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佐賀県杵藤保健所

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佐賀県杵藤保健所
佐賀県杵藤保健所
は
じ
め
に
近年の医学・医療の進歩にともなって、いわゆる「伝染病」と
いわれるものは消滅したかのように思われていました。しかし、
平成8年堺市の腸管出血性大腸菌(O157)による大規模な食
中毒発生以来、新たな病原体による感染症が注目を浴び、社会的
にも新たな感染症対策がとられるようになりました。
その後、SARS、感染性胃腸炎(ノロウイルス)、鳥インフルエンザなど次々
と新しい感染症がわれわれ人間を襲ってきております。
本年初頭の広島県福山市の社会福祉施設における感染性胃腸炎(ノロウイル
ス)の集団発生と多数の入所者死亡事例は社会的にも大問題となりました。
また、結核という古い感染症も高齢者層を中心とした施設内集団発生という
形で再び頭をもたげてきています。
このように、感染症は抵抗力・免疫力の低下した高齢者にとっては死活問題
となっています。
今回、このような観点から「高齢者介護施設における感染症予防マニュアル」
を現場の皆さまの協力のもとに作成いたしました。感染症を防ぐために最も大
事なことは、手洗いをはじめとする、常日頃の感染症予防対策を怠らないとい
うことに尽きます。
次に大切なことは感染症にたいする正しい知識と対処法を日頃から身につけ
ておくということです。
本マニュアルでは皆さんができるだけわかり易いように、実際に則した写真
や図案・表を数多く取り入れました。マニュアルが単なるマニュアルだけで終
わらないように、施設内に常備され、常にご活用いただくようお願いいたしま
す。また、一旦事が起こった場合には皆さんと協力して健康危機の対応・対策
にあたるのが保健所の役目であります。
そのような事態が疑われる場合には当保健所に速やかなご連絡とご相談をい
ただければ幸いです。
「危機管理の第一歩は、今そこにある危機を
できるだけ早く認識することである」
平成17年11月
佐賀県杵藤保健所
所長
古川
次男
<
目
次
>
はじめに
Ⅰ
感染症の基礎知識
・・・・・・・・・・・・・・・1~2
Ⅱ
日頃の感染症予防対策
1 標準予防策(スタンダードプレコーション) ・・ 3
2 手洗い ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・3~5
3 おむつ交換 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6
4 吐物処理 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・7~9
5 トイレ清掃 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
6 消毒 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・11 ~12
7 感染症早期発見のための日頃の観察ポイント ・・・13
8 職員の健康管理 ・・・・・・・・・・・・・・・・14
Ⅲ
感染症発生時の対策
・・・・・・・・・・・・ 15 ~20
Ⅳ
感染症各論 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 21 ~24
1 結核
2 インフルエンザ
3 感染性胃腸炎(ノロウイルスを病原体とするもの)
4 腸管出血性大腸菌感染症
(O157、O26、O111など)
