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新・実学ジャーナル

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新・実学ジャーナル
食料 環境 健康 バイオマスエネルギー & 情報
No.107
新・実学ジャーナル
1+2
月号
Jan.+Feb. 2014
バイオセラピーセンター
オホーツク新食品誕生記 (22)
東京農大農学部植物園から(14)
学校法人
東京農業大学の沿革
榎本武揚と横井時敬
傘下に東京情報大学
創設者は、明治の英傑榎本武揚だ。明治政府で逓
東京農業大学は、農学部、応用生物科学部、地域
信相、農商務相、文相、外相、などの要職を歴任し
環境科学部、国際食料情報学部、生物産業学部、短
た榎本は、明治24年(1891)、東京に「私立育英黌」
期大学部の 6 学部21学科からなり、大学院は 2 研究
を設立した。その農業科が東京農学校、東京高等農
科19専攻体制が整っている。世田谷、厚木、オホー
学校と名を替えつつ、拡充の歴史を歩み、今日の東
ツク(北海道・網走) の 3 キャンパスに学生・院生
京農業大学となる。
ら約13,000人が学んでいる。
東京農学校時代の明治28年、評議員として参画し
学校法人東京農業大学の傘下に、東京情報大学
たのが、明治農学の第一人者横井時敬だった。「人
(千葉) がある。総合情報学部 1 学科、大学院 1 研
物を畑に還す」
「稲のことは稲にきけ、農業のこと
究科で、学生・院生は約1,900人。傘下には、他に
は農民にきけ」と唱えて、
「実学」による教育の礎
併設校として農大一高/中等部、同二高、同三高/
を築き、東京農業大学の初代学長を務めた。本学の
附属中学がある。
「生みの親」は榎本、
「育ての親」は横井である。
学校法人東京農業大学戦略室
農大アカデミアセンターが完成
地下 2 階に自動書庫)を中心に大学本部機能などを含
むオール農大の中核となる複合施設。図書館の開館は
4 月 7 日の予定。
地下 1 階は横井時敬・初代学長の名を冠した「横井
講堂」
(約360m2、281席)=写真㊤㊨=となっている。
東京農大世田谷キャンパスに「農大アカデミアセン
横井講堂は72本のヒノキの無垢柱に囲まれ、木の温も
りの中にも清潔感が漂う。
ター」=写真㊤㊧=が完成、 1 月 6 日から業務を開始
横井講堂で昨年12月18日に行われた落成式では、大
した。農大アカデミアセンターは、地下 2 階、地上
9 階建てで延べ床面積約18,100m2。蔵書数約100万冊、
座席数1,000席の規模を有する図書館機能( 3 ∼ 7 階、
澤貫寿理事長と髙野克己学長の挨拶と長谷場秀道施設
部長の工事経過報告の後、設計業者及び施工業者への
感謝状贈呈などが行われた。
ビタミンB12定量に適した新規乳酸菌の開発
東京農業大学応用生物科学部菌株保存室 准教授 田中尚人
現在の公定定量法
ビタミンB12(以降B12)はコバルト(Co)を含む赤
色のビタミンで、ヒトにとって必須ビタミンのひとつ
である。
不足すると悪性貧血や神経障害などが起こる。
B12は植物性食品には含まれず、動物性食品に含まれ
るビタミンである。各食材に含まれるB12の含有量を
知ることは、栄養管理のためには欠かせない。B12の
定量法には分光学的方法、HPLC法、放射性同位体希
釈法など機器を用いた定量法があるが、いずれも操作
法や感度などに難点がある。そのため感度が高く操作
法も簡便である乳酸菌
subsp.
