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(資料1) M&A研究会とM&Aフォーラム

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(資料1) M&A研究会とM&Aフォーラム
(資料1) M&A研究会とM&Aフォーラム
1. M&A 研究会について
内閣府経済社会総合研究所では、2003 年 12 月、各界の有識者や企業関係者と関係各府省
のオブザーバー等により学際的に構成されるM&A研究会(座長 落合誠一東京大学大学院法
学政治学研究科教授)を設置・開催した。様々な専門的知識、経験を持った委員で構成された研
究会では、幅広い視野からM&Aに関わる様々な政策的な課題を検討してきた。我が国M&Aの
動向、クロスボーダーM&Aの重要性、関連の法制度の整備、企業価値、敵対的 TOB とその防衛
策、M&Aの人材育成、地域活性化とM&Aなど、これまでに行われてきた討議内容は多岐にわた
っている。その総合告が、「本格的な展開期を迎えたわが国の M&A 活動」(M&A 研究会報告
2006 年 10 月)である。
06 年度は、その成果を踏まえ、わが国において、新会社法の施行をはじめとする法制度の変
化が進んでいること、M&Aが地域再生の側面でもM&A機能が注目され、地方圏において多様
な動機、形態のM&Aが出現してきていること、諸外国においてもこの分野の法制度はもとより実
態も大きく変化しつつあること等の環境変化を踏まえて、M&A研究会の下にそれぞれの分野の
検討会を設け、より踏み込んだ情報収集や討議を行った。それら成果を中心に、活動状況をとり
まとめたものが本報告である。
2.M&Aフォーラムについて
M&Aの分野は、本来民間分野においてその活動の進展が図られるべきである。M&Aフォー
ラム(以下「フォーラム」という)は、理論的、実証的および実務的な視点から、進歩、変化するわ
が国はもとより海外における M&A 事情の研究・調査を行い、今後のわが国における M&A のあり
方についての提言を行うとともに、企業人を主な対象にした「M&A 人材育成塾」の運営等の活動
を通じて、M&A の普及・啓発、人材や市場の育成に資することを狙いとして、05 年末に設立され
た民間の団体(会長は落合誠一 中央大学教授)である。
フォーラムは、内閣府経済社会総合研究所の「M&A 研究会」の 05 年 10 月の中間報告「活発化
する企業のM&A活動と諸課題」において、民と官との連携ができる民間ベースのフォーラムの
創設が提唱され、本趣旨に賛同された有識者及びM&A研究会メンバーを中心に同年 12 月に本
フォーラム設立の運びとなった。
フォーラムは、基本的に、
1)わが国のM&Aに関する法制度のあり方等について、各分野をリードする有識者のグループ
として研究・調査し、提言を行う場、
2)M&Aに関する基礎情報や統計の蓄積・収集・提供の場、
3)M&Aの発展に向けての民と官との連携および意見交換の場、
として運営される。
フォーラムの下に、法制度部会や経済関係部会等の部会を置き、M&Aに関するテーマごとに
専門家、有識者を中心とした情報交換や諸課題の検討会を実施し、政策提言やシンポジュウム
50
等の啓蒙活動を行いつつある。また、企業内にM&Aの活動を専門的に立案・実施できる人材や
市場を育成するために、会員の協力の下に「M&A人材育成塾」(資料2参照)の運営や、M&A
に関する優秀な論文等の懸賞論文制度である「M&Aフォーラム賞」(資料3参照)等を行ってい
る。
M&Aフォーラムの活動は、以下のホームページで閲覧することができるほか、ホームページ
から「M&A人材育成塾」や「M&Aフォーラム賞」への申込み資料の入手もできる。
《M&Aフォーラム ホームページ》
http://www.maforum.jp
E-mail:[email protected]
《事務局は以下の2つの組織に置かれている》
◇社団法人 商事法務研究会(所管:法務省)
http://www.shojihomu.or.jp
◇社団法人 日本リサーチ総合研究所(所管:内閣府、経済産業省)
http://www.research-soken.or.jp
E-mail:[email protected]
(参考1) M&Aフォーラムの検討分野例(順不同)
1. M&Aの目的と効果(概論)
2. 企業価値
3. 経営責任(ガバナンス)
4. M&Aの企画
・ 戦略的M&AとフィナンシャルM&A 役割、プロセスの違い
・ 戦略的M&Aの目的(ターゲット会社の分析・選定)
・ 投資ファンドの仕組と考え方
5. M&A交渉の実務
・ M&Aの類型とディールプロセス(戦略的M&AとフィナンシャルM&A)
・ 株式対価と現金対価
・ 共同事業型
・ 公開会社のM&A
・ 仲介者・FAの役割
・ 交渉プロセスの枠組み(関係当事者、意思決定プロセス)
6. M&Aスキーム
7. DD(デューディリジェンス)(法務、財務、ビジネス、クロージング監査)
8. M&A契約の構造(リスク管理)
9. ポストM&A(統合)
10.M&Aにおける成功と失敗
11.M&A基礎知識
12.法律
商法・会社法、証取法(金融商品取引法)、独禁法、労働法等
13.企業会計
14.税制
15.コーポレートファイナンス
16.経営戦略
(トピックス)
17.敵対的買収と防衛策
18.事業再生と倒産法制
19.非上場化(MBOを含む)
20.IR
21.株主調査
22.M&A関連情報
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(1) わが国企業のM&A動向と課題
・ 最近の動向とその特徴
・ マーケットの変遷
・ 今後の注目点・展開方向
・ 地域活性化
(2) 海外におけるM&A動向と課題
・ 米国
・ 欧州
・ アジア(中国、インド等)
(3) 諸外国の法制度
・ 米国
・ 欧州
・
アジア(中国、インド等)
(参考2)
M&Aフォーラム「人材育成塾」
M&Aフォーラム「人材育成塾」の考え方
M&Aフォーラムでは、重要なテーマの一つとして、M&Aに精通した人材の層を広げる活動を
行っております。今日、M&Aに関しては敵対的TOBなどの特殊な事例がマスコミ等を賑わして
いますが、企業経営の戦略的なツールとして、我が国経済社会の中で一段と重要度を増してきて
おり、企業内にM&Aの総合的な知識を持つ人材を育成することが急務と考えております。
(1)わが国におけるM&Aのプロとしての実務や知識に加えて、将来の経営者としてのM&Aのプ
ロデュースや総合的なマネジメントを身につけていただきます。したがいまして講座の内容も、
学識経験者、有識者、行政担当者との研修のみならず、M&Aを積極的に取り入れている企業
経営者、M&A専門企業の代表者等との交流・レクチャーを行います。
(2)各講座とも一方的なセミナー方式ではなく、講師と受講者との対話(質疑応答・意見交換)を重
視しておりますので、1講座 30 名の少人数形式とします。
(3)M&Aフォーラムには、「法制度部会」、「経済関係部会」、「人材育成部会」、「普及・啓発部会」、
「スポンサー・シップ」の5つの専門部会がありますが、それぞれの専門部会で検討している“M
&A活動に関する新しい動き”や情報等についても適宜、研修に組み入れます。
「人材育成塾」の概要(平成 18 年度開催事例)
平成18年度の「M&A人材育成塾」では、M&A活動の入り口から出口までを体系化した「M
&A専門講座」とM&A業務のベースとなる基本知識・基本理論の習得を目的とした「M&A実践
基礎講座」の2つのコースを開講いたしました。
M&A業務に携わる方々を対象に、「M&A人材育成塾(試行講座)」(全 10 回シリーズ;2月~
4月)[注]、「第1回M&A専門講座」(全 11 回シリーズ;5月~7月)、「第1回M&A実践基礎講
座」(全5回シリーズ;10 月)、「第2回M&A専門講座」(全5回シリーズ:平成 19 年2月~3月)の
4つのプログラムを展開しており、有力上場企業の経営幹部、M&Aアドバイザー、海外MBA取
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得者、公認会計士、税理士等、既に 150 名を越える数多くの方々にご参加いただいております。
また、講座期間中に、参加者相互の親睦を図るための懇親パーティーを行なっており、人的ネッ
トワークの形成にも役立つなど、受講者の方から好評をいただいております。
(注)本プログラムは、内閣府経済社会総合研究所からの委嘱を受けて行われたものです。
開催講座のテーマ(狙い)とカリキュラム・講師陣
《第1回M&A専門講座》
【講座の狙い(テーマ)】
M&Aの戦略的意義や市場の動向を理解していただくとともに、取引のプロセスや留意点、評
価方法、意思決定メカニズム、企業価値経営についての実務知識を深めていただきます。また
併せて、法務上の問題点、事業再生や敵対的買収と防衛策などカレント・トピックスと今後の方
向性を学んでいただきます。
【カリキュラム】(注:講師陣の所属は開催当時による)
〈セッション1〉「経営戦略におけるM&Aの役割」
経営戦略におけるM&Aの位置づけから、M&A計画の立案と実行までのM&A戦略全体を概説。
◆ 講 師:岡 俊子 氏
アビームM&Aコンサルティング(株) 代表取締役
〈セッション2〉「M&Aのプラニングとその実務」
M&A戦略の立案、ターゲット企業の選定等、プレM&Aの実務と基本的考え方を解説。
◆ 講 師:丹羽 昇一 氏
(株)レコフ 執行役員
〈セッション3〉「M&A交渉の進め方と実務」
ファイナンシャル・アドバイザーの立場から、M&Aのプロセスと手法、取引の流れを体系的に解説。
◆講 師:荒井 淳一 氏
モルガン・スタンレー証券(株)投資銀行本部 M&Aアドバイザリー部責任者
〈セッション4〉「M&Aと企業価値経営」
事業(企業)価値の捉え方と、企業価値経営を事例をあげて説明。
◆ 講 師:本田 桂子 氏
マッキンゼー・アンド・カンパニー プリンシパル
〈セッション5〉「M&Aの法務」
会社分割・株式交換・株式移転・非公開化等法的手法の基本的理解と各種企業再編における法的側面
を解説。
◆ 講 師:藤田 浩 氏
森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士
〈セッション6〉「富士ソフトABCのM&A戦略」
わずか 10 年で、売上高 100 億円強の企業を 1,900 億円にまで急成長させた同社のM&A戦略を野澤社
長に聞く。
◆ 講 師:野澤 宏 氏
富士ソフトABC(株) 会長兼社長
〈セッション7〉 「DD(デューディリジェンス)」
デューディリジェンスの目的と意義、代表的な検出事項、事例からみた財務上の留意点を解説。
◆ 講 師:三橋 優隆 氏
中央青山PwCトランザクション・サービス(株)
代表取締役パートナー(公認会計士)
〈セッション8〉「ポストM&A」
統合後の組織、業務、情報システム、人事等の戦略的移行をハード、ソフト両面から解説。
◆ 講 師:松江 英夫 氏
トーマツコンサルティング(株) パートナー 兼 取締役
〈セッション9〉「M&Aの事業再生局面における役割」
事業の再生とそのプロセスにおけるM&Aの役割と効率的な活用を解説。
◆ 講 師:中村 廉平 氏
商工中金組織金融部・審査第一部担当部長兼法務室長
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〈セッション 10〉「敵対的買収と防衛策の実務と課題」
敵対的買収をめぐる動向と買収防衛策の設計・導入についての指針、法的課題、効果的な運用について
解説。
