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第Ⅰ章 - 日本証券業協会

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第Ⅰ章 - 日本証券業協会
第Ⅰ章
所得税と住民税
Copyright©2017日本証券業協会
第
Ⅰ章
所得税と住民税
Ⅰ
縡
所
得
税
と
は
ど
の
よ
う
な
税
金
か
縒
所
得
税
は
ど
の
よ
う
な
人
に
か
か
る
の
か
縡 所得税とはどのような税金か
所得税は、個人が1月1日から12月31
日までの1年間で得た所得 (=いわゆる
「儲け」)に対してかかる税金です。
所得とは、原則として、収入金額から
方税に分かれます。所得税は、国の税金
で国税の1つです。
さらに、税金は、誰が負担するかによ
って、直接税と間接税に分かれます。
必要経費を差し引いたものであり、収入
税金を負担する者に直接かかってくる
金額がそのまま所得金額になるわけでは
のが直接税です。一方、税金を負担する
ありません。サラリーマンの場合は、収
者と税金を実際に納める者が異なるの
入 (=年収) からその金額に応じて計算
が、間接税です。
した給与所得控除額を差し引いたもの
が、給与所得の金額となります。
税金の種類は50以上ありますが、どこ
に納めるかによって、国の税金である国
所得税は、国税の法人税・相続税や地
方税の住民税・固定資産税と並び、直接
税の代表的な税金です。
なお、消費税や酒税は間接税です。
税と、都道府県や市町村の税金である地
縒 所得税はどのような人にかかるのか
所得税がかかるのは、原則としては個
人です。
[1]居住者とは
日本に住所がある個人、または引き続
個人は、日本国内に居住する状況によ
いて1年以上居所がある個人をいいます。
り、居住者・非永住者・非居住者に区分
居住者は、日本国内で生じる所得のみ
され、それぞれ課税される所得の範囲が
ならず、外国で生じる所得についても
決められています。
(全世界所得について)課税されます。
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第Ⅰ章 所得税と住民税
「住所」とは、個人の生活の本拠
を指しますが、「住民登録」をして
いる場所とは限りません。
[3]非居住者とは
日本に住所も1年以上の居所もない個
人をいいます。
Ⅰ
非居住者は、日本国内において生じる
所得について課税されます。
[2]非永住者とは
居住者のうち、日本の国籍を有してお
らず、かつ過去10年以内において国内に
住所または居所を有していた期間の合計
が5年以下である個人をいいます。
非永住者は、日本国内で生じる所得
(国内源泉所得)の全部と外国で生じる所
得のうち日本国内で支払われ、または日
本国内に送金があった所得について税金
がかかります。
縱 所得税はどこに納めるのか
所得税に関する申告、申請、請求、納
蘯
事業の店舗などがある人は、届出
付などは、すべて納税地の所轄税務署に
により店舗などの所在地を納税地と
行います。
することが可能です。
納税地は、
盻
盧 住所のある人は、その住所地です。
ただし、住所のほかに居所がある人
特別な場合には、国税庁長官また
は国税局長により、納税地の指定を
受ける場合があります。
は、居所地を納税地とすることもで
きます。
盪
住所がなく居所がある人は、その
居所地です。
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縒
所
得
税
は
ど
の
よ
う
な
人
に
か
か
る
の
か
縱
所
得
税
は
ど
こ
に
納
め
る
の
か
縟 所得税がかからない所得(非課税所得)は
Ⅰ
縟
所
得
税
が
か
か
ら
な
い
所
得
︵
非
課
税
所
得
︶
は
特定の所得については、納税者の担税
なっています。
力 (税金を負担することのできる能力) を
したがって、
①身体障害者手帳の交付を受けて
考慮して、また、二重課税の防止などの理
いる者
由から所得税が非課税とされています。
②遺族基礎年金を受けることがで
非課税所得は、所得税の計算に際して、
きる妻である者
最初から所得がなかったものと同様に取
③寡婦年金を受けることができる
り扱われます。
妻である者等
④これらの者に準ずる者
したがって、損失が生じた場合でも、
が適用対象となります。
その損失はなかったものとされます。
金融資産関係で非課税所得の主なもの
は、次のとおりです。
盪
勤労者財産形成住宅(または年金)
障害者等〈注〉が受ける次の利子等
貯蓄の利子で、元本550万円(一定の
(非課税貯蓄申込書の提出などの手続き
ものは385万円) を限度とするもの
盧
(非課税貯蓄申込書の提出などの手続き
が必要です)
E 元本350万円までの少額貯蓄の
利子
が必要です)
蘯
{ 額面350万円までの少額公債の
追加型株式投資信託の収益の分配
金のうち、元本の払戻しに相当する
元本払戻金(特別分配金)
利子
盻
従来の「老人等の少額貯蓄非課税
制度」は、平成18年1月1日をもっ
て、「障害者等の少額貯蓄非課税制
非課税口座内の少額上場株式等に
係る配当所得及び譲渡所得等の非課
税
眈 特定寄附信託の利子所得非課税
度」に改められています。
〈注〉「障害者等の少額貯蓄非課税制度」に
おける「障害者等」の範囲は、従来の「老
人等」の範囲から「年齢65歳以上である
者」のみに該当する者を除外したものと
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第Ⅰ章 所得税と住民税
縉 所得は10種類に分けて計算する
所得税は、原則として個人の1年間に
20%(所得税15%、住民税5%)の税率に