たなか なおと
1973年北海道生まれ
東京農業大学大学院農学研究
科農芸化学専攻博士後期課程
修了
東京農業大学応用生物科学部
菌株保存室准教授、博士(農
芸化学)
専門分野:微生物学、微生物
分 類 学、 バ イ オ イ ン フ ォ マ
ティクス
主な研究テーマ:乳酸菌にお
けるビタミンB12作用機序の
解明、さまざまな環境からの有用微生物の探索
ATCC 7830(以降ATCC 7830株)を用いた微生
物定量法(microbioassay)が、WHO/FADおよび五
訂増補日本食品標準成分表分析マニュアルで指定され
た分析法になっている。
微生物定量法は、指示菌として用いる微生物が定
量しようとする目的成分を必須要求することで成り
立つ。1970年ころまでは、B群ビタミン類(B1、B2、
B6、B12、ナイアシン、パントテン酸、葉酸など)や
アミノ酸類の定量に微生物定量法を用いるのが主流で
あった。
これらの微生物定量法に使われる微生物には、さま
ざまな栄養素を要求する乳酸菌が用いられることが多
かった。その後、機器による定量法が発達し、ほとん
どの分析で微生物定量法が使われなくなった。しかし、
B12に つ い て は 現 在 で も 乳 酸 菌
subsp.
ATCC 7830株を用いた微生物定量法が国際的に
公定定量法となっている。
不安定な検量線
さて、ATCC 7830株はB12を必須要求するためにB12
の微生物定量法が成り立つ。微生物定量法には、定量
値の基準となる検量線が必要である。検量線は、B12
図− 1 理想的な検量線(模式図)
同時に作成した検量線に当てはめ、試料中のB12量が
求められる。
微生物定量法に欠かせない検量線は、 0 濃度のとき
の測定値(生育量)が限りなく 0 (ゼロ)であり、さ
らにB12濃度に従って右上がりに直線になることが理
想である(図− 1 )。しかしATCC 7830株を用いたB12
の標準品を用い、一定の間隔で濃度を変えた数段階の
の定量においては、 0 濃度の時に高い測定値(ハイブ
ランク)であったり、濃度に従ってきれいな検量線と
標準液を作成し、それぞれの一定量を含む合成培地を
ならなかったりと安定せず、専門機関においても技術
作成する。それら各合成培地にATCC 7830株を接種
を要する定量法とされている。この不安定さについて
は、いくつかの論文でも議論されている。
し、培養後それぞれの生育量を測定する。生育量は培
地の濁りの程度(濁度)あるいは培地中に産生された
乳酸量(酸度)を実測し、その各測定値をグラフ用紙
にプロットすることにより、B12の濃度に従った右上
がりの検量線が得られる。試料を含む合成培地を作成
してATCC 7830株を接種し、その生育量の測定値を
グループの乳酸菌はB12を要求する。同
グループには、ATCC 7830と同じ
(発酵乳由来)
、
(発酵乳由来)、
subsp.
subsp.
subsp.
(植物
質発酵食品由来)等が存在する。
新・実学ジャーナル 2014.1+2
1
図− 2 各種回帰分析により作成された検量線
A:説明変数をB12濃度、従属変数を生育度とした従来法の線形回帰分析による検量線
B:説明変数をB12濃度の常用対数、従属変数を生育度とした線形回帰分析による検量線
C:説明変数をB12濃度の常用対数、従属変数を生育度のロジット値としたロジスティック回帰分析による検量線
R2は決定係数 供試菌株はNRIC 0700
影響の少ない方法とした。
「すんき」から分離した乳酸菌
我々は長野県木曽地方で作られている無塩の漬け物
「すんき(赤蕪が原料)」から乳酸菌を多種類分離(1) し、
その中の 1 種に
subsp.
が主要
新定量法で精度が向上
青のり、鶏むね肉について、NRIC 0700株を用いて
定量を行った。日本食品標準成分表2010で示されてい
乳酸菌であることを突き止めた。ある実験の最中にこ
の分離株がB12を要求することを知った。そこで我々
るB12の含有量はそれぞれ31.8㎍/100gと0.2 ㎍/100gで
ある。それに対して、我々が改良した方法での定量値
は、本分離株がB12の微生物定量法に適すかどうかの
は、それぞれ56.1±1.9㎍/100gと0.3±0.1㎍/100gであっ
検討を行った。検討に当たっては、漬け物「すんき」
た。 ま た、40pg/ 5 mLのB12溶 液 の 定 量 結 果 は、35.2
から分離された22株の
±2.0pg/ 5 mLであった。添加回収試験も良好な結果
が得られた。
subsp.