5 MRSA感染症
6 疥癬
7 B・C型肝炎
8 レジオネラ感染症
Ⅴ
Q&A
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・26
Ⅵ
参考文献・資料、リンク集・・・・・・・・・・・・27
Ⅰ 感染症の基礎知識
1 感染症とは
ウイルスや細菌などの病原体が体内に侵入して増殖し、発熱、下痢、せきなどの症
状がでる病気のことをいいます。人から人へ感染する伝染性の感染症のほかに、動
物や昆虫から、また傷口から感染するものも含まれます。
1) 主な病原体で分けると
ウイルス
インフルエンザ・風邪・
肝炎(A~E型)など
細 菌
その他
腸管出血性大腸菌(O15
7等)・赤痢・コレラなど
疥癬・白癬など
2)主な感染経路で分けると
飛沫の水分が蒸発した飛沫(エアロゾル)が,飛沫核(直径約5
μm以下)となって空中に、浮遊し,それを吸い込むことで感染。
空気感染
<代表的な疾患> 結核、麻しん(はしか)、水痘など
飛沫感染
会話やくしゃみ・咳などをしたときのしぶき(飛沫:直径約5
μm以上)を吸入して感染。飛沫は1メートル以内の距離を
飛んで床に落下する。
<代表的な疾患> かぜ、インフルエンザ、レジオネラなど
皮膚や粘膜にいる病原体が手指や被服などを介して感染。
接触感染
経口感染
血液感染
<代表的な疾患> MRSA、疥癬など
病原体に汚染された水や食べ物、手指などが口に入ることで感
染。
<代表的な疾患> 腸管出血性大腸菌感染症(0157等)、
ノロウイルス、A型肝炎、赤痢、食中毒など
血液の中の病原体が注射や傷口への接触などにより、体内に入
ることで感染。
<代表的な疾患> B型肝炎、C型肝炎、エイズなど
1
2 感染症の成り立ち
感染が成り立つには、体に侵入する病原体の量と、その病原体に対する抵抗力
(免疫)が関係します。病原体の侵入する量が多いほど、また、体の抵抗力が弱い
ほど感染しやすくなります。
<感染成立の3要素> 全ての要素がそろったときに感染が成立します。
① 感染源
③感染をうけやすい人
(感染した人や動物、その
排泄物や環境~病原体)
②感染経路
(道すじ)
(抵抗力の弱い人・高齢者・
乳幼児等)
人間の抵抗力の向上
①栄養
②休養
③免疫力の向上
(予防接種等)
感染源の排除
感染経路の遮断
~ 標準予防策(スタンダード・プレコーション)の徹
底
感染源
(病原体)
☆抵抗力の低い乳幼児・高齢者の施設では
①感染源を持ち込まない
②感染経路の遮断 が最も効果的です!
2
Ⅱ
日頃の感染症予防対策
1 標準予防策(スタンダードプレコーション)
「人の血液・体液や人から分泌・排泄される全ての物質(尿・痰・便・膿など)
は感染症のおそれがある」とみなして対応する方法。
これらの物質に触れた後は手洗いを励行し、あらかじめ触れるおそれのある
ときは、手袋・エプロンなどを着用する。
2 手洗い
まず、確認!
・・・感染症予防の基本は手洗い!
・ 爪は短く切りましょう。
・ 時計や指輪は外しましょう。
次に、
・手首の上5cm 位まで十分に両手を濡らしましょう。
・洗浄剤を手のひらに取り、十分泡立てましょう。
1
手のひらをあわせてよくこする。 2
手の甲をのばすようにこする。 3
指先、爪の間をよく洗う[両手]
4
指の間を十分洗う。
親指と手掌をねじり洗いする。
手首も忘れずに洗い、指先を上
5
6
(親指をもう片方の手で包み、こする。)
[両手]
☆ペーパータオルで拭きましょう。(共用のタオルは使用しない)
☆洗面器などに作り置きの消毒薬を使用するのはやめましょう。
3
に向けて流水で洗い流す。
調理従事者の手洗い
調理従事者の手洗い
(1)
まず確認を!