◆ 講 師:服部 暢達 氏
一橋大学大学院国際企業戦略研究科助教授
〈セッション 11〉「M&Aにおける成功と失敗」
講座全体のまとめと全体を通しての質疑応答、意見交換
◆ 講 師:冨山 和彦 氏
(株)産業再生機構 代表取締役専務
《第1回M&A実践基礎講座》
【講座の狙い(テーマ)】
専門講座とは異なり、“本を読んでも身につかない”M&A業務のベースになる基本知識・基
本理論を、具体的事例を中心に学ぶことにより、短期間で習得していただくことを目的とした講
座です。投資・ファイナンス理論や法務、会計を始め、M&A実務の入り口から出口までの基礎
がわかります。
【カリキュラム】(注:講師陣の所属は開催当時による)
〈セッション1〉「M&Aに必要な投資・ファイナンス理論」
株式や債券、土地・建物などの不動産、いろんな事業、これら様々なタイプの資本を自由に調達し、価値
を増やしていくために基本となる投資・ファイナンス理論。M&Aに欠かすことのできないこれら基礎理論を、
具体的実例を挙げて講義します。
◆ 講 師:高橋 文郎 氏
青山学院大学大学院 国際マネジメント研究科教授
〈セッション2〉「M&Aと法務(関連する法律の捉え方)」
M&Aに関する法律の捉え方を多面的に用語の解説も交え、実例を挙げてやさしく解説します。1)M&A
にはどんな法律が絡み合っているのか、2)M&A手法の違いと法的な特徴、3)新しい会社法の下で変わっ
たM&A関連法規、4)公開買付(TOB)ルールの変更、5)最近おこったM&A事例のリーガル・スタディー
(敵対的買収事例、非公開化取引、違法とされる取引)。
◆ 講 師:藤田 浩 氏
森・濱田松本法律事務所 パートナー弁護士
〈セッション3〉「企業再編の会計実務」
一見、難解と思われる「企業再編における会計実務」を企業統合、グループ再編、事業分離に分けて、国
内上場企業で実施されてきた実例にもとづいてわかり易く解説。とくに最近の企業再編税制、新企業結合
会計、新会社法における会計基準の改正動向と実務への影響について実際の事例を通じて説明。
◆ 講 師:中島 康晴 氏
新日本監査法人代表社員、公認会計士
〈セッション4〉「M&A業務の入口から出口まで」
経営戦略におけるM&Aを、戦略面での検討から、アプローチ、条件交渉、クロージング、事業統合に至
る一連の流れで説明。特に重要と思われる部分については、バリュエーション、契約関係を含め具体例を
示し解説。
◆ 講 師:荒木 隆光 氏
(株)新生銀行 コーポレートアドバイザリー部長
〈セッション5〉「M&Aの成功と失敗(事例研究)」
M&Aを成功に導く秘訣は何か。これまでのM&Aの成功、失敗事例を概観し、一般論としてその特徴を
捉えるとともに、成否の深層にある事象を参加者とともに考える。
◆ 講 師:冨山 和彦 氏
(株)産業再生機構 代表取締役専務
《第2回M&A専門講座》
【講座の狙い(テーマ)】
平成 19 年5月の三角合併の解禁を控え、敵対的買収に対する新たな動き、非上場企業・オー
ナー会社の事業承継問題、株式の非公開の動きと外資系ファンドの投資戦略など、5つの個別
テーマに絞り、具体的事例(ケーススタディ)を組み込みながら、M&Aの専門知識を、短期間で
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習得していただくことを目的とした講座です。
【カリキュラム】(注:講師陣の所属は開催当時による)
〈セッション 1〉「M&Aクロスボーダー取引の留意点」
わが国企業のクロスボーダーM&Aの成功事例は、それほど多くはないといわれる。買収価格の交渉、
経営陣を含めた人事の融合、製造業における環境問題等、多くの難問を抱えながらの買収・売却となるた
めだ。このような難題にどのように対応していけばよいのか。これまで取り組んできた実例を踏まえて解
説。
◆ 講 師:荒木 隆光 氏
(株)新生銀行 コーポレートアドバイザリー部長
〈セッション2〉「非上場企業・オーナー会社のM&A ~事業承継問題を絡めて~」
2006 年の日本国内におけるM&A件数は約 3,000 件だが、このうち非上場企業の案件が 7 割を占めてい
る。これら非上場企業・オーナー企業のM&Aは後継者難や競争力強化を背景に、今後ますます増加する
ものとみられる。しかしながら、オーナー企業独特の経営上の問題もあり容易に事は運ばない。これら企業
のM&Aを成功させるための留意点や手順について、事例を用いて解説する。
◆ 講 師:小林 和也 氏
税理士法人 プライスウォーターハウスクーパース
代表社員・パートナー 公認会計士・税理士
〈セッション3〉「グローバルファンドの対日投資戦略」
カーライル・グループは、世界最大級のプライベート・エクイティ投資会社で、運用総額は約 443 億ドル(5
兆円強)に及ぶ。4 つの投資分野(MBO、不動産、ベンチャー・キャピタル、ターンアラウンド)において 42 の
ファンドを運営し、350 名の投資プロフェッショナルが世界 16 カ国で投資活動を行っている。カーライル・グ
ループは日本市場の魅力をどこに置いているのか。日本企業への投資基準は何か。また、パフォーマンス
(収益率)向上のために、今後どういった投資戦略を取るのか。カーライル・グループの対日投資戦略を解
説。
◆ 講 師:安達 保 氏
カーライル・グループ 日本代表
〈セッション4〉「M&Aにおける人事・組織統合戦略」
M&Aを成功に導く上での「人」の重要性について、数々のコンサルティング経験を通じて得られた実体
験を踏まえ、わかり易く解説。M&Aを行う企業の経営陣が持つべき視点、取るべきアプローチをはじめ、
M&A企業が陥りやすい人事・組織上のリスクとその対応策について説明。日本企業による海外企業の買
収が増える中、クロスボーダーM&Aにおける人事デューデリジェンスの勘所についても解説。
◆ 講 師:西口 尚宏 氏
マーサー・ヒューマン・リソース・コンサルティング(株)
常務取締役 アジア太平洋地域統括
〈セッション5〉「敵対的買収と日本型防衛策~三角合併解禁による影響と対応策~」
2006 年から現在までに買収防衛策を導入した企業は 160 社を超えた。買収防衛のための制度は様々だ
が、それらは果たして有効なのか。また、本年 5 月に解禁される三角合併で何が起こるのか、さらにはどう
対応しておけばよいのか。
◆ 講 師:牛島 信 氏
牛島総合法律事務所代表 パートナー弁護士
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(参考3)
懸賞論文制度「M&A フォーラム賞」
「M&Aフォーラム賞」の目的
M&Aフォーラム賞は、M&Aに関する社会科学的観点からの著書、研究論文の執筆で顕著な業績をあげた
作品を顕彰する懸賞論文制度です。
M&A フォーラム賞は、「M&A活動が、わが国経済の持続的発展、あるいは産業・企業の成長・発展に寄与す
る」という大前提にたち、わが国におけるM&A活動の普及・啓発を図り、併せてM&Aに精通した人材を育成す
ることを目的としています。
応募資格・条件など
(1)応募資格
学識経験者、行政担当者、M&A専門家、企業関係者(実業界)、ならびに大学院、大学、各種専門学校を
含めた学生等、幅広い分野の方々からの応募を受け付けます。個人のほか、学校やゼミナールなどの団体、
グループでも応募ができます。
(2)条件、テーマ
1)M&Aについての社会科学的観点からの著書、研究論文(M&Aと法律・経済・会計・税務・社会・文化等と
の関係について論じたもの)で、理論的・実証的・実務的な分析を論じたものとします。
2)日本語で書かれたもので、原則として 2006 年4月から 2007 年3月までに執筆された著書、論文、または経
済専門誌、総合雑誌、各種機関誌等に掲載された論文とします。また、大学院、大学、各種専門学校を含
めた学生の方々につきましては、修士論文、博士論文、卒業論文も対象に加えます。
3)但し、対象となる著書及び論文は、いずれも執筆者ご自身が応募されてきた作品に限定いたします。
(3)応募期間・発表
◆応募期間は 2007 年 3 月 31 日までとし、当日の消印も有効といたします。
◆入選者には 2007 年 6 月末を目途に本人宛に通知いたします。
◆賞の贈呈は 2007 年 7 月を予定しております。
審査と表彰
(1)審査
1)応募著書、応募論文は選考委員会で審査を行います。
2)2006 年度の選考委員は、以下の各氏です(敬称略)。
◇選考委員長 香西 泰 氏
(経済評論家)
◇選考委員
大杉 謙一 氏 (中央大学法科大学院教授)
(五十音順) 冨山 和彦 氏 ((株)産業再生機構代表取締役専務)
西山 茂 氏 (早稲田大学大学院アジア太平洋科教授)
深尾 京司 氏 (一橋大学経済研究所教授)
吉田 允昭 氏 ((株)レコフ代表)
(2)表彰・賞金
◇M&Aフォーラム賞正賞『RECOF 賞』
1篇 賞状・副賞 100 万円
◇M&Aフォーラム賞奨励賞『RECOF 奨励賞』 2篇 賞状・副賞 30 万円
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M&A 研究会構成員(平成 19 年 2 月末現在)
(敬称略、順不同)
(座長)
落合誠一
東京大学大学院法学政治学研究科教授
大久保幸夫 株式会社 リクルート ワークス研究所所長
大杉謙一
中央大学法科大学院教授
岡 俊子
アビームM&Aコンサルティング株式会社 代表取締役
小林堅悟
三菱 UFJ 証券株式会社 財務開発部長
貞廣 彰
早稲田大学政経学部教授 (座長代理)
四方藤治
日産自動車株式会社 M&A支援部長
鈴木貞彦
慶応義塾大学名誉教授
冨山和彦
株式会社産業再生機構 代表取締役専務
中村廉平
商工中金組織金融部・審査第一部担当部長兼法務室長
西村 康
日本政策投資銀行 企業戦略部長
西山 茂 早稲田大学ビジネススクール教授
丹羽昇一
株式会社レコフ執行役員
野村修也
中央大学法科大学院教授
服部暢達
一橋大学大学院国際企業戦略研究科助教授
樋口美雄
慶応義塾大学商学部教授
藤村博之
法政大学ビジネススクール イノベーションマネジメント研究科長
深尾京司
一橋大学経済研究所教授
松古樹美
野村證券株式会社 IB コンサルティング部三課長
水野忠恒
一橋大学大学院法学研究科教授
水野 譲
株式会社クボタ 監査役
若杉敬明
東京経済大学経営学部教授
<オブザーバー>
■
村岡隆史
株式会社産業再生機構マネージングディレクター
桑原茂裕
金融庁総務企画局企画課長
相澤 哲
法務省民事局参事官
齋藤圭介
経済産業省経済産業政策局産業再生課長
菅原英夫
中央労働委員会事務局次長
山田 弘
公正取引委員会経済取引局企業結合課長
事務局 内閣府経済社会総合研究所 ■
黒田昌裕
経済社会総合研究所長
藤岡文七
同 特別研究員(政策統括官(経済財政運営担当))
飯田和夫
同 客員主任研究官
藤澤成典
同 政策調査員(事務局担当者)
57
(参考4)
法制度検討会と事例研究会
【法制度検討会】
本年度検討会では、落合誠一 M&A 研究会座長を座長として、M&A に関わる法律(会社法、証
券取引法、独占禁止法、税法、労働法、倒産法)を鳥瞰的に整理した上で、それぞれの法律又は
分野における課題・論点を抽出し、今後の方向性を検討した。
検討会では、必要に応じて、それぞれの法律又は分野の専門家や行政の担当者を講師として
招聘し、より深い議論を行った。
法制度検討会メンバー(敬称略、順不同)
座長 落合 誠一
東京大学大学院法学政治学研究科教授
野村 修也
中央大学法科大学院教授
神作 裕之
東京大学大学院法学政治学研究科教授
内藤 恵
渡辺 徹也
藤田 浩
大杉 謙一
飯田 秀総
慶応義塾大学法学部助教授
九州大学大学院法学研究院教授