を用いた。
さまざまな検討の結果(2)、分離株のうちNRIC 0700
以上のように、NRIC 0700株を用いてB12の定量法
は、検量線の直線性、精度、確度、再現性においても
株が図− 1 に近い安定した直線となる検量線が得られ
ることがわかった( 図− 2 :A)
。しかしよく見ると
良好な結果が得られることを示した。我々が開発した
NRIC 0700株を用いたB12の定量法が特許として認め
S字型(シグモイド曲線)であったため、他の回帰モ
デルを当てはめ検討したところロジスティック回帰モ
られた。今後、NRIC 0700株がB12の定量のための指
デルによる検量線が直線的でより適していることがわ
示菌として、国際標準株として活用されることが期待
できる。
かった(図− 2 :C)。実はNRIC 0700株が最もすぐれ
ているが、他にも同様に検量線作成に適している株が
文献
あり、いずれもATCC 7830株より優れた評価となっ
( 1 )Endo A, Mizuno H., and Okada S;Lett Appl Microbiol 47, 221
た( 表− 1 )
。また、NRIC 0700株を用いる際に、安
226(2008).
定化を求め五訂増補日本食品標準成分表分析マニュア
ルに記載された試料調整法を改良し、B12定量感度に
( 2 )田中尚人、
冨田 理、
岡田早苗;ビタミン 84
(11)
, 538 542(2010)
.
表− 1 検量線安定性試験
株
検量線作成法
NRIC 0700
NRIC 0705
標準誤差
回帰係数
変動係数
平均値
変動係数
変動係数
ロジスティック回帰
0.983
0.007
0.042
0.224
0.149
ロジスティック回帰
0.971
0.015
0.041
0.217
0.236
NRIC 0755
ロジスティック回帰
0.980
0.017
0.043
0.319
0.171
NRIC 0756
ロジスティック回帰
0.975
0.012
0.061
0.268
0.202
ATCC 7830 ロジスティック回帰
0.782
0.422
0.036
0.703
0.708
n=12
2
決定係数
平均値
新・実学ジャーナル 2014.1+2
バイオセラピーセンター
「福祉農学」実践の場
医学での生物学的治療法(Biotherapy)とは異なり、ここで言う「バイオセラピー」は人と生き物の新しい関
係をつくる福祉のための農学。生き物を活用して「人が健康に生き、生活の質を向上させる」ことをめざす。東
京農大厚木キャンパスにあるバイオセラピーセンター(センター長・小川博教授)は、生活に潤いや、やすらぎ
を与える生き物との共生と、生き物の新たな活用方法の構築をめざす農学部バイオセラピー学科領域の研究と実
践の場の施設で、この領域の教育・研究に資する馬、犬などが飼育されている。
センターの役割
バイオセラピー学科は、人と動植物の関係を学ぶ新
しい学問領域として2006年につくられた。「生き物、
環境、人」をキーワードに、自然環境レベルにおける
野生動植物との共存、ペットや植物による生活の質の
向上、動物や植物による介在療法など、動植物を心の
糧として活用する形を追究している。ちなみに、バイ
オセラピーという言葉は、この時に生まれた「和製英
語」
(造語)だ。
バイオセラピーセンターは、その翌年「人間と動植
物との豊かな関係にかかわる教育と研究を行う」こと
を目的に開設された。主要施設は犬舎、厩舎、洗馬棟、
馬場、
ドッグラン、
放飼場および管理棟から成り、現在、
主にバイオセラピー学科の伴侶動物学研究室と動物介
在療法学研究室が、セラピー実践の場として学生の教
育や研究活動を展開している。常時複数の馬と犬が飼
