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フィンガーピース法で求めた血中 ICG消 失曲線の 波形が示す臨床的意義

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フィンガーピース法で求めた血中 ICG消 失曲線の 波形が示す臨床的意義
日消外会誌 27
(9):2099∼
2106,1994年
フ ィンガー ピー ス法 で求 めた血 中 ICG消 失曲線 の
波形 が示 す臨床的意義
東京慈恵会医科大学第 1外 科
保谷 芳 行
藤
田 哲 二
桜
井 健 司
フ ィンガー ピース法 を用 いて健常肝 10例,肝 硬変10例,閉 空 性黄疸 5例 および転移性肝癌広範囲切
失曲線 を求め波形の特徴 と病態 との因果関係
除例 5例 に対 して,血 中の indocyanine green(ICG)消
を検討 した.初 期 ピー クの高 さ (a)は 機能的肝容量 を反映 し,血 清アルブ ミン (Alb)お よび コ リン
エ ステラーゼ値 (ChE)と 正の相関があった (Alb ir=0,341,p<0,05,ChEir=0,715,p<0.005).
グ ロブ リンと正の相関があつ
再増加 ピー ク (b)は門脈大循環 シャン トの有無 を表現す ると思われ,γ 、
た (r=0.413,p<0.025).減 少部分の波形 (d/c)は血中 ICGの 減少率 を表現 し,採 血法で求めた R15
また鋭 い初期多峰性 ピー クと直線的な減少部分 (a≧4,
と正の相関があった (r=0378,p<0025)。
b≧005,d/c≧ 05)を 有す る波形の出現率 は肝硬変 で有意 に高かった (p<0.001).以 上の ようにフィ
ンガー ピー ス法 で求めた ICG消 失曲線の波形 を解析すると,肝 障害症例 における病態 の質的診断が可
能であった。
Key words:
indocyanine green, finger-piecemethod, hepatic dysfunction with indocyanine green,
pharmakokineticsof indocyaninegreen, preoperativeevaluation of liver damage
I. は じめ に
Indocyanine green(以下,ICGと
略記)検 査 は一 般
的 に15分停滞率 (以下,R15と 略記),血 装消失率 (以
下,Kと
略記),最 大除去率 (以下,Rmaxと
略記 )を
求 め る こ とで,定 量 的 に肝機能 を評価 す る際 に しば し
ば用 い られ て い るll 3としか し,R15,K,Rmaxは
閉
塞性黄疸 や門脈大循環 シ ャ ン トな どが存在す る と,純
粋 な肝細胞機能 を反映 しな くな る。 したが って,ど の
よ うな病 態 が ICGの 消 失率 お よび体 内動 態 に影 響 を
及 ぼ して い るか は,他 の検査法 との総合判 断 が必要で
あ る4ル0.そ こで,採 血法 と極 めて高 い正 の相 関 を示 す
値 を測 定 で きる と報 告 され て い る ICGメ ー タ を用 い
た フ ィ ンガ ー ピー ス法 で,非 観血 的 に R15お よび Kを
求 め肝機能 を評価 し,本 研究 にお いて も,従 来 の採血
法 との相 関 を再検討 す る とともに,各 種病態下 にお け
る ICG消 失 曲線 の波形 が示す臨床 的意義 を検 討 した.