森・濱田松本法律事務所 弁護士
中央大学法科大学院教授
東京大学助手
【事例研究会】
地方圏の M&A は、取引先や従業員の雇用問題など地域社会や地域経済に対する影響も大き
い。
そこで、本研究会では、M&Aによる地方圏の地域活性化という視点から、地方圏のM&A事
例の対象テーマとして、必要に応じて、地方銀行等の関係機関の担当者の招聘なども実施して、
検討を行った。地域社会や地域経済という観点で特に影響の大きい医療、交通といった地域の
公共インフラサービスを担う企業の M&A のあり方や特産品、伝統品等を扱う地域の老舗等の中
小企業の M&A 動向、また、地方自治の現場で財政的な負担が大きくなりつつある第三セクター
事業に対するM&Aのあり方などについて、検討を重ねた。
事例研究会メンバー(敬称略、順不同)
岡 俊子
西村 康
アビームM&Aコンサルティング株式会社 代表取締役
日本政策投資銀行 企業戦略部長
岩口 敏史 株式会社レコフ 執行役員
58
(資料2) 地方におけるM&A事例
1.鬼怒川温泉((株)産業再生機構)
(1)再生の背景
鬼怒川温泉は、温泉街全体として客数がピーク時の3分の2程度まで減り、年々
10%ずつぐらい宿泊者が減っている中での再生の試みであった。旅館、ペンション、
民宿、寮・保養所まで約 100 軒程度立地し、機構は、結果として4社5軒の旅館の再
生を支援した。宿泊客収容人員ベースでは、しっかりと経営しているところが3割程度、
過剰債務と思われるところが5割程度、この5割の約3分の1、収容人員ベースで
15%が機構の支援先になった。残り2割程度は、廃業した方がいいだろうと思われる
か、よくわからない存在であり、大手は総じて総崩れという状況だった。
機構ができ、地元の足利銀行の国有化という事態の中で、当初は、一部から、「温
泉街の再生というのは、1軒残らず温泉街の旅館を全部まとめて産業再生機構に救
ってもらわないと」という過剰な期待感があった。「冬ごもり春待ち型」、「そのうちお客
さんが戻ってくる、駅前広場を整備すればいい」とか、「テーマパークを誘致したらい
い」とか、「借金を払わないで金利もまけてもらってじっと待っている」という体質の中
から期待感が出ていた。
「待てば何かそのうちいいことがある」では事業再生にならない。現実は現実として
受けとめてもらわなくてはいけない。それに対し、旅館経営者からの「借金はまけろ、
だけど、部屋数は減らされるのは嫌だし、ましてや自分がオーナーの座を退くのは嫌
だ。自分がいなかったら旅館は何ともならない」という意識との戦いであった。
(2)機構の活動
機構の役割は、再生に向けてのインキュベーターであり、鬼怒川では、過剰債務
に陥っている旅館の中でも比較的うまくいっているところを支援するができた。地域再
生ファンドと機構が株主としてガバナンスを持ち、その下での事業再生というM&Aで
あった。1社はクライアント・バイ・アウトという非常に珍しい形で成績優秀で卒業し、
その他は、「もう少しやることがある」ということで地域再生ファンド等が株主として残
り、社員にもマイノリティー・シエアは分けるというM&Aを行った。
再生プロセスでは、1)案件を機構に持ち込むまでにメインバンクが準備作業として
行う段階、2)産業再生機構に持ち込まれてから実際に支援決定に至るまでにデュー
デリジェンス等での段階、3)支援決定されてからエグジットまでに産業再生機構地域
再生ファンドが共同して行った段階、4)インキュベーターとして事業再生しながら地域
再生として気を配る段階、のそれぞれにおいて留意すべきことがある。この4つのプ
ロセスの中で一番重い作業は、1)のメインバンクの事前作業である。足利銀行が国
有化される前から、温泉再生支援グループがあり経営指導に着手していた。経営指
導を行いつつ、経費の圧縮とか、売上げの増強等を指導していた。この温泉再生支
援グループが、ある程度手を入れ営業黒字に転換できていないところは、基本的に
59
は機構へ持ち込まず再生ルートから漏れている。
鬼怒川の場合には、需給ギャップが表面化し、供給能力が減らないとゾンビが復活
し安値競争に巻き込まれるという状況にあった。銀行がオフバランス化すれば単純に
廃業にいたるわけでなく、例えば破産して競売を申し立てられると、誰かが安く不動
産を買い激安旅館でよみがえる。また、機構へ持ち込む場合には、対象となる事業
者はオーナー会社であるので、オーナーが、「わかった」と言ってくれないと始まらな
い。持ち込んだオーナーには経営責任があり、支配権は残らない。また、株主責任で
100%減資であるので、自分の持っていた株は紙切れになる。更に、銀行は債権放
棄をして連帯保証人となっており、例えば家屋敷まではと言わないけれども、個人資
産を相当程度は提供してもらわなければならない。経営責任、株主責任及び連帯保
証責任がある。ここが踏み切れずに、機構へ持ち込まれなかったところが多くあっ
た。
民事再生であれば、経営者が残れる(可能性がある)ディップ(DIP :debtor in
position)という道があると(無責任に)吹き込む人がいるので、「よしおれは民事再生
に行く」といって、メインバンクに何も相談せず、突然民事再生法を申し立てて、メイン
バンクが烈火のごとく怒り、「絶対に同意しない」と銀行と対立してしまった経営者の
ように非常に不幸な道を辿っている人もいる。
案件が持ち込まれても難しいところは、業務での法律違反、即ち、建築基準法で耐
震基準を満たしてない、消防法で査察を受けて指摘を受けているのに無視している、
パートタイムの社会保険料を払ってない、残業代を払ってない等しっかり法令対応し
ていくとお金がかさんでしまうところ等である。デューデリジェンスでは、会社の様々な
問題点が明らかになってくる。それをどうやって再生プロセスのアクションプランにス
ムーズに結びつけていくかが問題で、機構が全て 100 点満点のオペレーションができ
たかというとそうでもない。デューデリジェンスが終わってから実施の再生プロセスが
始まるまでに計画を書くとか、債権者の銀行と債権放棄の額を交渉するとか、そうい
う再生の本質と比較的関係ないところに作業が移ってしまうことがある。ベストプラク
ティスとは、デューデリで見つかった悪いことというのはその場で直していくということ
である。事業再生するとかしないとか、支援決定するとかしないとかがなくても、やは
り悪いところは直すという役割はあり、デューデリで見つけたことを、アクションプラン
にスムーズに結びつけていくというのが大事だった。
実際に再生が始まってからは、「家業から企業へ」ということをキャッチフレーズにし
て、経営をどんぶり勘定でやっているところ、例えばオーナーのポケットと会社のポケ
ットが全部一緒になっていることを是正した。苦しいときには私財を持ち出してでも旅
館を支えていたが、企業だからやめようということと、もう1つは人事管理、好き嫌い
でプロモーションしていたことを、評価は入れてみんなのやる気を伸ばそうといったこ
とがある。
60
2.九州産業交通株式会社((株)産業再生機構)
(1)背景
九州産交は熊本のバス会社で多角化経営をしていた。乗合バス、貸切バス、旅行
代理店、空港の地上業務、発券、荷物の受け渡し等、また、市内の中心部にバスタ
ーミナルを持ち、その周りの建物の店舗賃貸、その中には百貨店も入っている。ホテ
ルも営業し、空港とかサービスエリアでお土産屋、阿蘇のロープウエイ、天草・島原
へのフェリーと、まさに熊本に来る観光客は空港に降りたったときから出て行くまで九
州産交と何かかかわっている。また、再生前のグループとしての売上高の約半分が
トラック運送で出されていた。
(2)機構の関与
機構が入る前の段階では、どの事業がどのぐらい収益を上げているかが判然とせ
ず、合理的な経営施策というのを次々と講じていく体制になかった。オーナー経営で
の閉塞感に加えて、債務過多の状況が非常に長く続き社員の士気にも陰りが出てお
り、資金繰り面では破綻一歩手前という状況だった。機構としては、基本的には債務
免除、減・増資といった財務リストラを前提とした再生計画を書いて、金融機関と交渉
して債権放棄を獲得し、併せて出資をした。このように、本件のポイントの1つが財務
リストラだった。
最大のポイントはその後の人的な支援にある。機構からの常駐者は基本的に1人
だったが、5~6名の機構の役職員が経営管理の段階から各事業分野の収益の改
善策とか、日常のトラブル処理まで、直接手を下して支援をした。そのように毎日やる
と、そのやり方が急速に社員の間に浸透していく状況となった。その結果、ダウントレ
ンドにあった営業利益率がかなり上がった。経常利益については、当然債務援助を
受け、非常に大きな金額で上昇を示した。
支援が効果を上げて、安定的な経営がしていける状態になったところで、再生機構
としては支援完了に向けてエグジットを具体化させるが、この段階で多数の希望者が
株を買いたいと言ってきた。機構が乗り出した当時は2年前では、再生機構が出資す
る以外にだれも手を挙げて来なかったので再生機構が出資したが、2年後、相当の
数の事業会社やファンドなどが会社を買いたいと申し出があり、結果として業績の伸
びに応じた価格で売却できた。より確実性の高いリスクの低い事業計画を作り、購入
を希望する人に見せて値段をつけてもらうプロセスを実施した。また、新しい貸付金
のデットの提供者から複数オファーもあり、再生ステージを脱した九州産交が、低い
リスクの会社になってリキャピタライズをすることができ、新たなリスクプロファイルの
会社として、より安定的な形で資金調達を組みかえることができた。
3.バス・運輸事業
(1)背景
買い手は、東海地区をベースにした港湾、物流業、非常に歴史のある会社であり、
61
他方、被買収側はM社、産業再生機構の支援先で、県内のバス事業、それから運輸
事業、貨物事業の会社である。M社のグループは、交通事業、乗合バスとタクシー、
及びレジャー・サービス事業をコアビジネスと位置づけ、経営資源を集中させなけれ
ばいけない状況にあった。この社は貨物運輸事業を外に出した方が事業価値は増
大するので、S社が営業譲渡で受け入れるということになったケースである。
(2)営業譲渡
M社の事業は点から点へ結ぶというリニアな形態のビジネスであり、S社はどちら
かというと小口配送であった。両社でぴったりとビジネスモデルが合う訳ではないが、
営業譲渡した後、小口配送のノウハウをだんだん移転することで営業譲渡が行われ
た。M社がS社にこの部門を譲渡した理由は、ファンドからも引き合いがあったものの
被買収側がファンドに対する拒否反応がかなりことによる。ファンドを嫌った理由は、
「いずれまたどこかへ売却されるのではないか」ということであった。
S社としては、M社のこの事業を買収する前に九州に拠点が欲しいと考えており、
別の会社の獲得を考えたが、他の会社に取得されてしまっていた。この後、今回の
案件があった。事業としては、M&Aでなくても、一から事業を立ち上げるということも
あったのだが、全く土地勘のないところで一から事業を立ち上げる方が、M&Aよりも
リスクが高いと判断した模様である。このM&Aの後に、この案件をもとにローカル to
ローカル、地域間の交流というのが盛んになったという副次的効果もあった。
また、買収側の企業は、拠点が欲しいということでいろいろな情報を入手しようとし
たが、地方の情報というのがなかなか手に入らなかったとのこと。地銀は自分のテリ
トリーの中の情報はもっているが、それを少し超えるともう情報がないという状況にあ
る。広域で地域の情報を持っているという機関が非常に少なく、多方面からとらなけ
れば地域の情報というのはとれない状況がある。また、地域ではファンドに対する警
戒感が東京近辺よりも強く、ファンドによる事業再生というのは難しいとの感触があ