得た所得に対して課される税金であり、
よる申告分離課税に変更されています
課税対象所得を10種類に区分してそれぞ
。
(第蠱章縒[1]109ページ参照)
れの所得を計算し、それらの金額に基づ
いて総所得金額を求めることになってい
[2]配当所得
法人から受ける剰余金の配当等(期中
ます。
の配当を含みます。また、資本剰余金の額の
[1]利子所得
減少に伴うもの〈資本の払戻し部分〉などを
公社債や預貯金の利子、公社債投資信
、株式投資信託の収益の分配金、
除きます)
託や貸付信託等の収益の分配金による所
基金利息、出資に対する剰余金の分配等
得のことです。
による所得のことです。
利子等の収入金額(源泉徴収される前の
金額)がそのまま所得金額とされます。
配当所得の金額は、収入金額(源泉徴
収される前の金額) から株式などを取得
するために借り入れた資金の利子を差し
利子所得の金額=収入金額
利子所得については、世界銀行債等
(第蠹章縒
[2]
①128ページ参照)
の利子、障
引いた金額です。
配当所得の金額
=収入金額−借入金の利子
害者等の少額貯蓄非課税制度等の一定の
ものを除き、一律20%(所得税15%〈平成
配当所得は、原則として総合課税の対
25年以後は復興特別所得税(20ページ参照)
象ですが、一定の上場株式等の配当につ
が併せて課税されます〉、住民税5%)の税
いては、その金額の多寡に関係なく、税
率による源泉分離課税となっています。
率20%(平成25年以後は復興特別所得税(20
なお、平成28年1月1日以後において
ページ参照)が併せて課税されます) の源
は、公社債や公社債投資信託などの利子
泉徴収で申告不要とすることもできま
や分配金は原則的に源泉分離課税から
す。
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Ⅰ
縉
所
得
は
10
種
類
に
分
け
て
計
算
す
る
なお、確定申告により、総合課税(配
Ⅰ
当控除の適用あり) を選択できます 。ま
不動産所得の金額
た申告分離課税(配当控除の適用なし)の
=総収入金額−必要経費
選択も可能です。
縉
所
得
は
10
種
類
に
分
け
て
計
算
す
る
ただし、内国法人の発行済株式総数の
なお、不動産所得を有する者について
3%以上を所有している個人株主(大口個
は青色申告 (27ページ参照) が認められ
人株主)については、その所有している株
ています。
式等が上場株式等であっても、所得税の
み20% (平成25年以後は復興特別所得税
(20ページ参照)が併せて課税されます)の
[4]事業所得
個人商店、農林水産業、医師、弁護士、
源泉徴収・原則として総合課税での確定申
自由業その他の事業から生じる所得のこ
告が必要)となります。
とで、確定申告する際には、「営業所得
〈注〉
「非上場株式等」の配当と「いわゆる大口
等」と「農業所得」に分けられています。
個人株主が受ける上場株式等」の配当につ
事業所得の金額は、総収入金額から必
いては、少額配当の確定申告不要制度が存
要経費を差し引いて計算します。必要経
続します(第蠡章縱
[1]
(3)
爬81ページ参照)
。
費は、その事業の種類によって異なります
が、仕入原価、固定資産税、荷造運賃、水
道光熱費、旅費・交通費、通信費、広告
[3]不動産所得
土地・建物等を貸し付けて受け取る地
宣伝費、接待交際費、損害保険料、修繕
代・家賃・貸間代などの賃貸料や権利金、
費、消耗品費、福利厚生費、給料・賃金、
更新料、名義書換料などによる所得、船
利子割引料、減価償却費等が含まれます。
舶または航空機の貸付けによる所得のこ
とです。
事業所得の金額
不動産所得の金額は、不動産所得の総
=総収入金額−必要経費
収入金額から修繕費、負債利子、損害保
険料、減価償却費、固定資産税、資産損
失、管理費等の必要経費を差し引いて計
事業所得を有する者についても青色申
告(27ページ参照)が認められます。
算します。
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第Ⅰ章 所得税と住民税
行に直接必要な技術や知識を習得するた
[5]給与所得
俸給や給料、賃金、歳費、賞与等によ
る所得のことです。
めの研修費、⑤職務の遂行に直接必要な
資格の取得費、⑥職務と関連ある図書の
給与所得の金額は、基本的には収入金
購入費、職場で使用する衣服の衣服費及
額(源泉徴収される前の金額)から給与所
び職務に通常必要な交際費(勤務必要経
得控除額を差し引いて計算します。
費)などです。ただし、その年中に支出
した勤務必要経費の合計額が65万円を超
給与所得の金額
える場合には65万円が限度となります。
=収入金額−給与所得控除額
〈注〉給与所得控除額は、給与所得の収入金
この特定支出の額の合計額が、給与所
得控除額×1/2の金額を超える場合には、
額に応じて、下記の「給与所得控除額速算
その超える部分の金額を給与所得控除額
表」から求めることができます。
に加算することができます。
蘆 給与所得控除額速算表(平成28年分)
青色申告
不動産所得、事業所得
給与所得控除額
または山林所得を生ずべき業務を
65万円
行う個人(法人にもこの制度はあり
狢×40%
ますが、本書では個人について説明
180万円超360万円以下
狢×30%+ 18万円
します) が、帳簿書類を備え付け
360万円超660万円以下
狢×20%+ 54万円
て取引を記録し、その帳簿書類を
660万円超1,000万円以下
狢×10%+120万円
保存することを要件として、納税
1,000万円超1,200万円以下 狢×5%+170万円
地の所轄税務署長の承認を受けた
給与の収入金額=狢
162.5万円以下
162.5万円超180万円以下
1,200万円超
一律230万円