・ 手指に傷はないか。手荒れはひどくないか。
・ 手の汚れはひどくないか。
・ 爪は短く切っているか。
・ マニキュアはしていないか。
・ 指輪・腕時計・ブレスレットははずしているか。
(2)手洗いの時期
・ 調理を始める前
・次の作業にとりかかるとき
・ 盛り付けを始める前
・食品全般を取り扱ったあと
・ 調理器具を触ったあと
・床に落ちた物を拾ったあと
・ 汚染箇所・汚染部位を触った後 ・扉の取っ手を触ったあと
・ スイッチを触ったあと
・トイレのあと
・ 厨房外から入ってきたとき
・汚れたと思ったとき
・ その他必要に応じて
(3)手洗いの方法(例)
手洗い設備には、レバー式(又は足踏み
式、自動式等)が望ましい。
①調理業務に就く前に
⑧紙タオルで拭く
指輪・腕時計をはずす
⑦真水でよくすすぐ
②水で洗う
⑥0.2 ~1%逆性石けん液等を手につけ
③石けんを使ってもみ洗い
30秒~2分間程度もみ洗いする
(30秒間)
⑤真水ですすいで石鹸を完全に落とす
④爪先をブラシで洗う
(20 秒間)
4
手洗いチェック
手の微生物を培地で培養し、手洗い前と後(水洗い、せっけん(固形・液体)洗い、消毒用アル
コールすり込み後)で比較しました。液体せっけん洗い、消毒用アルコールすり込み後で微生物が
よく除去されています。
手洗い前
水洗い後
指輪のあと
液体石けん
固形石けん
消毒用アルコールすり込み後
消毒用アルコールのすり込みが不十分
5
3 おむつ交換
1
・ ・・感染症予防のポイント
オムツ交換は、必ず使い捨て手袋を着用
入所者ごとに交換
手袋を外した際には手洗いを行う
2
オムツ交換の際、入所者一人ごとに手洗いや手指消毒をする
3
おむつの一斉交換は感染拡大の危険が高くなるため、個別ケアが望ましい
オムツ交換車の使用は、出来るだけやめる!
職員が病原体の媒体者にならないために、
便には多くの細菌が混入
・ O157等の細菌
充分な注意をする。
・ ノロウイルス等の
ウイルス類
4
感染予防のための必要物品
6
4
吐物処理
用意する物
□
使い捨てタオル、ティッシュ、新聞紙等
□ 塩素系漂白剤
□
ビニール袋等の、液漏れしない密封できる袋
□ マスク(ある場合)
□
使い捨て手袋(ない場合はゴム手袋)
□ 手洗い用の石けん
作業を始める前に、腕まくりし、腕時計、
指輪等は外しておきます。
マスクがある場合は、マスクを着用してく
ださい。
ナイロン袋(ビニール袋)の口を開けてお
きます。
ゴミ入れなどにビニール袋を入れて口を
広げておくと使いやすいです。
吐物や消毒液が直接触れぬよう、手袋を使
用してください。手袋がない場合は、できる
だけ手に付かないようにしてください。
手袋はできるだけ使い捨てのものを使用
します。
7
吐物を、新聞紙や捨ててもいい布などで、
できる限り拭き取ります。
タオルやぞうきんなど、再利用するものは
できるだけ使わないようにします。
(吐物の画像は、本物ではありません。
)
塩素剤を50−100倍に薄めた液(消毒
液)をティッシュ等に染みこませ、拭き取り
ます。
吐物のあった周辺は、できるだけ広い範囲
を消毒剤で拭き取ります。
塩素は金属腐食性がありますので、拭き取
った場所が金属の場合は、30分程度時間を
置いてから、水拭きします。
ビニール袋等、液漏れしない密封できるも
のに、吐物や、拭き取った新聞等を入れます。
8
袋の口をしっかり縛ります。
ナイロン袋等に、口を閉じた袋を入れま
す。
手袋を裏返しながら脱ぎます。
使い捨て手袋が無く、ゴム手袋を使用した
場合は、脱いだものをそのまま塩素で消毒し
ます。
内側を触らないようにして口を縛り、捨て
ます。
手袋をして処理をしても、必ず処理の最後
には石けんでよく手を洗ってください。
9
6 トイレ掃除
ポータブルトイレ・尿器・差込み便器は流水で
流した後、消毒薬で消毒する!
