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PDF - シーエムシー技術開発
CMCビーズの電磁波吸収メカニズム 1/2 <電磁波吸収材料について> 一般に、電磁波吸収材料は電磁界への働きから (1)導電損失材料 カーボン等の高抵抗導電体を利用 (2)磁性損失材料 フェライト等透磁率の高い磁性体を利用 (3)誘電損失材料 発泡体にカーボン等を含有させて 複素誘電率の虚数部を大きくした 材料を利用 CMC 10μm に分類されます。 CMCビーズ 1mm 電磁波のエネルギーは、電界及び磁界それぞれのエネルギー成分に分けられます。 (1)導電損失材料、(3)誘電損失材料は電界エネルギーのみを熱エネルギーに変換し減衰させる材料です。また、(2)磁性損失 材料は、磁界エネルギーのみを熱エネルギーに変換し減衰させます。 注)電磁波吸収材は、電磁シールド材とは異なります。前者が、電磁波を吸収(電磁エネルギーを減衰し、消滅させる)する材料 であるのに対し、後者は電磁波の遮蔽(電磁エネルギーを反射し、透過を防ぐ)を行う材料です。 <カーボンマイクロコイルの電磁波吸収> カーボンマイクロコイル(CMC)を内包したCMCビーズは、CMCのL・C・R成分による電磁誘導効果とCMCのキラル物質特性に よる誘電・磁性損失を活用した、新しいタイプの電磁波吸収材料です。 CMCは、直径数ミクロンの微小なコイル状炭素繊維です。対称軸を持たないキラル(不斉)構造を持つ二重らせん形状をしてい ます。また、炭素材料としての導電性があります。この導電性のコイル形状とキラル構造が、CMCの電磁波吸収材料としての 優れた特性を示します。 (1) 電磁誘導効果による吸収 導電性コイルであるCMCは、インダクタンス(L)、キャパシタンス(C)、レジスタンス(R)の三つの電気的特性を同時に持つ新し いタイプの炭素材料です。CMCは、単体で電気的にL−C−R回路を構成し、電磁波に共振します。 電磁波が、CMCに入射すると電磁誘導により、電磁波のエネルギーが熱エネルギーに変換されます。(図1) (2) キラル物質特性による吸収 キラル特性を持つCMCは、一般の物質と違い電磁波の入射時に、電束密度と磁束密度を増加させるという特性があります。 これは、電磁波吸収材の誘電損失、磁性損失を見かけ上大きくする効果を発現します。つまり、CMCは誘電損失と磁性損失両 方の特性を兼ね備え、電界・磁界エネルギーを同時に熱エネルギーに変換します。(図2) CMCのキラル特性によるこの効果は、特に高い周波数帯域で顕著になります。また、キラル物質は、入射電磁波を散乱させ る特性もあり、(1)、(2)の電磁波吸収作用を相乗的に高めます。 <CMCビーズの電波吸収体> CMCビーズは、このようなCMCの優れた電磁波吸収特性を生かした電磁波吸収材料です。特に、GHz広帯域での優れた電磁 波吸収材料として活用できます。また、反射板のいらない高性能な電波吸収体の設計が可能となります。(図3、図4) シーエムシー技術開発株式会社 〒509-0108 岐阜県各務原市須衛町 4-179-1(テクノプラザ内) TEL. 0583-79-0686 FAX. 0583-79-0688 URL http://www.cmctd.co.jp 2版 2002.12.1 図1 電磁誘導による吸収 導電性 マイクロコイル 2/2 L C = 熱エネルギー R 電磁波 CMC 誘導起電力 等価回 (共振回路) 熱エネルギー (吸収) 電磁波 CMCビーズ 図2 電磁誘導 (複合共振回路) キラル物質特性による吸収 キラル物質 不斉構造 (キラル物質) 左旋回円偏波 (散乱波) 熱エネルギー 電磁波 (直線偏波) CMC 誘電損失 磁性損失 右旋回円偏波 (散乱波) 散乱波 熱エネルギー (吸収) 電磁波 CMCビーズ 図3 キラル物質 (誘電体・磁性体) 散乱波 CMCビーズ電磁波吸収体 吸収・消滅 (熱エネルギーに変換) 電磁波 図4 散乱・減衰 CMCビーズ電磁波吸収体の吸収パターン(例) 0 0 -dB -dB CMCビーズ充填(例) GHz 他の材料との混合(例) シーエムシー技術開発株式会社 〒509-0108 岐阜県各務原市須衛町 4-179-1(テクノプラザ内) TEL. 0583-79-0686 FAX. 0583-79-0688 URL http://www.cmctd.co.jp GHz 2版 2002.12.1 CMCビーズの特徴と用途 <CMCビーズの特徴> CMCビーズは、従来の電磁波吸収材料と比べ次のような特徴があります。 ・電磁誘導という新しい概念の電磁波吸収材料です ・キラル物質の特性を持ち、誘電体・磁性体として電界成分・磁界の両成分を同時に減衰させます ・フェライト等の磁性損失系電波吸収材料と比べ重量を格段に軽くできます ・ピラミッド形電波吸収体のように特別な形状と大きな体積を必要とせず、いかなる形状の電波吸収体でもできます <CMCビーズの用途> CMCビーズには、プラスチック成形加工用原料としての用途と充填材、混合材としての単体用途があります。 