なお、給与所得者には、「給与所得者
の特定支出の控除の特例」が設けられて
います。
場合には、確定申告 (または修正
申告) を青色申告書により提出す
ることができる制度です。
青色申告には、青色申告特別控
特定支出とは、①自己負担分の通勤費
除 (原則10万円、一定の要件を満た
用、②転勤に伴う引越し費用 (旅費・宿
せば65万円を所得から控除すること
泊費・荷物の運賃等)、③単身赴任者の往
ができます) や青色事業専従者給
復の帰宅旅費(月4回まで)、④職務の遂
与を所得から控除することができ
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Ⅰ
縉
所
得
は
10
種
類
に
分
け
て
計
算
す
る
る等の各種の特典があります。
青色申告のできる人
青色申告者
Ⅰ
のことです。青色申告書の提出の
承認を受けようとする人は、その
縉
所
得
は
10
種
類
に
分
け
て
計
算
す
る
が直接の原因で退職した場合は、上表から計算
した金額に100万円を加算した額が退職所得控除
額になります。
〈注〉なお、退職金を年金で受け取る場合には、退
職所得ではなく、雑所得として課税されます。
年の3月15日まで (その年の1月
平成25年分以後の所得税より勤続年数
16日以後に新たに業務を開始した場
が5年以下の役員等に対する退職手当等
合には、業務を開始した日から2か
に係る退職所得の課税方法について、退
月以内) に、「青色申告承認申請
職所得控除額を控除した残額の2分の1
書」を納税地の所轄税務署長に提
とする措置が廃止されています。
出しなければなりません。
〈注〉
「役員等」とは、次に掲げる者をいいます。
① 法人税法第2条第15号に規定する役員
② 国会議員及び地方議会議員
[6]退職所得
③ 国家公務員及び地方公務員
退職に際し、会社などから受け取る退
職金や一時恩給等による所得のことです。 [7]譲渡所得
退職所得の金額は、収入金額から勤続
土地や借地権、建物、株式、公社債、
年数に応じた退職所得控除額を差し引い
車両、機械、船舶、特許権、漁業権等の
た後の金額の2分の1になります。
資産を譲渡したことによる所得のこと
で、ゴルフ会員権の譲渡による所得もこ
退職所得の金額
1
=(収入金額−退職所得控除額)
×―
2
蘆 退職所得控除額の計算(平成28年分)
勤続年数
退職所得控除額
20年以下
勤続年数×40万円
(80万円未満の場合は80万円)
20年超
(勤続年数−20年)
×70万円
+800万円
〈注〉退職所得控除額は、上表から求めることがで
きます。なお、勤続年数の計算上、1年未満の
端数が生じた場合はこれを切り上げます。
〈注〉また、退職者が在職中に障害者になったこと
れに含まれます。
譲渡所得の金額は、譲渡益から特別控
除額を差し引いたものですが、その譲渡
益は収入金額から取得費と譲渡費用の総
額を差し引いて求めます。
譲渡所得の金額
=収入金額−
(取得費+譲渡費用)
−特別控除額
譲渡所得は、税法上、その譲渡資産が、
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第Ⅰ章 所得税と住民税
①土地・建物等の譲渡所得と、②株式等の
たり、同じく立木のまま譲渡した場合の
譲渡所得、③土地・建物等以外の譲渡所
所得は、事業所得または雑所得となりま
得とに区別されます。
す。
さらに、③については、譲渡資産の所
山林所得の金額は、総収入金額から必
有期間によって、短期譲渡所得(所有期
要経費を差し引き、さらに山林所得の特
間5年以下の資産の譲渡による譲渡所得)
別控除額50万円(ただし、総収入金額から
と、長期譲渡所得(所有期間5年超の資産
必要経費を差し引いた残額が50万円未満の場
の譲渡による譲渡所得)とに区分されます。
合は、その残額相当額)を差し引いて計算
短期譲渡所得については、譲渡所得の特
します。
別控除額 (最高50万円) を控除した後の
金額を他の所得と総合して、また、長期
山林所得の金額
譲渡所得については、譲渡所得の特別控
=総収入金額−必要経費−特別控除
除額 (最高50万円) を控除した後の金額
額(最高50万円)
の2分の1の金額を他の所得と総合し
なお、山林所得は「5分5乗方式」とい
て、それぞれ課税されます。
なお、その年中の譲渡所得に短期譲渡
う特殊な計算方法によって課税されます。
所得と長期譲渡所得の両方があった場合
山林所得を有する者についても青色申
には、まず前者から特別控除額を控除し、
告(27ページ参照)が認められます。
控除不足額があるときには、その不足額
を後者から控除します。
[9]一時所得
ちなみに、①の土地・建物等の譲渡所
保険料負担者が受取人である生命保険
得は分離課税となり、また、さまざまな特
の満期金や解約返戻金、賞金や懸賞当選
別控除や特例があります。なお、②の株式
金、競輪・競馬等の払戻金、株主以外の
等の譲渡所得は第Ⅱ章縡で説明します。
人が受ける新株予約権等による所得で
す。法文では、
[1]から[8]以外の所得の
うち、営利を目的とする継続的行為から
[8]山林所得
山林を伐採して譲渡したり、立木のま
生じた所得以外の一時の所得で、労務そ
ま譲渡することによる所得です。山林を
の他の役務または資産の譲渡の対価を有
取得してから5年以内に伐採して譲渡し
しないものをいいます。
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Ⅰ
縉
所
得
は
10
種
類
に
分
け
て
計
算
す
る
一時所得の金額は、収入金額から収入
Ⅰ
を得るために支出した費用を差し引き、
雑所得の金額=①+②
さらに一時所得の特別控除額50万円(た
① 公的年金等=公的年金等の収入
だし、収入金額から必要支出を差し引いた残