る。
4 ビジネスモデルとしてのバス業界
(1)モデルの変化
地域を代表する中堅企業または大企業であるバス会社の業界再編は地域のM&
A事例として示唆的なものである。バス会社(乗合)は、乗合バスのみを専業でやって
いる会社は殆どなく、昔から地域の名士が経営しているという場合、多角化経営に必
ず乗り出している。まず、バスターミナル、当然市街の一番いいところにあるそれを中
心とした不動産開発、そこから不動産賃貸にいき、その地域の観光産業の担い手と
なる。観光ホテル、ビジネスホテル、旅行代理店、お土産屋等、それから、輸送手段
というキーワードから多角化をしていく。例えば、タクシー、トラック運送、会社によっ
ては、スーパーマーケットまで経営しているので、大きな鉄道会社の相似形だと考え
ることもできる。
62
高度成長期であれば、各種のビジネスはいわゆる地域の利権のようなものであっ
たが、現在では、それぞれのビジネスが片手間でできるようなものではなくなってしま
った。それぞれの分野で劇的に環境変化が起こり、熾烈な競争が繰り広げられてい
る。優れた経営者であれば、観光立国政策、中心市街地の活性化政策といったモメ
ンタムをとらえ、次々と施策を打ち出していったであろうが、現実には事業売却もしな
いし、そのマーケテイングプランを立て直したりもせず、資本市場からニューマネーを
調達しようとしても、財務状況が悪過ぎてできず設備投資もできないし、不動産は老
朽化する一方と、こういう状態の会社が各地に残されている。
(2)M&Aによるソリューション
民間バス会社の経営環境について、多角化経営の状況、それから民営化の進展
を合わせて考えてみたとき、いわば国民経済的なソリューションはバス業界の再編で
あろう。1つは地域的な再編、例えば東北なら東北で、九州なら九州だけでバス会社
が集まって1つの勢力をつくる。そうすれば、地域内で走っている路線バスとか高速
バスを効率的に運行することができる。また、それぞれの会社はいわゆる町おこし的
なものにかかわっている結果、自分たちの町にどれだけの観光客を呼べるかという
問題への対応の主役にもなりうる。当然業者間で事業ノウハウを共有化することもで
きる。
一方、事業分野別再編という軸も考えられる。乗合バスまたは貸切バス、同じバス
でも全然やり方が違う。不動産その他の観光事業またはホテル、そういったものを事
業別に再編していくことも、当然事業分野別の専門性の向上という意味ではあり得
る。
(3)公営企業との競合
公営のバス会社と民営のバス会社のコストの差について、コストがキロ当たりの平
均コストを試算(比較)すると、民営会社のバスは 376 円、一方、市営、県営のバスの
会社は 733 円である。収入にも大きな差があり、お客さんがたくさん乗る路線は公営
が走っていて、お客さんが余り乗らない路線を民営会社がやっている。公営が 608 円
の収入をキロ当たりで上げ、赤字の金額は民営と公営を足すと約 620 億(230 億と
390 億)になる。仮に、公営のキロ当たり原価のところに民営のキロ当たり原価を当て
はめてみると大幅な黒字になる。
これには数字上のマジックもある。民営はどちらかというと郡部を走っているケース
が多いので、お客さんも乗らないし1キロ当たり走る時間が少なくて済み、渋滞がな
いのでキロ当たり原価は当然安くなる。公営の路線でも1キロ 376 円で走れるかとい
うとそうではなく、これはあくまで試みの数字にすぎないが、公営の方は 720 億の黒
字になる。民営で出している 230 億の赤字をカバーして、約 500 億まだ余りが出ると
いうことになる。
63
(資料3) (株)産業再生機構の地方企業への関与より
1.オーナー企業の再生に果たすべき銀行の役割
機構の案件は実質的には敵対的買収となる。経営者が本質的に優秀でないと友
好的M&Aにならず、地方企業では友好的な M&A は2割程度である。敵対的買収は
上場企業が対象として公開市場で行われるようなケースが着目されるが、本当に敵
対的買収が必要なケースは地方の中堅・中小のいわゆるオーナー会社ではないか
と考えられる。オーナー会社は経営が危なくなっても、オーナーが自分で株を持って
いるので敵対的買収はあり得ないが、ここで資金を貸している銀行の役割が大切に
なる。本来は銀行を介在させ、事実上敵対的買収がもっとやりやすい形にしなけれ
ばならない。さもないと、地方・中堅企業の没落衰退はこの後もどんどん続く。
2.元オーナーの責任と資産サイドの縮小について
機構が扱ったバス会社のケースでは、オーナーは別に石油会社を経営しており現
在でも業務をしている。当該バス会社がその石油会社からガソリンを買うということに
関しては他社と相見積もりを取って、本当に安いかどうかで必要に応じて買うという
関係を築き直した。連帯保証もしていたので、債権放棄を受けるときに破産して清算
して払えるもの全部払わないとルールに沿った処理といえないが、「自分の資産はこ
れだけあり、生活に必要でないこれとこれは出すので勘弁してください」という申告的
なものに基づき金融機関がそれを理解し了承した。
従って、生活に必要でない、また石油会社の株を除いてはすべて拠出をしたという
理解である。関係者の理解を得るために経営責任はしっかり取ってもらっている。そ
の形態は個々の事情に応じて異なる。
3.鬼怒川温泉4社5つのホテルへの連携支援
機構は、鬼怒川では、地域で支援して、旅館マネジメント・サポートというシェアー
ド・サービスを提供するような会社を作り、そこで経理を一括して受託し、最後は物流
の共同化やレシピの共同発注、あるいは予約センターを共通で持つまでの構想を持
っていた。鬼怒川程度の大きな旅館街になると、大手の旅行エージェントからみて、
ここだったら大丈夫だという旅館が幾つか出てこないとなかなか振り向いてくれない。
また、少なくともここから先悪くならない、よくなるという確証を持ってもらえる旅館が
幾つかできた、ということが非常に大切なことだった。
その中で、機構が手がけた4社は戦略的に違うマーケティング戦略を立てるべく背
中を押した。少し若者向けに特化してみるとか、30 代から 40 代の女性をターゲットに
するとか、あるいはシニアの3世代連れを狙うとか、それぞれ得意と思われるところを
頑張れと差別化した。地域の共有財産は生かしつつ、個々の経営戦略は違えないと
経営とはいえない。
64
産業再生機構の支援案件一覧
No
1
支援決定日
支援完了日
15.8.28
17.12.20
11
15.8.28
17.11.30
15.8.28
17.8.10
15.9.26
16.11.10
15.9.26
17.3.31
15.10.24
17.5.20
15.10.31
18.3.17
15.12.1
17.1.31
15.12.19
17.10.3
16.1.28
16.12.17
16.1.28
18.3.31
12
(1)16.3.10
(2)16.5.31
2
4
5
6
7
8
10
13
14
15
16
17
18
19
20
21
22
23
24
25
26
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
16.4.27
16.8.31
16.5.17
17.4.28
16.5.20
18.1.25
16.6.4
18.4.28
16.6.4
18.8.22
16.6.25
19.3.2
16.7.13
18.11.10
16.7.21
18.10.16
16.8.6
18.8.8
16.8.30
17.12.27
16.8.31
16.12.22
16.9.28
17.1.14
16.9.28
17.4.8
16.11.26
18.5.30
16.11.30
17.12.30
16.12.8
18.4.28
同上
同上
16.12.24
17.5.31
16.12.28
18.3.31
16.12.28
18.11.10
17.1.18
17.2.28
17.1.18
17.6.30
17.1.18
18.4.28
同上
17.1.18
18.10.27
17.2.3
17.11.28
17.2.3
18.4.28
17.2.3
18.5.29
対象事業者
スポンサー名
九州産業交通(株) 等 12 社
HIS-HS 九州産交投資組合
(エイチ・エス証券、エイチ・アイ・エス)
※九州産交運輸については、フットワークエクスプレス。
(株)うすい百貨店 等 2 社
三越
ダイア建設(株)
レオパレス 21
(株)マツヤデンキ
ニューMD パートナーズ
(新生銀行グループ)
(株)明成商会 等 2 社
東京コンピュータサービス
三井鉱山(株) 等 4 社
ジャパン・リカバリー・ファンド
(フェニックス・キャピタル)
新日本製鐵、住友商事、
大和証券 SMBC プリンシパル・インベストメンツ
八神商事(株)
ピップフジモト
富士油業(株)
富士興産
(株)大阪マルビル 等 2 社
大和ハウス工業
(株)金門製作所 等 18 社
山武
(株)津松菱
(1)カネボウブティック(株)
(現・(株)カネボウ化粧品)
(2)カネボウ(株) 等 35 社
(株)フレック
(1)花王
(2)トリニティ・インベストメント(アドバンテッジパート
ナーズ、MKSパートナーズ、ユニゾン・キャピタル)
シートゥーネットワーク
(株)大川荘
八幡屋
タイホー工業(株)
イチネン
(株)ホテル四季彩
とちぎ地域企業再生ファンド(とちぎフレンドリーキャピタル)
大和証券SMBCプリンシパル・インベストメンツ
(株)ミヤノ
―
宮交エアグランドサービス
(宮交ホールディングス、雲海酒造、坂下組)
山陰中小企業再生支援ファンド
(ごうぎんキャピタル)
スカイネットアジア航空(株)
(株)アメックス協販 等 13 社
栃木皮革(株)
(現・栃木レザー(株))
山陽、ジェイ・オー・ピー
(株)オーシーシー
オーシーシー・ホールディングス
(ロングリーチグループ)
(株)フェニックス
オリックス
服部玩具(株)
タカラ
粧連(しょうれん)(株)
パルタック
(株)大京 等 6 社
オリックス
ジェイ・ピー・ジェイ
(ジェイ・ウィル・パートナーズ)
三景ホールディングス
(MKSパートナーズ)
とちぎ地域企業再生ファンド(とちぎフレンドリーキャピタル)
大和証券SMBCプリンシパル・インベストメンツ
―
とちぎ地域企業再生ファンド(とちぎフレンドリーキャピタル)
大和証券SMBCプリンシパル・インベストメンツ
関東自動車(株) 等 4 社
(株)三景 等 16 社
(株)あさやホテル
(株)金精(ホテル花の季)
(有)田中屋(温泉宿小町)
玉野総合コンサルタント(株) 等 2 社
日本工営
ミサワホームホールディングス(株) 等 31 社
トヨタ自動車、あいおい損害保険、
野村プリンシパル・ファイナンス
(株)ダイエー 等 12 社
アドバンテッジパートナーズ、丸紅
(株)アビバジャパン
ベネッセコーポレーション
(株)オグラ 等 2 社
菱食
鬼怒川グランドホテル(株)
とちぎ地域企業再生ファンド(とちぎフレンドリーキャピタル)
大和証券SMBCプリンシパル・インベストメンツ
フレンドシップカンパニー
宮崎交通(株) 等 11 社
地元企業連合(雲海酒造他16社)
(有)鬼怒川温泉山水閣(鬼怒川プラザホテル)
(株)奥日光小西ホテル
ジー・アール・ビー・インベストメント・インク
金谷ホテル観光(株)
(鬼怒川温泉ホテル、鬼怒川金谷ホテル)
とちぎ地域企業再生ファンド(とちぎフレンドリーキャピタル)
大和証券SMBCプリンシパル・インベストメンツ
とちぎ地域企業再生ファンド(とちぎフレンドリーキャピタル)
大和証券SMBCプリンシパル・インベストメンツ
(有)釜屋旅館
65
(資料4) 地域のM&A事例概況-地域の金融機関の対応