(大腸癌 3例 ,胆 嚢 ポ リー プ 1例 ,腹 部大動脈瘤 1例 ,
odular hyperplasia l例
,
後腹膜裏胞腺癌 1例 ,focal■
い
:亜
の小範
る
は
区域切除あ
部分切除
転移性肝癌 3例
囲肝切除例),肝 硬変 10例(肝細胞癌 6例 ,食 道静脈瘤
1例 ,胆 婁癌 1例 ,肝 血管腫 1例 ,肝 嚢胞 1例 ),閉 塞
性黄痘 5例 (肝門部胆管癌 3例 ,膵 頭部癌 2例 )お よ
び転移性肝癌広範囲 (肝葉以上)肝 切除例 5例 の計30
5
症例 を対象 とした。男性21例,女性 9例 ,平 均年齢55。
歳 (20歳か ら73歳)で あつた。上記 の診断 は,臨 床経
過,血 液検査,画 像診断 および手術症例 では摘出標本
の病理組織学的検索 に基づ いた.上記の症例 に対 して,
ICGメ ー タ を用 い た フ ィンガー ピー ス法 と採 血法 で
R15を 求 めた。また同時 に採血 をして,血清 アルブ ミン
値 (以下,Albと 略記),コ リンエステラーゼ値 (以下,
ChEと 略記),プ ロ トロンビン時間 (以下,PTと 略記),
グロブ リン (以下,7‐glbと略記)お よび硫酸 亜鉛混
γ‐
1.症 例 と測 定方法
肝 にび まん性 あ るい は広範 囲 の障害 を持 た な い10例
濁試験値 (以下,ZTTと 略記)を 測定 した.
ICGメ ー タによる R15の 測定法 は,患 者 を早朝空腹
時 に安静臥床 させ,測 定 セ ッ トの粘着 テープで光 セ ン
<1994年 5月 11日受理>別 刷請求先 :保谷 方 行
〒105 港 区西新橋 3-25-8 東 京慈恵会医科大学
第 1外 科
サを指先 に固定す る。 つ ぎに腕 を上下 させて指先 での
血流変動 を補正するためキャリブレー ションを行 い,
続 いて0.5mg/kgの ICGを 対側 の肘静脈 よ り注入 し
II,対 象 と方法
38(2100)
フィンガーピース法で求めた血中ICG消 失曲線の臨床的意義
た。 その直後 か ら ICGメ ー タ本体 で血 中 ICGの 吸 光
度 を毎秒連続測定 し,血 中 ICG消 失 曲線 と R15を 求 め
た.採 血法 に よる R15の 測定法 は,日 本 消化器病学会
肝機能研 究会報告 の ICG試 験標 準操作 法 に基 づ い た。
以上 の ように して求 めた測定 結果 か ら,下 記 の検 討 を
行 った。
まず肝切 除 を伴 わ な い手術症例,転 移性肝癌手術症
相 関 を検 討 す る とともに,術 前術後 の肝機能 変化 を経
時的 に比 較 した.
次 に ICGメ ー タで求 めた血 中 ICG消 失 曲線 か ら,
初期 ピー クの高 さ (a),再 増加 ピー クの 高 さ (b),減
消外会誌 27巻
9号
Fig. I Analysis of ICG clearancecurve measured
with the finger-piecemethod.
*c: Decreasein ICG concentrationin blood from
2.5min to 7.5min after injection.d: Decreasein
ICG concentrationin blood from 7.5min to 12.5
min after injection.
a : Initialpeak
君
b : Seondary p€ak
例,肝 細胞癌 (肝硬変合併 )手 術症例 の各 手術症例 に
対 して,術 前,術 後 1日 日, 1週 間 目, 3週 間 目を基
本 に測 定 した ICGメ ー ター と採 血 法 に お け る R15の
日
d/c : Disapp€aranG rate'
g
0
Fig. 2 ICG clearancemeter
少部分 の波形 (dた)を 測定 し (Fig.1),健 常肝,肝
硬 変,閉 塞性黄疸 お よび転移性肝癌広範囲肝切 除例 の
病態 が異 な る各肝疾 患 について比 較 した。また,a値 と
Alb,ChE,PT,b値
と γ‐
gib.,ZTT, お よび d/c値
と採 血 法 で 求 め た R15の 相 関 を検 討 した。 こ こで a
値,b値 お よび dた 値 と各 パ ラメー ター との相 関 に関
しては,各 パ ラメー ター の術 後測定値 が凝固因子 の 消
費,低 栄養状態 お よび新鮮凍結血装 の輸 液 な どの影響
によって,本 来 の肝機能 を修飾 して しまう可能性 が あ
るため検討 か ら除外 した。
有意差 の検定 には χ2検定 お よび t検 定 を用 い,相 関
の有無 は線 形 回帰分析 に よって検 討 した。p<0.05の
場合,有 意差が あ る とみな した.