縉
所
得
は
10
種
類
に
分
け
て
計
算
す
る
額が50万円未満の場合は、その残額相当額)
を差し引いて計算します。
金額−公的年金等控除額
② 公的年金等以外のもの=公的年
金等以外の総収入金額−必要経費
一時所得の金額
平成28年1月1日以後に行う割引債の
=収入金額−収入を得るために支出
した費用−特別控除額(最高50万円)
償還により支払を受ける金銭の額につい
ては、上場株式等に係る譲渡所得等の収
入金額とみなして、20%(所得税15%、住
なお、一時所得は総合課税の長期譲渡
民税5%)の税率による申告分離課税に変
所得の課税の仕組みと同様に、一時所得
更されます。ただし、平成27年12月31日
の金額の2分の1を他の所得と総合して
以前に発行された割引債でその償還差益
課税されます。
が発行時に源泉徴収の対象とされたもの
を除きます。
[10]雑所得
蘆 公的年金等控除額の速算表(平成28年分)
雑所得は、[1]の利子所得から[9]
の一時所得までのいずれにも該当しない
所得で、国民年金や厚生年金などの公的
年金等、郵便年金、生命保険契約に基づ
く年金、学校債や組合債の利子、事業所
得とならない原稿料や印税等による所得
です。
雑所得の金額は、総収入金額から必要
公的年金等の収入金額
公的年金等控除額
130万円以下
70万円(※)
130万円超
410万円以下
410万円超
770万円以下
年金収入×25%
+37.5万円(※)
年金収入×15%
+78.5万円
年金収入×5%
+155.5万円
770万円超
※65歳以上の者に対しては最低120万円の控除額が
保証されています。
経費を差し引いて計算します。
なお、公的年金等については「公的年
金等控除」があり、公的年金等の収入金
額から公的年金等控除額を差し引いた金
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第Ⅰ章 所得税と住民税
額が雑所得の金額となります。
ます。
また、公的年金は給与等と同じように
また、公的年金等の収入金額が400万
源泉徴収の対象となっており、原則とし
円以下で、かつ、その公的年金以外の他
て公的年金の収入金額から一定の控除額
の所得の金額が20万円以下の者(国内に
(基礎的控除額・人的控除額) を差し引い
おいて源泉徴収が行われない、外国の公的年
た残額から、5%(平成25年以後は5.105%)
金等を除く) についての確定申告不要制
の源泉徴収が行われます。この源泉徴収
度があります。(住民税は別途申告が必
された額は、確定申告において精算され
要です。)
縋 所得税はどのようにして計算するのか
たかを計算します。
[1]所得税額計算の仕組み
所得税額の計算は、段階を踏んで行い
ます。
各種所得の金額は、基本的には次のよ
うに計算します。
第1段階…各種所得の金額の計算
利子所得
E
第2段階…課税所得金額の計算
第3段階…納付税額の計算
収入金額がそのまま所得になります。
配当所得
{
収入金額−借入金の利子
[2]各種所得の金額はどのようにして計
不動産所得
F
総収入金額−必要経費
算するのか
1年間に得た所得を10種類の所得に区
分して、それぞれの所得についていくら
事業所得
I
総収入金額−必要経費
の所得があったか、いくらの損失があっ
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Ⅰ
縉
所
得
は
10
種
類
に
分
け
て
計
算
す
る
縋
所
得
税
は
ど
の
よ
う
に
し
て
計
算
す
る
の
か
〈各種所得金額の計算〉
10種類の所得に区分
所 得
Ⅰ
非課税所得・免税所得
(−)
縋
所
得
税
は
ど
の
よ
う
に
し
て
計
算
す
る
の
か
(−) 源泉分離課税・申告不要対象所得
9種類の課税標準に区分して所得金額を計算
分離課税
の長期譲
渡所得の
金額
総所得
金額
分離課税
の短期譲
渡所得の
金額
上場株式
等に係る
配当所得
等の金額
上場株式
等に係る
譲渡所得
等の金額
一般株式
等に係る
譲渡所得
等の金額
先物取引
に係る雑
所得等の
金額
山林所得
の金額
退職所得
の金額
[課税所得金額の計算]
総
所
得
金
額
課
税
総
所
得
金
額
総合課税
所
分離課税の長期譲渡所得の金額
課 税 長 期 譲 渡 所 得 金 額
分離課税の短期譲渡所得の金額
課 税 短 期 譲 渡 所 得 金 額
得
上場株式等に係る配当所得等の金額
上場株式等に係る譲渡所得等の金額
一般株式等に係る譲渡所得等の金額
−
上場株式等に係る課税配当所得の金額
=
控
株式等に係る課税譲渡所得等の金額
一般株式等に係る課税譲渡所得等の金額
先物取引に係る雑所得等の金額
先物取引に係る課税雑所得等の金額
山
林
所
得
の
金
額
課 税 山 林 所 得 金 額
退
職
所
得
の
金
額
除
課 税 退 職 所 得 金 額
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申告分離
課税
第Ⅰ章 所得税と住民税
給与所得
_
次の段階として、10種類に分類した所
収入金額−給与所得控除額
ヘ
⃝
退職所得
得の金額を、以下の9つに分類します。
E 総所得金額 (利子所得、配当所得、
(収入金額−退職所得控除額)
×1/2
不動産所得、事業所得、給与所得、譲渡
S 譲渡所得
所得、一時所得、雑所得の金額の合計
収入金額−(取得費+譲渡費用)−
額)
特別控除額
総所得金額を計算する場合に
A 山林所得
は、総合課税となる長期譲渡所
総収入金額−必要経費−特別控除額
得および一時所得は2分の1に
(最高50万円)
L
一時所得
します。
収入金額−収入を得るために支出し
た費用−特別控除額(最高50万円)
!