育され、動物介在活動(Animal Assisted Activities
=AAA)として近隣地域の小・中学校や特別支援学
校の児童・生徒を対象にした活動も行うなど、学外か
らもさまざまな活動の展開が期待されている。
伴侶動物学研究室と
動物介在療法学研究室
センター長の小川教授と飼育している道産子ジャズ
<バイオセラピーセンター施設概要>
管理棟・犬舎 148.67m2 厩舎 194.4m2 洗馬棟 22.5m2 馬
場 800m2 放飼馬 253m2 ドッグラン760m2
*総面積 2,178.57m2
<飼育動物>
馬 4 頭 名前:シオン(品種:アラブ) クイーンタイム(品
種:アパルーサ) トミー(品種:シェトランドポニー) ジャ
ズ(品種:北海道和種=道産子)▽犬 5 匹▽ウサギ 2 匹▽
インコ 1 羽
2002年に「身体障害者補助犬法」が施行され、2012
年のイヌとネコの飼育頭数は約2128万頭(一般社団
を行っているのが動物介在療法学研究室。動物介在療
法人ペットフード協会調べ)
。伴侶動物(Companion
Animal)に関する知識は家庭生活だけでなく社会の
広い分野で欠かせなくなっている。伴侶動物学研究室
近年は障害のある人たちのほか、子どもたちあるいは
高齢者を対象としたリハビリテーション、福祉、教育
そしてスポーツ・レクリエーションへ適用され、さま
では伴侶動物の飼育技術や行動に関する研究にとどま
ざまな形の活動が行われている。動物介在療法学研究
らず、伴侶動物が広く社会に受け入れられるようなト
室は、いろいろな介在動物の中でも、古くから人間の
パートナーであった馬に焦点を当て、動物介在療法の
レーニングのあり方や、ペット産業、住宅産業、旅行
法(Animal Assisted Therapy=AAT)の歴史は古く、
業など広範な産業の中に伴侶動物に対する社会のニー
ズをいかに反映させるかを研究している。「人と伴侶
理解と活動へのさらなる応用をめざした教育および研
動物とのよりよい関係を科学する」のが伴侶動物学研
身の疾患やそれに対する動物の利活用などの手法、ま
究をしている。馬を介在させる取り組みから、人の心
究室。
たその効果についての検証、指導者の養成をめざした
一方、
「福祉・教育・医療分野への動物利用の探求」
教育と研究を、実践に即した形で総合的に行う。
新・実学ジャーナル 2014.1+2
3
馬の特性
「AAA」
「AAT」とも、
動物の人間にもたらす心理的、
身体的な好影響を生かしたもの。
「人を助ける仕事をする存在として人とのつながり
が古く、親和性がある」
「乗ることによって運動や心肺
に機能し健康に寄与する」──といった馬の特性をい
かしたのが治療的乗馬(Therapeutic Riding)
、障害
者乗馬(Riding for the Disabled)。気持ちよく馬に乗
り身体を預けることは、心を預けること。馬のもつ人
に対する親和性と騎乗にともなう運動によって、運
動機能障害のある人たちや自閉症の人たちの心が開か
れ、今まで見られなかった身体の動きが発現する。
馬と
いう動物は、障害の有無や年齢差、性差、ことばの違
昨年11月28日に行った小学 3 年生の飼育体験で
馬の触り方、蹄(ひづめ)などを説明する動物
介在療法学研究室 3 年生。馬はクイーンタイム
いなどをこえて人と人とをつなぐ能力を備えている。
行う。馬との関わりを通して、子どもたちは「馬の気
持ちを考え、参加者同士がコミュニケーションをとり
実践的活動
昨年12月の日曜日、神奈川県南足柄市の足柄ふれあ
いの森の「日帰りキャンプ・動物とのふれあい体験」
協力しあう」。こうした新しいことの挑戦から生まれ
が同センターで行われた。小中学生・保護者ら約20人
が参加。厩舎での馬の手入れ(ブラッシング)、馬房
