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「電子マネー・電子決済」「デビットカード」

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「電子マネー・電子決済」「デビットカード」
記者発表資料
データ・バンク
「電子マ ネ ー・電子決済」「デ ビットカード」
∼ 消費者にとっての新しい支払システム ∼
2000 年 6 月 6 日
国民生活センター
情報通信技術の発達、市場のグローバル化などを背景に、「電子商取引」は拡
大の一途をたどっている。電子商取引の発展に関しては、「決済」のあり方が重
要な要素であり、「電子マネー」や「電子決済」など「新しい支払システム」が
注目されている。消費者取引における支払は、商品の購入やサービスの利用を
した際の清算のことであるが、「電子マネー」やインターネット上での各種の決
済の他、カードのIC化も進められようとしている。特に、「デビットカード」
については、本年3月6日から規模が全国的に大幅に拡大し、キャッシュカー
ドを持っていた多くの人が利用できるようになった。
「新しい支払システム」は、まだ、発展の端緒についたところであるが、消
費者がこうしたものの概念を把握しておくことも必要であると考えられる。し
かしながら、情報の多くが事業者向けであり、また、定義など確立されていな
いなどから、当事者である消費者にとって非常にわかりにくい状況にある。
そこで、主に電子的手法を用いた新しい決済について、「電子マネー」「デビ
ットカード」等カード型のものを中心に、各種カードのICカード化、さらに
インターネット上の決済なども含めて、消費者にとって基礎的な概念整理とな
るような資料としてまとめた。
Ⅰ.消費者に
費者にとっての「新しい支払
「新しい支払システム」
1.従来の「
来の「決済」と「新しい支払
「新しい支払システム
私たち消費者は、従来、商品やサービス利用の際の代金支払には、現金を中
心に、時にクレジットカードなどを使ってきた。これらに加え最近は、利便性
(現金を多量に持たない等)や安全性(盗難・紛失等)のニーズやインターネ
ットの普及によるネット上での支払の必要性などからさまざまな「新しい支払
システム」が出てきている。
「新しい支払システム」とひとくちに言ってもさまざまなものがあり、また、
概念が重なっているなど、一面的な整理は困難である。そこで、全体の体系の
俯瞰はせず、消費生活において、また、情報として比較的身近といえる支払シ
ステムについて紹介することとする。〔図1〕は、「新しい支払システム」を従
来の決済手段との関連で分類したものである。
1
〔図1〕従来の決済手段と「新しい支払システム」の概念整理(本書における整理)
新しい支払システム
従来の決済手段
現金
電子マネー
ICカード
(リアル)
クレジットカード等
クレジットカード等
現金
店が直接回収
電子マネー
インターネット
クレジットカード
クレジットカード
カードレス☆
カードレス
口座振替
クレレジットカード
代金回収代行
口座振替☆
プリペイド(前払)☆
は、「電子マネー」
プリペイド
は、
「電子決済」 ☆は、登録型
キャッシュカード
デビットカード
*「従来の決済手段」は、「新しい支払システム」に対応している。
Ⅱ.電子マネ
子マネー・電子決済
1.
「電子マネー」
ネー」と「電子決済」
「電子決済」
決済手段の電子化は、大きくふたつに分けられる。ひとつは、貨幣という価
値そのものを電子化した「電子キャッシュ」「デジタル・マネー」「電子現金」
などと呼ばれるICカードやコンピュータのハードディスク等に貨幣価値を記
録するものである。もうひとつは、支払方法の電子化であり、クレジットカー
ド、口座振替、小切手などの電子支払である。本報告書では、前者を「電子マ
ネー」、後者を「電子決済」とした。
2.
「電子マネー・
ネー・電子決済」の安
子決済」の安全性−
全性−暗号、電子認証−
号、電子認証−
貨幣は偽造・窃盗の対象になってきたが、「電子マネー」や「電子決済」で
は、データが回線を流れるので、第三者に盗聴されたり、
「なりすまし」が行な
われやすい。こうした問題に対応するものとして、暗号や電子認証制度がある。
送られる電子化した情報(マネー情報やクレジットカード番号など)を安全
に送るには、暗号化がある。
3.