雑所得
(公的年金等の収入金額−公的年金等
{
分離課税の長期譲渡所得の金額
F
分離課税の短期譲渡所得の金額
I
上場株式等に係る配当所得等の金
控除額)+(公的年金等以外の総収
入金額−必要経費)
額
_
上場株式等に係る譲渡所得等の金
額
源泉徴収
所得税が源泉分離課税
|
とされるものや申告不要を選択し
一般株式等に係る譲渡所得等の金
額
た所得については、確定申告の必
S
先物取引に係る雑所得等の金額
要はなく、源泉徴収で課税関係が
A
山林所得の金額
終了しますので、この計算をする
L
退職所得の金額
必要はありません。
なお、源泉徴収とは、給料や利
上記の9つに分類したそれぞれの所得
子など特定の所得について支払い
の金額を計算する際に、各種所得の金額
の際に支払者が支払金額から税金
の計算上生じた損失があるときは、所定
分 を 差 し 引 いて ( い わ ゆ る 「 天 引
の順序により他の所得から差し引くこと
、原則としてその翌月の10日
き」)
ができます。これを、損益通算といいま
までに納付することをいいます。
す。
33
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Ⅰ
縋
所
得
税
は
ど
の
よ
う
に
し
て
計
算
す
る
の
か
Ⅰ
また、損益を通算した結果、損失の金
①雑損控除、②医療費控除、③社会保険
額がなお残る場合には、それを純損失の
料控除、④小規模企業共済等掛金控除、⑤
金額といいます。
生命保険料控除、⑥地震保険料控除、⑦寄
この純損失の金額は、所定の条件のも
縋
所
得
税
は
ど
の
よ
う
に
し
て
計
算
す
る
の
か
附金控除、⑧障害者控除、⑨寡婦控除(寡
とに、翌年以降3年間にわたり繰り越し
夫控除)
、⑩勤労学生控除、⑪配偶者控除、
てその年の所得から差し引く、または前
⑫配偶者特別控除、⑬扶養控除、⑭基礎控
年に繰り戻して前年の所得から差し引く
除
ことができます(青色申告者のみの適用)。
これを、「純損失の繰越し」または「純
損失の繰戻し」といいます。
ただし、分離課税の譲渡所得の金額
(一定の居住用不動産の譲渡損失を除きま
す)、 株式等に係る譲渡所得等の金額、
先物取引に係る雑所得等の金額の計算上
〈注〉控除対象とされる配偶者や扶養親族は、
合計所得金額が38万円以下の人に限られ
ますが、上場株式等の譲渡や配当による
所得について特定口座で源泉徴収口座を
選択して申告不要とした金額(確定申告
をする場合は除きます)や配当所得に係
る申告不要制度を選択した金額は、配偶
者控除等の判定の基礎となる合計所得金
額には含まれません。
生じた損失等は、他の所得の黒字の金額
から差し引くことはできません。
なお、上場株式等の譲渡損失などと申
告分離課税を選択した上場株式の配当等
との損益通算が可能となっています。
[4]納付税額はどのようにして計算す
るのか
税額の計算は、9つの課税所得金額
(
[課税所得金額の計算]32ページ参照)ごと
にそれぞれの方法で行います。
[3]課税所得金額はどのようにして計
そして、それらの税額の合計額を算出
税額といいます。
算するのか
所得税では、所定の金額を所得金額か
課税総所得金額(総所得金額〈第蠢章縋
ら差し引いた (控除)後に税額を計算す
[2] E 31ページ参照〉から社会保険料等の
ることになっています。この控除のこと
所得控除を差し引いた後の金額)に対する
を総称して所得控除といい、14種類あり
税額は、所得税の税額速算表に当てはめ
ます。そして、この所得控除を差し引い
て、次の例のように計算します。
た後の金額が、課税所得金額です。
14種類の所得控除は、次のとおりです。
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第Ⅰ章 所得税と住民税
蘆 所得税の所得控除額(平成28年分)
名 称
雑損控除
医療費控除
控 除 額
次のいずれか多い金額
①(損害金額−保険金等で補てんされた金額)−(合計所得金額×10%)
②(災害関連支出の金額−保険金等で補てんされた金額)−5万円
(医療費−保険金等で補てんされた金額)−{(合計所得金額×5%)または(10万円)のいずれか低い金額}
(控除限度額200万円)
社会保険料控除
その年に支払った金額
小規模企業共済等掛金控除
その年に支払った金額
生命保険料控除
地震保険料控除※
寄附金控除
Ⅰ
① 平成24年1月1日以後に締結した保険契約等(新契約)に係る保険料について
生命保険料控除額は、一般の生命保険料、個人年金保険料及び介護医療保険料についてそれぞれ次の表
の計算式に当てはめて計算します。この方法で計算した金額の合計額が生命保険料控除額です。
〈所得税〉
年間の支払保険料
控除額
20,000円以下
支払保険料の全額
20,000円超40,000円以下
支払保険料×1/2+10,000円
40,000円超80,000円以下
支払保険料×1/4+20,000円
80,000円超
一律40,000円
② 平成23年12月31日以前に締結した保険契約(旧契約)等に係る保険料
生命保険料控除額は、一般の生命保険料及び個人年金保険料についてそれぞれ次の表の計算式に当ては
めて計算します。この方法で計算した金額の合計額が生命保険料控除額です。
〈所得税〉
年間の支払保険料
控除額
25,000円以下
支払保険料の全額
25,000円超50,000円以下
支払保険料×1/2+12,500円
50,000円超100,000円以下
支払保険料×1/4+25,000円
100,000円超
一律50,000円
なお、新契約及び旧契約の双方の契約について生命保険料控除の適用を受ける場合には、一定の調整算
式により控除額を計算します。
その年に支払った地震保険料の金額(最高50,000円)
(特定寄附金の支出金額または総所得金額等の合計額の40%のいずれか低い金額)−2,000円
障害者控除
一般 …………………………………………270,000円 特別障害者 …………………………………400,000円
同居特別障害者 ……………………………750,000円
寡婦(寡夫)控除
一般 …………………………………………270,000円 割増控除対象の特定の寡婦 ………………350,000円
勤労学生控除
270,000円
配偶者控除
一般 …………………………………………380,000円 老人配偶者(70歳以上)
……………………480,000円
蘆 配偶者特別控除額の早見表(平成28年分)
配偶者特別控除
控
除
対
象
配
偶
者
に
該
当
し
な
い
場
合
配偶者の合計所得金額
380,001円から399,999円まで
400,000円から449,999円まで