成形加工用途 : 可塑性のアクリル系樹脂(メタクリル酸メチル)を使用していますのでシート、パネル、棒等の プラスチック成形品に加工が可能です。 電波吸収体パネル、機器筐体等、任意形状の電波吸収特性を持たせたプラスチック成形品ができます。 合っ また、成形加工時にカーボン粉末、ファイバー、フェライト等、従来の電磁波吸収材料を添加し、目的に た電波吸収特性を持たせることも可能です。 例えば、重量が軽いという特徴を利用して高層ビル等構造物の電波障害対策用外壁パネルとして成形加 工し、利用することも可能です。また、内装材としてパーティション、什器等の内装用電波吸収シートとして、 室内の電磁環境の改善に活用することもできます。さらに、目的の周波数又は周波数帯域を設定する電 磁波吸収体の設計ができます。 単体用途 : CMCビーズは、微小な粒子形状ですので様々な場所に充填可能です。 例えば、障害電磁波のトラブルシュートでモータ等のノイズ発生源の影響を低減したい場合やノイズ耐性 が低い個所のノイズ対策を臨時に行いたい時などに有効です。 また、電気通信配線をコンジット等の配管を用いて布線する場合には、コンジット等にCMCビーズを充填 することで電線間のノイズ干渉を低減することができます。 さらには、従来型の電波吸収体の成形時にCMCビーズを混合して、電波吸収効果を高めることが可能で す。 <特別仕様> サンプル販売のCMCビーズは、アクリル系プラスチック樹脂(PMMA)にGHz高帯域の電磁波吸収材に適した寸法のカーボ ンマイクロコイル(CMC)を数%含有したものす。樹脂の種類、CMCビーズの寸法、CMC含有量等を変えた特別仕様のCMC ビーズの製作も可能ですので、貴社のご要望を是非お知らせ下さい。 問合せ先 : TEL. 0583-79-0689 FAX. 0583-79-0688 E-mail [email protected] 担当:菱川 シーエムシー技術開発株式会社 〒509-0108 岐阜県各務原市須衛町 4-179-1(テクノプラザ内) TEL. 0583-79-0686 FAX. 0583-79-0688 URL http://www.cmctd.co.jp 2版 2002.12.1 −電磁波・ノイズの遮蔽・抑制から吸収・消滅へ− <参考資料> 電磁波吸収材料と電磁波シールド材料 <電磁波シールド材料> 外部より放射されてくる不要電磁波に対する従来の対策は、シールド(遮蔽)が基本です。 シールドには電界シールド、磁界シールドの2種類があり、次のような特徴を持っています。 ・電界シールド 電磁波障害を回避したい装置等を導電性の筐体で囲い込み、電界を反射させて内部へ伝わらないようにするもの です。一般には、金属板、金属箔、金属メッキ等が使用されています。 ・磁界シールド 電磁波障害を回避したい装置等を強磁性体等透磁率の高い材料の筐体で囲い込み、磁界を筐体に収束させて 内部へ伝わらないようにするものです。一般には、フェライト等を多量に含有した成形板等が使用されています。 反対に装置等の内部から外部に不要電磁波を放射しないようにすることも同様の考え方で遮断・遮蔽します。どちらも 電界或いは磁界が外部から内部へ(或いは内部から外部へ)伝わらないようにすることが目的で、不要電磁波を減衰・ 吸収させるものではありません。 <磁界の遮蔽> <電界の遮蔽> 電磁波(磁界) (反射) 電磁波(電界) 装置等 遮蔽用筐体 (導体:金属等) 装置等 (反射) アース 遮蔽用筐体 (高透磁率材料:フェライト等) <電磁波吸収材料> 電磁波吸収材を使用した電波吸収体は、不要電波をはね返すのではなく、電磁波のエネルギーを吸収・消費して内部(又 は外部)に伝わらなくするだけでなく、反射も起こさなくするもので、電磁波障害を根本的に解決するものです。 <不要電磁波の吸収> (1) 従来の電波吸収体は、 背面に反射材を必要とし、 反射材側から入射する電 磁波は吸収されません。 入射波 高周波電流に よる熱損失 電磁波 電波吸収体 装置等 <(1) 従来の電波吸収体> 電磁波吸収材 反射波 (2) 理想的な電波吸収体 は、吸収体の両面方向か らの電磁波をいずれも完 全に吸収できるものです。 (CMCビーズを活用すると 理想的な電波吸収体の設 計が可能です) <(2) 理想的な電波吸収体> 電磁波吸収材 入射波 減衰・消滅 反射材(金属板、金属箔等) 2次反射波 反射波(全反射) 入射波 (片面入射・吸収) (両面入射・吸収) シーエムシー技術開発株式会社 〒509-0108 岐阜県各務原市須衛町 4-179-1(テクノプラザ内) TEL. 0583-79-0686 FAX. 0583-79-0688 URL http://www.cmctd.co.jp 入射波 2版 2002.12.1 <参考資料> カーボンマイクロコイル(CMC)の電磁誘導作用 カーボンマイクロコイル(CMC)は、その寸法がマイクロメートルオーダーのコイル形状(ヘリカル・らせん構造)を持ち、 炭素材料であることから導電性があります。