(注:本資料は、地域の金融機関のM&A対応状況を聴取し、事務局の責任においてまとめたものである)
1.金融機関-1
(1)M&A取扱件数と概況
年間10件程度成約。地元企業との預貸取引を太く長くする意味で仲介業務を行っている。手数
料については、補助的業務との位置付けに基づき株式買収も合併もミニマム(1件500万、売り買
い両サイドで仲介しても1,000万)で行うケースが多い。標準手数料率は3%、株式の場合は事業
価値、合併の場合は合併後純資産の3%だが、そのようなケースはほとんどない。公認会計士や
税理士のケースは成功報酬が大体100万前後。M&A専門の業者の場合は、最低でも1,000万、
1,500万程度と認識している。
後継者がいない、後を継がないことになったという話が圧倒的に多い。売り案件を見つけて、そ
れに対する買いサイドをマッチングするという案件の組み立てがほとんど。県をまたぐ案件は全く
と言っていいほどない。
(2)分野別案件概況
1) 建設業
公共投資削減の流れを受け、合併した建設業者については、経営審査事項に基づく発注官庁
の通信簿の点数を一定期間優遇する制度があり、発注官庁のランクアップを目的とする合併・営
業譲渡というものが何件かあった。経営審査事項の更新が2年に1回であり、2年に1回は建設
業界のM&Aのピークが来るかと思っていたが、ランクアップを受けてもなかなか受注につながら
ないという認識が広がり、ランクアップ確保を第一目的にするケースはなくなった。
県庁の職員の給料削減もあり、公共投資の削減といった動きは変わらないので、建設業界の統
合は進むと考えている。力のある建設業者が、受注はできるが外注するともったいないので技術
者が何人かいる会社が欲しいというケース、また、いわゆる箱物をつくるゼネコンではなく、国道
の年間維持工事もしくは国道沿いの照明施設等の維持を含めた電気工事の維持工事等は、一
回受注するとなかなか業者が変わらないので、維持工事業者で後継者がいないところはないか
という依頼を受けている案件もある。
2) 信販業界
地方都市ごとに、県内の小さい都市にも地元の商店街が集まってつくった協同組合があるが、
その協同組合が15年、20年ぐらい前から地域でキャッシングを行っている。貸金業法改正の波を
もろに受け、地域に根差した産業ではあるものの基盤が伴っていない組合も多く、ここに来てもう
既に統合に向けて動き出した。地方の雄もしくは地方の名士が経営者であるため、自分の組合を
冷静に見詰め「先行きもままならないので一緒に」ということを言い出す方はまずいない。我々が
仲人役になって、良い組み合わせではないかということでアプローチをしている。組合であるので、
理事長、副理事長はほとんど地元商店の経営者であり、組合役員は非常勤のケースが多く、意
思決定はだれがどうやってやるかというところもお手伝いをしなければいけないという状況。
3) 医療業界
「嵐が来るぞ」というのが分かってから動きが活発化している。主に療養系の病院に対して、こ
れはM&Aというよりは我々が債権者として、勝ち組に対して投資をやりませんかというアプロー
チもある。ドクターとはビジネスの言葉が通じないケースが多いが、一度ドクターの信頼を得ると、
66
成約に至る確率が高い。県内の医療業界では官庁病院が多く、地域医療の担い手として市立病
院、農協系の厚生病院がある。官庁病院の病院会計はほとんど赤字であるが、民間への業務委
託、売却等に対する関心はまだ薄い。
東京地区の景気の波が若干遅れてくることもあり、調剤薬局がここ1年ぐらいで動きが活発化し
ている。3年前に関東地区で調剤薬局の動きがすごい、という話を聞いていたが、ここへ来て県
内でも実際に動き出している。
4) エネルギー業界
あるガス業者が県全体を網羅しているわけではなく、県の中に都市ガス事業者が7つか8つあ
る。その中の県庁所在地を中心に押さえているのがAガス、原油価格が上がり、今ちょうどプロパ
ンから天然ガスへの転換を2009年までかけてやっている真っ最中だが、この人員はAガスが地方
の各都市ガス事業者に派遣している。余剰人員を各地方に出し、2010年ぐらいでうまく人員が整
理できるといったスケジュールと思われる。今のところ、都市ガス業者間で統合に向けた表立った
動きはない。県内に天然ガスの液化プラントがあるが、地元業者は大きいところから小さいところ
まで、1対1で価格交渉をひとまずやっている。提携してもいいのではないか、という話もまだ足並
みが揃わない。天然ガスへの転換が終わってからでないと、提携に向けて本格的には動けない
状況。
原油価格のあおりを受けて、灯油とかプロパンガスの宅配をしている業者、宅配戸数300でもい
いから買いたいという話は各メーカーから来ている。独自に動いている業者、我々の手数料のレ
ベルの売り案件がなく小規模のものが多い。
2.金融機関―2
(1)M&A取扱件数と概況
県内のM&A件数は2段階を経て増加傾向。まず、1997年から98年にかけて20件台程度で推
移、不況業種などを中心として再生型あるいは救済型の案件がふえたことに起因。次に、03年か
ら04年にかけて20件弱増加し、05年、06年は同水準で推移。これは、上場企業が業績回復期に
入り、史上最高の利益を更新した時期で、上場企業またはそれに準ずる企業が戦略的なM&A
を展開した影響。
事業再生・救済型あるいは上場企業による戦略型のM&Aでは、基本的にそれぞれが自社で
完結する能力がある。あるいは、証券会社や専門会社が間に入ることが多く、事業再生・救済型
でいえば弁護士等がアドバイザーとしてついている。よって、地域金融機関がプレイヤーとして関
与するというのは基本的にレアケース。
地域シェアの高い金融機関は、事業再生の対象会社が貸出取引先になっている場合が多く、
いわゆる利益相反の問題がある。また、法的整理の段階となれば詐害行為が問題視されるとこ
ろも気になるので、なかなか主体的にはかかわりづらい。
中小企業については後継者不在が問題になっている。M&A事例がディスクローズされるケー
スはかなり少ないので、件数は正確には把握ができない。
(2)分野別案件概況
事業再生・救済型の案件として一番早く動き始めたのはタクシー会社の再編。本県は人口に比
してタクシーの台数が多い。県内のタクシー業界は組合が非常に強く、各事業会社のリストラが
進めにくかったという背景もあり、一気に経営が傾いた結果、他地域の元気のいい企業に買収さ
67
れたという例が幾つかある。
温泉地では、利用客の減少により軒並み経営がうまくいかなくなり、他地域の元気のいい業者
もしくは再生のノウハウを持った会社が法的整理の中でM&Aをしていくというケースが相次いだ。
不況の影響で一般家庭の収入が減少し、遊興費に充てる余裕がなくなったことが経営不振の主
因であろう。また、駅前の老舗のホテルが経営不振を理由に、東京のリゾート運営会社に営業譲
渡をした。装置産業であるホテル業界の財務内容が痛んだ結果として、M&Aが多くなったと思
われる。
ゴルフ場も一時期に比べると随分と料金も下がり事業者も減り、再生もしくは営業譲渡で経営
者が変わることが少なくない。外資系のファンドが圧倒的な資本力に物を言わせて地方の物件を
買いあさっている状況が、ホテルとゴルフ場いずれについても見られる。
地元上場(に準ずるものも含む)企業による戦略型M&Aを活用した他地域の進出例として、包
装資材の販売業者がある。広域的に事業を展開していたが、上場を期に他地域に進出をする手
法としてM&Aを用いた。今は九州まで拠点を広げており、M&Aが成長のツールとして十分機能
した。社長は、「基本的に、今後の投資はM&Aしか行わない」といっているほど、M&Aによる成
長戦略が成功した事例である。
液晶業界では、液晶加工業者が売上高減少に苦労している。以前は外注していた中間工程も
メーカーが自社工場で完結するようになったことが主因である。他にもクリスタルサイクルによる
業績の変動を補完する意味合いで、他の製造業をM&Aをするという事例が複数ある。
DIYセンター向けの地元大手プラスチック製品製造業者は、民事再生した大阪の学習机メーカ
ーのスポンサーとなった他、新規事業にM&Aを活用して参入している。
業界再編によるM&Aの例では警備会社がある。警備業界では機械警備が主流となり設備投
資の負担が大きくなっていることから、小さいところがなかなか立ち行かなくなっている。一方で上
場企業がそれを傘下に納めて営業基盤を拡大していく事例である。
また、ガソリンスタンドではセルフサービスの増加に伴い、従来型のSSの採算がとれなくなってき
ている。他県のSSが民事再生をした際に、地元の上場企業が譲り受けるという話が進んでいる。
業界再編の中でM&Aを実施することは上場企業にとって変わった手法ではなく、家電販売業界
が地殻変動を起こしている中で生き残りを目指すための合従連衡の動きも地元のメーカーには
ある。
学習塾業界では、他県の大手業者が地元の学習塾をつい最近買収した。少子化を見越して、
私立の学校法人などが教育に力を入れ、児童の囲い込みを図っている。学校法人の幼稚園から
相談を受けるケースも増えてきた。ただ、学校法人は現状M&Aというスキームに乗らないので
苦労している。
公共投資の減少が続いており、それに依存している地方の建設業者はなかなか立ち行かなくな
っている。また、市町村合併のあおりを受けて公立の病院が膨大な赤字を抱えて民営化をせざる
を得ないような状況になっており、多分、公立病院の民営化についてもM&Aという手法がとられ
るであろう。
中小企業経営者の高齢化に伴って後継者の問題がある。中小企業庁が事業承継ガイドライン
を出したことによって、中小企業経営者がそういったものに自覚を持って取り組む素地ができてき
た。心理的な近さもあって、中小企業の後継者案件についてはやはり地域金融機関の出番と感
じている。
68
3.金融機関-3
(1)M&A取扱件数と概況
現在1日1件の情報がある。年間で200件強のデータがある(ただし、半分程度は精度が甘い)。
(当金融機関の県の中でのシェアは約6割であるが、)潜在的にはこれの数倍のニーズはある
(再生型やグループ内の再編は含まれていない)。売り上げ1億から5億というゾーンが全体の6
割ぐらいを占める。県内には多くの市町村があるが、この活動での地域の格差はほとんどない。
業務として立ち上げてから約4年、寄せられる案件もM&Aとしての体裁を整えたニーズのものに
なってきた。
後継者難、業績不振等対症療法的なものが大半を占めるが、この4年間、MBOを3件扱った。
若年経営者の選択が非常に増加しており、ニーズは40代、50代の社長の相談がほぼ半数を占め
ている。一番若い社長は35歳、大きくなるまで会社を持っていられないのでいいところで売るとい
うような相談もある。
(2)分野別案件概況
精密機械、観光業、土木が3本柱。大手旅館、ホテルも寄せられたニーズとしては非常に多くあ
るが、エリア自体が地盤沈下を起こしているケースでは、個別のホテルの売買・再生はなかなか
難しく、案件としてはミスマッチの状態。他方、地区にある会社が、全国でそういったホテル・旅館
の再生を手がけるといった事例も出てきている。
観光業は相変わらずミスマッチであり、人気のエリアは引く手あまた、それ以外のところはもう閑
古鳥という状況になっている。
中小の製造業、パーツメーカー、中間加工業の売却の増加が昨今の特徴。県のメーカーは弱
電系のパーツをつくっているメーカー、途中の中間工程を担っているような企業が多く、他地区か
らのアプローチも非常に多い。従来型のビジネスモデルが崩壊し、ぎりぎりまで競争をといった状
況があり、単独での開発費負担というのが非常に増加していることが地区の製造業を圧迫してい
る。パーツ単体ではだめで、川上からも取り込んでいってモジュール化しなければ価格競争が出