「電子マネー」
ネー」
「電子マネー」は、欧州、アメリカ等の一部では、すでに実用化されている
ところもある。しかし、わが国においては、地域等を限定した実験的運用が各
2
地で行なわれており、実用化には至っていないといえる。
「電子マネー」は、マネーの流れ方によって、
「クローズド・ループ型」と「オ
ープン・ループ型」のふたつの類型に分けられる。(〔図2〕参照)
〔図2〕電子マネーの流れのふたつの型
クローズド・ループ型
オープン・ループ型
発行体
発行体
販売店
消費者
消費者
販売店
消費者
販売店
「クローズド・ループ型」は、消費者が販売店に支払ったマネーを発行体に
戻さないとそのマネーは利用できないというもので、「ビザ キャッシュ」がこ
れにあたる。一方、「オープン・ループ型」は、発行されたマネーは、現金と同
様にどのようにも流れて行くことができる。個人間でも流通可能であり、何度
も決済に利用することができる。代表例は、「モンデックス」である。
4.電子決済
子決済(インターネット上の
ーネット上の決済)
インターネットでの消費者取引は、バーチャルモール、サーバーモールなど
と呼ばれるホームページ上の仮想の商店街で行なわれる。
NRI(野村総研)サイバービジネスバンク、サイバー社会基礎研究センタ
ーの調査(2000 年 3 月時点)によれば、「インターネットショッピングにおけ
る決済方法」(複数回答)は、「代金引換」(12,422 店)と「銀行振込」
(11,574
店)、
「郵便振込」(8,177 店)などネット外でのものが多いが、ネット上の決済
では「クレジットカード決済」(2,121 店)が最も多い。
◎クレジット
ジットカードによる支払システム
支払システム
インターネット上でクレジットカードで支払をする場合、クレジットカード
情報を直接送信して支払う方法(一般のクレジットカードによる支払をネット
上でする)とカード番号等をあらかじめ登録する方法とがある。
まず、クレジットカード番号等の情報を送信して直接支払う方法だが、通常
の送信では平文のまま回線を流れることから盗聴される可能性があり、現在で
は「SET」という通信プロトコルが用いられるようになってきている。これ
は、暗号やデジタル署名などの技術を用いて盗聴や「なりすまし」を防ぐとと
もに、各当事者は取引に必要な情報しか得ることができない(販売店はカード
3
番号がかわらないなど)など秘密保持性も高いものである。
クレジットカード番号等の情報を運営主体に登録するタイプでは、発行され
るIDやパスワード等を通知することで支払う方法が多い。
5.消費者が
費者が利用するにあたって
にあたって
◎消費者取引
者取引の安全
消費者が安全に決済を行うための制度として、暗号や電子認証、電子(デジ
タル)署名などがあるが、セキュリティ技術は進化もするが破られても行く。
したがって、基本的ルールや被害救済など制度の充実が重要であるが、わが国
においては、現在検討・整備が進んでいるという状況である。
例えば消費者に係る電子商取引全般に関しては、経済協力開発機構(OEC
D)が「電子商取引の文脈での消費者保護のためのガイドライン」(以下、「O
ECD消費者保護ガイドライン」)を勧告している。これを基本に電子商取引推
進協議会(ECOM)などは、ガイドラインを作成している。
また、インターネットの不正アクセス対策としては、
「不正アクセス行為の禁
止等に関する法律」が本年 2 月13日に施行され、すでに摘発例もある。
支払システムに関しては、電子認証・電子署名にかかる制度の立法や「電子
マネー」についての立法などの検討をはじめ各種の取組みが行なわれている。
◎消費者が利
者が利用するうえでの注意点
えでの注意点
〔電子マネー〕
マネー〕
消費者が「電子マネー」を持つには、発行主体等に申し込むことにより利用
できる。実験的運用に参加する場合などの利用にあたっての注意点としては、
あらかじめ仕組を十分に知ってから利用すること。
〔電子決済〕
決済〕
・手続をよく確認 する
「電子決済」にはいろいろあり、利用する際の手続もさまざまなので、ホーム
ページ上の説明などをよく読み、運営主体に問合わせるなど、よく確認するこ
と。
・インターネットの特性を理解し、マークなどにより信頼できる店を選択する
利用にあたっては、まず、インターネットが、誰でもがいつでも匿名でも自
由に参加できるなどの特性をよく理解し、ショッピングなどの取引を行う場合
は、まず信頼できる店を選ぶこと。その際、目安になるものとして、いくつか
の認証マーク(信頼できる業者の目印となるマーク)が実験的に運用され、実
用化を目指している。オンラインショッピングそのものでは、(社)日本通信販
売協会の『オンラインマーク』やプライバシーに関する(財)日本データ通信
協会の『個人情報保護マーク』や(財)日本情報処理開発協会の『プライバシ
ーマーク』などにより選択することもできる。
4
・セキュリティレベルを確認する
説明などをよく読み内容を理解し、セキュリティに十分注意(表示がない場
合は注意)して、不安があったら利用しないことが肝要である。
・カード番号の送信等には注意
例えばクレジットカードによる支払でも、カード番号の送信には十分注意す
る。「SET」など安全性が向上したシステムが全てにわたり運用されているわ
けではないので、どのようなシステムなのか十分に確認する必要がある。
・利用後は、支払明細を確認し、疑問等あれば消費生活センター等に相談
利用後は、請求や引き落し明細、領収書等をよく確認し、不明なものがあっ
たらすぐに確認する。
Ⅲ.デビット
ビットカード
1.