童にとっての利点だけでなく、活動に関わる学生たち
にとっても貴重な学びの場となっている。
センター長の小川教授は「これから、もっとこのセ
掃除や馬場でのひき馬、ひき馬による乗馬などを楽し
んだ。今年度は厚木市、座間市、愛川町などと連携し
て、不登校児童対象の乗馬教室は12回、飼育・ふれあ
い体験は 8 回実施。また、特別支援学級乗馬会を 5 回
掲 示 板
た成功体験は、精神的成長を促す。もちろん、参加児
ンターの存在を知ってもらい、活用してもらえるよう
センターの活動を発信していきたい。また、植物介在
療法に関する施設との複合を高めていきたい」と言う。
2018年問題を考えるフォーラム
大学トップマネジメントフォーラム2013「少子化時
代に求められる大学教育とは∼2018年問題を考える
∼」
(12月 1 日、東京・丸の内東京商工会議所ホール。
朝日新聞社主催)に、東京農業大学・髙野克己学長が
パネリストとして出席した。
第 1 部のディスカッションの中で髙野学長は、「研
究室での少人数教育を通じて人間力を育てるという大
学から大学院までの 6 年間教育の重要性」を述べた。
また、第 2 部のテーマでは、店頭に並ぶ前の食肉の生
産過程を例に、
「家畜などの命に対する想像力を養う
「少子化時代を決する大学教育の中身」と題した、
ことや、向かいにいる相手のしゃべり方や態度から聞
朝日新聞出版「大学ランキング」編集長の中村正史氏
の講演のあと、パネルディスカッション( 2 部構成)
きとる感性を磨くことがグローバル人材の育成につな
がるのではないか」と語り、留学生の母国への農業生
が行われた。パネリストは髙野学長のほか、青山学院
産技術の移転、学費支援等の実績などを紹介した。
大学、神奈川大学、慶応義
塾大学、国際基督教大学、
上智大学、立教大学、立命
館大学の学長・総長。第 1
部では「少子化がすすむ中
での人材教育」
、第 2 部で
は「グローバル人材をどう
育成するか」のテーマにつ
いて、活発に意見が交わさ
れた。
4
新・実学ジャーナル 2014.1+2
オホーツク新食品誕生記 (22)
カラフルポテト用いた農大福
東京農業大学生物産業学部教授 永島 俊夫
東京農業大学生物産業学部では平成22年度から、文部科学省の「大学教
育・学生支援推進事業」大学教育推進プログラム【テーマA】に採択され
た「地域資源利用によるフードマイスター育成」を学部共通の授業として
実施してきました。現在は文科省からの支援期間が終わり、学部独自の科
目として継続しています。
この内容は学科の枠を越え、生産から加工、流通、経営など、食にかか
わる幅広い知識を身につけ、
食品関連業界のいろいろな部署に対応できる、
フードマイスター育成
プログラムより生まれた製品
地域資源の高付加価値化②
農大福
即戦力となり得る人材育成を目的としています。学生は講義や実習を通し
て、この地域には高品質な生産物が豊富なことや、その半面、規格外とな
り未利用な食材もたくさんあることなどを学び、それぞれのグループで地
域食材を利用した製品開発に取り組みます。 1 年間学んだ成果は広く学内
外に紹介するため、グループごとに開発した製品について報告する成果発
表会と試食会を実施します。
プログラム終了後も製品化に向けてさらに改良を行うグループも多く、
地域のイベントなどに参加して試食していただきながら品質のレベルアッ
プをしていきます。中でも「農大福」は最近北海道で栽培され、用途開発
が求められている有色馬鈴薯(カラフルポテト)を用いたもので、その色
調や機能性などの特徴を生かした製品を目指し、「シャドークイーン」
(紫
色)
、
「ノーザンルビー」
(淡赤色)
、「インカのめざめ」
(黄色)を餡として、
これを求肥で包み、色の異なる 3 種類の大福のようなお菓子に仕上げたも