来ない状況。単独では無理ということで、どこかの系列に入ってしまうということを選択する企業が
非常に増えてきている。パーツメーカーは全方位外交をずっと確保してきており、特定のセットメ
ーカーの色がつくのは非常に嫌うという感覚があり、相手もそういった中間色の企業に限定され
る。関西のあるメーカーは、04年から05年にかけて当地区の3社を一気に買って、それぞれ系列
会社としている。いずれも売り上げ10億から50億ぐらい、地場では非常にいい会社で、利益も堅
調、銀行としてもぜひお金を借りてくださいという類の会社。
若年経営者による企業売却の事例が増えている。50代、40代、中には30代の経営者も、キャピ
タルゲイン狙いであるとか、息子が若いとか、単独でIPOをしたいのだけれども、もう一回加速を
つけてIPOをするかといった事例も増えており、70歳過ぎの社長が後継者難でといった類とはか
なり色彩の異なるM&Aというのが行われている。
(3)課題等
地元企業の認識とニーズについては、M&Aは広く本当に浸透しており、抵抗感はかなり薄れ
てきているが、やはり地元の顔を気にする傾向というのは強い。エリア内での相手探しというのが
一番効率的ではあるが、顔が直に見えるので抵抗感がある。
企業が売却に直面したとき、まず相談するのは顧問の会計士や税理士であるが、そういったこ
とに関して好意的に受けとめる専門家がまだまだ少ない。どちらかというと、顧問先がなくなってし
69
まうので、「社長、ばかなことを考えないで、もうあと10年やったらどうだ」というような話になる。会
計士や税理士はそれでも経験された方がいるが、弁護士に至ってはこういった案件を手がけた
経験者は非常に少ない。アドバイザーについても、経験も少なく地方であるがゆえに選択の余地
も非常に少ない。
圧倒的多数を占める零細中小企業というものに関して、M&Aの相談をする受け皿が非常に少
ない。広範に相談を受けているが、それでもやはり対応し切れていない。
意識ギャップという点では、会社を売りたいということになると、「やめなさい、やめなさい」と言う
人もやはり依然多く、バリュエーションをやっても、「相続税の評価でいくとえらい安いことを言うや
ないか」というような横やりが身内から入ることもあり、こういう意識改革も今後はやはり時間をか
けてやっていかなければいけない。
依然、M&Aを何か手品のように考えている経営者もやはり多い。「もう打つ手がないので、最
後はM&A」だと言う経営者がいたり、安くていいものをリスクなしで買いたいという経営者もいた
り、やはり正しいM&A、リスクも踏まえたM&Aということについての普及が大切。
ある程度広域の情報というのは地域の金融機関の苦手とする分野、そういったのをカバーでき
るような公的な市場があるとより充実する。
4.金融機関―4
(1)M&A取扱件数と概況
17 年度は M&A の成約先数が 12 件であった。情報件数は平成 12 年度から毎年増加し、18
年度は 200 件以上に達した。後継者不在、経営資源の集中等を理由とした売り案件が多く、比較
的フィーを収受し易いが、業績不振を理由とした売り案件も増加傾向にあり、このケースの場合
はフィーの支払能力がないこともある。中小、中堅企業からの売りニーズが急増している一方で、
大企業からの買いニーズも多く、首都圏及び他地域の同業者、事業会社から、売り案件の情報
提供依頼も非常に多い。
ここ数年、M&A 業者及び M&A 相談窓口が増加しつつある。県内の他の金融機関にも M&A 担
当者(専任もしくは兼任)が設置され、商工会議所等公的機関にも窓口が設けられている。
弊社は、M&A アドバイザーとして専担者が4名(専担者を4名置いている地銀は数行と思われ
る)。他の金融機関では、取引先から M&A ニーズが出てきた場合には、提携業者に全面委託
(丸投げ)しているケースもあるが、弊社においては、案件発掘からクロージングまで社内で完結
することが可能。
(2)分野別案件概況
地場産業である紙・パルプ等の製紙業、自動車関連の製造業、水産業等の分野は勿論、自動
車の部品メーカーにおいても二次請、三次請等の再編(他社買収、合併等)が進んでおり、相談
件数が増加している。一方で、企業の業種、業績によっては再編が適わず廃業に追い込まれる
ケースも少なくない。
最近の弊社の取扱事例では、梱包資材卸売業(年商約5億円)を他地域の東証1部上場企業
に譲渡した案件を仲介した。後継者不在を譲渡理由に譲渡候補先企業の探索を開始し、成約に
至るまで約 1 年掛かったが、その後は、上場企業の 100%子会社となったことで、仕入単価の引
き下げや新規顧客の獲得に繋がり、すぐに相乗効果が表われた。経営権を手離した社長も、親
会社から引き続き代表権を持つ会長として続投要請があり、従来よりも意欲的に事業をサポート
70
している。
(3)課題等
他県と比較して非常に保守的な地域であり、地縁血縁を大切にする一方でドラスティックな展
開を嫌う傾向がある。事業の売却に対して、周囲の目を気にすることなどから未だに抵抗感が強
い経営者も多い。事業売却を決断するには、利害関係人(親族、顧問税理士、金融機関等)によ
る後押しが不可欠であるが、時には利害関係人からの猛反対に合い、案件化できなかったケー
スもある。金融機関は取引先の M&A に対し関心が高くなりつつあるが、売り手側のメインバンク
にとっては、取引縮小(融資残高の減少等)に繋がるケースもあり、時には反対する立場に回るこ
ともある。
M&A に係る専門家の不足は大きな課題。企業再編税制等の M&A に関する税制に詳しい税理
士、会計士や、新会社法の施行により複雑化した M&A 取引の各種契約書を精査する弁護士な
ど、専門家の不足は大きな問題である。首都圏には M&A に詳しい専門家も多いが、専門家報酬
が非常に高くなる為、現実的に依頼するケースは稀である。
弊社は、M&A 仲介業務として報酬を受領するが、社内規定上は下限報酬を 1,000 万円と設定
している。報酬額を聞いて非常に驚かれる取引先もあるが、最近は理解を示す取引先が増加し
つつある。一方で、財務内容が脆弱で支払能力がない企業に対して、どう支援していくか、地域
のリーディングバンクとしては、今後の大きな課題と考える。
5 金融機関―5
(1)M&A取扱件数と概況
01 年に担当者を配置。アドバイザリー契約は毎月1件のイメージである。
当初は、買いニーズが中心であった。また、経営者が決断をするというよりも、「支店との話の
中でこういうふうにできるといい」、「不良債権を何とか処理できるといい」というニーズの対応が非
常に多かった。
現在の相談件数は、月平均、20 件程度の相談を支店経由で受けている。ニーズの内訳は2/
3程度が買い、1/3程度が売りの相談である。
現在の買いニーズについては、具体的な相談が多く、自分の会社の将来戦略を見据えた相談
が増えてきている。「何か良い物があれば」というアバウトなものは無くなってきている。
現在の売りのニーズについては、優良企業の後継者不在に関するものが増えている。特徴と
して、地元のメーカーで従業員が 10~30 人程度の元気の良い会社の後継者問題解決のニーズ
が増えている。
報酬については、初めての経営者は非常にびっくりするものの、最後の成約まで行くと気持ち
よくお支払いいただくケースが多い。
(2)課題等
中堅中小企業の案件では、社長(オーナー)イコール会社という企業が多い。「技術力」であっ
たり、「取引先とのパイプ」であったり、「従業員との信頼関係」であったり、すべて社長の背中に
付いているケースが多く、それを買い手側へうまく移譲できるかは重要なポイントである。その中
でも、メーカー系の案件では、銀行員は専門家ではないため、ぴったりの候補先とのマッチングを
することに苦労するケースがある。
中堅中小企業においては、「オーナー社長の思い」というのが重要で、そのオーナー社長のメ
71
ンタルケアをきっちりしていけるというのは、地域に根ざした地方銀行ならではの取り組みである。
不動産がテーマになることも多い。事業の使用していない不動産を会社で所有していたり、逆
に、そのときの資金繰りの都合から、個人(オーナー)で買った不動産を事業に供していたりする
ケースが多くみられる。
地域の銀行という立場を勘案した場合、公共的なインフラ・交通機関・病院等の案件について
は、どんな背中の押し方をするかによって、地域に対する影響は非常に大きくなることがある。
また、M&A業務を進めるにあたり、サポートいただくM&Aに精通した専門家(弁護士・会計
士・税理士)が、地方へ行けば行くほど少なく、そういった専門家がもっと地方にいると、地域での
<&Aの活性化につながる。
6.金融機関―6
(1)M&A取扱件数と概況
専担者4名とプレイングマネージャー体制。平成 13 年ごろから再生案件にも着手。手数料につ
いてはミニマムフィー500 万、通常のコマーシャルバンク業務をコア業務とし、同業務を優先する
という経営方針。M&Aアドバイザリー業務遂行にあたっては、成約先行的対応ではなく、顧客な
らびに営業店からの支援要請には全て対応するという方針を徹底している。プレイヤー4人で、
概ね1年間の成約件数が 10 件、手数料額にして1億円程度(この中には自行債権保有先の再
生案件数や、事業再生ファンド活用による配当収入は含まれていない)。前述の対応方針を前提
とすれば、その程度が限界と思料する。
平成 12、13 年ごろは年商規模にして 20 億から 50 億ぐらいの案件が中心であったが、徐々に
ではあるが規模が小さくなる傾向にあるとの印象を持つ。前述の対応方針から、17 年度は年商
が 2,000 万円の土木工事案件もお手伝いした経験を持つ。費用(ここで言うところの手数料)対効
果という観点から考えれば、案件が小型化すればするほど業務効率が悪いと言わざるを得ない。
案件は後継者がいないケースが代表的で、成約した件数の過半数以上は後継者不在。業績
不芳といった理由で成約まで行く案件は、後継者不在という理由で案件化したものに比較すれば
少ないと言えるだろう。銀行も不良債権を処理する環境が段階的に整ってきており、銀行の対応
如何では、業績不芳といえども成約するケースも少しずつ出てきている。
(2)分野別案件概況
完成車メーカーの城下町である当地では、やはり完成車メーカーへのサプライヤー企業の多く
と取引がある。ティアー1と称される一次下請けは、完成車メーカーの主導で経営統合がほぼ完
了した。しかし、二次下請け、ティアー2以下については、一次下請企業が生き残りをかけて下請
けの再編に着手し始めており、平成 17 年度下期から 18 年度にかけて成約事例も出てきている。
サイズが小さいので手数料という意味での貢献は少ないが、地場産業を支えていく使命を持つ地
方銀行として、手数料の多寡にかかわらず、従業員の生活等地域経済への影響を優先的に考え
て対応している。
これからは観光、温泉等観光業種での再編案件についても取組みを始める必要を感じている
が、実現までは至っていない。観光に加え、病院、これは医療法の改正によって段階的に病院の
再編が進行するのではないかと想像する。スピード感としては、病院再生は他県よりちょっと遅い
傾向との印象を持つ。ここ2~3年では再生・再編を必要とする病院も現れるだろうと感じている。
病院には業種としての特殊性があることから、専門家と協業しながら再生・再編の助成をしたい。
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(3)課題等
経営者のM&Aに対する認識は、10 年前から比べると数段進化している。しかし、いざ自分の
こととなると、そこまで踏み込めないという経営者も少なからず存在する。また、社内外にM&Aに