「デビットカー
トカード」は、みんな
」は、みんな持って
持っている「キャッシ
「キャッシュカー
ュカード」
「デビットカード」は、銀行や郵便局が発行した「キャッシュカード」がそ
のまま商品やサービスの代金支払に使えるものである。
「キャッシュカード」は、金融機関等のATM(現金自動出入機)において
預貯金の出し入れするためのカードだが、「デビットカード」は、店頭にあるカ
ードリーダーと呼ばれる端末にカードを通して(磁気テープの情報を読み取ら
せる)、
「キャッシュカード」と同じ暗証番号を打ち込むだけで、即時(預金の
引き落しは、翌日などもある)に口座決済ができるというものである。
本年3月6日から、「デビットカード」(「J−Debit」=ジェイデビット)の
サービスは、全国規模での本格運用がなされた。一部の都市銀行(東京三菱銀
行等)などを除く、ほぼ全ての金融機関のキャッシュカードに拡大。617の
金融機関が発行する3億枚以上の「キャッシュカード」のほとんどが、特に新
たな手続をすることなく「デビットカード」として利用できるようになったの
である。このことにより、非常に多くの人が「デビットカード」の保有者(ホ
ルダー)になった。金融機関だけでなく、加盟店も大幅に増加し、157加盟
店(約10万ヵ所)となった。小売店や飲食店だけでなく病院や損害保険会社
などにも拡大、さらに増加していく予定で、利便性も高まり利用の増加が見込
まれている。
「デビットカード」は、買物などの際に金融機関から現金を引き出さなくと
も、その都度手数料もかからずに口座決済ができるなど便利なシステムである
が、セイキュリティ面での不安も指摘されている。
2.デビット
ビットカードの仕組と特徴
仕組と特徴
◎「デビット
ビットカード」の仕組
の仕組
「デビットカード」を使っての取引きの流れは、〔図3〕のとおりである。
5
〔図3〕
「デビットカード」を使った取引の流れ
販売店
( 加 盟店)
③購入代金の入金
①商品・サービスの購入
キャッシュカード・暗証番号
商品・サービスの引渡し
②消費者の口座
から引き落とし
③通帳の記帳
消 費 者
( 預 金
まず、
「デビットカード」が利用できる店かどうかを確認する。
次に消費者が、商品購入やサービス利用の際に「デビットカード」での支払
を選びカード(加盟金融機関のもの)をカードリーダーに通し、金融機関で現
金の出し入れに使うのと同じ暗証番号を打ち込む。その際に渡されるレシート
などに、
「デビット利用」であることが表示されている。即時(または翌営業日
あたり)に口座から引き落とされる。
3.消費者ト
費者トラブル防止への課題と
止への課題と利用にあたっての注意点
たっての注意点
◎消費者トラ
者トラブル防止への課題
への課題
国民生活センターや各地消費生活センターには、「デビットカード」に係る苦
情相談例はみあたらない。しかしながら、規模の大幅な拡大による利用機会の
増加などいより、トラブルの発生も懸念される。特に、盗難・紛失、偽造等第
三者に悪用されるという被害である。
「キャッシュカード」に関する消費生活相談事例には、「銀行の「キャッシュ
カード」を紛失した。届け出る前に第三者にATM からお金を引き出されてし
まったが、どうしたらよいか。」などの例がある。事例では、暗証番号を誕生日
にしていたというものや、カードの券面に書いていたという例もあり、こうし
た場合の対応は厳しい。また、
「キャッシュカード」の紛失・盗難等による損害
の補填に係る裁判例では、金融機関は免責条項などにより勝訴し消費者が負け
る結果となっており、また、消費者苦情の例でも第三者による不正使用の例な
どでは、原則的には契約当事者として消費者が責任を負担することになるとい
う状況であり、セキュリティについての問題は今後の重要な課題である。
◎利用にあた
にあたっての注意
・暗証番号の
番号の管理に十分注意する
分注意する
6
従って、消費者はまずカードと暗証番号の管理に十分注意する必要がある。
暗証番号の設定は、「忘れないように」などの理由から、生年月日や自宅の電話
番号等にしがちで、財布ごと盗まれたなどの場合に身分証明書や免許証から簡
単にわかってしまう例が多く、このようなケースでは、消費者の管理責任が問
われる傾向がより強くなっている。暗証番号の設定は、第三者にはわかりにく
い番号とし、管理を徹底する。
・「デビ
「デビットカード
カード」専用の口座を
専用の口座をつくる
つくる
また、
「利用したいが、悪用が不安」という場合は、「デビットカード」専用