また、電気的な特性として、インダクタンス(L)、キャパシタンス(C)、レジスタ ンス(R)の三つの特性・成分を持つことが確認されています。 一般に、L成分はコイルの電磁誘導特性を、C成分は電界に対しての誘電特性を、R成分は導電特性を示しています。 また、電気工学的には、L、C、Rそれぞれの成分は電気・電子回路要素として、その組み合わせで共振回路を構成するこ とができます。即ち、CMCはそれ自体でL−C−R共振回路を構成できる機能を持っているということです。 従って、CMCは単体で下図のような等価回路として表すことができます。 1∼10μm = 10∼1000μm L L 導電性 マイクロコイル C 又は R R CMC (L、C、R成分を 内包している) C 等価回路(L、C、R共振回路) 1 共振周波数 f = 2π√LC L−C−R共振回路は、電磁波に対して、その共振周波数において極めて高い電磁誘導作用が働き、共振点で大きな誘 導起電力が発生します。誘導起電力により回路に発生する誘導電流は、回路のR成分によって熱に変換され、電磁波の 電界・磁界エネルギーは最終的には熱エネルギーに変換され、消滅します。 CMCビーズは、このCMCの電磁誘導作用(誘導起電力を熱エネルギーに変換する作用)を活用した新しい概念の電磁 波吸収材料です。CMCの電磁波吸収メカニズムとCMCビーズの電磁波吸収特性を下図に示します。 L C = 熱エネルギー R 電磁波 CMC 誘導起電力・誘導電流 等価回路 発熱 電磁波 CMCビーズ 電磁誘導 (複合共振回路) CMCビーズで製作した電波吸収体は、特に、GHz広帯域に亘って従来の電波吸収体にはない複数の周波数での シャープな電磁波吸収特性を示します。これは、ビーズに内包するCMCの複合的な電磁誘導作用による効率的で、かつ 効果的な電磁波吸収特性によるものと考えられます。 CMCの電磁波吸収特性は、この様な電磁誘導作用による効果の他、別紙<参考資料>に述べるように、CMCのキラ ル物質特性により、CMCの電磁波吸収特性はさらに、相乗的に高まります。 シーエムシー技術開発株式会社 〒509-0108 岐阜県各務原市須衛町 4-179-1(テクノプラザ内) TEL. 0583-79-0686 FAX. 0583-79-0688 URL http://www.cmctd.co.jp 2版 2002.12.1 <参考資料> カーボンマイクロコイル(キラル物質)の電磁気的作用 カーボンマイクロコイル(CMC)は、二重螺旋形状を持っており、この形状を持つ物質は対称軸を持たない不斉(キラル) 物質と呼ばれます。 キラル物質は、その物質内で電磁波の電界と磁界を結合させて、電束密度と磁束密度を高める効果をします。これを下 記式に示します。 <一般の物質> <キラル物質> D = εE D = ε ( E+β∇×E ) = εE ( 1+β∇ ) B = μH B = μ ( H+β∇×H ) = μH ( 1+β∇) D :電束密度、B :磁束密度、E :電界、H :磁界、ε:誘電率、 μ:透磁率、β:キラル係数、 ∇ :E、H のベクトル外積 物質に電磁界が作用した場合に電束密度(D)及び磁束密度(B)は、一般に外部電界(E)及び外部磁場(H)と物質の誘 電率(ε)及び透磁率(μ)によって決まりますが、キラル物質の場合、これにβ∇×E 及びβ∇×H の寄与が加わります。 即ち、電磁波(交播電磁界)が作用すると、電束密度がβ∇×E、磁束密度がβ∇×H だけ、それぞれ増加します。 つまり、キラル物質であるCMCは、キラル効果により誘電率、透磁率が共にβ∇分だけ大きな値を持った物質として電磁 波に作用し、結果として電磁波の損失をより大きくさせます。 また、キラル物質内では、電磁波の偏波面を回転させる働きが発生します。この時、偏波の回転スピードが左旋回と右旋 回とで異なる為、入射した直線偏波の電磁波はキラル物質内で左・右旋回の二つの円偏波に分離されて再放射されます。 この効果により、キラル物質を充填した電波吸収体は、従来の電波吸収体の様に吸収体の背面に反射板を配置しなくても、 それ自体で電磁波をキャッチボール(繰り返し吸収・散乱)しながら電磁波を熱エネルギーに変換させることが可能です。 キラル物質 入射波 (直線偏波) 散乱波 (左旋回円偏波) 熱エネルギー D・Bの増加 偏波面回転・散乱 散乱波 (右旋回円偏波) シーエムシー技術開発株式会社 〒509-0108 岐阜県各務原市須衛町 4-179-1(テクノプラザ内) TEL. 0583-79-0686 FAX. 0583-79-0688 URL http://www.cmctd.co.jp 2版 2002.12.1