精通したブレーンがいない。中小企業は、いわゆる上場企業と違い会社の組織体制が磐石とは
言えない。社長なりオーナーの個人会社的存在が多いので、社長が自ら単独で判断せざるをえ
ない環境にある。
中小企業の場合、企業体力や財務的理由から、M&Aアドバイザリー手数料にとどまらず、デュ
ーデリジェンス費用が賄えないケースもある。結果的に、取引先と相対協議の結果、手数料では
なく、案件の成約を優先させるというようなケースもある。
7.金融機関―7
(1)M&A取扱件数と概況
数年前までは、M&A関係は関連会社が実施していたが、情報開示の扱いや銀行本体で行う
べきケースが少なくないとの理由から機能を本体に移した。手数料だけではなく、再生、相談業務
の延長というスタンスで対応し、その中で融資を大事にしている。
M&Aが起こればそのメイン行が変わってしまう。攻めプラス防衛という意味もある。実際に稼
動し始めたのは半年前、一気に担当4名体制。
現在、相談が急増、この半年間で約 100 件の相談を受けた。3割が売り案件、来期早々5件ほ
ど成約し、手数料概算、見積もりで1億円ぐらいフィーが入る予定。債務超過企業売り案件は相
対的に減少。規模の小型化、営業店長向けのセミナーを月1回のペースで開催しているが、研修
をやれば非常に相談がふえ、1億円未満の小型企業も動き始めた。その中で経営者の意識も変
わり、小粒の優良企業の売り案件も着実に増加。
計画的な売却案件が増加している。55 歳前後団塊の世代の社長が、いいときに売ろうという
考え方が何割か出てきている。意識がかなり変わっている。
地方中核都市、一極集中がかなり進んでおり、地区の会社を買いたいというニーズがかなり出
てきている。基本的に外部と連携、大型案件、特殊案件、広域案件は大手の業者さんと連携。そ
れから地元案件、小型案件は地元の公認会計士の先生が中心。
(2)分野別案件概況
後継者難が一番多く、切実。それからM&Aに対する抵抗感が消えた。
最近、地元で強烈な話題となったM&Aとして、地元銀行がメインだったA社が、あるときB社と
の提携をメガバンクに持っていってメインが変わった。メインではあるが、相談は地元銀行に来な
かった。経営陣もメインに対する見方が変わるきっかけになり、危機感を持っている。
域外の企業も非常に関心を持っている。病院関係の相談が非常にふえている。理由は2つ、ま
ず病院が多いことと県内でかなりのシェアと実績があること。医療チームという専担セクションも5
名体制でやっているが、基本的には理事長なり事務長に会えるということもあって、病院関係の
相談がかなりふえている。
(3)課題等
県に約 160 の上場企業があるが、上場企業クラスの相談が来ない。実質は大手の銀行や専門
業者にいっている。取引先ではないが、案件化したら大手の銀行とも連携する。
買い手の方は事業拡大、とにかく買いたいと目的がはっきりしない、ターゲットがはっきりしない
73
相談が多い。売り手の方は、銀行に相談しないまま、いろいろな業者に相談をしている。銀行に
相談が来たときに、アクションを起こさないとだめだという状況。
8.金融機関―8
(1)M&A取扱件数と概況
現在扱っている案件は、売りで9件、買いが 19 件。事業承継案件を中心に件数はふえていく。
フィーについて、フィーは払えない会社でもM&Aを行う必要がある場合は、コンサル契約にして、
実費程度の金額で経費をまかなえる程度でやっている。売り手側については、本気度合いを測る
必要があるので基本的に着手金はいただく。
平成 12 年以降、関連会社でのアドバイザリー契約が 31 件。アドバイザリーの内容は、株価算
定や取引内容の助言等コンサルが 10 件、あとは成功報酬によるM&A。
(2)分野別案件概況
買い手側のニーズとして多角化、販路開拓、事業拡大、売り手側は業況悪化、法的・私的整理、
事業承継、その他いわゆる合理化等。売り手側(成約した部分のみ)の業種は建設関連、流通、
不動産、建設、流通、不動産、製造、医療と続く。
買い手側の購入理由は積極的経営に起因するものが多い。売却側はいわゆる業況不振が中
心となっているが、事業承継がかなりふえている。買い手側も同じような同業他社を入手したいと
いうニーズが起きてきており、地元の企業で買い手側に回るケース、事業承継がうまくいった会社
が事業承継のうまくいっていない同業他社をという話が数多く出てきている。
病院については、非常にいいところと悪いところがはっきりとしてきており、早く何とかしないと病
院自体が存続できなくなるところもある。不動産関連、旅館等件数が多くある。
(3)課題等
フィーとして、仲介料あるいはアドバイザリー料あるいはコンサルティング料いろいろあるが、弁
護士あるいは公認会計士の報酬が企業規模に関わらずかかり、企業の負担感によるが、そこま
で払うのであればもうやめてもいいというのもある。今後、事業承継等で小さい案件がふえれば
ふえるほど問題として見えてくる可能性がある。
デューデリジェンスとして、買い手側の企業に法的部分と財務についてきちんとやってもらいた
いと、その2点だけは、いわゆるコンプライアンスの問題もあり費用がかかることを前提にして、や
っている。
9.課題別
(1)フィー
○着手金をもらい、最低報酬ミニマム500万円(着手金で50万、成功したら500万)の提示に対し、
驚く方が1割、値切りがないのが1割、残り8割は成功報酬で500万円。ランニング費用もかから
ず、手間がかかる部分は実費を、また、そこは着手金がわりですという程度。最近、比較的すん
なりいくケースが増えているが、1割程度は何回も何回もやりとりがある程度進んでからもういい
かげん決めましょうという状況。
○政策投資銀行のテーブルでリテインはなく、融資会社は20万で引き受けを実施。前払いで20万、
皆さん高いという。以降、案件が進んで、結果、移動資産の3%一千数百万頂戴したときもあった
が、ここは何度も何度もM&A後のフォローをするということで話をし、支払いいただくことに関して
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は何ら引き下げの要望もなく、逆に感謝して支払っていただいた。客からみれば、何百万か何千
万の対価として対価を払うだけの働きというものが多分事前には想定できない。とにかく頻繁に
連絡をとり、ちょっとしたことでもお邪魔し、さまざまな場面での交渉機会があると、それだけの働
きをしたということは認めていただける。一方で、案件が進まなくてデッドストックになるようなケー
ス、20万では合わないというのも出てくるが、そこの部分は我々はサービスだと理解している。
○リテイナーで100万。14年までリテイナー10万円で、受ければ受けるほど赤字になるという感じ
がし、100万に上げて、年間で着手金だけで10件から15件ぐらいいただいている。東京商工会議
所のテーブル、小規模案件が多いこともあり移動対価にのみ掛け算する料率。最低報酬は1,000
万円。ディスカウントの要請もいろいろあるが、平均すると、大体1件当たり2,000万強はいただけ
るようになっている。銀行の中から批判を受けるケースもある。逆に、客はありがとうということで
気持ちよくお支払いいただけるが、どうも身内のギャップが大きい。
○最低報酬 1,000 万円、他の銀行と同様、必ずその金額じゃないとやりませんというような動き方
をしているわけではない。地方銀行特有の地方の大切なお客さんとの関係というところが先に立
つ。フィーにこだわっているというよりも、地域貢献という意味で動いている銀行が多い。
○地方でのプレイヤーは銀行しかいない。フィーは、実費はもらわないといろいろ問題が起きる。
基本的に来る案件は、よほどのことがない限りお受けしている。フィーが幾らしかないからこれは
やらないということは基本的にあり得ない。足が出ることもある。足が出るか出ないぐらい程度の
実費ということ。
○フィーの基準は決めているが、絶対そのとおりにはならない。この業務を健全な発展をさせるた
めに、市場がないと多分結果的にだめになる。大手、あるいは大手の弁護士を使うとどうしても高
くなるので、地元の業者で専門家を育成していかないとだめだ。業界がないので、M&Aの資格
みたいなものをつくって何か形をつくらないといけない。地方のM&Aと中央のM&Aは本来違う
だろうが、新しい形をつくっていかないと多分この業務は定着しない。
○完全にアドバイザーとしてのみフィーを追求してしまうという立場はなかなかとりにくい。銀行と
してそういうM&Aが起こったときに、裏側でファイナンスが起きるか、そういうことが常にあるわけ
で、トータルでいかに貢献して収益を高めていくというような感じにならざるを得ないのかなと思わ
れる。M&Aのフィーも、大都市部ではもうダンピング競争が始まっており、もうプレイヤーが段々
大きくなってきており、銀行は何かトータルでもうけていく。最近本当にMBOがふえてきており、M
BO案件は、まさにいろいろなエクイティだの、メザニンだの、そういったファイナンスの収益自体
は大きいので、そういったことである程度フィーだけじゃないというところが、段々出てくるのかなと
いう感じがある。
○フィーについていわゆるレーマン方式は取っていない。一律市場評価の3%。ミニマムを500万
円、平均すると、勘定3%計算で600万、700万になったら、500万にするケースもある。実際の平
均は5か7の間で10までは行かない。一番大きいケースで4,000万というのがあったが何件もある
わけでないので、件数はミニマム500のケースがほとんど。
○完全に移動資産の株式価値の掛け算。八、六、四%。デッドは入らない。そちらの方がお客さ
んの方が納得しやすい。一件のボリュームは2~3億が圧倒的に多い。一番大きいのでいくと70
億ぐらい。
○譲渡価格が3,000万とか4,000万という案件ではもう本当に300万程度。完全にサイドアドバイス
のみになる。買い手を探すのも難しく広域で探すようなレベルの会社ではなくなってしまう。隣町く
75
らいのゾーンになってくるので、そうなるともう完全に我々は手数料なしのベースでM&Aの一般
論的な支援をする。
(2)どんぶり勘定と粉飾
○売りたいというので中を見てみたら、明らかに粉飾決算。社長自身も気づいてないことがあり、
経理は他の者に任せている。自分の価値をかなり高く見る社長は多いので、2億円で売れると思
っていても、評価はゼロ円ですという話をするとひっくり返る。粉飾している会社を売るわけにはい
かないので、まず財務成りを直してくださいということを申し上げなければいけない会社も多々あ
る。
○まずはその売れる状態に持っていくのが第一歩と結構皆さん言っている。成功をした経営者か
ら、「公私混同しない会社だから売れた」ということをアナウンスしていただいているので、そこの
意識は感じるが、粉飾等は永遠にはなくならない。
○従前、地方の零細企業は経理、財務になかなか関心がなかったが、M&Aというのを契機に、
自分の会社の企業価値みたいなものを常に意識しながら経営される経営者が一人でもふえてく
れれば、それは非常にいい兆候。
(3)地方のM&Aのドライバーは。
○成功体験がふえ、マスコミが中小企業の出口として事業承継やM&Aをテーマにした番組や雑
誌を結構出している。年商2~3億の会社がM&Aでほかのオーナーに売れた報道を見て、「うち
もあり得るのかな」と考える。売れるには資本等をしっかり整理している会社だから売れたとか、
いろいろな要因を皆さん話す。「何年無借金でやってきた」とか、「赤字を1回も出したことがない」
とか、いい会社だから売れているということ。そういう情報量は圧倒的にふえている。
昔は、電話は支店からしかかかってこなかったが、最近積極的に地元誌に出るようにしていると、
客から直接電話がかかってくる。銀行と取引はないが、他行がメインの会社から電話があり、メイ
