル 3 位グループのポジションにつけている。日系
圧延メーカーは、品質や納期の要求レベルを満たす日系ユーザーに対し、多
品種・少量で対応できる能力を有している一方、内需の伸びが限定的な状況
下、グローバルで事業拡大を進めなければプレゼンスは低下するリスクがある。
日系大手圧延メーカーは、自動車用アルミパネル材や新興国アルミ圧延品
需要の拡大を背景に、タイや中国、米国等で投資を積極化しているが、規模
に勝るグローバルトップメーカーも投資を拡大しており、プレゼンス拡大のため
には更なる規模拡大が必要な状況と言えよう。
日本のネオジム
磁石メーカーは、
ハイエンド製品で
高い競争力
レアアースについては、日系企業はさまざまなレアアースを輸入しており、ま
たは、中国等で合金等に加工し販売している。レアアースを使う主要製品で
あるネオジム磁石について言えば、日系ネオジム磁石メーカーは、ローエンド
品では中国系ネオジム磁石メーカーの参入を許し、価格競争が激化している
が、ハイブリッドカー向けなどのハイエンド製品では高い競争力を維持してい
る。
みずほ銀行 産業調査部
57
特集:日本産業の動向〈中期見通し〉
(非鉄金属)
IX. 産業動向を踏まえた日本企業の戦略と留意すべきリスクシナリオ
日本の製錬企業
は権益投資とリ
サイクル投資に
より調達安定化
を実現する方向
日本の製錬企業は、輸入銅精鉱による買鉱製錬の形態をとっているため、戦
略の方向性として原料調達の安定化を掲げている。そのための一つの方向
性として、大手製錬企業を中心に、自山鉱比率の向上を目指した権益投資を
積極化している。2014 年以降、JX 日鉱日石金属と三井金属鉱業の合弁事業
であるパンパシフィックカッパーがメジャー出資する Caserones 鉱山や住友金
属鉱山が出資する Siera Gorda 鉱山等の生産が開始/開始予定とされており、
日系製錬企業の原料調達の安定化に寄与するものと見られる。もう一つの方
向性として、リサイクル事業の強化も積極化している。例えば、DOWA ホール
ディングスは、専用炉を設立し事業を強化しており、また三菱マテリアルも
E-Scrap 処理能力向上や海外集荷体制の拡充を図っている。
権益投資には規
模拡大による財
務体質ならびに
収益力強化が重
要
留意すべきリスクシナリオは、権益投資は銅価の変動により大きなリスクを伴う
という点である。日系製錬企業が買鉱製錬の形態をとる以上は、中長期的目
線で考えれば、鉱山を持たないことも大きなリスクであるため、優良鉱山を確
保し安定した調達を目指していくことは必要不可欠な戦略と考える。従って、
日系製錬企業に必要なのはリスクに耐え、投資を実現し得る財務体質と収益
性であり、そのためにも規模の拡大を目指していくことが必要と考える。現状、
国内製錬企業は亜鉛、鉛も含めると 8 社体制が定着しているが、集約すること
で競争力を高めていく必要性があろう。リサイクル事業の強化は、ボリュームを
確保できなければ収益が上がらない難しさはあろうが、鉱山外資源を活用で
きるという観点で、日系企業が取り得る有効な戦略であろう。
日本の電線企業
は、自動車向け
が中心の戦略
日本の電線企業は、汎用電線の分野は他社と統合し、自社では成長が期待
自動車メーカー
のニーズ高度化
に対応する必要
留意すべきリスクシナリオとして、自動車メーカーのニーズ高度化が考えられ
されるワイヤーハーネス等の自動車分野を中心に、超高圧海底ケーブル等の
海外インフラプロジェクトや光ファイバー需要の獲得を目指している。
る。日系電線メーカーは、自動車メーカーと設計段階より連携し、銅のみなら
ずアルミ等の多様な素材を活用し、付加価値の高い製品を供給し続ける必要
がある。さらには、ワイヤーハーネスやコネクタ等周辺製品の提供に留まらず、
総合自動車部品サプライヤーとして電装品をパッケージ化し、単独の製品で
は提案できない付加価値を提供していくことが収益拡大の鍵と考える。
日本のアルミ圧
延企業は、製錬
を手掛けていな
いためリスクは相
対的に小さい
日本のアルミ圧延企業は、地金を調達し、板、押出等の圧延品を提供してい
る。上流工程であるアルミ製錬工程を手掛けておらず、圧延の加工賃を収益
源としている。そのため、アルミ製錬から手掛けるグローバルアルミメーカー
NorskHydro 等と比べれば、アルミ価格変動による収益への影響は一過性の
在庫評価損が中心であり、リスクは小さいと考えられる。
留意すべきリスクシナリオの一つ目としては、アルミ原料を確保していない点
である。然しながら、アルミ原料(ボーキサイト)が、銅鉱石と比較すれば、当面
の資源枯渇懸念が無く、また地域的偏在性も小さいこと、加えて、中国製錬メ
ーカーの生産拡大による恒常的な供給過剰状態に鑑みれば、川下メーカー
として必ずしも原料を抑えなければならない必要性は相対的に小さい。
みずほ銀行 産業調査部
58
特集:日本産業の動向〈中期見通し〉
(非鉄金属)
日系自動車メー
カーや鉄鋼メーカ
ー等との連携強
化による差別化
戦略が一つの選
択肢
留意すべきリスクシナリオの二つ目は、需要拡大が期待される自動車用アルミ
パネル材事業における競争激化である。日系大手アルミ圧延メーカーも、需
要拡大が見込まれる自動車用アルミ事業の拡大を目指し、投資を積極化して
いる。2014 年に神戸製鋼所が中国や米国での自動車用パネル材等製造拠
点立ち上げを発表しており、UACJ も蘭 Constellium と JV で米国事業を展開
すると発表している。他方で、歴史的に買収を繰り返し規模に勝る欧米勢も投
資を積極化しており、競争が激化する方向にある。日系アルミ圧延メーカーは、
世界最大の日系自動車メーカーや世界トップクラスの鉄鋼をはじめとする他
素材メーカーとの連携を強化することで、異種接合や新素材開発などの研究
開発を加速し、アルミだけでは解決できない課題に対するソリューションを提
供するという差別化戦略を推進していくことも選択肢と考える。
日本のネオジム
磁石メーカーは
高い競 争力 を持
つ
日本のネオジム磁石メーカーは、自動車向け等のハイスペックな磁石で高い
磁石の高性能化
と省レアアース技
術の推進が必要
留意すべきリスクシナリオとしては、中国磁石メーカーのキャッチアップと言え
競争力を持っており、中国やベトナム等で現地生産を開始することで、グロー
バル需要の獲得を図っている。
る。ネオジム磁石は日立金属の開発した技術であるが、風力発電や VCM 向
け等の汎用製品においては既に中国メーカーとの競争が激化している。日系
メーカーは磁石の高性能化と平行して、省レアアース技術の推進によるコスト
削減ならびに原料調達の安定化を実現していくことが求められる。
(素材チーム 佐野 雄一)
[email protected]
みずほ銀行 産業調査部
59
/53
2015 No.5
平成 27 年 12 月 25 日発行
©2015 株式会社みずほ銀行
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行の書面による許可なくして再配布することを禁じます。
編集/発行 みずほ銀行産業調査部
東京都千代田区大手町 1-5-5 Tel. (03) 5222-5075
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