2.ICGメ ー タの原理
ICGメ ー タはイア ピー ス法のにお け る測 定部位 で の
10g(1940/T940)=At940
(2)
I:指 へ の入 射光強度
T:指 か らの透過 光量
At:血 液や組織 の吸 光度
AICC:ICGの 吸光度
とな る。 また ICGを 静脈 注射 す る前 に キ ャ リブ レー
発熱,接 着不良 な どの欠 点 を改 善 した もので,本 体 ,
ICGセ ンサ お よび プ リンタで構 成 され て い る (Fig.
シ ョンを行 って, 2波 長 間 での血 液 や組織 の吸光 の関
2).血 中 ICGの 濃度変化 を指先 に装 着 した ICGセ ン
係 を求 め る と,
10gT810=α・
10gT940+β
サで体外 か ら非 観血 的 に毎秒連続測定 し,本 体 で記録
し ICG消 失 曲線 を求 め,Kお よび R15を 自動 的 に計算
で きるように設計 された機器 であ る帥∼1い
。IcGメ ー タ
とな り,(3)式
は生 体 外 よ り採 血 せ ず に血 液 中 の ICG濃 度 を測 定 す
るた めに,ICG以 外 の吸 光成分 (血流変化 に よるヘ モ
組織 の吸光度 (At810)を計算 し,こ れ を差 し引 くこ と
で ICCの 吸光度 (AiCC810)を算 出 してい る。以上 の よ
グ ロ ビン吸光 の変 化 お よび組織 の吸 光)を 取 り除 くこ
とが必 要で ある.そ のため ICGセ ンサ は光 源 (発光 グ
イオ ー ド)か ら ICGの 吸光 の あ る波長 (810nm)と ICG
の吸光 の な い波長 (940nm)の 光 を発光 し,受光部 (フォ
トダイォ ー ド)で この光 の指先 か らの透過光 を受 けて
うに して求 めた ICG消 失 曲線 の 5分 か ら15分の デー
(3)
(α,β は測 定実施時 に定 め られ る定数)
を用 い て (2)式 よ り (1)式 の血 液や
タを対数 変換 お よび最小 自乗法 で 1次 回帰 し, 1次 関
数 の傾 き として Kを 求 め,(4)式 よ り R15を 算 出 して
い る。
R15=exp(一 K・15)。100(%)
(4)
い る. 2波 長 の透過 光量 の関係式 は,
本体 液 晶 画面 に は ICGの 血 液 中 か らの 消失 を連 続
10g(1810/T810)=At810+AiCC810
曲線 で表示 し,さ らに15分間 の検査終 了時 に Kお よび
39(2101)
1994年9月
R15は 自動 的 に計 算 され,消 失 曲線 と ともに表 示 お よ
しる。
摩
つド
日犀Jさオ
I I I結
。
果
1.各 肝 疾 患 にお ける術 前術 後 の肝機能 変化 お よび
ICGメ ー タ と採血法 で求 めた R15の 相 関性
採血 法 で求 めた R15で 肝機能 を評価 す る と,肝 切 除
を伴 わ な い手術症例 で は,術 前術後 の R15は ほ とん ど
も良好 で あった (Fig。3-2).肝 細胞癌手術症例 (肝硬
変合併 )で は,た とえ切 除量 が小 さ くて も予想以上 に
ータ
肝機能 の改善 が不 良 で あった (Fig。3-3).ICGメ
と採血法 で求 めた R15は 極 めて高 い相 関 を示 し (Fig.
4)(y=-2.20+0.88x,r=0。
903,p<0.005),術 前術
後 にわた って求 めた経時的変化 も採血法 と非 常 に よ く
相 関 して いた (Fig.3-1,2,3).