450,000円から499,999円まで
500,000円から549,999円まで
550,000円から599,999円まで
600,000円から649,999円まで
650,000円から699,999円まで
700,000円から749,999円まで
750,000円から759,999円まで
760,000円以上
控除額
38万円
36万円
31万円
26万円
21万円
16万円
11万円
6万円
3万円
0万円
扶養控除
一般(16歳未満の者を除く) ………………………………………380,000円
特定扶養親族(19∼22歳)
……………………………………………630,000円
一般老人扶養親族(70歳以上)
………………………………………480,000円
同居老人扶養親族(70歳以上) ……………………………………580,000円
基礎控除
380,000円
※ 平成18年12月31日までに締結した「長期損害保険料契約等」については、従前の損害保険料控除の経過措置があります。
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縋
所
得
税
は
ど
の
よ
う
に
し
て
計
算
す
る
の
か
【例】課税総所得金額が、560万円の場合
Ⅰ
の税額は、
し引いた金額が、その年分の所得税額と
なります。
(課税総所得金額)(税率) (控除額)
縋
所
得
税
は
ど
の
よ
う
に
し
て
計
算
す
る
の
か
縢
確
定
申
告
算出税額から、これらの税額控除を差
(算出税額)
5,600,000円×20%−427,500円=692,500円
なお、天引きされた源泉徴収税額があ
る人は、税額控除を差し引いた後の所得
税額からさらに源泉徴収税額を差し引い
となります。
た後の税額 (申告納税額といいます) を、
蘆 所得税の税額速算表(平成28年分)
確定申告の際に納めることになります。
課税所得
税率
控除額
さらに、平成25年1月1日から平成49
195万円以下
5%
0万円
年12月31日までの間に生ずる所得(総合
195万円超
330万円以下
10%
9.75万円
課税及び分離課税の所得)に対する所得税
330万円超
695万円以下
20%
42.75万円
に係る基準所得税額(税額控除後で外国税
695万円超
900万円以下
23%
63.6万円
額控除を適用しない場合の所得税額)に
900万円超
1,800万円以下
33%
153.6万円
2.1%を乗じて計算した金額を復興特別
1,800万円超 4,000万円以下
40%
279.6万円
所得税として、通常の所得税額にあわせ
4,000万円超
45%
479.6万円
て納付を行うことになります。
―
―
ただし、7月と11月に予定納税をして
次に、配当控除、住宅借入金等特別控
除、住宅特定改修特別控除、認定長期優
良住宅新築等特別控除、外国税額控除、
いる人は、この予定納税額を差し引いた
後の金額を納めることになります。
この際に、この金額がマイナスとなっ
政党等寄附金特別控除などの税額控除が
たときは、このマイナスとなった金額が
あります。
還付されます。
縢 確定申告
所得税は、納税者本人が、税法に従っ
ます。
て所得金額と所得税額を計算し、税務署
所得税の確定申告は、その年の1月1
に申告をして納税をするという仕組みと
日から12月31日までの1年間に得た所得
なっています。これを、確定申告といい
金額と所得税額を計算し、「申告書」に記
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第Ⅰ章 所得税と住民税
載して、翌年の2月16日から3月15日の
内の上場株式等の譲渡による
申告期間内に納税地の所轄税務署に提出
所得で、確定申告をしないこ
します。
とを選択したもの
Ⅰ
F 特定公社債の利子で確定申告
縢
確
定
申
告
をしないことを選択したもの
[1]確定申告をしなければならない人
I 源泉分離課税とされる預貯金
① 一般の人の場合
その年の所得の合計額が所得控除の合
や一般公社債等の利子
計額を超える人は、確定申告をしなけれ
_ 源泉分離課税とされる抵当証
ばなりません。
券などの金融類似商品の収益
ただし、配当所得のある人で、配当控
| 源泉分離課税とされる一時払
除額が所得金額に税率を掛けて算出した
養老保険の差益(保険期間等
税額よりも多いときは、確定申告をしな
が5年以下のもの及び保険期
くてもよいことになっています。
間等が5年超で5年以内に解
一般に、確定申告が必要な人は、次の
約されたもの)
算式に当てはまる人です。
② 給与所得のある人
所得の合計額 >
所得控除額
給与所得のあるおおかたのサラリーマ
ンは、毎年12月の年末調整で税金の精算
この場合の所得の合計額とは、利子、
配当、不動産、事業、給与、退職、譲渡、
山林、一時、雑の10種類の所得の合計額
です。
が済みますので、確定申告をする必要は
ありません。
ただし、次の人は確定申告をしなけれ
ばなりません。
爬
この場合の「所得の合計額」には、
次のものは含まれません。
給与の収入金額が、2,000万円を
超える人
爰 1か所から給与を受けている人で、
E 上場株式等の配当や少額配当
などで確定申告をしないこと
給与所得や退職所得以外の所得の合
計額が20万円を超える人
を選択したもの
{ 特定口座の源泉徴収選択口座
「給与所得や退職所得以外の所得」
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には、次の所得は含まれません。
一定の所得控除の額の合計額を差し
引いた残額が150万円以下で、かつ
などで確定申告をしないこと
給与所得や退職所得以外の所得の合
を選択したもの
計額が20万円以下の人は、確定申告
Ⅰ
E 上場株式等の配当や少額配当
{ 特定口座の源泉徴収選択口座
縢
確
定
申
告
内の上場株式等の譲渡による
の必要はありません。
爻
同族会社の役員やその親族で、そ
所得で、確定申告をしないこ
の法人から給与所得の他に貸付金の
とを選択したもの
利子や地代家賃の支払いを受けてい
F 特定公社債の利子で確定申告
をしないことを選択したもの
I 源泉分離課税とされる預貯金
や一般公社債等の利子
る人
爼
災害減免法により給与の源泉徴収
税額の徴収猶予や税金の還付を受け
た人など
_ 源泉分離課税とされる抵当証
券などの金融類似商品の収益
| 源泉分離課税とされる一時払
養老保険の差益(保険期間等
③ 退職所得のある人
退職所得については、通常は、確定申
告をする必要はありません。
が5年以下のもの及び保険期
しかし、退職するまでに退職金の支払
間等が5年超で5年以内に解