※ 消毒薬の種類・濃度・保存方法については次頁参照
10
6
消毒
【 対象物による消毒方法 】
消毒方法
対象
・アルコール含有消毒薬:ラビング法(3 0 秒間の擦式)
ワイピング法(拭き取り法)
手指
・スクラブ剤による洗浄(消毒薬による3 0 秒間の洗浄と流水)
※用語についてはQ & A をご参照ください。
・排泄物や吐物で汚染された床は、手袋をして0 .5 %次亜塩素酸
排泄物、嘔吐
ナトリウムで清拭する。
・熱水消毒器(ベッドパンウォッシャー)で処理(9 0 ℃1 分間)
差し込み便器
(ベットパン)
・洗浄後、0 .1 %次亜塩素酸ナトリウムで処理(5 分間)
・熱水洗濯機(8 0 ℃1 0 分間)で処理し、洗浄後乾燥させる。
リネン・衣類
・次亜塩素酸ナトリウム(0 .0 5 ∼0 .1 %)浸漬後、洗濯、乾燥させる。
・自動食器洗浄器(8 0 ℃1 0 分間)
食器
・洗剤による洗浄と熱水処理で十分である。
・洗剤で十分洗い、熱水消毒する。
まな板、ふきん
・次亜塩素酸ナトリウム(0 .0 5 ∼0 .1 %)に浸漬後、洗浄する。
・消毒用エタノール(7 0 ∼8 0 %)で清拭する。
ドアノブ、便座
・手袋を着用し、洗剤で洗い、温水(熱水)で流し、乾燥させる。
浴槽
・一般に感染の危険性は低い。洗濯する。
カーテン
・体液などが付着したときは、次亜塩素酸ナトリウムで清拭する。
・洗浄後、煮沸消毒。
オモチャ
(布・プラスチック製)
濃度単位
・洗浄後、逆性石鹸で拭き取る。
0 .1 %=1 .0 g / L=1 0 0 0 p p m
11
消毒薬の調整
ノロウイルスの消毒は、消毒用アルコール
は効きにくいため、塩素系漂白剤(塩素剤)
で行います。
塩素濃度が0.05−0.1%になるよう
にして使用します。
市販の塩素剤の多くは、塩素濃度が約5%
ですので、50−100倍に希釈して使用し
ます。
希釈の目安としては、500mLのペット
ボトル1本に、ペットボトルのキャップ1−
2杯の塩素剤を入れると簡単です。
調整する際は、直接塩素剤が手に付かない
ように手袋をしてください。
塩素のにおいが少なめの塩素系消毒薬も
ありますが、含まれる塩素濃度が異なります
ので、希釈方法に気を付けてください(約
1%の濃度なら、10−20倍に希釈して使
用します。
)
。
12
7
感染症早期発見のための日頃の観察ポイント
1 日々の健康観察
・ いつもと違うことがないか確認し、記録しましょう。
・ 個人、同室、同一フロア、施設全体の健康状態がわかるように記録しま
しょう。
・ 異常を発見した場合は、医師の診察を勧めましょう。
2
観察のポイント
観
察
点
こんな時は、医師の診察を勧めましょう
便の症状、回数
発 熱 の 有 無
続く軟便、水様性の下痢や血便がある場合
明らかな発熱、微熱でも発疹、嘔吐、下痢、喉・リンパ腺の腫れを
伴う場合
皮 膚 の 状 態
湿疹、発赤、発疹があるとき
目
の
状
態
眼脂(目やに)、結膜の充血、涙目、眼瞼腫脹があるとき
耳
の
状
態
耳だれ
口
の
状
態
口内炎など
痰
の
状
態
色・量の変化、血液の混入
れ
大きさ・色・臭いの変化
床
ず
その他の異 常
嘔吐、ひどい咳、食欲がない
日頃の十分な観察が、異常の早期発見・
早期治療・2次感染予防につながります。
13
8
職員の健康管理
介護に携わる職員自身が感染源とならないよう、日々の自己の健康管理にこころがけましょう。