ンバンクにそのM&Aの話をすると融資を引き上げられるので、まずは別の銀行のコンサル会社
に話を聞いてということもある。
○法制度が変わったという云々で相談をもらったケースは1件もない。やはり、オーナーの閉塞感、
後継者問題と簡単に言うが、やはり子供が本当に経営できる能力があるのかということと、社内
でもいないというのが今一番大きな課題。
従前、地域の中での競争で済んでいたが、あらゆる業界で大手との競争となっている。相手が
大きいので、将来に対する不安を非常に感じている。この中で、情報量がふえ成功体験が入って
くる。
○法改正が影響しているという感じではなく、状況が悪化している会社と悪化していない、ある程
度内部留保持っている会社との差がかなりついてきている。すごく悪化してはいないけれど、どう
考えても将来性厳しいと思われるオーナーが、もう手放してもいいのかなと考えている。事業承継
絡み、事業承継がうまくいった会社が、これから二代目、三代目のオーナーになった後どうするか
というと、買い手が地元の企業としては、大きくするためにはM&Aという相談がほとんど。
○情報がふえることによって、勝つとか負けるとかの印象が払拭されてきたことが大きいが、そも
そも中堅・中小企業もいわゆる出口が必要となっている。今までは出口の方法論がわからず相談
もできなかったが、そこが解決し始めたので急速に進んでいる。10 年程度前迄は相談を受けても
76
解決できなかったが、今は受ければそれなりの解決をできるようになってきており、成功体験を聞
ける。情報の上で場数をこなしてきたところで、その障壁、従来は非常に高く見えていた障壁が低
く見えてきたということ。
(4)社長が技術力等を保有の場合の企業価値
○従前、後継者問題は余り気にしていなかった。M&Aの事例で、社長イコール会社というのはこ
れからふえてくる。最近の例では、買うが、3年間現在の社長をそのままでというような話。技術
力が社長についているという企業では、売却後1年ぐらいで代わることはなかなか難しいので、3
年とかというちょっと長い期間いることで、買い手の不安やリスクをケアしている。
○その技術なり人が育っている会社はいいが、社長の営業力とか人脈とかで成り立っており、本
人がいなくなるとそれをきっかけに離散するというケースがたくさんある。具体的な解決策として、
3年なり5年で彼がいる間に投資を回収する。
○対応として、前のオーナーの代表取締役社長が知らないうちに会長になる。オーナーがかわっ
ているわけで、それは取引先には全然わからない。何年かしたら「もう年だから引退します」、「あ
あ、そうですか」で終わる。いきなり社長がかわってオーナーがかわると取引は難しい。
○社長は長くても2年という方がいい。個人についてのケースというのが結構多くて、そうするとや
はり3年ぐらいはいてくれよと、1年で引かせてくれというこの攻防という感じで、ただ売り手もただ
引かせてくれ、引かせてくれというと、何か変なことでもあるのかと思われてはいけないので、そ
の結果としては間をとって2年とかということ。
○社長は感覚的には1年間はいる。
○ディスカウント向けの利用価値を出し、オーナーに対するディスカウント額をふやすというのが
本来だが、ディスカウント額が 30%だ、50%だと言われて納得感がないといけない。
○評価は、デューデリをやった結果のフィアバリューにシナジー効果というのを乗せ、あとディスシ
ナジー、即ちその会社を買うことによるディスカウント分、それも引く。ディスシナジーのところは社
長が3年でいなくなるからという、これはディスカウントしている。ここがうまく説明できれば、特に
評価自体というのはテクニカルなものなので、問題はない。そのシナジー効果とディスシナジーを
どう見積もるかの問題。そこがやはりそこも金銭的、感覚的というふうになる。上場会社の場合に
は、かなりダミー係数を入れて、これはじゃあ半分とかというふうに見られますけれども、多分地
方の場合は、人によっては半分とみなし、人によってはというところがかなり大きくかわる。
(5)ファンド
○情報交換というのは結構頻繁にやっているが、ローカル色が強く、特にファンドとは時間軸が離
れている。
○必ずしも後継者はこの人しかいないとできないというわけではない。案件があれば、人でも知
恵でも何でもお金も入れてくるでしょう。ファンドのペースでやってしまうと、テーブルになかなか乗
れないという状況になる。
○大手のファンドや大手の業者との情報交換では、地域の銀行の案件レベルでも対応してもらえ
るのかということが気になる。地域では、売り上げ数千万から 10 数億円でも結構大きい案件にな
る。中堅、30 億円を超えるような案件は余りない。ファンドとギャップがあるからこそ、地銀の担当
がM&Aのアドバイザーとして動いても案件を取れる。
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(6)会計士、税理士のDD手数料は?
○DDを第三者の税理士、会計士に依頼したケースはない。特殊なスキームで税務上のアドバイ
スをもらうケースで、我々の裏アドバイザーについてくださいと個別にお願いするケースで、うまく
いったら報酬は3割安くしている。医療関係だったらこの先生、それ以外の再生絡みになるのだっ
たらこの先生と、大体会計士何人か普段からやりとりしている。顧問の場合もあるし、漠然とした
包括契約を結ぶケースもあるが、個別案件では注文書を出し、請求書を出してもらう。基本的に
当事者間でデューデリをやる。東京から何名かチームを派遣してもらうというケースもあるが、ほ
とんど当事者間でデューデリを進めるケースが多い。
(7)従業員への対応
○契約上は従業員を引き継ぐという契約で引き継ぐが、買い手はどうしても厳しく見がちで、実際
に顔合わせを行い業務のしぶりを見て、これはだめだというのはある。従業員が一概に悪いわけ
ではなく、従業員側にもM&Aに対する抵抗というのは非常に強いので、新しい経営者に対する
感情的なしこりもあり、買い手側が従業員の雇用をもう一度見直すという申し出をするケースは何
件かあった。そのような場合、本店から離れたところでも客と近いところにおり、買い手、売り手の
経営者を自分の営業店舗に呼んで事情を聞き、いわゆる緩衝材になり相談にあたり何とかある
べき姿に持っていく。
取引店の支店長の果たす役割は、M&Aのプレイヤーとしてではなく、経営者と金融機関の支
店長という立場での折衝においての非常にウエートが大きい。
○病院の譲渡で、オーナーがかわったら看護師さんがぼろぼろやめ出し、院長と職員が合わな
いと、旧オーナーのところに相談に行くケースがあった。現地の支店長と協力して、売り手側のア
ドバイザーについていた。買い手側と支店長も含めた売り手側が一緒に交渉に当たったが、そこ
はもう支店長が事情も知っているし顔もわかっているので、うまく間に入って緩衝材になって対応
した。売ったオーナーは現在ではすっかり切れ、もう我々が債権者として、また病院の方も病院の
方で対応している。支店長を巻き込めるかどうかというのは大きい。
(8)支店長の役割
○銀行は利益相反の問題がある。「支店長が入った後でふたをあけたら破綻懸念だ、今の貸し
金どうする」という、支店長のジレンマがあり、その懸念がないと判断すれば対応する。地域は広
いので、我々がフォローする頻度が少なくなる分は現地の支店長にフォローしてもらう方がいい。
この先は大丈夫ということを支店長と共有できれば支店長を連れて行く。本店近隣などの場合は
支店長を入れないケースが多い。
ここに地域の銀行のM&Aが進まない理由がある。フィーについては、経験のない支店長は、
「これをもらっていいのか」と、濡れ手にアワだからとんでもない、との感じを持つが、経験のある
支店長はやりとりもある程度の知識も身についているので、経験のある支店長とない支店長の差
は大きい。
大部分の地域の銀行は入り口の段階で利益相反をシャットアウトするために、そこだけ入れれ
ばあと入れないという扱いをしている。少なくとも格付定義や貸出方針なりを出している。
(9)その他
(大型戦略案件はどこが提携先と共同であたるか?)
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○いわゆる戦略型は、地元企業が打って出るというケースがほとんどで、そういう企業は上場企
業では民間の専門会社さんがダイレクトにとっている。そういった大きい企業の譲渡案件の相談
を受けたことは基本的にない。
戦略型の案件はスキーム一つとってもかなり複雑になり、我々地方銀行の一職員がM&Aに
関する高度なスキームを、法改正に対応して常にM&Aのノウハウをブラッシュアップできるかと
いうとそれはなかなか難しい。費用対効果に合わない。
一方で事業承継案件は、基本的には株式譲渡がほとんどになり、一緒にM&Aをやっている会
計士、弁護士と解決ができる範囲のもの。主戦場は事業承継案件だ。
(銀行からお金を借りているだけに、企業はなかなか相談しにくいのではないか)
○事業承継のアプローチのチームがあり、底から上がってくる案件もある。支店長がググッとお茶
の間に上がって、「この会社どうする」という話ができるかということ。
○後継者問題を、支店や銀行側から切り出すというのはやはりタブーがあり怖い。事業承継を、
ぼんやりとした映像の中で、要は支店というのは融資につながるので、優良企業に対して融資が
出るということで、支店にそういうモチベーションを持ってもらい、LBO的な観点で企業さんにアプ
ローチということで動機づけをしている。また、3年間で20数件扱ったが、そのうちほぼ半数がメイ
ンでない件で、支店もメインでなければ行きやすい。
○小さい企業は銀行に相談しづらい。一方彼らは、「A社の企業さんがもう後継者がいなくて売り
たいというふうに言っているよ」という話をB社の社長から聞く。「A社、たしかお宅の銀行だったよ
ね」という話はよく聞く。プロパン事業会社、SS、ガソリンスタンド、卸売業者等割と業種が偏って
いる。
(社会インフラが地方で崩れ始め、M&A再生できないのかという動きはどうか)
○大規模な広域医療法人が少ない地域なので、隣県の広域医療法人が進出をしてきている。従
来型からの地域の医療のところは近代的経営のシフトができなくて苦しんでおり、また、公立病院
の民営化、受け皿として進出してきているので、当該地域においてはよそからの進出によってか
なり再生が進むだろう。
○病院は一般的に大きな赤字で苦しんでいるのでそういう方向に行くべきだが、例えば、市立病
院の責任者である首長、市長がドクターを確保できるかというとできない。ドクターがいまだに牛
耳っている。ドクターにしてみれば、自分の給料・待遇がマイナスになることはさせたくない。そう
いうしがらみが動けなくしている理由だ。100床から200床の程度の規模は中途半端。経営診断や
他の同等科目の診療科目と比べながら提案中の状況で、これは案件が出てきているという状況
ではない。
○医療関係は進まない。圧倒的に強いのは厚生、農協、それから日赤。そもそも再編が課題。
○温泉街のホテルは負債がなくなり軽くなると回る。7割までは稼働率は上げられ、その範囲内
で再生計画が立てられている。債権カットで、負債をどれだけ返せるかというところにつきる。
○温泉にしてもゴルフ場にしても、某社は 100 ぐらい傘下におさめて、その会社を上場してバリュ
ーアップとしていくということを目指しているが、そうすれば、ゴルフ場あるいはその旅館のお客満
足度はかなり向上し、いい刺激になっている。県中心部の土地ほとんど外資系に買われている。
地元ではとても対抗できない。
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