失 曲線 の波形解析
変化 しなか った。症例 3で R15は 軽度上昇 したが ,こ
2.ICG消
の症 例 は C型 慢性肝 炎 で あ り,こ の よ うな症例 で は,
1)各 種病態 にお ける波形 の特徴
a(初 期 の ピー クの高 さ):肝 にび まん性 あ るい は広
手術侵襲 だ けで も肝機能 障害 をきたす可能性 が示 唆 さ
れた (Fig.3-1).転 移性肝癌手術症例 で は,正 常肝切
除量 の増大 に伴 って術直後 の肝機能 は低下 す るが回復
範 囲 の障害 を持 た な い症例 (健常肝症例 )お よび閉塞
性 黄疸 症 例 で は,4,0未 満 が90%で あった (健常 肝 :
Fig. 3-1 Changesin the 15min. retention rate following operations without
hepatectomy.The 15min. retension rates did not significantly increaseafter
surgery without hepatecomy.
*
casel
+
C6e2
*
+
C6€3
Finger-d€e
Bloodsampling
Finger-Fiso
Bloodsampling
Fingerfiee
Blood sampling
Finger-pisca
Blood sampling
Case5 Finger-pisca
Bloodsampling
Cass4
+
Day
Fig. 3-2 Changesin the 15min.retention rate after hepatectomyfor metastatic
liver cancer.The 15min.retensionrates markedly increasedafter hepatectomy
for metastatic liver cancer,but they returned quickly.
Casso
CaseT
R15(%)
Caseo
Finger-piece
Blood sampling
Finggr-pigca
Blood sampling
Finger-pisco
Blood sampling
C6o9 Finger-Fi€ce
Bloodsampling
Case10FingeFpiece
Bloodsampling
フィンガーピース法で求めた血中ICG消 失曲線の臨床的意義
40(2102)
日消外会誌 27巻
9号
Fig. 3-3 Changesin the 15min. retention rate after hepatectomy for hepatocellular carcinoma. The 15min. retention rates markedly increased after he.
patectomy for hepatocellularcarcinoma and they returned gradually.
十
CaSell
R15(96)
_Case12
C亜
13
同ng。
「FeCe
31ood sampling
同ngo「Piece
Blood sampling
同n g e r p l e c e
B,ood samJing
Day
Fig. 4 Correlation between the 15min. retension
rate measured with the finger-piece and that by
the blood sampling method, There was a
significantcorrelation betweenthe l5min. reten.
tion rate measuredwith the finger-pieceand that
by the blood samplingmethods(y= -2.20+0.88
x r:0.903 p<0.005).
0.34,閉 塞性 黄疸症例 :0.11± 0.07,転 移性肝 癌広範
囲 肝 切 除 例 :0.13± 0.37),肝 硬 変 症 例 に お い て は
106,0,83と 非常 に高 い再増加 を認 めた.
dた (減少部 分 の波形):健 常肝 症例 で は90%が 0.5
未満 で指数関数的 な波形 を示 した (0.33±0。14).一方,
肝硬変症例 ,閉 塞性 黄疸症例 お よび転移性肝癌広範 囲
肝 切 除 例 で は80%が 0.5以上 で あ り (肝硬 変 症 例 :
0.56±0.08,閉 塞性 黄/B 症
例 :0.69±0.24,転 移性 肝
癌広範 囲肝切 除例 :0.64± 0.12),閉塞 性黄疸症例 にお
いては0.91,0.93と ほぼ直線 に近 い減少 パ ター ンを認
ぷ 首 rに 0こ一
︵
こ E 的り 貿 首 面
めた (Fig.5)。 そ して aは 4以 上,bは 0.05以上 ,d/
cは 0.5以上 の鋭 く高 い初期 多峰性 ピー ク,な らびに直
線 的 な減 少部分 を満足 す る と,肝 硬変 で あ る可能 性 は
87.5%と 高 く,逆 に肝硬変 の うち,上 記 の条件 を満 た
す症例 も80%と 高率 で あった。
2)波 形 の各 部分 (a,b,d/c)が
意味す る病 態
a値 は Albお よび C配 と相 関 が あったが,PTと
同nge卜
p iece R15(9も
)
3.60±0.57,閉 塞性黄疸症例 :3.12± 0.26),一 方,肝
は
相 関 が なか った (Alb:y=8.19-1.05x,r=0.341,p<
0,05, ChE:y=6.38-0.01x, r=0.715, p<0.005)
(Fig.6).b値 は γ‐
gib.と相 関 が あったが,ZTT.と
(4.71±0.67)。転移 性肝癌広範 囲肝切 除例 で は,個 々
は 相 関 が な か った (γ‐
gib.:y=-0.07+0.01x,r=
0。
413,p<o.025)(Fig。 7).dた 値 は採血 法 での R15
の症 例 で数値 にば らつ きが あ るが,正 常肝切 除量 の増
大 に と もなって 初 期 ピー ク は 高 くな る傾 向 が あった
0.025)(酎 g.8).