者に対して「退職所得の受給に関する申
約されたもの)
告書」を提出しなかったときは、20%
(平成25年以後20.42%)の税率で源泉徴収
2か所以上から給与を受けている
されますが、その徴収された税額が正し
人で、主たる給与以外の従たる給与
く計算した税額よりも少ない人は、確定
の収入金額と、給与所得や退職所得
申告をしなければなりません。
爲
以外の所得との合計額が20万円を超
える人
④ 国外転出時課税の適用のある人
ただし、2か所以上から受ける給
国外転出の時までに納税管理人の届出
与の全部について源泉徴収または年
をしない場合は、国外転出の時までに準
末調整を受けている場合は、給与の
確定申告をしなければなりません。
収入金額から、社会保険料控除等の
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第Ⅰ章 所得税と住民税
[2]確定申告をすれば税金が還付され
収入(源泉徴収する前の金額)等との
合計額が330万円以下の人
る人
その年の1月1日から12月31日までの1
F 給与所得者で、年の中途で退職し、
年間に得た所得金額をもとに算出した税
その後就職しなかったため年末調整
額より、給与所得や配当所得などで源泉
を受けていない人
徴収された税金や予定納税で納めた税金
の方が多いときは、確定申告をすること
I
予定納税をした人で、所得が減る
など確定申告の必要がなくなった人
によって納め過ぎの税金が還付されます。
この場合の還付申告書の提出は、提出
期限が定められていませんので、確定申
[3]損失が生じたときの確定申告
一定の順序により損益通算を行った結
告の受付けが始まる2月16日以前でも申
果、その年の所得が純損失となったとき
告が可能です。
等は、損失申告書を提出することになり
特に、次のような人は、税金の還付を
ます (青色申告者〈28ページ参照〉に限ら
。
れます)
受けられます。
給与所得や退職所得のある人で、
なお、平成15年1月以後に生じた上場
雑損控除、医療費控除、住宅借入金等
株式等の譲渡損失は、翌年以後3年間の
特別控除などを受けることができる人
繰越控除ができるようになりましたが、
E
給与所得以外に配当所得や原稿料
この適用を受けるためには、たとえ株式
収入などの所得がある人で、「給与
の譲渡がなかった年でも損失を繰越すた
所得控除後の金額から社会保険料控
めの確定申告をしておかなければなりま
除等の所得控除後の金額」と原稿料
せん。
{
繆 納税の方法は
確定申告の申告期限と納期限は、3月
[1]税金の納付のあらまし
所得税は、納税者本人が所得金額と所
15日です。納税場所は、金融機関、郵便
得税額を計算し、確定申告により、その
局または税務署です。また、納付税額が
税金を納期限までに納めることになって
30万円以下で一定の場合にはコンビニエ
います。
ンスストアでの納付もできます。
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Ⅰ
縢
確
定
申
告
繆
納
税
の
方
法
は
事前に電子納税の手続きをしておけば
Ⅰ
繆
納
税
の
方
法
は
繦
住
民
税
の
あ
ら
ま
し
が、通知を受けた予定納税基準額よりも、
電子納付も可能です。なお、金融機関に
自分で計算した税金の見積額が少なくな
おける口座振替によっても納付すること
ると見込まれるときは、税務署長に対し
ができます(口座引落しの日は4月20日前
て予定納税額の減額申請書を提出して減
。
後です)
額を求めることができることになってい
ます。
[2]予定納税とは
予定納税とは、所得税の確定申告を行
[3]延納制度(分割払い)とは
って納税する前の段階で、その年分の所
確定申告による第3期分の税額を申告
得税を予め見積もり、その3分の1ずつ
期限の3月15日までに全額を納付するこ
を7月(第1期分)と11月(第2期分)の
とができない人は、第3期分の税額の2
2回に分けて予め納めることです。
分の1以上を3月15日までに納付すれ
予定納税額は、前年分の確定申告の所
ば、残額については、その年の5月31日
得税額を基準として、税務署で予定納税
まで延期することができます。これを延
基準額を計算し、納税者に通知すること
納制度といいます。
になっています。
なお、延納する税額に対しては、利子
なお、予定納税の通知を受けた納税者
税を納める必要があります。
繦 住民税のあらまし
住民税は、都道府県や市(区)町村の
[1]住民税の課税方式
住民が都道府県と市(区)町村に納税す
住民税は賦課課税方式をとっています。
る税金です。道府県民税 (都民税を含み
賦課課税方式とは、所得税のように納
ます)と市町村民税(特別区民税を含みま
税者が自ら納税すべき額を計算して申告
す)を一般に住民税と総称しています。
納付する申告納税方式ではなく、課税権
住民税は、個人住民税と法人住民税に
者である市(区)町村長が税額を計算し
て決定し、それを納税者に通知し、納税
分けられます。
本書では、個人住民税 (とりわけ、均
等割および所得割)について説明します。
者はその通知によって定められた期限ま
でに納税するというものです。
40
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第Ⅰ章 所得税と住民税
[2]住民税の均等割と所得割
蘆 妻の個人住民税の均等割税額
住民税は、納税者の所得金額の多寡に
かかわらず定額で課税される均等割と、
所得金額に応じて課税される所得割など
該当する年度分
均等割の税額
平成18年度分以後
均等割額(4,000円)
Ⅰ
ただし、均等割には次に述べる非
からなっています。
なお、平成26年度から平成35年度の各
課税限度額制度が設けられているた
年度分の個人住民税については復興増税
め、所得のない専業主婦等には課税
として一律1,000円(道府県民税500円、市
されません。
町村民税500円)が均等割に上乗せされま
{ 個人住民税の非課税限度額
す。
個人住民税の均等割や所得割の非
課税基準は次のとおりです。
爬 道府県民税の均等割
道府県民税の均等割額は、年額
控除対象配偶者
控除対象配偶者または扶養親族
および扶養親族
を有する場合
を有しない場合
1,000円です。
爰 市町村民税の均等割
市町村民税の均等割額は、年額
35万円以下の場
3,000円です。
生計同一の妻に対する非課税措
E
合計所得金額≦35万円×(本人、
均等割 控除対象配偶者および扶養親族
の合計数)+加算額22万円
合計所得金額が
置の廃止
個人住民税均等割の納税義務を負
合計所得金額≦35万円×(本人、 合、非課税
所得割 控除対象配偶者および扶養親族