・ 施設長は、職員を雇い入れるとき、また年1回以上の定期健康診断を実施しましょう。
・ 食品を取り扱う職員は、特に次の点に留意しましょう。
○ 食品を取り扱うすべての職員を対象に毎月検便を実施しましょう。
○ 伝染性の病気、手指に化膿性の傷があるときは、
直接食品を取り扱わないようにしましょう。
○ 清潔で洗濯のできる調理・
配膳専用のエプロン、三角巾やマスクを着用しましょう。
○ 食品を取り扱うときは、手洗いを励行し、手指の清潔を保つために、爪は短くし、作業
中はマニキュア、指輪、時計ははずしましょう。
○ 体調不良(頭痛、発熱、腹痛、下痢、嘔吐等の有症状時)のときは他にも同様の職員
がいないか確認し、必要に応じて医師の診断を受けましょう。
○ 生食(
特に、レバー、冬場のカキなど)
はなるべく避け、十分加熱して食べるようにしま
しょう。
14
Ⅲ
感染症発生時の対策
下痢便、血液、おう吐物を扱う時や、職員
自身の傷等を防ぎたいときは手袋を使用
しましょう。
手洗い後の手ふきタオルは、使い捨てタオ
ルを使いましょう。
15
○ 施設内での感染症発生時の対応フロー
感染症・食中毒の疑いのある入所者が目立つ
気付く
職
連絡
入所者の家族
○発熱、嘔吐、下痢、咳、皮膚
症状の確認
員
の異常など。
○10 日前からの記録も確認
診察・
医療処置
報告
施設全体の状態の把握・記録
感
染
症
担
当
職
員
施
設
○人数、症状
他の有症状者の
確認
(日時、階、部屋ごと)
○受診状況、診断、検査、治療内容
○通常の発生動向との比較
○職員の健康状態の把握
報告
報告
嘱
託
医
師
連携
相談・報告
指示
施
設
長
施設全体における
お気軽に
ご相談ください
調査・指導
発生状況を把握
協力病院等
連携
杵 藤 保 健 所
℡0954−22−2104
感染症対策担当
報告
連携・消毒依頼
指示
○感染拡大防止
症状に応じたケア
感染症発生
全職員対応
市町等の所管部局
手洗い・衛生管理の徹底
検体(血液、便、
吐物等)の確保
<報告が必要な場合>
看護職員
(平成17年2月22日厚生労働省通知)
ア 死亡者・重篤患者が 1 週間に 2 名以上
イ 感染症が疑われる者が 10 名又は入所者の半数以上(ある時点において)
ウ 通常の発生動向を上回り、施設長が報告を必要と認めた場合
<報告すべきこと> 人数・症状・対応状況等
*報告様式(例)参照
16
健康観察票
部屋
月 日
No
氏 名
性別 年齢
月 日
月 日
月 日
月 日
月 日
月 日
便の
便の
便の
便の
便の
便の
便の
発熱 嘔吐
発熱 嘔吐
発熱 嘔吐
発熱 嘔吐
発熱 嘔吐
発熱 嘔吐
発熱 嘔吐
性状
性状
性状
性状
性状
性状
性状
備考
投薬等
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
20
有症状
者合計
※嘔吐は「
1 日あたりの回数」
※便の性状は「
軟便」
「
水様便」「泥様便」「血便」等及び回数を記入してください。
17
施設医への報告用紙(例)
月 日頃から、嘔吐や下痢の症状がある入所者が現在( 月 日)までに 人発生しており、受診している者は 人で医療機関では と診断されています。
<発生状況>
月 日
定員数
合計
入所者
階 号室
階 号室
階 号室
階 号室
階 号室
階 号室
階 号室
入所者計
併設サービス利用者
デイサービス
ショートステイ
訪問介護
訪問入浴
併設サービス利用者計
職員
調理従事者
合計