硬 変 で は,逆 に4.0以上 を示 した症 例 が90%で あ った
(3.84±1.24).
b(再 増加 ピー クの高 さ):健 常肝症例 で は0.05を越
と 相 関 が あった (y=0,31+0.01x,r=0.378,pく
I V . 考察
今 回の研究 か ら,ICGメ ー タによって得 られた 波形
える もの はなか った (0,01±0.01).一 方,肝 硬変症例
の90%,閉 塞性黄疸症例 の80%,転 移性肝癌 広範 囲肝
解析 の有効示U用法 として以下 の 3点 が挙 げ られ る.す
切除例 の60%が 0,05以上 で あ り (肝硬変症例 :0.30±
消失 曲線 の波形 が示 す病態 の認 識 ,お よび,(3)血 中
なわ ち,(1)非 観血 的 な K,R15の 測定,(2)血 中 ICG
1994年 9月
41(2103)
Fig. 5 Comparisionof initial peak value (a), secondarypeak value (b) and
disappearancerate (d/ c).
A: Normal liver, B : Liver cirrhosis, C: Obstructivejaundice, D: Metastatic
liver cancer (postoperative status).
」d
A
B
C
D
A
B
C
D
A
C
B
D
Fig. 6 Correlationsbetweeninitial peak value (a) and Alb. or ChE. concentrations and prothrombin time. There were significant correlations between (a)
(Alb: y=8.19-1.05x r=0.341 p<0.05,
value and Alb. or ChE.concentrations
C h E: y = 6 . 3 9 - 0 . 0 1 x r = 0 . 7 1 5 p < 0 . 0 0 5 ) .
0.01x
yを6.38‐
r80。
715 pくo.oo5
1.05x
yを8.19‐
Alb(9/dl)
PT(96)
ChE(U/1)
Fig. 7 Correlations between secondary peak value (b) and y-glb. concentration
or ZTT. There was a significant correlation between (b) value and y-glb.
concentration(y: -0. 07+0.01x r=0. 413p < 0. 025).
y‐0.03■0.01x
r‐
0.037 p=NS
0.07+0.01x
y岳‐
r=0.413 pく0.025
γ-91b.(%)
42(2104)
フィンガーピース法で求めた血中 ICG消 失曲線の臨床的意義
Fig. 8 Correlation between disappearance rate
(d/c) and the 15min. retention rate measured
with the blood sampling method. There q'as a
significant correlation between (d/c) value and
the l5min. retentionrate measuredwith the blood
s a m p l i n gm e t h o d ( y : 0 . 3 1 + 0 . 0 1 x r = 0 . 3 7 8 p (
0 . 0 2 5 .)