の別口座をつくり、適当な金額だけを使えるようにしておくという方法もある。
・使う予定の
予定のない人は、機能を使え
、機能を使えなくする手続をする
手続をする
金融機関は申し出により「デビットカード」の機能を除く手続も用意してい
る。「デビットカード」を利用しない人は、この手続を行っておくとよい。
・仕組をよく
をよく知って、賢く利用する
賢く利用する
「デビットカード」の機能は、好むと好まざるとにかかわらず、多くのカー
ドに付加してしまった。このことをよく認識し、それぞれの事情に合った適切
な対応をすることである。
預貯金の範囲といっても、一日の限度額など一定の限度額があるカードや総
合口座で定期やローン機能が付いている場合に、定期分やローン分も使えるカ
ードがあるので注意が必要である。
Ⅳ 「新しい支払シ
支払システム」と消費者
テム」と消費者
わが国は、従来から強固な現金社会といわれており、
「電子マネー・電子決済」
「デビットカード」など「新しい支払システム」の浸透には懐疑的な見方もあ
るが、更なる情報化や国際化(市場のグローバル化)の進行等を背景に、いず
れかの手段の普及や各種カードのIC化の進行などは十分予想される。
こうした状況において、消費者問題の観点からもいくつかの理由からニーズ
が考えられよう。
「新しい支払システム」の実用化は、消費者に利便性をもたらす反面、危険
性も大きい。『平成11年版 犯罪白書』によれば、わが国における「窃盗」等
の犯罪は増加し、98年には「窃盗」は、認知件数が1,789,049件で
前年より 7.4%増加し、過去10年間で最高を記録している。
また、最近、カード関連の犯罪の増加が著しいが、特にクレジットカードの
偽造に関する犯罪のニュースが目立っている。わが国は治安がよく、クレジッ
トカード犯罪の非常に少ない国といわれてきたが、最近の状況をみると必ずし
もそうとはいえなくなってきているようである。
カード偽造の典型例としてよく紹介されているものに、「スキミング」と呼ば
れる磁気カードの情報を機械で読み取る手口がある。最近は機械が非常に小型
7
化し簡単にできるようになり、一般の販売店の機械に知らないうちに取り付け
られたなどの例も少なくないという。キャッシュカードは磁気カードであり、
同様の問題が起こり、暗証番号さえわかれば第三者に悪用される可能性がある。
こうした状況に対応する方法のひとつとして、カードのIC化がすでにはじ
まりつつある。ICカードは、非常に多くの情報を安全に記録することができ、
出し入れも自由であり、「クレジットカード」ばかりでなく、「キャッシュカー
ド=デビットカード」、
「電子マネー」のほか各種会員カード等一般のID(身
分証明)カードなどとも併用できる。
一方、わが国におけるインターネット人口は今後も増加するものと予想され、
電子商取引の伸長も飛躍的な数字が試算されており、消費生活にもますます浸
透していくものと考えられ、更に両方の相乗りなど、ますます「電子マネー」、
「電子決済」などの「新しい支払システム」のニーズも高まるといえよう。
インターネットに関しては、消費生活相談も増加の一途をたどっているが、
インターネットショッピングに関しての法的規制は、現状では、特別法として
訪問販売法(訪問販売等に関する法律)の「通信販売」に係る規定が該当する
のみで、基本的には民法等の一般法の適用になる。(2001 年 4 月からは、消費
者取引については、消費者契約法の対象となる)インターネットオークション
などのような全く新しい取引形態などもでてきており、法の適用要件の考え方
など、検討すべき課題も多い。
ICカードなどが広く実用化されれば、利便性は飛躍的に高まる反面危険性も
高まることとなり、実現にむけては、取引の安全性(セキュリティ)、消費者保
護、個人情報保護等の法制度、暗号技術等各さまざまな分野での十分な環境整
備が必要である。
〔報告書の購入方法
〔報告書の購入方法〕
○最寄りの政府刊行物サービスセンターまたは官報販売所で取り扱い。
○書店で「全官報(全国官報販売共同組合)扱い」で、取り寄せる。
○(社)全国消費生活相談員協会(TEL03-3448-9736、FAX03-3448-9830)に直接申し込む。
判型・頁:A4判、44 頁
定価 500 円(税別)
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「電子マネー・電子決済」
「デビットカード」</title>
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