のです。試食会や試験販売でも大変評価が高く、製品化に向けた企業を探
していたところ、美幌町にある株式会社ウエニシで製造してくれることに
なりました。製品開発まではできても商品として販売するには製造業者を
探して技術移転を行い、工場規模での製造方法の確立、パッケージデザイ
ン、表示、流通方法や経費、製品価格など、いろいろな問題を解決してい
かなくてはなりません。これに取り組んだ学生は企画開発して、それが実
際に販売されるまでのすべての過程を体験して学ぶことができ、きわめて
高い教育効果がありました。
また、学生が開発した製品について表彰する「キャンパスベンチャーグ
ランプリ北海道」に本プログラムを受講した学生が毎年応募しており、平
成23年度は、おやきをオホーツクの素材で作った「おじゃき」が努力賞、
24年度は野菜の色を生かしたカラフル餃子「オホ餃」が奨励賞を獲得しま
ながしま としお
した。そして25年度はこの「農大福」が 1 次審査を通過し、昨年度同様奨
励賞の受賞が決まりました。
東京農業大学生物産業学部
食品香粧学科教授。学校法
人東京農業大学元理事。食
品製造学、発酵食品学。
著書(共著)『生物資源と
その利用』
、
『食品保蔵・流
通技術ハンドブック』
、『日
本の伝統食品事典』など
このフードマイスター育成プログラムは次年度より一般の社会人にも枠
を広げ、食品関連の広い知識を身につける資格とすることにしています。
従って将来は学生の教育はもちろん、食品関連業界でも役に立つ学部のプ
ログラムとして、社会に認知される価値あるものにすることを目指してい
ます。
新・実学ジャーナル 2014.1+2
5
東京農大農学部植物園から(14)
Coll. et Hemsl.
クサスギカズラ科
は本園に中国・雲南省
日本には見られません。また、葉は 3 ∼10枚
から導入しすでに20年ほどになります。本種
が含まれるナルコユリ属
は北半
ほどが輪生状につき、線状披針形で先端部は
かぎ状に巻いています。これは草丈が長さ 3
球を中心に約60種が知られ、中でもヒマラヤ
mほどに生長し、かぎ状の葉で他の植物にか
から日本にかけて多くの種が知られていま
す。中国には約40種、日本にはナルコユリ
をはじ
らまり倒れないよう植物体を維持するための
ものと思われます。
生育地は海抜700∼3600mの草地、岩場な
め16種ほどが分布します。このようなナルコ
どで、雲南、四川、貴州、チベット、ベトナ
ユリ属植物ですが、本種
の花
ム、ミャンマーなどに分布します。中国では
や形状を見た時にはとにかく驚かさせられま
した。まず、花の色ですが花被の合着した筒
根茎部分を黄精の代用として薬用に使われま
部分は赤色で先端部が淡い黄色を呈していま
思われます。
本種
、アマドコロ
す。少なくてもこのような花色の本属植物は
新・実学ジャーナル
2014年 1 + 2 月合併号 No.107
2014年 1 月 1 日発行
編集・発行 学校法人東京農業大学戦略室
〒156 8502 東京都世田谷区桜丘 1 1 1
TEL.03 5477 2300 FAX.03 5477 2707
http://www.nodai.ac.jp/hojin/
定期購読ご希望の方は上記までご連絡ください。
すが、観賞用植物としての利用価値も高いと
(東京農大農学部植物園 伊藤 健)
2014 東京農大創立123年
学校法人
東京農業大学 東京情報大学 東京農業大学短期大学部
東京農業大学第一高等学校 東京農業大学第二高等学校
東京農業大学第三高等学校 東京農業大学第一高等学校中等部
東京農業大学第三高等学校附属中学校
8140101
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