日
消外会誌 27巻
9号
れの指標 算 出 のた めの計 算 な ど,操 作 が い ろい ろ と煩
わ しい.ま た,こ の操作 の間 には血 液 に汚染 され る機
会 も多 く,細 菌 あ るいはウイル スに感染 す る危険性 も
あ る。ICGメ ー タは適量 の ICGを 静注 す るだ けで,光
セ ンサ を用 い て体 外 か ら血 中 の ICG吸 光 度 を連 続 測
定 し,Kお
よび R15を 自動 的 に計算 で きるよ うに設計
され て い るため,簡 単 に Kお よび R15を 求 め る ことが
y=0.31+0.01x
で きる。 しか しなが ら,Rmaxを
自動 的 に算 出す る こ
の改良 が望 まれ る11としか し濃度 を変
とはで きず,機器
えて ICGメ ー タで求 めた Kを 利 用 す る こ とに よ り,
以前 よ り簡単 に求 め る ことは可能 で あ る。浪久 ら1の
に
よる と,ICGメ
d/c
ー タ と採血 法で求 めた測 定値 との関係
は,極 めて高 い相 関 を示 し,Kが
0,o5以下 で は100%,
R15が 30%以 上 で は,90%が 肝硬変 で あった とい う。本
研 究 にお いて も,R15で 極 めて 高 い正 の相 関 を確 認 し
た (Fig.4)(r=0_903,p<0,005).し
か し,個 々 の症
ー
タ と採血 法で求 めた
例 について検 討す る と,ICGメ
Blood samphng R1 5(%)
Fig. 9
Typical ICG clearance curve in various
liver diseases.
測 定 値 との 間 に は,無 視 で きな い 誤 差 が あ る。ICG
メー タで求 めた値 は採血 法 に比 べ,R15は 15%ほ ど高
い値 を示 し,Kは 20%ほ ど低 い傾 向 にある と報告 され
31そ の
て い る】
原因 として,肘 静脈 と指先部 の ICG濃
Normal liver: exponential disappearance pattern. Liver cirrhosis: pointed initial peak followed by secondary peak and linear disappearnce
度変化 の相違,末 梢循環不全時 の毛細血管血 と末梢血
pattern. Obstructive jaundice: obtuse initial peak
表 面 温 度 の上 昇,採 血 法 で 使 用 す る吸 光 度 計 と ICG
メー タの光 セ ンサ との精度 の違 い な どが考 え られて い
followed by linear disappearance pattern. Postoperative status of metastatic liver cancer:
pointed initial peak without secondary peak
Dattern.
管血 の色 素分布速度 の相違,光 セ ンサ装着 に よる指先
る14とし たが って,ICGメ
ー タで求 めた値 を採血法 で
の従来 の正 常値 の枠 内 で評価 す る こ とは非常 に危険 で
あ る。しか し,個 々の症例 において,術 前術後 にわた っ
て求 めた R15お よび Kの 経時的変化 は,採 血法 と非常
に よ く相 関 して い る。 つ ま り,採 血法 との一 定 の誤 差
を認識 し,ICGメ ー タにお ける正常値 を新 た に設定 し
評価 した り,個 々の症例 にお いて,肝 機能 の経時的変
化 を腫瘍 マ ー カー 的 な意味 合 い として,相 対 的 に評価
す るの に簡便 で有用 と考 える。
ICG検 査 は一 般 的 に R15,K,Rmaxを
Metastaticliver cancer
求 め,定 量 的
に肝機能 を評価 してい る。しか し R15,K,Rmaxは
生
体 内 で の ICG消 失率 を定 量 的 に評 価 す るに は適 当 な
指標 で あ るが ,閉 塞性黄痘 や 門脈大循環 シ ャ ン トな ど
ICG濃 度 の連続測定 で あ る。以下 ,順 を追 って考察 す
が存在 す る と純粋 な肝細胞機能 を反映 しな くな る.し
る.
たが って,ど の ような病態 が ICGの 消失率 に影 響 を及
ぼ して い るか につ い て は,他 の検 査 との総合判 断 が必
従 来 の I C G 検 査 にお い て R 1 5 で は 2 回 , K で
は3
回, R m a x で は最低 2 種 類 の濃度 で K を 求 め るた め 6
要で あ る。ICCは 肝,循 環機能検 査薬 で あ り,ICG注
回の採血 が必 要で あ る。し か もその後 に血漿 分離, 赤
入後初期 の変化 は循環 機能,特 に心 拍 出量 を反映 し,
外部 波長 を用 い ての I C G 濃 度 の測 定, さ らにはそれ ぞ
そ の 後 の 変 化 は肝 機 能 を反 映 す る と報 告 され て い
1994年9月
る1い1ゆ
.採 血法 と極 めて高 い正 の相 関 を示 す値 を測定
で きる ICGメ ー タで求 めた血 中 ICG消 失 曲線 は,各
43(2105)
(Fig. 9).