18
施設所管課への報告用紙(例)
連絡者氏名
連絡日
電話
FAX
施設名
施設住所
発生日時
主な症状
年 月 日 時
嘔吐
発生状況
嘔気
入所者数等
下痢
腹痛
発症者数
重傷者数
発熱
入院者数
合計
階 号室
階 号室
階 号室
階 号室
階職員
階 号室
階 号室
階 号室
階 号室
階職員
階 号室
階 号室
階 号室
階 号室
階職員
調理従事者
受診状況
受診人数
人 医療機関名
検査結果
給食
行動状況
→ 施設内調理 施設外・関連施設
残食有
検食有 誕生会 月 日
運動会 月 日
入浴
月 日
その他( )
概要
19
保健所へ提出書類(集団感染が疑われた場合)
健康観察票
入所者名簿(階毎 部屋毎)
入所者の部屋別の健康状況
施設平面図(部屋・便所・手洗い場・汚物処理場・調理室・食堂等記載)
部屋のベット配置図、患者の発生状況図
施設行事予定表
通所の場合は送迎状況
給食メニュー
職員の勤務表
施設医・施設管理者の氏名
20
Ⅳ
感染症各論
<結核>
病原体
結核菌
潜伏期
不定(半年∼2年が最も多い)
感染経路
飛沫感染・空気感染
結核の排菌患者から出された結核菌が空気を漂って、それを吸い込
むことで他人に感染する
症
状
呼吸器症状(咳・痰・血痰)、 全 身 症 状 ( 発 熱 ・ 倦 怠 感 ・ 寝 汗 ・ 食 欲
不振・体重減少)
※2週間以上続く咳は結核の注意症状
感染予防
健康診断:介護従事者・利用者ともに定期的に健康診断を受ける。
換
気
:普段から換気を頻回に行う。
有症状者が出たら:医療機関受診
個室の利用
マス クの着用
<インフルエンザ>
病原体
インフルエンザウイルス
感染経路
飛沫感染
潜伏期
1∼2日
症
38度以上の発熱、悪寒、頭痛、筋肉痛 、鼻閉、咽頭痛、咳
状
感染予防
ワクチン接種(重症化防止に効果的)
うがい・手洗いの励行、湿度の保持
21
<感染性胃腸炎(ノロウイルスによるもの)>
病原体
ノロウイルス
感染経路
経口感染
潜伏期
1∼2日
症
嘔気、嘔吐、腹痛、下痢
状
感染予防
手洗い
調理器具の衛生
食品の十分な加熱(85℃1分以上)
汚物処理時の使い捨て手袋使用
備
考
杵藤保健所調査では、3日間で入所者の10%または平常時の2倍以
上の有症状者が発生した場合、感染が疑われます。
(詳細は感染症発生時の対応フロー参照)
<腸管出血性大腸菌感染症(O157・O26・O111など)>
病原体
腸管出血性大腸菌
(ベロ毒素生産菌:O157、O26、O111など)
感染経路
経口感染
潜伏期
2∼8日が最も多い
症
下痢(水様性∼血便まで様々)、発熱、腹痛、嘔気、嘔吐
状
合併症:溶血性尿毒症症候群(HUS)など
感染予防
手洗い
調理器具の衛生
食品の十分な加熱(75℃1分以上)
汚物処理時の使い捨て手袋使用
共用浴槽水の残留塩素の確保( 0 .∼
20 .p
4p m)
22
<MRSA感染症>
病原体
感染経路
MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)
接触感染
潜伏期
不定
症
発熱、膿状の痰など
状
感染予防
手洗い、うがい
MRSA保菌者:個室管理の必要なし
MRSA感染者:個室管理
<疥癬>
病原体
ヒゼンダニ(ヒト疥癬虫)
感染経路
接触感染
潜伏期
約1ヶ月
症
激しい痒み(特に夜間)、発疹(腹部・胸部・腋窩・手 指)
状
感染予防
手洗い
皮膚の観察、有症状時早めの皮膚科受診
寝具・衣類の加熱処理