の合計数)+加算額35万円
※加算額は、控除対象配偶者または扶養親族を有す
担する夫と生計を一にする妻で、夫
る場合のみ加算します。
と同一の市町村内に住所を有する者
爲
に対する非課税措置が廃止されまし
蘆 一般の所得に対する税率(平成28年度分)
た。
一律
この改正により、新たに納税義務
を負うこととなる妻についての個人
住民税の均等割の税額は、道府県民
税と市町村民税を合わせて次のよう
になります。
道府県民税の所得割
爻
4%
市町村民税の所得割
蘆 一般の所得に対する税率(平成28年度分)
一律
6%
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繦
住
民
税
の
あ
ら
ま
し
[3]住民税の申告と納税
Ⅰ
繦
住
民
税
の
あ
ら
ま
し
利子割 預貯金の利子等には「利
住民税の賦課期日は1月1日ですから、
子割」が課税されます。金融機関
1月1日現在の住所地の市町村に、3月
等が利子等を支払う際に5%の税
15日までに申告書を提出します。
率で特別徴収し、その金融機関等
もっとも、給与所得者や公的年金受給
の所在する都道府県に納めます
者で他の所得のない人は申告の必要はな
(このほかに所得税として15%が源泉
く、所得税の確定申告をした人も重ねて
。
徴収されます)
住民税の申告をする必要はありません。
なお、平成28年1月1日以後は
住民税の納税方法は、一般的には納税
法人に係る利子割が廃止されてい
通知書に従い、年4回 (6月・8月・10
ます。
月・翌年1月)に分けて納税します(普通
徴収)。サラリーマンで給与所得以外に
配当割および株式等譲渡所得割 所得がない場合は、6月から翌年5月ま
平成16年1月1日から、上場株
での給与から差し引く形で納税します
式等の配当等に対する「配当割」
(特別徴収)
。
および源泉徴収が選択された特定
口座上場株式等に係る譲渡所得に
対する「株式等譲渡所得割」の制度
が創設され、それぞれ所定の税率
により特別徴収が行われていま
す。
また、平成28年1月1日以後、
特定公社債等の利子等については
利子割の対象から除外され、配当
割の対象となっています。更に、
源泉徴収選択口座内の特定公社債
等の譲渡所得等については、株式
等譲渡所得割の対象となっていま
す。
42
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第Ⅰ章 所得税と住民税
確定拠出年金の税金について
わが国の企業年金制度は、これまでは
が設けられています。
国や企業がその資金を運用してきました
・加入者への損失補てん、利益供与
が、平成13年10月から「確定拠出年金制
などの禁止規定が設けられていま
度」が導入(個人型は平成14年1月から
す。
Ⅰ
確
定
拠
出
年
金
の
税
金
に
つ
い
て
導入)され、この制度に加入すると自分
で拠出資金の運用判断を行うことになり
(※)確定拠出年金法の改正により平成29年よ
り、専業主婦や公務員も「個人型」に加
ます。
その結果、将来受け取る年金額は、加
入できるようになります。
入者自身がどのような運用方法を選択す
るかによって、大きく異なってきます。
この点が「確定拠出年金制度」の大き
な特徴です。
確定拠出年金の税金
① 確定拠出年金の掛金に対する税金
爬 企業型年金
企業が拠出した金額は、一定の範
囲内で、従業員には所得税が課税さ
蘆確定拠出年金の概要
れませんし、企業では全額損金に算
・「企業型」と「個人型」の2つの
入され、法人税が課税されません。
また、個人が拠出した金額につい
タイプがあります。
・加入者は60歳未満の人が対象であ
り、専業主婦・公務員は加入でき
(※)
ません。
ては、所得控除(小規模企業共済等
掛金控除)の対象とされます。
爰 個人型年金
・掛金は加入者の自己責任で運用す
ることになります。
年間の収入から掛金額が差し引か
れて(所得控除=小規模企業共済等
・毎月の掛金には「上限」がありま
掛金控除)税金が計算されます。
す。
・転退職に際しては、積立金の移管
ができます。
② 運用時の税金
利子、配当、株式の売却益、収益分配
・年金の受取りは原則60歳からでき
ます。
金等は、内部留保され引き続き運用され
ます。したがって、20%の源泉徴収税等
・掛金の拠出の段階、運用段階、年
金の受取段階にそれぞれ優遇税制
は差し引かれず全額運用されるため、そ
の効果は大きくなります。
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なお、確定拠出年金に係る税制で注意 蘆 所得税の税額速算表(平成28年分)
Ⅰ
しなければならないのが特別法人税で
す。この特別法人税の課税は、平成29年
確
定
拠
出
年
金
の
税
金
に
つ
い
て
3月末までは凍結(停止)されています
が、確定拠出年金の積立資産に1.173%の
税率で課税するというものです。この法
律により課税されますと、実質的な運用
収益が低下することになります。
③ 受給時の税金
爬
受給資格が発生した時点で一時金
課税所得
税率
控除額
195万円以下
5%
0万円
195万円超
330万円以下
10%
9.75万円
330万円超
695万円以下
20%
42.75万円
695万円超
900万円以下
23%
63.6万円
900万円超 1,800万円以下
33%
153.6万円
1,800万円超 4,000万円以下
40%
279.6万円
4,000万円超
45%
479.6万円
―
―
爰 年金として受給した場合
雑所得として課税されますが、公
として受け取る場合
払込期間を勤続年数とみなして受
取一時金から勤続年数に応じた退職
所得控除額を差し引き、以下、退職
所得に対する課税計算と同様に税金
を計算します。
的年金等控除の適用などによる優遇
措置を受けることができます。
爲 脱退一時金
会社員が専業主婦になるなど、こ
の制度に加入していることができな
(例)払込期間34年、一時金として2,500
万円受け取った場合
くなった人で、加入期間が1か月以
上3年以下または年金資産が50万円
・控除額=70万円×(34−20)+800万円
以下の場合には、脱退一時金を受け
=980万円+800万円
ることができます。この場合は原則、
=1,780万円
一時所得として所得税、住民税が課
・課税所得=(2,500万円−1,780万円)
税されます。
×1/2=360万円
・所得税額=360万円×20%−42.75万円
=29.25万円
なお、退職所得は分離課税扱い(住民
税も同様)となります。
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