種病態下 で特徴 的 な波形 を示す傾 向 が あ り,初 期 ピー
クの高 さ a値 は,機 能的肝容量,再 増加 ピー クの高 さ
健常肝 :初 期 の ピー クに続 い て再増加 はな く,円 滑
に指数 関数 曲線 へ と移行 して い る。
肝 硬 変 :初 期 の ピー ク は鋭 く高 い.そ れ に小 さ な
b値 は,慢 性 的 な門脈圧元進 の状 態 に伴 う門脈大循 環
ピー クが続 き,そ の後 の減少部分 につ い ては比較 的直
シ ャ ン トの有無,減 少部分 の波形 d/c値 は,血 中 ICG
線 的 になってい る!
の減 少 率 を表 現 す る もの と思 わ れ た.d/c値 は血 中
閉塞性黄疸 :比 較 的低 い ピー クに続 いて再増加 も軽
ICGの 減少率 を波形 として簡略 的 に表現 す るため,循
度 であ り,減 少部分 は きわ めて直 線 的 であ る。
環動態 の影響 を受 ける初期 の立 ち上 が り部分 が終 了 し
た2.5分以 降 の 消失 曲線 の傾 きの変化 率 で表 現 した 値
転移性肝癌広範 囲肝切 除例 :正 常肝切 除量 の増大 に
と もな って 初 期 ピー ク は高 く,減 少 部 分 は直 線 的 に
で あ り, 1に 近 いほ ど直 線 的で 0に 近 いほ ど指数関数
な って い く,再 増カロは軽度 であ る。
的 な波形 であ る と考 えた。
肝硬変 で は高心拍 出量 の状態 にあ る とともに,機 能
onal hepadc mass)が 減少 し,血 管
的肝容量 (funcは
拡張物 質 (ヒス タ ミン,セ ロ トエ ン,プ ロスタグ ラン
ジン E2,グ ル カゴ ンな ど)が 肝 で十分 に分解 され な い
た め,末 梢血管抵抗 の低下状態 にあ る1〕
。した が って,
高濃度 の ICGが 指尖部 に到達 し,最 高濃度 を示 す初期
の立 ち上 が り部分 は鋭 く高 い ピー クを示 す.ま た心疾
従 来 の 肝 機 能 検 査 との 相 関 を検 討 す る と,a値
Albお よび ChEと 相 関 が あったが,PTと
は
は相 関 が な
か った。閉塞性黄疸症例 で ビタ ミン K吸 収障害 が あ る
肝細胞機能 を反映 す る指標 にな らなか っ
た と考 え られ る。b値 と γ‐
gib.は 相 関 が あった が
ZTT と は相 関 が なか った。ZTTは
肝 の線維化 を反
映 す る とされてい るが特異 的 な指標 で はな く,高 い相
た め,PTは
患 による A,Vシ ャ ン トが存在 しな い の に,初期 の立 ち
関 を示 さない こと,ま た肝 の線維化 と門脈圧元進 お よ
び門脈大循環 シ ャ ン トは必 ず しも平 行的 な関係 で はな
上 が りに続 きガヽさな再 増加 ピー クが存在 す るの は,肝
い ことな どが原因 と考 え られ る。今後,門脈大循環 シ ャ
の線維化 に よる慢性 的 な門脈圧 の上 昇 による門脈大循
ン トを直接定量 し,b値
環 シ ャ ン トの存 在 が示唆 され る。 その後 の減少部分 に
と考 え られ る。
ICGメ ー タを用 い る と,血 中 ICGの 吸光度 を毎秒連
つ いて は functional hepatic massの
減 少 (ICGの 肝臓
にお ける処理能力低下)や 門脈大循環 シ ャ ン ト (肝臓
を経 由 しない ICGの 増 大)な どが 原 因 と考 え られ る
が ,理 由は ともか く ICGの 血 中減少率 が低下 して い る
ため直線 的 にな る。 一 方,健 常肝症例 で は薬物代謝 の
法則 (Michaels,Mentenの 式)に 基 づ き,初 期 ピー ク
に続 いて 円滑 に指 数 関数 的減 少 曲線 へ と移 行 して い
る2の
,転 移性肝癌切 除例 において は正 常切 除肝 重量 の
との相 関 を検 討 す べ きで あ る
続測定 し消失 曲線 を求 め る ことがで きる。したが って,
ICGメ ー タは,1)循 環器機能検査 21)として,2)連 立
微 分 方程 式 お よび非線 形 最 小 2乗 法 に よる Rmax,
Km,血 装 ―肝移行率,肝 ― 血策移行率 ,肝 ―胆汁排泄
2の
2め
,
率,血奨 ICG分 布容積,肝臓 ICG分 布容積 の算 出
ー
ロ
ベ
ンサプ
セ
お よび,3)光
を改良す る と,動 物 を用
い た基礎 的研 究 な ども可能 であ り,連 続 的 に血 中 ICG
増 大 に と もなって,funcば onal hepatic massは 減 少
し,初 期 ピー クは比 較 的鋭 くな り,肝 臓 での ICG処 理
濃 度 の測 定 を必 要 とす る際 に非 常 に簡便 で 有 用 で あ
能 力 が低下 す るた め減少 部分 の波形 は直線 的 にな る。