<B・C 型肝炎>
病原体
B型肝炎ウイルス・C型肝炎ウイルス
感染経路
血液感染
潜伏期間
B型肝炎は 1 .5
ヶ 月∼ 6 ヶ 月
症
状
感染予防
C型肝炎は 2週間∼6ヶ月
全身倦怠感、食欲不振、悪心・嘔吐、黄疸
血液に触れる可能性のあるときは手 袋 使 用
手洗い・消毒
かみそり・歯ブラシ等の共有をしない
※入浴・洗濯・食器などを別にする必要はない
23
<レジオネラ感染症>
病原体
レジオネラ属菌
感染経路
空気感 染・飛沫感染
潜伏期間
2∼10日
症
全身倦怠感、筋肉痛、頭痛、高熱、腹痛、嘔吐、下痢、意識障害
状
感染予防
水利用設備の清掃、定期的な点検・細菌検査の実施
24
疾患名
病原体
結核
結核菌
インフルエン
ザ
インフルエン
ザ ウイルス
ノロウイルス
感染性胃腸炎
腸管出血性大腸菌
感染症
(O 1 5 7 ・O 2 MRSA感染症
6・
O 1 1 1 など)
疥癬
B 型肝炎
C型肝炎
MRSA
ヒゼンダニ
(ヒト疥癬
虫)
B 型肝炎ウイルス
C型肝炎ウイル
ス
1 .5 ∼6 か月
2週間∼6ヶ月
腸管出血性大腸
菌
ノロウイルス ベロ毒生産菌:
O157、O26、
O 111
潜伏期
不定
1∼2日
1∼2日
2∼8日が多い
不定
約1ヶ月
感染経路
飛沫感染
空気感染
飛沫感染
経口感染
経口感染
接触感染
接触感染
症状
咳・痰・血
痰・ 発
熱・倦怠感・
体重減少など
発熱、膿状の痰
激しい痒み
発疹
定期的な健診
感染予防
換気
その他
発熱(3 8 度以
嘔気・嘔吐・ 下痢・発熱・腹
上)悪寒・筋
腹痛・下痢 痛 嘔吐等
肉痛
うがい・手洗
い
湿度の保持
ワクチン接種
手洗い
汚物処理時の
手袋使用
調理器具の衛
生 食品の
加熱
手洗い
汚物処理時の
手袋使用
調理器具の衛生
食品の加熱
合併症:溶血性
尿毒素症候群な
ど
25
血液感染
血液感染
倦怠感・食欲不 B型肝炎と同じ
振・悪心・嘔吐・ だが、症状は軽
黄疸
い
手洗い
感染者:個室管
皮膚の観察
手袋の使用
理 保菌者:一
寝具・衣類の 手洗い・消毒
般病床
加熱処理
手袋の使用
手洗い・消毒
Ⅴ Q&A
Q: 手指の消毒にはどんな方法があるのでしょうか?
消 毒 法
方 法
洗浄法(スクラブ法)
消毒薬を約3ml手に取り、よく泡立てながら洗浄
する(30秒以上)。さらに流水で洗い、ペーパー
タオルでふき取る。
擦式法(ラビング法)
アルコール含有の消毒薬を3ml手に取り、よく擦
り込み(30秒以上)、乾かす。
擦式法(ラビング法)
アルコール含有のゲル・ジェル消毒薬を、約2ml
ゲル・ジェルによるもの 手に取り、よく擦り込み(30秒以上)、乾かす。
清拭法(ワイピング法)
アルコール含浸綿で拭き取る。
※ ラビング法は、手が汚れているときには無効であることに注意しましょう。
手が汚れている場合には、石けんと流水で洗ったあとに行います。
Q: なぜ、逆性せっけん(オスバン、ウエルパス、ハイアミンなど)はせっけん分を十分
に落とさないと効果がなくなるのですか?
A: せっけんは「陰イオン界面活性剤」に分類され、逆性せっけんは「陽イオン界面活性剤」になり
ます。つまり、電気的性質が逆であるため、せっけん分が残っていると消毒効果がなくなって
しまいます。逆性せっけんに界面活性剤を配合した皮膚の洗浄と殺菌・消毒が同時にできる
製品もあります。
Q: 感染予防の点から、各居室、廊下などの消毒はどのように考えたらよいのでしょうか?