なお,本 論文 の要 旨は第41回日本消化器外科学会総会
(1993年2月 18日,神 戸)で 発表 した。
また,残 肝血管床 の減少 に よ り門脈圧上昇 も考慮 され
るが,慢 性 的 な もので はな いので 門脈大循環 シ ャ ン ト
はな く,初 期 の立 ち上 が りに続 く再増加 ピー クは示 さ
な い。閉塞性黄疸 の急性期 において は,肝 細胞 の機能
障害 は軽 度 で あ り門脈圧 の上 昇 もな い。高 ビ リル ビン
血症 が循環器 系 に及 ぼす影 響 は明確 で はな いが,比 較
的鈍 い ピー クに続 いて再増加 も軽度 で あ る。また,ICG
肝 外排 泄障害 のため減 少部分 は非 常 に直線 的 な波形 を
示 す.以 上 の検討 か ら各病態 にお ける ICG消 失 曲線 の
波形 の 特 徴 を ま とめて み る と次 の よ うに考 え られ た
る。
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The Clinical Significance of ICG Clearance Curve Measured with the Finger-piece Method
Yoshiyuki Hoya, Tetsuji Fujita and Kenji Sakurai
First Department of Surgery, Jikei University School of Medicine
We studied the indocyanine green (ICG) clearance curve measured with the finger-piece method in 30
patients (10 with normal liver, 10 with liver cirrhosis, 5 with obstructive jaundice and 5 hepatectomized
for metastatic liver cancer). The initial peak value (a) expressed functional hepatic mass volume, and
there was a significant correlation between (a) and both serum albumin (Alb) and cholinesterase (ChE)
concentration (Alb: r=0.341, p<0.05, ChE: r:0.715, p<0.005) respectively.The secondary peak value
(b) indicated the presence of portocaval shunt, and there was a significant correlation between (b) and
serum / globulin level (r:0.413, p<0.025). The d/c value calculatedfrom exponential curves in the ICG
excretion phase expressed the plasma disappearance rate of ICG, and there was a significant correlation
between (d/c) and the 15 min retention rate measured with the blood sampling method (r:0.378, p<
0 . 025). A characteristic pattern (a > 4, b > 0 . 05, d/c > 0 . 5) of the ICG clearance curve was more frequently
identified in patients with liver cirrhosis than in patients with other liver diseases(p < 0 . 001). In summary,
analysis of the ICG clearance curve measured with the finger-piece method is useful in assessing the
various liver diseases.
Reprint requests:
Yoshiyuki Hoya First Department of Surgery, The Jikei University
Medicine
3-25-8Nishishinbashi, Tokyo, 105 JAPAN
School of
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