A: 天井・壁(ベッドの位置などで患者と接触する部分以外)・床は感染のリスクが低く、通常は消
毒の必要はありません。特に、消毒剤の噴霧はデメリットのほうが大きいといえます。それは
「消毒剤はたんぱく質の変性作用や凝固作用が作用メカニズムであるため、細胞毒性を有す
る」ことに起因します。消毒剤の室内噴霧をおこなうと、消毒をおこなう人や周りの人が消毒
剤を大量に吸入したり、眼に浴びたりするなどして、その際の毒性が問題になるのです。
Q: ユニホームに噴霧しているアルコールスプレーの効果はあるのでしょうか?
A: 清拭による消毒でアルコールを使用する場合には、十分に濡れたアルコール綿・ガーゼを使
用して消毒効果を得ます。それから考えると、ユニホーム等にひと吹きふた吹きの噴霧では
効果は疑わしく、なによりも、アルコールを吸入してしまう害もあることから、
無駄なことです。
それよりは毎日ユニホームを着替えることのほうが効果的です。
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Ⅵ 参考文献・資料、リンク集
参考文献・資料
① 保育施設における感染症予防対策の手引き
佐賀県
② 在宅ケアにおける感染症予防マニュアル
編集 東京都多摩立川保健所
発行 東京都生活文化局広報広聴部広報管理課
平成 14 年 6 月 発行
③ ノロウイルス感染症の二次感染を防止するために
監修 長野県衛生部保険予防課
④ 安全・安心・快適な高齢者施設のために
編集 東京都府中小金井保健所
発行 東京都生活文化局広報広聴部広報管理課
リンク集
◎ 佐賀県感染症情報センター
http://www.kansen.pref.saga.jp/
◎ 『 高 齢者 介 護施 設に お ける 感 染対 策マ ニ ュア ル』 ∼ 厚生 労 働省 ホー ム ペー ジ ∼
http://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/tp06281/
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高齢者介護施設における感染症予防マニュアル作成検討会委員
(五十音順 敬称略)
氏
名
所属部署(職種)
安 部 明 美
立野川内保育園(保育士)
小 原 木 亮
特別養護老人ホーム 杏花苑(管理栄養士)
崎 田 智 史
特別養護老人ホーム そよかぜの杜(看護師)
中村由起子
芳華保育園(保育士)
松 本 順 子
大崎保育園(園長)
森
光の園保育園(主任保育士)
幸
子
安 永 勝 子
介護老人保健施設
山 田 洋 子
下宿保育園(管理栄養士)
岩
杵藤保健所 企画・経営担当(主任診療放射線技師)
谷
修
ケアコートゆうあい(看護介護部長)
笠原かつ子
杵藤保健所 感染症対策担当(主幹保健師)
金丸さとみ
杵藤保健所 健康指導担当(主任栄養士)
北 川 三 男
杵藤保健所 検査室(室長・臨床検査技師)
香 田 哲 宏
杵藤保健所 感染症対策担当(主事)
貞嶋美和子
杵藤保健所 感染症対策担当(保健師)
増本喜美子
杵藤保健所 検査室(主任臨床検査技師)
溝
杵藤保健所 衛生対策課(課長・薬剤師)
上
茂
矢 岡 由 美
杵藤保健所 企画・経営担当(主任保健師)
この感染症予防マニュアルは、福祉施設で直接、感染症対策に携わる方々のご意
見をいただきながら、現場で活用しやすいマニュアルを目指し、検討をおこない作
成したものです。
また、このマニュアルをベースとして、それぞれの施設において、感染予防対策
を再度ご検討頂き、各施設における具体的対策を盛り込んだ独自のマニュアルを作
成して頂ければ幸いです。
平成 17 年 11 月
(平成 18 年 3 月改訂)
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